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1957-11-12 第27回国会 衆議院 運輸委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年十一月十二日(火曜日)     午前十一時四十五分開議  出席委員    委員長 淵上房太郎君    理事 畠山 鶴吉君 理事 濱野 清吾君    理事 山本 友一君 理事 井岡 大治君    理事 松尾トシ子君       有田 喜一君    小泉 純也君       塚原 俊郎君    原 健三郎君     早稻田柳右エ門君    下平 正一君       正木  清君    森本  靖君       山口丈太郎君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 中村三之丞君  委員外出席者         運輸事務官         (鉄道監督局国         有鉄道部長)  八木 利真君         日本国有鉄道副         総裁      小倉 俊夫君         日本国有鉄道常         務理事     吾孫子 豊君         専  門  員 志鎌 一之君     ————————————— 十一月十二日  委員河野密君辞任につき、その補欠として松岡  駒吉君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 十一月十一日  王子拡張改築に関する請願濱野清吾君紹  介)(第一〇九三号)  小本線延長に関する請願山本猛夫紹介)(  第一〇九四号)  板橋下屋敷間国鉄バス路線新設に関する請願  (山本猛夫紹介)(第一〇九五号)  伊勢市、長島町間に鉄道敷設請願濱地文平  君外三名紹介)(第一二八七号)  三陸沿岸縦貫鉄道未成線及び予定線敷設促進に  関する請願山本猛夫紹介)(第一二八八  号)  上越線高崎渋川駅間の複線化に関する請願(  茜ケ久保重光紹介)(第一〇八九号)  同(五十嵐吉藏紹介)(第一二八六号)  日田線輸送力増強に関する請願池田禎治君紹  介)(第一〇九〇号)  中学生鉄道運賃割引に関する請願加藤鐐五  郎君紹介)(第一〇九一号)  名古屋鉄道監理局管内の第一種踏切存置に関す  る請願(楯兼次郎紹介)(第一〇九二号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  閉会審査に関する件  委員派遣承認申請に関する件  陸運に関する件  請願審査小委員長より報告聴取 請 願  一 大糸線輸送力増強に関する請願唐澤俊樹    君紹介)(第四九号)  二 中央線輸送力緊急増強に関する請願(唐    澤俊樹紹介)(第五〇号)  三 常磐線電化促進に関する請願加藤高藏君    紹介)(第五一号)  四 山形県左沢、荒砥間鉄道敷設促進に関する    請願林讓治紹介)(第五二号)  五 野岩羽線開通促進に関する請願八田貞義    君紹介)(第五三号)  六 野沢、西方間鉄道敷設促進に関する請願(    八田貞義紹介)(第五四号)  七 大糸線輸送力増強に関する請願原茂君紹    介)(第二二八号)  八 中央線輸送力緊急増強に関する請願(原    茂君紹介)(第二二九号)  九 磐越東西両線の複線化等に関する請願(高    木松吉紹介)(第二三〇号) 一〇 智頭上郡間鉄道敷設促進に関する請願(    古井喜實紹介)(第二三一号) 一一 私鉄バス等通学定期券割引率適正化に    関する請願松平忠久紹介)(第四五一    号) 一二 大糸線輸送力増強に関する請願松平忠久    君紹介)(第四五二号) 一三 中央線輸送力緊急増強に関する請願(松    平忠久紹介)(第四五三号) 一四 三陸沿岸縦貫鉄道未成線敷設促進に関する    請願鈴木善幸紹介)(第四五四号) 一五 小本線延長に関する請願鈴木善幸君紹    介)(第四五五号) 一六 智頭上郡間鉄道敷設促進に関する請願(    堀川恭平紹介)(第四五六号) 一七 利府駅の貨物取扱復活に関する請願愛知    揆一君紹介)(第四五七号) 一八 中田駅の車扱い存続に関する請願愛知揆    一君紹介)(第四五八号) 一九 福島、仙台間複線化等に関する請願愛知    揆一君紹介)(第四五九号) 二〇 東北本線岩沼以南複線化等に関する請願    (愛知揆一君紹介)(第四六〇号) 二一 一戸、久慈間に鉄道敷設請願田子一民    君紹介)(第四六一号) 二二 一戸、荒屋間に鉄道敷設願請田子一民    君紹介)(第四六二号) 二三 一戸、小本間に鉄道敷設請願田子一民    君紹介)(第四六三号) 二四 遊佐、吹浦両駅間に駅設置請願松澤雄    藏君紹介)(第四六四号) 二五 高崎、横川間の電車化等に関する請願(福    井盛太君外七名紹介)(第五七〇号) 二六 智頭上郡間鉄道敷設促進に関する請願(    河本敏夫紹介)(第五七一号) 二七 鹿児島本線電化及び複線化促進等に関する    請願淵上房太郎紹介)(第五七二号) 二八 東京、盛岡間貨車代行輸送反対に関する請    願(森山欽司紹介)(第五七三号) 二九 私鉄運賃値上げ反対に関する請願牧野良    三君紹介)(第五七四号) 三〇 大糸線輸送力増強に関する請願下平正一    君紹介)(第七五〇号) 三一 中央線輸送力緊急増強に関する請願(下    平正一紹介)(第七五一号) 三二 日南鉄道の宮崎駅乗入れに関する請願(伊    東岩男紹介)(第七五二号) 三三 魚沼線延長に関する請願田中角榮君紹    介)(第七五三号) 三四 鹿児島本線及び日豊本線の輸送力強化に関    する請願池田清志紹介)(第八三九    号) 三五 上越線高崎渋川駅間の複線化に関する請    願(福田赳夫紹介)(第八四〇号) 三六 千歳空港整備に関する請願正木清君紹    介)(第八四一号) 三七 上越線高崎渋川駅間の複線化に関する請    願(茜ケ久保重光紹介)(第一〇八九    号) 三八 同(五十嵐吉藏紹介)(第一二八六号) 三九 日田線輸送力増強に関する請願池田禎治    君紹介)(第一〇九〇号) 四〇 中学生鉄道運賃割引に関する請願加藤    鐐五郎君紹介)(第一〇九一号) 四一 名古屋鉄道監理局管内の第一種踏切存置に    関する請願(楯兼次郎紹介)(第一〇九    二号) 四二 王子拡張改築に関する請願濱野清吾君    紹介)(第一〇九三号) 四三 小本線延長に関する請願山本猛夫君紹    介)(第一〇九四号) 四四 板橋下屋敷間国鉄バス路線    新設に関する請願山本猛夫紹介)(第    一〇九五号) 四五 伊勢市、長島町間に鉄道敷設請願濱地    文平君外三名紹介)(第一二八七号) 四六 三陸沿岸縦貫鉄道未成線及び予定線敷設促    進に関する請願山本猛夫紹介)(第一    二八八号)     —————————————
  2. 淵上房太郎

    淵上委員長 これより会議を開きます。  最初に、請願について審査いたします。請願審査小委員長より報告を求めます。山本君。
  3. 山本友一

    山本(友)委員 ただいま議題となりました請願案件につきまして、請願審査小委員会における審査経過並びに結果を御報告申し上げます。  本月十一日までに本委員会に付託になりました請願の総数は四十六件であります。これについて本十二日、紹介議員より説明を聴取いたしますとともに、運輸当局より意見を徴する等、慎重審査いたしたのでありますが、これを事項別に申し上げます。  まず鉄道新線建設関係は十六件でありまして、いずれも地方交通の利便、輸送経路の短縮、資源の開発、産業経済の振興をはかる等のため必要な路線建設、完成または延長されたいという趣旨でありまして、未成線または工事着工線についてのもの一件、調査線についてのもの二件、予定線についてのもの九件、予定線に該当しないもの四件であります。次に国鉄輸送力増強関係は十九件でありまして、中央線に関する同一趣旨のもの四件、大糸線に関する同一趣旨のもの四件、上越線に関する同一趣旨のもの三件が含まれております。これらは電化ディーゼル電気機関車の運転、複線化、列車の増発等により輸送力増強要望するものでありまして、特に複線化要望するものが多いことを申し添えておきます。また施設またはサービスの改善を要望するもの等が七件でありまして、駅の新設または改築、踏み切りの存置貨物取扱い復活中学生に対する運賃割引等であります。右のほか、国鉄バス路線新設要望するものが一件、私鉄関係のものが二件、すなわち私鉄バス等通学定期運賃割引率適正化私鉄運賃値上げ反対についてのものであります。次に航空関係は一件でありまして、千歳空港整備要望するものであります。  以上の請願趣旨はおおむね適切妥当な要望と認められますので、政府及び国鉄はその趣旨に沿うよう善処すべきものと考える次第であります。よって小委員会といたしましては、日程第一ないし第二十七、日程第二十九ないし第三十九、日程第四十一ないし第四十六の各請願は、いずれも採択の上内閣に送付すべきものと議決いたしました。以上御報告申し上げます。
  4. 淵上房太郎

    淵上委員長 ただいまの請願審査小委員長報告通り決するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 淵上房太郎

    淵上委員長 御異議がございませんので、請願審査小委員長報告通り決しました。  なおただいま議決いたしました請願報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 淵上房太郎

    淵上委員長 御異議なければさよう取り計らいます。  なお陳情書につきましては、本委員会に十三件参考送付されております一ので、右御報告申し上げます。     —————————————
  7. 淵上房太郎

    淵上委員長 この際、閉会審査についてお諮りいたします。本委員会の重要なる使命にかんがみ、閉会中も次の案件について審査いたしたいと存じます。すなわち、一、港湾運送事業法の一部を改正する   法律案山口丈太郎君外十四名提   出、第二十六回国会衆法第三八号)二、陸運、海運及び空運に関する件、三、観光に関する件、  以上の件について、閉会審査をいたしたい旨を議長に申し入れたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 淵上房太郎

    淵上委員長 御異議がなければ、さよう決定いたします。  なお閉会中も引き続き審査いたすことになりました場合におきまして、委員派遣を行う必要がありましたときは、その承認申請の手続及び派遣地派遣人員及びその数等を委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 淵上房太郎

    淵上委員長 御異議がなければ、さよう決定いたします。  なお、応急の間に参考人を招致しなければならない場合にも、委員長に御一任いただきたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 淵上房太郎

    淵上委員長 それではさよう取り計らいます。     —————————————
  11. 淵上房太郎

    淵上委員長 陸運に関して調査を進めます。質疑の通告がありますからこれを許します。下平正一君。
  12. 下平正一

    下平委員 国鉄労使間春闘以来、いろいろの問題点がありましたが、藤林会長あっせん案で一応正常化の形になっておることは、大へんどもとしてはけっこうなことだと思います。年末も控えておりましていろいろの案件もありますので、相なるべくはこういった正常化の形が永続することがきわめて好ましいと思います。そういう立場からあっせん案経過その他について若干の質問をしたいと思うのですが、昨日同僚議員山口議員からの質問で、あっせん経過の大要は承わりましたが、もう少し細部にわたってお聞きをしたいと思うのです。  あっせん案が受諾されまして、当局側は若干の条件付組合無条件受諾という形になりまして、いわゆる代理者によって交渉が開始されているわけでありますが、その交渉経過、何回くらい開かれておるのか。そうしてそこではどこが対立点になっておるかというような交渉経過について、若干御説明をいただきたいと思います。
  13. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 あっせん受諾後、国鉄労組との間では、臨時代表鎌倉氏がきまりましたので、鎌倉氏を中心交渉委員の諸君と数回にわたって交渉を行なっております。交渉の当面の問題としては、あっせん案の中にも書かれておりました昇給の問題並びに協約協定の九月末で一応失効いたしましたものの再締結に関する問題、そのほか暮れも近づいておりますので、本年の期末手当に関する問題等について、そのほか若干こまかいものもございますが、今まで懸案になっておったまま団交ができずにそのままになっておったような事柄について、それらを議題話し合いを進めておるわけでございますが、実はどれも相当いろいろないきさつがあって、なかなか解決困難であったような問題が多うございますので、ただいまのところではそのいずれもまだ結論に達したというところまでは参っておりません。しかし話し合いを重ねますたびごとにだんだん問題点も集約されておりますので、近いうちにはそれぞれ妥結点を見出し得るものと考えて、なおほとんど連日に近いのでございますが、交渉を重ねておる、そういった状態でございます。
  14. 下平正一

    下平委員 期末手当の問題、協定締結の問題、これは問題ないと思います。期末手当の問題は昨日同僚山口委員質問で、大体めどがついたようなお話もありました。今問題になっている昇給問題でありますが、あっせん案中心昇給の問題でありましたし、争われてきた重点も昇給の問題でありましたが、これはたしか七月期の昇給だと思いますが、その七月期の昇給の取り扱われた経過をどういうふうに取り扱われて実施されているか、昇給実施経過を若干お聞きしたいと思います。
  15. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 七月期の昇給の問題につきましては、実は当時はまだ双方あっせん案をのんだという形になっておりませんでしたので、国労に対しても機労に対しても、いずれも団体交渉をするというわけに参らなかったのでございます。しかし昇給の問題は、職員一般にも重大な関心の対象になっておるごとでもございますので、事実上その内容についてはある程度の話はしておりまして、最後実施案を決定するまでの間において組合側がいろいろ要望しておった点についても、相当な考慮を払うことにいたしたつもりでおります。しかし形としては、国労機労を除いた、いわゆる第二組合と呼ばれておりますが、新しい四つの組合とはそれぞれ労働協約締結いたしました。その協約に基いて昇給実施する、こういうことになったわけでございますが、国労及び機労所属職員に対しては、形の上では、団体交渉の結果話がまとまったというのではございませんので、一方的実施という形をとらざるを得ないことになりました。ただ御承知通り今回の昇給は、前年度調停の結果行われましたような、いわゆる一〇〇%昇給ということではなしに、それぞれ各所属長所属職員勤務成績の良否を判定して、昇給資格者を決定するということにいたしましために、取扱いとして国労機労職員だけを除いて実施するということはできませんでしたので、国労機労、新組合すべてを通じて、それぞれの所属職員勤務成績個所長が判定いたしました上で、おおむね各所属単位に見た場合には九〇%以上が確保されるような資金を配賦しておりましたので、その線で過般全職員に対する七月期の昇給を終った、こういう運びになっております。
  16. 下平正一

    下平委員 昇給実施の時期については第二組合国労機労、これはおのおの同時の昇給実施いたしましたか。あるいはまた第二組合協定ができたから第二組合だけ先にやって、国労機労はあとにしたという時期的なずれがあったかどうか。これをちょっとお伺いしたい。
  17. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 ただいまも申しましたように、昇給はそれぞれ所属の全職員対象実施いたしました。組合所属による差別をするというようなことはいたしませんで、全部一緒に発令をいたしております。
  18. 下平正一

    下平委員 これは副総裁にお伺いをしたいと思うのですが、せっかく代理者ができて交渉が軌道に乗った。当局回答文の表現によりますると、組合違法性が解体をして、正当な——臨時大会までには若干いろいろ問題がありますけれども、いずれにいたしましても、解雇者を除いて代理者ができて、違法性解除された、こういうことで一応交渉が筋に乗っております。違法性がどうのこうのということは別といたしまして、この状態をなるべくは続けていきたい。そして最終的にはやはり公労法上に基いた正規な団体交渉等ができるように、早く持っていきたいというのが私たちの念願でありますが、そのためには二つ、三つ問題があると思うのです。その一つ当局が言うところのいわゆる違法性解除、こういうことが大きな問題になりますけれども、それだけでは問題は解決しないような気がするのです。どうしても労使間には法律というものよりももっとお互い信頼性といいますか、相互信頼し合うという形というものが必要だと思うのです。たとえば今まで組合との間に争われてきた今までの形が違法であるかどうかということも、一応国労は下げても、機関車労働組合の第一審の判決が当局側勝利に出た。その勝利の出たごとでおれは勝ったのだ、いわゆる勝利感というようなものが多少なりとも当局側にあって、それがいろいろなことに出てくるとすれば、これは大へんなことだと思うのです。そこで当局違法性解除を言うならば、もう一つ組合側言い分も聞いてみると、従来かっていわゆる公労法が守られていないということが重大な論点になっている。仲裁裁定にしてもなかなか満足な完全な実施がなされていなかったという信頼性が欠けていると思うのです。そこでこのあっせん案を見ると二つの要素からなっていると思うのです。その一つ当局言い分であるところの違法性解除するために組合に相当な譲歩を求めていると思うのです。いわゆる代理者を求めるというようなこと、当然組合内部で規制すべき、第三者が口ばしを入れるべき問題ではないところの実質的な三役の選出問題にまで規制をして、違法性解除について組合に対して相当強い制肘を加えていると思うのです。その反面において当面の争いの焦点になったところの昇給資金の問題については、この際当局も二%くらいの増資を特に配慮しろ、こういうことで、これは当局にとってもすでに実施をした後における昇給資金の追加なり、実際の昇給をさせるというようなことについては問題があると思うのですが、当局側にもこの問題をぜひやってくれ、この二つになっていると思うのです。そこで組合側は一応無条件にこれをのんで、違法性解除ということで代理者を出した。一月には臨時大会を開いて三役を変更する、ないしは定期大会で三役をかえる、こういう立場をとってきているのです。そこで信頼性をかち取るといいますか、その間に相互信頼するという立場をとるには、ここはあまりにこまかいことを言わなくて、あっせん案に盛られたように昇給資金について特段の考慮をするという立場を、当局がお示しをいただくことが、将来にわたって非常に重大なことじゃないか、いいことではないかと思うのです。ここで当局は暫定的な問題だ。最後に彼らが三役をかえなければいかぬから、その三役がかわったことを見届けるまでは一切の協約協定は暫定的だという御注文をつけているのです。それはいいですが、もしかりにそれが実施をされる段階に、おれたちの方はこれだけ三役をかえるようなことまでやったが、あっん案がそのままそこでは実施されていないのではないかというようなことが起れば、年末から来年の一月早々にかけて、またこの安定した労使関係というものはぶり返してくると思うのです。これは大へんなことだと思うのです。そこでこのあっせん案昇給資金のことについていろいろなことがあると思うのです。当局の副総裁あっせん案を受諾するという、その精神をお伺いしておきたいと思うのです。
  19. 小倉俊夫

    小倉説明員 労働問題につきましては、お互い信頼感がなければいかぬという仰せ、まことにごもっともと存じます。しかしながら他方におきましては法律も守り、その他のルールを守るということも必要でございまして、お互いに守るべきことを守った上で、相互信頼をし合うという両建で参るべきものだ、そういうふうに考えておりまして、ただいまお話のようにそう勝った、負けたというような意識は持ちたくない、こう考えております。それで訴訟の問題にいたしましても、私の方は訴えを取り下げることにいたしました上、機労の方に対しましても、訴訟は取り下げた方がいいじゃないかということを再三申しまして、さらに藤林あっせん案に対する回答の中でも、機労さんの方には訴訟を取り下げるようにごあっせん願いたいというふうな趣旨まで書いたのでございます。これは御承知通りだと思います。勝った負けたというような考えは毛頭持っておりません。ただ今後とも労使関係正常化を保たれつつ、双方信頼感の上に立って、万事正常な労働関係が確保されるということを念願いたしておるのでございます。それでただいまのお話の点につきましては、このあっせん案んの各項目につきましては、私どももできるだけの考慮を払って御回答申し上げたのでございまして、その回答の中には、第二項につきまして、昇給については実質的にあっせん趣旨に十分沿っていると思いますが、なお今後交渉議題として解決したいと考えますと申し上げたのでありまして、これにのっとりまして、先ほど吾孫子常務から申し上げましたように直ちに団交を開いて、ほとんど連日のように交渉を重ねておる次第であります。
  20. 下平正一

    下平委員 この経過を見てみますと、最初この争いで、団交をやれという裁判所の勧告が出た。それを当局側としては、これはできませんと言ってはねてしまった。そうしてあっせん案結論がまだ出ない、あっせん進行中に、当局は一方的に昇給実施した、こういうことも事実だと思うのです。もし事実が違っておりましたら御訂正をしていただきたいと思いますが、私の承知している限りでは、あっせん案がまだ確定をしない、あっせん進行中に、当局はそのあっせん重要課題であるところの昇給を一方的に実施してしまった、こういう形がこの問題の経過だと思うのです。そこで従来は協約によって一〇〇%昇給ということをこの前には実施していた。そこで組合側言い分としては一〇〇%昇給ということだと思うのです。こういう条件を勘案してみると、このあっせん案が出されたときに、もうすでにあっせん案趣旨をこれに盛り込んであるのだという形は、ちょっと常識的に考えられないと思うのです。あっせん案進行最中に、あっせん案結論が出ていない、その最中に当局は一方的に実施してしまった。その後にできたあっせん案について、あっせん案趣旨は盛り込んである、こういう理屈は常識上判断ができないのですが、そういう点についての御判断は、あるいは私の経過の認識が間違っておるか、ちょっと御説明願いたいと思うのです。
  21. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 今度の昇給実施につきましては、先ほども申し上げましたのですが、新組合との関係においては、これは団交もできますし、協約締結も可能でありますから、協約を締決して、その履行として昇給もやったわけでございますけれども国労並びに機労関係団体交渉ができない状態になっておりますために、いずれにいたしましても、時期の問題を抜きにいたしましても、形としては一方的実施ということにならざるを得ないような羽目に置かれておったわけでございます。それで新組合との関係では、すでに協約締結いたしましたし、一日も早くやってくれという強い要望はもちろんございましたし、それにまた現場の実情がこの七月の昇給が延び延びになっておって、なかなかできないということのために、一般職員の間からも早く昇給をやってもらいたいという強い要望もございましたし、それらのいろいろの事情を考えまして、あっせん案の答えが出ない間に昇給実施したことは事実でございます。ただこの間におきまして、最初あっせん者であられる藤林会長との間でいろいろお話がありました際に、昇給実施については、一方では下部の方でただいま申し上げたような事情もあるので、そう延ばすわけには参りかねます、従いまして、国鉄当局としては、あっせんの終結を待たずに、一方的な昇給実施をやらざるを得ないような状況に置かれておりますことについては、藤林会長にも十分御了解を得たつもりでおるのでございます。  それからまたただいま御指摘のございました回答書の方で、あっせん趣旨に十分沿うておるものと考えるというような言い方は、おかしくはないかということでございますが、実は今度の七月期の昇給は、先ほども申し上げましたように、各所属単位に見ました場合に、九〇%の昇給資金を確保しょうという線でスタートしておったわけでございますが、あっせんの過程において、組合側正常化をすみやかにやることを求めるのだから、昇給の原資については当局の方も考えてほしいというお言葉がございまして、そのあっせん者であられる会長のおっしゃった点は、私どもとしても十分考えまして、俸給の切りかえに伴う特号俸の調整というようなこともございましたし、またこれはいつの昇給のときにも、若干は調整資金というようなものをごくわずか持っておったわけでございますが、そういうようなものも、できるだけ予算の許す限りふやすという処置を講じまして、実際には九二%を若干上回る程度の昇給原資を最後には出した形になっておるのでございます。そういうような事情にございますので、公労委の会長のおっしゃっておられた二%増せというお気持も、実際の昇給の実行上十分取り入れてやったつもりでおりますので、これ以上さらに増すことは、とうてい無理であるというふうな事情にもありますので、回答書にはあっせん案の御趣旨は十分取り入れたつもりでありますということを書いたような次第でございます。
  22. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 今の御答弁に関連して御質問申し上げますが、あっせん進行中のいわゆる新組合との協定によって昇給をした、こういう御答弁であったと思いますが、新組合は一体どのくらいの人員がこれに参加をして、正当な組合と認めたか、この点について一つ御答弁願いたい。
  23. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 正確な員数は、まだ私はっきり覚えておりませんが、全部込めまして、まだ五千名足らずじゃないかと思います。
  24. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 国鉄のいわゆる組合員と称せられる人員は幾らに見ておられますか。機関車労組、国労全員を含めて何名になるか。
  25. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 全員は大体全職員の数におおむね一致することになるわけでありますが、国労が三十七万くらい、それから機労が五万五千くらい、それに新組合の五千弱、それくらいのように承知いたしております。
  26. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 私はそこで一般拘束力の解決についてお尋ねいたしますが、私ども終戦後今日の労働組合法あるいは公共企業体等労働関係法、その他労働関係の諸法律に関します限り、私議席は持っておりませんでしたけれども、地方におきましては、この法の制定当時から私はその内容に詳しく立ち入って、地方審議に参加をして参りました。でありますから、事労働法に関しましては、少くともいろいろな過程をよく承知をいたしております。そこで私はお尋ねをいたすのですけれども、労働組合法等で一番問題になりましたのは、一般拘束力の問題であります。これは分けまして、地域的な拘束力もしくは一企業内における拘束力、これが大きな問題であります。労働基準法等によりますと、たとえば就業規則等の協定をなす場合、少くともその三分の二以上の賛成を得た従業員の代表によって締結せられるものが有効である、こういう拘束力を付していることは御承知通りだと思います。そういたしますと、この賃金協定どもそれに基いて、やはり拘束力を有する一種の協定と見なければならぬ労働協約であります。労働協約というのはあらゆるものが含まれておる。ただ労働協約として協定されなくても、少くとも賃金協定も重大な労働協定一つであります。そういたしますと、三十七万の組合員が承知をしないのに、わずか一千名の者と協定を結んで、それを一般に及ぼそうとすることは、明らかにこれは組合法の違反であります。法の違反であります。国鉄当局は一体労働組合法なるものを、どういうふうに解釈しておられますか、その点について解明願いたいと思います。
  27. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 労働組合法や公労法の有権的な解釈ということになりますと、やはり政府御当局、労働省あたりにお尋ねをしていただきませんと、私どもからはあまりはっきりしたことも申し上げにくい点もございますが、ただ国鉄におきましては、過去のいきさつは先生もいろいろ御存じだと思いますが、前に交渉単位という制度が設けられておりましたころは、公労法独自の行き方で組合が幾つかに分れておりましても、単一の単位と協約締結するというやり方をやっておりました。その後交渉単位という制度が廃止になりまして、大体組合別に協約協定も結ぶ、こういうことに慣行としていたしてきております。これは組合法の一般拘束力の制度との理論的な問題になりますと、あるいは問題があるかもしれないと思うのでございますが、従来とも組合単位に協約協定締結しておりまして、御指摘のありましたような新賃金の問題等につきましても、実はベース改訂や何かのときにはそれぞれの組合別に違った協約を結びまして、ことしの夏のベース改訂の際にも、実は機関車労組の方が先に話がまとまりまして機関車労組とはベース改訂を行いましたけれども国鉄労組の方は話がまとまらずに延びておったというような事実もございました。今度の昇給の問題につきましては、いわゆる新組合組合の人数は少うございますが、一応公労法上の成規の組合になっておりまして、成規の団体交渉ができますので、これとは協約締結いたしました。そういう事情でございます。
  28. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 これは容易ならぬことをあなたは言いますね。単一の単位といたしましても、それは少くとも三十七万円のうちには事務職員系統あり、現場の運転士系統あり、ともかく単位をあげましても車掌単位あり、あるいは踏み切り単位あり、荷役単位あり、改札の単位あり、あらゆる単位がありますけれども、そういうように職種別単位に細分化するといたしましても、わすか五千名などというものが交渉の一単位ということにはならぬと思います。しかもその少数のものとの間の協定をもって正当なりとして、それを三十七万あるいは五万五千の全体の単位のものに及ぼして、それを一方的に解釈して法を守っているのだとうそぶくに至っては、あきれざるを得ない。しかもあなたの答弁では、法の解釈は労働省の方でやってくれ、私の方では知らない、これは不謹慎きわまる話ではありませんか。そんなことが私どもの答弁に通用しますか。国鉄では大上段に振りかぶっているものは法を守るということである。それが今度の紛争の原因が何にあったかといえば、労働組合は法を守って正常化してくれ、こういうふうに大みえを切っているのに、その当事者が法の解釈は他人まかせだ、おれは何でもいい、架空のものであろうと何であろうとかまわない、おれは何千名のものでも、どういう事情であろうと締結するのだ、それが合法だ。そんな不謹慎きわまることをやって、そうして労働組合正常化なんてできますか。まるっきりフアッショのやり方じゃないですか。人に法を守らせようと思えば、まず自分から法の解釈をちゃんと立てて、ここでもそんなあいまいな答弁じゃなく、しっかりした答弁ができて、そうして事実がそれに伴うようにされれば受け取れますけれども、今のような答弁では私は受け取れません。侮辱されておると思いますが、いかがですか。
  29. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 私の御説明の申し上げ方が悪かったと思いますが、その点はおわび申し上げます。公労法の運用につきましては、労働大臣が主務大臣だということが公労法の条文の中にも書いてございますので、私どもがその解釈についてとやかく申し上げては僭越であると思いまして、ああいうふうに申し上げたのであります。その点は御了承を願いたいと思います。  それからもう一つ、新組合関係は、やはり正式に手続を経まして、公労法上の労働組合であるという認証を得た組合でありますので、たとい人数は少うございましても、その組合から団体交渉の申し入れがございました際には、それを拒否いたしますことは、当局側の不当労働行為ということになりますので、これは交渉に応ずる義務がある。従って交渉の結果協約を結べばそれを履行しなければならない、さように考えておるわけであります。
  30. 井岡大治

    ○井岡委員 今吾孫子さんの答弁の中に、重大な矛盾があるわけなんです。それは先ほどの下平君の質問にお答えになって、新組合、いわゆる第二組合の方から早くやってもらいたいという要望等もあって、いわゆるあっせん以前にこれを実施した、こうお答えになっておったのですが、その通りですね。
  31. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 新組合の方からは、協約締結をしたのだから早く履行してほしいという要求がございましたことは事実でございます。それとあわせてまた一般職員の方から、昇給を早く実施してほしいという意味のいろいろな要求が直接間接にありましたので、それらの点をあわせ考えまして、一方的に実施したということであります。
  32. 井岡大治

    ○井岡委員 そこで、その次に申された言葉の中に、交渉単位の問題をお話しになっておいでになりました。交渉単位は今山口君が非常に立腹をされておりますが、私はそうだろうと思います。これはやむを得ない立腹だと思います。と申しますのは、続いてお答えになったのは、この前、春のベース・アップのときに機労の方はこれを受諾してくれたので、機労の方は先にやりました、そうして国労の方は受諾ができなかったので、あとでやったという御答弁がありました。従って単位が一本であってほしいことは事実でありますが、今の協定なりあるいは協約の中で、交渉単位が幾らあってもいいときめられておるのであれば、私は百歩あなたに譲ります。譲りますが、きまったところ、あるいは協定がなされたところから都合のいいときにはそれだけをやる、都合の悪いときにはこれを全体に及ぼしていくというこのあなたの思想については、私は了解ができないのです。第二組合協定をしたのであれば、なぜ第二組合にだけこの協定実施をやらなかったかということ、この点はあなたの答弁の中における大きな矛盾であります。  それからもう一つ私はあなたにお尋ねをしたい。藤林会長あっせんに入らなければならないと決意をされた第一の原因は何かというと、それは第一は交渉正常化をはかるということです。第二には、当面の昇給問題をその正常化の中において解決せしめるということであります。従って藤林会長が談としてここに発表されておりますのは、「裁判官ないし純粋法律論的立場というよりも過去における実績、現在の状勢、将来の展望等を考慮し、現実的な立場において最善と認めたものである。」こうおっしゃっている。こういう立場に立って藤林会長あっせんに乗り出されたことはもう言を待たない。はっきり発表された。そこであっせん案の第二の項に、「臨時組合代表者選定後直ちに昇給問題を議題として交渉し、双方平和的処理を期すること。」これは明らかなんです。従って藤林会長とすれば、いわゆるあっせん案が出た後において、これをやってもらいたいということがはっきりしておいでになるのを、あなた方は御承知でありながら、一方において直接間接第二組合以外の者から昇給してくれという要望があるから、これをおしなべてやったのだと言っておいでになります。直接間接というその直接とはだれかということと、それから間接というものはどういうものかというこの点を明確にしないと、あなたは大へん大きな誤謬を犯しになっている。今後に再び問題を起す誤謬を犯しになっている。この点を明らかにしていただきたい。
  33. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 ただいまのお尋ねのうちの最初の、第二組合関係だけを先にやったならともかくも、一緒にしたのはおかしいじゃないか、こういうお尋ねだと思いますが、この点は第二組合の方は、ただいま申し上げましたように協約履行としてこれはやる義務があったからやったわけであります。国労並びに機労関係は、遺憾ながら団体交渉を行い得る状況になっておりませんでしたので、団交で妥結しようと思っても妥結のしょうがない、そういう事情にありましたために、形としては一方的ということにならざるを得なかったのでございますが、その点はとにかく当時組合側に対しても、今協約で妥結してやるというわけにいかないから、暫定的に一方的実施を認めてほしいということを繰り返し話をしておったわけでありまして、それは組合の方でもそういう事情であったことは承知しておられると思うのであります。それで問題が残っておることは確かでございまして、その残っておる問題につきましては、ここであっせん案に乗りまして交渉の道が開けたわけでございますから、今後さらに交渉を進めて参りたい、かように考えておるわけでございます。
  34. 井岡大治

    ○井岡委員 今度の問題については、交渉単位が幾つにも分れておる、分れてもかまわなくなっておるという点については、私は百歩譲りました。あなたのお説の通りでけっこうです、こう言っている。ですから組合協定の行われたところのみにおいて行われるということは、これはやむを得ない、当然だからやったのだ、私はその通り、けっこうですと言っている。ところが、春の問題をあなたはもう一度お考えになっていただきたい。先ほど春の問題については、ベース・アップは当時機労が受諾をしたが、国労は受諾をしなかった。そこで遺憾ながら機労のみに先に適用した、こうおっしゃっておられる。そうすると今度の場合との関連、考え方というものには非常に大きな食い違いがあるわけです。そうでしょう。この前は受諾をしたものだけしかやっていない。そうして直接間接というあなたの言葉の中には、職場の中で現場長なりといろいろと話をしておる、こういうことを取り上げてお言いになっておられるのだと私は思う。私はそれを質問したけれども、あなたはお答えになりませんでした。私は私自身もこういうものを担当してきましたから、大体の事情はわかりますので深く追及しようとは思いません。思ひませんがそうだったと思う。春のときには機労だけしかやっておらない。そして国労はあとに延ばした。今度の場合においてだけ、なぜ第二組合だけをやっておいて、あとはお残しにならなかったか。しかも藤林さんは、先ほど申し上げたように問題が起っておるのはこういう問題から起っておるのだから、わしは渾身の勇をふるってこの問題を解決する、こういう御決意でこのあっせんに乗り出されたのだろうと思う、このことをはっきりここにうたっておいでになるのだから。そうしてそのあっせん案には明らかに第一、第二と分けて、臨時代表者の選定後あらためてこの問題をおやりなさい、こう言っておられる。だからわずか三日や十日待つことは、必ずしもいわゆる直接間接あなた方に響いてきたその声にこたえられない時日ではないので、待っていただいたって十分こたえられると思う。しかも国労の諸君、機労の諸君は——機労は今度は違った形になっておりますが、国労の諸君は、あっせん案が出ると同時に受諾しよう、この間何日なんです、あっせん案を示されたのは、あなた方が発表されてからわずか十日足らずの間だ。今まで七カ月も待ったのを、わずか一週間か十日足らず待ってみれば——組合員の直接間接の声に対しては、今藤林会長が一生懸命あっせんをなさっておいでになるのだから、これを待って、どうしても解決しないというのであればわれわれは一方的にやる。これで十分事足りるわけです。こたえていることになる。それをあなたはあえて過去における慣例を破り、新しくこういう処置をとったということは、われわれ第三者から考えたら、何で当局はこんなことをして組合とけんかをしなければならぬか、こういうことになります。せっかく仲裁者が入って努力をされておる、その人に対する道義的なものからしても待ってしかるべきだ、私はこう思う。しかもあなたは過去においてはこうだといって、一方においてこうだという断定をされておる。この矛盾をあなたはどういうふうに解釈するか。同時に今後こういう問題が残っておる——残っておるについては、私は関連質問ですからこれでやめますが、残っておるからやるのだ、こういうふうに言っておいでになるが、先ほどの御答弁では、あっせん趣旨をも含めて私たちはもうやってしまったのだ、ですからこれ以上やることは非常に困難だ、こう言っておる。それなら何が残っておるのです。この点について明確に御答弁をいただきたい。
  35. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 先ほど御質問のありました直接間接ということでございますが、直接と申しますのは総裁なり私どもに対して職員あるいは家族から手紙が来ましたり、あるいはまた口頭で話があったのが直接ということでございます。それから間接というのは、いろいろ会議の席や何かでこういう声があるということを直属長を通して聞いている、そういう意味でございます。直接間接というのはそういうことでございます。  それから前のベース改訂のときは、これはベース改訂に使うべき資金のワクがきまりますと、ベース改訂というのはほんとうに文字通り一〇〇%全組合員に対して行われるわけでございますから、別に分けましても当然可能でもありますし、そういうことができたのでございます。今度の昇給につきましては、これこそ一〇〇%であれば分けることも分けやすかったかとも思いますけれども、大体九〇%という線で、それは各所属単位にやらなければならないような資金関係にもなっておりますしいたしましたので、組合別に分けるということが非常に困難でございまして、やはり各所属単位の全職員について、個所長勤務成績を勘案して順位をつける、その上で実施するということにせざるを得ませんでしたので、昇給につきましては、ちょっとベースの改訂とは事情の違いもあった、こういう事情でございます。
  36. 濱野清吾

    濱野委員 ちょっと吾孫子さんにお聞きしたいのですが、私ども国鉄労使の紛争については重大関心を持つと同時に、この判断については、労働省の一部の諸君の考えているような、一律の法律論ばかり展開しようという考えは一つもない。全く平明な気持で、実は心配してそれを見守っておるわけであります。藤林あっせん案が出て、双方が相当歩み寄って、だんだん団交を続けつつ正常なところに来るであろうということを期待もしているし、私どもは内心そのことによって安心しています。ただこの場合気になりますのは、同僚の山口君の質問中に、私どもも実はそういうことができるのかなと考えておったわけです。むろんこれは私どもの無知からくるものであろうと思うけれども、その点をもう少し親切に解明していただきたい。そこでわが国の労働組合法は、私どもが追放される以前に、私どもが参画して作った法律なんです。追放される直前です。そこでこの労働協約、賃金もそうでありますけれども労働協約を結ぶ場合、四分の三以上の人々が一つの決定をして、労働協約を結んだ場合、四分の一の人々がかりに反対があっても、その決定に服さなければならないということを十七条に規定したわけであります。ところがこの法の十七条ではこういうことがうたってあります。「一の工場事業場に常時使用される同種の労働者の四分の三」こういうことを規定しているわけであります。そこで私どもは、この労働組合法以外に別な特別法があって、たとえば公労法というものがあって、その法律でこの四分の三というようなものを排除していく、あるいは公労法その他の法律にあるかもしれません。そのことによって排除しているというならば議論はないが、そういう排除している特別法が他になければ、この十七条というようなものの同一工場、同一職種、こういうものを一体国鉄はどういうふうに考えているのだろうか。あなたは先ほど労働慣行というようなことをおっしゃったが、都合によれば、国鉄本社側、経営者側の都合のいい場合には、この十七条の解釈を別にする、都合の悪いときにはこれを一つにしていくというようなことが、私は今までの国鉄労使の間にあったかどうか。それが一つと、また経営者側から見て、この規定を運用した方が便利だというような意見がまれにもあったとするならば、これは法律に違反がないとしても、山口君なんかが憤激するのは、私は無理がないと思う。ですからそういう事例を、ここは国会ですから、冷静に一つ説明して下さることが私は必要だと思う。どうしても必要なことです。われわれの本委員会における同僚も組合員ではない。立法府の議論をしている。ですから団交をやるときに、私もストライキをやって団交をやった経験がありますけれども、興奮するようなことはなかろうと思う。この解説が懇切丁寧にわかりやすいように説明してないところに、こうした間違った感情というものが出てくるのじゃないか。これはわれわれが迷惑で、われわれは国鉄の事業にこの委員会として直接タッチしているのでありますから、決して興奮はしたくないし、といって一部の人々の意見のような、労働省のある人の意見のような、そういう法律万能の態度もとりたくない。しかし従来の法律でこう規定してあるのだ、この解釈はこうなっているのだ、この解釈を適用して慣行というものが行われた、その慣行というものの立場から、五千人に足らざる新組合との団交というものも決して違法性のあるものではない、また機労というものがわずか五万であっても六万であっても、四十数万の中の四分の三以下ではあるけれども、決して違法性があるものではないということをはっきり御説明にならぬと、われわれのような平明な気持でこれに対処しようとする者であっても、山口委員の言われるような点について、やはり疑いを持たざるを得ないのでありますから、ここで労組の団交のように、議員と国鉄の幹部とが押し合いしても話はつまらぬことだと思う。お互いに平明な気持でやるのですから、それを一つ説明願いたい。十七条をどういうふうに考えているのだ、またあなた方が都合によって機労団交の相手とし、新組合団交の相手として、そしてこの労働協約、賃金の協約を結んだ、協定を結んだ、こういうようなことはほんとうに違法じゃないのだという説明をしてもらわなければ、保守党のわれわれとしても納得はできなくなるのです。それを一つ簡潔に丁寧に説明していただきたい。こうなってくると、われわれもだまってはいられなくなる。
  37. 小倉俊夫

    小倉説明員 この問題につきましては、将来の方針の問題にもなるかと思いますので、私からお答えさせていただきます。     〔委員長退席、山本(友)委員長代    理着席〕  私ども国鉄で労組といろいろ折衝をいたして参ったときに、いつもはなはだ苦心をいたしますことは、従来機労国労とがございまして、両方とも相互団体交渉を続けてきたわけでございまして、やはり機労さんも国労さんも双方同時に妥結しないといけないような情勢でございました。常に交渉の妥結は、徹夜をいたして交渉をいたしますので、私ども一時間あるいは二時間置きに、あちらへ参りましたり、こちらへ参りましたり、双方交渉をいたして参りまして、同時に同じ条件で妥結ということを考えておりました。そのためには、ちょうどお仲人がお婿さんとお嫁さん両方を口説いて回るように、双方へ鉄のわらじでお話して参ったのでございますが、今後また御承知通りに第二組合と申しますか、新しい組合が出て参りますると、さらに今後の運用が非常にむずかしくなってくる、実はこれをいかようにいたそうかということで非常に苦慮いたしております。しかしながらその間におきまして共通の事項、たとえばベース・アップであるとか、手当の問題であるとか、そういう問題につきましては、結局全職員が平等でなければなりませんので、一つの方を先に妥結し、妥結した方はこの条件でいい、妥結しないのはさらに交渉してそれより増すというようなことはできません。私どもはすべての職員に均等にということでございますから、その組合によって差異をつけるということもできませんし、それからまたただいま濱野先生からの御指摘のような、ある組合と代表的に妥結すれば他の職員にも及ぼすというような法律上の規定もございまするが、これを適用すればいかにもかどが立ちますので、将来の方針としてもそういうことはいたしたくないと考えております。すべての組合に対して平等に、できるだけ同時に妥結して参りたい。従いまして今後の問題として、少数の第二組合と妥結したから、これを無条件に他に及ぼすというようなことは一切いたして参らないつもりでございます。ただ今回の問題についてはそういう観点からでなく——この昇給の問題は前々から話がございましたので、その準備を四月以降ずっと進めて参りまして第二組合と妥結し、あっせん案は御承知通り先月の三十一日に承詰されましたので、それまでに妥結したことを実行に移しました。その以前には機労とも国労とも交渉のいたしようがなかったのであります。しかし先ほど吾孫子理事からも申しましたように、給与の点は平等でございますから、第二組合の者だけ上げて他は知らぬというわけにも参りません。そこで平等の取扱いをいたしたわけで、決して第二組合をもって全部の組合を推したということではございません。繰り返して申しますように、当時は機労とも国労とも団体交渉をする道が開かれてございませんでしたので、そういうことをいたしたわけでありまして、今後はわれわれも十分慎重を期し、法律上はどうあろうとも、一、二の組合の妥結をもって他を推すというようなことは、できるだけ差し控えて参りたいと考えております。
  38. 下平正一

    下平委員 関連の発言で法律論がいろいろありますが、これはまた一つあとの関連でやっていただくことにしたいと思います。私は法律論も大へん大切だと思いますが、現実にまた年末闘争というものを控えて、ここでせっかく正常化した労使関係がくずれてくれば、単に国鉄当局対労働者という問題ではなくして、また汽車がとまるということになれば国民が迷惑する。そういう問題をなるべく起させたくない。こういう建前から実は私質問しているわけなんです。どだい、先ほど井岡君も言いましたけれども、このあっせん案そのものは法律論ではない——確かにそうではないのです。現実に紛争が起き、汽車がとまるというような国民的な迷惑を避けるために、労使の常識に訴えているのです。あるいはまた現実的な問題解決についてただ方針を出しただけだ、こう言っているのです。だから私は、このあっせん案の解決というものは、やはり常識論そのままを受けて、純粋な意味の法律論とか裁判とかいうことを離れて解釈していただくことが、基本的にこのあっせん案を受諾する立場でなければならぬと思うのです。そういう意味から、お互いにいろいろな理屈はあるだろうけれども、それは両方ともがまんしてもらって、現実の紛争だけおさめていただごう、そういう解釈をしているわけなんです。そういう立場から質問しているわけなのでありますが、もう一つは、これは自主解決してもらいたいと思うのです。私はあっせん案の形が一たん出れば、やはり国鉄当局と労働組合の代表者と、この当事者間で自主的な解決をしてもらうことが一番好ましいと思うのです。そういう観点から私は今まで質問を進めてきたのですが、ちょっと横道へ入りましたので、多少ダブる点があるかもしれませんが、一番の問題点は二%の昇給あっせん案にいうところの当局は特別の考慮をしなさい、今のところはこれだと思うのです。二%できないという理由を聞いてみると、もうすでに実施した中にあっせん案趣旨は盛り込まれているというのが当局側言い分だので、その点について多少常識にはずれていないかという質問をしているのです。吾孫子さんの三つ四つ答弁されました中に、藤林会長も了解をしているという言葉がありましたが、これは非常におかしいと思うのです。藤林会長あっせんを開始されたのは、すでに当局が予定された原資を現場に配って昇給実施を促進している最中でありました。それは藤林さんのあっせんを開始された当時の状況であります。藤林さんが昇給実施当局の言いなりに了解されとしたならば、こういうあっせんの第二項は出てこないのです。第二項を見ると、臨時組合の代表者を選定後に団体交渉の議にこれを乗せなさい、その乗せる際には今までの原資について二%くらいの考慮をしなさいという趣旨なんです。もし藤林さんがあっせんを開始するとき、当局がすでに行なっていた昇給の方法、昇給の原資等について、藤林さんの意思が入ったものと了解したとすれば、なぜこういうあっせん案が出るのですか。私は出ないと思う。これは国鉄当局の一方的な解釈ではないかと思う。その他のやりとりは知りませんが、表面に出てきたものを常識的にとって解釈すればそうとれる。従って吾孫子さんの説明はちょっと了解に苦しむ。多少ダブりますけれども、七月期の昇給がだいぶおくれておりましたから、第二組合締結をいたしましたから、あるいは一般の組合員から要望がありましたから、確かに陳情もありましょう。会議の席上そういうことも出ましょう、そういうこともあっておくれているから実施をしたということでありますが、今の当局の答弁は常識的に考えてきわめて不可解であります。第一、七月一日に実施すべきのが十月まで約三カ月延びている、そうしてそれを実施しようとして、やったのが十月二日だと聞いております。わずか十日か十五日です。しかも第三者が入って誠意を込めてあっせんをするというのに、三カ月もおくれてきた昇給をなぜ一週間か十日早めてどうでもやるか。私たち第三者から見ると、その立場を強めてみればこんな解釈も生まれてくる。たとえて言えば、その前に一方的に実施をして既成事実を作ってしまった方が得だというような当局判断から一方的にやった、こう疑われてもやむを得ないのですよ。これは決して当事者でなくて第三者が見てそう考えます。三カ月間もおくれているのだ。あっせん案は藤林さんも、もう出しますと言ってきている。出しますと言って、一生懸命調停している。そのときに、おくれているというような理由で、三カ月もおくれたものをぽんと実施してしまった。あっせんを受諾して実施してもわずか十日間ぐらいしか差がないのです。それをやったということは、これは悪く見れば、あなた方が一方的な既成事実を作ってしまえば、組合もそれでどうにもならぬだろう、あっせんが出る前に早く既成事実を作ってしまえという、そういう悪い考えでやったととられてもやむを得ない措置じゃないかと思うのです。  第三番目の第二組合の問題でありますけれども、第二組合実施をする、これはけっこうであります。しかし第二組合とやるならば、井岡君も言いましたが、第二組合だけやればよろしい。あっせんという形で出ているものをのめば団交が始まるという状況にあるいわゆる国鉄労働組合ないしは機労に対しては、その段階が出た後に考えてもいいことなんです。今吾孫子さんが御答弁になったこの三つの点については、第三者がきわめて常識的に判断しても、当局の態度としては了解できない。もしこれをうがった解釈、悪い解釈をするならば、あっせん案の出る前に、強引に既成事実を作って、それで押し切ってしまえという形が現われていると見られてもやむを得ないじゃないですか。この間について副総裁、私の観測といいますか、考え方は間違っていますか。ちょっと副総裁の御意見を聞きたいのです。
  39. 小倉俊夫

    小倉説明員 間違っているとか間違っておらぬとか私が申し上げるのははなはだ僭越でございまして、私が関係しておりましたこと並びに私の考えを率直に申し上げたいと思います。  第一点の藤林さんが了解したとかしないとかいう問題でございますが、これはこのあっせん案が出ます前に、事前の予備行為として、藤林先生からいろいろ御質問も受けたり、御相談も受けたことは事実でございます。それでその場合に本問題、この昇給の問題につきましては、こちらからもいろいろ御説明申し上げまして、藤林さんは、九〇%というが、もう二%ぐらいは出ないかとおっしゃったことも事実でございます。それも資金としては特号調整もあるではないかというお話でございました。それは正式なあっせん案が出る前でございます。ところがこの昇給資金につきましては、前々から非公式にいろいろ組合の意見も事実問題としては聞いておりましたので、それで組合の方も協力されて、昇給のパーセンテージを上げるために、一般のベース・アップの資金の一部を節約されたことも事実でございます。しかし何と申しましても予算では大体におきまして基本賃金の四%——これは大体七五%程度であります。これに対しまして、私どもの方も極力原資を工夫し、組合の協力もありましたのですが、極力原資を工夫いたしまして、九〇%まで上げたのであります。そういう事情を藤林さんにも申し上げまして、九〇%まで努力いたしました、しかし何がしか調整資金は用意してございます、こう申し上げたので、これを了解されたかどうか知りませんが、こういう御説明を率直に申し上げたということの表現でございます。  それから第二点の既成事実を無理に作ったのではないか、こういうお尋ねでございますが、そういう意図はございませんで、とにかく七月から作業にかかりまして、これは国鉄の給与のことは非常にむずかしいのでよく承知しておりませんが、実に複雑ないろいろな作業があるようでございます。それで作業をいたして大体のめどがつきまして、第二組合と折衝いたしました。このときには機労国労はいかんながら正常な代表者がなかったものですから、こちらには正式な団交はでき得ませんでした。従いまして正式な団交をいたしましたのは第二組合でございます。それでそういつまでも団交を延ばすわけにもいかず、それで妥結いたしました。このあっせん案につきましては私の方では非常にいろいろな点で難航いたしまして、果して受諾できるやいなや、これすらもいろいろ論議がございまして、結局このあっせん案をこういう条件でのもうときまりましたのは三十一日でありました。そういう状態でございまして、何も既成事実を作るなんという策略的なことは毛頭考えておりませんで、時間的にそうそう引き延ばすことができないので、かたがたあっせん案についても受諾できるやいなやということをいろいろ検討中でありましたので、それであまり長くなりましてはということで実施に移した次第でございます。
  40. 下平正一

    下平委員 今の御答弁では実は満足がいかないわけでございますが、時間の関係もありますので、少し角度を変えて御質問いたします。私どもは常識判断からいって、藤林さんの出された臨時代表者ができた直後に、この問題を双方の意思を調整する立場として団体交渉を開いてやれということが、きわめて常識的な通常の受け取り方だということだけは、まあ御了解願えなくてもいいのですが、私たち立場として申し上げておきたいのです。このことが貫かれない場合には、なかなかもって今後にこれらの問題が非常に尾を引くということを、よく考え直していただかなければならぬ問題だと思うのです。  それからもう一点は、今吾孫子さんの御答弁、あるいはまた副総裁の御答弁を聞いておりますと、あっせん趣旨というものについて、何かあなた方は考え違いをされておられる。昇給二%の資金をやれば、それであっせん趣旨は了解したのだというふうな御理解があるような気がする。実はあっせん趣旨というものはそうじゃないのです。あっせん趣旨といったものは、先ほどからくどくど申している通り、紛争を解決する手段として団体交渉を正式にするということなんです。交渉の道を開くということなんです。交渉の道を開かせるということが、あっせん案趣旨であります。そうでありましょう。そこで交渉の筋道を開く、その上で金額の問題は論議をしなさいということでありまするから、当然交渉が再開をされれば、問題点である昇給資金の問題はその中で論議をされる。すでに実施してあるということは間違いです。どう考えてみても、すでに実施してあるということは、あなた方が考えても、あっせん案をすなおに受諾をするという立場からすれば、すでに実施してありますということは、だれが考えてみても理屈になりません。そこで今度団体交渉が開かれた。団体交渉が開かれた場における問題の焦点はどこになるかといえば、私は、すでに実施してあるということは、あっせん案をすなおにとる立場からは、問題の焦点になるはずがないと思うのです。問題になるとすれば、その他の事情、たとえば予算がないという事情、あるいはいろいろ他公社とのつり合い上とか、一般民間との資金上のつり合いとか、あるいは国鉄当局の監督政策上の問題とか、そういう問題から、できるかできないかということが団体交渉の論議の対象にならなければ、これはうそであります。ところが今日の団体交渉対象を、今御答弁を聞いておりますると、すでにあっせん案に盛られた金額は実施してある、調整資金か何かで実施してある、そういうことから一歩も出ていない。これは明らかにあっせん案をのんだ後における労使間の団体交渉のやり方としてはきわめて違ったやり方です。私はあっせん案をすなおにとって——このあっせん案には代理者を作ったらその直後と書いてあるのですよ。直後に昇給問題を議題にして交渉しなさいと書いてある。しかもあっせん案の出るときには、すでに当局資金なり昇給方法というものが決定されて下部に落されていた。そういう条件からしてくると、すでにやってあるということはこれは議題にならないのです。これは小倉さん、常識で考えてそうでしょう。だから議題になるとすれば、あっせん案の二%の余裕がある、今後考慮をしろということになって、考慮をしてきたけれども原資の関係でできないとか、今言った監督の政策上できないとか、他公社とのつり合い上できないとか、こういうことが論議の対象になれば、私はこれは普通のあっせん案趣旨にのっとった団体交渉が行われていると思うのです。ところがそうじゃないのですから、この点をくどいようですが、もうちょっと小倉さんに御答弁を願いたいと思うのです。
  41. 小倉俊夫

    小倉説明員 あっせん案が出ます前のいろいろないきさつを申し上げるのは、あっせん者に対していかがかということを考えて、ただいままで申し上げませんでしたが、実は最後あっせん案が提示されます前に非公式に提示されましたあっせん案には、この際公社側は特号調整等を勘案し、さらに二%程度の原資について格段の努力をすること、こう書いてあります。そこで私が一番初めに申し上げましたのは、こちらで九〇%と申しておりますので、これでいきますと九二%になる、それで特号調整とこの調整資金を持っておりまするので、この程度ならば何とか勉強すればできるのではないかと思ったのも事実であります。それで特号調整とその調整資金を加えまして現実には九二%余の昇給をいたしております。それはお調べ下さればわかりますが、場所々々によって多少のでこぼこはございます。しかし全体にいたしまして九二%の昇給は実際上いたしておりまするので、こういう点でこのあっせん案の前の原案が、ただいま申しましたようにさらに二%程度ということでございまするので、九二%でその線に合致しておるものと承知いたしております。しかしながら今下平先生が御指摘せられました通りに、あっせん案ではさらに——これがいろいろな関係最後あっせん案になった次第でございまするが、下平先生も御指摘の通りに、最後あっせん案には「臨時組合代表者選定後直ちに昇給問題を議題として交渉し、双方平和的処理を期すること。」こういうことがございまするので、これの御回答としましては、昇給につきましては実際においてあっせん案の御趣旨に十分沿うておるものと思量いたします。思量は私が思量いたしましたので、藤林先生はどう思量されておったか知りませんが、私どもの方では、従来のいきさつで十分御趣旨に沿うたつもりと思っておりますが、さらになお今後交渉議題として解決を期したいと考えております。それで直ちに団交をいたして現在に及んでおるというのが実情でございます。
  42. 下平正一

    下平委員 当局側の解釈を聞いているだけでは一向進展しませんから、前進をさせたいと思います。小倉さん、よく読んでいただきたいと思うのですが、臨時組合代表者選定後直ちに昇給問題を議題にしろということでしょう。これは皆さん方は了承されたのでしょう。そしてそのときの議題の際に二%の原資を考慮しろ、こういうことなんですね、そういうことでしょう。だからくどいようですが、もうすでにやってあるからということは、この文面、今のいきさつからは出てこない。これは水かけ論になりますからやめますが、そこで交渉の際、なぜ一体それでは二%の原資が出ないのですか。すでにやってあるというだけのことなんですが、あっせん案にいうところの原資なり二%の追加昇給というものができないのには理由があると思うのです。今交渉でやっておるでしょう、それがなかなかいかない、そのできない理由は一体どこにあるのですか。その理由をちょっと聞かしていただきたい。
  43. 小倉俊夫

    小倉説明員 予算的に不可能でございます。
  44. 下平正一

    下平委員 二%の原資は何ぼかかりますか。
  45. 小倉俊夫

    小倉説明員 年額にいたしまして四、五千万円程度だと考えます。
  46. 下平正一

    下平委員 九十何%か知りませんが、御当局が今度昇給に使った九十何%の金額は総額で幾らでありますか。
  47. 小倉俊夫

    小倉説明員 年額で一億六千万円程度であります。
  48. 下平正一

    下平委員 昇給資金の計算方法等につきましては、いろいろなことがあるでありましょうが、私どもは約一億八千万円と聞いております。正確な数字は申し上げてもよろしいですが、大体でいいと思いますが、私の調査では一億八千万何がしだと思います。それが総額の金額でありますので、それから割り出していきますと、四、五千万円という数字は出てこないのですが、お間違いじゃないでしょうか。二億円といたしましても、ちょっと計算が間違っておりませんか。
  49. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 四千万円にはなりません。三千六百万から三千七百万円でございます。
  50. 下平正一

    下平委員 何か数字的な間違いじゃないですか。今度昇給資金として用意されたのが一億八千万何がしでしょう、それが九十何%に相当するはずでありますが、あと二%の資金の追加ということになると、何千万なんという資金はとうてい要らないと思うのです。私ども大体目の子勘定で四、五百万の金というふうな数字が計算上出てくるのであります。
  51. 小倉俊夫

    小倉説明員 それは月額でございましょうと思いますが、ただいま計算いたします。
  52. 下平正一

    下平委員 事務当局が計算をするようなことは必要ないと思うのです。いずれにいたしましても九二%の昇給資金の中で二%という金額が、そう大した金額でないということだけは想像がつきます。そこで今団体交渉の中で、あっせん案をのんでこれを実施する立場の中で、一番困る問題は原資の問題だというふうに小倉さんがおっしゃられましたが、今国鉄の給与総額は一体どのくらいになっているのですか。国鉄総予算は一体どのくらいなんですか。少くとも二千億、相当な金額を使っているのです。その二千億ないしは二千四百億という金額の中で、たかだか昇給資金に使う四、五百万程度の金というもの、原資ということを問題にして、これを困るという原因に取り上げるにはあまりにも小さい金額だと思うのです。この問題の対比になるのは何かといえば、問題は先ほどから申し上げている通りこれらの問題が常識的に解決をされて、たかだか四、五百万の金が出るとするならば、これで労使正常化が曲りなりにも続けられていく、こういう形が得られるとしたならば、これは予算的の金額から見ても、あるいはその得る代償物から見ても、これはささいな金額だと思うのです。もしかりにこれをわずか四、五百万の金でこの労使間の正常化の問題が多少なりともひびが入る、たとえてみれば今の労働組合の主張であるところの団体交渉あっせん案受諾直後にやって、二%の増資については特段の考慮をせよということをすなおにとっておる人から見るならば、この二%の問題が解決をしないとするならば、これであっせん案当局が守らないのだ、われわれはあっせん案に基いて、どうしてもできないことだ、組織に一段のひびが入るようなことも覚悟をしてまで三役を免職にした、新しい代理者を選んだ、ここまで努力をしているにもかかわらず、たかだか四、五百万の原資の関係当局がこれをやらないという印象を与えれば、せっかく正常化しつつある労使関係にひびが入るではありませんか。これは大へん重大なことなんですよ。しかも今小倉さんがいろいろ御答弁をされましたけれども、裁判所の勧告も当局は一方的にけってしまった、あるいは一方的な実施でないと言いますけれどもあっせん案が出ようとしてあっせん者が努力をしている最中に、どんな理由があるにしろ、そのあっせん案の重大なポイントである昇給を一方的に実施してしまっている、こういうふうな歴史的な事実が積み重なってきている。ここでこのあっせん案のたかだか四、五百万の金を予算がないというようなことを理由にして断わるということは、私はどう考えてみても常識的な解決の方法ではないと思うのです。常識的な解決をするとするならば、当然それくらいのわずかな金はどうやっても出せます。そんなに苦労しなくても出せるはずなのです。それで一応常識的にすなおに双方ともあっせん案を受諾する、実施する、その中に将来の労使正常化を求めていく、そういう立場というものがとれないものでしょうか。私は決して国鉄の労働組合とか、あるいは当局とか、そういう立場でなくて、第三者的な立場から見ても、これは当然とられるべきことだと思うのですが、その点について小倉総裁の御見解をお聞きしたいと思うのです。
  53. 小倉俊夫

    小倉説明員 金額の点、今計算させておりますが、いろいろつべこべ申し上げて恐縮に存じますが、先ほど来申し上げておりますように、今回の調停は私の方でも何とかして受けて、労使間の正常化をはかりたい。またできるだけ国民の皆様に御迷惑をかけぬように持っていきたいということで、あらゆる努力をいたしまして、原資をかき集めた次第でございます。でございますから、もとと末とを比較しますと非常に小さいような比例にはなりますけれども、実はここまで持ってきますのにすべての資金、考えられるだけの資金を考えてきた次第でございますので、その上積みとなる分については非常に困難であり、むずかしいことになってくるのでございます。しかしながら藤林先生のごあっせん案にありますように、さらに団体交渉をしろ、こういうことでございますので、私の方でもさらに団体交渉はいたしますと申し上げまして、ただいま団体交渉をいたしておりますが、ただいま先生のおっしゃったような意見が組合側から盛んに出ておるわけであります。それにつきましていろいろ当方の事情など説明して、せっかく交渉中でございます。
  54. 下平正一

    下平委員 運輸大臣にちょっとお伺いしたいのですが、運輸省としても国鉄の監理は相当大きな問題でありますし、特に国鉄の紛争というものが単なる労使間の利害関係の問題だけではなく、国民に対し、あるいは大きくは日本の経済に対し重大な影響を与えますので、当然大臣としてもこの問題には深い関心を払っておられると思うのです。もちろん直接問題にタッチするとかしないとかいう議論は別といたしまして、このあっせん案の成否等については重大な関心を持っておられると思うのです。ここ一時間くらいの質疑の中で、だんだんやってきますると、もう原資が国鉄当局にはないのだということが、一つあっせん案実施に対する問題点として出てきております。そこでこれはあとでお調べいただけば正確な数字が出てくると思いますが、いずれにいたしましても今回の昇給資金に比べて、あと追加をあっせんされておる二%の金額は、そう莫大な金額でないことだけは事実であります。もしこの問題が端緒で、せっかく軌道に乗った交渉正常化ということが乱れるようなことは好ましくないと思うのです。できることならみんなが協力をして、この正常化を長く続けていきたいという努力を払うべきだと思います。当然大臣もそういうお考え方だと思いますが、もしこれらの団体交渉結論というものが、そこでネックになっているというな場合に、当然監督官庁である運輸大臣に対して、最終的にはいろいろのお願いなり、あるいは承認を求めるという形も出る可能性があると思うのです。そういう場合に大臣としてどういう御処置をなされるか、またはそれ以上積極的に——もしそういうことが問題点であるとしたならば、いわゆる年末を控えた国民経済、国民の足に重大な支障を与えるような危険性を包蔵していたならば、積極的に出て、それらの問題を大臣の立場から解決するような方策なり、お考えがありませんかどうか、大臣にお伺いをいたしたいと思います。
  55. 中村三之丞

    ○中村国務大臣 国鉄労使間が正常化され、わが国の輸送力増強に貢献して、国鉄の使命を労使がともに果していただくということは、私の常に念願といたしておるところであります。もとより昨日も申し上げましたごとく、紛争につきましては、われわれとしては権力的に——これは山口委員の言葉をもってすれば権力的に介入するということ、これはいたしません。これはすべきものでないと思います。しかし国鉄は、運輸省は監督の立場にございますから、国鉄当局は常にいろいろ私の方に事情を申してこられ、また私どももこれについて研究をいたしております。そこで今問題になっておりますこのあっせん案に対する回答でありますが、これも事前におきまして、総裁より私に相談がございました。それでこの三カ条について、私はよろしかろうという返事をいたしました結果、理事会におかれましても慎重に考えられ、そしてこれが回答案となって現われたものと思います。私の判断によれば、ここに問題になりますのは二だと思います。これは一番の問題です。これはいわゆる経済問題と申しますか、賃金問題と申しますか、でございますから、これの推移につきましては、私は非常に注目をいたしておるのです。問題は現在の九〇%定期昇給というものは、国鉄はこれを自己の一つの方針として進めておられるのであります。私もこの九〇%昇給の方針、これをどういうふうに通達したかしないか、これはしばらくおきまして、この方針も私は了承をいたしております。ただこの九〇%の方針が内部的に操作をした場合に、あるいはこれより上回るということもあるということを私は聞いております。これが今あなたの御主張のごとく、またこれは労組側の御主張ですが、原資二%、あるいはこのあっせん案の勧告にもあります、これが今話し合いになっておるのでございましょう。これにつきまして、私今ここで二%の追加をしてもらいたいとか、せよとかいう指示は与えておりません。私は九〇%という、国鉄の言っておられます方針を現在支持をいたしておるのでありますが、この問題が解決して、国鉄労使間が正常化する、そして今お話のように年末に紛争を繰り返し、これが日本の国民経済、産業経済に重大な影響を及ぼさないように私は念願をいたしております。しかしその交渉の具体的の経過につきましては、また今後の状態につきましては、私は労使の間の話を待機しておるのでございまして、ここで私はその内容をどうしてもらいたい、どういうふうにすべきだ……。もとより国鉄から相談がございました場合は、私も鉄道監督局長と一緒に、あるいはその他運輸省の責任者と相談をいたして参りたいと思いますが、その根本の考え方につきましては、あなたと少しも変らない。ただこういう交渉経過につきまして、今ここで私が指示をするということは時期尚早であるというふうに考えておるのであります。
  56. 下平正一

    下平委員 年末も迫って参りまして、その他にもいろいろ懸案事項もあるのですが、団体交渉といいますか、今正確にいえば話し合いか何かでありましょうけれども、これが成立しますと協定協約を結ぶわけですね。そこで私は特に一言だけお願いと申しますか、申し上げておきたいことは、あっせん案趣旨団体交渉正常化するというところにあるのが第一点であますから、この趣旨に基いて団体協約を結ぶ。新賃金、あるいは新賃金ではない賃金の昇給に関する協定を結ぶということが、やはり最終的なめどになると思うのです。その際原資の問題が当然大きな問題になりましょう。しかし実質上の昇給とか、そういう問題よりも、団体交渉話し合いその他が軌道に乗って、早く組合との間に協定協約ができるという、そのルールといいますか、形というものを強く望んでいるということも、大きなこととしてぜひお考えをいただきたいと思うのです。それでとりあえずこのままの状態では、協約協定締結というような段階には、なかなか手間がかかると思いますが、交渉のことでありますから、見通しについてお伺いすることは非常に無理かと思いますが、腹がまえとして、この団体交渉の見通し等について、何か皆様方の方に腹がまえがあったら、この際お聞かせを願いたと思います。
  57. 小倉俊夫

    小倉説明員 いろいろな団体交渉の内容がございますが、その中でも期末手当等に関しましては、これは期間があるもので、どうしても間に合うようにきめなければならないものでございますから、私どもでも組合の方でも、双方交渉委員がせっかく努力中でごますから、そう長くいつまでも長引かないで、おそらく何かの結論に到達すると確信いたします。
  58. 下平正一

    下平委員 最後要望だけしておきますが、少くともこの問題につきまして、私はあっせん案趣旨が、現実的に問題を解決するという立場で、きわめて常識的なあっせん案が出ておりますので、これを受け取る立場にある人たちも、きわめて常識的な立場でこれを解釈をし、実行するという立場をとっていただくように特にお願いしたいと思うのです。  もう一つは、政府当局にもお願いしたいのでありますが、この問題は、まさかそんなことはないでありましょう、私は万一にもないと思いますけれども、単なる国鉄労使間のあっせん案の解決という立場を離れて、石田労政といわれているもの、抜き打ち労政ともいわれています、追い打ち労政ともいわれております、こういうような形というものが、かりにも政府当局の中にあって、あるいは第二組合の育成とか、いろいろな関係というものがこの問題に出てくるとすれば、これは非常な大きな問題になって、せっかく軌道に乗った正常化はもちろんでありますが、年末から年始にかけて、再び不幸な紛争が起るということが、きわめて大きく報道されておりますので、大臣の方におかれましても、この立場というものを十分理解されて、先ほど申し上げましたような、私の意見にも賛成であると言われましたので、できる限りこの正常化の形をほかからの圧力なく、労使間の自主性にまかして、そうして正常化を続けていく一点を守るというような努力を、政府もぜひやっていただきたい。こういうことをお願いいたしまして、私の質問を終ります。
  59. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 私は時間が経過していますから、質問しようとは思っていませんけれども、一言だけ言うておきたい。きのう運輸大臣の答弁で、温情を捨てて厳正にやるという言葉があった。ですから私は運輸大臣の御指導の言葉に従って、私もこれからは国鉄に対して温情を捨てます。そうして厳正にやります。それで私は厳正にやるということになりますと、私はきょうの御答弁ではなはだ遺憾に思いますのは、私に関連をして濱野委員から、労働法十七条の一般的拘束力についての解釈について、御答弁を求められました。しかし副総裁は後日にもこれは重要な関連を持つものであるからというので、長々と答弁をされましたけれども、これはごまかし答弁であって、十七条に対する答弁にはなっておりません。法律というものはおそらく権力を持っておる者には都合よく、治められる者にのみきつく存在するというものではないのです。そんなことは今さら申すまでもありません。しかるに今まで私が見ておりますと、きのうも申しましたように、公労法が制定せられてから、国鉄は実行したい、そうして法を守りたい、こういう意思があっても、他の障害があってこれを実行できないで、労使間に無用の紛争を巻き起した。石田労政になって、法を守るということを大上段に振りかぶって、国鉄労働組合違法性のみを追及しておる。しかしながら実際にはみずから率先して守らなければならない、範を垂れなければならない政府がその法律を守っていない。そうして一方的に組合にのみ違法性を追及しておる。その責任を負わしておる。これが国民に対して迷惑を及ぼしているということにちっとも気がついていない。私は下平委員質問に関連をいたしまして、この拘束力の問題についてその見解をただしましたところ、遺憾ながらそれについては全くのほおかむりであって、当局としてはこれに対して何らの答弁もできていないのです。こういうことで、国鉄当局も石田労政につられて、ひたすらに法律というものだけを大上段にかぶって、そうして国鉄職員を解雇している。いえば労働者の生命を絶っておられる。しかるに、そういうように自分は都合のよいときには人の生命ともいうべき基本権をじゅうりんし去っておいて、そうして自分はその法律を守らないとは一体何事だ。自分が国民の前に議会を通じて明確にすべき絶好の機会であるにもかかわらず、その法律について何ら国民に納得のできるような解釈も下し得ない。こういう不勉強なことで、国鉄の五十万に及ぶ従業員を律しようなどと考えるとは、もってのほかのことであると私は思う。従って、こういう意味において、今日の国鉄のとっております態度は一方的である。もう少し人を律せんとすれば、おのれをまず律して後にしてもらいたい。人の責任だけを追及して、おのれの責任を顧みないというがごときは、全くもってこれは現在の為政者としてあるまじきことであると私は思う。でありますから、この点については深く反省をして、国鉄だけでも法を厳正に守ってもらいたい。まずみずから法を守る模範を示した後に、人にその法を守らせるようにしてもらいたいと思います。  そういう意味において、私はもう一点の希望を申し上げておきます。このたびの藤林あっせん案なるものから生じまする九二%になりまするか、その二%の昇給協定も、進んであなた方が労働組合に法の秩序を強要し、しこうしてその法律によってすべてを律せんとする厳正な態度でおいでになるのなら、少くとも労働組合との間におきましては、この藤林あっせんに基く協定国労及び機労との間に、事情のいかんにかかわらず締結せられるという、まず法律を守る模範を示すべきであると私は思う。従って私はこれが今後になされるかどうかにつきましては、今後その成り行きを厳重に見た上、次の機会におきましては厳正にその責任を追及するつもりでありますから、御承知を願いたいと思います。  さらに私がもう一点申し上げておきたいのは、一般公務員と国鉄職員との間におきまする年末資金の差額の問題であります。これにつきましても、当然私は公労法の建前から申しても、少くとも公務員並みの年末賞与を与えるべきであるというふうに考えます。そうしてその予算的な責任も当然これはとるべきである。進んでその難局に身を挺しても当って、しかる後にこれであるという結論組合との間に交渉づけるのであれば、組合は納得するでしょう。しかしながら何らそういうようなことをしないで、ただ一方的に、自分の責任だけはたな上げにしておいて、そうして他人にのみ権威をもってその意思と違ったものを強要するというようなことがあれば、これはまたぞろ年末の混乱を生ずることは火を見るよりも明らかです。でありますから、言いかえれば、昨日からの答弁から考えますと、迷惑をこうむったのは国民である、法律を守らないのは当局である、そうして法をたてにして強要しているものは今日の労政であるといって差しつかえないわけで、これが国民に大損害を与えているものと私は断定するのです。でありますから、そういうことのないように御注意を申し上げまして、私は本日は答弁を要求しないですが、私の希望だけを申し述べておきます。
  60. 濱野清吾

    濱野委員 ちょっと聞きたいですけれども国鉄の労組に対する経営者側の態度は大体わかっております。この労働組合法ができたときに——その当時は昔の鉄道省時代であって、佐藤榮作君が鉄道総局長官だった。そこで労働組合法ができた当時は、国鉄の従業員はその労働組合法によってすぐ団体を作るということに積極的に動かなかった。むしろ佐藤榮作君などは、早く作って、正常な運行をしてもらいたいものだという希望を持って、あの当時は内面指導をしておったことは私は承知しておる。国鉄の労働組合運動というものは、実際をいえば片山潜が先覚者なんです。その次二、三あったが、私どもがその次の時代をになうて、そうして数百名も首切られた歴史を持っておるわけです。そういう経験を持っておる方々が少かったものだから、佐藤榮作君は私に会費の問題や、その他の問題をいろいろ質問してきたわけです。そこで私は、これは鉄道の労働組合の将来の組織の仕方、あり方というものは、職能的にいった方がいいじゃないか。ところが佐藤榮作君、当時の鉄道総局長官としては、これは単一組合がいい、私は職能的にいったのがよろしい、この二つの意見が対立した。なぜ佐藤榮作君が単一組合にすることがよろしいと主張したかというと、団体交渉、団体協約等においては、それが最も簡潔であって、それできまればたくさんの職種の団体と交渉するトラブルを避け得ることができるから、非常に合理的だという意見を持って動かずに今日まで至ったわけです。しかるにその後単一組合ができて、そうして国鉄という一つの職場の中にいろいろの職種の労働組合がむしろ事実上否定されて、佐藤榮作君の期待しておった通り単一組合かできたのだが、時代を経るに従ってだんだんと職能組合ができてきた そうして今日この委員会でも議論されるように、新しい組合であるとか、あるいは機労であるとかいうような、団体交渉を幾つも持たなければならぬようになった。こういう意味からいけば、私は最初から職能組合でいくべきじゃなかったか。たとえば通信関係の従業員と、機労関係の従業員と、それから保線関係の従業員との仕事の内容も違うし、さらにまた給与の内容も実は変らなくちゃならぬはずだ。それを単一化したところに佐藤君の運営上の期待だけを、効率だけを自分の側からばかり計算して、このやり方を内面指導してきて、今日の国鉄に再び混乱ができる原因を生んだことと思うのであります。そこで将来国鉄を経営する方々は——今の趨勢からいけば、機労ばかりではなしに、通信関係が独立するであろう、いま施設と言っているが、レール、あの保線関係もやがて独立するであろう。仕事の質も違う。内容も違ってくる。従って賃金、手当というものが違ってくるはずなんだ。そしてこれを総合的にやることは今日になってはかなり困難になってきた。その現われが今日機労という一つの団体ができてきた、そう私は見ているのです。そうなってきますと労働協約、ことに賃金とか手当とか、あるいはまた賞与とかいうような問題は、だんだんそれぞれの職種に応じて区分して経営者は考えなくちゃならぬであろう、こう私どもは考えているのです。先ほどこの間の事情を副総裁からるる御説明があったが、この程度でへこたれたのでは国鉄総裁は勤まらぬ。今後ますます複雑になってくるが、これが正しい賃金の立て方であり、賞与のやり方である、こういうふうに私は見ているわけであります。先ほど社会党の同僚からいろいろ話があって、そしてあっせん案が出る前に二%やったとかやらぬとか、あるいはこれを決定したことは常識的でないとか、不穏当であるとか、どっちにしても惻隠の情があってしかるべきだ、こういうようなことは吾孫子さんいろいろな御説明があるけれども、この四十万に上る人々を早く昇給させたいという要望がある、新しい団体が強く要望してきている、このこともあったであろうと思うけれども、やはり私はこれは子供らのために待って——子供らと言っては失礼だけれども、従業員のために待ってやった方がいいと思うのです。これは国鉄側でももう一歩正常な姿に取り戻すという形において、一つお考えがあってほしいものだ。ここにはだれもいませんから申し上げることはできませんけれども国鉄労組の小柳君だって私はそうだと思う。何も小柳君だって自分が首になって——あとに人材がないわけではない。四十数万の中には小柳君以上の人がたくさんあると承知している。それが何のためにがんばっているか、こういうことは謙虚な気持で、山口君だって下平君あたりもよくわかっているのだから、国のために、あるいは国民のために政治家として、政党として強く勧告してもらわなければ、山口君のおっしゃるようにばかを見てひどい目に合うのは国民ばかりだ。そんなばかなことはないでしょう。国鉄ばかり責めて、運輸大臣にばかり注文つけて、自分の方の小柳君は素通りで、お前いいのだ、こういうことはないでしょう。そういうことはフランクな立場で、下平君なんか特にそういう経験者だから、お互い苦労してきたのだから——失礼な話だが、四十数万のうちには幾らでもある、雲のごとくある。そういうものを委員長にして、堂々と正常化した交渉をおやりになることが国のために、日本社会のために正しい行き方だろうと私は思う。それから私は今の政府の労働関係のある人々の言論には全部は賛成できない。というのは、これはいろいろ事情もある。事情もあるが、しかし法律は守ろうじゃないかというこの原則だけは、われわれの後輩である国鉄の現場の人も守らなければいかぬ。社会党の諸君だって立法府におれば、法律を守らなくていいということは言えないはずだ。だから守れない個所は労働関係のおやじから言わせるようにしなければならぬ。これもやはり反省し合って、そうしてお互いに国のための輸送機関でありますから、これは社会党に特にお願いするのですが、強い勧告を正しい立場に立ってやってくれれば、非常にありがたいものだ。聞いてみると、あなた方の言うごとにも賛成したいが、あなた方はあの労働組合の行き過ぎについてはちっとも反省の議論が見えない。全部いいような前提に立って国鉄当局ばかりいじめておる。何も私はこの人たちにおせじを言うのではないけれども下平君の言う惻隠の情とか、いま少し考えてやってやったらよかりそうだとか、常識とかいうことを百万言並べたって、なかなか言葉通り受け取れないと思う。ですから一つそういうことを前提として、労使関係正常化されるという考えをわれわれは鮮明にして、国鉄も十分自重してもらいたい。それから何も社会党の諸君がやかましいことを言うからといって、国民にかわって国鉄の経営の責任を持っておる人は、萎縮することはない。どんどん言ったらいいのです。若い者は威勢がよいから、言わなければわからないことがたくさんある。吾孫子さんもかなり遠慮しておると思う。しかしどっちにしても言うことだけは言って、やることだけはやって、そうして一つ仕事をしようじゃないか。そしてお互いにそういう気持でおやりになれば、私は団交どもうまくいくのではないかと思う。こういうように考えておる。ですから一つ愉快にやっていただきたい。
  61. 井岡大治

    ○井岡委員 おやじにだいぶしかられたから、あまり言うとまたおやじに怒られるから、あまり言わないことにしますが、とにかく国鉄労使間の正常化をはかるということについては、お互いに反省するものは反省していいと思うのです。  そこで私はこの機会にもう一つだけお願いなり意見を申し上げておきます。いろいろな問題があると、あるいは国鉄が非常に苦境に追い込まれたとわれわれが見るときには、必ず次のいろいろな問題を提起してきておる。たとえばきのうですか、おとといですか、鹿児島とか門司の方でまた処分の発表をしておる。その処分は七月の争議の問題についてするのだ。こういうように新たに新たに問題を提起してきて、混乱に陥れてきておるという感じがするのです。これは濱野委員の意見からすると、やったことについては当然の責任をとったらいいじゃないかという御説になる。一面そのことは考えられます。しかしそうであるとすれば、そんなに小出しにしないで一ぺんにしてやった方がいい。これは小出しにこつこつやって、けんかを新たにこしらえていっておる。こういうことはおもしろくないと思う。これは濱野委員といえども十分に理解されることだと思う。そういう問題の取り上げ方は、さらに混乱させると思われる。この点についてどういう意図でおやりになったのか、一つお伺いをいたしたい。
  62. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 いろいろ御教示いただきましたことにつきましては、十分今後反省の資といたしたいと思います。ただいまお尋ねのございました処分の問題は、今までいろいろあっせんの過程にもありましたし、いろいろな事情を考慮しておくれておったわけでありますが、済んだことはきちんと始末をつけるという意味で処分をいたしたわけであります。  それから先ほど労働組合法十七条のことについてお答え申し上げる余裕がございませんでしたが、十七条の規定は公労法では適用を排除しておりませんので、適用はあるということになっておるわけでございます。従来の解釈といたしましては、組合が結成されておる場合には、組合のワクを越えてまでは適用しないという大体解釈をしております。十七条の本来の趣旨は、一方において組織されたものがあり、片一方に未組織のものがあった場合に適用されるのが大体原則だというように解釈しております。
  63. 山本友一

    山本(友)委員長代理 本日はこれにて散会いたします。     午後二時一分散会      ————◇—————