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吉田法晴君 私はただいま議題となっております
昭和三十一
年度予算補正五件に対しまして、
日本社会党を代表いたしまして、反対の討論を行わんとするものであります。
この第一次、第二次補正をもって五百四十七億の補正を行い、当初予算一兆三百四十九億に追加いたしまして、三十一
年度予算として合計一兆八百九十六億にせんとするものであり、これは一千百億の自然増のうち、三百億を産投特別会計に、百億を交付税及び譲与税配付金特別会計に、百四十七億を遺族留守家族援護その他に支出せんとするものでありますが、私は反対の第一の
理由にあげますものは、今回の補正が財政法の
精神を根本的に踏みにじっておるということであります。すなわち、第一次の補正予算に計上せられました産業投資特別会計への繰り入れ及び地方交付税特別会計への繰り入れば、いずれも三十二
年度またはそれ以降において使われるものであり、会計
年度の独立という財政法の根本原則を踏みにじっておるからであります。特に、今回
提案せられております産投の資金三百億円は、三十二
年度、三十三
年度に使用しようとして、無理に財政法四十四条の資金の形にでっち上げて、合法な形をとっているのでありますが、池田大蔵大臣は、本
年度の自然増収が異常なものだし、これを財政投融資に使うが、将来にわたり最も有数であると、一人ぎめをしておりますけれ
ども、三十三
年度に百五十億を何に使うのが最も適当であるかは、今日とうていきめ得ることではありません。今回の措置は、三十三
年度の歳出を拘束するもので、はなはだ不当となすべきであります。
さらに第二次補正のごときは、その大部分が三十二
年度予算編成に際しての復活要求のはみ出し分であり、大蔵省原案に対し二千五、六百億円に上る復活要求を出された
政府が、ついに一般会計において二百二十九億円の復活を認めざるを得なくなり、
昭和三十二
年度の財政規模の膨脹をごまかすために、そのうちの八十一億円を三十一
年度予算の補正として組んだものであることは、明白な事実であります。単
年度予算主義により、その年の税収等収入と、その年に支出される財政支出は、その年の予算として、
国会、
国民が
承認し、監督するという財政法の
精神をじゆうりんするものであります。従って、補正予算の緊急性のごときはいずれにも、ごうまつも見当らないところであります。これが反対の第一。
次に、千百億の自然増収は、自民党のいわれる資本主義の原則からすれば、減税として
国民に還元すべきものであります。もしそうでないとするならば、経済基礎の拡充、各階層別の
国民生活を考慮し、計画的に、言いかえれば社会的に財政支出をすべきであります。しかるに
政府は、
昭和三十一
年度予算の実施においては、ことごとく失敗をして、三十一
年度予算説明になされております目標、政策、
趣旨と正反対の傾向が出るような事態に立ち至っております。両補正予算によっても、
国民経済、
国民各階層に
政治的、政策的に還元するのではなく、
昭和三十二
年度予算編成に漏れた要求を埋める無計画的な支出をし、地方財政を初め、雇用の増大、給与の改訂等にしても、社会保険あるいは
義務教育費その他にいたしましても、その窮状、矛盾を解決することができず、むしろ
日本経済の矛盾を拡大する
方向にあります。
昭和三十一
年度予算説明には、貿易収支は黒字になり、財政資金の支払い超過、投資の需要、消費需要、貯蓄傾向等の変化はなく、金融機関の資金繰りも好転し、日銀依存度の低下、オーバー・ローンの解消、金利の低下等、金融の正常化は急速に進行しつつあると、こう書いてありますけれ
ども、事態は全く逆であります。国際経済の従来の繁栄あるいは景気の上昇の頭打ちの
影響を受けて、漸次その当時の欧米同様の事態になりつつあります。輸入が増加し、輸出が伸びない、手持ち外貨が減少し、引き揚げ超過となり、失敗した財政の金融へのしわ寄せば、公定歩合の引き上げ等、金融部面に赤字信号が出ているではありませんか。防衛
関係費あるいは軍人恩給等のみが確実にふえ、インフレの傾向すらあります。欧州共同体市場に対しては十分な対策もないし、中国貿易、アジア貿易の伸展についても何ら見るべきものはありません。経済の健全化、通貨価値の安定、インフレを避け、経済自立を目標にし、
生産基盤の強化、輸出の振興、雇用の増進をうたいましたけれ
ども、全く事態はこれと反対の事態が生じております。これひとえに
政治が無計画的に、社会的でないからであります。これが反対の第二の
理由であります。
第三の反対の
理由は、食管会計の三十一
年度の赤字を補正に組んでいないことであります。食管会計は毎年赤字を出しており、三十二
年度に予想される赤字を加えますと三百三十五億円の多額に上るのであります。
政府は、今回の補正において、三十一
年度末の赤字三十一億円だけを組み、確実に予想される三十一
年度の赤字百六十一億は補正に組んでないのであります。その
年度の歳出はその
年度の歳入をもって充てるという財政法の
精神に照らしましても、当然三十一
年度の赤字も補正に組むべきものであります。しかのみならず、今回補正に組まれている三十
年度の赤字も、
河野前
農相の
責任でありますが、
河野前
農相は、三十
年度予算の補正に際し、三十
年度はこれ以上赤字を出さないということを言明してこられたのでありますけれ
ども、三十
年度決算において三十三億の赤字を生じたものでありまして、ずさんきわまる収支予想を組み、
国会を欺いて参ったという以外にありません。また現
内閣は、三十二
年度予算編成方針の決定に当って、消費者米価値上げを一たん閣議で決定しておきながら、党内抗争と選挙を考慮してか、その方針を変更して、調査会の結論を待って処置をするというごまかし方法をとるに至ったのでありますが、三十一
年度の赤字を今回の補正に組まないところを見ますと、依然として消費者米価値上げの方針を捨てていないものと解せざるを得ないのであります。かくのごときあいまいなる
政府の態度は、断じて許すことができません。
反対の
理由の第四は、地方財政に対する措置でございます。地方交付税交付金は、第一次補正で百億円、第二次補正で十億円、計百十億円を追加計上しておりますが、これは国税三税の二五%という税率をそのままにして、自然増収に見合う額を計上しただけで、三十三
年度において精算交付される分の先食いをいたしたにすぎません。断じて増額ではございません。しかもそのうち八十六億円は、地方債の元利補給に充当されるものであり、自主財源たるべき交付税を特定財源に充当するものでありまして、これまた不当な措置であります。地方債の現在高実に五千二百億、ここ数年を出ずして地方債の償還額と借入額がひとしくなると言われておる地方財政の現状を
考えてみますならば、かくのごときなまやさしい措置では、とうてい地方債の重圧から地方財政の窮状を救うことはできません。これでは明らかに、地方財政の窮乏を
昭和三十一
年度の自然増収で救うことにはならないのであって、公債費を要望している自治体の要請にこたえるゆえんではありません。これ反対の第四の
理由であります。
第五の反対の
理由は、主として独占資本等に回ります産投三百億と、旧軍人遺家族恩給等、純消費的支出がおもなものであって、中小企業にも、農村にも、あるいは公務員等労働者、庶民階級にはほとんど見るべき支出がなく、社会保険、社会保障
関係費も申しわけ的で、千百億の自然増収を
国民生活の安定のために支出するについて妥当でないという点であります。公務員の給与は民間給与に比し一昨年五月において一一%の差ありとして、昨年七月、千二百円ベースの改訂を勧告していることは御
承知の
通りでありますが、従前の例によりますと、補正予算において本年一月一日以降ベース改訂をすべきにかかわらず、補正予算において何ら措置がしていないのであります。雇用の増大をうたいながら、日雇いの首切りが行われ、
失業者は減らず、ふえているのはただ臨時工のみであります。事態は三十一
年度予算の説明とまさに逆行であり、失対費の増額もございません。新農村計画は多く有線放送の設備に終って、農業改良費の減少を補正でカバーする増額すらございません。
国民金融公庫、商工中金等、中小企業金融の実態は、
希望を公けに募集することができず、
関係者はせめての三倍の原資をほしいと要望している実情でありますが、補正予算においては何らの措置もございません。
義務教育費については、本
委員会において湯山
委員が指摘されたように、六十名以上の学級が六千、市町村負担学級が二千五百八十九、PTA負担の総額が百億、未報告分の推定分を加えますると百二、三十億が市町村、PTA等において負担せられ、国が
責任を持たぬ、不十分な教育が行われておるという実情で、第二次補正十七億、しかもその一部は年末手当に充当されるわけでありますが、これをもってはとうてい事態の解消に資するわけに参りません。科学技術の振興という点に至りましては、宗谷丸の実態が、この科学技術振興の支出の実体を証明いたしております。
最後に第二次補正に組まれております沖縄
関係特別措置費についてでありますが、今回補正に組まれましたのは、土地等の所有者に対する見舞金十億円と引揚困窮者に対する貸付金一億円にすぎませんが、土地等の補償百七十一億は、当然米国が支払うべきものであり、沖縄を含む九千万の
日本国民の強い要望である祖国復帰、四原則の貫徹が実現いたしますならばこのような姑息的な措置はとらなくても済むはずであります。
政府は、施政権の返還に
努力する、四原則貫徹を申し入れると申しておりますけれ
ども、裏では自民党としてレムニッツアー声明の線で解決に
努力し、この十一億の支出も、その緩和された軍用地の新規接収一括払いに協力せんとしつつあるかのごとくであります。わが党は、強い
国民運動によって四原則の貫徹、施政権の返還を要求し、米国の補償見舞の本見舞金も小笠原並みに計算をいたしますならば、少くとも二十五億円は支出すべきである。退職吏員の恩給四千万円、徴用船舶一億、郵便貯金、簡保等六千五百万円、引揚者更生資金二億七千万円等は当然支出されるべきであり、十一億でなくて、三十億を支出すべきが当然だと
考えるのであります。本土よりの交通も自由ならず、問題の解決に祖国の協力を切望しております沖繩八十万県民の切望に対して、
政府、自民党の対米協力の態度には私
ども賛成するわけには参りません。補正予算は不十分であります。
以上六点の
理由をあげて、補正予算五案の反対討論といたす次第であります。(拍手)