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1957-11-11 第27回国会 衆議院 社会労働委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年十一月十一日(月曜日)     午前十時五十九分開議  出席委員    委員長 藤本 捨助君    理事 植村 武一君 理事 大坪 保雄君    理事 中川 俊思君 理事 野澤 清人君    理事 八田 貞義君 理事 八木 一男君       大橋 武夫君    加藤鐐五郎君       小島 徹三君    小林  郁君       田中 正巳君    高瀬  傳君       中山 マサ君    古川 丈吉君       亘  四郎君    赤松  勇君       岡  良一君    岡本 隆一君       栗原 俊夫君    五島 虎雄君       多賀谷真稔君    滝井 義高君       堂森 芳夫君    中原 健次君       山花 秀雄君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 堀木 鎌三君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   鳩山威一郎君         厚生事務官         (社会局長)  安田  巌君         厚生事務官         (社会局生活課         長)      加藤 威二君         厚生事務官         (児童局長)  高田 浩運君         専  門  員 川井 章知君     ――――――――――――― 十一月八日  委員横山利秋君辞任につき、その補欠として岡  良一君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 十一月八日  公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律  案(八木一男君外十五名提出衆法第四号)  地方公営企業労働関係法の一部を改正する法律  案(八木一男君外十五名提出衆法第五号) 同月九日  国又は地方公共団体失業対策事業のため雇用  した職員に対する期末手当に関する法律案(八  木一男君外十五名提出衆法第六号) 同月八日  未帰還者留守家族等援護法に関する請願吉川  兼光紹介)(第四〇二号)  国民健康保険診療報酬支払基金制度設置に関  する請願松平忠久紹介)(第四〇三号)  未帰還者留守家族等援護法による療養給付期限  延長等に関する請願井手以誠君紹介)(第四  〇四号)  豊平町の低所得者収容施設改修費国庫補助に関  する請願正木清紹介)(第四〇五号)  未帰還者留守家族等援護法による療養給付期間  延長に関する請願横山利秋紹介)(第四〇  六号)  労働基本権回復に関する請願井岡大治君紹  介)(第四〇七号)  同(小松幹紹介)(第四〇八号)  最低賃金制及び家内労働法制定に関する請願  (小松幹紹介)(第四〇九号)  衛生検査技師身分法制定に関する請願藤本  捨助君紹介)(第四一一号)  同(臼井莊一君紹介)(第四一二号)  同(福田昌子紹介)(第四一三号)  同(吉川兼光紹介)(第四一四号)  医業類似行為既存業者業務存続に関する請願  (青木正紹介)(第四一五号)  同(伊東岩男紹介)(第四一六号)  同(井手以誠君紹介)(第四一七号)  同(池田清志紹介)(第四一八号)  同(植木庚子郎君紹介)(第四一九号)  同(亀山孝一紹介)(第四二〇号)  同(田子一民紹介)(第四二一号)  同(鈴木善幸紹介)(第四二二号)  同(鈴木茂三郎紹介)(第四二三号)  同(吉川兼光紹介)(第四二四号)  牧園町に温泉療養研究所設置請願池田清志  君紹介)(第四二六号)  老齢年金制度法制化促進に関する請願(松澤  雄藏君紹介)(第四二七号)  国立玉浦療養所存置に関する請願愛知揆一君  紹介)(第四二八号)  国民障害年金制度創設に関する請願楢橋渡君  紹介)(第四二九号)  温泉旅館単独業種指定に関する請願愛知揆  一君紹介)(第四三〇号)  社会保険強制包括適用に関する請願外二件(石  坂繁紹介)(第四三一号)  国民健康保険事業育成強化に関する請願(木村  俊夫紹介)(第四三二号)  動員学徒犠牲者遺族援護に関する請願池田  清志紹介)(第四三三号)  児童福祉法による保育所措置費徴集基準引下げ  に関する請願池田清志紹介)(第四三四  号)  戦時中の特殊漁船乗組員戦没者遺族援護に関  する請願相川勝六紹介)(第四三七号) 同月九日  最低賃金制及び家内労働法制定に関する請願  (井岡大治紹介)(第五五七号)  同(中村時雄紹介)(第七一七号)  同(茜ケ久保重光紹介)(第七一八号)  同(今村等紹介)(第七一九号)  同(五島虎雄紹介)(第七二〇号)  同(木原津與志君紹介)(第七二一号)  同(田中織之進君紹介)(第七二二号)  同(佐藤觀次郎紹介)(第八三〇号)  同(田中武夫紹介)(第八三一号)  労働基本権回復に関する請願井岡大治君紹  介)(第五五八号)  同(茜ケ久保重光紹介)(第七一二号)  同(今村等紹介)(第七一三号)  同(田中織之進君紹介)(第七一四号)  同(門司亮紹介)(第七一五号)  同(中村時雄紹介)(第七一六号)  同(佐藤觀次郎紹介)(第八二八号)  同(多賀谷真稔紹介)(第八二九号)  日雇労働者年末手当に関する請願八木一男君  紹介)(第五六〇号)  都市清掃施設費国庫補助範囲拡大に関する請願  (牧野良三紹介)(第五六二号)  同(徳田與吉郎紹介)(第七三三号)  予備保母費に関する請願牧野良三紹介)(  第五六三号)  下水道行政一元化等に関する請願牧野良三  君紹介)(第五六四号)  国民健康保険に対する国庫補助増額等に関する  請願牧野良三紹介)(第五六五号)  生活保護法に基く支弁経費全額国庫負担請願  (牧野良三紹介)(第五六六号)  豊平町の保護施設補修工事費国庫補助に関する  請願岡本隆一紹介)(第七〇三号)  豊平町の低所得者収容施設改修費国庫補助に関  する請願岡本隆一紹介)(第七〇四号)  馬丁の身分確立並びに労働法規等完全適用に  関する請願吉川兼光紹介)(第七〇五号)  旅館従業員に対する健康保険法等の一部改正に  関する請願五島虎雄紹介)(第七〇六号)  同(戸叶里子紹介)(第七〇七号)  同(八木一男紹介)(第七〇八号)  同(櫻井奎夫君紹介)(第八一四号)  同(辻原弘市君紹介)(第八一五号)  旅館従業員に対する労働基準法完全施行に関  する請願五島虎雄紹介)(第七〇九号)  同(辻原弘市君紹介)(第七一〇号)  同(八木一男紹介)(第七一一号)  同(滝井義高紹介)(第八二二号)  健康保険法の一部改正に関する請願山花秀雄  君紹介)(第七二三号)  国民健康保険法の一部改正に関する請願山花  秀雄紹介)(第七二四号)  結核医療費全額国庫負担に関する請願山花秀  雄君紹介)(第七二五号)  同(滝井義高紹介)(第八二〇号)  完全給食及び完全看護加算額引上げ等に関する  請願山花秀雄紹介)(第七二六号)  国立病院療養所賄費増額に関する請願(山  花秀雄紹介)(第七二七号)  同(滝井義高紹介)(第八二一号)  生活保護法の一部改正及び生活基準額引上げに  関する請願山花秀雄紹介)(第七二八号)  無医村解消に関する請願山花秀雄紹介)(  第七二九号)  社会保険による診療報酬の点数及び単価改訂に  関する請願山花秀雄紹介)(第七三〇号)  日雇労働者賃金引上げ等に関する請願高瀬  傳君紹介)(第七三一号)  同(横山利秋紹介)(第七三二号)  動員学徒犠牲者補償に関する請願永山忠則  君紹介)(第七三四号)  引揚者等給付金法事務取扱緩和に関する請願  (池田清志紹介)(第八一〇号)  医療制度に関する請願池田清志紹介)(第  八一一号)  衛生検査技師身分法制定に関する請願小島  徹三紹介)(第八一二号)  同(山村新治郎君紹介)(第八一三号)  戦争犠牲者保障に関する請願滝井義高君紹  介)(第八一六号)  生活保護予算増額等に関する請願滝井義高君  紹介)(第八一八号)  生活困窮者に対する年末特別扶助に関する請願  (滝井義高紹介)(第八一九号)  医業類似行為既存業者業務存続に関する請願  (稲富稜人君紹介)(第八二三号)  同(大平正芳紹介)(第八二四号)  同(清瀬一郎紹介)(第八二五号)  同(島上善五郎紹介)(第八二六号)  同(松本七郎紹介)(第八二七号)  災害救助法の一部改正に関する請願池田清志  君紹介)(第八四九号) の審査を本委員会に付託された。 十一月九日  民生委員の費用に関する陳情書  (第一一二号)  国民健康法の一部改正に関する陳情書  (第一二三号)  国民健康保険事務費国庫補助金実質的金額補  助に関する陳情書  (第一二四号)  療養給付費国庫補助率引上げに関する陳情書  (第一二  五号)  国民健康保険事業に対する国庫補助増額等に関  する陳情書(第一  七一号)  引揚者集団収容施設等の改善に関する陳情書  (第一七二号)  戦没者遺家族国家補償範囲拡大に関する陳情書  (第一七四号)  国民健康保険事業強化に関する陳情書  (第二一一号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  社会保障制度医療公衆衛生及び婦人児童  福祉に関する件     ―――――――――――――
  2. 植村武一

    植村委員長代理 これより会議を開きます。  都合により委員長が不在でありますので、私が委員長の職を勤めます。  社会保障制度医療公衆衛生及び婦人児童福祉に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますので、これを許します。中山委員
  3. 中山マサ

    中山(マ)委員 先日この国会の初めの委員会であったと記憶いたしますが、堀木厚生大臣は、この委員会におきまして、厚生行政の末端が弱い、これを是正しなければならぬということを御発言になったのでございますが、どういう面でそういうふうにお考えになっているか私は存じませんけれども厚生行政と申しましても非常に幅が広いのでございますからどの点でそうお考えか知りませんが、私といたしましては大臣のおっしゃったことはまことに適切である部面を見出しておるのでございます。社会福祉事業と申しますが、結局気の毒な人たち福祉をもたらすというのがその考え方であることは当りまえの話でありますが、それが逆にそういう面において災いをもたらしておる部面を私は見て参りましたものでございますから、大臣がおっしゃいましたところの弱い点がある、それを是正しなければならぬということですが、それをどういうふうに是正して下さるかということが、まずお尋ねしなければならない一点でございます。  私は総理府の中にございます中央青少年問題協議会委員をいたしておるのでございますが、この間その最後の会合がありましたときに、青少年の犯罪を防止するために、社会環境をよくしなければならぬということが出まして、どういうふうにそれをよくするかということが宿題として残されたのでございます。社会環境と申しましても広いのでございますが、私はそれを狭めました福祉事業関係においてこの社会環境が非常に悪いという面を見ておるのでございますから、その青少年のためということに考えを及ぼしましても、児童局また政治的な見解としては大臣一つお尋ねをしたいと思っておったのでありますが、お留守のようでいたしかたがございませんので、本日は児童局長にお尋ねしておきたい。実は石橋内閣のときの政府の三本の柱といたしまして社会福祉事業というのがその大きな柱の一つとなっておりますが、そういうところで裏切り行為があるということは私は実に残念なことであると思うのであります。  端的に申しますと、群馬県下に起りました三つ事件があるのでございます。その第一は、高崎市の福祉主事であるところの鳥羽直一生活扶助をえさにいたしましてその保護児童滝沢富江というまだ若い子供を凌辱いたしまして、そしてその村の合併によって区画の整理が行われるために自分が他地区へ行かなければならないので、そういう行為後任者に知れることをおそれまして東京へ遊びにいくといって連れ出して、荒川でこれを殺しておるのでございます。福祉事業主事自分の保護すべき子供を殺すというところまでいったということは、まことに残虐もここまできたら言いようもないことであると私は考えるのであります。そのことが一つ。  また第二の事件といたしましては渓声学園事件であります。これは三十五人ばかりおりますその中の七人に対しまして七十九件という強制わいせつ、暴行が行われておりまして、虐待が二十四件、そしてそこの園長さんでございますか、何かその人の気にいらないことがございますと子供たちを処罰の意味でなぐり合わせるというふうなことが親子三代にわたって行われておる。これが暴露いたしましたので、とうとう農薬を飲んでその人は死んでしまったということ。  第三には、県の児童相談所の二人の職員が同じように児童に対して魔手を伸ばしておるのでございます。  それで第一の鳥羽は自首して出て司直のさばきを受けることになった。第二は園長が自殺して、その人としてはけりがついた。そこは閉鎖になったそうでございます。第三は、二人の職員は単に転勤させられただけである。しかもその一番長になる人が、女はみなそういうふうな——まことにきたない言葉を使いまして、ズベ公だ、だから大したことはないのだというようなことすらも漏らされたということが私どもの方に聞えてきておるのでございますが、こういう心がまえの人たちがかような仕事に携わっておるということは、人生の日のささないところにおります子供たちがまことにより暗い立場に立つものと思います。それで、こういう福祉事務所の中に収容されておる女の子供たちがいわゆるティーン・エージャーであるこの人たちが、自分のからだを提供することによって生きていくというようなことをならいましたならば、もうそこを出て世間に出ましたら、私どもが一生懸命になって売春防止法を作っても——いまだにそれが来年の四月にならないと実施されないということで延期になっておりますが、それがまたもたもたするようなたねがここで作られておるということは、非常に考えなければならないことではないか。今日文部省におきましても道徳教育を非常に高らかに叫んでいて下さいますが、同じ内閣の中で片一方においてはそういうことを一生懸命にいうておるところがあるかと思いますと、片一方では実際の面においては私どもの目の届かないところで全然逆の、道徳教育なんということを全然考えない、まるで獣になったような格好の人がそういうところに座っておるということは、省として、御存じなかったろうとは思うのでございますが、こういう弱い点をどうして是正しようとなさるか、どういうところに難点があるのか、また第三にはこういうところの主事だとかあるいはそういうところに立つ人たちのここへ来るまでの経路と申しますか、その人たち福祉事業に携わるだけの肩書を持つまでの教育状態、そういうものはどういうふうに児童局としては御監督になっておるか、私は伺っておきたいと思うのでございます。
  4. 高田浩運

    高田説明員 ただいまお話のありました群馬県下の福祉機関におきましてお話のような不祥事件の起りましたことは、何としてもまことに残念なことでございますので、私ども関係者として心から遺憾に存じておる次第でございます。こういうことは実は福祉機関としては夢想だもされない、考えるにしても考えられないほどの問題でございまして、実は初めてこの話を伺ったときに、私ども一同自分の耳を疑ったほどでございますけれども、だんだん調べて参りますと、お話にありましたようなまことに何とも申し上げかねるような事態でございまして、私どもこれに対する措置を急速にとると同時に今後における指導監督等について十分気をつけなくちゃならないということを痛感をいたしておる次第でございます。  まず第一にこのお話高崎市におきます渓声学園といういわゆる養護施設、これは宗教法人宗伝寺というお寺が中心になって経営をいたしております養護施設でございます。お話のように三十五名児童を収容いたしておったのであります。これにつきましては早速ここにおりました児童につきましてはほかの施設分散収容措置をとりましてここをがらあきにいたしますと同時に、この施設を今後どう持っていくかについて十分検討いたしました結果、このままの組織なり人的な構成をもって進めるということは児童福祉上好ましくないという考え方をもちまして、いろいろ経緯はございましたけれども、結局結論として閉鎖をすることにいたしました。しかし閉鎖をしただけでは、これはそれだけ施設が減るわけでございますから、その辺のところはさらに別個の方途を講じて養護施設の拡充の問題について群馬県と協力をして参りたい、そういうような考え方でおるような次第でございます。  それからこれらの三つ事件が続いて群馬県において起りましたことについて、群馬県としては一般のこういった機関ないし施設等に対する指導監督について、これらの施設のみならず、ほかの施設等についてもそういうことがあってはならないので、さらに厳重に注意をして、ほかの施設等についても、こういうことがあるかないか一ぺん検討して指導に遺憾ないように措置をいたしました。同時に全国のこの種関係施設において——これはもう児童福祉にしても社会福祉にしても、関係をしておる人たちは心から福祉の問題を中心考えて、いわば献身的にやっておられる方が多いわけでございまして、それらの人たちに向ってこういうようなことがあったから注意をせいというのは、考えようによってはいかにも人をばかにしたものの言い方になるのでございますけれども、しかしそれはそれとして万が一にもあるとなれば、これは何としてもいけないことでございますので、それらの点は考慮いたしましたけれども、なおかつ全国に対して注意をするように注意をいたしたのでございます。  それから児童相談所についても、これは同じような趣旨の手配をいたしたのでございますが、これについては職員の一人は懲戒免職、一人は容疑が不十分というような意味をもって一応転勤の措置をとって自後の経過を見る、そういうようにいたしました。  それから福祉事務所は、これは私の方というよりもむしろ社会局の所管でございますけれども、気持はみんな同じでありまして、同じような精神、趣旨に立って自後の措置をとっておるような次第であります。  それからこれはあるいは御質問の趣旨とはちょっと離れるかと思いますけれども、今後の問題として、これらの人的な関係でございますが、こういうようなことが起きたことはやはりそこに勤めている人の問題、監督の問題、これらが一つ中心になるわけでございまして、相談所であるとかあるいは福祉事務所におきましては、一般社会福祉なりあるいは児童福祉について十分のしっかりした考え方とそれについての専門的な知識経験というものを必須要件にして方針としてはそういたしておりますけれども地方の実情としてはいろいろな人事やりくり等から必ずしもそれが励行されていない点がなきにしもあらずということでございます。これは従来もそういう線に沿って専門家を入れていくように十分指導をして参りましたけれども、今後の制度的な問題としてもなお一ぺんよく検討してみる必要があるのじゃないかと思います。特に私の方の児童相談所においては、これはどちらかといえば技術的な専門機関であるべきであるにかかわらず、今申し上げましたように、必ずしもそれに該当しない人が人事やりくり等によって任命される、そういうふうなきらいが多々見受けられるわけでございます。それらを防いでりっぱな専門機関として立ち行くようにしなければ、せっかく施設なり機関がありましても、その機能というものは半減をし、あるいは滅びていくということになるのでございます。  これらについては実は児童相談所全般強化整備ということが、児童福祉行政上の一つの重要なポイントと私ども考えております。予算的にもいろいろ措置することがございますけれども、さしあたってはことしはこの児童相談所が実は県に一カ所しかないところが十四県もあるような状況でございましてそれらを少くとも二カ所以上にする。  それから御承知のようにABCDという四階級に分れておりまして、一番下のDクラスというのは実に貧弱な機能陣容でございますので、これらを漸次上の方に引き上げていく、それらの措置を講ずる。  それから人的な面については、実は平衡交付金という制度になっておりまして、これも補助金に引き直すことがこれを解決する一つポイントであると思って、いろいろ準備を進めて参りましたけれども、それはほかとの関係もあって、一応ことしは施設の増あるいは格上げの方に重点を置いて進んでいるような次第であります。それらの問題とからんで人的な任命の方式等についてもさらに強化をしていくということにいたしたいと思っております。  それから福祉事務所にしても児童相談所にしても、所長及び職員についてはいわゆる現任訓練というものをブロックごとあるいは東京において開催をしておったのでありますけれども、これらのやり方、内容についてもさらに強化をして参りたいと考えております。  それから養護施設児童収容施設等については、これはいろいろな見方があると思いますけれども、私ども一つ考え方としてあまりに個人的な色彩の強い、従って封鎖的な機構においてやることが、かりに一つの問題を起してもわかりにくいという現象を来たす、そのことはすみからすみまで十分届きかねるという一つ現象にもなるかと思います。法律的には社会福祉法人を原則とするというふうになっておりますけれども、現実には個人立あるいは宗教法人立がかなりあるのでございます。   [植村委員長代理退席委員長着席〕  それで努めて社会福祉法人ないし公益法人に切りかえていくという指導強化して参りたいと思います。同時に今後の処置としては新しく認める場合には、そういう個人的な色彩のものは審査を厳重にしてやっていくというふうに、できればこれは法人にしていただくけれども、どうしても認めなければならないような状況においては審査を厳重にしていく、そういう考え方でやって参りたいと思います。  なお法律上の問題については児童福祉法改正を、いずれほかの関係通常国会予算等の関連もあって出す機会もあろうと思いますけれども、その辺のところも今後検討して参りたいと思います。
  5. 中山マサ

    中山(マ)委員 いろいろ承わりまして、やや明るいきざしがさしてきたように思うのでございますが、考えてみますると、敗戦というどさくさまぎれで宗教というものを全面的に否定するような空気があったものでございますから、神社仏閣ということの切りかえの一つ方途としてこういうふうに宗教関係のお方々がこういうものをなさったように個人的に思うのであります。今の渓声養護園親子三代にわたって、しかも園長さんは八十歳というような高齢の人で、その娘婿がといってもいいかげんな年ですが、そういう人が大体やっておる。そういうわけですから一向に内部がわからない。これが労働組合だとかあるいはほかの組合というような組織であるならばそこから声が上ってくるのですけれども、小さい子供たちですからそこに甘んじておるよりほかに道がない、いわゆる声が上げられない。たまさかどこかでちょっとしたことからこういうことが表に出てきた。これは群馬県で三つもありましたので私どもにも聞えてくるのでございますけれども、こういうことが全国的にあるのじゃないか、いわゆる氷山の一角じゃないかということが私は恐しいのでございます。それでぜひ一つ全国的に、もう十二年になりまして諸般の組織も変えていかなければならぬということになって参っておりまするので——宗教家ですから本来ならば慈悲をもって臨むべきりっぱな人であると思いますけれども、戦争でみなの気持がひっくり返ってしまって、どうも人間らしい気持を失った。どうぞそういうわけでございますので、次の世代をになう子供たちがこういうところにいた人もあるのじゃないか。これは言いにくいことでございますけれども、生活に追い詰められて、これでもしなければ仕方がないという人が私はあると思うのでございます。次の世代をになう子供たちがこういうところでいい方へは指導されないで、人生の裏街道を通って生きていくかという教育の場所にされたのじゃとんでもないことであろうかと思いまするので、児童局長さんは一つ全国的にこういうところをよく調査していただきまして、そうしてただ単にそれが組織が合うからというのでなく、そこの指導権をにぎる人、お世話をする人たちのほんとうの性格も一つ見きわめていただきたいと思います。  これはついでだから申し上げておきますけれども、大阪でも、大阪一円をつかさどっておりますところの内職あっせん所の人でも、おそろしくお金を自分のふところに入れてしまってどうにもならぬようになっておるところもあるというふうに聞き及んでおるのであります。ここでもずいぶん措置費が自分たちのふところの中に入っておるという情報も入っておりますので、そういう会計の面も少し手を入れていただきたいと思います。十分でもない措置費の上前をはねられるようなことでは、健康上にもまことに心配なものも出てくると思いますので、どうぞ一つ、次の世代をになう人たちを守っていただく局長さんとして馬力をかけて、こういう面をきれいに洗っていただいて国民が社会保障が行われているのだという安心感が持てるようにお願いしたいと思います。
  6. 高田浩運

    高田説明員 お話の線に沿いまして今後さらに一層努力精進を続けて参りたいと思います。
  7. 藤本捨助

  8. 滝井義高

    滝井委員 時間があるそうですから、一点社会局長にお尋ねしたいのですが、それは日雇い労務者の年末手当と生活保護費との関係でございますが、これを政府はどういう取扱いの方針にするように地方庁に通達を出しておるのか、その基本的な方針について御説明を願いたいと思います。
  9. 安田巌

    ○安田説明員 日雇い労務者の年末手当につきましては、基本的には、収入がありました場合には、それは生活保護を受けております世帯の収入として認めるという線をくずすわけにはいかないという態度でおりますが、ただ従来のいろいろ働くために要する費用の控除でございますけれども、それを大体基礎控除が八百五十円に、それから実費控除がありまして、さらに特別控除というのが、千五百円をたしか二千円に引き上げたと思います。そういうふうにして、理屈のつく限り、控除という取扱いによりまして、実質的にそういう数字が下らぬようにということを考えておるわけでございます。こういった年末の手当とかいうものは、ただ日雇いだけではないものでございますから、そういう取扱いをせざるを得ないわけでございます。
  10. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、具体的に申しますと、生活保護を受けて、同時に日雇い労務者に出ておる諸君は、日雇い労務者の年末手当をたとえば三千円もらったとすると、その三千円のうち二千円だけは特別控除として生活保護費の中から、収入としては見積らない、千円だけは収入があったものとして差し引く、こう理解して差しつかえありませんか。
  11. 安田巌

    ○安田説明員 そういうことでございますが、ただそれを一度に差し引くか、あるいは月々の収入にするかということで、技術的に若干問題があると思いますが、一ぺんに三千円入るということになりますと、相当の収入になりますから、たしかそのとき二千円を控除として認めるような措置をとっておると思います。
  12. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、今まで一千五百円の特別控除を二千円に引き上げたということは、生活保護の級地の関係はどうなっておるのですか。一律に二千円の特別控除ですか、都市とへ地方とかで相違があるのですか。
  13. 安田巌

    ○安田説明員 ちょっと今資料を持っておりませんが、級地の差があるかと思います。
  14. 滝井義高

    滝井委員 それから、今回消費者米価の引き上げによりまして、日雇い労務者の賃金が六・二%とか何かの引き上げがあったわけです。そうしますと、米代が上ったので賃金の引き上げが行われた、一方また生活保護費の中においても、消費者米価が上ったために保護費の引き上げが行われておるはずなんです。そうしますと、この関係は一体どういうことになるのかということなんです。
  15. 安田巌

    ○安田説明員 先ほどちょっと二千円と申しましたのは、原則として年間千五百円で、やむを得ない事情がある場合は、年間二千円の範囲内で必要な額を特別控除できるというふうになっております。  それから今の米価改訂の問題でございますけれども、日雇い労務者の賃金の方は、たしか六・五%というふうには上らなかったと思っておりますが、私どもの方としては、米の値段が上っただけを生活保護の食費の中に入れまして、東京で申しますと、五人世帯で、たしか百二十一円上げるということになっております。それでもともと私どもの方はカロリー計算でこまかい計算をいたしまして積み上げていった最低生活費でございますし、日雇いの方の労務者の賃金というのは、これは労働省でおやりになっておるのでありますけれども、たしかこれは一般の賃金の水準に何割かけたというような方式でやっておりますので、その間の関係は一応ないのじゃないかと思っております。
  16. 滝井義高

    滝井委員 こういうことがあり得るわけなんです。日雇い労務者の方の賃金水準というものが、米価が値上りになったために、たとえば一日五円の引き上げをやる、こういう形になると、五円の収入増が実質的な形で出てくるわけですし、今度は家に帰って食費の面になると、生活保護費の方で、今あなたのおっしゃったように、五人家族で百二十一円引き上げが行われておるわけです。そうしますと、その重なるところが出てくるわけなんですね。たぶんきょうの朝日か毎日かにもそういうことがちょっと載っておったと思うのでありますが、結局労働意欲がなくなってしまうのだ、賃金を上げてもらった、そうすると上げてもらった分だけ今度生活保護費の中から、収入がふえるわけですから差し引かれていく、こういうことになりますと、もとのもくあみになって、勤労意欲がなくなるということがいわれている。なるほど理論的に考えていくと、一方においては生活保護費の米代が上って、百二十一円増加している。一方賃金の方も上っている。ある部分で二重に上っている関係が出てきている。非常に正確な議論をすると、必ずしも全部そうとはいかないが、一応形式論をやると、そうなってきているわけです。そうなると、今までの生活保護費の建前からいくと、二重になっているものだから、どっちか一つは削らなければならぬ。こういうことになるわけです。そうしますと生活保護の対象者で日雇い労務に出ている諸君というものは、恩典を受けないことはないが、いずれか一方では受けることになるわけですが、しかしそれでは実質的に一方で受けたものは、米代が上っているのだから、生活の向上ということについては非常に欠けるところができてくる。だから労働者の立場からいえば、労働意欲をそがれて、立ち上りの機会がなくなる。いつでも同じ水準を維持しているのだ、こういう結論になってくるのですね。従ってこういう消費者米価が上ってわずかの賃金の引き上げというようなときには大目に見ようということなのか、やはり立ち上りの一つの契機を与えるという意味において差し引かない措置を講ずる方が、むしろ政治の方向としてはいいのではないかという感じがするのですが、たぶんきょうの、私走り読みしたのですが、朝日か何かの第二面の地方レポートというようなところに出ておったような気がするのです。理論的にいっても、今までの社会局生活保護法運営の方針については、そういうことになるような感じがする、というのは、さいぜんの生活保護対象の日雇い労務者の年末手当関係から考えてですね。この点はどういう措置指導をされているのか。
  17. 安田巌

    ○安田説明員 大体御質問の御趣旨、わかったつもりでございますが、結局米代ということを別にしまして、日雇い労務者の賃金が上ったと考えた場合に、その上った分だけは生活保護を受けている者は収入がふえますから、そうするとそれだけ差し引かれるのではないかということになるわけでありまして、これは御心配のような意見というのはよくありましてこの間も朝日の天声人語あたりでも取り上げられた、外国人から送金してもらって高等学校へ行ったのが生活保護を打ち切られたというような問題もありますし、いろいろあるのです。ただ生活保護法の建前からいいますと、日雇い労務者の日当が幾らになったということと一応無関係で、もし日雇いの方も一日五円上ったとすれば月に百五十円になりましょうが、それだけのものを差し引かないということになれば、そのほかに働いておって生活保護を受けている人というのはたくさんあるわけです。これは日雇い労務者がいつもそういったものの代表になりますけれども、しかしそのほかに低賃金の職種がたくさんありまして、働いているけれども足りない分を生活保護でまかなっているというのがあるわけです。そういうのも全部同じような取扱いをしなければ、最低生活を保障するという公的扶助制度の一貫性がなくなるわけです。そういった問題との関係がありまして、やはりその場合はあくまで生活保護の水準ということを一応考え、そしてその人の収入が幾らあるかということを考えてそれに対して幾らを出せばその人の最低生活が保障できるかという立場を現在のところはとらざるを得ぬのじゃないか、こういうふうに考えております。
  18. 滝井義高

    滝井委員 実は生活保護法の建前からいくと、非常に厳格な線を引かなければ、なかなか行政は運営ができないだろうと私も思うのです。ところがその厳格な線を引くあまりに、今こういう矛盾が出てきて立ち上りの契機というものがなかなかできないという形が出てくるんです。  実は生活保護の対象者に、年末に臨時にもち代を上げたい、こういう考え方のもとに立法をしようと企てたわけです。ところがどうしても今言った理論にひっかかってできないというところがある。たとえば千円なら千円のもち代を上げるような立法措置をすることがいいだろう、こう考えてみるわけなんです。そうしますと、千円を今の生活保護者に継ぎ足すということになりますと、収入が千円多かったために生活保護者でなくなっておる諸君というものが、その上に一つの層をなしておるわけです。そうするとその人たちの問題を一体どうするかという問題が実は出てくるわけです。もし千円のもち代を差し上げるということになると、あの生活保護法の八条かによって、今度は大臣が具体的な基準を告示することになっている。その基準を全部やり返さなければならぬ。特に季節加算というようなものをやり変えなければならぬというむずかしい問題にぶつかったわけです。生活保護というものは、何か立ち上りの契機を与えるためとするならば、どこかそこらあたりに少し弾力を持った立法というものができないかどうかということなんです。何かそこらに弾力を持たしておかないと、あまり正確な線を引くために、どうも行政の運営というものがそういうことになったときに、国民の不平不満のはけ口が、今の生活保護法の八条の考え方からいくと出てこないのですね。そこらあたり、何か次の機会にでも、生活保護法を変えて、行政運営のそういう穴と言ってはおかしいけれども、弾力を持たせる方向を持つことが必要じゃないかということで、実は法制局ともいろいろ議論をしてみますと、正直いって私の方が負けになってしまう。年末手当というか、もち代を何ぼか差し上げたい、その立法をするためには、生活保護法全体をやり変える以外にないという結論なんです。そうするとちっともすき間風の入る状態がない。それは当然のことかもしれぬけれども、何かそこらあたり一ついいあれはないものか。
  19. 安田巌

    ○安田説明員 私も実は滝井先生のお気持と同じ気持なんでございまして、厳格にやることによって、その人がせっかく働こうとした気持がなくなったり、あるいは更生できないというようなことがあっては大へん申しわけないので、できるだけそういう取扱いをしたいのでございます。それには今おっしゃったように、国民の最低生活の水準でございます最低生活費というのを厚生大臣がきめるわけでございますが、これは一体何かという問題が一つと、その次は、それを適用する場合には国民全体に無差別平等に適用しなければならぬということがあるので、一部の人には、千円は収入であるけれども見ない、他の人には、やはり収入として差し引くのだということでは、これはもう公的扶助制度がくずれますから、そういう二つの問題があると思う。  そこで、もち代の関係は、これは最低生活費のきめ方として、もち食わなくても生活できるじゃないかという議論もありますけれども、しかし日本の古くからの生活慣習として、正月にはやはりもちを食うのだということであれば、それを最低生活費の中に入れるという考え方も成り立つのじゃないか。それで二年ほど前から実は政府にそういったもち代を予算で要求をしているのでございますが、来年も大体千五百円ぐらいのものをつけたらと思って実は話しております。しかしこれは具体的には最低生活費はどこかという議論になってくるわけです。財政措置をお願いする場合にはそういう議論が出てくるわけです。  そのほかに私ども考えておりますのは、生活保護の中で一番弱いと思われるのは子供の費用でございますが、そういった被服の費用であるとか、おやつ代とかいうものを、これはやはりどんな最低生活をする人と申しましても、子供だけは何とかその辺をもう少しゆっくりさせたいというのが実は私どもの多年の念願ですが、これも実は一日三百円ぐらい出せないかということを考えております。そういうものを出してだんだん水準が上ることはけっこうですが、今申しましたように組織があって発言力が強ければそれは大目に見てやる、何も言わない未亡人世帯とかその他の未組織の低賃金の職種でありますとか、おもに家内労働を問屋制でやっているのは普通に見るのだということになれば、これは相済まぬわけです。その辺に悩みがありますが、大体今申し上げたようなやり方で今後もやっていきたいと思っております。
  20. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、今の最低生活とは何か、それをどういう工合に適用するかということを私と同じように考えられたということでございますが、来年度予算にもち代的なものを千五百円要求をし、子供のおやつ代一日三百円——一カ月か一日か知りませんが、三百円程度要求されている、これは法律改正ではなくて、最低生活の解釈によって行政措置でやられる、こういうことなんですか。
  21. 安田巌

    ○安田説明員 つまり普通経費としてそれを見るべきかどうかということになりますと、いろいろ意見があるわけですが、私ども行政を実際に第一線でやっている立場として、そういった少しでも不十分な点はできるだけよくしていきたい、こういう努力をいたしておりますということであります。
  22. 藤本捨助

  23. 八木一男

    八木一男委員 厚生大臣にお伺いいたします。この前の質問の続きで、実は年金の問題と部落対策の問題をお伺いしたいのですけれども、厚生大臣の時間の都合もございますから、年金の問題はあとにいたしまして、部落問題についてお伺いをいたしたいと思います。部落問題は同和問題という名前でも言われておりますけれども、この問題は御承知の通り最近各新聞あるいは各週刊誌で非常に問題を大きく提起されております。この問題に一番関係の深い厚生省の主管大臣であります堀木さんはどのような考えでこれに対処しておられるか、一つ伺いたい。
  24. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 この問題については、私も厚生省が所管いたしておりますところの社会環境をほんとうによくしていくということが基本的な問題である、もう一つは建設省の考えておりますような都市計画的な面から見ましても非常に重大な問題であると考える。諸外国を歩いて、全く新しい都市作りという観点からだけでも相当の熱意を持ってやっている状況を見て参りまして、私どもとしてはこの点に一そうの努力をいたし、力を尽すべきだ、こういうことで、実は建設大臣にもその点から、所管省としてこの問題については一段の御努力が望ましい、ぜひ来年度の予算要求に当っては今申しましたような観点から考えてもらえないだろうかということを申し上げまして、建設大臣もこれについては相当熱意を示しているというのが現状でございます。
  25. 八木一男

    八木一男委員 さらにお伺いしたいのですが、厚生省の担当者としてじゃなしに、内閣の一員であります国務大臣として、この問題を根本的に解決するには、どのようなやり方でやらなければならないかというお考えが、まだ今まとまっておられませんでしたらけっこうですが、もしまとまっておりましたら伺いたいと思います。
  26. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 今申し上げましたような観点から、これは私の所管いたしております省だけの問題ではございません。内閣としてこれらの問題について三十二年度は特別の処置を事務的に進めてもらいたいというところで、まだ最後決定に至っておりません。
  27. 八木一男

    八木一男委員 時間がありませんので、一問一答の形をあきらめまして、私の考え方を申し上げて、総括的に御答弁を伺いたいと思います。それで私の話は七、八分を要しますけれども、じっくりお聞き取りを願いたいと思います。  今日部落問題、同和問題といわれている問題は、非常に渕源の古い問題であることは、厚生大臣もおわかりだと思います。この問題については東日本の人はほとんど理解がありません。幸いに厚生大臣は三重県でいらっしゃいますので、相当におわかりであろうと思うわけでございまするが、簡単な問題でありませんで、本腰を入れてこれと取っ組まなければならない問題であります。今の現情を申し上げますると、差別という問題が非常に大きな問題になっておるわけでございまするが、戦後にはこの表面的な差別という問題は少くなりました。たとえばいろいろ表面的な差別をしたのでけしからぬという問題が起った。また非常に差別をされた方が悲観して首をつったとか、川に飛び込んだとかいうようなことが、まだ残ってはおりますが比較的少くなりました。比較的少くなりましたけれども、表面でなしに、その内面における差別はまだ依然として残っております。たとえば関西以西においては、結婚の自由がほとんど阻害されているという問題がございます。それ以外の就職の問題でも、就学の問題でも非常に差別されておる。その根源は、歴史的にはいろいろ学説はございます。昔の仏教思想の牛、馬等の屠殺その他を扱った人に対する蔑視観から出た間違った考え方が根源であるという説もございまするし、いろいろございますが、一番大きくなりましたのは、徳川時代の本多佐渡守の政策からでございます。本多佐渡守は、百姓をして飢えしむべからず、食わしむべからずという態度をとりまして大勢の日本の百姓を収奪するために、百姓には名前だけを与えた。うんと米を取り上げたけれども士農工商という、名前だけはさむらい、支配者の次の第二位に置いて、非常に形式的な名誉を百姓に与えてそのかわりしぼりとった。その政策をとるために階級制度を設けて、士農工商とし、その下にさらに別な階級を設けて、百姓に自尊心を与えておいてほんとうの収奪をしたという、こういう本多佐渡守の非常な虐政によってこの問題が非常に強くなった。明治解放の太政官布告で一応解放されたことになったけれども、それが実際に解放されておらないのはどういうことかというと、その間に差別をされて社会的に非常に不利な状態にあった。それを直すだけの要件を与えていない。たとえば明治解放で職業は全部自由になりました。ところが武士には秩禄公債を与えて、その金を資本にし、なれない商売をやったり、田畑を買って百姓になるとかいうような道が開かれておった。ところが部落民はそういう道を与えられないで、ただ形式的に解放したというだけで、依然として部落民を蔑視したり、差別したりする空気はずっとあったわけです。それで特にひどいのは徳川時代には斃獣処理の特権がございました。死んだ獣の皮を処理するという経済的特権があった。それがなくなったかわりのものは何も与えられぬ。だから斃獣を処理して製革をするということも近代資本主義の会社によってやられて、その職業を圧迫され、それが結局経済的には前よりひどくなって、差別は依然として残っている。明治時代からずっと資本主義経済がぐんぐんと進展してきましたときに、その当然のやり方といたしまして、非常に貧困な階層があれば、労働者の賃金を低くするもとを作れる。失業者を作っておけば、お前が文句を言うならばほかの人を雇うぞというもとを作っておく。そういうような資本主義全体のやり方によって貧困その他の差別が全然直らないできました。終戦後もう一回農地解放がありました。ところが農地解放でもこの恩典を受けておらない。というのは、農地解放は前に小作農であった人たちを対象としました。ところが部落農民は、その小作人の資格さえなかなか持っておらなかった。ですから、あれだけ民主的に農地が解放されたといいながら、農地に住み、農業労働に従事しながら、土地を獲得できなかった。そういうような状態にありましたから、経済的基盤が何もないわけです。農民として立とうと思っても、それは場所によって差はございますけれども、関西あたりでは、農村の土地を持っておる部落農民の、持っておる平均が二反くらいで——関東では五、六反になっておるところがございますが、二反くらいで、そんなものでやっていけるものではありません。次に労働者として立とうとすると、大体において貧乏だから上級学校にはいけません。ですから高級労働者とか、そういうサラリーマンになる道は非常に少い。今なら新中、前なら小学校を出て就職しようと思っても、非常に基盤の高い会社では実質的な差別をしております。学校の程度が低いために損するだけでなく、同じ程度の学校を出た人でも差別して、同じ成績であっても、あるいは逆に部落民の子弟の方が成績がよくてその仕事に妥当であっても、その差別観から、何とかほかの理由をつけてほかの人を採用してしまうということで、労働者としても成り立っていかない。それでは商売人とか零細企業者でやろうということになりますと、部落産業は御承知の通り製革とかあるいはげたの鼻緒作りというような産業がおもなものでございます。ところがげたのはなお産業は、生活様式が変って需要が全然少くなり、製革の方あるいは製靴、これは機械工業によるものがぐんぐんと出てきて、手縫いのくつの方は圧迫されてそれをはねのけるだけの資金もコネクションも何もない。そういうことになると、何をしても食っていけないということになる。食っていけないということになれば、あとたよるところは失対事業しかないということになる。ところが失対事業は、労働政策の過酷な政策で、一軒一人しか手帳を渡さないということになっておる。京都あたりでは、子供と親を養うために、仲のいい夫婦が夫婦別れして別な家を作って両方が失対の手帳をとって、それで辛うじて子供と親を養っておるというような状態です。これは労働行政に関係があるわけですけれども、そういうような状態ですから、どうしても経済的に成り立っていかない。それでここに差別の再生産が起る。たとえば優秀な青年が経済的な理由で上の学校に行けない。中学校で一生懸命勉強したが、自分より成績の悪い人がよい会社に就職しながら、自分はできない。商売をやろうにも資本がない、基盤がない。農地を耕そうにも農地がない。そうなればやけになるのは当りまえだ。やけになると、昔ならヒロポンを打つこともありましょう、しゃくにさわればけんかをすることもありましょう。そうすると部落の子弟はこわいということになる。こわいから当らずさわらずでおけ、近寄るなという差別の再生産が起る。それからまた親が非常に苦しいから、学校の子供たちに赤ん坊を見させないと自分が働きに行けない。だから就学ができないで、未就学児童の問題が起ります。またかりに学校へ行っても、教科書が買えないし、給食費が払えない、弁当も持っていけないから、いやがって行かない。そのほかにも一般的な差別を受けて学校に行くのはいやだということで、未就学児童とか学校を欠席がちの児童が多い。それをまた社会は、あすこは子供を学校にも行かせないということで差別をする。また御承知の通り環境が非常によくありません。ですからトラホームが非常に多い。トラホームが多ければ、伝染病をこわがる気質と、それからまたトラホームの目というものはそんなに容貌をよくするものではありませんし、そういうことで顔の格好が悪い、目の格好が悪いというようなことでまた差別の原因になる。そういうことで、現在の貧乏が、今までの歴史的なものは別として、歴史的なものが民主主義教育、民主主義体制の浸透によってなくなりかけているのに、貧乏の根源があるから、それがなくならないだけでなしに、場合によってはそれが再生産されてくるわけです。そこで今部落問題を言うときに、眠った子を起すなという思想がございます。それでいろいろな施設をすればよくなるじゃないかという思想がある。それは少しはよくなります。けれどもほんとうの貧乏の根源を断たなければ根本的には直らない。部落の人たちの中で自分で経済的に優秀であって進出した人、あるいは社会的に進出した人は、その人個人としては社会的に差別から解放されております。しかし大部分の人はまだ解放されていない。それを眠った子を起すな、この問題を政治で取り扱うなということであればこの問題は解決しないわけです。ですから本腰になって解決することが必要だと思います。そのためには完全雇用が行われなければならない、もちろん最低賃金が行われなければならない、全部の人が労働者として雇われて、全部が食うだけの賃金がもらえれば、この問題の解決の大きな推進であります。その問題で政府が非常に戸惑っておられる、ゆっくりしておられることについて非常に不満でございます。新しい開墾地を作って、そういう不当な目にあった部落の農民にできるだけ開墾地を与えるということも必要でございます。漁業の面でもそういうことが必要です。それから零細企業のたとえばげた産業などは、日本がだめであっても南方においてサンダルをはいているところがある、それに切りかえれば売れるようになる。部落民が海外の市場の状況を調べ得るような力はありません。またわかってもそれを作るだけの工場にしてその資金運転をする力がない。そういうところに政府が金をつぎ込めば部落の産業がよくなって少しでも問題が解決する道が開けるわけです。そういうこともあまりされておらない。ほんとうに根本的にそういうものを解決するためには本腰になってやらなければならない。ところが今部落問題を扱っている諸官庁が分れております。労働省、厚生省、文部省、法務省あるいはまた地方自治庁、大蔵省も関係があるし、また農林省その他の諸官庁に分れておる。それで担当の公務員の人は非常に熱心にやっておられる。ところが課から出したものが局議においてつぶされる、局議で出したものは省議でつぶされる、省議できまったものは大蔵省の一つもわからない連中のために削減をされるということになって問題が進まない。そういうことではいけないのであって、そういうことにならないような体制をぜひ内閣で作っていただきたい。ですからまとまった大きな権限のある審議会なり委員会なり、内閣全体にわたる、大蔵省も締め上げ得るものを作るということが肝心であろうかと思います。今厚生省が主体になって、一年に二回か三回連絡協議会を持っておられることは私も知っておりますけれども、それぐらいでは解決できない。大きな強いものを作ると同時に、作るまでにおいて厚生省が主体になってそういう連絡をはかり、全部の力で大蔵省を説得して進めていただかなければならないと思う。そういうことをほんとうに進めていただける御決心であるかどうか、それから私の申し上げましたことにもし異論がおありになるなら、どういう点が工合が悪いか、その二つを伺わしていただきたいと思います。
  28. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 八木委員のおっしゃったことは私異議がありません。実は私の生まれたところは全国的にも非常に問題の熾烈な方でございます。従いまして私ども子供のときからその問題については相当考えさせられるような問題がたくさんございました。今おあげになるようなたくさんの社会問題があったわけでございます。厚生省の仕事は、率直に言いますと各省に関係のない仕事はほとんどないし、国民の生活に関係ない仕事はほとんどありません。要するに一言にして言うと厚生省の仕事は、民主主義の新しい社会観念によって新しい社会の基底を作ることであり、それが大臣として一番努力することだと考えております。先ほどお答えしたのはさしあたりの都市計画だとか環境衛生だとかいうようなものを例にあげましたが、しかし全体として、要するに貧乏の追放については私どもがやはり一番の主管官庁ではなかろうか、そしてそれを総合的に各省にわたって推進していくということを講じながら、その中で厚生省所管のものを取り上げてやっていく、各省の歩調を合せるように行政処置をして参るというのが、本来組織の問題は別にいたしまして私自身がやるべきことじゃなかろうか。従いまして各種の問題についてこれらの点を解決するように努力いたしたい。過去を振り返るとその点が八木委員の言われるほどいっておるかどうかということで御批判を受けるのはやむを得ないのじゃなかろうかと思うので、今後は十分努力いたしたい、こう考えております。
  29. 八木一男

    八木一男委員 午後時間がありますから簡単に一問だけで終ります。実は厚生大臣のそのお考えを伺って非常にけっこうだと思います。どうか一つやっていただきたいのでございますが、戦前の同和対策費と今の予算の比率はぐんと違っております。それは物価比例でやっただけでも違っておりますが、予算に対する比率はぐんと違っておる。そういう点で戦前と比べても減っておる。ところがほんとうに根本的に解決するのなら戦前のやり方ではいけません。それの十倍も百倍もかけてやらなければこれは解決できません。ですからその意味で一生懸命にやっていただきたい。何も本人に原因があることではなく、偶然部落といわれるところに生まれたがために人権をじゅうりんされておる人たちのために、ほんとうに日本が民主主義国家であるならばそれを一つ行政でそういう差別、貧乏の原因を断ち切る努力がされなければ、日本は民主国家とは言えないと思う。それでぜひ一つやっていただきたい。それで今の予算の点は普通の常識ではない、戦前の比率よりも少くなっておりますけれども、それをはねのけることはもちろんであって、それをはるかにこえた百倍も二百倍もかける決心でやっていただきたい。それからそういうことを次の予算にぜひ組む努力をしてもらいたい。それからこの問題の非常な権威者であります五島虎雄君がそれをさらに続いていろいろとお話をし、具体的に厚生省の問題についてお話をいたしますので、午後の時間をさいていだだいて必ず御出席を下さるようにぜひお願いします。御答弁はそれをやるという御答弁だけでけっこうです。
  30. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 八木さんのおっしゃる点は私確かにそうだと思います。もう私から多くを言う必要はないかと思いますが、私も新しい社会作りの一つの方面としてぜひ努力いたしたいと同時に、率直に申して部落の方々からはりっぱな人も出ておられることは先ほども八木さんがあげられた通りなんです。私も知っておる人はあるのです。ですからわれわれとしてはできるだけのことを考えていかなければならない、これが新しい民主主義の方向の一つであるという点については全く同じ考え方を持っております。
  31. 藤本捨助

    藤本委員長 午後二時まで休憩いたします。     午後零時九分休憩      ————◇—————     午後二時四十四分開議
  32. 植村武一

    植村委員長代理 休憩前に引き続き、会議を再開いたします。  都合により委員長が不在でありますので、私が委員長の職を勤めます。  午前中の質疑を続行いたします。五島君。
  33. 五島虎雄

    五島委員 午前中に八木委員から部落問題について総体的な質問がございましたが、八木委員考え方について大臣は異議がないと申され、この問題についての今後の解決に対して努力するというような発言があったわけです。しかしわれわれがここに部落問題として特別に取り上げなければならないということは、やはりいろいろの見方もあるでしょうけれども、どうしても取り上げなければならないような事実が全国的に散在しているからです。ところが午前中に大臣は外国の都市問題についても述べられたわけですけれども、日本の特殊な社会問題であるこういう状態が外国にもあると考えておられるかどうか、それをまず質問いたします。
  34. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 午前中に八木委員の御質問に対して私が外国の都市の例を申し上げましたのは、最近、各方面で、私どもが若いときに言っておりましたような一種の貧民窟街、貧乏階級の住んでおります住宅地街というものを、新しい都市作りの観点から非常に改革していっていることの例として言ったのでございまして、部落問題として申し上げたのではないのであります。ロンドンにおきましてもニューヨークにおきましても、従来よく言われておりましたいわゆる貧民窟街に対して新しい都市の観点から変革がされつつあるという状況でありますので、日本の都市計画についてもそういう観点から入るべきだと思っていたものですから例にあげたような次第でございます。
  35. 五島虎雄

    五島委員 アメリカでは黒人問題が非常に新聞を騒がして、大統領まで引っ張り出されておりますが、これは一つの人間の色の問題として非常に大きな問題だと思うわけです。日本のこの部落は、現在六千部落、三百万人というようにわれわれの調査では出てきているわけです。この三百万人が何か社会の中で特殊な扱い方をされているという事実を大臣は午前にも言われましたけれども、ここではっきり、なお差別があるという事実をお認めになりますか。
  36. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 アメリカの黒人問題は、私も実は前後三回くらいアメリカへ行って見ておりまして、漸次改善されつつありましたが、過般南方のある州の都市におきまして重大な問題が起ったことは、これは何人も関心を並び起さなければならぬ問題でございます。日本におきましても、午前中にも申し上げましたように、私の生れた地方は非常にこの問題のやかましいところでございます。しかし、私の子供のときと比較しますと社会的な待遇、目というものはよほど変って参りましたが、そういうふうな考え方でなしに、新しい民主主義の社会を作る観点から見ますと、こういう問題について今なお地方によって非常に陋風の残っているところと比較的陋風の少くなっているところとございますが、全体として新しい社会の観点から見ますれば、差別待遇のあること自体、そういうものが社会的に根を下しているということ自体直して行かなければならぬ問題であるということは十分考えておる次第でございます。
  37. 五島虎雄

    五島委員 そうすると、戦後民主主義の問題がどんどん発展をしてきて、そうして大臣は、現在の日本は民主主義の世の中であるということ、その中においてさえも、なお差別の陋習が残っているということをお認めになる。しからばこの差別を一体いかにすれば解消できるかということを日ごろお考えになっておるならば、その点について所見を発表していただきたいと思う。
  38. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 午前中もお話がありましたように、非常に長い歴史的な陋風として日本の社会に残ってきているという問題は、私非常に遺憾だと思います。しかしそういう観点から取り上げるならば、昨年の国会におきまして売春防止法が両院の一致の議決で通りましたことも、私は新しい民主主義の観点、あるいは新しい道徳律と申しますか、モラルの観点から見れば当然変って参らなければならぬ、そういう観点から、国会もああいう法律をお作りになったのだというふうに考えるわけであります。今ここで問題になっております部落問題も、やはり新しい民主主義のモラルの観点というふうなものから、およそ政治家としてはそういう社会の長い間の陋風というものを打破して参らなければ民主主義、民主主義といいましても実際にそういうことを現実の施策として直して参るということが、私どもの務めではなかろうか、こういうふうに考えておるのであります。従いまして、これらが当面しておりますいろいろな新しい社会的、政治的公平の観念から見て、従来の慣習に対して是正すべきものと勇敢に取り組んで参るのが私どもの役目ではなかろうか、こういう観点から終始お答えいたしておりますような次第でございます。
  39. 五島虎雄

    五島委員 大体大臣考えられていることは、間違いなく私たちも同感であります。しからばこれを新しいモラルの問題として解決するというのですけれども、ずっと歴史の中に政治的に取り上げられた問題や、あるいは社会的な現象としていろいろ今まで取り上げられ、あるいは部落の人だち自身の水平運動とかあるいは部落解放運動を通じてこれらの解決に努力してきた歴史をわれわれは知ることができるわけですけれども、今日に至ってもなおそれらがあるいは結婚問題とかあるいはその他の問題が日常茶飯事のごとく起きているというような問題を取り上げてわれわれはやはりこの問題を根本的に解決しなければならない。  この間朝日新聞が大きく関西版でこの問題を取り上げております。それは部落問題五つのいましめという見出しでいろいろこの差別問題、部落問題を解放するに当って現在一般人たちはどういうように考えているだろうか。しかもそういうように考えても、なお解決しない問題が残っているのだ。これを項目ごとにいいますと、差別はそっとしておけばもう現在は民主主義の世の中だから自然と解消するのだというように言っておるわけです。しかし、数百年にわたるところの歴史を持ったこの問題はとうていそっとしておいても解消できないということをここに主張いたしております。それから次には、差別は結婚していけばいいのじゃないかというようなことが論じられます。結婚していく、そういうような問題から解決していったらいいのじゃないかというようなことが非常に主張されるということも、ここに載せておるわけです。しかし、結婚の問題等々も、待っていてもそれはとうてい根本的な解決にはならないということも、結論として出しております。それから差別は、今まで政治的に押し込められた、そうして農地解放の今日に至るまでも農民は寸土に押し込められた、その実情の中に、分散することができるだろうか。それもなかなか現在の状態ではできないのだ。それからあるいはその中で頭のいい人たちが教育を受けて、そしてよそにいってある地位を得て、生活も非常に楽になったというような問題でも、あの原爆の空襲を受けた広島でさえ、部落は戦前より今なお大きくなっているというような事実も、ここに指摘しておるようであります。それから差別は部落民の自覚でなくなるのだという主張もあるようであります。ところが部落民は、ほんとうに差別されるのはいやだということが、長い歴史の中の大きな一つの願いとしてあるわけですけれども、それさえも自覚だけではとうていこれは解決できないのだ。それから今度は、差別は部落の歴史を知ればなくなるのだ。これは一般人たちですけれども、学校では同和教育というものを盛んにやっているところもあるわけです。ところが部落の教育を非常に合理的にやらなければ子供に疑念を持たせる。部落の人たち子供であったらあらためて自覚を新たにするような問題が新しく出る。あるいは一般人たちだったらそんな部落があるんだろうかというような、子供心に新しい感情を与えるのだということです。従って今五つ申し上げましたけれども、五つの願いはそれぞれの立場から正しいと私たちは思います。しかしこの五つの問題の一つを取り上げても、とうていこれは抜本的に解決できない。それは歴史上の根が深いからだと思うわけです。  そうすると私たちは考えるのに、やはり現在の政治上の問題として、経済上の問題として、これを解決してやらなければ、とうていこの問題は解決できないと思うわけであります。しかし歴代の政府はこれに対していろいろの手を打ってこられました。戦前から今日に至るまでいろいろ手を打ってこられたわけです。しかし手を打たれたのが、午前中に八木さんが言われましたように、厚生省を中心としてやってはおるけれども、厚生関係として社会問題を解決されようとする。あるいは文教の方では学校の同和教育というようなものを取り上げておられる。あるいは建設省の問題では、住宅の問題、不良住宅の改良事業として取り上げておられる。あるいは農民あるいは漁民の問題としてそれぞれの各省関係の立場から、それぞれこの問題を救い上げよう、そうして解消しようというような考え方があるわけです。労働問題にしても今日非常に問題となっております。失業対策の問題にいたしましても、失業者が四十数万現実にいる。その中の多くの部分を占めるのに、部落の人たちがおられる。しからばこの失業問題をいかにして救うかというような問題を一般現象として取り上げざるを得ないような状態だということも、私たちは調査の上に知ることができます。たとえば住宅の問題にいたしましても、非常に不良な住宅が部落にはある。これをいかにして解消すべきかという問題についても、終戦後今なお二百七十万戸も住宅が欠乏して、それを一般の問題として取り上げなければならぬ、従って特殊部落の住宅の解消の問題は、一般の住宅が解消したあとで、徹底的に五カ年政策とか十カ年政策で住宅の解消を行いたいというのが建設省の意向らしいのであります。こういうようなことを研究しまして、そうして総合いたしますると、一体どこがこの問題の中心になるか、どういうように彼らの生活を改善していくか、そうしてこの問題を解消していくかというような疑問が出てくるわけです。この歴史はなるほど大臣が言われるように深いわけでありますけれども、従って私たちが考えるのには、こういう問題を解決するにはどうしても経済上の問題で解決していかなければ根本的な解決はないと思うわけです。しからばこの各省関係にまたがっているこれらの問題をどこが中心になってやるか、やはり八木委員が言われたように、厚生大臣中心になって活動してもらわなければならぬと思う。ところが、厚生大臣中心になりますと私たちに約束をされても、今各省連絡協議会というものがあるようでありますが、これも聞くところによると、一年に一回あるいは二回というような連絡会議であります。予算の編成にしましても、この予算を、部落の問題解消のために力を合せて、これを一貫した政策として現わそうとするところの重点的力がない、歴代厚生大臣もそのように努力されたと思いますけれども、私たちはそういうように思われるわけであります。そこで八木委員の質問をもう少し具体的に大臣にお聞きしたいのですけれども、私たちはこの問題を解消するに当って、どうしても閣僚の中で政府の中で中心的にこの問題を解消していこうという一つ機関が必要じゃないかと思うわけです。その機関を私たちはこういうように考えます。どうしても厚生省だけに置くわけにはいかないのだ、でなければ各省と競合をしまして、そして厚生省が持っておるのだからおれたちはそう力は要らないのだということになれば、やはりこの問題は永久に弥縫的な政策としてしか実現できないというように考えておるわけです。従って内閣にこれらの問題を中心的に考え、近い将来にわたって必ずこれを解消していくというような意識と努力を持つところが必要じゃないかと思われるわけです。従って私たちはこの問題を特別に考え、各省とよく連絡のつくような、そして機能と権限のあるような、たとえば審議会というようなものを総理府あたりに持って、今後の問題として政治上、経済上特に取っ組まなければならない機関がほしいと思います。その問題について今後厚生大臣中心になって進めていただかなければならないのじゃないかというように思うわけですけれども、この審議会等を作ることについて御意見があるならば、ここで承わっておきたいと思います。
  40. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 おっしゃることはよくわかります。私どもも、これを単純な精神的な問題として物事を見ていこうとは思いません。それだから午前中の八木委員の御質問のように、やはり経済問題としても取り組んで参らなければいけないということは私どももそう考えているわけでございます。およそこれは精神が先か、実際の社会環境が先か、経済問題が先かといったって、これは全部並行していかなければなりません。人間の社会というものはやはり経済問題が基盤的なものとして解決することが精神にも影響し、社会環境にも影響してくるものだということは十分考えます。ただ内閣に機構を置けばいいじゃないかというお話に対しては、もう少し研究させていただきたいと思います。と申しますのは、内閣にずいぶんいろいろな審議会や委員会がございます。それが形式的に各省にまたがるなら確かに内閣に置いた方がいいじゃないかという御議論ができると同時に、先ほど五島さんが言われたように、だれかほんとうに親身になって各省に推進していく人間がなければ、率直にいえば形式は整うが実質は進まないという例もたくさんございます。これは私は長い経験で事実が明らかに証明しておると思うのであります。もう一つ例をあげますと、売春の問題でも、これは各省にみんなまたがるわけでございます。しかしだれかが主管的な責任を持って一生懸命に新しい村の社会を作るんだということで、まっしぐらにいって閣内を動かしていきませんと、かえって責任が分散してよくいかないという形もできるのではないか。これもやはり各省にまたがることの同じような例でございますが、私としては午前中、午後と両委員に御注意を受けた点は十分考えまして、村の問題は単純な一般的な問題として解決するときにはなかなかうまくいかないということもよくわかります。特に日本の社会のひずみのある部分については政策が集中しなければ直るものでもないし、多くの抵抗も入ってくると思いますが、それらにつきましては、私は今後の努力を傾けたいということを考えております。と同時に、各省ともそういう新しい村なり社会を作ろうという意気込みを持って今後とも政策を推進して参りたい、それを内閣に作るのがいいかどうかということはもう少し研究させていただきたいと思います。少くとも今までの状態ではこの連絡協議会自身がほんとうに成果を上げておるかどうか、上げておるとしても、実際全体の問題から見た社会のひずみをほんとうに直していこうということでどこまで進んでいるかというような問題につきましても、もう少し再検討の余地を残させていただけないだろうかということを私としては御答弁申し上げたいと思います。
  41. 八木一男

    八木一男委員 関連質問をさせていただきたいと思います。今厚生大臣五島委員に対する御答弁、大へん誠意のあるものでございまして、その点けっこうだと思いますが、何といいますか、厚生省に一番関係が多いから、現在の非常に小さな部局を大きくして、たとえば一局を設けるとかそういう方法もぜひ私どもはとっていただきたいと思います。でございますが、厚生省以外の地方自治庁あるいは文部省、法務省、労働省、農林省、通産省、大蔵省にも関係がありますので、そういうことのために、やはり内閣に審議会があることがぜひ必要だと思います。官庁の中の部局をふやしていただくことと、それから大きく強力な権限を持った審議会を作るという、両方考えていただければけっこうじゃないかと思います。その強力な権限のあるものは、ただいま例として上げられました、社会保障制度審議会程度のものではなしに、もっと大きな権限を持ったものを作っていただければと思います。もちろん諮問に対する答弁だけでは足りませんで、当然積極的な勧告権のあるものでなければいけないと思いますし、それとともに、行政委員会みたいな、たとえば行政指導をするというところまでの権限を持ったものは、法制的にいろいろ考えなければなりませんけれども、この問題を解決するためには、今までの意味の弱体な審議会、調査会では解決できないと思いますので、最も強力な審議会というものをぜひ御構想に入れていただいて、問題を推進していただきたいと思います。そういうお願いでございまするが、簡単に一つ御答弁を願いたいと思います。
  42. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 御趣旨は十分わかるのであります。私この問題を解決するのにはどういう方法でしたがいいということの前に、ほんとうを言いますと、率直に申しますれば、こういう問題に対する政策がもっと推進されなければならなかったのに、推進されないというところに問題が起ってくるんじゃないかと思います。ずいぶんいろいろな問題が社会的問題になりますと、委員会を設けて、それでもって責任を回避するというふうな姿がなきにしもあらずであります。それからもう一つはなるほど官庁機構を整備することも一つの方法だと思いますが、一番大切なことはお二人がおっしゃるように、内閣としてそれに向って精力を集中していくような、一つの政治的な基底的なものが一番必要だと思うのです。すべての問題いろいろ考えてみたいと午前中から考えておるのでありますが、私自身が就任以来三カ月になってまだこの問題とほんとうに取り組んでいないということは申しわけないと思いますが、ともかくも私自身が新しいモラルのある社会、民主主義の社会を作ろうということでやっておる決意だけはややお認め願っているのじゃなかろうか。私自身が一応知能をしぼってそういう問題の解決に当りたい、そのためにこういう方法がほんとうに適していると思えば、そういう方法をとるのに躊躇いたしませんが、もう少しその問題については申しわけないがこれからほんとうに取り組んでいくということで御了承願いたいと思います。
  43. 八木一男

    八木一男委員 厚生大臣の今の御答弁非常に誠意のある御答弁で、私どもも非常に感謝を申し上げたいと思います。ただ一つさらに申し上げておきたいことは、実は厚生大臣は十分私どもと同じお考えであられると思いますが、この部落の大衆が非常に長い間搾取されて、今非常に差別と貧乏を受けているという状態は、これは日本の長い何百年の政治の責任であり、しかも新しい時代に入ってからの明治以来の各政府の責任であり、また戦後ほんとうの解放があったはずのそれから後の内閣のことごとくの責任なんです。それで内閣の責任だけでなくて、日本の政治としてはこれをぜひ解決しなければならない問題で、今まで考えられたような恩恵的な、気の毒だから少し助けてあげようという考え方じゃなしに、政治によって三百万の人がしいたげられたという事実に立って、それを解決することが政治の任務である、義務であるという立場に立たなければならないと思うわけでございます。そういうような観点でぜひ御理解のある厚生大臣から、内閣その他にまだ恩恵的なものでよいというふうに考えている、この問題に対する非常に研究の薄い人に啓蒙をしていただきまして、この問題が積極的に早く解決されるようにぜひお願い申し上げる次第でございます。一言でけっこうでございますが御決意を伺いたい。
  44. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 ごもっともな話なので、私どもは何といいますか、すでにある程度社会政策的な域を脱して、すべての問題を解決していかなければならないのが、民主主義の原則だと思うのであります。私が先ほど新しいモラル、モラルと言っております言葉は、率直にいえば今八木さんのおっしゃったようなことを頭に入れつつそのことを考えておるのであります。それは何百年続いてきたかという問題でありますから、戦わなければならぬことは当りまえのことなので、そこにやはり社会的な正義、新しい社会作り、こういう問題が出て参るのだ、単純な、ちょっぴりしたらそれでもって恩恵的に何かいいことをしたような考え方、そういう点はもう明治年代に日本が捨てるべきものである。ことに戦後の社会におきましては、全くおっしゃるような観点から、つまり新しい民主主義の社会から見ました社会正義というものが樹立されるということが、どうしても正しい政治でなかろうか、そういう問題を打ち立てるためには、旧来の陋習と戦うというのが新しい政治の姿でなければならぬ。こういうふうに考えておりますので、今お二人のおっしゃったようなことは、十分私自身がそういう観点から物を考えて参りたいと思っておるような次第でございます。
  45. 五島虎雄

    五島委員 大臣参議院の方に呼ばれておるそうで、非常に忙しいだろうと思うのですが、あと一つ聞いてそれで次の機会にあらためて質問していきたいと思います。  今八木委員に説明された大臣だけの考え方は、私たちは非常に誠意が認められるような気がします。今後この新しいモラル、新しい社会、公正な社会正義の樹立のために、一つ中心的にうんと努力してもらいたいと思います。  それから政府の一つ機関として、どこが中心になっていくかというような問題は研究させてもらいたいというようなことですけれども大臣就任早々三カ月にしかならないと言われましたけれども、この問題についてはできるだけ実現するように努力してもらう方が——もらわなければならないと思うわけです。ところが現在昭和三十三年の予算編成に関しまして、厚生省としてもそれぞれ大蔵省に出して今査定中だろうと思うわけです。建設省からも、文教からもそれぞれそれが集約されていっているだろうと思います。ところが毎年の各省に対する大蔵省の査定のとき、最終的には十数分の一くらい、何十分の一に切られてしまうということです。それを知っておるわけです。大蔵省自身にはたとえば厚生、労働担当官がおるでしょう。そうすると大蔵省から出した予算を大蔵担当官がずたずた切ってしまう。建設省は建設省の担当官がいてずたずたにこれを切ってしまう。そうして総合すればちょっぴりした予算しか、この問題でやっていけない。こういうことがあるわけです。昭和三十三年には大体数億要求されておるということを知っておるわけですけれども、この問題についての各省大臣の大蔵大臣との交渉において、うんと次の予算を取るようにお互いに力を合せてやっていけるかどうかということを質問して、そうしてその自信のほどを見せてもらいたい。そうして私は次の機会に質問したいと思うのです。
  46. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 従来の実績に徴してごもっともな御質問だと思います。しかしすでに午前中にも申し上げましたように、建設省の予算すら、組むことについて私が建設大臣とこの種の問題について話しておるわけです。私の方で見ましても、何も社会局だけの仕事じゃございません。これは確かに両議員の言われるように全体にかかってくる問題です。さらに建設省のみならずその他の省の問題にもかかって参ります。むろん私自身は今申し上げたような観点から予算というものはすべて考えられるべきであると思うので、今おっしゃったように事務官僚がただ各省別に査定していていいとは思いません。私自身が、この問題についてはおよそ事務官まかせの仕事であってはならない問題だということは痛感いたしております。また私だけの誠意だとおっしゃいますが、私も政治家である以上は、自分だけの誠意だけではどうにもならない問題でございます。およそ政治家としての各省間の問題につきましても、十分自分自身の責任の上において、問題を解決する努力をしなければならない。各大臣に対しても、そういう問題について、新しい皆さんのおっしゃるような観点から、今回の予算を要求するようにぜひ努力いたしたい、こう考えております。各庁、各省歩調を合せまして、お二人のおっしゃるような観点でぜひ考えたい。むろん全体として非常に予算が渋いこともわかりますが、しかし新しいモラルを考えるときには、新しい観点から予算を考えられなければならない問題である、こう考えますので、ぜひ努力いたしたいということを申し上げておきます。
  47. 五島虎雄

    五島委員 大臣が今言われましたことは、皆さんも聞いておられただろうと思うのですが、新しいモラル、新しい社会正義の観点から、新しい気持で予算を盛ると言っておられるのですが、もうすでに大蔵省には厚生省の予算要求として出されているのじゃないですか。
  48. 加藤威二

    加藤説明員 地方改善事業費といたしまして、本年度、昭和三十三年度には大蔵省に要求しました額は、一億一千七十一万六千円という額になっております。
  49. 五島虎雄

    五島委員 そうするとこの一億一千万円の予算の中に、新しくこの三十二年度、岸内閣ができてから、この部落解放の問題として、何か新しく考えられた問題があるのですか。
  50. 加藤威二

    加藤説明員 三十三年度、本年度予算要求の内容でございますが、これは私どもいろいろ新規なものを出したいということで、いろいろ研究はいたしたのでございますけれども、それぞれ各省との関連もございますし、厚生省所管のものといたしますと、やはり従来要求いたしております隣保館、共同浴場、こういうものを前年度よりより多く獲得するという方向に向うのが一番妥当ではないかということで、項目といたしましては、前年度に比べまして、特に新規の要求は出ておらないのでございます。
  51. 五島虎雄

    五島委員 そうすると厚生省では、新しい立場からではなくて、八木委員が言われたように、ただ従来までは非常に微温的であるというように私たちは解釈するのですけれども、あなたたち自身はこれでもって完全に——完全にという言葉を使うことは語弊がありましょうけれども、これで一応何とか段階的に昭和三十三年度はこのくらいやったらよいんだ、しかしこれは全面的に解決する問題じゃないというような気持でやられたのか、これで完全であると思ってやられるのか、その間の気持はどうでしょうか。
  52. 加藤威二

    加藤説明員 私どもが予算を組みます場合に、一番考慮いたしますことは、一体部落の人たちはどういう施策を一番要求しているかということに重点を置いて、またそういった厚生省所管の行政といたしまして、そういった部落民の要望を考え、同時に社会福祉という見地に立ってどういう施策をやるのが一番よいかという両者を勘案して施策をきめていくわけでございますが、いろいろな実態調査その他によりますと、やはり隣保館とか共同浴場、こういうものを作ってもらいたい、しかもこういうものがない部落がまだ非常に多くあるわけであります。厚生省所管といたしましてはこういう要望が一番強いことを考えまして、やはりこういうところから手をつけていくのが一番妥当ではないかという考えで、こういう予算要求をいたしたわけでございます。
  53. 五島虎雄

    五島委員 今言われた隣保館や共同浴場の問題については、相当に密集しているところにしかこれらの問題は施策ができないわけなんです。そうすると、たとえば四百戸以上密集した部落には隣保館を作るとか、あるいは二百戸以上密集したところに浴場を作るとかいうような、集団々々の問題を考えなければこのことは施策できないというように考えられるわけです。そうすると、全国的には二百戸以下の部落もあるわけです。そうして差別がいかに行われているかということは、私はよく真実はわかりませんけれども、しかし部落の人たちの部落解放委員会等と話をしてみると、非常に戸数の少いところはよけいに差別があって、そうして日常の生活の中に大きく問題が出てくるのだということを訴えられるわけです。しかし厚生省として何らかこの生活の問題を解決するためには、隣保館とか共同浴場が要求されるからということで、そこに重点を注いでいかれる。そうすると、あとの小さい百戸くらい、あるいは五十戸くらいのところには、施策がなかなか行き届かないということです。二百戸、あるいは四百戸の地区が一体全国に、あなたたちの調べられたところでは、どれくらいありますか。
  54. 加藤威二

    加藤説明員 お説の通り、確かに部落民の多いところに重点を置いた施策であるということが比較的に言えると思います。まず隣保館でございますが、これは五島先生のおっしゃる通り、四百世帯以上をただいまのところは一応目標にいたしまして、これが全国的に六十二地区ございますが、そのうちで、すでに二十八年から隣保館の設置をやっておりますが、二十二カ所できております。従ってあと目標といたしましては、四十地区残っておるわけでございます。これを四年計画で一応この四十地区に毎年十カ所ずつ隣保館を作りまして、四年後には一応四百世帯以上の部落には隣保館を全部行き渡らせる、そういう当面の目標を持っております。  それから共同浴場につきましては、二百世帯以上の部落を目標にいたしましてこれが全国で百五十カ所ばかりございます。共同浴場の補助を始めましたのは、三十一年からでございまして、三十一年と三十二年で十カ所でございます。従いまして、まだ百四十カ所ばかり該当の地区がございます。これを今後できる限りすみやかにこういった地区に浴場を配置していきたい。三十三年では二十カ所の浴場を作りたいということで、予算要求をいたしたわけであります。確かに部落の規模の小さいところが、対象としては現在取り上げられておらないのでございます。とりあえず、部落の数の多い地域に重点を置きましてこれに対する対策を講じて漸次小さい方面の部落にも及ぼしていきたい、こういう工合に考えておる次第であります。
  55. 五島虎雄

    五島委員 今の説明で大体現在の考え方はわかりました。ところが三十三年度には隣保館十カ所、共同浴場二十カ所という考え方をあなたたちは持っておられる。そして隣保館も四年間すれば四百世帯以上にはまんべんなく回っていくんだということです。私たちは、この歴史的な長い問題を一ぺんに三十三年度に解決してしまいなさいというような気持はさらさら持っておりません。ところが問題は大蔵省の問題です。大蔵省に、三十二年度の要求として、十カ所の隣保館を要求されたでしょう。されたら、大蔵省では五カ所に——数じゃなくて、金でしぼられたでしょう。そうすると厚生省が計画した隣保館は建たずして、もっと単価の低いちゃちな隣保館ができたんじゃないかと思うんです。そういうようにして大蔵省から切られてしまうと、あなた方の考えが四年計画だといったってそれが三分の一削られたら十年計画にならざるを得ないわけです。そうすると十年河清を待つというか、十年先だってこの問題は解決できないことになるわけです。三十二年の要求でも、五千六百万円の要求額を省から出しておられるのじゃないか。そうして大蔵省の査定によってこれが八百四十万円に削られた。従って五カ所の隣保館建設ということになったというふうに聞いているわけです。ところがこの三十三年度においては、十カ所の要求についてこれから大蔵省ともいろいろ話していかなければならぬ。ところが大蔵省との相談において、この十カ所建設の予算を獲得する自信があるか、あるいは共同浴場の二十カ所建設の自信があるか、その自信のほどをというか、気持ですね、あなたたちのその気持を聞いておきたい。
  56. 加藤威二

    加藤説明員 お説の通り毎年の要求が大蔵省によって査定されておるわけであります。私どもも、われわれの考え方が順調に軌道に乗らないという点について非常に残念でございますが、本年度もこの要求がそのまま全部通るかどうかということについて、必ず通すというお約束をするわけには参りません。しかし私ども一応この地方改善事業の重要性ということについてはたびたび大蔵省にも話をいたしております。また今後の向うとの予算折衝におきましては、微力ではございますが私ども全力をあげて確保に努めたいと思います。先ほどの大臣の答弁にもありましたように、大臣といたしましてもこの問題には相当熱を入れられるということでございますので、私ども単なる生活課なりあるいは社会局だけではなくして、省として大蔵省にぶつかっていきたい、こういう工合に考えております。
  57. 五島虎雄

    五島委員 大臣の気持も反映するように、とにかく今後うんと努力したいというようなことを今言われましたが、私たちはそれに期待をしています。そういう言葉を聞いて、部落の方たちも非常に期待されるだろうと思います。ですからうんと大蔵担当官と折衝し、その意のあるところをよく理解されるように一つあなたたちを中心として努力して下さい。厚生省では一億一千万円も要求をされているわけですけれども、これをずっと昔にさかのぼって戦前の部落問題、部落の同和費用ですか、そういう費用と現在の予算の問題についてどのくらい国家予算の中に占めておったか、あるいは現在どのくらい占めているか、物価指数等々の問題からどういう比較になりますか、検討されたことがございますか。
  58. 加藤威二

    加藤説明員 かつての内務省における十年計画、これは私ども当時のお金にして千数百万円という金額だったと思いますが、それがその当時の総予算においてどのくらいの比率かということは、いまだ私はその数字をつかまえておりません。しかし当時の内務省の政策というものは、当時は内務省が現在の建設省あるいは厚生省、自治庁、そういった各省に分れておりますそれを総合的に持っておりましたので、当時の同和対策事業というのは内務省だけで総合的な施策がなし得たわけであります。戦後内務省が解体されまして、私どもの要求しております一億一千万というものも、当時で言いますれば内務省の社会局関係の予算にすぎないわけであります。これのほかに建設省なりあるいは文部省その他各省関係の、同和対策予算とはっきり銘打たれないかもしれませんけれども、同和地区に流される予算の額がどれだけになるということは、今のところはっきりした数字がつかめておりませんので、早急にこの数字の整理をして御提出いたしたいと思います。
  59. 五島虎雄

    五島委員 それはあとでけっこうですが、そうすると今地方の県や市といろいろ関連があるわけですが、たとえば特殊部落のある県あるいはある市というようなところに、この問題についていかなる施策をしたらいいか、要求要望があればすみやかに回答をするようにというようなことを省から各都道府県に対して要請されたことがありますか。
  60. 加藤威二

    加藤説明員 これは正式な文書等ではございませんで、同和対策の協議会——全日本同和対策協議会という会合が毎年持たれておりましてそこで同和対策としてどういう施策が一番要望されているかということを各省別に取り上げられておりますので、少くとも同和対策事業としてどういう施策が必要であるかということの輪郭ははっきり了解しているつもりでございます。
  61. 五島虎雄

    五島委員 その場合、同和対策の要望として、同和対策協議会の要望を基本としてあなたたちは翌年の施策をきめていかれるのですか。たとえば各都道府県知事等々を通じてその各地方々々からの要求項目とか、地方の施策についての要望等はとっておられないのですか。
  62. 加藤威二

    加藤説明員 各地域から個別には調査はとっておりませんが、しかし私どもとしては各地域の要望とそれから同和対策協議会において出される要望とがそうかけ違ったものだとは考えておらないのであります。同和対策協議会におきましてこういう対策が必要だといろいろ相当たくさん並べられておりますので、各地域の特殊性がありましたとしても、一応この同和対策協議会において要求されております項目でほとんど尽きるのではないかという工合に私どもは了解いたしておるのでございます。
  63. 五島虎雄

    五島委員 そうするとあなたが言われるのは、全国に散在されたところの関係都道府県の気持も同和対策協議会からの要望も同じだと言われるけれども、私たちの調べたところによると、関係のある都道府県地方から要望書も何も出ていないところがたくさんあるようですね。ありませんか。
  64. 加藤威二

    加藤説明員 この同和対策協議会のメンバーには、要するに部落の多い府県の職員等が入っておりますので、従いましてそういう人は当然自分の管内の部落の人たちの要望というものを重視するわけであります。そういう部落の人たちのいろいろな要求をそれぞれの地域で取り上げまして、それが同和対策協議会にみな持ち上げられてきておる、私どもはそういう工合に了解しておるのでございます。
  65. 五島虎雄

    五島委員 私たちが知るところによると、全然要望、回答なしというようなところがあるやに聞いておるわけです。ところがそういうところも決してこれらに対する対策が緩慢であったりあるいはそっぽを向いておるような自治団体はないのじゃないかと思います。もしもそっぽを向いておるならこれは問題だと思う。しからば回答なしというような地方がもしありとするならば、それは一体どうしてだろうかということを私たちが研究してみますと、地方団体の赤字財政と非常に密接な関連が出てくるのじゃないか。今は地方財政は御承知の通り各市町村団体を取り上げても少しよくなったとはいいながら今なお赤字財政に苦しんでおるわけです。そうするとお前のところに共同浴場をやる、お前のところに隣保館をやろうということであっても、その補助率が二分の一とかあるいは五分の四ですか、三分の二ですか、そうするとあとの二分の一あるいは三分の一は地方団体でこれをまかなわなければいかぬ。従って施策はしたいけれども、受けたらやはり持ち出しがあるのだということがあって回答なしというような地方が現われてくるのじゃないかと思われる節もあるのです。ほんとうに正直に考えたときにそういう気持があるということをお思いになりませんか。
  66. 加藤威二

    加藤説明員 五島先生のおっしゃるようなことは確かにあると思うのでございます。ただ回答のない府県といいますのは、比較的部落の数が少いとかそういう府県がやはり多いようでございまして、部落の数が非常に多いとかいろいろ問題があるような府県では、こういう問題を無視することが事実上できないわけでございます。たとい赤字と申しましてもやはりやるべきことはやるのが地方自治体であろうと存じます。ただ赤字だからといってそういう問題に目をつむっておるというわけには必ずしも参らないと思うのでございます。従いまして私どもの方でいろいろな実態調査等によりまして、回答なしというような県はそういった問題が比較的うるさく取り上げられていないというような府県が多いという工合に了解いたしておるのであります。
  67. 五島虎雄

    五島委員 うるさくないから取り上げられてないのだというふうに言われますが、赤字財政の都道府県では、もらえば持ち出しになるとかいうことが非常に多い。特に去年ですか、財政再建特別措置法というものが自治庁で作られました。そうして赤字財政をいかにしてまかなうかという場合、国から金を貸してやろうといっても、いろいろな計画をして公共事業費を制限するとかなんとかいうようなたががはめられておりますから、特に回答なしというような地方は、そういう事業を受け入れようとしないという事実があるのではないかと思う。従ってこういうことがあるならば、財政再建特別措置法という法律そのものが、私たち社会党が指摘しておったように、公共事業費の制限になるのだ、従って各住民に対してはマイナスの法律にしかならないのではないかということを当時主張したわけですが、これは非常に重要な問題だと思うわけであります。さっきも大臣に聞いたのですが、岸内閣は貧乏の追放を公約の大きな一つにいたしておられますが、貧乏というのは日本全国が貧乏で、その貧乏の中に多くの部分を占めるところの労働者、農民、中小企業者が貧乏しております。ところが現在におけるところの貧乏は日本自体の宿命でしょう。ところが部落民といわれるこの人たちは、戦前からずっと歴史を通じての貧乏なんでありますから、これらの問題を解決することは非常に重大だと思うわけでありますが、そうすると財政再建特別措置法の適用団体である都道府県に対して、いかにこれを喜んでさせるかというような問題も考えていかなければならぬ問題ではないか。しからばどういうふうにするかということがその次に問題になってくるわけであります。それは特別交付税の措置等を考えなければ、とうてい地方はそれに協力しないのではないかと思うのです。ですから私が言いたいのは、特別にこれらの問題については特別交付税を回してやるんだというようなこと等も、自治庁あたりとよく相談してやらなければならぬと思います。そういうことをあなたたちは努力する気持はございませんか。
  68. 加藤威二

    加藤説明員 そういった報告のない県が赤字県、ことに財政再建団体に指定された県ではないかという御意見でありますが、確かにそういう面もあるということは否定できないと思います。しかし同時にその再建団体であるために、部落対策の費用が出ないということはないと存じます。例をあげますと、たとえば京都府というのは、おそらく再建団体指定の第一号か二号かくらいではないかと思いますが、これは要するにこちらの国庫補助でもって隣保館とか、これは市町村でありますが、要するに県費による部落対策の費用、これを相当多額に組んでおります。これはやはりそういうものを組まざるを得ないということが県の実情ではないかと思います。たとい赤字があっても、そういう費用を計上せざるを得ないというのが実情ではないかと思います。そういう意味におきまして再建団体であるから部落対策の費用は出ないのだということはないと思います。なお特別交付税のお話も出ましたけれども、これも私どもそういった性格のものに特別交付税として出し得るかどうか、法律的にまだはっきり自信がございませんので、そういう点も検討してみまして可能でありますればそういった方向に向くように努力はいたしたい、こう考えております。
  69. 五島虎雄

    五島委員 それなんかはほんとうによく考えてもらってやってもらいたいと思うのです。  それからまた一つの問題としては、せっかく国から補助額をもらって、地方に流れていった、ところがそれがそのまま地方の部落の費用として使われていない、いろいろの費用に転用されているというようなことを訴えられたことがあります。そういうようなことは厚生省関係ではございませんか。
  70. 加藤威二

    加藤説明員 厚生省に流れておりますのは施設でございますから、運営費等については流れておりません。要するにはっきり外に現われる施設に対する補助でございますので、おっしゃるような事例は厚生省関係の予算についてはない、かように考えております。
  71. 五島虎雄

    五島委員 この部落のことを聞いてみますと、非常にトラホームなどが多いわけですね。この問題の解決に対してあなたたちが取っ組まれるかどうか。観念的な問題としていろいろ御承知だろうと思うわけですが、衛生施設が非常に悪いというように考えるわけです。それは水道とか何とかいう施設が非常に悪いのではないかと一般に言われております。ところがこの水道の施設等々が非常に促進してないということです。特に自治庁では、やはり今の財政再建特別措置法等々の中に全国の簡易水道の問題として自治庁が起債を許すのは、百万円以上の簡易水道でなければ起債の世話をしないんだというようなことになって、前々国会からこれが地方行政委員会で非常に問題になりました。ところがそれを七十万円以上だったら世話するとか何とかいうようなことです。ところがここに衛生的な問題を解決するのに簡易水道施設等々を非常に要望されておるわけです。水道はないわ、下水の設備はないわ、そういうところから非常に非衛生的になると思うのです。従って私たちは考えるのに、これは環境を改善してやらなければならないというようなことで、衛生局の方の管轄になるわけですけれども、この水道の施設などは考えられておりますか。これは管轄違いでしょうね。
  72. 安田巌

    ○安田説明員 同和地区の衛生の状態が今お話のように必ずしも好ましい状態ではないということも事実だろうと思います。そこで、たとえばトラホームの問題にいたしましても、結局防疫の中にトラホームの予防の費用がございますから、そういったようなもので特にそういった衛生上の非常に条件の悪いところから手をつけるようにいたしますと、そういうところは当然入るわけでございます。なお診療所等につきましても、大体国民保険がだんだんと普及して参っておりますから、そういうところで直営診療所でありますとか指定の医療機関ができますれば、これが衛生状態をもっと大きく網をかけて向上させるという結果になるのではないか。水道にいたしましても、一つの村がそういったように水道がないために衛生上非常に工合が悪い、そのために伝染病がときどき出てくるんだというところがありましたならば、県は何をおいてもそちらの方に先に簡易水道を配置すべきだというふうに考えております。公衆衛生等に実は私どもいろいろ相談いたしておりますが、具体的には府県におきましてそういう点を考えると思っております。なお隣保館等におきましては簡単な診療所等がございまして目の治療等くらいはみなそこでやるという例が多いのであります。高知県あたりでも今の簡易水道が相当そういう方面に費用が流れているというふうに考えております。
  73. 古川丈吉

    ○古川委員 関連して……。途中ですが……。社会局長も御承知ですが浴場の関係も非常に要望があるようですが、政府としてはその問題についてはどのようなお考えをお持ちですか。
  74. 安田巌

    ○安田説明員 共同浴場、これは考え方によりますと隣保館よりも施設ができただけですぐ効果があるわけです。隣保館の方は施設ができましてもやはりいい指導者があってそれがうまく運営されないとわれわれが期待しておった効果が上らないという問題があります。浴場の方は今まで十個所の補助予算を配付いたしたのであります。みなに大へん喜ばれておるような状態でありますので、来年はこれも委員の方々から言わせればちっぽけな額でとおっしゃるかもしれませんけれども、二十個所実は要求しております。できるだけそういうふうな御要望に沿いたいと思っております。
  75. 八木一男

    八木一男委員 社会局長にお伺いしたいと思います。先ほど厚生大臣に部落問題についてお伺いをしました。厚生大臣は非常に御理解が深い方でございまして、それを大いに推進するという御返事でございましたけれども、厚生大臣お一人では非常にむずかしい問題でございまして、政府委員その他局長、課長補佐、すべての方がほんとうに全力を尽してやっていただかなければなかなか推進がむずかしいだろうと思う。大臣が御答弁になったことでいいわけでございまするが、さらに担当局長である安田社会局長にその決心を一つお伺いいたしたいと思います。
  76. 安田巌

    ○安田説明員 大臣の御答弁がどういう御答弁か私実はこちらにおりませんでわかりませんけれども、よくまた大臣の御意思を承わりまして、大臣の御意思が確実に実現できるようにいたしたいと思います。
  77. 八木一男

    八木一男委員 たしかそういう御返事があると思いました。これから大臣のおっしゃることの大まかなことを申し上げたいと思います。というのは大臣に私はいろいろ御質問をいたしました。前の神田厚生大臣、その前の川崎厚生大臣のときに部落問題について私の考えている掘り下げ方を申し上げたときに安田さんはそばで聞いておられたので、安田さんに重ねて申し上げる必要はないと思うわけでございますが、堀木さんは初めてだから申し上げたというわけです。堀木さんは非常に御理解が深い。私のきょう特に申し上げたいことは、部落問題は歴史的な沿革は御承知だから申し上げませんけれども、そういうことで何百年、三百万人の大ぜいの人々がしいたげられてきた。貧乏と差別で非常に困ってきたという状態でございます。これが日本の今までの徳川幕府以来——その前からも始まりますけれども、あらゆる機関の政治の責任であったわけです。明治以後はよくなっているはずだけれども、明治以後もこの前申し上げましたように、形式的な解放をしただけで実質的な解放は一つもしておらない。戦後の解放も、たとえば農地解放の恩典を部落農民には与えておらないというようなことで、全然そういうことをしておらないわけです。ですからこれは歴代のすべての政府の責任でありまするが、現在の政府としてはこの問題は解決するのによほどの決心を持って当らなければならない。そこで政府なりあるいは行政当局にはまだ理解の少い人がたくさんございます。というのはこの問題の本質上東日本の人ではなかなかわからない、北海道の人なんかはてんでわからない。東北の人もごくうっすらわかる人も少いのです。関西以西の人でなければわからないので、たまたま非常に有能な熱心な方が部局につかれましても、そういう人であったならば一つもわからない、またわかった人が意見を言ってもその折衝する相手の局部の人が東北、北海道の人、あるいは関西の人でもてんでそういう民主主義的な考えを持っていない間違った人がおるときにはその話が通じない、また折衝する相手の大蔵省がそういう人であった場合には通じないということが非常にむずかしい問題でございます。そういう無理解な人のいろいろな意見のために、ただ恩恵的に事柄をちょっとずつ進めればいいのだというような行政的なやり方が今まで進められてきたわけです。それではいけないのであって、今までのこういうしいたげられた状態、現在のこの状態を考えまするときに、その人たちが権利として当然の人権を尊重される、いろいろ経済状態、環境その他を要求されることは権利として当然だと思う。それに対応いたしまして政府なり国会におる私どもの責任として、これを解決することは義務であると考えるべきである。それを恩恵的にちょっとやってあげてそれでいいんだということでは事は済まないと思う。われわれが義務として考えなければならないということを厚生大臣に申し上げたわけです。厚生大臣はそれをはっきりと確認されました。別な言葉でほんとうによい政治をやりたいということを申されましたけれども、その意味を確認されました。その決心で当っていくということを言われたわけでございます。それを安田さんは厚生大臣からもちろんお聞きになると思いますけれども、さらにここではっきりしておいていただいて、関係の課長なり担当の方、あるいはほかの局部の方に、そのような決心で厚生大臣はやっているのだ、またきょうは内閣総理大臣はおいでになりませんけれども内閣の国務大臣としてそういう御答弁があった、だからそういう決心でこの問題に取っかかるのだということをぜひ安田さんから浸透していただきたいと思います。その点についての御決心を伺いたいと思います。
  78. 安田巌

    ○安田説明員 大臣はいつも厚生省の仕事は民主的な新しいよい社会を作ることだということを申されております。私どもも実はそういうことで大臣の驥尾に付して努力して参りたいと思います。同和事業の問題、これは今お話がございましたけれども、非常に長い間の問題でございまして、解決はなかなかむずかしい問題がたくさんあります。実は昔内務省で総合計画をやったことを私どもはよく知っているのでございますが、それを今考えてみますと、当時やりましたのは主として地区整理、都市計画事業みたいなもの、家を建てるというような問題、それから公衆衛生上の問題がございましたが、当時の内務省はそういうものを自分のところで全部一本に持っておったわけでありまして、そのときに先ほど話が出ました農地の問題がどうというところまでは実は出ていないわけです。たまたま内務省が解体されておりますから、厚生省といたしましては厚生省の仕事の中で自分のところでやり得ることからやっていかなければならない。それにはやはり精神的な問題もありますし経済的な問題もございます、これはけさから御指摘になった通りでございまして、それが基礎になっておるのは事実でございますが、私どものやり得ることから、いわば環境を少しでもよくしていきたい、しかも厚生省の仕事の中でやり得るものならばわれわれは予算を要求してやっていけるのではないかということで、実は私局長になってからこの仕事を始めたわけでございます。そこで私ども協議会を開いて各省を呼んでいろいろ話はいたすのでございますが、何をやるかということになりますといろいろのつながりがございますから、これをやればすぐこうだということはなかなかない。先ほど申しましたような公衆衛生の事業にいたしましても、その部落を含んだ村をよくすれば全体がよくなるということで、保健の問題もそうでございます。それから住宅の問題もそうでございますが、ただ現在建設省で不良住宅改善の仕事をやっておりますので、だいぶ部落の方に鉄筋のアパートを建ててもらったのもありますけれども、そういうわけでなかなかむずかしい問題がございますのでよく研究しまして、今お話のようなことは部内にはよく伝えますし、関係各省にも協議会等を開きましたときによく御趣旨を徹底するようにしたいと思います。
  79. 八木一男

    八木一男委員 先ほど厚生大臣にも申し上げましたけれども、厚生省、労働省、農林省、通産省、法務省、文部省、地方自治庁それから大蔵省、そのように各省にまたがっている問題でございまして、その中で一番関係の深い厚生省ではありますけれども、問題を総体的に進めるのは厚生省だけでは非常にむずかしいと思います。それで内閣自体に何らかの機関を置く必要がある。それは非常に強力な権限を持った審議会であって、たとえば今の社会保障制度審議会はある程度強力なものでございまして、諮問に対する答申権、それから積極的な勧告権を持っておりますが、答申権、勧告権のほかに行政の相当の指導権というようなところまで与えた行政委員会的な色彩のあるりっぱなものができる必要があると思う。そういうことを堀木さんも十分に研究して推進したいと言っておられましたけれども、皆さん方が各省の問題だからといってほっておいたらどこもやりません。これをやる重点はどうしても厚生省ですから、厚生省からその必要があるということを強く打ち出していただかなければできないと思う。その点で厚生省がぜひそういうふうに推進していただきたいわけです。現在その推進の一方法として一年に一回か二回連絡協議会を持っておられることは私存じております。けれども、一年に一回か二回の連絡協議会ではそういうことの十分にできないことは、申し上げなくても賢明な安田さんは御承知の通りでございます。そういうことを推進すると同時に、現実にすぐにその協議会をもっと法制化するとか、また今のままでも一年に一回か二回じゃなしに必ず一月に二回ずつくらいやるとか、そういうような推進方法も具体的にすぐとっていただきたいと考えるわけです。それと同時に厚生省自体も、環境の関係公衆衛生関係、生活保護の関係、そういうようなことで厚生省自体がやらなければならぬ問題のために、これを義務と考えてこの問題にほんとうに取り組むとしたならば、一つの生活課ですかこれだけでは非常に人員も少くていかに優秀な熱心な人がおいでになってもそれだけではほんとうの意味の推進はできないと思う。これは内閣の問題かもしれませんけれども、少くとも一省くらいは設けて大勢の人員でほんとうにそれに取り組んでやっていただく必要があると思う。内閣全体の官制のほかに厚生省自体の官制もぜひ考えていただく必要があることを厚生大臣に申し上げました。厚生大臣も基本的に賛成である、研究して推進したいと言われたわけでございます。それをぜひ安田さんも覚えておいていただいて厚生大臣を助けて推進していただきたいと思うわけでございます。それについての御答弁をお願いいたします。
  80. 安田巌

    ○安田説明員 今の行政機関制度からいいまして、縦割りと申しますか横割りになりますかそういうような仕事がうまく機構上できるかどうかという一つの問題があるかと思いますが、なおまた審議会というものも法律的な性格から申しまして、今八木さんのおっしゃるような点を満たすことができるかどうかにも問題があるかと思うのであります。いずれにいたしましても大臣がここでいろいろ御答弁になったようでございますから、大臣の御趣旨を伺いましてその上でまた善処いたしたいと思います。
  81. 八木一男

    八木一男委員 大臣の方は極力推進される、非常に行政に堪能であられる安田さんはいろいろ問題があるということをお考えになるだろうと私も思っております。それをさらにいろいろな諸官制を扱うところに持っていくとさらに問題があるということを必ず言われると思う。けれども、それでは問題が解決しない。問題を解決するためには、その官制上の問題があるなんというように形式的にものを考えて、三百万人の日本人が不当に差別されて不当に貧乏にあえいでおる状況を知らない人たちを厚生省の人たちが口説き落して説き伏せて、もしもそれでも聞かないならばほんとうにけんか腰でもがんばってそして大勢の人がしいたげられておるのを直すという観点に立って形式的な考え方を打ち破っていただかなければならないと思う。審議会に行政的な権能のあるものが少いと思う。ですからそういうものは困る、言うに違いありませんけれども、それを打ち破らなければ問題が解決しない。その関係のいろいろな官制の比較考量をしている人のただ形式的な紙の上の良心的満足と三百万人が助かるかどうかという問題は問題になりません。だからそういう無理解な抵抗があるのでありますから、それを突き破っていただきたいと思う。その点についてもう一回御決心を伺わせていただきたいと思います。
  82. 安田巌

    ○安田説明員 今おっしゃったようないろいろむずかしい点もあると思いますので、十分一つ研究して努力いたしたいと思います。
  83. 八木一男

    八木一男委員 厚生大臣はその御決心でおられますので、どうか安田さんや関係の人は強力にやっていただきたいと思います。  それから次に予算の面でございますが、昨年の同和関係の予算で五千六百万円要求されて大蔵省で八百四十万延の査定を受けておられるというふうに私ども調べたわけでございまするが、その通りでございますね。——今のは隣保館だけの予算でありますから、そういう金額の問題じゃなしに比率の問題になる、それをお伺いいたしたいから、お調べにならないでけっこうです。隣保館で五千六百万円要求されて八百四十万円になってしまったというような大蔵省の無理解な状態です。それを直さなければならないので、これから大蔵省の鳩山主計官を追及する用意になっているわけですが、その前に申し上げたいのは、隣保館の要求が三十三年度でたしか五千六百万円をちょっとオーバーしただけだと思いますが、これはお調べになってお返事を願いたい。
  84. 安田巌

    ○安田説明員 隣保館の予算の三十三年度の要求額は十カ所で五千六百五十八万八千円でございます。これが二分の一の補助率でございますから倍額に動くわけでございます。それからついでに申し上げますが共同浴場が二十カ所でこの予算が四千三百四十四万円、これを明年度の予算として大蔵省に要求いたした次第でございます。
  85. 八木一男

    八木一男委員 そこで特に申し上げたいのは、大蔵省の査定については、今、鳩山さんが来られたから鳩山さんに御質問をするわけですが、厚生省自体が五千六百万円の要求を去年したのが、ことし五千六百五十八万円、わずかに一%ふえただけだ。そんなことではこういうことの解決にならないわけです。少くとも十倍、百倍というような決心を持たれなければならないときに、前年度の一%増くらいの要求をされて、大蔵省が多分断わられるであろうというような弱腰ではこれは解決できない。ですからこの隣保館の予算は共同浴場の予算にも当るし、また厚生省以外の建設省の予算要求にも同じような態度が見えます。ほかのところも全部そうです。それでは問題は解決できないということです。そういう点について安田さん、ぜひことしの予算要求を変えていただき、そしてまだ修正の機会があるんだから、大蔵省と強力に折衝していただいて、一文も削減されない、もっと拡大された予算を出していただかなければならないと思う。大臣はそのような決心、概括的にそのように推進する強い決心を示しておられるわけです。それについて御意、見をぜひ承わっておきたい。
  86. 安田巌

    ○安田説明員 大へん弱気であるということでおしかりを受けたのでありますが、弱気もありますけれども、隣保館は人件費が要るわけなんです。市町村とすると運用するのに相当金がかかるものですから、今までの要求の工合を見ておりますと、大体十カ所くらいが一番適当のところじゃないか、もちろんそれは二十カ所、三十カ所がいいのでありますけれども、従来の実績から申しますと、そういうことです。それからもう一つ共同浴場が従来五カ所でありましたが、この方は実に要望が多い。これは一度作ってしまいますと、普通のふろ賃よりか安いのでございますが、若干の収入もございますし、地方へ行きますと、町の浴場よりこっちの方がきれいじゃないかというので人気がある。この方は五カ所から二十カ所にふやしてこれはできますとそのまま使えますから、そういうふうにして両方相待って大体このくらいのところならば、来年度の府県の要求を満足し得るのではないかということでございます。実はもう少したくさん予算の要求をいたしたいのでありますが、いろいろそういう点もございまして、このようにいたしたのであります。このくらいの予算はぜひことしは通していただきたいと私は思っております。
  87. 八木一男

    八木一男委員 総括的に申し上げると、もっとこまかく研究して多分に追及したいのでありますが、一例として申し上げます。だから去年より少くていいという問題でなしに、今までの概念でなしに、国家が義務として解決しなければならないという観点に立てば、各省が全部そういう態度にならなければならない、特に中心である厚生大臣はその決心でやっていただかなければならない。その場合の比率は一割増し二割増しでなしに、百倍くらいにする決心をもって当っていただかなければならないということです。ですからそういう点でほんとうに強腰で推進していただかなければならない。大臣が言明されたような気持に入れかえて推進していただく決心があるかどうか。
  88. 安田巌

    ○安田説明員 大へんむずかしい御質問でございまして、具体的に百倍や、二百倍にするということになりますと、なかなか問題がございますが、大体そういう心持でやりたいと思います。
  89. 五島虎雄

    五島委員 関連して……。担当の安田局長さんたちが中心としてこの問題を推進していかなければならないが、きょう参議院の予算委員会でわが党の湯山参議院議員が岸総理にこの問題についての総体的な質問をした、その席に、安田局長はおられましたか。
  90. 安田巌

    ○安田説明員 きょう私は参議院の法務委員会にずっと出ておりましたので、おりませんでした。
  91. 五島虎雄

    五島委員 今八木委員の言われた百倍あるいは二百倍にというようなことは、政府の積極的な措置がやはりこれらの問題を解決するんだという表現です。従って私たちはあなたたちに力を与えたいと思う。というのは、今の参議院の予算委員会において湯山参議院議員から総理にこの問題についての総理の考え方はどうだというようなことを質問されました。ところが総理のところにもこれらの問題が非常にあった。総理は、民主国家として恥かしい問題じゃないかということについては、その通りだという回答があった。それから総合対策の必要があると思うがどうか、これは十分考えなければならぬ問題だと言われた。そのために政府の機関を設ける考えはないかということに対しては、設置することがいいと思う。そのために今後考えていきたいというようなことです。従ってこれらの問題で総理自身がそういうようなことを国民に約束されたら、厚生省関係としてもこれを推進するように自信を持って努力されていいのではないか、こう考えます。ですから今後厚生省関係だけでこの問題は解決しないということは、あなたたちにどれだけ聞いてもそれは良識はわれわれ認めます、一生懸命今までやられて、大蔵省との関係においてずたずたに切られたという事実も私たちはよく知っている。しからば一億一千数万円に及ぶ予算要求が三十三年度に実現するかどうかということは今後の問題に属するのでしょうけれども、自信を持って——首相もそういうようなことをわれわれに約束されたのだったら、必ず大蔵省もそういうような気持になってくれるに違いないのですから、自信を持って一つ当面の解決、そして将来の解決のために努力していただきたいということを希望いたします。
  92. 八木一男

    八木一男委員 質問を続行いたします。安田さんには十分お聞き取り願ったわけでございまするが、安田さんのおられる前で大蔵省の担当官に御質問をしたいと思います。あなたの扱われている担当部局を一つ教えていただきたい。
  93. 鳩山威一郎

    ○鳩山説明員 私は労働省と厚生省です。
  94. 八木一男

    八木一男委員 鳩山主計官お話で労働省と厚生省ということを伺いました。ただいま私どもの質問申し上げていることは、未解放部落、被圧迫部落の人たちの解放の問題であります。そういう問題について、特に関係の深いのが厚生省であり、また労働省も相当の関係を持っているわけでございますので、厚生省、労働省に私どもは問題を提起いたしまして——厚生省、労働省のほかにも、関係は全部あります。申し上げますと、農林省も、通産省も、地方自治庁も、文部省も、法務省もそれから特に財政をあずかっておられる大蔵省も、これは内閣全体に関係のある問題でございます。そういうときに、この問題を厚生省なり労働省なりが理解を持っていろいろ予算要求をされましても、大蔵省の担当される方がその問題の御理解がまだ不十分でありますときには、せっかく大切な政策が予算という現実面で推進されないおそれがございます。鳩山主計官は非常に優秀な主計官であることを私伺っておりまするけれども、生まれたところはおそらく東京であろうかと思います。東京の方には非常にわかりにくい問題です。ですから問題の本質を端的に知っておいていただきませんと、厚生省がいわれましても、またいかに聡明でありましても、そういう問題に対する御理解が少い場合には非常に行政上時間を要するということで、その本質的な問題をぜひ一つ知っておいていただきたいと思うのです。  この部落の問題は、北海道の人は一つもわかりません。東北の人はほとんどわかりません。東京の人もほとんどわかりません。ところが関西以西になってくると、実に重大な問題になってくるわけであります。それは三百万人になんなんとする日本の同胞が不当な差別と不当な貧乏にあえぎ続けておるわけであります。それがどうした渕源かといいますと、部落問題については歴史家がいろいろの学説を出しておりまするが、とにかく一致したところは、そういう問題がひどくなったのは徳川時代の本多佐渡守の時代からであります。本多佐渡守の時代にどういうふうにしてそういうふうになったかと申しますと、これは本多佐渡守が百姓をして飢えしむべからず、食わしむべからずという政策をとって、あの武士階級が百姓からの収奪政策を確立した。その場合に、収奪をするのでその代償として百姓には名誉を与えなければならない、そのために士農工商という階級別を作って、百姓に支配者たる武士階級の次の階級を与えた。さらにそれだけでは足りないとして、士農工商の次に穢多、非人という名前を持ってきて、さらに下の階級を作って、そして百姓の自尊心を満足さす、そして実質的には、経済的に一番日本の人口の多数を占める農民からしぼり取ったというような、封建的な反動的な政府としては巧妙でありますけれども、日本全国の人民にとっては実に過酷な政策を本多佐渡守がとったわけであります。それが渕源になりまして、そういう気の毒な人々が差別を受け、人間的な扱いをされないで何百年も過ごして参ったわけであります。ということは、現実の大きな状態でございます。その後明治になって明治の太政官布告令によって一応の解放がありましたけれども、明治においても、たとえば昔の武士階級には公侯伯子男という階級を設け、士族という名称を与え、依然として権力のあるものはえらいのだというような封建的な思想が明治の年代になっても続いておりました。そのために、その反動を受けて、昔から差別を受けている人たちが人間並みに扱ってもらえる状態が推進しなかった。推進しなかったと同時に、さらに悪いことが起った。それは徳川時代にはそのような差別をしたかわりに斃獣処理権という、牛や馬の死んだものに対する独占処理権を経済的に与えておりました。ところが明治の解放後は、それをも取り上げました。ですから製革業者その他に近代資本主義が入り込みまして、製革業を大きな資本で奪ってしまいました。全部奪わないにしても非常に圧迫をしたわけですから、部落民の人はただ一つの生きる道である斃獣独占処理権を圧迫されてひどい貧困になった。徳川時代より明治時代はさらに悪くなった。その後戦後の解放がありましたが、戦後の農地改革の場合にはその恩典を受けておらない。なぜかというと、あの解放のときには小作農であった人に農地が与えられたが、しかし部落民は小作農の資格すら持っておらない。雇い、手伝いと称して、非常にひどい状態にある農業労働者として働いている人が多かった、小作権を持っておらなかったために農地を戦後の解放でも与えられなかった、そういう状態であります。ですから現在の状態は農民として成り立とうとしても、たとえば関西以西では、農地を持っている人もおりますが、平均二、三反しか持っておらない。関東になるとややましになって五、六反持っておる人がある。そこで関東ではそういう空気が少いわけです。二、三反では人間として生きていかれるものではありません。これは鳩山さん十分わかるでしょう。それからもう一つ、今度商売あるいは零細工業で生きていこうとすると、資本が少い、コネクションが少い、社会的な差別があって成り立たない。わずかに昔からの歴史的、伝統的産業で生きていく、その歴史的、伝統的産業は皮革とそれからげた産業、ところがげた産業は御承知の通り生活様式が変って参りましてげたをはく人が少くなった、それでげたとか鼻緒の産業は衰微の一途をたどっておる、そのために零細企業者や商売人としても生きていかれない。次にそれでは労働者としてどうかということになると、実際貧困でありますから上級学校には行かれない、大学卒業者がほとんどいない、高等学校に入る人もいない、中学校は、やっと新教育になったために義務教育で中学まで出られるようになったけれども、それすらも十分に行かれない。親たちがほかのかせぎに一生懸命になるために、学童に赤ん坊を預けて外に出なければならない、そのために学童が長欠児童になる、従って同じ能力のある子供でも中学の成績が悪くなる。ところがその難境を克服して中学校を優秀な成績で出た子供たちが、今度就職するときになりますと、優秀な成績を持っていながら大きな会社は事実上の差別をやって表面は部落だからとは言いません、人が余ったとか、あなたの性質はこの会社よりほかの方が適当でしょうからというような適当な文句を使って、丈夫で成績がよくてその仕事に向いている子供でも、ほかの人をとってしまってその人はとらないというような状態があるわけであります。ですから労働者としても成り立たない。やっと就職したところはすぐつぶれそうな零細企業とか、そういうところです。ですからすぐつぶれて失業群にほうり出される、失業群にほうり出されるより初めから就職できない人が多いと思うのです。そうすると、どういうことになるかというと、最後に行くところは失対事業しかないわけであります。失対事業がほんとうの生業になってくる。ですから関西以西の失対事業に働いている人の大部分は部落出身の人と御理解願いたい。ところでこれは労働省関係になりますが、ちょっと横道にそれますが、労働省関係では、失対事業については一軒に一つしか失対手帳を渡さないという過酷な方法をとろうとしておる、一部ではとっている。京都の部落の人はそのために親を養えない、子供を養えない、手帳一つではどうしても食えないということで、仲のいい夫婦が夫婦別れをして、二軒にして失対手帳を二つもらってそして辛うじて子供、家族を養っている状態すら生まれておる。こういうことを一つ労働関係で覚えておいていただきたい。そういう状態にあるのです。それから漁民の場合も同じです。山林の場合も入会権から締め出されている状態があります。そういうようなことで、どこでも生活が成り立たないという状態でございます。しかしその中でいろいろチャンスをつかんで一部金持ちになっている人はあります。それから政治に進出している人もおります。しかしそれはごく一部であって大多数は貧困と差別の前に押しひしがれているわけです。その問題を解決することは、日本の政府としてはこれはほんとうにやらなければならない義務だと思う。ところが今まで解決していない。今の同和対策とか何とかいうようなことは、日本の政府としては、気の毒だから少し金をやったらよかろうというような恩恵的な考えを持っている。ところがこれは何百年の政治の責任でございます。何も部落に生まれた人が志願して部落に生まれたわけではない。契約によって生まれたわけではない。日本国民としてその土地に生まれて、不幸にして貧乏なところに生まれたために、そうして昔から不当な差別のところに生まれたために、現在の貧困と差別を受けている。そういうことは民主主義の人権を尊重された世の中では、断じて許されてはならない。ですからそれを解決するのは政治の責任です。これは今の内閣だけとは申しません。歴代内閣全体の責任です。徳川幕府はもちろんでありまするが、明治以後の全部の責任です。それを解決することが政治の必要なゆえんであって、その問題で先ほど五島さんと私とここで厚生大臣に質問をして、堀木厚生大臣は相当理解の厚い返事をなされておるし、また内閣総理大臣も理解の厚い返事をなされて、内閣もこの問題に積極的に動こうとしている状態に現在達しております。  そこで厚生省なり労働省なり、ほかから予算要求が出てくるわけです。少しもとに戻りますが、この問題を解決するのは、同和教育の問題だけではいけない。人間は同じだから差別をしてはいけませんというようなことでは、解決がつかない。昔はその問題だけだと思われた。ところがそれはなぜ解決しないかというと、今は表面上差別的言辞を漏らす人はなくなりました。というのは、糾弾闘争が起って、水平社運動が非常に糾弾をしたから、そうやったら締め上げられるということがわかっておる。だからそういうことは非常に気をつけて、口では言わなくなったが、事実は差別は残っております。というのは結婚の問題、両方好いて好かれて恋い焦がれた者が結婚しようとすると、猛烈な反対が起る。それで結局心中をするか、片一方が自殺をするというような問題が方々に起っている。だから実際的な差別は現にあるのです。表向きは言わないだけです。結婚の問題だけではなく、就職の問題でもある、居住の問題でもあるくらいだから、厳然として残っている。その残っている問題を解決するには、人間は平等である、人権は尊重さるべきであるというような観点から進めると同時に、どうしてそれがなくならないかという根源を突かなければならない。その根源を突くには、突き詰めて見ると経済問題です。なぜ差別が出るかというと、たとえば部落の人は、学校さえ出た人が少い。教育程度が低いから、いろいろの点で蔑視を受ける。また同じ中学校を出ても、長欠児童であったために、そういう点で非常に差別を受ける。今度は就職できない。そうすると、あれは就職しないでぶらぶらしている男だと指をさされる。そうなると、自分が一生懸命にやっても就職できないから、その人が憤慨して非常に荒々しい言葉を出すことがある。そうなると、それが差別の原因になる。部落の人たちはこわい。部落の青年はこわい。だからそうっとしておくがいいぞ、そういうことで差別が出てくる。それから貧乏なために、衛生環境が悪いのでトラホームが多い。だから伝染の危険性を感じて遠ざかる。トラホームで目のつぶれた人を見れば、目が二つそろっている人より容貌はよくない。そうなれば目のつぶれたような人ばかり多いから、やはりさようなことで差別をする。全部貧乏にかかってくる。貧乏にかかるから、根本的に直すためには、経済問題を解決しなければならない。それを解決するには、当然完全雇用ができ、最低賃金制が行われなければ、これは解決できません。農地もふやさなければならないが、農地は余裕が少い。問題は労働問題が完全に解決して、完全雇用がすべての人にでき上り、そうして賃金がすべてによくならなければ解決はできないのであります。少くともそういうことに進めるまでに、あらゆる方法で環境衛生をよくし、それから日雇い労働者の就労日数もよくし、要件を過酷にしないで、賃金も高め、そうして農地の方では新しい開墾地を作ってそういうところにできるだけ優先的に配分をする。漁業の問題でも保護をし、それから零細企業についても、たとえばげたの問題でも、ペルシャではサンダルをはいている。げたをサンダル工業に切りかえることはできますけれども、部落民はそういう国際情勢を知らない。またそれを知ってもやるだけの資金を持たない、工場も持たない部落民にとっては解決できない。そういう面を重点的にやって、零細企業が振興するような方法をとれば、いろいろやる方法はある。ところがこの問題については、残念ながら東日本の人は非常に理解が少い。たまたま厚生省の事務局の中に一人熱心な事務官があっても、その人一人では厚生省の中を説得しがたい。さらに大蔵省に行って鳩山さんに申し上げたときに、鳩山さんは財政の総体的見地に立って、必ずしもすぱっと承知していただける状態になかった。そういうことで問題が停頓しているわけです。ですから今度政府が本腰にこれをやろうという場合に、今までの概念ではなしに、今までの各官庁にわたっていたこの部落解放のための予算、今まで同和関係といわれた予算、この予算をふやすのが、一割とか二割とか五割という問題で、これは解決するのではなしに、三百万の問題を急速に解決するには、先ほど例として申し上げたが、二百倍とか三百倍とかいうような決心をもって当らなければ、ほんとうに民主国家はでき上らない。そういうような決心で当っていただくことを、内閣総理大臣も概括的に認められ、厚生大臣も認めておられるわけでございますから、そういうことで厚生省や労働省から要求がいくと思う。そこで担当の主計官の方が十分にそれを把握していただいて、一般的な財政のワクとか、一般的な財政の傾向とか、そういうことでなしに考えていただきたいと思うのです。財政というものもこれは政治です。貧しい人が、気の毒な人が人間らしい生活を送るための財政であるはずです。ですから、今までの政府が気がつかないでその財政が非常に狭められておったならば、その問題に重点を置いたならば、飛躍的に増大するのがほんとうの財政であろうと思います。その点でぜひ鳩山さんの深い理解を願いたいと思います。  ずいぶん長いこと申し上げましたから、これで切りますが、それについての御見解をぜひ伺っておきたいと思う。
  95. 鳩山威一郎

    ○鳩山説明員 ただいま非常に熱意のある、また非常に物事の真髄を突いたお話を承わりまして、私もこの問題につきましては、御想像のように、そういう見聞が全くないのでありまして、ただいま非常に詳しくお話を伺いまして、問題の本質がよく頭に入ったように思います。来年度の予算につきましては、ただいま鋭意作業を続けておりますが、財政全般といたしまして、非常に渋いような線が出ております。私どもといたしましては、その中においても特に厚生省、労働省方面では、社会的な立場の非常におくれておられる方面に、できるだけ手厚い国の措置をやっていくべきだというふうに考えて、それの方に今努力しているわけでありますが、何分財政上機械的に経費がふえるというようなものが年々に多くなりまして、そういった財政の弾力性が非常に失われていくような傾向が強いのであります。私どもはそういうことをなるべく押えて、特に社会的にお気の毒な方面に、できるだけのことをしていくというふうな考え方を今持っております。できるだけ努力いたしたいと思っております。
  96. 八木一男

    八木一男委員 十分に御理解をいただいたから、非常にけっこうだと思います。これは機会あるごとに、大蔵大臣にも主計局長にも私ども申し上げるつもりでございますが、参議院で予算の審議があって、残念ながら主計局長や大蔵大臣に申し上げられなかったのですが、これはあらゆる国会を通じてしょっちゅう取り上げていきたいと思います。しかしその担当の一番中核にある鳩山さんから大蔵省にそういうことを浸透していただいて、無理解な方がないようにしていただきたいと思いますし、厚生省の社会局長さん初め厚生省の方も、担当の主計官の方がだいぶ御理解下さいましたので、一つ自信を持って交渉していただきたいと思う。  さらに具体的な問題でございまするが、昨年度——これは一つの例でございます。厚生省の全体の予算はもっと多いのでございますが、隣保館の予算で五千六百万円というのが八百四十万円に削減をされております。ことし五千六百五十八万円の要求をされているらしいのでございますが、そういうことではいかぬ、厚生省自体がふやしてかからねばならないのに、二〇%増くらいではとんでもないということで申し上げておったわけでございます、これはもっとふやしていただけると思いまするが、幾ら出しても大蔵省側でこのように削減されるのでは何にもならないので、厚生省のさらにふやしていただく予算を断じて削減をしていただかないようにしていただきたいと思う。その点についてお考えを伺いたい。
  97. 鳩山威一郎

    ○鳩山説明員 ただいま来年度の予算の策定の作業をいたしております。御承知のように予算は、皆さん方がふやしたいという御熱心な希望を持っていらっしゃるものでございますから、結局最後はどういうところにふやすかという皆さんの御相談になるわけでございます。私どもの一存では参りません。できるだけのことはいたしたいと思いますが、結果におきましてはできるだけ努力するということしか申し上げられないので、よろしくお願いいたします。
  98. 五島虎雄

    五島委員 できるだけ努力するということは、少し前よりもいいような気がするけれども、それだけではわからぬわけです。担当官の鳩山さんは新しく厚生労働の担当をされるようになったわけですが、聞くところによると非常に理解のある方だということです。もう今までずいぶんこの問題については——大蔵省が理解がないのかどうか、とにかく全体的な予算の中で見合せて、特にこういう問題には力を重点的にそそがなかったから、十分の一ばかりに削られてしまって、ほんとうに見る影もない予算になって、ために厚生省は施策として実施が非常に困難になっているような状況を私たちは知るわけです。従いましていろいろの関係もあるようですけれども、ほんとうに人間としての本質の中に特にこの問題に理解を持って、次の予算には大幅にそれを増額し、できれば大蔵省も全体の要求を満たしてやって、一つの同胞に対するところの歴史的な問題を解決するように努力してやっていただきたいと思うわけです。何べんここであなたにどうだこうだと言っても、要はあなたの気持一つにかかっているわけですから、一つ重点的にこれを考えてやって下さい。お願いします。
  99. 八木一男

    八木一男委員 そういうことでぜひ一つ厚生省の要求に対して最大限度の努力をしていただきたいと思います。なおまた主計局長その他に追及いたしますし、鳩山さんは非常に優秀な方ですから、そういうことはありませんけれども、私どもこれを研究しておりますから、主計局長その他に、もしそういう問題について私どもが直接に申し上げた方がいいときにはどんどん申し上げるようにいたしますから、そういうときには一つ御連絡を願いたいと思います。  総括的に鳩山さんにお願いしておきたいのは、あなたの担当になっている厚生と労働の問題は、今の内閣の貧乏追放という問題に一番関係が深いところでございます。汚職と暴力、貧乏追放のうち、汚職、暴力は財政的にあまり関係がございません。財政的に関係のあるのは貧乏だけで、貧乏の追放は厚生と労働が一番関係が深い。そういう関係でいろいろ昔のしきたりを乗り越えて貧乏追放のために、各省から要求のありますことを大蔵省内で一つ実現するように努力願いたいと思います。  途中で質問をとりましたが、先ほどの五島さんの御要望と私の今のことについて重ねて御答弁を願いたいと思います。
  100. 鳩山威一郎

    ○鳩山説明員 私ども目下来年度の予算の作業をやっているのでございますが、三悪追放の中で、特に貧乏追放という問題は非常に大きな問題を含んでいると思います。結核の問題もありますし、あるいは国民皆保険の問題もありますが、いろいろ財政的にも非常な大きな問題になるものであります。今後十分研究をしなければならぬと考えております。ただいまどういう考え方でいるかというところまではまた申し上げられないのでございますが、御了承願いたいと思います。
  101. 植村武一

    植村委員長代理 本日はこれにて散会いたします。     午後四時四十六分散会