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1957-11-08 第27回国会 衆議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年十一月八日(金曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 野田 武夫君    理事 菊池 義郎君 理事 須磨彌吉郎君    理事 高岡 大輔君 理事 森下 國雄君    理事 山本 利壽君 理事 穗積 七郎君    理事 松本 七郎君       伊東 隆治君    植原悦二郎君       大橋 忠一君    北澤 直吉君       櫻内 義雄君    並木 芳雄君       町村 金五君    松田竹千代君       松本 俊一君    水田三喜男君       有馬 輝武君    田中織之進君       戸叶 里子君    福田 昌子君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君  出席政府委員         外務政務次官  松本 瀧藏君         外務事務官         (大臣官房長) 田付 景一君         外務事務官         (アジア局長) 板垣  修君         外務事務官         (経済局長)  牛場 信彦君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君  委員外出席者         外務事務官         (大臣官房総務         参事官)    斎藤 鎮男君         外務事務官         (アメリカ局外         務参事官)   田中 弘人君         外務事務官         (欧亜局長)  金山 政英君         外務事務官         (国際協力局外         務参事官)   森  治樹君         外務事務官         (移住局外務参         事官)     粕谷 孝夫君         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 十一月八日  委員西尾末廣君辞任につき、その補欠として有  馬輝武君が議長の指名で委員に選任された。     —————————————  原水爆実験禁止等に関する請願(高橋等君外二  名紹介)(第一三五号)  同(灘尾弘吉君外三省紹介)(第一三六号)  同外二件(西村力弥紹介)(第一三七号)     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商に関する日本国オーストラリア連邦との  間の協定締結について承認を求めるの件(条  約第一号)  在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部  を改正する法律案内閣提出第二号)(予)  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 野田武夫

    野田委員長 ただいまより会議を開きます。  最初に、通商に関する日本国オーストラリア連邦との間の協定締結について承認を求めるの件を議題として、質疑に入ります。  なおこの際報告いたします。本日国際情勢に関する件について岸総理が出席されますから、その際は直ちに本条約に対する審議を打ち切って、総理に対する質疑を行うことにいたしますから、さよう御了承願います。  通告により質疑を許します。山本利壽君。
  3. 山本利壽

    山本(利)委員 今回、日本国オーストラリア連邦との間に通商に関するところの協定ができましたことは、我々としては喜びにたえないところであります。先般政府当局からの御説明にもありました通りに、豪州日本国との間にはかつてこの種の協定が結ばれなかったのでございまして、わが国は長らく差別待遇を受けておったのでありますけれども、今後はこの協定が、審議の結果無事承認されまして、日豪間の貿易が盛んになることを希望してやまないものでございます。そこで今後再び両国の関係が以前のような状態に返らないようにするためには、われわれは国をあげて注意しなければならぬと考えるのでございますが、今日まで日本豪州によって差別的に……(発言する者あり)委員長、整理願います。
  4. 野田武夫

    野田委員長 皆さん御静粛に願います。それではお続け願います。
  5. 山本利壽

    山本(利)委員 日本差別的に取り扱われておった理由を承わりたいと思います。
  6. 松本瀧藏

    松本政府委員 一般的に申しますならば、非常に競争が激しかったことと、日本側におきましてもいわゆるオーダリーマーケットが徹底していなかったというような理由もあります。
  7. 山本利壽

    山本(利)委員 今まで差別的に取り扱われておったのは日本だけでございますか、あるいは日本以外にも、一般税率を課せられている国が現在もございましょうか。
  8. 松本瀧藏

    松本政府委員 大体におきまして、日本だけに対しての適用であったように了解しております。
  9. 山本利壽

    山本(利)委員 わが国輸出が三十年度においては二千百万ポンドあったものが、三十一年度においては一千三百万ポンドに減少しておるようでありますが、この点はいかなる理由によるものですか。
  10. 松本瀧藏

    松本政府委員 豪州におきますところの為替事情等が非常に不利であったために制限を加えました結果、そういう数字が現われてきております。
  11. 山本利壽

    山本(利)委員 そうすると本協定が成立した場合には、今年度の輸出貿易は大体どのくらいになる推定でございましょうか。
  12. 松本瀧藏

    松本政府委員 見通しでございますので、的確な数字をあげることはどうかと思いますが、大体二千万ないし二千五百万ポンドの見当を事務当局でつけております。
  13. 山本利壽

    山本(利)委員 かりにそれを二千万ポンドとすると、今度のこの協定がなかった場合にはこの差額というものはどのくらになるのでありますか。
  14. 松本瀧藏

    松本政府委員 五、六百万ポンドであろうと想定されております。
  15. 山本利壽

    山本(利)委員 今度は日本最恵国待遇を受けるわけでございますけれども英連邦間においてはまた特殊な協定があると思うのでありますが、その関係はどういうことであり、さらにこのわが国が受ける最恵国待遇との差というものはどの程度のものでございましょうか。
  16. 松本瀧藏

    松本政府委員 ちょっと専門にわたりますので、政府委員に答弁させます。
  17. 高橋通敏

    高橋政府委員 英連邦間にはこの条約第一条第二項にございますように、英連邦相互間において特恵の利益が与えられておりますが、それはわれわれはこの条約によって均霑できないことに相なっております。
  18. 山本利壽

    山本(利)委員 それの場合とそれから一般わが国が受ける最恵国待遇との場合の差といいますか、もし税率なら税率によって、あるいは物によっても違うでしょうけれども、大体においてどの程度の差があるものか。英連邦間の貿易と、そして最恵国待遇を受けた以後におけるわが国との差というものは、一体どの程度のものか、説明することができるならば承わりたいと思います。
  19. 牛場信彦

    牛場政府委員 特恵関係は、ただいま関税関係だけに限られておりまして、輸入の手続の面におきましては別に特恵というものはございません。関税の幅は最近イギリスと豪州との間の協定によりましてだいぶ削られまして、ただいま最高七%半ぐらいの差になっております。ただし豪州が非常に興味を持っております開発関係の資材につきましては、大体におきまして差がないことになっており、同じ待遇を受けることになっております。
  20. 山本利壽

    山本(利)委員 するとこれが豪州との間の差別待遇は解消したわけでありますが、豪州以外にまだ日本との間に最恵国待遇の成立していない国はどういう国がございますか。
  21. 牛場信彦

    牛場政府委員 ただいま日本に対して最恵国待遇を与えておりません国は、ガットの三十五条を援用している国と大体同じでありまして、その数は十三ヵ国になっております。ただしそのうちで事実上最恵国待遇を与えております国もございます。たとえばインド、それから豪州などがそうでございまして、それを引きますと十カ国ほどになると思います。これにつきましては、さらに最恵国待遇を取りつけるための交渉を続けておる次第でございます。
  22. 山本利壽

    山本(利)委員 この機会に承わりたいのですが、日ソ交渉が成立して、日ソの間でも漁業協定なり通商協定というものについては締結努力されておると思うのでありますが、昨日の新聞によると、その経過は非常に進展しておるような報道がありましたけれども、この際日ソ間の通商協定についての中間報告と申しましょうか、現在の状況及び将来の見通しについて承わりたいと思います。
  23. 牛場信彦

    牛場政府委員 ただいまお説の通り日ソ間の交渉は非常に順調に進行いたしております。ただしまだ二、三点原則的な問題につきまして了解がつきませんので、なお努力いたしておるところでございます。
  24. 山本利壽

    山本(利)委員 私、質問を終ります。     —————————————
  25. 野田武夫

    野田委員長 ただいま岸内閣総理大臣が出席されましたので、これより国際情勢等に関して調査をいたします。  通告により質疑を許します。穗積七郎君。
  26. 穗積七郎

    穗積委員 私は久しぶりに総理にお尋ねするので、いろいろお尋ねしたいことはたくさんありますが、きょうは他の質問者も多数ありますから、緊急の問題について二点だけお尋ねいたしたい。第一点は国連における日本原水爆禁止案の結果がわかったわけですが、その問題と、もう一つは全国民的な要望の上に北京において交渉されながら、ついに中絶になりました日中貿易交渉の問題に対する政府所見、この二点についてお尋ねいたしたいと思いますから、簡明、率直にお答えをいただきたいと思います。  まず第一にお尋ねいたしたいのは、日本政府国連において提案されました原水爆並びに軍縮に対する提案というものは、実は日本国民世論は必ずしも反映していない。第一世論の集結であります国会における決議は、査察制度または管理制度あるいは他の一般軍縮条件として原水爆実験禁止要望したものではございません。にもかかわらず、政府西欧案に非常に遠慮をされまして、現実性があるのだという理由によって、ああいう中間案をお出しになったわけです。ところが現実的にものを考えて、一歩前進するならば、ゼロ敗よりはいいという考えでお進めになったわけだが、結果を見ると、その現実的だからといって国民期期をかけさせました結果が、実は非常な期待はずれでございまして、日本投票を入れてたった十八票。この人道的な、全世界の人民の要望である原水爆実験禁止の問題が、こういうような日本側現実的であるという、米ソ両方の間に立っての判断が、全く基礎がなかった、こういうことになりましたが、これは日本国民のはなはだしく遺憾とすることですが、これに対する総理所見をまず伺って、しかる後にこまかく御意見を伺いたいと思います。
  27. 岸信介

    岸国務大臣 原水爆実験禁止の問題につきましては、すでに国会においても議決をされ、また日本の全国民の強い要望でもございますし、またわれわれが純粋の人道的立場に立って、世界の平和を願う意味から考えましても、これが禁止を一日も早く実現したいというのが私ども念願であり、また私が従来その見地に立って一貫してあらゆる努力を続けてきているわけであります。  御承知通り、この問題に関しましては、従来原水爆実験をやっております三国の間において、意見が平行線的に相いれない、相異なった対立した見解が述べられておりまして、その論拠の上に立って実際にこれを持ち、またこれを実験している国が、それぞれ自分の立場主張した案を国連提案するということも、国連の総会の開かれるに当りまして、われわれが十分に予想できることであります。しかしてそうした対立した相いれない考え方が論議されておって、結局われわれの望むところの実験禁止というものを、一日も早くこれを実現するという結果をもたらすことがなかなかむずかしいという情勢にあって、日本ができるだけこれらの両方主張——両方ともその主張がんこ主張している限りにおいては、これは意見が一致しないこと、従来のロンドンの小委員会におきましても、長い間の会議の結果が、きわめて明瞭に示しておる通りであります。できるだけこれを歩み寄らして、われわれの目的を達成せしめることが、われわれとしては望ましいことであり、またそれが現状からいうと、一番実効的であり、両方がある程度譲らない限りにおいては、対立した見解がただ対立しているというだけであって、私どもはそれをその現状に基いて一日も早くこれが実現を期するという意味において、両方主張をある程度取り入れた案を日本提案として提案したわけであります。私は不幸にしてこれが少数でもって否決されたということは、穗積君とともにはなはだ遺憾であります。遺憾でありますが、しかし日本主張に対して相当なまた理解国連加盟者のうちにあったということも、私はこの問題を、将来さらに今後続けてわれわれが努力していく上において、決して無益であったとは絶対に考えないのであります。従いましてさらに今後同じ目的と同じ一貫した方針に基いて私はあくまでも努力していきたい、かように思っております。
  28. 穗積七郎

    穗積委員 総理の御答弁ですが、はなはだわれわれは遺憾でございます。しかもはなはだ無責任だと思うのです。政府が実は立っております国民世論というのは、無条件でかつ即時禁止という念願、それは政治的配慮よりは、むしろ人道的な立場に立って、戦争を防止するためといいながらやっておる原水爆実験が、すでにわれわれ日本人民を初めとする世界人類に、戦争にひとしい実害を与える段階になっておるので、そこで政治または思想を超越して、全世界人類念願として、実は即時無条件ということが提案されてきた。日本世論もそうであり、国会決議もそうなっております。しかるに政府現実的だからということによって西ヨーロッパ案、つまりアメリカに気がねをされたということは、そうするならば通るであろう、不満足ではあるけれども歩前進になるならば、通ればけっこうだということで、実は国民はその政府の弁解を耳を傾けながら期待しておったわけです。ところが現実は、その米ソ両方の案の中間案の、寄せて二で割ったものが現実的だという判断は、実はあなた個人の主観的な判断藤山さん自身の主観的な判断であって、客観的な国連中心とする世界政治の中では、最も非現実的な案であったわけです。それが証拠に投票の結果はああいうふうに少数で否決された。政府現実的だといったのは、われわれはこれは不十分だと思うけれども即時無条件禁止案を出せば通る可能性は少い。そこでこういう条件を多少におわせながら出せば通る可能性がある。だから現実的なんだ。半歩前進だが現実的なんだ、こういうことで現実案だということを藤山外相を初め関係者はみな説明された。ところがこれは最も非現実的だったわけです。そうするならば、政府ははなはだしく国連中心とする世界政治情勢に対する判断を誤まったか、あるいは今後これを——外務省はけさの新聞で拝見しますと、予想より賛成者が多かったので喜んでおるような空気ですが、そうするならば、これを押していけばこの案を来年また出す、再来年また出すということで通るという見通しを持って喜んでおられるのか、その現実性という言葉がはなはだしくわれわれにはごまかしと聞えるので、一体どういうことなのか、その責任を明らかにしていただきたい。それはどこにそういう欠陥を生じてきたか。
  29. 岸信介

    岸国務大臣 日本案少数で否決せられたことは私非常に遺憾と考えておりますが、同時にソ連インドの案も同様な運命になっておることも御承知通りであります。私は現下の世界国連におけるところのこの問題に関する世論が、いまだわれわれが念願しておる、できるだけ早いときにこれを停止するという要請に関しまして、十分に意向がいっていないということは、はなはだ遺憾に考えております。しかしながら私は、われわれが主張しておるこの考えというものは、ただ単に一部の国でなしに、あるいは北欧の国であるとか、あるいは共産国の一部においても、あるいはアジア中南米等の諸国におきまして、ある数のこれが支持があり、相当なこれに対しての共鳴を得たということは、決してわれわれの考えが非現実的であり、無意味であったという意味では絶対にないと思います。もちろんこの原水爆禁止問題ということが、理論的に申しましてわれわれが主張しておることが正しくとも、現実に持っておる国がこれをやめない限りにおきましては、いかに正しい議論であり、いかにわれわれの念願が強いものでありましても、現在の国際関係において実現することはできないというこの現実は、私としてははなはだ遺憾でありますけれども、しかしながらわれわれがこれに関しての主張というものについて、相当な国々の間において日本案理解を得たということも、また私はいなむことのできない事実であり、従ってこの問題の実現につきましては、なお将来ともわれわれはあらゆる努力をしていくべきものである。私はすでにこの世界情勢も、いろいろな科学の発達等において動きつつあるこの現状におきまして、またわれわれの主張というものが、だれが考えてみても正しい主張である限りにおいては、これをわれわれが不退転の決意を持って努力をするならば、必ず実現できるという確信に立って今後も努力をいたしたい、かように思っております。
  30. 穗積七郎

    穗積委員 総理にお尋ねしますが、それではあなたは今度の案がああいう少数で否決されながら、あの案が非現実的であったという認識をお持ちにならない、日本国民に対しても責任をお感じにならないというお考えであると理解してよろしゅうございますか。
  31. 岸信介

    岸国務大臣 私は、あくまでも私ども念願するところは、原水爆実験禁止を一日も早く実現するということにあると思うのです。これに向っては、私がかねて申しておりますように、結局持っておる国は数ヵ国の少数の国であって、これがやめない限り、われわれはいかにしたってそれに対して実力をもってやめさすという手もないわけでありますから、従って世界の良識に訴え、世論を興起して、そうしてこれらの三国の大国をして十分に反省せしめて、これが目的を達成する。それにはあらゆる機会において、あらゆる努力によって世界の良心に訴えるということが、私は望ましいと思います。またわれわれのやらなければならぬ努力である。国連におきましても、その意味において私ども努力をいたしたわけであります。それが不幸にしてわれわれの主張が通らなかった。またさらに進んだ今御主張になっておるような即時無条件にやめろという主張も通っておらない。従ってそういう国際現状であるということは、われわれははなはだ遺憾とするところでありますけれども、しかし決して失望する必要はない。われわれはあくまでもわれわれの主張に向って、今後も不退転の気持を持って努力をすべきものである、かように考えております。
  32. 穗積七郎

    穗積委員 その主張現実的に、あの案をそれではあのままの形で今後とも継続して主張されるつもりですか。情勢によってこれを変更する用意があるのか、その点を伺っておきたいと思います。
  33. 岸信介

    岸国務大臣 私ども目標は、これをやめさすということにあります。従って、私はネール首相ともその場合に話したのですが、必ずしも提案している案が唯一の正しい案だとか、もしくは絶対に動かせないという問題じゃなしに、やはりわれわれとしては、あくまでもなくする、世界情勢を見つつ、これを早くやめさせるということを実現することが、われわれの真の目的でありますから、私は必ずしも日本の案というものを最高の何として、将来ともこれを絶対に実現をするためにこの案で進まなければならぬとは考えておりません。私どもの願いは、やめさすということにある。これを実現するのに最も適当な方法と、適当な時期と、適当な形において実現していきたい、かように考えております。
  34. 穗積七郎

    穗積委員 それではもう少し立ち入って伺う前に、国連における日本政府代表態度について一、二納得のいかない点がありますから、お尋ねしたいと思います。まず第一に、ソビエト案反対をされましたのは、一体どういう理由によるものでございますか。
  35. 岸信介

    岸国務大臣 私ども主張実現する上から申しまして、日本案というものを今度の何におきましては支持し、これが実現をはかるということに全力をあげるのが、日本代表としては当然なんであります。従いまして、その他の案に対してわれわれが賛成を投じないということは当然であろうと思います。
  36. 穗積七郎

    穗積委員 それでは西欧案に対しては反対をされないで棄権をされたのはどういう意味ですか。その二つの案に対する——両方とも原水爆並びに軍縮実現しようという考え方根底になっていることは明瞭なんですが、そういう意味では最終目標根底考え方は、日本案ソビエト案も同一である。それなのに、その趣旨をも否定するがごとく、棄権でなくて反対投票をし、一方に対しては日本案という独自の案を持っておりながら、それに反対しないで棄権をした、その区別をされた理由はどこにありますか。
  37. 森治樹

    森説明員 日本反対いたしましたソ連案は、御承知通りソ連は、実験停止に関するソ連案インド案のために撤回いたしたのであります。従いまして日本反対いたしましたソ連案は、核兵器使用制限に関するソ連案でございます。西欧案に対する日本態度は、西欧案は今後も軍縮交渉を続けるという案でございます。ただしこの案では核兵器実験を優先的にとめるということを規定しておりませんので、その意味におきまして、一面日本の案の趣旨を取り入れてありますが、一面、全面的には日本の案を取り入れてございませんので、棄権いたした次第でございます。
  38. 穗積七郎

    穗積委員 それならば、両方棄権すべきだと思うのです。あらゆる案に対して棄権すべきであって、趣旨は同じであるが、日本が独自の案を持っておるから、他のものに賛成するわけにいかぬというなら、趣旨賛成であるなら、禁止そのものがわれわれ国民念願である。そうであるならば、当然棄権をすべきであって、同様の取扱いをすべきであるにかかわらず、差別をされた理由はどこにあるかということを聞いておるのです。一つ明快にやっていただきたい。
  39. 森治樹

    森説明員 ただいま申し上げましたごとくにソ連案は、投票に付せられました部分は、核兵器使用禁止に関するソ連案でございます。(「それならいいじゃないか」と呼ぶ者あり)従いまして日本側といたしましては、単に使用でなくして、核兵器の生産なり、あるいは使用ということになって、初めてこれに対して賛成態度をとり得るのでございまして……(「賛成でなくても、なぜ棄権しないかということです。」と呼ぶ者あり)ただ使用のみを規定した案につきましては、全面的にわが方の態度を満足せしめるものでございませんので、これに対して政府といたしましては反対いたしたのであります。
  40. 穗積七郎

    穗積委員 総理、お聞きの通りですが、総理御所感はどうですか。それではおかしいですよ。西ヨーロッパ案日本案と違いますよ。一般軍縮その他を条件として、実はやる意思がないのです。禁止する意思がないのです。それを禁止する意思がないといっては世界世論支持を得ないので、ごまかしのために、できがたいことを先に条件等を付して、それができたならばやろうというので逃げておるだけなんです。むしろその方が狡猾であり、その方がわれわれの態度からはほど遠いものだと思う。それに棄権をしておいて、一方に反対するというのは、われわれ了承ができません。われわれ独自の案を持っておったから、両方賛成することができぬというならば、両方とも棄権して、わが案に賛成投票をする。これは一応理が通っておる。案の内容はわれわれ満足ではありませんが、とるべき態度としては、そうです。原水爆問題を思想政治を超越する、国境を超越する人道的問題、人類共通の問題としてこれを世界提案されて、世界にアピールして賛成を得ようという態度は、そこでくずれておるではありませんか。なぜ、そういう政治的な態度をされたのか。その理由総理からお尋ねしたい。事情は今参事官から御説明通りですからおわかりでしょう。
  41. 岸信介

    岸国務大臣 われわれとしては、さっき申しました通り独自の案を持っておりますから、他のものに賛成することはできない。その場合において、反対投票する、もしくは棄権するという問題に関しましては、私は国連会議に出ておりますわが国代表がそういう態度をとる、いろいろな情勢なり内容等を検討してそういう態度をとったわけであります。要はわれわれの独自の案というものを支持し、これを成立せしめるという意味において、ほかの案に対しては賛意を表さなかった。その賛意を表さなかった方法として、反対投票をする場合もありましようし、あるいは棄権する場合もありましょうが、そのことは案の内容等を検討して最も適当であることを代表がとったわけであります。別に……。
  42. 穗積七郎

    穗積委員 だから、その理由を聞いているのです。どういうわけでそういう差別の取扱いをしたか。
  43. 岸信介

    岸国務大臣 私自身はその詳しい——この場合には反対しろとか、あるいはこの場合には棄権しろというわけじゃありませんで、従ってそれは代表が案そのものの……。
  44. 穗積七郎

    穗積委員 その根本問題については政府が訓令すべきが当然です。
  45. 岸信介

    岸国務大臣 あなたはそうおっしゃるけれども、要するにわれわれがわれわれの何を通そうということが問題であって、その他の案というものは、要するに賛成しない。賛成しているというなら、これは方針の何は違いますけれども、あとの棄権するとか、反対投票をするとかいうことは、その場における情勢もしくはその案の取扱い等からくる問題であろう。これは国連代表にまかしておいていい問題であって、一々政府がそういうことまでタッチすべき問題ではないと思います。
  46. 穗積七郎

    穗積委員 それははなはだ遺憾でございます。この問題は日本国民のみならず、世界人類が非常に待望しておる問題であって、今度の国連の第一歩で最も重要な、日本提案すべき権利と義務を持っておるこの問題に対して、そういうような総理が出先にまかしておいて、どうなったかわからぬ、しかも事情を今ここで初めてお聞きになったということでは、われわれははなはだ無責任というか、非良心的というか、遺憾にたえません。  そこでそれを追及しましても、しようがありませんから、次にお伺いしますが、それでは、あなたは、今の御説明によれば、主義、主張または政治的な配慮なしに通すことが第一の願望であるとおっしゃっておられる。そうであるなら、国連において、あなたとネールさんと原水爆禁止について即時無条件で一つこれを促進しようじゃないか、共同歩調を国連においてとろうじゃないかという話し合いまでされて、ああいう態度でやらなかった。はなはだしく不十分です。一、二度はお会いになったようであるが、不十分である。しかもソビエトにしても、即時無条件禁止であって、それがわれわれ国民念願に合致しておるならば、提案者がソビエトであろうと、協力者がインドであろうと、そういうことは問うところではなしに、私はこの際はソビエト並びにインドの諸君と十分なる隔意のない今の念願を話し合っていくならば、今度の投票の結果の九票というものがどちらへどういうふうに動いたかということによって、票読みをあとでしてみると、日本案ははるかに有利な情勢、場合によればこれが通る可能性もなかったことはないと思うのです。そのことに対してソビエトまたはインド代表日本代表との間で十分なる協力態勢をとらなかったその原因は、われわれの見るところでは、アメリカヘの気がねであった、国民の願望をじゅうりんした、こういうふうに思うのですが、その間の情勢判断はいかがでございますか。あなた自身は、この前総裁の選挙で、かたい票読みをしたにもかかわらずお負けになった。今度は一体国連で何票ぐらい票を読んでおって、それでインドソビエト案と提携すれば一体どれくらいの票がとれるか、あなたも選挙では苦労されているくろうとですから、このくらいは票をお読みになれたと思う。いかがでございますか。私はもっと成功したと思う。御所見を伺いたい。
  47. 岸信介

    岸国務大臣 選挙の投票の結果というものは、私が票読みを間違えるだけじゃなしに、皆さんにおいても長い選挙の間にはあると思います。そういうこととは別に、インドとの協力につきましても、もちろんインド案と私の方の案との間には考え方の違いもあります。ネール首相と話したことは、要するに、日本という立場インドという立場は同じような立場に立っておるのだから、自分たちは決して提案しているところの何にスティックする必要もないから、十分一つ協力できるだけは協力しようじゃないかという話をしたことは事実でありまして、それぞれそういう指令を国連代表に私の方からも出しますし、インドの方からも出し、また藤山外相が行きまして、インド代表とも数回会っております。いろいろ話しもしたのでありますが、なかなかそれの間における具体的の協調はできなかったのでありまして、それは結果において別々の提案を議決に付することになったわけでありますが、できるだけの努力をしたことは事実でございます。しかし私はこの問題につきましては、実はわれわれが以前あの案を出すときにどれだけの投票があり、どれだけの支持を受けるということをはっきり見通しをつけて見出したわけでもなかったわけであります。われわれはあくまでもわれわれの主張であり、念願であるところのものを実現せしめる上において、とにかく現実ソ連と英米との間に非常な大きな開きがあり、主張が相対立しておって、両々相譲らないということであるならば、どうしてもこれはわれわれが念願しておるような実現ができない。そうすれば、ある程度両方を歩み寄らして、せめて両方の、大多数の人をわれわれが獲得することに努力することが望ましいと考えたのが、われわれの案を提案したわけでありまして、この場合は、われわれがどれだけの票を獲得できるという最初の案が甘かったとか、あるいはわれわれの予想がはずれたという意味ではないのでありまして、私どもはあくまでもわれわれの主張現実に即して適当であると考え努力したのでありますけれども、それが実際においては少数で否決されたというのが現実の事態であります。
  48. 穗積七郎

    穗積委員 御答弁私ははなはだ不満足でございますが、きょうは時間がありませんから、次の機会に今の問題は続いてあなた、または藤山外相にお尋ねすることにいたしまして、ただ一点、最後にこの問題について一言だけ申し上げておきたいのは、私は現在の国際政治は大国主義で政治は動いていないと思う。そのことについてあなたも同感だと思う。世界的な世論がやはり政治を動かしている、こう言って差しつかえないと思うのです。例をあげれば切りがありませんからあげません。あなたもそれでおわかりだと思う。それならば、世界世論を動かすものは、やはり信ずるものにのみ世論は集まって参ります。あっちをながめ、こっちをながめ、寄せて二で割ったような、主体性のない、迫力のない提案というものは、幾らやってみましても、小手先細工で工作を弄しても、世論は集まってこない。日本人民がほんとうに念願しているものは、原水爆の被害を受けて、そのものがほんとうに真剣になって、眼を一点に集めて、全国民が、即時無条件で、この問題は人道問題としてとめてもらいたい、そういうことでアピールして初めて——今年は半数に足りなかったが、次には半数をこえた支持が得られる、これこそが、私は最も現実的だと思うのです。その点の認識が、あなたにしても、藤山さんにしても、やはり利口者の手から水が漏れるといいますか、いささかものを巧者に考え過ぎて、信ずるところが国民並びに世界の人民に訴えられないところが私は非常な欠陥だと思うのです。そういう点をどうぞ一つ反省をしていただきたいということを宿題として差し上げておいて、そうして次の機会にいたしたいと思いますが、あと時間がありませんから簡潔に中国の問題について御答弁をいただきたい。御答弁をいただく前にちょっと一言申し上げておきますが、いろいろ御親切に長く説明していただくのはけっこうですけれども、時間がありませんから、私の質問の要旨を理解していただいて、焦点だけに結論を示していただきたい。途中の持って回った御説明は不用でございますから、結論だけを答弁していただくようにあらかじめお願いいたしておきます。  そこで、あなたは首相になりたてのときに外務大臣兼任で、当委員会において私の質問に対して、中国貿易については、国交回復とは別個に、これは石橋内閣以来の政策であるから、岸内閣も積極的に責任を持ってやりますとおっしゃいました。そうしてそれじゃ具体的に何をやるのだといったら、日中間における民間貿易協定がすみやかに円満に妥結することに努力をいたします、協力いたしますということをこの委員会で言明されて、それ以来半年以上たってしまった。しかもごらんの通り、あなたはアメリカに立たれる前に、アメリカに行く前では困るから、帰ってからにしてもらいたいというのでこれをストップされた。帰ってこられたらアジア問題について一歩前進するかと思ったら、ますます遠ざかってしまって、そうしてついに今度のような羽目にまで結果はなったのですが、この事態に対して一体今後どういう方針でお臨みになるつもりであるのか、その点、あなたの責任のある問題、積極的に自分が主張する政策だと言われたのであるから、それが行き詰っていることに対して、どういうふうに善処してお行きになる御方針であるか、この際伺っておきたいと思うのです。
  49. 岸信介

    岸国務大臣 日中間の貿易の促進につきましては、私もできるだけ積極的な努力をするということをかねて申し上げております。チンコムの制限を緩和したこともその目的のための一つであります。さらに、おくれましたけれども、民間協定のために代表団が行かれるにつきましても、われわれはできるだけそれの妥結が行われて、将来貿易がスムーズにいくようにという意図のもとに代表団を送ったのであります。交渉の経過等につきましても大体のことは私承わまりましたが、これに対する将来の問題につきましては、さらに今申しました方針の線に沿うて私は積極的な努力をしたい、かように思っております。
  50. 穗積七郎

    穗積委員 団長であった池田正之輔君から報告をお聞きになりましたか。また二十九日に最終的にトレード・プランあるいは分類等々については向う側が非常な譲歩をいたしまして作り上げた向う側の提案、これで妥結しようじゃないかといった提案、あの内容もごらんになったでしょう。あれに対して賛成でございますか、反対でございますか。
  51. 岸信介

    岸国務大臣 私は協定の内容のいろいろな分類その他の点につきましては、民間に大体意見の一致したことを尊重していきたいと思っております。
  52. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、二十九日に向う側が最終案として提案して、これで妥結しようではないかといったあの案に対しては、大した異議はないという意味でございますね。
  53. 岸信介

    岸国務大臣 私が申したのは、御承知通り、一番問題になっておるこの通商代表部の指紋問題についての考え方代表部に関する問題につきましては、なお検討を要する点があると思います。貿易そのものの推進に関するその他のことにつきましては、私は別に異存を持たないわけであります。
  54. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると指紋について話が出ましたから伺いますが、この前重光外務大臣当時からすでに保守党内閣においても指紋法というものは戦後ああいう事情でできたので、これは必ずしも実情に即さない、場合によれば改正してもいいという意思表示をこの委員会でされたことがあった。ところが今度は、あなた方のあの法律の本家であるアメリカが改正したことは御承知でございましょう。今までの期間を一年以上というように延長しました。しかもわれわれの問いるところでは、国家の利益になる者については特免の規定もあるようです。そしてこの法律は相互主義になっておりますから、日本としても改正しなければ——向うの法律は一年以上滞在する一般の旅行者は指紋をとるということになっているが、日本の法律が改正されなければ、向うへ行って二ヵ月を一日過ぎたときに指紋を押さなければならない。相互主義になっておりますから当然これは改正すべきだと思うのです。すなわち期間の延長とそれから国家の利益になる——その規定は立法技術がありましょうから、抽象的な言葉が適当であるか、あるいはまた多少類推できるようなものを列挙して規定するかは別ですが、そういう内容を持った指紋法の改正をしようということで、実は議連を中心とする与野党の間で共同提案でやろうじゃないか、こういう話が事実進んであります。それに対してあなたは総裁として、かつまた総理として、きょうは外務大臣の職務を兼ねて御出席いただいたわけですが、その点から見てこの指紋法改正に対して反対をされないだろうと思いますが、念のために伺っておきたいと思う。
  55. 岸信介

    岸国務大臣 指紋法につきましては、私、政府といたしましてこれが検討を命じております。また議会方面におきましてそういう改正の議のあることも承知いたしております。私は各種の関係を十分に検討されまして適当な改正案ができることに対しては反対ではございません。これはなかなか立法技術としてもむずかしい点があるようでございますけれども、十分一つ検討して善処したい、かように考えております。
  56. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと、今度の交渉の中絶せざるを得なくなった一つの重要な点は、実は指紋問題なのです。それがあるから池花団長が五人という交渉をされるに至ったわけです。(笑声)そういうことでこの代表部の問題については、機構、任務を先に論議して、そして協定ができてそれを実施するときに、それでは果してどのくらいが今のところ適当であろうかという話し合いをすべきところを、原則の一つとして代表部の人数に制限を出した、これが向うにひどく響いておるわけです。あなたはそうではないと言っておるが、台湾におけるあなたの発言、また藤山外務大臣がアジア精神によって日本の外交をやっていくのだということを示されて、アメリカに行って心要な悪だと言った。必要だが悪だという規定を中国にしてしまったわけです。そういうことが強くその背景となって、迎えられざる客、すなわち、やむを得ざる悪として中国の代表部を迎える、そういう意味で門戸を狭くして非友好的に五人のワクでしぼってくる、この基本的な精神に向うは強く反発したわけです。そこで代表団の諸君は、そういう精神はなかったと思うけれども、指紋問題があるから、ついばか正直にそんなことをしゃべってしまった、それが原則であるかのごとく向うに強く印象を与えた、こういうことの経過でございます。これは事実ですから、そこで今あなたが言ったように、与野党で共同提案でもって指紋法が改正ざれるとするならば、人数については必ずしも五人でなく、職務に応じて相互に検討してきめたらよろしい、こういうことで問題は解決していくと思う。そういうふうにわれわれは期待を持って理解してよろしうございますか。
  57. 岸信介

    岸国務大臣 指紋法の改正につきまして、私まだ成案についての内容を承知いたしておりませんから、どういうふうな内容になるかは、十分議会において御検討を願いたいと思いますが、私自身は、日中間の貿易の促進については、これをできるだけ促進をしていきたい、ただ現状からいえば、私はしばしば繰り返しておりますように、まだ中華人民共和国というものを正式の政府として承認し、これとの間に正式の外交関係を開く意思はない、段階ではないと自分は考えておるというこの立場との間を十分に調整をしていかなければならぬことは言うを待ちません。私は……。
  58. 穗積七郎

    穗積委員 向うも民間代表でいいと言っておるのです。
  59. 岸信介

    岸国務大臣 民間代表部でやることであって、そして指紋だけの問題としては、指紋法の適当な改正によって便宜が供されることは、貿易の促進のためにけっこうなことであろう、こう思っております。
  60. 穗積七郎

    穗積委員 もう一つ重要な点をお尋ねいたします。  もう一つ重要な問題は、交渉の経過から見て、代表部の諸君が参りましたときの身分並びに安全の保障問題です。警察の介入の問題、あるいはまた第三国人が事をかまえて陰謀的に何かをやったときに、不当に事務所並びに団員の住宅を捜査あるいは侵入する、あるいは家宅捜索をやる、あるいはまた拘留をする、出頭を命ずる、こういうようなことで安全が保障されないということは、これは大事な問題ですから、特に民間代表部として来る場合には、その点も考えてあげなればならぬとわれわれは思う。それについては、実はあなたもお聞きだと思いますが、今度の代表団が立ちます前に、私の方の党の淺沼書記長と、それからあなたの方の幹事長の川島さんとの間で話し合いをして、政党政治の時代であるから責任をもって党と党との話し合いをしようということでこの話をいたされました。そうしたら川島幹事長は、政府とも打ち合せた結果、この代表部の安全保障の問題については責任をもってやる、そうして事が起きた場合には逮捕または監禁、拘留、家宅捜索等をしないで、事実上外務省が他の国の外交官にとっておるように、やむを得ざる場合には両者協議の上で納得のいく方法で処理する、それが工合が悪いときには監禁等をしないで国外に退去してもらう、そういうような方法で処理したいと思うから、心配なく一つ交渉をやってもらいたい。その話し合いによって代表団の諸君は安心をして行ったわけですが、この問題に対して、与党の川島幹事長の党の責任ある答弁としてお答えになりましたことに対して、あなたは総裁として、かつ総理としてその通り責任をお持ちいただくものとわれわれは理解いたしておりますが、この際念のために伺っておきたいと思います。
  61. 岸信介

    岸国務大臣 私具体的にどういう話があったか承知いたしておりませんので、はっきりしたことを申し上げることはできないと思うのですが、もちろんわが国がどういう外国人に対しましてもそれの生命、財産の安全を保障することにつきましては、法治国として、独立国として、これは中国の人だけではなしに、あらゆる外国人に対してわれわれは責任を持っておるわけであります。そういう点において、中国からそういう人が来られた場合において、生命、財産に危険を感じ不安を感ずることのないようなことについて、政府責任を持つことは私は当然だろうと思う。ただいろいろな事件が起きた場合に、それは外交官でありますれば、外交官の特権として治外法権的なあれを持っていることは御承知通りでありますが、それと同じことをわれわれはこれらの人に権利として与えるということは、これは根本の観念としては私はできまいと思います。しかし指紋についても特別の扱いをしよう、これは指紋法の改正もそういうふうにされるということでありますなら、なおはっきりしますが、そうでなくても特別な扱いをしようという心持からいいますと、できるだけそういうことについて、いろいろな問題を起さないような穏やかな処置をとることは、これは当然であろうと思います。しかし権利として外交官と同じような、こうこうこういうものについてはこうしよう、それについて政府責任を持ってというようなことは、これは建前としてできない、こう思います。
  62. 穗積七郎

    穗積委員 最後の一点だけちょっと念を押しておきたいのですが、外交官待遇は向うは要求いたしておりません。また領事官待遇も要求いたしておりません。そういうことでなくて、具体的に今申しましたような危険も予想されますから、そこでそれに対する安全が保障されるようなことを要望しているわけなんです。それらのことは事前にわれわれもすでに予想がついておりましたから、そこでそういう点について川島幹事長と私の方の淺沼書記長との間で話し合いをしたわけです、正式の会談で。その事前に川島幹事長は、外務省初め政府の方々と打ち合せをされた上で責任をもってこれはこういう取扱いをする、こういうお答えをしていただいたわけなんです。その会談が実は非常にオフィシャルなものだ、信用すべきものだというので代表団も立ち、その方針で向うと話をして、向うも安心をして、向うが提案した覚書にありますように、非常に何というのか謙虚な態度で、問題が起きたときには双方合意の上で円満に処理しよう、こういうことで実は文案ができているわけですね。そこで私がお尋ねしたいのは、一般的に政党政治をあなたが主張される以上は、今申しましたような手続と形式をもって川島幹事長がお答えになったことに対して、総理は知らなんだ、あるいは総裁は責任を持たぬというようなことは、あるべからざることだとわれわれは思いますが、それに対するあなたのお考えを聞いているのですから、そこのところをはっきりしておいていただきたい。川島幹事長が何を言ったか知らないが、そういうことは一々おれのところまで来なければおれは責任を持てないよ、こういう態度でおられるのかどちらですかということを聞いておるのだから、一般的なあなたの基本的な考え方を明らかにしておいていただきたいと思います。
  63. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん公党として公党間において幹事長が責任をもって外部との話し合いをしたことにつきましては、もちろん責任を負うことについては異存ありません。
  64. 野田武夫

  65. 山本利壽

    山本(利)委員 総理も非常にお疲れと思いますから、具体的な問題について二、三お尋ねいたしたいと存じます。  鳩山内閣の終りころから続いて石橋内閣、そして岸内閣と非常に努力され、国民が期待を持った問題は、日本と韓国との間の交渉が円満に進むということでございまして、ことにアジアの善隣外交が久しく唱えられ、東南アジア方面に向ってもいろいろな施策が行われる際に、最も日本に近い韓国との間がうまくいかなければならぬことはすべての者が考えておるところでございます。ことに釜山に抑留されている漁夫の釈放問題ということはもうあすにもでき、あさってにもできるというふうなお話がたびたびあったのでございまして、ことにこのことについては岸総理は渡米前に必ず解決するものと考えられ、その点について十分な努力もされ、もう譲るべきはほとんど譲られたというくらいに、国民もその努力については納得しているのでございますが、いまだにそれが解決できない状態にありますが、この点についてもしもこれが当分見込みがないものであるならば、国民全部がその腹がまえを持ってそれに対処していく必要が私はあると考えるのでありますが、御所見を承わりたい。
  66. 岸信介

    岸国務大臣 日韓の問題が解決いたしませんことは、私も非常に責任を感じております。しかし交渉に関して誠意をもって私は妥結するようにと思いまして、日本として従来の主張にとらわれず、譲るべき最高限まで私としては譲った最後の案を出しまして、これは私の訪米直前でありますが、当時の状況は韓国側もほとんどそれをのんでそうして妥結されるような、きわめて私は当時は希望を持ったのであります。にもかかわらず、最後にそのことが私が立つまでに返事を得ることができず、その理由反対ということでなしに、いろいろな向うの手続上承認が得られないということで延びたのであります。帰って参りまして、またはなはだ遺憾でありますが、交渉のいろいろないきさつは私どもはすでに解決していると思うことがまた蒸し返されているというような状況で、一時非常に行き詰った状況に相なつ一たわけです。そこでわれわれは最後の考えとして、すでに実質的には譲るべきものはすべて譲ってありますので、それ以上のことはできないけれども、向う側の希望等に対しある程度緩和した案を提示しまして、それで公使が帰国いたしたのであります。新聞でも報じられているように公使が帰って参りまして、さらに両方交渉を続けて再開しようというふうな意向をもっているようでありますので、さらに続けていきたいと思いますが、今のところ私は非常に早く結論が得られるかどうかは、もう少し公使の帰国後一両回交渉をしてみないと見通しが立たぬと思います。事情はそういうふうであります。
  67. 山本利壽

    山本(利)委員 今のお話で当分見込みがないようでございますけれども、当局としてももちろん努力は続けられることと考えます。ことにこれは両方の役所同士の話では解決がむずかしかろうと思って、私は当委員会において国際赤十字等の活動を待つことはどうであろうかというようなことの提案をしたこともございますが、最近インドのニューデリーで国際赤十字代表会議が開かれて、その席上で韓国側は北朝鮮から韓国に戻りたい者がいるのに帰してくれない、そういうふうな問題があるから、北鮮と南鮮とのこの問題について、国際赤十字の方で骨折ってもらいたいというような発言があり、さらに日本代表は、ちょうど日本も韓国や北鮮とこういう問題についての関連があるのだから、これを一括して一つ国際赤十字の代表会議においては取り上げてもらいたいということを提案されたはずであります。こういう問題については私は政府は全面的にこれをバック・アップすべきであると考えるのですが、この問題についてどういう工合に国際赤十字は取り上げるようになったのか、全然そのことは政府としては関与せられないことであるか、この点について承わりたい。
  68. 板垣修

    ○板垣政府委員 ニューデリーにおきまして赤十字の会議が開かれまして、その際日本の赤十字といたしましては、政治問題と離れまして、日韓の抑留者の釈放問題、その他全世界にいまだに残っております抑留者の釈放問題について、一般的な決議案を出したいという希望があったようであります。この赤十字の動きはもちろん日本政府とは関係なくやっておるわけでありますが、政府といたしましてもその趣旨につきましては全面的な賛成をいたしておったのであります。その後詳細な報告には接しておりませんが、聞くところによりますと、ニューデリーにおきまして韓国そのほか国々の赤十字同士の話し合いも非常にスムーズに進みまして、最後の会議におきまして、結局カナダの提案といたしまして「家族再会に関する決議」というものが成立いたしまして、それぞれその趣旨に基いて、関係赤十字社からそれぞれの政府努力をするという決議が出たようであります。なお、裏の活動によりまして、韓国側の赤十字とも話し合いが進んでおるようでありまして、もしこういうような面から、政治問題と離れまして、純粋の人道的な見地から、この抑留者がお互いに釈放され国に帰るということになりますれば、これはまことにけっこうなことと私どもも存じております。そういう工合になりましたならば、日本政府といたしましてはでき得る限りの努力をいたしたいというふうに考えております。
  69. 山本利壽

    山本(利)委員 それではお伺いいたしますが、国際赤十字の代表は、日本の大村の収容所及び釜山の日本漁夫が収容されておる場所をかつて視察し、それに基いての結果報告を日本にもしたことがございますかどうか、承わりたい。
  70. 板垣修

    ○板垣政府委員 私の就任前でありますが、二年ほど前にたしか国際赤十字の者が参りまして、大村及び釜山の収容所を視察したということを聞いております。
  71. 山本利壽

    山本(利)委員 その結果についてはお聞き及びはないのですか。視察したということだけを御存じであって、その結果がどうであったかということは御存じありませんか。
  72. 板垣修

    ○板垣政府委員 結果というのはどういうことでございますか。
  73. 山本利壽

    山本(利)委員 その報告書をごらんになったことはないかというのです。私はなぜこういうことを言うかといえば、これは両方政府の役人がいろいろ交渉しても、わが方は公使も大使も向うで受け入れてくれない。向うは日本へ来ておる。それを相手にして全権を持っておる者として交渉せられ、その人間がこれでよかろうと言って帰っても、またくつがえされてくるようなことであるから、私は向うの国情は知らないけれども、あまり当てにならぬようにわが国民は今思っておる。そうすると、これは人道的立場に立つところの赤十字であるとか、あるいはその他国連であるとか、一般世界世論によって正しいところへ持っていかなければならぬが、その世論をわが方に有利というか、正しい方向に持っていくような努力が、日本の外務省においては着々となされておるかどうか。たとえたならば、ここに英国の「エコノミスト」という雑誌がございます。これは今年の九月十九日付でありますけれども、これに、韓国の情報局の者が——オフィス・オブ・パブリック・インフォーメーションというのですが、そこの者が署名入りで出しておる報告によると、国際赤十字の代表が大村と釜山の収容所を見た結果は、格段に向うの方がいいということを書いておる。さらに日本に抑留されておるところの朝鮮人は、単に朝鮮人であるということだけであそこへほうり込まれて、そして裁判も受けなければ、判決も受けないで置いておかれるというようなことがここに書いてある。こういうことが事実であるかどうか。私は事実でないと考える。私たちは、この委員会から、釜山に行って、あるいは李承晩とも会い、役人でなしに、政治家同士が手を握って話したら、この問題は解決するかと思って行きたいということを申し出たことがあったけれども、韓国側はこれを受け付けなかった。私どもは大村の収容所は視察したことがあるけれども実際の釜山の収容所は見ていない。ところが釜山の収容所に収容されておるところの日本人漁夫からの手紙によると、まことに言語道断な、あわれな状態のことがよく書きつづられておる。だからわれわれは大村収容所における待遇の方がよいと思っておったのに、こういう世界じゅうの人が読むようなものにちゃんと麗々しく出ておる。これはやはり向うの宣伝といいましょうか、この世界世論を引きつけることに対する努力が、韓国の外務省側の方がはるかにすぐれておるのではないか、かように考えるから今の質問を申し上げた次第であります。
  74. 板垣修

    ○板垣政府委員 ただいまの収容所の施設等の問題につきましては、赤十字が両方を視察してみまして公平な報告をしておるわけでございます。私どもとしましてはやはり釜山の収容所もそうよくないという報告を受けております。ただいま御指摘になりました「エコノミスト」の記事につきましては、これは明らかに事実を曲げるものでございますので、私どもとしましてはさっそく在英日本大使館を通じまして、それに対する反駁文を投書させております。
  75. 山本利壽

    山本(利)委員 さらにこの方面に対しても努力して、世界世論を有利に導かれるように希望いたします。  そうしてこのことが早急に解決できないとすれば、この留守家族に対するところのいろいろな手当あるいは慰問品を贈ったりする場合の費用等については十分にする必要があると考えるのです。聞くところによると、現在支給されておる額では、慰問品を二度ばかり贈るとほとんどなくなるというふうなことも聞いておりますが、こまかい数字の点については存じませんけれども、この上とも予算の許す範囲において十分に努力していただくところの覚悟があるかどうか、総理大臣からお言葉をいただきたいと考えます。
  76. 岸信介

    岸国務大臣 今申しますように、一日も早くこの問題を解決したいのでありますが、いろいろな事情がありまして、なかなか私の期待しておるようにいきませんが、この留守家族の人々に対する援護の方法や、あるいは釜山に抑留されておる人々に対する慰問の方法等につきまして、内政上できるだけのことは政府として当然やらなければならぬと思います。すでに大蔵省及び農林省に対しましては、私から、いろいろ対策本部等から陳情もありますので、これを実現するように命じておりますが、この上ともできるだけのことをして参る覚悟でおります。
  77. 山本利壽

    山本(利)委員 次に東南アジア開発基金の問題につきましては、その構想としては各国とも特別な反対はないようでございますけれども、なかなか準備もかかることであり、その具体的な問題がわかっていないために、ことにこれが技術は日本からくるけれども、金はアメリカからきて、結局アメリカのひもがつくのではないかと疑っておる国も事実あるように私は思うのでございます。そこで最近河野企画庁長官がアメリカへ行って帰られての記者会見でも申しておられましたけれども、円借款の問題が取り上げられておるようであって、これは総理大臣及び大蔵大臣とも打ち合せ済みだという発表でございましたけれども、私はこれは非常によい案ではないかと考えます。真に日本の技術と、それからわずかであっても、日本の資金によって、日本が誠意をもってアジアの新しく独立した国々を助けていこう、あるいは協力していこうということは、疑いの念をより少くするはっきりした方法ではないかと私は考えるのでございますが、この東南アジア開発に関しての円借款の問題について、この機会に御説明を承わりたいと思います。
  78. 岸信介

    岸国務大臣 過般ネール首相が参りました場合におきましても、インドの開発に対して、われわれは円借款の方法によってこれに協力する用意があることを、共同声明にも明らかにいたしておるのであります。東南アジアの開発につきましては、御承知通り、資金の面と技術の面と両方が欠けておるわけであります。私はその意味において二つの案を構想として提案しておりますが、一つの技術センターの問題につきましは、すでにインドにおきましてもニカ所ばかりこれを実現することを希望しておりますし、その他におきましても具体的に実現が進んでいくような情勢にあります。ところが開発基金の構想につきましては、関係するところも広うございますし、また内容、具体的の方法等につきましても、なお検討を要する点があるということは言うを待たないのであります。そういうことと並んで、やはりインドにわれわれが供与する用意があることを明確にしているような円借款の方法によって、具体的なプロジェクトを二国間において進めていくということも、私は日本が協力するという意味においてできるだけのことをすることは、適当な考え方であると思います。しかし私の将来のなにから考えますと、開発に要する大きな基金につきましては、やはり開発基金の、私がかねて提案しているような構想を実現することが望ましい。しかしそれには時日がかかりますから、円借款の方法等によりまして、具体的のなにを進めていくことも望ましいとかように考えております。
  79. 山本利壽

    山本(利)委員 日本はどうしても外貨をかせがなければなりままんので、貿易の振興ということもずいぶん努力されておるわけでございますけれども、最近ヨーロッパ方面を回ってみまして、イタリア、フランスあるいはスイス等は観光事業がよく発達しておって、ずいぶんそのために外貨をかせいでおるということを見てきたのでございます。このことは私が言うまでもなく、各方面によって知られておることでございますけれども、それらの国々は年間約一兆億円も観光事業によって外貨をかせいでおる。日本のかれこれ一年分の国家予算、一般予算だけを観光事業によって得ておるというのでございます。ことに今まではイタリアとかフランスあるいはスイスは循環して回ることができますから、非常に地の利を得ておりましたけれども、今のように飛行機が発達すると、私は日本も孤立したものではないと考える。いや、今後ますますこの方面に私は力を入れていく必要があると考えるのでございます。ことに観光事業として、日本の観光地を回ってみると、道路が非常に悪い。今の内閣の根本方針の一つとしてもこの道路の建設ということはあがっておりますけれども、特にこの際この観光地における道路を完備するということは私は必要のように考えるのでございます。  しかももう一つ大切なことは、海外移住の問題がまた十分に考えられていかなければならぬ。日本の人口問題あるいは将来の貿易の発展を期するためにも、この海外移住——終戦後日本が軍国主義を捨てて以来、各国において勤勉なる日本の農民なりあるいは技術者なりあるいは漁民を迎えようとしておるのでありますから、この際十分この方面に努力を費さなければなりませんが、去年の海外移住に関するところの予算は八億二千七百三十九万六千円となっております。一兆円予算の中でわずかに八億円ばかりの金で、私は国策として特に移住を進めるというのには、あまりに予算が少な過ぎるように考える。時間がありませんから、これを一々小分けいたしませんけれども、実際に移民を送るために、移住者を送るために使われた金は約七億ではないかと私は考える。これは非常に重大な問題でありますから、特に三十三年度からは、先ほど申しました観光事業とこの海外移住の問題については、現内閣は特段の努力をいたしてもらいたい。ことに先日大蔵大臣の予算委員会においての御説明によりますと、三十一年度の剰余金で実際に使えるものは四百三十六億円でございます。そうして三十二年度においては約一千億円、三十三年度においても約一千億円の剰余金を得るであろうということであった。これはどこでも金がほしいのであるから、みな分け取りにしてばらばら使えばそれまでのものでございますけれども、これは剰余金というものがなくても仕方がないのであるから、今言ったような移住関係であるとかあるいは観光事業というものは、直接わが国に外貨をもたらすところの重大な大きな事業でありますから、一兆億円のうちでわずかに八億だとか九億だとか、そういうけちなことでなしに、これは数百億を費しても一つこの方面の振興をはかっていただきたいと考えるのでございますが、これに対するところの総理大臣の御所見を承わりたい。
  80. 岸信介

    岸国務大臣 日本の観光事業を大いに盛んにする、その上においては道路及びホテル等の施設を完備する必要のあることは御指摘の通りでありまして、また日本の移民、移住の問題につきましても、従来もこれに力を入れることになっておりますが、日本の経済的な事情考えて参りますと、この観光事業と移民の仕事につきましては、政府としても特に力を入れるべき重大な問題であると私は考えております。予算につきましても従来不十分な点もありますから、十分一つ新予算の編成につきましては考慮をして参らなければならぬと思っております。なおホテルの建設等につきましては外資をこちらに入れるというふうな具体的な計画もございまして、観光事業のなににつきましてはそういう点もさらに考えていきたい、また移民の問題につきましても従来アメリカからの借款の点もございますので、これらの点も今後十分に活用して、もう少し画期的な効果を上げるように努力して参るつもりでおります。
  81. 山本利壽

    山本(利)委員 時間がございませんから、最後に一つお尋ねし、かつお願いしたいのでございますが、総理は常に青少年に向って強い呼びかけをしておられます。一国が、国としてあるいは民族として栄えていくのには、確かに青少年をつちかっていかなければならぬと思うのでございますけれども、終戦後日本の青少年のあり方というものについては、これは青少年そのものの責任ではなくて、われわれ大人の責任であると考えますけれども、非常に残念な点が多いと考えるのであります。この中で一つ最近の問題としては、全学連あたりがソ連から文化人を招待しようとする問題があってこれについて強い要求を出しておる。政府はこれを拒否しておられるようでございますけれども、こういう問題については、私は、海外から人を招くとかいう場合には、事前に外務省とよく打ち合せの結果行動に入るように、指導が必要であると考えるものであります。そうでなければ、ソ連ともせっかく国交を回復し、あるいは文化協定を結んで今後親善関係を持とうとする——われわれは決して共産主義者になろうとするものではないけれども、彼らに学ぶべきものは学んでいこうという大きな度量がなければならぬ。それはもう当りまえのことでございますけれども、その点について、ことにその入って来ようとする者を政府がいやがって、おそれて入れないのだという感じを与えたのでは、私は若い者が納得しないと考えるのでありますから、これは全学連が支持しておるからいけないのだという、そのことでなしに、全学連の悪いところは悪いところとして指導し、また今日本は外貨に困っておるときでもございますから、もしその招聘の時期でないとか、招聘される者が今の日本の社会において必要がないとかいう、はっきりしただれが聞いてもなるほど今その必要はないと思うような理屈をつけて発表しなければ、とかく言いのがれのように思われがちだと私は思うのでございます。この問題は今追及しようとするのではございませんが、私はドイツあたりに行ってみて、西ドイツあたりは国会議事堂にちゃんと国旗を飾っておる。もし今、日本の国会議事堂に日本の国旗を飾ろうと言ったら、ある方面の人々は反動だと言って騒ぎ立てるであろうと考える。あるいはまた英国あたりに行ってみると、古式ゆかしいところのいろいろな伝統に基く儀式もやっておりますけれども日本では君が代を歌うことさえも、あれこれと議論するような時代になっておるのでございますが、これは青少年の身体を養うてやるとともに、われわれはやはりたよりある国民として、文化国家の国民として、育てていかなければならぬのでございますから、今われわれは日本国民であるというその観念を植えつけるために、歴史の教育ということも必要でございましょう。また議論はずいぶんありますけれども、紀元節であるとかあるいはまた修身科の復活というようなことが、これは反対の議論も学者によって堂々と述べられております。それを読んでみると、なるほどそういう点もあるということをわれわれも考える。けれども紀元節一つ設けたからといって、日本国民がぱっと一緒になるものでもなく、修身科を復活さしたからといって、若い者の道徳心が一度に上るものではないけれども、私はそれも一助にはなると考えるものでございます。ただ青少年よ、しっかりしてくれ、立ち上れという声だけではなしに、わが政府としては青少年に対してそれを育成する方法をいろいろ考えるべきことであろう、考えていただきたい、われわれもまた考えるべきであると考えるものでございますが、この点に対する総理の御所見を承わって、私の質問を終りたいと存じます。
  82. 岸信介

    岸国務大臣 青少年の問題に関しましては、もちろん青少年の奮起を促すという言葉だけでこれが達せられるものではございません。いろいろな諸般の社会生活上の条件の改善や、あるいは文化的な面において、あるいは教育の面において、あるいはまたさらに青少年が国際的な視野でものを考えるという意味において、海外を旅行したり、あるいは海外からの人たちを受け入れる、青年同士の交歓をするとか、いろいろなことを私は具体的に考えていきたいと思います。今それに関連してお話がありました外国から具体的に人を招聘するという場合においてのいろいろないきさつの問題、また海外に出ていこうというような場合におきましても、旅券の問題等において従来いろいろないきさつを生じておることは御指摘の通りであります。私はできるだけそういうことを事前に十分に打ち合せをし、各般のことをスムーズに取り運んでいくように、あらゆる連絡を密にしてやっていくことが、この問題については最も必要であろう。すでに一方がどんどん勝手に始めておりまして、その最後の締めくくりを旅券の問題で外務省に持ってきて、こういうふうになっているからこうしろというようなことのために、従来いろいろないざこざがありましたので、できるだけそういう点についても事前に連絡をしまして、青少年等が特にそういう問題について誤解を生ずることのないように今後とも努力をいたしていかなければならぬ、かように考えております。
  83. 山本利壽

    山本(利)委員 私に与えられた時間が終りましたから、次へ譲ります。
  84. 野田武夫

    野田委員長 ちょっとお諮りいたしますが、総理大臣に対する質疑はまだ数人残っておりますが、総理大臣との約束の時間が実は超過いたしております。しかしこの機会でありますから、わずかの時間、一つ総理大臣にもう少しおっていただきますから、質疑者の方はその意味できわめて簡単にお願いしたいし、それから時間が経過いたしますと通告者の方も質疑ができなくなりますから さよう御了承願います。戸叶里子君。
  85. 戸叶里子

    戸叶委員 私は主として国連での原水爆実験禁止の問題と、それから近く岸さんが再びアジア諸国を訪問されようとしておられますので、この二点について伺いたいと思います。  それに先だちまして念を押しておきたいことは、先ごろこの委員会で私は岸首相にお尋ねをしたことでございますが、売春関係に関する条約でございます。これは一九三三年のベルンで署名された条約で、青年婦女子の人身売買の禁止に関する条約及び一九五〇年レークサクセスで、人身売買及び売春により利益を得る行為の禁止に関する条約、この二つでございますが、これがまだ日本で批准されておりません。先ごろ国連代表として立たれます藤田さんに対しましても、婦人団体が双手をあげて、おそらくこの条約は次の国会日本で批准されるであろうから、この問題がもし委員会で出た場合にはどうぞ大みえを切ってこれは批准されますよというふうに言ってこられてもいいじゃないかというようなことで激励をして行っていただきましたけれども、この臨時国会にはまだ提出されておりません。この国会は大へん短かいようなので、あるいはこの国会には無理かとも思いますけれども、次の国会には必ずお出しいただけるかどうか、その点の御意見を伺いたいと思います。
  86. 岸信介

    岸国務大臣 次の通常国会提案して批准をいたしますように諸般の準備をいたしております。
  87. 戸叶里子

    戸叶委員 次の通常国会に出していただくということで了承をいたしました。  そこで私どもがことしの国連総会には非常に期待をしておりましたその一番大きな理由は、何と申しましても何とかして核爆発実験禁止に対しての何らかのいい結論が出るのではないかということを期待したからでございます。ところが六日の採決された決議案を見ますと、西欧案というものは一応採択されたようでございますけれども、これもまことに私どもの願いとするところとは遠い方向に向っているということを私は考えざるを得ません。その点はあとから申し上げますけれども、まずお伺いいたしたいことは、今回日本が提出しました案に対して、ある人は西欧案に近いといい、あるいはソ連案に近い、こういうようなことをいいましたのに対して、岸首相の御答弁を先ごろの予算委員会で承わっておりますと、元来相反する西欧とソ連主張を調和させようと思えば妥協は当然だ、こういうふうな答弁をなさっております。それならば、妥協して調和させるというからには、そこに何らかの成果かおさめられるという見通しがなければ、そういうふうなお考えはお待ちにならないのじゃないかと思われるのでございまして、岸首相は西欧案ソ連案とを調和させることができるというようなお見通しをお待ちになって、今回のような非常にあいまいな日本の案を提出されたのかどうか、これを伺いたいと思います。
  88. 岸信介

    岸国務大臣 この核爆発実験の問題につきましては、従来日本の再三再四の強い抗議にもかかわらずこれが継続されておりまして、またロンドンの軍縮委員会にも取り上げられて、ずいぶん長い間論議されましたにもかかわらず、ソ連側と西欧側の主張は御承知のように相対立しておって相いれない、こういう状況にあるのであります。私どもは結局はこの三国をして何とか譲り合って——自分の主張通り実現しようとすれば、これは相手方が認めないというのは従来からの経緯からもそういうことになっておりますので、何とか両方がある程度譲りあって、そうして一日も早く核爆発の実験というものが禁止されるということを実現しなければならぬという見地に立って、実はわれの案を提案をいたしたわけであります。もちろん私どもにおきましては、この西欧側及びソ連側、その他第三国側に対して十分な説明をし、理解をさせるならば相当の支持があるだろうということを考え提案したわけでありますけれども、いろいろな関係におきまして、私どもの所期の効果が得られなかったということは、先ほど申し上げましたようにまことに遺憾でございますけれども、私は、しかしわれわれの核爆発を一日も早く禁止するというこの強い念願に対して、世界の各国が相当な理解を深めたという効果だけは私はあったと思います。なお努力はいたしたいと思っております。
  89. 戸叶里子

    戸叶委員 私が岸首相から簡潔に御答弁を承わりたいのは、一体譲り合ってもらえるという見通しをはっきり持っていらしたかどうかということなんです。と申しますのは、もう日本決議案が出されようとするときさえも、私どもが聞いておりますところによると、非常にあいまいな、気がねをしたような外交方針のもとに立っての決議案であるから何ら魅力がないというようなことさえも、海外から報道をされていたわけです。それにもかかわらず、何かここに妥協されるのじゃないかというような考えをもって、そのまま日本のあいまい案を推し進められたということは、私はそこに見通しの誤まりがあったのか。それとも岸首相自身の、おそらく両者の歩み寄りはないかもしれないけれども、この辺のところならば西欧陣営にも顔が立つのじゃないかというような気がねした態度であられたのか、この辺をはっきり伺っておきたいと思います。
  90. 岸信介

    岸国務大臣 私ははっきり申し上げておきますが、この問題に関してどこに気がねするとか、どの国の顔色をうかがうとかいうような考えは毛頭持っておりません。日本の独自の立場からわれわれの主張をいたしたわけであります。私は、先ほど申し上げたように、それを出すときにおいて西欧側及びソ連側の意向を事前に打診して、これなら譲り合おう、ここのところまではおりてこようということを言ったわけではございませんし、また言うわけも私は絶対にないと思っております。従って初めから必ずこの案ならば通るという確信があったかと言われますことに対しては、われわれが出す場合にこれを通したいという一念はありますけれども、必ずこれを多数が認めるというふうなことは現在の国連情勢から申しますと、ことに核問題のごときについては、私は立たないと思うのです。従って私としてはただ申し上げておきたいことは、先ほど申しますように、ある国に気がねをしたとか、ある国の顔色をうかがって、このくらいにしようという考え方から出したわけでは絶対にないということだけをはっきり申し上げておきます。
  91. 戸叶里子

    戸叶委員 そういたしますと、全然気がねもしなかった。さらにこの案なら通るかもしれないというような確信もなかった。こういうふうな二つの点を一応認めたといたしましても、前々からの岸総理大臣のお考えは、心の中は、やはり核爆発実験をやめてもらいたい、こういうことだけだと私も思いますけれども、その出し方がいろいろで問題になっているわけですけれども、それでは岸首相がソ連のブルガーニンの書簡に対しての返事の手紙の中で言っておられますところの、今や軍縮交渉の全体が行き詰まりの状況にある。しかし核爆発実験を経験しながらも軍縮交渉を継続するか、実験を停止しておいて軍縮交渉を継続するかを考慮するならば、人道的見地からも後者の方が望ましいことは明らかであり、広く世界世論も歓迎するであろう、こういうふうなことを言っておられるのですけれども国連に出されました日本の案というものは、軍縮交渉の促進が一。それから二に核実験禁止というふうに切り離さず、両方並んで出されているわけでございます。そうなって参りますと、岸首相のお考えになっていた点と国連で出された決議案とには違いがあるのではないか、こういうふうに考えますけれども、この点はいかがでございますか。
  92. 岸信介

    岸国務大臣 私ども提案をいたしました二つの軍縮の問題と核爆発実験禁止の問題は、核爆発実験禁止条件として軍縮考えておらない。案の取扱いとして二つを一緒にまとめておりますけれども、この間において条件になっておらないという意味において、決して手紙に述べているところの趣旨と違っておらない、こう考えております。
  93. 戸叶里子

    戸叶委員 言葉を省略いたしますが、岸首相の今私が読みましたその内容によりますと、二つはっきり分れておりますし、今の御答弁を伺っておりましても、軍縮は核実験禁止の前提ではないとはっきり言っておられます。ところが国連に出されました決議案はこの二つを一緒にして出しているわけで、それならなぜこの決議案一緒にして出さないで別の形で出さなかったかということを私は伺いたい。
  94. 岸信介

    岸国務大臣 これは案の取扱いの問題でありますが、別に出すということであれば、二つをはっきり分けた、取扱いを全然分けたということになりましょうし、われわれは条件にせずに一緒にまとめるということにおいて、やはり核爆発の実験はやめにして、続いて軍縮問題というものも真剣にやれということを言っているわけです。私の申し上げているのは手紙にも書いておりますように、軍縮の問題も核実験禁止の問題も両方やらなければならない。それを軍縮をまずやってそれから核実験禁止をやる、軍縮がきまるまでは核実験の問題はなにしないという考え方と、まず核爆発の実験をやめておいて軍縮の問題を続いてやる、こういう考え方と、二つの考え方のあとの方をとるべきだというのが私の手紙のなにであり、また私の提案しているなにも、そういう意味両方条件にはなっておらない。そこで軍縮という問題も核爆発実験禁止の問題も、ともに実現しなければならない問題である。ただそれを関連さすのに、軍縮ができることが核爆発実験禁止の前提になり、条件になるということは、われわれとしてはとらないということを明瞭にしているわけでありまして、その点両者の間には決して一貫性を欠いていない。ただこれを全然別々の問題にしたらいいじゃないか、こういうことになりますと、われわれの書簡にも書いているように、全然これを切り離して考えるということではないという点が、要するにいろいろな点から批評されるでしょうけれども、私が両方の歩み寄りといってねらっているところにほかならないのであります。
  95. 戸叶里子

    戸叶委員 今の御答弁を伺っておりますと、私の頭は非常に単純なせいかわかりませんけれども、どう考えましても、岸首相の願いとするところ、それからおっしゃる御答弁を聞いておりますと、日本の案は日本国民の悲願である核爆発実験禁止ということを強く一つの決議案として押し出して、そしてそれの前提条件でもない意味軍縮交渉を促進させろということであるならば、別の形をとっていくべきだ、今の御答弁を伺ってもこういうふうにしかとれないわけなんです。どう考えてもこの手紙のことも矛盾しないし、国連のも矛盾しないし、私の核実験に対する考えも矛盾しないということは、ここに現われてきた事実から判断するならば、とうてい私には了解できないことでございますから、もう一度伺っておきたいのです。これは済んだことだからとおっしゃるかもしれませんが、これからこういう態度をもって臨まれるということは、さらにあいまいな外交を推し進められるということで、結局その迷惑をこうむるのは日本国民でありますために、私ははっきりしたいと思いますが、それならばなぜ日本国民要望である核爆発実験禁止ということを強く打ち出しておおきにならなかったかということを、もう一度念のために伺っておきたいと思います。
  96. 岸信介

    岸国務大臣 私が核爆発実験禁止の問題を強く主張し、強く押し出していることは、あらゆる機会において一貫しておると思います。ただ今度の国連の場合においてこれを理論的にどう説明するか、一つの主義方針をあそこでもって演説するかどうかという問題じゃなしに、われわれとしては一日も早く国連を通じてこれを実現するという目標を達するのに、どうしたらいいかということを現実考え提案したわけであります。しかしそれはお前はそう考えて出したのだろうけれども目的を達せなかったじゃないかと言われるならば、これは私の先ほど来申しておりますように非常に遺憾であるけれども、しかしわれわれの主張に共鳴した国もある数あるし、なお国連の内外におけるわれわれの努力によって、投票の結果はああいうことになっているけれども、相当にわれわれの真意というものは認められてきているということから申しますと、無意味でなかった、こう思っているわけであります。
  97. 戸叶里子

    戸叶委員 それではこの問題は議論をいたしましても平行線でございますから次に移りますけれどもインドとの今後の提携ということは、この案がいいものであるならば当然私は考えられると思うのです。先ほどの岸首相の御答弁を伺っておりましても、この間出したものが最上案ではないとおっしゃっておられるようであります。先ごろインドネール首相との間で日印共同声明というものを出して、核爆発実験禁止に対しては共同の線でいこうというような宣言をされているわけですが、この共同宣言というものは今後におきましても生きているものと了承いたしますけれども、それはいかがでございましょう。
  98. 岸信介

    岸国務大臣 私どもの話し合いにおきまして、インド日本とはこの問題に対して主張しておる根拠及び国の立場というものが全然同様な立場にあり、われわれが核爆発の実験をやっているのでもなく、将来やろうというわけでも絶対ないのでありますが、やろうとしている国の主張の中には、どうしてもこの問題について自分たちの優越の地位を失いたくないという意図が背後にあることはいなむことができないのです。それでありますから、われわれは全然そういう立場じゃなしに、純人道的の立場から主張しているという考え方は、両方が話してみると一致している。とするといろいろ国の立場があり、いろんな従来からの主張もあり、いろいろあるだろうけれども、同じような立場にあり、同じ目標を達しようとしているのだから、国連においてもできるだけ協力しようじゃないかというのが、あの申し合せでございます。私は将来インドのみならず、どんな国ともこれを実現する上においては協力したいと思いますが、今申しましたネールとの話し合いというものは、その点においてわれわれが今後これが禁止の上に強力に協力すべき、一つの基礎ができている、こういうふうに考えておりまして、今後ともそういう意味の協力はしていくつもりでおります。
  99. 戸叶里子

    戸叶委員 時間がないので申し上げないのですけれどもインドとの決議案に対しては、日本考え方次第でこの間の案でうまく提携できたと思うのですが、日本の方もインドと少し違っている点があったために提携できなかったので、やはり私は核爆発実験反対という線でもっと強く出していただきたいということを望むものでございます。  そこで現実の問題といたしまして、六日の軍縮委員会西欧案が通ったわけでございますが、西欧案が通ったということで、核爆発実験禁止に対して一体どれだけの実質的な効果が現われるかということを国民は聞きたがっているわけです。あの西欧案の中に示されている六項目が、協定なり何なりでもってすぐに実施されるならば問題はないのですけれども、そうでなくて、西欧案の中の六項目というものが、これから軍縮委員会を開いて、この妥結をはかって、それから今度は総会で報告をさせるというような決議案という性質を持っているものであるとするならば、一体これは私たちにとってどういう効果があるのだろうかということと、それから国連のそういうような決議案のきめ手というものがない以上は、原水爆実験反対の私たちの願望にどの程度ためになるかということを非常に疑問に思うのですけれども、この点をどうお考えになりますか承わりたいと思います。
  100. 岸信介

    岸国務大臣 今の国連におきまして総会の決議というものの効果は一体どれだけあるかということになりますれば、これは国際的正義の観念や道義の問題でございまして、これを強制する道はもちろんないと思います。また西欧案が採決されました結果として、軍縮委員会も開かれるでしょうけれども新聞で見ますと、ソ連軍縮委員会に参加しないというような声明もしておりまして、今後この問題に関しての国際関係は相当紆余曲折を経るものであって、今すぐわれわれが期待していろいろんな効果が現われることを予期することはむずかしいのではないかと思います。
  101. 戸叶里子

    戸叶委員 予期する効果が非常に少いということであるからこそ、日本はどこまでも筋を通して、この原水爆実験反対決議案で押し通していただきたかったわけですが、これはあとの議論といたします。  そこで、ソ連軍縮委員会と、軍縮委員会からの脱退を宣言しているわけでございますが、その脱退に対して日本はどういう考えをお持ちになっていらっしゃるか。と申しますのは、日本は非常任理事国の一つとなりましたからには、そういうことに対する態度といいますか、考え方をまとめておかなければならないと思います。一体軍縮委員会を拡大することに賛成反対か。もし賛成するならばどの程度のものを望んでいるか。  時間がございませんから省略をいたしまして、今カナダ、インド、ユーゴから、十カ国ふやして二十一カ国にしたらどうだろうというような調停案も出されているやに聞いておりますけれども、それに対してのお考えはどうであるか、この点も承わっておきたいと思います。
  102. 岸信介

    岸国務大臣 私ども、ロンドンの軍縮委員会の従来の経過を見ましても、同じ構成でやったのではまた同じことになるだろう、従ってこれを打開するためには、これを拡大する、われわれとしてはむしろそうすべきであるという考えを持っております。しかしどの程度に拡大し、どういうふうにしたらいいかということについては、もう少し具体的に検討をしたいと思っております。ただ国連軍縮会議に大事なソ連が抜けるということになりますと、これは私はほとんど意味をなさないことになるだろうと思います。あくまでも国際的協力によって、とにかくわれわれとしては反対であるけれども国連で一応ああいう案が採択された以上、その採択された案が最も早く効果を発揮して、われわれの目的としているところの核爆発の実験がやめられるというところにいかなければならない。それにはやはり軍縮委員会というものの行き詰まりを打開する意味において、これもある程度拡大し、ソ連自身が脱退するという声明であるけれども、ぜひ入ってもらってこの問題を真剣に解決していくということに努力をしたいと思います。
  103. 戸叶里子

    戸叶委員 それではこの問題はいずれあとの機会にいたしまして、初めに申し上げましたようにアジアの訪問のことに対して簡単に伺いたいと思います。  新聞を拝見したところによりますと、今月の十八日に二回目のアジアの訪問をおやりになるようでございますけれども、そのことはもう御決定になったのでしょうか。それからまたお回りになる国々について、それから大体のお回りになる構想というものを伺いたいと思います。
  104. 岸信介

    岸国務大臣 十八日に出発いたしまして、十二月の八日に帰ってくる予定のもとにヴェトナム、カンボジア、ラオス、マラヤ、インドネシア、豪州、ニュージラフンド及びフィリッピンの各国を歴訪したいと思います。この国々の中にはヴェトナム及びインドネシアのごとく、賠償問題が未解決の国がございます。これが早期に解決して、正常な国交関係を開くことはきわめて望ましいことでありますので、これが解決もこの機会にできるだけ促進したいと考えております。またフィリッピンにつきましては、すでに賠償協定ができておりますが、その後における通商航海条約の問題その他いろいろな懸案がございまして、両国のために私は望ましくないような事態も少くないと思います。フィリッピンを訪問した際におきましては、かの国の首脳部とよく話をして、将来の日比関係を好転させるために努力したいと思います。  豪州、ニュージーランドにつきましては、主としてこの前日本を首相が歴訪しまして、その答礼を兼ねて行きたいと思っておりますが、同時に御審議を願っております通商協定の成立した後における両国間の貿易関係を一そう進めるように、できるだけ理解を深めるようにして参りたい、かように考えております。
  105. 戸叶里子

    戸叶委員 もう一点だけ。この機会に、大へん行き詰まりになったかのように思われておりますインドネシアの賠償の問題とか、あるいはヴェトナム等の賠償の問題等も何とか解決のめどを立ててきたいというようなお考えでございまして、これは七年間もの懸案のことでございますから、早く解決されて正常な国交が結ばれるようにされることを私は望むわけです。  そこでもう一点伺いたいことは、岸内閣の東南アジアの経済提携ということ、経済外交の推進ということは、一つの大きな目標としてあげられているようでございますが、先ほども山本委員から質問がございましたが、経済開発基金の問題もちょっと思ったようにはいかないようでございますし、さらにまたその経済外交の一環であるコロンボ計画による東南アジアからの技術学生を日本に迎えるということも、何か申し込みが多くても予算が少くて受け入れられないというような行き詰まりに来ていて、全く経済外交というものの行き詰まりが来ているんじゃないかと思うのです。しかし経済外交を基調とされている今日の内閣では、おそらく今回訪問されるアジアの諸国におきましても、経済的な提携ということはお話しになると思うのですが、どういう形で経済外交推進をこれらの国とお話し合いになり、お進めになろうとする計画であるか、お伺いしたいと思います。
  106. 岸信介

    岸国務大臣 御承知通り、経済外交の推進につきましては、いろいろな点があったと思うのでありますが、特に一つの大きななにとして、これらの国々の経済開発に日本が協力をするという点を具体的に進めなければなりませんが、それについては一つは技術の面においてわれわれが協力をし、技術センターをこれらの国々の適当なるところに適当なものを作っていくということも一つであり、今おあげになりました向うから技術の学生もしくは研修生等を呼び、日本において学校または工場等で技術を学ばしめるという、これもすでにやっておりますが、これを強化し整備する必要はもちろんあると思います。  それからもう一つは資金の面において、日本がどういうふうに協力をするかという問題であります。私は大きな資金について、この実況にはまだやはり相当な時日を要するでありましょうけれども、私がかねて提案をいたしております開発基金のようなものを作って、そうして各国がこれに協力する、そして中立的な資金として開発に用いられるということが望ましいと思っております。また実現をしなければならぬと思っております。しかしそれができるまでの間に、プロジェクト・バイ・プロジェクトで日本が円借款の方法で協力できるものは、これは協力していくことを進めていきたい。すでにいろいろな国々におきまして、電力開発の問題であるとか、あるいは漁港を作る問題であるとか、あるいは特殊な工場を作るというような問題につきまして検討されておるものもございます。これらのものを具体的に進めることももちろん必要であると思っております。それからさらに貿易関係において、日本の商品の販路をこれらの市場において拡張するという問題もある、それには必然的にこれらの国々の物資を日本が買うという問題と関連させて考えなければなりませんから、そういう問題に関しても、通商関係を円滑ならしめる意味における具体的の話があれば、これを進めていく必要がある。あらゆる面でとにかくこれらの国々との間に理解を深め、お互いが将来提携してやろうという基礎ができますれば、いろいろな具体的の案が提案され、それを両国で検討するというふうに推し進めていくことが必要ではないか、こう思っております。
  107. 戸叶里子

    戸叶委員 もうこれで終ります。終りますけれども、今の御答弁を伺っておりますと、なるほどと思われるようなことをたくさんお並べいただいたのですけれども現実の面においてはなかなかそういうふうに実現されておらないで、そのうちの何分の一かぐらい実現されるかなあという疑いを持たざるを得ないわけでありますが、おっしゃった通りに近い方向にやっていただきたいのであります。今私に考えられますことは、コロンボ計画によって東南アジアからの学生を入れるということだけでも、予算の関係でこれを断わっているというようなことを聞いておるわけでございますから、こういう点もどうぞ御調査になりまして、そうして大へんいい構想が作文に終らないようにしていただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終りたいと思います。
  108. 穗積七郎

    穗積委員 ちょっと大事なことを三十秒ばかり、関連して……。  総理にちょっと申し上げておきますが、今度東南アジアに行かれて、賠償問題の話が出るだろうと思うのです、そのおつもりだろうと思うが、ヴェトナムは不幸にして南北の二つに分れておりますから、南ヴェトナムとの間の賠償問題を友好的にお話しになることはけっこうですが、その場合に南ヴェトナムの政権がヴェトナム全地域の領土並びにヴェトナム全人民を代表する政権として賠償問題の交渉をされることについては、われわれは賛成するわけにはいかぬわけです。北ヴェトナムは非常に友好的な精神で、必ずしも賠償を要求しようという態度ではおりませんけれども、しかし要求しておるところの南ヴェトナム政権と話をされる場合に、今申しましたように南ヴェトナムの領土、南ヴェトナムの人民を代表する、限定されている政権としてお話しになることはけっこうですけれども、その点は明らかにしておいていただきたいということを一言申し添えておきます。
  109. 岸信介

    岸国務大臣 穗積君の御意見、十分私は心得ております。
  110. 野田武夫

    野田委員長 総理との約束の時間が四十数分過ぎておりますが、あと十分間質疑を許します。松本七郎君。十分間以内でお願いします。
  111. 松本七郎

    松本(七)委員 社会党の訪ソ使節団は一昨日帰って参りましたが、いずれ代表団全員そろって総理にはごあいさつに行くことになっておりますので、私はごあいさつは省略させていただいて、簡単に質問だけさせていただきたいと思います。  私ども代団が向うに行ってフルシチョフ第一書記その他に会いまして、ちょうど人工衛星などが成功して非常な騒ぎになっておったわけですが、これが今後の国際緊張にどういうふうに影響するかということを中心にいろいろ懇談もしたわけです。その場合のソ連側の考え方としては、今までは地理的な不利というものがソ連にあった、アメリカ側は基地をソ連近辺にずっと持っておるが、それが大陸間弾道兵器が成功し、かっ人工衛星が成功したことによって大陸間弾道兵器の成功を裏づけた結果になる、これが地理的な不利を除く結果になるために、国際緊張緩和の非常に大きな推進力にこれがなるだろう、こういう判断をしているわけです。ユーゴでもそういう判断をしておりますが、それは一直線にはそこにはいかない。今後ジグザグコースは通るにしても、やがてはアメリカが諸外国に設けた軍事基地というものの戦略的な意義がだんだん減少してくるだろう、こういう見方をしているのですが、これをどういうように見るかによって、日本の今後の外交、特にアメリカとの間に新しくできた安全保障に関する日米委員会の運営の仕方、その協議内容、そういうものにも直接関係してきますので、総理はこれをどういうふうに見通されておるか。国際緊張緩和に役立つか、それともむしろ国際緊張を激化する一つの要素になるか、これは一つの論争になっておるわけでありますが、その観点を一つお伺いしておきたいと思います。
  112. 岸信介

    岸国務大臣 その点は、実は二つの議論が成り立つだろうと思うのです。国際緊張が緩和するというふうな見方も立つと同時に、むしろそれを激化するという見方もあり、私は二つあると思います。しかし私自身としては、とにかく世界の平和を願い、そして人類のためにこういうものが破滅的な兵器として用いられるということがないように、従来から強く念願しておる立場から申しますというと、私はこれをきっかけに国際緊張を緩和する方向にわれわれも努力すべきものである、こういうふうに思っております。
  113. 松本七郎

    松本(七)委員 そこで日米安保委員会の協議内容に関連してくるわけですが、総理アメリカに行かれた場合に、日本におけるアメリカ軍の行動について、日本政府の了解を必要とするということをはっきり取りきめたいという御方針で行かれたと思うのです。ところが「日本におけるアメリカ軍の行動」ということには、日本の領域内における行動と、日本外における行動とが含まっておるわけです。それをアメリカ側は、「アメリカ軍の日本における行動」、こういうふうに修正したように聞いているのですが、この点が表現の仕方によって非常に違うわけです。アメリカ軍の日本における行動と、日本におけるアメリカ軍の行動という場合は、後者の場合は日本領域外の行動まで含まっているわけです。そうでしょう。日本におけるアメリカ軍の一切の行動は日本政府の了解を得なければ行動がとれないという場合には、たとえば日本にいるアメリカ軍が台湾水域その他に出動する場合にも、日本政府に了解を得なければ一切動けないということになるわけです。ところが、今度の日米共同宣言によれば、これはアメリカ軍の日本における行動に限定されているわけですが、こういう点をもう少し、一切のアメリカ軍の行動を日本政府の了解を取りつけなければやれないというふうに前進させる問題が残っている。それからもう一つは、日本にいるアメリカ軍の装備を強化する場合に、日本政府の了解を必要とするというところまでまだ協定ができていないわけです。こういう点が、今後国際緊張を緩和するには、日本政府としては具体的な問題として非常に大事な点になって参りますので、総理大臣として今後どういうふうな交渉をされるおつもりか、また、これはこの日米安保委員会の協議内容に入っておりませんから、今後これを至急入れるように努力される御意思があるかどうか、お伺いしたい。
  114. 岸信介

    岸国務大臣 安保条約の運営並びに、それを十分に両国の国民感情に適し、また十分に円滑にやるために日米安保委員会ができているのでありまして、今松本君の御指摘になりましたことにつきましては、いろいろな解釈問題も、また現実の事態そのもののおあげになりました具体的の問題も、一応取り上げて検討してみないというと抽象的には論じ得ないと思いますが、この安保条約に基いての一切のことをこの委員会において、日米両国においてできるだけ誠意をもって話し合って、そうしてこれが円滑なる運営をし、両国民国民感情等にも合致せしめるようにしようというのが、そもそもこの委員会を作りました大きな眼目でありますから、それを今後運営してみまして、あるいはなお疑いがあればその疑いなり、また今おあげになりましたようなことに対する意見等につきましても十分一致せしめておく必要があるだろうし、また必要があればさらに将来是正するというような問題も考えていかなければならぬ、かように考えております。
  115. 松本七郎

    松本(七)委員 委員会の協議内容の中に入っていない二つの点、今現に入っていないのです。アメリカ軍の日本領域外における行動、それは日本政府の了解なしに今できるようになっているのです。だから、日米安保委員会の協議対象に今なっていないのです。それから、日本におけるアメリカ軍の装備を強化することについても、日本政府の了解を必要としない建前になっているのです。だから、日米安保委員会の協議事項ではないのです。だから、この二つを今後日米安保委員会の協議対象にされるように努力されるかどうかということを聞いているのです。
  116. 岸信介

    岸国務大臣 お話のように、日本の領域外の使用については、これは入っておりません。むずかしい言葉ですが、配備ということはどうなるかもう少し検討してみなければならぬと思いますが、日本におる軍隊を引き揚げてよそへ持っていくというようなことになれば、これは配備を変更することにもちろんなるわけであります。従いまして、特殊な武装をするとかいうような問題は、これは配備の中に入るのだと思いますが、十分今の日米安保委員会趣旨に従って——領域外の使用という問題は、なるほど入っていないことは明瞭でしょう。
  117. 松本七郎

    松本(七)委員 それを入れるように努力されるかどうかを聞いている、解釈はきわめてはっきりしているのですから。
  118. 岸信介

    岸国務大臣 将来の問題としてそれは一つ考えてみましょう。
  119. 松本七郎

    松本(七)委員 それからもう一つは、鳩山内閣による日ソ国交回復ができてから、フルシチョフはいろいろな新しい国内政策その他を進めておるわけですが、外交政策でも相当弾力性が出てくるのではないかという判断を私どもはしたわけです。それで日本との平和条約の問題も、今後まだ残されているわけですけれども、これらについても私どもがいろいろな外部からの情報と、それから直接フルシチョフ第一書記なんかに話を聞いたその話を中心にして判断する場合においては、判断に相当の違いが私は出てくるだろうと思う。総理も東西両陣営の橋渡しを日本がするのだ、そういう大きな外交方針を掲げて今後努力される以上は、やはり私は東南アジアを一通り回られたら、ソ連、中国にはぜひ適当な機会に行かれて、直接向うの最高首脳と総理みずからが会われることが必要ではないかと思うのでございますが、この点いかがでございますか。
  120. 岸信介

    岸国務大臣 ソ連との間には御承知のようにもう国交が正常化されておりますし、しかもわれわれは領土問題というものを含む大きな平和条約締結の問題が残っておりますから、適当なときに両国の首脳部が会うということは私は適当であると思います。  中国との関係につきましては、現在の状況におきましては、すぐ私が参るというようなことを言うことは適当でなかろう、こう思っております。
  121. 野田武夫

    野田委員長 総理大臣に対する質疑はこれをもって打ち切ります。  なお午後は本会議散会後直ちに再開いたしたいと思いますから、御了承願います。  しばらく休憩いたします。     午後零時五十三分休憩      ————◇—————     午後二時四十九分開議
  122. 野田武夫

    野田委員長 午前に引き続き委員会を再開いたします。  まず通商に関する日本国オーストラリア連邦との間の協定締結について承認を求めるの件を議題といたし、質疑を許します。穗積七郎君。
  123. 穗積七郎

    穗積委員 簡単に二、三お尋ねしたいと思いますが、従来オーストラリアはホワイト・オーストラリア政策をとって、アジア諸地域の近隣に位するにかかわらず、経済的にも政治的にも非常に差別待遇をとってきたわけですが、終戦後、そういうことは民主主義に反することであって、各国においてそういうことの反省がだんだん強くなって無差別に向うのが、最近の当然の方向だと思います。今度の交渉を通じて政府が感得されました豪州政府並びに一般人民の空気が、どういうふうに変っておるか。そのことは、この規定にもその残滓が残っておりますとともに、将来の貿易の発展に対する予想を立てる上にも非常に大事なことだと思いますから、最初に、一般的な情勢として、どういうふうに見ておられるか、伺っておきたいと思います。
  124. 松本瀧藏

    松本政府委員 いろいろと戦前に制限をやっておったことは、先般御説明申し上げた通りでありますが、戦後、特に最近二、三年間にわたりまして、豪州における対日感情は非常に好転してきております。政府日本に対するところの好意も、非常に増大してきております。こういう雰囲気の中でこの協定は結ばれたのでありますが、これを契機といたしまして、将来とも貿易関係は改善されることを期待しております。なお交渉経過を通じての雰囲気等に関しましては、直接その衝に当りました政府委員に御説明をさせます。
  125. 牛場信彦

    牛場政府委員 私、昨年の末以来約半年にわたって慮接この交渉に携わったのでございますが、その間感得いたしましたところをかいつまんで申し上げますと、戦前の豪州は、申すまでもなく非常に幼稚な経済体系でございまして、羊毛及び農産物等を輸出して、製造品関係はすべて輸入に待つ、しかも、おそらくその八割くらいまでがイギリスに依存しておるという状況だったわけでございます。ところが今度行ってみますと、非常に様子が変っておりまして、これは一つには、戦後、たとえばガットでありますとか国際通貨基金というような国際機関ができますときに、豪州は原締約国としてその組織に協力したというような関係もございまして、非常に視野が広く国際的になってきたという感じがいたしたわけでございます。ことに対英関係というものを見ますと、戦前に比べて非常に違ってきておりまして、もちろん人種的にはいまだ八割以上九割くらいのものがアングロサクソンによって占められているわけでございますが、経済的には、英本国の力が弱って参ったということもございまして、英本国一辺倒ではいかぬということに、だんだん豪州政府の認識ができて参りました。そこへ持って参りまして、日本が戦後、豪州の主要産物の市場として非常に躍進を遂げまして、昨年あたりになりますと、イギリスに次いで第二番目のお得意になったという関係がございまして、アジアに対する関心が非常に強くなってきたことが認められたわけでございます。この協定を作るのにつきましては、豪州政府としても非常に内部的に問題があったわけでございまして、ことに最近の豪州内部においてだんだんできております製造工業関係におきまして、豪州の賃金が世界的に一番高いというようなこともございまして、国際競争力が非常に弱いわけでございます。そこへ持って参りまして、日本品の輸出につきましては、戦前これでは痛めつけられたという非常に強い感情が残っておるものでありますから、日本からの輸出が急増するということに対しては、恐怖心が大きいわけなのでございます。従いまして、政府としてもこの協定を作るについては、おそらくずいぶん種々な考慮があったことと思いますが、結局今のメンジース内閣の方針として、アジアとの関係を強くしなければならぬ、そのアジアのうちで、豪州にとっては一番のお得意である日本との経済関係というものを、いつまでも従来のように片務的な差別的なものにしておいてはいかぬという認識から、この協定ができたものと存じます。従いまして、これから先の問題といたしましては、日本としましても、日本輸出が向うの幼稚工業をつぶすような勢いでもって、ある二、三の非常に限られた品目に集中して出ていくというような状況は、できるだけ避けるようにしまして、また豪州が現在最も重要視しております生産財、開発資材の方面にだんだん輸出市場を求めていくということにいたして参りますならば、日本輸出の前途は必ず有望であると思っております。現在のところ、まだ非常なアンバランスが残っておるわけでございますが、今年度におきましても、昨年に比べれば、数字で言えばあるいに倍近くの輸出にはなると存じます。これを徐々に伸ばしていけば、将来、完全なバランスをとることはむずかしいでございましょうが、ある程度の合理的な範囲における輸出関係というものは、樹立することができると思っております。
  126. 穗積七郎

    穗積委員 実はこの前、フィリピンとの賠償協定審議いたしますとまに、従来かの国の政府並びに人民の排日的というか非友好的な、非アジア的な考え方が非常に強かった、そこでこの賠償額八億ドルをのむことは、経済的バランスからいって、日本側にとっていささか過重なものではないだろうか、こういう検討がなされましたときに、外務省のお考えは、戦後フィリピンの空気は非常に変りつつある、しかも経済の発展のポテンシャル・エナージーといいますか、潜在的な力というものも相当高く評価していいと思うから、おそらくは今度の賠償実施によってそれに一段と拍車をかけて、親日的かつ友好的、しかも経済的な、賠償外の貿易によって得るところがあるんだ、予算の支出の上では非常な負担になりましても、貿易の上ではテークするものの方が多いということで、締めてそろばんを立てますと、これは必ずしも日本にとって経済的なマイナスではないと判断をされた。これは、この賠償協定を通すために多少過ぎたる説明をされた向きがあったんではないかと、われわれその当時思っておったのですが、そういう判断であるということで確信を持って御説明になった。今日になってみますと、その判断が結局——全然違ったとは申しませんが、非常に甘いものであり、過当な評価をされたものであった。だからといって、私はフィリピンを排撃したり、遠ざかるという意味ではございませんが、そのためには、協定の前後において、さらに政治的な努力といいます。か、われと彼との関係をもっと深く理解せしめる努力が足りない。そこに政府責任を感ずべきではないかと思うのです。そういう意味で、今豪州との関係についても非常に希望的な観則をしておられるわけですが、ただ協定を結んで、それが半歩前進になるからということで、二歩も三歩も過当な期待を国民に持たしめるということは、これは後になってかえって政府当局責任を重くするものであるというふうに思うわけです。従って、今の経済局長の御説明が、甘いとか、あるいはこの条約を通すための、何というか希望的観測をわれわれに説明されたとは、私は思いません。しかしながら、あとでお尋ねいたしますが、二条あるいは五条等に重要な残滓がまだ残っておるわけです。そこで私はそういう点をいささか懸念いたしますがゆえに、外務省当局に対して注意を申し上げておきたい。従って私どもは、事前に当らない甘い観測を聞かされるよりは、正確な判断をお聞きして、われわれの対策なり態度なりを決定することが将来のためにいいと思うので、その点は、これからの御答弁でも、正確にシビアに説明をしていただきたいと思うのです。ちょっと御注意を申し上げて質問をいたします。  そこで、私は豪州に行ったことはありませんが、工業におきましても、農業あるいは畜産業等においてもまだ相当経済発展の余力を残しておると思うのです。その場合に貿易上の問題だけでなくて、日本とのもう少し深入をした経済協力、たとえば開発資材のみならずその他の機械工業の輸出可能性、それからあるいはプラントの輸出可能性あるいはまた工業、農業にわたる日本の技術者の移民といいますか、移民というとちょっと語弊がありますが、そういうものの可能性もあると判断をしていいのかどうか、その点についてお尋ねをいたしたいと思います。
  127. 牛場信彦

    牛場政府委員 開発資材その他資本財の輸出可能性につきましては、これは一品に申せば有望であると思います。と申しますのは、豪州内部におきまして、ただいま非常な勢いで建設作業が進んでおりまして、大規模な水力電気開発会社、灌漑事業などもございます。これはまだ一九六〇年ぐらいまで続く事業でございます。そのときどきに国際入札によって機械を買っております。今度は日本ももちろん参加いたすつもりで業界の方で準備をいたしておる次第でございます。ただ今すぐそういうものが売れるかと申しますと、これはなかなかむずかしい問題でございまして、大きな機械になればなるほど、なじみというものがないとなかなかお客がつかない。豪州は何と申しましても、昔から主としてそういうものはイギリスそれから戦後におきましてはアメリカあたりから買っておったわけでございまして、日本のものが優秀だということはだんだんわかってきておると思いますけれども、すぐ飛びつくというところまでは、なかなかむずかしいのではないか。そこで政府といたしましても、まず向うから有力な人を呼びまして日本の実情を見せることが大事だと思いまして、三人ばかり、向うの水力発電関係の一番のエンジニアほか二人もやはり非常に有力な技術者でございますが、この方を呼ぶことにいたしまして、これはおそらく来年の早々に日本に来て、日本の実情を見てもらえると思っております。そういうようなことを通じまして、だんだんなじみを作っていけば、また日本の業界といたしましても、それ相応の努力を払えば、これは原則論といたしましては有望であるというふうに申してよいと思うのであります。それから技術的な協力の面におきましては、ただいま行なっておりますのは真珠貝の採取の面でありまして、これはある程度の数の日本側の潜水夫が豪州の側に雇われて向うで働いておることもございます。ただ移民ということは今のところはちょっと問題にならないと存じます。そのほか農業技術などの面におきましても、豪州におきましては、もちろん米作とかそのほかいろいろ日本と似たような作物を作っておるのでございますが、何分規模があまりにも違いますので、今の日本の技術をそのまま向うに移すということは、ちょっとむずかしいのではないかと思っております。
  128. 穗積七郎

    穗積委員 いろいろありますが、時間もありませんから、条約局長条約の規定について一、二お尋ねをいたしておきたい。  第一は第二条の問題でございます。今度の協定では従来の差別待遇または日本品の輸入制限をしておったのに対して最恵国待遇という原則が打ち立てられた、これは一歩前進であったと思うのです。そういう意味では交渉の労を多といたしますが、第二条において実は半歩後退か、場合によれば一歩近くまで逆戻りして後退してしまって、最恵国待遇の利益をわれわれが受けるということを少からしめる危険がある。そこで差別待遇をとることを得ることになっております。これは当然のことであると思いますが、条約解釈上は、一方の国がその相手の納得を得なくても、一方的通告をもって差別待遇は成立するものとわれわれは解釈いたしますが、その通りでよろしゅうございますね。
  129. 高橋通敏

    高橋政府委員 そのように考えます。
  130. 穗積七郎

    穗積委員 そういたしますと、牛場局長にお尋ねいたしますが、この場合に文章はそういうふうになっておりますから、ささといえども国際収支等に不利益だ、と思うような点には、一方的通告をもってすぐ最恵国待遇差別待遇に変るというふように規定の上ではなっておるのですが、実際の判断といたしましては、交渉の経過で一体向うが最恵国待遇を認めることをちゅうちょして、ただここに抜け穴があるからということで名前だけは第一条で最恵国待遇を獲得したのか、そうではなくて最初私がお尋ねしたように非常に友好的な態度をもって、少くとも相手の同意を必要とするという、そういう条文の上では義務規定はありませんけれども、少くともその理由を相手に納得せしめる、そういう程度国際収支の危機を生ずる、その場合でなければ、おそらくはこの除外規定は向うは実行しないのではないか、こういうふうに判断をしていいのか、これは交渉に当たられたあなた自身の一つの政治的な判断にたよるわけですが、局長並びに政務次官は相手の態度についてどういうふうに理解しておられるか、これをちつよと伺っておきたいと思います。
  131. 牛場信彦

    牛場政府委員 理論的に申しますと、日本もオーストラリアもガット及び国際通貨基金に加盟しておりますので、国際収支上の差別待遇と申しましても、ガット及び国際通貨基金に認められた範囲でしかできないというのが実情であると思います。実際の交渉の過程を通じて感得いたしましたところを申しますと、実は国際収支上の差別待遇ということを、最恵国待遇を与えるに際しまして、差別待遇のできる範囲をできるだけしぼろうということを申しましたのは、むしろオーストラリア側であったのでありまして、その差別待遇のできる範囲は国際収支上の理由があるときだけにしぼろうというように向うが強く主張したわけであります。というのは、日本がオーストラリアから輸入しておるものは羊毛、大麦、小麦というような大きなものであります。これを日本がたとえばオープン・アカウント等の輸入先を振り向けることによって通商政策上利用するということを向う側はおそれておったわけでありまして、従ってそういうような通商政策上の差別待遇はなるべく避けてもらいたい、差別待遇国際収支上の理由があるときだけにしてもらいたいということを向う側が強く申したような実情でありまして、決して一たん最恵国待遇を与えておきながら、他方でもって幾つでもこれをしぼれるような道を残して置くというような態度ではなかったように思っております。
  132. 穗積七郎

    穗積委員 もう一点、第五条に協議の機会を与えるということになっておりますが、これは義務規定でございますね。
  133. 高橋通敏

    高橋政府委員 そのように解しております。
  134. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると協議の結果については、どういうふうにされますか、双方の合意に達しなかった場合です。
  135. 高橋通敏

    高橋政府委員 協議の場合、第五条の第一項と第三項と二つあると思います。第一項の場合は、条文上からはできるだけ事情の許す限り協議をする機会を与えなければならない。そこでわれわれといたしましては協議に付することによって何とか合意に達することを期待しておるわけですが、条文上からは協議ができなくてもその義務は停止するということになっております。第三項の方は協議ができないときには最終六ヵ月ですか、たちますと協定を廃棄するということになっております。
  136. 穗積七郎

    穗積委員 私が特に問題にしたのは第一項の協議でございまして、この場合にも第二条の差別待遇発動の場合と同様なことが考えられるわけであります。一方においては協議の必要を義務化しておりませんが、第五条では、国内産業維持のためであっても、一応協議にかける機会を与えるという義務規定がある。しかしそれは合意を条件といたしていないわけであります。そうすると、相手の態度、経済事情並びに政治的な判断というものによって、この規定が——免除規定といいますか、最恵国に対する免除規定が非常にスポイルされる。その程度の問題ですけれども、これについても、先ほど牛場局長が御説明になったように、不当な態度に出てこないであろう、そういうふうに理解して差しつかえないわけですか。そこらの判断をお尋ねいたしたいと思います。
  137. 牛場信彦

    牛場政府委員 この第五条は、実は交渉上非常に問題になった条項でございまして、濠州側の基本的態度は、先ほど申しましたように、日本との経済関係を正常化する、その意味におきまして最恵国待遇を交換するとしうことになったわけでございますが、それと同時に、日本からの輸出が非常に狭い部門に集中して急に伸びてきたために、濠州の産業が害された場合の擁護と申しますか、政府側の規定をどうしても入れる必要があるということを申しまして、この規定となったわけでございます。しかしながらこの規定におきましては、第一項においてそういうような差別的な措置をとれる事態を非常にしぼっておるわけでありまして、「いずれかの産品がその国の同様の産品又は直接的競争産品の生産者に重大な損害を与え、又は与えるおそれがある」という場合のみ差別的な措置をとることができる、しかもその場合には必ず事前に協議をしなければならないということになっておるわけであります。そこで発動の方を相当強く押えてあります。それからまた発動の結果としまして、輸出国であります日本の方が非常に重大な損害を受けたと思われる場合には協定の再交渉を申し入れることができる、そしてその再交渉がととのわない場合には一定の期間を置いて協定を廃棄することができる、きわめて重大な結果を生じ得ることが第三項にきめてあるわけでございます。その効果の方からその措置をとることを牽制しておるわけでございます。こういう条項があることは、最恵国待遇という点から申しますれば、ある程度制限的なことになりますけれども、歴史的に見まして、今まで日本からの輸出に対して豪州が持っておりました恐怖心というものを考えますと、こういう規定を置くことはやむを得ないと考えて、この挿入に同意いたした次第でございます。
  138. 穗積七郎

    穗積委員 おそれがあるというのを削除するわけにはいきませんでしたか。
  139. 牛場信彦

    牛場政府委員 実はガットの中にもこれと同じような規定がございまして、やはりある程度予防的な措置はとれるということになっておるものでございますから、やむを得ずここに入れた次第であります。
  140. 穗積七郎

    穗積委員 もし合意に達しないとすれば一そういう場合が多いと思うのだが、わが方ならわが方が納得できないということで、協議は物別れになる、そして理由は国内産業維持、保護のためだ、こういうことに限定されているわけですね。そういたしますと、これに対する報復手段というものは認められていないわけですね。
  141. 牛場信彦

    牛場政府委員 報復手段といたしましては、日本側も同じような差別的な制限措置をとれるという規定はございません。協定の廃棄をもって対抗できるということになっております。もちろん書き方といたしましては、この条は双務的な書き方になっておりますが、実際問題といたしましてそういう問題が起るのはやむを得ないと思います。
  142. 穗積七郎

    穗積委員 ほかの質問者もおありになるようですからもう一点だけお伺いしたいのだが、実は小麦の問題は、アメリカ、カナダ、その他の国との関係からいたしましても、この場合も非常に問題になると思うのです。すなわちグローバルで買い付けるか、あるいはそうでなくて、今の日米間における余剰農産物のように、特別のワクを認めてやるか、そういうことについて、今度の交渉の経過の中で、向うから何らかの提案または討議が行われたかどうか、その間の事情をちょっと明らかにしていただきたい。
  143. 牛場信彦

    牛場政府委員 小麦につきましても豪州側が主張いたしました根本原則は、あくまでも最恵国待遇でもってほかの国と平等に競争的な立場で買い付けてくれということであります。ただもし日本側が他国に対してクォータを与える場合に、豪州に対してもクォータを与えてほしい、そのクォータのきめ方はそのときどきの状況によってやろうということでありまして、そういう了解が付属的に覚書に載っております。これは資料として差し上げてあると思います。そうして余剰農産物のことも交渉の過程において問題になりまして、日本アメリカから余剰農産物を買い付けるということは、実際としてはアメリカに対して一定のクォータを与えることになるのだから、そういう場合には豪州に対してもある程度のクオータをくれ、これは日本のマーケットにおけるフエアなシェアという言葉でもって表わしておったわけでございますが、その原則に対しましては私どもも認めたわけでありまして、ただそのシェアが幾らになるかということは、そのときどきの協議によってきめようということにいたした次第であります。
  144. 穗積七郎

    穗積委員 最後に経済局長にお尋ねいたしますが、外務省の経済局としては、最近の国際的な食糧生産の傾向とそれから——日本は幸いにして豊年続きになっておりますが、これも必ずしも偶然的なものではなくって、相当政治的、経済的な根底もあり得ると思う。天候だけでなくて……。そういうことで考えまして、戦争のない限り、やはりフリー・マーケットの方が大体の傾向としてはむしろ日本側に有利ではないかというふうに私には思われるわけですが、局長のお考え並びに政務次官のお考えをこの際伺っておきたいと思います。
  145. 牛場信彦

    牛場政府委員 食糧につきましては、米と麦との間に相当区別して考えなければならぬと思います。大麦にしても小麦にしてもそうであります。ああいうふうに国際的な商品をなしておるものにつきましては、フリー・マーケットが一番いいにきまっております。できるだけきまったコミットメントを与えることを避けて、一番安いところから買うという方針をとるのがよいと思います。米につきましてはやや事情が違っておりまして、東南アジアの国の中には米の輸出に非常に依存しておるものがある。またその国に対しては日本の国の輸出も相当いっておりますし、将来経済的にも提携を強化していかなければならぬという関係が相当多いものでありますから、これはある程度の経済政策上の考慮を入れまして買付を行なっていくということが適当ではないかと思います。
  146. 松本瀧藏

    松本政府委員 補足的に申し上げますが、もちろん余剰農産物の問題等につきまして一つのモラルコミットメントがあることは事実であります。しかしながらこがれ御破算になれば、こういう問題をいろいろ再検討して、グローバルの問題等も考えなければいけない、こう考えております。
  147. 野田武夫

    野田委員長 戸叶里子君。
  148. 戸叶里子

    戸叶委員 穗積委員からもう御質疑がございましたので、ごく簡単な点を二、三点だけお伺いしたいと思います。日本とオーストラリアとの関係は、貿易その他の問題で非常に深い関係があったにかかわらず、お互いにいろいろな面で理解されない面が多かったのですけれども、こういう協定を通してほんとうに日本豪州関係がいい関係になることを私たちは望んでおるわけです。先ほど穗積委員は技術協力というような形で御質問なさいましたが、それに対して、真珠貝の栽培とか、そういうふうな点での日本の技術石は行っておる、農業関係では、非常に規模も違うし、なかなかむずかしいし、移民の問題は全然これはむずかしいというよりか、まだそこまでいっていないというお話でございました。そから技術者移民ということも考えてもらえるんじゃないかと思いますけれども、こういうような点で豪州とお話しになったことがおありになりますか、また今後そういう点でお話しになる御意思がおありになりますかどうか、伺いたいと思います。
  149. 松本瀧藏

    松本政府委員 ただいまのお説のごとく、だんだんと友好関係が増して参りましたが、さらにこの協定の成立によりまして、そう一そう緊密の度が加わることになると思うのであります。もしこの協定が批准されることになりましたならば大きな前進だと思うのであります。これを一つの契機といたしまして、さらに先ほど申されましたような豪州向けの技術者の問題等も、今度総理が向うに参りましてこういう問題を十分検討する用意でおられるようであります。さらに開発基金の問題等に関しましても、今のところは先般総理説明されましたように、すぐこれが成立するというような段階ではございませんが、一つの目標といたしまして前進したいと思っております。この計画の中には先はど戸叶先生の申されたようなプログラムも入っておることは事実であります。
  150. 戸叶里子

    戸叶委員 現在オーストラリアには日本の人は大体どのくらいいられるでしょうか、また日本には大体幾人ぐらいおいでになるでしょうか、おわかりになりましたらお示しいただきたいと思います。
  151. 松本瀧藏

    松本政府委員 ただいまちょっと正確な数字はございませんので、調べてさっそく提出いたします。
  152. 戸叶里子

    戸叶委員 大体のことでけっこうだったのですけれども、それではもう一点伺いたいことは、交換公文の中でオーストラリアの属領について書いてございますが、このオーストラリアの属領というのはどこをさして言うのか伺いたいと思います。
  153. 高橋通敏

    高橋政府委員 この協定文の趣旨はここにございますように、豪州の本土地域への適用でありまして、それ以外の地域には適用がないという意味であります。そこで海外領土といいますのはアシュモーア及びカーティア諸島、ココス島、ハード島、マクドナルド諸島、ナウル信託地域、そのような太平洋上の諸島であると考えておる次第であります。
  154. 戸叶里子

    戸叶委員 けっこうです。
  155. 野田武夫

    野田委員長 田中織之進君。
  156. 田中織之進

    ○田中(織)委員 同僚穗積君からすでに私の聞きたいと思う点についても質問があったようでございますので、なるべく重複を避けたいと思いますが、従来特に関税関係差別的な取扱いをされておった豪州との間に今度それをなくして、いわゆる相互の最恵国待遇によるところの通商の基本原則が打ち立てられたことは、非常にけっこうなことだと思うのであります。ところが先ほど穗積君が質問をいたしておりましたように、協定の第五条にはこの最恵国待遇を基本といたします今度の通商条約制限に関する部分の規定があるわけなんです。どうもその点が解釈のいかんによりますと、せっかくの通商条約がいろいろな面で、具体的なケースで問題が起り得るようにも考えられるので、特に第五条で条約締結するに当りまして、特別にこういう場合はどうだああいう場合はどうだというようなことで話し合った経過があろうかと思いますので、その点をできるだけ詳しく御説明願えないでしょうか。
  157. 松本瀧藏

    松本政府委員 一般論といたしましてちょっと意見を申し述べたいと思うのでありますが、御承知のごとく豪州は、ガットの三十五条を適用しておりますので、従ってこの五条というものも当然入れたものでございますが、三年たちましたならば三十五条の採用を撤回いたしましてガット関係に入り得るという項目もありますので、すべてほお互いの国の善悪と信頼を友好関係に待たなければならないと思うのであワます。水も漏らないような条約を作る、協定を作るということはなかなか困難でございますが、その精神を十分尊重していくかいかないかということは、先ほど申し述べましたごとく、両国の善意並びに友好関係でございますので、この面におきましてはわれわれは全力を注いで、いろいろと困難な問題の起らないように一つ善処していきたいと思います。  さらに先ほどこういう場合はどうだというようなこまかい質問がございましたが、それを政府委員に回答させます前に、戸叶先生先ほどの御質問の資料が出て参りましたので、ついでに回答をしておきたいと思います。今日豪州に行っております日本人の数が大体八百五十一名でございます。この中には戦争花嫁約四百数十名加わっておるということと、さらに、技術者の問題でありますが、潜水夫等が豪州の方の会社に雇われて行っておりますのが大体百七十二名という数字が一応出ております。  それではこまかい点は政府委員から御答弁いたさせます。
  158. 牛場信彦

    牛場政府委員 この条項について具体的な場合にどうするかということにつきましては、相当詳しい話し合いをいたしましたのです。その結果が資料としてお手元に差し上げてあります「通商に関する日本国オーストラリア連邦との間の協定についての合意された議事録に関する交換公文」の十一ページ以下に書いてある次第であります。それで十四ページに、第五条に規定してあります差別的な緊急措置をどういう場合にとるかということが書いてあるのでありまして、オーストラリア代表が申したことが書いてあるわけでありますが、第一に、必ず「協議が行われた後でなければ執らないものとする。」そして「すべての場合において、協議は、できる限り早目に行うものとする。」第二に、そういう措置は「軽々には執らないものとし、協議手続を行うことにより当該問題に対する相互に受諾しうる代りの解決策が得られなかった場合にのみ執るものとする。」また「協議の手続の完了前に措置を執ることを必要とする緊急の場合にも、協議を継続して相互に受諾しうる解決策を見いだすために努力するものとする。」つまり協議がととのわないあるいはなかなか時間がかかりまして、向う側が緊急措置をとらざるを得なくなったというような場合においても、その後においても協議を継続して相互に受諾し得る解決策を発見するように努力するということになっております。また「前記の措置は、行政上できる限り、その措置が特定の事態をきょう正するために必要とされる特定の商品についてのみ適用するものとする。」これは多くの場合にごく限られた商品の輸入がこういう事態を起すことが多いわけでありますから、その限られた商品にのみこういう措置を適用するということであります。それから「前記の措置は、特定の事態をきょう正するために必要な期間のみ適用し、かつ、それが達成された後直ちに取りやめるものとする。」これは期間的にも重大な脅威がある場合だけ適用して、それが去ればすぐやめなければならぬ、最後の「前記の措置は、重大な損害が生じ、又は生ずるおそれがある場合に限定するものとする。」ちょっとした損害ではこの措置はとってはいかぬので、ほんとうに重大な損害が生じまたは生ずるおそれがある場合に限ってこれがとれるということにいたしまして、相当この発動の場合をしぼったわけであります。  それからまたこの第五条の裏には、豪州側としましては、日本側はなるべく対豪輸出というものを秩序ある計画でやってもらいたい。きわめて限られた範囲に多量の輸出が一時に集中して出てくるという事態は、なるべく避けてもらいたいということを申しております。それに対して日本政府としてもできるだけそういうふうに努力はしよう、ただ日本の法制上から申しまして、輸出は原則として自由になっておりますので、政府のとれる措置というものは限られておるが、これは業界ともよく相談して、なるべく秩序あるやり方で輸出がいくようにしようということを約束しておる次第でございます。
  159. 田中織之進

    ○田中(織)委員 抽象的には、今御指摘の第五条に関する議事録に関する交換公文点で理解ができるのでありますけれども、もっと具体的に——これは豪州の産業の実態を知らないしろうとの立場からの愚問かもしれませんけれども日本からの輸出品で豪州の産業に重大な影響を及ぼす品目について、この五条の発動ということが予想せられるわけであります。そういう点については、これはなるほど日本輸出は自由輸出でありますから、その点計画的にやるというわけには参らないと思うのでありますが、しかし豪州が当面輸入を必要とし、同時に豪州の国内における産業の商品生産の発展状況というようなものからにらみ合せますならば、一応具体的にどういうような品目だということも予見できるのではないかと思うのでありますが、そういう点までの突っ込んだお話し合いがこの条約締結までにはなかったものでしょうか、いかがでしょうか。
  160. 牛場信彦

    牛場政府委員 そういう、どういう品物についてこういう事態が起る危険性が多いかということにつきましては、例示的に話し合ったことはございます。伝統的に問題をよく起しますのは繊維品でございまして、繊維品の中でも生地綿布のごとく向うへ入って向うで加工されるものにつきましては、これは問題が少いのでありますが、プリント物のようにそのまま商品に回るというものにつきまして問題が多いということがある次第であります。そのほかたとえばおもちゃでありますとか造花とかこまかいものがありますが、こういうものにつきましても、豪州側においては戦後帰還軍人なんかの連中が寄りまして始めました会社がございます。これは全豪州に数は非常に少いわけでございますが、そういうものが、その会社が危なくなると非常に政治的なゼスチュアがあるから気をつけてくれということを向うが申したことがあるわけでございます。そこで製品につきましては、ただいま業界の方で豪州に対してもある程度輸出調整といいますか、これは自主的な調整、政府関係しておらない調整でございますが、これをやろうということになりまして、だんだんそういうシステムが動き出してきている状況でございます。そのほか雑貨類につきましては今までまだ問題がそれほど切迫した状態でもございませんし、日本の業界の方の組織化ということもなかなか困難な節もございますので、だんだんそういうふうに努力はいたすつもりでございますが、今のところ、まだ従来通り輸出が行われておりまして、かつ非常に危険な状況にはなっておらないと思います。
  161. 田中織之進

    ○田中(織)委員 できるだけこの第五条によるところのこの条約の基本精神が制限を受けることのないような、そういう事態の起らないような処置については、やはり日本在外公館を通じて豪州側のいろいろそういう事情等もキャッチをして、もちろん輸出は自由であるといたしましても、できるだけそういうトラブルの起らないような輸出産業に対する指導というものも、これは経済外交を強力に進めようという外務省の一つの務めではないかと思うので、その点は特別に留意をしていただきたいと思います。  次にそれに関連をいたしまして議事録の交換公文の2の(b)の規定でございますが、「3及び4の規定に従い、競争的及び非差別的基礎においてオーストラリア産の小麦及び大麦の輸入を認めること。」ということが日本側から持ち出されたのに対するオーストラリア側の回答があるのでありますが、これをもう小し具体的に、この点についての話し合いが究極においてどのようになったかという点を御説明を願いたいと思います。
  162. 牛場信彦

    牛場政府委員 小麦と麦とに分けて申し上げます。  大麦につきましては、3のところに大体過去三年間に豪州からの大麦が日本国の大麦の輸入総量の約三〇%を占めておったということ、これは過去の事実を述べたわけでありまして、将来ともこういう待遇が維持されることが期待されると書いてありますが、結局今のところわが国が大麦を買っておりますのは、カナダとアメリカ、オーストラリア、この三国でありますが、大体三〇%ずつ、三分の一ずつというのが状況でございまして、この状況はおそらく今後とも変らないであろうと思われるためにこういうことを書いた次第でございます。実情を申しますと、豪州の大麦は価格の点におきましても品質の点におきましても非常に満足すべきものでございまして、平等な競争的な立場で買い付けましても、三〇%よりもふえることはあっても減ることはないであろうというのが、今のところのわれわれの観測でございます。  それから小麦に関しましては、先ほどもちょっと御説明申し上げましたが、やはりこれも競争的な立場で買い付けてくれということがあったわけであります。そこで4のところに書いてありますことは、戦前におきましては、日本は実はオーストラリアから相当たくさんの小麦を買いました。これを日本におきまして加工しまして、小麦粉を満州、中国あたりへ輸出しておったわけでございますが、そういう状況がなくなりましたために、戦後はオーストラリアからの小麦の輸入がとまっておったわけであります。その事情が4の(a)のところに書いてあるわけであります。それから4の(b)におきましては、結局日本がどこかの国に商業的考慮に基かないところのクォータを与える、あるいはどこかの国が日本に対して小麦のダンピングをやってくるというような場合には、そういう事実が確認された場合には、日本政府はオーストラリア産の小麦に対して、一定の公正な日本のマーケットの分け前を与えようということを約束したわけであります。ただ果して日本が他国に対してクォータを与えたか、あるいは他国が日本に対してダンピングをしてきたかというような事実の認定は、日豪両国の協議によってきめる。またそういう事実が認定された場合にどれだけの小麦をオーストラリアから買うかということにつきましては、量につきましては両国間の協議によってきめるということにいたしてございまして、数量的な一定の約束というのはいたしておらないということになっております。ただ二十万トンという数字が出て参りますが、これは現在のところそういういろいろなクォータでありますとかダンピングがないと考えた場合には、おそらく二十万トン程度は、豪州側が供給力さえあれば日本は買えるだろう、こういう観測でございまして、これだけ必ず買うということは約束したわけではないわけであります。
  163. 田中織之進

    ○田中(織)委員 その間の事情はわかりましたが、それに関連をして、実はけさの新聞に、よりますと、食管特別会計の赤字の解消策の一つとして、大蔵省の方では小麦について輸入関税を明年度から創設しようか、そういう一つの発案のような、そういう意見が台頭しておるということが新聞紙に報道せられておるのでありますが、せっかくここで日豪間に特に関税関係においてこういう友交的な条約ができるときに、もちろん食管特別会計の赤字を解消するということは、きわめて重要な財政上の事柄ではございますけれども、勢いそうなりますと、やはり豪州から、輸入する小麦についても輸入関税のことが日程に上る、こういうことになりますと、条約締結したけれども、君らの方の国では早くもこういうことが持ち上っておるではないか、こういうことが当然私は豪州側においても問題になるおそれなしとしないのであります。その間については外務省と大蔵省あるいは農林省との問で、この点についての話し合いがあるものなのか、また大蔵省だけの事務当局の一部の考え方なのでありますか、この点を一つ明確にしていただきたい。
  164. 松本瀧藏

    松本政府委員 御心配の筋は今お説の通りであります。ただわれわれのところでは、事務局のレベルにおきましても、そういう正式の話を承知しておりません。
  165. 田中織之進

    ○田中(織)委員 その点は実は内地の麦価を引き下げるという政府の一つの物価引き下げの基本方針にのっとって、具体的問題が持ち上っておるわけです。昨日そういう意味で農業協同組合の全国大会が開かれましたときにも、果して内麦の価格が引き下げられるものかどうか、そのときには当然やはり外麦との価格の差というものが問題になるわけです。現在においては確かに逆ざやになっておると思いますので、その点は直ちにそこまではいかないではないかというようなことに私は見ておるのでありますけれども、内地産の麦価を引き下げるという一つの問題と、それから食管特別会計の赤字解消のために、何らか価格面における差を調整するためにということで、財政当局の方では相当強い意向を持っておるやに推察をいたしておるので、十分この点についてはせっかくこういう条約ができたのだけれども、足もとから鳥が立つような形で、日本政府の対外的な態度に一貫性を欠くようなことのないように、一つ財務当局あるいは農林当局との間に連絡をとっていただきたいということを重ねて要望をいたしておきます。  それから次の問題といたしまして、交換公文のいわゆる最恵国待遇を実施する地域の問題に関連をいたしまして、沖縄の問題についての交換公文が出ておるのであります。それで実はこの点は現在日本国連に加盟いたしまして、当然日本の対外関係におきましても、国連憲章というものが基本的な精神として貫かれなければならぬという建前から申しますならば、実はサンフランシスコ条約の第三条というものは、そういう意味で明らかに国連憲章に違反をしておる。その限りにおいてわれわれは無効だ、こういう見解をとっておるのであります。そういう点から見ると、今度の場合は、もちろん現在日本が沖縄に対して関税上特別の処置をとっておるものを豪州に適用したいということ、またそれは裏を返せば、豪州側がたとえば英連邦間においてとっておる関係、あるいは先ほど言叶委員から質問のありました豪州の属領に対する関係を、日本には適用したいのだということの両方関係で、これは事務的にはやむを得ない処置ではないかと思うのでありますけれども、われわれといたしましては、やはり現実にサンフランシスコ条約の第三条件国連憲章に明らかに違反する。特に後段の信託統治に関する分は、いかなる点を押しましても、アメリカが信託統治を国連に要求する権限は、もはや日本国連加盟によって失われてきておるということは、これはただ単なる野党のわれわれの主張だけではないのであります。そういう点から見て、こういうような規定で、あたかもこの第三条を是認するかのような規定を、あるいは交換公文が取りかわされるということは、社会党のサンフランシスコ条約第三条に対する基本的な考え方から見ると、適切ではないと思うのですが、この交換公文の点については、そういう点について何らか話し合いがあったものでしょうか。ただ先ほど専門員室を通じて調べますと、たとえばフランスとの民間航空協定の場合には、沖繩に対する潜在主権を主張するという意味で出された交換公文がございます。それからカナダとの通商条約の場合に、やはり関税関係最恵国待遇の実施地域の問題に関連して、今度と同じような交換公文が出ておるということも明らかになったのであります。少くともそういう点についてはもっと突っ込んだ意味の——この条文だけでは、ただ裏を返せば潜在主権を主張したということには解釈上なり得るかもしれませんけれども、何らかその点についての話し合いがこの条約締結交渉の過程において出たものでしょうか、その点の事情を明らかにしていただきたい。
  166. 高橋通敏

    高橋政府委員 ただいまの点につきましては、別に条約交渉中にそのような問題につきまして話し合いが出て、そこで審議または意見の交換を遂げたという事実は何らございません。われわれといたしましては、先ほど御指摘の通り、この第三条の問題とは離れまして、技術的に、これはほかの条約でもそういたしておりますが、少くとも三条に掲げた地域、すなわちあの地域について、現在の状況につきましてここで留保するという意味を持っております。それでは基本的な問題というと、これはこの条約関係する問題ではなくて、別の問題であろうと考えておりますので、一応条約上は技術的にこのように留保をした次第であります。
  167. 田中織之進

    ○田中(織)委員 その点は私も、特に日本が沖繩に対する関係は事実上関税上も特別な扱いをしておるので、それと同じ取扱いを豪州にするわけにはいかないという建前から、きわめて事務的、技術的に取りかわした交換公文だと思うのでありますけれども、やはりその基本になる講和条約の第三条によるところの沖縄の地位の問題については、これは日本の外交上きわめて重大な問題でありますから、今度の場合は全く技術的、事務的なものとして了承いたしますけれども、その点については、これは数日前の予算委員会におきましても、同僚岡田君からいろいろ岸総理に対しても質問がなされたわけなんですが、私はこういうものはあらゆる機会に、今後も二国間の通商条約等の実施地域の関係から見て、事実問題として沖縄の位置に関連してこういうようなことが出て参るということは、これは日本として非常に不名誉なことであり、早急に解決しなければならぬ問題だと思います。この日豪通商条約に関連した交換公文については、その限りにおいては了承いたしたいと思いますけれども、特にこの第三条の問題、沖縄のその意味における返還の問題については、ぜひ外務当局が国連で問題にすることも、これは日本国連の一員になった以上は当然なし得ることでありますから、その点について外務当局として事務的にも法制的にもいろいろ研究を進めて、できるだけ早い機会にこの問題を国連の問題として提起をいたしまして早急に解決することが、沖繩住民のみならず、九千万国民要望であると思いますので、その点の努力を要請したいと思います。  それから最後にもう一点伺いたいのは、私の承知する限りにおきましては、豪州とニュージーランドは東半球におけるうちで、ココムの協定に参加していない国であるというふうに私は理解をいたしておるのでありますが、そういう関係から、直接の日濠関係貿易に関する資料もいただいておるわけでありますけれども、現在豪州と中華人民共和国との間の貿易関係の点については、われわれ不敏にしてそういう資料を持っておらないのでありますが、外務省において調べられた点がありますれば、この際明らかにしていただきたいと思います。特にこの点を申し上げるのは、そういう関係から、将来豪州を経由いたしました三角貿易の形による中共との間の貿易というようなものの進展も予想されることでございます。むしろ、豪州を中に入れる形におけるそういう貿易発展も、今日のように直接日本対中共闘の貿易がいろいろな障害に苦しんでおる段階においては、当然可能なことであり、また伸ばすべき筋合いの方向だと思う。そういう意味で参考に伺っておきたいと思うのでありますが、その点何かの資料がございませんでしょうか。
  168. 牛場信彦

    牛場政府委員 豪州と中華人民共和国との間の貿易に関する数字は持ち合せておりませんので、さっそく調べまして御報告申し上げます。全般論といたしましては、豪州国民政府承認しておるわけでありまして、外交関係を持っておりませんのと、それから経済的に割合に有無相通ずる関係にないものでありますから、今までのところあまり活発な貿易が行われておらぬと存じます。ただ最近中国市場というものに対して、豪州でも相当興味を持っておりまして、いろいろな視察団とか、あるいはそういうようなものを中共に出しておるという事実はございます。
  169. 野田武夫

    野田委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。  本件につきましては別に討論の通告もございませんので、直ちに採決いたします。  通商に関する日本国オーストラリア連邦との間の協定締結について承認を求めるの件を承認すべきものと議決するに御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  170. 野田武夫

    野田委員長 御異議なしと認めます。よって本件は承認することに決しました。  なお本件に関する報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  171. 野田武夫

    野田委員長 御異議なければ、さように決定いたします。
  172. 野田武夫

    野田委員長 次いで昨日質疑を行いました在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を許します。有馬輝武君。
  173. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 最初に私は齋藤さんにお伺いいたしたいと存じますが、それは在外公館の布陣の充実ということについてであります。この点につきましては、三十二年九月一日現在で、アメリカなどでは五十四名、イギリス大使館では三十七名という工合に、一応態勢が整っておるようでありますけれども、その他の国々、たとえばメキシコでは六名だとか、ブラジルでは十二名、アルゼンチンでは九名、チリーでは四名という工合に、非常に少い人員で大きな仕事をかかえて、能力以上に酷使されておられるようなきらいがあると思うのであります。この点につきましては政務次官もずっと回っておられてお気づきになっておることだと思いますし、また本委員会には須磨先輩を初めといたしまして外交官出身の委員各位がおられて、十分御承知だろうと思いますが、これがただ単に現在の予算なり何なりではやむを得ないのだというようなことで片づけられていいものかどうか。私はそうは思わない。この点についてやはりある時期を画して十二分に検討して、画期的な措置が講じられなければならないと思うのでありますが、その点についてどうお考えになっておるか。今度中南米移動大使の渋沢さんが帰ってこられて、私は新聞で拝見いたしたのでありますが、この点についても言及されておるようであります。そういったことを検討されたことがあるかどうか、この点についてお伺いいたしたいと存じます。
  174. 松本瀧藏

    松本政府委員 御承知のごとく、戦後に至りまして、特に最近日本の外交活動は非常に活発になって参りましたのと同時に、いろいろ国際会議、さらに新しい独立国等ができまして、今の外務省では手不足であることは事実でございます。もちろん予算措置の問題は、先ほども予算の関係であろうということもございましたが、その通りであります。しかしながら与えられました予算の範囲内におきまして、配置の再編成であるとか、あるいは重要な大公使館あるいは領事館、総領事館にもっと人数を増し、そうしてさほど重要でないところから少しこれを削除するとかいうこと等もいろいろ考えて、今作業しております。ただ、くどいようでございますが、予算の問題に関しましては、はなはだ残念ではございますが、御承知のごとく、予算に対するパーセンテージから申しますと、アメリカ合衆国に次いで世界で一番パーセンテージが低いのであります。しかしアメリカ合衆国におきましては、パーセンテージは低いかもしれませんが、絶対額というものが非常に多いので、さほど窮屈な思いをしていないようでありますが、われわれもせいぜい努力いたしまして、予算措置も十分講じまして、御期待に沿うようにいたしたいと思います。私もみずから大公使館等歴訪いたしまして、ただいま有馬先生お説の通りのことを痛感して帰ってきております。
  175. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 この点については、今政務次官からお答えがあったように、きのうきょうの問題ではないと思うのであります。それで私はお伺いしたいのは、昭和三十三年度の予算編成に当って、具体的にどのような態度で臨まれるか、この点をお伺いいたしておるのであります。
  176. 松本瀧藏

    松本政府委員 予算編成におきましては、もっと人員をふやし、もっと大公使館あたりの整備、たとえば宿舎の問題、待遇の問題あたりをいろいろ加味しておりますが、こまかい点に関しましては政府委員をもって答弁せしめます。
  177. 斎藤鎮男

    ○斎藤説明員 ただいまの外務省の総定員は千七百七十八名で、そのうち在外公館の定員に相当する者は五百五十三名でございます。来年度におきましては経済協力、移住、情報、啓発宣伝、そういった種類の仕事をする者を中心としまして、五十名の増員を考えております。これはただいま政務次官からもお話がありましたように、現在長期計画を考えておりまして、その長期計画の一端として、来年度はその程度というようなことで結論に至っております。
  178. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 次にお伺いいたしたいと存じますことは、今度の渋沢さんにしても、小林さんにしても、それなりの大きな成果を上げておられると思うのであります。この点につきましては、日を改めていろいろお伺いしたいこともありますが、問題はたとえば欧州共同市場その他の、一国だけではなくして、全体的な動きに対応するために恒常的に外務省の方を配置する考え方があるかどうか。もちろん現在でもイギリス大使館あるいはフランス大使館あたりでそういった役割もしておられるとは思いますけれども、やはり機構の上からもそういった面を考慮する時期がきておるのではないかと考えるのでありますがそういった構想がありますならば、それをお聞かせ願いたいと思います。
  179. 松本瀧藏

    松本政府委員 移動大使の調査の成果に関しましてはいろいろあったと思います。口頭でいろいろ幹部は聞いておるのでありますが、藤山大臣がちょうど寝ておられますので、回復次第、この問題を一つ真剣に検討してみたいと思いますが、移動大使の制度そのものは、決して私は悪いものではないと思います。従ってこの成果次第では、これをまた強化する場合もありましょうし、また多少ものの考え方を修正する場合もあると思いますが、ただ一定の個所にくぎづけになるのではなくして、いろいろと各地と連絡する、あるいは移動大使等の制度によりまして、もっと総合的にものを考えることは必要であると考えております。
  180. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 いや私が申し上げておるのは——今度の移動大使は大きな成果を上げられたと思うのです。これをさらに恒常的なものにする考えはないかどうかということをお伺いいたしております。
  181. 松本瀧藏

    松本政府委員 先ほど申しましたごとく、移動大使の制度、これは外務省内だけできめたことでありますが、これを恒久的なものにするか、あるいは何かの措置によってもっとこれを固めるかということは目下検討中でございます。
  182. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 次に経済局長にお伺いいたしたいと思いますが、たとえば今度私がローマに参りましたときに、太田大使が話しておられましたが、一昨年は米を八万トン輸入した。ことしは一トンも考えないというような事象があると、これは外交全般に対して大きな支障を来たす。もちろん食糧庁として需給の関係から考えられることでありましょう。これは一例にすぎませんが、やはりコマーシャル・ベースの上でどうも落ちるというようなこともあり得るでしょうけれども、そういったことだけでは解決されない。全般的な観点から貿易を見ていかなければならない面が多かろうと思うのであります。またそうすること自体が、日本の経済の伸張のためにも大きな役割を果すと思うのでありますが、その点について現在まで各省の調整をどのような機関でどのように調整してこられたか。もしそういったことがただその場当りでやられてきたとすれば、今後それを何か形のまとまったものにする考え方があるかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  183. 牛場信彦

    牛場政府委員 米の買付につきまして、政策的にきちんとした方針を立ててやるというお説はまことにごもっともでございまして私どもぜひそれはやらなければならぬと思っておる次第であります。ただいまの米の買付などをきめます機関としましては、外貨予算を決定します際には大体の方針をきめるわけでございます。これは経済閣僚が集まって組織しておる審議会がございまして、そこで決定することになっております。具体的な買付に当っては農林省の意向がもちろん一番強く尊重されるわけでありますが、それ以外に外務省、通産省、大蔵省方面からも政策的見地からの要望を出しまして、そこできめていくことになっております。現在のところ、今年度の下期の買付におきましては、おそらく米の買付地としてイタリアなども考慮に入れて考えられることになるだろうと思います。
  184. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 私がお伺いしたいのは、ただ単に米の問題だけに限らないので、羊毛なら羊毛、あるいはブラジルのコーヒーならコーヒーを輸入する場合に、その貿易関係だけで律しられない他の面も考慮に入れなければなるまい、そういった機関がほしいと思うのでありますが、そういう点についてはたとえば外務省の経済局でまとめておられるのかどうか、現在までの実情と、もしそこに何らかの欠陥があるとすれば、それを是正するためにはどういった方向をとるべきかといった点について、牛場さんの考えをお聞かせ願いたいと思います。
  185. 牛場信彦

    牛場政府委員 経済関係の対外面はもちろん外務省が主として責任を持ってやっている次第でありまして、対外経済政策に関しましては外務省経済局の方で主として責任の衝に当っている次第であります。機構としましては、ただいま申し上げました閣僚審議会の下部機構として幹事会がございます。これは各省の関係局長間で組織しているわけでありまして、これはしばしば正式な会合をいたしますが、それ以外にも常時関係局長の間では非公式に会合をいたしまして、いろいろな関係問題を処理していっております。現在のところ常に円滑にいっているとは申しかねるのは遺憾でありますが、できるだけ連絡をとっておりまして、私見といたしましては新しい機構を作る必要はないのではないかと考えております。
  186. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 その点につきましては、私今度十五カ国ほど回って参りまして、いろいろ具体例も知っておりますが、それを申し上げているとまた時間も経過いたしますので申し上げませんけれども、やはりそういった点について先ほど私が申し上げましたような観点から、全般的な態勢というものを十分に把握されて、今おっしゃった点を遺憾なく進めていただきたい。このことを要望しておきます。  次に、移民の問題につきましてお伺いいたしたいと思うのでありますが、ILOでもこの移民問題につきましては、ずっと前からいろいろ取り上げられているようでありますし、また最近でも——最近といいましても六年くらい前になるわけでありますが、一九五一年十月にはナポリで、また一九五一年十一月にはベルギーでそれぞれ国際移民会議というようなものが開かれております。午前中の与党委員質問に対しまして、岸総理は大いにこの問題についても努力するということでありましたが、現在わが国の移民は戦前に比べまして三分の一程度に減っていることは御承知通りであります。これには戦争を初めといたしましていろいろの原因があるでありましょうけれども、これらの国際会議なり、あるいは現在この移民政策についてどのような態度でもって臨んでおられるか、簡単でけっこうでございますから、お聞かせ願いたいと存じます。
  187. 松本瀧藏

    松本政府委員 海外に同胞を送り出すということは、それ自体が人口問題を解決するとは思いませんが、友好関係を増大する意味におきましても非常に大切なことだと思います。従いまして戦後におきまして戦前よりももっと友好的に日本の同胞を入れてくれるというような国がだんだん出てきております。アメリカ合衆国におきましても、移民法案の修正等もございまして、ことに短期移民の問題で最初に出ましたそれは、非常な成果を上げておりますので、第二回、三回と引き続いてこれをやりたいというように誠意をもってアメリカの行政府はこれに対処しております。また東南アジア諸方面におきましても申し入ればあるのでありますが、これを運びまするところの船の問題であるとか、その他の問題、いろいろ経済問題等もからんでおりますので、意のままに進んでいないことは事実でございますが、われわれはこの移民政策に関しましては、全力を注いでこれを推進したいという方針で進めております。
  188. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 続いて政務次官にお伺いをいたしたいと思いますが、現在まで、渡航料の問題とかあるいは支度金の問題とか、いろいろこの移民政策については外務省としても考慮していただいておるようであります。しかし、たとえば南米等に参りましても、五年間労務に服さなければ一応自分の仕事に取りかかれないとか、いろいろ事情があるわけでございます。やはりこういった点をもう少し前進させなければ——昔よく棄民政策だと言われましたが、その状態から一歩も前進し得ないのじゃないか、このように思うのでありますが、こういった点で今後の移民政策として何か具体的に、今より前進せしめる方途というものがあるかどうか。またたとえば海外移住会社等にいたしましても、支店長あたりが年間に扱い得る金が十万円程度だというようなことでは、これは名ばかりに終ってしまうことも明らかであります。そういった点についてもお聞かせをいただきたいと思います。
  189. 粕谷孝夫

    ○粕谷説明員 戦後、目下日本でやっておりますものは、御承知通り大体中南米方面でありまして、われわれの方といたしましても、できるだけいい移民を送る、移住者を送る、と同時に、また受入国をできるだけ多くするというふうに努力をいたしてきておるのであります。ところが何分、二十七年から始まりましてまだ五年でございまして、なかなか伸びは少いのであります。それには一方におきまして、輸送力の問題——中南米方面でいいますと、地球の裏側、逆の側になりますから、一つの船が一年間に二航海半しかできないという状態でございます。ただいまは大阪商船が四はい、オランダの汽船が五はいでもって運んでおります。来年度はさらに大阪商船にいま一ぱい作ってもらうようにやっておるのであります。これらが一番大きな問題であります。戦前は十ばいくらいでやっておったということを言っておるようでございます。そこでわれわれの方としましても、できるだけ多く送ることがいいのではないかということで、戦前最高の年が二万七千とかいっておりましたので、われわれの方としてもできるだけ早い機会に、年間三万くらいの線に持っていこうというつもりでおりますが、一気にいきませんので、毎年六千くらいずつを目標にいたしまして、五カ年くらいの間でそのくらいのところへ持っていこうというっもりであります。来年度におきましては一万三千余りのものを送り出すというような予定で予算を組んでございます。一方、送り出すばかりが能ではないのでありまして、送り出してからあとの、いろいろお世話をしなければならぬわけであります。それにはただいま移住関係の仕事をしております海外協会という団体がございまして、これが支部を現地に持っておりまして、本部の方も拡充すると同時に、支部の人員も大いに増加し、また待遇その他もよくすると同時に、いろいろな公益施設方面も、できるだけの努力をいたしたいということで、相当ことしに比べますというと多額の予算を要求いたしておるのであります。その中で特にことし新しく頭を出そうと努力しておりますのは、たとえば移住会社が土地を買うというような場合に、だんだん私が見ておりますとどうも南米の土地の値段が高くなっている。そしてそれに移住会社の方で、造成費といいますか道路を作ったりするような費用も加えますと、相当土地の値段が高くなる。これはどうもあまり感心しないということで、来年はやはりそういう造成のための費用——道路を作ったり橋を作ったり、そういうような費用を補助として出したらどうかということで、新しく定着助成に関する費用というようなことで、予算を計上いたしておる次第でございます。大体そういうことでございます。
  190. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 今粕谷さんのおっしゃった助成の費用等どの程度見込んでおられますか。
  191. 粕谷孝夫

    ○粕谷説明員 二億四千六百万円でございます。
  192. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 粕谷さんにお伺いいたしたいと思いますが、詳しくお話し申し上げなくても、たとえばブラジル等の現状につきましては、もう十分に把握しておられると思うのであります。それで、ここでお伺いしたいのは結局現在までの、抽象的に申し上げまして、東への移民というものは農業移民が主体である。この点について私たちがあそこの開発銀行総裁のルーカスロペス、あるいは国立銀行総裁のアルメイダさんなんかに会っていろいろ話す過程で出てきますことは、日本の企業の進出、いわゆるプラント輸出というもの、また技術の輸出というものに大きく期待を寄せておるようであります。これは渋沢さんのお話でも、受け入れ態勢もあるし、こういった後進国に対するものの考え方、それから現在の向うの経済情勢の転換というもの、これに即応して現在までの移民の性格というものを変えるべき、また変っていかなければならぬ時期にきておるのじゃないかと思うのでありますが、その点について具体的にどういった指導をされるのか。またこれは牛場さんからもお聞かせ願いたいと思うのでありますが、企業の進出について、具体的にはどのような施策を講ずべきであるか、この点をお聞かせ願いたいと存じます。
  193. 粕谷孝夫

    ○粕谷説明員 ただいま御指摘の通りでございまして、従来は農業関係の移住者を多く出したのでございますが、今後やはり中小企業方面への進出を考えなければいけないというようなことも考えております。そこでいろいろ在外公館方面でもそういうことを研究しなければならぬのでありますが、来年度の予算で、中小企業進出が可能であるかどうかということを調査する予算を要求しております。
  194. 牛場信彦

    牛場政府委員 ただいま粕谷さんから御説明申し上げました通り、移民を伸ばしていく上におきましても、企業移民というようなことが必要だということは、私ども深く感じておるところでございまして、そのために移民会社において、相当の金を用意して貸し付けることになっておるということを聞いておる次第でございます。一般的な問題としまして、企業進出につきましては、おそらく合弁の会社ができる場合が多いわけであります。その場合に日本からの投資は、大体において従来は設備類を投資するということになっておったわけであります。先般中南米を回ってお帰りになりまして渋沢移動大使から伺いますと、それだけではどうもちょっと足りないようでありまして、せっかく会社が発足しても運転資金が足りないために、非常に困っておる場合が多いようであります。運転資金は今のわれわれの考え方から申しますと、当然現地側の事業者が出すべきだということだったのでありますが、必ずしも中南米諸国においてばかりではなく、東南アジアにおいてももっとそういう問題があったと思うのでありますが、なかなか円滑にいかないということでありますから、そういう場合にはやはりある程度運転資金のようなものをあるいは貸付の格好でやりますか、投資の格好でやりますか、いずれにしても日本からある程度出せるような格好にすることも必要だと考えておるのであります。これは今後の課題といたしまして、至急に大蔵省あたりとも検討いたしたいと思っておる次第でございます。
  195. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 今牛場さんからお答えをいただきましたが、お答えの中にもありましたように、現地で資本を調達するということはほとんど不可能な状態にあることは御承知通りであります。移民の人たちもある程度の蓄積ができましても、その資本を土地に投下するが、いわゆる一般の企業に対して出し渋る、この傾向はおおい得ないのでありまして、そういった意味からも私は機械の無為替輸出の問題あるいは長期の金融の問題、保有外貨制度の問題あるいは在外資産の保償制度の問題、こういった点を早急に検討していただきまして、企業が伸びていくそのささえといいますか、それを徹底的にやっていただきたい。中南米に対するドイツあるいはフランス等の企業の進出、これはただ単に企業自体の性格というよりも、やはり国をあげてのそういった態勢の整備ということが裏づけになっておるというふうにしか考えられないのであります。そういった点で、この点を強く要望いたしまして、私の質問は終りたいと存じます。
  196. 植原悦二郎

    ○植原委員 質問と申すよりは、実は外務当局の方や委員の方に聞いておいていただきたいと思います。と申すのは、ただいま有馬君の御質問に、移動大使の問題がありましたが、これは主として政策の問題になります。それゆえに、外務の事務当局の御答弁においてこれはなさるべきものでないと思うのであります。政府の国策から生ずるんだから、むしろその答えは控えておいて、やがて外務大臣か何かがお答えすべきが当然だと私は思います。移動大使の問題に対しては、今もいろいろの御注文がありましたけれども、今のやり方は、そのときそのときの思い当りで、行った人も何もみなしり切れトンボのようになってしまいます。もしこういうものをほんとうに意味あるように活用しようとするならば、実業方面の方——僕はあらゆる方面の人材を用いることはよろしいと思うが、年がら年じゅう、政治の各方面にわたっておる代議士をむしろ用いて、それに付随する職務の人をつけて行くべきだ、私はこういうふうに思うのであります。役人の方がどんなに練能の達人でも、移動大使には適するものではない、私はこういう考えを持っておるのです。だからそれらのこともあわせて、実はああいう思想が出たらお尋ねしなければならないのだけれども、そういう質問をして事務当局をわずらわすことも大へんお気の毒だし、またこっちで聞く方としても、どうもそれじゃ満足できないということであると私は思いますから、これらの点は——なるべく広く人材を集めて移動大使のようなものを作って、そして各国の、どんな練達たんのうの大使でも公使でもできない、また違ったライトでその地方々々の外交を見るということは、今日のような複雑な世の中においては必要だと思う。これは事務的のことでない国策の問題だから、どうか一つお考えを願ってお取扱いを願いたいという私の趣意ですから、それだけ申し上げておきます。
  197. 松本七郎

    松本(七)委員 今の有馬委員質問に関連して、この機会にちょっと伺っておきたい。この前私どもはユーゴスラビアに行きましたが、これはユーゴスラビアばかりじゃなしにどこでもそうなんですが、外国から日本に副大統領とか政府の首脳あるいは政党の首脳部が一度でも来ると、非常な日本びいきになるんですね。これは非常にいいことだと思うのです。それだけにいろいろ輸出の面だとかあるいは移住の面だとか、そういう点で不信を買わないように、やはり万全の国策を立てなければならない。今有馬委員の言われたことで私は思いついたのですが、これはいずれゆっくり大臣にもお話しなければならぬ問題ですけれども、おととしユーゴに化繊のプラント輸出をいたしましたね。私どもは、あのことが日本とユーゴとの経済関係がこれから非常に発展する一つの契機になる、これはぜひ工場も見たいというので、二班に分けて、わざわざあの工場を見に行ったわけです。ところが、中に非常に欠陥のある機械があるのです。全部が動かないわけじゃないのですけれども、肝心なところが動かない。そこで、これは古物を集めてきていいかげんなあれをしたんじゃないか、けしからんというような声までだんだん起ってきて、そのためにクレームが起っておるわけです。ところが日本に来た副大統領は、非常な日本びいきで、そうじゃないのだ、日本の技術は非常に高いんだから、必ず日本は善処してくれるというようなことで、今かばってくれているわけです。ところがあれは、アメリカの系統の会社が引き受けて、大阪かどこかにある下請工場が設計を三菱造船に依頼して、三菱造船が設計して、三菱商事の手を経ずに輸出したものです。ですから、使い物にならない設計をするはずもないと思いますけれども、とにかく向うではそう言っている。ところが、日本の技師が向うに数名残っているものですから、その日本の技師が責められる。しかし日本の技師には責任がないのですから、その最終責任アメリカが負わなければならぬと思いますけれども、向うから言わせれば、日本で設計して持ってきた機械が使えないのだから、お前の方で何とかせいと持ってくる。それを、副大統領その他の日本に来た連中がしきりにかばってくれている。だからこれは何か、日本政府が中に入って円満に解決するような方法でも考えないと、泥をかぶるのは日本だけになるおそれがあるのではないかと思います。どの程度事情がおわかりか、それを一応お伺いしておいて、今後のわれわれの運動の参考にしたいと思います。
  198. 松本瀧藏

    松本政府委員 ただいま松本委員のあげられた点は、重大な点でございます。今後の日本輸出に当りましても、信用を失墜するようなことがあっては伸びないことは当然であります。ユーゴのプラント輸出の例の問題は、日本側から民間の者が行って、いろいろ調査をしております。私も十分そのケースを承知いたしております。
  199. 野田武夫

    野田委員長 次回は公報をもってお知らせいたすことにし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時二十七分散会