○古川
委員 山口県、島根県における
調査に参りました所見を申し述べます。
時間の
関係もあり簡単にいたしますが、なお、詳細は、
委員長まで提出してあります
報告書及び資料等によってごらんを願いたいと存じます。
まず、
選挙管理委員会の
実情について申しますと、山口県、島根県いずれも、県
選挙管理委員会の
事務局長は
地方課長の兼任であり、職員は、山口県では専任職員五名となっており、島根県では次長、係長は県職員が兼務しており、山口県下十二市
選挙管理委員会においては、独立した
事務局を持つものが八、その他は市
議会事務局また市総務課と併置されている現状であり、松江市においては、独立した
事務局を設置し、専任職員を配置しているとのことでありました。
山口市
選挙管理委員会より特に次のことがあげられたのであります。山口市
選挙管理委員会は、設立当初
事務局職員は局長以下五名でありましたが、その後の
事務量の増大に伴い、一時は八名を数えるに至ったのでありますが、
昭和二十八、九年以来、地方財政の窮迫により、職員は減員を重ね、現在専任三名兼務一名の職員により
事務を遂行している
実情であります。しかしながら、
選挙管理委員会における
事務量は、過去に比して何ら軽減するどころか、逐年複雑多岐をきわめる傾向にあり、
選挙管理委員会の性格と重要さを認識する当事者としては、まことに憂慮にたえないところであり、この点多年にわたり
事務局の拡充強化を
関係方面に訴え続けてきたのでありますが、昨年地方自治法の一部
改正を見るに至り、これは、
選挙管理委員会の中立性を否定し、
組織の弱体化を
意味するもので、軽視し得ないところであります。幸いに本年度より常時
啓発が国の委託事業として認められるに至り、多年の要望の一端がかなえられ、
運営の使命達成に大きな裏づけとなったのでありますが、反面、前述のごとき限られた職員による
事務量の増大は、ますます
事務局の強化拡充を痛感させるものがあるとのことでありました。なお、山口市
選挙管理
委員長より、人口八万五千二百九十三人、有権者五万二千百三十一人の山口市においても、最低
選挙管理委員会事務局職員五名は必要である旨を強調されたのであります。
次に、
選挙関係諸法令の
改正に関する点について申しますと、いずれも昨年十月開催の
全国選挙管理
委員中央
会議で要請した事項等の実現を切望しておられるのでありますが、山口県
選挙管理委員会より次のような
改正意見が述べられたのであります。すなわち、一、
選挙管理
委員の
定数を増加するとともに、
事務局を設置して
組織の強化をはかること。二、
選挙法規の
改正は、
選挙の直前にこれを行わず、法の制定から施行までの間に十分に日時を置いて、
国民一般に対して周知させるに必要な期間を置くこと。三、
選挙人名簿は永久制名簿にすること。四、町村合併により町村の
区域が拡大された現在では、町村長及び町村
議会の
議員の
選挙についても、自動車一台または船舶一隻の使用を認めること。五、記号式
投票を採用すること。六、時間を制限して連呼行為を認めること。
参議院地方選出
議員、都道府県知事
選挙のように、都道府県の
区域において
選挙される者については、
区域が広大である
関係上、ある
程度の連呼をさせることが
実情に即する。七、現在の用紙事情から見て、
選挙運動川
ポスター用紙の公給
制度を
廃止すること。八、政党等の政治活動と個人の政治活動の限界が不明確であるために、解釈上問題となることが多いので、政党等の
選挙時における政治活動の規制についての
規定を整備すること。九、
市町村の合併によって
市町村の
区域が著しく拡大されたに伴い、同一
市町村における
住所移転についても補充名簿へ
登録申請を認めること。なお、不在者
投票事由に「
投票区のある郡市の
区域外」とあるのを「
市町村の
区域外」とすること。十、法第百四十七条、
候補者の
氏名等の掲示に関する
規定及び法第百六十四条の二の
規定を
廃止すること。違反文書、図画の
撤去、
候補者の
氏名等の掲示は、
選挙時管理
委員会の
事務量からいって過重な負担であり、
選挙本来の
事務遂行に支障少からず、実効も薄く、また
選挙争訟等の原因ともなり、また、個人演説会は、多い人でも六十四回の制限までを開催した例はほとんどないので、実益がないということであります。その他潜在有効
投票について成文化すること。
選挙管理委員会が異議申し立てまたは訴願の
審査をする場合の権限を強化すること等の
改正意見が述べられたのであります。
島根県
選挙管理委員会からは、島根県の特殊性から見て、特に、一、町村長
選挙に
選挙運動用自動車一台の使用を認めること。一、
衆議院議員及び
参議院地方選出
議員の
選挙について、現行の街頭流説用標旗のほかに、離島その他交通不便の地域においてのみ使用できる標旗及び腕章を交付することの
改正意見が述べられたのであります。
さらに、山口県
市町村選挙管理委員会より、主として、
選挙管理
委員の
定数を増加するとともに、独立の
事務局(
公職選挙法中に
規定するか、または地方自治法中に
事務局必置の
規定を設けること)を設置して、
組織の強化をはかられたい。なお、これには、
委員数を増加して、全員が
出席しなくても
会議が開かれるようにし、
事務局に専従の書記を必置すること。さらに
予算執行権を
委員会に与え、
委員会の権限を拡充強化されたいとの要望がありました。
なおまた、島根県松江市
選挙管理委員会より、おもに、
選挙管理委員会についてはその
組織権限を次のように改め、
委員会の性格上、これが
組織運営については、
公職選挙法中に
規定すること。一、市区町村の
委員定数三人を四人とし、
出席委員三人で成立するよう改めること。二、
事務局を、都道府県及び市区は
必置制、町村は任意制とすること。三、書記その他の職員は
必置制とすること。四、
予算の編成
執行権は、旧教育
委員会法第五十六条ないし第六十条
程度はこれを認めること。さらに、
公職選挙法については、すでに触れた事項以外に、一、開票
立会人は
選挙管理
委員の選任に改めること。二、普通市及び町村の
選挙期日の告示は、
改正前の
通り、普通市は少くとも十五日前、町村は十月前に復元すること。もし現行のままなりとせば、立候補受付期間を
選挙期日の告示の日から二日までに改めること。三、
公職選挙法第百四十四条第四項による
ポスターの
掲示責任者は、その掲示する
市町村に
住所を有する者に改めること。四、
衆議院全県一区または
参議院地方区及び知事
選挙の場合において、地域広大な
選挙区における
選挙運動の規制について特例を設けること。これらの
意見が強く述べられたのであります。その他、
国会議員の
選挙等の
執行経費の
基準に関する法律を
実情に即するように改め、再
選挙及び補欠
選挙等の交付額を普通の
選挙と同額に改めること、また超過勤務手当の単価及び
投票立会人等の手当を増額すること、また、常時
啓発委託費の一億円では
公明選挙推進運動の完璧を期しがたいので、明年度においては少くとも最低三億計上を要望する等のことが述べられたことを申し添えます。
次に、警察、検察庁の取締りについて申し上げますと、山口県では、
昭和三十年以後施行されたおもな
選挙の
選挙違反として検挙された状況は、
昭和三十年
衆議院総
選挙三百一件、
昭和三十一年
参議院通常選挙百一件、
昭和三十二年知事
選挙三十八件で、違反の内容は、大部分が買収事犯で総体の八〇%を占め、戸別訪問、文書違反等がこれに次ぐ状況でありました。また、島根県においては、
参議院議員選挙の違反検挙状況について申しますと、
昭和二十八年、二百七件、四百二十八名、
昭和三十一年、四十一件、五十二名で、その内容は、買収、利害誘導、戸別訪問、
文書図画の制限違反その他であります。山口県の
選挙運動の状況で特に目立って変った点としては、最近
選挙に際し政党その他の政治団体の政治活動がきわめて活発に行われるようになってきたが、その目的が
選挙運動と同じように
候補者の当選を目的として行われるので、政治活動と
選挙運動との区分が困難になり、また個人の行う政治活動については禁止されていないので取締り上困る場合が多く、また、連呼行為は簡単な
方法で割合効果があるので、連呼行為を行うものが漸次多くなり、特に大きい
選挙ほどその気分が強いように見受けられたとの
報告がありました。
なお、この際、山口県の知事
選挙に際し特異な違反として、公印偽造並びに
公職選挙法違反事件があり、すでに山口地方検察庁より起訴されておるのでありますが、その概略を述べますと、立
候補者の
選挙運動者、
候補者の
選挙事務所において労務に従事した者及び金銀細工並びに印章業を憎む者計四名が、共謀の上、
選挙運動用
ポスターに表示する山口県
選挙管理委員会の検印を偽造せんと企て、点字検印打抜器を偽造して偽造検印の
ポスターを作り、
公職選挙法所定の制限枚数である一万一千枚をこえてみずからまたは他の人を介し、約二百四十枚を、真正な検印ある
選挙運動用
ポスターのごとく装い、各地に掲示したものであるという事件であります。これらの感想として山口地検検事正田辺光夫君は、啓蒙運動の強化が何をおいても必要であり、要は人の問題であり、
選挙運動関係者の自粛が強く望まれ、その防止対策としては、印刷所を特定し、たとえば刑務所などで印刷をまかせること、
選挙ポスターの検印の個所を指定する、たとえばまるの白紙欄を設けること、
ポスターに一連番号を付すること等の
意見を発表されたことを申し述べておきます。
最後に、党側の
意見を申し上げますと、
自民党、社会党ともに、
候補者をよく知らせ、雰囲気を高めるために、演説会の回数を多くし、連呼行為はこれを緩和して、
区域あるいは時間等の一定の制限を付してこれを認めることが望ましいとの
意見が強く述べられたのであります。山口県の
自民党からは、
公明選挙は
選挙民の自覚が根底であり、これがためには啓蒙運動が必要であり、特に
選挙費用は物価等の
実情をにらみ合せてよく考慮し、個人演説会の回数を増加し、さらにはがきの枚数を増すことが必要であり、室内用
ポスターを
廃止して検印ある
ポスターを増すことが望ましいとの
意見が述べられたのであります。社会党からは、山口県では、
選挙管理委員会において、自動車の買い上げ、
ポスターの掲示等を含めて、
選挙公営の強化が望ましく、事前運動の制限特に現職
候補者が有利に過ぎる傾向が多く認められ、
選挙の公正がいかがわしく思われる点もある等の
意見が開陳され、島根県においては、
公職選挙の
改正について根本的
改正問題として、将来なるべく早い
機会に比例代表制への移行及び公営の拡大徹底が主張され、制限を緩和すべき点として、乗車人員の増加、車上の運動等、立会演説会の拡大等が指摘され、罰則の強化と地位を利用する運動の禁止として、連座制の強化、公務員等の違反に対する罰則の強化、公共団体の
機関及び強制加入の法人等の役職員に対する制限が必要であるとの
意見が述べられたのであります。さらに、特に強く主張された点は、最近の地方
選挙の趨勢にかんがみ、首長
選挙に対しては特別措置を
規定すべきであるとして、公務員の違反に対する罰則の強化、消防団等の公共団体の
機関及び農協等の強制加入の法人の役職員に対する制限は
一般選挙より厳格にし、公共団体の諸行事の悪用に対する取締り、
選挙期間中に行われる工事の着手援助、落成等の儀式または特に酒宴等の諸行事に対する取締り、
選挙期間中の部落会、町内会、婦人会、衛生組合等の諸行事の悪用に対する取締り、いわゆる張り番の悪習に対する取締り、さらに、地方
選挙の違反に対する警察の取締りは大きな
選挙に比して十分でなく、見のがしているのではないのかとさえ思われる点等の
意見が述べられました。
以上、山口、島根における
選管、検察、警察及び党支部の
意見の概要でありますが、御
出席の方々には、いずれも、
選挙をいかにしてよくやれるようにしていくかについて熱心に忌憚のない御
意見を述べていただいたのでありまして、また本
調査に格段の御
協力を賜わった
関係県の各位に対して、この際ここに厚く御礼を申し上げる次第であります。