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1957-11-12 第27回国会 衆議院 社会労働委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年十一月十二日(火曜日)     午前十時五十七分開議  出席委員    委員長 藤本 捨助君    理事 植村 武一君 理事 大坪 保雄君    理事 野澤 清人君 理事 八田 貞義君    理事 八木 一男君       大橋 武夫君    亀山 孝一君       小島 徹三君    小林  郁君       高瀬  傳君    中山 マサ君       古川 丈吉君    亘  四郎君       赤松  勇君    岡本 隆一君       栗原 俊夫君    五島 虎雄君       多賀谷真稔君    滝井 義高君       堂森 芳夫君    中原 健次君       山口シヅエ君    山花 秀雄君       横山 利秋君  出席国務大臣         労 働 大 臣 石田 博英君  出席政府委員         労働政務次官  二階堂 進君         労働事務官         (労政局長)  亀井  光君  委員外出席者         通商産業事務官         (重工業局長) 岩武 照彦君         労働事務官         (大臣官房総務         課長)     有馬 元治君         労働事務官         (大臣官房労働         統計調査部長) 大島  靖君         労働事務官         (労働基準局         長)      堀  秀夫君         労働事務官         (労働基準局労         災補償部長)  村上 茂利君         労働事務官         (職業安定局         長)      百田 正弘君         労働事務官         (職業安定局失         業対策部長)  三治 重信君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 十一月十二日  委員岡良一君辞任につき、その補欠として横山  利秋君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 十一月十一日  旅館従業員に対する健康保険法等の一部改正に  関する請願岡本隆一紹介)(第一〇七六  号)  旅館従業員に対する労働基準法完全施行に関  する請願岡本隆一紹介)(第一〇七七号)  同(戸叶里子紹介)(第一〇七八号)  労働基本権回復に関する請願石橋政嗣君紹  介)(第一〇七九号)  同(山本幸一紹介)(第一〇八〇号)  衛生検査技師身分法制定に関する請願竹内  俊吉紹介)(第一〇八一号)  国民障害年金制度創設に関する請願橋本龍伍  君紹介)(第一〇八二号)  動員学徒犠牲者補償に関する請願高津正道  君紹介)(第一二七〇号)  医業類似行為既存業者業務存続に関する請願  (永田亮一紹介)(第一二七二号)  陸中海岸国立公園指定地域拡大等に関する請願  (山本猛夫紹介)(第一二七三号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  閉会中審査に関する件  委員派遣承認申請に関する件  公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律  案(八木一男君外十五名提出衆法第四号)  地方公営企業労働関係法の一部を改正する法律  案(八木一男君外十五名提出衆法第五号)  国又は地方公共団体失業対策事業のため雇用  した職員に対する期末手当に関する法律案(八  木一男君外十五名提出衆法第六号)  労使関係労働基準及び失業対策に関する件  請願審査小委員長より報告聴取   請願  一 看護人増加に関する請願田中武夫君紹    介)(第三七号)  二 日雇労働者賃金引上げ等に関する請願(    西村彰一紹介)(第三八号)  三 同(赤松勇紹介)(第九八号)  四 医業類似行為既存業者業務存続に関する    請願外一件(床次徳二紹介)(第三九    号)  五 同(保利茂紹介)(第四〇号)  六 同(有田喜一紹介)(第一〇〇号)  七 同(今澄勇紹介)(第一〇一号)  八 同(中村三之丞紹介)(第一〇二号)  九 同(福田昌子紹介)(第一〇三号) 一〇 同(古井喜實紹介)(第一〇四号) 一一 同(山口丈太郎紹介)(第一〇五号) 一二 夫帰還者留守家族等援護法による療養給付    期間延長等に関する請願(佐々木更三君紹    介)(第九九号) 一三 臨時工社外工雇用関係及び労働条件改    正に関する請願赤松勇紹介)(第二一    〇号) 一四 戦傷失明者用杖支給に関する請願三宅正    一君紹介)(第二一一号) 一五 国民健康保険診療報酬支払基金制度設置    に関する請願原茂紹介)(第二一二    号) 一六 豊平町の保護施設補修工事費国庫補助に関    する請願椎熊三郎君外一名紹介)(第二    一三号) 一七 同(正木清君外一名紹介)(第二一四号) 一八 豊平町の低所得者収容施設改修費国庫補助    に関する請願椎熊三郎君外一名紹介)(    第二一五号) 一九 国立療養所賄費増額及び特別治療食費設    定に関する請願亀山孝一紹介)(第二    一六号) 二〇 未帰還者留守家族等援護法に関する請願(    吉川兼光紹介)(第四〇二号) 二一 国民健康診療報酬支払基金制度設置に関    する請願松平忠久紹介)(第四〇三    号) 二二 未帰還者留守家族等援護法による療養給付    期限延長等に関する請願井手以誠君紹    介)(第四〇四号) 二三 豊平町の低所得者収容施設改修費国庫補助    に関する請願正木清紹介)(第四〇五    号) 二四 未帰還者留守家族等援護法による療養給付    期間延長に関する請願横山利秋紹介)    (第四〇六号) 二五 労働基本権回復に関する請願井岡大治君    紹介)(第四〇七号) 二六 同(小松幹紹介)(第四〇八号) 二七 最低賃金制及び家内労働法制定に関する    請願小松幹紹介)(第四〇九号) 二八 衛生検査技師身分法制定に関する請願(    藤本捨助君紹介)(第四一一号) 二九 同(臼井莊一君紹介)(第四一二号) 三〇 同(福田昌子紹介)(第四一三号) 三一 同(吉川兼光紹介)(第四一四号) 三二 医業類似行為既存業者業務存続に関する    請願青木正紹介)(第四一五号) 三三 同(伊東岩男紹介)(第四一六号) 三四 同(井手以誠君紹介)(第四一七号) 三五 同(池田清志紹介)(第四一八号) 三六 同(植木庚子郎君紹介)(第四一九号)三七 同(亀山孝一紹介)(第四二〇号) 三八 同(田子一民紹介)(第四二一号) 三九 同(鈴木善幸紹介)(第四二二号) 四〇 同(鈴木茂三郎紹介)(第四二三号) 四一 同(吉川兼光紹介)(第四二四号) 四二 牧園町に温泉療養研究所設置請願池田    清志紹介)(第四二六号) 四三 老齢年金制度法制化促進に関する請願(    松澤雄藏紹介)(第四二七号) 四四 国立玉浦療養所存置に関する請願愛知揆    一君紹介)(第四二八号) 四五 国民障害年金制度創設に関する請願(楢橋    渡君紹介) (第四二九号) 四六 温泉旅館単独業種指定に関する請願(愛    知揆一君紹介)(第四三〇号) 四七 社会保険強制包括適用に関する請願外二件    (石坂繁紹介)(第四三一号) 四八 国民健康保険事業育成強化に関する請願(    木村俊夫紹介)(第四三二号) 四九 動員学徒犠牲者遺族援護に関する請願(    池田清志紹介)(第四三三号) 五〇 児童福祉法による保育所措置費徴集基準引    下げに関する請願池田清志紹介)(第    四三四号) 五一 戦時中の特殊漁船乗組員戦没者遺族援護    に関する請願相川勝六紹介)(第四三    七号) 五二 最低賃金制及び家内労働法制定に関する    請願井岡大治紹介)(第五五七号) 五三 同(中村時雄紹介)(第七一七号) 五四 同(茜ケ久保重光紹介)(第七一八    号) 五五 同(今村等紹介)(第七一九号) 五六 同(五島虎雄紹介)(第七二〇号) 五七 同(木原津與志君紹介)(第七二一号) 五八 同(田中織之進君紹介)(第七二二号) 五九 同(佐藤觀次郎紹介)(第八三〇号) 六〇 同(田中武夫紹介)(第八三一号) 六一 労働基本権回復に関する請願井岡大治君    紹介)(第五五八号) 六二 同(茜ケ久保重光紹介)(第七一二    号) 六三 同(今村等紹介)(第七一三号) 六四 同(田中織之進君紹介)(第七一四号) 六五 同(門司亮紹介)(第七一五号) 六六 同(中村時雄紹介)(第七一六号) 六七 同(佐藤觀次郎紹介)(第八二八号) 六八 同(多賀谷真稔紹介)(第八二九号) 六九 日雇労働者年末手当に関する請願八木一    男君紹介)(第五六〇号) 七〇 都市清掃施設費国庫補助範囲拡大に関する    請願牧野良三紹介)(第五六二号) 七一 同(徳田與吉郎紹介)(第七三三号) 七二 予備保母費に関する請願牧野良三君紹    介)(第五六三号) 七三 下水道行政一元化等に関する請願牧野    良三紹介)(第五六四号) 七四 国民保険に対する国庫補助増額等に関する    請願牧野良三紹介)(第五六五号) 七五 生活保護法に基く支弁経費全額国庫負担の    請願牧野良三紹介)(第五六六号) 七六 豊平町の保護施設補修工事費国庫補助に関    する請願岡本隆一紹介)(第七〇三    号) 七七 豊平町の低所得者収容施設改修費国庫補助    に関する請願岡本隆一紹介)(第七〇    四号) 七八 馬丁の身分確立並びに労働法規等完全適    用に関する請願吉川兼光紹介)(第七    〇五号) 七九 旅館従業員に対する健康保険法等の一部改    正に関する請願五島虎雄紹介)(第七    〇六号) 八〇 同(戸叶里子紹介)(第七〇七号) 八一 同(八木一男紹介)(第七〇八号) 八二 同(櫻井奎夫君紹介)(第八一四号) 八三 同(辻原弘市君紹介)(第八一五号) 八四 旅館従業員に対する労働基準法完全施行    に関する請願五島虎雄紹介)(第七〇    九号) 八五 同(辻原弘市君紹介)(第七一〇号) 八六 同(八木一男紹介)(第七一一号) 八七 同(滝井義高紹介)(第八二二号) 八八 健康保険法の一部改正に関する請願山花    秀雄紹介)(第七二三号) 八九 国民健康保険法の一部改正に関する請願(    山花秀雄紹介)(第七二四号) 九〇 結核医療費全額国庫負担に関する請願(山    花秀雄紹介)(第七二五号) 九一 同(滝井義高紹介)(第八二〇号) 九二 完全給食及び完全看護加算額引上げ等に関    する請願山花秀雄紹介)(第七二六    号) 九三 国立病院療養所賄費増額に関する請願    (山花秀雄紹介)(第七二七号) 九四 同(滝井義高紹介)(第八二一号) 九五 生活保護法の一部改正及び生活基準額引上    げに関する請願山花秀雄紹介)(第七    二八号) 九六 無医村解消に関する請願山花秀雄君紹    介)(第七二九号) 九七 社会保険による診療報酬の点数及び単価改    訂に関する請願山花秀雄紹介)(第七    三〇号) 九八 日雇労働者賃金引上げ等に関する請願(    高瀬傳紹介)(第七三一号) 九九 同(横山利秋紹介)(第七三二号) 一〇〇 動員学徒犠牲者補償に関する請願(永    山忠則紹介)(第七三四号) 一〇一 引揚者等給付金法事務取扱緩和に関す    る請願池田清志紹介)(第八一〇号) 一〇二 医療制度に関する請願池田清紹介)    (第八一一号) 一〇三 衛生検査技師身分法制定に関する請願    (小島徹三紹介)(第八一二号) 一〇四 同(山村新治郎君紹介)(第八一三    号) 一〇五 戦争犠牲者の保障に関する請願滝井義    高君紹介)(第八一六号) 一〇六 生活保護予算増額等に関する請願滝井    義高紹介)(第八一八号) 一〇七 生活困窮者に対する年末特別扶助に関す    る請願滝井義高紹介)(第八一九    号) 一〇八 医業類似行為既存業者業務存続に関す    る請願稲富稜人君紹介)(第八二三    号) 一〇九 同(大平正芳紹介)(第八二四号) 一一〇 同(清瀬一郎紹介)(第八二五号) 一一一 同(島上善五郎紹介)(第八二六    号) 一一二 同(松本七郎紹介)(第八二七号) 一一三 災害救助法の一部改正に関する請願(池    田清志紹介)(第八四九号) 一一四 旅館従業員に対する健康保険法等の一部    改正に関する請願岡本隆一紹介)(第    一〇七六号) 一一五 旅館従業員に対する労働基    準法の完全施行に関する請願岡本隆一君    紹介)(第一〇七七号) 一一六 同(戸叶里子紹介)(第一〇七八    号) 一一七 労働基本権回復に関する請願石橋政嗣    君紹介)(第一〇七九号) 一一八 同(山本幸一紹介)(第一〇八〇    号) 一一九 衛生検査技師身分法制定に関する請願    (竹内俊吉紹介)(第一〇八一号) 一二〇 国民障害年金制度創設に関する請願(橋    本龍伍紹介)(第一〇八二号) 一二一 動員学徒犠牲者補償に関する請願(高    津正道紹介)(第一二七〇号) 一二二 医業類似行為既存業者業務存続に関す    る請願永田亮一紹介)(第一二七二    号) 一二三 陸中海岸国立公園指定地域拡大等に関す    る請願山本猛夫紹介)(第一二七三    号)     —————————————
  2. 藤本捨助

    藤本委員長 これより会議を開きます。  八木一男君外十五名提出公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案及び八木一男君外十五名提出地方公営企業労働関係法の一部を改正する法律案の両案を一括議題とし、審査を進めます  まず両案について、それぞれ提案者より趣旨の説明を聴取いたします。横山利秋君。     —————————————
  3. 横山利秋

    横山委員 私は日本社会党を代表して公共企業体等労働関係法及び地方公営企業労働関係法の一部を改正する法律案提案理由並びに内容の大綱を御説明申し上げたいと思います。  公共企業体等労働関係法いわゆる公労法改正案提出いたしました第一の理由は、憲法上の立場であります。憲法第二十八条では労働者団結権団体交渉権団体行動権が保障されております。従って労働法はこの労働基本権を基盤にして制定されるべきものであり、また理解されなければなりません。しかるに公労法第十七条の争議行為禁止条項労働者団体行動権を全く無視したものであり、第八条は団体交渉権を制限し、第四条のオープンショップ制並びにカンパニーユニオンいわゆる逆締めつけ条項団結権すら制限しておるのでありまして、公労法はまさに憲法違反疑いがある法律であります。従って憲法違反疑いがある条項を改廃し、公労法を真の労働法といたしたいのであります。  第二の理由は、国際的見地からの理由であります。英、独、仏、伊等近代的資本主義諸国の例を見ましても、労働者権利を一方的に制限し、否認している国はほとんど見当らないのであり、その意味で現在の公労法のごとき悪法を持っているわが国近代国家としてこれを恥としなければならないとわれわれは考えるものであります。特にILOすなわち国際労働機構日本公労法について、結社及び団結権の自由に関する条約との矛盾について指摘しようとして条約批准を求めていることを深く考えまして、迅速に公労法改正する必要を痛感する次第であります。  第三の理由は、公労法制定の沿革を顧みました歴史的見地からであります。公労法制定当時の絶対的な占領権力をてことして作られたものであることは皆様の十分御承知通りであります。戦後の労働運動は、組織化の比較的容易であった官公庁関係労働組合がその先頭を切っておりましたが、戦前のはなはだしく低い労働条件を当然あるべきところまで急速に引き上げなければならない状態にありました。加えて、大衆生活は極度に窮迫し、特に極端に悪かった食糧事情、急激なインフレーションの進行は、労働者をどたんばに追い込んだのでありまして、こうした背景における労働運動がラディカルな傾向をとったことは自然の成り行きでありました。一方二十一、二年ごろから米、ソの対立緊張が高まって参り、当時の労働運動占領当局共産主義の扇動によるものと断じ、占領政策の遂行を阻害するものとして弾圧を考えたものであり、そのほこ先は官公庁労働者に向けられたのであります。マッカーサー書簡、政令二百一号は右のように当時の特殊な国際情勢労働情勢によったものであり、これにより国家公務員法大幅改正地方公務員法公労法制定がなされたわけであります。御承知通りわが国の現状は当時に比べて国際、経済・労働の各面において一変しているのでありまして、当時公労法等制定あるいは改正に賛成された方々も、当然これらの法律憲法第二十八条の精神に見合う改正を促進されるべきであると考えるものであります。ことに独立を完成した今日、占領国アメリカ特に米、ソ対立の最も激しかった時代のアメリカの示唆に基く悪法をそのままにしておくのは、まさに国の恥というべきであります。  かかる観点からわれわれは国家地方公務員公企体等並びに地方公営企業労働者労働基本権確立されるべきであると主張するものでありまして、この意味でまづ公労法地公労法改正案国会提出したのであります。  次に第四の理由は、この悪法の非常なる欠陥から来る混乱をなくしたいという具体的見地からであります。公労法わが国事情の全く異なっているアメリカの習慣や政策をそのまま持ち込んだものであって、法そのものとしてもまことに粗雑きわまる法律であります。その結果、法の運営に当っては、解釈をめぐって労使はもとより、国会においても絶えず紛争が続いております。特に労働基本権を否認、制限したことに見合う代償としての仲裁制度に、尽き果てることの知らない紛争が続くことになったのであります。すなわち例を国鉄仲裁裁定実施状況に見ますると、昨年までになされた賃金の改訂についての裁定のうち、完全実施されたことはただの一回もないのであります。このため国鉄労働者裁定実施を要求してどうしても戦わざるを得ない立場に追い込まれておりまして、基本権を剥奪されたまことに不利な状態において、法律のワク内でいわゆる順法闘争という抵抗をいたしておりますのに対し、最近の石田労政は、法律を守ることが違法であるというような三権分立を侵した行政解釈を出してこれを弾圧するという、まことに言語道断なやり方をいたしておるのでありまして、公労法の誤まりからくる紛争は果てしなく続いているのであります。この意味で、断じて急速に同法の誤まりを改めなければならないと信ずるものであります。  第五の理由は、民主政治の当然のあり方である世論の重視の見地からであります。先ほど申し上げましたように、現在のこぢれ切った労使紛争を正常なルールに戻したいという世論が急速に高まって参りました。すべての労働者労働基本権確立をスローガンに掲げているのは御承知通りであります。東西の労働法学者や、その他多くの識者達はあげて公労法改正を主張していることは最も重視されなければならないと考えます。巷間公労法改正反対の声が絶無とは言えませんが、これは労働問題の本質を知らない人たちが、労働者弾圧のためにする悪宣伝に迷わされたのがその原因でありまして、労働運動の実状、改正案の真意が理解されて、その声は急速になくなるものと確信をいたす次第であります。  以上のような理由のもとに本改正案提出したわけであります。従って、その内容公共企業体等労働者労働基本権確立し、その当然の生活権を擁護しようとするものであります。数年間の紛争状態を顧みますと、紛争を短期かつ円滑に処理するには労働者基本権を、公企体等自主性を付与し、公正な社会世論のもとに団体交渉を行うことが必要であると信じます。基本権確立によって罷業行為による大衆の迷惑を極端に心配される方がありますが、その心配は杞憂にすぎないことは、私鉄争議がきわめて短期間に終息していることを想起していただけば明白だと信じます。今日政府の行なっている束縛と弾圧のもとでは、紛争がいたずらに長期かつ陰性となるのみで、真の解決はないのでありまして、正しい労使関係紛争の円滑迅速な処理は相互の権利と責任を明確に尊重する中に生まれるものと考えるものであります。この意味で、本改正案紛争を少くかつ短期間にする目的を持つものであることを特に申し上げておきたいと存じます。  次に改正の要点を申し上げます。生ず第十七条並びに第十八条を削除して、労調法適用することであります。現行法では十七条において争議行為禁止、十八条において争議行為を行なった場合の解雇が規定されているのでありまして、前に繰り返し申し上げた理由によって削除いたすことにしたのであります。  次に、第十六条並びに第三十五条の改正であります。この二つの条文は公共企業体等予算上、資金上の支出内容とする協定裁定政府を拘束するものではないことが規定されております。このように立法が行われた理由として、公企体政府全額出資公法人であるごとに根拠を求めようとする説もありますが、公法人たることと協定効力を制限することは、理論的に何らの必然的な関連を持たないものであります。現に、日本開発銀行、国民金融公庫、中小企業金融公庫輸出入銀行等はいずれも政府全額出資公法人でありますが、その労働協約については、何ら本法のごとき規定は設けられていないのであります。特に、三公社職員雇用関係は、原則として私法上の関係であり、三公社予算国家予算ではありません。三公社職員との給与の支払いを内容とする協定によって、公社私法上の債務を負うのであり、これが国家予算見地から実質上、その効力が制限されるというのは、私有財産を保障した憲法第二十九条違反疑いさえないとは言えないのであります。かかる理由からして、予算上、不可能な資金支出内容とする協定が締結された場合、政府協定履行に必要な予算国会提出する義務を負うこと、もし国会が承認するに至らない場合は、債権債務関係が存続し、政府は繰り返し提出する義務を負うことを明確にすべきであります。よってこのような趣旨に改めるわけであります。  次に、第四条、第八条を削除して労組法適用するよう改める点であります。第四条はその第一項においてオープン・ショップ制規定し、その第三項において、いわゆる逆締めつけといわれるカンパニーユニオン規定を設け、職員以外は組合員になれないとしており、世界にその例がない方法をもって労働組合団結権を侵害しており、また第八条は団体交渉権を制限しておりますので、これを削除し、労組法によるべきものとしたのであります。  次に第三十二条を改正し、強制仲裁をなくして任意仲裁のみにいたすことにいたしました。自主解決を建前とする考え方から当然であると信じます。  また第四十条の改正により、本法適用を受けている五現業職員の、国家公務員法によって制限されている政治活動の自由を保障しようとしているのでありまして、当然なさるべき改正と信じます。  さらに第一条の規定労働基本権を認める立場に立って、その制約主義を排し、簡潔かつ公正なものに改めたほか、各条項に適正な改正をしようとするものであります。  次に、地方公営企業労働関係法の一部を改正する法律案でありますが、改正趣旨及び内容は、公労法改正とほぼ同様であります。  改正の要点は、まず争議行為禁止し、争議行為をした職員を解雇することを規定した第十一条及び第十二条を削除して、労組法労調法の手続に参加せしめ、救済を受けるようにしたのであります。  次に、第十条を改正して、予算上、不可能な資金支出内容とする協定が結ばれた場合、地方公共団体の長は、協定履行に必要な予算を議会に提出する義務を負うこと、もし議会が承認しない際は、協定効力は存続し、地方公共団体の長は、繰り返し予算提出する義務を負うことを明確にすべきであります。  次に、第五条、第七条を削除して、オープン・ショップ規定、逆締めつけ規定団体交渉の範囲制限をなくすべきであります。  内容の御説明は、時間の関係上これだけにとどめますが、これを要するにこの改正案は三公社五現業及び地方公営企業労働者労働基本権確立し、正しい労使関係の上に立って、労働争議の迅速かつ公正な調整をはかるごとによって公共の福祉を増進、かつ擁護する目的を持っているわけであります。何とぞ各位にはこの趣旨に御賛同あって、慎重に御審議の上、最もすみやかに御可決あらんことを心からお願い申し上げる次第であります。     —————————————
  4. 藤本捨助

    藤本委員長 八木一男君外十五名提出の、国又は地方公共団体失業対策事業のため雇用した職員に対する期末手当に関する法律案を議題とし審議を進めます。  まず提出者より趣旨説明を聴取することにいたします。山花秀雄君。     —————————————
  5. 山花秀雄

    山花委員 私は日本社会党を代表して、ただいま議題に相なりました国又は地方公共団体失業対策事業のため雇用した職員に対する期末手当に関する法律案について提案理由並びにその大綱について御説明申し上げます。  石橋内閣が完全雇用を唱え、岸内閣がこれを引き継いでから一年近くになりますが、から宣伝だけで何一つ裏づけがなく、かえって臨時工社外工の首切り、駐留軍労働者の首切りによって失業者が増大していることはまことに嘆かわしいことであり、保守内閣の大きな公約違反と言わなくてはなりません。膨張した昭和三十二年の予算においても、冷酷な政府によって、他の費目がすべて増大した中において失業対策費のみが減少しているような状態であり、従って失対事業に働く人たちの支給単価は三〇六円、就労平均は月一十一日のわずかなものであって、多くの家族をかかえて、その生活は実に窮迫したものであります。そのために失対労働者の人々は賃金の引き上げ、就労日数の増加、日雇い失業保険制度、日雇い健康保険の改善を強く要望しているわけでありますが、特にどうしても金の必要な年末、年始あるいは盆のために、期末手当の増額と有給休暇の実施並びに期末手当生活保護の差引を行わないことを熱望しているのであります。本法律は、この年末、年始あるいは盆のための失対労働者の当然な要望にこたえるために立案、提出をいたしたわけであります。  その内容は、一言にして申し上げますれば、国の雇用した失対労働者に対し、盆には賃金日額の十倍、暮には十五倍を国が支給すること、地方公共団体がその雇用した失対労働者期末手当を支給する場合、盆には賃金日額の十倍、暮には十五倍のそれぞれ八割を国が地方公共団体に補助することであります。今までも期末手当は就労日数の増加という形で支給されてきたのでありますが、その金額が小額であるので引き上げる必要があり、さらに法律的に明確にすることがよいと考え、本法案を提出したわけであります。     〔委員長退席、大坪委員長代理着席〕  なお有給休暇の要望は至極当然、妥当と考えるものでありますが、法律上は期末手当に包含するのが当然と考え、本法案の金額にその配慮をいたしておるのであります。  なお本法案実施に要求する経費としては本年度約十三億の見込みであります。  何とぞ委員各位には慎重御審議の上、生活に苦闘する失対労働者並びにその家族のため、一日も早く御可決あらんことを切望申し上げる次第であります。
  6. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 以上で三法案の趣旨の説明は終りました。なお三案についての質疑その他につきましては後日に譲ることといたします。     —————————————
  7. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 次に労使関係労働基準及び失業対策に関する件について調査を進めます。  この際、委員長より政府にお尋ねいたしておきたいと思います。御承知のように国家公務員に対しては、先般年末手当として〇・一五の加増をすることに御決定になったのでありますが、日雇い労務者に対しての年末の処遇は、従来ともそれぞれ国家公務員に見合っての措置がなされたのでありますが、本年末における日雇い労務者に対するさような処遇について、政府はどういうようにお考えになっておるか、この際労働大臣から、御意向並びにその処置方法についてお答えを願いたいと思います。
  8. 石田博英

    石田国務大臣 日雇い労働者諸君の年末手当の問題につきましては、単に一般公務員の年末手当の増額に見合うだけでなく、その非常に同情しなければならない生活条件その他を考慮に入れまして、でき得る限りの措置をとりたいと思いまして、折衝を重ねて参ったのでありますが、本年度は前年の七日に一日加えまして、八日分支給するということに、関係各省との間に話し合いが成立いたしまして、そういう処置をとりたいと思います。  なお詳細につきましては失業対策部長その他から御説明いたさせます。
  9. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 時期等について、遺漏なく御処置をなさることを御希望申し上げたいと思います。  質疑の通告がございますので、これを許します。中原健次君。
  10. 中原健次

    ○中原委員 先日の質問に続きまして、もう二、三点御答弁を得たいと思います。  ただいま委員長からの質問で明らかになりましたように、公務員並びに職安のいわゆる日雇い労務者に対する年末の処置は、政府としては大体決定を見ておいでになる様子であります。しかしながら、その決定が実はかなり問題があるわけでありまして、むしろ今日の物価の万般の状態、あるいは雇用関係から見まして、公務員に関する場合にも、日雇い労務者に関する場合にも、さらに一段の努力と実行の決意が必要だ、そういうふうに私考えておる。その問題について、一般的なことはお尋ねしませんが、特に日雇い労務者の場合、いつもこれは引っかかる難点でありますけれども、せっかく年末手当の支給を見ましても、すぐ問題になるのは、生活保護の諸君がたくさんおる、この問題です。もちろん厚生省との関連がありますけれども、労働省としてやはり積極的な対策を持っておいでになり、かつその解決のための努力を払わなければ実は意味がないと思うのであります。今さら議論する必要はないのですが、かりに年末手当をもらっても、その金額が生活保護費から差し引かれるということになって参りますと、結論はもらったことにならないという状態が起ってくるわけでありまして、実は今から数年前、この問題について厚生省、労働省の間で、かなり積極的な動きがいささかあったわけでありますけれども、いつのまにかそれが消えてしまっておるのでございます。このことは、やはりあくまでも熱意を強く傾けて、妥当な処置のできるように、両省の間で努めなければならぬ、こう思うのです。この問題について石田労働大臣はどう考えておいでになるか、見解を承わっておきたいと思います。
  11. 石田博英

    石田国務大臣 せっかく手当が増額されても、生活保護の対象者がその分だけ生活保護費から引かれるようになれば、実質上の収入にはならないというのは御指摘の通りでございますが、すでに現在では、勤労収入の一定額を生活保護費から事前に控除するという措置をとっているのでありますが、なお引き続いてそういう事態改善のための努力はいたさせたいと思っております。
  12. 中原健次

    ○中原委員 努力はいたしたいというのでは、ちょっと困る。努力ではなくて、年末手当というものは、当然これは年始の、あるいは年末の充当資金であります。それを差し引かれたのでは意味がない。この問題はどうでしょうか。ただ努力したいと思うというのでは困るのであって、どうすべきだという決意が必要だと思う。
  13. 石田博英

    石田国務大臣 私どもの方だけで処置できることではないから、他の関係省との折衝について努力をいたしたい、こう言っておるわけであります。
  14. 中原健次

    ○中原委員 もちろん相手のあることは、はっきりいたしておりますが、しかし労働省としては、少くともこの問題は実現を期さしめるということの決意を持たなければならぬ。そういう決意の中で関係省との折衝をするということでなければ、単なる努力という言葉は、しばしば経験するように、これは空に消える場合が多いのです。そのことを気づかうから私は申し上げておるわけであります。単なる努力という程度で済ますのではなくて、労働省としては、何でも実現させなくてはやまないというくらいの決意が必要だと思う。きょう、ほんとうならば厚生省に来てもらう方がよかったのですが、いずれにしても労働省としては、あるいは労働大臣としては、これに対してどのような積極的な意思を持つか、そうしてそれを実行するための努力を傾けるかということ、これをもう一度伺いたい。
  15. 石田博英

    石田国務大臣 労働省といたしましては、労働者諸君の生活の向上のために、常に間断なくその条件の改善に努めるべき義務があるのでありますから、その努力は、もとよりその方向に向って実現を期するということでございます。
  16. 滝井義高

    滝井委員 ちょっと今の点に関連して。今の生活保護という、日雇い労務者の年末手当の問題は、実はきわめて重要な問題なんです。労働大臣としては、労働省としてできる範囲の御努力をしていただくことになることは、今の御答弁でわかったわけですが、実は現在消費、者米価が上ったわけです。従って消費者米価の上った分について日雇い労務者の賃金が上ったわけです。同時に、一方においては生活保護費の、消費者米価が上った分の引き上げが行われたわけです。両方行われた。従って生活保護の対象者で日雇いに出ておる者は、二重に米価の引き上げの恩典を受けておるわけです。従って、一方どっちかだめになってくるわけです。どっちがだめになるといっても、賃金の方はだめにならないが、生活保護費の方はだめになってくるわけです。ちょうどそれと同じことが、今のこの場合にいえるわけです。従ってこれをやろうとするならば、今行政措置でできる範囲というのは、結局厚生省が生活保護の部面では、約千五百円を多分二千円くらい、今度は年末手当的なものを生活保護者にやる考え方をもって、行政措置ではやることになっております。がしかし、実際に今度日雇い労務者諸君のもち代というか、年末手当的なものがだんだんふえていきますと、そういうわけにはいかなくなってくるのです。ある限界にいきますと。どうしていかなくなるかというと、これは大臣も御存じのように、生活保護は基準というものがきちっときめられておる。生活保護法の八条で、最低生活の基準がきめられておるわけです。そこで年末に、その上に、基準をこえて二千円とか三千円の日雇い労務者の年末手当をもらってくると、このボーダー・ライン層というものがたくさんあるわけです。従ってボーダー・ライン層よりか、日雇い労務者で生活保護を受けている者のもらった総額の方がふえてくるということで、当然このボーダー・ライン層との関係が問題になってくるわけです。そうしますと、これはある限界までは行政措置でやっていけるけれども、一定の限界をこえると生活保護法の基準の問題に、今度反射的に反映されていく形になるわけです。そこで、どうしてもこれは生活保護法を変えなければならないという状態にぶち当ってくるわけです。実は私は昨日その問題について、一応厚生当局の見解を尋ねたのですが、厚生当局としては、行政的な措置としては二千円程度ことしは引きたいと、こういうことです。それ以上は出ないのです。従って今後は、日雇い労務者諸君が年末手当をもらい、それを一つの足場として、さらに自立更生の道を歩む、生活保護から脱却するというためには、もらったそのお金がたちどころに、生活保護費の中から引かれることのないような法律上の措置を講ずる必要があると思うのです。そういう点、一つ生活保護法の基準の改訂の問題、憲法第二十五条にいう健康で文化的とまではいかなくても、まあまあ健康な最低生活くらいは得させる形に、大臣として、一つ厚生当局と具体的な話し合いを事務当局にさせるように私はやってもらいたいと思うのですが、大臣としての御所見を承わっておきたい。
  17. 石田博英

    石田国務大臣 承知いたしました。
  18. 中原健次

    ○中原委員 なお自由労働者の問題については数々ありますが、ただいま社会党から提案されました年末手当の問題と関連して、質問を重ねたいと思います。自由労働者を作り上げる母体になる大きな一つの原因に、臨時工という問題がある。臨時工問題というのは、御承知のように、職安法の施行から後に組制度が否定されて、直接人夫雇用、直用という状態が生まれてきた、そういうところから臨時工問題は非常に盛り上ってきたということは御承知通りです。なお朝鮮動乱という問題があった。朝鮮戦争が起って、臨時工というものはあのときに非常に合理化されて、続々と盛り上ってきた。それと駐留軍労務者と、そういう関係がずっと関連してくると思うのですが、そこで臨時工の現状です。一体現状はどうなっているか、政府ではどういうふうにつかんでおいでになるか、これを一つ伺いたい。
  19. 堀秀夫

    ○堀説明員 臨時工につきまして、その正確な雇用状況はまだ基本的な調査がございませんけれども、総理府の就業基本調査によりまして、現在の臨時労働者及び日雇い労働者の数を見てみますと、昨年におきまして約百九十五万となっております。この中の大部分がいわゆる臨時工に該当するのではないか、このように考えておるわけでございます。これは全労働者の約一一・一%に相当しておりまして、産業別に見ますると鉱山業、建設業におきまして、その雇用率は高く現われておるのでございます。
  20. 中原健次

    ○中原委員 そこで百九十五万の人々が主として臨時工として考えられる。実態はもう少し違うと思いますが、そんな議論はいいと思います。いずれにしましても、そういう大量の臨時工が、ほんとうに厳密な意味における臨時工であろうかどうか。これは政府としてどういうふうにつかんでおられるか。臨時工だから臨時工だ、こういう御理解なのか、もう少し違った臨時工の様相があるのではないか。この点はいかがです。
  21. 堀秀夫

    ○堀説明員 臨時工と申しましても、いろいろ種類があると思いますが、その中におきまして特に問題になりますのは、その働く状態が実質的に常用工と変らないにもかかわらず、その雇用の形式あるいは雇用主体が変っておりますために労働条件が低い、このような者が問題になるのではないかと思うのであります。  そこでこれらの問題につきまして労働者といたしましては、労働法規の適用につきましては、たとえば基準法の二十条の解雇予告の問題等につきましても、あるいはそのほかの規定適用につきましても、実質的に内容が常用工と相違のないような者につきましては常用工並みに取り扱う、このような方針をとっておるわけでございます。
  22. 中原健次

    ○中原委員 いわゆる臨時工の名における人の解雇の場合の取扱いが基準法二十条によって処理されているということは、そういうこともないとは申しませんけれども、しかしそれはきわめて例少に属する。果して基準法をうしろだてとして処理せしめるというきつい方針があるかどうか、それを一応伺っておきたい。
  23. 堀秀夫

    ○堀説明員 常用的なものにつきましては、ただいま申し上げましたように、労働法適用について努めて常用工と同じように取り扱っておりますし、ただいまお話のありました点につきましては、基準法二十条につきましては二十一条によって、臨時日雇いの形でありましても、実質的に雇用期間が一月以上に及ぶというようなものは常用工並みに取り扱う、このような法律の根拠もあるわけでございます。
  24. 中原健次

    ○中原委員 その問題についてはかなり議論があると思います。そう単純には割り切りがたいと思いますが、そのことは、きょうは時間がないそうですからよろしい。  いずれにしましても、そういう形で出てくる、二百万に近いことを認識される臨時工の中で、私どもは実情を現場で承知しているのですが、一なら一年という期間を置いてそれを繰り返しているのが実情です。その繰り返しは五年に及び、八年に及び十年に及ぶ、これは全く常用工なんです。だからそれは単なる雇用の場合の二十条適用というようなことで事が済まぬような条件があると私は思う。その問題をそのままに見過していいのかどうか。政府の方では、ややともすると法的な措置でこれを何とか合理化するようになさると私は思いますが、しかしこの問題は、もうそういう課題に上っているのじゃないか、また上らなければならぬのじゃないか、こう考える。そのことについて大臣、いかがですか。
  25. 石田博英

    石田国務大臣 臨時工社外工は、御指摘のように、またただいま御説明いたしましたように、相当多数の人数に上っておりますし、その雇用の安定性あるいは待遇等につきまして、いろいろの問題をはらんでおりますので、これについて何らかの解決策を研究なる段階にきている、研究しなければならないと存じている次第であります。
  26. 中原健次

    ○中原委員 研究はけっこうでございます。しかしながら、もう研究では実は済まぬのです。もう対策を立てなければならぬ。しかもこれは街頭にあふれているのです。臨時工の首切り問題というのは思想のいかんではないのです。こういう現実は何とかして処理しなければならぬという時期に直面していると考えます。従って、大臣は研究しなければならぬとおっしゃったが、さらに一歩を進めていただきたい。研究ではなくて、どう処理するかということについて、処理の具体性を打ち出していただきたい。このことを私は希望しておきます。  この臨時工の首切りというものは、最近特に顕著なんですが、その首を切られた人々の処理対策、その首切られた人を政府はどうしようとしているか、どこへどう向けようとしているか、これはやはり具体的な問題ですから、具体的に方策を持っておいでになると思いますが、少くともこの機会に明らかにしておいていただきたい。
  27. 石田博英

    石田国務大臣 これはやはり一般の失業対策の一環として処理しなければなりませんが、一般の失業対策といたしましては、一面におきましては失業対策事業あるいは公共事業の繰り上げ実施等によりますとともに、先般来各方面で申しております職業訓練制度を積極的に実施いたしまして、こういう人たちに技術を与えて、雇用の安定をはかるという方法をとって参りたいと思っている次第であります。
  28. 中原健次

    ○中原委員 それから、その問題は一応これで預かっておきまして、詳しいことはあとにするといたしまして、さらにここで問題にいたしたいのは賃金の問題なんです。臨時工賃金と常用工の賃金の格差といいますか、そういうものは、どういうふうに見ておりますか。
  29. 大島靖

    ○大島説明員 常用の労働者と臨時の労働者賃金の格差について、直接それを表わした表はございませんが、ただ規模別の格差等によって推定いたしますと、かなり常用に比べまして臨時の方が大きく、かつ最近に至りましても年々格差が比較的大きくなってきている、こういう状況にございます。
  30. 中原健次

    ○中原委員 年々その格差が開きつつあるということは、なおさら重大なんですね。常用と臨時との格差がずっと開くということは、少くとも臨時の諸君が健康どころか、食べられないというところに追い込まれているということを裏づけしていると私は思うのです。これは政府立場で考えられても、どうにもならぬ現状なんですね。それはわかる。しかしながら現在日本の経済状態から考えて、どうにもならぬというところに、私は政治の任務があると思う。どうにもならぬから、どうにかしなくちゃならぬじゃないか、こういうことになるかと思うのです。従って政府としては、そういう実情を見のがすわけにいかないのではないか。見のがすわけにいかないとすれば、何とか対策を持たなければならぬ。従ってこの点に関する御所見——単に所見というのでは困るのですが、御方針を聞かしていただきたい。
  31. 大島靖

    ○大島説明員 臨時日雇い労働者賃金そのものは、年々上昇はいたしております。ただそれが常用労働者賃金の伸びに比べますと若干下回っておる、こういう状況で、年々上っておることは上っておるわけであります。
  32. 中原健次

    ○中原委員 それはもちろんそうです。ただ上り方のテンポが違うわけです。従って開くのです。  そこで、私今計数を持ってきておりますが、これは関西経済団体協議会の統計です。われわれの統計じゃないのです。その統計で見ましても、平均でこういうのが出ております。これは総平均です。金属、機器、化学、窯業、繊維、食品、印刷、運輸、金融、サービスその他一般というようなものをここへ全部羅列して、それぞれこまかく書いてありますが、それを総平均したもので、上から下まで全部入ることは入るのですから、部長、課長というものも入っての金額なんですが、常用の場合が二万一千八百五十三円で、臨時の場合が一万一千九百四十八円、これは男子です。女子の常用の場合が一万九百九十二円、臨時の場合が六千八百三十円である。そうしますと、パーセンテージで見ると、男子の方では常用に対して臨時の場合が五四%、それから女子の場合は常用に対して臨時が六二%というような数字が出ております。これは関西経済団体協議会の統計ですから、まずどう考えてもこれは一大事だと思う。そこで、そういうような距離をなくすることが原則ですが、そう簡単に、一ぺんにそこまでいくとは私は思いません。そこで、これをどういうふうにして押し上げていくか、つまり臨時工の給与を押し上げていくかという問題なんです。これは一つ積極的に当局の方で考えていただかないと、このままでは臨時工は、飢餓線上という言葉がありますが、まさに飢餓線上をさまようことになってしまう。しかも、それにかてて加えて臨時なんですから、あすの日は保証されておらぬということです。一年なり、二年なりそれを繰り返して、総計十何年おる人は、多少の安定を予想することはできますけれども、それであっても、あくまで臨時ですから、これは一大事だと思う。そこで、こういうような諸問題をひっくるめて、政府当局としてはどうしようとしておるのかということなんです。
  33. 大島靖

    ○大島説明員 お説の通り常用労働者と臨時日雇い労働者との間に、かなりの賃金の開きがあることはその通りでございますが、ただ常用労働者と日雇いないし臨時労働者のやります仕事につきましては、量なり、質なりにかなりの差があるわけです。従って全般的に比べますと、ある程度の格差が出る、これはやむを得ないのじゃないかと思うのであります。ただその差があまりはなはだしくなって参りますと、もちろんその点につきましては考慮を要する点でございますし、また相なるべくは、仕事の同じようなものにつきましては、臨時の労働者という形でなしに、常用の形で雇っていく、こういうような形が望ましいということはもちろんであります。
  34. 中原健次

    ○中原委員 望ましい、もちろんそうです。しかし政府の政治的な感度、方針、あるいは具体的な所見というようなもの、これは一つ大臣から……。
  35. 石田博英

    石田国務大臣 賃金格差の問題は、臨時工と常用工との関係だけでなく、やはり企業の規模別の賃金格差の問題も、同様な観点から考えなければならぬと思うのでありますが、これはたびたび申し上げまするように、法律としては最低賃金制の実施というようなことで手がけて参りたいと思っておるわけでございます。しかしそれ以上の問題になりますると、結局その企業と労働者との間の分配の問題になりまするので、これはやはり臨時工社外工の制度について、そういうものが存在しておる現状についての対策は、先ほど研究と申しましたが、研究ではなくして、積極的に具体的な対策を考えたいと思っておりまするが、賃金の問題は、ただいま大島説明員が申しましたように、それ以上の問題はやはり当該労使双方の関係において処理されていくこと、そして格差のないように処理されることを政府としては希望しているわけであります。
  36. 中原健次

    ○中原委員 希望、もちろんわかりますが、これは希望では片づかぬわけです。今申しますように、五十数%というようなところまでしかいっていない。多くても六〇%ほどのところまでしかいっていないという状態なんですから、これはただ希望というようなゆるやかな態度ではどうにもならぬ。これはやはりそういうような点から、大臣も言われたが、最低賃金制定という問題が当然登場してくるわけです。このことについては、政府なり与党の方々も野党の諸君も、みんな同じように、何とかしなければならぬというところまできておることはわかるのですが、しかし最低賃金法の制定の基本的な考え方にかなり問題がある。先日もちょっと申しましたように、業者間協定というものがかなり重要視されておるというような状態で、その重要視された感度で決定された最低賃金制というものが、果してそのことを処理するに役立つか、せっかくできても、最低賃金法というものはむしろ低賃金政策を裏づけするものになってしまうのではないか、私どもそう思う。そういうことでは、たとえば格差を考えても、これはとんでもない、志と事が違ってくるのじゃないか。志と事が違ってくるような処理を今さらなされるのは、あまりにも愚かに近いから、そういうことをなさるとは思いませんけれども、今の最低賃金法に対する政府の考え方を伺ってみれば、やはりそういうようなところに結論づけられてくるわけです。これはいかがでしょうか。そうでないとすれば、そうでないことを明らかに聞かしていただきたい。
  37. 石田博英

    石田国務大臣 最低賃金法についての政府の考え方を伺ってみればとおっしゃいますが、政府の考え方は、伺うも伺わないも、まだ申したことはあり、せん。政府が基本的に申しておりまするのは、ILOの議決を尊重いたすという建前に立って、案の内容についてはただいま中央賃金審議会に諮問中でございます。その中央賃金審議会に諮問中の事柄について、政府がとやかく先に言うことは、民主的に検討を願うべきものに対して影響を与えることになりますので、これは避けておるという段階でございます。ただ現在実施をいたしておりまする業者間協定に基きます最低賃金制の実施、これは決して今おっしゃったような最低賃金のくぎづけにはなっていないのでありまして、ただいままで実施せられましたものは全体として約一〇%の賃金増になっておるのであります。具体的な資料は基準局長から説明をいたさせます。
  38. 堀秀夫

    ○堀説明員 業者間協定の実施につきましては、これは本年の二月に、労働者委員の代表を含みます労働問題懇談会の労働大臣に対する意見書に基きまして、現在実施をしておるわけでございますが、現在までにこの適用になりまして実現を見ましたものは約四つございます。そのうち第一の神奈川の手捺染業につきましては、これは新制中学出の満十五歳の女工さんの最低初任給を、基本日給一日二百十円といたしたのであります。これは従来百八十円程度であったものに比べて、一割五分ないし二割程度の賃金の上昇になっておるわけでございます。次に、第二番目の和歌山の新宮の鉄工業の最低賃金協定については、やはり満十五歳の初任最低日給を百八十円といたしたのでありますが、従来の百五十円ないし百六十円に比べて、やはり一割五分程度の増額になっております。三番目の境港地区の塩ほし魚製造業の最低賃金協定につきましては、これは一時間当りの基本給を最低初任給二十四円といたしたのでありますが、従来の二十円ないし二十三円に比べて、やはり一割程度の増額になっております。四番目の桐生地区の絹、人絹織物業の協定につきましては、これはまだ正式に結ばれておりませんが、理事会でそのように決定いたしまして、目下正式に締結さるべく準備中のものでございまするが、これは織布工の最低初任給を一日百六十五円といたしております。これは従来の百四十円ないし百四十五円から比べまして、約一割五分程度の上昇である、このような状況でございます。
  39. 中原健次

    ○中原委員 一応参考実情報告は拝承いたしました。この最低賃金制の問題に関しましては、かなり議論のあるところでありまして、きょうのような忙しい空気の中ではちょっとできにくいので、いずれ私も相当にやりたいと思っておりますので、一応これは省略いたします。従って問題を残しておきますから、了承はいたしておらぬわけです。  そこで、もう一点だけでやめますが、私聞きたいことは、これは臨時工の問題なんですが、今申し上げておる臨時工の問題というのは、単に臨時工と切り離してだけ考えてはいかぬと思う。やはり日雇いの労務者の諸君の問題、駐留軍の労務者の問題、そういう問題とみな組み合わされてあるわけです。その人々の労働条件低下の裏づけに臨時工制度がなっているわけです。そうじゃないとおっしゃっても、そうなっているんだから、これは認めざるを得ない。そこで臨時工問題というのを基本的に何とか処理していくという具体的な方策がないからには、労働問題に対して熱意を傾けているということができない、私はそう思うんです。そういうことを考えますと、臨時工問題に対しては、もう少し政府が本腰になって下さらぬことには、ただいま申しますように、日雇い労務者の問題あるいは駐留軍の労務者の問題、一般失業労務者の問題等に対して、労働権を弱めていくということの裏づけになっておる条件を肯定したことになる、こういうふうに私は考えているわけです。その意味からいって、石田労働大臣は就任以来、労働問題に非常な理解を持っておるということを前提としておいでになるし、また一部の人はそう思い込んでおるわけです。従って期待が大きいわけです。そうなってみれば、せっかく就任なさったこの機会に、臨時工の問題はなるほどやられたというような処理に持っていっていただきたい。そういう意味で、もう少し突っ込んだ具体的な処理構想というものを聞かしてもらいたい。
  40. 石田博英

    石田国務大臣 これは臨時工の問題にしても社外工の問題にしても、中小企業その他における低賃金の実在にしても、また日雇い労働者諸君の問題にしても、基本的には日本の経済力をオーバーする人口問題、労働力過剰の問題が日本の経済界においてはずっと半恒久的にあったところに基本的な原因があると存じます。それから戦争前における、そういう基礎条件をいいことにした日本の産業政策のあり方というものにも大きな原因があったろうと私は存じます。だから基本的にはこの労働人口の趨勢というものを大きく見て、一面においては日本の産業の伸びというものを期得しませんと、大幅に解決を見出すことは非常に困難であると思います。しかしそれまで待っているわけにはいきませんし、明らかに不公正がそこに存在しているのでありますから、先ほど申しましたように、最低賃金制の実施を積極的に急ぐことを軸として、非常に困難な問題ではありますけれども、これの具体的な解決策についてさらに検討を加えて、すみやかに具体的なものを作り上げていきたい、こう考えておりますが、さてそれでは具体的なものは何かと言われると、これは何かいいお考えがあったらお知らせ願いたいと私の方でも申し上げたいことでありますし、ぜひ聞かしていただきたいのでありますが、この日本労働人口の重圧の中で、今的確な解決策というものは、実は私どもも非常に困難に思っております。しかし困難では済みませんから、積極的な解決策をとるように鋭意努力をいたしたいと思います。
  41. 中原健次

    ○中原委員 なかなか巧妙な御答弁なんですが、そこで私はすぐ思うんです。常用工の場合に、一応保障づけられている賃金の問題あるいは退職金の問題あるいは労働日数、労働条件、休日、福利厚生施設、こういうふうにあるわけです。臨時工の場合にも、そういう問題に対して当然の権利が保障されていなければ、その問題の処理の具体策にならぬのではないか、私はこう思うのです。御存じのように、憲法でもはっきりと対等の処理の扱いを規定しておりますし、基準法の三条、四条を見ても、均等の処理が明確に書かれておる。それほどに繰り返し繰り返し明文化されておるということは、こういう現状が予想されるからです。従って、そういう問題に対しては具体的な答えをどう出すか、これは私真剣に考えなければならぬと思う。ここで言葉でうまく説明しきったということでは困る。そうでなくて、もっとお互いが誠実を傾けてこの問題は相談したいと思うから申し上げておるんです。そういうことの関連でどうお考えか。
  42. 石田博英

    石田国務大臣 この臨時工社外工の人々が法律上保護されておることについては、私どもの役所としては、その法律の命ずる行為を積極的にとることによって、その保護の任に当っていかなければならないことは当然であります。せっかくそのようにやって参るつもりでありますが、そういうことと、積極的な施策としては、先ほど申しましたような最低賃金制の実施でございますが、それ以上に、今労働人口の重圧の中でもっとすみやかに、もっと具体的に、この問題解決の方法を私ども見出したいと思っておりますし、中原さんの方で、中原さんだけに限りませんが、そういう御意見がおありでありましたら、お聞かせ下さい。文字通り誠意を傾けて、この困難な情勢下における日本の特殊な労働条件の改善について努力したいつもりでおります。
  43. 中原健次

    ○中原委員 残念ながら、実は失業というよりも、むしろ臨時工労働者という人の立場法律的な裏づけというものが弱いのです。これは申し上げるまでもない。どこからでもすぽすぽと抜けられるのです。何らつかみどころがない。結論としては何もないということになってしまう。先ほども二十一条でしたか、それでやるのだと言われたけれども、それだけで問題はどうなるのか。なるほどそれは二十一条で首切された人に対する場合の保障がある、そこできれいに逃げたような気がするけれども、それならどれだけ保障するかというと、基準法二十条でいくのだ、それだけしかない、それから職業的な保障もない、経済的な保障もない、そうすると餓死するより道がないということになるのですから、つまり現行法の範囲内では、具体的な問題としては、実際よりどころがないわけです。ところが抽象的にはあるのです。抽象的には、さっき言いましたように憲法にもあるし、基準法にもあるのですから、それを抽象的なものとして終らしめるのではなくて、これを具体性のある政策に結びつけなければならぬのじゃないかということを私は申し上げておる。これは大臣ぜひ考えていただきたい。これは一つあなたの名誉にかけてやっていただきたい。私はそれを願ってやまない。  そこで最後にもう一つ言わなければならぬことは、大臣はいつもこう言うのです、生産性向上ということを非常に強調されるでしょう。あなたの言質では、生産が向上してきたら、何かそれが全部解決するかのように印象づけられるのです。政府立場は、もちろん生産性向上、いわゆる、あらゆるオートメーション化も加えて、そういうものを一生懸命やっておいでになるのだが、しかしそのことのためには、その陰におそるべきことがあるのです。それはわかっておるでしょう。先般ある地域を見に行きました。なるほどずっと見ると、機械がぐるぐる回って塩ができたり、機械がぐるぐる回って油が各種各様に出てくる、なるほどみごとなオートメーション化なんです。それは生産性向上と関連があるのです。ところが、一面から見ればそれでよさそうなものだけれども、労働者の姿がそこに見えないのです、ほとんど労働者がいない。そうなると、やはりこれは当然失業問題です。だからそこに非常につらい矛盾があるわけです。その矛盾の基礎になるものは何だろうかということになるのです。これはやはりほんとうに心臓をしぼって考えなければだめだと思います。ただそこをうまく言いのがれればいいというのではなくて、その矛盾を一体どうしたらいいのだということに、もう少し精魂を傾けてもらいたいのです。これは政府もそうです。与党もそうです。野党もそうです。これを本気で考えなければだめです。これが、今日本の一番大きな議論じゃないかと思うのです。りっぱだと考えられるような計画が、とんでもない大きな悲惨な悲劇を伴っておるということなんです。それを仕方がないというわけにはいかない。それなら、それを救うために社会保障政策というものを考えてくるわけですが、実はどれもこれもだめなんです。きょうはそういう専門家が大ぜいおられるが、そうでしょう。社会保障政策なんというものは、名前だけはありますけれども、そういう大きな問題の答えとしては問題にならない。従って、そういうせとぎわにわれわれは追い込まれているのですから、そこで単に生産性向上をもって云々というようなことで、処理方式を持っておるかのように言われたのでは困る。ですから生産性向上方針というもの、あるいはそれに伴ったオートメーション化というものが生み出しておる社会の悲劇、その問題と今の失業の問題、いわゆる臨時工の問題と関連して、この問題をもう少し具体的に考えてもらわなければならぬ。私が妙に広げて縮めたような言い方をしておりますのは、大臣が労働政策に対して非常に明哲な認識があると信ずるから申し上げておるのです。少時間でえらく急いでたくさんの問題を重ねましたけれども、一つそこの結論を出すために頭をしぼっていただきたいのです。
  44. 石田博英

    石田国務大臣 労働者生活の条件向上というものの前提には、私はやはり生産性向上というものがなければならないと思います。それは勤労者だけが日本の国民経済と遊離して条件の向上は求められないのでありますから、やはり日本経済の全体的な発展の中にその分配の上昇を求めていくというあり方が、私は基本的にあくまでも正しいものと信じます。特に日本のように、国民が生きていきます場合に貿易に依存する度合が非常に高い国におきましては、国際間の経済競争に十分打ち勝つだけの生産性の向上というものは私はやはり必要である、それがなければ国民経済全体が成り立っていかないものと私は考えております。しかしその生産性向上によって失業の増大、雇用の減少ということが生まれてきては困るのでありますから、生産性向上に伴う利益の分配、あるいはその後における労使関係の処理につきましては、労使協議会の設置でありますとか、あるいは労働条件の問題の解決とかを通じまして、私は、それが失業や雇用の減少に及んでいかなければならぬような処置をあわせてとるべきものだと思いますけれども、労働者生活の向上と条件の改善のためには、私はやはり生産性向上というものが前提とならなければならず、特に日本のような貿易依存度の高い特殊な経済条件のもとにおいては、なおさらそれが当然必要な前提条件であると思っておる次第であります。
  45. 中原健次

    ○中原委員 そこなんですよ。生産性向上はもちろん重要視しなければならぬと思います。日本の現在の経済事情から考えて、ここに依存しなければだめだ、それはよろしい。そこで今あなたが抽象的に言われたが、それならそのためによって起る、たとえば百九十五万の臨時工、これは一番問題だ。これは一番犠牲になる。それから今度常用工にも食い込まれてくる。ある地域の、たとえば塩業でいいますと、塩業労働者の八〇%は新しい生産様式になったために、もう要らない。そうすると、二〇%は生かされるが、八〇%は利潤の増大と生産性向上の中に依存できない無縁の人になってしまう。そこでやはり政治的に大きな問題がある。ですから、これはなまやさしい対策では、その多数の人々に対する対策は講ぜられていないことになってくるのじゃないかと私は思うのです。ですから具体的にこの問題について御判断願わなければならぬ。そこで私は先ほども質問したように、賃金の問題、退職金の問題、労働日数の問題、社会保障の問題と数々あるのですが、そういう問題を一体どうしようというのか、どこへ持ってきてその問題に答えようとするのかということをお尋ねしたわけであります。この点もう一度聞かしてもらいたい。
  46. 石田博英

    石田国務大臣 基本的には、やはりその企業内におきまして、生産性向上に伴う雇用の減少、失業の発生というものは、生産性向上が行われたからといって、その裏返しとしてそういうことが起らないように、労使協議会その他を通じましてやっていかなければならないと思っておりますが、たとえばその企業自身においてそういう現象を生じましても、今御引例の塩のオートメーション化が進み、そのコストが下る、あるいは海外依存度が減ってきたというような場合には、やはり産業構造上におきましても変化が生じる、あるいは新しい産業が起る、そういうふうにして日本の経済の膨張を通じまして、新しく別の雇用を求めていくということが私は可能になってくると考えております。たとえば先ほどの塩の場合、より高度に、よりコストを下げ、あるいはより大量の生産ができる処置が講ぜられる、その結果、海外からの輸入が不必要になり、外貨がその分だけ節約されると、他の必要な原料なり何なりが入ってくる余地が生じ、そこに産業が起り得る。あるいはまた塩それ自身が非常に安価になりますと、それを原料とする別個の産業が、日本の国内消費だけでなく、輸出商品としても起る。そういうところを通じて新しい雇用が出てくる。私はそういうことを期待しつつ日本雇用問題をやはり解決していかなければならないものだ、そこに固定された数というものを、いつまでも動かせないのだという前提ばかりでは、私は日本経済の大きな発展というものは期せられないものだと考えております。
  47. 中原健次

    ○中原委員 時間がございませんからやめます。ただ申し上げておきますが、これはもっと具体的にならなければいけません。ちょっと抽象論に過ぎました。それでは処理になりません。時間もなく、あとで質問者があるようですから、その人々に譲ってやめます。しかしながら、次の機会にこれは具体的に掘り下げて一つの相談しましょう。この言葉を残して終ります。     —————————————
  48. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 この際、質疑の途中ではありますが、本日の請願日程全部を一括議題といたします。  本委員会に付託されました請願は、すべて請願審査委員会審査に付したのでありますが、この際、請願審査小委員長より報告を聴取いたします。野澤清人君。
  49. 野澤清人

    ○野澤委員 請願審査委員会における審査の結果を御報告いたします。  請願総件数は百二十三件であります。小委員会は慎重に審査の上、請願日程のうち第一から第二四まで、第三二から第四三まで、第四五、第四七から第五一まで、第六九から第七二まで、第七四、第七六から第一〇一まで、第一〇五から第一一六まで及び第一二〇から第一二三まで、以上八十九件はその趣旨妥当なるものと認め、採択の上、内閣に送付すべきものと決定いたしました。  以上御報告いたします。
  50. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 以上で報告は終りました。  ただいまの報告について御発言はありませんか。——なければ採決いたします。ただいまの小委員長の報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  51. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 御異議なしと認め、その通り決しました。  次に、ただいま採決の上、内閣に送付すべきものと決しました請願に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  52. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 御異議なしと認め、そのように決しました。  なお、ただいまお手元に配付いたしました陳情書が、本委員会に参考送付されておりますので、一応お知らせ申し上げます。  これにて暫時休憩いたします。午後一時より再開いたします。     午後零時十四分休憩      ————◇—————     午後一時十九分開議
  53. 八田貞義

    ○八田委員長代理 休憩前に引き続き会議を再開いたします。  都合により委員長が不在でございますので、私が委員長の職を勤めます。  労使関係労働基準及び失業対策に関する件についての質疑を続行いたします。多賀谷真稔君。
  54. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 まず大臣に対して、産業別組合並びに職種別組合並びに産業別組合闘争あるいは職種別組合の闘争、こういうものに対する大臣の考え方を、時間がありませんから私は率直にお聞きいたしたい。
  55. 石田博英

    石田国務大臣 時間がありませんから、少し先走ってお答えするかもしれませんが、御質問の要旨は、炭労の産業別闘争をさしておられると思うのでございますが……。
  56. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 いや炭労ではない、鉄鋼です。
  57. 石田博英

    石田国務大臣 鉄鋼ですか——私はそういう労使間の問題の解決の方法を、原則的にどうこうということはやはり避けたいと思いますが、しかし実際上日本の経済状態におきまして、労使当事者の間で生じた労働関係の問題の解決というのは、やはり現実的には企業別の取扱いが基礎になっている。しかしながら、ただ産業別の闘争であるということだけをもってどうこうということは差し控えたいと思っております。
  58. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 企業別組合は、私が今さら申し上げるまでもなく、外国では御用組合だと酷評をされているくらいに使用者の支配介入の意思が組合に入る状態にあるわけであります。日本労働組合の発生の歴史が、戦後においては比較的企業別組合の形で発生しましたから、私はこの現状について、これを否定するわけではございません。しかし、やはり労働省は指導的な立場にあるのですから、産業別闘争というものをどういうように御理解になるのか、大臣としてはそれを育成指導されるつもりであるのかどうかをお聞かせ願いたい。
  59. 石田博英

    石田国務大臣 労働組合の組織あるいは労働組合労働条件の改善のための運動方針は、私はやはり労働組合自身が解決をされ、自身が処置せられる問題であると思っております。ただ、企業別組合はすなわち御用組合だという断定は、私は日本の実情についてはそうは言えないのじゃないかと思う。外国の事例はいろいろなことがあるかもしれませんが、日本ではそうではないのではないかと思っておりますし、それから先ほども申しましたように、現実上、労働関係の問題の処理能力というものは、やはり企業が単位になっておりますから、やはり問題はその企業ごとに解決するのが、処理能力という点から見ますと現実の姿である、こう思っております。
  60. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 現在の基準法でも、最低賃金については産業別並びに業種別ということを基調としてできておる。またあなたの方も最近、業者間協定、こういうことを言われておる。この思想は、やはり業種別賃金というものを確立したいという気持ではないかと拝察するわけですが、その点についてはどういうお考え方ですか。
  61. 石田博英

    石田国務大臣 それは業種別賃金確立しようとするのではなくて、やはり賃金格差解消のための、低い賃金を上へ上げていくための、下からのささえという意味で考えておるわけであります。いま一つは、たびたび申しますように、それによって中小企業の経営の形態を近代化し、生産性を高め、あわせて国際信用の維持に努めるというつもりで最低賃金制を考えておるわけでございますが、その最低賃金制を実施するに当りましての現実的方法として、地域別あるいは職種別による最低賃金制ということをいわれるのであります。従って、それは職種別だけが構想の柱になっているのでなくて、もう一つ地域別ということも柱になっておる、こういうふうに考えております。
  62. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ちょっと大臣にお尋ねいたしますが、業種別だけが柱になっておるのではなくて、地域別も柱になっておるというのですが、いろいろな職種の産業で、地域別に最低賃金というのをおきめになるおつもりですか。
  63. 石田博英

    石田国務大臣 今政府が通常国会に出そうと考えております最低賃金制内容につきましては、しばしば申しました通り、ただいま中央賃金審議会に諮問中でございます。今私がお答えを申しましたのは、ILOの決議に出たり、あるいは自民党の案の中に出ている職種別、地域別の最低賃金制の実施という、その言葉の解釈を申し上げたのでありまして、政府の構想は、中央賃金審議会の答申を待ちまして、それを尊重してきめたいと思います。今審議をお願いし、御意見を徴している過程におきまして、政府側から一定の方向を持ったことをあらかじめ申し上げることは、この際避けておきたいと考えております。
  64. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ものの考え方を言っておるのでありまして、私はやはり職種別最低賃金といいますか業種別最低賃金といいますか、そういう基礎の上に立って、その賃金をさらに地域別に考えられる、こう理解をしておったわけです。大臣の話ですと、業種別は一応別にして、地域別でも最低賃金を考えるのだ、こういうように承わったのですが、現在審議会並びに自民党で審議されているのは、そういうような状態にあるのですか。
  65. 石田博英

    石田国務大臣 中央賃金審議会ではただいま審議中でありまして、まだ答申を私どもの方でもらっておらないのでありますから、どういうものであるかということを申し上げる段階ではまだないと思います。それから自民党の申しておりまするものは、これはやはり立案者からお聞きいただいた方がよろしいと思いますが、私はその言葉の意味はやはり両方を加味したものであろう、言葉の意味のその通りの理解であります。それがそのままの形で採用になるかならないか、あるいは政府提出するかしないかということは別問題でございます。
  66. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 両方の意味でありますけれども、それはオアーではない、アンドで結んでおるわけです。それで大臣の話は、全然他産業の業種でも、同じ地域であれば同一の最低賃金の網を張るんだというようなことを言われたように私は感じたのです。速記録にもそうなっておると思う。それで私は、やはり現在の法律でも、たとえば組合法の十八条なんかでも、同一地域ではあるが同種の労働者の大部分ということになっておりますし、あるいは基準法の最低賃金も、やはり同種の労働者ということは基本に置いておると思うのです。同一地域であればどんな産業でもいいんだ、同じ最低賃金を作るんだという考え方はないと思うのですがね。
  67. 石田博英

    石田国務大臣 私もアンドという意味で申し上げました。
  68. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ですから、どういう状態に置かれても——どうも現在の政府のそのバックになっておる周辺の考え方は、産業別あるいは業種別の最低賃金、それがたまたま物価差その他によって同一事情にあれば、それは同じ賃金を結ぶ、締結する、こういう状態にあると思うのです。そこで私は、そのものの考え方というのは、やはり産業別闘争なりあるいは職種別闘争ということを指導理念として持っておられるのではなかろうか、こういうことを考えるわけですが、どうでしょう。
  69. 石田博英

    石田国務大臣 最低賃金制の構想の基礎というものは、先ほど申した通りであります。私は労働関係の問題を解決するのには、やはり処理能力というものを考えなければならないと思いますから、処理能力という建前から参りますると、やはり企業別がその単位になるものだ、こう考えております。
  70. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 大臣のおっしゃった最低賃金制度の構想は、残念ながら一般的なお話をなさって、私がお聞きしておる点には卒直にお答えにならなかったと思うのです。輸出を伸ばすためだとか、あるいはそういうことは一般的な話で、私は特に同種産業の労働者を同一の最低賃金で結ばすということには関係ないと思う。ですから、画一的な最低賃金でありましても、いろいろな形の最低賃金であましても、それは同じ目的で施行されておるわけでありますが、私はやはり同種の産業の労働者賃金ということを考えられるのには、産業別組合とかあるいは産業別闘争というものが背景になっておりはしないか、それを是認された形、いなそれを望ましい姿と考えられておるのではなかろうか、こういうように考えるわけです。
  71. 石田博英

    石田国務大臣 私はそういうふうに考えて申し上げたわけではございません。最低賃金制を実施するに当りまして、企業間の条件というものから最低賃金制を実施いたしまする場合の現実的な実施のしやすい方法として、また経営の基礎を脅かさない方法として、そういう方法が最低賃金制の中で考えられておるというふうに考えまして、労働問題あるいは労働関係の意見の相違というものを解決する手段として、いかなるものがあるかということになると、その処理能力になると思います。従って処理能力になると現在のわが国の経済構造の中におきましては、やはり各企業が独立して存在しておりまする以上は、善悪は別として、現状のある姿である。それについて、いかなるものが正しいか、いかなる方向へ持っていくかということは、これは政府がいたすべきではなくて、労働組合自体でお考えになるべきごとだと考えております。
  72. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 自体で考えようとして努力しておるのに対して、政府はこっぴどく悪口を言っておる。あなたが大臣に就任になる前に、一月に、団結権団体交渉その他の団体行動についてというのを次官通牒の名をもって出された。ところがこれは結局、産業別労働組合あるいはさらにその上にある総評とかいう上部組織に対して、賃金問題を解決する能力がないじゃないか、これは政治的に走るものだということで、相当こっぴどく糾弾しておる。これは読まれればわかりますけれども、政府がこういう言葉を使っていいだろうかというくらいに酷評されたわけです。それで私は、そういう悪口ばかり言わないで、もう少し産業別労働組合が実際の活動ができるような指導をしたらどうか、どこに欠陥があるかということをついたらどうか、こういうことをお話したわけです。これは大臣の親友の倉石さんが大体考えられて、その次大臣になったときにたまたま発表になったそうでありますけれども、とにかく日本の産業別労働組合が現在あるわけですから、そういったものが地についた闘争ができるように、地についた活動がなされるように指導するのが私は政府の一つの役目ではないかと思うわけです。これについてどういうようにお考えですか。
  73. 石田博英

    石田国務大臣 処理能力がないのは、むしろ組合側の組織のことを言っているのではなくして、御要求になっても連合体として、実際処理能力を持っておるのは個々の企業である、私はそう考えておるわけでありますが、しかしそれに対して、組織の形態について労働省が、今御指摘のように、一方的な見解を申し上げたわけではなくて、やはり同じ冊子の十四ページをごらんいただきますと、企業別組織の特性について、やはり長短それぞれをあげて、企業別組織だけがいいというわけでもございませんで、やはりその実情についてのあり方について詳細説明をいたしておるようであります。政府は決していずれの形に対して特別の処置をとるなどというような意図は持っておりません。ただ労働争議というものは、具体的な処理能力を持っておるもの同士の間で解決をしていく以外に方法がない、それが日本の現状である、こう考えておる次第でございます。
  74. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 むしろ私は、経営者並びに政府は、処理能力があっても、イデオロギーといいますか、そういう方式にこだわって紛争を制限させておる、こういうように考えるわけです。これは時間がありませんから詰めて申し上げますけれども、電産の闘争なんというのはまさにその通り、あるいは六十三日及んだ炭労の闘争でもその通り。これは処理能力よりも統一交渉拒否の姿で出てきておる。ところが世界の趨勢並びに日本労働組合が今指導原理として進んでおる方向は、やはり統一闘争の方向である。それを頭から否定をして、そのことによって事態が紛糾しておる、こういうように考えるのですが、大臣はそういうように把握されてはいないかどうか、重ねて伺いたい。
  75. 石田博英

    石田国務大臣 政府としては、民間産業の争議行為に対して団体交渉を拒否したり遷延せしめたりするような作為ある行為をとったことはございません。
  76. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 大臣が変りますから、とったことはありませんと言われましても、もとの大臣はもうおやめになったり、おられないのですから、非常に困った問題ですが、私は電産の争議についても、個人の名前はあげませんが、こういうのはやはり企業別闘争に落すべきだと、政府みずから率直に言っておる。あるいはまた炭労の闘争でも、そういう点があったと思いますが、これらはまた関連をして申し上げますけれども、今度の統一闘争、ことに鉄鋼労連の問題を取り上げてみたいと思うのです。鉄鋼労連の問題も、やはり鉄鋼労連が各企業別に対して、まとまって交渉してもらいたい、鉄鋼労連対会社という対角線交渉でやりたい、こういう申し入れをしておりますが、各社はそれをけっております。あるいは全鉱の問題でも、この窓口交渉で非常に悩んだ経験もあります。炭労は現在はほとんど対角線交渉でやっておりますけれども、その炭労も、かつては窓口をあけるためにストライキをして、そうして今日のような状態確立したわけであります。でありますから、今の日本労働組合の趨勢というものは、統一闘争に行こう、これが世界の趨勢に従っての日本労働組合の態度であると思うのです。これに対して政府は、今までそういうことをやったことはないとおっしゃっておりますが、事実はやられておる。私はこう考えておる。そのことを具体的にあげよと言われますと、具体的にあげてもいいのですけれども、とにかく分断作戦をとられんとしておる、これに対してどういうようにお考えですか。
  77. 石田博英

    石田国務大臣 私は民間企業の労働争議というものについて、政府はやはり干渉すべきではない、それが経済界の大きな動揺を呼び起したり、国民生活に深刻な影響を与えるという事態になった場合は別でございますが、やはりそれぞれ労資双方の直接のお話し合いによって解決をしていくのが正しい姿と考えておりますから、私自身もそうでありまするが、今後とも民間産業の争議行為に対して干渉をしたり、あるいは一定の方向づけを労使双方に対して指導したりいたす考えはございません。
  78. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ところがその結果、たとえばいろいろな紛争が起きます。そうして事件も起きます。端的に申し上げますと、日本のピケは確かに外国に比べて熾烈であると思います。この社会労働委員会で、かつて学者を含めて参考人を呼びましたところが、日本のピケが割合に熾烈なのは産業別組合が確立していないからだ、要するにスト破りという要員がどんどん入っていく状態にあるからだ、こういう指摘がなされた。われわれもいろいろ研究してみますると、そういう面も確かにある。そこで出てきたピケット、そういうものに対しては、政府は断固として臨まれておりますけれども、やはり私はその原因を解消しなければだめだと思う。ですから産業別闘争が起らないということで日本労働争議は、別に変った意味において、ずいぶん熾烈な面を出しておると思う。それが労使双方の紛争の種を惹起しておると思のですが、こういう点についてはどういうようにお考えですか。
  79. 石田博英

    石田国務大臣 ピケラインの問題については、これはやはり現在の法規解釈の上に立って労使双方が、同じ争議をいたしますにつきましても、やはり良識の上に立って、他人の人権を脅かしたり、あるいは公共の利益に害を与えたりしないようにやっていただきたいのであり、やはり政府はその保障をすべき義務があると考えております。しかしその原因については、私は必ずしも今多賀谷君の御議論のことばかりが原因だとは考えておりません。
  80. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私も、ばかりであるとは言っておりませんで、それが主たる原因をなしておるということを申し上げておるわけであります。  そこで、時間の関係がありますから、私は率直にお聞きいたしたいのですが、労働大臣は先般、生産性向上の問題を本会議でも非常に強調されて、そうして勝間田議員の質問に対して、生産性向上をした場合には、第一には賃金に向けられる、第二には、内部保留その他の会社の基礎を確立する点に向けられる、第三には、国民一般といいますか、そういうものに向けられる、要するに安く売るだろう、こういうお話がありましたが、私は今度の鉄鋼における最近の生産性の向上の状態を見て、果してそういうような状態になっておるかどうか、これをお聞かせ願いたい。
  81. 石田博英

    石田国務大臣 これは資料が必要だと思うし、それから鉄鋼産業の経営の具体的実態というものについては、これは私にお聞きいただくよりは、通産省の方へお聞きいただきたいと思います。
  82. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 大臣の関係と通産省の局長の関係で、うまくピッチが合わないのです。請求しているのですが、まだ来ないので、合わないのです。そこで、私は政府で出しました資料に基いて質問をしてみたいと思います。御存じのように鉄鋼は画期的な製造方式の改革をやりまして、非常に生産性が上っておる。ことに薄鉄板なんかは、ストリップ・ミルの方式をとりまして、従来のプルオーバーの場合に比べて、労働者一人に対しましては十三倍の能率を上げている。ところがその直接生産をいたします薄鉄板といいますか、薄板はどうかといいますと、薄板の建値はずっと上昇の一路をたどっておる。生産性は十三倍も上っておるのに、大手三社の建値だけを取り上げましてもずっと上っておる。こういうのは一体どういうようにお考えですか。
  83. 石田博英

    石田国務大臣 これは過渡的な、あるいは実態的な、いろいろな他の要素もあろうと思いますが、労働者生活あるいは生産性向上に対する労働者への分け前を確保しなければならぬという建前は、たびたび申し上げておる通りであります、その具体的な原因、内容その他については私の所管でもございませんから、一つ通産省の方へお聞き願いたいと思います。
  84. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 建値の問題その他は通産省が参りましてから質問したいと思いますが、労賃のコストに占める割合というのは、ずっと低下の一路をたどっておる。すなわちトン当りの労務費の割合はずっと低下の一路をたどっておるのですが、この問題についてはどういうようにお考えですか。
  85. 石田博英

    石田国務大臣 そういう分配の問題の解決については、やはり労使双方が協議をせられて、そうして解決をせられていくのが至当であろうかと存じております。
  86. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 しかし大臣は、本会議では、第一にはとにかく労賃に回っておるものだろうと自分は思う、こうおっしゃいましたが、私はここに数字を持ってきておりますが、トン当りに占める労務費というものはだんだん下っておる。そうして外国に比べてこれは著しく低い、こういう現状にあるわけです。これをどういうようにお考えですか。
  87. 石田博英

    石田国務大臣 今御指摘の鉄鋼については、御承知通り労使双方の間に紛争が起っております。それだから多賀谷君御質問だと思いますが、それについて私が一定の意見を申し述べますことは、原則として自主的に解決せらるべきものに政府が干渉する結果になりますから、それについて意見を申し上げることは避けたいと存じます。  それから第一、第二ということは、私はものを一ぺんに言えないから言うたのであります。それは、生産性向上によって得られる利益というものは、さきに申されました三つに分けられるべきものだということを申し上げたのでありまして、労使紛争に対して政府は介入するな、介入するなというのは、いつも社会党の方から私の方におっしゃいましたことでございますから、なおさら私は労使の問題については、今紛争が起っておる途中に意見がましいことを申し上げることは差し控えたいと思います。
  88. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は具体的な直接の全額の問題について話しておるのではない。しかし鉄鋼の建値あるいは単価の問題は大きな日本政策の問題で、建値だって政府があっせんをしてきめられるのですよ。政府はノー・タッチじゃないのです。御存じのように鉄鋼の建値に対してとやかく言う権限はないけれども、実際は政府のあっせんで出されておる。これは現実です。そこであなたのおっしゃる通り、一般国民にも確かに恩恵は与えるべきだという、その国民にも全然与えられておらない、労働者の方もだんだん労務費の割合が下っておる、実はこういう状態である。行われておるのは、ただその会社の基礎を固める内部保留だけの点において、きわめて重点的に行われておる。この状態についてどういうように考えられるか。あなたのおっしゃる三つのうち二つは行われていないとわれわれは考える。
  89. 石田博英

    石田国務大臣 建値については、これは私の所管ではございませんが、研究されておるものと存じます。  それから労働賃金の問題については、先ほど申し上げておりますように、現在それをめぐって紛争が続行中でございますから、政府として、やはり自主的見解に待つべきでございますから、申し上げません。
  90. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 政府は常に、都合の悪いときには自主的解決、こう言う。そうして労働組合が弱くなるとすぐに介入してくる。経営者の強いうちは介入してこない。私は率直に言いますと、炭労のこの前の六十三日の争議、これはいろいろ見方があるのですが、初めの一カ月間は経営者は、ことに九州に本社を持っております経営者は上京しなかった。上京しなくても、ストライキをやってもらっても、経営者から見ると得になる。すなわち当時は貯炭が余っておりまして、そうして石炭の炭価が下りそうであった。そこで一カ月間は争議をしてもらった方がプラスになると考えた。このときは政府は、労働省も通産省も、貯炭も十分ありますし、大丈夫だ、こういうことでそっぽを向かれておった。ところが終りになっては、御存じのように緊急調整発動というところまでいっておる。私は今度の鉄鋼労連の闘争は、これと同じような様相を示しておると思うのです。そうして気がついたときには重油が入り、炭況が不況になった、それは重油が入ったからだ、こういうことにならないとも限らない。だから今鉄鋼争議がずっと行われておりますし、さらに第八波、第九波、第十波と行われる状態におきましては、私はかなり深刻な問題が起きやしないか、かように考えるわけです。今鉄鋼は確かに軟調にあります。大体弱くなっております。ところが何とか建値を維持しようとしてがんばっておる、こうしか考えられないし、また一方においては産業別闘争を何とかしてこわそう、こういう点が明らかに見える。たとえば日本特殊鋼管という会社がある。この会社は前の月の二十二日、すなわち二十三日、二十四日のストライキを前にして会社の方から、とにかく団体交渉を持ってベース・アップの問題について話し合うからということで、ストライキをやめたんです。そうしましたら後になって、その日本特殊鋼管の社長が、君たちは統一交渉をしておるから、会社は金を出せない、統一交渉をさえしなければ金は出すのだ、こういうことすら言っておるのです。一体この点をどういうようにお考えですか。     〔八田委員長代理退席、委員長着席〕
  91. 石田博英

    石田国務大臣 労使双方が交渉しておる過程の話のやりとりについて、私どもは公正な報告を承わっていないのでありますから、あなたがそうおっしゃったからといって、別に私はそれについて所見を申し述べる意思はございません。
  92. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 労働省では、一体鉄鋼労連の争議について、どの程度把握されておるか、労政局長からお伺いしたい。日本特殊鋼管の問題は、あなたの方でも当然調査がなされておると思うのです。なぜかというと、二十三、二十四日の闘争を前にして、二十二日にストライキをやめさしておるのです。そうして二十五日に団交を持っておる。その団交の席で、統一闘争からはずれれば金を出す、こういうことを言っておる。これは組合の闘争に対する不当労働行為そのままになるかどうかは問題があるでしょうけれども、そういうにおいは確かにある。これをどういうように考えておられるか、この報告が来ておるか来ていないか、これを伺っておきたい。
  93. 亀井光

    ○亀井政府委員 二十三日、二十四日の争議が中止になりました事業は承知いたしておりまするが、二十五日、団交で会社側がそういう発言をしたかどうかということについては承知いたしておりません。
  94. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 都合の悪いことは知らぬと言っておられる。ですが、こういう事実があるわけです。これは調べられるとわかりますが、労働組合が一方的にうそを言うわけはない。これは参議院の公聴会で言われた言葉なんです。西口委員長からこういう発言があった。これは亀井さんもそのとき列席されておりました、御存じの通りです。ですから、このことをみずから聞いておきながら、それは知らぬ、こう言われるから、まだ質問したいのですけれども、まあ本人は西口組合長から直接お聞きになっておりますから、私は言いませんけれども、事実はこういうように言われておる。私は組合がわざわざ国会に来てうそを言うとは考えられませんが、そういう事実がある。ですから、それについてどういうようにお考えですか。統一闘争であるから自分はいやだ、こういうことが大体妥当であるかどうか、それは勝手だとおっしゃるのかどうか。
  95. 石田博英

    石田国務大臣 私はそういう交渉の過程において、第一そういうやりとりのあったことが事実であるかどうかということを私は承知しておりません。あなたのお言葉だけでは、あるいはそれは労政局長がだれかの証言を聞かれたのでしょうが、それが事実であるかどうかということを断定をして政府が発言をすべき、それだけの材料には私はならないと思います。  それからいま一つ。よしんば第二段として、そういう発言が行われたとしても、それが不当であるか正当であるかというようなことについて、政府は言うべき立場ではないと思います。やはり労使双方の問題であって、法律上の不当労働行為には私はならないと思います。
  96. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私も法律上の不当労働行為にそのままなると言っておるわけじゃありませんけれども、精神としては不当労働行為的なにおいがする、こういうことを申し上げておるわけなんですが、大臣は知らないということでなるべく逃げようとされておりますからそれ以上は申し上げませんけれども、それでは労働省としては、鉄鋼の労務費はコストのうちでどのくらい占めておるか、これは私が本日鉄鋼労連の問題について質問するということを言ってあるわけでありますから、当然調べてあると思います。どういうように把握されておるか、それをお伺いしたい。
  97. 亀井光

    ○亀井政府委員 これの見方もいろいろございまして、この前、多賀谷先生も御承知通り、使用者側の代表の発言と組合側の代表の発言と、非常に食い違いがあった。われわれが一応把握しておりますところは、一四・五%というところが大体のところではないか。あるいはもっと一二・三%という見方もございます。この点は資料その他が不明確でございまして、われわれとしてもどの数字が最も正確であるかということにつきましては自信がございません。大体一二・三%から一四・五%というところではないかと思います。
  98. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうしますと、外国ではどのくらいですか。
  99. 亀井光

    ○亀井政府委員 外国の資料は実はきょうは持ち合せておりません。
  100. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 アメリカ四社で発表しましたところによると、大体労務費は四〇%、これはアメリカの方は比較的よく発表しておる。日本の「鉄鋼界」という雑誌がある。外国の事情はコストまでよく発表するのですが、日本のことは発表しないのです。それによりますと、アメリカでは四〇%から四一%、イギリスの事情も発表しておりますけれども、これは大体二二%程度であったと思います。こういうように外国に比べて、日本の場合はコストに占める割合が非常に低いわけです。ですから鉄鋼が要求しておるものをいれましても、建値を上げるという状態にはならないというように考えるのですが、労政局長はどういうお考えですか。
  101. 亀井光

    ○亀井政府委員 建値の問題は、先ほど大臣からも御答弁がございましたように、通産省の所管でございまして、われわれその判断をここで申し上げる実は能力もございませんし、権限もございません。
  102. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 通産省の局長が来る予定で質問をしようと思っておったのですが、通産省の方がさぼるものですから……。  それで率直に言いますと、トン当りの賃金がずっと下っておる。ずっと下降の一路をたどっておる。これは生産性が向上をしておるから、そういう点もあるでしょう。私はこれを責めるわけじゃない。鉄鋼労連が闘争でかち得ましたのは、大手五社で七百円です。そうしますと昨年の総理府の統計によりますと、消費物価、これは東京における物価が大体一一%くらい、昨年の九月と本年の九月では上っているわけです。でありますから、それに対してゼロ回答をするということは、どうもここに賃金問題以外の問題があるのではなかろうか、あるいは建値を維持したい、あるいは産業別の闘争を何とか破壊さしてやりたい、こういう気持があるのではなかろうかと思うわけですが、それに対して大臣はどういうようにお考えですか。
  103. 石田博英

    石田国務大臣 今いろいろおっしゃいました御議論は、現在労使の間で争われていることは、先ほどからを申しておることでございますから、政府としてはこれについてどういうことを申し上げるつもりもありませんし、ましてや経営者側の意図を聞いたわけでもございませんから、それについて批評をいたすつもりもございません。  それから、ついででございますが、ただいまから参議院本会議が開かれますので、失礼をいたします。
  104. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私のこの質問は後ほどに留保をしたい。
  105. 藤本捨助

    藤本委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  106. 藤本捨助

    藤本委員長 速記を続けて下さい。     —————————————
  107. 藤本捨助

    藤本委員長 この際閉会中審査の件についてお諮りいたします。当委員会といたしましては、閉会中も委員会審査の必要があると存じますので、その活動の円滑を期するため、閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、その手続等に関してましては、すべて委員長に御一任願いたと存じます。御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  108. 藤本捨助

    藤本委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  なお、ただいま申し出ることに決しました閉会中の審査案件が当委員会に付託されましたならば、現在当委員会設置されております診療報酬及び薬価に関する小委員会を閉会中もなお引き続き設置することとし、あわせて閉会中同小委員より辞任の申し出があれば、これを許可し、なお小委員に欠員を生じた場合の補欠選任及び本小委員会の調査のため、参考人を招致する必要を生じました場合には、その決定、人選及び手続等につきましては、あらかじめすべて委員長に御一任願っておきたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  109. 藤本捨助

    藤本委員長 御異議なしと認め、そのように決定いたします。     —————————————
  110. 藤本捨助

    藤本委員長 次に委員派遣承認申請の件についてお諮りいたします。ただいまの閉会中審査案件が当委員会に付託になりました後、調査の必要上現地に委員を派遣し、その実情を調査する必要を生じました場合には、その申請について、すべて委員長に御一任を願っておきたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  111. 藤本捨助

    藤本委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     —————————————
  112. 藤本捨助

    藤本委員長 それでは労使関係労働基準及び失業対策に関する件について質疑を続行いたします。多賀谷君。
  113. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 重工業局長にお尋ねをいたしたいのですが、鉄鋼の生産過程というものは、かなり御存じのように改革されたわけでございますが、一向安くならないのです。なしろ上昇の一路をたどっておる。これはどういうようにお考えですか。政府は生産が向上すれば、あるいは労働者賃金に、あるいはまた国民に恩恵を与える、こう言っておるのだけれども、ずいぶん技術革新が行われたけれども、鉄鋼の建値は下らないどころか上ってきておる。こういう状態に対して通産省はどういうようにお考えでありますか。
  114. 岩武照彦

    ○岩武説明員 鉄の価格の決定要因にはいろいろな要素があることは御承知通りであります。そのうちで一番大きく左右いたしますのは、やはり原料関係のようであります。正確な数字は後刻申し上げたいと存じますが、大体のところで申しますれば、御承知のように銑鉄のごときは、鉱石あるいはコークス、それから燃料関係等のいわゆる原材料、燃料等の費用が大体八割程度を占めておるようであります。従ってそういうものの価格の上昇が、一番価格に影響するわけであります。御指摘のように、この数年来鉄鋼業は各段階におきまして、それぞれの合理化計画を実施いたしておりますし、また現在も実行中であります。そのねらいとしますところは、結局原材料の消費原単位を切り下げ、あるいはそれに直接従事いたしまする人間の労働量を節約いたしまして、単位当りの人件費を節約するということになっております。ただ申し上げたように、合理化の効果は、いろいろコスト面には、それが行われなかった場合と比較いたしますれば、はっきり出るわけでありますが、その完成時におきましては、当時想定いたしました事情といろいろ違った要素が出てきます。一番大きい問題は御承知のように運賃の動きであります。あるいは石炭価格等があります。そこでわれわれとしましては、鉄の価格というものは短期的な需給関係からの動き、あるいは一時的なコスト要因の影響等からできるだけ解放されまして、長期的に安定した価格を持つということが望ましいじゃないかということで、そういうふうに指導しておりますが、なかなかいろいろ複雑な状況もございまして、所期の通りに参っておりません。最近の現象は、むしろ合理化の効果を原料費、特に海上運賃の騰貴が食っておるという状況であります。これはどうもひとり日本のみならず、海外でも同様のようでありまして、アメリカにしましてもあるいはイギリスにしましてもあるいはドイツにしましても、鉄の価格は向うの方は比較的安定した価格あるいはマル公制度をとっておりますが、なかなか累次の合理化にかかわらず、下っておらないようであります。それでむしろ長期的に安定した、しかも微騰を続けておるというのが海外諸国の価格の現状のようであります。まあ別段海外のまねをするわけでもありませんが、日本の価格構成も、海外諸国よりも、むしろ先ほど申しました海上運賃あるいは原材料の動きに、もう一そう敏感になっておりますので、できるだけそういう要素を長期的な価格の中に織り込みまして、いたずらに上下変動しないようにというふうに考えたわけでございます。
  115. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 なるほど原料がかなりコストの割合の中に多く占めておるということは承知しておるのですが、それにしましても、生産が非常に向上しておる。それにもかかわらず、建値はさっぱり下らないどころか、上昇の一路をたどっておる。昭和二十九年にストリップ・ミルを入れて、プルオーバーの場合に比べて労働者一人当り十三倍になっておる。それにかかわらず薄板はどうかというと、薄板は昭和二十九年のトン当り六万三千円からずっと上って、現在六万八千円という形になっている。生産性向上、生産性向上といっても、だんだん建値の方は上る。そして利潤率はどうかというと、悪い悪いと言いながら、御存じのように今度の九月期の決算は、もう会社創業以来の利潤率を計上し、それから内部保留のごときは、すばらしい内部保留をしておる。こういう状態にある。賃金との関係の話が不規則発言で出ておりますが、私が先ほどからるる説明をしておるのですが、コストに占める賃金の割合というものはずっと減少の一路をたどっておる。これはものすごいスピードで下っておる、こういう状態であります。でありますから、一体何のための生産性向上をしておるのかわれわれはわからないのですが、一にこれは独占資本に奉仕をしておるという形で出てきておるわけであります。御存じのように、建値につきましては政府があっせん案を出されたり、タッチされるわけですから、純然たる自由価格ではない。行政面において確かにタッチされておるのが現状です。一体建値をきめる場合に、政府はどういうように考えられておるのか、これをお聞かせ願いたい。とともに、さらに労務費の割合がコストのうちでどのくらい占めておるのか、あるいは外国ではどういう事情にあるのか、これをお聞かせ願いたい。
  116. 岩武照彦

    ○岩武説明員 建値のお話がございましたが、建値は、御承知のように、八幡製鉄と富士製鉄と日本鋼管、三社の一方的な売り出し価格でございます。この中には純粋の鋼材の価格のほかに、プールしました運賃あるいは問屋の手数料等が入っていることは御承知通りであります。この考え方は、先ほど申しましたように、長期的に価格を安定させよう、鉄鋼需要部門に鉄鋼価格の変動の幅をあまり大きくしないようにしよう、安定させようということで考えている制度であります。大体アメリカあるいは若干ドイツに似た制度をとっております。そこでこの考え方は、ある長期的な想定をおきまして、その予想される原価——別な意味の原価計算を行なっているわけではありませんが、将来の原材料等の成り行きあるいは生産数量等を考えました一種の生産費に一応の足を置いた価格というふうな考え方であります。その他の各社の販売価格は、これは各社のそれぞれの経営方針で自由にやっております。御承知のように、これは比較的需給関係で動きやすく、昨年の今ごろみたいに急上昇の一途をたどっているときもございますし、また昨今のように急下落いたしまして低迷しておるという時期もございます。鉄鋼価格としましてはむしろ建値的な考え方で、あまりそのときどきの需給関係あるいはコスト要因の変動等をそのまま反映して一進一退するということでは困ると思われますので、できるだけこの建値的な考え方で、需要家もあるいは供給する製鉄メーカーも、安定した採算基礎のもとに物事を運んだ方がいいだろう、こういうふうに考えておるわけであります。  それからコストのうちに占める労務費のお話でございました。ちょっと今資料を探しておりますので、お答えできると思っておりますが、しばらくお待ちを願います。     〔委員長退席、大坪委員長代理着席〕
  117. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 岩武さんが通産省の官房長のときに、日本産業構造研究会でいろいろ各産業について研究をされ、それを世に発表されておる。これはあなたも当然タッチをされたものだと思いますし、また八幡を初めとして各調査室長もタッチをされておる。それの中にはどういうことが書いてあるかというと、現在の賃金は社会保障の企業負担分を含めてもフランスやドイツの大体半分であり、ベルギーとイギリスに比べるとそれよりもやや低く、またアメリカの七分の一程度である、そこで労働生産性は若干低いけれども、この賃金に生産性の逆数にかけると、日本の方がかなり有利だということになる、鋼材生産における労務費が日本の方が非常に安いということを意味するのだ、以上によって、日本の鉄鋼業が原料面では幾分不利であると仮定をしても、労務費によって十分カバーすることが可能だ、こういうことをいわれておるわけであります。これは日本の労務費は非常に安いから、原料その他で非常に不利であるけれども十分やっていけるのだ、そのおかげは低賃金だということになる。ですから、私はデーターを持っておるわけでありますが、こういう問題について通産省ではどういうようにお考えであるのか、このことについて労働省ではどういうように考えておるのか、あなたの方では生産性向上ということを言い、最近はコスト・インフレということを——まああなたの方が言ったかどうか知りませんけれども、とにかく日経連では言い、自民党の政調会では大きな論文が発表されておる。ですからコスト・インフレについて非常に研究をなさっておるが、一体日本の鉄鋼業におけるコストの占める割合はどうか、それはコスト・インフレになりそうなのかどうか、これをまず労働省からお聞かせ願いたい。
  118. 大島靖

    ○大島説明員 先ほどお話のありました賃金国際比較の問題でございますが、たとえば日本の名目賃金を一としまして、アメリカの名目賃金の平均が九というような数字がしばしば出されるわけなんでありますが、御承知通りこの賃金の平均額というのは、たとえば性別とか、年令別とか、あるいは勤続年数別とか、あるいは職種の関係、こういうものがすべて一括して平均されておりますので、直ちにそのままこの名目賃金をもって対比することはちょっと困難だろうと思うのであります。またこれを実質賃金に直すといたしましても、各国における勤労者の消費構造が非常に異なっておりますので、従ってこれを実質賃金に直しましても、国際比較は非常に困難ということになるわけなんです。従って賃金額の比較で直ちに国際的に何らかの結論が出るということはなかなか困難な問題であろうかと考えておるのです。  さらにコスト・インフレの問題は、コスト・インフレの定義にもいろいろございますでしょうが、大体生産費が上って、その製品価格が上り、その製品価格の上りが物価全般に反映いたしまして一般的な物価騰貴、インフレを起す、こういうふうな意味合いであろうかと思うわけでありますが、ただ現在の日本の物価の状況、たとえば卸売物価にいたしましても、二十六年ごろから現在に至るまで比較的安定しておるような状況でありますので、現状をもって直ちにコスト・インフレといえるかどうか、コスト・インフレの定義とも関連いたしまして非常に困難な問題であろうかと存じております。
  119. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 労働省としては、コスト・インフレという問題は直ちにそういうように判断するわけにはいかない、こういうように考えていいのですか。
  120. 大島靖

    ○大島説明員 コスト・インフレという定義にもよりましょうし、またインフレという定義にもよると思うのでありますが、全般といたしまして、たとえば卸売物価にいたしますと昭和二十六年度を一〇〇といたしまして、三十一年度が大体一〇五程度でございましょうか、これは全般の経済の成長の大きさ等から考えますと、大体物価は安定しておるのじゃなかろうかと思うのであります。ただ今後においてどういうふうな物価の状況になりますか、これは一がいに断定できないと思います。従って現状がコスト・インフレであるとかないとか、ちょっとそこのところは直ちに、用語の定義とも関連いたしまして、申し上げるのは困難ではなかろうか、ただ申し上げられますのは、統計的に全般の物価の状況がどうなっておるか等につきましては申し上げられるわけなんでありますが、それを一つの定義のワクにはめてどうかということは、ちょっと申し上げることは困難であろうかと思います。
  121. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 むしろ日本の場合は、コストに占める労務費の割合というのは、どの企業もだんだん下っておる。石炭企業についても労務費が多いじゃないかということを盛んに言われますが、外国に比べては非常に低い。たとえば五〇%——石炭企業などは三〇%でなければやれないということを経営者は言っておるが、しかし、かつてのように十二時間くらいやらして、労働強化をされれば別でしょうけれども、外国はどうかというと、大体六六%ぐらいいっておる。フランスでもそうですが、イギリスが六四%くらい、アメリカも六六%くらいいっておる。ただドイツが比較的日本と同じような状態で五二、三%である。こういう状態です。一番機械化されていないところの石炭においてそうです。割合機械化されております鉄鋼はさらに一五、六%あるいは一五までいっていない、こういう状態です。ですから日本においては、ことにこの失業予備軍といいますか、過剰労働者を控えておる日本の国において、労賃を上げるから物価がそのまま上っていく、コストに響いて物価が上っていくということはちょっと考えられない。それを外国のような完全雇用の場所において、それを引用して日本状態を判断するのは私は間違っておると思いますが、どういうようにお考えですか。
  122. 大島靖

    ○大島説明員 この原価構成の中で占めます労務費の比率、これは多賀谷委員も御承知通り、産業によりましてパーセンテージが非常に異なるわけでございます。たとえば今お話の出ましたような鉄鋼業の場合と石炭鉱業の場合、これらでは労務費の比率にやはり相当の開きがあるのではなかろうかと思うのであります。従って原価構成の中で占める労務費の比率を全般的に平均いたしまして国際的にこれを論ずるということは、各産業の生産額とも関連いたしますし、非常に困難であろうかと考えます。
  123. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ですから、日本の場合には確かに外国に比べてコストの中で占める労務費は低い、これは事実でしょう。これはお認めになるでしょう。その次の問題は、日本にはずいぶん過剰労働者がいるのだから、労働力があるのだから、コスト・インフレというような状態に——賃金が上ってコストが上って、それによってインフレになるというような状態にはならぬだろう、こう私は言っておるのですが、どうですか。
  124. 大島靖

    ○大島説明員 ただいま申し上げましたように、原価構成における労務費の比率、これを国際的に大小を論ずることはなかなか困難であると思うのでありますが、ただ日本の最近の原価構成中に占める労務費の割合というものを通観してみますと、比較的安定しておるのではないかと思われるような統計もございまして、先ほど労政局長から申し上げましたように、原価のとり方、分け方等においても、統計上非常に困難な問題でありますから、一がいには申し上げられぬとは思いますけれども、大体において安定しているのではなかろうかと思うわけであります。
  125. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 安定していると言われますが、私はむしろ、安定と言えるかどうかわかりませんが、少くとも下降状態をたどっておる、こういうことは統計上大多数の産業について言えると思うのです。これを別な面から見ると、投資した割合に対する労務費、たとえば一億なら一億を投資した場合の常用者の労務費の割合を見ますと、低下の一路をたどっておる。ですから、そういう状態になりますと、むしろ労務費というのは下っておる、こういうふうに考えるわけです。政府ですから言いにくいでしょうけれども、あるいは調査不十分であるのか、その点わかりませんけれども、大体安定しておるということでありますから、コスト・インフレという状態ではない、こう判断をしたいと思います。  そこで岩武さんにお尋ねしたいのですが、先ほど質問しました点、わかりましたでしょうか。
  126. 岩武照彦

    ○岩武説明員 ぴったりのお答えにはならぬかもしれませんが、銑鉄のコストの中で労務費は大体二割見当のようであります。鋼材で三割を若干上回っておる、この辺が大体のところだと思っております。こまかいことのお話がありますれば、さらにこまかいパーセンテージを申し上げますが、大体今申し上げたところが日本の主要な会社のアベレージだろうと思います。
  127. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 とんでもない数字をおっしゃっておりますが、大体各鉄鋼を鋼材に換算する率があるでしょう、そうして、普通鋼材換算量と言っておりますが、鋼材生産費というものを出しておりましょう、われわれはよくわかりませんが、むずかしい数字で……。それに対して労務費はどうか、こういうのが大体出るでしょう。外国は出しておる。外国は何も銑鉄だとか、あるいは平炉だとかいうようなことで出ておるのではない。二割ないし三割ということはないですよ。二割ないし三割という数字はどっからも見つけられないと思います。今問題になっておるのは、やはり平均して一五、六%か、あるいはそれ以下ということになっておるでしょう。あなたは先ほど原料は八割だとおっしゃった。十割から八割を引けば二割じゃないでしょうか。そのほかにも原料だけではない、用役費とか、あるいは減価償却費がある。考えられないですよ、そういうことは。一体どういうことですか。
  128. 岩武照彦

    ○岩武説明員 私が正確ではないと申し上げましたのは、償却費の分を見ておりました。償却費の分は御承知のように若干の動力費が入っておりますので、それを引きますれば、大体二割見当だろうと思っております。
  129. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 重工業局長は建値をきめられる場合、いろいろあっせんなさっておるでしょう、実際は……。だから私はもう少し正確に把握してもらいたい。日本の鉄鋼界は、どういうわけかわかりませんけれども、比較的コストの内容は教えないのですね。総体的には発表しない。販売価格というのは建値をやりますからわかる。日本の石炭というのは逆に、コストは割合に教えるが、販売価格を言わない。そして、とにかく秘密主義を保っておる。同じ基礎産業でもそういうふうになっておる。ところが「鉄鋼界」という雑誌——これは鉄鋼連盟、経営者が出しておるのですが、これには詳細に外国のコストの割合を書いておる。イギリスではどうか、あるいはアメリカのある会社ではどうか、こまかく出ておる。ところが自分のところは言わない。自分みずからは知っているから言わない。しかしどう判断をしても大体一五、六%、大手三社あるいは六社でも大体一五、六%ではないか、こういうふうに思うのです。アメリカは、鉄鋼労連あたりがいろいろ雑誌に書いておりますけれども、大体四〇%から四一%程度、イギリスは二〇%から二一%、こういうように発表されておる。これは「鉄鋼界」が発表しておるのですが、自分のところはわれわれの推測であります。あるいはほかの人が書いた書物を見てわれわれが判断をする。あるいは実際支払う総賃金を調べてその売上高に占める割合、これはコストはわかりませんから、売上高に占める割合で計算をしていく。私は昭和二十九年の第一・四半期から三十二年の第一・四半期まで詳細に計算機で計算をさせてみたわけですが、そういう状態でも、ずいぶん労務費というのは少くなっておる、こういう状態であります。それに今ゼロ回答というのは、どうも私たちは解せないのですが、むしろこれは建値を下げまいとする工作ではないか、こういうように考えるのですが、どうですか。大体十一月には建値は下る予定だったのでしょう。
  130. 岩武照彦

    ○岩武説明員 今度のベース・アップ問題にからむ双方の主張の当否等については申し上げることはございませんが、建値の問題は先日も商工委員会で御質問ございましたが、これは先ほど申しましたような、やや長い期間のコストの情勢を見て処理することになっておりまして、特に引き下げを約束したという事情はないようであります。ただ全体の傾向として、海上運賃も一時よりも下ってきておりますから、従って現在の高い手持ちの原材料がだんだんなくなっていきますれば、これは早晩コストから見れば下る方向に向っておるということはいえると思います。ただいつから、どういう形で実施いたしますか、これはまだはっきりしておりません。いわんや現在のような、そういう労使紛争の最中では、この問題はきめにくいかと思っております。
  131. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 今鉄鋼労連が争議をし、また第八波、第九波、第十波と争議の計画をしております。これらを含めて鉄鋼の需給関係に影響があるかどうか、これをお聞かせ願いたい。
  132. 岩武照彦

    ○岩武説明員 需給関係に影響ないことはございませんで、先日申し上げましたように、十月中の争議行為による減産の量が、鋼材にして十四万トン、銑鉄にして九万トン余りであります。ただ鋼材の需給関係、銑鉄の需給関係は、先日も申しましたように、当初本年の鉄鋼の需給関係が、かなり需要が大幅にふえるという想定で、各社それぞれ増産の態勢で邁進いたしましたのと、それから昨年秋以来の需給逼迫で、かなり大幅な輸入手当を鋼材、銑鉄ともにいたしました。ところが六月以来の金融引き締め等、一連の総合施策によって、投資需要等がかなり減少いたしましたので、在庫がかなりふえて参ったという状況であります。九月末に生産者在庫の鋼材が三十八万トン、販売業者の在庫が十四万トンというようになっております。そのうちの一部には輸入の鋼材も入っておるかと思います。そういうことで比較的需給関係は緩慢で、普通の需給関係によってきまる鉄鋼の市中の唱え値といったものもかなり下向いておりますので、十月のスト行為による減産も、需給関係を逼迫させるには至らなかったのであります。(多賀谷委員「十一月は」と呼ぶ)十一月の争議の予定等については新聞で承知しているだけで、何とも申せませんけれども、ああいうふうな波状の予定でございますれば、十月と同じく需給関係はそう悪化するということはないと思っております。従って先日申しましたように、需給関係を円滑ならしめるために特別の措置云々ということは、現在のところ考えておらないのであります。
  133. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 現在のような波状的な闘争では十一月も需給関係は逼迫する状態にはならない、こう考えていいわけですね。
  134. 岩武照彦

    ○岩武説明員 大体そういうふうに見通しております。
  135. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 大体何日くらい争議をすると逼迫しますか。
  136. 岩武照彦

    ○岩武説明員 その御質問は、こういうことをお考え願ったらいかがかと思います。それは鋼材の品質にもよりますが、大体現在一カ月の生産が約七十五万トン程度になっております。若干この上下はありますが、大体その見当かと思います。その辺から何日間の争議でこれだけ生産が減退する、その結果在庫等がこういうふうになる、こういう推測でお答えする方法よりないと思いますが、ただわれわれ一つお答えできない点は、先ほど申しました在庫の中の、需要家のほんとうの在庫が実はつかめておりません。これはずっと見ておりますると、機械メーカー、土木建築関係あるいはその他の需要家の方面がかなり手持ちの鋼材を持っているのではないかと推測されることもございますので、その辺のところを的確につかみませんと、需給関係に影響があるかないか、すぐお答えしにくいかと思います。現在の状況は、どうもそういう需要家が鋼材の手当に急に乗り出してくるという状況ではないようであります。依然として機械面その他の需要も低調であり、かつ自分のすでに仕入れた在庫をかかえて、むしろその消化に困っているという状況のように見受けられますから、需給関係はやや平穏に推移するというふうに考えております。
  137. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私、実は労働大臣がおられませんから、最終的な質問をするわけにいかないのですが、そこであすまでに一つ準備をしてもらいたいのは、各国における生産費に占める労務費の割合、さらに日本の鉄鋼における労務費の割合並びにトン当り賃金がどの程度になっておるか、この推移をお聞かせ願いたい。これをぜひ通産省並びに労働省からいただきたい、こういうふうに考えるわけです。それをお願いして、質問を保留いたします。大手三社なら三社だけでけっこうです。
  138. 岩武照彦

    ○岩武説明員 御希望のようなものが正確に集まりますかどうか、ちょっと私も自信はございせん。できるだけ御希望に沿うようにまとめてみたいと思いますが、若干のことは御了承願いたいと思います。
  139. 大島靖

    ○大島説明員 先ほど申し上げました通り、労務費の比率というのは、統計上非常に——ことに国際比較となりますと、大へん困難なことでございます。どの程度の資料がございますか、かりに資料がございましても、全般的、統制的なものとは申し上げがたいかと思いますが、一応検討させていただきたいと思います。
  140. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 五島君。
  141. 五島虎雄

    五島委員 大臣がちょうど参議院の方にいっておって、きょうは大臣に質問できないことは残念ですけれども、またの機会をとらえて大臣には質問することにいたします。ところが政務次官がここにはおられますので、政務次官は大体大臣と考え方は同じだろう、これが食い違ったら労働行政がへんちくりんになる、そういうように思います。  具体的な質問に入る前に、まず私は簡単に前提として聞いておきたいのは、自民党の政策——ここで自民党の政策を持ち出すのはちょっとへんちくりんなような感じがしますけれども、自民党の上の内閣ですから特に聞くわけですが、本年の七月に自由民主党新労働政策要綱なるものが発表されたわけです。これは新聞等々を通じて国民に公約されたわけですから、自民党としてはこういうような労働政策で大体岸内閣の政策を推進していくのだという、その意思にほかならないだろうと思うわけです。そこで、現在から来年度の予算にかけて、この自民党の労働政策を基調にして労働対策を立てられたのだろうと思いますが、そうですか。
  142. 二階堂進

    ○二階堂政府委員 御承知通り、政党の上に立つ内閣の政治でありますので、政党が立てました政策を重要な参考として施策を行うということに御了解願っていいと思います。
  143. 五島虎雄

    五島委員 そうすると、その労働政策に基いて重要な政策を樹立したといわれるその言葉に対して、私は二、三中身の文章について簡単に聞いてみます。労働政策の必要性ということは、これはもう社会党も自民党も、ともに認めておるわけです。ところがここに、わが国の人口の半数を労働層が占めているのだ、しかもこれら労働者わが国経済発展の一翼をになう重大な役割を果すものである、そして労働者の協力なくしては生産の向上も経済の拡大も、ひいては国家の自立もあり得ないとここにうたっている。そして、国民の大多数を占めるこれら労働者及びその家族の福祉向上のために力をいたすことは、いかなる政府にとっても当然の義務である、ということですから、岸内閣は当然この労働者の福祉を向上せしめるのが義務であるというようにうたわれたものと解釈して、そのような観点の中から、ちょっと抽象的ですけれども、そういう基本的理念に立って労働政策を立てられたものであろうと思うわけです。そして「一般労働者大衆に対しては、政党および政府はその蒙を啓くため愛情と理解とを以てこれに接するよう努力すべきであって、いやしくもこれを敵視する如き固陋な態度をとってはならない。」という言葉をここにれいれいしく書いてあります。あなたたちもそういうような気持で労働政策を立てられたのだろうと思うわけです。固陋な態度をとってはならないということは、従来まで固陋な態度をとってきたということを語るに落ちたというように私たちは思うわけですけれども、私の思う通りならば、あなたたちはそういう気持も今まで持ってきたけれども、これからは頑迷固陋な態度をとってはならないというようにここにうたわれたのだと解釈します。次に「西欧先進諸国においては、早くから民主政治の発達と共に、資本主義も進歩し、今日において労働者は、広汎な自由と福祉とを獲得する一方、企業経営と国民経済の中におけるその責務を自覚して行動する結果、これら先進諸国における労働運動には、もはや一片の悲壮感もなく、擾乱性もないのである。」とここにうたってあります。ところがいろいろこの内応を見ますと、日本労働運動は一部の指導者階級が非常に破壊的な行動をするんだというようなこともうたってあります。ところが外国を調べてみると、こういうような問題は起きてないのだ、擾乱性もないのだというように外国を認識しておられる。そうして日本労働者の内部情勢をよく把握しておられないのじゃないかと思うわけです。わが党からスト権を授与するところの公企労法及び地方公企労法の改正が出ました。こういうようなことについて、このようにスト権を収奪し、団体交渉権までもぎとっている。そうしていろいろの労働問題が派生すると、これは一部の指導者の扇動である、ところが外国を見るとこういうような問題はない。私たちがよく調べると、外国は企業別組合ではない。従って労働者が組合を組織することは自由である、団結の自由の理念が貫かれておる、従ってこういうような擾乱もないのであるというように私たちは解釈するわけです。ところが自民党のこの主張は、非常にいいようで、何か内部矛盾がある。それから「又福祉国家が実施する社会政策労働政策は、決して前時代的な救貧政策であってはならない。自覚ある国民大衆は、必ず政府に対して福祉国家を要求するものであり、政府はこれに応えねばならない。資本主義は、生産の面において社会主義にくらべ優れている許りでなく、」といって社会主義のことを攻撃してあるが、「更に、社会主義の画一的生産の下にあっては、一般国民の消費選択の自由は到底確保されることはできない。しかし、残念ながら資本主義はその長所の故に、社会的には多くの弊害を生む危険をもっている。」資本主義が社会的な多くの弊害を生む危険を持っているというように、いみじくも自認されておるということは正直であると思います。私たちもそういうように思います。「しかもその弊害の犠牲が、資本主義経済の一方の担い手である労働者に及ぶ虞れがあるところに問題がある。」その通りです。「労働者階層の中に社会主義に魅力を感じるものが少くないことはこの事実に一半の原因がある。」というように喝破してある。これは一体どこからくるか。岸総理は貧乏の追放、暴力の追放そうして汚職の追放の三悪の追放を公約されたわけです。ところがわが国労働者生活は、今日までもろもろの委員から指摘されましたように、外国に比べて非常にその生活指数は低い。この中にも賃金の状況をうたってありますけれども、アメリカの一割にすぎない。十分の一である。そうしてイギリスに比べては二割にすぎない。五分の一の賃金であるということをいっております。そうして日本賃金状態は、一千名以上の大きな組織と、そうして十名から四十九名の少さい事業場の労働者は、その比較が四十数%にしか達しないというようにうたってあるわけです。そういうようなうたってある問題以外に、さっきから中原さんが言われましたように臨時工の問題、社外工の問題があります。その他多くの問題があるわけです。そこで労働省の労働政策は、これらの問題に重点を注いで貧乏の追放をしなければならないとお思いになっていろいろの施策が検討され、そうしてその基本となっているわけです。  私はこれから具体的な問題に入りますけれども、失業対策の問題を取り上げてみますと、昭和三十二年度の予算では、一般失業対策費でまかないます人員が十八万七千人であった。そうして特別失業対策費でまかないます人員が一万八千人、特別公共事業費が二万人である。そうして二十二万五千人を失業対策の一日の吸収人員というように今年度の予算では見ました。その当初において私たちは、二十二万五千人くらいの失業者の救済ではとうていこの失業の問題が根本的に解決するような問題ではないじゃないかということを主張いたしました。そして昭和三十一年に比べても、二万三千人もこれを切ってしまわれたわけです。ところが私たちがいろいろ調査しますと、昭和三十三年度における失業対策に対する一日の吸収人員は少しふえているように考えられるわけです。どういうような予算内容を持って失業の人員をふやされようとするかということを職安局長に聞いてみます。
  144. 百田正弘

    ○百田説明員 本年度においては失業対策事業に、今御指摘の通り二十二万五千人を総ワクとして、臨時就労対策事業まで含めて二百六十一億六千万円という予算が計上されたのでございまして、昨年より二万三千人減ということになっております。そのほかに失業対策関係としては二百二十五億七千五百万円という失業保険もあるわけでございます。三十二年度として失業保険の関係においては三十万五千人をこれによって救済するということになっております。現在までの状況においては第一、第二、四半期において、そのいずれも最初の予算で見込んだ人員よりも下回っておるわけであります。失業保険において三十万五千人を見込みましたが、現在大体二十八万程度でございます。失業対策事業において二十二万五千人を見込みましたが、四半期四半期平均で大体二十一万九千といったようなことになっておるわけであります。現在までの状況においては一応円滑に推移いたしておるわけであります。ただ本年五月に金融引き締めがとられて、国際収支改善のための緊急総合対策の影響によって、今後においてはこの情勢必ずしも楽観を許さないものがありますし、さらにまた駐留軍関係の離職という問題も生じますので——特に金融引き締めの場合においては、この前、昭和二十八年の秋に行われた引き締めの影響は、たとえば鉱工業生産、卸売物価といったようなものには直ちに響いて参るのでございますが、労務に現われてくるのは相当なタイム・ギャップがございまして、ずれて参るのでございます。従って今日までのところにおいては、昨年よりも雇用も高い水準にあるわけでございまして、来年度においてはそういうずれが出てくるおそれがある。そういう意味合いにおいて、来年度においては本年度よりも以上の失業対策の吸収人員を見込んだ次第でございます。
  145. 五島虎雄

    五島委員 大体来年度の考え方として、ぐっとふやされておる。ふやした面にだけは私は了解するところがあるわけですけれども、このふえるということをあなたたちが考えられることは、駐留軍の失業者等々をこの中に入れて、七万五千人ばかりの吸収人員を増加されようとするのならば、駐留軍の問題と関連していろいろ質問していかなければならぬと思いますけれども、従来からだんだんと失業者は減ってきたのだというように説明されております。ところが労働省の見解としては、今後は失業者が増大していくのだ。きょうの新聞にも発表されておりました。三月ごろは四十三万人に減ったが、八月以降四十九万人ですか、微増をしておるというようなことを労働省から発表されましたけれども、それから来年にかけては失業者はどんどんふえるというような御見解ですか。
  146. 百田正弘

    ○百田説明員 今御指摘になりました完全失業者は、総理府統計局の労働力調査によりますと、三月、八十二万、四月、五十九万、五月、四十六万、一月——八月の平均が大体五十万、昨年の同期は六十一万でありまして、昨年同期よりも十一万ぐらい減って参っております。ただ今後の問題といたしまして、駐留軍の問題といたしましては、これは別個に閣議決定を経て、それぞれの失業対策を決定していく、さらにこの駐留軍の労務者には技能者も非常に多いので、職業紹介の面で失業保険の受給期間中にできるだけ就職のあっせんをいたしたい、あるいはまたその他のそれぞれの措置をとりたいということで、関係各省の間でやっておるところであります。来年度の予測といたしましてはこの短期的に出る失業、景気の変動によって短期的に出る現象というものは非常に予測が困難であります。長期的には一応こういう方向に持っていく、吸収計画はこういうふうにしていくということは可能でございますけれども、短期的には非常に困難でございます。ただわれわれの場合に、一つのそれの指標となりますのは、過去における同様な政策の影響がどういう影響を示したかという経験が指標になるわけであります。三十万とはじきましたのは、そうした過去の金融引き締め政策後の動き、その他の要素を加えまして、来年度におきましては三十万というような要求をいたしておりますが、今後さらにその後の推移によりましてこれを固めて参りたい、こういうふうに考えます。
  147. 五島虎雄

    五島委員 そうするとこの三十万人に対して、この前、国会閉会中に、米価の引き上げの問題から労務費を四円引き上げられたわけです。そしていろいろの物価の趨勢によってこの失対事業関係の労務者は非常に生活の困窮をなお一そう訴えておるわけですけれども、将来これは三百五十円くらいは労務費として支給しなければならないというようにかねてわれわれは主張してきたわけですけれども、今後どういうように労務費の問題について考慮を払っておられますか。
  148. 百田正弘

    ○百田説明員 失業対策事業費の労務費の問題につきましては、御承知通り緊急失業対策法によりまして、いわゆるPW等をもとにして、これより低く定めなければならないということになっておるわけであります。この賃金決定の原則はあくまでもPWの動きによってきまるということになろうかと思います。先般十月一日から米価改訂が行われましたので、直接この米価改訂というのが労働者生活に影響を及ぼすところが大きいというような政治的な考慮から、事務的には今私が申し上げた通りでございますが、今後のPWの改訂あるまでの暫定的な特例的な措置といたしまして、特に労働大臣の政治的な配慮で四円の増給をはかったのであります。原則的にはやはり緊急失業対策法等の規定にありまするような方法でやらざるを得ないというふうに考えております。
  149. 五島虎雄

    五島委員 そうすると、月の労働日数の件について何か考慮されておりますか。従来は、本年度の予算までは、月平均二十一日という計算になっておったわけでありますが、やはり二十一日ではとうていこれらの人たちが暮していけない、もちろん死にはしないでしょうけれども、非常に生活は困難である。これらの問題について二十五日、日曜を差し引いた全部に仕事を与えてやろうということは、やはり省としては貧乏の追放の上からも至当であろう。非常に予算措置はむずかしいでしょうけれども、こういうような考え方について何らかの考慮がありますか。
  150. 百田正弘

    ○百田説明員 就労日数を二十五日にしてくれというような点につきましては、私も始終組合の方々の御要望も承わり、実際また何とかして現在の就労日数二十一日をふやしていきたいというふうに考えておるわけでございます。来年度におきましては、さらにこれをふやしていきたい、これは今後の予算折衝の問題にもなりますが、実現させたい、漸次その線まで近づけるように努力して参りたいと思います。それは来年のことになりますので、一応年末等におきましては、現在の二十一日よりもさらに三、四日でもふやしたいというような処置のできるように現在検討いたしております。さらにできるだけ現在のところは、予算のワクもございますけれども、民間求人の開拓その他によりまして、就労日数の増加を一日でもよけいにすべく努力中でございます。
  151. 五島虎雄

    五島委員 あなたたちは、そのように二十一日の労働日数をふやしてやりたいというように思われる。そして三十二年度予算をわれわれは通した。ところが全国の実情を分析してみると、二十一日に達せざるところの地方がうんとある。それはすべて赤字財政に基くところの地方団体に生活する失対労働者で、二十一日にも満たないで非常に苦しんでおる。京都をいつも例にあげるようですけれども、やはりこれは依然として、去年からことしにかけて十五、六日しかないということをいつも訴えられておる。こういうようなところはどういうように指導されておるわけですか。
  152. 百田正弘

    ○百田説明員 私全国平均で申し上げましたが、全国平均でいくと、予算の二十一日よりちょっと上回っておると思います。ただ御指摘のように、京都あたりは十六日程度というようなことになっている。この点につきましては、できるだけこの点を二十一日の線に近づけるべく、具体的に実は京都府市当局と話し合いをするということに現在進めておる次第でございます。来年度におきましては、今お話になりましたように、財政の困難なところにつきましては、現在高率補助制度がございますが、この高率補助制度を拡充して参りたいというふうなことで大蔵省と折衝中でございます。またこの高率補助制度のやり方自体につきましても、さらに検討を要すべき点もあるようでありますので、この点も今後検討いたしまして、実情に沿うようにいたしたい、こういうふうに考えております。
  153. 五島虎雄

    五島委員 新しく局長になられて、そしてそれと取っ組まれるということは今後期待できると思いますけれども、ところが今後そういうように努力するということは、一体いつそれが実現するだろうかというように労働者諸君はすぐ期待をかけます。ですから京都ばかりじやなくて、各地方においては、ほとんど赤字財政でありますから、こっちから補助をやろうといっても、各地方で受入れなければ仕方がない。そうすると、現実になってそれが二十一日にも満配しない。東京では幸い二十五日くらいになっておりますから、東京並みによそができないということはない。こういうようなことを政府自身が重点的に考えて、そうして赤字財政のところには特別の考慮を払ってやらなければいかぬ。それは今答弁されましたように、私たちは百田さんの発言に期待します。ところがさっき予算人員の増加を七万五千人と見込んでいるのだといわれるわけでありますけれども、これはやはり失業の問題をあなたたちが直接とらえて、七万五千人でもふやさなければならぬ。将来の傾向から見るとどうしてもふえそうだ。金融引き締めの問題からどんどん失業者がふえてくるだろう、あるいはふえてきつつあるということを確認されたがゆえに、七万五千人の予算の増になったのじゃないかと思うわけですよ。これは大蔵省の予算査定でどういうように切られるかわからないでしょう。また去年のように二十二万五千人でがまんしてくれろと言ったら、あなたたちは、がまんして引き下らなければならないような立場になって、そしてわれわれに二十二万五千人で大丈夫でありますと言うて説明しなければならないような羽目になりはしないか。そうすると全国の失業して困っている人たちのうち、七万五千人が失業対策事業にありつくというように大きな期待をかけているのを、失望させるということになりはしないかと思うのです。従って、この問題だけについても大蔵省とうんと腰をすえて折衝し——七万五千人じゃ少い、私たちは四十万人ほしいと思っている。しかし、これだけでも予算に組まれるのだったら、政府と大蔵省との関係ですから、七万五千人は確実に取って、そして、こういう問題では貧乏の追放はできませんけれども、その一端でもいいから実現してやっていただきたいと思います。幸い政務次官もおられるわけですから、局長の発言をわれわれは期待するとともに、政務次官も努力して下さい。——約束されましたね。ところが、当面差し迫っている問題は年末手当の問題です。私たちはやはりどうしても政府で直接雇用し、直接毎日々々仕事を与え、そして生活を見る。そして労働者諸君は、いろいろの批判もあったかもしれませんけれども、営々として職場でいそしんで毎日々々その仕事に努力しておられるわけです。従って年末、年始の、あるいは有給休暇等をも考慮してやらなければならぬと思う。しかし今までは盆に三日、年末に七日というように微々たる手当が出て、そしておもち代になっていた。しかしながらやはりこれは十日分くらいやらなければいかぬのじゃないか。一般の労働者諸君は一カ月、あるいは二ヶ月というような、まあ少くはあるけれども、そういうような越年資金を得て、そして正月を暮らされるわけですが、この人たちは率からすれば、十日分とすれば三割三分にしかならないわけです。これらの問題について、さっき委員長として、大坪委員長でしたが、聞かれたとき、八日分を考慮しているのだという答弁があったようです。七日よりも八日の方がいいに違いありません。しかし総体的な問題、絶対的には私たちはそれは少いと思います。そこでこの八日分の予算措置の問題については、これははっきりした通牒を各都道府県に出して、そして八日分を確保するというような法的根拠というものはございませんか。今通牒とか何とかははっきり出されませんか。
  154. 百田正弘

    ○百田説明員 この問題につきましては、午前中大臣から御答弁がありましたように、大臣も非常に御努力願ったのでございますが、結局八日分ということになったわけでありまして、それにきまりますれば、われわれとして当然通牒は府県に出すということになります。
  155. 五島虎雄

    五島委員 これらのことについては、本日わが党から法案が提出されましたが、やはりこの問題については、ただ恩恵的にやるということでなくて、やはり政府の労務者として、法的根拠に基いて処理すべきことが必要であろうと思います。いつまでも通牒や口頭でこれらの問題を処理すべき状態ではないと思いますけれども、局長はどういうようにお考えですか。
  156. 百田正弘

    ○百田説明員 これにつきましては、けさほど社会党の方から御提案になりました法案があるわけでございますから、われわれといたしましては、現在のところの建前は、昭和二十七年度でございましたか、衆議院のこの労働委員会で議決になられました後にずっとやってきておるわけでございまして、ただ日雇い労働者という性格からいたしまして、年末手当の問題は就労日数の増加あるいは賃金増給というような形で処置しております。
  157. 五島虎雄

    五島委員 賃金増給ということがいわれたわけですが、東京あたりでは二十五日の労働日があるわけでしょう。それに賃金増給ということになると、どういうような関係になりますか。東京の失対の人たちに対して賃金増給というような表現をするのと、何か矛盾したような気がするのですけれどもね。
  158. 百田正弘

    ○百田説明員 就労日数の増加あるいは賃金増給というような歩増しをつけるという格好になろうと思います。
  159. 五島虎雄

    五島委員 ところが年末手当の問題で、先月の三十日に、全国の労働部長会議か何か招集されましたか。
  160. 百田正弘

    ○百田説明員 先月の三十日に招集いたしました。
  161. 五島虎雄

    五島委員 そこでいろいろ事務的な処理の問題で、各都道府県の労働部長あたりからは、今年度の年末の施策についてとか何とかいうような質問があっただろうと思います。ところがこの中で、たとえば八日分なら八日分を支給するに当って、支給できないようなところがある場合は一体どうかというような質問がありましたか。
  162. 百田正弘

    ○百田説明員 政府で、まだそのときは八日というのは決定しておりませんでしたが、七日なら七日といたしまして、これを支給できない場合はどうかというような質問はございませんでした。
  163. 五島虎雄

    五島委員 日雇いの年末手当は出さなければ出さなくてもいいんだ、そうして財政の関係で、でこぼこが各府県にはあるのだ、赤字で困っておるならば労働部長が調節をとったらいいんだというように指導されたということを聞いたのですが、そういう事実はないですか。
  164. 三治重信

    ○三治説明員 それは七日ないし八日分、政府が補助の対象にする賃金増額または就労日数の増加の分については、従来も政府に協力して県、市ともどもやっていただいて、それについて、赤字だから、政府が補助してくれても出ないということは大体ないわけなんです。ただ問題はそれ以外に、全日労の組合運動として、各市町村、県に個別的に、国以上に十日分とか、五日分とか、または五千円とか千五百円とかいうふうに出してくれという問題が各地で非常に激しく行われておるわけです。それの問題についての質問があったわけです。それで問題は、同じ県の中におって、Aという市は二千円出す、隣りのBという村は財政がないから五百円しか出さない、そういうふうな格好で、隣りの市が二千円出したのに、ここの村は五百円しか出さぬというのはどういうわけだということで、今度はその付近の全部の組合なり、さらに地評の幹部まで集めて、そこに集中攻撃をかけるわけです。それが非常に県としてつらい。またそこに当該事業主体としての市長、村長というものが非常に処理に困る、苦情が出てくるわけです。それについての質問であったわけなのです。それについて従来県自身も、相当財政の悪いところについては援助をして、当該市のうちで、たとえば三千名の失対労務者がいると、だんだん市の負担分から県の負担分へ移って、千名なり八百名というものを今度は県の直営でやり始めているわけです。そうすると、今度は同じ市の住民の中の失対労務者でも、当該市が出す分と県が出す分とまた違ってくるということで、今混乱を来たしているわけです。その問題で、なるべくそういうものは、全国の問題はとにかくとして、少くとも同じ県の中の事業主体として、しかも同じ市においても県の事業と市の事業とあるのだから、それは一つ県が各事業主体の担当者を集めてよく相談して、それに対して混乱のないように処理したらどうですか、こういうふうに答えたわけなのです。
  165. 五島虎雄

    五島委員 関西付近では、今の三治さんの答弁について、各地方々々で自主的にいろいろ交渉の上に、地方財政の許す限り、いろいろの気の毒な面等等をあわせ考えて、こういうようなことは従来慣行としていろいろ施策をしてこられただろうと思います。ですから各地方団体の自主性にまかせて、こういうことはことに上から指導してやっていただくというような現象が起きてきたら大へんなことになるのじゃないかと思うわけです。あなたの説明はわかりました。ところがこの失対の人たちが——この前の松浦労働大臣は、失対事業が職業になってはいけないということを当委員会で言われたことがあるわけです。しかし私たちはあのとき、やはり大臣に対して、失礼なことを言うなといって、多賀谷君がしっぺ返しをしていたことを思い出すわけです。ところがその実態は、この失対事業に入っておられる労務者の諸君はどうしても足が抜けないでおる。そうして何年も何年も失対事業の労務者として生活をしておられる。そのバランスが非常に高いのではないかと思うわけです。特に関西地区等々では、地域、々々について、そのバランスが特に高いという現象があるわけです。それはいろいろ社会的な問題もあろうと思うわけです。そしてそれらの人たちは失対事業にたよらなければ生活ができない人です。ところが省から適格基準等々を示されて、そしていろいろの問題に関連して適格基準で切られ切られて、そして二戸に一人の適格労務者しか仕事ができない。そうすると一家をあげて失業しているというようなところでも一人しか労働しない。そんなところは赤字である。赤字であれば二十一日の全国平均の労働日数にも満たない。しからば、もしもあなたたちが考えておられることが事実ならば、来年度は三百十六円になるかもしれません。三百十六円を十六日にかけたら五千円にしかなりません。この層の年齢は非常に高いと思います。従って家族の数も多いと思うのです。そういうような人たちを五千円程度でまかなっていかなければならぬということは、その生活は非常に困難であるということが推測されるわけです。従って昨日の委員会においても、八木さんがこの問題についていろいろ主張しておられました。たとえばあなたたちはいかに適格基準をしっかりしょうとしたって、生活の苦しさには耐えられないから、この適格基準の裏をくぐって、別れたくない夫婦が、夫婦別れをして、表面を糊塗しながら二人が失対労務者になって生活している事実等々がある。これをあななたちは、それでもいけないのだというような、適格基準の血も涙もないような考えを持っておられますか。そういうようなことは今後実態に即して処理していくことがほんとうの労働省の親心ではないかと思うわけです。そういうようなことについてあなたたちはどういうように将来考えていかれますか。やはり適格基準はきまったのだから、法のきまった通りに、実際そんなことがわかったら、やっつけてしまうのだというように、そういうふうにまでは、局長はお思いにならない人物であろうと思いますが、どうですか。
  166. 百田正弘

    ○百田説明員 お話の通り実際失業対策事業にたよらなければ食っていけないという状態人たちが現実にあることも事実であります。できるだけそうしたことはやりたくないのでありますが、やはり財政上のワクの関係等もございますので、一応家計の主たる担当者ということで、現在規定しておるわけでありまして、私どもといたしましては今後の方向といたしましては、現在失対事業に働いておられる方々を見ますと、いろいろな事情から、あるいはまた夫に死に別れて奥さん方が全然経験もなかったけれども働いておられる。従って女の方、あるいは老齢の方が非常に多いという現実もある一面、また若い方も相当おられますので、そうした方々はできるだけ一日も早く一般の仕事に就労できるように、われわれもその面から努力いたして参りたいと思いますし、そういう面もいろいろやっておりますが、いろいろな訓練と申しますか、補導と申しますか、そういう面におきまして一般の民間、その他に就労できるようにいたしたい、こういうことでやっていきたいと考えております。
  167. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 本日はこれにて散会いたします。     午後三時二十八分散会