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1957-03-14 第26回国会 参議院 予算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月十四日(木曜日)    午前十時四十二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     苫米地義三君    理事            迫水 久常君            左藤 義詮君            堀木 鎌三君            安井  謙君            吉田 萬次君            天田 勝正君            中田 吉雄君            吉田 法晴君            森 八三一君    委員            青木 一男君            石坂 豊一君            泉山 三六君            木村篤太郎君            小林 武治君            小山邦太郎君            新谷寅三郎君            高野 一夫君            高橋進太郎君            土田國太郎君            苫米地英俊君            成田 一郎君            野本 品吉君            林田 正治君            一松 定吉君            前田佳都男君            内村 清次君            海野 三朗君            岡田 宗司君            栗山 良夫君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            曾祢  益君            中村 正雄君            羽生 三七君            松浦 清一君            山田 節男君            湯山  勇君            加賀山之雄君            梶原 茂嘉君            田村 文吉君            豊田 雅孝君            千田  正君            八木 幸吉君   国務大臣    内閣総理大臣    外 務 大 臣 岸  信介君    法 務 大 臣 中村 梅吉君    大 蔵 大 臣 池田 勇人君    厚 生 大 臣 神田  博君    農 林 大 臣 井出一太郎君    通商産業大臣  水田三喜男君    運 輸 大 臣 宮澤 胤勇君    労 働 大 臣 松浦周太郎君    国 務 大 臣 宇田 耕一君    国 務 大 臣 田中伊三次君   政府委員    法制局長官   林  修三君    警察庁長官   石井 榮三君    北海道開発政務    次官      中山 榮一君    北海道開発庁次    長       田上 辰雄君    自治庁財政部長 小林與三次君    経済企画庁調整    部長      小出 榮一君    経済企画庁計画    部長      大來佐武郎君    法務省民事局長 村上 朝一君    法務省刑事局長 井本 臺吉君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    食糧庁長官   小倉 武一君    運輸省鉄道監督   局国有鉄道部長  細田 吉藏君    運輸省自動車局    長       山内 公猷君    郵政政務次官  伊東 岩男君    郵政省貯金局長 加藤 桂一君    郵政省経理局長 八藤 東禧君    労働省労政局長 中西  實君   —————————————    会計検査院長  東谷傳次郎君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    宮内庁長官   宇佐美 毅君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十二年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十二年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十二年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) ただいまより委員会を開きます。  昭和三十二年度一般会計予算  昭和三十二年度特別会計予算  昭和三十二年度政府関係機関予算を議題といたします。  きのうに引き続いて質疑を続行いたします。
  3. 栗山良夫

    栗山良夫君 私はこの際、総理に、天皇皇后陛下地方へ御旅行になりますることにつきまして、二、三お尋ねを申し上げたいと思います。この問題はもちろん宮内庁でお取り計らいになることも相当あろうと思います。必ずしも内閣としておやりになることだけではないと思いまするが、しかし、政府としての所信もぜひお尋ねいたしておきたい、また、具体的ないろいろの取扱いの問題につきましては宮内庁長官に御質問申し上げたい、こう考えております。私がかようにお尋ねを申し上げますのは、終戦後、両陛下におかれては、しばしば機会をみまして地方へ御旅行になり、そうして、新しい憲法で定められましたところの天皇の御地位にのっとられて、人間天皇として国民に親しく接しておられるわけで、この点は国民のひとしく喜んでお迎えをしておるところであろうと思いまするが、そのお迎えの仕方につきまして二、三感ずるところがあるわけであります。  そのまず第一点は、天皇地方へ御旅行になりまする場合には、天皇がみずから進んで御旅行意思を表明されることもございましょう。また、地方からぜひお迎えをいたしたいという要請に従ってお出かけになることもありましょう。まあいろいろありましょうが、そのときに日程等を作成いたしまするには、どういう手順でおやりになっておるか、これをお伺いいたしたいと思います。
  4. 岸信介

    国務大臣岸信介君) そのことにつきましては、宮内庁長官からお答え申し上げます。
  5. 宇佐美毅

    説明員宇佐美毅君) お答え申し上げます。天皇皇后陛下地方お出ましにつきましては、ただいま御質問にございましたように、地方要望により、あるいはいろいろな施設要望によってお出かけになることが一番多いのでございます。その際における日程の取り進め方でございまするが、これは宮内庁とその地方府県当局と御相談してきめるのが一番普通の形でございます。
  6. 栗山良夫

    栗山良夫君 相談をせられまするときに、その御日程のこまかい細部にわたる原案を作成いたしまするのはどちらになりますか。
  7. 宇佐美毅

    説明員宇佐美毅君) そのときのお出まし趣旨によりますけれども、あるいはこちらの希望を入れて、大体におきましては府県当局お願いをして下草案を作っているわけでございます。
  8. 栗山良夫

    栗山良夫君 そういたしまするというと、たとえば御視察になりまするととろの工場でありまするとか、あるいはその他の施設でありまするとか、また御宿泊になりまするところの宿泊場所でありますとか、そういうところは大体地元事情に通暁しておりますところの地方公共団体方々によって原案が作られ、宮内庁の方に案が提示があって、その案に基いて御相談になって御決定になる、こういう工合に了解してよろしゅうございますか。
  9. 宇佐美毅

    説明員宇佐美毅君) 仰せ通りでございまして、ただ社会事業を特に御覧遊ばす場合、赤い羽根の週間の場合には社会事業を多くしてほしいといういろいろ希望は申しますが、今のような手続きで下案を出していただいてやっておるわけでございます。
  10. 栗山良夫

    栗山良夫君 次に御旅行になりまする場合には当然いろいろな事情がありまして、適切な御警備と申しますか、御警護と申しますか、こういうことが行われておるのであります。で私は総理並びに警察庁長官お尋ねをいたしたいのでありますが、終戦直後のあの非常に社会情勢が不安定であり、ある意味においては混乱の状態にあったと思われるような時期におきましても、天皇地位が、新憲法でおかわりになりましたその直後において、しばしば地方へ御旅行になりました。そしてこの当時におきましては、すでに写真等でもその状態が残っておりますように、ほんとう人間天皇となられて、そして国民の中へほんとうに親しい気持でお入りになっておりました。ところが最近になりますというと、だんだんとその御警備の模様が強化せられたと申しますか、固苦しくなったと申しますか、だんだん復古調を帯びて参りまして、そしてあの終戦直後しばらく続きましたような状態からだんだん離れておるのであります。こういうことは天皇の御意思では私はないと思うのでありまして、途中でいろいろと御警備を計画せられるところにおいて、何らかいろいろな事情があって、こういう工合におやりになっておると思いますが、そういう警護を漸次強めていくというような必要性が、今日の日本社会情勢において果してあるかどうか、総理はそういう警護を固めるよりは自然な形にして、そしてほんとう国民の中へ天皇が溶け込んで、そして国民と親しく接せられると、こういう姿の方が好ましくないかと私は考えるのでございますが、この点についての御所信を伺いたいと思います。
  11. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 両陛下地方お出ましになる際におきまして、私ども考えは、言うまでもなく、こういう機会に両陛下が親しく国民のあらゆる階層と接せられまして、国民のうちにお親しみをお持ちになるようにすることは必要である、従って警備等に関しましても、できるだけ簡素な形にいかなければならないという考えでおります。
  12. 栗山良夫

    栗山良夫君 国警長官見えになっておりますか。
  13. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 今連絡しておりますが、まだちょっと見えておりません。
  14. 栗山良夫

    栗山良夫君 それでは最近の実情は、ただいま総理がお示しになりましたような方針とは若干それておるように私は存じます。従いまして国警長官——あとおいでになるそうでありますから、そのときにお伺いをいたしたいと思います。  それから第三点といたしましては、地方で御視察になる場所の問題であります。先ほどは地方公共団体の大体原案に基いて宮内庁で御相談になると、こういうように伺いましたが、私どもといたしましては、陛下地方おいでになって地方のいわゆる民情というものに接せられるということでありますならば、限られた会社であるとか、あるいはその他の施設ごらんになるというよりも、もう少し視野を広くいたしまして、たとえば国民のうちの相当な部分は生活にあえいでおるのであります。また生活の根拠を失ったような老人も適当な場所に収容せられております。また身体障害者もございます。その他いろいろ社会保障関係施設社会施設に収容されている人もたくさんあります。また公共職業安定所の窓口に早朝から殺到いたしまして、一日のかてを得るためにきゅうきゅうとしている国民も多数あるわけであります。従いましてそういう各方面の視察をつぶさにせられるということが、ほんとうに好ましいことではないかと考えるのです。私はこの点につきましても、従来のいろいろな御視察の中において若干手落ちの点があるのではないか、こういうふうに感ずるのでございますが、首相といたしましては、この点についてどういうお考えをお持ちになっておられるか、また宮内庁長官としてこういう点に今までお気づきになった点があるか、また気づかれて特別に配慮をせられた点があるか、その点を伺いたいと思います。
  15. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私ども希望といたしましては、あらゆる施設等ごらんいただくことがいいと思います。ただ御日程関係であるとかあるいは御旅行の直接の目的等にも関係のあることで、いつでも必ず社会施設ごらんになるというわけにもいきますまいし、いつでも必ず会社ごらんになるというわけにも参りますまいし、これはできるだけ御日程の許す限り、また御旅行目的と関連しておる限りにおいては広くごらんになっていただいた方がいいと、こういうふうに思います。
  16. 宇佐美毅

    説明員宇佐美毅君) ただいま総理がお答えになりました通り、われわれも考えておる次第でございますが、ただいま現実には、最近は春は植樹祭、秋は国民体育大会という機会において地方おいでになる以外はあまりお出ましがないわけでございます。そういう際に、植樹祭あるいは体育というものが中心でございますが、いつもそのほかに産業、教育、社会施設というようなことにつきまして十分配慮をいたしておるつもりでございます。そのほか単独の施設ごらんになる場合などにおきましても、やはり社会施設が数において一番多いのではないかと考えておるわけで、まあそういう点につきましてもっと広くごらんいただくように今後も努力をいたしたいと考える次第であります。
  17. 栗山良夫

    栗山良夫君 第四といたしまして、私が特にこれは実際の状態がそうなっておることを二、三実例的にも承知いたしておりますので、御所信を伺うとともに強く御要望を申し上げておきたい事項であります。それは天皇地方を御視察になりまする場合には、やはり地方としてはありのままの姿を見ていただくということでなければならぬと思うのであります。御旅行になり、お迎いをするからというので、にわかに多額の費用を投じまして道路を新しく作ってみたり、あるいは民間会社に相当な無理を強いまして施設の改善をやるとか、作りかえをするとか、こういうようなことをいたしまして、実態はそうでないのに御旅行のためにそういう飾りつけをいたしまして、そうして実態と違うところをお見せするというようなことは当を得ないのではないか、適切ではないのではないか、こういうことを考えるのであります。実は私ども確かめておるわけではありませんが、近く四月には岐阜愛知植樹祭をかねて御旅行になるということを承わっておりまするが、その間におきましても、ある民間お迎えをする会社におきましては、数千万円の巨費を投じまして今一生懸命に工場の内部の改築あるいは清掃を行いまして、お迎え準備をしておるというようなことも仄聞いたしておるのであります。そういうようなことはやはり当然避けられて、ありのままの姿でお迎えをする。もちろん工場の中を清掃いたしましてみぎれいにされることは、これは常識として当然のことでございますが、さらに相当の費用をこのためにつぎ込んで準備をいたすというようなことは、かえって当を欠くのではないか、こう私は考えるのであります。これについて従来宮内庁はどういう方針をおしりになったか、政府としてはどういう工合にお考えになるか、こういうことは好ましいとお考えになるか、好ましくないとお考えになるか、この点を伺いたいと存ずるわけであります。
  18. 宇佐美毅

    説明員宇佐美毅君) ただいまお述べになりました趣旨にわれわれといたしましても全く御同感で、その心組みでいたしているつもりでございます。最近におきしても、常に御旅行の前には、知事さんを初め、地方方々に、どうか費用をかけないで欲しいということをまっさきにお願いをいたしておるわけであります。そのおいでの前に下調査に参りましたときも、そういうことがございますと、これはやめて欲しいということを申している例が幾らもあるわけであります。しかし実際には、率直に申し上げますと、そういう下検分で拝見したときと現実おいでになったときでは、まるで違うようになって、われわれとしては非常ににかえってそういうことにむしろ困るという感じを持っておるわけであります。そういう場合、おそらくこれはお出ましになるためにやるのではない、必要上やるので、たまたま期が一になったと言われますと、われわれといたしまして、それ以上干渉することはできません。しかしそういうことのないようにということは、最近地方お出かけの際に一番強くお願いしておるところでございます。道路なんかにつきましてもそうでございまして、具体的の例を申し上げますと、あまり強く申しましたのでちょっと過度に、危険な個所を直すについても知事さんが許可を得に来られたことがございます。それはわれわれ許可する権限ございませんが、まあそのくらいに言っているつもりでございますが、現実にはまだ多少熱誠のあまりなさるところが多いように見受けて、今後もこういう点につきましてわれわれも努力をいたして参りたいと考える次第であります。
  19. 栗山良夫

    栗山良夫君 この点は今後さらに続くことでございますので、特に強くただいまの御所信に従って進まれるように要望を申し上げておきます。首相の方におかれましても、宮内庁長官も今の私の説に御賛同願った線に従ってこの事柄を進めて参られるように特に要望を申し上げておきます。  天皇の御旅行に関します一般的な問題につきましては大体私は了承いたしました。ただ、今後も一段と人間天皇として、憲法第一条の規定するところの日本象徴日本国民統合象徴として、名実ともにその地位を主権の存する日本国民の総意に基くというこの憲法の精神のよって立つところに従いまして、特に政府はあやまちのないように期せられたいということを要望いたしておく次第であります。  ただここに天皇皇后陛下が四月岐阜愛知両県下に御旅行になるということを承わっておりますることは、先ほど申し上げた通りでございますが、たまたまこの御旅行お迎えする地元準備に関しまして、ただいま愛知県下におきましては、知事のとられましたところの措置の一部について、県議会の一部との間に相当深刻な論争を展開いたしておりまして、これが県民の関心を呼ぶところにまで発展をいたしておる事実があるのであります。事の起りは、去る三月六日の県議会におきまして、特に某議員が発言を求めまして、陛下名古屋における宿泊所がたまたま知事と直接深い関係のあるホテルに内定せられましたごとについて、名古屋には他にも同程度のホテルがありまするので、特にそのホテル推薦せられました理由を伺いたいという質問を行なったのであります。速記録によりまして、関係箇所を読みあげてみまするというと、知事は次のように答えたのであります。まず、「天皇日本国象徴であり、日本国民統合象徴でございまして、社会党がその改正に反対しておりまする憲法規定によって厳として天皇元首たる規定があるのでありますが」云々とまず述べたのであります。この「厳として天皇元首たる規定がある」ということは、わが国の憲法にはないことであります。一昨日岸総理大臣とわが党の岡田宗司君との間にいろいろとこの問題について御議論がございました。おそらく岸総理大臣としては憲法改正のときには、天皇象徴地位のままにおいて元首とお呼び申し上げたい、こういう御意向であるように私は伺いました。しかしそれは憲法改正上、岸総理の個人の御意向に沿って改正をせられたあとにおいてそういうことになるのでありまして、今日はいささかもそういう状態にはないのであります。しかるにこういうことがはっきりと言われておるということが問題だろうと思いますが、そういう答弁をせられました。そうしてそのあとにさらに言葉を継いで、「今回の行幸の宿泊所丸栄ホテルに選びましたのは、これは天皇のお考えであり、天皇の御意思であります。またそのお考えなり御意思を終始拝しておりまする宮内庁の御決定によるものでございまして、私が推薦をいたしたというような事実はあなたがどこで聞いたか知りませんが、そんなことは捏造に過ぎないのであります。私が推薦した事実は絶対にございません。」、こういう工合に断定しておられるのであります。そこで地元選出国会議員を介しまして、直接、間接に宮内庁の御意向を質しましたところが、宮内庁長官、あるいは総務課長等のお言葉によりまするというと、天皇意思決定されたことはない、愛知県の方の推薦があって、内定しているのであるということが明らかになったのであります。そこで知事がみずからの責任を天皇陛下の名を借りて避けようとする行為であるというので問題になりまして、この紛争が地元新聞等を通じて、一般県民の周知するところにただいまなっておるのであります。こういうことにつきまして、これは速記録でございまするから、そういうことは事実でありまして、すでに宮内庁長官はよく御承知のことであります。総理もおそらく御承知になっておると思いますから、御所信をお述べ願いたいと思うのであります。
  20. 岸信介

    国務大臣岸信介君) この御旅行の際の御宿泊所につきましては、先ほど宮内庁長官答弁にもありましたように、地元からこの日程、御宿泊等のことについては、大体地元事情に詳しい、その土地の地方公共団体首脳部から大体の草案といいますか、考え宮内庁の方に申し述べて、宮内庁の方で差しつかえない限りそれを認められるということになっておるように伺うのであります。従いまして今の事態は、私は詳しいことは承知いたしておりませんけれども今栗山君のお読み上げになったような事実があるとすると、きわめて遺憾なことでありまして、そういうことはありのままに事実を知事は明らかにすべきものであって、大へん遺憾なことだと思っております。
  21. 宇佐美毅

    説明員宇佐美毅君) ただいまの四月に岐阜愛知お出ましの際の宿につきましてでございますが、これは愛知県に、岐阜県の植樹祭の帰りにお寄りになるということは、昨年の夏ぐらいからいろいろお話しが出ておったことでありまして、そのとき知事と私の話しで、前回名古屋おいでになりましたときに、市の郊外と申しますか、ある日本宿にお泊りになるのではないかということで、それがいいのではないかということの知事の申し出がありました。しかし岐阜の方の宿がずっと日本宿でございますために、それからそれが名古屋の方のは郊外にありますために、時間的によけいかかりますので、ホテルにしてほしいということを私は申したのでございます。それで知事とその後いろいろごらんになる箇所とか、いろいろ事務的に打ち合せておりますときに、ホテルが、御指摘のホテルという、書類で打ち合せになって進んで参ってきたわけでございます。それは、でございますから、宮内庁でその具体的なホテルを指定したこともございませんが、知事がこれでなければ困ると言って申し出られたこともないわけで、そういうような事実、話しの進行で、現在きまったのは事実でございます。明らかに事実だけを申し述べて御了解を得ておきたいと思います。
  22. 栗山良夫

    栗山良夫君 この問題につきまして、多くお尋ねをしようと思いませんが、問題は天皇の御意思、またその御意思をそんたくして宮内庁の方において決定をせられたものである、県の方はあずかり知らぬことである。こういり工合に県知事が断定をし、開き直ったわけです。速記録はもうあと読みませんけれども、これを裏づけするところの非常に強い言葉あとに続いておるのでございます。それを私きょうは読み上げませんが、そういう状態にあったかどうかということがこれは問題なんでありまして、この点をもう少し明確にしていただきたいと思います。
  23. 宇佐美毅

    説明員宇佐美毅君) お答えいたします。地方お出ましの際に、陛下御自身で宿屋をどこだということを仰せになることはまずないことだと思います。どういうふうに知事仰せられておるか、今速記録をお読みになったのでございますけれども、どういう御趣旨かよくわかりませんが、前回に申し述べましたような経過を経て具体的な今予定されておるホテルにきまったわけでございます。きまった状態においては宮内庁意思であるということはございましょうが、過去における昨年以来の話はただいま申し上げた通りでございます。
  24. 栗山良夫

    栗山良夫君 県側から推薦があったわけですね。
  25. 宇佐美毅

    説明員宇佐美毅君) 推薦という言葉でございますけれども、今申しました通りに県の方では初め日本宿推薦がございました。それをこちらはホテルにしてほしい、どのホテルにするかということは打ち合せが事務的に進んでいるうちに、具体的の現在の候補のホテルが出て参ったわけでございます。われわれはそれを承認したという形でございます。
  26. 栗山良夫

    栗山良夫君 警察庁長官がお見えになっておるそうですから、先ほどの私の質問に対しまして御答弁を願いたい。——委員長もう一度言いますか。
  27. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) もう一ぺんちょっと……。
  28. 栗山良夫

    栗山良夫君 先ほど天皇地方旅行につきまして御警備を申し上げる点に関しまして首相に、私の所信、私の考えを述べて、所信お尋ねいたしましたところが、終戦直後はきわめて簡素でございましたが、ああいう状態が好ましいのである、こういうことでございました。私は年が進むに従ってますます警備が堅固になり、そうしてせっかく国民の中へ溶け込もうという御努力をなさっておるであろうと拝察できる天皇を、かえって遠ざけられるような現象になっておりますことについては、どうも当を得ないのではないか、これは天皇の御意思ではなくて途中でいろいろと計画を立てられる警察庁当局にその責任があるのではないか。従って警察庁当局がどうしてそういう態度をおとりになっているのか、これをお尋ねすると同時に、今後そういうことをあらためられる御用意があるかどうかこれを一つ伺いたいと思うのであります。
  29. 石井榮三

    政府委員(石井榮三君) お答えいたします。警察の警備の根本方針と申しますか、心がまえと申しますか、そういうことは私どもこういうふうに考えておるのでございます。陛下並びに皇族の御身辺の御安泰を確保する、こういうことと同時に、歓送迎等に出ます国民の雑踏等による事故を防止する、これが警察の警衛の根本主眼点でございます。皇室と国民との間の親和を阻害するというようなことがあってはならないのでありまして、先ほど申しました二つの目的をかなえるために、できるだけ効率的な警察配置ということを念頭におきまして、今申します通り国民と皇室との間の親和を阻害することのないように、あくまで慎重に考慮をして、具体的な警衛計画を樹立し実行する、こういう建前でそれぞれの現地の実情に即した警備計画を立て、また実施をする、こういうふうに私どもとしましては第一線に指示をいたしておるのでございます。過去のいろいろな事例に徴しまして、あるいは所によって若干の行き過ぎの感があるのではないかといったようなことも、私ども過去の経験において一、二反省すべき点もあるかと思うのでございますが、今後はそうした過去の実例に徴しまして、改むべき点は改めまして、先ほど申しました警衛の根本方針に合致するようなやり方で、今後とも第一線を指導して参りたい、かように考えておるのでございます。
  30. 栗山良夫

    栗山良夫君 基本的な、ただいまあなたのお述べになりました方針については、これはだれも異議がないと思います。ただ、そういう方針でおそらく終戦直後からおやりになっておったと思うのであります。終戦直後は、当時世の中が大へん騒然としておりまして、ただいまのようなこういう安定した状態ではなかったかと思うのであります。そのときの方が同じ基本方針で参りましても、きわめてゆるやかな御警備で済んだものが、社会情勢が落ちついてくればくるほど、ますますきびしくしなければならぬ。そういう根拠というものは、一体どこに求めておいでになるのか。警察庁はどこに求めておいでになるのか。これを私はもう少し明快に伺いたいと思います。あなたのお述べになった基本方針はしごくごもっともでありますから、それは了承いたします。しかし現実におやりになっておることは、終戦後の年度を追って考えてみまするというと、だいぶん逆行しておるように思いますので、それを私はお尋ねしておるわけであります。
  31. 石井榮三

    政府委員(石井榮三君) お答えいたします。基本方針につきましては御了承いただいておるのでございますが、それに合致するように第一線において極力やらしておるのでございますが、先ほど申しました通り、あるいは若干の行き過ぎがあったというような事例がありますならば、そういう点は私ども反省いたしまして、今後ともそういうことのないようにいたしたいと思うのでございます。終戦直後と最近とにおいて著しい差があるような御意見のようにも拝聴いたしましたが、私ども必ずしもそうではないのではないかというふうに思っております。と同時に最近に至りまして、国民の皇室に対する親愛の感じが非常に盛り上って参ったと申しますか、そういった関係で、歓送迎に出られる国民方々の数が非常に多くなった。そういうことから、いわゆる雑踏による事故の起る危険性も多くなって参る。従ってそれに必要な事故防止のための警察官の配置というものを考えなくてはならない。こういうことから、あるいは外見上警察官の配置が終戦直後当時と比べると、最近やや分厚になっているのではないかという感じを与えることも、あるいは最近の事例であったかと思うのでありますが、それはあくまで雑踏等による事故の防止をはかるという警衛の基本目標のために、そうせざるを得ないという実情にあることを御了承を願いたいと存じます。
  32. 栗山良夫

    栗山良夫君 私は、先ほど天皇の御旅行関係いたしまして、具体的な事例として名古屋の問題を提起いたしたのでございますが、この問題につきましては、岸総理もみずから遺憾なことであるという意味の所信の表明をいただきました。また宮内庁長官の方も、この知事のとられた態度につきましては、宮内庁考えとは違うのである、こういう意味のこともいただきましたのでございますが、私自身といたしましても、まことに遺憾なことだと思うのであります。できますならば、この委員会におきましてさらに突っ込んで追及をいたしたいと思うのでございますが、実はごく近々入りました地元からの情報によりまするというと、    〔委員長退席、理事左藤義詮君着席〕  地元関係者の間においてようやくこういう事態を招き起しました、事の重大性について認識を深めました。そうしてこのいき違いを円満に収拾しようというところの熱心な動きが起きておるように承知をいたしたのでございます。私も愛知県民の一人でございまして、せっかく陛下を県下にお迎えするのでございまするから、愛知県民ひとしく心から御歓迎をいたすべきことでありますし、またそうでなければならぬと考えるわけであります。従いまして幸いに本日は政府宮内庁の御意向のあるところも正式に明らかになりましたから、必ずや地元等におきましても、関係者の善処によりまして問題は円満に解決いたすのではないかと信じておるわけであります。従いまして、私はこの質問は本日はこの程度にとどめたいと存ずるわけであります。ただ地元におきまして、さらにもし万が一にも問題の解決が長びいたり、または紛糾するような情勢に立ち至りましたときには、ふたたびこの問題を取り上げることを私は用意をいたしておりますので、この点は申し添えておく次第であります。  その次に、これは首相並びに大蔵大臣に一千億減税の問題についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。こんどの予算のうたい文旬は一千億拡大、一千億減税ということでありまして、池田大蔵大臣得意の場面のように承わっておるわけであります。詳細な点につきましては、次の機会に譲るといたしまして、あるいは本委員会の一般質問、また大蔵委員を私はいたしておりまするので、大蔵委員会においてお尋ねをいたしたいと思いますが、その大綱についてきょうはただしておきたいと思います。  このたびの一千億の減税は、その実態を熟知していないところの一般国民には、そよ風に触れるような、何となくこころよい印象を漠然と起させていると思うのであります。長年重税に苦しみ抜いて参りました国民といたしまして、まことに無理からぬことであると思います。ところがこの一千億減税の内容をよく調べてみまするというと、この状態では実施後において国民に非常な失望を与え、また政治への不信を高めるということになるのではないか。従って一千億減税が持っておりまするところの真実の姿というものを委員会を通じて明らかにしておく必要があるのではないか、こう私は考えるからであります。  まず、問題点はいろいろありますが、私は細部のことは先ほどもお断りをいたしましたように、詳細に検討するのは他日の機械に譲りたいと思っておりますから、数字の若干ラウンド・アップいたしておりまする点その他は一つ御了承いただいて御答弁を願いたいと思うのであります。  まず第一に、大蔵大臣にお伺いいたしたいのは、このたび減税措置に対しまして、全然所得税の減税の利益にあずからない、いわば低所得者であります。所得税の納税限界まで参らない、そういう国民層というものは一体全体のどれくらいに当っているか。その数字をお示し願いたいと思うのであります。
  33. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) ただいま大体の所得税の納税者は一千万人前後と見ておるのであります。しこうして今回の減税によりまして八、九十万人の人が免税点以下にあると考えております。これは家族もおりましょうし、世帯主と思われるわけでありますから、直接減税の恩典に浴される人は、やはり世帯主が減税になると家族の方も恩恵を受けますので、大体二千五百万人、あるいは三千万人ということになるかと思います。
  34. 栗山良夫

    栗山良夫君 三千万人というのは、日本の人口を九千三十万人ですか、その程度に考えて三千万人、こういう意味でございますか。
  35. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 同一家族でも二人納税者もございますし、また一人の場合もありますから、家族を入れましての正確な数字は調査いたしておりません。大体のところ二千数百万人あるいは三千万人に達するのではないかと思います。
  36. 栗山良夫

    栗山良夫君 これは正確な数字を捕捉することはとうてい困難なことでございましょうが、私が持っておりまする数字を申し上げまするが、これは大したあやまちは私はないと思いまするが、一度大蔵省のお持ちになっておる数字と照合していただいて、間違っておれば間違っておると、大体よろしいならばよろしいと、こういうことをお知らせ願いたいと思います。  これは二つの見方がありますが、一つは、わが国の就労人口は大体四千四百万人、世帯数で申しますと千八百万世帯、そのうちで税の納税者は一千三十五万人、これは大蔵大臣がおっしゃった数字と同じであります。世帯数にいたしまして千三十五万世帯、こう計算しておるわけであります。低所得者といたしまして全然納税をしていない人、納税の力のない人は、これにつきまして人口におきますと七六・五%、世帯数で申しますと四二・五%、これだけの人が税金に直接関係のない、税金を納めるところまで所得のない人である、こういうふうな統計が一つあるのであります。それからもう一つの方は、給与所得者と申告所得者と見まして、これは農業も全部入れてでありますが、給与所得者の方は納税者が八百五十万人程度、申告所得の方が百九十万程度、で、扶養家族を、給与所得者の方が一・七、申告所得者の方が四・二ぐらいに見ますると、双方合せて千四百七十万、九百六十万を入れて二千四百三十万、総人口が九千三十万といたしますると、差引低所得者というものは六千六百万人見当になる。こういう私は計算を持っておるのでありますが、この数字というものは大体一つの目安として間違いのないものである、こういう工合にみてもよろしいかどうか、それを伺いたいと思います。
  37. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 大体その数字でいいと思います。
  38. 栗山良夫

    栗山良夫君 そうしますると、ここから出て参りまする結論は、一千億減税、国民に大幅の減税を行なってやるのである、こういうふれ込みでありまするけれども、九千万人の日本国民のうちで少くとも六千六百万人程度の人人は全然この恩典と申しますか、減税の利益の線外にある、こういうことが明瞭になったと思うのであります。そして、しかもこういうことを申しますと、大蔵大臣は、すでに御答弁になっておりますが、いやいや、こういう諸君においては社会保障費を九十一億円も増してやって、これによって穴埋めをしておると、こうおっしゃるようでございまするが、九十一億円の増額になりますと、社会保障費で果して吸収できるかどうかというところが問題であります。たとえば国鉄運賃の値上りだけでも三百六十五億を予定しておるのでありまするから、従って今の比率で所得税を納める力のない人々が、この運賃の値上りをどれだけ負担するのかと申しますと、まず七〇%の負担と考えましても二百五十億ないし六十億の程度を負担するわけでありまするから、社会保障費に九十一億付け増ししていただいたところで、運賃の値上りによって二百五十億吸収せられますならば、これは持ち込みになるわけで、減税の看板のもとにおいてこれを加重に負担することになる。なおこのほかガソリンその他の問題がありまするから、これは全くの、国民のうちの三分の二をこえる人々は減税の恩典にはいささかの関係もない。かえって家計の負担は増加するということが明瞭にこれは出ておるものである。この点は大蔵大臣もお認めになっておりまするから、さらに続けて参りたいと思います。  その次に、第二番目といたしまして、今度は納税をする力を持っている方であります。所得税の納税能力を持っている方の階層につきまして、年収五十万円をこえる人が何人ある、そうして五十万円をこえる人の減税額はどれだけになる。五十万円以下の所得の人は何人いる、そうしてその五十万にならない、以下の人の軽減するところの税額はどれだけを予定されているか、その絶対値をお聞かせをいただきたいと思うのであります。
  39. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 初めの御質問の減税を受ける方が非常に少い、そうして減税に関係のない方が六割近くある、こういうお話でございまするが、これは今の税法上非常に所得税が実質的に高いし、また各国の例に比べましても非常に高過ぎますので、是正をして国民経済の発展に寄与しようといたしているのであります。鉄道運賃の値上げ等につきましては、これは国鉄自体の問題でございまして、輸送の強化をはかるためにやむを得ない措置だと考えているのであります。で、私は別個の問題として一応考えて、しかもこの鉄道運賃値上げが一般家計に及ぼす影響等につきましても、検討を加えましたが、この際やむを得ないのではないかと考えているのであります。  次の一千万人近い納税者のうちで、五十万円以上の納税者の数と、五十万円以下の数につきましては、私、正確な数字を持っておりませんが、思うに、五十万円以下の人が九割ぐらいになると思います。それから五十万円以上の人は一割程度じゃないか。これははっきりした数字は覚えておりませんけれども、大体そういうことになるのではないかと思います。従いまして今度の九割の人の減税額と五十万円以上の一割ぐらいの人の減税額につきましては、正確な数字を持っておりませんが、多分上の方が、五十万円以上の人の減税額が多くなると思っております。
  40. 栗山良夫

    栗山良夫君 それではこの点も私が大体調べました数字を申し上げますから、これが一つの目安として間違っていないかどうか、一つチェックをお願いいたしたいと思います。  大体年所得五十万円以上の人員は、ただいま一〇%とおっしゃいましたが七%ぐらいではないか。五十万円以上の所得の人員は全体の七%、五十万円以下は従いまして九三%、そうして減税をしまする額は、これは自然増収も入ってでありましょうが、一千億とみなして三百億程度、それから五十万円をこえる所得者に対する人員は今申しました七%であって、しかも減税額は七百億、こういう比率に私はなっているように思うのであります。さらに別の計算でやりますと、たとえば夫婦と子供三人月収二万五千円の家族でありますと、税金の軽減率の方は四九・九%軽減をするのでありますが、絶対値としての税金軽減額はどのくらいかと申しますと、三千二百円であります。ところが同じ夫婦と子供三人の家族でも、年所得二百万円、六、七倍の収入のある人でありますと軽減率は三〇%、率は非常に下ります。ところが絶対額は二十一万六千五百円減るのであります。従って二万五千円の収入の家族のちょうど六、七分の一。こういう工合に減少があるところへ持って参っておりますから、従って人員が七%でありましても非常な減税を五十万円以上の所得者に与えると、こういうことになるのでありまして、これこそまさに上に厚く下に薄い。こういう減税政策であるということを数字が示していると思いますが、御所信はいかがでありますか。
  41. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) ただいま手に資料が入りまして申し上げまするが、昭和三十二年度の計算におきましては、五十万円以上の所得者の数は全納税者の一二・四%を占め、かつこれに対する減税額は三十二年分の課税額で見れば四百三十六億円でございます。五十万円以下の所得者に対する減税額は四百九十億円であるのであります。初めのお答えよりも違いましたのは、五十万円以上の人が少し多いのではないかと言っておりましたが、これは四百三十六億円の減税で、五十万円以下の人が四百九十億円の減税に相なっております。納税者は一割と申しましたが、一割二分四厘でございます。
  42. 栗山良夫

    栗山良夫君 その減税額はどれを基礎におとりになっておりますか。合計いたしますと一千億になります。
  43. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) この減税の計算は、昭和三十年度の実績を基礎といたしまして、三十一年度の伸び、三十二年度の所得の状況を勘案いたしまして、そして納税者を階級別にそれによって分けました。それで減税の計算をするのであります。
  44. 栗山良夫

    栗山良夫君 今かりに大蔵大臣がお述べになりました数字から類推いたしましても、五十万円以上の所得者に非常に手厚い減税が行われる。こういうことは数字でもう示しておることでありまするから、私はまあこれ以上この問題については申し上げません。  それから第三番目といたしまして、配当所得の問題であります。大蔵大臣は配当所得の控除については三〇%から、税法の二十五%のワクをさらに下げて二〇%まで下げておる。配当には非常にきびしくやっている、こういう工合におっしゃっておりますが、その通りでございますか。
  45. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 先ほどの五十万円以上の方の減税の税額が非常に多いとおっしゃる、これはやむを得ぬことでございまして、たくさん税金を納めている人は割合が少うございますが、減税金額が多いということはこれはやむを得ぬことでございまして、税法上私は当然なことだと思います。ただ減税の割合をどうするかということになりますると、やはり低所得者の方の減税割合を多くするのが、これは実際に合うことであり、われわれの理想としておるところでありまして、減税の割合は低所得者の方を多くいたしておるのであります。  なお次の配当、個人に総合課税いたします場合の控除の問題でございまするが、これは従来、昔は四〇%にいたしておったのであります。それは源泉の一〇%と総合の三〇%合せて四〇%でございます。それを現在は三五%に相なっておるのであります。税制調査会におきましては、この率を踏襲していこうという答申でございましたが、私はだんだんこの配当控除は少くしていくのが実際の負担からいっていいのではないかというので、税制調査会の答申よりももう五%控除を少くして、負担を重くする方面に進んだのでございます。
  46. 栗山良夫

    栗山良夫君 大体そういうふうにすでに御説明になったことも私聞いておるのでありますが、実はこの点は非常に重大でありまして、利子所得が免税になっております。一年以上のものが免税になっておりますると同時に、配当所得は一応控除額は引き下げられたような格好になっておりまするけれども、配当所得だけで生活をしておる夫婦と子供三人の家族を見ますると、現行におきましては百二十二万円まで全然税金がかからないのであります。百二十二万円まで全然税金がかからない。ところが今度は配当所得を二〇%に下げても、なおかつ所得税率が下ったために百四十九万円まで税金がかからないのです。完全な不労所得であります。勤労しない人であります。その人が百四十九万円までは税金がかからない。こういうことが果して私は税の公平の理論からいって許されるかどうか、ということを私は非常におそれるのであります。特にこれは非常な盲点でありまして、私が先ほど、国民に真実を伝えなければならぬ、この議場を通じて真実を伝えなければならぬと申しましたのは、このことであります。たとえば私は今手元に持っておりますが、「投資のしおり」という株屋が金を集める材料であります。これはあなたのところにも行っておる。これにはこう書いてあります。「この減税とは逆に株式の配当控除率は三割から二割に削られるごとになった。これは税額からの控除なので、一割減っても株主にとっては大問題である」点々が打ってクェッション・マークがついておる。これは注意を喚起するのであります。「だが」と「だが」がついておる。「だが御安心あれ、控除率は下ったが所得税率も下ったので、実質的にはむしろ前よりも有利なのである。極端な例をとると、従来夫婦と子供三人の五人家族の御家庭で配当所得のみ年に百二十二万円あった人は所得税を取られなかった。ところが今度の改正では百四十九万円まで所得税がかからないことになっております。」どうぞ株を買って下さいとは書いてありませんが、その意思であります。こういうことが事実あるということを大蔵大臣からこれは言明を一つこの席でしておいていただきたい。その通りだということをおっしゃっていただきたいと思います。
  47. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 御承知通り、株式の配当に対しまして所得税をどういうふうにかけるかということは多年の問題として検討されておったのであります。ずっと昔は、株式の配当に対しましては個人の所得税を課税いたしませんでした。それはなぜかと申しますと、法人というものは擬制であって、個人の出資によって経済行為を営んでおる。それは即個人であると、こういうので、法人の方に課税しておるのであるから、個人の方には課税しないという、こういう考え方で明治から大正に来ておったのであります。しかるところ大正八年に原内閣のときに六割を課税する、配当所得については六割までは課税する、こういうことに大正八年に改まった。その後だんだん法人実在説、法人と個人とは別個の存在である、だから法人に課税すると同時に配当に対しては八割を課税しろ、あるいは全額課税しろというところまで来たのであります。    〔理事左藤義詮君退席、委員長着席〕  しかしその場合には株式を得るに必要な借金利子は引こう、こういうことに変って参りました。しかるところ終戦後におきましてシャウプ博士が来まして日本の税制を検討して、また昔の擬制説に返って、法人で四二%かけるのだから、配当についてはその四二%と大体見合うような四〇%を控除しろ、こういうことに相なったのであります。しかしそれをずっとやって参りますると、今お話のようにある人は一千万円の配当を持っておっても税金が非常に少い。ことに地方において所得税割でやる場合においては、大へんな所得者が住民税を納めないでも済むというような例もございます。そういう事例をためるために、税制調査会におきましては一千万円を越える人については、四〇%あるいは三五%控除を一〇%にとどめよう、こういう税制調査会は一千万円以上の人だけについて措置せよという答申であったのでありますが、私は大蔵大臣になりまして検討を加えました結果、従来は私の見るところでは八十万円をこえるときに五%、これを税率を低くしたために、二百万円をこえる人に初めてかかるということに相なりますので、この際やはり配当控除は徐々に減らしていったらいいじゃないか。こういうことで税制調査会の答申はありましたけれども、それよりもきつく五%下げることにいたしたのであります。従いまして今の状態といたしましては、あなたのおっしゃる通りに配当所得だけであればそういう金額に相なります。しかしこの問題は先ほどから申し上げましたように沿革のあることでございます。私はだんだん配当控除を少くしていくのが筋である、こういうので税制調査会の答申よりも低く、控除を少くして、そして徐々に負担の実質的権衡をとっていこう、そうして法人擬制説という建前でいったシャウプ税制をだんだん変えていこう、こういうことにいたしておるのでございます。しかしこの法人擬制説は各国におきまして相当やっておりまして、控除割合の一番多いのはイギリス、少いのがドイツでございます。アメリカはその中間をとっておりまするが、今の日本の控除の分はまだイギリスよりもちょっと控除が多いぐらいでございます。これは法人の擬制説について再検討を加え、徐々に実際の負担の公平を考えていくべきではないか、こう思っておるのでございます。
  48. 栗山良夫

    栗山良夫君 まあ結局将来に問題は預けられましたが、理屈はどうありましょうとも現実はそういう状態であります。従って大会社の役員の皆さん等がこういう状態でありまするから株式をどんどん取得いたしまして、そしていわば税金を大いにのがれるということもできるわけでありまするから、こういう道をぜひとも早く塞いでいただきたい。これを強く要望いたしておきます。  それからその次の問題といたしましては租税上の特別措置の問題であります。この問題は大蔵省の資料を見ますると初年度には二百億円、平年度には三百五十億円ばかりを今度は特別措置をはずすのだ、こういう工合におっしゃっております。しかし特別措置で今どの程度の税の軽減が行われておりますかと申しますると、税制調査会の答申書を見ますと、これは七十一ページにございますが、締めて「千九百億円程度の法人税の減収があったこととなる。」と、こう書いてあります。従ってこれは特別措置をやめればこれだけ入ってくるということであります。そういうゆとりがあるにかかわらず、わずか二百億あるいは三百五十億にとめられたということは、きのうの私どもの佐多議員が資本蓄積と完全雇用の問題でだいぶ論争をいたしましたけれども、こういう点から非常に片手落ちではないか、余りにも資本を大事にし過ぎられるのではないか、こういうことを私は痛感せざるを得ないのでございます。こういう特別措置が行われましたそもそもの由来は、終戦日本産業が荒廃の中から自力では立ち上れない、あらゆる援助を国がしよう、そういう思いやりの中からこれは出ておるのであります。すでにきのう宇田経企長官が述べられたように、わが国の経済拡大の達成率は昭和三十五年度の目標にもうすでに今日達しておる、こういう工合の大みえを切られたのであります。そこまで日本の資本蓄積が進み経済力が拡大しておるならば、何を好んでこういう租税上の特別措置を行わなければならないか。こういうものは一挙に私は廃止すべきである、こういう工合考えるのであります。これは私の意見でありますが、要するにそういう状態であるにかかわらず、あえてこの程度にとどめられたということは、減税をやめるべきものをやめられなかった、こういう資本に対して非常に忠実にやっておいでになる、こういうことなのであります。この点につきましての御所信を一つ伺いたいと思います。
  49. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 今の特別租税措置法を全部廃止した場合におきまして、これは見方が二つあるのでございます。千九百億円の増収ということは、この今まで免税で蓄積されておりました分までも一回にかけてとってしまうという場合におきましては千九百億円になる。しかしその分は別にいたして、これからやる分についてどのくらい減税になるかという計算をいたしますと、千億円程度に相なるのであります。しこうしてこの制度を設けましたのはこれは敗戦後ではございませんで、ずっと以前からいろいろな観点から租税措置をやっておるのであります。これは日本ばかりではございません。その国の経済事情によってずっとやっているわけであります。これは産業の保護あるいは特別の経済施策に基くものでございますから、だんだん日本の経済が強くなってくるに従いまして、徐々にこれはやめられるものはやめるべきだ、こういう考え方で税制調査会の答申を得まして、本年初年度二百億円、平年度三百五十億円の減税を少くすること、すなわち増収をはかったわけでございます。今後におきましてもこの問題は常に検討を加えていかなければならんと思います。従いまして新しい助成すべき産業につきましては、これは将来考えなければなりません。たとえば今問題になっております人造ゴムとか、あるいは石油化学の問題につきましていろいろ議論がございます。こういう点につきましては新たに検討を加えなければならん面も出てきましょうが、あとの分につきましては常にこれを再検討いたしまして、増収をはかるようにいたしたいと思います。
  50. 栗山良夫

    栗山良夫君 いろいろお尋ねいたしましたが、要するに私が最初心配しておった通りの減税体系になっておるということが明白になりました。要するに仁徳減税と申されますが、あの当時は仁徳減税によって民のかまどはにぎわいにけり、こういうことでありました。ところが今度の池田減税はお屋敷のかまどはにぎわいにけり、こういうことになるやに私は憂慮いたす次第でありまして、今後一そう低所得者の減税、生活の安定ということに税制を通じて努力せられるように強く要望をいたしておきます。  それからその次に私は春季闘争の問題につきまして、首相の御説明をお願いいたしたいと思うわけであります。実は昨日一番困難であろうと言われておりました炭労の争議が、労使双方の理解ある態度によって円満に解決いたしましたことは、まことに御同慶にたえないところであります。労使の間のよき慣行を作り、そして労使関係の安定をはかりたいというので、常に行政をしておられる政府当局が、その政府機関の職員との間のトラブルというものが、今日までなおかつ解決していない、解決の見通しすらないということにつきましては、はなはだ私は遺憾に思うのであります。特に私は首相お尋ねをいたしたいのでございますが、一昨日の当委員会における論戦でも明らかになりましたように、すでに組合側は調停案をのんでおるのであります。もう碁盤の上には石を全官公労の諸君が置いておるのであります。次にお置きになるのは政府であります。政府がお置きにならなければ次の石はいくら公務員側が打とうと思っても打てないのであります。これは専門語では持ち時間というものがございますが、政府の方にはそういうものはございません。野放しでこれはいつまでも問題を引き延していかれるということにつきましては、はなはだ私は理解に苦しむものであります。特に私は政治的な責任を追求するわけではないのでありますが、去る三月十一日にこの委員会でこの問題が追求されたときに、岸総理といたしましては何とか善処したいということをおっしゃったのでありますけれども、その後一向に善処その他が出ておりません。特に問題になりますることは、十一日に社会党の首脳部と岸さんとはお会いになりまして、十二日中には仲裁裁定の申請をしたいと、すると、こういうお約束が大体できたやに私どもは新聞紙上を通じて伺っております。この会談におきましては、たとえば最後の給与の増額の問題についての原資等については、企業実績の上昇によってまかなうということまで含みのあるお話し合いがあって、そうして五現業の方は十二日中に必ずやると、三公社の方はおそらく十二日中にやるであろうと、そういう見通しであるというようなところまでもお述べになってお別れになっておるということを聞いておるのであります。ところが一向にそういう事態に進展しておらないのは一体どういうわけか。けさの新聞によりますと、三公社五現業の労働組合の方におきましては、政府の態度がはなはだ不誠意であるとして、十九日に行われますところの第四波の前に、十六日には第四波と同じものをもう一度行いまして、政府に対して警告を促すということを聞いておるのでありますが、事態はきわめて重大であります。岸総理大臣がこういう重大な事態に対して早急に誠意をもってこれに当るという御信念があられるかどうか。これを誠意をもってお答えを願いたいと思うのであります。そういう緊迫感をお持ちになっておるのか、これをお尋ねいたしたいと思うのであります。(「総理々々」と呼ぶ者あり)総理に聞いているのだ。
  51. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今度の春季闘争の問題につきましては、私ども事態がこういうふうになったことについて大へん遺憾に考えております。今お話の三公社五現業の問題につきましては、調停が出て労働組合側においてはこれを受諾するという意思が述べられております。ただ現業の関係に対する政府の態度、また三公社に対する態度といたしましては、出ております調停案そのものの内容及びその基礎等に関しまして、これを検討してみますると、きわめてわれわれとしてはこれについて納得ができないのであります。政府としてはもちろん先ほどから議論がありますように、国民からの租税によって支払うという場合においては、その根拠がきわめて明白であり、またそれが納得できる基礎のもとに立てられておるものでなければ支出すべき性格のものではない。そこで私どもはどうしてもこれは仲裁裁定を求めてその仲裁裁定が出ればわれわれ誠意をもってその裁定を尊重するということを申しておるのであります。しこうしてこの仲裁裁定を申請するについては、その理由につきまして、今申したように出ておる調停そのものの基礎がきわめてわれわれからいえば納得できない、その基礎も明瞭でないというような観点から、これを正確なる基礎に基き、われわれの納得しない理由というものを明確にして、仲裁裁定を求めることが当然でありまして、その理由は三公社五現業で必ずしも一様ではございません。しかし検討する方向、考え方としてはやはり大体同じ方向、及び同じような考え方でこれを検討する必要があることは言うを待たないのであります。これらのことについて正確なる打合せや資料をもちまして、その仲裁裁定を求める手続をなるべく早くするように、これを今督促しておるのであります。私はこの事態が起ります十一日の第三波の初日の実例を見まして、国民経済に及ぼす影響なり、あるいはああいう事態の国民生活に及ぼす影響がきわめて重大であることを考えて、一日も早くそういう事態がなくなるように政府も責任者として考えまして、社会党の首脳部の諸君ともお会いしたことは事実であります。しかし新聞に出ております事実は必ずしも正確ではございません。私自身の考えは何とかして十二日の事態もないようにしたいということを十一日において話をして、さらに進んで十九、二十日の第四波についてもこれを絶対になくするように努力することが必要である、こう考えまして社会党の首脳部の方のごあっせんも願ったわけであります。しかし今事態はそういうふうに政府として考えを持っておりまして、仲裁裁定をできるだけ今申すような点をはっきりして、できるだけ早くこれを申請をするという考えでおります。
  52. 栗山良夫

    栗山良夫君 そこで調停案をよくゆっくりと調べて、そしてそのあとで仲裁の申請をしたい、こういう御意思であるということは明らかになりましたが、これはやはりスピードの問題だと思うのです、スピードの問題。あなたはけさの新聞をお読みになりましたか、十六日には十九日の第四波と同程度の実力行使をやるということを決定しております。これは私はやはり避けなきゃならぬ、ここまで追い込んだのは十一日、十二日以後とられた政府の態度に責任があると思うのです。十二日にはもうすぐ出るようなこともおっしゃった。そういうような態度がありましたから組合の方といたしましても、安心したかどうか知りませんけれども、事態の解決には一歩前進を見たんだ、こういう気持で、どこへお打ちになるか、その次はどこへ打とうかというので待っておった、ところがいつまでたってもお打ちにならない、これは業を煮やすというか、いらいらしてくるのです。そうしてこういう事態になって参りましたが、この点についてはけさの「毎日」の社説をごらんになっても、政府はなぜ仲裁申請をしぶるかということをトップに掲げております。こういうことを尊重せられる必要があると思いますが、従って大へん強い言葉で申しましたけれども、仲裁はスピードを要します、緊迫感を持っておりますからスピードを要しまするが、いつお出しになるか、これを伺いたい、いつ仲裁の申請をお出しになる予定か。
  53. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今お答え申し上げましたように、私は事態をできるだけ早く解決しなければならないという観点に立っていますから、その方の関係者に対してはできるだけ早くこの仲裁裁定の申請に関する今のような資料を整えて、これを出せということを申しつけておるわけでありまして、今何日に出すということをここで私結論を持っておりませんから申し上げられませんけれども、私は決してこれに関してスピードを、いわゆる時の観念無視して漫然と考えておるわけではございません。(「責任は政府側にある」と呼ぶ者あり)
  54. 栗山良夫

    栗山良夫君 大へんくどいようでありますが、十六日というのはもう目睫に迫っておるわけでありますが、この十六日の実力行使に対しましてこれを回避し得るような事態を作り得るような、そういう腹がまえのもとに仲裁の申請をおやりになる御用意があるかどうか、これを確めておきたいと思います。あるいは政府は間に合わないから実力行使をやるならやれと、こういう御態度であるのか、これははなはだ無責任な態度であると思いますが、そういう態度であられるのかどうか、この点を明瞭にいたしておきたいと思います。
  55. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は今申し上げましたように、誠意をもってこの問題を早く解決したいというのが私の念願であります。従って仲裁裁定の申請に関しましても、先ほどお答え申し上げましたように私はできるだけ早く資料を整えまして、その他の手続を進行せしめていきたいと思います。十九日、二十日に予定されておった第四波と同様なものを十六日に繰り上げてやるというこの事態を私はきわめて重大視しておりますから、従って、今申すように、仲裁裁定の申請につきましては、なお一そうこれを督促して早くするように、できるだけの努力をしたいと思います。
  56. 栗山良夫

    栗山良夫君 仲裁裁定の申請のいたし方の問題でありますが、三公社五現業が全部出揃って、そして全部がきまらなければ申請ができない、すなわち、三公社五現業に対して一括申請をせられる、あるいはととのったものから順次申請をしていかれる、どういう御方針であられますか……。総理に聞いているのだ。
  57. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 私ども関係ですから……(「総理に聞いている」と呼ぶ者あり)
  58. 岸信介

    国務大臣岸信介君) ちょっとその、一括して必ず出さなければならぬとも、今、なんの点は私自身きめておりませんから、あるいは労働大臣の方からそれについてのお答えをしたら適当かと思います。
  59. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) お答えいたします。申請の方法に対しましては、先ほど、総理大臣からいろいろお話しのありましたように、調停の内容を十分に検討いたしまして、三公社五現業のうちのその調査のできたものから、一つ一つなるたけ早く申請をしたい、こういうふうに考えております。(「いつやるのだ」と呼ぶ者あり)
  60. 栗山良夫

    栗山良夫君 大へん労働大臣に失礼なことを言って、申し訳ありません。それでは、そういう工合に、できたものからおやりになるということであれば、現在のその進み工合からいって、どれが一番早く出せるか。その順序を一つお聞かせ願いたいと思います。
  61. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 順序ですか。
  62. 栗山良夫

    栗山良夫君 三公社五現業の順序です。仲裁申請をし得る……。
  63. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) いろいろ三公社五現業の方と連絡はいたしておりますけれども、どっちが早くできるか、まだ決定いたしておりません。できたものからやりたい、そういう考えでありますが、なるたけ早くできるように、努力するように、促進するように話しております。
  64. 栗山良夫

    栗山良夫君 労働大臣、あなたもここにおいでになりましたが、十一日にここで問題になったのですよ。あなたの御意思あるいは総理の御意思は、調停はとても問題にならない、仲裁でいきたい、こういう御意思を十一日に御表明になりました。それで、調停を調査するのだということもおっしゃった。十一、十二、十三、十四、きょう十四日ですか。十六日まであと一日しかない。四日もかかって、そうしてまだ順序もきまらぬというのは、どういう怠慢ですか。(「何している」と呼ぶ者あり)どういう怠慢ですか。
  65. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 今、いろいろ御指摘になりましたけれども、また、調停の方も、この三公社四現業同じ金額であります。その仕事の内容は全然違っておる。しかし、今までの調停は、判決文とそれに相当した内容が十分書かれているのです。ところが、今度は二行しか書いていないのでありますから、それを一々検討して、納得のいくようになってから、それに対する仲裁を申請する(「その通りだ」と呼ぶ者あり)ということがほんとうだと思うのですよ。先ほど、総理もおっしゃったように、尊い国民の税金をもってやっておるものが、今、評判によれば、百五十億とか、百六十億だとかいう金額になるものを、いいかげんのことでわれわれはできないのです。でありますから、十分に検討してやるということが私の信念であります。
  66. 栗山良夫

    栗山良夫君 それは、労働大臣が幾ら元気に声を大きくしておっしゃっても、だれも納得できないのですよ。もっと大きな声をなさった方がいい。そんなことで……いいですか。問題にはやはり筋道というものがある。十一日のこの委員会において、十二日にはなんとか仲裁に出せるのじゃないか、そういうことまでもおっしゃっているのだから、そのときにその腹があって、十三、十四日ですよ。それは、どんなにあなたが声を大きくしておっしゃっても、これはだれも了解できないのです。あなた方がやはり何か意図を持って、仲裁を申請を延ばして、総理大臣はあのくらいきわめて誠実に真摯な態度でお答えになっている。ところが、その岸さんのもとにおける閣僚のあなたの態度は一体何ですか(笑声)それは、そういうことであるから、いたずらに問題が混迷してしまう。そうしてしかも、炭労のように、労働者があんなに早く解決するとは思わなかったでしょう。あれが一番最後に残るから、見ておれというような気持でいたのが、きれいに解決したじゃないですか。こういう状態です。従って私は、ここまでは小言を申しましたが、もう一ぺんよく考えられて、(「質問々々」と呼ぶ者あり)今するからちょっと待って……三公社五現業の中で、どれから一番出し得るか、これを一つ述べていただきたい。
  67. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) お答えいたします。声が大きくて、おしかりを得たのでありますが、先ほど、声を大きくしなければならないような原因もあったものでありますから(「原因を言いなさい。どういう原因か。」と呼ぶ者あり)それで、大きくしたのでありますけれども、今のお話では、それはどれから先にやるかということは、企業個々の考えがあるものですから、われわれは、促進するようには努力はいたしますけれども、企業個々の考えがあるわけですけれども、今の情勢から判断しますと、やはり国鉄、電々等が先に出るのではないかと予想されております。
  68. 栗山良夫

    栗山良夫君 この問題は、これ以上続けましても、おそらく今の労働大臣の御答弁を繰り返すにすぎないと思いますが、私は、ただ一つ、岸総理大臣の私に対して御答弁をいただいたその誠意というものを信頼したいと思います。あなたは、十六日の実力行使も避けたい、そのためには、あらゆる努力を惜しまんということをおっしゃったのでありますが、私は、その誠意を信頼したいと思いますから、どうか一つ、もう明日一日しかありません。明日一日に、これからまだ時間は相当ありまするから、全力をあげて、各関係機関を督励せられて、そして明日中には仲裁裁定が提出せられ、なおかつ、組合の方の円満な了解のもとに、十六日実力行使というものは回避できるように、全幅的な御努力を願いたい、こういう工合に思うのであります。  この間、この委員会で傍聴をしておりますというと、自民党の木村篤太郎君は、ずいぶん、私から申し上げまするならば、身勝手な御意見を述べられて、この争議を非難せられましたが、公労法ができ、あるいは公務員法ができましたときには、私もその当時にはこの委員会に参加しております。そうしていろいろ議論をいたしましたが、公務員並びに三公社五現業の基本的人権である労働権にワクをはめ、その代償として調停なり仲裁の制度を設けるのである。そんなに公務員や三公社五現業には御苦労をかけないというのが当時の約束であります。この約束が完全に従来じゅうりんせられてきている。この点は、戦争中の自分の政治的あるいは行政的な行為に対して深い反省を持って、民主主義の再建のために立たれるということを繰り返し述べられた岸首相は、よく一つ御理解をなされて、ぜひ善処をせられるように、切に私は要望しておきます。  次に、私は、国家機関の国費の乱費事件並びに公紀粛正の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。一昨日、同僚八木議員は、不始末が起きましたところの国家機関の職員の処分につきまして、処断につきまして、政府所信をただされました。これについては、総理大臣もはっきりと所信を表明せられておりまするが、私は、不始末が起きたあとに、いかに厳重なる処断をしてみたところで、これはあとの余りだと思います。やはりそういうことが起きないように、事前の防止策をこらなければならぬ。これをどうしてもやらなければならぬと思うのであります。従って、岸総理大臣は、こういう国費の乱費事件であるとか、綱紀粛正という問題につきまして、どういう御認識をお持ちになっておるか。会計検査院が、終戦後ずっと毎年、当国会にも、批難事項の報告書を寄せております。そういうものも十分御理解になっておるかどうか。どの程度のことが行われておるかということを御理解になっておるかどうか。そうして御理解になっておるとするならば、その御理解になっておる上に立たれて、御所信を承わりたいと思うのであります。
  69. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 公務員の綱紀粛正の問題につきましては、お話のように、できたあとの処分の問題よりも、一番大事なことは、こういうことを未然に防ぐことを考えることが一番大事であります。これにつきましては、私は、やはり公務員諸君の公僕としての考え、自分たちがその職務に対してほんとうにその意義を考えてやるという、公務員の一つの考え方の基礎なりあるいは道義が確立することを考えなければならぬことは言うを待ちませんが、制度の上からいえば、私は、行政機構の改革等において私が所信を申し述べましたように、やはりできるだけこれを簡素にして、そうして責任の所在を明確ならしめるようにすることが必要じゃないかと思います。  それからまた、補助金等の何も、これも国会において整理をするということになって、相当な整理も行われておりますが、ずいぶん綱紀粛正の問題に関しまして、そういう補助金等の関係が複雑になっており、あまりにいろいろなことに小さく分れ過ぎておるというような点につきましても、これは考えていかなければならないことであります。とにかく、制度の上から責任の所在を明確ならしめ、そうして人事の上においては、そういう責任の関係を明確ならしめていくことが、さっき申しました官吏の責任感なり、あるいは公僕としての職務に対する忠実な気持を起さしめるゆえんであろうと思うのであります。そうして一たび、そういうことをしましても、不幸にして事実が起るということになったら、やはりこれの責任を明確にただして、そうして将来を戒めて、そういうことに対する信賞必罰をはっきりさせて、将来の、公務員を戒めるということが必要であろう。こういうふうに考えておるのであります。
  70. 栗山良夫

    栗山良夫君 会計検査院の方からお見えになっておりまするから、昭和二十一年度から昭和三十年度までにおけるところの批難事項並びにその金額というものが毎年どの程度に上っておるか。この点、一つお示しをいただきたいと思います。
  71. 東谷傳次郎

    会計検査院長東谷傳次郎君) お答えいたします。  ここに、昭和二十一年度以降は、実は持っておりませんですが、調べればすぐわかりますが、二十六年度から申し上げます。  二十六年度が件数といたしまして千百九十八件で、批難金額が三十億になっております。二十七年度が千八百十三件でございまして、百二億ということになっております。二十八年度が少し多くなりまして、二千二百三十二件で百四十八億。二十九年度が二千二百四十六件で七十三億。三十年度が二千百八十五件で六十六億という金額に上っております。
  72. 栗山良夫

    栗山良夫君 この数字は、私ちょっと調べてみましたが、昭和二十一年度をベースにいたしますというと、二十六年度から三十年度の間は、件数において約十一倍になっております。二十五年度を基準にいたしまするというと、二十六年度から三十年度は大体二倍になっております。これは、世の中が落ちついておるにかかわらず、件数は非常にふえておる。こういう状態であることは、首相も一つよく御認識をしていただきたいと思います。  それから、会計検査院の方にお尋ねをいたしますのは、今、実際に検査をおやりになっておりますが、全体の業務量のうちで、どの程度今抜き検査をおやりになっておるか。この点を一つお聞かせいただきたいと思います。
  73. 東谷傳次郎

    会計検査院長東谷傳次郎君) お答えいたします。  御承知のように、会計検査院の検査は、各官庁、政府関係機関から書類を取りまして、書面による検査をいたしております。そうしてもう一つの方法といたしましては、実地に出ましてやる実地検査を執行いたしております。ただいま申しました書面検査は、全部について検査を執行いたしております。抜き検査はいたしておりません。実地検査になりますと、非常に検査箇所がたくさんの数に上っておりますし、職員その他出張旅費などの関係で、重要な箇所を指定いたしまして、検査をいたしております。そういう関係で、実地検査の方では、大体全般的に申しますと、一割程度を実地検査を執行しておる。重要な箇所につきましては、大体二割を検査をしておるという実態でございます。  ただ、御了承願っておきたいのは、重要な箇所の二割と申しまするか、最も重要な大きな箇所におきましては、これはもちろん、毎年一回ないし二回の実地検査を執行しておるのが実情でございます。
  74. 栗山良夫

    栗山良夫君 その書類は、全部検査院へ取って調査しておるとおっしゃいましたが、それは、役所の書類全部ですか。役所のその年度に扱いました書類の全部を取り寄せて、お調べになっておりまするのか、そのうちのある部分をお取りになっておるのか、この点をお聞かせいただきたいと思います。
  75. 東谷傳次郎

    会計検査院長東谷傳次郎君) お答えいたします。  役所の分につきましては、全部取っております。政府関係機関の公社とか、あるいは公団というのになりますると、一定の金額などを限りまして、書類をなるべく少く取るということで、全部の書類を取っておるという実情ではございません。
  76. 栗山良夫

    栗山良夫君 私は、これはよく突っ込んで調べ、研究をいたした結果でありません。ただばく然と、そういう工合の印象的な考えでありますが、ただいまの会計検査院の機構というものをもう少し再検討を加え、もっと拡充する必要があるのじゃないかということを私考えますが、この点については、直接日々御担当になってあられるあなたの率直な一つ御意見を伺いたい。  さらに、国費の冗費、乱費事件を未然に防止するためには、日常の体験からして、どういうことをやったならばよろしいか、お考えになっておる向きもあろうと思いますから、そういう点を一つお聞かせいただきたいと思います。
  77. 東谷傳次郎

    会計検査院長東谷傳次郎君) お答えいたします。  会計検査院の機構は、御承知のように、戦後著しく変革されたのでございます。そういたしまして、戦前といいますか、従来の会計検査院は、人数でいえば、約三百名内外の人数で検査をいたしております。それを終戦直後、会計経理の相当な紊乱した状態を眺めまして、政府のこれに同意を得まして、大体三倍余り——三倍ないし四倍、今千二百名で検査をいたしております。そういたしまして、ただいま検査部局は五局をもって検査をいたしております。いたしておりますが、御承知のように、私どもは、やはり検査の機構、人員は十分であるとは決して思っておらぬのでありまして、従来も人員の増加、機構の拡大を企てまして、いろいろ折衝をいたしました。一面においては、国会において、会計検査院の機能拡充という決議までいただいたような次第でありまして、一昨年までは四局でありましたのを、一昨年五局制に拡充いたしまして、同時に、人員も何がしか増加をいたしました。それでもなお、私どもは十分と思っておりませんので、昨年度は、人員の増加は差し控えたのでありまするが、質の向上ということを考えまして、実地検査を主として担当する者は、調査官の制度をしきまして、四百二十二名でありますが、調査官制度をしいて、一面においては、一昨年の機構の拡充と昨年度の調査官制度と相待ちまして、できるだけの検査をやっておるのでありまするが、それでもなお、人員は足らないと考えておりまするので、私どもは、やはり検査官会議を開きまして、先ほど申しましたように、全部の個所を実地検査をするというわけにいきませんから、実地検査の場合などは、特にどの個所とどの個所、どういう事項を調べるか、いわゆる重点事項と申しまするが、重点事項を査定いたしまして、少しの人数で、なるべく徹底して検査を執行するというふうに指導いたしておるのでございます。  なお、会計検査院として、年女歳々非常にたくさんの件数、金額の批難事項があるが、防止策を持っているかというようなお尋ねでありましたから申し上げます。会計検査院は、御承知のように、国あるいは政府関係機関の会計経理を監督し、適正を期し、是正をはかるというのが大眼目でございます。従いまして、会計検査院の検査というのは、やはり不正不当の事項を防止するというのがやはり眼目でありまして、でき得れば、これを絶無にしたいというのが主目的でございます。さような関係で、少し詳細に申し上げてよろしゅうございますか。
  78. 栗山良夫

    栗山良夫君 どうぞ。
  79. 東谷傳次郎

    会計検査院長東谷傳次郎君) さような主目的を実現するために、会計検査院といたしましては、従来、現在とも、機会あるごとに、全国の会計経理者の人を会計検査院に集めまして、主として夏季でありまするが、経理者としての心得、あるいは講習会などを開いて、その職員を直接に指導をいたしております。ときには、特に出張いたしまして、ブロックごとにそういう人たちを集めて、説明指導の任にも当っております。さらに、実地検査に参りましては、そのつど、関係者に集まっていただきまして、打ち合せ会を開催いたしまして、具体的に指導をいたしておるのであります。さらに、公共事業などにつきましては、先ほど、総理からもお話がございましたが、この公共事業、なかんずく補助工事につきましては、実は非常に会計検査院も苦慮いたしておったのであります。というのは、先ほども申し上げましたように、件数が非常に多くなっているのは、主として補助などの関係で、指摘事項、批難事項が多くなっているような実情でございまするが、会計検査をいたしておりますと、非常に補助の関係工合悪い。補助の関係で申しますと、二十八年度などは、百億に相当する減額を政府に迫ったのでありまするが、それは、従来どうも思わしくないというので、二十八年度におきましては、その当時少々問題になったのでありまするが、世間で、会計検査院が事前検査を始めたということまで仰せになったのでありまするが、それは、補助工事が非常に大きな、ことに災害などがありまして、非常に大きな補助工事があり、しかも、あまり経理がよろしくないというので、各省が査定をいたされますと、直ちに会計検査をいたしたのであります。従来は、査定が済んで、起工をいたしまして、相当工事が終りもしくは竣工した後に見ておったのでありますが、工事着手前、査定が終ると、直ちに会計検査をいたしたのであります。それを私ども早期検査と言っておりますが、世間では、これを事前検査というふうに仰せになっていますが、決していわゆる正確の意味における事前検査ではなくして、事後検査でありまするが、早期検査であります。さようなわけで、非常に公共事業の補助工事がよくない。そこで、会計検査院といたしましては、院法に従いまして、各省大臣に対して、これではいけないという改善意見を出したのであります。それは、大蔵、文部、厚生、農林、運輸、労働、建設の各省大臣に対しまして、どうも補助工事のよくないのは、非常に机上査定が多いからだ。実地に行って査定をしてもらいたいという意見、それから、地方財政のこともよく考慮してもらいたい。それから責任の明確化、どうも責任の所在が明らかでない点が多々ある。これらのことを指摘して、改善意見を各大臣に出したのであります。まあ、そういう関係もありますし、各省におかれましても非常に御努力になった関係で、二十九年度はやはり早期検査をいたしましたが、会計検査院で減額を迫りましたのは十五億でございますが、三十年度はさらに減りまして、五億ということになっておりまして、よほどよくなっておるように思われるのであります。  それからさらに、防止の対策といいますか、防止検査としては、会計検査院が批難をいたしますと、よく政府から、これは返納さすとか、あるいは手直しするという答弁がありますが、果して返納しておるのかどうか、手直しをしておるかどうかという検査をも実施することにいたしておるのでありますが、これは、やはり二十八年度から特にやったのでありますが、成績はあまりよくありません。手直ししたという答弁があり、返納したという答弁がありましても、全部が全部そういうふうにはなっていないように見受けられます。しかしながら、これも非常によくなっております。(「あまりよくないというのに非常によくなっているというのはおかしい」と呼ぶ者あり)相当によくなっているということです。(「ごまかしていたということだな」「あなたがんばりなさい」と呼ぶ者あり)さらに、御承知通り、年度末になりますと、非常に支出が多くなり、多くなれば、従って不経済な事項も多いのでありまして、年度末の経理については、常に警戒を要すべきであるということを各当局に注意いたしておるのであります。  それからさらに、現金であるとか、物品というものにつきましては、法律で許されておる範囲におきまして、抜き打ち検査を実行いたしまして、現金、物品についてはかくあるべきであるという経理の指導を、実際に臨んでいたしておるような次第でありまして、会計検査院といたしましては、先ほど申しましたように、もう検査の眼目そのものが不正防止ということにあるものと私ども考えておりまするので、せっかく精進しておるような次第でございます。
  80. 栗山良夫

    栗山良夫君 私が特にこの点を取り上げましたおもなる理由は、あとで、最後に申し上げたいと思っておりますが、それは、会計検査院の方で検査をされるときに、各省が仕事をいたしております仕事の中で、実際に調査が済み、計画が完了して、そうして予算化しておるということであれば、私はそんなに大きなミスは出ないと思うのです。やはり計画がずさんであり、実施計画というものがない。極端に申せば、大蔵大臣じゃないけれども、つかみ金じゃないが、つかみ計画で、そうして予算化して仕事を始めておる。こういうところに私は根本的な欠陥があるのではないかということを考えておるのでありますが、あなた、そういう点はお考えになりませんか。
  81. 東谷傳次郎

    会計検査院長東谷傳次郎君) お話のようなものは相当たくさんございます。しかしながら、全部がそうであるとは私は考えておりません。相当にたくさんそういうものが見受けられまするので、これは、会計検査院から出しておりまする各年度の検査報告に、さような意味で掲げてあるのでございます。
  82. 栗山良夫

    栗山良夫君 きょう私は、国土開発の問題を通じて、実は岸総理にも、とくと承わりたいと思っておりましたが、時間がありませんので、これはまた、一般質問に譲りたいと思いますけれども、たとえば、文芸春秋の四月号を見ればおわかりになりますが、これには「北海道開発に消えた八百億円」、「われわれの税金をドブにすてた事業の全貌」こういうものが中谷宇吉郎博士の論文として載っております。この中を読みまするというと、しごくごもっともである。たとえば、北海道開発の基本目標は、人口の吸収とそして食糧の増産であった。昨年度で五カ年計画は終ったわけでありますが、結論だけを申し上げますというと、人口は全然ふえておりません。それから食糧は減産になっておる。昭和二十一年から二十五年までと、そのあとの、去年の冷害を除いた五カ年間を計算いたしますというと、減産になっておる。そこに八百億円が動いたということが書いてある。これは私の意見じゃない。中谷博士の意見に書いてある。こういうことがあるにもかかわらず、今度はまた、東北の開発までも公社を作ってやると書いてある。また、今度の予算を見まするというと、池田財政の積極政策は、大体一千億円、大づかみにいって一千億円になりますが、そのうちで当然増加すべき経費が五百億円ばかり、政策的に増加する経費が五百億円でありますが、この五百億円の政策的に増加する経費のうちの四五%、実に四五%は、公共事業費のうちの道路整備、漁港、港湾、こういうものの整備に充てられておるのであるが、二百億円をこえる多額の経費がこういう具合にしておる。しかも、木村禧八郎君が衆議院の予算委員会公聴会におきまして公述せられたところによりますというと、建設省は、自分が予定しないところの工事に、要するにこれはつかみ計画です。実施計画のない工事に、予算化して金がついたので、建設省の役人がびっくりしておる。こういうような工事を進めていくならば、工事がずさんになるばかりでなく、国費は乱費をされ、疑獄や汚職がここからまた出るだろう、こういうことを警告しておるのです。従って、私の申し上げました綱紀粛正の中心問題とは違うのでありますけれども、三十二年度のこの予算においては、そういう、もしたがをゆるめまするならば、心の緊張をゆるめまするならば、会計検査院の厄介になり、ついには手をうしろの方に、御厄介にならなければならぬような事件が相当起きるのじゃないか、こういうことを非常に心配いたしまするがゆえに、私は岸総理大臣に、特にこの問題を取り上げて、警告めいたことを申し上げて大へん恐縮でありますけれども質問にかえて御要望申し上げた次第でありまして、この点につきましては、最後に岸首相から、こういう事態でありまするから、計画というものは、もう少し実行計画をはっきり組んでから予算化して、あやしげなものの予算化は絶対にしない、これは大蔵大臣にも御所見を承わりたい。そういうことを励行していただくと同時に、会計検査院のただいまのお話もございましたが、よく連絡をとっていただいて、大切な公金がやみからやみへ消えて、冗費され、乱費されるということが絶体ないように、一つ善処をお願いしておきたいと思います。
  83. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御質問の御趣旨に対しましては、全然同感であります。われわれは、予算を立て、計画をする場合におきましては、できるだけこれを現実に即して、明確に実行のできる計画を立てなければならぬことは言うを待ちません。また、その経費、予算の運営に関しましては、法規その他のなにに違反しないように、十分にやっていかなければならぬと思っております。御質問の御趣旨は、全然同感であります。
  84. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 予算の施行に当りましては、お話の点、十分注意をし、適切に、また、効率的にやっていきたいと思います。国民の血であり汗である税金でやるものでありますから、寸毫だにこれはおろそかにすべきではないと考えております。
  85. 栗山良夫

    栗山良夫君 大蔵大臣にお願いしたいのは、今度の予算化されているものについての御所見は、そういう気持でぜひやっていただきたいと思いますが、今後も、重要な案件を予算化されるときは、あやしげな計画で予算化されないように願いたい。そのことを私は強く要望申し上げておきたい。私も、実はそういう予算化の仕事をしたことがあります。それがもうどうしても間に合わないと、いいかげんな予算を組めば組むほど、実行したときに金がないと困りますから、三割も、ひどいときは、五割も余分に金を組んで、そうして予算化してゆくというのが通常です。そういうことをやるからこそ、乱費され、不正が起きてゆくことになりますから、大蔵省は、絶体にあやしげなつかみ計画はやらないように、一つ励行願いたい。このことを要望するわけであります。その点についても、御所信を重ねて一つ伺っておきたいと思います。
  86. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 先ほども道路の問題がございましたが、要求は非常に多かったのであります。それをわれわれは、数カ月にわたりまして、ことに、おしまいのころの一カ月近くは、徹夜のような状態で、これを査定、減額に努めていることは、御承知通りであります。できるだけお金を無駄に使わないように、無駄ではございません。有効に、効率的にやるように、大蔵省は従来から非常に熱心にやっているのであります。いろいろな点におきまして、あまり削り過ぎると、こういうので、おしかりを受けることが多いのであります。われわれはそういうことは考えておりません。適正に、国民の税金でございますから、十分効果を上げるようなことを考えて、やっている次第であります。
  87. 吉田法晴

    吉田法晴君 普通の答弁をして、この公金問題あるいは会計検査問題を終ろうとしておりますから、私から一言だけお尋ねをいたしたいと思います。  栗山委員は、文芸春秋を引いてお話しになりましたけれども、新聞にも、「税金日本」というような欄の中に、いかに税金が不正に使われているかという例が出ております。中には、これは農林省の役人であったと思いますが、地方へ行って汽車に乗る間がない。それは、汽車に乗る時間的な余裕がないのかと思うと、そうではなくて、次から次に接待されて、汽車に乗れないで、晩になると接待を長くされる。それから自動車に乗せられて、おみやげと一緒に、次の場所に送り込まれる。こういう実態が書かれている。それから「脱税」という本までも出ている。鳩山内閣のときに、従来のそうした空気の頽廃を粛正をしたいということで、あるいは役人のマージャンもよせ、公邸の使用もやめる、こういうことでございましたけれども、御承知でもあろうと思いますけれども、すでにもう役所の役人さんたちのマージャン等はもとの通りに復活をいたしております。あるいは私どもが参りました官庁の中でも、これは議員だということを知っているかどうか知りませんけれども、目の前で、昨晩は大へんお世話になりました、こういうとにかく業者にお礼をしたというようなあいさつが、役所の中でなされておるという実態もございます。昨年会計検査院の人たちが地方に参りまして、その監督すべき、あるいはなすべき会計検査院の、何と申しますか、接待なら接待という点が表に出ておる。これはおそらくその後直っていると思います。直っていると思いますが、そういう風潮は、これはまだございます。  なお、今年度の予算については公共事業費等について、最後に一千億施策ということでふやされた。税収の見積りを補正予算のときには一千億そこそこであろうというのを千六百億にふやし、二千億にふやして、そうして事業費をふやしてきた。従って栗山委員が指摘したような建設省のこの資金にしても、大蔵省で最後に示された線でふやされたといういきさつも、これはもう厳然たる事実。あるいは住宅関係についても保険関係の資金を回された例もありますけれども、当事者は、自分たちの思わなかった以上に、とにかく資金をもらって、しかもそれが保険会社から回って参りますから、利子が高い。従って、これはどうしようかという嘆きというか、これは積極施策の逆の嘆きでありますが、そういうことを聞くのであります。三十二年度予算の性格の中に不正、汚職をはらむ要素があることは、これは栗山君御指摘の通りであろうと思う。  さらにもう一つ、岸総理大臣もみずから申しておりますけれども、お役人の出身、それから大蔵大臣にしてもそうであります、政府の役人の諸君が、この岸内閣のもとにおいて大いに羽が伸ばされるといういわゆる官僚気分を出して参っておることも、これはいなむことができないと思う。そういう点からいたしまして、今指摘いたしましたような、栗山委員が指摘したような点は、本年度の予算について大きな問題として、あるいは岸内閣の今後の、何と申しますか、行政の推進の上にございます大きな危険性だと私考える。総理として世間の意見、あるいは従来からございました綱紀についての批判、それから岸総理、あるいは池田大蔵大臣等閣僚の中におられます旧役人出身の皆さんへの危惧に対して、どういう工合に対処せられるか、これは二人そこに並んでおられますけれども岸総理大臣から明確に、一つこの国民の危惧に対しては言明を願いたいと思います。
  88. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 公務員の綱紀粛正の問題につきましては、先ほど来も栗山君に対してお答え申し上げました。これはきわめて重大なことであります。なお、私がかつて長い官吏生活をした前歴から、私が総理になったことによって、全体の各省の官吏がそういうような羽を伸ばすという気分があるというふうな御意見でありました。私はむしろ私自身が官吏の出身であり、当時の——もちろんいかなる時代におきましても官吏の、その当時はわれわれの方では吏道、官吏道とか申しておりましたが、そういうものをある程度私自身が体験をいたしております。事務その他の扱い等につきましても、私は最近のいろいろな事実等を見まして、これではいかぬということを、むしろ私自身が痛切にそういう前歴を持っておりますだけに、感じております。従ってそれの粛正等につきましては、私としては特に力を用い、また多少私の気持から言うと、そういうことの起る役人の生活をしてきただけに、そういうことの起る場合の環境といいますか、(「コツですか」と呼ぶ者あり)要領とういうのはちょっといささか、なんでございますけれども、そういうところが全然そういう生活をしたことのない人よりも、私にはわかると思います。従ってそういうことに関しては、一そう厳格な態度でもって、そういうことをなくするということに努力をいたしたい。むしろそういうことに関しましては、今御懸念がありましたことは、世間でそういうことを申しているかもしれませんが、私がかつて官吏の生活をしておっただけ、国民に対してそういう点についてゆるみやあるいはふしだらなことの起らないように、私の経験を生かして、一つ綱紀の粛正に努めたい、かように考えております。
  89. 湯山勇

    ○湯山勇君 関連して。今、栗山委員お尋ねになりました道路、港湾、漁村の増、これは一・五倍以上になっておりますが、私がちょっと調べてみたのですけれども、これに伴う人件費が見当らない。建設省の方の予算書を見ますと、本省において昨年よりも約三一十名ばかりふえておりますけれども地方建設局の方では約三百五十名も減じておるようでございますが、この人件費についてはどういうことになっておりますか、この点先にお伺いして、それによってあともう一回お許し願います。
  90. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 公共事業費施行に要する人件費の予算の組み方でございますが、監督その他企画的な部面は、これは建設省本省なり地方建設局あるいは港湾関係の行政機構の中に、定員をもって計上いたしております。そうでない現場の仕事につきましては、公共事業費の中に、付帯事務費とかあるいは付帯設備というような形で、事業費そのものの中に所要の賃金、労務者などの給与を計上いたしておるわけでございまして、それによって公共事業の施行に当っております。従来からさような積算方法をとっております。
  91. 湯山勇

    ○湯山勇君 ただいま主計局長の御答弁にありましたけれども、昨年度の建設本省の人員なり、あるいは地方建設局の人員の合計は、本年よりも上回っておる、しかしながら本年これだけ事業がふえたにもかかわらず、本省関係の人員がふえただけであります。そういたしますと、今主計局長の御答弁にありましたけれども、おそらくこれらの事業は、ほとんど外注に出されるのではないかという懸念がございます。外注に出されたときに監督がいかに困難かということは、今までしばしば指摘になったところでございまして、こういうところから、先ほど岸総理がしばしば御言明になりましたけれども、いろいろな問題が起ってくると思います。こういうやり方に対して、会計検査院はどうお考えになりますか、これが第一点。  それから第二点は、ただいま事業費の中から人件費を操作をする。従来もやっておられましたけどれも、このことはまた公務員体系に著しい障害を与えておりまして、これは建設大臣すでに御承知通り、建設省自体の役所の中においても一般の職員があり、それに準ずる準職員というのがあるし、さらに補助員、準補助員、さらに日雇いの人夫、こういうふうに同じ役所で同じに仕事をしておる者の中に、身分の非常に大きな違いがありまして、これもしばしば当委員会等においても問題になったところでございます。こういうようなことをそのままにしておいて、いたずらにこういうふうに——いたずらにという言葉は悪いけれども国民要望にこたえて事業をおふやしになっても、そのこと自体が、また新たな悪い結果を招くというようなことになりますので、私はこういうことについては、政府自身十分今後御反省願わなきゃならないのじゃないかというように考えますが、これについて総理の御所見を伺いたいと思います。
  92. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 先ほどのお答えを少し補足して申し上げておいた方が、総理大臣あるいは検査院長の御答弁に資するところがあると思いますので、ちょっと一口申し上げます。先ほど付帯雑費、付帯事務費と申しましたが、常勤労務者給与という形で、予算の内訳は明示してございます。これは直轄、直営のものにつきましての常勤労務者給与でございまして、国がそれだけの現場職員を雇い入れまして、みずから工事をいたします場合の予算の計上方式といたしまして、常勤労務者給与をもって当っておるわけであります。この常勤労務者給与を定員の中に取り込んで、もう少しはっきりした身分関係を確立する必要があるのではないかという問題が、従来からあるわけでございますが、一方公務員制度全般につきましては、目下内閣でいろいろ調査、企画も行われております際でもございまするので、その結論を至急お出しいただくことといたしまして、来年度は、常勤労務者の制度をどうするかという問題は、一年だけ見送っていただいているわけであります。従いまして、今度の予算編成に際しまして、いわゆる請負が必ずしも多くなっているということではございませんのでございまして、従来と同じような考え方をもって公共事業の予算の施行に臨んでいることを、補足してまず申し上げたいと思います。
  93. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 建設省の職員の身分等のなににつきましては、今主計局長からもお話がありましたが、十分一つ検討して、適当な措置を講じたいと思います。職員の数と事業量、予算の額との関係でありますが、これはもちろんその予算を施行するに必要な職員を置かなければならぬことは言うを待ちませんが、同時にまた現在ある職員が、絶対にそれが必要な数であるかどうかというようなことにつきましても、これはこの建設省だけの問題じゃなしに、ずいぶん、むしろ数はあまりふやさずに待遇等を上げて、そうして能率を上げさせる方がいいという議論もございます。私は相当耳を傾けるべき議論であろうと思います。そういうことを考えまして、いろいろ処置して行かなければならぬ。こう考えておりますが、いずれにいたしましても、今建設省の事業の増加並びに予算が非常にふえた。これを施行するにつきましては、私はこの予算が編成されるに際して、関係当局において十分検討してその結論が出たと、こう信じております。十分に今申し上げたような趣旨において考えて参りたい、こう思います。
  94. 東谷傳次郎

    会計検査院長東谷傳次郎君) お答えいたします。会計検査院といたしましては、職員が多いとか少いという問題は別といたしまして、予算の執行については、先ほど申しましたように、厳重な検査を行うことは少しも変りません。ただ、ただいま申されましたように、人員が少いから建設省の監督が届かぬだろう、こういう場合には——(「外注は」と呼ぶ者あり)それから外圧、これは直轄の方式によりますと外注ということがあり得る。外注の場合におきましては、御承知のように十分な予定価格も作って外に出す。そういう場合におきましては、会計検査院も実施中に検査をし、検収についてはさらに固めるということに相なりますので、それで必ずしも工合が悪いというふうには考えておりません。
  95. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) これにて暫時休憩いたします。    午後一時五分休憩    —————・—————    午後三時十五分開会
  96. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) ただいまから、休憩前に引き続き委員会を開会いたします。  参考人河野一郎君は、昨日議長を経由いたしまして、正式の書面をもって出席を求めたのでありますが、今朝電話をもって、本日は余儀ない用事がございますので、出席いたしかねると回答がありました。御了承を願いたいと思います。
  97. 小林孝平

    小林孝平君 最初に質問に入る前に、ただいま委員長から、河野一郎氏が本日出席できないということでございましたけれども、私はこの日ソ漁業交渉は、全国の漁業関係者が息をつめてその成り行きを見守っておるわけであります。また国民も絶大なる関心を持っておるわけであります。それで、この問題については、どうしても前全権でありました河野一郎氏の証言を必要といたしますので、ぜひ呼んでいただきたいと思ったのでありますが、ただいまのお話では、やむを得ず出席できないということでございますが、まだ私の質問の最後までには相当時間がございますから、ぜひここに出席されるようにお取り計らいを願いたいと思うのであります。よろしゅうございますか。
  98. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 実はその後再三連絡に努めておったのでありますが、どうもそのおられるところの所在がわかりませんので、まだ連絡がとれません。今お話がありましたように、続いて一つ連絡をするように努めます。
  99. 小林孝平

    小林孝平君 先ほど委員長は、やむを得ざる用事があって出席できないとおっしゃったのですが、今は所在がわからぬということですが、それはどうなんですか。
  100. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) それはけさの電話では、やむを得ない用事のために出られないということを、同氏の秘書からこちらの方へ連絡があったのであります。しかし、それにもかかわらず、その後も同氏の所在がわかれば連絡をしたいという努力をしたのであります。そういう事情でありますから、今でもさらに連絡をとることに努力いたします。
  101. 小林孝平

    小林孝平君 私は当面の農業問題、食糧管理の問題、日ソ漁業交渉等の問題について、とくと首相の御意見を伺い、政府方針承知いたしたいと存じます。  最初に農地改革の問題でありますが、去る十一日、当委員会において首相は、政治家としての過去の過誤を反省し、今後民主主義に徹し、民主政治家として働きたいとの決意を披瀝されました。それについてもお尋ねいたしたいのは、戦後日本の民主化のための重要なる施策として農地改革が行われたことは、総理大臣は御存じかどうかということでございます。
  102. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 承知いたしております。
  103. 小林孝平

    小林孝平君 農地改革の成果を維持発展させることが、農村の民主主義の基盤であると思うのでありますけれども総理大臣並びに農林大臣はどういうふうにお考えになりますか、お伺いいたします。
  104. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 農村の民主化の上において、この農地改革というものは非常な大きな基盤をなすものだと考えております。
  105. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 総理から申し上げましたと同様に考えております。
  106. 小林孝平

    小林孝平君 自治庁の長官おられますか。
  107. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 今地方行政委員会で何か説明をしておるそうですから、それが済みましたらすぐ来るそうです。
  108. 小林孝平

    小林孝平君 この質問は自治庁の長官がおらないとできないんですが、至急呼んできて下さい。  今首相がそういうふうに決意をお示しになりましたけれども、ところが最近はこの農地改革の成果を脅かすかのごとき事態が見られる。それで私はこの問題についてさらにお尋ねをいたしたいのであります。解放農地に対する政府の補償の要求の問題がありますが、これに対しては、首相は補償の義務もないし、何らかの形で、すなわち補給金、給付金その他の形で措置をする考えはないと言明されておるようであります。そこで私はこの際、首相にあらためてこれに関する見解をお尋ねいたしたいのであります。
  109. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お尋ねの問題につきましては、昨日も御質問がございまして答えましたのでございますが、私は政府として補償——部でそういう要求をしているものもあるようですが、国家補償をすべきものではない。ただこの農地改革というものが先ほどもお答え申し上げたように、戦後農村の民主化の重要な基盤である、しかしこれが行われたということは、日本の農村における非常な一大変革でありまして、この変革に基いていろいろ生活上その他について、非常に急に困るとか、あるいはそれから一種の社会的な不安があるというような場合におきましては、社会保障制度その他の拡充の方法によって、これに善処すべきものであるということは言うを待ちませんけれども、補償の意思はないということを申し上げます。
  110. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) お答えいたします。  農地の価格は適正なものであって、しかも昭和二十八年には最高裁の判決もきょうに下されておるのでございまして、補償ということは考えておりません。
  111. 小林孝平

    小林孝平君 私はこの問題は金の問題でありますから、大蔵大臣にお尋ねいたしたいのでありますが、これは所管外だということでお逃げにならないで、財政的見地から財政当局としてどういう考えを持っておられるかということをお尋ねいたしたい。
  112. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 財政当局といたしましても、総理大臣、農林大臣と同じような考えのもとに、政府で補償する気はございません。
  113. 小林孝平

    小林孝平君 首相は、本日も昨日も法的義務として解放農地に対する国家補償を行うつもりはないということをおっしゃっておりますが、これは当然なことであります。今どきだれも、解放農地に対して国家が補償する法的義務があると思っておるというような人は、よほどどうかしておると思うのであります。もっとも、このどうかしておるのが相当多いのでありますけれども、これは問題にならないわけであります。そこで問題は旧地主に対し、解放農地の旧地主だから何らかの補償的措置をするかどうかという政策の問題であろうと思うのであります。ただいま総理大臣の御答弁にもある程度含みを持って、社会保障制度で何とかしなければならないと、こういうふうにおっしゃっておるのでありますから、これを重ねてお尋ねいたしますけれども、なるほど旧地主の中には生活に困る気の毒な人がおります。生活に困るから社会保障を考えるというのなら、旧地主であろうとなかろうと私は同じだと思うのであります。旧地主の中にそういう者があるから社会保障制度でもって考えるという考えは、これはやがて将来は、まごまごしているともう国家補償と、あるいはその他の給付金でもってやろうという考えに通ずるものであろうかと思うのであります。それで特にこの点を、旧地主であるから、困っておるから社会保障的措置を講ずるという考えは私は穏当でないと思う。総理大臣は本日もおっしゃいましたが、昨日の高橋君に対する御答弁でもそういう御答弁がありましたので、重ねてこの点を総理大臣にお尋ねをいたしたいと思うのであります。
  114. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お答えをいたします。先ほど私が申し上げたように、これは非常な一大変革であって、そういう変革の際に、急にいろいろな生活環境が変るという人が多数ありまして、それが社会的に不安を起す、あるいは生活上非常に困るというような場合があれば、それは政府としては私は適当な社会保障制度等によって考えていかなければならぬということを申したのでありまして、決して地主なるがゆえに特に社会保障制度でどうしようということじゃございませんで、今お話の通り、これは一般に生活に困っておる者に対して社会保障制度を考えるということは、これは当然であります。ただそういう大きな社会的変革が行われる場合において、そういうことがあり得るということを私は申し上げただけであります。
  115. 小林孝平

    小林孝平君 今総理大臣が前段と後段に分けてお話になりましたけれども、後段の御説明だけなら、われわれはそれで満足し、またそれが当然なのであります。ところが前段の方でおっしゃったこと、さらに一応お話が終りましてつけ加えられたことは、やはり何か社会的変革のために犠牲をこうむった、こういう人たちに社会保障制度を考えなければならぬ、こういうお考えがあるように思うのでありますけれども、これは後段だけに考えて、特別の社会保障制度を旧地主に対してやる必要がないと了解してよろしうございますかどうか、お尋ねいたします。
  116. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は特に旧地主であったがゆえに特別の社会保障を、それだけの社会保障制度を考えるという気持はございません。
  117. 小林孝平

    小林孝平君 今首相は法的な義務もないし、また特別のそういう社会保障制度を誓える意思もないと、こういうふうに言明されました。これは当然そうなければならぬと思うのであります。しかるに現実は、旧地主は数万人を動員して東京でデモ行進をやり、大会を開いてこの国家補償の要求をやっておるわけであります。全国の関係小作人、あるいは新たに自作農になった人々はこういう動きに非常におびえておるわけであります。政府はこういう現実ごらんになりまして、何らかの具体的な措置をおとりになる意思がないかどうか。今のような消極的な態度を捨てまして、積極的にこういう国家補償はやるべきでない、社会保障制度もそういう特に旧地主にやるべきでないということを、声明か何かやられる必要があると思うのでありますけれども、声明をお出しになるかどうか、総理大臣にお尋ねいたします。
  118. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今特別に声明を出すという意思は持っておりません。
  119. 小林孝平

    小林孝平君 このように全国各地で問題になり、現に今申し上げたように、全国の関係小作人、自作農は非常におびえているわけであります。だから、声明ぐらい出しても差しつかえないじゃないか。声明をお出しにならないところを見ると、どうもこれはそのうちにだんだんおかしくなってくる、こういうふうに考えるのですが、声明を出さない理由はどういうのでありますか。政府はすぐ声明を出すじゃありませんか。断固としてストライキを取り締るとか何とかいって、そういうときには直ちにお出しになるが、こういう全国の数十万の関係農民がぜひ政府からそういう措置をやってもらいたいという声は、お聞きにならぬのかどうかという点をお尋ねいたします。
  120. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 言うまでもなく、何かそれが違法の行為を生ずるとか、あるいは非常に社会的な不安を生ぜしむるような事態がありますならば、政府は声明をもちろん出しますが、今言うまでもなく民主主義のなんでありますから、いろいろな考えを持って、いろいろなことを正当な方法で述べておる場合において、私どもはそれはそういうふうな声明を出す時期じゃないと、こう思っております。
  121. 小林孝平

    小林孝平君 これは今申し上げたように、政府はやらない。また最高裁の決定も、これは合法的である。こういうことになっておるのにもかかわらず、関係の旧地主だちは、数万人を動員して東京でデモをやったり、大会をやったり、こういうことそれだけでも国家的に非常に不利益であります。政府が断固として、そういうことはやらないんだということを言われれば、そういうことはやらないわけです。何か騒いでおればそのうちに言うんじゃないか。声明も出さない、国会でいろいろ言ったけれども、簡単な声明すらなんだかんだと言ってお出しにならぬところを見れば騒げば騒ぐかいがあるんじゃないかと、こういうふうに考えるのは当然だと思うのです。だから私は、この際国家的見地からお出しになった方がいいんじゃないか。出されない理由は、私は特に見出しがたいと思う。これを出せば何か社会不安を生ずるとかなんというのなら理屈があるけれども、今の総理大臣の御答弁だけではそういうふうに思えない。また先ほど私が特にこの農地改革の意義、あるいは日本の民主主義を守るための農地改革の意義を総理大臣にお尋ねいたしましたが、決然たる意思を表明されたのです。それからいっても、これはお出しになった方がいいと思うのです。そうお考えになる意思はありませんかどうか、お尋ねいたします。
  122. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほどお答え申し上げた通りであります。
  123. 小林孝平

    小林孝平君 これは違法であるならば、あるいは非常に障害があればというお話でありました。現に全国の地主は、近くこういう法案が通るというので、そういう旧農地補償連盟というようなものを作って、莫大な金を集めて、そうしてその金でもってさらに参議院議員に当選しているような人もあるのです。これは旧地主としては非常に迷惑であります。私の知人にもたくさんの地主がおりますけれども、それらの地主は、こういう国会における論議を聞けば、これは詐欺にかかったと考えるのは当然だと思うのです。法務大臣はこういう行為はどういうふうにお考えになりますか。私は詐欺じゃないかと思うのです。(笑声)どういうふうにお考えになりますか。あなたは昨日、公務員の違法行為には断固として取り締ると……。こういう問題はどうなんです。あなたは弱い者だけいじめるんじゃないんですか。下級官吏だけ断固として取り締るんじゃないんですか。
  124. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) これは、先ほど総理大臣のお話中にもございましたように、時勢が民主主義の時代でございますから、民主的にそれぞれの希望を持ち、一つの運動を起し、その運動のためのあるいは党費を取るとか、経費を集めるとかいうような行為が民主的に行われておる場合におきまして、これを直ちに詐欺として判断すべきかどうか、これはよほど慎重に検討を要する問題であろうと、かように私は考えております。
  125. 小林孝平

    小林孝平君 また、政区はそういう見解を示しておられるにもかかわらず、あなたの岸内閣の一員である八木農林政務次官は、記者会見で、旧地主救済のための方策を研究する機関を自民党内に設置すると言われております。こういうのは、私は非常に不都合であろうと思うのです。総理大臣の意思、農林大臣の意思と反する行為をやっておるわけです。昨日総理大臣は、公務員の違法行為には断固として措置をすると言われましたけれども、政務次官に対してはおやりにならぬのですか。
  126. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 八木農林政務次官のお話が出ましたから、私からお答えしておきます。  先般の衆議院の農林水産委員会におきまして、やはりこの問題が社会党の稲富委員から提起せられまして、八木政務次官も私と同意見の旨を表明いたしまして、御了解を得た次第でございます。(「何だかちっともわからぬ」と呼ぶ者あり)
  127. 小林孝平

    小林孝平君 同意見であることはわかりましたが、自民党内にこういうものを作るとかなんとかと言っていたのです。これもあなたと同意見でございますか。農林大臣もそういうことを、作るとおっしゃったのですか。
  128. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) その問題にも言及いたしまして、そのようなことはないと、こういう答弁をいたしました。
  129. 小林孝平

    小林孝平君 次に、旧地主の農地補償連盟のこの要求であります。これはただいまお話を申した。ところが、この地主団体の補償要求は、単に国家補償のみを要求していると考えていいかどうかということが問題であると思うのであります。先ほども申し上げたように、これをまじめになって国家補償の義務があるというふうなことを今ごろ考えておる者はないのです。むしろ私はこの裏に隠された問題が大きい問題であろうと思うのであります。すなわち、最も心配しなければならないのは、小作料の引上げ、小作地の取上げ等の農地法の違反を公然化しようとする旧地主の動きであろうと考えざるを得ないのであります。さらにその上農地法を改悪しようとする情勢を、農林大臣や総理大臣が甘く考えられておるのではないか。そういうことであれば、先ほど申し上げましたように、日本の民主化が根底から私は崩壊するであろう、こういうふうに考えるので、農林大臣の御所見を承わりたいと思うのであります。
  130. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 旧地主団体の動きについては、従来いろいろと沿革あるいはいきさつがございまして、一時は団体内部の統一も十分できなかった時期もございますが、最近一本化したというような意味において、東京に会合などが持たれた模様でございます。そうして当面は補償問題を中心としての要望等をわれわれのもとに持って参っておるのでございますが、小林委員は、ただいまその裏にはもっと別なものが隠されておるという御発言でございました。さような点も十分に注意をいたしまして、私としましては、農地法を擁護する、こういう立場に立って対処をいたす所存でございます。
  131. 小林孝平

    小林孝平君 私は中村法務大臣にお尋ねしますが、あなたは一昨日当委員会において、八木君の食管法違反のやみ米の取締りについてお答えをされまして、今後厳重にこれを取り締ると、決意を述べられたのであります。ところが、今農村で問題になっているのは、この食管法違反の問題よりも、むしろ農地法違反の問題であります。今全国的にこの問題がだんだん熾烈になってきまして、このまま放置すれば、ゆゆしい一大事になるのではないかと考えられるのであります。あなたは、この食管法違反は厳重に取り締るとおっしゃいましたけれども、そういうお考えならば、この農地法違反について取り締まられる決意があるかどうかということをお尋ねいたします。  ご参考までにあなたに申し上げますが、農地法違反はどういうふうに全国でなっておるか、ということであります。今資料に基いてあなたにお教えいたしますが、御存じかもしれませんけれども昭和二十八年、二十九年の数字でありますが、合計で農地法違反の件数は、昭和二十八年三百十七件であります。このうち送検件数は百十五件であり、起訴された件数はわずかに二十件であります。昭和二十九年は、違反件数が三百九十二件であり、送検件数が百五十四件であり、起訴件数はわずかに二十九件であります。こういう状態であります。こういう状態ごらんになれば、この農地法の取締りがどの程度になっておるかということは、あなたは御専門でありますから、おわかりになっているでしょう。これが厳重に取り締まられておるか。ほとんど放任されておるということは、おわかりになると思うのであります。ところが、これは二十九年までの数字なんです。さらに三十年はどうなっているかわからないのです。この違反の件数は激増しております。しかしその送検件数、起訴件数というものはわからない。こういうふうにわからないことは、すでにこの農地法の取締りがいいかげんになっておる、農地法が実体的にじゅうりんされておるという証拠であると思うのであります。そこで峻厳なる中村法務大臣は、この農地法の違反に断固臨まれるかどうかという点をお尋ねいたします。
  132. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) もちろん農地法の違反事件がございますれば、法務当局といたしましては、最も厳正適切に事件の処理を行うべきであると思います。ただいま、昭和三十年の数字がまだ明らかでないというお話しでございましたが、法務省の統計によりますというと、三十年の検察庁が受理いたしました人員は、二百三十人でございますが、そのうち起訴をいたしましたもの二十四人でございます。若干二十九年、八年の数字に、今御指摘の数字と私の方の統計の数字と違った点もございますが、大体そのような事態で、検察庁として送検を受け、事件として受理をいたしましたもののうち、起訴人員が比較的に少いということは統計の示す通りでございますが、しかしながら、これらはそれぞれ当該の検察庁におきまして諸般の情勢を判断した上、処罰すべきものは厳重に処罰をいたしておるものと思うのであります。われわれといたしましては、今後といえども順法精神を高揚するためにも、法の違反がありますならば、適正な処置を、検挙を行い、また起訴を行なって参るべきである、かように考えております。
  133. 小林孝平

    小林孝平君 自治庁の長官、おられますね。あなたはおくれておいでになりましたけれども、ただいまの論議をお聞きになっておれば、われわれが日本の民主化のために農地改革というものがどういう意義を持っておるかということに非常に関心を持っておるということがおわかりになるであろうと思うのであります。  それで、あなたにお尋ねいたしますのは、この農地改革の成果が維持されなければ、民主的な地方自治が崩壊されると私は思うのでありますけれども、あなたはどういうふうにお考えになりますか。
  134. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) おくれて参りまして恐縮でございます。農地の根本的改革を地方自治の立場から必要とするかどうかという問題でございますが、これは私は地方自治の健全な発達をやっていきますことに、間接上重要な影響があるものと考えますので、将来は合理的な方向において改正をいたしますことは、自治庁の立場においては望むところでございます。
  135. 小林孝平

    小林孝平君 あなたは私の聞かないことまで答弁されましたが、あなたは農地法をどういうふうに改正するんですか。農地法を守るということが今大事なんです。あなたはどういうふうに改正するんですか。(笑声)冗談じゃないですよ。具体的に言って下さい。
  136. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) おくれて参りましたので、今の御質問趣旨が、農地の根本的改革ということを取り上げて御質疑になっておるものと私は考えたのであります。農地は改革すべき余地のあることでありますので、自治の立場から申しましても、合理的な改革はやむを得ないものだということを申し上げたわけでございます。農地法そのものを言っているのではないのであります。
  137. 小林孝平

    小林孝平君 あなたは、ますます確信を持って言っておられる。あなたは学者なんです。法学博士だか経済学博士だか知りませんが、あなたを学者としてわれわれは尊敬しておる。ところが今非常な決意を持って、農地改革をさらに根本的にやると言われる。これは第三次農地改革をあなたはおやりになるのですか。自民党は政策を変えて、第三次農地改革を断行されるのですか。どうなんですか。
  138. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 衆議院の委員会で提案理由を説明しておりまして、やむを得ず私はここに出席することがおくれて、おわびをしたのであります。従ってそれまでに御質疑になりました内容は、おりませんから聞いていないのです。そこで私が今言ったように、勘違いがあって答えをしたものとするならば、これを取り消しますが、あらためて御質問趣旨をはなはだ恐縮ですが、もう一度伺いまして答弁をし直します。
  139. 小林孝平

    小林孝平君 しばらく前においでになったから、明敏なる長官は御存じかと思っていたところが、とんちんかんの御答弁で、はなはだこれは議事の妨害です。この農地法を守り、そうしてとの農地改革の成果を守るということは、日本の民主化のために非常に大事である。総理大臣もそうであるとお答えになったんです。農林大臣はもちろんです。あなたも当然——あなたは御答弁によると、聞いておらないと言われますけれども、そういう程度では、日本の民主化のためにいかに農地改革が貢献したかということを御存じないと断定せざるを得ないのであります。そういうことでは岸内閣国務大臣として不適当ではないかと私は考える。そこで少くともこの農地法の精神を守り抜く、今のこのいろいろの違反が行われておるのをなくするということは、地方自治を具体的に守るということになると考えるがどうか、という質問をしたんです。まだおわかりになりませんか。
  140. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 御説明を承わりまして、よくわかりましたからお答えを申し上げます。自治の立場からも現行農地法を厳格に守っていく、現行法があります限り、厳格に守っていくということには当然賛成であります。
  141. 小林孝平

    小林孝平君 そこでこの農地法を厳格に守り、施行するということにはどういうことが一番必要であるかというと、末端の農地関係の職員の身分を安定するということなんです。この安定がなければ一部のボスや有力者に左右されて、この農地法のいろいろの違反や、農地法の精神をじゅうりんすることになるのです。そこで私はお尋ねいたしたいのでありまするけれども、戦前は、戦前といえども全額国庫補助の小作官が地方に配置されておったのです。戦後はこれが廃止されまして、小作主任というものになって、主事というものになり、しかもその小作主事は二、三年前から半額国庫補助になって非常に身分が不安定になり、その結果はこの農地法の精神が守られない。それはやがて地方自治がじゅうりんされるという結果になるのです。そこでこういう戦前の小作官のようなものを置く必要があるのではないか、官吏としての小作官のようなものを地方に配置する必要があるのではないか、こういうように思いますが、農林大臣、それから自治庁長官はどういうふうにお考えになるのでありますか。ただいまの御答弁では当然同感だという御答弁があるはずなんですけれども、念のためお尋ねいたします。
  142. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) お答えを申し上げます。農地問題が農政の基本問題でございまして、国の一貫した方針のもとに統一的な処理をしなければならない行政事務だと思うのであります。しかも、その事務は農地の買収、あるいは小作契約の解除、解約、小作料の調整など、所有者、耕作者の利害に関係するところがすこぶる多いと思うのであります。こういう見地から都道府県にただいま五百名の農地事務担当職員を設置いたしまして、その給与は先ほど御指摘のように、国が半額を負担しておるという形でございます。それからまたあわせて農業委員会、この機能が農地に関することがすこぶる多いのでありまして、これに対しても国から必要な経費を補助しておることは御承知通りであります。そこで戦前は小作官という特別の制度がございましたが、これは昭和二十二年の地方自治法の制定に伴いまして、地方官制に基く小作官制度というものが廃止されて、これにかわる地方公務員たる小作主事、こういうことに相なったわけでございました。小作主事に関する法的基礎は、これは地方自治法でございます。昨年施行規定改正がございまして、都道府県に置かるべき職務の整理が行なわれた際にも、事のきわめて重要性にかんがみまして、小作主事は従来通り必ず置く、こういうことで職務の内容をも明文をもって規定をおいておるわけであります。農地法を励行する必要がありますから、小作主事等の都道府県の農地事務担当職員の身分の安定ということにつきましては、関係各省とも連絡をとりまして、ただいまお述べになりましたような御趣旨の線に沿い、一そうの充実を期したいと考えておる次第であります。
  143. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) ただいまのお尋ねの農地主事の問題、これはお話のように二十九年までは全額国庫負担、二十九年を境といたしまして、それ以降は半額地方負担、半額国庫負担となっておりますことは御承知通りであります。こういう身分をもっておりますものが他の委員とは違って必置主義で、必ず設置をしておるということは今、農林大臣からお答え申し上げた通りでございますが、全額国庫負担という身分から——身分じゃございませんが、そういう給与の財源的な措置から、これが二分の一の国庫負担ということに落ちるというお言葉はどうかと存じますが、制度的にはずっと落ちてきたというようなことから、勢いこれらの機能が万全を期し得ないのではなかろうかというきらいは若干あるようであります。  そこでこれをどうするかという問題は、私の方の立場においても深く検討を現在しておる最中でございます。一つの方法でございますが、これは国家公務員としての身分をこれに持たして、勤務は地方に勤務をせしめる、わかりやすくいうと、地方の役所におる国家の役人という形にこれをもっていけば、御心配のごときことは絶無になるのではなかろうか、少くとも制度の運用としてはそれが一番よいのじゃなかろうかと、こう考えるのであります。反面に、ややこしい話をいたしますが、もう一つの反対の考え方は、一体この地方の自治というものの本旨を深く考えてみるというと、地方の役所に国家の役人がおるということ自体おもしろくない、これはよほど例外的な必要があるときにあらざれば、これを置くべきでない。従って地方自治法の法律案におきましても、御承知通りに原則としては地方の役人、地方の公務員をもって充てる。地方の職員中に国家の役人を置くということは、例外的かつ経過的措置としてやむを得ず起る。まずその数も数千人の人がおりますほかに、今お話のように警察につきましては、警視正以上の者は国家の身分を持っていながら地方職員として地方に勤務しておるというあの法制定のいきさつ等から考えまして、例外的な措置があるわけであります。そういう例外的措置は別に別論といたしまして、本格的原則の措置としましては、やはり地方の役人は地方の身分を持ったもの、地方公務員をもって充てるということをしないというと、地方自治の本旨が徹底をせぬのではないか、本旨が徹底をしないといいます一つの根拠は、国家の身分を持っておりますと、中央集権的に国家の命令が不当に響くようなことなしとしない、こういうような心配がございまして、そういうふうな反対、賛成の両論があるわけでございます。その両論のいずれをとるべきかという問題につきまして、目下慎重に検討をしておるという段階でございます。(「何をいってるんだ」「わけがわからぬ」と呼ぶ者あり)
  144. 小林孝平

    小林孝平君 私は今の答弁はふまじめだと思う。そんな地方自治法の精神などは、私は大臣にはならぬけれども、あなたと同じぐらい知っております。そんなことをここで十分講釈する必要なんかありませんよ。あなたは最初国家公務員としてここに置くことには賛成であると言われたが、そのあとすぐ、しかしながら——何です、それは。国務大臣ともあろう者が一分間も、一秒もたたぬうちに前言を翻して地方自治精神を説いておるわけではないか、そういうことがあるけれども、さっきから総理大臣や農林大臣、あなたをわずらわしてずっと長い間この農地改革のいかに重要であるかということを説明してきたのです。あなたはそれを、わかりました。そしておれもその方がよいと言いながら最後に……それは事務官が言うごとなんです。事務当局の言うことを聞くぐらいなら、あなたに来てくれとは言わないのです。国務大臣としてのあなたの所見を承わりたいのです。これは前段だけでよいと解釈してよいですか。何を言ってるんです。
  145. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 御質疑に対する答えがありのままに、実はこういう所論もあるが、こういう見解もある、その二つの見解が明確に厳存しておるのです。うそじゃないので、現にそういう見解があるものですから、(「結論だけ言え」と呼ぶ者あり)そういう二つの見解についていずれをとるべきかということは、いやしくも身分関係をめぐっては仕事にも影響することであって重要だ、重要であるからそれを検討しておるということを申し上げたのでありまして、さらにもう一品私の意見を申し上げますと、自治庁だけの見解でなく、関係各省とも緊密な連絡をとった上で結論を出すように今後努力いたします。今、結論は出ておりません。
  146. 小林孝平

    小林孝平君 私は、ただいまの答弁は非常に不謹慎だと思います。速記を調べてごらんなさい。こういうことで国会議員がみんなごまかされると思っておるのが、これは間違いです。岸総理大臣も施政方針演説で言われたのです。改むべきは政府であり政治である、あなたのような国務大臣がいるから、そういうことを言わなければならぬようになる。……何です、あなた、最初はそうだと言ったじゃないですか。私はこれはこれ以上追及しませんが、そういうふうな不まじめな答弁につきましては、さらに速記録を調べまして、追及をいたしたいと存じます。また、委員長も、ちゃんと聞いておって、そういう不まじめな者に対しては、注意を与える必要があります。何でも言いっぱなしで、学生か何かのような講義をして……、あなたの講義を聞くためにここに来たのじゃありませんよ。ふざけちゃ困ります。  そこで、私はあなたを相手にしてやっても仕方がないから、次の問題をやります。この農地法を守るということが非常に重要である。また、農地改革が日本の民主化に非常に重要であるということは、これは何人といえども異議のないところであります。もっとも自治庁の長官のような方はどうか知りませんけれども、私は大部分の方はそうだと思うのです。そこで、ところが肝心の農林省において、井出さん、あなたの所管している農林省、この農林省の中において、最近、農地法を骨抜きにするような措置をとられているのです。これは旧地主だけではないのです。あなた自身がおやりになっておるのです。これは農林委員会でも、あなたにちょっと追及申し上げましたけれども総理大臣にも聞いていただかなければなりませんから、もう一度やります。これは政府は干拓などをやります。そうしますと、この土地を干拓をして農地になったものを、一万数千円で払い下げておるのです。従来はそういうふうにやっておったのです。ところが、今年から政府が干拓をやる際には、二割か三割の地元負担を取る。二割か三割というのは、干拓というのは、こんなことを講義をしては失礼かもしれませんが、総理大臣も農業のことに御理解をいただくということは必要ではないかと思って申し上げるのですが、干拓というものは、一反歩当り十万円か二十万円かかるのです。その二割といえば、二万円から六万円の金を地元負担しなければならない。従来は一万二千円で払い下げられたものが、今度は、井出さんが農林大臣になられてから、二万円から六万円の負担をしなければならぬということになったわけであります。これはいいのです、ただ金が多くなったのだから、それは経済上の問題でありますから。まだいろいろの論議はありますが、そこで重要なのは、今小作料の統制が行われておりますが、この小作料の統制の根拠、どういう根拠をもってこの統制が行われておるかと申しますと、これは従来の政府の土地の払い下げ価格、今干拓したものを一万二千円で払い下げる、この一万二千円の、これを基礎にして今の現行小作料というものは統制されておるのです。従って、今度二万から六万というものになれば、これは小作料の統制というものは、この一角からくずれてくるのです。これは重大な問題なんです。井出さんは、どういう御説明をされますかしりませんが、これは大へんな問題です。農林委員会のとき、私は農林大臣から御説明を聞きましたけれども、どうもよくわかりません。今御説明になっても、あまりよくわかる御説明はできないと思うのです。だから御答弁は必要がありませんけれども、あなたの足元からこういうことをやっておられるのです。だから、岸総理大臣が、せっかく日本の民主化のために農地改革の成果を守ることが必要である、こういうふうにおっしゃっても、閣僚はめいめい勝手な答弁をやったり、あるいはこういう措置をやるということであれば、私は実に暗たんたるものがある。こういう情勢だからこそ、全国の地主が莫大な金を浪費して東京でデモ行進をやったり、大会をやったり、あるいはこれを基盤として参議院議員として数億の金を集めて、それを全部選挙に使ったとは言わないけれども、参議院議員として当選するというようなことが起きるのです。法務大臣はのんきな顔をして、そいうことは民主主義の世の中だから、詐欺だとかいうことはすぐにいわれないと言うけれども、事実は非常に疑問だと私は思うのです。私はこの問題は、これ以上追及いたしませんけれども、私は農地の問題だけでないのでありまして、この問題を取り上げて、岸内閣の私は性格というものをはっきりといたしたいと考えまして、今かりに農地の問題をかりて御質問をいたしたわけであります。  次は、全購連の問題であります。昨年農林省のいわゆる多久島事件なるものが発生いたしまして、天下の耳目を聳動させたことは総理大臣といえども御存じでございましょう。これは国民の血税が乱費されたというので、世論が硬化したのであります。ところが、今度は全購連の河村事件というものが起きまして、総理大臣は御多忙でございましょうけれども、御存じのことと思います。零細なこの農民の金を集めた全購連の金が五千万円も、若い一事務員のために浪費されて、関係者は非常に憂慮いたしているのであります。政府は農協法によって全購連の監督をする立場にありますが、一体どういう監督をされているか、明らかにして下さい。監督の責任はどうなっているのか。さらに、農林大臣は、こういう重要な問題に対して、この全購連の会長を招致して、その全貌をお聞きになったかどうかということを、まずお尋ねいたします。
  147. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 多久島事件という不祥な話題のあとに、また、農林関係で全購連の事件が起りましたことは、まことに遺憾でございまして、私も衷心憂慮いたしているところでございます。この事件の全貌は、ただいま取調べ最中でございますので、最終的にはまだ明確には相なりませんが、いずれにいたしましても、若い一課員が五千数百万に上るところの金円を不正に詐取したということは、その機構なり何なりに、本質的な欠陥があったというふうに思うのであります。これにつきましては、全購連自身もいたく恐縮をいたしまして、会長以下私のもとへ見えまして、大体の輪郭を報告するところがあったのでございます。事こまかく事件の内容を申し上げますることは、差し控えますが、全購連自体、この機会に大いに自粛をしなければならぬということから、一部職員は、みずからの俸給を割いて、これを埋め合せようというような熱意も出ているわけでございまして、いずれにせよ、この農民を基盤といたしまする中央団体が、零細な農民の金にこういった迷惑をかけたという一事は、何としても、これは責を免れるわけに参らないのであります。農林省といたしましては、協同組合部におきまして、常に監査その他厳重に、これに対して注意をしているのでありますが、昨年の調査の際に、具体的なこの事件はもちろんわかりませんでしたが、全購連に対して厳重な警告を与えました。ともかく、お前の方の経理はこれをもっと厳格にしなければならない、こういうことを指令いたしたのでございます。いずれにいたしましても、こういう不祥なる事態が起りましたことは、私も最初から申し上げますように、全く遺憾でありまして、この機会に全購連当事者とも十分な連絡をとりまして、全国の農民の信頼を失墜することのないように、全購連の機構が崩壊することのないように、もうできてしまったこと自体については、もちろん厳密な究明をいたしました上で、今申し上げましたような点を配慮して、善処いたしたいと考えておるわけであります。
  148. 小林孝平

    小林孝平君 この事件は、農林大臣は非常に軽くお考えになっておりますけれども、一部には、この事件の発展いかんによっては、内閣の進退にまで及ぶのではないかといわれておるのであります。農林大臣はあまりそういうのんきな御答弁をなさっておっていいかどうか、私は非常に不安なんでありますけれども、私は今この全購連の河村事件をここで深く追及するつもりはないのでありまして、私はむしろ次のことを言いたいのであります。それは農業共済組合、農業協同組合あるいは土地改良組合、煙草耕作組合等に、相次いで不正や汚職が全国的に起きております。これらの農業団体が、多くはいわゆるボスによって牛耳られ、また食いものにされて、真に民主的な運営がされておらないのが、こういう事件の起きる最大の禍根なのです。農民の零細な金と政府からの補助金が、一部の指導者によって、不正にむだに使われ、あるいは選挙の基盤としてのみ、これを利用するところに、問題があるのだと思うのであります。こういうところから、こういういろいろの不正や汚職や疑獄が発生しておるのであります。そこで、これらの団体が真に民主化されなければ、政府からの農村への補助金などは、幾ら出しても、結局何の効果もないであろうと思うのであります。これに対する農相の所見をお尋ねいたします。
  149. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) この河村事件、一つは今小林委員のおっしゃるような、本質に内在するものから派生をしておるかどうか、まだ司直の手にあるわけでありまして、十分検討をしなければならぬと思うのでございます。しかし、御指摘のように、農業団体の内部が弛緩をしておりますることの一証左であるということには間違いございません。今仰せられる政治的な、あるいは選挙と関連してというようなことと、今回の事件と直接の私は関連性はいかがかと思いますけれども、しかし、団体自体のあり方も、大きくこれは反省されなければならぬと思うのでございます。これにつきましては、農林省といたしましても、重大な監督の責めを感ずるところでございまして、一全購連のみに限らず、私どもの監督の対象となるべきものにつきましては、十分にメスを入れまして、そして検討を遂げ、かような事柄がさらに繰り返されることのないように未然に防ぎたいと、それには私自体も身をもって当りたいと、かように考えておる次第でございます。
  150. 小林孝平

    小林孝平君 いかにも、井出さんらしい御答弁を承わったのでありますけれども、私はそんなにただかしこまって善処しますとか、身をもってやるとか、そういうことだけで、その問題が片づいたと思っていたら、私は困ると思うのです。私は全購連の問題が選挙に関係しているとかどうとかいうことを言ったのじゃありません。最初申し上げたように、これは内閣の進退にも及ぶと、場合によっては、発展いかんによっては及ぶと、一部には強く主張されておりますけれども、私はここで深くこれを追求しないということは申し上げた通りであります。私はそういうことをやるよりも、むしろできてしまったことよりも、この全国の農業団体をいかに民主化するか、民主化しなければ、幾らあなたが口でそんなことを言われても、それはだめです。今や日本には農政はないと言われているのです。私は井出さんのために非常に悲しむのです。井出さんのような優秀な方がこの内閣に入られたことは、井出さんはやがて二カ月なり三カ月たつと、これは重大な蹉跌を来たすのではないかと私は心配しておったのです。現に、すでに農政の貧困が叫ばれ、農政はないと言われている。少くともあなたは、ほかのことをやめても、日本の農業関係の団体の民主化のために挺進され、具体的にこの決意を披瀝し、具体策をここでお述べになる必要があるのではありませんか。それでなければ、衆議院において長い間農政通の井出さんとして、われわれが敬愛し、また尊敬を受けておられる井出さんも、大臣になってみたら、きっぱりだめじゃないかということでは、あなたのためにも私は惜しむのです。そんな、非常に恐懼したような、そのまじめな御答弁で、私は恐縮しておりますけれども、そんなことではだめです。もっと具体的に、そこで農業団体をいかに民主化するかということをお述べになっていただきたいと思うのです。
  151. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 再々恐縮でありますが、まあ、私のこの問題に関連しましての心境を、実は申し上げた次第であります。おそらく心境だけじゃだめだ、こういう御反問があろうと思いますが、小林さんのお考えは、要するに農業団体というものが、もっと民主化しなければ、抜本的な解決には相ならぬ。ボス的な支配が農業団体の内部に行われておる限りはだめである、こういうまあ御認識であろうかと思うのであります。これは農業団体そのものが、私は機構においては決して民主的でないものじゃなくて、この運営と申しますか、それによっては、りっぱな民主的なあり方をとり得ると、こう考えるものでございまして、小林さんのおっしゃる民主的なあり方というものは、具体的には承われませんでしたが、私もまあ御意思のあるところはわかるつもりでございまして、そういう方向において農業団体を指導して参る所存でございます。
  152. 小林孝平

    小林孝平君 私は、たとえばです、一例を申し上げます。こういうことをおやりになればいいのです。また、おやりになる必要があるのです。多久島事件を契機として、この農業共済組合法は改正をしなければならぬ。これをこのままにおけば、いつまでもこういうことが起きる。そこで、この改正要望が強く叫ばれたのです。農林省にも改正案が具体的にできておるのです、昨年。しかるに、この改正案が国会に提案されない、なかなか提案されない。井出さん、おそらく近く数日中に出すと御答弁になるかもしれませんが、そういうふうになれば、これはけっこうでございます。しかし、今まで出されなかった。これはどこにあるかといえば、先ほど申し上げたように、岸内閣のこの閣僚ではないけれども、政務次官の中にこの共済組合を強力なる地盤といたしておる方が、この共済組合法の提案に反対されておるのです。井出さんもおそらく弱っていられるんじゃないか。あなたは断固として閣僚としての決意をお持ちになり、これを提案されれば、関係者はもろ手を上げて、あなたに拍手をおくるだろうと思うのです。ところが、あなたは一政務次官の圧力に屈して、そうしてまごまごしておる。まだ出ないじゃありませんか。こういうことをやればいいですよ。具体的に一つずつ慎重に考えてとか、謹慎の意を表わすとかと、そういう言葉では、ものは解決しないのです。どうですか、この問題はあなたどう考えられます。あなたは現に考えているでしょう。あなたの内閣の政務次官その他の、あるいは衆議院における数多くの関係議員が、この改正法律案に反対しているじゃありませんか。これこそ先ほど申し上げたように、農業団体の民主化を妨げるものであると、私は思うのです。あなたはこういうことを次次と具体的におやりになれば、これは井出農政も少しはあるんだなということがわかるのです。どうですか。
  153. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 農業災害補償法の改正につきましては、私農林水産委員会においても申し上げたごとく、この国会に提案をいたしたいと考えておるわけであります。そこで、これは数年来の懸案でもございまして、目下法制局等との調整心も努めておるわけでありまして、近く成案が得られるはずでありまして、いずれ御審議をわずらわすことに相なるでございましょう。
  154. 小林孝平

    小林孝平君 近くとういうのは、いつですか、国会はそういつまでもあるのじゃありませんから、審議の期間が必要なんです、いつですか。
  155. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) およそ、あと一週間くらいのめどをおいていただきたいと思います。
  156. 小林孝平

    小林孝平君 次に、私は今回の予算で非常に問題になりました食糧管理特別会計を中心とした問題について、お尋ねをいたしたいと思います。まず、最初に今回調査会ができましたけれども、私は調査会とういうものは、この間から、どういう性格であるとかこうとかと言われましたけれども、調査会などは作る必要がないじゃないか、こういうふうに思うのです。というのは、この食管会計の赤字というものは、中間経費の節約によって多少減ずることはできましょう、しかし、結論としては、この赤字というものは、一般会計から繰り入れるか、消費者価格を上げるかの二つなんです。もう統制を撤廃したらこれは別であります。統制を継続している以上は、この赤字というものは出て、そしてこれは一般会計から繰り入れるか、あるいはこの消費者価格を上げるかのいずれかであります。ところが、私たちは立場は違いますけれども、この消費者価格の値上げというものは、それなりに筋が通っているのです。今申し上げた見地からすれば、筋が通っているのです。だから閣議決定をされて、これを予算にそういうふうに実施されようとしたわけであります。ところが、たまたま総裁が岸さんと——今内閣総理大臣になっておられますけれども、岸さんと石橋さんの間に激しい争いがあって、七票の奇跡で岸さんは破れました。そうして熾烈なる党内派閥抗争が展開されたことは、天下周知の事実であります。この派閥抗争のあおりを食って、一たん閣議決定したこの方計が葬り去られたわけであります。わが国の憲政史上では、おそらく浜口内閣のあの減俸案以来の初めての事態ではなかろうかと思うのであります。これ一つでも、ほんとうは石橋内閣というものは政策の行き詰まりとして、退陣をしなければならない事態ではないかと思うのであります。これだけでも、私は石橋内閣は病気を待たないで退陣をしなければならぬ。政策の行き詰まりというものは、こういうものだと私は考えられるのであります。そこで、これは今さらこの学識経験者とか何とかを呼んで、調査をする必要はないことなのであります。現に井出さんも、それから大蔵大臣も必要だと思ってこの値上げを決定されたのが、たまたま党内の派閥抗争の結果、こういうことになった。その後文字通り手のひらを返すように党内の主流派、反主流派というのが位置を異にしたのでありますけれども、ともかくその派閥抗争のあおりを受けてだめになったのでありまして、だからこんな調査会などはやらなくとも、党内の意見の調整さえすれば、私はいいのじゃないか、これはごまかしじゃないかと思う。総理大臣にお尋ねいたしますが、これはどういうふうにお考えになりますか。私はどうしても納得できないと思います。私は値上げがいいとか悪いとかいう議論をするわけじゃありません。先ほどから申し上げたように、値上げをするということは、それなりに筋が通っておる。それがこういうふうになった、必要がないじゃありませんか。こんな人騒がせな調査会をやらないで、党内で意見の調整をして、——石橋内閣は派閥均衡内閣といわれましたけれども、岸さんは今度内閣総理大臣になられて、大いに政治的の手腕を振われて党内の各派閥の意見の調整をする、あるいは派閥の解消をやられれば、直ちにこういう問題が解決するじゃありませんか、この点をお尋ねいたします。
  157. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 食管特別会計の赤字の補てんの問題につきましては、今お話がありましたように、消費米価を上げてそれを補てんするという方法も、一つの方法として考えられるわけでありまして、最初石橋内閣におきましては、閣議で一応そういう決定をいたしましたことも御承知通りであります。その後いろいろと世間におきましても、これに対する議論がございますし、小林君は党内派閥のために、そうなったとおっしゃいますけれども、そんな簡単な問題ではもちろんないと思います。従ってこの重大な国民生活にも影響があり、また、世論もいろいろとこれに対する批判もある重大問題であり、同時に食管特別会計自体の内容を見ますると、いろいろの点においてこれが健全化、合理化を考えていかなければならぬ点もございます。これらの点を十分一つ根本的に検討して、これに対する対策を立てていくことが、この際必要であるという見地に立って、われわれはその調査会を置いて、そうして特に食管会計全般にわたって再検討をして、その結論が出れば、その結論を尊重するけれども、われわれ内閣が責任をもって、この問題の結論を最後的に決定するという意向を持ちまして、調査会を作ったわけであります。
  158. 小林孝平

    小林孝平君 私はただいまの御説明では、納得をすることができないのであります。また、多くの国民も納得できないと思うのであります。その値上げの可否についての問題ではありません。その経過についてであります。しかし、この問題はこの程度にいたしまして、大蔵大臣にお尋ねいたします。あなたは、当初閣議決定をされますこの米価の値上げの原案をお作りになったわけでありますが、今はどういうふうにお考えになっておりますか。値上げをすべきであると、その当時と同じに考えておられますかどうか、お伺いいたします。
  159. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) ただいま総理大臣からお答えになった通り、事重大な問題でございまするから、調査会の意見も聞き、それを参考にいたしまして閣議できめたいと、ただいまどちらにも私は考えて参っておりません。
  160. 小林孝平

    小林孝平君 私は総理大臣はそれでいいと思いますが、大蔵大臣が全く白紙だなどというのは、これは少しおかしいと思うんです。それでは、あなたはあのときは値上げをすべきであると、世間では、井出農林大臣を強引に値上げを納得させて、あなたが井出農林大臣を強引にこの決定に持っていったと、井出さんは人がいいから、これに引っ張られた、こういうふうにいわれているのです。そのあなたが今白紙というのは、いつから、どういうことを動機にして心境の変化を来たされたか。私はこれは大蔵大臣として当然御説明になってしかるべきだと思うのであります。(「君子豹変」と呼ぶ者あり)
  161. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) いろいろ揣摩憶測をしているようでございまするが、このことは、農林大臣が一番よく御存じでごいざます。そうして閣議決定いたします場合におきましても、当初は値上げの案を出しておりません。閣議でいろいろな話がありました結果、値上げをしたらどうかということにきまったわけでございます。私といたしましては財政当局として、内閣できまったことにつきまして、予算を編成するだけでございます。自分といたしまして今値上げがいいか、悪いかということを申し上げる段階に至っていないのであります。
  162. 小林孝平

    小林孝平君 私の質問は、そういうことで、あなたは責任をもって米価の値上げの必要があるということで、予算を編成されようとしたわけです。それをおやめになったから、どういう動機で、あるいはいつから、そういうふうに突如白紙と、値上げというああいう大騒ぎから、急に白紙になられたのか。これは普通の方なら、それで私は納得しますけれども、いやしくも岸内閣の支柱ともいわれる大蔵大臣が、そういうことでは私は納得できないんです。どういう動機で、いつからそういうふうに白紙になったのか。これは先ほど君子豹変という言葉が言われておりますけれども、そういうことでは、これは片づかないんじゃないかと思います。
  163. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 内閣でこれは白紙に返すという瞬間から、同じように白紙になったというように思うのでございます。
  164. 小林孝平

    小林孝平君 この調査会のおもなる審議事項は、昨日御答弁がありまして、消費者価格、中間経費の節減、麦価体系の調整と、こういう三つをやると農林大臣は言われました。総理大臣はさらに広くその解釈をされておったようでありまして、梶原委員からこれを指摘されましたけれども、これは要するに、この調査会では何をやるかはっきりしないで、ともかくまあ白紙にしたんだから、こういうものを作ってやろうというようなことで、お作りになったのですから、やはりその内容が食い違っているんだと思います。しかし、これは私追及いたしませんが、それでこの際、中間経費の節減を考えると、こういうふうに農林大臣は言われたのでありますが、一体食管会計の中間経費というものは、どういうものが中間経費と言われるんですか。
  165. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) これは厳密な定義というほどではございませんけれども、一般的に私どもが中間経費と呼んでおりまするものは、集荷手数料でございますとか、運賃、保管料、事務、人件費、金利、こういった、これは政府経費ということになります。さらには、このほかに販売業者のマージンというふうなものも、一つの中間経費と考えれば考えられる、こういうふうに存じております。
  166. 小林孝平

    小林孝平君 ちょっとここで大蔵大臣にお尋ねいたしますが、衆議院でずいぶん問題になりました、また、参議院においても問題になりました三十一年度の赤字百六十一億を、なぜ今年補正予算に組まないかという問題、これはほとんど論議をし尽されたようでありまして、ともかく政府は組まない、これは不確定であるから組まない。こういうふうに、終始そういう答弁をされておるわけであります。そこで、不確定で困る、これは決算がきまらなければ不確定である、不確定であるというのは、もしこの年度末の在庫数量の評価がえ、いわゆる修正売価主義で、この食管特別会計は年度末に評価いたしますが、この評価がえによって、この数字が動く以外に動くものはほとんどないわけです。そこで、それが衆議院でも問題になったのでありますが、評価がえをやって、損失を減少して消費者に負担をさせて、そうしてその分をこの三十二年度で、あるいは、きのうは大蔵大臣は、場合によれば三十三年度でこれを補正する、こういうふうに言われておるのであります。  そこで問題は、そういうことでこの唯一の動く因子というものは、この評価がえの値段だけなんです。そうすると、この調査会は今のところ七月まで存続することになっております。七月末までにきまらないとき、あるいは七月の末にきまったとしても、それから政府の態度をきめ、それから米価審議会にかけ、そうしてその結果を待って、政府が上げるか下げるかをきめるのは、八月以降になります。そうすると食管の決算は、七月に農林省で作って、大蔵省に出すのでありますから、この今の手続をやっていくと間に合わないのです。当然これは間に合いません。間に合わなければ結局、今からこの評価がえによる変動の因子というものはなくなるわけです。従ってこれはこの際、三十一年度で補正をしたらどうか、こういうように私は思うのです。この点は従来どなたも御質問になっておらないようでありますから、農林大臣、大蔵大臣にお尋ねをいたします。
  167. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 三十一年度に予想されまする百六十一億の数字は、まだ年度が結了しておりません関係から、若干の不確定要素はあろうかと思うのであります。小林委員はそれはごく僅少であって、むしろ評価がえから来るところのものが響いてくるのではないか、こういう御指摘でございますが、その臨時食糧管理調査会におけるいかなる結論が出るかということも、まださだかでございませんので、まあそこから生れてくる、かりに万一値上げというような線が出まする場合は、これはやはり修正売価主義をとりまする以上、在庫評価に響いてくるであろう。ただ問題はその時期というものもございましょうが、これらはやはり調査会の結論を待ってということに相なると思います。
  168. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 今回内閣に設けられます調査会は七月三十一日をもって終ると書いてあるのであります。従いまして、結論が七月三十一日に出ると私は解釈いたしておりません。それまでに出ることと思うのであります。そうしてまた、三十一年度の赤字見込み額について補正予算を組みません理由は、小林さん御承知通り、食管会計法の付則第二項におきましては、食管会計の赤字については決算を待ってこれを一般会計から補てんすると、こう書いてあるのであります。そういたしますと、私は、原則は、決算を待って補てんするということが定められたと思うのであります。で、逆に申しまするというと、決算を待たずに補てんする場合には、特別に法律を要することになっておりまする等の関係から、決算を待って食管会計の赤字を埋めるのが本則と私は、心得ておるのでございます。異例の場合は御承知通りございません。そういうことと噛み合せまして、昭和三十二年度におきましては特別調査会を設けて合理化を検討する、こういうことに相なっておりますので、こうを考え合せまして、今回は補正予算を組まずに、決算を待って一般会計から繰り入れるという考えで進んでいるのであります。
  169. 小林孝平

    小林孝平君 今の、三十一年度に補正をすべきか、二年度にすべきかということは、衆議院において相当論議され、財政法の立場あるいは食管特別会計法の立場からいろいろ論議されました。大蔵大臣のようなお考えもありますけれども、そうでない考えもある。三十一年度に補正してもこれは違法ではないという考え方もあるわけです。私は現実問題としていろいろ考えまして、これは間に合わない。だから今やったって——やった方がいいんじゃないかということを言ったのです。私は別にこの問題で政府を追及しようとは思わないのですけれども、こういういろいろの問題があるということを政府はよくお考え下さいまして、この食管特別会計の問題を研究していただきたいと思うのであります。ただ、十五人の委員を並べたらそれでいいというものでは私はないと思うのでありますので、この点を申し上げたわけであります。  そこで、井出さんにお尋ねいたしますが、あなたは中間経費の、いろいろ食管特別会計を調査してむだがあるということを総理大臣もおっしゃったのでありますが、今の中間経費の、あなたがおっしゃった人件費、運搬費、保管料、金利、集荷手数料、こういうものの一体どれを節減されようとしておるのでありますか。私はあなたが御答弁なさる前に、私が研究したところを申し上げすまと、まず最初に運賃であります。運賃にどれだけその節減の余地がありますか。一体食糧の運賃は、あれですか、調査会の結論によってやるのですか、この運賃というものは。運賃は上るのです。これを節減するというのは、この運賃というものは——運輸大臣おられますか。
  170. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) おります。
  171. 小林孝平

    小林孝平君 この内閣にできました調査会で米の運賃というものはきまるのですか。
  172. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) 米の運賃はもう、調査会でなくて、今から、今度の内閣できまっております。(「よくわからぬ」と呼ぶ者あり)
  173. 小林孝平

    小林孝平君 こういうふうに、これはもう運賃は下るあれはありません。もう上げたのですか。
  174. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) 今衆議院に提案してございますが、その御決議を願えれば上ることになります。
  175. 小林孝平

    小林孝平君 それは今申し上げたように、調査会ではこれは研究の余地がないのです、この問題については。しかも、これは節約どころか、予算書には、正確に覚えておりませんが、たしか一三%になっているはずです。しかし、これは運輸省はもっと上げる原案になっているのじゃないかと思うのです。運輸大臣、幾らですか、米の運賃は。
  176. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) 大体が平均して一割三分ですが、米だけ今幾ら上るかわかりませんので、政府委員に……。
  177. 小林孝平

    小林孝平君 こういうふうにいわゆる食管特別会計というのは、今回の予算において最も重大な問題になったのです。先ほどから申し上げるように、内閣のこの閣議決定が引っくり返るような大騒ぎになったのです。それだというのに、その運賃もわからないというのじゃちょっと困ると思うのですが、まあしかしこれはいいです。(笑声)  次は保管料ですよ。保管料についても調査会の結論によるのですか、農林大臣。
  178. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 先ほど中間経費とは何ぞやと、こういう御質問でございましたので、かよう、かくかくな内容である、こういうお答えをした次第でございます。そこで運賃のごときものは、これは値上げ率は決定をしておるにしましても、たとえば現在の食管会計において運賃の点に果してむだがないのか、もう少し能率的な輸送をやるならばどうか、よく交錯輸送があるというふうな御指摘もあるのでありまして、そういうふうなあたりにも検討の対象になるだろう。まあ保管料についても、その他にしましても、そういう意味で食管会計に、この臨時調査会における検討の対象になるであろう、こういう意味でございます。
  179. 小林孝平

    小林孝平君 そんなことはふだんならいいのです。今調査会は七月まで間に合せなければ間に合わぬのに、そんなことをやって間に合いますか。現に、この平均一三%の値上りは運輸大臣、一六%なんです、あなたに教えますけれどもね。一六%以上上ることに大体なっているのです。農業大臣、これは運賃は上るのですよ。むしろ節約の余地はないのです、運賃は。  それで次は保管料は一体、御答弁がなかったけれども、これも調査会で結論を出してそれによってきまるのですか。私は保管料が調査会できめられる何というのは初めて聞いたのです。運輸大臣にお尋ねいたしますが、保管料の監督はあなたなんです。今度調査会で保管料というものはきまるのですか。どういうことなんです。いつからそういうことなんです。
  180. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) 今保管料の値上げというようなことは問題になっておりません。(「そんなこと聞いておりゃせぬ」と呼ぶ者あり)
  181. 小林孝平

    小林孝平君 それはほんとうですか。保管料の値上げは当分ないと承知していいのですか。これはみんな発表されてそういうことになります。
  182. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) ただいま現在上るということにはなっておりません。(笑声)将来のことはわかりません。
  183. 小林孝平

    小林孝平君 運輸大臣の答弁は、先ほどの自治庁の答弁と同じように、そういうことはこの国会では許されませんよ、まじめに審議するのに。保管料は上るのですか。上りません。そうですかといえば今度はただいまのとこは、なんというのはおかしいじゃないですか。委員長にも先ほど申し上げたでしょう。そういう答弁があったら注意をして下さい。委員長、ただ聞いておればいいのじゃないのです。お願いいたします。(笑声)  そこで、保管料は近々上らないのでしょうか。
  184. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) 保管料はただいまのところ上るということは聞いておりませんが、取り調べて……。
  185. 小林孝平

    小林孝平君 これは大へんな問題です。こういうふうに中間経費をこの調査会で調べる、それでこれが問題なんです。保管料は、ひそかにこの保管料の値上げが行われるのじゃないかということを私は承知しているのです。私は調査会の委員にはなりませんけれども、(笑声)このくらいのことはやはり調べなければだめじゃないですか。大体調査会の委員にはこのくらいのことを調べている人はあるのですか。こういうことをみな調べなければ調査会の機能を発揮できないのですよ。保管料だってこれは下るはずはないじゃないですか。むしろ上るのですよ。運輸大臣もそういうことでは困ると思うのです。これは重大な問題じゃないですか。内閣のこの調査会の問題は、まずこうやってきますと、すでに井出さんが指摘された、運搬賃も下る見込みはない、保管料もない。次は金利です。食糧庁は全部借入金で仕事をやっておるのです。政府はそれでよいと考えているのですか。私は農林大臣にお尋ねします。この食糧庁の経費は全部借入金でやっております。たとえば、そうしますと、食糧庁の役人の給料までみんな利子がついてる、こんなことでいいのですか。これは大蔵大臣と農林大臣にお尋ねいたします。
  186. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 先ほども申し上げましたが、この中間経費として私が幾つかの項目を申し上げましたこれらがやはり一つのコスト計算というような場合、それぞれのファクターになるわけでございますので、検討の対象になるであろう、こういう意味において私は申し上げた次第でございます。従いまして、たとえば金利の点につきましても、食糧証券であるならば金利はどうであるとか、これをもし国庫余裕金をもう少し入れるならばどういう節約ができるとか、まあ人件費につきましても、これは一体、今御指摘のような線で、金利のつく人件費というものは一体いいのかどうかという御検討が今回調査会においてやはりあるであろう、こういうふうに申し上げたわけであります。
  187. 小林孝平

    小林孝平君 農林大臣は、国庫余裕金等を使うと、こうおっしゃいますけれども、そんなものはふやしたって大したことはないのです。またこの余裕金というものは安定したものではないのです。だからこんなものを使うというのは、すでにこういうものに非常にたよるということはおかしいのです。私はこの際、ちょっと話が横道に入りますが、こういうふうに、食糧庁のように大規模の仕事をやってるのですから、私は食管に基金勘定を設けて、これだけの事業でありますから、資本金を作ったらどうですか。一般会計から基金を出したらどうかと思うのです。基金勘定を設けられる意思があるかないか、そういうことが研究の対象になるかどうかということを大蔵大臣にお伺いします。
  188. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 食管会計におきまして、いろいろの問題はたくさんあると思います。資金を別に作ったらどうかということは、まだ私は聞いておりませんが、そういう議論も出てくるのじゃないかと思います。そうしてまた政府の余裕金をどういうふうに使うか。今は食糧証券の引き受けと外貨の証券の引き受けに主として使っております。それは二対一ぐらいで食糧証券が多くなっておりますが、これもお話の通りに固定した金額ではございません、随時動きます。いろいろ問題があると思うのであります。また食管会計では、御承知通り、農産物価格安定法の損もそれで見るということになっております。各般の問題につきまして、学識経験者の意見を聞いてきめるべき問題であると思います。
  189. 小林孝平

    小林孝平君 そこで本筋に入りますが、井出さんは、先ほど、人件費、運搬費、保管料、金利、集荷手数料、こういって言われました。そこで私は運搬費も節約の余地がない、金利も保管料もないのじゃないか、こう言い始めたら、あわてて、いや、そのほかにあると言われましたが、こういう大きな、あなたがあげられた項目に節約の余地はないのですよ。あるとすれば、あなたは食糧庁の人員整理をやるということだけなんです。井出さんは、今回の調査会において、食糧庁の人員の整理をやるというところに結論をもっていかれようとしておるのです。こうやっておけばそういうふうになるじゃありませんか。さらに意地悪くいえば——私は、井出さんだからこんなことは言いたくありませんけれども、意地悪くいえば、あなたがあげた人件費、運搬費、保管料、金利というものは、すべて節約の余地がないのです。節約の余地のあるものは、配給のマージンだとか、外国輸入食料諸掛りだとか、製粉精麦の加工賃だとか、これは故意か偶然か知りませんが、これを除いているじゃありませんか。こういうところに私は今の自由民主党内閣の性格があるのじゃないか。節約できないものをあげて、節約のできるところは隠しておる。しかも、これは業者と関係しておるのではありませんか。井出さんともあろうものが、そういうことで農政をやられては困ると思うのです。あなたは敢然として、かりに次の内閣改造に閣僚の地位を去るとしても、(笑声)もっと純真の態度で臨まなければならぬ。こんなことで——これは私だから、あなたは故意じゃないと、こういうふうに解釈したけれども、これはほかの方がおやりになれば、あなたはこれを隠したと、こういうふうにあなたを追及されるだろうと思うのです。私はあなたであるから、まあ故意か偶然かと言いましたけれども、そういう態度ではだめです。そんなことでこの調査会をまとめようとお考えになっても、これは七月中にまとまるはずはないのです。七月中にまとめるためには、あなたは原案を出さなければなりません。しかるに政府はこの調査会に原案を出さない。原案を出さないで調査会がまとまるはずがないじゃありませんか。こうやって考えれば、節約の余地は、この今のような売却の仕方をかえるとか、いろいろこの関係の、あげましたものの企業の合理化にあって節約の余地があるのみであります。あなたはそういうところに手を触れないで、自由民主党を支持するこういう業者に対してはこれをたな上げにして、そうしてできもしない一々——これはしろうとならそれはあなたの説に納得するかもしれません。私はそういうことでごまかされません。もっとまじめにあなたはおやりになるべきだ。私は今日はそういうはったりでなく、何か政府が気がつかない、あるいは今まで存じない点をあなたにお教えするというわけですけれども——指摘して反省を求めようとしたのですけれども、あなたはそういう態度ではだめです。
  190. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 今お答えをいたしました項目は故意か偶然かというお尋ねでありますが、これは全く故意で落したのではございません。中間経費と言われますならば、こういうものが数えられる、これが私は一つ一つが節約の要素である、あるいはそのしわを事務、人件費に寄せていくのだ、こういうようなことは決して考えておるのではございません。従って、小林さんのおっしゃる外国食料の輸入のあり方というものは一体どうなのか、あるいは業者のマージンというものは今日の形で適正であるのか、こういう問題も当然臨時調査会においては論議の対象になるアイテムである、こういうふうに考えております。
  191. 小林孝平

    小林孝平君 これは大蔵大臣が外に行かれましたので、次の大豆の問題についてちょっとお尋ねいたそうと思いますが、これは帰られてからやります。その間に漁業問題についてお尋ねいたします。通産大臣もおいでになっておるのですが、最初に私はあなたにお尋ねしようと思ったけれどもおいでにならないので、これからいたしますから、ちょっとお待ち下さい。河野さんは一体どうなりました……。(「河野さんの来るまで暫時休憩」「質問時間に入らないよ」「休憩々々」と呼ぶ者あり)それなら先をやります。  私は総理大臣にお尋ねいたしますが、中小企業の振興、保護は目下の主要なる課題であり、また岸内閣も非常にこれを重視されておるわけであります。それで、これに関連して、中小企業の振興、保護のために外貨の割当についてもある程度の考慮を払う必要があるのではないかと私は考えます。また首相は一昨日の本委員会における御答弁でも、経済にある程度の規制を加える必要があると、こうおっしゃっておられるのですが、この点はどういうふうに総理大臣お考えになりますか。
  192. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 中小企業対策の問題は、日本産業政策としても、また社会構成上から見ましても、この対策は非常に必要であります。それで、これに対する施策は、なかなかいろいろな方面からやっていく必要があると思います。あるいは金融の面から考えなけれなばらぬ、あるいは税金の面から、あるいは組織を強化するというような面から、またさらに技術の改善であるとか、あるいは技術指導の点であるとか、設備を改善しなければいかぬとか、いろいろな点があると思います。今御指摘の外貨の割当の問題につきましては、今政府部内でいろいろな点から検討中でございまして、その結果を待ってきめたい。かように考えております。
  193. 小林孝平

    小林孝平君 今の外貨の割当について、ただいま申し上げた中小企業の振興、保護の立場から、相当私は考えなければならぬと思うのですが、通産大臣どうお考えになりますか。
  194. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 中小企業の振興と外貨の関係でございますが、私はやはり通商政策というものと、国内の中小企業の保護政策というものは、これは完全に分ける必要がある。で、これを関連させているというところに、今までいろいろ外貨制度の運用に問題が多かったと思っております。で、まあ現在の日本のやり方は、大体主要メーカーに直接外貨を割り当てるという方式をやっておりますが、これは本来ならやはり商社割当という方向に一歩一歩持っていくべきものだということが一つと、それからやはりAA制にできるだけ移行するのがほんとうだと思いますが、西欧諸国で八〇%、九〇%のAA制をやっているのに、日本では二〇%、戦後ようやくここまできましたが、やはり将来としてそういう方向にいくのが本筋だと思うのですが、ここで問題なのは、そういう方向をとった場合に、国内の中小企業、内地生産者をどう保護するかということが問題で、この保護施策ができないときにこれをやると、国内生産者を不当にいじめるということになりますので、貿易の方向がそうきまるのなら、それに対する国内の保護措置というものをあらかじめとっておいてやらなければ……、準備なしでやることはできない。今、日本のいろいろな物資の問題について、AA制へ移行したいという問題がありますが、この措置が国内でとられていないものをやるということは、非常に大きい問題で、今あなたの御指摘になりましたような中小企業に直接響く問題でございますから、その辺のかね合いで、準備のないものはなかなかやらないと、一定の準備ができたら徐々にその方向に移行すべきだ、こういう考えで、為替政策とやはり国内の保護政策というものは、関連させて考える必要があろうと考えております。
  195. 小林孝平

    小林孝平君 私はこの問題に関連いたしまして、農林大臣にお尋ねいたします。  農林大臣は、日本の農業の発展に最も重要な意義のある畑作振興について、一体どういうようにお考えになるか。振興に一番効果の上るものは何であるとあなたはお考えになりますか。私は、この畑作振興に最も効果のあるものは、いろいろありますけれども、価格政策だと考えておるのであります。農林大臣の御所見を先にお伺いいたしましてもよろしゅうございますが、時間の関係で、私はこの価格政策がいかに重要であるかということを例をあげて申し上げれば、過去においても、日本の畑作振興は、価格政策を重点としてやってきたわけです。たとえば麦についていえば、三十年度においては三十七億円、三十一年度においては三十二億円、三十二年度においては七十四億円の支出をするわけであります。また澱粉についても三十年度は二億円、三十一年度は六億円、三十二年度は二億円というように、相当の、きわめて十分とはいいませんけれども、相当の額が、価格政策として使われておるわけであります。大臣は、この畑作振興についてどういうふうにお考えになりますか。私の意見に同調されますか。あるいはそうでない別の方法があると、こうおっしゃいますか。お伺いいたします。
  196. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 日本の従来の農政というものが、どちらかというと水田偏重であって、畑作が比較的閑却されたと、こういうふうな御批判を受けておるのでありまして、私はやはり畑作には相当に大きな将来の可能性があると、こういうふうに考えておるものでございます。従いまして、その一つは、今御指摘の価格政策があろうと思いまするし、一方においては、技術改善その他によるところの余地もまだ十分にあろうかとこう存じます。
  197. 小林孝平

    小林孝平君 農林大臣もお認めになったように、日本の農業の特質から考えまして、畑作振興には価格政策というものが最も重大な意義を持っておるのです。  そこで、私はこの畑作の重要なものである大豆について問題を限ってみたいと思うのであります。そこで、今大豆が輸入されておりまして、莫大な数字が入っておりますが、この大豆には今外貨割当制度をやっておりますが、これをやめまして、AA制——自動承認制に移行した方がいいと、またすべきであるという強い意見が一部から起きておるわけであります。そこで、この問題について農林大臣、通産大臣は、この大豆の自動承認制の移行について、どういうふうなお考えをお持ちですか、お伺いいたします。
  198. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これをAA制にするかしないかというのは、目下両当局で慎重に検討中でございまして、まだ結論を私どもは出しておりません。しかしこれまでのいきさつから申しますと、さっき話しましたように、この国内産業を保護するための価格政策と、外貨政策は、一応切り離して考えたいと申しましたように、これをAA制に移行する方がいいということでしたら、あらかじめその準備措置が必要だということになりますので、昨年来与党側におきましては、この特別研究会ができておりまして、まずこれをやるためには、安くなったときに政府が買い上げをやって、農民を保護する必要があるというので、これは農産物価格安定法の中に大豆を加えるという法律を去年作りまして、それからもう一つは、関税を上げて国内産業一を保護するというので、関税も昨年これは上げることにしました。そうしますというと、消費者がみんな高いものを買わせられるということになりますので、関税を上げ、そうして安定法の中へこれを入れる。それからもし中小企業で買う力がないというなら、共同で購入する組織を作らせるのがいいというので、この四月から、そういう組織を作らせるというふうになってきましたし、もし外国から自由に入れるということをやったら、なるたけ国内で増産をさせて、そうして、農家の所得をふやすという方法に、保護政策もとらなければならぬというので、今年の予算の中には、関税で入った収入の中の相当部分を、増産奨励金に出すという措置もとりましたので、これについては、万般の措置が現在とられておりますので、それをとっておいたあげく、AA制に移行しないということは、いたずらに消費者をいじめることになるのじゃないかというようなことで、AA制に移すための準備をずっとやってきたのが、過去一年間のいきさつであろうと思います。ところが、問題は、もし米国側の大豆が非常に安かった。それが日本に入ってくるということだったら、政府が一たん外国から買ったものを、政府に二度買ってもらうという事態が起るかもしれぬ。そうすると、それを政府が安く売らせられたのでは、食管会計に赤字を生ずるのだ。一体どのくらいの値でくる見込みかという値段の計算がいろいろございますが、大体食管に赤字を出すという事態はこないだろうという見方と、そうじゃなくて、依然として食管の赤字を生ずるおそれもあるのだという見方もございまして、今、関係当局間で、そこらの検討をやっておりますので、  これがほんとうに見きわめがついたら、国内産業には響かないし、一般消費者にも迷惑をかけない、そうして支障がないというなら、これはAA制に移すべきであるという結論になるかもしれませんが、今そういう問題についていろいろな事情を検討中でございますので、今日まではきまっておりません。
  199. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 経過につきましては、通産大臣からお答えをした通りでございますが、また、ただいまの御発言にもありましたように、諸般の情勢を十分に検計しなければならないものが残されております。鋭意検討中でございます。
  200. 小林孝平

    小林孝平君 これは、通産大臣は通産大臣としての立場で、きわめてはっきりと御答弁になったわけであります。ところが農林大臣は、研究中——あなたもそういうことでは私は困るのです。そういうことが、農村の貧困がいわれ、今、日本には農政がないといわれる原因なんです。農林省が研究中ではおかしいと思うのです。農林省は、これは絶対反対しなければならぬ。通産省が研究中というならいいのですが、これはおかしいです。それも井出さんは非常に期待されて農林大臣になったけれども、こういう問題を研究中なんというから、やはり、ということになるのじゃないかと思う。(笑声)しっかり各方面の意見を聞きたいなら、これから私が申し上げるのをよく聞いていただきたい。明日は閣僚懇談会があって、これがかかるのじゃないかと思うのです。あなたが通産大臣に負けて、四月の一日からAA制に移行するようなことになったら、これはちょっと長野に帰れませんよ。また、日本の農林大臣として、その地位にとどまることができないのじゃないかと思う。しっかりと腰を落ちつけて聞いてもらはなければならぬと思うのです。  そこで、今通産大臣も言われましたけれども、この外貨割当制をやめれば、農産物価格安定法があって、価格が下落しても買える、こういうふうなことを言われているのです。また、そういうことでいいという意見もあるのです。ところがこの安定法による価格は、食管会計の米の場合と違いまして、この価格は最低限にきめてあるのです。再生産を補償する価格でも何でもないのです。今通産大臣は、アメリカから入ってくる値段は大体そう安くならないからいいのじゃないかと言われたが、そんなことは当てになりませんよ。アメリカはもうどんどんと農産物ができているんです。どんどんと今世界の農業恐慌は現実に進展しているんです。農産物の価格は安くなっているんです。どこで計算されたか知りませんけれども、そんなことでは世界の経済の動きはわからぬと思うのです。またある年は高い。ある年は安いから、平均して幾らでくるだろう——そんなことはだめなんです。一回安いものがきたら、もう一ぺんで参ってしまうんです。日本の農業の経営の規模はきわめて脆弱であります。そこで、今この外貨割当をやめて、自動承認制になれば、アメリカから入る安い大豆の価格を、あなたがさっき言われたように、アメリカの農産物の価格を、日本国民の負担で支持することになる。通産大臣はこんなことを軽々しく言われますけれども、こういうことをやることが——私はこんなことを言いたくありませんけれども、こういうことをやられるから、自由民主党の内閣は一部からアメリカのかいらい政権だとか、あるいはアメリカの従属国であるというようなことを言われるのです。私はこういう言葉を使うのは非常に残念ですけれども、こういうことをおやりになるから、そういう意見が出てくるのです。通産大臣は一部の人たちの強い圧力に屈されたかどうか知りませんけれども、西欧諸国は何パーセントAA制にしているとか何とかと言われるが、アメリカ、西欧諸国と日本の経済の規模と、その内容は全然違うのです。それを一律に考えて、こういうことを外国がやっているから日本も——そういう思想はやがて再軍備にも通ずるのです。世界各国が再軍備しているから日本も再軍備しよう、こういうことになるのです。そんな外国のまねなどしないで、もっと自主的に、日本の経済をどういうふうに発展させるかということを考えていただかなければ困ると思うのです。私は、農業関係の仕事を長くやっておりますけれども、農業主義者ではありません。日本の農業はもっと経営を安定させ、そうして国際農業に対抗できるようにしなければならんという主張を持つものでありまするけれども、今の通産大臣の説には、私は納得できません。また農林大臣が、安易に、明日の閣僚懇談会で通産大臣のこの意見に屈して、自動承認制に移行するようなことがあったら、私はこれは全国の農民は納得できないと思うのです。先ほどまた農業のことについて、通産大臣は、国内の大豆を増産するとおっしゃいました。そんなことは、簡単に言いますけれども、そうはいかんのです。また、増産をしても、この問題は違うのです。生産費の問題なんです。量をよけいにしたって解決しないのです。農業のことは私の方がちょっと専門家です。(笑声)そんなことはあまりおっしゃらないで、もっとまじめに考えたらどうです。私はあなたの御答弁を今求めようとしません。もしあなたが西欧諸国の例を引かれ、そうしてやられるならば、これよりも先にやらなければならぬ問題があるのです。たとえばテンサイ糖についてでありますが、テンサイ糖振興法によって、わが国のビート生産業者を保護する価格になっている。これは農産物価格安定法とは全然違うのです。ビートはビート生産業者が保護される価格になっている。従って、かりに砂糖を自動承認制にしても関係がないのです。多少あるかもしれませんけれども。大豆の場合とは違うのです。自民党は自由主義経済を政策の基調にしていられるのですから、自民党の政策からいえば、むしろ砂糖こそは自動承認制にしなければならぬ。なぜ通産大臣は砂糖の問題をおやりにならぬ、これはいろいろ議論がありましょう。私はあなたの御答弁をいただこうとは思いませんけれども、こういうようなあなたのやり方が、砂糖をなぜやらないかということは、はなはだこれも失礼でございますが、砂糖資本と関係があると言われております自民党の一部の方のいろいろのことを考えましておやりにならぬのじゃないか。岸総理大臣にもこれはぜひ聞いていただきたかったんですけれども、退席されました。こういうことをあなたは簡単に、明日の閣僚懇談会でおきめになるということでは私は困ると思うのです。こういう、もしおやりになるなら、まず砂糖からおやりになっていただきたい、みんなが言ってます。砂糖の外貨割当制度は、これは糖業資本の擁護であると、また、それはそれでいいでしょう。自由民主党の政策の基調からいって、そういう人を保護するのだから、それなりにいいかもしれませんけれども、それだけでは私は困ると思います。しかも研究中とあなたはおっしゃいますけれども、この外貨割当は四月の一日にきまるのです。やるならやるとはっきりおっしゃればいいのです。これは私は答弁は要りませんけれども
  201. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 何か自由党の政策ということにからんでいろいろ言われるのですが、私の考えるのは逆でして、今、外貨を割り当てられることによってもうけるという余地が非常に残っておりまして、そのために自分に外貨を割り当ててくれ、割当制度にしろ、需要者割当にしろというふうに、この行政が非常に不明朗になっているというのが現状でございますので、私はむしろこれを解こう、外貨を割り当てられることによってもうけるというものをなくするという方向へ持っていこうというための方向を、ここで確立する時期だと思っていますので、何かそういうものと結びついておるのたとしたら、今言ったように、その人に外貨を割り当てることが一番もうからせることですが、それではいけない、やはり商社割当という方向へだんだんに移行して、必要な人が国内で必要な量が入れられるというふうにしていくことが行政の本筋であって、そうじゃなくて、大メーカーにみんなそれだけ割り当ててしまうという行政について、私は今検討しております。従って砂糖も同様、今あなたのおっしゃられる通り、検討の対象の一番大きいものでございます。ついでですから大豆を申し上げますが、今大豆について言われましたが、政府が割り当てるときに、割当以上の希望をみな出して去年は割当しておって、実際にそれだけ国内に入れたら油が下る、何が下るで損するからというので、割当を取っておって、みな事実上入れないですから、ここでAA制に移行したら、不必要なものは日本に入ってきません。割当があるからもうかるということで割当を競っておるのですから、それだけ自由にしたら、必要な量以外は日本に入ってきません。そうしたら外貨の大きい節約になるのでございますが、ここはそういう意味でなしに、ほんとう日本の貿易政策というものを検討するときで、事業家に損させてもこの政策の筋を立てたいと思ってやってるんですから、この点は一つ誤解のないように、さっきのお話のように私はやっているわけではありませんから、これは御承知を願います。
  202. 小林孝平

    小林孝平君 私は、先ほど申し上げたように、この問題についてここで議論しようとは思いませんけれども、農林大臣はよほどしっかりしていただかなければならぬ。それから通産大臣は、今のような御議論ならば御議論で、初めからそうおっしゃればいい。先ほどはAA制にするためにこの予備措置をした、AA制にするのがいいならそんなことは必要ないじゃないですか。矛盾していますよ、理論が。しかしこれは、きょうは時間の都合もありますから、いずれ他の委員会等でいろいろ御高見を承わりますが、ともかく、私はこの問題については、農林大臣は検討中なんといってのんきなことを言って……。あすです、閣僚懇談会は。しっかり一つやっていただきたい。全国の農民の希望にこたえられるようにしていただきたいと思います。ところで河野さんはどうなりました。(「休憩々々」と呼ぶ者あり。)    〔栗山良夫君発言の許可を求む〕
  203. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) ちょっと待って下さい。(栗山良夫君「ちょっと待てということはない。議事進行で発言を求めているのに許さないとはどういうわけだ、そんな規則があるか」と述ぶ)今、発言を許しますけれども……ようございます。
  204. 栗山良夫

    栗山良夫君 きょう午前中から小林君は重要な問題について前河野農林大臣の当委員会に対する出席を求められた。ところが、その交渉に当られた委員長の報告を拝聴いたしておりますると、どうも果して御本人が誠意をもって出席をされる御意思があられるのかどうか、これははなはだ疑わしいものがあります。もし委員長が、私の言葉が大へん僭越でありまして、行き過ぎであるというならば、責任をもってお教えを願いたい。私が拝聴したところでは、そういう工合にお伺いしたのであります。そこで、おそらく小林君は、その意図しておられる問題を解決するためには、何としても河野前農林大臣の出席を願わなければ解決しないためにそうおっしゃっておると思うのであります。何としても、これは予算予算会の議事を進行させる上において出席を願わなければならない。そこで、さらに委員長から御努力を願うわけでありますが、どうしても河野前農林大臣が御出席にならない、一身上の都合によって御出席にならない、できない、こういうことでありました場合には、成規の手続を経て、証人として当委員会に喚問せられることの動議を提出いたします。(「賛成」「大体国会の議決によって全権でソビエトに行ってるじゃないか」と呼ぶ者あり)動議はどうした、取り上げてもらわなければ困る。
  205. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 今、御返事申し上げます……申し上げます。栗山君の動議が出ましたが、その動議につきましては……。  それではあらためて申し上げます。河野一郎君の出席につきましては、委員長といたしましても、なお努力をいたしますが、ただいまの栗山君の動議につきましては、なお理事会において協議することにいたします。(「理事会はいつやるのだ」と呼ぶ者あり)  それでは河野一郎君に対する質疑を残し、これにて総括質疑は終了したものとして、続いて一般質疑に入ります。(「おかしいじゃないか」と呼ぶ者あり)
  206. 栗山良夫

    栗山良夫君 議事進行について。簡単に終りますから……、  先ほどの私の動議に関しまして、理事に若干のお骨折りをかけましたことを多といたします。ただ、そのときに理事会で決定されたことが、そのまま委員を拘束するかのような御発言が、ある理事から私の耳に入ったわけでありますが、これは委員長承知のように、理事会というものは参議院規則上そういう建前にはなっていないわけです。従いまして、予算委員会としてのあとあとの計画を持った理事会でありますから、私どもはその決定した事項は当然尊重しなければなりませんが、しかし、こういうときでありますから、理事が委員に全部その決定をいつも徹底しておるということではなくして、たまには手落ち等もありまして、徹底しないこともあるかもしれません。従って、正式に理事会の決定事項を全委員に対して拘束させようと規則上からお考えになるときには、委員長におかれて、これははっきりしておりまするから、理事会の決定事項をお諮りをいただいて、委員会決定する、こういうことに一つお取り計らいになるように願いたいと、委員長要望申し上げておきます。
  207. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 承知いたしました。
  208. 小林武治

    小林武治君 私は内政の諸問題につきましてお伺いしたいと思います。  まず、地方財政問題であります。地方財政は御承知のように年々膨張をいたしまして、昭和三十二年度におきましては一兆一千四百数十億、国家予算が一兆一千三百数十億、こういうふうな状態でありまして、来年度におきましては、国家予算をすでに百億も超過する、こういうふうな状態にあるのでありまして、従いまして、地方予算というものがいかに重要な問題であるかということがおわかりになると思うのであります。しかるに国会におきましては、地方予算はどちらかといえば、国会の片隅において論議されておる、こういう傾向は、私は日本の予算の半分以上を使う地方予算に対する扱いとしましては、きわめて私は不十分である、かように考えるのでありまするが、これらの重要問題をもっと国会人体の問題として審議するために、政府においては、この問題につきましては、本会議等で質問をし、十分論議を尽す必要があると思うのでありますが、その点についての自治庁長官の御見解を伺います。
  209. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 地方財政の規模が国家財政のそれに比べて比肩して劣らざるものである、こういう御見解は私も同感であります。ただ問題は、この地方財政計画の扱い方でございますが、具体的に私の考えを申し上げますと、できることならば参衆両院の本会議におきましても、地方財政計画についてはできるだけ早い時期に年々これを表明いたしまして、御批判を仰ぎたい。ただし本会議における報告にかえて、その内容を大蔵大臣なり内閣総理大臣から、その施政演説の中に、今日以上詳細に織り込んで所論をしていただくということになるならば、あえてこれをあくまでも維持しようというのではございませんが、少くとも参議院ないし衆議院の予算委員会及び地方行政委員会の席におきましては、この計画内容というものはすみやかに御報告を申し上げ、厳正なる御批判を仰ぐ立場においてこの取扱いをして参りたい、こういうふうに考えておるわけでございます。ちなみに申し上げますと、従来の取扱いが、衆参両院の地方行政委員会においては、これを報告を申し上げ、これに対する御質問もいただいておるような実情にはなっております。
  210. 小林武治

    小林武治君 ただいまの問題につきまして、私は大蔵大臣にお尋ねいたしたいのでありまするが、私どもあるいは多少のひがみかもしれませんが、大蔵省はとかく地方財政のために金をとられるというふうな考えを持っておられるのじゃないかと思うのでありますが、国家財政は地方財政と並んで、この両者が初めて完全一体となって、真の国民経済なり国家財政というものはでき上ると、従って大臣はもっとこの地方財政そのものについての関心をいただきまして、両者を統一的に一つ考えると、こういうふうなお考えがもっと必要なのではないかと思うのでありますが、お考え方を伺っておきます。
  211. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 国家財政が地方財政にとられるというふうな言葉は、私は使ったこともございませんし、そういう考え方は持っておりません。(「主計局がそうですよ」と呼ぶ者あり)やはり国民のための財政でございまして、両者一体として進めていくものだと考えております。
  212. 小林武治

    小林武治君 大蔵大臣が、さような言明を一つ実行の上においてぜひ示していただきたい、かように強く私は希望するものでありますが、なお地方財政健全化の問題でありますが、これは数年来のきわめて困難なる問題として、政府も幾多の施策をされてきたことは、われわれも承知しておるのであります。すなわち、昨年、一昨年の交付税の増額、あるいは財政再建、それらの施策によりまして、ある程度の改善ができたということが認められるのでありまして、ところが最後に残った最も重要なる問題は、地方公債の問題であります。これは御承知のように、すでに五千億にも達しようと、こういう状態にありまして、遠からず地方起債の額は元利償還額ととんとんになると、こういうふうなきわめて困難な事情にあるのでありまして、たとえば全国にわずか数府県残っておる黒字県も、この公債の圧迫のために三十二年度には赤字県に転落しなければならぬと、こういうふうな状態になっておるのでありまして、この点は大蔵大臣も御承知通りでありまするが、本年度の措置としましても、この少くとも地方公債の処置についてきわめて不完全な状態であると、これをどういうふうに根本的に処理されるかということにつきまして、自治庁長官並びに大蔵大臣の御意見を伺います。
  213. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 地方債の地方財政に及ぼす重圧を緩和する措置といたしまして、三十二年度においては、とりあえず第一次補正で特別会計に繰り入れました百億のうち、七十六億円をことしは配付しないで、三十二年度に配布すべき総額に加えて、三十二年度において交付税としてこれを使うという法律案の改正を別途お願いを申し上げておるわけでございます。そこで第二次補正で十億参りましたのを加えまして、同じ法律でこれが三十二年度で使えることになるわけでありますが、この七十六億と十億、八十六億というものを、今御心配いただいております地方債の償還と地方財政の重圧を緩和する具体的な方策に、これは不十分なやり方でございますけれども、これを使っていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。それで具体的には、給与要関係の全国の自治体の公債分は、来年度償還分が二十億になっております。この二十億のうち不交付団体の分は三億内外でございますので、交付団体分として交付税で扱う場合におきましては十七億をこの方向に傾けたい。それから一般普通の公共事業、失業対策事業、学校建築、特に中、小学校の義務教育関係の学校施設費でございますが、この三種類の公債費が、二千六百三十億内外現存をいたしております。これは今年の年度末まで参りますと九十七億円になるわけでございますが、百五十五億円が来年度の利息だけの償還分となるわけであります。これは元金はさておきまして、せめて百五十五億の利息分だけでもこれを対策費として国家が持ちたい、こういうふうに出行えたのでありますが、財源の都合上これを二分の一、その百五十五億に相当するものの二分の一、ほぼ七十五億になりますが、この七十五億のうち不交付団体の分に約十億参ります。そこでこのうち六十五億程度を、第二の方法としてこれを交付税の中でまかなっていきたい、こういうふうに考えまして、八十六億を使っていこうということが、このたびの具体的な対策でございます。  なお将来の分につきましては、政府一の方針として、はっきりその政府方針がきまっているわけではございませんが、こういう交付税を通じて公債対策をやっていこうという、こういう内容のいき方は、三十二年度一年度に限ってこれを行うという方針をとりまして、法律の改正内容もそういう方向に規定をしているわけでございます。そこで三十三年度以降はどうする考えかというお尋ねでございますが、これに対しましては、政府の将来の考え方として検討をいたしたいと考えておりますが、その大体の方針は、予算院独立の柱を立てまして、地方公債費の先ほど申し上げましたような種類の公債費対策を講ずべきものだ。そうして予算の執行として必要なる別個、単独の法律を新たに設けまして、その法律に基きまして対策を講ずべきものだ、そういうふうに実現することに政府としては努力したい、こういうふうに将来の問題としては考えております。
  214. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 地方財政におきましての地方債の問題は、最近とみに重要性を加えてきたのであります。お話の通りに新規発行と償還と同じくらいの額になった。これは昔、昭和五、六年ごろにはそういう例があったのでありますが、例があったからといって別に安心するわけじゃございません。将来十分考えていかなければならない問題だと思います。もちろん、われわれの方といたしましては、公債の元利償還金につきましては、財政計画のところに入れておりまするが、この交付税を配付するときに必ずしも単位費用のうちに入っておりませんものですから、分け方につきましていろいろ難点があると思うのであります。で、今後単位費用のうちに入れるか入れないか、いろいろな問題があると思います。また自治庁長官が先ほどお答えになったような方法も問題があると思うのでありますが、十分将来の財政需要また財政収入等を勘案いたしまして、今まで歩んできた過去一、二年のこの健全化をもっと進めていきたいと念願している次第でございます。
  215. 小林武治

    小林武治君 私は繰り返して申しまするが、地方財政にとっての一番の困難な問題は公債の問題である、この公債の問題を処理するに当りまして、三十二年度心おとりになろうとする方法は、全くこれは一時的の弥縫措置にすぎない、こういうふうなことを繰り返すことは、われわれはいつまでもがまんできない。従いまして、大蔵大臣は、この地方起債の問題につきましては、もっと一つ重要な観点からこれを一つ一緒になって解決してやると、こういう考え方をもちまして、ぜひ一つ公債に取り組んでいただきたいと、こういうことを強く要望しておくものであります。  次に、来年度、公営企業金融公庫というものが設置されるということは、まことにこれは地方団体が長年の要望を満たすものとしてけっこうなことであるのでありまするが、これに対する政府の出資額が五億円であるとか、あるいは政府保証の起債が七十億円であるとか、これは私は来年度地方起債の公募額でも二百数十億に達すると、こういう実情から照らして、きわめて不十分なものではないかと、かように考えるものでありますが、この点につきましても自治庁並びに大蔵省のお考えを伺っておきます。
  216. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 公営企業金融公庫でございますが、これは初年度は五億でございますが、平年度は十億となっております。大体十億といたしまして、この公庫の集めます公募債の最高限度は二〇倍ということでございますから、大体二百億というわけでございます。そうすると平年度といたしますと、二百億の資金がございますと、この公募分を消化するには大体そこそこいけるのではないかと、こういう見通しでございますが、なぜ初年度が五億であるかと、また発行限度が七十億とはどういうわけかということでございますが、これはこういう予算の御審議をいただいておる事情もございまして、法律案の通過も相当なる日時がかかるのではないかと考えまして、大体六月一日付をもって理事長一名、理事三名、監事——監事は監査役の監でありますが——監事を一名、この五名の役員を六月一日付をもって任命いたしたいと考えております。そうして実際店をあけますのは九月一日を目途といたしておりますが、あるいは少し延びるのではないかとも考えておりますので、そういう事情で実際の執務をいたしますことが延びて参りますので、初年度は五億、七十億と、こういうことでこれを押えて立案をしておるような事情でございます。初年度は不十分でございますが、平年度以降におきましては、これで大体において見合う金額になると、こういうふうに観測をしておるわけでございます。
  217. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 出資を五億にいたしました大蔵省としての考え方は、大体公庫の経営が今自治庁長官のおっしゃったような陣容でいき、そして事務もそうたくさんではないのであります。そういたしますと、五億にいたしまして六分の利子で三千万円、三千万円あれば大体事務費が当初まかなえるんじゃないか、こういう考えで最初五億といたしたのであります。政府保証債の七十億は、これは自治庁長官のおっしゃるように初年度でございますから……。次年度はまあ事業の成績を見まして相当ふやし得るし、またふやすような方向に向うと思います。
  218. 小林武治

    小林武治君 ただいまの自治庁長官の御答弁は大蔵大臣はどういうふうに思いますか。次年度は十億にする、あるいは発行額は二百億にすると、こういうようなお話はどうですか。
  219. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 私の了解しておるところでは、次年度につきましてはまだ相談いたしておりません。しかし今の発行額につきましては、先ほどお答えしたように二百億になりますか、あるいは百五十億になりますか、二百五十億になりますか、情勢を見てから判断いたしたいと思います。
  220. 小林武治

    小林武治君 長官は今のお話はどうですか。その出資の問題につきまして大蔵大臣とお話が違いまするが……。
  221. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 初年度五億、平年度十億ということは、自治庁の長官としまして折衝をいたしましたときは、大体この含みで初年度をきめたつもりでおるわけであります。多少そこに了解が不十分な点があるかと存じますが、これは大体その方針でやっていきたい、こういうことで御了承願いたいと思います。
  222. 小林武治

    小林武治君 次に私は町村合併関係のことをお尋ねいたしますが、町村合併は政府並びに地方団体の熱意によりましてすでに予定の九〇%以上を達成しておるのでありまして、地方行政には画期的なことではあるのであります。しかしておおむね形の上ではかような進捗を示しておるのでありまするが、そのほんとうのねらいとしております地方行政の能率化、あるいは新市町村の建設というものは、すべてほとんど今後の施策に待たなければならぬ、こういう状態にあるのでありまして、特に新市町村を建設するためのいろいろの特典と、こういうものは法律上の規定にもかかわらず、いわば羊頭狗肉の感があったのであります。しかして過去はともかくといたしまして、新市町村建設のためには政府は十分の熱意を注がなければならぬ、こういうふうに思うのでありまするが、来年度の予算におきましてもこれらも経費は私はきわめて不十分と、こういうふうに思うのでありまして、自治庁長官の熱意のほども私は疑わざるを得ないのでありますが、これらについてどういうお考えを持っておるか伺いたいのであります。
  223. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 新市町村育成の経費が少いのではないかというおしかりでございますが、まことに恐縮に存じております。実は独立の柱につきましては、二十億を下らざる合併新市町村育成の経費というものを要望しておったわけでございますが、ごらん通り十四億六千万に終ったわけでございます。しかしながらことに新市町村育成の経費として予算面に示されております金額で活用のできますものが相当量あるわけでございます。具体的にこれをあげてみますと、文部関係でございますが、この文部関係では小、中学校統合対策費と称せられまして、大体これが七億ばかりございます。それから農林省の関係でございますが、農村、漁村、山村の総合対策費というものが二十八億上っております。これは合せますと三十五億。それから郵政省関係でございますが、これは新市町村育成の上から非常に大事な経費と思っておりますが、電信電話局の統合に要する経費、これが三十五億出ております。それからもう一点は、郵便局に関する郵便局の統合、これに関する経費がたしか九億出ておると記憶いたしております。こういうものを合せますと七十九億内外の具体的な費目が、計数が明らかに上っておるものがございます。これを総合いたしまして新市町村の育成に振り向けるという努力は各省庁との関連において具体的にやれる考えでありますし、またやる努力をしてみたいと考えております。  このほかにくどくなって恐縮でございますが、大事なことでありますからお聞きをいただきたいのでありますが、この起債でございます。この地方起債分で大体市町村育成のために使い得ると、こう考え地方起債分が百億と言われております。この百億中の大体二分の一の五十億程度はあろうかと、こういうふうに考えるわけでございます。なお地方交付税の配分の方法におきましても、特に特別交付税の配分の関係におきましては、新市町村育成に附して必要なる経費というものをとらえて、これに重点を置くということを努力としてはできるわけであります。以上申し上げましたように、何か他力本願のような話になりますが、他の省庁にも上っておりまして、これを新市町村の育成に振り向けることが可能であると考えられる。先ほどから申し上げました諸般の経費は、これを総合的によく練り上げまして、各省庁とも連絡の上で新市町村育成のために傾けていくということに努力をいたしますならば、表面の計数は十四億六千万にすぎませんけれども、相当程度自信を持ってこれを不十分なら育成の効果を上げていくことができるのではなかろうかと、折角そういう努力をしてみたい、こう考えております。
  224. 小林武治

    小林武治君 ただいまの御答弁でありまするが、自治庁所管の行政合併建設とこういうふうな問題に対する経費は、私はやはり非常に少いと思う。これらについては今後非常な努力お願いいたしたいのであります。  なおこの新市町村建設に関連しまして、地方団体側は国有林の払い下げ、こういうことを強く希望しておるのでありまするが、この法律が施行されましてからすでに数年に相なるのでありまするが、この実績はきわめて私は不良であると思う。従いまして、この点については地方団体側は大きな不満を持っておるのでありまするが、これらにつきまして要望をかなえる、こういうことにつきまして農林省の熱意のほどを一つ伺っておきたいのであります。
  225. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 新市町村建設促進法によりまして、国有林の払い下げの申請は昭和二十九年以来三百七、八十件ございます。およそ十三万町歩と記憶をいたしておりますが、これに対して百八十件、一万五千町歩という程度のものが満たされたわけでございまして、その意味からいいますると、件数の四八%、それから面積で一二%ということで、御指摘のありましたように、あるいは御期待に沿うておらぬというふうにお受け取りになるかもしれませんが、しかし実情をしさいに分析いたしますと、非常に膨大な要求、一町村で何千町歩も要求がございましたり、あるいは全然無関係の地域の国有林を払い下げよと、こういうような御要望どもございます。そんな次第でございまして、農林省としては鋭意御期待に沿うような努力をいたしておるつもりでございますが、実情は今申し上げた点であるとか、あるいは水源涵養にどうしても必要なところというような制約もあるわけでございまして、できるだけは御要望に沿うようにしむけて参る所存でございます。
  226. 小林武治

    小林武治君 ただいまの農林大臣のお答えでありますが、出たものに対する払い下げというものはある程度の数字が出ておりまするが、農林の出先機関が出してもだめだと、こういうことで出させないような、非常な圧力を加えておる、こういうような事例もありまするので、この点についてはさらに一つ努力お願いしておきます。  次に町村合併の関係でありますが、県内のものは大体この三月末で片づく、こういうふうなお見込みのようでありまするが、県境にまたがるものが相当に紛争を来たしておるのがあるのでありますが、これらの紛争を来たしておるものの件数、あるいはこれらをいつまでにどういうような方法でもって片づけるのか、こういうことにつきましてお伺いしておきます。
  227. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) ただいま自治庁で公式に受け付けました県境を越えた合併問題の事件が事案としては五つございます。それからこのほかに近く同様に中央に持ち込まれるであろうと推定をされるものが二十二、三件、相当な数字でございますが、この問題は御承知通り地元の合併したいという市町村側だけでは意見がまとまりましても、府県側の意見がなかなかまとまりかねておるというのが一つの実情でございます。そこで府県側の意見を取りまとめて、そうして地元の意見をそれに合わしていくという努力をいたしまするのにはなかなか時間がかかる、こういうことで今お言葉をいただきましたように、三月一ぱいには県境にわたらざる普通の合併を完了いたしまして、四月早々からこの県境関係の他府県にまたがる合併問題を処理する、これは特に慎重を期して取り扱って参りたいと存じます。これに下手をいたしますと、単一の県内における合併に影響するところが甚大でございますので、特に慎重にやっていきたいと考えております。なお投票であるとか内閣総理大臣の勧告であるとかいったような、こういう行き方につきましては、県境にまたがっております合併につきましては特に慎重を期しまして、一切無理をやらない方針をとっていきたいと、こういう考え方でございます。
  228. 小林武治

    小林武治君 慎重もよろしいが、現に非常な困難な紛争を起しておるようなものはなるべく早く解決をつけるということも私は必要であろうと思うのでありますが、これらの問題をだらだらといつまでも扱っておるつもりであるかどうか、その辺はいかがですか。
  229. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 県境を越えたむずかしい方の合併につきましては、四月から大体三カ月以内ぐらいには目安をつけまして解決をしたいと、こう考えております。
  230. 小林武治

    小林武治君 ただいままでの町村合併の進捗に伴いまして、町村の規模というものが非常に拡大し、また自治能力も伸びて参ったのでありますので、これに伴いまして国と市町村との中間的の地方団体でありまする府県というものも、これは地方制度全般の立場からしてこのままで放置できない、すなわちこの際根本的検討を加える必要があると私は考えるのでありまして、政府も最近地方制度調査会に対しまして、この府県制度の再検討ということを諮問いたしておるのでありますが、常識的に申せば、これは何らかの根本的の結論が私は出ると思うのでありまするが、この結論が出ました場合に、果して政府は真に勇断をもってこれを実施するだけの熱意と決意があるかどうか、こういうことを伺っておきます。
  231. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) お説のような事情によりまして、わが国の府県制度は根本的に立て直さなければならない時期が来ているものと考えております。そこで政府の具体的な方針でございますが、地方制度調査会に対しましてこれをただいま付議しておる。ちょうど一昨日、たしか一昨日を初めといたしまして、今後でき得るだけ早急に地方制度調査会が府県の制度の根本的改革を行う必要があるかどうか、必要があるとすればどんな内容の改革を行うか、それはいつごろから実施をするか、という点につきまして、具体的な意見を取りまとめてくれることになっております。いつごろになるかは想像はできませんが、これが地方制度調査会としての結論が出て、内閣総理大臣に答申されました暁は、その答申の内容につきましては、政府の立場がどうであろうとも、これは全面的に最高度にこれを取り上げ、改革の上に生かしてゆく、こういうことはやらなければならぬことであると、こう信じまして、内閣総理大臣からも一昨日そういうごあいさつをいただきまして、私からもそういうあいさつをいたしまして、せっかく検討をしていただいておるという事情でございます。
  232. 小林武治

    小林武治君 これはなかなか重大な問題でありまして、なまやさしい政治力で実現するということはきわめて困難でありますので、私は必ず近い将来に結論が出ると思うのでありまして、今から一つ政府の政治力というものを特に期待申し上げておきます。  次に私は自治庁長官に伺いたいのでありますが、きのうの当委員会におきましても国務大臣の兼職を制限しろ、こういう問題があるのでありますが、これらの問題は、国務大臣よりもっと私は大きな影響のある問題として、知事並びに市町村長が営利団体あるいはその他の機関の長を兼ねておる、すなわち代表責任者になっておるというものが多々あるのでありまして、これが地方の綱紀を紊乱する、あるいは行政の秩序を乱す、こういう事例があるのでありまするが、知事あるいは市長等が他にほとんど常勤を要するような職務を兼ねておるということがいいことであるか、悪いことであか、こういうことをまず伺っておきます。
  233. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 知事の兼職の問題でございますが、どのような内容の、どのような立場の法人の主要役員と兼職をしておるかということによって一がいに判定をすることはできないであろうと存じますが、いずれにいたしましても勤務時間的なものを考えまして、常勤を要するようなそういう立場の法人その他の主要役員についておりますということは、法律が目下禁止しております場合であるといなとにかかわらず、法律が禁止しておればもちろんでありますが、法律をもって禁止していない場合といえども当を得ないではないか、こういうように考える。常勤的なものの場合はそういうふうに考えます。
  234. 小林武治

    小林武治君 私が聞くところによれば、ある知事は管内の営利会社の代表取締役をやっておる、あるいはある市長はその市内の信用金庫の理事長をやっておって、半日は金庫に行って勤めておる、こういう事例もあるように聞いておるのでありますが、こういうことは私は自治団体の長として許さるべきことではないと思うのであります。法律の建前から言いますれば、現在あるいはその自治団体と主たる請負契約を結んでおる団体の役員となってはいけない、こういうことになっておるのでありますが、あるいは会社あるいは信用金庫、こういうものは必ずしも主たる請負契約を自治団体と結んでおるものではない、こういうことは言える。従いまして法律の表面からこれを禁止しておらぬのでありますが、これは立法的にも何らかの措置をする必要があると思うのでありますが、その点はいかがですか。
  235. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) まだ政府の意見として兼職の問題を今御指摘いただきましたような具体的方向にものをきめておるわけではないわけでございますが、私の考えますところを申し上げますと、いやしくも勤務的に申しまして常勤を必要とするような主要役職員、もう一つは有給の役職員——給料をいただいて、報酬をもらっておる有給の役職員というようなものに、ことにそういう法人なら法人に類するものが、これが自分の地方自治体の首長を勤めております地域の管轄内にあるような場合、監督関係にあろうがなかろうがその地域内にあるような場合、そういう場合においてはこれは兼職を禁ずべきものではなかろうか。こう考えますので将来の問題ではありますが、早急にこの問題については検討を加えまして、そうして遺憾のないように処置をして参りたいと考えております。
  236. 小林武治

    小林武治君 お話のような有給でそうしてある程度勤務しておるというものは現にある。そのために地方行政に非常な私は弊害をかもしておる。こういうふうに思うのでありまして、これは将来の問題として考えるということよりも、むしろ現実の問題として非常に弊害をかもしておる。こういうことを私は注意いたしておきたいのでありまして、ぜひ一つ政府としてもこの問題の処理——大臣の兼職制限の問題などとは比較にならぬほどの弊害があるということを特に注意をし、これらの立法措置等についても注文を申し上げておきます。  なお私はこの際もう一つ自治庁長官に伺っておきますが、教育長というものをまだ過渡的の措置として助役が兼務しておる。これは相当大きな問題でありまするが、この臨時的措置はこの三月三十一日に期限が切れる。こういうことになっておりまするが、地方の小さい町村等における実情は、教育長として適任者を得るということはきわめて困難である。従ってこの臨時的措置をもう少し延期してもらいたいという強い要望があるのでありますが、これについてはどうお考えになりますか。
  237. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) この期間の延長問題についてはまことに申しわけがありませんが、深く私が存じませんのです。しかし非常に大事なことであると存じまするので、さっそく検討を加えることにいたしたいと思います。
  238. 小林武治

    小林武治君 私は次に選挙法のことをごく簡単に伺っておきまするが、現在われわれ国会は参議院と衆議院との二院制でありまするが、参議院がやはり憲法上直接選挙、こういう方法をとっておるために、この二院制度の運営が必ずしも適当でない、こういうことが言われておるのでありまするが、これにつきまして私は一昨日か総理大臣から、あるいは推選制あるいは間接選挙こういうふうな方法も考えられると言われたのでありますが、すべてこれは憲法改正に待たねばならぬ。現行の憲法下におきましても全国区というような参議院選挙の方法がきわめて不適当である。民意を反映するということにきわめて不適当である。また、選挙事務もきわめて複雑であって、数日もたたなければ選挙の結果は判明しない。これがために選挙管理委員会の事務の複雑さというものはまことに見るに忍びないものがある。これらの立場からも全国区というようなものは何らかの形でこれをあるいはブロックにするとか、あるいは地方区に還元するとか、こういう方法があろうと思うのでありまするが、この参議院議員の選挙制度について、選挙制度調査会等に諮問すると、こういうふうな御意向があるかどうかを伺っておきます。
  239. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 選挙制度調査会は制度として現在いたしておりますが、委員は任期の満了になっている、いまだこれを委嘱しておらない状態でございます。そこで来年度——来年度とはすなわち本年の四月を言うのでありますが、本年の四月に至りましたならば、少くとも四月中、五月早々にはこの三十名以内と規定してあります選挙制度調査会の委員を委嘱をいたしたいと考えております。同時に、まずその手初めとして、何の審議を願うかという問題でございますが、今御指摘をいただきました参議院のことに全国区に関する選挙制度をいかに扱うかという問題及び衆議院の関係におきましては、定数の、人口の異動によって定数に変化を来たさざるを得ない実情になっております。そういう問題につきましても、これを諮問事項として諮問に付する考えでございます。五月早々には少くともこれをやりたい、こういうふうに考えております。
  240. 小林武治

    小林武治君 ただいま衆議院の選挙の定員の話がありましたが、これはわれわれも昭和三十年の国勢調査の結果では、相当な異動があり、減少しなければならない県が十一県、増加しなければならない県が八県もある。こういうふうな状態で、このままの状態で選挙を施行するということは民意の反映上きわめて不適当である。従ってこの点も政府としてはほっかぶりで済ますべきでないと存じますが、これらの点も付議されるつもりであると、こういうことでございますか。
  241. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 大へんむずかしい問題でございますが、特に誤解を避けるためにここに一言つけ加えてお答えさしていただきたいのでありますが、衆議院の、人口異動の変化に伴うところの定員の異動でございます。定員の変化でございますが、これは今もお話をいただきましたように、増加するものが数にいたしまして二十九、県にいたしまして東京のごときは十五人の増加、大阪は五人の増加、神奈川県及び北海道はそれぞれ三名の増加、それ以外に一名だけ増加をするものが数県あるという実情で、これに応じまして、二十五県にわたりまして一名ないし二名の今度は減が生ずることになるわけでございます。これは同一選挙区内の変化でもあり、また同じ府県内における重要な変化でもありまして、選挙区制と密接不離の関係がございますので、この問題は新たに委嘱いたしました調査会にこれを付議いたします前に、どうしてもこれは二大政党対立の情勢下でございますから、自由民主党並びに社会党さんの双方の上の方で何とか意見を取りまとめていただく、こういうふうにこれをいたしまして、そうして前回のいろいろないきさつのありましたことに深く反省をいたしまして、このたびはこれを表面に出しました以上はあまり波風の立たないように解決できますようにあらかじめのそういう両党間の高いところの話し合いというものを政府といたしましては期待をいたしておる、こういう実情でございます。そういう処置も慎重に踏みました上で、新たに委嘱される選挙制度の調査会にも御意見を聞きました上で、慎重に慎重を重ねまして、処置をしていきたい。ただ、法律の命令は強制的命令ではございませんが、五年ごとに直近の調査に基けということでございます。三十年度の調査に基きますと、先ほど申し上げましたように、プラス二十九、マイナス二十九という異動が出てくる事情になっておりますので、これはそういう情勢を想定をいたしまして、今政府におきましては、私の手元でせっかく具体的な検討をいたしておる、こういう状況でございます。
  242. 小林武治

    小林武治君 法務大臣せっかくお待ちでありますから、少しお尋ねしておきます。  現在のこの民法、特に親族法、こういうようなものは、終戦直後に占領軍の示唆でできておる。従って、日本の国情に非常に適さない点が多数ある。これを何とか実情に適するように改正したいという議論がいろいろあり、このために、法務省においてもこれを調査審議されておるということでありますが、その経過はどういうふうになっておるか、伺っておきたいのであります。
  243. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 民法の改正の問題につきましては、昭和二十九年に、法制審議会に法務当局から諮問をいたしまして、その後、民法部会、商法部会と並びまして部会が設けられて、さらに、その部会の中に小委員会ができまして、いろいろな角度から検討を続けておる次第でございまして、まだ実は結論を得る段階に至っておりません。
  244. 小林武治

    小林武治君 これは、ただ漫然と時間をかけるということではなくて、ある程度期間を制限をして私は進捗させる必要がある。それだけいろいろ困っている面があることは、御承知通りでありますので、さような注文をいたしておきます。  なおもう一つでありますが、司法保護司というのがありますが、これは縁の下の力持ちのような仕事をしておるのでありまして、だれからもあまりその職務を重要視されない。しかし、仕事としてはきわめて大事な仕事、あるいは刑余者の指導、あるいは犯罪の予防、こういうことについてきわめて大事な仕事をしておるのでありますが、その経費がきわめて少い。これは御承知通りでありまして、全く気の毒で、その活動も阻害を受けておる。こういう状態でありますが、これらの経費について、法務大臣は、何とかもっと活動のしやすいようにしてやる、こういう熱意があるかどうかということを伺っておきます。
  245. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) まことに御熱心な御意見を承わりまして、私の方からむしろ感謝を申し上げる次第であります。私といたしましては、保護の充実ということは、法務行政上最も重要であると実は考えておるのであります。現に法務省予算の約二百二十億の予算のうち、半分以上は矯正関係の、刑務所、少年院の経費でありまして、これを何とか……、他の半分以下の経費で全国の検察及びその他あらゆる法務行政を遂行しておるような次第でありますから、できるならば、われわれは矯正費を節減できるような方向に持っていくのが筋道だと思うのです。しかし、これをやるためには、できるだけ保護更生に関する司法保護の地盤が十分に充実いたしませんと、行刑費を節減する方向に参りませんので、保護には大いに力を入れたい、かように存じております。ことに、保護司関係につきましては、全く奉仕にたよっておるような現状でありまして、全く私ども残念に思うのでありますが、今年度、昭和三十二年度の予算編成に当りましては、われわれ微力を尽しまして、ようやく保護関係の経費を二千二、三百万円増額をいたしましたが、これとてもまことに、ようやくこの程度の増額を見た次第でありますが、不満足のものでありますけれども、今後私どもといたしましては、一そう保護関係の充実につきまして努力をいたしたいと思っております。よろしく一つ御声援のほどお願いいたします。
  246. 小林武治

    小林武治君 今の法務省の経費の増額ということは、私はどうしてももっと考えていただかなければならぬと思うのでありますが、一面、この仕事は地方行政としましても、非常に大事な仕事である。従いまして、私は市町村等がこの経費をもっと負担してもいいのじゃないか、こういうことを考えておるのでありますが、これらの点につきましても、一つ法務大臣が自治庁長官に対して——今おりませんで残念でありますが、ぜひ一つ地方関係においても、これらの経費を負担するように……、もう今多少、ほんの形ばかりの負担をしているところもあるのでありますが、これは法務省の仕事とは申しましても、広く申せば、これは地方行政の大事な仕事である、こういう面からして、これらとも一つ折衝をされて、場合によったら、交付金算定の際にもこれを一つ、一つの要素として入れるというふうな努力も一つぜひしていただきたいと思いますが、どうですか。
  247. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) お答えいたします。御承知通り地方自治団体のうちで、一部、わずかながら保護関係の助成をして、司法保護司の活動費などを負担して下すっておるところもあるのでありますが、近来、御承知通り地方財政が非常に逼迫をいたしております関係で、むしろこれが伸びていくよりは、押し詰められてきておる状態でございます。まことに遺憾に思うのでございますが、御指摘のように、今後自治庁長官とも十分協議をいたしまして、交付税の関係と、もちろんこれはからまなければ、地方において負担してもらうということはできませんし、それとあわせて、地方にある程度の経費の御負担を願う以上は、現在国が負担しておりまする保護司関係の経費などは、保護活動の経費をさらに増額をする努力をいたしませぬというと、地方にのみたよるということも、これは国家事業でございますから、いかがかと考えまして、それら諸般の点を勘案いたしまして、今後御期待に沿うように一つ最善を尽したいと思います。
  248. 小林武治

    小林武治君 私は郵政大臣にもお尋ねしたいのでありますが、大臣がおいでにならぬ。従って若干時間の残りがあると思いますが、これらを保留して、これでやめる、こういうことで御了解願えませんか。
  249. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) では本日はこれにて散会いたします。    午後六時三十八分散会