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1957-05-08 第26回国会 参議院 予算委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年五月八日(水曜日)    午前十一時十三分開会   —————————————   委員の異動 本日委員泉山三六君、武藤常介君、野 本品吉君、石坂豊一君、成田一郎君、 海野三朗君及び曾祢益君辞任につき、 その補欠として堀木鎌三君、田中茂穂 君、松村秀逸君、大川光三君、松岡平 市君、鈴木強君及び栗山良夫君を議長 において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     苫米地義三君    理事            迫水 久常君            左藤 義詮君            堀木 鎌三君            安井  謙君            吉田 萬次君            天田 勝正君            中田 吉雄君            吉田 法晴君            森 八三一君    委員            青柳 秀夫君            大川 光三君            木村篤太郎君            小林 武治君            小山邦太郎君            柴田  栄君            関根 久藏君            田中 茂穂君            土田國太郎君            苫米地英俊君            仲原 善一君            林田 正治君            前田佳都男君            松岡 平市君            松村 秀逸君            内村 清次君            岡田 宗司君            北村  暢君            栗山 良夫君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            鈴木  強君            中村 正雄君            羽生 三七君            平林  剛君            森中 守義君            湯山  勇君            加賀山之雄君            梶原 茂嘉君            田村 文吉君            八木 幸吉君   国務大臣    内閣総理大臣    外 務 大 臣 岸  信介君    大 蔵 大 臣 池田 勇人君    通商産業大臣  水田三喜男君    運 輸 大 臣 宮澤 胤勇君    労 働 大 臣 松浦周太郎君    国 務 大 臣 宇田 耕一君   政府委員    法制局長官   林  修三君    法制局次長   高辻 正巳君    法制局第三部長 西村健次郎君    経済企画庁調整    部長      小出 榮一君    経済企画庁計画    部長      大來佐武郎君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    大蔵省主計局次    長       村上  一君    大蔵省主計局給    与課長     岸本  晋君    大蔵省銀行局長 東條 猛猪君    通商産業省公益    事業局長    岩武 照彦君    運輸省鉄道監督    局長      權田 良彦君    運輸省鉄道監督   局国有鉄道部長  細田 吉藏君    郵政省経理局長 八藤 東禧君    労働省労政局長 中西  實君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件昭和三十二年度特別会計予算補正  (特第2号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和三十二年度政府関係機関予算補  正(機第1号)(内閣提出、衆議院  送付) ○理事補欠互選   —————————————
  2. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) ただいまから委員会を開きます。  まず、委員の変更について申し上げます。  五月七日松浦清一君が辞任され、その補欠として森中守義君が指名されました。  また本日、海野三朗君が辞任され、その補欠として鈴木強君が指名されました。   —————————————
  3. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) これより、昭和三十二年度特別会計予算補正(特第2号)及び昭和三十二年度政府関係機関予算補正(機第1号)を一括議題といたします。  昨日に引き続き質疑を続行いたします。
  4. 田村文吉

    田村文吉君 本国会が割合に今のところ平穏裏に近く閉会になろうとしておりますることば慶賀の至りでありまするが、一面、国民としては何かしら一まつの不安があると、不満があると思うのであります。それは単にいたずらに事あれかしとこいねがっているような好奇的の考え方ではありませんけれども、現国会までの自民党が強く主張して参られたあるいは小選挙区の制度、あるいは教科書法案等重要法案が、何かしら行方不明になっております。それから官公労諸君の行き過ぎに対する政府の対策がはっきりと行われていないこと等、自民党衆参両院において絶対多数を持っておりながら、思い切って自己の経綸が行い得ないのではないか。すなわち、石橋内閣から岸内閣に移行した当座は、大体石橋内閣の立てた政策に順応したことはわかるのでありまするが、ややもすれば、交譲妥協、これもけっこうでありますけれども、あまりにイージー・ゴーイングな形になっているのではないか、かように考えますので、そういうような批判が世間にもあるのであります。思いまするに、現在置かれている日本の位置は、まことに重大な転機に立っておるのでありまするにかかわらず、その進む道がきわめてあいまいもこるたありさまであるのでありまして、国民の大体三分の二の支持を持っておられまする保守系政治力が、その表現においてはきわめて薄弱な力となっておるようであります。これは国勢興隆のためにきわめて遺憾であると思うのであります。先に石橋内閣が現閣僚を選ばれました。けだし適材適所を得た、自民党内におけるベストメンバーをそろえたおつもりだったろうと思うのでありますが、しかし岸内閣にかわられまして、それぞれ岸総理のまたお考えもあるでございましょうから、あるいは遠からず閣僚の交代というようなことも起るかもしれぬと考えておるのでありまするが、その場合におきまして私がお願いしたいことは、もっと強力な一つ内閣を作っていただきたい。それには閣内におけるあるいは閣僚選考に当りまして、それぞれの勢力の妥協とかというようなことで閣僚ができ上って参りまするということは、どうも強い内閣を作るゆえんではないと、かように考えまするので、お作りになる場合においては十分にその辺のところを考えお作りになり、また閣僚に一たんなられたならば、半年や一年でかわるというようなことのないように、十分腰を落ちつけて政策を実行できると、かような意味閣僚の御選考をなさるべきじゃないだろうか、こう考えておるのでありまするが、岸総理はこれに対してどうお考えになるか。
  5. 岸信介

    国務大臣岸信介君) ただいま田村委員のいろいろな御意見拝聴いたしました。いうまでもなく、国会運営を正常化して、なるべく波乱を生ぜしめないようにスムーズに運営するということは、国会運営の要諦として考えなければならぬことであることは言うを待たないのでありますが、しかしわれわれも公党として国民に公約をいたしており、また両党の間に主張の違う問題であって、しかもわれわれはわれわれの立場からどうしても実行しなければならぬと考えるものにつきましては、これを国会審議に求めて、そうしてこれを実現するように行かなければ、本来の公党として国民に公約しておる本質から申しまして相ならぬことでありまして、ただそれの国会における審議をいかにしてスムースにするかということにつきましては、できるだけわれわれとしても考えていくべきである、この両面を考えていかなければならない。決してただ単に国会において事なかれということのために重要なる政策、ないし国民に公約しておる重大な問題を、意見が違うというようなことから、それでいわゆるイージー・ゴーイングになっては相ならぬ、かように考えておりまして、私、前石橋総理のあとを受けてこの国会中に内閣はかわったわけでありまして、すでに総予算を初め重要な案件等につきましても、石橋内閣として国会提出審議中であったというような関係上、すべて国会運営を主に考えまして、石橋内閣政策その他を踏襲するということを申して今日に至ったわけであります。しかし政党はいうまでもなく、やはり政党としての政策を前進さして、そうして国民輿望に従っていかなければならぬことは言うを待ちません。こういう意味において国会が終了後におきまして、さらにわが党として、わが党のこの政策、さらに国民輿望等を、世論等を十分考慮いたしまして、新しい政策を立て、またこれを実行するにふさわしい陣容を整えて進んで行って、国民支持を受けなければならぬ、かように考えております。もちろんいわゆる改造問題というような問題に関しましては、これは十分に政治の最高の責任をとっております総理大臣において各般の事情考えていかなければならぬことは言うをまたないことであります。軽々に言うべきことでもありませんし、またその必要があるときにおいては、これを断行いたしまして、私はあくまでも国民が信頼し、国民が頼もしく思うような姿の党及び内閣を作り上げていかなければならぬ、またそういうふうに努力しなければならぬ、かように考えておりますので、今田村委員のいろいろな御意見を承わっておりまして、大体において私の心がまえとしても今御意見のように進んで参りたい、かように考えております。
  6. 田村文吉

    田村文吉君 大体今の答弁で納得いたしたのでありまするが、いわゆる国会の正常化問題と交譲妥協という問題が混淆されるということは最も忌わしいことでないか、こういうふうに考えます。  それから第二の問題として先ほど申し上げました、閣僚ベストメンバーをおそろえになったならばできるだけ一つ、やはり総理と一緒に進退を決するというぐらいの長い期間にわたって職務をとる、こういうことが必要じゃないか。過去の、終戦後の状況を見ておりますというと、大てい半年とか一年とか、あるいは長くて一年半とかでおかわりになるということでは実際能率が上らぬ、こう考えるのですが、その点をなおもう一ぺん伺いたいと思います。
  7. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お話通り私は行政府長官として、国務大臣として国の行政に当る責任をとる役に付く者につきましては、できるだけ適材適所、人材を充てていかなければならぬ。そしてしかもこれを一たび選び、責任者を求めた以上は、内閣と運命をともにするような意味において、腰を落ちつけて事に当るということでなければならぬと思います。そういう意味において常に、しょっちゅう入れかえをするというようなことは、これは政治責任をとっていく上から申しまして適当でないと思っております。
  8. 田村文吉

    田村文吉君 次にお尋ねいたしたいのは、これは日本の局部的の問題といえばそういえるのでありますけれども、最近東北電力及び北陸電力からそれぞれ平均いたしまして、前者は二割一分、後者は二割四分の大幅の料金値上げ申請されておるのであります。前回昭和二十九年の十月にもこの両社は他の会社に比べますというと、とび抜けて大幅の料金値上げをやったのであります。なおさらに、前回も同様であったのでありまするが、今回も産業用電力に特に大幅の値上げをしわ寄せいたしておるのであります。すなわち東北電力会社の例を見ましても、電灯は一割、農事用には五分程度値上げでありまするが、鉱工業用に対しましては平均三割二分でありまするが、その中で特に重要部門を占めておりますところの産業用の常時電力に対しましては四割の値上げを行わんとしているのであります。実に乱暴千万と申さねばならぬのであります。これが独占企業であり、しかも私企業として一割二分の配当をあげている会社であるのであります。さきに鉄道運賃値上げもございましたが、石炭の値上げもありまするこの際に、さらに産業の基礎的の物資でありますところの電力の大幅の値上げ東北北陸の後進県に行われんとしているのであります。けだし東北北陸の形勢を見ました上で、あるいは他の電力会社もこれに追随して参るかもしれません。そこで、私は総理に伺いたいのでありますが、せっかく産業振興することによりまして、いわゆる完全雇用というものを達成するということをお考えになったり、あるいは拡大均衡によって物価は上げない、数量景気はもっていくけれども、物価は上げない、こういうような方針をお持ちになっている。また東北振興に関してはいろいろの法律をお出しになりまして、この僻陬土地振興をお考えになっておるのでありまするが、今の東北電力の要求した値上げによりますというと、一カ年に五十億、北陸は三十億、つまりあの東北の乏しいところから五十億の金を取り上げる。北陸のあの僻陬の地から三十億の金を取り上げる、こういうような要求をされているのでありまするが、大へんこういう点がどうも矛盾しているのではないか。むろんこの電力値上げを御認可になったわけではありません。ありませんが、たださようなことが出て参っておりますることは、非常に突飛であり、乱暴であると考えるのでありまするが、大体どうお考えになりますか。
  9. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 詳しいことは、内容担当大臣からお答えすることにいたしまするが、田村委員も御承知のように、近時鉱工業部門日本生産が非常に拡大され、従ってこの方面に関する電力需用が非常に大きくなった。いわゆる需用に応ずる全体の見地から見まするというと供給が足りない。また地域的にもいろいろな関係があるようにも思いますが、そういう状況であり、いわゆる日本産業上の、経済上の隘路の一つとして電力というものが上げられているような状況であります。これが資源開発をし、電力開発をうんと促進して需用に応ずるように持っていかなければならぬということは言うをまちません。ただ新たに開発するところの資源というものが、旧来のものに比して実際のコストが高くなっていっているというのも、これも実情であります。こういうようなことをにらみ合せて一方においては電力が豊富に供給されなければならぬ。また産業開発の上から申しまして、今田村委員のおっしゃるように急激な値上げによって産業のせっかくの進展を妨げるということも考えなければならぬ。私は一般の原則としては、われわれの内閣としては物価を上げないように政策をとらなければならぬと思います。いろいろの関係においてやむを得ないものの値上げ等もございまするけれども、全体の物価としてこの値上げを、物価が高騰しないような政策をとるということは、現在の経済政策根本として考えなければならん。従って電力のごとき重要なるものの値上げということについては、十分慎重な態度でこれを検討する必要がある。ただ一面において、今申したような日本経済界実情でありますから、電力開発も促進していかなければならぬ。これを経営するところの会社自体経営内容も合理化して、しかもこれらの会社赤字になるというような見通しでは、これは供給を豊富ならしめることはできませんから、そういう点に関して当該官庁におきましては、十分に実情検討し、数字なりその他を検討して、今申しました心がまえのもとに適当な処置をしなければならぬことだと思います。東北及び北陸についての事情として私は詳しくは存じませんけれども、そういう申請が出てきている、そういう申請が出されるというようなことも聞いております。通産大臣のもとにおいて、今申しましたような心がまえで、これを検討するように私の意見を申し述べておりますので、詳しいことはなお通産大臣よりお答をいたさせたいと思います。
  10. 田村文吉

    田村文吉君 通産大臣から御答弁をいただきます前に、いま一つ同じ問題についてお尋ねしておきたいのでありまするが、それは今度の値上げ申請が大体消費用のものにはあまり値上げをしない。生産用のものに対して大幅の値上げを要求しておる、こういう考え方は、これはひとり電気だけではありません。あらゆる部門についていわば商業的と申しますか、そういうような事柄が日本中はやっておりまして、いわゆる俸給は上げる消費増加する、そうすると非常に消費部門が発達して参っております。今度大蔵大臣が金利を二厘引き上げることに同意されたということも、結局そういうような問題に私は関連していると思うのであります。すべてがもっと産業の方に力を入れることを考えないで、消費増加ということに力を入れておる、こういうふうなきらいがあるのであります。今の電灯は一割、あるいは電熱器とかああいったようなものはみんなそうなんでありましょうが、重要な生産関係をやっておるものに四割上げる、こういうようなことでありますることは、非常に今後の日本経済のために非常な危険な考え方があると、こういうふうに私は考えておるのであります。そこで今東北北陸を責めましたけれども、一体東北北陸というもの自体が九分割のときに非常に不公平な分割をされておる。と申しますのは、たとえば猪苗代電力は、これは東京電力に今行っておるのであります。信濃川で発電しておりますものも、あの新潟県の雪と洪水で荒しておりまする信濃川水系というものも全部東京へ来ておる。それから北陸を見ますると、庄川、あるいは黒部、こういうものは全部関西分割されてしまった。だから言いますというと、大事のいいところはみんな生産条件のいいところへ電気が送られておる。そうしてかすだけが残っておる。それではならぬから新規に開発をしろと言われるから、従って高いコストのものを開発していかなければならぬ。でありまするから、この前の予算委員会でそういうふうに伺ったのでありまするが、この二月、三月にかけましては、とうとう五割の制限までやったんでありますが、こういうような不条理なアンバランスが今の日本電力会社の間に起っておるのであります。こういうものを一つ考え直してみる必要が起っておるのであります。そうでないというと、いかにやりましても、その会社自体がどうにもならない。だからある程度一つ上げてやろうじゃないかという考え方が出られるのも無理じゃありませんが、その根本が間違っている。でありまするから、もし幸いに今の猪苗代電気であるとか、そういうものは一つ東北へ返してやる、また黒部水系北陸へ返すというようなことができるならば、これは一番簡単なんでありますが、これはなかなか簡単にはさようなわけにはいかないと思うのであります。でありますからいっそのこと東北とか東京というものは一つにしていったらどうか、北陸関西というようなものも一つにしていったらどうか。幸い電力原価主義によって、ある程度地元の方が非常にそれがために荒されており、また辺陬の地で、しかも雪と寒さに悩んでおる土地であるのでありますから、若干のそういう地方に対する在来あったような安い電気供給しておくということを考えると、総合的な問題が考えられるのであります。なお、一歩進んで言いますというと、先般もあなたに申しましたように、日本電力というものは、全部これはもう水力は少くも国家の管理のもとに移してやる、いわゆる国有に移してしまう。こういうことによってやることが必要なんじゃないか。決して自由党だからといってそう国有がいつも悪いものだというようなものはないとあなたがおっしゃっていらっしゃる通りでありまして、私はこの電力が非常な大きなガンになっている、かように考えるのであります。ただいたずらに金を出してやってやるがいいというような問題ではなくて、こういうアン・バランスをどうして調整するか、こういう問題が残っていると考えるのでありますので、その態様につきまして、いわゆるその消費増加というものに対して、いわゆる消費用のあらゆる物資、あらゆるものに対する奨励ではありませんまでも、チェックはしないで、生産の方をチェックされる、この問題が一つと、それから電力についてはいわゆる再々編成と申しますか、問題を考えなければならない時期が到達したと、こういうことを私考えますので、大体の総理のお考えを承わって従って所管大臣からの御意見を承わりたいと思います。
  11. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 電力値上げ問題に関しては、私はまずその値上げの可否、値上げすべきであるかどうかという根本問題を検討するとともに、これを値上げすることはやむを得ないという結論に達した場合におきましては、どういうふうに料率を按配するかということは、今田村委員お話のように、私は産業消費、いろいろな部門考えまして、十分にその間における、また地方における事情を考慮した上で料率を按配しなければならない。ただ単に消費の方はいかなる場合においても安くして産業の方にしわ寄せをするとか、あるいは一度にその逆に産業の方を非常に安くしておいて消費部門に皆かけるとかいうようなこの一律の一つ方針というものは、私なかなか地方事情を十分考えて、そうして産業のこの料率をどういうふうに按配するかということを十分に検討する必要があるのじゃないか、かように考えます。第二のこの問題は、要するに電力に関するいわゆる再編成再々編成というふうな問題になると思うのでありますが、電力のこの経営形態につきましては、過去二十年くらいの間に、日本としてはいろいろな形態をとってきたわけであります。現在の制度ができましてからまだ六、七年くらいのことでありまして、私はこれのやり方、またその実績等もいろいろ今お上げになるようないろいろの望ましくないこともございますし、同時にまだもう少し見通しをつけなければならないような問題もありますし、今すぐ再々編成して合併するとか、あるいは電力を全部国有にするとかいうふうな、根本的な制度一つ考えるということにつきましては、よほど慎重に検討してみないというと、直ちに今こういうふうな事態があるからそこに応ずるためにこうしたらいいじゃないかというふうに、簡単に事を決するということも大問題でありますので、十分に一つ検討をしなければ、容易に結論を私として申し上げかねると思います。もちろん今田村委員のお述べになった御意見についても、相当に私はごもっともな点があると思いますが、同時に今申しましたような、こういう大問題に関する制度なり組織というものの本質に触れて変えるというような場合におきましては、よほど慎重な検討を加える必要がある、かように考えております。
  12. 田村文吉

    田村文吉君 こまかい点について関係大臣から……。
  13. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 東北及び北陸の両電力会社からの申請が参っていることは事実でございますが、十日の日に仙台及び富山で聴聞会を開くことになっておりますので、そこで広く関係者需用家皆様の御意見を十分お聞きしまして、そういう御意見をもとにして政府も慎重に検討した上で結論を出したい、こう考えております。で、ただいまの電灯料金の問題と、産業用電力料金の問題でございましたが、むろん御指摘のような方向で十分私どもは合理的な検討をしたいと考えておりますが、ただいまのところでは、御承知のように、両地域の電力料金は、この家庭用電灯料が比較的割高になっておりまして、他の地区の電灯料金と比べて割高になっている、従ってわずかの値上げをすることによっても、東京と同じ程度になるというふうになっておりますが、産業用料金はあそこが水力地帯でございましたので、特に安く現在なっております。従って安いために、低廉であるために、大口需用を中心とした電力需用が急速にふえた、そのために開発を急ぐということになりましたので、いろいろな資本費増高から、このままで推移すれば、東北電力は五十三億円くらいの赤字になる、北陸電力は三十億円の赤字になる、こういう数字を出して申請して参っているような状態でございますので、結局産業用電力需用がふえたというために、需給の逼迫から開発を急いでいるというような形になりますので、これを産業用電力が負担しないで、一般消費用電力に負担をかけるということも、これはなかなかむずかしい問題でございますので、そこらは十分勘案して、東北北陸の特殊性から、東京地方よりはまだ低廉な産業用電力料金になるんだというようなところをやはり私どもは一つのめどを持つ上におきまして、慎重に検討をしたいと考えております。  それから電力業界の再編成云々のことについて御意見がございましたが、ただいま御承知のように、エネルギーの問題につきましては、いろいろな権威者を集めて、今から二十年後の大体の需給予想というものを私どもはやりまして、一応の予想を今結論づけたということになっております。そうしますというと、将来電力につきましては、水力、火力のあり方がどういう形になるかというようなものも大体予想されておりますので、この需給の予想に従って今日政府が長期計画を立てて対処していくその過程において、九電力のあり方が将来どうあったらいいかという問題は、当然私どもとしても十分研究し、検討したいと考えておりますが、ただいまのところは御承知のように再編成を発足して、まだ五、六年でございますし、しかも、各地区ともそれぞれ需用に対処するように責任をもって開発していく、そうしておのおのが自立していくというような、責任自立体制というものを中心にして現在進んできているところでございますので、当面の問題はこの逼迫した需給にそれぞれ地帯間の電力融通をやるとか、いろいろな措置をとって切り抜けていき、そうして開発をやるのがいいのじゃないか、ここで編成の問題を出して混乱させるというと、いろいろなそこに支障を来たしますので、私は当面の間は今の態勢で需給の円満な調整をやる方向に持っていく、そうして長期的なこの計画において、この編成のあり方についても考える、こういうふうな態度をとって今後対処していきたい、そう考えております。
  14. 田村文吉

    田村文吉君 ただいま通産大臣からるるお話があったのでありますが、残念ながら事態のはっきりした事情を御把握になっていないのじゃないか、こういうような感じがいたすので、お言葉を返すようでありますけれども、今の東京方面と比べて東北電力というものは安いのである、こういうようなお考えでありますが、一体、十二月も、一月も、二月も、三割とか五割とかいうような制限を受けて、そのためには皆二重設備の電気を置いてやってきて、それで少しぐらい電気が安いからといってそれで合うとお考えになるんですか。非常にそういう点についての御認識が足りないと私は申さざるを得ないのであります。いわんやそういう質の悪い電気を持ちながら四割も上げるということは、東京電力より高いものになる。当然高くなる。それは原価計算からいえば、今度高い発電所を作るんだから元はこうなる、だからやむを得ないというお説はあるでしょう。ありましょうけれども、使う方の身になってみると、今日大事な電力を重大な原料を一ぺんこに三割、四割と上げられたのでは、ほとんど東北北陸における産業というものは壊滅せざるを得ないのであります。こういう点は今ほんとうに突っ込んでお考えいただき、事情を御しんしゃく願わぬと、私は非常に将来の日本経済のために不安である、こう考えるのでありますので、その点につきまして、あるいは電灯が割高であるとおっしゃったけれども、電灯は決して東京関西に比べて割高ではありません、同じであります。でありますが、ただ電力が表面的には安い、安いんだからそれをうんと電灯にしわ寄せするのはいかぬ、こういうお説でありますけれども、私は上げるならばある程度皆が負担していかなければならぬ、またどんな事業でありましても、とほうもない三割も四割も一ぺんに上げられて、事業の成り立つわけはないのでありますから、こういう点はよく一つ考え願いたいと、こう考えますが、さらにその点につきましての御答弁を願いたいと思うのであります。なお、御承知のように、一体再編成のときに、東北にございました電力東京に帰属せしめた電力はおよそ二十カ所、五十万キロであります。五十万キロの電気東京にとられたのであります。それから北陸で見ますというと、十五カ所でありまして、六十万キロの電気というものが関西にとられたのであります。とられたという言葉は悪いのでありますけれど、事実東北北陸にございまする発電所がつまり関西なり東京電力の区域にとられた、こういうことなんであります。こういう点をただもうできている再編成であるからなるべくいじらないようにしておいて、遠い二十年先の一つ将来を見ようじゃないかというようなのんきなことを言っていられない現状になっているということをよくお考えをいただかないというと困る、こう考えるのであります。
  15. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 今両社から申請されてきたような内容をそのまま政府が認可するというようなことは考えておりません。そういう点は十分検討いたしまして善処したいと考えます。で、再編成のときにいろいろ問題があったことは、私どもも十分承知をしておりますが、そういう点も十分考えまして、この融通電力料金というものについては、政府一つ考えをもって対処することによって、ただいま両社から申請されてきたような内容をそのままを認可するというようなことはしない方針でございますので、御了承願いたいと思います。
  16. 田村文吉

    田村文吉君 もう一つ関連いたしまして、同じ両電力会社から出た値上げ申請の中で、東北電力は先刻申し上げたような、各産業別に一律に値上げを要求しておられますが、北陸では今まで使っておられるものに対しては率を、非常に微量の値上げをいたしまして、そうしてこれから作る産業に対しては、それの五割増し、最高五割増しの電力値上げをすると、こういうようなふうに聞いておりますので、そういうような考え方は、何か通産省としてもお考えがございましょうか。いわゆる新規に作るものに対しては高い、今まであるものに対しては上げるけれども、その程度をゆるめると、こういう考えがあるように聞いておりますが、東北北陸考え方が違っておりますか。
  17. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) お話しのように、現在出ております申請のうちで、大口の産業需用に対しましては、東北北陸とは違った考えで案を出しております。東北の方は一律に料金を上げる、その上げ方は常時、調整電力でそれぞれ違っておりますが、いずれにしても旧来の需用と新しい需用に差別をつけないという考えであります。これは東北振興のためには新しい工場を大いに誘致する必要があるというふうな会社の説明であります。北陸の方はこれとは逆に今お話がありましたように、特別料金というふうな名目のもとに、ことしの四月一日以降増加いたします需用については、在来のものに比べて約倍近い単価を、これは電力料金、キロワット・アワーの料金でありますが、それを申請する説明によりますれば、北陸電力の最近の原価高騰の一番大きなものは、近隣の関西、中部その他の電力会社から融通を受けたことによるのだと、その融通を受けたものは管内における大口の産業需用が急速にふえたためで、従ってそういうような原価高騰を来たした原因をなす需用家に負担してもらいたいというような説明になっております。それぞれの理由もあるかと存じておりますが、もう少し私の方としましても、公聴会における各階層の意見を聞き、なお、そういう制度が実際上どういうふうに影響しますかということを見きわめました上で処理したいと考えております。
  18. 田村文吉

    田村文吉君 総理がまたお帰りをお急ぎになっておるようでありますから、総理に対する質問を進める意味で、電力の問題は一応これで打ち切りまして、今度の政府が御提案になりました公共企業体の賃金裁定に関する補正予算の御提出でございますが、これはこれでよろしいと思うのでありますが、一方においては右裁定の第一項を実施することは、現況においては予算上不可能であると認められる、従ってこの裁定は公共企業体等労働関係法第十六条第一項に該当すると思われますので、同条第二項の規定により本件を国会提出し御審議を順う次第であります云々というように案件が出ておるのであります。これはどういう関係になりますか、私よくわからぬのでありまするが、きのうも御質問があったそうでありまするけれども、どうも納得できないのでありますが、一体こういう案件を出しておいて、一方に予算さえ通ればいい、こういうことで予算の実行ができるとお考えになっておりましょうかどうか、この点が第一点でありまして、私は取扱いの順序からいったならば、まず法第十六条の承認をお求めになる、そのあとか、あるいは同時でもよろしいのですが、予算をお出しになる、こう両方行くべき筋合いのものではないだろうか、かように考えるのでございます。もしかりに予算だけ組んで国会の議決を得ればそれでいいんだということでありまするならば、十六条第二項の規定に基いた国会の議決を求めるの案件提出する必要がない、もし提出されたものであるならばこれを引き込める、こういう手続を経らるべきではなかったであろうか、こう考えるのでありますが、これは今後の例になりまするので、私ははっきりとその点を一つしておいていただきたい、かように考えるのであります。
  19. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) お答え申し上げます。ただいまの御質問でございますが、御承知のように公共企業体等労働関係法によりますと第十六条の規定に一項と二項がございまして、資金の支出が不可能なものを内容とする場合における協定なり、あるいは裁定なりは十日——第二項の規定でございますが、十日以内に国会に付議するという規定がございます。従って十日以内に資金の支出が可能であるということが確定しておりません以上は、政府といたしましては第二項の規定に従って承認を求めるべく手続として付議をするということが必要に相なって参ります。しこうして一方資金上可能にするという結果を得られるようにするためには、やはり予算上の措置を国会にお願いをいたしまして、その御議決を求めなければなりません。こういう格好に相なるわけでございます。
  20. 田村文吉

    田村文吉君 そこで問題はいわゆる案件が議了されないで予算だけ通れば、それで予算の執行ができるとお考えになりますか、これは大蔵大臣一つお伺いしたいと思います。
  21. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 仲裁裁定によりまして予算上可能なりと判断した場合におきましては流用でやりますが、その移流用が将来にも相当関係があるという場合におきましては予算を作り変えなければなりません。従ってその予算の御審議、通過があれば、それによって私は仲裁裁定に対する法的措置は完了するものと考えております。
  22. 田村文吉

    田村文吉君 今の大蔵大臣の御説明でありますると、案件は出したけれども、その案件は必ずしも議了しなくてもいいんだと、要するに予算案だけの審議さえしてくれればいいんだと、こういうふうにお考えでございましょうか、その点は法制局長官一つ意見の一致を見ていただきたい。
  23. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 一方において十六条の第二項の規定による付議をいたしておるわけでございますが、他方において予算上の措置といたしまして補正予算が出ておるわけでございますが、その際に補正予算がもしできました場合には、これはすなわち予算上資金の支出が可能になるということで実は前段の十六条二項による議決の方は可能になってしまうわけでございますから、従ってその方はいわば何と申しますか、自然消滅的な格好に相なるということでございます。つまり言いかえれば、ただいまの御質問がありますように、予算上の措置についての御議決があれば、他方の方は御議決の対象としての意味合いがなくなって参りまするので、そういう意味で自然消滅に相なるわけでございます。
  24. 田村文吉

    田村文吉君 何かしらちょっと法制局にも似合わないような、私しろうとにはちょっとわからないような御説明に伺うのでありまするが、もっとこの案件予算上資金上不可能であるから国会の承認を得なきゃならないということでありますが、国会がそれに対する審議権を持っておりますね。その審議権を無視して政府が勝手に、もうそういうことはしようがしまいがかまうことはないから政府はこれを承認するんだ、勝手にきめて、片方の方の法案にはおかまいなしで予算だけを出して片方の方は流れてもいいんだ、こういうような考え方は、今後私は、結果から言ったら同じになるにしても、国会審議権を一体どうなさるおつもりであるか、こういう意味で私はお尋ねをいたしておきたい。
  25. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) ごもっともな御質問だと思いますが、この予算の方が可決されました場合に実は審議権を無視するというようなことではございませんので、国会といたされましては、その法の十六条二項の方の御議決を願う、しかもこの予算はその事後であれば最も意味があるわけでございますが、お通しになるということであれば実は何の不思議もないわけでございますが、お尋ねのように予算の方が先に通ったという場合には、十六条の規定をごらんになりましてもわかりますように予算上支出可能という事態が発生して参ります。発生して参りますと協定の方はいかが相なるかといいますと、それはやはり可能になったというそのときにおいて拘束性を持って参りますから、その意味でそちらの方の拘束性を停止するわけに参りませんので、そういう意味予算の方が通ってしまいますと議決の方がそういう意味合いといいますか、格好になってしまうというわけでございます。
  26. 田村文吉

    田村文吉君 今の御答弁は少しくお苦しい答弁のようでありますが、私はそのために総理に時間をあれしてもいかぬからまたあとで一つお伺いします。関連して質問される方もあるかもしれませんが。  自由党では小選挙区制というものを言っておられます。これは私どもも大体けっこうだろうと思うのでありますが、その中に、最近には東京都内の人口がふえた、従って都内の人口に比例して議員の数をふやす、また地方の方では人口が少いんだから減らすというようなことで考えられておるそうで、私はまだ詳しい研究をしておるわけではありませんけれども、ただこの選挙人の人口の数に按分しただけでは私はいかぬと思います。私はやはり土地の面積、そういうものに関係してやっぱり山にも聞いてみなければなるまいし、川にも聞いてみなければならぬことも多いと思います。そういう点を考えるというと、あるいは広漠たる土地であるけれども——砂漠みたいなところで人間がいないんだから選挙は要らぬ、こういうことをすればするほど日本のような狭い領土で寒村僻地はますます哀えていく、そのある程度利害を主張する機会を失ってしまう、こういうことになるのでありますので、単純に人口に按分して被選挙人の数をきめるというようなことは穏当でないように私は考えるのでありますが、総理はその点についてお考えになったことございませんか。
  27. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 小選挙区制という制度そのものは、私は従来からも、ことに二大政党を健全に発達せしめるためには小選挙区制が妥当なものであるという考えを持っております。ただ問題は、小選挙区制を採用した場合に、いわゆる別表に掲げておるところの区制をいかにきめるかということが非常に問題になるわけであります。根本の原則としては、従来選挙法では選挙権者の数に大体比例して議員数をきめるというのが、これが大体根本の原則であると思います。ただこの別表の地域を定める場合におきまして、いろいろな交通の関係であるとか、歴史的の関係であるとか、その地方のいろいろな事情も同時に十分に考慮していかなければならぬことは言うを待たないのであります。算術的に、ただ人口で画一的にきめて、そして地方事情というものを無視するということも、これは非常に実際に適さない。その地方事情、今申したような各種の事情を取り入れるということになりますというと、必ずしも人口に正確に正比例しないことになるわけで、従いまして今田村さんのお話のように、選挙というものはそこに住んでいる人だけじゃなしに、山にも聞いてみる必要もあるし、川にも聞いてみる必要があるというお言葉でありましたけれども、私はまあ選挙権というものは国民が平等に持つべきものであって、都会の人もいなかの、僻村の人もみんな一票ずつ持つべきことは当然であって、そうしてそれらの人々がやはり百人なら百人という、かりに数は都会における百人も、僻村における百人も、同様な権利をもって選挙権を行使するということが、私は根本の理念としてはそれが原則だろうと思うのです。ただ今も申しましたような、事情を取り入れていく上から申しますというと、あるいはそこに算術的、機械的な人口の厳格なる正比例ではなくして、地方事情が取り入れられますから、結果として山にも聞いてみる、川にも聞いてみるという今のお言葉の気持がやはりこの選挙区に盛り込まれる結果になる、かように考えております。
  28. 田村文吉

    田村文吉君 次に、今度の裁定に関係して感じたことなんでありますが、その裁定をなされましたいわゆる公益委員の方々の御苦心のほども考えられるのでありまするが、何かしら表現にはっきりしない点がある。やはりああいう位置におなりになりますというと、そう突っ込んだことも言いづらいような場合もあるので、私は今の公共企業体の労働委員会だけでなしに、一般の労働委員でもそうでありまするが、どうも公平な、自分の所信に従って裁定をし、あるいは調停をするというようなことが困難な点があるのじゃないかと思う。というのは、今の労働委員会制度というもの自体根本的に私は疑いを持っておるわけであります。そこで、これは後に伺ってもけっこうでありまするが、一体労働裁判所というようなものは、私は最高裁の下級審としてできるものである限りにおいては別に憲法上は差しつかえない、こういうふうに考えておりますので、労働裁判所によって位置が保障され、しかも長い年月にわたって経験を積みながらやるというようなことが差しつかえないものではなかろうか、こういうふうに考えるのがまあ一問でありますが、それは法規的にはできるけれども、もし実際にすぐ移すということになれば困難である、ところが今の労働委員会制度自体に非常に欠陥があるということをお考えになった場合、労働委員会制度というものを一つ根本的に作り変えて、任期は八年とか十年とかやる、またあらゆる兼業は禁止して、そうして中正、公平に裁定のできるような制度にするということの考え方を持たなければならぬと思う。そこでこの二つの問題について総理から伺いたいのであります。
  29. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 労働争議に関係して調停あるいは仲裁裁定を行うという場合におきまして、これは事の性質上やはり一つの妥協といいますか、労使両方面間の歩み寄りで妥当なところを見つけるという性質がやはり当然であると思います。純粋の、真に明確な権利義務の関係だけで律することは、ことに人権のごときものにつきましては、なかなかむずかしい点があると私は思います。従って仲裁裁定等におきましても、その裁定を読んでみまして、解釈上疑義を生ずるような点も出てきておる点がなきにしもあらず、私どもは今回の仲裁裁定について、誠心誠意、これを完全に実施しよう、裁定の趣旨通りこれを実現しようということに努力してきておりますし、そういう趣旨において予算を提案しておるのでありますが、あるいはそれは完全な実施でないというふうな御議論も出てくるというような点は、そういうところにも一部の原因があるだろうと、こういうふうに思っております。できるだけそういう疑義を生ぜしめないような明確なものが将来できていくというようにしなければならぬ、こういうふうにまあ考えております。それにつきまして、労働に関する特別の裁判所を作ったらどうだというお考え、これは法律的には私は可能であると思います。しかし直ちにそういう制度を作ったことが、日本実情からいって、うまくいくかどうかというようなことにつきましては、十分検討してみなければなりませんし、ただ現在の委員会制度が、これが最も望ましい形であるか、その構成なり運営なりの点について、なお改正を加える点がないかどうかというような問題につきましても、私どもの今までの経験から見、日本の国状から見まして、これを検討して参る必要は私はあると思います。ただ委員が、これは本質上、申し上げるまでもなく、こういう性質の本のでありますから、きわめて公正な立場をもってその正と信ぜられる事柄に向って、いろいろな方面から特別の影響力をもって、その所信を十分に述べ、所信を明らかにすることができないような勢力が、他からこれに加わるというようなことは、委員会本質から見て、それは許すべからざることであることはもちろんでありまして、そういう意味において、委員の構成なり、委員の地位なり、委員の職務執行等につきまして、なお十分に検討を加えて参りたいと、かように考えております。
  30. 田村文吉

    田村文吉君 今の労働裁判所は、そうすると、今の法規憲法のもとで差しつかえないと、こういうふうに……。
  31. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 法律的には差しつかえないと思います。
  32. 田村文吉

    田村文吉君 長官から一つ、解釈をはっきりしていただきたい。
  33. 林修三

    政府委員(林修三君) 今御質問のごとく、いわゆる最高裁判所の下の下級裁判所の一としてのことでございましたら、憲法上は私は差しつかえないものである、立法細則の問題は別といたしまして、憲法上は可能なものである、かように考えます。
  34. 田村文吉

    田村文吉君 総理がこの間、日本の国から汚職、暴力、貧乏をなくすると、非常に適切な言葉を新聞におはきになって、私けっこうだと思うのでありまするが、今、私はもう一つ加えたいのは、国内の争いをなくする、無病、無争ということが、無病無争といいますか、争いをなくするということが、いわゆるわれわれの今後の民族が生きる上において、非常な仕合せな、幸福な点になってくるだろうと思います。そこで聰明な、ことに産業のことについてお詳しい総理でいられますから、特に私はこういう点についての一段の御研鑽をお願いしまして、労働立法というものをもう少し根本的に見直してみる、そうして国にできるだけ争いをなくするようにする、できるだけ貧乏をなくするようにするというようなこととあわせ、今の争いをなくするということについての根本の対策を立てることが、今後の日本政治家に与えられた一番大きな問題じゃないかと、こういうふうに私は考えるのです。私の希望を総理に申し上げまして、総理の一応御退席をお願いしてけっこうです。  大蔵大臣にお伺いしたいのでありますが、きょうの新聞紙上で、日本銀行は、輸出金利を除きまして全部二厘の引き上げをすることになりました。大蔵省もこれに同意をお与えになったということであります。その内容を新聞で拝見しますというと、初め政府考えておったような、大体今年の貿易じりはとんとんにいく、こういうようなお考えであられたようでありますが、実際はこの四カ月間に三億ドルの輸入超過になって参っております。もうドルは十一億ドルに減っている、しかもそのうちから実際のこげつき等を引けば七億にしかならぬというようなことを言っておりますが、私はかようなこともあろうかと心配いたした、皆さんも御心配になっていたのだろうと思いますが、先ほど申し上げました日本国民が皆この消費拡大に向って参りますることは、この結果恐るべきものがある、単なる生産の設備増加によるだけの景気であるというふうに考えたところが間違っているのじゃないか、こう考えておったのでありますが、今度は、単に輸入を制限なさるための金利の引き上げもありまするが、一般にあらゆる産業にとって大切な金利が二厘も引き上げられるということになりますと、大きな影響を与えるものと考えます。しかし、大体において今日の情勢から引き上げもやむを得なかったろうと思うのでありますが、日本の金利は御承知のように、世界水準から申しましたら、とほうもない高い水準にありますので、そのような状態が続くということは、日本経済のために心配すべきことであると考えているのでありまするが、この輸出入の日本の今後の見通し、及び大蔵大臣がお考えになっておられます金利政策等につきまして、この際所信を伺うことができれば仕合せと存ずるのであります。
  35. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 昨日も本委員会で申し上げたのでございますが、世界の経済見通し、またわが国の経済の今後の状況につきまして、私は以前とあまり考えを変えておりません。先般も申し上げましたごとく、上半期は相当輸入超過で、一億ドル余りの上半期に赤字が出た、こう申しておりました。それは昨年のスエズ問題から相当輸入が旺盛になりまして、御承知通り昨年の十二月には三億ドルをこえる輸入信用状が発行されております。一、二月がだんだん減ってくる傾向でございましたが、三月、四月が非常にふえております。三月ごろの見通しでは、まあ五、六月ごろで輸入も相当減ってくるのじゃないか、それは輸入在庫がかなりふえております。三月末ぐらいで二カ月半ぐらいの状況でございますが、相当輸入が減ってくるだろう。こういう見通しでおったのでございまするが、三月、四月になりましても投資が非常にやはり盛んでございまして、私は過当とは申しませんが、わが国の力以上の投資が行われつつある。これは世界経済の動きから申しまして、またわが国の実力から申しまして、少し行き過ぎるのではないか、こういう気がいたしたので、今回金利の引き上げに同意いたしたのでございます。この問題は、私も考え日本銀行の総裁も考えております。期せずして一致いたしましたので、早急にやった方がいいというので上げたのでございます。で、先般、高率適用の緩和と一厘引き上げ、こういう問題のときも、将来において、私は金利の引き上げ、金利の引き下げがあると、こう予想しておりました。そこで、あの当時の説明は、将来弾力的な金融政策を行う下地を作るんだと、こう私は本委員会で説明いたしました。経済界、金融界の情勢によりまして常に弾力的に金利を動かしていこう。で、私はこの金利政策あるいは物価対策のもとは、公定歩合と支払い準備金制度と申しますか、政府が今、国会に提案しておりまする預金準備金制度、この二つでやらないと、社債市場、長期市場のまだ発達していない日本といたしましては調整のしようがない。私は原則としては、やはり支払い準備金制度と、この二つを兼ねて行うのが一番いいと思います。そういう準備はいたしておりまするが、支払い準備金制度がございませんので、今回、金利水準の引き上げ、こういうことにいたして、そうして過当な投資の行われないようにいたしたい。で、過当な投資が行われますると、そこにやはり、最近の輸入超過の主たる原因は、機械の輸入、鉄鉱石あるいはくず鉄の輸入が多いので、綿花、羊毛の輸入は、これはまあ再輸出の部分でございます。羊毛はそうでもございません。やはり過剰投資を押えることが、輸入の制限と申しますか、輸入を減らす原因にもなりますので、そういう措置をとり、ひいて国際収支を正常な姿に返す、こういう気持でいるのであります。全般の金利水準を私は上げるという気持はございません。社債等の長期資金につきましては、私はこのままでいきたいと考えておるのであります。いずれこれは臨時金利調整法に基きまして、大蔵省と日銀とで相談いたしまして、近日のうちに、銀行の貸出金利、預金利子等につきましては決定いたしたいと思いまするが、長期社債の引き上げ等は考えたくないつもりでおります。ただ一般の割引貸付の方につきましては、やはり引き上げざるを得ない、こういう気持を持っております。で、金利の安いことは産業の発達に最も必要なことでございまするが、やはりこれが経済の中枢をなすものでございまするから、今の現状から申しますると、貸出金利がある程度上っても、こういう措置をとることが至当であると考えたのでございます。一般預金金利につきましても今検討中でございます。
  36. 田村文吉

    田村文吉君 ある程度警鐘を乱打する意味で、いわゆる二点鐘をお打ちになったわけですが、これも今申したように、私はある程度無理もないことであると考えるのでありまするが、受ける結果から言いますると、かなりに財界にショックを与える、こういうふうに私は考えております。そこで、どうして一つ、これをあまり生産も停頓せず、そして主要物資が、いわゆる私の言う消費物資でないようなものの基礎物資等ができるだけ生産されていく、というようなことが行われていくだろうか、ということについての調整が、今後の大蔵省なり日銀なりのおとりになるべき対策であると思うのであります。今お話の、長期にはなるべく影響しないというお気持を持っておいでになりましても、基本金利が上って参りますると、そういうふうなことになりがちでありまするので、これを圧迫しやせんかということを非常に心配しているのであります。今のお話で、貿易じりは大体今年度はこれでとんとんにいくと、金利政策だけでいくとお考えになっているか、他に方法をお考えになる必要があるとお考えになっておられるか。これをちょっと。
  37. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 輸出入の額は、御承知通り、二十八億ドルの輸出と、三十二億ドルの輸入でございます。ほかに貿易外の国際収支、特需関係がございまするから、外貨の問題につきましては、またほかの要素を入れなければいけません。しかし御承知通り輸出は月々伸びていっております。私は二十八億ドルの輸出は可能である、また可能のように努力しなければいかぬ。従いまして、今回の金利引き上げにおきましても、輸出手形におきましては金利は上げていないので、いろんな方法で二十八億ドルの輸出は確保いたしたい。また確保できると考えております。  輸入の点になりますると、先ほど申し上げましたように、非常な輸入原材料の増加であります。これがございますから、私は下期に入れば、下期というのは九月、十月ごろになって参りますれば、相当輸入が減ってくるのではないかという考えを持っております。輸入を減らすのにどういう手があるか。これは信用状の発行につきましてこれを押えるという手もございましょう。あるいはまた為替管理をしておりますので、外貨の割当を少くするということもございましょうが、しかしこれは普通にやるべきことではございません。国内の物価のことを考えますると、ことに原材料につきましては十分持った方が物価の安定に役立ちますので、私は今直ちに輸入を押えるとか、外貨の割当を少くするというようなことは考えておりませんが、今回の金利措置によりまして、私は産業開発方面にもかなりお考えいただけるのではないか。取り急いで設備拡張をやらずにもっと様子を見よう、こういうふうなお気持になっていただければ、私は今のところ国際収支あるいはまた日本経済の動向につきまして心配することはない、こう考えております。
  38. 田村文吉

    田村文吉君 今の為替管理による外貨の割当を減らすということはなるべくしたくない、こういうお考えのようでありまするが、私どもは、むやみにただ金利だけで、ものを押えようとする考え方が、非常に無理がいっているのではないか、こういうふうに考えますので、むしろそれによって受ける弊害よりは、為替管理やあるいは外貨の割当を一つ減らして、輸入をある程度まで制限するということが、もう今日では必要になってきているのではないか。こういうふうに考えまして、その方が弊害が少い、こう考えるのでありまするが、もう一つその点について大蔵大臣はお考えをいただけないだろうか、こう考えます。
  39. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 私は二つの考え方があると思います。田村さんのおっしゃるようなことは、よほどのときでないと各国ともやらん手でございます。昨年の初めから暮にかけまして、ドイツあるいはイギリスのこの二国でとった措置も、為替管理とか、輸入の引き締めということでなしに、まず金利水準の引き上げを、イギリスでは三回やりましたし、ドイツでは二回やったのでございます。常道といたしましては、やはり公定歩合の引き上げと、支払準備金制度の活用によるのが常道でございます。アメリカにおきましても、これは為替管理はいたしておりませんが、投資が非常に旺盛なために、アメリカでも昨年金利の引き上げを二回やったのでございます。こういうところから考えまして、私はまだまだ非常手段の為替管理、為替の割当を強化するという非常手段に訴えるような必要はないと見ておるのであります。
  40. 田村文吉

    田村文吉君 見解の相違だから、私はとやかく申しませんけれども、必ずしも為替管理あるいは為替の割当が非常手段であるというふうにお考えにならぬでも、現在でもある程度やっているのですから、別にそういう点で深く杞憂をお抱きになる必要はないと思うのでありますが、その点は議論になりますから別といたしまして、もう一つ、いわゆる重点産業ということのために、こういうふうに資金が枯渇して参りまするというと、この少い資金が非常に偏在する、こういうようなきらいがありはせぬか、こういうことを心配する。いわゆる重点産業、重点産業で、その方には相当金が回るけれども、中小企業初め、一般の産業には、まことに金回りがより以上に窮屈になる、こういうようなおそれがないかということを心配するのでありますが、そういう点については何かお考えがありませんか。
  41. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 私は、今、金が不足だとは考えておりません。御承知通り、世界でも日本くらい貯蓄の増加するところはないのであります。三十一年度におきましても一兆三千億、三十年度におきましても一兆円、こういうふうに預金は相当ふえておるのであります。しかし、預金のふえることよりも、設備投資がまためちゃくちゃに多いと、こういうので、設備投資を預金の増加に合せようといたしておるのであります。従って、金が非常に少いということも——もとより十分ではございませんが、金が少いということからこうやったのではないのであります。ただ、金利を引き上げますると、これはやはり中小企業その他の方の弱い方面に金が少くなってくるのは、これは通例でございますので、私はこういうことも考えまして、御審議いただきました予算案におきましても、国民金融公庫、あるいは商工中金、あるいは中小企業金融公庫、こういう方面に今まで以上に金の手当はいたしておるのであります。今後におきましても、金利引き上げに伴いまする一番の影響が中小企業に来ることは、私は覚悟いたしておりますので、この点につきましては、十分善処するつもりでおるのであります。
  42. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) それでは一時半まで休憩いたします。    午後零時三十四分休憩    —————・—————    午後三時三十四分開会
  43. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) ただいまから委員会を再開いたします。  本日午後の予算委員会政府側の出席がはなはだしく遅延いたし、しかもその事情連絡が、不十分であったため、かようにおくれたのでありますが、その点、はなはだ遺憾に存じます。自後十分御注意あらんことを希望いたします。(「声が小さい」と呼ぶ者あり)まず、委員の変更について申し上げます。  本日曾祢益君及び泉山三六君が辞任され、その補欠として栗山良夫君及び堀木鎌三君が指名されました。
  44. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) この際、お諮りいたします。小林武治君から理事を辞任いたしたいとの申し出がございました。つきましては、同君の理事の辞任を許可し、そのかわりに委員長は、理事堀木鎌三君を指名いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  45. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 御異議ないものと認めます。よってさよう決定いたしました。   —————————————
  46. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) これより、午前に引き続き、質疑を続行いたします。
  47. 中村正雄

    ○中村正雄君 最初、岸総理に、先般旅行先で岸内閣の新しい政策についての基本理念を発表になりましたが、それについて二、三お伺いしたいと思います。  岸総理が発表になりました新しい政策の基本理念といいますか、暴力、汚職、貧乏の三つを追放するということは、だれしも反対する者はないと思います。そのうちで、特に汚職に関係いたしまして、汚職を追放するということについての具体的な何かお持ちかどうか、その点からお伺いしたいと思います。
  48. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 汚職を追放してきれいな政治をするということは、だれしもこれを願っておることであり、またやらなければならないことであります。歴代の内閣におきましても、いずれも綱紀粛正を唱え、これを実現しようと努力してきたことは、これはどの内閣におきましても私は一貫しておることであると思います。しかも、それがなかなか絶えないというところにおきまして、よほどこの問題については、これを実現することにおいて幾多の困難があり、また徹底しないうらみのある問題でございます。従いまして、これをいかにやるかという問題につきましては、私は一つは道義の高揚と申しますか、政治もしくは行政等の国民全体にとっての、いわゆる公共的な仕事に従事しておる者が、根本的に道義の威信の涵養をしなければならない、それにはこの責任の地位にある者が最も身をもって垂範するの態度に出て、あらゆる面においてその心がけを身をもって示すという態度に出なければならないということが、私の考え方根本をなしております。それを具体化する上におきましては、一つ経済行政機構を簡素にして、そして責任の所在を明確にしていくということが、これは絶対に必要である。また信賞必罰のことをあらゆる面において実行していくということも必要である。あるいはまた、選挙法等の改正に当りましても、要するに多くのスキャンダル等が関連するようなことのないように法制を整えていくことも必要であります。いろいろな行政の扱いの上におきまして私は幾多の改善を要する点があると思う。これらの点につきましては、いわゆる行政機構の改革の一つの観念で締めくくられるわけでありますけれども、その具体的な内容につきましてはそれぞれ検討して、今申し上げましたような心がまえを具体化するような方法を、私としては特にとりていきたい、かように考えております。
  49. 中村正雄

    ○中村正雄君 ただいまの総理の御答弁によりますと、汚職の問題でいわゆる高級官僚といいますか、公務員の汚職を相当念頭に置かれて御答弁になったと思うわけでありますが、もちろん、国民の奉仕者であります公務員の汚職は徹底的に追放しなければなりませんけれども、私はこれらの汚職の根本の原因は、政治家の汚職ということが一番大きな問題になっていると思うのです。従って今までの、戦後いろいろな疑獄問題等が起きましたが、そういう関係からいいましても、公務員の汚職よりも政治家の汚職ということが、政治の信頼をなくいたす大きな原因だと思うのです。それも根本にさかのぼると、政党政治のあり方なり、政党の育成強化、あるいは政党内容いかんということが大きな問題になってくるんで、この機会に、今ちょっと触れられましたけれども、政党法の制定等もやはり考えられなければならぬと思うのでありますが、そういう面について何か御意見があればお伺いしたいと思います。
  50. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は今御指摘になりましたように、政党また政治というものにあらゆる改善を加え、国民政治に信頼を持つような態度に出なければならない。私が身をもって範をたれる、垂範するという心がまえは、そういうことを意味しておりたわけであります。従って政党、選挙法あるいは政治資金規正の問題等を通じて、いわゆるスキャンダルといわれる、疑獄といわれるようなものを未然に防ぎ、こういうものを国民の前に明瞭にし、明らかにして、そうして国民が疑惑を持たないようにしていくということが、私は御意見のように根本であると、かように考えます。
  51. 中村正雄

    ○中村正雄君 特に今の政治の面におきまして政党運営にたくさんの金がかかるということが、こういうまあ汚職なり、いろいろな団体とのつながりということを緊密にする原因になっていると思うのです。現在も政治資金規正法等はありますけれども、これは資金関係を明らかにするということが大体目的であって、そういう政党運営についての金を集める側の規正にあまりなっていないと思うのです。そういう関係から、一つには政党法等の制定によりて政党の育成強化に、疑獄的なことがなくして運営資金を集め得るという方法をとるのが一つと、それからもう一つは、何といっても現在の選挙は非常に金のかかるという点が大きな原因になっていると思うのです。従って選挙の公営という面についてどの程度まで拡張、強化する意思があるか、あわせてまた選挙法の改正についてお考えがあれば承わりたいと思います。
  52. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 選挙に非常に多額な金を要するということ自体が、いろいろな点におきまして望ましくない。あるいは疑獄のもととなったり、あるいは国民から疑惑をかけられるような事態も生ずる原因を作るということも十分に考えなければならぬと思う。選挙公営の問題につきましても、私はさらに進んで検討を加えたい。選挙をいかにして金のかからないようにするかという考えからいいますと、一つは、選挙公営の問題であり、一つは、政党自体の組織の、いわゆる国民の間における組織の強化でありまして、そういうふうに政党自体の発達、もしくは基礎というものを強固にし、組織を強化していく。従ってそういうことによって、選挙の場合においては多くの金を要しないという一つの素地を作るとともに、選挙自体も公営によって、選挙費用というものを各候補者なりあるいは政党なりが、非常に多額のものを負担することのないような方向に持っていこうということを十分一つ検討いたしまして、選挙に金のかからない選挙ができるという方法を十分に考究する必要がある。選挙をそういうふうにして清めることが、民主政治においてあらゆる政治一つの根底になると思いますから、そういう点を私としては検討いたしたいと考えております。
  53. 中村正雄

    ○中村正雄君 そうすると、総理の御答弁を総合して考えますと、政党の育成強化、あるいは資金面等の関係から、政党法というようなものを考慮しておるというふうに理解していいわけですか。それともう一つ、選挙法の改正についても、選挙の公営を拡充強化する意思があると、こういうふうに理解していいのですか。    〔委員長退席、理事左藤義詮君著席〕
  54. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 政党自体を今私が制定する意思を持っているかどうかということについては、はっきり私は申し上げることは、まだそれまでの考えを持っておりませんが、しかし、政党を健全に発展せしめるために、政党そのものについてそういう法制を設けることがいいか、あるいはどういう内容のものにしたらいいかということはこれから検討したい。  選挙法の改正につきましては、私は公営の範囲を拡充したいという考えを持っております。
  55. 中村正雄

    ○中村正雄君 先般の新聞の報道によりますと、この国会が終ってから政府の中あるいは与党の中で、選挙法の改正に関連して、いわゆる小選挙区制を実施する、その区割等について、今度は公正な委員をあげて検討したい、こういうことが報道されておりましたが、そういうことを現在お考えになっているか、また決定されているか、伺いたいと思います。
  56. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 小選挙区制の問題につきましては、しばしば私は御質問に答えております。私は理想として、小選挙区論者であります。しかし、この問題で最もむずかしい問題は区制の問題であります。従って区制をいかにして公正にし、国民多数の人が納得するようなものを作るかということについては、十分に一つ意を用いていかなければならぬと思っております。今わが党として選挙の方法について小選挙区を具体的に研究を進めていると、またこれを近く次の国会に出すという意味で準備をするということの決定をいたしておる状態ではございません。ただ一般的の話として申し上げる。加うるに東京都の人口が、今の別表を定めました当時と人口の所在が、非常に分布の状況が変っているので、これが別表の改正をしなければならぬという議論もございますから、これらをあわせて、自然全体に選挙法の問題として、先ほど申しましたようなことを加味して一つ研究を、根本的に検討をしてみたい、こう思っております。
  57. 中村正雄

    ○中村正雄君 次に、総理大臣、並びにもし補足的な答弁が必要であれば労働大臣からお願いいたしたいと思うのですが、現在一番今、国会でも、世論的にも問題になっているいわゆる公共企業体職員の賃金改訂に関するいわゆる仲裁裁定に関する問題、私が特に伺いたいのは、公共企業体の職員と経営者との間におきます労使のあり方といいますか、労働慣行といいますか、そういうものについて総理大臣方針を承わりたいわけでありますが、実ば一般の労働組合法から公共企業体の職員に対しまして特別立法ができまして以来の経過を見て参りますと、公労法の制定されました当時の内容からいきますと、公共企業体の職員に対しては団体交渉権を与えるが、争議権は否定する。しかしそのかわりに調停委員会なり仲裁委員会というものを設けて、それによっていわゆる争議権のかわりとして、生活の安定を期する、賃金の確保をするというふうに説かれて参りました。ところがそれができまして当初は、当事者間の団体交渉なりあるいは調停委員会の調停は紛争の解決にならないが、仲裁委員会が裁定を出した場合は、これは政府も当然それを拘束されるもので、忠実に履行すると、こう期待されて、第一回のそういう紛争が起きたわけですが、その後のいわゆる吉田内閣以来の今の自民党の前身の保守党の内閣のやって参りました態度は、仲裁の裁定が出ましてもそれを完全に実施しない、こういうことが積み重ねて参りまして、今までの慣行を見ると、当初、法が予定しておりましたのは、仲裁委員会の裁定で紛争が解決される、これとは違って、仲裁委員会の裁定が出てから紛争が出発点として起きておる、こういう状態になって参ったわけなのです。言いかえれば、仲裁の裁定によって紛争が解決するのじゃなくして、仲裁の裁定があってから本格的な争議が起きておる。こういう状態を四、五年続けて参ったわけなのです。従って公労法に示しておりまする調停委員会や仲裁委員会というものは、いわゆる争議の前提になるだけであって、紛争解決の役には立たなかった、こういう時代が四、五年続いて参ったと思うのです。そうしてその間にありまして、やはり仲裁の裁定によって解決するのでなくして、やはり労使の紛争というものは話し合いによって解決するのが一番妥当ではないか、どうしても話し合いができない場合は、やはり調停いうものによってどちらも自主性をもって解決することが望ましいのじゃないかという考え方も出て参りまして、三年か四年ほど前の、かりに国鉄その他の公労協の紛争は調停委員会の調停で解決をした時代もあったわけなのです。ところが今度初めて裁定が出まして、政府としても予算を補正してこれを実施する、こういう段階になったわけですが、その点に関して、根本理念として総理は、こういう公共企業体の紛争というものは、当事者間の話し合いによって解決するのが一番妥当だとお考えになるか、あるいは調停案等によって解決するのが正しいとお考えになるか、あるいは法的拘束力のあるところのやはり裁定というものによって解決することが一番望ましいとお考えになっておるか、その理念について承わりたいと思います。
  58. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 労使の間の争議が、これは労使双方の話し合いできまるということが、一番私は望ましい形であると思います。ところがこの話し合いが円満に妥結されないということで、いわゆる労働争議としてストライキが起り、そういう実力行使というようなことが起ってくるわけでありますが、こういう状態は望ましくないので、話し合いできまるということが一番望ましいことである。ただ公共企業体の労務者につきましては、今お話がありましたように、争議権が認められておらないとか、従って話し合いがつかなかった場合には、やむを得ず調停なりあるいは仲裁裁定なりを求めて、仲裁裁定がきまれば、これによってこれが最後の、一体この争議を決定する最後の段階としてそういう制度が定められておるわけであります。従いまして、過去の慣行においては、私は必ずしも望ましい慣行とは思わないのでありまして、できるだけ話し合いできまるが、しかし最後に仲裁裁定が出た場合においては、政府としてはこれに忠実に実現する、誠意をもってこれを尊重して実現するという努力をし、またそれを実際上実現するようにすることが、公共企業体における争議解決の私は道である、かように考えております。
  59. 中村正雄

    ○中村正雄君 総理大臣のお考えは、仲裁の裁定によって争議を解決する。裁定が出れば、政府としてもこれは拘束を受けるわけですから、責任をもって実施するようにやる。しかし当事者間の話し合いによって解決ができるものであればこれにこしたことはない、こういうふうなお考えだと理解するわけなんですが、そういたしますると、理念としてはそういうお考えは正しいかもわかりませんが、現実の問題として、たとえば、専売にしても国鉄にしても電電にいたしましても、当事者間の話し合いによって、特に賃金問題を中心にする紛争が解決できるとお考えになっておるかどうか、現実の問題としての御答弁を伺いたいと思います。
  60. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 現実の問題として、必ずしも話し合いでできないということは、これを否定する考えも持ち得ませんが、実際上はなかなか話し合いで解決するということは困難であろう、こう考えております。
  61. 中村正雄

    ○中村正雄君 話し合いによって解決するのは困難だということはお認めになっておるわけですが、困難な原因がどこにあると総理はお考えになっておるか。
  62. 岸信介

    国務大臣岸信介君) それはいろいろな理由が私はあると思います。今日までのこの経営者側と労務者側との労使両方の主張なり、この賃金問題に対する態度経営自体内容等から見て、私はなかなか経営者側と労務者側との主張というものが話し合いによって、今までの実例から見ましても、歩み寄って適当なところにきまるということはなかなか困難な状況にある、かように考えております。
  63. 中村正雄

    ○中村正雄君 私は総理の御答弁とは全然違った角度からものを見ておるわけですが、当事者間の話し合いによって解決ができない原因というものは、両当事者の主張が違っておるから話し合いができない、困難だというふうに総理はお考えになっておられるようですが、現実に当事者間の話し合いによって解決ができない原因は、いわゆる経営者側といわれます当局者に解決をするだけの権限と自主性を政府が与えておらないからではないかと、私はこう思うわけですが、総理はどうお考えになりますか。
  64. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろん、公企業体のこの経営者側の立場から申しまするというと、予算に縛られるという点がございます。従ってその予算の点から申しますと、他の私企業のごとく、自由な立場から言うわけにいかない点はもちろんでございます。
  65. 中村正雄

    ○中村正雄君 私はそれが全部だと思うわけですが、過去十年近い間に、たびたび毎年賃金問題に関しましてこういう紛争が起きておるわけですが、一回も当事者間の話し合いによって解決されたという例はないわけなんです。そういたしますると、今のような経営者の能力からいきますと、団体交渉権が組合に認められておりましても、いわゆる予算関係のないような労働条件であれば、これは解決できるかもしれませんが、いわゆる予算関係を及ぼす賃金問題の労使の紛争というものは、当事者間においては解決できない。最後はやはり仲裁の裁定によって、政府がこれを実施するかしないかという、すべては政治問題にかけられておる。そこに公労協の組合運動というものが政治闘争の色彩を帯びる大きな原因になっておると思うのです。しかもその上に、今回出されました補正予算を見ますると、今まで窮屈であったその上に、今度は給与総額の中に基準内と基準外と分けまして、今まで流用を当局者で自由にやれておった操作を禁止するような補正を出しておるわけなんです。ますます経営者側の当事者の能力といいますか、争議を解決する能力を奪ってきておるわけです。これは私は今度の補正予算を契機といたしまして、自主的に解決さす能力をまた喪失させておる、こう見ておるわけなんですが、どういう意味でこういう補正を出しておるのですか、大蔵大臣でけっこうですから御答弁願います。
  66. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 前からの御質問を承わりますと、実情はその通りでございます。なぜこうなるかといえば、公共企業体のことに関しましては、国民の利害休戚に非常な影響を及ぼします公企業であるためでございます。鉄道運賃にいたしましても、電話料金にいたしましても、また、たばこの専売益にいたしましても、これは租税に相当するものでございまするから、しこうして今の公共企業体の労働関係につきましては、当事者間の話し合いによることが最も望ましいのでございまするが、この当事者間の関係というものは、労使の話し合いだけでなしに、調停、裁定、そうして予算上の措置、国会の議決が一体となってきまるべきものと私は考えておるのであります。従いまして使用者側、政府側におきましても、そういう点を十分考慮して考えなければいかぬと思います。今回予算総則で、給与総額を基準内と基準外に分けましたゆえんのものは、御承知通り、公共企業体におきましても、郵政とその他五現業の方は基準外、基準内と分れておるのであります。三公社につきましては、これは一緒にいたしまして、労働関係につきましても、給与問題である程度のゆとりを認めておったのは事実でございます。しかるところ、その運用の結果を見ますると、給与ベースの問題と手当その他のものがごっちゃになりまして、そうして労使の関係におきまして、予算の中でできれば、それが給与ベースの引き上げになるような格好になることが多いのでございます。給与ベースの引き上げになるということになりますと、その年度ではいきましても、次年度でなかなかむずかしい問題が起りますし、そうして予算の総則で一緒にしておりますると、労使関係できめられたことが、必ずしも財政当局その他の報告もありませんし、うやむやになりがちなのです。今回の裁定が予算単価に千二百円を加算しろという裁定が出たゆえんのものも、この間の関係がはっきりしていないために、将来の予算編成にも困る、実態もなかなかわかりにくい、こういうことと、仲裁裁定もその千二百円を加えたところでやっていって、そうして今までのいわゆる予算に盛ってないものにつきましては将来これを縮小していけ、こういう趣旨の点から考えますれば、私はこの際、給与関係を公明にするために、基準内賃金と基準外賃金とに分け、しこうしてその間に流用を認める。その流用を認める場合におきましては、財政当局に承認を受けるようにしてもらいたい。財政当局が、承認をする、しないの場合におきましては、先ほどのお話のように、労使の初めの談合から、予算についての国会の承認というものを一体に考えてこれをきめるべき問題だと思います。要は三公社五現業の方々の給与の問題は、国民の利害休戚に直接に影響する独占事業であるということから、ある程度の制約はやむを得ないのではないかと思います。
  67. 中村正雄

    ○中村正雄君 ただいまの大蔵大臣答弁を聞いておりますと、財政的にいろいろな理由を述べられておりますが、裏を返して、一つ労働大臣にお伺いしたいわけなんですが、このようにだんだん公共企業体の経営者の予算上の権限といいますか、運営の自主性が奪われて参りますると、今後組合と当局との話し合いによって解決をするという場がほとんどなくなってしまうと思うのです。そうなって参りますと、今後の公共企業体の労使の関係のうち、特に賃金に関係するものは、仲裁の裁定までいかなければ解決ができなくなる。こういうふうに考えるのですが、労働大臣はどうお考えになりますか。
  68. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 先ほど総理大臣並びに大蔵大臣のお答えになりました通りに、公共性を多分に持ち、かつ国民の代表である国会に特別予算を承認を得ることになっておりますから、国会議員といたしましても、この国民に利害休戚の非常に大きなものの特別会計の権限を、国会の方の権限を縮小するということは、私は労使の関係だけでなくて、国民全体の利害から考えて、これはやはり相当国会議員の発言権を保持していくという方向にいくことがほんとうであると思います。その中に労働者の代表もあれば、使用者の代表もあるという意味において、やはり特別会計の権限をそう大きく、大幅に移譲するということは、労使の関係だけを考えれば別でありますが、国会議員としての立場からは、現在以上にやはり保持していくことが必要であると考えます。
  69. 中村正雄

    ○中村正雄君 ただいまの労働大臣の答弁を聞いておりますと、私の質問とはだいぶピントはずれの答弁のように思うのですが、私がお聞きしておるのは、国会の権限を縮小して企業体の経営者に権限を与えろということではなくして、現在与えられておった給与総額のワク内で操作ができておったのが、今度は国会ではなくして、大蔵大臣というよりも大蔵省の高級官僚の采配の振り方によって左右されると、こういう結果になるわけなんですね。国会の権限の縮小でなくて、大蔵当局の権限に国鉄総裁の権限を吸い上げたと、こういうふうに私は逆行するんじゃないかと思うのですが、その点に対する質問なんです。
  70. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 最初のお問いは、調停のうちに解決をつける方が最もいいと、こうなればますます仲裁裁定にのみ解決を依存するようになるんじゃないかということでありますが、それは現在の状況においてはだんだんそうなる傾向は強いと思います。  もう一点は、大蔵大臣でなくて、主計局当局に権限をゆだねるのではなくて、主計局が作った予算はわれわれが審議するのですから、最終的には国会議員の権利だと思っております。
  71. 中村正雄

    ○中村正雄君 第二点の質問は、給与総額を基準内と基準外に分けて移流用については大蔵当局の承認が要ると、こういう補正予算を出してきておりますので、これを、国鉄経営者が持っておった権限を大蔵当局が吸い上げたわけなんで、これについてはどうお考えになるかという質問です。
  72. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) かようになりましたことは、五百二十円というものが自然の間にできまして、仲裁裁定におきましても、これはだんだんとその順を追って正常な給与、つまり予算単価に近づくべきであるというようなことが仲裁裁定において決定されたものでございますから、自然かようにならざるを得なかったと思います。
  73. 中村正雄

    ○中村正雄君 もし、仲裁裁定の内容の解釈は、私と大臣とは違うわけで、これは解釈の仕方についてとかく言うわけではありませんが、大臣の解釈のようにあれを見ましても、何も基準内と基準外と分けて、大蔵当局が権限を握っておらなければならないという理由には私はならないと思うのです。それでその点は別として、第一段についての御答弁でありますと、すべてやっぱり国会審議する方がいいのだ、国会の中にはやはり経営者の代表もおれば労働組合の代表もいるのだから、こういう御答弁に承わったわけですが、そうしますと、労使の紛争をそのまま国会に持ってきて、国会の中で同じような立場々々によって労使の紛争を繰り返そう、これが一番いいのだ、こういうふうな御答弁に聞えるのですが、そうすると私は、労働行政としてはこれはどうかと思うのですが、どうお考えになりますか。
  74. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) それば言葉が少し足りなかったのでありますが、先ほどのお問いに対する問題は、自然、仲裁裁定の裁定を尊重するようになると思います。
  75. 中村正雄

    ○中村正雄君 そうすると労働大臣は、公共企業体の職員に関する賃金関係の紛争は、今後はやはり仲裁の裁定によって解決する、それしか方法がない、こういうふうにお考えになっておるわけですか。
  76. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) できれば話し合いでいくことが一番いいと思います。また、その次にはこの調停を中心にして労使が話し合いをすることがいいと思います。それができなければ、三段目の仲裁裁定に依存するより道はないと思っております。
  77. 中村正雄

    ○中村正雄君 お言葉の上ではそういうこともあるわけですが、現実の問題として、話し合いで賃金問題が解決し得る現在の段階にあるか、調停によって賃金問題が解決されるようなシステムになっておるか、この点について労働大臣はどうお考えになりますか。
  78. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) それは当事者間の考え方によると思いますが、紛争によってやろうとするようにいけば紛争せざるを得ないし、話し合いで、ほんとうに虚心たんかいの話し合いでやろうとすれば、話し合いでできないはずはないと思いますが、その方法をとられない情勢はまことに遺憾に思っております。
  79. 中村正雄

    ○中村正雄君 話し合いによって解決しようと思えばできるというわけですが、今度の補正予算、また前の、本年度の予算を見てみましても、ほとんど予算は各費目に窮屈に仕組まれておって、話し合いによっていわゆる給与の操作ができる余地が現在の企業体にあると労働大臣はお考えになっておりますか。
  80. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 私は、話し合いをするということの意思があればできる、と申し上げますことは、やはり順法的にやってもらわなければならないと思います。全然争議を起してはならないという規定の上に立っておりながら、争議という名前は使っておらないが、職場大会というようなことでいろいろおやりになる。しかも、当りまえに考えれば、仲裁、いわゆる調停に頼んでおきながら、その調停の、裁定の下る前からいろいろ紛争の指導をし、紛争が行われておる。今度の場合におきましても、十二月中に調停を勤労者の方から要請されておる。それをいろいろ審議しておる最中にこういうことが起ったということは、私はよい労働慣行を作るためには、やはり今規定してある法律をよくお互いに守り合っていくところによい労働慣行ができる。よい慣行が行われていなければ話し合いでこれは済まないと思います。今度の問題に対しましても、私は順法の点については、自分で調停に持ち込んでおきながら、しかも調停でなくても、行なっちやいけないところの争議が行われておる。しかも一般の民情からしましても、中労委の問題でやっておる時分には争議は民間はやらない。ちょうど、こっちだけは調停に持ち込んでおきながら、しかも許されていない争議をやるというようなことになるものですから、自然と話し合いができなくなると思いますので、いろいろな面でやっぱり法治国としては順法的にやってもらうことがいいと思います。
  81. 中村正雄

    ○中村正雄君 そうすると労働大臣のお考えは、いわゆる争議の態様によって、あり方によって話し合いができないのだ、こういうふうにお考えになっておるわけですか。私の尋ねておりますのは、争議のあり方等の問題ではなくして、両当事者間の話し合いによって解決しようという熱意と真心があっても、現在の公共企業体の当局者側の権限からいったならば、特に賃金に関係する問題は話し合いによっては解決できないようなあらゆるシステムが組まれておる、そこに原因があると私は考えておるわけですが、現在のシステムのもとにおいても話し合いをやろうという熱意と努力があれば、賃金問題についても、調停にもいかず、仲裁の裁定も経ずして団体交渉で解決できると、こういうふうにお考えになっておりますか。
  82. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 予算総則の上に、今度の基準外と基準内の問題が現われたからそのようにおっしゃることと思いますが、あの問題は、五百二十円のようなことがあって、これは将来なくするようにしなければならぬということになっておりますから、予算面におきましてもそういうような方法を講じましたし、また、そういうことがないようにするためには、やはり財務当局の話を一応聞いてからやるということがほんとうであるという建前から、政府といたしましてはかように決定いたしたのであります。また、今のような状況になって参りますと、自然、仲裁裁定の最後の裁定によって政府はこれを尊重し実行する以外に道はだんだんなくなるだろうということは、同感でございます。
  83. 中村正雄

    ○中村正雄君 そういうふうになりますと、公労法ができましてから二年ぐらいたったときからと同じ情勢に復帰すると思うのです。言いかえれば、団体交渉は一つの前提だ、調停も前提だ、裁定が出なければほんとうの話し合いはできないのだ、こういう空気になってしまって、公労法の精神でありまする最後の場合の段階としての仲裁の裁定というものが、あらゆる争議の前提の問題と変ってくると思うのです。それが僕は正しい労働慣行のあり方とは考えないわけなんですが、今後だんだんに経営者側の能力が、財政的な権限が縮小されますと、仲裁の裁定が出なければ話にならないのだ、こういうことになってしまうわけなんです。そうなることが望ましい労働慣行だとあなたはお考えになっているかどうか。
  84. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) できる限り仲裁までいかないうち、話し合いでできるようにすることがよい労働慣行だと思います。ただいま御指摘になりましたようなことが将来障害になるならば、労働慣行を正常に復するとともに、法律的な制限も解いていった方がいいと思いますが、現段階におきましては、中労委の仲裁裁定の指示によってかようにせざるを得なかったと思うのであります。
  85. 中村正雄

    ○中村正雄君 そうなりますと、現在のシステムが続く限りは、仲裁の裁定が出なければ紛争解決の出発点にはならないと、こういうふうにお考えになるわけなんですね。
  86. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 仲裁裁定が最後的の決定の方式だと思います。
  87. 中村正雄

    ○中村正雄君 そうなりますると、公共企業体の職員に対しては、公務員とは違った団体交渉権を与えて、労働条件の確保に資するという公労法の精神が全然没却されると思うのですが、これに対してどういうふうにお考えになりますか。
  88. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 公労法の精神はどこまでも尊重していかなければならぬと思っております。しかし、公労法の中に規定された仲裁裁定でいくのでありますから、私は没却されないと思います。
  89. 中村正雄

    ○中村正雄君 大臣の答弁は形式的な答弁ですが、大臣としても、当事者間の話し合いによって紛争は解決されることが最も望ましいというお考えはあると思うのです。そうしますると当事者間の話し合いによって紛争を解決するための裏づけの措置としては、どういうことをお考えになっているかお聞きしたいと思います。
  90. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) これは応急的な措置と恒久的な措置があると思います。応急的な措置としましては、ただいまやっているような方法よりほかに道がなかったと思います。恒久的な方法といたしましては、まだ政府間では決定はいたしておりませんけれども、今日の公共企業体というもののあり方について、先ほども中村さんから、権限が縮小されておるというような御指摘がありました。こういうようなものを総合的に調査いたしまして権限を与えるならば、もう少し自由主義の世界において、資本的な立場を擁護するものがなければならないと思うのです。私は今日の紛争の中にいろいろな問題がありますけれども、一々申し上げることはできませんが、現在の状況におきましては、これは公共企業体というものを一つ大いに再検討する必要がある。それと見合った公労法もまた考える必要があるということで、私はこの次の国会までにはいろいろ検討する必要があるということを痛感いたしておりますが、基本的にそういうところを直さなければ、おっしゃるように現在のままで権限を付与しても、それはよいものにはならない。基本的にやはり直すところは直してかからなければならぬと思いますから、その点は将来お互いに朝野を問わず、この問題については研究すべきであると思っております。
  91. 中村正雄

    ○中村正雄君 当事者間の話し合いによって解決をすることについては、まあ現在の段階においては何らの具体的な裏づけはされておらないと、こう私は思うわけなんですが、そうしますると、労相の理念としては、話し合いは望ましいけれども、現在の段階においては、特に予算関係する賃金問題については、話し合いじゃ解決できない、仲裁裁定に基いていくより方法はないと、こういうふうにお考えになっているものと了解していいですか、どうですか。
  92. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) できれば話し合いでいきたいと思いますが、われわれも今まで努力いたしましたけれども、かようにせざるを得なかったのであります。
  93. 中村正雄

    ○中村正雄君 そうすると、もう一つ縮小してお伺いしますと、現在の段階において、公共企業体の経営者において左右し得る、どういいますか、解決の能力といいますか、いわゆる労使の紛争を解決する能力はどの程度あるとお考えになっておるわけですか。
  94. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 使用者と従業員との間に話し合いをつけるということが前提条件になっておりますので、私はこの話し合いをつける気になればできぬことはないと思っております。けれども、できなかったものですから、自然こういうことになって参りました。でありますから、私はこの公共企業体と公労協との間に話をつける誠意をお互いに持っておれば、今の制度でもできると思うのです。それができないところには、やはり気持が離れておるからできないと思います。あくまでも労使の協調を中心にして国の繁栄をはかるという考えがあったならば、できないはずはないと思います。
  95. 中村正雄

    ○中村正雄君 また、もとの御答弁に戻ったわけなんですが、話し合いでできるとおっしゃいますが、たとえば今、今度出されております政府の裁定に対する態度なり、補正予算を見ますると、いわゆる実行単価の三分の一を削っておるわけなんですね。そうすると、この三分の一についても、当事者間の話し合いによってこれは解決できる余地があると思いますか、どうです。
  96. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) その問題は違うと思うのです。第一項の、理由第一に述べてあるのは、予算単価の中に千二百円を計上すればよろしいと規定しておるのでありますから、そのままでいきますならば、五百二十円と仮定すれば八十円しか残らない。その八十円では労使紛争の問題にならないから、これは相当な給与改善を企図していると規定いたしておりますから、われわれは六百円の中で四百三十円を見ましたのは相当の金額であると、かように思って、誠意をもって尊重いたしておる次第でございます。
  97. 中村正雄

    ○中村正雄君 私は時間がありませんので、その裁定の内容の解釈で質問しているわけじゃないのです。仲裁の裁定の内容の御解釈は、たとえば政府の解釈の通りであると百歩譲って、政府はこれで仲裁は完全に実施しているのだと、こうお考えになっておるわけなんですが、これはこれでいいとして、これが一応解決したあとで、たとえば三分の一現実に削られておる、これを何とか復活しようと思って、当事者間で団体交渉をやって、誠意をもってやれば、これは解決できますか、どうです。
  98. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 仲裁裁定をお互いに尊重する、強制仲裁裁定ですから、これはお互いに尊重しなければならない。われわれの予算に計上いたしましたものは、これは財源として予算に計上いたしました。しかしこの団交をあとでやることになっております。あとで団交でやりましても、仲裁裁定の限度までいっておる以上は、仲裁裁定のワクの中で団交していただかなければならぬと思いますから、そういう差は生ずるものではないと思っております。
  99. 中村正雄

    ○中村正雄君 私の質問しておりますのは、当事者間の話し合いによっては誠意さえあれば解決できるという労相の話がありましたので、例をとって申し上げたわけで、従って仲裁裁定を離れて、たとえば国鉄も専売ももう二百円だけベース・アップの必要があるのだという明らかな問題と仮定して、両当事者間で誠意を持って話し合いをすれば、解決できるような権限が当局にありますか。
  100. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 仲裁裁定の示すところによって財源を組んだのですから、それ以上のワクにはみ出るはずはないと思います。それは仲裁裁定に従わないという結論になります。  こまかい内容局長から……。
  101. 中西實

    政府委員(中西實君) 今の仲裁裁定の問題を離れてという話でございますが、労使の自主的な話し合いで解決する場合があり得るかどうか、これは団体交渉はあり得るわけでございまして、ただ御承知のように三公社五現業は、経理をすべて予算で縛られておるという現状から、いろいろと話し合いの内容につきましては、同時に——ことに予算増額が必要の場合には同時に監督官庁あるいは財政当局と平行して話し合いを組合の方で進めるという必要がございます。しかし、その間労使間の話し合いで合理的なものがございまして、おそらく財政当局もそれを認めるということになりますれば、形は団体交渉ということで問題が解決する場合があるかと思います。しかしながら、その場合に、やはり民間産業と違うところは、民間産業におきましては力関係でそのことがきまっておる。しかしながら三公社五現業におきましては、力関係じゃ困るので、その際、やはりいろいろな事情から合理的でないという判断が監督官庁なり政府筋なりにございますれば、やはり裁定までいく、そうして最後に仲裁を尊重するという態度でものが解決していく、こういうことになりはせんかと思っております。
  102. 中村正雄

    ○中村正雄君 大臣の御答弁政府委員の御答弁も同じように、事財政に関する限りは当事者間の団体交渉では話し合いはつかないという現実を結局お認めになるわけなんでしょう。
  103. 中西實

    政府委員(中西實君) 先ほど申しましたように、労使の話し合いの内容が諸般の事情からきわめて合理的なものだという場合には、財政当局もこれを認めるのであろう、そういう場合にこれは労使間の話し合いできまったということになろうかと思います。
  104. 中村正雄

    ○中村正雄君 今まで過去八年間これは実施されておりますが、労使双方がこれは妥当なものだというふうにして話し合いがついて、それを財政当局が認めた例がありますか。
  105. 中西實

    政府委員(中西實君) 具体的な例は、今実は記憶いたしておりませんが、その点は一つ直接の当局にお聞きいただきたい。
  106. 中村正雄

    ○中村正雄君 結局、合理的かどうかということを組合側と経営者側との話し合いによって妥結できたものは、おそらく合理的なものだと解釈する以外に方法はないと思うのです。ところが実際組合側と当局側と話し合いがついたものを、いわゆる政府当局はやみ給与、こう言っているわけでしょう。今までいわゆる予算単価と実行単価との差というものは、これは何も勝手に組合側がぶんどったものでもなければ、勝手に当局が支給したものでもなくして、双方の話し合いによって、いわゆる協約によってでき上った賃金内容なわけなんです。これを政府自体がやみ給与、こう言って削るの削らんのと言っているわけなんです。そうして今、労政局長の話を聞きますれば、やはり実際の担当である当事者が、やはり企業体の経営者であれば、自分の企業体だけのことを考えず、組合の力に負けて勝手にのまされたわけではなく、やはり公けの機関をあずかる責任者としては世論も考え、その企業の社会的な影響も考えて、納得の上で承諾したものが私は今までの給与であろうと思うのです。それを今度やみ給与なりとして削ろうとする政府の意図は、労働大臣の御答口弁とだいぶ違っていると思うのですが、これはどういうふうにお考えになります。
  107. 中西實

    政府委員(中西實君) 今回の仲裁に当りまして、仲裁委員会との応答がございまして、例の格差問題について国鉄総裁、それから仲裁委との応答、それから組合と仲裁との応答、これによりましても格差はやむを得ざるものであったといって一応正当なのを認めております。従ってわれわれはやみ給与とは考えておりません。なおこの格差の分につきましては無視をいたしておりませんで、それは当然今回のべース・アップの際に正当なものとして考慮されておると思っております。
  108. 中村正雄

    ○中村正雄君 最後に労働大臣に二点ほどお尋ねしたいわけですが、その第一点は、公共企業体の経営者に現在労働関係に関してどういう自主性を与えておるか、お伺いしたいと思います。
  109. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 私は特別予算関係を抜きにしては、経営者として、特別予算国会審議する、それも大体予算要求によってやるのでありますが、その国会の承認を得まして、特別予算の範囲内においては十分に自主性を持っておると思います。
  110. 中村正雄

    ○中村正雄君 十分な自主性を持っておるという御答弁ですが、どういう点に自主性があるのか、私は現実の問題としてわからないわけなんです。たとえば、今問題になっております、政府は春闘の処分ということで言っておりますが、あの公労法違反について処分をする権限は政府にあるわけですか、経営者にあるわけなんでしょうか。
  111. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) それは経営者にあります。
  112. 中村正雄

    ○中村正雄君 ところが今までの労働大臣の発言なり、あるいは政府の新聞発表等を見ますると、経営者というよりも政府政治情勢いかんによってこの権限を握っておる、こういうふうな印象を受けるわけなんです。今日もやっぱりこの問題について閣僚懇談会をやって、そうして政府がどうしよう、こうしようということを考えているように新聞は報道いたしておりますが、法律の面で公共企業体の経営者にこの権限があると、自主的にあるんだといっておきながら、実際は政府自体が権を握っておるという印象を国民に与えておるわけなんですが、この点はどうお考えになります。
  113. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 予算関係する問題と、国民生活に関係する問題は政府責任があると思います。
  114. 中村正雄

    ○中村正雄君 私のお聞きしているのは、処分について経営者の自主性があると、こういうふうな御答弁でありながら、実際は春闘処分と新聞にいっておりますることに関しては政府がこれを行う、政府の都合によって左右いたしておる、こういう印象を受けるわけなんですが、これに対してどういうふうにお考えになります。
  115. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 処分についてはあくまでも公共企業体の経営者に自主性がありますが、これは政府においては予算の上において、あるいはこの監督権の上において、国民生活の上においていろいろ勧奨する必要があると思います。
  116. 中村正雄

    ○中村正雄君 勧奨でなくして、政府の指示によって公共企業体の経営者が左右されておる、こういう印象を受けるわけなんです。これはまあ新聞を通じて見ても、国民全体が受けている印象だと思うのです。特にあなたの放言なんかは別にしても、官房長官の発表を見ても、運輸大臣の旅先の発表を見ても、すべてはやはり政府自身がやる、左右する、こういう印象を受けるわけなんですが、これに対して総理大臣はどういうふうにお考えになっておるか。
  117. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 申すまでもなく、処分の権限を持っておるのは経営者でございます。しかし公共企業体の性質から申しまして、政府はこれが監督権を持っております。従って経営者がやる処分が妥当であるか、国民生活の、また国民全体の世論から見て妥当であるというようなことにつきましては、政府はもちろん公共企業体の経営者のやる処分について十分に監督権の立場からこれを見ておる、こういうことでございます。
  118. 内村清次

    ○内村清次君 関連。ただいまの総理の発言は、これは昨日私の質問に対しまする御答弁と一貫いたしまして、名目は総裁の自主性によってその処分権限を与えておる、こういうような点を言っておられるようであります。しかしながら、私はとにかく疑義があるのは、今、中村君の質問と同じように、労働大臣あるいは運輸大臣、あるいはまたは岸総理の根底は、やはり政府が公社に命じてそして処分をするという根底があると私たちは考えておるのです。というのは、きょうの三時のニュースを聞きましても、二時半に臨時閣議を開いております。またあるいは労働懇談会か何か知りませんが、とにかく処分の発表をきょうやろうというような政府方針を決定したと言っておるのです。ニュースがそう言っておる。こういうような重要な問題、しかも、きのう予算委員会でその問題が取り上げられておる、そのさなかにそういったニュースがラジオを通じて全国民に報道されておる事態というものは、これは委員会を侮辱するものである。また、あなた方のこの言動というものは信をおけないということになりはしませんか。この点をあなた方は、ただここで私たちの質問に対しまして、ただ言葉を飾って言いさえすれば、その時をかせぎさえすればいいというようなことでは、私たちは、これは国会を侮辱するものである、国民を欺瞞偏するものであると、こう考えておるのですが、この点に対しましてはどういう御心底である、またこの事実をはっきりしていただきたい。
  119. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今回の春季闘争におきましては、いわゆる総評の指導下におけるスケジュール闘争としてやられておって、三公社五現業それぞれ一つのスケジュールに従って行われたということは御承知通りであります。従いまして、これらの処分につきましても、私どもは公労法の精神から申しまして、これらの処分について同じような考え方のもとに、これが均衡といいますか——これらの三公社五現業の間における争議の実情と、これに対する処分というものを、全体を見て妥当性のある処分がされることは、これは当然であろうと考えます。こういう意味において、政府みずから管掌しておる企業についての処分の問題もございますし、それから政府の監督下にある公共企業体である処分の問題もございまして、もちろん、国鉄等につきましては、国鉄総裁がこの処分権を持っており、そして国鉄の総裁の処分する案に対してわれわれは報告を受けて、そして妥当であるかどうかということを監督権の見地から、今申したような見地から、これを検討することは当然であろうと思います。しかし政府が指示してこういうふうにしろとか、いろいろ誤り伝えられております。それは、そういう何に伝えられております関係になっておるのではないのであります。あくまでも今申しましたような、政府としては、直接やるものについては政府責任を持ち、同時に公共企業体としての公社として、それの経営者の首脳部の持っておる処分権においてやるものは、全体として私どもはやはりこれは見ていく必要はあると思うのです。従ってこれらの経営者が出してきたところの案を検討はいたします。しかし政府が指示して、政府みずからがこれらの企業体に対して指示しているという関係はないのでありまして、これは誤まり伝えられたものであります。
  120. 内村清次

    ○内村清次君 誤まり伝わったものであると、こうおっしゃっておるのですが、国民はやはりラジオのニュースあたりは信じます。しかもまた、特にこの予算委員会が三時半に開かれるまでにおいて臨時閣議をお開きになり、あるいはまた、労働大臣その他関係閣僚が寄ってこの問題を考え、話し合われたことは事実でございましょう。その点ははっきりと、予算委員長の方からもそういう理由だから待ってくれということではっきりしておる。こういった事実の上に立って、先ほど言われたことや、昨日ここで御言明になったこと——慎重なる取扱いをするとか、あるいはまた国鉄の、公社が自主的にそういう処分をやる場合のときにおいては、これは監督官庁の運輸大臣もこれが妥当であるかどうであるかということは、監督の立場から見ますけれども……こういうような言葉を出しておる。しかもまた昨日のごときは、労働大臣のごときはああいう失態をやりながら、ここで遺憾の意を表しておる。遺憾の意を表したところの労働大臣がまっ先になって昨日の動きというものは、早くこの際、処分発表をやらなくてはいけないというようなことがきょうの朝の新聞にも出ておるじゃないですか。そういう点を総合して見ますると、あなた方のここで言われたことや、昨日の御言明とは全く違ったすなわち方向で進んでおるということは、これは委員会を侮辱するものである、国会を侮辱するものである、あるいはまた国民を欺瞞するものであると私たちが断定してこれはいいと思いますが、あなたのおっしゃったのは……つまりこういう閣議をやられましたか、あなたが主宰者でございましょう。……この点を明瞭にしてもらいたい。
  121. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 本日、関係の大臣が集まりまして閣僚懇談会があったということは、私は実は出ておりませんし、私自身は実は別の外務大臣としての必要なことがありましておくれてきたわけであります。懇談会のことは別に聞いておりません。これは今申したように運輸大臣とかあるいは郵政大臣とか大蔵大臣、その他の大臣もそれぞれ自分の所管の事業体を持っておりまして、これらの処分について懇談をいたすということは、これは当りまえのことであると思います。これは自分の持っておる主管しておるものについての何でありますが、また監督権を持っておるそれらの企業体から出てきておるところの処分案というものを検討いたして、それの懇談をいたしたわけでございます。これは事実その通りでございます。
  122. 内村清次

    ○内村清次君 労働大臣どうですか、内容の点ははっきりしてもらいたい。あなたはその閣僚懇談会においでになりましたか。
  123. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) ただいまの総理大臣のお答えになりましたように、関係閣僚懇談会を開きました。そうしてそれぞれの公共企業体に監督権及びそれに対する指導権を持っておる各大臣からいろいろな情報の報告を受けたのであります。
  124. 中村正雄

    ○中村正雄君 重ねて……。労働大臣でも総理大臣でもいいのですが、お尋ねしますが、今回の処分について、政府の方からああしろこうしろという指示はいたしておらない、当局の自主性にまかしておる。ただ監督権の発動から、報告があったものについていろいろ意見を言っておる。こういう御答弁ですが、ああすべきである、こうすべきであるという指示はしたことはないというふうに理解していいですか。
  125. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 所管大臣がいろいろ自分の直接所管しておることについては、所管大臣考えて処分の案をきめたと思いますが、もちろん、先ほど申すように均衡をとる必要があるので懇談はいたした。また所管大臣がいろいろ当該の公社の総裁、いわゆる処分権を持っておる者と事前におきましても打ち合せます。それは事実上監督権の内容としては私はあったと思います。しかし、指示して、こうしろとか、ああしろとかという何ではなくして、あくまでそれは公企体の経営者が処分権を何するということについての監督権以上の事柄に出てはおらない、こう思います。
  126. 中村正雄

    ○中村正雄君 そうしますと、今まで新聞にたびたび出ております発表の期日についても、何日にするということをよく各大臣が新聞に発表いたしておりますね。たとえばウイーク・デーは除くとか、あるいは連休を除くとか、あるいは予算の通過後にするとか、あるいは予算審議中にするとか、あるいはまた国会の開会中にある程度議論をしなければいかぬから、閉会後でなくて、やはり国会の末期にするとか、たびたび運輸大臣なり官房長官なり、労働大臣なりが新聞に発表いたしているわけですね。これはどういうふうにわれわれは理解していいのですか。
  127. 岸信介

    国務大臣岸信介君) その決定の発表の時期というようなものにつきましては、これはいろいろな政治情勢ともにらみ合す必要があると思います。この何するにしましても、ただ処分権があるのだから、いつでもその人の思いのままにするということが適当であるかどうか、今申しますように、三公社五現業の処分を同時に発表する、その時期はどうしたらいいかということは、やはり私は所管大臣がその監督権を持っておる大臣として、いろいろな社会情勢やその他の政治情勢を考えて適当なときにしようということは、私は当然考えるべきものであると思います。
  128. 中村正雄

    ○中村正雄君 では第二の点について。各振り合いを見なければならないということをおっしゃっておりますが、振り合い上、この企業体は何名にふやすとか、この企業体は何名に減らすということの数字をおっしゃっている、こういうふうに理解できるわけなんですが、そういうことでありますか。
  129. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私はそういう意味の振り合いというようなことは考えておりません。しかし現実に各企業体でやられたところの実力行使、それが公労法等に抵触しているとか、違反しているとかいう事実をあげて、同じような事態があるにかかわらず、ある企業体においては重く罰し、ある企業体においては軽く罰しているというようなことであれば、私は均衡がとれない、こういう意味において、各企業体において均衡をとらなければならない。ただ数が、何か使用者の数か何かで按分してどうするとか、そんなことを考えているわけじゃもちろんないわけであります。
  130. 中村正雄

    ○中村正雄君 私のお聞きしているのは、それは内容は各企業体によって違うと思うのです。また国民に与えます影響も現われます。紛争の程度も違うと思うのですが、新聞を見ますと、国鉄だけでは困る、各振り合いも考えてやるとか全電通も考えてやるとか、たびたび新聞に出ておるわけですね。従って、三公社五現業の振り合いを見て、やらなくてもいいところをやってみたり、ここは大筋から減らすとか、こういう話だけれども、結局やらないところまで引き上げてやるような数字が、新聞記事がたびたび目に映っているわけなんですね。しかも総理は振り合いを考えてと、こうおっしゃっておりますが、振り合いからこういうふうにやらなくてもいいところまで処分しようということが監督権の範囲かどうか、自主性を尊重している立場かどうか、この点について、現実の問題についてお伺いをするわけです。
  131. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私が振り合いということ、均衡ということを申し上げましたのは、先ほど御説明したように、争議が、実力行使の行われた現実の三公社五現業の各企業体の実情を調べて、そのいわゆる違反の状況を見て、この間に一方が重く、一方が軽いというようなことがあってはいかぬという意味において、それぞれ検討するという意味であって、決してある企業体が非常に国民経済にもえらい影響を及ぼした、相当の違反もあるという場合に、相当な処分をするというときに、その振り合い上、全然そういう何のないものもおつき合いに幾らかしろというような指示をするということは、これは常識から考えてあり得ないと思います。
  132. 中村正雄

    ○中村正雄君 ところがそういう記事が二、三回出ておったのですが、この点についてお尋ねしておるのですが、最後に労働大臣に時間もありませんので一点だけ願いますが、政府が出しております補正予算審議しておるわけですが、それと並んで公労法によりまして、成規に国会の裁定について議決を求める案件が出ております。これと補正予算との関係について午前の委員会答弁があったと思いますが、予算案とそれから議決を求める案件との関係について、今まではたびたび変ってきておると思うのです。公労法ができましてからの今までの出し方が変ってきておる。また現在におきまして、補正予算が出ましたのは初めてのわけなんですが、これについてはどういうふうに関連いたしておるのか、その扱いについて重ねてお伺いしたいと思うのであります。
  133. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 社会労働の方に議決を要する件として最初出しましたのは、十六日までにわれわれの予算のにらみ合いができなかったものですから全部出しました。そこで予算上資金上できるというものが四現業になったのでございますから、それを除いてあとは全部議決案件が出ております。そこで午前中もここで大蔵大臣その他もお答えになりましたし、また衆議院における予算委員会、社会労働委員会で答えましたが、従来の慣行に従いまして、予算が通過すれば自然案件は消滅するという解釈のもとに、今そうやろうと思っているのでございます。
  134. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) 中村君、時間が尽きましたので、簡単に願います。
  135. 中村正雄

    ○中村正雄君 そうしますとあの案件を、予算上不可能なという部分について国会に提案いたしておるわけなんですが、予算をここで審議いたしておりますが、あの案件の存在意義というものはどこにあるわけなんです。
  136. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 従来はそういうことはなかったと思いますが、私どもは、国会としては従来の慣行に従って予算が通過いたしましたならば、議決案件内容予算に盛られておるものと思いまして、これは自然消滅すると思いますが、この解釈については、非常に重要な問題でもありますし、将来の慣行にもなることでありますから、法制局長官から一つお答えを願いたいと思います。……
  137. 林修三

    政府委員(林修三君) 今、労働大臣からお答えしたことに尽きると思いますが、結局この公労法の十六条は、予算上資金上不可能なものについては国会の承認の議決を求めなければならないことになっております。従いまして、あの十日の期間において不可能なものにつきましては、公労法の規定によって議決を求めるわけであります。しかし、その後の事情によりまして、これは従来もいろいろな事情がございました。あるいは議決を求めた後において、収入の状況等によって可能になったために自然消滅をさしたという例もございます。それから今度の場合におきましても、四現業につきましては、その議決を求むべき案件を出したあとにおきまして、予算補正をせずして、特別会計の内部において可能な方法が認められた、こういうことによってこれは可能になった。可能になったときにおいて結局あの議決を求める案件は自然消滅をするという取扱いをお願いしたわけでございます。また現在予算審議していただいておりますものにつきましては、これは政府といたしましては、この仲裁裁定の誠実な実施を考えておるわけでありますから、この予算が成立すれば、それによって予算上資金上仲裁裁定は可能なものになったと、かように考えられますので、従いまして、議決を求めております案件につきましてはさらに議決を要しないと、従いまして、これは議案としては自然消滅の形になる、かように取り扱うのが一番妥当なる考え方じゃないかと、かように考えます。
  138. 平林剛

    ○平林剛君 関連。今この委員会審議をされておる予算補正が通過をすれば、そのまま裁定問題については解決するという御説明でありましたけれども、私はその点はもう少し慎重に御検討をなさる必要があるのじゃないか。こういう事例は初めてのことでありますし、与党、野党にかかわらず、労働問題の紛争解決に当って少しでも傷がないようにする、その取扱いは、今のような御説明だけでは私は納得ができないものがあるわけであります。なぜかといえば、今度の予算補正の解釈についてはまだ大きな解釈の相違がある、それから疑義がある。こういう疑義が十分尽されない間に、通過をしたからといってそのまま裁定問題が消滅するということは私はないのじゃないだろうか。やはり予算委員会というものは、今度の裁定問題に伴う根本的な予算のワクというものについて総合的に審議をするものであって、裁定問題はやはり社会労働委員会において十分今までの経緯というものを検討して、その後に妥当な結論を出す、これが私は国会審議の筋道じゃないかと思うのです。もう一度法律的な見解について、納得のいくような御説明を願いたいと思います。
  139. 林修三

    政府委員(林修三君) まあ私、法律的に申しておるわけでございまして、結局この公労法の建前は、予算上資金上不可能なものについては、裁定があって十日以内に国会の議決を求めなければならない、かようになっております。従って予算上資金上可能なものにつきましては国会の議決を求める余地はないわであります。従いまして、その十日のたたない現在において、予算上資金上不可能なものはどうしても国会の議決を求めなければならない。その出したあとにおいてこれが予算上資金上可能になれば、そのときにおいてもう国会の御議決を願う必要性はなくなるわけであります。従いまして、そういう理屈から申しまして、今回のこの補正予算が通過いたしますれば、予算上資金上仲裁裁定は可能になってくる、かように考えられます限り、この点において、もはや公労法十六条第二項の議決を求める必要がない、かようになるものと考えておるわけであります。これにつきましては、実は今度の例と全く同じ例ではございませんが、たしかあれば昭和二十四年でございましたか二十五年のときに、一部ついての補正予算が出まして、その一部の補正予算が通過いたしました例がございます。そのときは、その一部を除いた部分について承認しないという御議決があったこともございます。そういうふうに予算がついた、これによって仲裁裁定が可能になったということによりまして、それはもはやあの議決の対象というものはなくなっている。これはどうも公労法十六条の解釈上ころならざるを得ない、かように考えるわけであります。
  140. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) 平林君、簡単に願います。
  141. 平林剛

    ○平林剛君 今、補正予算の中で一番問題になることは、予算単価と実行単価の差について、今度はその三分の一を削減するという問題が、一体仲裁裁定を正しく解釈したものであるかどうかという焦点になっておるわけであります。この点は、かりに予算委員会において全般的なワクがきまりましても、まだ労働問題として慎重に検討しなければならない幾つかの要素が残っているわけであります。かりに予算委員会において補正予算が成立をいたしましても、後において諸般の事情から、たとえば大蔵大臣が、あるいは政府が、公共企業体全般の運営のためにどうしても必要だ、また、かりに予備費を流用しても、まだ絶対に完全ではないのだから、残った部分について何とか措置をして紛争を解決する必要があり、また予算上もそれは影響をあまり与えなくて済む、国民にも迷惑をかけない、公共企業体の面もかえってよくなるという判断がついたときは、移用、流用の措置もできるわけであります。そういう意味では予算委員会で補正予算が通過してしまったらすぐ裁定問題の解決は終ってしまったという解釈はどうも納得できない。きょうはこの問題についてはこれ以上申し上げませんけれども、政府では十分この点については御研究願っておきたい、これを要望しておきます。
  142. 湯山勇

    ○湯山勇君 関連して。今の法制局長官の御答弁では、予算上、資金上不可能な場合に国会提出する、こういう御答弁でしたが、今回最初に出されたものは予算上、資金上不可能なものもありますけれども、今の御答弁から見ると、不可能か可能かわからないのにお出しになっておるわけです。そしてその後の調査で可能だということがわかつてきた、そこでこれは撤回したということになりますから、必ずしも今回の提出の仕方というものは、公労法十六条の通りにはなされていない。不可能ならば、国会に出す以上は予算上、資金上かくかくの通り不可能だということが明瞭にされなければ不可能だということにならないわけで、そのために十日という日にちもとってあると思うのですが、この点について伺いたいのと、第二は、承認案件がかりに先に承認された場合、予算が先に成立するか、承認案件が先に成立するかということには、法律的な順序はありません。もしも承認案件の方が先に承認になって、その場合に、たとえば現在政府が解決しておるのと違うような結論が出る。特に今回の場合は、政府の配慮によって組み入れた額があると思いますから、そういうものについては異なった結論が出る場合も予想されます。そういう場合は一体どういうことになりますか、この二点について伺いたいと思います。
  143. 林修三

    政府委員(林修三君) 最初の第一点でございますが、これはもちろん公労法十六条第二項、仲裁裁定の場合には十六条の二項が準用されているわけでございますが、この十六条の二項によりまして、不可能なものについて国会の議決を求めている、不可能、可能の判断は、その十日の期限というものがございますが、そのときにおいて判断をするわけでございます。そのときにおいては不可能であるわけであります。しかし、その後いろいろ検討の結果、移用、流用等の措置が可能である、こういうことになった。移用、流用が行われた結果によってこういうようになった、そのときにおきまして、四現業につきましては可能だということを御通知申し上げまして、議案の自然消滅方をお願いをしたわけであります。  それから第二点の方でございますが、これはもちろん国会の承認を、議決を求めると同時に補正予算を出しました例は、今度がたしか二回目だと思います。前の例は今度の例とは少し違いますが、実は補正予算がほとんど同時に出ていた例がございます。まあこれは今度の例とは違うわけでございますが、これは結局国会のお取り扱いになるわけかと思います。しかし、その仲裁裁定を承認するという議決がかりにあるといたしますれば、政府といたしましては、それによって仲裁裁定の効力が発生することになるわけであります。それに従ってそれを実施するための補正予算がもし必要であれば予算を出すということになるわけであります。しかし、今回はその内容と同じものを実は出しておるわけであります。今度においては別に改めた措置は必要なかろう、かように考えるわけでございます。
  144. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) 湯山君、簡単に願います。
  145. 湯山勇

    ○湯山勇君 最初の方は、やはり了解ができないのは、移用、流用等によって予算上、資金上の措置ができるということが、不可能だと断定したあとでわかってきたということだとすれば、それにはやはり責任問題ができてくると思います。検討が不十分であったとか、いろいろな問題ができてくるのであって、少くとも国会へ出す以上は、いろいろな点から検討しても資金上、予算上不可能だという決定的なものがなければ出すべきでないと私は思うのですが、もう一度それについて伺いたいのと、それからあとの問題です。あなたのような御説明だと、きわめてこれは偶然が支配します。たとえば承認案件が早く出て、予算がずっとおそく出るというような場合には違った結果になるし、予算を先出して、先審議した場合には、あるいは今回のようなことになるかもしれない。で、私は公労法の精神からいけば、もはや政府では予算上資金上どうにもならない、そこでこの仲裁裁定をどうしますかということを国会に諮っているのだから、補正予算を出すとしても、その結論が出て出すのが本来ならば至当である。これを逆にして、今のような公労法の精神を、何といいますか、ごまかすようなやり方はとるべきでないというのが公労法の精神だと思うのです。そうでなければ何もその案件として国会の承認を求める必要はありません。この前のように一部を予算措置して、あとはやらなくてもいいというふうになる場合、これはまた別です。あなたはよく似ておると言われますけれども、それはむしろそのやり方の方はあるいは正しいのであると思うけれども、今回のような場合は、全くやり方が逆であって、もしこういうことが許されるとすれば、これは公労法の精神をじゅうりんするものであると、こういうことになると思いますが、その辺、前後の関係を明瞭にして一つ御説明を願いたい。
  146. 林修三

    政府委員(林修三君) 第一の点でございますが、これはやはり公労法十六条に十日という期限がございます。従いまして、十日の範囲内においてなし得ることを検討し、またすべきことがあればする。そういう結果において、そのときにおいて不可能であれば、これはやはり国会の御議決を求めなければならないということになると思います。ただその後の事情においてあるいは移流用の可能の、あるいは収入がふえる、あるいは支出が減ったということで可能になれば、私はそのときにおいて可能になれば、今度は十六条一項の方に戻って可能になってくる。従って当事者は拘束される状態になる。かようなことになると思います。従いまして、四現業につきまして政府が最初にこの十六条二項に基く議決をお願いいたしましたのは、これはその十日現在においてはやむを得ない措置である。その当時においては不可能でございます。これは当然なすべきことであった、かように考えられるわけであります。  それからもう一点でございますが、これは私は実はお言葉を返すようでございますが、実は仲裁裁定が初めて出ました当時においては、御議決を求めると同時に予算を出さなければいけないのじゃないかという御意見が強かった。あの当時におきましてはむしろいろいろの政府事情もございまして、あるいはむしろ予算を出したのはほとんど今まで例がないわけでありますが、まあ今度は仲裁裁定について案件を求めると同時に、政府といたしましては仲裁裁定を尊重するという立場から早くそれを予算化するという趣旨において、その内容を実現した予算を、まあほとんど同時じゃございませんが、追っかけてお出しした。むしろこれは私は公労法の運用としてはどちらがいいかという問題はございますが、決して間違ったことではない、かように考えておるわけでございます。
  147. 吉田法晴

    吉田法晴君 関連。関連ですから簡単に一、二点だけを明らかにしておきたいと思うのでありますが、先ほど労働大臣は、労使双方において話し合いで片づけることが望ましい、話し合いが第一の段階だ、こういうお話がございました。話し合いがつかないで調停、それで調停で片づかないで裁定ということになったのでありますが、この裁定について、それでは労使の間に紛争がまだ残っているのかどうか。私どもの承知いたしておるところでは、解釈をめぐって話し合いがまだついておらぬ段階だと思うのです。ここでもやみ給与ということは、これは交渉なり、あるいは昨年の調停によってできた賃金であります。    〔理事左藤義詮君退席、委員長着席〕 こういう点はお認めになったのであります。それに賃金の改善を加えるべきだという裁定が行われた。しかしその裁定の解釈をめぐって労使の間に意思の統一がまだない段階で、政府が一方的にこの裁定を解釈し、そして予算を出してきた、こういうことじゃないかと思います。従って予算上の措置は、裁定が疑問がないときには、その裁定を尊重するならば、その裁定を全部予算に計上するかどうか、こういう予算上の措置が裁定に関連して起ってくるのだと思う。それから法律解釈はその後に起ってくる問題だと思うのでありますが、裁定そのものがきまらない、あるいは裁定の実施についての話し合いがきまらないで、それで予算の措置を講ぜられる、あるいは法律改正をなそうとしておる、あるいは処遇等についても行われようとしておるが、そういうことでは、これは今の湯山君が後段に尋ねたところでありますけれども、労使関係の正常な確立をはかるという点からいうと、それは間違いではないか、この点が一番問題のところであります。事実と、それから政府のお考えは、私は間違っておるとは言いませんけれども、その点について一応所見を求めておきます。
  148. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 大蔵大臣がお答えになることが適当かと思いますが、労働大臣として一応申し上げます。裁定がまだどこにいくか、両方の裁定についての議決がきまっておらないのに予算を組んだのは越権じゃないかというお尋ねでございますが、その点は、予算を組むに当りまして、四現業の方は一応これは通告によってすでに取り下げたことになるのでありますが、この三公社二現業は、現在のまま予算の補正をお願いいたしておるのでありますが、これらの関係者と相談いたしまして、この点が不明瞭だ不明瞭だというわからない、疑義の多いところは総合いたしまして、労働次官の名をもって仲裁委員会に問い合せをいたしまして、その問い合せの解釈ははっきりいたしております。そのはっきりいたしておりますところの回答に従いまして、この予算を組んだのでございますから、この予算が通過いたしますならば、議決案件は自然消滅するとわれわれは解釈いたしておる次第であります。あと予算上の問題に対しましては大蔵大臣からお答えいたします。
  149. 吉田法晴

    吉田法晴君 問題は労使関係で、労使関係において賃金の問題について話し合いは終局的にできたと、この点をお尋ねしておる。
  150. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 予算総額のワクの中における配分の方法については、今後団交の問題になろうと思いますが、それによって現在組んでおるところの補正予算の増額をする必要は絶対にないと思いますことは、仲裁裁定の意思に従って財源を計上しておるからであります。
  151. 吉田法晴

    吉田法晴君 関連でありますから、この問題は後に譲りまして、関連質問はこの程度にいたしたいと思います。
  152. 中村正雄

    ○中村正雄君 じゃ時間もありませんので、最後に大蔵大臣にお伺いしたいと思うわけですが、今度の仲裁の裁定で非常に論争されております点は、いわゆる予算単価と実行単価の相違の問題だろうと思うのです。それで私お尋ねしたいのは、毎年度予算を組むときは、いわゆる監督権によって、各政府機関から出して参ります予算については大蔵省が検討いたしておると思います。で、検討いたしておるにもかかわらず、いわゆる経営者と組合との間に妥結された給与というものは、もうきまっておるわけなんですね。それで予算単価と実際の実行単価と開きができておるということは、これは政府の監督権のいわゆる不行き届きといいますか、あるいは公共企業体の経営者のいわゆる間違っている点があるのじゃないかと思うのです。いわゆる監督権を云々されておりますところの、処遇の問題について監督権を非常に強調されておる政府が、なぜ予算を組むときに、予算単価と実行単価の間に差があるということを発見できなかったかという点について僕はお伺いしたいと思う。
  153. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) いろいろ原因はあると思いまするが、従来のように給与総額をきめまして、そうして給与総額の内訳、予算単価によりまする額と、予算単価に入っていない、いわゆる基準外賃金、すなわち超勤等でございます。超勤等の内容を含みます場合において、労使の関係において、国鉄で申しますれば、超勤の分を手当という名前でもってベース・アップに充てるような話があるのであります。実例があるのであります。昨年の調停のときにわれわれは一時手当として考えておったのでございまするが、今回の裁定を見ますると、これが一項確定分としてなっておるのであります。規定のベース・アップになっておる。そういたしますると、われわれにもそれがよくわかりません。やはり予算単価を組む、予算を組む場合におきまして、従来の予算単価に昇給分その他を考慮いたしまして、あるいは新陳代謝の場合も考慮いたしまして予算単価を組むのであります。しこうしてまた超勤の方も組みます。そうしてまた弾力条項によるものもありまして、給与総額内におきましてどれが超勤なりや、幾ばくかが給与になっているかということが不明瞭になってくるのが従来の例であるのであります。従いまして、今回の裁定につきましても予算単価というものに千二百円を加えて、そうして予算単価と実行単価の差をなくするようにという裁定が出ましたので、先ほど来問題になっているような基準内、基準外を分けて、将来そういうことのないように努めようといたしておるのであります。従って基準外と基準内とを分けた場合において、今回の裁定に基きまして予算を組みました場合におきましては、いわゆる三分の二分は当然これは基準外に組んでおりまするから、流用はもう初めから予定いたしておりまするが、それ以外の部分におきまして、今までのように給与総額内部でやり繰りするということは、また実行単価と予算単価とが狂いまするから、これは私は承認を受ける格好でいって、それをなくするようにしたい、こういうのであります。実際は団交の間におきまして臨時手当とか一時手当とかあるいはダイヤ改正の手当とか、こういうのが出まして、これが実際において給与ベースのような格好になることを私は防ぎたい、こういう考えでございます。
  154. 中村正雄

    ○中村正雄君 今、大蔵大臣お話になりましたいわゆる団交の確定分は、これは近々のことですから、御無理もないと思いますですが、いわゆる第二次の給与といわれておりまするが、いわゆる一昨々年の調停案に基いてやった分等はすでにもう二年を経過しておるわけなんですね。そういうものについて大蔵省は、これは基準外の賃金のうちに入れる、こういうことで予算の査定をしているわけなんですね。そういうところに私は一つの問題が残っているのじゃないかと思う。従ってこういう内容が不明確であったというふうに今答弁されておりますけれども、この内容につきましては、大蔵当局は十分熟知いたしておるはずなんです。今回の裁定で一番問題になっておりますのは、いわゆる予算単価を中心にして、すでに千二百円が実行単価と予算単価とどう関連があるかということが労使双方の紛争の種になっていると思うのです。そういうところに、今まで監督権を非常に云々されております大蔵省がこれがわからなかったというようなことは、僕はどうも納得できないわけなんで、この間の事情を僕は御説明願いたい。
  155. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 三公社五現業の給与予算の裁定に際しまして私どもがとっておりまする方針でございますが、もちろん実態がどうなっておるかということにつきましては、私どもはあとう限り把握に努力いたしておりますが、それと別に、私どもが持っております方針は、予算上資金上不可能なりとして処理せられましたものにつきましては、これは当然私ども予算措置を講じなければならぬわけでありますが、しからざるものにつきましては、これは給与総額内でまかなえるという前提で処理されて参ったわけでございまして、従いまして、毎年度の予算編成いたします場合にも、その与えられた給与総額を基礎にして、それに年々の昇給原資を加算していけば、それで当然まかなえる性質のものである、そういう前提に立って予算編成に臨んでおるわけでございます。もしそういう統一的な方針をとらないで、格差を現実にフォローしていくということになりますと、これはますます格差が拡大していくわけでございまして、統一的な予算編成方針をとります場合には、ある年度の、これは多くの場合は裁定が行われました年度の予算総額になるわけでございますが、それを基礎にして、その後の年度におきましては、年々規定の昇給原資を加算していく、こういう方針でずっと参ったわけでございます。従いまして格差を一々フォローするというような方針はとって参らなかったのでございますが、その結果、今回の裁定に際しましていろいろな問題が起りまして、国会で御承認をいただく予算といたしましては好ましくない結果が起っているわけでございます。そこで今後はそういう事態が起らないように、極力この実行と予算との格差をなくしようということから、先ほど来大蔵大臣からも申し上げておりますように、基準内と基準外とを区分いたしまして、その使用につきましては、主務大臣を通じて財務当局も関与するように、そういう制度にしていただきたいということにしたわけでございます。従来の編成方針を申し上げました。
  156. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 中村君、時間が過ぎたようですから……。
  157. 中村正雄

    ○中村正雄君 では最後にもう一点大蔵大臣にお伺いしますが、さっきお伺いしました補正予算の中で三分の二については基準外で組んでいるわけですね。これは移流用を当然承認する、こういうわけなんですが、そうするとこれは来年度になりますと来年度の予算編成するときには、これは基準内賃金として予算に計上なさる当然一つの基礎になるわけですかどうなんです。
  158. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 今回基準内に入れません三分の二につきましては、裁定の趣旨に沿いまして漸減する方向でございます。漸減したい、幾ら減らすかという問題につきましては、これは私は国鉄その他の方々のベース・ダウンということはこれはやるべきじゃございません。給与がだんだん上っていく格好をとりまして、そのうちの一部であれをなくしたい、こういう方針でおるのであります。
  159. 中村正雄

    ○中村正雄君 そうしますと、結局移流用を認めて基準内に入れたものについては、そのうちの幾らを減らすかどうかは別にして、一つのやはり基準内賃金としての本年度の実績ができるわけですね。従ってそれは来年度の予算編成のときには基準内賃金としてこれは考える基礎になるということだけは間違いないものと了解していいわけですか。
  160. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 基準内と基準外は総体の金額でいっております。従いまして三分の二に相当する金額を見合いながら、全部ではございませんが、国鉄におきましては新陳代謝をやりますれば、それだけいわゆる一人当りの給料はふえます。そうしてまた要すれば昇給財源をどれだけ見るかによりまして基準内賃金もふえて参ります。そうした場合に、今回三分の二として超勤から繰り入れたあの額がどれだけ減るかというかね合いになるのであります。全部が減るかどうかは、三十三年度の予算編成の結果現われて、どれだけ減るかということはその結果現われてくると思います。
  161. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 本日の質疑は、これにて終了し、明日九時から委員長及び理事打合会、十時から委員会を開きます。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時二十五分散会