○
滝井委員 いろいろ過去において特定の法律によって保健所がその使命を負わされてはおりました。しかしそこの医師が
保険医となったからには、結核の中の人工気胸や何かだけはやりますけれ
ども、
あとの結核の治療はやりませんと、こういうように患者が保健所へ来たからには言うわけにはいかぬと思うのです。同じ
保険医でありながら人工気胸だけはやるけれ
ども、他の結核の治療はやりませんなどと言ったら患者は怒ってしまう。そうすれば
保険医というものの中にも特別な何かランクか色をつけてやらなければならぬ。
保険医と言うからにはみな平等でなくちゃならぬわけなんです。だからそういう法律を上からかぶせてしまったからには、やはり私はそういう言いのがれというものは患者大衆から言えばできないと思うのです。私はむしろ保健所がそういうことをやることについては反対をしたくない、反対はしたくないけれ
ども、この立法論から言うとやはり非常に問題が出てくる。それから
一つは私が非常に心配をするのは、今の
地方財政からの問題です。
地方財政はできる限り保健所の経費を削ろうとしておる。これは
日本の今までの
政治家の物の
考え方が、とかく収入のないところには金を出さぬといういき方なんです。金を使うところには出さぬというその証拠には、文部
行政、
厚生行政という面にはなかなか金が出ないというのはそういうところにある。それが端的に
地方の保健所にも現われてきて、医者にも安い給料しかやらぬから医者は集まらぬ。この間も一体全国の保健所で最高の給料をもらっているのは幾らかと言ったら、前の体系からいって十四級の三号ですか、四万五千が最高だということなんです。そうすると功成り名遂げて、最高のポストというものは保健所長です。それ以外にいくならば、県の課長か衛生部長、課長と保健所長は同じ、衛生部長というものはたった一人しかいない。最近は衛生部長を廃止するところが多くなってきた、民生部と一緒になったり、労働部と一緒になったりしていることは、いかに
厚生行政が落日の思いをしているかということを川崎
厚生大臣のときに指摘した。今は川崎
厚生大臣のときよりももっと衛生部長というものがなくなっているわけです。衛生部長がなくなるということは何を意味するかというと、下部の保健所というものが、だんだん虐待されているという氷山の一角として衛生部長のポストがなくなることに現われているのです。それが今度はそこを
保険医療機関というものに指定して稼がせるということになればそれは稼ぎます。稼げばそこで金がもうかる、金がもうかればそれだけ県の財務当局は喜ぶという形になって、本来の予防というものはだんだん影が薄くなってくる。予防ぐらい金を食うものはない。
厚生行政を見てごらんなさい、予防という面が一番虐待されておる。あなたの方の
公衆衛生関係、それからいわばおとなになっていく、一番予防的な厚い手当をしなければならぬのは子供に対する
行政なんです。児童局の
状態を見てごらんなさい。今
厚生省で一番目の当らぬところは
公衆衛生局と児童局です。そうして出てきた貧乏を刈り取ったり、出てきた病気の跡始末のための社会局の中の保護課とか、あるいは
保険局の中では
健康保険とか、こういうところのみがいたずらに栄えているというのは、
日本の政治の貧困を端的に示す以外の何ものでもないと私は思うのです。だからこれは出てきた結果を刈り取るには刈り取りのために非常に多くの金を要します。しかし予防は初めは金がかかるようであっても、長い目で国家百年の大計を目途にして物を
考えていくならば、予防は初めはかかるが、だんだん今度は刈り取らなくてもよいので、跡始末に金が要らなくなるからずっと楽になる。ところが今までの
厚生行政というものはそれなんです。
厚生行政の
地方行政もすべてそういうことなんです。従ってすべて物を根本的に見ていくときに、これを
保険医療機関にするということについては、必ず
日本の予防
行政に大きな禍根を残す、こういうことじゃないかと思うのです。それはおそらく今は一粒の麦であるけれ
ども、弁証法的にその一粒の麦は死なない。と同じように、今
厚生大臣が言ったように、任期は短かくても残しておくんだ
——いい方に残せば発展するが、悪い方に残せば悪い種がはびこることになる。そういう点で
一つ私は、いろいろ隘路はあるかもしれませんが、保健所はやはり保健所本来のあり方にしてもらいたい。もしどうしてもそれをやらなければならぬとするならば、私がいつも御忠告を申し上げておるように、
厚生省は
日本の五万の開業医
諸君を使うことが下手なんだということなんだ。もっと予防
行政に開業医をかり立てる道を
考えたらいいんだろうと思う。それをやらない。たとえば今度のいろいろの結核対策を見ても、公的
医療機関を使うことは
考えているけれ
ども、開業医を動員することは
考えていない。今の
日本の保健所で開業医の協力がなかったら、やっていける保健所が
一つでもあるか、ありはしない。そういう点で、何かこう今の
厚生省というものは、そういう開業医を使うことを知らない。故意に知らないふりをしているのかもしれませんが、これをもっとざっくばらんに予防
行政に使うということになれば、治療の面でも、もっと
厚生省と私的、公的
医療機関の
関係はうまくいく、こういう
関係が出てくると私は思う。これは釈迦に説法でございましょうが、そういう点だけ
一つ御注意願いたいと思う。
それから、もう時間がありませんので、最後に、ことしの九月に
厚生省が生活保護の特別実態
調査というものをおやりになっておるわけなんです。これは多分毎年こういうものをおやりになるのだと思うのですが、一体そのねらいはどういうところにあるのかということなんです。これを
一つ教えていただきたいと思う。