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1957-05-13 第26回国会 参議院 予算委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年五月十三日(月曜日)    午前九時七分開会   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     苫米地義三君    理事            迫水 久常君            左藤 義詮君            堀木 鎌三君            安井  謙君            吉田 萬次君            天田 勝正君            中田 吉雄君            吉田 法晴君            森 八三一君    委員            青柳 秀夫君            石坂 豊一君            大川 光三君            木村篤太郎君            小林 武治君            小山邦太郎君            佐藤清一郎君            柴田  栄君            関根 久藏君            土田國太郎君            苫米地英俊君            仲原 善一君            成田 一郎君            林田 正治君            一松 定吉君            前田佳都男君            武藤 常介君            内村 清次君            岡田 宗司君            北村  暢君            栗山 良夫君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            鈴木  強君            中村 正雄君            羽生 三七君            平林  剛君            森中 守義君            湯山  勇君            加賀山之雄君            梶原 茂嘉君            田村 文吉君            豊田 雅孝君            千田  正君            八木 幸吉君   国務大臣    内閣総理大臣    外 務 大 臣 岸  信介君    大 蔵 大 臣 池田 勇人君    農 林 大 臣 井出一太郎君    通商産業大臣  水田三喜男君    運 輸 大 臣 宮澤 胤勇君    郵 政 大 臣 中井 太郎君    労 働 大 臣 松浦周太郎君    国 務 大 臣 小滝  彬君   政府委員    法制局長官   林  修三君    法制局次長   高辻 正己君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 林  一夫君    防衛庁装備局長 小山 雄二君    大蔵政務次官  足立 篤郎君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    大蔵省主計局次    長       村上  一君    大蔵省主計局給    与課長     岸本  晋君    林野庁長官   石谷 憲男君    運輸省鉄道監督    局長      權田 良彦君    運輸省鉄道監督   局国有鉄道部長  細田 吉藏君    郵政省電気通信    監理官     松田 英一君    郵政省経理局長 八藤 東禧君    労働政務次官  伊能 芳雄君    労働省労政局長 中西  實君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   参考人    公共企業体等労    働委員会会長  藤林 敬三君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和三十二年度特別会計予算補正  (特第2号)(内閣提出衆議院送  付) ○昭和三十二年度政府関係機関予算補  正(機第1号)(内閣提出衆議院  送付)   ―――――――――――――
  2. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) ただいまより委員会を開きます。  昭和三十二年度特別会計予算補正(特第2号)及び昭和三十二年度政府関係機関予算補正(機第1号)を議題といたします。  これより十時二十分まで藤林参考人に対し質疑をお願いいたします。
  3. 鈴木強

    鈴木強君 私はこの際、公労委の藤林会長に三つほど質問を申し上げたいと思いますが、その前に公企体労働組合の紛争問題につきましては、先生には特に熱心に御努力いただいておりまして、このことは私たちひとしく感謝にたえないところでありまして、深くお礼を申し上げます。  質問の第一点は、御承知通り現行公労法昭和二十三年のマッカーサー書簡によって一つのヒントを与えられ、昭和二十七年の第十三国会において制定されたものでありますが、その後本法の運用上の問題につきまして、ことに十六条、三十五条の、予算上、資金上の問題がからみまして、幾たびか紛争を重ねておったことは事実の通りであります。そこで本法改正が問題になりまして、御承知通り昨年この十六条三十五条を中心にして改正がなされました。そこでその際先生臨時公労法審議会議長としていろいろ御苦心をなされ、その答申がなされておるのでありますが、その中に私は特に重大な問題として取り上げなければならないのは、十六条、三十五条に関連をいたしまして予算上、資金上不可能な支出を内容とする協定または裁定に関する件ですが、これに対してこの答申趣旨は、ここに書いてありますように、この問題が本法上最大の問題であるが、裁定が実際上必ず尊重されることがきわめて望ましいことである。だがしかし法文上これを現わすには予算審議権予算編成権等関連もあり、きわめて複雑困難な問題がある。根本的解決には、三公社現業企業としての自主性責任性の確立という組織そのものの改革が必要であるが、他面事態の円滑な処理は、政府及び関係者に十分な良識さえあれば現行制度のもとでも可能であり、またこれを欠けば、いかなる規定をもってしても不可能である。右の点について政府及び関係者の善処を強く要望しかつ期待するが、その前提のもとに当面とりあえずの措置として、こうであります。予算総則給与総額制度を緩和し、仲裁裁定当該企業内の資金上実施可能である場合には、予算上の移流用を最大限に緩和し、給与総額にかかわらず実施できるようにし、また業績賞与制度を広く活用できるようにする等、給与について企業当局自主性をできるだけ認めるようにすること、こういうふうに御答申になったのであります。さらにまた御承知通り昭和二十九年の十一月だと記憶いたしておりますが、臨時公企体合理化審議会が持たれまして、原先生がたしか委員長になったと思いますが、そのときのこの審議会答申を見ますと、やはり総理大臣に対する答申ですが、給与総額の問題に触れて、この給与総額については相当、撤廃をして、企業自主性を認めていく方がよろしいという意見が相当強かったように私は見ておるのでありますが、こういう点をあわせ考え、さらにまた当時の倉石労働大臣が昨年国会に提案したときの提案理由を私は議事録を調べてみたのでありますが、それにもやはり答申案趣旨を相当強く強調しておられるのであります。そういう立場に立って、今回の問題を見たときに、私たちはあくまでも公共企業体というものに三公社現業をやったということは、やはりそこには現業官庁としての特殊性を生かして、ほんとう従業員がふるい立って、事業のために協力できるような態勢を確立しなければならない。そのためには、やはり今まで問題になっておりますような労使間の団体交渉ということを尊重して、そこに積み上げられた実績というものがやはりあってこそ、企業の妙味が発揮できたのだろうと私は思うのであります。ところが、今回政府が出されました仲裁に対して措置をされておる点について、私たち非常にこの趣旨からいってもわかりませんのは、給与総額の中で予算総則できめておりますが、基準内外についても今回はこの移流用が認められない。郵政大臣なり、あるいは大蔵大臣の承認を得る、こういうふうな形になっておりまして、この点はきわめて、こういった法改正趣旨からいいまして矛盾するのではないかと私は思うのであります。この点に対しまして先生の御意見を伺いたいと思うのであります。
  4. 藤林敬三

    参考人藤林敬三君) 御質問お答えをいたしますが、昨年の公労法改正に先立ちまして審議会が持たれました議長として、今御指摘通り答申労働大臣に出したのでございます。また、これに先立つ公企体のあり方についての別の委員会があって、企業体としての自主性確保答申があったことも承知をいたしております。私は公共企業体という名のごとく、企業体としては自主的なものが確保されること、労働問題に関しましてもこれが貫徹されること、これが望ましいという意見は今日もなお持っております。ただし、昨年こういう審議会答申をいたしました当時と、それから今回私が調停及び仲裁をいたしました場合の経験との間には、若干の食い違い1私自身の経験及び印象から申しまして、今日は少し私の意見に変化があるというよりは、むしろ私は今日多少別のことを力説しなければならぬと思っております。この点は簡単に申しますと、いずれ、のちほども御質問を受けることではないかと思って、今日ここにきておるわけでございますが、先日来も衆議院でいろいろ御質問があってお答えをして参りました今度の仲裁に関する中、心的な問題もそうでございますが、公社労使関係について、今日いろいろ問題が生じております基本的なものは、片や労働組合、片や経営者としては公社当局、もしこの公社当局にして完全とまではいかなくても、相当程度自主性があるならば、賃金その他の団体交渉対象事項の取り扱いにつきましては、団交、あっせん調停、さらに仲裁という一連の事態は、かなりすっきりした形でいけるのじゃないかと思うのであります。ところが、この労使関係民間と違っておりますゆえんのものは、結局賃金問題としては予算措置を伴うという関係もあり、また、もともと民間企業と違った官業でありますので、政府監督指導と申しますか、というものがそこにあることは、何人も了知しなければならぬと思うのであります。ところで、こういう関係から労使関係は単純な労働組合と雇い主という関係ではなくて、公社当局政府という関係がここにある。これは複数だから複雑だと簡単に言えないのでありまして、遺憾ながら率直に私は申しますと、公社政府という関係が必ずしも一本ではないのじゃないかという印象を私は実は受けたのでありますが、もしも、これが一本であるならば、幾ら複数であっても問題は簡単であるべきはずである。これが一本でないと思われるような節があるところに、実は問題がある。こう実は私は今日思っております。従いまして、その公社自主性云々という問題もさることながら、まず労使関係上の問題の処理から申しますと、私はこの点をどちらからか、どのような形でか、これを考えざるを得ないのじゃないか。お説の通り、今度の問題をきっかけにしてと申しますか、聞きますところによると、基準内予算を動かす場合、基準外給与予算からこれを基準内に持ってくる場合には、政府の厳重な了解を得られなければできないというように縛られたことは、公社自主性を阻害するものであるという御意見は、まさにその通りと私は存じますけれども、しかし要は、問題の要点は、公社政府というこの筋をもっと一本化して、ある程度すっきりする、これも一つ方法ではないか。自主性を阻害するという点からは遺憾な点も考えられますけれども、一本化するという一つの、これもうまい方法であると私は思いませんけれども、これも一つ方法だろう。しかし、うまい方法でないということになると、これはもちろん、その意味においては考え直す余地があろうかと思いますけれども、私は必ずしも上手な方法でないけれども、こういう方法をとられたのは、こういう問題の一つのはね返りではないかと思っております。いずれにしましても、私は積極的にこのこと自体に対していろいろなことを申し上げる前に、ごく一般的に申しまして、公社政府という関係がすっきり一本になるような形、その関係が、あるいは政府が非常に強くて公社監督指導されるというか、公社の方にかなりの自主性があって、政府が受け身で一本になられるか、この関係はいろいろの関係があり得ると思うのであります。そのことについては特別に意見を申し上げることを差し控えますけれども、とにかく私はそれらの問題を調停仲裁で扱っておりますこと自体から見ますと、この間が複雑になっておって、必ずしも一本になっていないということを率直に申し上げていいと思いますが、そういう状態があることは、われわれとしても困るのであります。
  5. 鈴木強

    鈴木強君 基準内外相当ワクをはめたことは、公社自主性をなくすることになる、こういうようなお考えのようでありますが、私もこの点は公労法上の団体交渉権等から考えましても、やはりこういうワクをはめて、いろいろと労使、中立、さらにまた、この合理化審議会趣旨からいっても、自主性を持たして、そうしてほんとう企業独立性を発揮できるような態勢政府公社に与えることが、私は公社設立趣旨だと考えておるわけであります。ところが最近、逆な方向に政府がいろいろなたがを締めてくるとこるに、問題の解決がいろいろ複雑になってくると思うのでありまして、この点は先生のおっしゃるように、公社政府との間がかり複数であっても、かりにすっきりさせることによって、一つ解決方法が出てくると思うのでありますが、このことはやはり予算的な制約もあって、非常に困難な点もあろうかと思いますので、私たちは、基準内外給与総額というものの中で労使が自主的に解決できる道が残された唯一の点で、ここの点が阻害されることは私ども残念だと思います。しかし時間の関係で、この点はこれ以上申し上げられませんので、この点はこれでよろしゅうございます。  次に、今の問題とも関連するのでありますが、私たちは、今回の仲裁委員会から出され、ました裁定を拝見いたしましたが、どうもその解釈上すっきりしない、政府の方では仲裁を完全に実施した、こういうふうに総理以下おっしゃっておるのでありますが、特に私はここで先生にお尋ねいたしたいのは、衆議院でも問題になっておりました例の三分の一の問題であります。第二次確定の三分の一の問題でありますが、これはやはり主文第一項から申しますと、予算単価に千二百円を加えるのだ、しかしながら理由書の方を読んでみますと、いわゆる第一次、第二次確定のものにつきましても、労使間の団体交渉で決定した問題であるし、一つの債権である、従ってこの問題については、主文第一項の問題はあるが、十分に一つ考慮しなければならない、しかも相当部分のやっぱり是正をすることが裁定趣旨である、こうおっしゃっておられるわけですが、そこで私は、三分の一の問題につきましては、先生がこの公社当局労働組合に、この問題に対しての質問に対する回答をされておりますが、その中にも、三分の一の問題についても、やはわ将来これを調整しなさい、こうおっしゃっておると思うのであります。これは文字通り将来でありまして、私たちは今度の補正予算の中に直ちにその三分の一を引くということは裁定趣旨から言って非常におかしいと私は考えております。特に先生衆議院社会労働委員会で、横山委員質問に対してお答えになったところを、私、速記録を詳細に拝見いたしましたが、この点が何回かの質疑の中で、将来ということは今日は含まっておらない、こういうふうにおっしゃっておるのでありますが、この点一つ重ねてお答えをいただきたいと思います。
  6. 藤林敬三

    参考人藤林敬三君) それは衆議院社会労働委員会お答えをいたしましたばかりでなく、予算委員会にもその二日後に呼ばれまして、明確にお答えをいたしたところでございます。将来というのは、文字通り将来のことをわれわれとしては裁定の中に書いたというわけであります。
  7. 鈴木強

    鈴木強君 わかりました。それからもう一つ、この点はちょっと仲裁委員会の方にお尋ねするのはどうかと思いますが、なるほど予算単価ということは書いてあります。しかしながら、その予算定員ということについては、はっきり触れておらないのでありますがおそらく私たち予算単価をおっしゃるときには、予算定員ということは必然的にそのことは考られておるわけだと思うのですが、その点は先生いかがでございましょうか、予算単価を千二百円上げろと、こうおっしゃっておるのですが、それは当然一つ根拠として、政府国会に出しておられます予算単価基準となる定員ですね、予算定員というものが予算単価に掛けられて、そうして基準内賃金というものが出てくるわけですが、その点はどういうふうにお考えになっておられますか。
  8. 藤林敬三

    参考人藤林敬三君) これはもう少し問題を広げてお答えをすることは御趣旨に合うかどうかと思いますが、こういう工合に申し上げてよろしいのではないかと思います。私たちが今度、例年になく、仲裁裁定を出しまする場合に、基準内の予算単価、千二百円加えるというような裁定をいたしましたことは、公社及び現業労使関係、ことに賃金問題については、いろいろきめられる予算との関係から言って、若干すっきりしないものもある、これが実行単価予算単価の差という問題を指摘になったわけでございまして、こういう差がそのまま引き続いて存在することがきわめて常識的に言うとおかしいのであるということが一つございます。そこで、そういう意味ではきわめて常識的な、われわれしろうとでございますので、常識的なことで恐縮でございますけれども、もう少しすっきりしていてよろしいのではないか、その意味では給与予算というものの全体がもう少し合理化されていてもいいのではないかという前提があったことは事実でございます。従ってその意味におきましては、定員問題に関連をいたしましても、定員の問題についてももう少し実情に即して合理化してもいいのではないかという考え方は、暗に入っていたと実は申し上げてもよいと思うのであります。ただし具体的なこの裁定の問題の処理に当りましては、必ずしも仲裁委員会は、積極的に、予算定員が甘いからどうのこうのというようなことを非常に強く申し上げるつもりもないし、そういうつもりでこういうことをやったわけでもございません。ただし、また反対に申しますと、仲裁裁定を実行して下さる政府側措置としては、予算上の編成の問題についてどのようになさるか、これは仲裁委員会の一向関知しないところでございますし、また仲裁委員会は、私が先日も衆議院予算委員会で申し上げましたように、また御質問に対してお答えをいたしましたように、仲裁委員会としてどうこうと積極的に予算編成について意見を申し上げる筋はないというので、その点は積極的な意見というものをそう明確に持っておるわけではございません。
  9. 鈴木強

    鈴木強君 簡単に先生に伺いますが、要するに予算単価に対して千二百円、こういうふうに主文第一項でうたわれておりますが、要するにその単価考えたときに、もちろん国会審議権というものは国会にあるわけですから、お説の通りわかりますが、当然当時この予算定員として国会に出されておった基準というものがあると思うわけですが、そういう点を率直にお考えになっておられたかどうかということです。ですから、私の質問は、千二百円上げるということは、要するに予算定員に対してそれだけのものをはじいたものが総額になる、こういうふうにお考えになるのでございましょうかどうかということでけっこうでございます。
  10. 藤林敬三

    参考人藤林敬三君) 予算単価を用いましたときには、定員の問題もわれわれとしては議論に載せたことは事実でございます。十分これを考慮したというのは、実行ベース予算単価差云々という問題をわれわれはすでに取り上げて、これは一体どこから生じたのかという議論もありましたくらいでございまして、もとよりそういうことを考えました。
  11. 鈴木強

    鈴木強君 時間がありませんから……、どうもありがとうございました。
  12. 安井謙

    安井謙君 藤林先生に大へんお忙しいところを早朝からお願いいたしまして、まことに恐縮に存じておる次第でございます。なお、われわれは、この今度の賃金問題を通じまして、先生初め仲裁委員の方がいろいろと非常に御苦心なすった結論をお出しになりました過程を伺っておりまして、非常に感謝をしておる次第でございます。  それで私は、実は先だっての衆議院におきましての社会労働委員会、あるいは予算委員会等速記も十分拝読さしていただいております。またただいまでは、社会党からのいろいろな御質問もありましたので、私、大体今度の裁定書意味しておりますものにつきましては、概念は理解できておるつもりでおります。今度確認をさらにさしていただきたい、こういう意味において二、三の点を簡単にお尋ねを申し上げたい、こう思っておる次第でございます。  第一にお尋ねすることは、今度の裁定は、これは主文理由からでき上っておりましていろいろ重要な問題を含んでおると思いますが、その一番主たる内容になりますことは、何と申しましてもあの裁定主文の第一にうたっております。  まず、この基準内の予算単価に対して千二百円をのせたもの、その範囲内で賃金がきめられるべきものである、こういう御趣旨と、さらにこの裁定書の中には直接に載っておりませんが、いろんな政府やその他の機関からの質問に対してお答えになっておりまするところの、そうではあるが、同時にこの現実的な給与がある程度上回るように措置がされることが望ましいのだ、こういう御意向で一応本裁定書の大事な部分は尽きておるのではなかろうか、こういうふうに思っておりますが、その点につきましてはいかがでございますか。
  13. 藤林敬三

    参考人藤林敬三君) その通りでございます。
  14. 安井謙

    安井謙君 よくわかりましたのでありますが、そこでこれは非常に形式的なことをお伺いいたしますが、今度の裁定書に出ておりまする内容でございますが、これは主文理由から成っております。そこでこれを法律的にもし政府なり、あるいはその他当事者制約をされるということになりますと、具体的な点では、この主文の一に書かれましたものが今のお話の通り第一番でございます。あとの二、三といったようなものにつきましては、これは技術的で明らかなものでありまするが、法律的にはこの主文が最後にすべてを拘束する、こういうふうに考えてよろしゅうございましょうか。
  15. 藤林敬三

    参考人藤林敬三君) もとより仲裁裁定主文中心があるということは申すまでもございません。
  16. 安井謙

    安井謙君 そういたしますと、この理由書で、いろいろと載っておるわけでございますが、この理由書につきましては、たとえば理由書の一には、主文一の裁定委員会でされましたときの、まあ根拠と申しますか、その理由等についての御指示があったものとわれわれは解しております。その他のいろいろ、たとえば格差はなるべく早くこれを解消した方がいいとか、その他について載っておりまするが、そういうものは大体主文中心にして、あとはそれぞれ関係機関が今後いろいろとものをきめるときに十分配慮をしてやれ、いわゆるまあ勧告的な部分である、こういうふうに解釈をいたしてよろしゅうございましょうか。
  17. 藤林敬三

    参考人藤林敬三君) その通りでございます。
  18. 安井謙

    安井謙君 従いまして今回は勧告の趣旨によりまして、政府は今予算を出しております。この予算を出す技術的な措置というものにつきましては、これは従って政府に一任されておる。あるいはまたこの実際の賃金を取りきめることにつきましては、これはまあ労使当事者に一任をされておる、こういうふうに理解しておいてよろしゅうございますか。
  19. 藤林敬三

    参考人藤林敬三君) はあ。
  20. 安井謙

    安井謙君 そうなりますと、裁定内容というものでございまするが、これは内容につきましていろいろ議論も出ておるようであります。しかし理由二の三に載っておりまするところのあのいわゆる三十一年度の調停による一項確定分といったものの六百円は、これは明らかに千二百円の中に含まれておる、こういうふうに明示してございますので、この点はまあ問題はないと思います。その次に、ただいまも問題になりました例の格差を将来縮小するのが妥当であろう、私はこのお考えは非常にごもっともなお話だろうと思うのでございます。しかしこの格差を将来縮小するという問題につきましては、これはまあ将来という言葉にからんでいろいろの議論が出ておるようであります。  そこで私はこの理由三につきましては、あの理由二の一あるいは二の二といったようなものと関連をしてこれは解釈をしなければいかぬというふうにも考えておるわけでありまして、その理由の二の一には格差というものは好ましいものじゃないが、公共企業体の特殊の性質上ある程度残ることもやむを得ない場合もある、こういうふうにも解釈できるわけでございます。しかし同時に二の二では、格差というものは将来これを解消する、そういうような意味から今度のいわゆる予算単価に千二百円を加えるという意味は、結局そのままこれを実行単価の上にのせるという意味じゃない、こういうことも明瞭に出ております。  そこで一体この五百二十円どういうふうに処理するかということが、将来の問題とからんで一番大事な焦点であろうかと思うのであります。私は実はこういうふうに考えたわけなのでございまして、この千二百円をのせるといいますと、この予算単価実行単価の差額のおもなものは、いわゆる一項確定分の六百円と、それからいわゆる格差と称せられる五百二十円がまあおもなものであろう、そこで六百円と五百二十円を足しますと千百二十円、こうなりますと千二百円を呈しただけでは八十円の差額しか出てこない、これを正面から額面通りに機械的に政府措置をいたしますれば八十円の手取り増、こういう形になるのだが、それではあまりにも現実的な労働問題の解決ができないから、これはもう少し現実的にもうまく処理できるように考えろ、こういうふうな御趣旨が私は載っておる、こういうふうに思う次第であります。そこで政府はそのほかに今三百五十円というものをみておる、三百五十円をみておるということになりますと、千二百円から千百二十円を引きました八十円と、その三百五十円、いわゆる四百三十円というようなものが、これは現実的な給与の原資に充てられるように財政措置ができておるかと思いますが、そうなりますと、よく今までいわれておりました三分の一を現在この予算でいかにもベース・ダウンしておるのだというふうな印象をもって、ときどき議論のやりとりが一部であったようでありますが、そういう問題は解消されておるのでありますか。現在のこの六百円といういわゆる一項確定分と、格差の五百二十円、こういうものは今後賃金折衝を当事者間でやります際に、それをそのまままるのみにしても、さらに四百三十円だけは現実に手取り賃金の増加ができるように、今度の政府予算では財源措置がしてある、こういうふうに思われますがこれは先生の御解釈ではいかがでございましょうか。
  21. 藤林敬三

    参考人藤林敬三君) 政府の財政措置は、最後におっしゃいましたようにそういうことになるのだろうと私も思います。ただし実際の給与状態が、今日言いかえますと四月の状況においてどうなっているかということは、まだはっきりしておりませんので、五百二十円の格差及びその三分の一がどうのこうのという問題は、現在四月の新しい予算単価給与予算と四月の実行のベースがどうであるかというようなことまでもよく考慮してみませんと、その問題のものが一体どういうことになるのか、はっきりしない点はございます。しかし予算上の御措置に対する解釈としては、これはおそらく私も説明は詳しく聞いておりませんけれども、一般に伝えられるがごとくそうであろうかと考えておる次第でございます。
  22. 安井謙

    安井謙君 そこで私は先生の今のお話でよくわかりましたが、なるほどおっしゃいます格差が果してこの四月の予算単価実行単価でそのまま置いてあるかどうかという問題はたしか残るであろう、こう思うのであります。しかしその格差を含めまして、それが若干縮小するか、あるいは増加しておるかもしれませんが、現在よく言われております三分の一を、何かいかにも現実にベース・ダウンしたのだというふうな印象はありますが、私は今度の予算書からは実体的にはそういう問題は出てこない、むしろ格差というものも全体に含んで現実にすっきりとした予算編成方針が、予算といいますより賃金の実態が組まれ得るような財源を与えているように思われまして、従いましてこの三分の一が云々という言葉がこれはまあ観念論としましては、いわゆる基準内であろうが外であろうが、財源を従来どこから持ってきただろうかというふうな点につきましては、いろいろの議論もできるかと思います。もし今度の予算案が実施されますと、実質的には決してそういうものには影響なくて相当額のこのいわゆる賃金増加ができ得る仕組みになっている。そこでこの相当額という金が果して四百三十円にとどまりますか、あるいはまたそれを前後して若干の移動はまたそれぞれの内部事情であるかもしれませんが、まあ国鉄の例によりますと、一応これが基準のようでありますが、これだけのものがふえるというふうに出ていると思うのです。そうすると、まあ政府の具体的な措置政府に一任されている。また内容を決定するのは当事者間の両方の協議に待つ。こういう両立てから考えまして、私はこの三分の一をあまり今後議論する必要はない。それは協定のまあ実態によってきまっていくし、政府としてはそれに対する財源は見てある、こういうふうに思うのでございますが、その点につきましては、先生の御見解はどういうものでございましょうか。
  23. 藤林敬三

    参考人藤林敬三君) どうもち、よっと御質問の要旨がはっきりのみ込めなかった点もございますが、三分の一の問題をこれ以上もう論議する必要はないと、こうおっしゃいましたが、必要があるかないかは当事者の問題でございまして、仲裁裁定としてはこの点は別段そちらで問題になさろうがなさるまいが、仲裁裁定としては別段のことはないと、こう申し上げる以外にはないと思います。
  24. 安井謙

    安井謙君 今申し上げましたのは、私少し言葉が、表現がまずいのでございますが、今申し上げました意味は千二百円を単価にのせますと、いわゆる確定分の六百円というものはその中に含まれる。それからもし五百二十円に多少前後の差があるかもしれませんが、移動ができておるかもしれませんが、その五百二十円をその中に含んでも、一応はまあ八十円というようなゆとりが出る。その八十円のほかにさらに何がしの財源的な措置予算上与えられておるということになりますと、これはそのまま今度それを当事者同士の協定の際に、まあ五百二十円というものは全然別物だというふうに考えられて、あとその単価をきめましても、六百円と、あと残った六百円と五百二十円とのまあ差額を引いたものがそのまま今度のいろいろな賃金裁定のときの財源になるものでありまするから、五百二十円そのものは何ら移動がなくて、この残りの、幾ら増額されるかという問題に若干上下が出てくるに過ぎない。従いましてこの若干の金額の、あるいは相当額というもの自体については、これはまあ現在の状況から、これじゃ多いとか、これじゃ少いという客観的な批判は出るかもしれません。その点につきましては、今度の仲裁委員会では明らかな、この程度にしなきゃいかぬ、こういう具体的な御指示はないのであります。状況を見て政府措置しろ、こういう意味でありまするから、五百二十円自身の問題、あるいはこれを三分の一を削ったとか、これが削ったという意味が、財源的な措置から絡みましてもいかにも現実にベース・ダウンが行われるというふうな印象があるのでありまするが、その点は明らかに問題がないのじゃないか。問題はむしろこの相当額という方の金額に若干の出入りが出てくるというふうに私解釈できると思うのでございますが、その点についてのお考えをお伺いしたいと思います。
  25. 藤林敬三

    参考人藤林敬三君) いや、それはその通りです。
  26. 安井謙

    安井謙君 それから引き続きましてそういうことに相なりますと、具体的の措置政府措置に一任をされておるということでありますと、今申し上げましたような従来ありましたこの給与そのものについては実質的には変動のない、きめられれば現在のままできめてもいいような余地を残しながら、政府は若干のこれはいわゆる八十円をさらに相当上回った四百円前後のものの財源措置がしてある、こういうことになりますと、この上回ったいわゆるこの金額に対しては、これが妥当かどうか、あるいはこれを実際問題として現実にこのいわゆる協定の際にいろいろ議論は出るかもしれませんが、政府の今度とりました措置自体としては、この全体の裁定主文あるいは理由書から見て、具体的に何が背馳しておる、精神から非常にかけ離れておるような措置がしてあるという問題は一切ないように思いますが、その点につきまして、特に何かこういうところはいかぬのだというような問題がございますようでしたら、一つ指摘をいただきたいと思うのでございます。
  27. 藤林敬三

    参考人藤林敬三君) 予算措置上、国鉄の場合について申しますと、予算単価以上に、実行単価が五百二十円開いておる、その三分の丁を今回千二百円の中に組み入れるような結果になるような措置をされた、残るものが相当額であるかどうかということでございますが、まあ相当額というような言葉で議論をいたしますと、いろいろな議論がそこに出得るわけでございますけれども、仲裁裁定の立場から申しますと、このような措置は将来この開きをなくなされるようにということを明白にかつ勧告としてこれを申し上げたので、従いましてこれに政府がどのような措置をおとりになるかということについて、こういう措置をとられることははなはだ困る、これは裁定上、趣旨に合わなというように仲裁委員会は積極的にこれを強く申し上げる筋はないのでございます。ただわれわれが相当額給与改善が行われること云々ということを政府の御質問に対してお答えをいたしましたゆえんは、先ほと来安井議員のお言葉にもございましたように、私たち調停から仲裁へかけて事実上の具体的な労働問題を取り扱って参りました関連から申しまして、お説のようにたった八十円しか計算上残らなくてもいいんだという取扱いでは、これはどうも全般的に言って非常に一般的に申しまして、裁定趣旨にそういうことになると沿わないというので、この点は一つぜひ御配慮を願いたいけれども、しかし裁定趣旨そのものから言えば、その部分政府に勧告上将来の問題として期待を申し上げるだけにすぎないのでございまして、それを今日どのようにおやりになったからといって、積極的にわれわれはこれに対してどうこうを申し上げる筋はございません。
  28. 安井謙

    安井謙君 よくわかりました。それで先ほど鈴木委員からの御質問でもいわゆる基準内、基準外給与の操作についての規定が、まあこれは将来公社自主性を損うものじゃないか、こういう御質問もあったようであります。これに対しましては、先生はそれは公社のいわゆる自由裁量の権限から言うと、若干縮小になるが、しかし独自に格差をなくするといったようなこの裁定文の趣旨から申し上げますならば、あるいは公社政府関係を非常に妙な、一本化にするという趣旨から申し上げるならば、これはいけないとかいいとかとにわかに判断をすべき性格のものじゃないというふうなお答えのように承わりましたが、私どもまあそう思いまして、これ自体にはある程度の問題は含んでおりまするが、今後この裁定書の御趣旨のように将来格差と申しますか、世間でよくあやまり伝えられておりますやみ給与的な性格をなくするという点からは、こういった操作も技術的には必要であるかもしれぬ、こう思っておるのでありますが、まあその通り考えて置いてよろしゅうございましょうか。
  29. 藤林敬三

    参考人藤林敬三君) 今度の問題を限って今後給与予算の取扱いについて政府が監督的立場を強化される、公社の自主的裁量の余地が若干窮屈になるという措置につきましては、私は先ほど政府公社との関係を、対労働組合との関係、すなわち労使関係の上ではできるだけすっきり一本にする、これも一つ方法であるということを申し上げましたが、私自身の個人的な意見を求められたという仮定の上でお答えをいたしますと、どちらかといえば、企業体でいる限りは自主性がある方がいいにきまっていると私は思うのであります。がしかし、そういう個人的な意見をここで申し上げる必要も実はないので、そういうことを、さっきもそれらしいことを申し上げましたが、それほどはっきり申し上げませんでした。しかし、その私の個人的な意見はともかくといたしまして、私は、こういう問題の処理に当る者から言えば、そこがどのようになっておろうが、とにかく経験上は、公社政府との間の筋が一本でないことが、労働問題、労使関係上の、ことに賃金問題などを、いろいろなより複雑なものにしてきており、かつ団体交渉調停仲裁というような、こういう過程をいたずらに複雑困難ならしめているゆえんだから、従って、私のような問題の中に入る者の建前から申し上げますと、何とかこの点がもう少しすっきりしていただいた方が、われわれとしてははなはだやりやすい、こういうことを実は申し上げたのであります。
  30. 安井謙

    安井謙君 どうもありがとうございました。実は私の持ち時間があと十分ばかりありますが、社会党の方でもまださらに再質問があるようでありますし、もし先生のお時間が許されるようでありましたら、私またもし必要ならば、一、二お伺いしたいと思いますが、最後に、今私がお伺いいたしましたことで、今度の勧告の内容は、いわゆる予算単価に千二百円を足すという予算措置政府には法的には拘束をされる。しかし、その実際の取りきめに当たっては、現実に相当額の実収があるように措置されなければならないし、当事者もきめるべきである。そうして、その御趣旨に合うように、今の予算はなるほど相当額自身には若干議論の余地はございましょうが、これは勧告自体も具体的に御指示はないのでありますから、その趣旨に従って予算が組まれておる限りは、これは勧告には何ら――勧告と申しますか、裁定には、政府の今度とっている措置はそごしていない、こういうようなお答えをいただいたものと、了承と申しますか、理解をいたしまして、私の質問はこれで一応打ち切ります。
  31. 平林剛

    ○平林剛君 藤林委員長は、今度の公共企業体の紛争に当って、大へん御苦労なさった上に、さらに議会にたびたびおいでになって、仲裁裁定解釈にりきいろいろ御意見をお聞かせ願いまして、大へん御苦労なことと存じます。きょうは実は、先般来から政府と野党との間に、仲裁裁定解釈をめぐって、対立がございます。そこで、この対立点について、仲裁裁定をお出しになった委員会の御見解をお伺いし、紛争を円満に解決したい、こういう趣旨お答えを願いたいと思っておるわけであります。  政府は今日まで仲裁裁定については誠意をもってこれを尊重してきたと、こういうお答えがありました。しかして、誠意をもって尊重するということは、裁定を完全に実施をしておるものと解釈する、裁定を完全に実施したものが今度の補正予算であると、こういうお考えをお持ちのようであります。私どもは、これは間違いである。誠意をもって裁定を尊重しておるようであるが、裁定は必ずしも完全にこれを実施しておるものではない――完全にこれを実施しておるものではないという点を、きょうは藤林委員長からお答えを願いたいと思いまして、これから若干の御質問をいたしたいと思うのであります。時間もございませんから、そのものずばりでお尋ねをいたしますので、どうか御了承願いたいと思うのであります。  今回の仲裁裁定は、昭和三十二年度の基準内予算単価に千二百円を増額した金額の範囲内で四月以降の基準賃金労使が協議の上決定実施すること、これが仲裁裁定主文第一項であります。この予算単価に千二百円を増額せよという裁定をお出しになりましたのは、今まで衆議院社会労働委員会予算委員会藤林委員長が御説明になったのを総合いたしますと、公社の現行賃金が幾らかなかなかわからなかったので、予算単価に千二百円をのせろという裁定をお出しになった、こういうことが述べられておるわけであります。また、予算単価実行ベースとの開きがあるのは常識的に見ておかしいので、問題点を指摘する意味でこういう裁定を下したと、こういう説明が仲裁裁定の説明をなさった冒頭においてなされたのでありますが、この点について委員長のお考えをもう一度お聞かせを願いたいと思うのであります。
  32. 藤林敬三

    参考人藤林敬三君) その通りでございます。もう一度とおっしゃいますので、簡単にお答えをいたします。  実は調停段階から給与改善問題を取り扱っておりまして、従来ならば、調停委員会並びに仲裁委員会の結論は、四月以後の賃金は一万何千何百円であるというような工合に書くのが通常であったかと存じます。あるいはまた、現状一万何千何百円に幾ら幾らを加えるというような表現のし方をし、裁定のし方をいたすのが通常であったかと存じます。ところが、われわれの取り扱いますのは、四月以後の賃金のことを取り扱おうという場合に、現在四月になったら実行の単価がいくらであるかということがよくわからない。もちろん三月にやっているのですから、四月のことがわからないということもございますけれども、三月になっても、三月のこと自体もそうはっきりまだわからないというような状況でございましたのが、先ほど私のすでに述べましたところを指摘下さいましたように、私が仲裁裁定調停の段階でも、従来の慣行に従わなかった一つ理由でございます。  それから、先ほども安井議員のお言葉に対してお答えをいたしましたように、予算単価というのと実行ベースというのとの間にそう大きく開いている、しかもそれがずっと例年続いていろいろなものが累積されたりなどして開いているというような状態は、私は、予算上の措置についてはしろうとである者から言うと、どうもこれは常識上おかしいではないか。ぴったり一致するというようなことを期待することは、大きな組織であり、多人数を抱えておられる公社におきましては、なかなかもってそういう機械通りの正確さをここに期待することは、それはもとより困難でございましょうけれども、もう少し何とか常識的に一致しておってしかるべきではなかろうかという印象を持ちまして、だからこういう問題の指摘をいたしました。そういうために、予算単価という問題を取りましたのであります。それは御解釈下さいました通りでございます。
  33. 平林剛

    ○平林剛君 今のお答えで、今度の仲裁裁定主文は、公社の現行賃金がなかなかつかみにくいので、予算単価に千二百円増額せよと、こういう裁定をお出しになった。予算単価と実行べースの開きがあるのは常識的におかしいので、こういう問題点を指摘する意味予算単価に千二百円をのせた、こういう意味が明瞭になったと思うのであります。そこでこの点もずばりお伺いをいたしますが、昭和三十二年度基準内予算単価に千二百円を増額して、その金額の範囲内で四月以降の賃金とした理由は、これは裁定書を見ればはっきりわかる通りであります。公務員は昭和三十二年度の基準内予算単価を見ると、一万九千二百三十円、昭和二十九年の一月から見ると一二五%、つまりこの昭和二十九年一月を起点とする上昇率を見て、公務員と民間の権衡を考慮して千二百円の増額をお出しになった。国鉄の場合は、裁定が実施されても一二三・五%で、公務員の上昇率よりもやや低い。民間賃金について見ると、毎月勤労統計で上昇率は一二二・五%。従って予算単価に千二百円を増額をしても公務員の上昇率よりも低い、こういうことが理由書に書いてあるわけであります。もし公務員と同じ率に引き上げれば、本来もっとふくらまさなければならない。専売の場合には公務員と同じ率に引き上げれば、予算単価に本来は千五百九十二円を加算しなければならない、それだけは必要だ、こういうことが仲裁裁定の中に書いてあるのでありますが、仲裁委員会としてはこの千二百円を増額するということは、昭和二十九年一月を起点とする上昇率において、公務員と民間との権衡を考慮してお出しになった、こう理解してよろしゅうございますか。
  34. 藤林敬三

    参考人藤林敬三君) その通りでございます。
  35. 平林剛

    ○平林剛君 そこで昭和三十二年五月六日に仲裁委員会労働組合仲裁裁定解釈に関して指示申請書を求めらまれした。五月六日に公共企業体労働委員会の方から仲裁裁定に関する指示申請の回答書がございました。これは労使仲裁裁定の実施に当って意見が対立して解決が困難になったので、仲裁裁定の第六項により仲裁委員会の指示を求めて行われたものと理解をいたします。この回答は仲裁裁定にかわるべきものと理解をしてよろしゅうございましょうか。
  36. 藤林敬三

    参考人藤林敬三君) 質問に対してお答えをいたしておる場合は、すべてそのように御解釈してよろしゅうございます。
  37. 平林剛

    ○平林剛君 するとこの回答は労働組合に与えたのでありますけれども、同時に仲裁裁定解釈というのは一つでありますから、使用者側もこれを拘束するものとみなしてよろしゅうございましょうか。
  38. 藤林敬三

    参考人藤林敬三君) それは当然のことでございます。
  39. 平林剛

    ○平林剛君 そこで、昭和三十二年五月六日の仲裁裁定に関する指示申請の回答書によりますと、今次の裁定は、基準内予算単価千二百円を増額すべきことを明示した、こう書いてあるのであります。そこで政府の議会に提出した予算書を見ますと、専売公社の例を引きます。基準内の予算昭和三十二年の予算書で八十一億五千五百七十三万四千円になっております。補正予算で八十五億五千七百八十四万一千円であります。予算書は四億一千九百八十万七千円の増となっております。これが政府案です。これは私はしっかり計算をいたしましたから数字においては間違いがありません。ところがもし仲裁裁定通り基準内予算単価に千二百円を増額いたしますと、専売公社の場合は予算定員が三万九千七百八十七人でありますから、年間総額は五億七千二百九十三万三千円とすべきであります。もしかりに政府案の基礎になっております昨年七月の人員を基礎にいたしまして、これは三万八千二十六人といたしましても、年間総額は五億四千七百五十七万四千四百円とならなければならぬ。これは政府案は、基準内予算は四億一千九百八十万七千円でありますから、裁定通り総額には一億五千三百十二万六千円足らないわけである。すなわち千二百円より、しっかり基準内予算に増額していないという数字が現われるわけであります。これは明らかに裁定違反ではないでしょうか。
  40. 藤林敬三

    参考人藤林敬三君) 実は政府予算措置につきましては、政府から公式に公労委としてはこれこれしかじかだという詳細なる説明は承わっておりませんので、今平林委員のおっしゃいました数字につきましても、私はそう詳細なことを伺っておりませんでしたので、従って、今のような御計算につきましては、実は私も存じなかったのであります。ただそうおっしゃるような疑念がどこから生じたかということは、おそらく計算上からいえば、定員査定の問題にからむんじゃないかと推定をいたしますが、どうも私はよくその点は存じないとお答えするより仕方がございません。ただ私としては、一般的に聞いておりますことは、仲裁裁定第一項の基準内予算について、千二百円を加えるという措置は、これは政府としてはしているんだとおっしやるから、それならばそれで非常にけっこうだということをわれわれは申し上げておるわけでありまして、その点はそのように御了承を願いたいと思います。
  41. 平林剛

    ○平林剛君 今、私が指摘しました具体的数字は誤りがないのでありまして、いずれ仲裁委員会においても、この点は十分御検討を願いたいと思うのです。なぜこんなふうに差が出ておるかというと、これは仲裁裁定にないところの予算単価実行単価の差を今回の予算で削り取っておる、そこに問題があるわけであります。これはもっと議論をして参りますが、もう一つお尋ねをいたします。今次の裁定予算単価千二百円増額とともに、千二百円がそのまま実行単価に積み上げられるものではないという回答文書が労働組合になされました。そこで今まで仲裁裁定解釈を検討しました藤林委員長の議会における説明をよく読んでみますと、この意味はどういうことかというと、私の理解するところではこうなります。千二百円増額とするが、千二百円がそのまま実行単価に積み上げられるものではないという意味は、第一に昨年の調停案第一項の確定分をまずこれを解決をしなければならない。第二に定期昇給のための原資、これをとっておかなければならぬ。専売公社裁定でいえば、このほかに主文第四項の給与制度の改正、不合理、頭打ち是正のための原資を千二百円の中で含んでおるから、千二百円がそのまま予算単価に積み上げられるものではない、私はこういうふうに理解しております。具体的な数字で申し上げますと、国鉄でいえば、千二百円を基準内予算単価にのせる、これがまず仲裁裁定の意思である、千二百円を基準単価にのせる、これが仲裁裁定意味である。そうして定期昇給の円滑な実施を考えて、その分はこれを中で解決をしてもらいたい。これは百円になるか、幾らになるかわかりませんがこれは解決してもらう。それからもう一つは、専売公社の場合でいきますというと、主文第四項の給与制度の改正、不合理是正のための原資、これも中で解決をしなさい。こういう意味でありまして、このほかにいわゆる予算単価実行単価の格差は引けと、そういうことを引くと言っているので、千二百円がそのまま実行単価に積み上げられるものではないというふうに言っているのではない。私は裁定の正当な解釈をそう理解をするのでありますが、この点について委員長の御説明をお願いしたいと思うのであります。
  42. 藤林敬三

    参考人藤林敬三君) その通りでございが、最後におっしやいました予算単価実行単価との差の問題につきましては、将来合理的にこれを縮小するような措置考えられてしかるべきであるということをつけ加えて申し上げ、かつ、このつけ加えて申し上げたわれわれの期待が、即刻その一部のものが予算措置上実行されるというようなことになりましたようでございまして、そのものにつきましては、従ってすでに衆議院でも何回かお答えをいたしました通り、また、先ほども安井議員の御質問に対しお答えをいたしましたように、仲裁委員会としては、これが問題の中心であるということに今日はなっておりますが、しかしそのものは明確に私がお答えをいたしますと、その部分はわれわれは希望的に、勧告的に申し上げたことでありまして、政府がそれを直ちに実行されたからといって、仲裁裁定の立場からは、はなはだこれはけしからぬというような言い方はできないということを申し上げるほかはございません。
  43. 平林剛

    ○平林剛君 これは四月二十四日、社会労働委員会において社会党の議員の質問お答えになった藤林委員長の御意見でございまして、これによるとこうなっています。千二百円の中に含まれて措置をするのは、昨年の調停案第一項の確定分と定期昇給のための原資である。だからそれ以外のものは入っていないのだと明確にお答えをしております。
  44. 藤林敬三

    参考人藤林敬三君) それはその通りです。
  45. 平林剛

    ○平林剛君 国鉄総裁の質問に対してもこう答えられている。しかるに政府予算措置はそれ以外のものも入れておる。こういう意味では仲裁裁定を完全に実施をしているものとは言えない。私はそう思うのでありますが、その点についていかがでしょうか。
  46. 藤林敬三

    参考人藤林敬三君) それは予算措置上そのようなことをなさいましたようでございまして、仲裁裁定主文第一項から申し上げると非常に明瞭なように、基準内予算単価に千二百円を加えるということを仲裁委員会裁定趣旨といたしまして、そのようになさったということだけで、仲裁委員会は一応それでよろしいと言わざるを得ないのであります。予算措置上いろいろな問題が出たことにつきましては、予算措置上ああしろ、こうしろということをわれわれ申し上げたのでないということを、先ほど御質問のように、非常に明瞭なのは衆議院お答えいたしました。その点はその通りでございます。千二百円の中には、三十年の二月ないし三月に出された調停案の第一項確定分が入っておるし、それから新年度における昇給原資等も考慮しなければならぬし、専売の場合には給与体系の合理化についての労使間の問題もあるのだから、従ってこれがどのように落ちるかは、これはなお団体交渉の余地もあるので、原資的に明確には申し上げられぬけれども、もしそのようなことになるならば、それはその原資はこの中に入っているのだということを明確にこれは申し上げて、その通りであります。
  47. 平林剛

    ○平林剛君 はなはだ裁定解釈について明瞭になってきたと思うのであります。そこで、今政府からいろいろの質問があって、それでは予算単価実行単価の格差を今縮めたらいけないかと、こう言われたら、政府はこれを実施したらいけない、こういうわけにはいかない。ただし労働問題の解決ということではこれはまずいことになる。また理由の中に、こういう格差は常識的に見ておかしいといういうことを指摘した意味からいって、政府が格差を縮めてしまう、今縮めると、こういうことがはなはだけしからぬということは言えない仲裁の立場にある。また、こういうことを言っています。今縮めたことは、政府が御自由になさったことで、どうこうは言えない。これは四月二十六日予算委員会質問に答えられました。すなわち、格差を今縮めるということは、政府が御自由になさったことで、仲裁委員会の意思ではない、こう理解できるのでありますが、いかがでしょう。
  48. 藤林敬三

    参考人藤林敬三君) それはもう何べんもお答えをいたしましたし、今もお答えを重ねて申し上げておりますところで、もうこれ以上申し上げることの必要もないかと存じます。
  49. 平林剛

    ○平林剛君 今のお答えは、私が述べたことを労働委員会委員長もお認めになったものと思います。  そこで、結論から申し上げますというと、政府が今日まで誠意をもって裁定を尊重しているかという政府側の与党の質問に対しまして、先生は、それは誠意をもって尊重しておるというふうに思いますと、こう答えられておる。言葉の上ではその通りであります。しかし誠意をもって尊重しておるということは、今までの議論でわかりますように、仲裁裁定を完全に実施をしておるという意味とは違うと思うのであります。この点について一つ。  それからこの先ほどの回答書の中に、政府が千二百円の増額をすべきことを明示したけれども、千二百円から過去において生じた予算単価実行単価との差額が減額された額しか予算単価として増額されておらなければ、裁定違反となることは明らかである。こう書いてありますが、裁定違反という言葉が使われておるわけです。しかし、裁定違反にならないという言葉は、仲裁裁定は完全に実施をしておるという意味とは私は違うと思うのであります。この二つの言葉のニュアンスについて、やはり紛争の解決のために、最後の英断をもって委員長お答えを願いたいと思うのであります。
  50. 藤林敬三

    参考人藤林敬三君) 平林議員の最初のお言葉が最後の質問となって現われたわけでございますが、政府の態度が誠意があったかなかったか、あるいは裁定が完全に実施されたかどうかということは、実は衆議院社会労働委員会で、私は、誠意ある態度であるかどうかという質問を受けました際に、ちょっとお答えをどうかと思ったんですけれども、そう率直に御質問なさるから、私は相当誠意をもって善処なさったものと思うとお答えをいたしました。実はこういう問題については、誠意があるかないかとか、あるいは……というような言葉のやり取りは、ある意味においては私はお答えをしなかった方が、あとではよかったかと、その直後には思っております。と申しますのは、少しよけいなことでございますけれども、私は長年中労委等で労働組合の問題を取り扱っておりますが、調停案などを示します際に、労使双方からいろいろなその場での質問がございます。調停委員長としてはこれは口頭で答えざるを得ないのですが、そのときに、ときどき質問される方で妙な質問をされることのために妙なことになるおそれがある。というのは、やぶへびの質問をされることがございまして、ちょうどあたかもそれと同じような印象を今その意味においては受けました。もうちょっと私はその点を強く知っておればお答えをしなかったのですけれども、まあそれをお答えいたしました。今日も、だから誠意があるかないかというようなお言葉は、お互いに、これは程度の問題も含んでおりますのでどうかと思いますが、最後に完全な実施であるかどうかということについては、これはやはり多少お答えをしておいた方がいいと思いますので、明確に申し上げますが、主文第一項に関する予算措置につきましては、これは裁定中心でございますから、この中心に関する限りにおいては政府の今度の措置は完全に実施されたものと考えてよろしいと、私は考えております。ただし裁定全体は、労働問題の処置から申しまして、予算単価実行単価との差云々というような問題があり、これは将来云々というような問題を指摘をいたしまして、若干のわれわれ希望を述べました。その希望が将来という点にひっかかって、これは完全に政府がわれわれの期待通りになさらなかったような結果がここに現われそうでありますが、そこまで含んで仲裁裁定が完全に実施されたかどうかということは、問題がここにあるのであります。そこまで含んでおるならば、われわれの期待通り百パーセントなったとは、これは申し上げられません。しかし、この場合にも誠意の場合と同じように、果して今度の措置が完全措置であるかないかというような問題も、前提を置いてお考え下さいませんと、その言葉だけつかまえて御議論されても、私としても困ると申し上げるよりないと思います。  なお、この問いろいろ労働組合から御質問がございました。それに対して私は答えましたが、基準内予算単価に対してもしも千二百円をのせていないということになると、これは裁定違反だという言葉を使いました。そういう言葉を使ってしまいましたけれども、裁定違反というのは、どうも違反というのは言葉が若干不適当であったとあとで思っております。裁定趣旨に合わない、こういう工合に表現すべきだったと思いますが、それはもう明瞭でございまして、これが裁定中心でございますので、その部分が千二百円のせられないで、千円のせられるとか、九百円のせられるというような程度にしか措置がされないということになりますと、これは裁定趣旨に合っておりませんということは、これまた明瞭でございますので、そういう文書を書きましたが、意味はそのようであることを御了解願いたいと思います。
  51. 平林剛

    ○平林剛君 約束の時間がありますので、なおお尋ねしたいことはありますけれども、今日までの委員長の御苦労に対して感謝を申し上げて、私の質問はこれで終ります。
  52. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 予定の時間が参りましたので、藤林参考人に対する質疑はこれをもって終了いたしました。  藤林会長には早朝からお忙しい中をまことにありがとうございました。お礼を申し上げます。
  53. 藤林敬三

    参考人藤林敬三君) 私の都合で早朝にしていただきましたことをおわびいたします。
  54. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) この際、小林君に申し上げます。  一昨日の資料要求の件につきましては、再び防衛庁に提出方を促しましたところ、御要求のような資料はないとのことで、提出いたしかねるということでございますから(「おかしいじゃないか」「ないならないと、そのとき言えばいいじゃないか」「委員長、そんなことでいいと思っているんですか」と呼ぶ者あり)いや、お話がありましたから再度要求したんです。そうしたところが、御要求のような資料がございません、こういう回答でございます。(「怠慢じゃないか」と呼ぶ者あり)委員長としては、これ以上ちょっとやりようがございませんから、あとは防衛庁に一つ御要求を重ねて……。  引き続き質疑を続行いたします。  速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  55. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 速記を始めて。
  56. 北村暢

    ○北村暢君 私は、質問者が三人、四人出まして、裁定の問題、処分の問題等について相当詳しく具体的に質問が進められましたので、なるべくこれとダブラないように簡単に質問をいたしたいと思います。  まず第一点は、処分の問題についてでございます。このたびの処分問題が、二十三日のいわゆる抜き打ちの実力行使、これに関連する問題が非常に大きい、また世論の最も大きな批判の出たのもこれである。これに対して、今度の春闘全体についてと言われて説明されておる処分について、不当であるということを私どもは主張している。それは、その処分というものが一方的であるというところに私どもはこれを主張をいたして、それで、同僚の岡田委員質問に対して総理は、公労法違反の事実があれば処分をするのは当然だ、私は政府として、この際責任をとらなければならないようなことはないと思う、こういうことをお答えになっておる。それで、具体的に、私は二十三日の問題で、一体政府が責任をとらなくてもいいような形であったかどうかという点について、この点について再び運輸大臣その他関係者にお問いを申し上げたいと考えるわけです。二十三日の業績手当の支給については、運輸大臣は前から、と言いましても、十六日の労働協約ではっきりと二十三日に支給することを決定した。従ってこれについては運輸大臣は、あの紛争が起きる前日の夜までそれを知らなかった。そして翌日の五時まで支給を待ってくれ、にもかかわらず、ああいう実力行使が起った。こういうことを言われておるのでありますが、衆議院の段階においてのいろいろな参考人を喚問いたしましてやっている事実を見ましても、実際に、二十二日の日には、もう晩までには俸給袋に入っておった。そして、それを渡すか渡さないかというところまであったのでありますけれども、それを、実際は大蔵省との費目の流用その他についての了解ができなかった、こういうことのようでありますが、国鉄当局は、そういう内部事情を暴露することをおそれて、二十六日の総評のストというものを回避するならばこれを渡そうというようなことを持ち出してきた。そういうような実態にあったようでございますが、運輸大臣は、あのときの事情をもっと率直に説明を願いたい。
  57. 宮澤胤勇

    ○国務大臣(宮澤胤勇君) 私はしばしばお答えをしたところに変りがないと思いますが、今のお話に、私がお答えしたところと少し違った点もありますから、それもはっきりさせるので順序を申し上げます。  十六日の団交を国鉄当局者がするに当りまして、私は国鉄当局者の団交をする参考の資料として、仲裁裁定が下ったらば、政府は誠意をもって尊重すると言っておるけれども、これは、私の考えは実現することだ、実施することだ、具体的に、どうかその意味をもって一つ十六日の実力行使など起らないように、これは十五日の晩でありますが、できるならばそうなればいい、もちろん、十六日の実力行使を起さないために国鉄の当局者の努力しておられます。その努力しておられるのに、参考として、私だけの意見として、仲裁裁定が下ったらば、私はこれを実施する、こういう考え一つ政府の方をまとめていくつもりだからということを総裁にお伝えをしたのであります。その結果、今の二十二日まで私は知らなかったということは何かの誤解で、十八日ごろでありますが、業績手当は二十三日に出すことになりましたということを聞きました。私は月末ごろ出すであろうと思っておったところが、二十三日、どうして二十三日に出すのですかといったところが、給料と一緒にこれは払うことにするから二十三日に出す、そうですがと言ったところが、事務当局から、しかし資金源について一応大蔵当局と打ち合せなきゃいけません、そうですが、それじゃそれをやって下さい、こういうだけで、私は二十二日まで過ぎた。二十二日の晩になって、その話い合いにまだ少し残っておるところがあると、それはあした出すのに困るだろうから、それじゃ大蔵大臣にお話しましょう。で、世間では大蔵省がこれに干渉したとか何とか言いますが、私が二十二日の晩大蔵大臣に電話すると、大蔵大臣は何も知っておられない。そういうことがあるんですかと、こういうお話で、いや、実はあるんです。それじゃあしたの朝、一つ国会の時間の前にお話しましょうと、それからあくる朝――二十三日の朝、大蔵大臣にお目にかかってお話しましたところが、それは、それじゃそういうふうに一つお話の通りしましょう。こういうことで、ただそのうち、業績手当とかあるいは資金源について弾力条項とか、いろいろな分があるから、それも大体はお話の通りでいきましょうと、大蔵大臣言っておられるのです。そこで、あと事務的にその計数を左右する問題が二、三時間はかかるだろうと思いましたから、私は九時前に国鉄当局者に、監督局を通じて、これはもう出すことにきまった、心配しないでいい、大蔵省は何も問題がない、出すことにきまった。しかし計数的の手続があるから、まあ午後五時と言えば間違いないと、――こういうことをそこで言って間違うといけないと思いましたから、私は三、四時間よけいに勘定しまして、午後五時には必ず出るようにはっきりするから、それでもう出すことを言ってくれ、こういって国鉄の当局者にお伝えするようにしておきました。そして午後の三時三十分かにはっきりときまりました。それで出しました。従ってその間、私の常識的な考えからすれば、二十三日にもらうということを疑う余地は私はないと思っております。
  58. 北村暢

    ○北村暢君 再度質問いたしますが、運輸大臣は、十六日に国鉄当局と国鉄労働組合との間に、二十三日業績手当を支給するということについての労働協約ができていることについて、これを認めておられるかどうか、認めることについて。それはもう今のお話からしても認められておるようですけれども、これを認めているかどうかをお伺いしたい。
  59. 宮澤胤勇

    ○国務大臣(宮澤胤勇君) 私は十五日の晩は、業績手当まで、それが全部出るか出ないかということでなく、仲裁裁定を実施すると、こういうことで私は国鉄当局に話しておる。ところが十八日ごろになって、それは業績手当のそれにも今日まっておってこういうのだというから、なるほど、その団交の上で業績手当というものは当然出すことになったんだろうなあと思って、それは当然のことだな、こう考えておった。
  60. 北村暢

    ○北村暢君 そこで私は、労働組合と国鉄当局との間の労働協約ははっきりできておりまして、これは協約を履行するということは国鉄当局者の責任であります。それが大蔵省と話がついておるようであり、ついておらないようであり、大臣が二十二日に大蔵大臣に電話があるまで大蔵大臣が知らないとか、知っているとかいうことは、これは労働組合とは何ら関係のないことなのです。今、先ほど来藤林仲裁委員長が言っているように、政府と国鉄当局との間の事務的な問題、あるいは連絡の問題の不備であって、これは明らかに労働組合の責任でもなければ何でもない。これに対してああいう状態になったことについて、一体運輸大臣はその責任を感じておられるのかどうなのか、この点をまずお伺いしたい。
  61. 宮澤胤勇

    ○国務大臣(宮澤胤勇君) もちろん、私ども運輸省と大蔵省との資金源の話し合いになったということは、政府部内……労働組合の関するところでないことはもちろんであります。全く政府部内のことなのであります。労働組合としては、国鉄当局者との話し合いに信頼していただければいいので、私どもがどう動こうと、それは別に労働組合には関係は私はないと思う。国鉄当局者から団交以来言明しておるところを信じて行動してもらえば、信じてもらえば、それ以上の話といういろいろな雑音は、これは別個の問題だと、こう思います。
  62. 北村暢

    ○北村暢君 再びお伺いしますが、私は、今私の質問に答えておらないと思うのですが、とにかくあの事態を、紛糾を起すということは、運輸大臣は五時まで待ってくれと、こういうことを言ったんだと、こういうふうに言っておられますけれども、その肝心かなめの交渉の相手である国鉄当局と、それから労働組合とは、この問題については二十二日の晩から二十三日にかけて、もうこれは対峙しておるんです。だから、そういう中で九時まで待ってくれ、十時まで待ってくれ、二時まで待ってくれ、こういうふうに逐次やってきている、その中で結論が出ない。その当日は二十三日でありまして、土曜日、子供さんのためにランドセルを買ってやるとか何とかということで、業績手当の入ることを切実に願っていたこの労働組合が、十六日の協約にかかわらず、土曜日の午前中にこれが支給されないということになってくれば、これは激高してくるのは当りまえです。そういう点について、いかようなことが国鉄当局と運輸大臣の間に、あるいは大蔵省との間にあろうといえども、そういう不手ぎわを起したということについては、運輸大臣並びに国鉄当局者は責任を感じておらないのかどうなのか。これはこの前の言明からいうと、責任は感じておらぬと、こういう言明になっておるから、私はこれを追及しておる。
  63. 宮澤胤勇

    ○国務大臣(宮澤胤勇君) これは私の考えを申し上げますが、責任を感ずるということは一体どの程度のことか。一般的にこういう国鉄の実力行使によって国民に非常な御迷惑をかけていると、そういうことに対してお前は責任を感じないか、こう言われれば、国民に御迷惑をかけたことは、はなはだ相済まないと、こういうふうに考えております。しかしながら、二十三日に出す業績手当が二十三日には出さないぞと、こういうようなことになりまするならば、そこに約束にたがうという問題が起きましょうけれども、一般社会的な通念というか常識といいますか、その日に出すのが、現に給与する者が出すと言明しておって、一日や二日おくれるということがそんなに……、その日にはすでに給料は渡るわけであります。で、業績手当というものが二日や三日実際におくれるということは、世間で賞与を一日や二日おくらす、給料さえ一日や二日おくれる。幾日に出すというものが一日や二日かおくれるといって、そんな事態を起さなければならないということになるということは、私どもの常識では考えられない。これは社会的に考えられない。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)いかなるところにおいても一日や二日、給料さえもきょうが明日になることは……、出しさえすればいい、これは出す、晩の五時になればちゃんと出す手続をする。それが明日になっていけないとか、その間に疑いがあるとか、大蔵省がどうであるとか、そういうようなことは、私は全くそういう事柄によってあの大きな行動を起さなければならぬ、その責任が私どもにあるということは、私どもの常識では考えられない。(拍手)国鉄当局者にしろ、私どもにしろ考えられないと思うのであります。
  64. 北村暢

    ○北村暢君 私は争議自身の問題について聞いておるんじゃない。労働協約でもって二十三日に支給するということについて、協約を一日や二日おくらせてもいいという、非常に運輸大臣の麻痺した、ルーズな考え方、これは絶対に許すことはできないと思う。と同時に、その大蔵省との折衝とか何とかいうことについて、せっかく国鉄当局が、もう俸給袋の中に入っておる、俸給と一緒にそれを今渡すか渡さないかの差の問題、それについて国鉄当局から言わせれば、もう袋に入っておるのだから、それを渡すということは事務的に準備ができておるはずだ。それについて運輸大臣が大蔵大臣と交渉するとかしないとか、話し中で待てとか言う。土曜日は午前中勤務というのは、これは常識である。その中で、そのものが支給できないということについての事務的な手続について落度がなかったか、あったかということを聞いておるのであって、それは、現に支給されないという事実について、落度があると私は理解するのだけれども、大臣はどういうふうに理解しておるのかと、こういうことを聞いておる。
  65. 宮澤胤勇

    ○国務大臣(宮澤胤勇君) 国鉄当局者との団交は、二十三日に支給するように認可の手続をとるという約束になっておるのであります。ですから、それが二十三日が、その日一ぱいで、まあ五時までですから、一日ぐらい手続がおくれるということは、私はそれで重大な責任が生ずるというように考えるということは、少し物事が無理ではないかと、こういうふうに私は感じております。
  66. 北村暢

    ○北村暢君 どうしても大臣は、その事務的な手続に不備があったということをお認めにならないようでございますけれども、これはお認めにならなければ認めないでよろしいと思う。認めないでよろしいと思うのです。けれども、その認めなかったこと自体というものは、大臣の認識を少し改めてもらわなきゃならないと思うが、国鉄の労働組合と国鉄当局がですよ、朝から対峙をして、そして非常に深刻な時間をじりじりやっているのですよ。そういう中でのんびりして、一日ぐらいおくれようが、おくれなかろうがというような、そういう事態というものは、非常に神経が麻痛しているのじゃないか、こういうようなことについて、私は、まあそれ以上答弁できなければそれでいいと思います。  ここで、一つ労働大臣にお伺いしたいのだが、今、運輸大臣の言っておられる、二十三日に支給すべしという労働協約になっているものが、それが一日や二日おくれようが、それは道義的な問題はどうだか知りませんよ。しかし労働協約というものが、そういうふうに簡単に取り扱われていいのかどうなのか、労働大臣の見解を承わりたい。(「汽車がおくれたっていいということだよ」と呼ぶ者あり)
  67. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 労働協約は、やはり決定された通りいくことが望ましいと思います。現実においてやはり二十三日におもらいになったのでありますから、私はそれで差しつかえないと思います。
  68. 北村暢

    ○北村暢君 労働大臣も、二十三日に支給されたからそれで差しつかえない、こういうふうに簡単にこの問題を処理されているが、あなたはあの当日、どれだけあわてふためいたかわからない。ね、そうでしょう。大体官房長官が、この問題が起って汽車がとまりそうだ、電車がとまりそうだというようなことで、あわてふためいてやったことは事実なんです。ああいう緊迫した時期に、そういう簡単に、二十三日に支給されたから、それで何ら責任はない、こういうふうに答弁せられるということは、労働問題というものに対する認識というものを、非常に私は軽く感じておるのじゃないか、そういうことでは、今後のよい労使慣行というものは出てこないのじゃないか、こういうふうに考えます。  時間がございませんから、この問題については私はこの程度にいたしたいと思いますが、とにかくこの点について、私は国鉄労働組合に対してあの大量の処分者を出しておきながら、その事務的処理なりあるいは政府と国鉄当局との連絡の不備なり、大蔵省との不備なりというものについて、何らの反省と何らの責任とを感じておらないようなこういうあり方というものについては、まことに遺憾であると思うのです。ですから私は、今後こういう問題について、政府部内の連絡というものは、これはもっと真剣にとってもらわなければならないということを要望いたしまして、この点について終りたいと思います。  次に、裁定の問題でありますが、裁定の問題につきましては、まず論点はしぼられておりまして、三分の一の問題にしぼられてきているようでございますが、これは後ほどこの点について再び申し上げたいと思いますが、まず第一に、先般の大蔵大臣の答弁の中で、四現業については大したことがないので、これは費目の移流用でやる、こういうことを言われた。また三公社と郵政の現業については、給与総額の中の倹約のできるものについてはこれをやり、できないものについては補正を組んだ、こういうことを言われたのですが、四現業について大したことはないと、こういうことで移流用と、これは私は大したことがあるとかないとかいうことは、どこから出てくるかわかりませんけれども、小さければ小さいなりにその総額予算も小さい、こういうようなこと、だろうと思うのであります。従ってこの点については、特に林野関係でございますが、林野関係については、定員内の職員においては約四億足らずでありますけれども、定員外の職員を含めると十八億八千万ぐらいになる。これは大したことがないという額ではない。国有林野特別会計四百二十億程度から見ますと、十八億八千万という額は、決して大した額でないと簡単に片づけるわけにいかないと思うのでありますけれども、これについては私どもは当然補正ということをなすべきである、費目の移流用ということで済ますべき問題じゃない、こういうふうに考えるのでありますけれども、費目の移流用でもって、自後の事業に支障がないのかどうか、この点についてお伺いいたしたい。
  69. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 今回裁定の出ました三公社現業について、いずれも国家機関予算でございますので、重要でございます。ただ問題は、補正予算を組みました三公社、郵政事業と、他の四現業とは、かなり違った点があるのであります。三公社、郵政事業は、それが国の財政、また国民経済的に申しまして、電話料金、郵便料金あるいは国鉄運賃の将来のあり方に影響する点を考えますると、他の四現業よりはかなりウェートが違ってくると思うのであります。それから郵政事業につきましては、移流用だけではできません。他の会計から繰り入れしなければならぬ、これは五現業と郵政事業は違ってきております。こういうことで組まざるを得ません。それからまた三公社につきましては、今問題になっております予算総則の変更ということがございます。従いまして、実質的に申しましても、また予算の形式から申しましても、他の四現業とは違う点がございますので、将来のことを考えまして、補正予算を組んだ方がいいと決心したのでございます。それから残りの四現業につきましては、お話の通りに、林野事業につきましては、移流用をいたしましても、その数が多くなりまするが、印刷、造幣、アルコール、専売とは違いまして、数は多くございますが、事業の性質が経済界の動きとともに動くものでございます。しかも職員以外の方々に対しまして十四億に上りますが、四百億余りの事業のうちで、この程度の流用ならば、しいて補正予算で御審議願わなくても、他の三現業と同様に取り扱うのが至当ではないか。こう考えまして、四現業の方は、大蔵大臣に与えられました権限内におきまして、各所管大臣と打ち合せの上、補正予算を組まないことにいたしたのであります。
  70. 北村暢

    ○北村暢君 そこで三分の一の問題に入りたいと思いますが、今まで衆議院、参議院のこの論議を聞いて参りますと、大体国鉄が例に出されまして、五百二十円の云々の問題にしぼられておるのでございます。そういうことで、この五百二十円の問題についても、大体私は内容的には郵政においてもあるいは国鉄においても、それぞれにおいてみんな違う、こういうふうに感じておるのであります。特に林野の場合、ほかの全部の仲裁裁定にあるのでありますけれども、林野の場合に限ってだけ給与ベース云々についての将来の実行単価、それから予算単価との云々という問題が仲裁裁定の中にどこにもないのであります。従って、この衆議院議事録を見ましても、藤林委員長は、林野の場合は普通の公務員とほとんど変りがないために、実行単価予算単価とは大した差がない、従ってこれは出してないのだ、こういうふうにお答えになっておるわけであります。そういう点からしましても、これは林野だけでは私はないと思うのでありますけれども、とにかく、この三分の一で引かれているが、林野の場合例をとりますというと、二百十九円であります。この二百十九円のうちの三分の一の七十三円だけを引く、こういうことになって、予算はございませんけれども、費目の移流用――考え方はそういうふうになっておるわけであります。それでは、この二百十九円というものが一体どんな要素のものであろうか、こういうふうに検討して参りますというと、林野の場合、二十九年から以後何らの確定をやったものもないし、労働協約らしいものはないのであります。ないにもかかわらず、予算単価実行単価との間にこれだけの差が出てきた。これは一体どういうことか。私どもは普通に定期昇給なら定期昇給をやらしていく、こういうことになりますというと、やって参りまして、こういう差ができてきた、こういうふうにしか考えておらないのであります。従って、そういたしますというと、この差というものは、予算単価そのものが非常に窮屈にきめてある。たとえば、昇給原資四%。五%だったものを四%というようなことでやってきている。そういうような点からして、従来の五%が四%に切りかわる。そういうようなことで、定期昇給のたびに団体交渉でもってその財源云々というものを論議してきめなければならない、こういう実態にあるわけであります。従ってそういうようなことが積み重なってこの二百十九円というものが出てきた。そうしますというと、予算単価そのものが非常に窮屈であったのではないか、こういうことが考えられるのであります。従って、費目の移流用というようなものも、四現業の場合、簡単にできないような状況になるのですから、そういう実行単価予算単価と特に開きが出て、これをどうしなけりゃならないということは出てこないのが当然じゃないか、こういうふうに考えるのですが、それにもかかわらず、今度の場合、一様にこれを三分の一引いておるということについて、少し過酷でないかというふうに考えるんでありますけれども、この点についてはどういうふうに考えておられるか、お伺いしたいと思います。
  71. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 予算単価に千二百円を加えることにつきまして、引く引かないの問題はございまするが、御承知通り、従来、給与総額をきめまして、基準外基準内と分けていないところにおきましては、三公社のごとく、一項確定分の六百円というようなものがございます。従いまして、引く引かぬが問題になるのでございます。造幣、印刷、林野、アルコールというようなものは、昔から基準内賃金基準外賃金を分けておりますから、そういう協約がない。従って一項確定分を引くとか引かぬとかいう問題は起らないのであります。  で、ただいま申し上げました四現業の方におきましては、そういう問題が金額的に非常に少い。しかし、実際問題から申し上げますると、やはり予算単価実行単価とはある程度違っております。そこで他の三公社、郵政等と歩調を合しまして、同じ基準のもとに調整をしたのでございます。当初の裁定には、林野につきましては格差の問題は出ておりませんが、あとから仲裁委員への質問に対しましても、やはり林野も同様に取り扱うように仲裁委員会からの返事があったと記憶しております。
  72. 北村暢

    ○北村暢君 そこで、私はこの今度の裁定の実施の予算考え方というものについて、論議はもう尽されておりまするので、私はこれはもう全然省略をしているわけなんですが、とにかく、この予算の組み方あるいは費目の移流用にいたしましても、その算定の考え方というものの大蔵省の考え方というものについてでありますが、それについては、予算は大体定員法による定員に対して、予算定員というものでもって予算を組んでおる。これをさらに今度の場合は、非常に実質定員に近いものにしてこれにかえている。これはもう明らかなわけでございます。従って先ほど私が言いました基準内と基準外の費目の移流用すらできない中で、予算単価実行単価の間に差が出てきておることは、そういう窮屈な中ですら実行単価との間に差が出てきておるということは、これは何としても若干の欠員を作って、そうして運営しなければ、実際に定期昇給すらさせ得ないというような予算になっておるわけなんです。これは大蔵省の査定がそういうふうになっていることは、非常に機械的で官僚的で一律的なんです。これは特殊な条件というものは一つ考えられないで、そういうふうに査定されている。そこにまず問題がありまして、こういうようなことをやってきますというと、団体交渉をやるといいましても、何を一つ団体交渉をやるのか、すべて大蔵省に行って話をつけてこなければ何一つ団体交渉に応じられない。こういうことは、実質的な団体交渉の否定になる。林野当局あるいは郵政当局なり、こういうものが、団体交渉をする能力というものがなくなってくる、こういう結果にならざるを得ない。従って、もう団体交渉の相手は郵政当局でもなし、印刷局長でもない、林野庁長官でもない。それで大蔵省と団体交渉をやらなければならないような実態になっておるということははっきりしておるのです。従ってこういう点について、先日来からよく主張せられておる、三公社というものの企業体としての運営というものの自主性を認める、それから、五現業現業としてのある程度の自主性を認める、こういうことでない限り実質的な団体交渉の否認になってしまう、こういう結果にならざるを得ないのである。そういう点について私は大蔵省の今までとっております予算の査定というものについて非常に酷でないか。このことを改めない限り、労使のスムーズな団体交渉というようなものはできないのじゃないかというふうに考えるわけなんです。従ってこれに対する大蔵当局の反省というものを求めたい。これは二十三日の国鉄のあの抜き打ち実力行使というふうなものについても、大蔵大臣は差しとめたこともなければ、干渉したこともないと、こういうふうに言われておるのですが、実質的にああいう紛争に立ち至ったということは、これは非常に大きな権限を大蔵省が持ち過ぎているという結果から出てきておると思う。そういう点について大蔵大臣は、今後の三公社現業給与の、特に団体交渉の対象となる給与の運営について、いかように自主性を認めてやっていくつもりかどうかということについての所見を承わりたい。
  73. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 先ほど来、二十三日の業績手当の支給の問題が話題に上りましたが、運輸大臣がおっしゃいます通りに、問題は私は二十二日の夜十時ごろ聞いたのでございます。二十三日の朝さっそく協議いたしまして、で、問題は、二十三日にお出しになるのが業績手当だけかと言うと、そうでない、やはり弾力条項によりまして、業績手当とあわせて支給したいというふうなお気持であったのでございます。で、御承知通り、業績手当は従来やはり年度末ぎりぎりに出すのが普通でございます。実際の業績を見ていこう。で、この業績手当を出しまする方針によりまして、私は運輸大臣のお話を、それはよろしゅうございましょう。そうしてまた弾力条項につきましては、運輸大臣の権限でございますから、御自由におやり下さい。こういうことで話はすぐ済んだのでございます。で問題は、今後の三公社現業予算の範囲内で団体交渉ができるか、これは業績手当は全然別個でございますが、業績手当以外の点についての団体交渉予算の範囲内でいくべきかあるいは団体交渉を主にして予算は二の次にするかという、こういう問題であると思うのでございますが、私は今の仲裁裁定その他全体から考えまして、ある程度の予算に拘束されることは法規上やむを得ない。しからばその法規に従いまする予算のうちでどの程度の問題があるか、自主性ができるかということでございます。で、御承知通り給与総額というものをきめまして、基準外基準内を分けておるところと分けていないところとにおきましては非常な差があったわけでございますが、今回はそれを一律にいたしまして、そうしてまた大蔵大臣といたしましても、できるだけ三公社現業自主性が行われまするように、できるだけ協力していくよりほかにないと思います。予算を主にするか、団体交渉を主にするかという大きい問題につきましては、これはまた今後別途に考えるべき問題だ。今御審議いただきました予算の範囲内におきまして、われわれとしてはできるだけ自主性を発揮できるように協力していきたい。しかし予算予算として、執行の立場にあるものは十分考えなければならぬ、こう思っております。
  74. 北村暢

    ○北村暢君 最後に一つだけ、岸総理が見えておりまするので、最後に私は処分の問題についてだけ一つお伺いいたしたいと思います。  処分の問題については、先ほども国鉄の二十三日の問題について、国鉄当局者、運輸大臣に質問いたしておりますが、これに対しては、どうしてもあの紛争に至った点について政府並びに国鉄当局者は事務的にも何も大した責任を感じておらないようでございます。労働大臣もまたそのようでございます。前の岡田委員質問に対する岸総理考え方もそのようでございます。しかし私は、これはやはりあれだけの大きな犠牲者を出したのでありますから、それに対して私はやはりそれ相当に政府並びに国鉄当局というものも、あるいはその他の三公社現業の当局者も、この問題について真剣にやはり、組合の処分者を出したことだけでなしに、真剣に問題を考えてみる必要があるのじゃないか。そうでない限り、いかに法に照らして違背している者に対しては厳罰主義だ、こう言っても、私は今後のよき労働慣行というものは出てこない。いわゆる処分と実力行使の悪循環をきたし、決して今後の正常な労使関係、好ましい労使関係というものはできてこないのじゃないか、こういうふうに考えるのです。従ってこの問題について責任を感じておられないようではどうにもならないというふうに考えるのでありますが、岸総理ほんとうにこの処分問題の起りましたものについて、当局者に責任がないと感じておられるのか、それは私は、ただ単に行政処分をするとか、しないとかいう問題ではなくして、岸総理として、労働政策として、また道義的にいって責任を感じておられないのかどうか、この点を一つ明確にしていただ工さたい。
  75. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 今回の春闘自身につきまして、われわれは政府といわず、あるいは経営者側も、それから労組の人々も、十分反省をすべきことは私は反省をしてやらなければならぬと、要は今御指摘になったように、われわれはこういう公共企業体の事業の本質から見まして、それが国民の生活、また国民経済に及ぼす影響というものがきわめて大であるがゆえに、われわれはこの運営につきましては、将来ともよき労働慣行を作り上げていって、そうして国民に迷惑をかけないように、また国民全体から見ての手ひどい批判を受けないように持っていかなければならぬということは、これは言うを待ちません。しかし、今回の、その前提として私はしばしば申し上げているように、政府の責任として行わなければならぬことは言うまでもなく、一面において仲裁々定を忠実に実現するということ、また経営者及び労務者側におきましても、あくまでも公労法、その他これらに関するところの法規はこれを順守して、そうして将来に向ってよき労働慣行を作っていくという心がまえが必要だと思います。こういう意味において、今申すようなあらゆる面において反省をすべきものは私は反省をしていかなければならぬことは言うを待たないと思います。ただ処分問題につきまして、この事態を、私どもは実力行使の実態というものを十分に、慎重に調査いたしました結果としてこういう処分を出したことは、はなはだ遺憾でありますけれども、これまた将来によき労働慣行を作っていく上の前提である法規を順守してしくという前提から見ると、まことにやむを得ないものであると、ただ、それでは政府及び経営者側においてどううい責任をとるのだというお話になりますというと、私自身これを法規的な意味における責任をとるべき実情にはないと、こう考えておりますが、今申したように、将来に向かって同様の事態を引き起さないように、十分にこの今回の春闘全体に関して三者はそれぞれ私は反省すべきものは反省すべきである、かように考えております。
  76. 鈴木強

    鈴木強君 私は岸内閣の労働政策、労務行政に対して岸総理からいろいろお話を伺っておるのでありますが、言われることは、労使の正常な慣行を作る、そして、あくまでも自主的に労使間において問題を解決するようにやっていくのだ、しかも、この労使間の問題については、政府がみずからこれに介入するということは避けていきたい、そういうお話を承わりました。まことにごもっともだと思いますが、しかし、私たちがそういうきれいなお話を聞きましても、実際に一つ一つの現実の中で見て参りますときに憂える点は、たとえば、岸総理が一昨日の本委員会において、平林委員質問に答えて、現在の総評が不健全である、そういう断定を下し、なおかつ政治闘争に走って、その面を運動方針を書きかえてもらいたい、こういうこともおっしゃつた。このことは、少くとも一国の総理として責任ある国会における答弁としては、きわめて不穏当だと考えるわけです。(「その通り」と呼ぶ者あり)個人的にはいろいろお考えはあるでしょう。しかし、われわれは、あくまでも岸内閣の労働政策と考えておるわけですし、その点を質問しておるわけですから、こういう点はきわめて遺憾に思います。そういう点をいろいろ考えてみますと、私は終戦後の労働運動というものが、いろんな紆余曲折を経て今日まで発展をしてきております。この過程においては、いろいろ現在の幹部諸君が、やはり破壊的な、極左的な方向を脱して、あらゆる政党や団体から主導権を奪われないように自主性を持っていこうという努力をしてきているわけです。そして、祖国の再建と平和の確立に努力していくというのが今日の結論だと思います。  そこで、いろいろ問題はありますが、きょう一つ総理にはっきり伺いたのは、あなたがそうおっしゃっているのですが、あくまで政府が労働運動に介入しないということを、私たちがそういうことがあってはいけないということを何回か申し上げているにかかわらず、もう現に十一日の国鉄の実力行使に対して六千名からの警官隊を動員して、そして挑発的な態度を政府は現にとられておるし、また職場大会に警官が入っていって、そしていろいろ妨害をしている。こういうことは、総理、どうでしょうか。あなたがほんとう労使間において問題を解決するならば、その警察力を使って労使の中に介入するということは、あなたの言われたことと違うと思うのですが、その点どういうふうにお考えになっておりますか、まずお尋ねいたしたいと思います。
  77. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 言うまでもなく、この労使間の問題につきましてよき労働慣行を作るという意味から申しますというと、労使の問題は労使の間において解決されるように持っていかなければならぬこと、言うを待ちません。ただ政府としては、言うまでもなく、こういう公企業体の仕事というものが、事業そのものが国民に、労使関係から見るというと、第三者の関係にある国民全体の生活や、あるいはいろんな便益の点と非常な関係を持つことが強いのであります。従いまして、われわれはやはり公共の福祉を維持し、政府として秩序を持ち、国民にあらゆる場合において迷惑のかからないように、われわれとしてはすべてのことが行われるようにしていくことは、これは私は政府の責任だと思います。しかし、それが不当に労使間の協調を妨げるような意味における弾圧だとかあるいは不当な干渉であるとかいうことは、これは私はあくまでも避くべきものであって、従ってその点につきましては、十分に関係主管大臣にも私はかねてから申しておるところであります。ただ、しかし、同時に今申すように、これらの事業に関しまして、今の労使の争いというものが法規を逸脱し、ひいて国民に迷惑をかけるようなことのないように、十分労使ともに自重してもらい、自省を促すということは、私は政府の方針として考えなければならぬ。しかし、それが、今言っているように、一歩あやまればお話のように非難を受ける点も出てくるのですから、ここは十分に留意するようにかねてから申しているわけでございまして、私自身、また政府自身が労使の間の争議に直接入っていって、介入をして、これを将来のよき労働慣行を作ることを妨げるというような意思は毛頭持っておらぬことを明らかに申し上げておきます。
  78. 鈴木強

    鈴木強君 一般論的に総理の述べられることは私もわかるわけですが、私は具体的な問題を提起しているわけです。たとえば、警官隊を出動させるということは、官房長官が何か談話か何かで言っておられたようですが、政府の方針として、十一日、十二日の公労協の実力行使に対して六千名とまあ新聞には出ておりましたが、警官隊を配置したということですが、しかも、その一部が現実にその具体的に職場の中に入っておられるということですが、こういうことは、佐賀県の教組の問題等にも関連がしてくると思いますが、何かしら警察権力によって労働運動に介入し、弾圧をしようという方針があるのじゃないか、これをわれわれは国民とともに憂えるわけです。ですから、具体的にどうしてそれでは十一日にああいう措置政府がおやりになったんですか、そのことを私はお聞きしているわけです。
  79. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 今申しましたように、この十一日のいわゆる実力行使が、いろいろな国民に迷惑を及ぼし、また秩序を乱して、そうしていろいろ問題を起すということのないように、私は警官を必要な所に配置したのであって、それ以上の考えは私ないと思います。また現実にわれわれが聞いているところにおきましても、それ以上の私は事実はないように承わっております。
  80. 鈴木強

    鈴木強君 その点は問題が残ると思いますが、私は特に、たとえば政府が介入しないと言っておきながら、今度の争議に対しても、たしか田中官房副長官は、具体的な争議――争議というか行動に対して十分に監視をして、そうしてやれというような趣旨内容をはっきり打ち出しているようですが、これはあくまでも国鉄なら国鉄の当局と労働組合の中において、そういう点はもし違法行為があれば指摘するのであって、政府自体がそういう態度をきめて、そうして上からこう押しつけていくというような考え方が非常に、今あなたの言っているのと違った意味で、われわれとしては危惧を持つわけですから、そういう点非常に問題が残ると思いますが、時間の関係もありますから、今後あなたのりっぱな言っておられるような点を、一つ現実の問題として生かしていただくことを要望を強くしておきます。それからもう一つ総理にお伺いしたいのでありますが、日本においては公社制度は、国鉄、専売、さらに電電と三つがありますが、二十四年に国鉄、専売が、二十七年に電電が公共企業体になりました。私たちはこの法案が国会にかかりました当時も、いろいろと勉強さしていただきましたが、少くとも公企体の形態に持っていきましたのは、従来の国有国営のどうかすると官僚的な窮屈な面を脱却して、民間の長所を取り入れて、企業体の自主制を持って、そうして事業を推進していくんだ、能率を上げていくんだ、成績を上げていくんだ、こういうことで公共企業体に私は移行したように考えるわけです。そうしてすでに五年なりあるいは七年間を経過して参りましたが、いろいろと私たちこの事業に対して、労働組合側もあるいは経営者側も一生懸命努力をしてきたと思うわけですが、今回の、たとえば仲裁裁定の中に表われておりますように、せっかく自主性を持たせて運営して参りました公共企業に、どうかするとブレーキをかけ、さらに大きなワクをはめるようなことが、企業総則の問題はあとから私は質問しますが、そういう中にも出て参っておりまして、私たちは非常に本来の公共企業性を没却する方向に今の政府はお考えになっているんじゃないかということを心配しております。そういう点で、すでにけさほどからも藤林委員長質疑があったわけですが、二十九年に臨事公共企業体合理化審議会が特たれまして、当時の原議長吉田総理大臣答申をされております。その内容も私たちは十分に考えてみました。さらにまた、公労法改正当時の経緯を考えてみましても、やはり一口に言えることは、もう少し自主性を持たせろ、こういうふうに言われておると思うのです。そうして岸総理もずっと御関係があったと思いますが、特に今首相として、いろいろ私たちは仄聞するところによると、公社制度に対してもう一回再検討を加えよう、こういうようなお話があるようですが、総理として今どういう御構想を持たれて公企体にメスを入れようとしているのか、もしお考えありましたらお答えを願いたいと思います。
  81. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) ただいま御指摘のありましたように、公社制度の、公企業体のこの制度につきましては、従来のいわゆる国営における欠点を除いて、そうして民営の長所を取り入れて、これらの事業の本来の目的を十分に達成せしめるように、両者のいわば長所をとり、短所を補うという意味でできておることは言うを待ちません。ところが、日本においての公企業体の従来の経営を見まするというと、いろいろの点において非常にこれはまあ悪い批評、極端な過酷な批評をする人は、両者の欠点だけを持っておる、だからいかぬというふうな過酷な批判をする人すらあるのであります。もちろん、私はこの公企業体というものの、新しいそういう企業体ができまして、今日までの経緯を見まするというと、経営者側におきましても、労務者側におきましても、その本来の設けられた趣旨を実現するようにずいぶんいろいろな苦心をして努力をされておると思います。しかし事自体が、きわめて事業が公共性を持っており、同時に一面、どうしても国の予算に縛られるという半面を持っておる。この間において自主性をどこまで認めることがいいかという点につきましては、過般来この委員会でもいろいろと御議論があったところであります。従いまして、私は公企業体の現在の姿がこれでもういいんだ、これが万全のものだというわけには参らぬと思います。いろいろ政府としても、過去においてこれが合理化につき、あるいはその能率を増進することにつきまして、また改善すべき点は改善する、具体的の方策につきまして有識者をして検討をしておりますが、私自身は、やはりそういう意味において検討をしていかなきゃならない。しかし今大きな考え方からの傾向からいうと、民営にもう少し近づける方がいいのか、あるいは国営にもう少し近づける方がいいのか、あるいは今の形になる方がいいのかという三つの考え方がありますが、それについて、私自身として今どっちの方向がいいんだ、どっちの方向へ持っていこうという今結論を得ておりません。むしろいろいろな観点から検討を加えてこれの万全をはかっていきたい、こう考えております。
  82. 鈴木強

    鈴木強君 私は、まだ総理の結論が出ておらないようでありますから、これ以上質問をしてもお答えが、できないと思いますが、ただ公共企業体合理化審議会の結論を見ましても、やはりいろいろ論議はあるようですが、およその一致した点は、公共企業体という形態を変えるということはだれも言っていないわけですね。むしろその中における企業自主性というものがややもすると従来の国有国営というような形のものが強く出てきてしまって、ほんとう公社の総裁以下の経営者諸君が、与えられた事業計画、与えられた予算の中で思う存分に企業自主性を発揮して参ろうというところに問題があるのじゃないか、こういうように言われております。それには、もちろん従業員に勤労意欲を持たせる、そのこともからんでおると思います。ですから、私は、民営にもっと近づける、ないしは国営に戻す、いろいろ論議はあるでしょうが、今までの答申等の結論からすると、やはり現在の形を維持していくということ、が一般に言われることだと思います。そこで、それは今のそういう公共企業体考え方がきまっておる。だがしかし、それを運営する人たちの立場、これを計画していく人たちの立場、そういう点についてそれはいろいろと欠点もあるでしょうし、これは人の問題であります。ですから制度と私は違うと思います。ですから、私は電電に長く勤務いたしましたが、公社になりましてから、ほんとう労働組合経営者も前だれをかけて、従来の、人に使わせてやるのだという観念から、利用していただくのだという観念に頭を切りかえてやって参りました。具体的に旅費等も実費で、労働組合がみずから切りかえて、二等に乗って行くところを三等で行って節約しようじゃないか。さらに賃金体系についても、高能率高賃金ということで賃金をきめて、一時的には不利なことがあっても、あるいはオートメーションで職場をかえなければならない、職場をかえるときには賃金が現実に下る、そういうこともありましたけれども、それは一部組合員の反対もありましたが、これを乗り切って、とにかく新しい給与制度を作りました。そうしてこの五年の間に五カ年計画を立てて、御承知通りあの廃墟に化した電信電話を今日まで持って参りました。そういうしし営々の努力を重ねて、みんなが一生懸命、公共企業体の精神を体してやってきた。ところが今日一番問題になるのは、予算的に大きく縛られるということが一つありますが、これは国有ですからやむを得ないと思いますが、その中においてもう少し自主性を持たせていただきたい。それが今度の仲裁の中にも表われておりますように、かつてない予算単価が出て参りまして、組合員は、いろいろ問題はあったが、公社の妙味を発揮して、辛うじてみんながついてきた。配置転換も出ております。臨時作業員の首切りも出ております。しかしながら、この妙味に一点集中してみんなが努力してきたにもかかわらず、千二百円上ると思ったのが上らない、落胆しております。それでは勤労意欲というものは――第一次五カ年計画もことしで終るのです。さらにまた第二次五カ年計画も明後年から始まるのですが、これらに対する勤労意欲が減退すると思います。ですからそういう点を考えて、やはりほんとうに能率を上げ、成績を上げるというこの態勢を作るためには、私はもっと積極的に政府がこの問題に対して対策を講じていただきたい。少くともひもをつけるような形、自主性を阻害するような形はとるべきじゃない、こう思いますが、その点大へん恐縮ですが、お答えいただきたい。
  83. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 公社制度、特に今、電電の例をおあげになりましたが、私は電信電話につきまして、これが公社ができましてから非常に設備が急激に能率的に整備されてきたという事実は、これは国民がひとしく認めるところだと思います。私は決して現在の制度そのものが根本的に悪いという考え方じゃなしに、あくまでも能率を上げ、その本来の目的を達成せしめるように、経営者側も労務者側も十分に公社の精神を体して進んでいくということが必要だと思います。そこで問題は、結局その自主性予算との関係をどう配分することが、現在の形を維持していく上において一番望ましいかという問題だろうと思うのです。これは大きくいって、予算を全然無視して何しろということを主張する人はなかろう。と同時に、それじゃもう予算に一切縛られて、自主性を一切認めないのがいいという極端な議論をする人もこれはなかろうと思うのです。そこでこの両者をどの辺にやっていくがいいかという問題と、それから今御指摘がありましたように、今度はさらに、その制度は制度として、その制度を実際生かして使う意味において人事をどうするか。これはおそらく経営者側の首脳部の考え方もありましょうし、労務者側の、組合の方の指導者の考えもあって、これがうまく何を生かしていくかどうかというところにも私は妙味があると思うのです。両方考えなければならぬ。それで抽象論として言えば、私はやはりこういうふうに公共企業体が認められておるのでありますから、その妙味を発揮せしめるためには、この自主性というものをとにかく確立しなければいかぬことは、これはだれが考えてもそうだろうと思います。要は、今申すように、予算とのこの関連をどの辺にあんばいするが制度としていいかという問題と、それから人事の問題、運用の問題と、両方加味しまして、十分に私はその目的を達するように持っていかなきゃならぬ、こう思います。今御指摘になりました電電等の問題につきましては、これは公社ができてからの成績は、相当に従来の面目を改めているということは、これは経営者及び労務者側ともに公社の新しい制度に対して十分な認識を持ってやられたことだと、いろいろな困難もあったろうと思いますけれども、これに対しては国民もひとしく私は業績の上っていることを認めている、こう思っております。
  84. 鈴木強

    鈴木強君 ありがとうございました。  それでは次に、大蔵大臣に御質問いたしますが、けさから藤林委員長にいろいろ例の三分の一の問題を質疑をしたのですが、やはりこの三分の一の第二次確定というのは、少くとも給与総額内において基準内外の操作によって、労使団体交渉の結果でき上ったものでありまして、仲裁委員会としても、もちろん主文第一項だけを取り上げれば、基準単価に千二百円積み重なるのだということであるから完全実施ということが言える。しかし理由書の中に書いており、あるいは政府に対する回答等の中から、この問題については少くとも将来の問題として考慮していただきたいというふうに参口われて、これはまあ勧告か希望か知りませんが、藤林委員長もこの点に対する期待は十分持っておったが、政府のおやりになったことに対していけないということは言えないが、どうもその点ははっきり言って期待に沿っていない、こういうふうにまあ私は言われたと思うわけです。ですから、もちろん差額がどこまで行くとか行かないとかいうことは論議があるでしょうが、少くとも私は第二次の確定の、電電でいうならば、五百七十円の問題につきましては、これは今直ちに三分の一引くということは、全く、今申し上げた中から言っても、これは全従業員のひとしく憤激をかっているところです。ですからそういう点から言っても、国鉄も郵政も専売も皆同じですから、皆そういう気持を持っているのです。ですからこの点だけは一つ……、安井さんは今おられないのですが、理由書なんというものは、こんなものはどうでもいいので、主文仲裁だ、こういうふうにおっしゃったのだが、これもおかしな論議で、そう言うならば、私たちはなぜそれでは政府は、調停が示されたときに、理由書がないからわからぬ、調停委員会に聞くんだ、こういうことで、労働組合側が受諾を決定したにもかかわらず、相当に態度を鈍っておったということから言っても、主文はきわめて簡明率直に書いてありまして、この主文を作るまでの論議というやつがあるはずなんです。だから、仲裁委員会としてはこの理由書をつけていると思うのです。その理由書の中に、今、藤林委員長のおっしゃったような、希望であったかもしれませんが、仲裁委員会の意思としては、この格差をなくすることについては将来の問題として十分考えてもらいたい、こういうふうに言っておると思うのです。それをあえて今度の補正予算で三分の一まで切ってきたということは、われわれはやはり仲裁の完全な実施だということにはならないと思うのです。ですから、その点について何回も何回も同じような質問が出ておりますが、きょう特に本委員会として藤林委員長の御発言等もありましたので、私はその点をもう一回一つ大蔵大臣にお尋ねしたいと思うのです。
  85. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) お話しの通りに、仲裁裁定の実施ということにつきましては、主文第一項をやればいいのでございます。しかしそれによりますると、現在の実際の支給賃金とあまり異同がないことになります。それではせっかく仲裁裁定がありましても、これはいい労働慣行の樹立にならない、こう考えまして、主文趣旨を聞いて、そういう措置をしたのでございます。三分の一削減するという意味じゃございません。千二百円を予算単価に加えたときの財源をどこから持ってくるかということを考えているのであります。しこうして財源を、将来予算単価実行単価との差を縮めていく上におきましては、あの程度財源に三分の一を充てるがいいだろう、こういうことであったのであります。実際問題から申しまして、今の実行単価よりもかなり上ってきている。こう私は考え、しこうして将来裁定委員会趣旨に沿っていこう。もしあの部分を財源に充てないとすれば、実行単価に千二百円を上げた、加えたという結果に近いものが出てくるのでございまして、私はそれは裁定趣旨でもないと考えまして、私は主文並びに理由書を見まして、また、その全体を流れる精神をくんで、ああいう予算措置を御審議願うことにいたしておるのであります。
  86. 鈴木強

    鈴木強君 大蔵大臣はそうおっしゃいますが、これは現実に従来の調停仲裁なんかを見ますと、予算単価ということを使ったことはないのですね。今回初めて使われたのですが、問題は、組合員が実際に実行ベースとしてもらっておった給与というものから……給与の、裁定が確渉にベース・ダウンをするということじゃないのです。これは私も認めます。だがしかし、現実的に公社なり企業体の許された範囲の中で、国会がおきめになった給与総額の中で、労使が幾たびかの調停仲裁等を経て、労働問題の終結として団体協約を結び、それによって労使が納得をして、さらに企業のために努力してきたわけです。そういう経過の中で六百円と五百七十円、電電でいうならあるでしょう。国鉄でいったら六百円と五百二十円とあるでしょう。しかしこの第二次の五百七十円なり五百二十円という問題について、私は特に、そういう給与総額内の操作によって出てきたものでありますから、なるほど仲裁委員会の言っているのはきちょうめんにやれば赤字が出てくる。しかしそうでないと思う。だからわざわざ理由書の中で関連して述べていると思う。その減らし方の度合については政府の政治的配慮だと思う。ここで三分の一を引いて、そして十分公労協関係従業員の希望をなくして、今後事業に対する意欲をそぐことがいいのか、あるいはこの際、将来ということだから将来にして、とにかく現在においてはそれを引かずに仲裁をしてやる、問題は公労協の組合もこの一点にかかっていると思うのです。この点政府から政治的のことは配慮しなければならないし、仲裁委員会としてもそういう趣旨を盛っているのです。その趣旨を掲げていくことが、ほんとうの完全実施になるのではないか。こういうことを強く考えているのですが、まあ、大蔵大臣はうまく逃げてしまうので、非常に私理解に苦しむのですけれども、そういう点を一つあなたに聞いているわけです。
  87. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 従来、予算単価実行単価ということはあまり問題にならなかった。どこから原因がきているかということになりますと、予算にある程度のゆとりがあった。そのおもなるものは、給与総額というものがきまりまして、その間でやり繰りをして、そうして超勤その他、あるいは欠員が、いかにもいわゆる予算単価に相当するような給与ベースに入り込んでくる、こういうことになってくるから問題が起ったのでございます。仲裁裁定が言っておりますように、予算単価実行単価は一緒になることが望ましい、こういう一つの命題のもとに、いかにすればそれが近くなっていくかということを考えますると、予算単価に千二百円を加えたものについて見て、しこうして今の実際の実行単価とどうなっているか、しかし実行単価よりも下ってはもちろんいけませんが、実行単価よりどれだけ上げていくか、上げた金額につきまして将来これを直していこう。しかし今加えて上げております分を二カ年間になくするかどうするかという問題もでございますが、これをなくすることによってベース・ダウンしてはいけません。そういうことはいかないので、たとえば四%の昇給率と申しますると、年に七百五十円上ります。そのうち、鉄道で申しますと、残りの三百六十円をどう見ていくか、あるいはまた三万円、三万五千円とっておられる方が整理されて、七、八千円の人にかわった場合等を考えまして、ベース・ダウンはもちろんしないことは当然でございますが、上り方につきまして将来十分考慮して、労働組合の方々の御希望に沿うように将来していきたい、こういう考えでおるのでございます。三分の一程度を予算に見たということにつきましては、先ほど来申し上げておりますがごとく、将来これをなくしよう、しこうしてそのベース・ダウンということを避けることはもちろん、上り方につきましても、十分御期待に沿うようにするためには、今回のような措置をとることが適当であると考えたのであります。
  88. 鈴木強

    鈴木強君 いろいろ論議をしたいところですが、質問ですからこれでやめます。ただ予算定員の問題ですが、これについて私は、電電の場合、特にこの二十七年に公社法が制定されるときの衆参両院の議事録を全部読んでみましたが、そうしますと、やはり高能率、高賃金制ということを盛んに当時政府の提案者は説明しておりました。これは佐藤大臣がやっておりました。電電の大臣でありますが。そのときに、具体的に言うと、こういう質問があります。たとえば・五百名という予算定員が一応はじかれ、それによって給与総額なり基準なりがきまって参りますが、その場合に、たとえば、極端に言って、五百名の中で四百五十名で人を便って、そうして要するに従業員によりよい待遇を与えて、給与総額の中でもって問題を解決していくという方法があるじゃないかと、こういう点について大臣はどう考えるかということを質問しておりました。これは参議院の議事録でありますが。そうしますと、そういう妙味が要するに公共企業体の妙味であるという答弁をされているのですよ。だから、経営者のやり方によって、それによってほんとう従業員がふるい立ち、企業が能率が上るならば、そういう方法公共企業体であるというふうに言われている。だから私は、定員の問題が出ると、まだ非常に意見があるわけですが、そういう点で、定員の問題だけは、やはり大きな企業になれば、ある程度私は欠員ということも出てくるわけですが、九州に欠員があり、北海道に過員がある、それをすぐに操作することができないから、だからどこかで欠員が出てくる場合があると思うのですが、ですから、そういう点をもう少し認識をしていただきたいと思うのです。これは答弁は要りません。  それから言う一つ、これも公共企業体の本質論に触れるのですが、今回の予算総則の中で、基準内と基準外を分けて、それに対して移流用を認めないというのでありまして、大蔵大臣と所管大臣の承認がなければならないという形にワクをはめてきた。しかし、これはほんとう公共企業体の妙味をそぐものである。きょうも私は藤林委員長質問いたしましたが、藤林委員長も、自主性を侵害する方向、言葉は違いますけれども、自主性はなければならないし、そういうことは自主性をそぐことになる、というような点を述べておられました。ですから、私はこの点は絶対に納得できないのです。少くとも公共企業体という形態に移って、給与総額の中できめることについて、これを取っぱらってしまえという意見も、臨時公共企業体合理化審議会の中では相当強く述べられておりまして、公労法改正当時のこれを全部読んでみるとわかりますように、こういう趣旨で、従来調停が出た場合に何回か紛議をかもしたので、電電公社法の七十二条を変えたり、公労法を変えたりして、その妙味を生かすようにしておるにかかわらず、それに逆行するような予算総則でしばり、今後は協約ができないというような形でやることは、これはほんとう公共企業体を圧殺するような私はやり方だと思うのですよ。こういう予算総則を作ったことに対しては、全く私は、さっき総理が言われた趣旨からいってもおかしいじゃないですか。どうしてそこまでワクをはめなければ、公社経営者を信頼できないのですか。しかも公労法団体交渉権を一切圧殺するような、これでは何にもきめられないですよ。そういうふうなところまでしばるということは、政府考え違いだと思う。この点は、大蔵大臣はどうお考えでございますか。
  89. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 電電公社の問題につきまして、欠員の問題が出ましたが、実は電々公社は、欠員は……。
  90. 鈴木強

    鈴木強君 欠員はけっこうです。
  91. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 次に、予算総則におきまして基準内と基準外を分けたということにつきまして、いろいろ御意見がございました。私は、仲裁裁定のあの予算単価実行単価とを早い機会に一致さすためには、これが一つ方法であると考えたのでございます。藤林委員長も、この点につきましては反対はいたしておられません。一つ方法だと考えると言っておられます。そうしてまた、あなたは、前提といたしまして、基準外から基準内を許さぬと、こういうふうにお考えになりますが、そうではございません。今回の補正予算につきましても、基準外から基準内に回すことを予定しておる金額が相当あるのでございます。また、その後におきましても、先ほど申し上げましたごとく、昇給財源、あるいは新陳代謝等によりまして、こういうことをやりたいというのでお話があれば、大蔵大臣としても十分それは尊重していくと、こういうことを申し上げておるのでございまして、何も基準外から基準内へ回すことは絶対にいかぬというふうなものではないのです。予算単価実行単価とを適当に合し、予算の適正を期し、将来の労働問題の裁定その他につきましてよい資料を出すために努力いたしておるのであります。決して自主性を全然なくするというふうな考えは持っていないのであります。
  92. 鈴木強

    鈴木強君 そういう親心があるなら、今後私は実際のおやりになることを見ております。  それからちょっと電々の問題で、これは大蔵大臣から御答弁いただかなくても、事務当局でもけっこうですが、ちょっとわからないことは、この補正の中で、電々の場合を見ますと、職員数が計画の中で十八万一千九百五十四人になっておりまして、三十二年度の当初予算の中で追加した三千四百六十六名は減になっておりません。この計画の中にのっておるのは――。そうしますと、今度仲裁に示されております――仲裁委員会では、ここにも書いてありますように、この仲裁を実施したときに実際に電々は予算単価が一万八千四百三十円になる、こういうふうに明示しております。ところが、この基準内予算を見ますと、電々の場合に三百八十八億になっておりまして、職員計画の十八万一千九百五十四人というこの計画が変更になっていないとすると、どうも一万八千四百三十円にならないのです。一万七千九百十円になってしまって、裁定書が言っておる一万八千四百三十円よりか五百二十円下回っておることになるのですが、この点はどういう計算でございましょうか、ちょっと根拠を示していただきたいと思うのです。
  93. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 電々公社の万は、御承知通り、欠員が非常に多いのでございます。三十年度におきましても、大体五千人近くおります。三十一年度の平均の計算でいきますと七千何百人、今回また三千六百人ふえる。こういうことでは実際困りますのので、ある程度の欠員はみなければなりません、人事調整の関係上――。しかし、今までのようなたくさんの欠員を置くということは、これはまたよくございませんので、適当な欠員をみまして、そうして他の国鉄あるいは専売公社等とにらみ合せまして、実際今度千二百円を上げまする実人員というものを想定いたしまして、そうして計算いたしておるのであります。こまかい数字につきましては、主計局長から答弁をいたさせます。
  94. 鈴木強

    鈴木強君 それではちょっと関連して主計局長に御答弁いただきたいのですが、今の点は、そうすると何名減らしたのか、その点をはっきりしていただきたいのですが、今度の実質的な補正額というのは、電々の場合十四億七千万円になっておりますね。そうすると、予算定員が十八万一千九百五十四名だとすると、財源措置として一人当り七百十円という答えが出てこないですね。六百七十五円になって、三十五円の不足になるように思うのですが、こういう点はどうも計数ですからよくわかりませんが、この辺も一つあわせて御答弁願いたいと思うのです。
  95. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) お示しがございました十八万一千九百五十四人、これは三十二年度末の定員でございまして、当初予算でもその数字を基礎にはいたしておりません。つまり、年間の平均人員を基礎にしておるわけでございまして、その数字は十八万七百三十七人と、これが当初予算の積算の基礎になった数字でございます。これは三千数百人ふえますが、年度初めからふえるわけではございませんで、平均的にふえるわけでございますので、当然平均定員としては減少するわけでございます。今回の千二百円の増額の基礎にいたしましたのは、これは三公社現業いずれも同じ方針によっておりますので、実人員を基礎にいたしております。この実人員というのは、従来の欠員率を考慮して推定いたしました三十二年度の平均基準でございます。従いまして、電々公社の場合において三千数百人の増員があるという前提に立って、従来の欠員率で三十二年度の実員を推定いたしますと、十七万三千二十七人ということになるわけでございます。これに対して、基準内予算単価千二百円の増額の措置をとっておるわけでございます。従いまして当初予算の十八万七百三十七人に比べますと、約七千人くらいの者を欠員として、千二百円の増額の予算措置を講じていないわけでございますので、この点は、先ほど大臣からお答えがございましたように、三十年度平均六千人、三十一年度平均七千人もの欠員がある。公社の現状から考えまして、当然その程度の欠員があると考える次第でございます。ちなみに、三十二年三月三十一日の実員は十七万二千八百三十二人でごいざます。なお、今回補正をいたしました結果によりまして、従来の予算単価プラス千二百円、つまり一万八千四百三十円でどれだけの実員がまかなえるか。その計算をいたしますと、十七万五千六百二十五人ということでございまして、三月三十一日の実員よりも三千人近く、また先ほど申し上げました推定実員よりも二千六百人近くの余裕がまだ残されておるわけでございます。従来の実績等から考えましても、まずまず問題はないと考えておる次第でございます。  なお、七百十円の実質補正増加額の措置の基礎になりましたのは、やはりこれも実員でございまして、実員で計算をしていただかないと金額が合わないわけでございます。
  96. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 鈴木君、もう時間がありませんから。
  97. 鈴木強

    鈴木強君 まだいろいろありますが、残念ですが、私は時間がありませんので、これで終ります。
  98. 小林孝平

    小林孝平君 私はちょっと質問に入ります前に、資料のことで委員長に申し上げます。  先月二十五日に、私は、防衛庁の情勢見積りという統合幕僚会議から出ております資料を提出していただきたい、こう申し上げたのです。その後、さらに本月七日に重ねて資料の提出を申し上げました。ところがさっぱり提出がございませんで、一昨日係官が参りまして、実はそういう資料はなかったのです、こういうお答えなんです。ないならばないと、初めからその要求をしたとき断わったらいいです。黙って聞いておって、そうして再度請求されたらないと、こういうことは実におかしいと思います。なおまた、従来この予算委員会のみならず国会において、いろいろ資料提出の要求をいたしますと、できれば、そのまま、ほほかむりしたいということで過ぎておることが多いのです。これは特に予算委員会では質問の時間がきまっております、日数もきまっておりますから、二、三度請求されても黙っておれば、そのうち、うやむやになる、こういうことは従来しばしばあったのです。私はこういうことは、やがて国会の審議を軽視するという風潮を生むものだと思うのであります。特に、防衛庁においてはこういう風潮が顕著だと思うから、今回の資料の提出を拒まれておる理由をはっきりと御説明いただきたい。
  99. 小滝彬

    ○国務大臣(小滝彬君) この前の小林さんのお話は、私もよく記憶しておるところでございますが、その際に私から速記つきで申し上げましたように、いろいろ係の方では検討しておるけれども、まとまったものではないということを申し上げたんであります。その後、御要求があったことは知っておりますので、それについては、すでに私の方からはっきりここでも申し上げましたし、係の者から直接お話申し上げて、了解していただきたいと思っておりましたところ、係の方の連絡が非常におくれまして、その点は申しわけないと思います。しかし、こういう要求は、委員からそういうまた正式の要求も出てくるだろうというような点も考えたかもしれません。おそくなりましたのは申しわけございませんが、私どもの方には、はっきりとした防衛庁としてのそういうものがあるわけではございませんので、どうぞ御了承を願います。
  100. 小林孝平

    小林孝平君 それはそのときの速記録をごらんになりましても、私はこういういろいろの防衛庁の仕事をやるためには、どういう形で戦争が始まるのか、いかなる規模の戦争が想定されるか、いかなる形で開戦されるのか、局地戦というのはどういうことをやるのかということをお尋ねしたら、そういうことは答えられません、こう言われましたから、私は、資料があるだろう、こう言いましたところ、防衛庁の長官は、そういう情勢見積りはないと言われたのです。この言葉は大へん重要なんです。情勢見積りというような言葉はふだん使われておる言葉じゃないのです。私たちもこういう言葉は実におかしいと、これは翻訳された言葉だろうと、こう考えておりますが、わざわざ長官が情勢見積りと言われたのは、統合幕僚会議に情勢見積りというものがあるから言われておるのです。アメリカには資料を提出するけれども、日本の国会には資料を提出しない、そういうことはわれわれ許されないと思うのです。こういうことは議会政治の否認の風潮となって現われてくるのです。防衛庁の係官が今日まで知らなかった、そういうことは、これは綱紀が弛緩しているからであります。国会なんというものは黙っておればそのうちにもう過ぎてしまうだろう、自分でしゃべることだけしゃベらしておったら、あとは何とかなるだろう、こういうことをあなたたち考えているから、そうなる。私はそういうことでは納得しません。それは困ります。総理大臣にこの間も、これに対する御所見を承わりたいと思ったんですけれども、その当時、事情はわからない、こういうことでございましたが、ただいまのお話を聞かれまして、こういうことでいいとお考えになっておるかどうか、お尋ねいたします。私が特に岸総理にお尋ねするのは、岸さんは、その若さと健康を誇って、連日予算委員会に出席されております。これは吉田内閣、鳩山内閣時代にはなかったことなんです。私は非常にこれは敬意を表し、またわれわれは国会議員として岸さんに学ぶべき点があると思って、非常に尊敬もいたしておるわけです。ところがあなたの部下はこういう体たらくです。これではあなた一人が幾ら若さと健康を誇り、空飛ぶ総理としてアメリカまで飛び、東南アジアに飛ばれたとしても、これは何にもならないと思うのです。私は特に総理大臣の御所見を承わりたいと思うのです。
  101. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) ただいま防衛庁関係の資料につきまして、先日も私に御質問がございましたが、私、事情を明らかにいたしませんので、その際にはっきりしたお答えをすることはできなかったのであります。ただいま防衛庁長官よりお答えいたしましたようないきさつで、事が十分に迅速に、諸般の事情があなたの要求された方面に対しまして明らかにされなかったということにつきましては、私、非常に遺憾でありまして、そういう点につきましては、将来を十分一つ戒めていきたいと思っております。
  102. 小林孝平

    小林孝平君 大体、この資科がないということがおかしいです。私は具体的にこまかく要求したのでないのです。このいろいろの見積りを、情勢判断を、どうするかという資料を要求しているのです。それについて何らの資料がないということは、私は、こういうことはあり得ないと思う。何のために防衛庁があるのです、統合幕僚会議があるのです。あなた方は、めくらめっぽうに仕事をやっている。それでアメリカと相談する、岸さんもおいでになる。こういうことは、いずれ国防会議の結果御相談になるのでしょう。何のために、資料もなしにアメリカと相談されるのですか。いろいろの資料を提出して情報を交換されるのでしょう。ところがわれわれには全然ありませんと、こういうことでは答弁になりませんよ。私は、これから質問せよとおっしゃっても、そんなことでは質問ができないじゃありませんか。(「英文でいいよ」「責任がない」と呼ぶ者あり)委員長どうお考えになります。私は、特にあなたの御所見を求めます。あなたは名前を言って、この議事をただそれだけで、時間がきたから次の者を指名するということでは、委員長の任務は終らぬと思います。(「そうだ」と呼ぶ者あり)予算委員会の権威を高める上からいっても、こういうものを、あなたは直接防衛庁の長官に提出を求めらるべきだと思うのです。どうですか。
  103. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) お答えしますが、私はこの間から二回ほど防衛庁へその御要求の資料を示してもらいたいということを言っておったのです。ところが、そういう御要求のような資料がないという返事をいたしましたから、委員長としては、それ以上に立ち入るわけには参らぬと思っているのです。今ちょうど防衛庁長官が見えておりますから、その点に対して御質疑を進められることはけっこうだと思うのです。
  104. 小林孝平

    小林孝平君 私は、私もそれを質問をし、追及もしますが、あなたも当然委員長としてやられるべきじゃないですか。そういうことでは予算の審議はできない、こういうことをあなたは言われてしかるべきだと思う。(「ないものは仕方がない」と呼ぶ者あり)ないものは仕方がない……、ないはずがありませんよ。こんなものがないならば、これは防衛庁何のためにあるのですか。こういうものはあるけれども、君たちには出されない、こう言うなら話はわかります。(笑声)国会議員などには見せられない。これはアメリカには見せるけれども、君たちには見せられない、こう言うなら、まだ考え方もあります。(笑声)ないとは何です。こんなことでは防衛庁の長官は勤まらぬと思うのです。(「そうだ」と呼ぶ者あり)どうです。(「解体か、やめさしたらどうだ」と呼ぶ者あり)
  105. 小滝彬

    ○国務大臣(小滝彬君) 先ほど申し上げた通りでございまして、われわれは、そういう問題を常時検討いたしておりますが、しかし防衛庁として、まとまった、そうしたものはないということを申し上げた次第でございます。たとえば過般の委員会におきましても、大体この極東方面における情勢はこういうところであろうというようなことは申し上げたはずでございます。そうした個別的な資料はありましても、今御要求になっておりまするような、防衛庁として、こういう想定のもとにこういうことをするという、はっきりとしたものが、書きものとして存在するわけではないということを申し上げた次第であります。
  106. 小林孝平

    小林孝平君 これは、私はもっと簡単に、資料はあるけれども国会には出せない、こういう御答弁だと思ったから、それなら話は簡単に済むと思ったのです。自由党の理事の方は、そういう簡単に済むように考えられた。私はおそらくそういう答弁があるだろうと思って、それなら簡単だと思った。ところが、全然なければ作ったらいいじゃないか。あなたはこの委員会で、日本に原爆攻撃があるかもしらぬと、これは重大なことです。あなたはどういう判断に基いて日本が原爆攻撃を受けるように判断されたのですか。私はこの前もお聞きしようと思ったけれども、この資料をいただいてからと思って、そのときやらなかったのです。日本は原爆攻撃を受けることがあるかもしれない、あるいは本土上陸作戦にしても、行われてくるかもしれない、あるいは局地戦というものもあるかもしれない、こう言われましたから、一体どういう想定に基いて――極東におけるいろいろの軍備の情勢は聞きましたけれども、配備状態は聞きましたけれども、そういうものが活動する場合、どういう情勢になって発動され活動するのか、ということがわからなければ、日本の軍備はできないじゃないですか。自衛隊を一万名増員するとか、あるいは駆逐艦を二隻作るとかいうことは、ただ金があるからやるというだけじゃおかしいじゃないですか。そんなものはないなどということを言って済まそうということはおかしいと思うのです。それはどうなんです。あなたは部下を督励して出させることができないのですか。あなたはロボットなんですか。防衛庁の長官として、あるいはむしろ、そういうことは知らないからと言っておけば済むと思って、下僚からそういう報告を受けて、そのままオウム返しに言ってるんじゃないですか。先ほども私のところに同じようなことを言ってこられました。あなたにもそういうことを言われているのじゃないかと思うのです。つまらんじゃないですか、ほんとうに、長官になってそんなことじゃ。(「不謹慎だぞ」と呼ぶ者あり、笑声)
  107. 小滝彬

    ○国務大臣(小滝彬君) 先ほどから繰り返しておりますように、私どもの方でそうした情勢については絶えず検討いたしております。あるいはそういう原爆というようなことがあるかもわからないということを申し上げたといたしまするならば、それは世界戦というものがある場合において、たとい二次的、三次的戦場においても、今後においては完全な在来兵器のみということだけを考えて、自衛というものを考えるならば、そこに大きな、そごを来たすおそれもある、そういう可能性も全然排除することができないという趣旨を申し上げたのであります。(「そんなのを出せばいいんだ」と呼ぶ者あり)
  108. 小林孝平

    小林孝平君 私は、委員長はこれでいいとお考えであるかどうか、特にお尋ねしたいのです。こういうことで予算国会の審議は、こういう状態でいいとお考えになるか。これは国会というものは、ただ簡単に正常化というようなことで、何らの波乱もなく済めば、それであなたは予算委員長として職責が済んだとお考えになるか。(笑声)
  109. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) お答えいたしますが、資料を提出するかどうかということは政府の責任であります。委員長としては再三提出方を促したにかかわらず、政府がそういう資料がないと、こういう返事なんですから、委員長としてはこれ以上措置のしようがないと存じます。(「その通り」「内閣を解体すればいいんだよ」と呼ぶ者あり)
  110. 小林孝平

    小林孝平君 これはそんなことでは私は済まないと思うのです。(笑声)あんまりばからしいから笑われてるんです。あんまり白々しい御答弁だから笑い声が出るんです。(笑声)しかしこれはこれ以上私はやりましても、いたずらに時間が経過いたしますから、質問に入りますけれども、委員長としても篤と御考慮を願いたいと思うのです。  そこで質問に入りますが、去る二日に初の国防会議が開かれました。明日は第二回の国防会議が開かれる様子であります。明日は二日の国防会議においてほぼ成案を得ましたのを、字句の訂正その他をいたしまして、正式に決定されるそうでございますが、それにつきまして岸総理大臣は、国会に国防会議の結果を報告するということでございましたから、御報告を願いたいと思います。それについて御質問いたしたい。
  111. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 先だって国防会議を開きましたが、国防会議におきましては、国防の基本方針についていろいろと議論がかわされた程度でございまして、結論に至っておりません。私、まだ明日のなには、はっきり聞いておりませんけれども、できるだけ時間が許す限りたびたび開くようにということは申してありますから、この前の議論のありました点を相当とりまとめて、さらに議論に供することだと思います。この国防会議におけるところの伴につきましては、私は適当な時期に国会にも報告すべきものであると、こう思っております。
  112. 小林孝平

    小林孝平君 総理は当委員会において、国防会議につきましては報告をして国会の協力を求めると、こうおっしゃいましたから、私は明日はほぼ成案を得るということでございますから、本日は先日の第一回の会議の概要を承わりまして、そうしてわれわれは総理大臣のおっしゃるように御協力をいたしたい、こう思っておりましたけれども、総理大臣は御多忙で、第一回の会議の内容をここに今お忘れになったかもしれませんから、当日の夕刊に詳しくこれが報告されております。これは各紙ほとんど同じ内容で示されましたから、おそらく事務当局から正式に発表になったものだと思いますので、これについて私は御質問いたしたいと思います。  当日は国防の基本方針について論議をされまして、大体三点で一致した。第一点は、国力、国情に応じて自主的防衛体制を整備していく。二、当面の安全保障方式として日米安全保障条約を基調として日米共同防衛の建前をとる。三、国連中心主義の平和外交を推進し、将来は国連による集団安全保障を確立する。こういう三点に大体意見が一致したと、こういうことでございますので、ここでお尋ねいたしますが、この基本方針というものは、将来安全保障条約の改正前提として考えられておるのかどうか。岸さんはしばしば、将来、安全保障条約、行政協定の改正をやる必要がある、そういう希望があると、こうおっしゃっておりますが、この基本方針の決定に当っては、改正前提としてきめられているのかどうか。そういうことをお尋ねいたしたい。
  113. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 第一回の会議におきましては、私ども、今御指摘にありました三点について意見が一致したというような状態まで――当日私自身も最初から最後まで会議を主宰いたしましたけれども、――状態ではございません。従いまして、新聞に出ました内容につきまして、私はそれが当日の国防会議の内容であり、それから、そのことについて事務当局その他からそういうふうな発表をいたしたことはございません。従いまして今その新聞の内容につきまして、それがこの前の会議の内容であるというふうにお考えいただくことは、非常に事実と食い違いが生ずるおそれがございますから、あらかじめ申し上げておきます。ただ日米安全保障条約その他行政協定等の再検討につきましては、私が私の所信を従来しばしば申し上げております。また日本の国防、防衛体制として、日米共同防衛の体制そのもの、いわゆる安全保障体制そのものを今変えるべきではない、その建前そのものを変えるべきじゃなしに、これをいかにして合理化するかという、合理的な基礎に置くように検討すべきだということを申しております。私自身はそういう考えでありまして、将来の日本の防衛体制につきましてもそういう考えで第一段は臨みたい、こう思っております。
  114. 小林孝平

    小林孝平君 次に、今回の国防会議に今後基本方針が決定されることになると思いますが、最終的決定になると思いますが、この日米共同防衛の体制を強めるということと同時に、集団安全保障体制の確立ということを強く政府は打ち出されておるのでありまするけれども、一体いつを目標にしてこの集団安全保障体制の確立をされるつもりなのか、一体これは目当てがあるのかないのか、大よその見当はいつごろを目途としてお考えになっておるかということをお尋ねいたします。
  115. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 今お答え申し上げましたように、実は国防の基本方針につきまして、私ども今ある時期を目途として集団安全保障体制を作るというようなことを考えでおるわけではございません。ただ集団安全保障体制の問題につきましては、私もしばしぱ委員会等においてお答えを申し上げましたように、私は国連の集団安全保障体制というものが確立されることを望んでおる、これを目ざしておるということを申しております。ただ現状は、御承知通り、国連の状況というものは、そういうものから申しますというと、まだほど遠いようなことであって、いつを目当てにそういう私が目ざしておる国連の集団安全保障体制ができるか、ということを申し上げる時期に達しておらぬと思います。ただくれぐれも申し上げておきますが、今の国防の基本方針についてのなににつきましては、そういう意味で、ある時期を目ざして集団安全保障体制を作るというようなことを実はわれわれの意見が一致したというような点ではございませんから、私が今お答え申し上げることは、かねて私が考えておる、日本の安全保障をどうするかというような御質問に対して、将来の理想としてはここへ行きたいということを申しておることを明かにいたしておきます。
  116. 小林孝平

    小林孝平君 今後国防会議で最終的に基本方針並びに長期計画がきめられると思いますけれども、その際に、この基本方針ができ上る。青写真ができたようなものだが、この裏づけの金の面についてはどういうふうに考えられるのか。大蔵大臣もこの国防会議に御出席になっておりますが、基本方針の決定については、同時に防衛財政計画を作る必要があるとお考えになるのか、ならぬのか、今後作られる意思があるのかないのか、お尋ねいたします。
  117. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 基本方針がきめられまして、そうして長期計画ができます場合には、やはり大蔵大臣として参加して意見を申し述べる考えでございます。ただ基本方針につきましても、防衛自体もやはり国力に相応したものでなければならぬということは、ただいまのところはっきり言えると思うのであります。
  118. 小林孝平

    小林孝平君 通産大臣にお尋ねいたしますけれども、この国防会議では、国防計画に関連する産業等の調整という項目が審議事項になっておりますが、この意味は、防衛産業を育成するという意味でありますかどうか、お尋ねいたします。
  119. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 調整という意味は、一般産業との関連考えながら広範多岐にわたる防衛産業というものの分野を調整するという意味だと思いますが、結局それをするためには、計画的に防衛産業というものの育成をはかっていかなければそういう調整ができないということになりますので、事実的には防衛産業を育成していくということになろうと思います。
  120. 小林孝平

    小林孝平君 具体的に育成するには、国家が強力に助成するとか、そういうことも含めて言われておるのか、お尋ねいたします。  さらに、通産省に今防衛生産計画というものがあるのですか、ないのですか。今の大臣の御答弁によれば、当然防衛生産計画というものが通産省にあるように受け取れるのでありますが、いかがでございましょう。
  121. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 御承知通り昭和二十七年に航空機製造事業法というものができまして、それによって航空機の製造事業を始めておりますが、現在防衛庁で使用する航空機につきましても、航空機部門では二、三年の計画で航空機の製造をやるというふうに、部分的な生産計画というようなものは現在ございますが、全般的な防衛産業の計画というようなものは、結局国防会議によってきめられた防衛計画に従って、そして装備の充実計画をどうするか、これに即応してきめられなければ、全体的な防衛生産計画というものはきめられませんので、ただいまのところそういう意味の全般的計画というものはございません。
  122. 小林孝平

    小林孝平君 そうすると、国防会議で基本方針がきまったら、そういう防衛生産計画というものを確立されるのでありますかどうですか。
  123. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 防衛計画がきまりますれば、当然装備の売実計画というものを持たなければなりませんので、それに対応した防衛生産計画はこれから策定するつもりでおります。
  124. 小林孝平

    小林孝平君 今後防衛計画に基いて兵器の国産化が進められることになると思うのでありますが、その際に新兵器の国内生産を積極的にやることになるのですか。たとえば対潜用のジェット機というようなものは国内で生産することになるのかどうか。
  125. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 今のところ、航空機を除きましては、銃砲弾の製造以外の新兵器の製造というものは、ほとんど試作もしくは研究段階でございまして、やっておりませんが、今後はそういうものを国産化する計画をやりたいと思っております。
  126. 小林孝平

    小林孝平君 そういうふうに今後国内において新兵器の生産が行われるということになると、当然秘密保持のために特別の措置考えるというようなことになるのじゃありませんか。この点について通産大臣はどういうふうにお考えになるか。あなたの御説明によって、どんどん新兵器を国内で生産するということになれば、当然秘密保持のための特別措置政府として取り上げられてくると思う。その点はいかがですか。
  127. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 兵器の製造につきましては、技術の導入とか、そのほかの問題で、外国の秘密にも関係する部門が非常に多く出てくると思いますので、日本一国だけで一切をもう秘密にしないということも、実際問題としてとれない問題が今後生ずると思いますので、私は、やはりそういう秘密保護法というようなものは、今後日本において当然必要になってくるだろうと考えております。
  128. 小林孝平

    小林孝平君 そうすると、政府は今後は秘密保護法というものの制定を、当然そういうものが必要である、こういうふうにお考えになっておるわけですね。
  129. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 今までの段階はともかくとしまして、ほんとうに国防計画を日本が作り、そうして装備の充実計画を持って計画的な生産を国内でやるという事態になったら、そういう必要が出てくるだろうと私自身は考えております。
  130. 小林孝平

    小林孝平君 ただいまの通産大臣の御答弁は非常に重要な問題であろうと思うのです。しかしこれはまた日をあらためて御質問をいたしたいと思います。ともかく政府は近く秘密保護法の制定をやる意思がある、こういうふうに解釈される御発言をされておりましたが、これはちょっと問題じゃないかと思います。次に防衛庁の長官にお尋ねいたしますが、政府は当面の安全保障の方式として、安保条約を基調として日米共同防衛の建前をとる、こういう方針を打ち出しておられるのでありますが、一体、この共同防衛の建前をとるということになっておりますが、具体的にどういう打ち合せになっているのですか。たとえば、かりにそういう紛争があったときに、ただいまのところでは、この行政協定によれば、事件が勃発した際に双方が協議するということになっておりますが、政府はこのように、安保条約を基調として日米共同の防衛の体制をとるということを強く言われておるならば、もっと具体的な打ち合せがあるはずなんです。どういうふうになっているのです。
  131. 小滝彬

    ○国務大臣(小滝彬君) 御承知のように行政協定の二十四条で、そういう緊急の事態が起った際に協議するということになっておりますが、しかしそれを効果的にいたしますためには、平素からあるいは情報を交換し、連絡を密にしておく必要がございますので、こうした防衛の問題に直接関与いたしておりまする幹部の者が始終米側との連絡を密にするという方法をとっている次第でございます。
  132. 小林孝平

    小林孝平君 双方連絡を密にし情報を交換しているというのですが、その交換されました情報を一つ――先ほど申し上げた、それがわれわれお聞きしたいのです。情報を交換しているというのですが、共同防衛のためにどういうふうな想定をされているのか、その情報の出せないはずはないじゃないですか。先ほどあなたは、ないと言われたけれども、今情報を交換している、こうおっしゃっている。
  133. 小滝彬

    ○国務大臣(小滝彬君) 先ほどから申し上げておりますように、防衛庁としてのそうしたはっきりとしたものはございません。しかしながら、ただいま申し上げましたように、情報を交換いたしておりますが、それは相手国のあることでございまして、一方的に向うのものを勝手に出すというわけには参らないのであります。
  134. 小林孝平

    小林孝平君 防衛庁としては、じゃ勝手にやっているのですか。その防衛庁の係官というのは、それでは個人的に勝手にいろいろの資料を提供をしているのですか。それから私はアメリカからもらった資料をいただきたいと言っているのじゃないのです。日本から出した資料をもらいたいというのです。あなたは、相手があるから、相手のものは出せないとおっしゃいますが、私はここでアメリカのものまで出せと言っているのじゃないのです。日本のものを、防衛庁の係官の出したものを提出していただきたい。あなたは、ないないと言うけれども、ちゃんとあるじゃないですか。
  135. 小滝彬

    ○国務大臣(小滝彬君) 防衛庁の出しますものは、防衛庁はそう情報機関をたくさん持っているわけでもないので、ただ二、三の駐在官が海外にいる程度でございます。従いまして、防衛庁が出しますものというのは、大体防衛庁の今持っている自衛隊の配置がどうなっているか、どういう飛行機を持っているかという程度のものでございまして、これは始終この国会において皆様に御説明をし、皆様の御協力を得るために詳細な説明を加えている問題でございます。それがわが方の提供する資料でございます。
  136. 小林孝平

    小林孝平君 そんなことを私は言っているのじゃない。この共同防衛の体制をとるためには、軍隊がどこにどうあるなんていう、そんな静的なものでいっても、これは紛争の解決になりません。それがどういうふうに動くか、どういう想定で動くかということでもって、はじめて戦略戦術というものは成り立つのです。あなたのような長官を持っておれば、あなたの答弁を聞いた防衛庁の幹部はどういうことを考えるかというと、こういう長官では防衛庁長官として不適当だ、やはり軍人でなければならん、こういうことになるのです。それをあなたは、私が申し上げるまでもなく、現にあなたの御就任に当ってもそういう意見があったことを御存じだろうと思います。あなたがぼんやりしておれば、やがて自衛隊は昔の陸海軍と同様になるから私は言っているのです。もっとあなたは、しっかりしなければいけませんよ。今情報交換したと言うたと思ったら、そういうものはないんだ。それでは頼りないですよ。そんなことでは問題になりませんよ。さっきから言っているように、国防会議でも日米共同の防衛体制を作ると、こういうことを強く打ち出されるはずなんです。また今までもそういうことを国会でしばしば答弁されておる。それならば、私はここで、改正のときは日米両軍の司令官はだれか、そういうこまかいことを聞こうと思っておるのじゃないのですよ。もっと基本的な、この共同の防衛の体制がどうなっておるのかということをお尋ねしたい。そうでなければ防衛庁なんか必要ないですよ。これは、かりにわれわれと立場を異にして、再軍備を是認する人も、あなたのようなことを言ってるならば、これは防衛庁はむだだということになります。どうですか。
  137. 小滝彬

    ○国務大臣(小滝彬君) 情報関係のことということになれば、さっき答弁した通りでございまして、私どもはそういう情報機関を持っておりません。自然、情報といえば米軍側がより多く持っておる。そして、それが率直に申しまして非常に大きな資料になることは、賢明なる小林さんの御想像の通りだと思います。しかし作戦計画というようなものを平素からやっておるわけじゃなしに、いろいろ話し合いをしております。いざそういう問題が、日本の危急存亡の場合がくるというようなときには、行政協定二十四条による協議をするのでありまして、まあいわば紙上演習的なことはございましても、そうしたはっきりとした計画的なものが、きちんとできておるという次第のものではございませんので、さよう御了承願います。
  138. 小林孝平

    小林孝平君 私が情報と言ったら、あなたは長い間外務省の役人をやっておられましたので、外務省的な感覚で情報という言葉を解釈されている。そんなことではありませんよ。紙上で演習する、紙上で計画していると、それは、とりもなおさず、事件が勃発したとき、どういうことをやるかということなんじゃないですか。そういう答弁では困りますが、これは時間の関係もあるから、あなたはそういうことを考えておってでしょう、そういうぬらりくらりとやっておれば、そのうち時間がくると考えて、(笑声)そういう答弁をやっているのだろうけれども、それでは勤まりませんよ。そこで私はこれに関連して申し上げたいのは、この日米共同防衛というけれども、日本とアメリカの考え方は違うのじゃないですか。日本は日本本土の防衛だけを中心にして考えておる。アメリカはこれは極東の戦略の一環として日本をそれに使うということで、アメリカの広い意味の世界政策の一環として考えておる。日本の防衛だけを考えるとすれば、全然二つの共同防衛をやろうという日米両国の考え方が違っておるわけなんです。この点をあなたはどういうふうに考えられるか。こういう違ったことを基礎にして日米共同防衛といっても、真の意味の共同防衛はできないじゃないですか。
  139. 小滝彬

    ○国務大臣(小滝彬君) 私は日米間の考え方が基本的に違っておるとは考えません。日本が自由陣営内において安全であるということは、第一義的にはもちろん日本自身のためであります。同時に自由陣営の安全を確保するゆえんでありますからして、双方が協力するということが、私ども日本人の立場からいえば日本のためであり、米国側はそれと同様なる利益、共通の利害関係を持っておるという意味において、日本の安全のために寄与するという考え方で進んでおるものと考えます。
  140. 小林孝平

    小林孝平君 それはおかしいですよ。日本は対等というけれども、日本は日本の本土だけを防衛することを考えているわけなんです。あなたは対等だと言う。それなら、あなたの思想の中に海外派兵も含まれているわけですが、違うのです。日本は日本の本土防衛だけなんです。アメリカは広い意味の世界政策の一環として、極東における戦略の一環としてこの日本の本土防衛並びに日本をこの陣営の一環としてこれを使おうとしておるのです。全然違うのです。内容が違うのに、あなたは対等であると、あなたの思想を押し広めれば日本もアメリカと同様に海外に派兵をして、そうして共に戦う、そういう議論を生ずる、こういうことになるのですね。現在の日本の自衛隊の考え方と全然違っていますですね。あなたのは飛躍しています。先ほどからあなたの御答弁は、すべて現実から離れて、実態を把握しておらぬじゃないですか。しかもその思想はきわめて危険だ。海外派兵の思想がその中にある、こういうことになるじゃないですか。どうですか。
  141. 小滝彬

    ○国務大臣(小滝彬君) 私は何も対等というような言葉を使ったはずじゃございません。(小林孝平君「いや、そう言われました」と述ぶ)じゃ、あとで調べます。  とにかく日本自身に関する防衛については、そういう共通の利害があるということを申したのであります。アメリカの方はなるほど極東全域にわたる平和の維持ということを考えておるのでありましょうけれども、だからこそ台湾へも軍隊を送っておる、第七艦隊を。また朝鮮にも二個師団おるというような態勢をとっておるのでありまして、日本におりまする駐留軍としては、とにかくこの日本の安全を期しなければならない。われわれも、われわれの国情なりあるいは国力に応じて最小限度の自衛力は持たなければならない。そうして日本だけでやり通せないときにはアメリカの協力を得よう、こういう考えでありまして、日本に関する限りは双方が同じような立場に置かれるということを言って差しつかえないと考えます。
  142. 小林孝平

    小林孝平君 あなたの考え方は実にそのときそのときで変って、のらりくらりと答弁されて、ことごとくに問題をあとに残すような答弁をされておるのです。いずれまた、あとでやりますけれども、今回の日米政府の今までの方針、さらに国防会議でおそらく確定されるこの日本の方針としては、日米共同防衛の体制を確立していくと、こういうことになると思うのですけれども、その考え方の裏には、当然、真に日米共同防衛が行われるためには、近代戦の性格からして、当然日米一体となって共同の作戦が行わるべきはずであると考えられておるだろうと思うのです。すなわち統一ある戦略戦術のもとに、一体となって日米両軍が行動を万一の場合にはされる。あなたが今答弁されたのには、そういう意味があるわけです。そこで、こういう考え方は非常に危険なわけです。これは吉田内閣当時も私は質問をいたしました。こういうふうに、同一の戦略戦術のもとにおいて日米両軍が行動するということになれば、アメリカの軍隊は戦力である、日本の軍隊は戦力でないというけれども、同一の戦略、戦術のもとに同一の作戦のもとに行動すれば、日本の軍隊もそれ自身は戦力は持たないけれども、二つを一緒に考えれば戦力じゃないですか。戦力である、戦力でないとは言えない、ということを御質問しましたら、政府は非常に答弁に窮されたのです。私は今これを繰り返そうとは思わないけれども、ここで申し上げたいのは、こういうふうに日米両軍が同一の戦略戦術のもとに行動するということになれば、アメリカの軍隊は原爆をもって装備されているわけです。核兵器を装備しているわけなんです。そういたしますと、同一の戦略戦術のもとにおいて行動するということになれば、日本の軍隊もまた、核兵器、原爆をもって装備されておる、こういうふうに解釈されると思うのです。私がこう言えば、それはあなたの勝手の解釈であるというけれども、おそらく外国はそういうふうに理解するだろうと思う。特にあなた方は、憲法の解釈を勝手にあなた方が一方的に解釈されておる、そういう方式でやればこれは当然そうなるのです。従って私は、この日米共同防衛の体制を強める、日米共同の戦略戦術のもとに行動する、こういう態度をとっていけば、当然われわれは原爆をもって装備されておる。日本は原爆の攻撃の対象になるというようになりかねないと思うのです。こういうことからあなたは帰結されて、日本が原爆の攻撃を受けることはあるだろうと言われたのだろうと思う。われわれは、日本が再軍備をしなければ、あるいは自衛隊がなければ、原爆をもって攻撃されることはないと思っておるのですけれども、あなたのような長官がおられ、それによって指揮されておると、やがて日本は当然原爆をもって攻撃をされるということになると思いますが、あなたはどうお考えになりますか。
  143. 小滝彬

    ○国務大臣(小滝彬君) まず第一段の質問点について申し上げまするならば、共同して守らなければならないからといって、それが全部同じような態勢で、同じようなところへばらまかれなければならぬという理屈はないのであります。日本の自衛隊は日本の国土を防衛するための最小限度のことをやるということになれば、かりにあなたが御想像のような事態が起りましても、それは第七艦隊ということもありましょうし、ほかの領土ということもあるのでありまして、日本の自衛隊が完全にアメリカと同じような装備をし、同じような役目を果さなければならぬということは、ここに分担ということがはっきり出てくるわけであります。もう一つの点は、日本が真空状態であれば一番安全だというお考え方は、小林さんの方はそういうふうにお考えになっておるかもしれませんが、私どもはそういう考え方と根本的に違った立場をとっておるものでございまするからして、私どもはあくまで、今後の世界の動きがどうなるかわからない、日本として自衛力というものは最少限度持たなければならぬという立場から、自衛力の漸増というものに努力をいたしておる次第でございます。
  144. 小林孝平

    小林孝平君 もう一点お尋ねしますけれども、その前に、今の防衛庁長官の御答弁は、これはまるで見当違いじゃないですか。今これから起ろうとすることは近代戦なんです。あなたのおっしやるのは、日清戦争か日露戦争当時のことを言っておる。アメリカと日本の兵隊が一緒になって方々にばらまかれておるのが共同作戦である、あるいは共同防衛である、そんなものを今どき考えておる者はいないのです。共同防衛というのは 日本は日本の本土に、アメリカは航空母艦でもって戦略爆撃をやるとか、あるいは駆逐艦を日表の沿岸に配置する、潜水艦を配置する、おのおの任務が違うのです。そういうものが渾然一体となって一つの作戦が行われ、共同防衛の体制ができるのです。あなたのお考えは、ちょうど日露戦争か日清戦争当時の陸軍大臣のお考えです。なっておりませんよ。そ了いう今な近代戦が行われれば、この部分は戦力でない、この部分は戦力だ、ということは言われない。これは当時私が御質問をいたしまして、政府は答弁に窮されたのです。しかし今この戦力の問題を言っているのじゃなくて、原爆の問題を言って、そういうふうな共同作戦が行われる際には、アメリカが原爆をもって装備しておれば、その一環として、極東戦略の一環として日本が考えられれば、日本もまた原爆をもって装備されておる、こういうふうに考えるのは、これは当然です。特にあなたのように憲法の解釈を一方的にだんだん変えていかれるという、そういうやり方をすれば、外国は当然そういう考え方をとるのは当然なんです。私はこういう危険があるから、憲法の解釈などもあまり勝手な解釈をしない方がいい。やがてそれは日本が原爆の攻撃を受ける前提になるということを申し上げたいのです。しかしこれはまたいずれお話をいたしますが、最後に私は岸総理にお尋ねをいたします。岸内閣は、原水爆実験禁止に関し、英米ソ連の三国に呼びかけ、これの禁止要請をされました。これは全人類を破滅から救わんとする、三たび原爆の洗礼を受けたわが国民の悲痛にして崇高なる叫びを背景にして行われたものであるとは言いながら、私は岸内閣の大きい功績であると認めるにやぶさかでありません。おそらく岸さんの名前が歴史に長く残ることがあるとすれば、私はこのために残るであろうと考えておるものであります。首相は当委員会において、核兵器は自衛のために持つことも持ち込むことも許さない。またそれは憲法の解釈上持つことは適当でないと言われました。しかるに去る七日、参議院の内閣委員会において、全く態度を変えて、自衛の範囲内ならば原子兵器を持ってもかまわないと考えると答弁されました。この答弁の食い違い、また憲法あるいは原子力基本法解釈については、私はここで触れません。後刻わが党の委員がお尋ねをいたしますので、私はここで触れませんが、この首相の言明がわが国内に大きい衝動を与えていることは首相も御承知通りであります。また国際的にも重大なる反響を呼んで、外電の伝えるところによれば、関係各国は、いずれも、岸首相が日本の核兵器所有の可能性を正式に肯定したものとして、大きく報道して、この言明を重視しております。このことは直ちに原爆実験禁止、原爆持ち込みの問題に関係してきて、事まことに重大であります。この言明態度は何と言ってもわが国が行なっている原爆禁止の要請と矛盾しております。すでに外電も強くこの点を指摘しており、特に英国は、日本は核兵器を容認したと喜び、また協力的かつ現実的な態度として、岸総理の言明を歓迎しておるのであります。原爆実験はこれによって強行できると、イギリスは喜んでおるわけであります。英国のこういう情勢、あるいはこれが諸外国に与えた影響、国内に与えた衝撃、こういう点を首相はどういうふうにお考えになるか。あなだがせっかくおやりになった原爆禁止の要請は、このことによって帳消しになった、今後骨抜きになったと私は考えるのでありますけれども、総理大臣はどういうふうにお考えになるか、ということが第一点であります。  次は、米国のわが国への原爆の持ち込みとの関連であります。首相のような態度をとられるのであれば、米国の原爆持ち込みを今後拒み得るかどうか、非常に疑問であります。現行の安保条約、行政協定の建前から、アメリカが一方的に原子兵器を持ち込むことを拒む根拠はないけれども、目下のところアメリカがこれをあえてしないのは、わが国の国民感情がこれを容認しないからであることは明らかであります。この点について四月二十五日の当委員会において、私の質問に対しまして、岸総理はアメリカの原爆持ち込み拒否の点を明らかにし、国民の不信を除いた方がよい、またこのために、安保条約、行政協定の再検討の際、その点を明確にしたいと、きわめて重要な注目すべき言明をされました。国民はきわめて大きな期待をあなたにかけたのであります。しかるに首相が七日に言明された、一方的に憲法の解釈を変えて自衛のため核兵器の所有はできるというような態度をとられて、従来のあなたの道義的な主張の立場をくずされるならば、原爆持ち込みに関する米国との交渉の結果は、私は推して知るべきものがあると思うのであります。この点はどういうふうにお考えになるか。この二点を岸総理大臣に特にお尋ねをいたしたいと存じます。
  145. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) きわめて重要な点に関する御質問でございまして、私は、過日内閣委員会において私がお答えを申し上げましたことが、私のほんとうの真意のように伝えられておらない点があることを遺憾とするものであります。私の考えを率直に申し上げたいと思います。同日の議論はもっぱら憲法の解釈議論で、いわゆる憲法論としての議論と、私が政策的に考えておる考えというものが、混同された点があるように思うのであります。日本の憲法における一体第九条の自衛権の内容というものはそういうものか。いわゆる自衛権、われわれは憲法の九条において自衛権というものを否定しておらないという立場をとっているのであります。しこうして、それは、この日本が他から不正急迫な侵害を受けないように、もしこれを受けた場合においてこれを排撃するという力が、要するに自衛権の内容である。従ってその自衛権というものを裏づける兵器その他の問題というものは、これは私は、化学の発達やあるいは技術の発達というものを無視することはできない。こういうものを十分に取り入れて、そうして自衛を達するに最小限度の力というものは、これは持たないということ、こういう自衛権があると言ったって、そういう自衛権というもののいざという場合に、日本を防衛できないじゃないかと言うことができるのでありますから、それを考えなければならぬ。そこで、今日核兵器と言われておるところの原水爆やその他これに類似したようなものが、これはその性格から申しましても、もっぱら攻撃的なものでありまして、こんなものを日本が持つということは、これは憲法の自衛権というものの解釈からいってもこれは許せないことであろう。しかし核兵器と一言に言われておるけれども、この原子力のいろんな発達というものは非常に著しいものがあるからして、そういう場合において、憲法の議論としては、これはそういうものが、あらゆる、たとえもっぱら防禦的だと考えられるようなものであったとしても、いわゆる核兵器と名がついたら、これは憲法違反だ。――憲法に核兵器を禁止しておるという私は明文はないと思うのです。ただ自衛権の内容というもの、自衛というもののワクでもって、われわれが持ち得る一つの実力といいますか、力というものは、限定されなければならないというのが私の憲法の議論でございます。  しかして、それではアメリカの原子力部隊を入れるか、あるいは日本の自衛隊というものをこの核兵器でもって武装するかという問題については、私はそういうことは考えない。従来しばしば私が言明しておる通り、それは、もしもアメリカからそういう相談があるならば、私は日本にアメリカの原子力部隊の駐留については拒否する、また核兵器をもって日本の自衛隊を武装するという考えは持っておらない、こういうことを申しておるわけであります。そうして原子力平和利用に関するこの基本法との何におきまして、これはもちろん日本におけるところの原子力というものの研究なり利用というものは、もっぱら平和を目的とするところのものへ使わなければならぬことは言うを待たないのでありまして、ただ私の申したのは、憲法の解釈として、自衛権という内容ワク内においては、やはり科学的の発達や技術的の発達を取り入れて、有効に、日本が他から侵略される場合においてこれを排撃する力を持たなければならない、こういうことを申したわけでございます。従いまして、私は、私自身の考えといたしまして、日本が今申したようにアメリカの原子力部隊の駐留について、私が従来声明しておったことと、ちっとも私のやる政策が変るわけではございません。  それからさらに、この安保条約の規定から申して、そういうふうな相談があるということはどこに根拠があるかというような問題もございます。これらは私は、安保条約を合理化するという意味における検討の際には十分考えて、そういう点における不安である、不明確であるという点は明瞭にし、また国民が安心するように持っていかなければならぬ、かように考えております。
  146. 小林孝平

    小林孝平君 最後に、私は最初に申し上げましたように、憲法の解釈あるいは原子力基本法との関係を申し上げようとは思っておりませんが、ともかく岸さんのあの言明は、国際的にも国内的にも非常に衝撃を与え、非常に反響を呼んでいることは事実であります。政治的な問題として非常な大きい問題であります。何とおっしゃっても、イギリスはこれによって、日本は核兵器の保有を将来日本は認めた。これによってイギリスは原爆実験を強行できると、こう言い、アメリカも、岸総理の今回の言明は、岸総理が訪米に際して非常にアメリカに対する感情をよくしたと、こういうふうに伝えられる。その結果は今後のいろいろの交渉の上に大きい影響をもって来るだろうと思うのです。私は憲法の解釈とか、そういう法理論については、ここで申し上げませんけれども、きわめて慎重な、この国会において長い間御答弁をいただいて一度もソツのない答弁を絶えずおやりになった岸さんが、こういうような重要な問題を突如発言されて、そうしてこういうような反響あるいは衝撃を与えられたということについては、非常に大きい政治的な責任があるのではないか、こういうふうに考えるのです。私の質問を終ります。
  147. 湯山勇

    ○湯山勇君 私はただいま小林委員質問の連続として、岸総理の核兵器に対する憲法上の問題あるいはこれの解釈の問題、そういうことについてお尋ねいたしたいと思います。  ただいまの岸総理の御答弁によれば、憲法の解釈総理の所信、これがこんがらがってああいう誤解を生んだというような御説明でございますけれども、先般四月二十五日に私から岸総理質問申し上げたときに、総理は明確に、憲法の自衛の範囲内においては核兵器を持つことも持ち込むことも許されない、こうはっきり御答弁になっております。これは総理の所信としてではなくて、憲法の示す自衛の範囲においてはそういうことはできないと言っておられるのですから、このことは、ただいまの御答弁によれば、やはりその通りだということになるのかどうか。もう一ぺん伺いたいと思います。
  148. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 私の申し上げたこと及び憲法上の解釈は、自衛権というこの憲法九条の、これは反対の議論もありますけれども、私どもの立場から言えば、自衛権というものをこれを拒否しているものではない。従って、自衛権がある。自衛権というものはどういうものかと言えば、他から不正な侵略を受けた場合にこれを排除するという国の作用であって、そういうことに必要な最小限度の実力はこれは持たなければそういう排除ができないわけですから、そういうことが憲法の解釈として当然考えらるべきである。それでは最小限度必要な実力というものはどういうものかということになれば、これは科学の発達やいろいろな技術の発達というものを無視はできない。いつまでも竹槍だけが許されるというものではない。あるいは一時はジェット・エンジンのものがどうだというふうな議論もあったろうと思います。しかし、これが必要な限度の実力であると認められるところのものは許されていい。そうして一方、核兵器という言葉で示されている現在あるところの核兵器というものは、原水爆もしくはこれに類似するようなものであって、これがいわゆるわれわれが持っている憲法上許されている自衛権の範囲内に属さないということは言えるけれども、しかし、核兵器という名前がついているものがどういうふうに今後発達するか、ちょうど発達の段階にあるわけですから、どういうものが出て来るか、ただ、それが核兵器という範疇に入る以上は、いかなるものといえども憲法違反だという解釈は、憲法解釈としては行き過ぎである、こういう意味において申し上げたのであります。しかし現在主として考えておるところの原水爆を中心としておる核兵器につきましては、これは私は、われわれが許されておる自衛権の最小限度の実力としても許されておらない、こういう考えを述べたわけであります。従って、核兵器自身、核兵器という名がつくものは、いかなるものといえども、これはことごとく憲法違反だという考えは、私はとらない。これは最初から私は、別にそれに違反するような、矛盾するような発言はしておらないつもりであります。
  149. 湯山勇

    ○湯山勇君 総理のただいまの御答弁は先般私に対する答弁よりも、より形式化しておりますし、空論になっておるのじゃないかと思います。これはちょうど西ドイツの原子兵器の装備の問題でアデナウアーが犯したのと同じような誤まりを、岸総理も犯されておるのではないか。アデナウアーはもうすでに八十何歳の老人ですから、そういうこともあり得るかとも思いますけれども、総理はそういうことはあってはならないと思いますので、この経緯をちょっと申し上げたいのですが、四月の十二日にアデナウアーが原子兵器装備に対しての発表があったのに対して、ドイツのオットー・ハーン初め、ノーベル賞を受けた四人の学者を中心とする十八名の原子学者が、これに反駁するゲッチンゲン宣言というのを出しました。これに対してアデナウアーは、やはり今、岸総理が言われたのとよく似た反駁をしております。それは、原子兵器といっても、従来の兵器の改良されたものである。だから大砲の改良されたようなものだという反撃を加えましたところが、これに対して学者たちはこういう見解を述べております。核エネルギーに関する限りは、満足な判断が下せるだけのわれわれは十分な知識を持っておる。これはどういうことを意味するかと申しますと、最も小さい核兵器、これであっても、ウラニウムの二三五の分裂には限界量というのがあります。二キロ、三キロ、四キロ、こういうような量のウラニウム二三五ではとうてい爆発は起しません。その限界量は、この参議院に学者の人を呼んでお聞きしたところ、大体十二、三キロであろうということでございます。そこで、それくらいな純粋な二三五のウラニウムが一つところに集められたときに爆発するわけですから、そこで当然これには大小共に限度がありまして、このことは、これは物の性質ですから、ちょうど水が百度にならなければ沸騰しないのや、零度にならなければ凍らないのと同じように、ウラニウムの持つ性質です。そこで、この学者たちはドイツの国内で、もし、たといアデナウアーが言うような、大砲で撃つような核兵器ができたとしても、ドイツの中小都市は一発で破壊されてしまう。少くとも今日の改良された小型の核兵器といえども、戦術兵器といえども、広島に落されたものに匹敵する、こういう反駁を加えて、ついにアデナウアーも、これじゃやむを得ないというので、最近はやはり対共産圏の戦略上必要だというような説明に変えております。そこで、岸総理の言われたのは、形式論的に、核兵器といえども、あるいは鉄砲で撃てるような核兵器とか、もっと小型な危険のないものができるという場合の、これはまあ形式論理としては考えられないことはないと思いますけれども、しかし兵器の改良というのは威力を落すような改良はまず考えられません。そうだとすれば、総理が今言われるように、改良されたというような段階においても、おそらく最も原始的な、広島に落されたものよりも、何らかの意味で性能の高いものだ、こう考えなければならないと思います。そう考えると、現在言われておる核兵器が、これが憲法上不適当だということであれば、形式論は別として、実質的に、核兵器、核爆発エネルギーの学問的な根拠に立って考えても、当然今のような形式論理的な空論をあえてつける必要は私はないと思いますし、またオネスト・ジョンが参りましたときにも、杉原防衛庁長官は、オネスト・ジョンを撃つのだからといっても、その威力はまず広島に落ちたものの四分の三くらいあるこれは確かにそうだと思います。こういう答弁をしております。こういう点から考えて、最初の、今考えた核兵器というものは、当然持つことも、持ち込むことも許されないということは、これは将来においても同様だ、こういうふうに私はならなければならないと思います。形式論理じゃなくて、実際の核兵器、核エネルギーというものを検討した場合にはそうなると思うのでありますが、総理の御所見を伺いたいと思います。
  150. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 学問的、科学的な何につきましては、私は権威のある回答をいたしかねますけれども、やはり法律の解釈としては、非常に形式論理とおっしゃいますけれども、私が先ほど申し上げたように解釈するのが適当であって、今後の何につきましても、核兵器というものがどういうふうな発達をするか、また核爆発にかわるような、さらに破壊力の大きいものが将来発見されないとも、これは断言できないと思います。しかし、われわれはやはり一方において、私どもは自衛力を強化するについては、国の経済力や、あるいは国力や国情ともにらみ合せていかなければならぬが、むしろ量よりも質に重きを置くということは、これはやはり有効な自衛ができるというところに私どもは安全感があるわけでありまして、従って、この憲法の解釈で自衛権というものが認められ、自衛権の内容をなすものは、それを裏づけるところの最小限度の必要なる実力だという考えに立ちますときにおいては、やはり憲法の純粋の解釈論としては、私は現在のいわれておるところの核兵器がどうだという意味とは、これはすでに私は答弁しておる通りでありまして、将来の発達は今からすべて制約して考えるということはちょっと適当でない、こう思っておるわけであります。
  151. 湯山勇

    ○湯山勇君 簡単に伺います。それでは、総理の表現が変ったのは、当委員会では持てないということを中心にして答弁しておられるわけです。内閣委員会では持てるということを中心にして、そういう表現で御答弁になっておるわけです。従って、当委員会で言われましたように、学問的にどうとかこうとか、あるいは将来の発達とかということは一応別としても、現在の自衛という範囲内で――これは現在ということに規定するのは、将来、憲法を変えるということを総理はお考えになっておられますから、特に現在という規定が要ると思うのですけれども、少くとも核兵器を国内で使う――自衛というのは国内でということでございますから、そうだとすれば、国内で核兵器を使う、現在考えられておるような、あるいは進歩しても、現在よりも弱くなるということはありませんから、そういうものを国内で使うということは絶対考えられない、これは肯定になられますか。
  152. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) ちょっと御質問趣旨が私に明瞭でありませんが、私、先ほど来申し上げておるように、現在核兵器といわれてわれわれが問題にしておるような核兵器を憲法上使うということは、その性格かからいって私は許せないものだということは、その通り考えております。ただ私は、この前の内閣委員会の御質問のなにが、角度が違っておったために、非常に誤解を招いたのであろうと思いますが、私自身としてはそういう考えでずっと一貫しておるのであります。ただ、いかなる場合においても、核兵器と名がつけば、それを前提として――ずいぶんこれは御議論があろうかと思いますけれども、たとえば最近の何からいって、船を動かす力に、原子力の、核爆発のエネルギーを利用して船の何がされております。将来の発達からいうと、その物自体一つのエネルギーとしてやはり使われるというような場合も出てきましょう。現にもうすでに一部には現われております。しかし、われわれとしても、それが普通の船に使われることは、日本の今の原子力基本法からいえばちっとも差しつかえないことであるけれども、防衛用の、いわゆる軍用のものにそれが使われるという場合に、果して原子力基本法と抵触しないかどうかという法律論が、また起ってくると思います。しかし、そういうふうにいろいろの発達があるわけでありますから、広い意味において核兵器という観念を先へきめて、核爆発によって生ずるエネルギーというものを使った兵器は、あらゆるものが核兵器だというように定義されますというと、この、われわれがやはり科学の発達や進歩におくれないような自衛の内容を持とうと、持たなければならぬと、こう思うのですが、それと抵触すると、こういう意味において、憲法の解釈としては、そこにはやはりゆとりがあるんじゃないかというのが、私の考えでございます。しかし現在あなたが御指摘になっているような、今用いられているような核兵器というものが、日本の自衛隊の内容としてこれを用いるという考えはございませんし、またそういうものは許されないと、こう解釈するのが適当であろうと思います。
  153. 湯山勇

    ○湯山勇君 ちょっともう一つ。今総理は原子力潜水艦の問題等にお触れになりましたが、そういうものが果して核爆発エネルギーと言えるかどうか、私は必ずしもそうとは考えておりません。むしろ原子炉にしても、あるいはこういう動力源としての炉にしても、これは爆発させないようにコントロールしてエネルギーを使うというふうな解釈の方が正しいんじゃないかというように思います。で、総理のようなお考えだとすれば、たとえば船を作るときにその鉄の材のよしあしを調べるためにアイソトープを使う、これもいかぬじゃないか、こういうことになれば、これはまた論外です。私はそういうものに触れようとは思っておりません。やはり核兵器というものの本質は、核爆発の兵器である。だとすれば、やはりこれには、総理が今言われたように、核爆発によって破壊殺戮を事とする、そういうものは憲法上許されない、こういう解釈をここで明確にしておく必要がある、こう思うのですが、これについてお伺いいたしたいと思います。
  154. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 先ほど湯山委員は、要するに兵器の破壊力というものは非常に大きくなっていくのであって、それが弱くなるということはとうてい考えられないというお話がございました。一方からいうと、その兵器の性能を増すということと、それから同時に、それがやはり作るのに、経済的な面から、非常に破壊力が大きいけれども、それを作るのに非常な工業力や非常な経済力を要するというような場合におきましては、そういうものと見合っていかなければなりませんから、この兵器の発達というものは、私はなかなか今日において、すべてを予測して、そうしてこれを規定するということは、とうていできないのじゃないかと、こう思うのです。従って、今お話のように、これは、大体破壊力もしくは殺戮するとか、兵器そのものの性質からいいますと、火薬を使いましても、火薬の性能をあげてきて、その破壊力をふやしておりますし、また殺戮する力も加わってきておるということも事実でありましょう。従って、核爆発の何を用いた殺戮あるいは破壊というようなものは、どういう場合においても、いかなる意味においても、これは許せないということは、私は兵器そのものを否認するということなら別ですけれども、これはやはり、そこにはおのずから限度がある。従って、今何しているような大量の殺戮をするような、またこれが人類全体にその実験すらある一つの害悪を残すというような意味におけるところの核兵器というものが、私はそれが日本の国内において使用される、もしくはそれによって、そういう兵器によって防衛するということは、これは毛頭考えておりませんし、また考えるべきでないと、こう思っております。
  155. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 湯山君、時間がきました。
  156. 湯山勇

    ○湯山勇君 時間ですから、それじゃ岸総理に特に要望をかねて御質問申し上げにいと思います。  総理の御答弁で、現在言われておる核兵器というものは、これは憲法上も自衛の範囲内からも許せない、これはよくわかりました。ただ将来の問題については、総理は十分この内容を御存じなくて、非常に抽象的に御答弁になっておると思います。しかし、もうすでに総理がアメリカに行かれて、核兵器の問題にもお触れになるし、いろいろなさろうとする段階で、今のような御認識では、私はやはり、向うからの切り返しに対して十分な抵抗ができないのじゃないかという感じを持ちます。そこで、この現在の問題は現在の問題として、一応立場は違いますけれども、御答弁として了承いたしますけれども、将来の問題については、総理自身が十分これは御研究になって、将来の問題については、現在は何とも言えないということが、私は総理の実態じゃないかと思いますので、そういう点について、さらに将来の問題について御検討をわずらわしたい、こういう希望を持っておりますが、御所見があれば伺いたいと思います。
  157. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) もちろんわれわれは、自衛力の増強について、量よりも質ということを申しておりますから、そういう問題に関しましては、総理としても十分に研究をいたして参らなければならぬと思います。
  158. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) これにて三十分間休憩いたします。    午後一時二十七分休憩    ―――――・―――――    午後二時十六分開会
  159. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) ただいまから委員会を再開いたします。  質疑を続行いたします。
  160. 羽生三七

    ○羽生三七君 当委員会で審議中の補正予算が成立いたしましても、そのことで裁定問題の解決にはならないと思います。裁定は御承知のように基準内賃金予算単価に千二百円を増額せよということでありますが、しかしこれは実際には行われておらないというのが私どもの解釈であります。そこで私どもはこの委員会でこの問題はまだ解決はしない、政府とわれわれの間には解釈上相当の違いがある、従って予算がかりに成立いたしましても、この問題は将来社会労働委員会、あるいは労使の相互間、あるいは公共企業体等の労働委員会等によって慎重に検討される余地の残ったものと解釈をいたします。なお、今後労使の間でこの問題が解決が進められると思いますが、政府においても、われわれがこの問題の解決の余地は残されておるという立場に立っておる、この解釈を尊重されて、十分問題解決の、正常なる解決のために善処せられんことを要望いたしまして、次の質問に移ります。  なお、私はきょうこの委員会で公定歩合の引き上げの問題、国際収支の問題等を中心にお尋ねいたしたかったのであります。特に公定歩合の引き上げに関して、あるいは国際収支のアンバランスによって、今後三十二年度予算に実行上どういう変化が起るか、あるいは財政投融資の手直しを必要とするような事態が起りはしないか等々、相当問題があると思いますけれども、時間の関係上と、いま一つ大蔵大臣が都合でここにおられない関係もありますので、私はさらに質問を次の方に進めて参ることにいたします。  私の質問いたしたい問題は、主として外交問題でございますが、きょうはこの外交問題に入る前に、私どもの基本的な立場を総理大臣に一応聞いておいていただきたいと思うのであります。それは特に私はきょうは安全保障の問題を中心にお尋ねをいたしますが、社会党の立場と申しましても、絶対的な安全保障なんということはないと思っております。ただ、われわれの言う場合の安全保障は政府のいう安全保障と私どもの考えておる安全保障とを対比して、どちらにより安全の度合いが強いか、こういうことであります。だから私は政府考えはすべて百パーセント間違いで、社会党の考えている安全保障は百パーセント絶対正確なものだというわけではない。われわれだって客観情勢の変化からどういうあやまちを犯さぬとも限りませんが、しかし、双方比較してみて、政府よりも私どもの考える安全保障の考え方がより日本の安全に寄与する、安全の度合いが強い、こういう立場で私が質問するのでありますから、その前提条件をまず一応お考え置きをいただきたいと思います。  そういう前提からお尋ねを進める場合に、まず私は問題になることは、個個の問題は別といたしましても、日本の防衛という問題については、私は今重大な転機に立っておると思います。それは国際情勢の変化というよりも、むしろ先ほど来論議された、これは武器の兵器の質的な変化という問題、あるいは特に総理が先ほど言われました核兵器の使用に関する見解等に、いずれにいたしましても、日本の防衛問題は重大な転機に来ておる。特にその中の一番大きな問題は、今までは外国からかりに不正の攻撃を受けた場合に、国連から何らかの処置のあるまでの間、みずからを支え得る力、これが自衛力だ、こういう解釈であります。ところが、もし誘導弾等その他今伝えられておる各種の原水爆は別といたしましても、各種の近代兵器を使うことになるならば、それはもはや国連から何らかの処置のあるまでの間みずから支え得る程度の自衛力ではもうない、その限界を越してしまう。私は日本がその意味で重大な自衛方式の上における転機に立たされておると思う。この頃非常にイージーに事が進んでおりますけれども、私はやはり重大な転機だろうと思います。そういうことをまず私は前提として二、三の点をお伺いをいたしたいと思います。  第一はこの安全保障条約についてでありますが、なぜ私はこれをお伺いするかと申しますと、おそらく総理は近日中に外遊に際しての所信を表明されると思います。またそれに対してはわが党からは代表を立てて御質問することにいたしておりますから、その前にお尋ねをするのは、いささかどうかと思いますけれども、しかし、所信を表明する前に、私どもの基本的な考え方を申し上げて、所信表明の際の検討の材料としていただくならば、まことに幸いと思うわけであります。そこでこの安全保障の問題になりますけれども、日米安全保障条約の真の目的がどこにあると総理大臣はお考えになるか、こういうことであります。御承知のようにこの安保条約の第一条におきましては――第一条は前段と後段に分れております。そこでこの第一条は後段において「外部からの武力攻撃に対する日本国の安全に寄与するために使用することができる」ということで駐留軍の使用目的を明示いたしております。これは第一条の後段であります。ところがその前段においては「この軍隊は、極東における国際の平和と安全の維持に寄与し、並びに」となって後段に続くのであります。でありますから、日米安全保障条約の第一条は決定的にその第一条の前段において国際紛争、国際平和と安全の維持のために寄与するということでありまして、これはもう日本の防衛ということはむしろ二の次になっておる。後段において初めて日本の防衛に触れる――前文にもありますけれども、前文は別として、第一条はそういうことであります。そこでこのことの解釈は別といたしましても、現実に政治的に総理大臣はこの日米安保条約は日本の防衛のためのものなのか、それともアメリカの戦略的な立場、そういう意味から日本に軍事基地を求めるという戦略的な配慮が重点になっておるのか、そのいずれにウエイトがかかっておるとお考えになりますか、まずこの点を最初にお伺いいたします。    〔委員長退席、理事左藤義詮君着席〕
  161. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 私はあくまでも日米の安保条約の精神は、日本が他から攻撃されない、そうしてこれによって日本の安全を保障するということが、これの主眼目である、こう考えております。
  162. 羽生三七

    ○羽生三七君 日本がサンフランシスコ条約当時に、この安保条約を持つに至った事情は、今総理のお考え通りでありましょう。しかし、私は実際にアメリカ自身の考えは、私が先ほど申し述べたところに重点を置いておると思うのであります。そこでこの解釈の問題は別といたしまして、日本が直接に攻撃を受けなくても、米国が第三国と紛争を起した、その場合に極東における安全のために必要だという解釈をすれば、これは駐留軍はどのようにも使えるのです、私はそう思う。その場合でも日米合同委員会にいろいろ協議を求められるか求められないか、私は非常に疑問だと思うが、この場合はアメリカが独自の判断で、日本が直接の攻撃を受けなくても、アメリカと他の第三国との間に紛争を起した場合に、私はアメリカと日本との何らかの協議がなくても、米軍を使用し得るという解釈上の立場に立つと思う。そうなってくると、日本が何らかの攻撃を受けない場合に、第三国と米国との間の紛争が日本が重大な被害を受けることがあり得る。そうすると、日本の安全のために寄与するのじゃなしに、アメリカの戦略上の立場から軍事基地を提供している日本が非常に重大な立場に追い込まれる、しかも、それを拒否し得る条件というものは、私は安保条約の中にないと思う。日本に対する直接の攻撃があった場合に、アメリカ軍の出動を要請するかどうかは、これはやはり日米合同会議でアメリカが主導権を握るにしても、一応協議の対象になるでありましょうけれども、日本に対する直接の攻撃がない場合に、アメリカと第三国との間に紛争が起ったときには一体どうなるのか、これはどういうことでありましょう。
  163. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 今の安保条約第一条の極東の平和に寄与するという目的のために駐留軍が使用されるという場合におきましては、条約上日本と合議して日本の何を得るということは、はっきり私は条約上はないと思います。従ってわれわれが安保条約を検討する場合におきましては、当然問題にして検討すべき点である、かように考えております。
  164. 羽生三七

    ○羽生三七君 この問題を論議していると、わずかの与えられた時間で解決するような性質のものではありませんから、質問を次に進めて参りますが、先ほど論議されました核兵器の場合ですが、アメリカから持ち込みが要請されている場合には、その場合に断るというお話でありましたが、今私たちがここで論議しているのは平時であります。ノーマルな状態ですから、比較的のんきな論議をしておりますが、かりに何か一たん事が起ったというような場合に、それが直接であれ、あるいはアメリカと第三国との関係であれ、何かそういうことが起った場合に、実際上それを拒否し得るような根拠をどこにお求めになりますか。
  165. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) これまた安保条約の規定の上から申しますと、いかなる兵力を日本に置くか、その他部隊の性格等につきましても、日本に合議するという根拠の条文はないと思います。ただこの原子力部隊については、実は問題になりました本年の初頭にアメリカの国務省及び国防省の両方とも日本に今駐留せしめる意思は持っておらぬ。のみならず、日本の将来においても日本の政府の意思に反してこれを持ってくるという考えはないということを声明いたしておりまして、すなわち日本に合議せずに一方的に持ってくるということはないという声明が根拠になっておりますが、条文上は羽生委員の御指摘のように根拠はないと思います。
  166. 羽生三七

    ○羽生三七君 だから非常に根拠薄弱でありますので、その点は総理大臣の決意をあとからお聞きしますが、さらに次の問題に移って参ります。  そこでこの日本の自衛という場合に、日本の安全保障を考える場合に、一般的に独立国家には自衛力が要るのだという、一般的通俗的概念から自衛力論争が行われておる。私はこれは適当でないと思う。私はやはり今日本で論ぜられる自衛問題は国際情勢一般、それから日本の置かれておる地位、それから客観的諸条件等を全般として検討して、その結果、必要な問題として自衛問題が出てくるならばそれを検討しなければならないと思うのでありますが、なぜ私がこういう立場に立つというかと申しますというと、私はこれは総理大臣とあるいは見解を異にするかもしれませんが、今日の共産世界が、われわれとは全くその立場を異にするけれども、共産世界が理由のない侵略を日本に加えてくるということは予見し得る近い将来にない。私はこういう判断に立っております。永久不変とは申しません。私が予見し得る近い将来に共産世界が理由のない――理由があれば別ですが、理由のない侵略を日本に加えてくるということが、これは予見し得る近い将来には来ない。そういう判断で私たちが自衛問題を考えていくと、先ほどの一番重要な、私が総理大臣にお尋ねした問題に帰るのでありますが、日本の自衛ということよりも、むしろ日米安全保障条約はアメリカの戦略的な立場にウエートがかかっておる。だから日本の安全というよりも、むしろ日本を危険に陥れる条件の方が多くなる。しかもこれは国際情勢の発展いかんでは必らずそうなるという立場をわれわれはとるわけであります。これは人によっていろいろな立場が違うでありましょうが、私は主観ではない。私どもの考え方はある程度国際情勢の見通しの上に立って申し上げておるつもりであるので、こういう意味から、私は今度総理がアメリカへ行かれて、日本の安全について論議される場合には、おそらく――きょうの新聞にも出ておりますが、沖縄問題、あるいは小笠原問題あるいは貿易問題、あるいはガリオア、イロアの返済問題等いろいろあるであろうが、なかんずく国際情勢に関する検討に非常に重点が置かれるだろうという記事も出ている。こういう場合に私はぜひ総理大臣にお願いをしておきたいことは、この国際情勢の判断で政府は――総理大臣は自由陣営の側に立たれるということであります。私は政府が自由陣営の側に立たれることは自由だと思います。それは思想の自由でありますから、それをわれわれはかれこれする権限はない。しかし私どもは、よくアメリカが言っておる――中立なんということはないということをよく言いますが、もとより私は中立思想というようなことは持っておりません。それぞれ思想上の独自性というものをお互いに持っておる。ただわれわれの言うのは、東西いずれの軍事ブロックにも属してはならないという意味であります。これをわれわれは言っておるのであります。思想上政府が自由陣営に属そうとあるいはどこの陣営に属そうと、われわれはそれを思想上論議しようとは思わない。いずれの側の軍事ブロックに属することも適当ではない、私たちはこういう判断に立っておるのでありますから、私はそういう意味総理大臣が今度東南アジアに行かれ、そうしてアメリカへ行かれる場合に、この立場というものは非常に重要になると思う。そこで私は首相が特に東南アジアに行かれる場合に、前にこの予算委員会あるいは本会議等でずいぶん論議をされましたが、どういう基本的な立場で行かれるか、こういうことになると私はやはりAAグループを強化して――これは一種の中絶状態にあるし、同じアジア・アフリカ諸国の中には二つのグループがあるということを朝海氏が言われておったようでありますが、それは別として、私はこのAAグループを強化して日本が積極的にそれに参加をして、そうして十分に相手と話し合いをして、そうしてむしろ積極的に東西のかけ橋の役割をなすべきではないか。これは今私が申し上げたそんな中立思想なんというものはない。そんなものはあるはずはないのです。私は東西いずれの軍事ブロックに属するのも適当でない。議論として岸総理がアメリカ陣営に重点を置かれるということは一向差しつかえありません。しかし私は軍事的には意味をもっているそれを、もし訪米に際して深入りをなさるというようなことがあれば、せっかくの東南アジアの諸国の訪問ということも私は所期のようなことにならないと思う。だから私はこのことではほんとうにぜひ岸総理が外交上何らか重要な役割を果たすとするならば、日本の進む道は平和の維持にあります。しかもそれを実現し得る道は今申しました通り、東南アジア諸国と緊密な連絡をとって、東西の緊張を緩和する役割を果たすために、日本外交に雄大な構想と見識をもって一歩を進めなければならぬと思う。この意味で東南アジアを訪問される岸首相の基本的な、心がまえを伺いたいと思います。
  167. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 私の今回の東南アジア諸国を歴訪する目的につきましての御質問でありますが、言うまでもなく、私は外交方針においても明らかにいたしておりますように、日本の外交の基本がこの世界平和の増進という平和外交がその基調であり、これが根底をなしてすべてのわれわれの外交的な政策はそこから生まれてくると私は考えております。従いましてあらゆる場合において日本がその点を強調し、これに対してあらゆる国々の共鳴を求め、また協調を求めていくということが基本でなければならぬと思う。アジア諸国におきましては、言うまでもなく、日本はアジアの一国として歴史的にも地理的にもまたアジア人共通の一つのものの考え方におきましても、きわめて深い関係にありまして、われわれ過去においてアジアの一国として生きてき、繁栄をしてきたのであり、また将来はますますこの意義が重大なものがあると思うのです。こういう意味において、アジアを通ずる一つのこの協調、親善、友好の関係が立てられるということが私は最も望ましい。それはひいて今羽生委員もお話しになりましたが、私は世界の平和を推進するという意味において、いわゆる現在の東西両陣営の対立、それの緊張に対しては、われわれは常にこれを緩和する、これはいわゆる今の言葉で言いますと、われわれは東西対立のかけ橋になるという言葉でも言われておるわけでありますが、東西のこの緊張を、両陣営の緊張を緩和するということが、世界平和を増進していく私は大きな道である。私自身、また日本の将来から申しまして、自由を愛好し民主主義国家としてわれわれが完成しなければならないという意味からいいまして、同じような理想を持っておる国々とも特に協調していかなければならぬことは言うを待ちませんけれども、私自身はいわゆる軍事的ブロック――今羽生委員の御指摘になりましたような、いわゆるこの東西陣営の軍事的ブロックのいずれかに属してどうするという考えは私は持っておりません。従いまして集団安全保障につきましても、東西両方を合わしておるところの、将来国際連合を中心としてのこの集団安全保障体制ができることが一番望ましいのだということを申しておるのはそこにあるわけであります、従いまして、こういう意味においてAAグループとの協調なり理解なり、将来における提携というものを深める、そして、それが世界の平和の増進に資するというふうに進んでいくことが、私は最も大事である。こういう事柄に対しまして、私の今回の東南アジア諸国の歴訪が幾らかでも役立つことがあれば非常に幸いで、またぜひとも役立たしたい、こういう希望でございます。
  168. 羽生三七

    ○羽生三七君 お答えの点で、主観的にはもう全くそのお答えを納得するのでありますが、厳密に検討すると、お答えの中には若干の矛盾もあると思いますが、それは別としまして、さらに今度の訪問の機会に、経済問題についてはコロンボ・プランとかポイント・フォアとかアジア地域についてのいろいろな開発計画がありますが、日本独自のものとして何らかのお考えを持っておられるかどうか。もちろん相手国、国々によって立場が違いますが、これはケース・バイ・ケースでありましょうが、何らか具体的にそういうものをお考えになるべきだと思うのですが、何らかの御用意があるのかどうか、この辺を一つ
  169. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 経済協力の面につきましては、いわゆる私が経済外交ということを申しておりまして、最も重要な対象となるのは東南アジア諸国であると思います。これにはいろいろなことを考えておかなければならぬと思うのでありますが、もちろん具体的には、この東南アジア諸国におきましても、御承知通り国々において相当事情は変っております。政治的の立場も必ずしも同一でない状況であると同時に、経済的の段階におきましても、各国にはそれぞれ特殊の事情があると思います。こういう意味において、結局、今具体的の問題としてはケース・バイ・ケースに取り上げて、これを解決するという解決について日本が協力するということにならざるを得ないと思いますが、私は、それに共通する一つ考え方として、いずれもこれらの国々は、大体において政治的の独立を比較的最近にかち得て、その政治的な独立を裏づけるような経済的基盤、また経済の発展というものがこれを裏づけるだけのものになっておらない。これをいろいろな意味において努力して裏づけをしょう。そこに経済開発五カ年計画であるとか、七年計画であるとか、第一次、第二次というふうないろいろな経済計画をもって、要するに独立の完成に向って努力しておる。これに対して日本が、私は非常な謙虚な気持で、これは戦争中に迷惑を及ぼしたことに対する償いという意味もありましょう。この意味において、賠償のまだできておらないところへは賠償を早くする必要がありますし、心持として謙虚な気持でこれらの民族がそれぞれ新興の国家の完成に努力をしておると、これにわれわれが協力するというこの立場をまずはっきりとわれわれ自身が認識をするということ、また日本が協力する上において、ほとんど共通な点においては、技術的の面においてわれわれが協力すべき点が非常に多いと思います。コロンボ・プランにおいてその計画がいろいろ進められておりますが、いずれも日本の技術的な協力を求めることが年とともに強くなっておる。これの協力の仕方につきましては、あるいは日本にこれらの国々の人を連れてきて、そして技術的の教養を与える、あるいは訓練を与えるというようなこともありましょうし、またわれわれの方から進んで行ってやるということもありましょうし、いろいろな何はあるとしても、いずれにしても、この技術面における何において、われわれが協力する点が非常に多いと思う。さらに資本面、資金面におきましても、日本が賠償義務を負い、また賠償問題を解決して、こういう方面からわれわれが協力することはもちろんでありますが、その他の面におきましても、具体的のプロジェクトに対しては、われわれは協力でるきものはできるだけ協力していく。こういうふうに、要するに共通した考え方の上に、各国における特殊事情と特殊の具体的な問題をとちえて、これが解決のために日本が協力する、こういう態度に出たいと思います。
  170. 羽生三七

    ○羽生三七君 まあいずれにいたしましても、政治的、経済的、技術的に今度の東南アジア訪問を機会に、十分相手国と話し合いをされて、わが国の東南アジア諸国に対する平和的かつ経済的寄与を通じて、一そうのこの相互間の親善関係が強化されるよう配慮されることを心から希望をいたします。  続いて、先ほどの話にまたいささか戻るのでありますが、アメリカを訪問される場合に、当然安保条約、行政協定その他諸般の懸案についてお話し合いになることと存じますが、そこで、まあ先ほどのことになるわけですが、結局日本の安全のための真の一番適切な処置はどういうものかということであります。私は、もとより政府とは根本的に違う点もあるし、あるいは共通する点もありますけれども、違う点から言いいますと、私は、やはり今の日本の場合においては、武力だけに安全保障の唯一の根拠を求めるのは適当でない、特に武力ということでかりに限定しても、それは戦争の起るような条件をなくすることであります。だからそういう配慮――どこにアジアの緊張があるのか、アジアの緊張の拠点はどこにあるか、原因は何であるか、それを確かめて、この緊張の度合いをなくするような努力に積極的な外交上の役割を果すことなくして、単に日本の防衛力の増強だけにすべてを期待されておるというようなことは、これは非常な私はあやまちだろうと思う。そういう意味で、岸総理が今度訪米をされる場合に、以上の点から、私は、日本の経済的な発展を中心として、あるいはアジアにおける緊張の緩和ということを前提として、すべて安全保障というものを考えなければならぬと思うのでありますが、この場合に、今まで社会党が申し上げてきたような安保条約に対する基本的な立場、行政協定に対する基本的な立場、あるいは小笠原、沖縄諸島に対する基本的な立場、そういう問題に対して、われわれの考えに近いような、寄与するような、あるいはその問題の解決に一歩進めるような形で話し合いをなさるのか、あるいは逆に、このアメリカのベースに巻き込まれると言っては非常に語弊がありますけれども、向うとの親米関係の強化というようなことにウエイトを置かれるのか、ここが私は非常に重点だと思います。だから、個々の問題で安保条約の第何条をどうするとか、行政協定の何条をどうするとかいうようなこまかい質問はいたしませんが、私は、問題は、社会党が常日ごろ首相に要望しておるような問題の解決に一歩進められるのか、それとも、その問題はただ一応形式上ちょっと触れられるが、根本的には、むしろ親米関係の強化にウエイトがかかっておるのか、これはもう訪米をされる前の総理大臣のお考えの重点だろうと思う。私たち社会党としても、この点に非常に大きな関心を持っておるわけです。こまかいことは別として、一つ基本的なお考えについて承わらしていただきたいと思います。    〔理事左藤義詮君退席、委員長着席〕
  171. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 私はしばしば申し上げているように、日本の国際的関係におきまして、日米が完全に理解し、この間において理解が不十分であるとか、いわんや誤解があるというようなことがあってはならないので、十分な理解の上に両国の正しい協力関係を、親善関係を作っていかなければならぬ。それには何といっても、私は日本が独立を完成し、また自主独立の立場からアメリカとすべての話し合いをする、またその見地から今まであるところのいろいろなものを検討してみるということがこの際必要であろう。いわゆる親米論者のうちにおきましては、私から言えば、ずいぶんこの占領政策の何といいますか、惰性といいますか、そういう点に立って、どうもアメリカと親しくしなければならぬ、しなければならぬというふうなことがいわれておって、ほんとうに日本の独立を完成し、日本が自主独立の立場からアメリカとの間に将来長い厳密な強固な協力関係を作ろうという上から見るというと、どうかと思うような議論も私ども耳にするのであります。私自身はいわゆるまた一部反米もしくはアメリカとの提携について非常に反対するような立場はもちろん私はとりませんけれども、しかし今申したような意味における親米的な態度というものは私はこれは日本のためにとるべきものでないと同時に、日米の私が考えておる正しい両国の親善友好の関係、提携の関係として考えてはならぬ、こう思うのであります。この見地からいろいろのものを検討してみまするというと、私は安保条約にしましても行政協定にしましてもあるいは領土問題にしましても、その他日米間に今までいろいろ問題になっており、日本国民の間にいろいろな論議のあるところの問題につきましても、いずれもこれは触れて率直にわれわれの国民的の考え方を言うことが正しいのである。私自身は今申したように、あくまでも自主独立の日本の立場また日本がとにかく形式的には独立しておりますけれども、なかなかこの日米の関係におきましては、われわれが少くとも考えてみてほんとうに日本の独立、日本国としてこうありたいというものにふさわしいような姿になっておらない点も多々あると思うのです。こういうものを検討いたしまして、ようやく日本としても、平和条約を結んでから今日まで、経済的に申しましても相当に経済的基盤もできたし、国民の生活につきましてもある程度の安定ができ、国民もようやく敗戦後占領下におけるところの一種の虚脱状態と申しますか、混乱した状態から日本の再建に関して強い一つの自信と希望を持って独立の完遂に向って国をあげて進んでいこう、こういう際でありますから、その気持を持って、そうして各般の日米間の問題というものをその見地から検討して、そうして将来の日米関係というものを作っていきたいと、こう思っております。
  172. 羽生三七

    ○羽生三七君 もう一つは先ほど来論議されました核兵器の問題についてでありますが、これはまあある程度明確になってきましたけれども、岸総理のお考えは、これは理論上の問題と政策上の問題と分けておられます。理論上はある程度容認できる場合があっても、政策上は今問題になっておるような核兵器を日本に持ち込むようなことはとらない。この理論上政策上の分け方は別としまして、私のお尋ねしたい点は、岸総理大臣の在任中いやしくも常識上核兵器といわれるようなものの日本への持ち込みは、断じてこれを受け付けないことをここで御確認をいただきたいと思う。それは自分は政策上はとらないということは、理論上はそうであると認めておりますが、政策は動くのです。理論的にはそう思ったが、政策上これは適当だと思っても、将来変化が起る。しかし私はそれは適当でないと思う。しかし私は今常識上どの兵器とはいいませんが、常識上核兵器と――大量殺戮の核兵器といわれておるようなものは岸総理大臣の在任中はこれを取り入れることは適当でない、拒否するという御言明をこの機会にいただきたいと思いますが、いかがでありますか。
  173. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 先ほども私は私の所信を相当明確に申し上げたつもりでございます。過般来議論になっておるのは、要するに憲法上の解釈という問題につきましては、私は核兵器の発達ということもあることであるし、自衛力の範囲として認められる限りにおいては、その実力としての兵器として認める、それだけの余地はあるということを申しておるのでありますが、同時に現在今羽生委員のお話しになる常識的ということが、私どういう意味かわかりませんが、現在原水爆及びこれを中心として考えられておる核兵器といわれておるようなものを、私は今の憲法下における自衛権の内容として持ち込むということは、これは許されないことだ、政策的にも、私はもちろんそういうものを、もし日本の自衛隊に持たせることはしないのみならず、そういうことで武装されておる外国軍隊の駐留も拒否するということにつきましては、きわめて明確に申し上げておきます。
  174. 羽生三七

    ○羽生三七君 時間もあまりありませんので、あとは主として私は要望を申し上げておきたいと思いますが、今の問題はどうかその立場を強く堅持されることをお願いをいたしておきます。  防衛庁長官もおられますので、この機会に総理大臣と御一緒に要望を申し上げて、私の質問を終りたいと思いますので、いずれにいたしましても、この原水爆を中心とする軍備競争は一種の手詰り状態であることは周知の通りであります。従ってこの今まで核兵器といわれております先刻来委員会で論議されましたものが戦術的といわれる原子兵器、戦術的原子兵器に近代装備の重点がかかって行く趨勢にあります。従って原水爆がただちに使われるということは、私は容易に起り得ざることと思いますし、また起っては相ならぬと思いますけれども、それにしてもいわゆる戦術的といわれる原子兵器の装備に重点が移って行く、そういうことになって来て、いわゆるそういうものが原水爆ではないということで、日本に取り入れられるようになって来ますと、先ほど申し上げましたように、私はこれはすでに国連の援助のあるまでに、みずから定める自衛の範囲を越す非常な重大な問題となる、わが国の防衛問題として画期的な一つの変革をもたらすことになると思うので、私はこれはきわめて重大だと思う。そこで私は実は昨晩たまたま今月の中央公論に出ておりますかつての対日理事会の英連邦代表であったマクマホン・ボール氏の安保条約を改正すべきかどうかという評論を読んでいって、非常におもしろく感じたことがあります。マクマホン・ボール氏は次のように言っておるのであります。アメリカの在日軍事基地は平和の見通しを強めるかどうかという点である。これはずっと前から続きがあるから、途中でわかりにくいかしれませんが、問題はアメリカの在日軍事基地は平和の見通しを強めるかどうかという点である。戦争の道をとらせる可能性が大きいと思われる、それゆえアメリカの在日軍事基地はどの程度まで国際緊張の高まりを押えるかよりも、それを挑発する傾向を持つかについて軍事的並びに政治的に冷静に分析してみることが重要と思われると書いてある。そして最後に日本が平和の維持に対してなし得る最大の寄与は西欧とも、大陸の隣国とも、強固な軍事関係を持つことを避けるように努めることであろうということで、対日理事会のかつての英連邦代表であったマクマホン・ボール氏もそういうことを言っておりますが、われわれも全く同感であります。私はちょっと理屈っぽくなるのでありますが、よく局地戦争のことが言われますけれども、朝鮮戦争の場合も、これは外国が攻めて来たものではない、南北朝鮮の同一国内における南北朝鮮の争いであります。中国と台湾の場合においても外国が中国に来たわけではない。アメリカが台湾を援助しておりますけれども、これは中国自身の国内問題であります。あるいはインドシナにおいても北と南の争いは外国がインドシナ戦争を起したわけではない。インドシナ自身の国内問題である、南北が分れている。その一方が共産政権であります。またスエズ問題にいたしましても、運河問題という客観的な条件を持っておった。またハンガリー問題にいたしましても、これは御承知のようにいわゆるワルシャワ条約機構の内部の問題として、いい悪いは別であります。私ども必しも容認するわけではありませんが、そういう問題を提起する客観的条件を持っておった。今われわれが冷静にものの立場を判断してみる場合に、理由のない侵略が外国から直ちに加えられるとは思わない。しかも日米安保条約の基本的な点が、日本の防衛ということもあるでありましょうが、むしろウエートからいうならば、アメリカの戦略的な体制の一環としての軍事基地、これに非常な重点があるということは、私は日本の将来にとって非常な大きな問題を残す。わが国の防衛はもとより重要であります。最大の関心事でありますけれども、しかしこのことがかえって第三国との関連で日本を危険に陥れる場合もあるので、私はこれは日本としては重大な判断をしなければいけないと思う。特に私はこの共産諸国が特別な武力をもって相手の侵略をするということはやらないだろうと思うが、経済的には私は社会主義諸国の優位を誇ろうとするあらゆる努力をするだろうと思います。あるいはその他いろいろな摩擦があるかもしれない。それに打ち勝つ道は何であるかというならば、私は特に日本あるいは東南アジア諸国においては、この低い東南アジア諸国の経済水準を高めることである。特定の軍事ブロックに属して、日本がその一翼をかついで、ふたたび昔日の誤解を招くことではない。また御承知のようにこれは1時間がないから私はこまかいことは言いませんけれども、たとえば今日本が防衛費を組んでおりますが、防衛分担金を含めて三十二年度予算千四百十一億、しかも莫大に供与されている兵器はどうであるか、結局はこれはMSAの供与であります。日本が金を払っているわけじゃない、もちろん払っているものもありますけれども、大部分は援助である装備だ。独立国家の軍隊として、日本がみずからのこの軍隊をみずからの予算でまかなっていく場合には幾ばくを要しますか。長官もおりますが、昭和三十二年度予算でMSA供与によって受ける資材並びに兵器を日本貨幣に換算した場合にどれだけになるか、しかも今後近代的な装備を次々にやる場合に、これをアメリカから永久に受け取るような場合には、これは独立国家の軍隊にふさわしくない。それでわが国の自前で、予算の中でこれをまかなうかというならば、私は日本の経済の現状からいってなかなか困難である。しかもガリオア返済についても、総理は今度渡米された場合に、今度向うから議題に出すと思います。東南アジアの賠償もやらなきゃならぬ、そういうことを考えてくるならば、私はむしろ日本が積極的に経済の再建に重点を置いて、そうして国際的には今申し上げましたように、日本の自衛力の増強よりも、むしろアジアにおける緊張の原因を除去していく、それは中共のすみやかなる国連の加盟であり、台湾問題の解決であります。そうしてアジアにおける緊張を緩和してやり、日本の防衛力の増強をこれ以上さらに必要とするような客観的な条件を一つ一つなくしていくことが、私はわが国の真の安全であり、また繁栄の道であると思う。この基本的態度をもし除外して訪米をされても、私はわれわれ社会党が期待しておる線に沿い得るかどうかは非常に疑問に思いますので、これは質問ではありませんが、どうか総理大臣が単にこの一般的抽象的な防衛力の増強ということでなくして、現実の客観的な諸条件等を十分分析されて、ずっと前々から社会党が述べてきましたこの国際問題の考え方、あるいは安保条約、行政協定、あるいは対中共関係との諸問題について、どうかわが党の要望がさらに一歩進められるような形でアメリカとの話し合をなされ、また東南アジア訪問において成果をあげられることを私は心から希望をいたしまして、私の質問はこれをもって終ることにいたします。
  175. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 以上で質疑通告者の発言は、全部終了いたしました。質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。
  176. 内村清次

    ○内村清次君 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま本委員会に提出されております仲裁裁定に関する昭和三十二年度特別会計予算補正(特第2号)及び昭和三十二年度政府関係機関予算補正(機第1号)に対しまして反対の意を表明せんとするものであります。(拍手)  すでに本委員会において同僚議員の質問によりまして明らかにされております通り、一言にして申しますれば、本補正予算は、先に仲裁委員会によって行われた裁定趣旨に反するのはもちろん、全く一方的独断的な措置であり、不完全な実施であり、また公労法の精神をじゅうりんし、三公社現業に働らく労働者の権利を不当に抑圧し、生活権を脅かすものであると申さなければなりません。すなわち第一に公労法第八条、団体交渉権の制限であり、第二に合法的に取得したる既得権の剥奪であり、第三に不完全実施による生活権の抑圧であります。以下順を追うて反対理由を明らかにいたしたいと存じます。  まず反対の第一の理由団体交渉権の制限であります。今回の補正予算における予算総則の変更であります。政府は単なる予算上の措置のように申しておりますが、予算総則において、基準給与基準外給与との間に一線を画し、給与総額内における流用の自由を禁じ、流用のためには大蔵大臣の承認を受けなければならないといたしておる点であります。この変更は単なる予算上の措置として看過できない重大な点であります。予算総則の変更という平凡な、一見他意のない字句の置きかえのごとき形でございますが、私は、実に狡猾な、陰険な手段だと思うのであります。私は、全くこの一事をもっていたしましても、政府の今回の仲裁裁定に対する態度と労働政策がいかなるものかを明白に露呈したものだと考えるのでございます。予算総則の変更は、単なる予算上の問題ではございません。労働政策の面からきわめて重大な措置として見なければならないものであります。もし、政府のいう予算上のみの問題として見ましても、試みに諸外国の公共企業体の諸制度を見ましても、どこにも一々給与総額内の流用操作に大蔵大臣の承認許可を得るという例はございません。予算総則の変更は、従来、日鉄法、電々公社法によって認められていた給与総額内における流用の自由を規制することになり、従って、公社総裁の権限に重大な制約を加えることと相なるわけであります。政府にとりましては、同じく政府機関でございまするから、どうかして監督を強化したいということかもしれませんが、しかし、他方、労働組合の側から見ましたならば、団体交渉の相手方である公社自主性がない、十分な権限がないということは、交渉しても無意味なものを相手とすることにならざるを得ないのでございます。すなわち、政府としては、あたかも公社の監督を強化するがごときゼスチュアによって、その実、ほんとうのねらいは、団体交渉に大きなワクをかけ、制約することをねらっておるものであると思うのであります。これは、公労法の最も重要な内容である団体交渉という基本条件に制限を加え、その精神をじゅうりんする結果を招来するものであります。公労第一条第一項は、「この法律は、公共企業体及び国の経営する企業体の職員の労働条件に関する苦情又は紛争の友好的且つ平和的調整を図るように団体交渉の慣行と手続とを確立することによって、公共企業体及び国の経営する企業の正常な運営を最大限に確保し、もって公共の福祉を増進し、擁護することを目的とする」と明らかに規定されております。これによって、職員の労働条件等に関しまする紛争は、当局と労働者の自主的な団体交渉を要求し、よき労働慣行を確立し、従来当局と組合側によって正常に運営されてきたと言えるのであります。しかるに、今回の補正予算総則の変更は、公労法の根本精神である労使間の自主的な団体交渉大蔵大臣が積極的な干渉を加え、公社自主性を拘束し、これを侵し、さらには、せっかく従来の労使間で結んできた協定なり協約を否認する危険性を含んでおるものであり、現に本補正予算案に現われてきておる事実を見ましても明瞭であります。かくのごとく、各公社法または現業における職員給与に関する特例法並びに財政法に違反し、特に労働基本権まで侵害するこの予算総則の変更には強く反対するものであります。  第二の反対理由は、本補正予算仲裁裁定の不完全実施であり、かつ、従来合法的に取得した既得権の剥奪であるからであります。すなわち、仲裁裁定主文第一項には、「昭和三十二年四月以降の基準内賃金は、昭和三十二年度基準内予算単価について千二百円を増額した金額の範囲内で労使協議の上決定実施すること」と規定されております。裁定を尊重し実施するならば、政府は、当然裁定に必要な経費総額補正予算に組み、国会に提出すべき義務と責任が存すると思われるのであります。しかしながら、提出された本補正予算案では、仲裁裁定第一項に示された金額、すなわち一千二百円の中から、第一項確定分六百円及び予算単価実行単価の格差五百二十円の中から三分の一の百八十円が差し引かれておるのであります。第一項確定の六百円は、給与総額内より支出されていたものではないことは審議の過程で明らかとなった通りであります。しかるに、補正予算によりますると、この六百円を給与総額から差し引き、さらに予算単価実行単価の格差五百二十円から百八十円を差し引くという措置をとっておるのであります。格差五百二十円は、公共企業体調停委員会昭和二十九年十一月二十四日にあっせん案を出し、それに基く団交の結果、昭和三十年十月十五日に昭和二十九年賃金改訂に関するあっせん案処理に関する協定が結ばれました。これが三百十円であります。さらに、昭和三十年新賃金要求に対する調停案、国鉄について申しますと、三十一年二月二十九日調停案二十六号の主文四によって出ましたもの、これが三十一年六月に昇給実施に関する協定となり、金額は二百十円であり、合計いたしまして、五百二十円となるわけであります。すなわち、いずれも公労法に基いた成規の手続により実施されていたものであります。しかるがゆえに、藤林仲裁委員長も、国会における答弁で、今回の裁定の千二百円の中には予算単価実行単価の格差は含んでいないこと、及び格差の縮小は将来の問題として合理的に措置さるべきものであること、並びに将来とは文字通り将来であって、今回の予算措置のことではないという点が明らかにされました。すなわち、当然この五百二十円の中から百八十円を差し引くということは、裁定趣旨に反することはもちろんであり、政府のいうところの完全実施とは程遠いものといわざるを得ないのであります。また、裁定主文にも明らかな通り、一千二百円の範囲内で労使協議すべきものであり、特に問題となっておりまする格差については、団体交渉によって解決をはかるべきものであります。しかしながら、わが党の再三の要求、要請にもかかわらず、政府は、全く一方的、独断的にこれらを差し引くという措置をとりました。これは、ひとり裁定の不完全実施にとどまらず、合法的に取得しておりました労働者の権利を剥奪することであり、仲裁裁定の実施は、労使の正しい慣行の樹立に逆行し、紛争の芽を後日に残すものであり、わが党として断じて承認し得ざることであり、強く反対する第二の理由で剛あります。  第三の反対理由といたしまして、裁定の不完全実施による生活権の抑圧と労働行政の反動性であります。公社企業体労使紛争のうち、従来七回の仲裁裁定と、これに関連して一度の調停がなされておりますが、遺憾ながら完全な実施はなされておりません。その中でも、昭和二十四年十二月二日の仲裁裁定は、今なお最高裁で係争中のものであります。他はほとんど公労法第十六条を悪用して、保守政府政府の義務行為を果しておりません。国会承認に当っても、政府与党の多数の横暴をもって不当な不完全実施をしておるのであります。今回の仲裁裁定も、同様補正予算内容は今指摘いたしましたように不誠意きわまるものであり、不完全実施でありながら、岸総理みずから仲裁裁定を尊重し、誠意をもって履行いたしましたと空々しく答弁するに至っては、わが党に対する許しがたい不信行為であるばかりでなく、まさに労働者を欺き、国民を欺く行為であり、断じて許容することのできないところであります。(拍手)仲裁裁定公労法の中で申しますならば最後の段階でございます。労働者の民主主義社会における地位と生活権は、それが団結権と団体交渉権と団体行動権のその三つの基本権によって維持されておることは、ひとしく日本国憲法の宣言に明確であります。それを公共企業体であるからとして罷業権に制約を加えたのは、仲裁裁定並びに調停あっせんの段階を高く権威を持たせ、団体交渉において民間のそれと異なる合理的な運営を期待しておるところに公労法を貫く一つの厳然たる方針があるのであります。それにもかかわらず、政治権力を持ち、予算権を持つ政府が対等の立場における労使団体交渉に干渉がましい圧力を加える第一歩を踏み出したこの予算は、権力によって労働者を屈従せしめ、口に民主主義を唱えつつ民主主義の基本的な条件をなし崩しに破壊していこうとする、この恐るべき傾向は労働者を低賃金に押え、生活権を抑圧せんとする政府の陰謀であって、この補正予算の中に現われている一つの最も大きな流れであります。岸内閣労働行政の露骨なる反動性であることを強く指摘して反対の第三の理由といたします。  最後に一言付け加えたいことは、今回の賃金引き上げ要求に関連して、三公社現業労働組合と当局間に紛争が重大化して来ましたその根本原因は、本委員会においてわが党同僚議員の追及の結果、明らかにされました通り、岸総理大臣及び所管大臣の一貫した反動的な労働行政によって、政治権力を介入し、労働組合活動を、威嚇と弾圧に終始し、仲裁裁定の不完全履行、特に一千名に近い未曽有の不当処分の大弾圧をなし、団結権を侵害する憲法違反をあえてする暴挙の結果でありまして、その責任はすべて岸内閣にあることをここに明確にいたし、深き反省を要望いたしまして反対討論を終ります。(拍手)
  177. 安井謙

    安井謙君 私は自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっております三公社現業給与に関する昭和三十二年度予算補正に対し賛成の意を表するものであります。この補正予算は申すまでもなく、今春来問題となっておりましたところの公共企業体等の従業員給与改訂に関して出された仲裁裁定を実施するために必要な経費を計上したものであります。まず指摘いたしたいことは、政府は今次の裁定案の実施に対して十分誠意ある態度をもってこの全面的な実現をはかっているということであります。今回提出されております裁定案は、主文及び理由書によって構成されており、内容を検討いたしますと、かなり抽象的な部分が多いのでありまして、その内容部分解釈につきましては、政府を初め、それぞれの機関においても、若干解釈上の疑義を生じ、あらためて委員会に照会をするといった手続も踏まれておるのでありまして、中には前後が若干相矛盾するのではないかとさえ思われるものもないではありません。当委員会におきましても、種々の角度から十分の検討をいたしました結果、疑問点も解消いたし、また三公社現業という複雑な給与、経理組織を持った企業体に一律に裁定をいたしますからには、ある程度抽象的な表現となることもまことにやむを得なかったものと了承いたしたのであります。  この裁定書の直接の目的とするところは、主文1に明記してあります通り、三公社、五現業従業員給与改訂に当っては、昭和三十二年四月以降の基準内賃金は、昭和三十二年度基準内予算単価について、千二百円を増額をした範囲内で労使協議の上賃金決定せよ、こういう点にあるのであります。この根拠とするところは、理由書の1にあります通り昭和三十二年四月現在において人事院勧告に基く一般公務員給与ベースあるいは民間事業体の給与とのバランスを失せざるために、こういった裁定を下しているということを明らかにしております。その他主文二、三の付帯的な事項及び理由書において今後企業体給与体系を合理的に確立するために必要な措置、たとえば予算単価実行単価の格差を将来解消すべしといったような勧告がなされております。裁定書の目的とするところは、三公社現業における給与のあり方そのものを規定するにとどめまして、主文1以下勧告的な部分まで含めまして、これらの具体的な措置としては、あくまで企業体当事者間あるいは政府国会にその決定を任せてあるという建前に相なっておるのであります。従いまして今日の裁定に当って完全実施の意思を表明して参りました政府措置といたしましても、純粋に法律的解釈に基けば、主文1項の指示に従い、単に三十二年度予算単価に一千二百円を付加する財源措置を講ずれば足りるということに相なるのでありますが、これのみでは、裁定書には明記しておりませんが、今回の予算措置によって現実的に給与相当程度増額されるように期待されておる裁定趣旨にも沿いがたいという点がありますので、実質上相当額の現実の給与改善がなし得るように財源措置がいたされております。たとえば国鉄賃金を例に取り上げて申しますれば、現在国鉄従業員給与実行単価予算単価には、すでにかなり大きな格差を生じております。この格差の大きなものにつきましては、これは今度の一千二百円に包含されるものだと明記してある部分もございます。今回裁定書の指示する一千二百円増額の予算措置をもってしては、このやり方次第では現実給与の増加分は、わずか八十円程度にとどまるといったようなことにもなりかねないのであります。そこで政府は財源の限度を社会党の諸君の言われるように、格差五百二十円をそのままにしておきましても、さらにそのほかに現実に四百三十円程度の手取り賃金が増加し得るように財源措置を講じておるのであります。裁定書趣旨と毫末も食い違いはないのであります。(拍手)  今回の政府のとった態度につきましては、仲裁委員会藤林委員長が本日当委員会におきましても、政府措置は、裁定書趣旨に対して不満を述べる点は毫もないと言明されておることから見ても明らかであります。かかる政府の誠意ある態度にかかわらず、野党の諸君は、裁定理由書等の解釈の問題をめぐりまして形式的な議論に終始し、政府裁定書の勧告の趣旨にのっとり、実質賃金の向上、またいわゆるやみ賃金といわれておりますところの格差の縮小、複雑な賃金体系の明朗化等に努力いたしておる点を逆に取り上げ、あたかも現実の実質給与が今回の措置によりベース・ダウンされるかのごとき印象を与えております。このことはまことに遺憾であります。今回の裁定案の内容に対する認識不足か、あるいは反対のための反対の議論をされておるものであると言わざるを得ないのであります。かかる態度は政府が従来に増して率先誠意をもって賃金問題の合理的解決に積極的に乗り出し、労使間の紛争解決のために努力をいたしておる点を不当に評価しておるものと言わざるを得ないのであります。  本来仲裁裁定経営者従業員団体交渉が不成立に終り、調停の成立せざる場合、最も公平な第三者機関によって出される最後的な決定案であり、労使当事者はもちろん、政府もこれを十分に尊重しなければならないことはいうまでもありません。しかしながら国の機関である公共企業体あるいは現業機関の最終責任者は政府である、その予算措置の可否を定めるのは国会であるということはまた明らかであります。この点は公労法第十六条に明記されておりますごとく、裁定案の内容予算上質金上不可能な支出を要求しておる場合には、政府はこれに対し何ら拘束されることなく国会の議決を求めることに相なっておるのであります。これは当然のことでありますが、従来は常にこの条項に政府が拘束をされまして、過去二十数回にわたり仲裁裁定案の実施については、なかなか実施の困難が伴っておることも大方御承知通りであります。しかるに今回の賃金問題の解決に当りましては、政府はよりよき労働慣行の確立、企業体労使間の紛争の解決のために積極的に乗り出しまして、労使双方との話し合い、あるいは自社両党首会談を通じまして、裁定書が提出された場合は、これが実施の用意がある意向を事前に表明する等、多くの努力を払っておるのでありまして、従来の慣例からすれば、むしろ異例の処置とさえ申せるのであります。しかるにかかわらず、組合側には何ら協調の態度が見られません。やたらに闘争に重ねるに闘争をもってし、ついに国鉄労組のごとき去る三月二十三日には業績手当の支給が手続きの関係上わずか数時間遅延したことを理由に突如実力行使に入り、わが国の労働運動史上にも異例の抜き打ちストを決行し、国民生活に甚大な不安と損害を与えたのみならず、これに対する国民の憤激、批判に対し、何ら反省の色のないことはまことに遺憾千万であります。いわゆる三公社現業の春期闘争に対する処分問題にいたしましても、たとえば原因理由がどうありましょうとも、公共企業体従業員はその性格上当然の結論としてストライキはもちろん、正常な業務の運営に支障をきたすがごとき行為は一切厳重に禁止されております。これに違反した者は解職されることは公労法上も明瞭に定められておるのであります。政府はさきに春期闘争の処分に関し、官房長官名をもってこれらの違反行為に対して厳重な反省を求め、今後の反省次第によっては処分についても考慮の余地がある等の示唆を示した様子でありますが、関係組合幹部はこれを拒否し、ついに先般の処分決定を見、さらに反対闘争が繰り返されておるがごときは、まことに遺憾と申さなければなりません。  労働問題は単に法律的措置のみをもって解決すべきものではありません。今日公企体現業機関のあり方については、機構の問題、賃金体系の改善あるいは関係法規の改正等検討を加えるべき幾多の余地があることも事実でありましょうが、これを根本的に解決し円滑にいたしますには、何と申しましても当事者の心がまえいかんにかかっておろうと思うのであります。私は当事者に対して今回の紛糾の原因につき、そのよってくるゆえんを深く探究され、将来の紛争を防止するとともに、これを機会によき労働慣行を確立されんことを期待いたしまして、私の賛成討論といたす次第であります。(拍手)
  178. 森八三一

    ○森八三一君 私はただいま議題となっております昭和三十二年度予算補正に対しまして、緑風会を代表して原案に賛成するものであります。  本補正予算案は三公社現業に対する仲裁裁定実施に関し所要の措置をなさんとするものでありまして、裁定主文が実行される内容のものであると理解されますることが私の賛意を表明するゆえんであります。  裁定主文が実施される内容のものでありまするにかかわらず、本委員会質疑におきましても論議があり、当局と関係労働組合の間にもいろいろの物議を生じておりますることは、私のは、なはだ残念とするところであります。かような事態を見るに至りましたことは、裁定理由解釈がそれぞれの立場において別個になされておるからであり、別個になされ得るような内容のものであるからであろうと存じます。本来裁定はかような解釈上の疑義を生ずるようなものであってはならないのが原則であろうと存じますが、それがそうなっておらないところに問題があるのであろうと存じます。思いまするのに、かくのごときは公共企業体労働委員会の構成なり、運営なりに問題点があるのではなかろうか。さらに藤林委員長の言にもありましたごとく、組合、当局、政府という三角関係的形態、すなわち機構上にあるのではないかと思うのであります。  三公社現業のごとき重要な企業労使間の紛争によって争議的事態を生じますることは、わが国産業経済の発展に重大な支障を生じまするのみならず、国民に対し直接の迷惑を及ぼすことでありまして、絶対に避けなければならぬところであります。かような理由からいたしまして、公共企業体労働組合には争議権が与えられておらず、その補完的措置として委員会制度が設けられておりますることも当然と申すべきであります。しかるにその委員会の構成なり運営なりに問題があるといたしますれば、紛争の解決に支障を生じますることもまた必然と申すべきであります。さらに政府の監督権が行われる当然の結果として、企業体当局の自主性制約が生ずる等のために問題の起ることも否定し得ないところでありまして、この種企業公共企業体機構のもとに経営することの根本問題についても検討さるべきでありまして、この際、これら基本的な公社のあり方、委員会の構成、運営等について十分の検討が行われ、将来一切の紛争が生じませんよう具体的の対策の樹立を望む次第でありまして、政府の善処を期待する次第であります。  この際、特に付言いたしたいことは、公務員や公共企業体関係職員がその労働条件を解決するために、いわゆる順法闘争として実力を行使しきたったのでありますが、それらの行動の中には明らかに違法と認められるものがなかったとは申されません。かくのごとき逸脱した違法行為の行われるに至りましたいきさつには、協定、裁定等の実施について予算資金上等いろいろ理由によって、その要求が実現の運びに至らなかったとするやるせなき不満の爆発であったかと見るべきでありますが、理由がどうあろうと、違法の行為は絶対に許さるべきものではありません。政府は厳正峻厳なる態度をもって処断を行うとともに、かくのごとき不満の爆発というがごとき事態を生じませんよう、誠意をもって労働者の条件を適切に解決せられるよう、反省とともに最善を期待するのであります。  以上すみやかに改善されなければならぬ重要な数点を指摘し、賛成の討論を終る次第であります。(拍手)
  179. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 私はただいま議題となりました昭和三十二年度特別会計予算補正(特第2号)及び(機第1号)に賛成するものであります。  その理由は、公共企業体等の職員給与問題について、四月六日、公共企業体等労委員会が、国鉄、電電、専売の三公社並びに郵政に対して行なった仲裁裁定主文の第一は、「昭和三十二年四月以降の基準内賃金昭和三十二年度基準内予算単価について、千二百円を増額した金額の範囲内で、労使協議の上決定実施すること」となっておりますが、公共企業体等労委員会予算単価実行単価との格差を昭和三十二年度においてどれくらいに縮小するを妥当と考えたか、あいまいでありますから、これらの予算補正が仲裁裁定の完全実施なりと明確に断定することはできませんが、概括実施されたと見ることが妥当であると考えるからであります。  なお、この機会に私は次の希望を申し述べたいと存じます。  その第一は、公共企業体等労委員会に対するものでありますが、仲裁裁定主文の第二に、労使協議の内容をなすものとして、「実行単価の水準が実現されるに至った経緯ならびに公社経営の将来の見通し等各般の事情を十分に考慮すること」と述べただけであって、その具体的の金額の数字を明示しなかったことは、賃金紛争に対する裁定としては、不完全なものであって、仲裁裁定後の労使紛争の重大な原因であると認めざるを得ません。ことに三公社並びに郵政の賃金における予算単価実行単価の開きに著しい程度の差がある現状をかんがみるにおいては、一そうその感を深くせざるを得ません。今後各種の仲裁裁定を下す場合には、裁定の文理解釈に、労使の間にいきさかの疑義も生ぜざるよう具体的に金額の数字を明示せられんことを望むものであります。  第二は、政府に対するものでありますが、本補正予算の審議の過程において、春闘処分の問題について激しい論戦のあったことは御承知通りであります。経営者従業員政府と野党との間にいかなる話し合いがあったとしても、私どもこの紛争に対して労使の立場ではなく、いわば第三者として国民の立場よりこれを見れば、国民生活並びに国民経済に及ぼす影響をほかにしては、この問題の焦点は違法性いかんというところにあります。業務の正常な運営を阻害する行為をしたものを解雇することは、公労法の明記するところでありますから、処分に対する争いは法律的に見れば裁判所がこれを決すべきものであると信ずるものであります。また政治的にこれを考えれば、野党は近く春季闘争を主題として衆議院に不信任案を提出されると報ぜられておりますが、自民党としても一昨年末の保守合同以来、解散して国民審判の洗礼を受くべしとは強く世論の要望したところでありますから、春季闘争とその処分の当否について国民の審判を受けんとするなれば、解散よりほかに道はないのであります。この意味からもなるべくすみやかな機会において、一昨年来の懸案たる解散を断行せられんことを強く要望するものであります。  最後に、今回の仲裁裁定中心として、公社制度のあり方についても幾多の問題を提供いたしました。政府公社制度のあり方についても、さらに再検討を加えられんことを強く切望いたしまして私の討論を終ります。(拍手)
  180. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 以上をもって討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより採決を行います。昭和三十二年度特別会計予算補正(特第2号)及び昭和三十二年度政府関係機関予算補正(機第1号)を一括して問題に供します。  両案に賛成の方の起立を願います。    〔賛成者起立〕
  181. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 多数と認めます。よって両案は多数をもって可決すべきものと決定いたしました。  なお、本会議における口頭報告の内容及び報告書の作成等につきましては、慣例により委員長に御一任願いたいと存じます。  本案に賛成された方は順次御署名を願います。   多数意見者署名     小林 武治  迫水 久常     左藤 義詮  堀木 鎌之     安井  謙  吉田 萬次     森 八三一  青柳 秀夫     石坂 豊一  大川 光三     木村篤太郎  小山邦太郎     佐藤清一郎  柴田  栄     関根 久藏  土田國太郎     苫米地英俊  仲原 善一     林田 正治  一松 定吉     前田佳都男  武藤 常介     加賀山之雄  梶原 茂嘉     田村 文吉  八木 幸吉
  182. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十六分散会