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1957-03-13 第26回国会 参議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月十三日(水曜日)    午前十時三十五分開会  出席者は左の通り、    委員長     苫米地義三君    理事            迫水 久常君            堀木 鎌三君            安井  謙君            吉田 萬次君            天田 勝正君            中田 吉雄君            森 八三一君    委員            青木 一男君            石坂 豊一君            泉山 三六君            木村篤太郎君            小林 武治君            新谷寅三郎君            関根 久藏君            高野 一夫君            高橋進太郎君            土田國太郎君            苫米地英俊君            成田 一郎君            野本 品吉君            林田 正治君            一松 定吉君            前田佳都男君            内村 清次君            海野 三朗君            岡田 宗司君            栗山 良夫君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            曾祢  益君            中村 正雄君            羽生 三七君            松浦 清一君            山田 節男君            湯山  勇君            加賀山之雄君            梶原 茂嘉君            豊田 雅孝君            千田  正君            八木 幸吉君            赤松 常子君   委員外議員   国務大臣    内閣総理大臣    外 務 大 臣 岸  信介君    法 務 大 臣 中村 梅吉君    大 蔵 大 臣 池田 勇人君    文 部 大 臣 灘尾 弘吉君    厚 生 大 臣 神田  博君    農 林 大 臣 井出一太郎君    通商産業大臣  水田三喜男君    労 働 大 臣 松浦周太郎君    建 設 大 臣 南條 徳男君    国 務 大 臣 石井光次郎君    国 務 大 臣 宇田 耕一君   国 務 大 臣 大久保留次郎君    国 務 大 臣 小滝  彬君   政府委員    法制局長官   林  修三君    防衛庁防衛局長 林  一夫君    経済企画庁調整    部長      小出 榮一君    経済企画庁計画    部長      大來佐武郎君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    大蔵省主税局長 原  純夫君    大蔵省理財局長 河野 通一君    食糧庁長官   小倉 武一君    厚生省社会局長 安田  巖君    労働省職業安定    局長      江下  孝君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○本委員会運営に関する件 ○昭和三十二年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十二年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十二年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) これより委員会を開きます。  まず、昨日の理事会におきまして審査の日程について意見が一致いたしましたので、御報告を申し上げます。  一、明十四日総括質疑が終了いたしたならば、直ちに一般質疑に入る。  一、十五、十六の両日は公聴会を行う。  一、十八日から昭和三十一年度補正予算審査に入り、第二次補正までを含めて二十日に委員会討論採決を終る。  一、二十二日から一般質疑を継続する。  以上であります。  なお、昭和三十二年度予算各案についての参考人出席要求につきましては、すべて委員長及び理事に御一任願うことといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 御異議ないと認め、さように決定いたします。   —————————————
  4. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) これより昭和三十二年度一般会計予算  昭和三十二年度特別会計予算  昭和三十二年度政府関係機関予算を議題といたします。
  5. 小林孝平

    小林孝平君 私は議事進行につきまして三点を発言いたしたいと思います。  まず第一点は、昨日の本委員会におきまして、吉田萬次委員質疑発言を終りましたあと、私は委員長に対しまして議事進行発言を求めたのであります。委員長は、これを御承知あったにもかかわらず、厚生大臣発言を許されましたので、私は厚生大臣発言終了後あらためて委員長に対しまして議事進行発言を求めました。しかるに委員長は、私の議事進行要求を確認されながらも、強引に委員会の散会を冒せられたのであります。この措置は、議事規則を無視し、かつきわめて不当であることは、言うを待たないところであります。このような措置は、総理大臣から強く要求されております国会運営正常化とほど遠いものであると私は考えるものであります。温厚なる委員長が、故意に、あるいは悪意にかかる措置をとられたとは考えないのでありまするけれども、このような措置委員長がとられました心情を案ずるに、委員長はこの予算審議の当初から、この審議の促進をはかることに急のあまり、ややもすれば社会党議事の引き延ばしをはかるのではないかというような杞憂を抱かれておるのではないかと思うのであります。私は、このような杞憂に基き委員長がかくのごとき措置を今後しばしばとられるようなことがあれば、不測の議事の混乱なきを保しがたいと考えるのであります。私は、予算審議に当りましては、参議院は第二院の性格から考えまして慎重に審議をし、ただすべきものはただして、国民の負託にこたえたいと考えておるのであります。いたずらにわれわれが議事の遷延をはかるものではないのでありまして、与党の諸君、特に委員長に御協力申し上げ、一日もすみやかに予算の通過をはかりたいと考えておるのであります。こういうような見地から考えますと、今回の委員長のとられました措置は、きわめて遺憾でありますので、この際、これに対する委員長所見をただしたいというのが第一点であります。  第二点は、先ほど申し上げましたように吉田萬次委員発言につきましてでありますが、吉田委員発言中、穏当を欠きかつ本院の名誉を傷つけ、あるいは品位を失墜せしめる言辞があったのであります。このことにつきましては、発言中におきましても、同僚委員から委員長に、発言者に注意を勧告する発言があったところを見ても、委員長はおわかりのことと思うのであります。私たちは、国会における言論の自由、これを尊重すべきことは当然でありまするけれども、おのずから節度があると思うのであります。今回の、この吉田委員発言は、御本人の日ごろのお人がらから考えまして、これは故意発言されたものではないのであって、不用意の間にかかる発言があったとは存じまするけれども、当然これに対して委員長は適切なる措置をとらるべきであると思うのであります。委員長の適切なる措置を要望いたしたいことが第二点であります。  第三点は、同じく吉田萬次委員のこの質問に対しまして答弁されました厚生大臣並びに大久保国務大臣答弁、この御両名の答弁内容は、中村法務大臣国会における答弁あるいは政府売春取締りに対する従来の態度矛盾撞着をきたしておる点が多々あったと、われわれは考えるのであります。従いましてこの機会に、この三大臣に対しまして、あらためてわれわれは質問をいたした心と考えておりますので、至急に、三大臣を当委員会にお呼び下さいまして、われわれはこれに対しまして関連質問として質問をいたしたいのが第三点であります。  以上三点、委員長所見をただし、かつ委員長の適切なる措置を御要望いたすものであります。(「異議なし」「賛成」と呼ぶ者あり)
  6. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) きのうの委員会におきまする委員長議事の整理には、若干誤解が伴いまして、はなはだ不手際であったことを遺憾と存ずる次第でございます。  また、吉田委員発言に関連する問題につきましては、速記録をとくと取り調べまして、適当の処置を講じたいと存じまするから、御了承を願いたいと存じます。
  7. 湯山勇

    湯山勇君 第三点……。
  8. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) これは吉田委員発言に関連する問題として、よく速記録調べた上で、適当の措置を講じたいと思います。
  9. 湯山勇

    湯山勇君 今の点について、吉田委員の御発言については速記録をお調べになってということは、これは委員長の御答弁としてはわかるのですけれども、小林委員の第三の要求については、委員長お答えがないわけでございます。大臣答弁については速記録、言葉の問題ではなくて、実質が従来の政府のとっておられた態度と違っておる。けさの新聞を見ましても、その内容はきわめて重要な問題を持っておることは、委員長も御承知の通りでございます。そういう意味から、直ちに三大臣をお呼びいただいて、ここでその点に関する質問をしたいということについての委員長の御答弁がなかったようでございますから、その点についてどういうふうにされるのか。
  10. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 三大臣に対する御質疑の問題は、後ほど理事会を開きますから、その際に協議いたしまして決定いたしたいと思います。
  11. 湯山勇

    湯山勇君 私は昨日小林委員議事進行発言の中にそういう御要求があったので、続いて各大臣お尋ねしまうと思っておったのですが、委員長もお聞きの通り大久保国務大臣は、売春には長い歴史がある。この歴史を尊重するというようなことをはっきり御発言になっております。しかし売春防止法精神は、そういう恥ずべき歴史をなくしようというのがこの法律の精神でございまして、こういう問題は、これは理事会とか何とかという問題ではなくて、御答弁があった直後において、小林委員議事進行発言に伴って、私は直ちに質問をするつもりでおったのでございまして、これはそんなあとで協議するとか何とかという問題ではなくて、直ちに明らかにしなければ世間に対する誤解その他も大きいと思いますので、委員長において直ちにそういう手配をしていただくように重ねて御要望いたします。
  12. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 今直ちにということになりますと、三大臣まだ出席の通知がございませんから、いずれそういう点についてよく相談してきめたいと思います。どうぞ御了承願います。
  13. 湯山勇

    湯山勇君 それでは三大臣を呼んでいただいて、そういう機会を作っていただけるのかどうか。これは委員長の責任においてお答えできるはずでございますから、関連質問でありますから、一つ明確に委員長のお気持を表明していただきたいと思います。
  14. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) ちょっと湯山君にお答えいたしますが、あなたは一般質問の際になさるというお話だった……。
  15. 湯山勇

    湯山勇君 これは一般質問の問題ではなくて、吉田委員質問に対して政府答弁になったことがきわめて不穏当である。そこで当然この場で、関連質問において明らかにしなければならないものでございますから、委員長がお考えになっているような一般質問と、別に取り上げる問題ではありませんので、そういうお手配を直ちにお願いしたいと思います。
  16. 安井謙

    安井謙君 本日のスケジュールはすでにきまっておりますし、佐多委員お待ちかねのようでありますし、関係大臣が見えております。今の社会党の御発言については追ってその趣旨をできるだけ尊重して、できるだけ協力するようにあとで御相談するようにお願いしたい。
  17. 天田勝正

    天田勝正君 これはただいまスケジュールもすでにきまっておるというお話がございましたが、しかしこれは昨日の問題がまだけりがつかないのであって、昨日の問題のけりがついたならば、本日のスケジュールに従って議事進行をはかられるのが当然であります。従ってこれは今湯山委員の仰せになったように、昨日の関連質問で片をつけなければならない問題がここに残っているのでありますから、きわめて短時間でありますから、この問題を取り上げていただきたい。
  18. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 速記を止めて下さい。    〔速記中止
  19. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 速記をつけて下さい。  ただいまの第三点の問題につきましては、三大臣出席を求めまして、できるだけ早く、午後の劈頭を目標といたしまして努力したいと思いますから、さよう御了承を願います。  それでは昨日に引き続き、これより総括質疑を続けます。
  20. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 まず岸総理大臣お尋ねをいたしますが、岸総理大臣は、解散は絶対にやららない、これは前石橋内閣継承に過ぎないからというお話でございました。そこで、その継承に過ぎないという場合の政策重点は、対外的には独立の完成であると思いますが、この点については非常に不十分で、問題がそらされてきている点については、すでに曾祢委員から説明をいたしましたが、これは置きます。国内政策としては、特に経済政策としては完全雇用の問題が中心であると思うのですが、ここの点について総理は、特に石橋内閣の引き継ぎの問題として、どういうふうにこの点をお考えになっているか、まずその点から……。
  21. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 完全雇用の問題につきましては、私どもはその基礎的になるものは、何といっても経済基盤を強化拡大する必要がある。この考えに立っておりまして、三十二年度の予算におきましても、公共事業費事業量増大、その他いわゆる積極的な各種施設によりまして、できるだけ雇用増大をはかっていくとともに、完全雇用目標を達しますためには、ある一定の将来を見通しての計画のもとに、産業拡大をはかって参って、完全雇用目標達成していきたい、かように考えております。
  22. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それならば、経済計画の最重点眼目にそれがならなければならないと思いますが、企画庁長官はこの点どうお考えになっておりますか。
  23. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 完全雇用経済計画基本でなければならぬ、こう思います。
  24. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それらの点について、それでは実績がどのようなふうになっているか。今までもすでにそうであったし、今後もそうであるというふうなお考えだと思うのですが、それが実績としてどういうふうに達成されておるか、あるいは目標としてどういうふうにお考えになっておるか、その点の御説明を願いたい。
  25. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 昭和三十一年から五年までの五カ年計画の中において、経済成長率国民分配所得には五%にみて、そうしてその範囲内における雇用量増大をはかる計画でおりましたが、特に第二次産業部門等伸び率が非常に当初よりも強かった関係で、雇用量増大のための基本経済伸びは、大部分のところ昭和三十一年度でもって達成し得ると思われる点が出て参りましたので、われわれは雇用量増大をはかるために伸び率を七ないし八%のところに引き上げて、そして雇用量増大をもう一段と強めたいと、そういう考えに立ち至っております。そういうわけで、今までのこの二年間の特に成長率の高かったことに呼応して、雇用量増大をもう一つ強いものに持っていきたい、そして新しい計画をその線に沿って立て直したい、こういうふうに考えております。    〔天田勝正君「委員長、本会議どうしますか」と述ぶ〕
  26. 内村清次

    内村清次君 きょうの本会議は、本院といたしましては重要なこれは決議案の上程でございますから、しかもこれには総理も当然出られなくてはならない、外務大臣としても出られなくちゃならない、ぜひ本会議に私たち出席させてもらいたい、そのためには一時休憩をして出席させてもらいたい、これを要求いたします。(「理事会」「続行続行」「了解」と呼ぶ者あり)
  27. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 長期計画については後ほどお尋ねをいたしますが、それならば三十一年度の計画並びに三十一年度の実績はどういうことになっておるか、これを具体的にお述べ願いたい。
  28. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 申し上げます。民間資本関係で参りますと、三十五年が一五六・八の指数を求めておりましたが、三十一年ですでに一六五・八というふうに、三十五年度の希望指数を越えておるのが、民間資本で特に顕著に現われております。
  29. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その指数は何の指数ですか。
  30. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) これは民間資本形成指数であります。それは五カ年計画の中では、昭和三十五年度で一五六・八という見込みでありましたが、それが昭和三十一年度で一六五・八で、すでに目標指数を突破するというふうに、民間資本形成指数がそうなっております。そのほかに、たとえば分配国民所得にいたしましても、一三四の五カ年計画希望目標が一三一にもうすでに達しております。これは分配国民所得であります。大体国民総生産にいたしましても、一三三・六という希望が三十一年で一二〇を突破すると、こういうような指数になっております。従って全面的に、指数は、三十五年度の目標指数に三十一年末に大部分が近づいておる、あるいは突破しておると、こういうふうな状況であります。
  31. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 私の聞いておるのは、完全雇用の問題を今聞いておるのですから、完全雇用の結果としてその部面に対する計画がどうだったか、実績がどうだったかということをお聞きしておるのですから、それを明瞭にして下さい。全般的なものはあとからお聞きしますから。
  32. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 昭和三十一年の当初計画労働力人口当初計画は四千二百六十五万人と見ておりましたが、実績は四千三百五となって、それの指数は〇・九増しております。この総人口は、計画は九千十七万でありましたが、九千二十であって、これは一〇〇%、そう変ったところはありません。就業者数は、当初計画は四千二百万でありましたが、就業者は四十五万増しております。従って就業者数の増した分が一%一であります。労働力人口は〇・九%増しております。こういうふうなことになっております。
  33. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうも正確でないようですが、私の計算によると、四千二百万、従って九十万増加するという計画であったやつが四千二百四十五万になって、従って絶対数としては増加しておるが、計画数字九十万に対しては六十一万しか増加していないという結論になっておると思います。この数字を正確に一つ事務当局から御説明を願いたいと思います。
  34. 小出榮一

    政府委員小出榮一君) お答えいたします。ただいまのお尋ねは、三十一年度の計画実績との食い違いの問題と申しまするか、計画に対して実績はどういうふうになっておるかというお尋ねでありまするが、ただいま大臣からお答えになりましたように、労働力人口におきましては、三十一年度経済計画においては四千二百六十五万人というふうに一応計画上は算定いたしましたが、実際におきまして四千三百五万人という実績になる見込みでございます。一方就業者数につきましては三十一年度計画においては四千二百万人という計画でございますが、これに対しまして就業者数実績は四千二百四十五万人という数に上る見込みでございます。
  35. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それで一応はっきりしましたが、そのような就業状態は、一体、計画と比較して計画が成功をしたものと、政府完全雇用増大を一枚看板にしておられるが、それが達成をされたとお考えになるかどうか。完全に失敗をしているとしか私は思えないのですが、その点は大臣はどういうふうにお考えになっておりますか。
  36. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 計画実績との間の違いは〇・九%あるいは一・一階の違いであって、ほとんど計画よりも就業者数等は上回る指数になっておりますから、失敗したとは考えておりません。
  37. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうじゃなくて、さっき言いましたように、九十万の計画を、九十万増加する計画をしておられたのに六十一万しか増加をしていないのですよ。ほかの諸指数はさっきおっしゃったように非常な伸びを示しておるにかかわらず、雇用の問題だけは計画達成、これは完全に失敗といわざるを得ないのじゃないですか。その点はもっと後ほどさらにお尋ねをしたいと思いますが、それならば、この数字労働者の方のお調べではどうなっておるのか、労働省から調べられた雇用増加状態は、三十一年度どうなったかをご説明願いたい。
  38. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) お答えいたします。ただいま企画庁長官の申されたと同じであります。
  39. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そういう無責任なことでは絶対に許しません。事務当局から説明しなさい。
  40. 江下孝

    政府委員江下孝君) お答え申し上げます。ただいまの御質問は、三十一年度の実績がどうなるかというお見込みだと思います。そこで今、企画庁から答弁申し上げましたように、この点の調査といたしましては、労働力調査によって現在政府としては統計を把握しておるわけでございます。従って大臣が申し上げましたように、現在のところ企画庁の方で御答弁申し上げました数字が、一応政府としてよっておる数字である、こういうことでございます。
  41. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 私が特に労働大臣にお聞きするゆえんは、そういう推計実績でなくて、三十一暦年実績がはっきり出ているのです。それをそれじゃ御報告願いたいと思います。内閣の一番重要な問題ですよ。さっき総理が言ったように。
  42. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 今、局長から答弁させます。
  43. 江下孝

    政府委員江下孝君) お答え申し上げます。三十一年の一—十一月実績で、農林、非農林業別に分けまして、農林業におきまして千七百三万平均、それから非農林業就業者は二千五百二十九万、かように相なっております。
  44. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そういうずさんな報告をされるから私はどうしても満足ができない。しかも完全に失敗だという、私、しろうとが言うまでもなく、あなた方、労働調査報告、三十一年十二月分がすでに出ている。それにはちゃんと暦年一年間の実績が出ているはずです。それによりますと百十六万雇用増加をしたということになっておる。あなた方が、現内閣が最も重点であると誇称し、完全雇用であり、神武以来の大景気だから雇用は非常によくなったと、非常に誇っておられる、その数字ですよ。これ自体お出しになれば、しかもあなた方にとって非常に有利な数字とも解釈される数字、そういうものをちっとも知らないで、労働大臣が知らぬのみならず、事務当局すら十一月までしか持っていない、その怠慢はどこにあるのですか。これで、総理大臣、あなたの雇用政策なり完全雇用があなたの内閣の最重点だということが言えるとお考えになりますか、総理に。
  45. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 今のやつをもう一ぺん内容局長から報告させます。その上で総理の……。(「あなたが報告しなさい、あなたが」と呼ぶ者あり)
  46. 江下孝

    政府委員江下孝君) ただいま申し上げましたようにこの一—十一月の平均で、全産業といたしまして、昭和三十年の一—十一月平均就業者総数四千百五十六万、これが三十一年一—十一月には(佐多忠隆君「やめやめ」と述ぶ)四千二百三十二万でございまして、八十万の増加、かように相なっております。
  47. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 私は一—十一月の実績を聞いているのじゃない、暦年一年間がどうなっているかということが最も重要であり、しかもみんなに非常に注目されておる。十二月号がすでに出て、それに基いて暦年実績がちゃんと出ているのですよ。その暦年実績を私がはっきり言っているじゃないですか。あなた方が出しておられるこの調査によってちゃんとできているのだ。それを、そういうことを数字をはっきり知らないで、そうしてそういうことをちっとも調べさせも何もしないで、完全雇用だとか雇用量増加だとか、これが内閣の一枚看板でござんすとか、欺瞞以外の何物でもないじゃないですか。  もう一ぺんあなた方から説明願うまでもなく、私が申し上げます。総理労働大臣もよく聞いて下さい。
  48. 江下孝

    政府委員江下孝君) お答え申し上げます。
  49. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 要らん要らん。あなた方の労働力調査十二月号、全産業で百十六万ふえておる。しかし、それは内輪に内容を分類すれば、農林業においては三十三万減っておる。ここにも問題があります。しかも非農林業では百四十九万ふえておる、雇用はその限りにおいては非常にふえているのだから、あなた方はこれをもって非常に誇りとされるに足るある意味では数字なんです。そこで、私がお尋ねをしたいのは、そのように暦年では百十六万ふえておる。しかるに会計年度で見ると、さっきおっしゃったように六十一万の増加というふうに推計をされる。この相違がどこから出てくるのですか。
  50. 江下孝

    政府委員江下孝君) お答え申し上げます。暦年で申しますとお話通り数字でございますが、一—三月は例年この就業者が減ります。従いまして大体過去の統計からも推定いたしまして、平均本年度は六十万程度の見込みである、こういうことであります。
  51. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そこのところが私にはよくわからないのだが、一—三月は減るといっても、これは暦年——年間でとっておるのですからね。こんなに大きな食い違いは出てこないはずじゃないか。一—三月減ることは前でも同じだったのじゃないかと思いますが、この点はもっと長期の実績と関連をして、さらにお聞きしたいと思います。従って今申し上げたように、さっき言ったように計画実績は非常に狂っていて、むしろ減っておる。計画九十万の場合に六十万しかふえてないのだから計画をはるかに下回っている。ところがさっきもおっしゃったように、そのほかの指数は非常に上回っている。国民総生産にしても、特に民間の資本形式、あるいは個人消費支出でも非常にふえている。それにもかかわらず雇用はそれほどふえてない。このことは、あなた方が経済規模の拡大をすれば雇用がふえるのだとおっしゃっておるけれども、ちっともそういうことになっていない。これで一体完全雇用政策がいいのかどうか、そういう意味では完全雇用政策なるものは完全な失敗をして、いたずらに経済規模の拡大、しかも資本の形式だけが非常に太っていて、少くとも三十一年度計画に関する限りは、雇用は何ら顧みられないで、資本の蓄積だけが過大に促進をされたという以外の何ものでもない。そういう意味において完全なこれは資本主義政策にすぎない。完全に雇用政策としては失敗をしておる。今後は雇用政策とか完全雇用とかという旗じるしはおろされてしかるべきだと、こういうふうに思いますが、どうか。
  52. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 雇用政策基本経済拡大に求めていく、そうしてその経済の拡大がインフレにならないように、国民の大きな負担にならないようにという配慮のもとにそれをはかっていくという政策であります。従って雇用量増大労働力人口の吸収率が生産の伸びに追っつけないということも起り得ると思う点があります。というのは、やはり経済内容が拡大する場合に、従来と質的な変化を起しておる。たとえば、農林業関係就業者が、非農林業の第二次、第三次産業部門に吸収されていく傾向等を見ますと、必ずしもその速度が経済伸びの速度と合わない点がたくさん起って参っております。従って国民の消費傾向、あるいは貿易傾向の質的内容が変りつつある。拡大をしつつありますから、その意味では労働力の吸収率は生産の伸びに少しおくれてゆく傾向がありますけれども、完全雇用政策そのものの根本に、われわれの考えている方向に非常に間違いがあるとは考えておりません。
  53. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それでは今の問題は、短期の問題だからそうなるのだ、長期的にはそうでないのだというようなお話のようですから、それではあなた方の政府計画経済をやろうとされた二十九年以来、あるいは三十年以来の趨勢として、今の問題がどうなっておるか、御報告を願います。
  54. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 申し上げます。農林業関係労働力人口はむしろ増加はとまっております。非農林関係の統計を見てみますと、二十九年平均が千九百万、三十年が千九百八十万に対して千九百十万、完全失業者……労働力人口の中で非農林業が二十九年平均が二千二百九十一万、それに対して三十年平均は二千三百九十七万となっております。それに対して農林業関係は、二十九年が六千六百六十七万でありますが、三十年平均は千七百十五万、こういうふうになって、伸び率はむしろ非農林の方が農林よりも高い、吸収率は高い、こういうふうになっております。
  55. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 私は特にあなた方の方の長期計画実績がどうなっておるかということをお尋ねしておるのですが、そこのところが明瞭にされておりませんので、私の方から申し上げて、さらにこれをお答え願いたいと思いますが、二十九年には就業者数が七十一万ふえておる。それから三十年には私の計算では二百二万ふえておる。三十一年には六十一万ふえておる。そうして三十二年は八十九万の増加計画しておられる。このようなふうになっておるのですが、その就業者数増加、これを一つはっきり出して下さい。これは事務当局でけっこうです。
  56. 大來佐武郎

    政府委員(大來佐武郎君) お答えいたします。ただいま大臣から申し上げました数字は、暦年の二十九年以来の増加でありますが、年度で見て参りますと、比率で見まして、対前年の増加の比率が二十九年度が就業者総数として二・二%、それから三十年度が三・六%、過去四年間をとりますれば年率三・六%の増加になっております。それから労働力供給の増加の方は大体年率二%と見ておりますので、その間におきまして経済規模の拡大によって、雇用の中でいわゆる家族労働者と——家族就業者と業主と一般の雇用者と三つの種類がありますが、このトータルの就業者の変化のほかに、この三つのカテゴリーの中でいわゆる雇用者というものが非常にふえておりますので、この雇用者の増加は、一面におきまして雇用の近代化の反映になっておるかと考えます。
  57. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 先ほど申しましたように審議庁の数字では二十九年七十一万、三十年二百二万、三十一年六十万という実績になっておりますが、これが労働省の方の労働力調査ではどういうふうになっておりますか。各年。
  58. 江下孝

    政府委員江下孝君) ただいまの御質問、もう一度お願いいたします。
  59. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 労働力調査で、全産業就業者数がどういうふうになっているか、どういうふうに各年ふえてきたか。
  60. 江下孝

    政府委員江下孝君) お答え申し上げます。二十九年が就業者総数四千十四万でございます。
  61. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それは暦年ですか。
  62. 江下孝

    政府委員江下孝君) 暦年でございます。三十年は四千百五十万、三十一年の見込みが、先ほど申し上げましたように四千二百二十八万。
  63. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 非常にそこのところが統計がまちまちで、ずさんきわまりないと思いますが、先ほど私が申し上げた労働力調査によると、あなた方のところからこれは出しておられるものですよ。しかも印刷になった正確なものですよ。それが二十九年には三十五万ふえている、三十年には百五十四万ふえている、三十一年には百十六万ふえている、こういう実績になっている。一体ここいらのめちゃくちゃな、あなたの報告とこれとこんなふうに違うのは、どこに原因があるんですか。同じ、ほかの資料じゃない、あなたの方で出しておられる、しかも正確に、みんなが普通雇用の問題を論ずるときにはこれを使うことは、私、しろうとが申し上げるまでもなくはっきりしている。
  64. 江下孝

    政府委員江下孝君) お答え申し上げます。先ほどの私申し上げましたのは、この労働力調査調査方法を若干変えました。その変えた計算によりますとこうなると、(「なぜ知らせない」と呼ぶ者あり)こういうことでございまして、最近は私どもはこの数字を使っておるわけでございます。
  65. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 最近はというと、そうするとこの労働力調査十二月分というのは、これはこの間出されたんでしょう、二月おくれぐらいに。これじゃだめだとおっしゃるんですか。私は資料を正確に、そういう資料をお出し下さいということを前からお願いをしている。それで一向出されないから、私は無理に探し出して、この一冊を探し出している。しかもこれは秘密の文書でも何でもないんですよ。そしていて、われわれには出さないでおいて、これは調査の方法が変りましたからということで言いのがれができると思いますか。そういうずさんな仕事をしてるのか。総理、こういう状態なんですよ。あなたの最も重点を置いておられる雇用政策……しかも主管官庁がその問題についてこういう体たらくなんですよ。あなたはこれで雇用政策が最重点だと言えますか、(「答弁々々」と呼ぶ者あり)答弁して下さい。
  66. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今御質問になっております数字の扱いの問題でありまして、よく御質問の要点と、私わきで聞いていますと、労働省やその他の者が答えております何の間に、統計の数字の扱い方についてのまだぴったりしないところがあるように思います。もちろん、それらについては十分今打ち合せして、その行き違いのないような御返事を申し上げると思います。
  67. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それでは質問ができないと思いますがね、こういうものでは。これは前から、私は前から資料の提出要求をしておるんですよ。  それから問題も、何を問題にいたします。ということもちゃんと通告をしておるんですよ。何もやみ討ちも何もしておるんじゃないですよ。しかも私がこういうことを言うまでもなく、あなたの方でちゃんとこういうものは調べがついて、ちゃんと報告ができるはずのものである。(「休憩心々」と呼ぶ者あり)私はこれ以上、こういう状態だったら質問ができませんから、もっと正確に一つ準備して出していただきたい。
  68. 江下孝

    政府委員江下孝君) ただいま申し上げましたのは、政府、といたしまして、この統計の計算方法につきまして若干変更をみましたために、今私が申し上げましたような数字になったわけでございますが、先生のおっしゃるようなもちろん数字も統計として当然印刷されておりますので、それは統計のまあとり方の問題でございます。なお、これによりましていろいろ御了承をお願いいたします。
  69. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それならば、その正確な数字を出していただきたい。最近の報告による、最近の調査方法による正確な数字を出していただきたい。(「休憩休憩」と呼ぶ者あり)この十二月号だったって、号は十二月分ですけれども、あなたも御承知の通り、ごく最近出たんですよ。これさえ出そうとしなかった。(「でたらめじゃないか」と呼ぶ者あり)それがそういう資料なしじゃ……あなた方は計画経済だとか、雇用が最重点だとか言っておられる。私これ以上できませんから、あらためて今から一時間でも幾らでもいいですから、全部その資料をもう一ぺんあらためてととのえて、大臣にもよくお話し願って、その上で質問を始めましょう。(「そうだよ」「完全雇用石橋内閣から引き継がれたんでしょう」と呼ぶ者あり)
  70. 江下孝

    政府委員江下孝君) 責任をのがれるわけではございませんが、この調査につきましては、内閣の統計局で調査方法等をきめて発表するものでございますので、なおその点につきまして御質問を願いたいと思っております。
  71. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それならば、統計局も連れてきなさい、所管の人も……。(「休憩休憩」「これじゃできないじゃないですか」「石橋内閣から完全雇用を引き継いだなんて言っておりながらちっとも引き継いでおらぬ」「暫時休憩」「そこが大事なんだよ」「質問しているのは佐多君だけじゃない、みんなが聞いているのだ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  72. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) では質疑を続行いたします。
  73. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうもみっともないことで時間を空費いたしまして……。もう一ぺんそれじゃ正確にお答え願いたいのですが、二十九年度以降、企画庁就業者数増加、これを計画実績と対比しながら、二十九年度以降の趨勢がどうであったかということの報告を願いたいと思います。事務当局でけっこうでございます。
  74. 小出榮一

    政府委員小出榮一君) お答えいたします。御承知のように、経済計画の策定を年度別にいたしましたのは三十年度からでございますので、二十九年度につきましては実績だけを申し上げますが、二十九年度の就業者総数増加は八十七万人でございます。それから三十年度は百四十四万人、それから三十一年度は六十三万人、それから三十二年度計画におきましては八十九万人と一応策定しております。これに対しまして、労働力人口の増減でございまするが、二十九年度は百八万人の増加、三十年度は百五十一万人の増加、三十一年度は五十一万人の増加、三十二年度においては八十九万人の増加ということで推定いたしております。計画との対比でございますが、先ほど申し上げましたように、二十九年度は年次別計画がございませんので、三十年度から申し上げますると、三十年度につきましては、労働力人口は、計画におきましては四千百十八万人でございましたが、実績は四千二百五十四万人というふうになっております。で、就業者数は四千五十五万人という計画に対しまして、実績は四千百八十四万人というふうに増加いたしております。三十一年度の労働力人口就業者数との対比は、先ほど申し上げましたようなことでございます。従いまして、計画数字におきまする労働力人口の三十年度と二十九年度との比較はできませんが、三十年度と三十一年度との比較を申し上げまするというと、四千百十八万人の計画に対しまして、三十一年度は四千二百六十五万人と、約百五十万人増加するという計画数でございます。それから就業者数につきましては、三十年度の四千五十五万人という計画に対しまして、三十一年度は四千二百万人、約百五十万人増加するというふうに計画をいたしております。これに対しまして実績の対比を申し上げまするというと、三十年度の実績が先ほど申し上げましたような数字、それから三十一年度の実績の増減は、先ほど申し上げましたような数字になっております。
  75. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その方も数字で出していただくように、すでに前々から話してあるのですが、まだそういうものが出てきておりません。至急に一つお出し願いたいと思います。それでないと……、そういう数字をあらかじめもらっておいて、よく検討して質問をしなければならぬ、ただ報告を聞いただけで検討ができませんから、これは大臣でも事務当局でも十分一つそのようにお考え願います。何も隠したりなんかする必要のない数字なんです。しかも過去の実績なんです。こういうものはさっさと早目に出していただくようにお願いをします。それで大体企画庁計画実績の傾向はわかったのですが、それならもう一ぺん、この労働省において労働力調査の結果としてどういうふうになっているか、それを御報告願います。
  76. 江下孝

    政府委員江下孝君) 先ほど申し上げました数字でございますが……。
  77. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いやこっちの数字でやってくれ、そのあとの資料を配らないでおいて、それでやったってわかりゃせん。
  78. 江下孝

    政府委員江下孝君) 申し上げますが、二十九年から申し上げますと全産業におきまして就業者の総数が、二十九年が三千九百五十八万、三十年が四千百十二万、三十一年が四千二百二十八万というふうになっておりまして、三十年から三十一年にかけまして百十六万人の就業者増加でございます。
  79. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 次に、今の御報告でまだはっきりしませんが、もっと正確に言うと、労働力調査によれば、暦年で見て、二十九年度が三十三万増加、それから企画庁の方では八十七万増加だと言っておられる。それから三十年度は百五十三万、暦年労働力調査で百五十四万増加企画庁の方は約百四十四万増加、それから三十一年は暦年で百十六万増加、これを企画庁の方では六十三万増加ということになっております。そこで私が問題にしたいのは、三十一年度は大体一方は百五十四万、一方は百四十四万ですからこれは大体合っている。しかるに二十九年度と三十一年度は、暦年とこの年度とが非常な大きな食い違いをしている。こういう大きな食い違いはどこにあるのですか。従ってこの数字だけで議論をすれば、暦年だけで問題をあれすれば、二十九年度は雇用暦年ではそれほどふえてないが、年度では非常にふえているということになる。それから今度は三十一年は、暦年では労働力調査の方は非常にふえているが、企画庁の方は年度でいうとそれほどふえていない。同じ統計数字なり何なりでこういうふうな違いが出てくる。そして政府はいつもこの大きな方だけを掲げて、これで完全雇用増加ができておりますということを数字で示したから、それでわれわれがごまかされるようにお考えになってるけれども、われわれはそういうことにはごまかされないんです。これらの相違はどういうところから出てくるかを、はっきりお答えいただきたいと思います。
  80. 江下孝

    政府委員江下孝君) この一—三月の傾向の違いということであろうと思います。そこで、まあこの点について私も的確な実は説明を申し上げることはできませんけれども、わが国の雇用事情といたしましては、御承知の通り、非常に家族従業者あるいは自営業者という零細な状態のものがございます。従ってこの労働力というものも、景気がよくなりましたから、むしろ労働力率は低下すべき場合もあるにかかわらず、上る場合もあるということ、あるいは低所得のために、産業が興りますれば、むしろ労働力率は上って行く、こういう点もございまして、そういう点からいたしまして、若干そういう食い違いが出て参っておるのではないかと思うのでございます。
  81. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 同じ点を企画庁はどういうふうにお考えになっておりますか。
  82. 小出榮一

    政府委員小出榮一君) 暦年数字と会計年度との数字の食い違いにつきましては、統計上のソースはいずれも、労働省の分も私どもの方も、総理府統計局の労働力調査を、ただ暦年と会計年度に引き直しまして計算したものでございまして、ソースは同じでございます。ただ三十一年度につきましては、三十一年度の上期、私の方の実績の推計見込みは、三十一年度の上期までの総理府統計局の労働力調査数字をとっております。従いまして、ただいま労働省からお話がございましたように、二十九年度の食い違いにつきましては、まだ詳細に分析しておりませんけれども、三十一年度につきましては、昨年の一—三月と、ことしの一—三月との経済情勢の変動その他によりまして、こういうふうな相違が出てきたものと、かように考えております。
  83. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どういうふうに変動したのですか、一—三月は。
  84. 小出榮一

    政府委員小出榮一君) 昨年の一—三月の経済情勢、それからことし、三十一年度につきましては、特に、御承知のように上半期におきましては、相当国内の投資を中心といたしまして経済の基調が非常に好調に向っておりまするけれども、下半期に入りまして国際情勢の多少の変動その他によりまして、先行きに対しまするいろいろ見通しの困難な点がございまして、経済の基調に、やや、上半期と同じような調子でなくて、多少の変化が見られてきておりますので、そういうような点の食い違いがことしの下半期以降、特に一—三月現在の情勢から来年度にかけましての見通しがやや変ってきておると、こういうような結果ではないかと思います。
  85. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、いよいよ問題が出てくるのですが、これは大臣お尋ねしたいんですが、総理もよくお聞き願いたいんですが、今のような報告によると、経済規模の拡大というようなものは、むしろ去年の下半期からことしにかけて非常に規模の拡大があるわけです。ところが雇用の問題は、逆に下半期からそうふえなくなっておるし、この一—三月もあまりふえない。この結果、こういう食い違いが出てきておるということになるわけです。短期をとってみてすでにしかり、しかも長期をとってみますと、今言った数字ではっきりわかりますように、経済規模の拡大は何ら雇用増大になっていないということなんです。それをどういうふうに御判定になりますか、先ほどの政策はここから完全に崩壊をしておるとしか思えないのですが、どうですか。
  86. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 就業率あるいは雇用率のパーセンテージは、この伸びは必ずしも企業の拡大率に比べて大きくは出ておりません。しかし十二月、一月、二月、三月、この暦年と年度との違いのところの一月、二月、三月の数字は、お持ちになっている統計にも現われておりますが、それを見ましても、一月、二月、三月が非農林業の方は増加指数が高くなっております。従って新しい産業に対するところの質的な企業の変化に伴う労働の移動、あるいは新しい労働力の吸収力というものは、徐々であって、緩慢でありますけれども、しかし全然これは雇用計画失敗であると断ずるのには早いのではないかと思っております。要するに経済規模の拡大というものと、労働の吸収力というものとは必ずしも並行はしておりませんと、こう思っております。しかし現在の産業構造の変化に伴う労働の吸収は、短期間でだけ判断はできないのではないかと、こういうふうに思ております。
  87. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 だから、私はわざわざ長期の趨勢はどうなっておりますかということを聞いて、長期の趨勢から経済規模の拡大はちっとも雇用増大になっておらないし、特に最近の趨勢はそのことがはっきり出て参ったというふうに判定をせざるを得ないのです。これも数字による判定ですから、もっとそれを正確に申し上げますと、三十年度は国民総生産は、いわゆる成長率は七・四%であります。三十一年度は一一・七%、このように成長率は非常にふえておる、それにもかかわらず雇用はそんなにふえていない、雇用は三十年度は三・二%、三十一年度は……ちょっと私のところにないですが、三十一年度もそれほどふえてない、従って経済規模の拡大と雇用増大というのは、並行もしないし、むしろ場合によっては逆行をしておる、これに対して、それでもなおかつ経済規模を拡大しさえすれば雇用増加するんだということで、のほほんとしておられるのかどうか、これがあなた方が資本の成長率ばかり、資本をどうしてふやして行き、利潤をどうふやして行くかということばかり考える資本主義の経済であるから、こういうような逆な傾向が出てきておるということを如実に数字で示しておる以外の何ものでもない、雇用増加なり完全雇用は、もはやあなた方は、経済規模はかりに拡大をしようとも、看板をおろさなければならないのだということを明示いたしておると思うのですが、どうですか。
  88. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 申し上げます。第一次産業部門では、たしかに雇用就業者数は横ばいであります。しかし第二次産業部門では、昭和二十九年度が九百二十六万人、三一十年度が九百七十三万人、三十一年度は一千七万人とふえております。第三次産業部門におきましては、昭和二十九年度には一千三百五十七万人、三十年度において一千四百三十八万人、三十一年度において一千四百九十七万人と、明らかに第二次及び第三次産業部門においては就業者数は増しておりまして、第一次産業部門だけが横ばいであります。従って全体としては私の方ではあなたの見解通りではない。むしろ産業の拡大に伴って、比率は少いのでありますけれども、就業者数増加傾向をたどっている、こういうことであります。
  89. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 第二次産業ではなるほど昨年は相当ふえております。ことに先ほど申しましたように、非農林業では百四十九万というふえ方をいたしております。そこで問題は、それならばこれは……、しかし先ほどから長期趨勢から見ればちっとも経済規模の拡大と関連してふえていることにはならないのですが、この問題はもっと後にもう一ぺん帰って参るとして、百四十九万、なるほどふえておりますが、このふえた構成をどういうふうにお考えになるか。かくこの場合に百四十九万全就業者数ではふえているのだけれども、三十人以上のところで一体どれだけふえているのか、それ以下でどれだけふえているのか、むしろそういう大企業なり、何なりでは絶対的な減少すらあるとしか私たちは思えないのです。その辺は正確にどういうふうにあなた方は判定していられますか。
  90. 小出榮一

    政府委員小出榮一君) お答えいたします。就業者数増加と一口に申しましても、ただいま御指摘のように、就業者の中にはいわゆる通常の雇用形態でもって就職しておりますいわゆる雇用者というものもございまするし、さらにその雇用者の中で、毎月勤労統計に出ておりますいわゆる規模三十人以上の事業所における常用雇用者、いろいろ統計があるわけでございまするが、私どもの方で、ただいま御指摘になりました雇用者の特に規模別の集計はいたしておりませんけれども、就業者の中の雇用者につきましては、一応の見通しを立てておりまして、三十一年度におきましては雇用者の総数は千七百八十二万人でございます。そのうち農林関係におきまして六十二万人、非農林関係を総括いたしますると千七百二十万という状態でございまするが、三十二年度の見通しといたしましては、雇用者の総数におきまして千八百六十五万と、大体八十三万人ほどの増加を予定し、そのうち農林業につきましては六十二万というふうに横ばいと考えております。これらはすべて非農林関係、特に生産関係あるいは商業活動関係等における非農林関係において雇用者が増大する、かように考えております。ただこの中で、三十人以上の事業所における常用雇用者の数というものは特に試算をいたしておりませんので、数字を申し上げかねる次第でございます。
  91. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それならば、もっとこれは労働省の方にお聞きしますが、製造業であらゆる規模の全産業でどれくらい三十一年度は雇用がふえたか、それから三十人以上の製造業でどれだけふえたことになっているか、その実績を。
  92. 江下孝

    政府委員江下孝君) 常用雇用指数増加状況でございますが、三十人以上の工場、事業場におきまして、製造業が三十年が、二十六年を一〇〇といたしまして、一一一・五%でございましたが、三十一年は一一六・一というように増加をいたしております。
  93. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それだけ出されたのじゃちっともぴんとはっきりこないです。どうも質問の点を故意にそらしておられるのか、私の質問の仕方が悪いのか、この点は企画庁長官総理もよくお聞き願いたいのですが、就業者数はさっき言ったように非常にふえて、一応絶対数としてはふえたことになっております。ところが、製造業の全規模において昨年一年間に一三%ふえたということになっております。しかるに三十人以上の製造業常用の雇用では、指数にしかこれは出ておりませんから、もっと絶対数を調べていただきたいと思いますが、指数から言うと二・九%、約三%しかふえておりません。これから見れば、雇用がふえた、ふえたとおっしゃるけれども、それは全部三十人以下の中小企業にふえて、しかもこれは日本の実態から言えば潜在失業者、ほとんど大部分は潜在失業者なんです。そういうところにふえたというだけであって、三十人以上の規模別には三%もふえていないのですよ。従って経済規模の拡大、経済規模の拡大はむしろ三十人以上、あるいは百人以上、二百人以上のところが経済規模の拡大をしておる。そういうところにはほとんどと言ってもいいくらいに増加はしない。むしろ大企業には絶対的に減少しておる。数字はたくさんありますが、もうあまりこまかになりますから申し上げませんが、同じく雇用がふえたと言っても、こういう状態です。これをどういうふうにお考えになりますか。
  94. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 大企業におきましては、むしろオートメーション化が非常に行われておりましたので、生産量の増加に比べまして労働力人口の吸収率は高くなかったというのは、これは事実と思います。ただ第一次製品部門におきましては、オートメーションの関係で量的の生産能率は上っておりますけれども、吸収労働力人口は少なかった。が、第二次製品、第三次加工製品、第四次製品と、輸出に近づく、あるいは消費の末端に近づくような商品になるに従って、これは大規模企業でない経済構造をわが国は持っておりますので、オートメーションによるところの第一次基礎資材がたくさんできたということは、結局加工段階に入って行く資材が多くなった。従って第二次製品、第三次製品以後の各加工の末端に近づくに従って雇用量増大傾向にあった。こういうふうに見ております。従って大企業のみが雇用能率が上らない。小規模工業が労働の吸収力のしわ寄せの犠牲になっておる、こういうふうに、全部をそういうふうに考えておりません。というのは、ただいま申し上げましたように、オートメーション化による、あるいは合理化によるところの資材がたくさんできる。それの第二次、第三次小企業にだんだん物量がたくさん入って行く、そうして加工するところの機会が多くなった。これが経済規模の拡大の基本線ではないかと、こう思っております。
  95. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 だから、経済規模の拡大は、それ自身としては何ら雇用の吸収になっていない。間接に迂回的にそちらの方にしわ寄せてしまったにすぎないという問題である。従って大企業は全部吐き出したって、あるいは経済規模をうんと増大したけれども、ちっとも自分のところにはその吸収には責任がなくて、みなおっぽり出して、それを三十人以下の中小企業が受け止めて、ようやくそこに吸収されて若干の増加があったというだけなんだ。ここに国の雇用政策重点がおかれなければならないのに、ここが何ら考えられていない。何ら施策がなされていない。そのことはさらにもう一つ言えば、なるほど絶対的にはふえておりますが、その増加のうちに臨時の日雇いは三三%もふえております。ところが常雇いの人たちはようやく四%しかふえていない。こういう半失業状態でみんながただ職を得ておるというのにすぎない。あるいは労働時間から言いましても、これは一つ一つ私は皆さんにお聞きして、もっと認識を深めていただきたいと思うが、もう時間がありませんから私の方から申し上げますが、就業者の就業時間別に見ても、三十五時間以下の半失業状態労働者と、それから他方においては、驚くべきことには六十時間以上の長時間、過重時間労働者と、この数が両方うんとふえているということにすぎないのであって、これらは、何らその雇用が生活水準の引き上げということを目標にしておる雇用政策の結果にはなっていない。むしろこういう点では貧困を増しておるにすぎないのです。雇用政策を何ら考えておられないのみならず、何ら実績を上げておられない。それでいて、なおかつあなた方は雇用政策を呼号されるのかどうか。
  96. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 経済の規模が急激に拡大されました結果、特に、熟練工が非常に足りなくなりまして、長時間労働を要求せざるを得ないという環境になったのは昨年の特徴と思っております。従って、これに対してはどうしても技術、技能者の養成あるいは熟練を必要としない合理化を考えなければならない。こう思っております。それからもう一つ、この短時間労働者あるいは中小に臨時工が非常に多く入ってきておる。これは経済の飛躍的なアンバランスな拡大がもたらしたしわだと、こう思います。従ってその点は統計でわれわれもよく存じておりますから、その点につきましては熟縫、技能の向上をはかる、特にその率の激しかったのは、サービス部門等においては、そういう傾向が非常に顕著に現われてきておりますから、そういう面については特に中小企業対策を本格的に取り上げて、今後の計画の中には十分配慮しなければならぬ、こう思っております。
  97. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その点を、労働大臣はどういう施策をお持ちですか。
  98. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) お話のように、三十人以下の中小企業の面に潜在失業者的な勤労者が非常に多いということはお説の通りであります。そこで、ただいま企画庁長官の申されましたように、財政投融資を拡大いたしまして、中小企業の振興対策をやることを、大企業のオートメーションとともに並行してやって行かなければ、これは完全雇用にいかないと思うのです。でありますから、本年の予算におきましても六百七十億くらいの投融資がふえておりますが、それの約三分の一は中小企業の方に向けるという振興対策をとっております。その他今後積極的にこの線を遂行して行くのでなければ、この潜在失業者的な中小企業の、しかも零細産業におる人たちを救うことはできないと思うのであります。もう一点。ただいまいろいろ企画庁長官からも説明がありましたが、オートメーション必ずしも失業者を出すものではないという私は考え方を持っております。何となれば、日本の今日の経済の柱はやはり加工貿易の線におかなければならない。加工貿易の線におくとするならば、これはやはり良品廉価をもって世界市場で戦わなければならない。でありますから、よい設備と近代的な機械、性能の高いもの、技術的なものというものを集めて、一時は暫定的に失業者は出るでありましょうが、日本の経済が拡大いたしますならば、それは必ず完全雇用の方向に向って参ります。今の過渡期における失業者の問題につきましては、その対策として、社会保障その他において行わなければならない、かように思っております。
  99. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いつでも長期に見れば吸収ができるのだと言っておられるのですが、長期に見たって、少くとも過去数年の間には何ら吸収になっていないということはもう数字をもってはっきりとしておる。そこで、そういう自然に結果としてそういうものが吸収されるだろうという安易な考え方でなしに、それを経済規模との関連において雇用量増加しようとすれば、そこに特別な雇用政策が出てこなければならない。それをどういうふうにお考えになっているか。そこに重点がおかれなければならないといっておるのですが、これはあまり明瞭なお答えがないから少し先へ進みますが、それならば、これは企画庁長官にお聞きしたいのですが、これまでの長期経済計画では、みんな失業対策がどうなるかということを考えておる。ところが今度はこれは偶然か故意か失業が落されておる。失業の数字は落されておる。これはなぜお落しになったか、失業をどうお取り扱いになるおつもりか。
  100. 小出榮一

    政府委員小出榮一君) ただいま御指摘の通り、三十年度、三十一年度の年次別経済計画におきましては、就業者総数の欄の下に主要経済指標としまして、完全失業者数という欄を設けておったのでございます。これは労働力人口から就業者総数を引けば、それが完全失業者数でございますので、この昭和三十二年度の経済計画におきまして、完全失業者数というものは指標に表わしておりませんが、これを引いてみれば出てくるわけでありますが、なぜそれでは完全失業者数というものを指標の中に掲げなかったかと申しますと、これは御承知のように、完全失業者数というものの統計の取り方が、失業者の趨勢を表わす数字といたしましては、やや誤解を生ずると申しますか、不正確なものでございます。日本の失業状態全般を見ました場合には、申すまでもなく、ここに表われております完全失業者数の統計のほかに、先ほどから御指摘になっておりますような不完全就業者という問題もございますので、それら全体を考えまして、失業対策というものと就業者対策というものを考えなければならない、こういうことでございます。完全失業者数の定義は、御承知のように毎月の月末の一・週間の調査をいたしまして、その一週間の間におきまして一時間以上の収入のある就業をしなかった者、しかも就職の意欲を持ち、働く意思と能力を持って、かつ就職活動を行なった者、これが完全失業者数の定義としてその数字の上に表われてくるわけであります。これをとらえまして、失業者の定義とするにはやや不十分である、そういうふうに考えまして、完全失業者数という指標を特に今回の経済計画には表さなかった次第でございます。
  101. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 労働力人口から就業者数を引けば簡単だからとおっしゃるのですが、われわれがちょっとしろうと目で見た場合には、そういうことがなかなか出てこないので、そこいらが問題がわからなくなってしまっている。ところが今の御指示に従って引いてみますと、三十年度の実績は七十万の完全失業者、三十一年度の実績見込み六十万、三十二年度は計画においてなお六十万、従ってこれは完全雇用なり何なりを呼号しておられるにかかわらず、失業者は一人も減らない。計画においてすでにしかりというふうになっておると思いますが、長官から。
  102. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 三十二度の計画ではそうなっております。三十一年度に当初六十五万の見込み実績において六十万に変っておったと思っております。三十二年度はただいまのところ六十万と見込んでおります。
  103. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 だから、それじゃ一つも減らない。
  104. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) お答えいたします。三十一年の六十万に比べて三十二年の吸収の結果の残りの六十万、変りはありません。
  105. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 もう二年間も神武以来の好景気が続いておるにかかわらず、失業については何ら寄与するところがない。先ほどから言っているように、雇用の問題は二年続いてもなお解決ができない。失業に関する限りは一人も解決ができない神武以来の好景気だという結果を、公然と認めざるを得ないというのがこの計画ですね。
  106. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 私の方に参っております保険金の受領者の人員数の統計を見てみますると、失業者のパーセンテージというものは非常に少くなってきております。従って失業保険の状況等から見ますると、失業者のパーセンテージというものはこの三十年以来、急激に各月低下傾向を見せておりますから、私は必ずしも実質において、いわゆる完全失業者と言いますか、失業状態が前年と内容は悪くなって行くとは思っておりません。
  107. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それには失業保険の特殊な要因なり、特殊な意味があるので、しかしそっちが減っているからといって、あなたの計画自体については何ら減っていないのだから、経済計画としては何らその問題については解決をされていないのだということに過ぎないと思いますが、その点どういうふうにお考えになりますか。
  108. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 六十万人の見込数字は前年の実績の六十万と同一でありますから、その点におきましては前年と本年とは変りはない、その通りであります。
  109. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それならば計画としては変りがないので、従って予算においても失業が減るということで予算は見てはならないので、やはり対象人員は同じだと見なければならないと思いますが、予算においてはそれが一割減ということになっておる、これはどういうことに基くものですか。
  110. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) お説の通りに二万三千減らしております。それは表われておる統計の六十万の失業は去年も今年も同じように見込んでおります。これは一つの参考にしなければならぬと思います。しかしながら、職安に対する日雇いの届け出の数は横ばいであります。また、ただいま長官の指摘いたしました失業保険はずっと減っております。同時に民間における雇用量はやはり昨年よりもふえると思います。ふえると見べきであります。また、もう一点は、現在二十四万八千人を三十一年度の予算に組んだのであります。ところがわれわれの見込みでは二万人くらいが今月の三十一日までには残る予定であります。でありますから、本年と大体横ばいの数字をあげたのでありまして、それが二十二万五千人になっております。なお、このほかに公共事業費の分として失業対策費がありますが、その方に三万人くらいを使用することになっておりますから、これはまあ一般の勤労者ということにはなっておりますけれども、失業の人もそこに吸収されるのではないかと思っております。さらに、財政投融資がふえたことによって五万人くらいの雇用量増加いたしますので、これらを見合せますというと、今、予算に提示いたしておりますところの二十二万五千人で今年はまかなえるものと、かように思っておる次第でございます。
  111. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 先ほど失業保険の問題が出ましたが、これが減少をしているのは、地方の現場に行ってごらんになればはっきりわかるように、非常な無理な切り方をしている。従ってこういうふうに減っている。今こそ失業も、さっきの経済計画で言えばそう減らないのだから、経済計画に関する限りは一人も減らないのだから、そういう無理な施行の仕方その他を改めて、そして少くともこの失業保険の増減というようなことは考えてはならない点である。先ほどからいろいろ言われたように、失業の固定化その他の問題を考えると、この点には十分配慮をしなければならないにかかわらず、ここらを容赦なく削減をしておられることについてはどうも納得がいきませんが、これは意見になりますから別な機会に譲ります。  もう一点、これは厚生大臣お尋ねをしたいのですが、生活保護人員が減少をいたしております。これはどういうことを意味するのか。昨年厚生省がお出しになった三十一年の厚生白書によると生活保護……(「委員長厚生大臣おらないぞ」と呼ぶ者あり)それじゃ厚生大臣質問あとに譲ります。(「休憩々々」と呼ぶ者あり)  それじゃ総理大臣にお聞きしますが、これまで雇用の問題について、二十九年以降の趨勢、あるいは三十一年の実績その他をいろいろお尋ねをいたしましたが、ごらんの通りに、この問題については政府は真剣に取り組んでおるとは私は思えない。今の資料の扱い方、説明その他から見ても、これがあなた方の最重点政策だとはどうしても受け取れません。しかし、これはわれわれとしても、この政策重点政策でありますが、あなた方もおやりになりたいのだろうから、今後はこの問題をもっと本格的に取り上げるというここで決意をされてしかるべきだと、こう考えておりますが、その点について総理所見を伺いたい。
  112. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 雇用の問題は、これはきわめて重大な問題であり、また、わが党の政策としましても、完全雇用を目途として、あらゆる施策を立てて行くということを根本に考えておるわけであります。午前中のいろいろ数字上の質疑応答等におきまして、行き違いや、あるいは統計の取り方等についての十分な資料が整備しておらなかったことは遺憾でありますけれども、これは大体の御質疑等の何でわかったように、統計の取り方や基礎等の行き違いの問題があったと思います。しかし、完全雇用政策達成いたします上から申しますというと、その基礎材料になる統計資料等につきましても、格段の正確な、はっきり実情を把握するような資料を整えて行かなければならぬことは言うを待ちませんから、その点等についての関係各庁の連絡の悪いところにつきましては、十分注意するようにいたしたいと思います。しかし私は、やはり経済規模を拡大して行くということは、これによって産業の繁栄を来たし、また一般に就労の機会を多くするには、どうしてもそうやって行かなければならぬ、こう考えております。ただ、投資資本なり、設備投資の趨勢と雇用の趨勢とは必ずしも一致するものでないということでありますが、これにつきましては、いろいろ事情はあると思いますけれども、しかしやはり日本の産業の規模を大きくしていき、拡大していき、これを繁栄せしめるということでなければ、結局就労の機会というものはふえて行かないのでありまして、この点については、もちろんこの規模の拡大と就労の現実との間には、私は少し時期的のズレは自然生ずると思います。従って、今長期の見通しと言われましたけれども、三十年、三十一年度だけをとって、この趨勢を直ちにこうだと論断することは、私自身の考えによればなお早い。われわれはやはり五カ年計画とか、六カ年計画によって、産業基盤をある目標を立てて拡大して行きつつ、そうして就労の機会を与えて、これに対する労働者を吸収をして行くという経済政策基本につきましては、私どもこれが正しいものである、またこれを一そう進めて行くことが完全雇用への道である、こうした考えは少しも変らないのでありまして、今申しましたように、それの基礎になる統計その他また現実を把握しながら、これをその目標に一致せしめるように計画を推進して行くということは、これはわれわれは計画経済というふうな考えではありませんけれども、少くとも経済の規模の拡大については、ある一つ目標を持ちつつ進んで行くという考えの上に立っておることから申しますと、計画実績とをにらみ合せながらこれを修正し、その原因のあるところを確かめながら、この長期の計画を進めて行くことによって、われわれの究極の目的である完全雇用達成して行きたい、かように考えております。
  113. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 佐多君、厚生大臣が参りましたから。
  114. 湯山勇

    湯山勇君 ちょっと関連して。私は佐多委員の今朝来の質問に対する政府答弁その他を総合しまして、岸総理が施政方針として御演説になった中のある考えが、これらの両輪をなしておるのではないかということを感じますので、その点についてお尋ねをしたいと思います。  それは岸総理大臣の演説の中に失業者が非常に多いということをおあげになって、この失業者が多いという余った労働力こそはわが国経済発展の余力を示すものである、こうお述べになっております。この言葉は言いかえれば、失業者がたくさんあるということは経済の余力を示すものであって、わが国経済の好条件、いい条件であるというような把握をしておられるととれる言葉であります。ところが実際は、今の日本の失業者というものはそういう状態ではなくて、むしろわが国経済の悪条件であるし、このことが経済に対してある意味では重圧を加えておる。こういう事実をもし無視して総理の演説のように、これをわが国経済発展の余力であるというような把握をしておられれば、私はきわめてこれは重大であるし、またそういう基本的な考え方からは、決して完全雇用というようなそういう政策は出てこない。それがただいま企画庁長官なり、労働大臣のああいう不明確な答弁となり、そうしてあのようないいかげんな資料となって現われたのではないかというように判断いたしますが、総理があの施政方針において、この失業者をわが国経済の余力であるといういい条件におとりになった理由、それを承わりたいと思います。私どもはもしこれが余力として考えられるというのであれば、それがもっと、たとえば最低賃金の保障ができており、一日六時間労働というような形で全員就労しておる場合において、つまり直ちに生産力に変り得るそういう態勢がとれておって初めて余力であって、現在のような状態では決して余力ではないという判断に立っておりますが、岸総理のこの点に対する御見解を伺いたいと思います。
  115. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私どもは現在の日本の労働状態が非常に望ましい状態であると考えておらないものであることは言うを待ちません。しかしわれわれは産業規模を拡大し、就労の機会を多くし、産業の繁栄を考えるという場合において、言うまでもなく労働力というものは非常に重要な要素であります。現に欧州諸国におきましては、いろいろな産業規模を拡大し、産業を大きくして行く、または新たな新しい産業を興そうという場合におきましてもこの労働力のないためにそれができない、あるいは他の国から新しい労働者を入れてこなければならないというような情勢にもあることも御承知の通りであります。われわれはあくまでも日本の産業の規模を拡大して、そうしてその繁栄を期して行く、これには現在ある産業の規模を大きくするという問題もありましょうし、新規の産業を興さなければならぬ、また興す必要のあるものもたくさんあります。これらに対して積極的な政策を用いて、そういう政策を遂行する場合において、われわれはこういう失業者があるということは、むしろ日本の労働力の面から言うというと、そういうものを拡大して行く場合において、これに十分に働いてもらうというような機会を与え、そういうふうな就労の機会を作るという上から申しまして、むしろわれわれは大いにこれから積極政策をやり、産業の拡大をやるという政策を遂行する上において、労働力の不足のためにそれができないというようなことにならないというような意味で申し上げたわけでありまして、決して現在の日本の労働条件なり、あるいは失業者の状態というものが、これが非常に有利な条件である、この方がいいのだというような考えで申し上げたわけではないのであります。
  116. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それでは一点だけ厚生大臣お尋ねをしますが、生活保護人員が今度の予算では減少をいたしました。なぜこういうふうに減少をさせられたのか。あなたのところでお出しになった厚生白書によると、生活保護基準の世帯が百九十五万世帯もあって、人員にして九百七十二万人という数字が出ております。これも実際の数字から見れば、政府数字でありますから、過小に見積もられたものだとしかと思えませんが、それでもなおかつこれだけの生活保護基準世帯がある。そういうときに、今度の予算では生活保護人員を減少をしておるわけであります。これはどういうことを意味するのか。
  117. 神田博

    国務大臣(神田博君) お答えいたします。ただいま佐多委員のお述べになられました、引用されました数字は、低所得者階層の数字じゃないかと思っておりますが、予算に盛られております要保護者の数は、昭和三十年十月が最高で百七十二万人と記憶いたしておりますが、その後ずっと減少の一途をたどっておりまして、昭和三十一年の十月には六十一万世帯、百五十四万人というような減少をいたしております。そこで、これはずっと一昨年の九月からの傾向でございますが、毎月一%ぐらいの割合で要保護者の数が減って参っておりまして、今度基準の改訂等もいたしたのでございますが、そういうような景気の循環がようやく下の方に浸透しておるのではないかというような見込みも立ちまして、そこで百五十六万というような数を計上いたして予算を組んだ、こういうような実情でございます。
  118. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 なるほど私のあげました数字は低所得者ですが、この低所得者の生活水準は生活保護基準世帯とほとんど違わない生活状態であるということは、あなたの方の厚生白書にはっきり書いてある通りであります。しかもなお、この実績においてだんだん減ってきたということは、あなたがよく第一線の役人諸君にお聞きになればわかる通りに、予算がないからということで非常な無理な切り方をして、各地において減してきておる数字の結果にすぎない。それを今までそういうことをしておられたにもかかわらず、なおかつ今度はまたさらに予算を切るということは、どうしてもわれわれは了解ができない。しかもこの景気の好況で、だんだんそういう人たちが要保護でなくなってくるというお話ですけれども、先ほどからその点は十分論議をいたしましたように、むしろ低所得者なり何なりの方へただ吸収をされているにすぎないので、これは要保護者はほとんど変らない状態であるわけです。それらの事態を考えると、こういう切り方は非常な無理な切り方であるとしか思えませんが、その点はどういうふうにお考えですか。
  119. 神田博

    国務大臣(神田博君) ただいまこの要保護者に対する出先担当者が非常な厳選、主義をやっておる。そこで無理に減らしているんじゃないかというようなお尋ねのように伺ったのでございますが、確かにそういう声が一部から私どもの耳にも入って参ります。しかし同時にまた、どうも乱給と言いましょうか、乱給乱費の声も入っておりまして、その辺のところは出先担当者に、よく実情を調査いたして、そして該当者には漏れなく一つ要保護を怠らないようにということをしばしば指示いたしております。予算のあるないということも非常に大きな問題でございますが、しかし、これはもう御承知のように義務費でございますから、予算がないからといって要保護を打ち切るわけにはいかないのでございまして、今、佐多委員の御指摘になられました御心配の点がございますが、なお一そう一つ出先担当員を督励いたしまして、そういう憂えを少くいたしたい、十分一つ生活保護を実施して行く上に支障ないようにいたしたいと、かように考えております。
  120. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ちょっと議事進行についてですが、大きな項目として五つだけ順次お尋ねをして参りたいと思って、今第一の完全雇用政策だけをやりまして、五分の一だけ済んだのですが、あと五分の四をやりたいと思いますので、時間もちょうど一時になりましたから、一応この辺で休憩することをお取り上げ願いたいと思います。(「賛成」「異議なし」と呼ぶ者あり)
  121. 安井謙

    安井謙君 質問者の時間は何分残っておりますか。
  122. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 十六分残っております。(「休憩々々」と呼ぶ者あり)それでは一時間休憩いたします。    午後一時一分休憩    —————・—————    午後二時十五分開会
  123. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) それでは委員会を再開いたします。  午前に引き続いて佐多君の質疑を続行いたします。
  124. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 国際収支について、企画庁長官、大蔵大臣、通産大臣に、主としてお尋ねをしたいと思います。まず第一点は、三十一年度の見通しをどういうふうに立てておられるか、経済計画の大綱に基いて御説明を願いたいと思います。企画庁長官にお願いをします。(「企画庁長官はいないじゃないか」と呼ぶ者あり)
  125. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 政府委員ではいかぬですか。
  126. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 長官はどうしたのですか、きょう長官がおもな問題になるのですからね……。企画庁長官に、三十二年度経済計画に基く三十一年度の国際収支の見通しを御説明願います。
  127. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 三十一年度の見込みでありますが、輸出の面では二十四億八千万ドルの見込みで、そうして輸入では二十九億一千万ドルの計画であります。そうして当初の見込みでは、バランスは実質的には赤字八千万ドル、形式では六千万ドル、こういう計画であります。それが最近実質の面では一億七、八千万ドル、形式では約三千万ドルと数字は訂正しなければならぬ状況になっております。
  128. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、これは計画の見通しが間違っていたということですか。
  129. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 計画が訂正を要する、間違っておったというわけであります。
  130. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その点もっと正確に、大蔵大臣はどういうふうにお考えですか。
  131. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 佐多さん御承知の通りに、この輸出入は、例年、予算編成当初に見込んだものよりもかなり動いておるのであります。輸出で申しますれば、昨年の今ごろは三十一年度の輸出は二十二億ドルと、こう予想しておったのが、今、宇田国務大臣お答え通りに二十四億八千万ドル、こうなっておる、おととしの数字も当初の予定よりも三、四億ドルふえる、こういうふうに相なっておるのであります。これは計画が間違ったかという御質問でございまするが、計画計画で、実際はそういうふうに伸びて行った、こういうことであるのでございます。輸入におきましてもやはりそう言えると思うのであります。
  132. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その点をもう少しそれじゃ正確に、企画庁長官に、三十一年度実績のこの計画を立てられたときの見通しと、それから今お話しの見通し、それがどこで大きく違ってきたか、ごく数カ月の問題ですが、どこで一番大きく違ってきたか、その原因がどこにあるのか、従ってそこから生ずる来年度の見通しに関連して、どういうふうな判断をされておるかという点を伺いたい。
  133. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) それは昨年下期、特に下期以来のわが国の経済拡大に伴うところの輸入増が大きな原因と、こう思っております。従ってことしに入りまして一、二月、輸入は当初の計画よりも漸増いたしておりまして、その結果、国際収支バランスが見込み違いの要因がふえてきておる、こういうわけでございます。
  134. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 三十一年度は、お話しの通りに非常な貿易の拡大と言いますか、そういう意味において、いろいろ貿易の関係における経済繁栄だ、神武以来の経済繁栄の主要な原因は貿易にあるのだということが言われておりますが、今のような推計実績だとすれば、国際収支の面で見る限り、貿易は一体成功したとお思いになるのかどうか、その点を御説明願いたい。
  135. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 当初の計画で参りますると、三十一年度の輸出につきましては、計画は二十二億ドルでありましたが、輸出の実績は二十四億八千万ドルと、こういうふうに見られるので輸出の面におきましては、予定よりも輸出は二億八千万ドルばかり増加が見込まれる、こう考えられますので、計画よりも上回った数字が出ておることは、これは御承知の通りであります。輸入の面におきましては、当初の計画は二十六億三千万ドルでありましたのが、二十九億一千万ドルとなっております。輸入の面の数字増加は、主として輸出のための基礎資材及び国内におけるところの経済拡大の必要資材でありますから、それの内容は、質的には来たるべき年度の貿易計画を非常に大きく変更するようなものではない。むしろ来たるべき年度においては、われわれの計画を遂行するのに必要な基礎の有利な数字と見てよろしい、こういうふうに思っております。
  136. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 先ほどからお二人の答弁によると、一億八千万ドル程度の赤が見込まれておるというお話のようですが、これは実際にはもっとふえる結果にもなりかねないと思いますが、それならば、すでにこの経済自立貿易だけで一応収支をとんとんにしようという、あなたの有名なとんとんに、しかも貿易だけでやろうというのが経済計画目標であったと思うのですが、これがまた大きく破られ始めておる。三十一年度がそうであるのみならず、三十二年度の見通しにおいてもこれは破られるんじゃないか、こういうふうに思うのですが、その辺の目標との関連をどうお考えになっているか、そういう点から見れば、今や経済自立というのはもう完全に画餅に帰したということしか言えないと思いますが、この点をどうお考えになりますか。
  137. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 経済自立と申しますけれども、昭和三十二年度の輸出のバランスは、昭和三十一年末の輸入によって、当初のわれわれの計画しておるところの貿易バランスは大きく破られることはない、そういうふうに思っております。
  138. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 少くとも三十一年度の実績では破られたわけですが、これは三十二年度からは取り返すということにお考えになっておるのか。しかも三十二年度に取り返すといっても、これは輸出輸入だけでは取り返せない。この目標によりますと、あなた方の計画によりますと、申し上げるまでもなく輸出が二十八億、輸入が三十二億、ここで大きく貿易だけではアンバランスになる、この点は経済自立をすでに放棄をされたのかどうか。
  139. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 輸出輸入のバランスは二十八、三十二の数字の開きを持っておりますけれども、国全体の国際的な貿易バランスというのは、そのほかの要因も含めまして、われわれは均衡のとれるものと、こういう建前に立っております。
  140. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 経済自立の目標と、経済計画目標の場合には、経済自立とはそういう特需を含まないで、貿易だけで収支バランスすると、そういう意味において日本が経済的にも自立をするのだ、外交の面においては独立の完成の強調をしなければならないといったが、総理はこれはあいまいな答弁しかされなかったが、経済自立においても同じようなことを少くとも目標として掲げなければならない、それでなければ経済自立なるものはあり得ないし、従って完全な独立なるものもあり得ない、それが総合長期計画目標ではなかったのか。しかるに今やこれがくずれ去っておるし、近い将来においてもこれを取り返すという目標は立てられておらないとしか思えない。外交において完全独立を放棄されたと同じように、経済における完全独立を放棄をしてしまわれるのか、経済自立は放棄をしてしまわれるのか、この点を明瞭にお答え願いたい。
  141. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 理想から申しますると、特需というものを全然考えずに貿易並びに貿易外収支でとんとんになることが望ましいのでございます。こういう意味におきましては、昭和二十九年は十六億前後で、輸出入が特需を除きましてもとんとんでございました。九千万ドルぐらい輸入超過でございました、二十九年には……。そうして三十年におきましては、やはり二十億程度で輸出入はとんとんであったのであります。しかしこの状態を導きましたゆえんのものは、御承知の通り二十八年度において輸出が十二億ドル、あるいは輸入が二十二億ドルと、三億ドルの赤字で輸入原材料が非常にふえたのでございます。その効果が二十九、三十年に現われたのであります。こうして日本の経済の拡大を導くためには、昭和三十一年度のように実質的にこの程度の赤字が出ましても、将来輸出の原材料を確保しておくということが必要でございまするから、経済自立というものは、理想的には特需をはずしたのが最も理想的でございます。しかしそれにはやはり日本の経済を拡大してそこに持って行かなければいけませんが、長い目で、すなわち三、四年の長い見方で自立達成に邁進すべきだと思います。一年心々の状況をとらえてやりますると、かえって経済の拡大を阻害するんじゃないかと考えておるのであります。
  142. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今のお話からも明瞭であるように、二十九年までは輸出よりか輸入が多くて赤になった、ところが二十九年からこの傾向が転じてむしろ輸出の方が多くなったと、二十九年、三十年は従って経済自立の方向が確立するかに見えた。それをさらに推し進めて行くことが経済自立の建前であり、少くとも目標としてはそれを掲げなければならないのだが、三十一年にはそれが破られ、三十二年もそれの取り返しがつかなく、大きくアンバランスになってしまうと、しかし今、大蔵大臣の言われるように、これは一、二年で解決をする問題じゃないのですから、あるいは長期計画としてこの点を考えてしかるべきだと思いますが、それならば長期計画としてもう少し長い目で見て、その経済自立をどういう時期にどういう過程を経て達成をしようとしておられるのか、この点は特に長期計画を扱っておられる企画庁長官の御説明をお願いします。
  143. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 長期計画の中では、経済成長率を七ないし八%の伸び率と見て、そうしてただいままでの持っております計画では現在の経済規模に合いませんから、これに改訂を加えたいと考えております。ただ改訂を加えます場合に、特需に対する見通しというものは、長期計画にとりましては必ずしも頼りになるとは考えておりませんから、これの漸減計画というものは、やはり国際環境の見通しが十分に立つまでは、それを具体的にどういうふうに運んで、行くかということはなお検討いたしたいと考えております。
  144. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それならば、もはや目標は放棄されたのだし、長期計画なるものは立ち得ないということで、あなた方の前からの内閣の引き継ぎの、長期を見通して計画的に問題を進めて行くということはもはや不可能だ、やらないのだ、少くとも近い将来においては経済自立はだめなんだというふうに、はっきりお考えになっているのかどうか。
  145. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 経済計画を立てます場合に、自立経済計画目標は、当然特需を必要としない経済計画を立てるものであるということは、これは当然考えておりますけれども、ただ特需が、条約その他の関係で、われわれの経済の中へ入って参りまするから、長期計画の中でこれを取り上げざるを得ない環境にありますから、それは、自立目標達成する長期計画と、そして特需に対するどういうふうな計画をその中に織り込んで行くかという、その二つの面の組み合せになりますから、長期計画を立てるところの真の目的は当然自立経済達成であります。そうして、それに入ってくるわれわれの条約上のいろいろの関係に基く特需は、これを長期計画の中にどういうふうに扱って行くかということはあわせて考えたい、こう申し上げております。
  146. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 特需に対してどういう態度をとるか、特にアメリカとのそういう関係をどう考えるかということについては、これはあなた方はそれを前提とされ、それを既定の事実としてそのまま進めて行こうとされるでしょうし、私たちはこれを切り離さなければならぬ、これをなくする方向に持って行かなければならぬと思いますが、これはあなた方とわが党との政策の違いでありますから、この点については今は申し上げようとは思いませんが、しかしながら、少くとも経済自立を考えようとされるのならば、なるほど特需は相当期間、あなた方の考え方によれば続いて、所与のものとして与えられるでありましょうけれども、この特需は収支バランスの外の問題としておいて、適当に使うということが目標なり政策の任務でなければならないと思うのだが、その点は、はっきりそういう考え方で計画を立てて行こうとされるのか、そういう政策運営をしようとされるのか、その点はどうなんです。
  147. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 長期計画を立てます場合の基本のわれわれの態度は、当然特需に依存をするということは考慮外に置くべきとは思っております。ただ、特需で掲げました数字の中でも、海外向けのものをわが国に買い付ける場合の数字も入っております。そういう面につきましては、われわれはこれは一つの貿易と同一の内容であると、こういうふうに見ております。従って純粋に申されるような特需関係につきましては、新しい経済計画を立てる場合には、当然これは別途に考慮しなければならぬ、こういうふうに思っております。
  148. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それならば、時期的にはいつそれがなくなるというふうにお考えになるのか。今まで過去二年間ぐらいこれがなくて済んだんですが、これはむしろアブノーマルなもので、今のようにアンバランスの方がノルマル、従って特需はずっと依存をしなければならない、相当長期にわたって依存をしなければならないというふうにお考えになっているのか。そうでないというお話だから、それならば時期的にはいつどういう政策によって、これがなしに収支がバランスするというふうにお考えになり、あるいは計画を立てておられるのか。
  149. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 特需をわれわれの貿易のバランス外にこれを置くのがよろしいか、それとも貿易の内部に置いておいて、全体経済の拡大の場合にあわせて考慮するがいいかということは、これからのわれわれの研究しなければならぬ問題だと、こう思います。しかし特需そのものの事実が、直ちにただいまの条約その他の関係で解消し縛るものとは考えておりません。従ってこのバランスを立てる場合に、それをどういうふうな計算として自立経済の場合に扱うかということについては、新しい年度の計画を立てる場合になお検討いたしたいと思っております。
  150. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その長期の見通しが、少くとも非常に正確に、数学的にではなくても、大体の予測はつけておられなければ、すぐ三十二年度の政策をどうするかということすら、自信をもって、政策によって目的意識的にはできないことになると思うのですが、どうもその時期その他について少しも考えておられないようだし、あいまいなのでよくわかりませんが、大蔵大臣はこの点はどういうふうにお考えになりますか。
  151. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 特需の問題につきましては、外貨予算その他国際収支を考える場合におきまして、別ワクとして考えておるのであります。しかして佐多さんの御希望のごとく、特需を全然はずして国際収支を考えることが、日本の将来のためにいいかという問題につきましては、宇田国務大臣がおっしゃっている通りに、増減はございまするが、相当期間続くものとすれば、これを考慮に入れて経済計画を立てるのが実際に沿うと思います。しかしこの問題はそう何十年も続くものじゃございませんから、今の状態では別ワクとして一応考える、そうして特需がどのくらい入ってとんとんになるかということで行っておるのであります。実際面としては当然入るものならば入るものとして、やはり外貨予算等を組んで行きたいと思います。
  152. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いや、その計算の必要上それを入れる、そうしてそれを現実にお使いになることは、私はちっとも差しつかえない、ただ目標として、これをずっと置いておくことにされるのか、そうでないのか。そうしたら目標としては、これは別ワクにして、ただ貿易だけで自立ができるようにしたいのだとおっしゃるから、それならば時期的にはいつだというふうにお尋ねしている。ところが相当、長期でなければならぬとおっしゃるのだが、問題は長期といっても、五カ年計画なら五カ年計画にこれを目標として掲げられ得るのかどうか、その時期的な判定の問題をお尋ねしたい。
  153. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 特需が今後毎年どうなるかということにつきましては、なかなか見通しが困難でございます。御承知の通り昭和二十七、八年ごろは特需が八億ドル程度あったこともあるのであります。最近では四億五千万ドルあるいは五億ドルということになって、ほぼ固定いたしておるようでございます。しかし今年は六億ドルの予定でございまするが、少し減るかもわかりません。この問題は宇田国務大臣がおっしゃっておる通りに、内地消費のものばかりでなしに、海外買付等もございますので、私は一がいにこれを別ワクとして全然見込まぬということもいかがかと思います。従いまして、これはアンノーン・ファクター、未確定要素の問題として、将来これがだんだん少くなることを考えながらやって行くべきだと思います。
  154. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 アンノーン・ファクターであればアンノーン・ファクターであるだけ、これは実際は計画の中に入ってくるかもしれませんが、計画とは別な硬い方、従ってこれなしに貿易だけで収支がバランスするように目標を立てなければならないし、それが今度の五カ年計画なり何なりの時期において達成をし得るとお考えになっているのかどうか、時期的な判定を質問をしているのです。
  155. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 先ほど申し上げましたごとく、理想といたしましては、これがなくなることを理想としてやっておるのでございます。しかしそのときそのときの情勢によりまして、本年のような場合もありましょうし、あるいは二十九年度、三十年度のような場合もあるのであります。
  156. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 これは長期計画をあまり顧慮しておられないようですから、むしろ長期計画考えておられる企画庁長官に、さらにこの時期的な問題を明瞭に一つお伺いいたしたい。
  157. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) ただいまの六億ドルが、新しいこの五カ年計画を立てる場合に、どういうふうに入って行くかという作業につきましては、四月以後でこれを取りまとめたいと考えておりますが、ただいまのところ、昭和三十五年度におきましては、現在の特需は約半減し得るものと、こういう見通しを持っております。しかし正確な数字等につきましては、なおもう少し検討いたしたいと考えております。それで海外向けの買付等の数字もありますから、それを整理いたしまして、自分たちの見通しとしては、三十五年には現在の半減程度のところに持って行きたい、こういうふうに考えております。
  158. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 だから特需自体の金額を聞いておるのではなくて、特需はそういうアンノーン・ファクターだから、それなしに貿易だけで収支バランスするということをちゃんと政策目標に立て、しかも最終年度にはそうなるというふうにお考えになるのかどうか、その点を明瞭に指摘していただきたい。
  159. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) そのつもりでおります。それで三十五年度におきまして、六億ドルの半分の数字のところまで持って行くように努力をいたしております。そういう計画を立て得ると、こういうふうに考えておりますけれども、数字はなお整理して申し上げることにいたしたいと思います。
  160. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうもよくはっきりわからないのですが、それは半分になろうと、あるいは二割減になろうと、あるいは七割減になろうと、それはそれとしてプラス要因になって、貿易だけで収支はちゃんとバランスするのだ、しかもそれにアンノーン・ファクターとしての特需がまだあって、従ってこれは外貨として最も有利に使えるのだというふうなことで、従ってそういう形における経済自立を考えておられるのか、いやどうもこれは三億くらいはまだ五年の後にも残る、それを入れてようやくバランスするのだ、従って貿易だけのバランスはあり得ないし、そういう意味での経済自立はないのだ、あり得ない、むずかしいというふうにお考えになっておるか、そのどっちかという、そこが政策の大きな分れ目になると思うわけですから、しつこいくらいにお尋ねしておるのです。
  161. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 三十五年までの計画で参りますると、ただいまの特需を全然はずしてバランスを考えるというふうには考えておりません。現在の特需の半分くらいは、やはりわれわれはバランスの相手方勘定として見なければならぬ、こう考えております。
  162. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そこで明瞭になりましたが、それならば、自立経済というものが、特需なしに貿易収支だけでバランスすることを目標とするものであるならば、そういう意味での経済自立は不可能だ、近い将来においても、長期計画においても不可能だ、われわれはこの旗をおろさなければならないのだと自民党ははっきりお考えになっているわけですね。そういうふうにここで明瞭に一つ宣言をしておいていただきたい。
  163. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) ただいま申し上げましたような数字の範囲内では、私は特需というものはバランスの中に入って行かざるを得ないと考えております。
  164. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうもそこのところをあいまいに言われるのですが、入って行かなければいけないから、特需なしにはバランスできないのだ、貿易だけではバランスはできないのだ、従って第一次か何か知らぬけれども、今後の五カ年計画としては、貿易収支だけでバランスを合わすという意味の経済自立は、自民党はもはや不可能であるとして、この旗はおろすのだ、前はちゃんとその旗を掲げておられたけれども、それから二十九年度、三十年度ではその実績が上ってきておったけれども、しかし三十一年度になって、そうでない、三十二年度もそうでないということになり、長期計画でもそうだというならば、その旗はおろさざるを得ない。そこをはっきりして下さい。
  165. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 特需を国際収支の仲に繰り上げていくことを、これをはずすということは、ただいまの計画では考えておりません。実際問題としては、これを繰り入れてバランスを考えている輸入計画を立てるということにすべきであると考えております。しかしその新しい計画を立てる場合に、これをどういうふうに漸減して行って、そしてバランスをとる計画を立てるかということは、三十三年度以後における新しい五カ年計画の作業の中には当然繰り入れて行って、当然特需に依存する必要をなくするような計画に入る、こういう計画であります、
  166. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 非常にあいまいなんですが、とにかく言おうとしておられることは、少くとも五カ年後までにはそれは不可能だ、従ってその旗はおろさなければならないということになってしまいますから、もはや経済企画庁を中心としてあなた方が、保守党内閣が呼号をしておられたところの計画的な運営、特に経済自立を目標にした運営なるものは完全に失敗をしたのだ、これは不可能なんだというふうに、あなた方はこの失敗を完全に認めざるを得ないというふうに私は解釈をせざるを得ないので、そういうふうに思っております。そこで、それとの関連ですが、それならば、三十二年度の見通しをどういうふうにお考えになっておるか。その点は先ほどちょっと出ましたから繰り返し御説明を求めませんが、しかしその場合に、われわれが考えるのは、輸出を二十八億、それから輸入を三十二億というふうに踏んでおられますが、この輸入の三十二億というものは、最近の貿易情勢その他を見れば、とても三十二億ではおさまらないだろうというのが、これが定説になっておると思うのです。従って、ここでも今計画をされておるというよりか、大きな赤が出て参るということになると思いますが、この見通しはどういうふうにお考えになりますか。
  167. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) それはこの三十一年度の下期の資材その他の輸入状況から見てみまして、在庫数量はかなりこの指数は上っておりますが、それは質的な内容を検討いたしますと、輸出の基本資材がかなり多いのでありますから、その意味で、私は三十一年度末の収支バランスの破れたことが、三十二年度全体を通して必ずしも悪材料にはならない。むしろ三十二年度全体は、われわれの当初計画通りのバランスはとり得るものと、こういう見通しであります。
  168. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それならば、そういう二とをしばらく続けて行けば、輸入がかりにしばらくはふえてもすぐそれは二、三年後には輸出にはね返ってくるのだし、特に経済規模の拡大を積極的にやられれば、それが可能になってくるはずだから、少くとも五カ年後ぐらいにはそれが戻ってこなければならない。従って経済自立が大胆に、積極的に掲げられ得ると思いますが、それをやらないし、やり得ないとおっしゃるのですから、そこらの見当は非常に狂っておるとしか思えませんが、しかしこの点は意見になりますから、別の機会に譲りますが、今在庫が多いから、それで三十二億で済むのだというお話ですが、一体在庫を幾らとあなたの方では見ておられるのですか。
  169. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 在庫の現状につきましては、通関ベースで入っているものが約五億ドル程度のように数字を見ております。その中で輸出に振り向けるものが二億ないし三億と、こういうふうに考えて差しつかえないのじゃないかと思います。
  170. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 二億ないし三億、二億五千万ドルというのがおそらく企画庁のお見通しだろうと思います。大蔵大臣はどうですか。
  171. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 輸入原材料の在庫の問題はいろいろ説がございます。私の見たところでは二億五、六千万、あるいは三億ドルだと言い得ると思います。私の調査では輸入原材料のおもなもの、たとえば原料炭、鉄鉱石、くず鉄、原綿、あるいは羊毛、こういうものは昨年の三月末と今年の三月末を比較いたしますると、在庫品が倍になっております。こういう点から申しますると、私は、三億ドル近いのではないか。昨年のそれもそう少ないわけじゃないのでありますが、とにかく在庫量は数量で倍に相なっておるのであります。ただ、数量が倍に相なっておりますが、今の現在高をどう見るか、こういうことが出てくる数字が二億五十万ドルあるいは三億ドルに相なるかと思うであります。
  172. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 通産大臣はどういうふうに見ておられますか。
  173. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私の方の見方は、今の二億何千万ドルというのは、大体昨年の輸入によって在庫の補充になった部分というふうに解釈しております。ですから、その前にあった在庫を加えて、大体五、六億ドルの在庫があるものだというふうに推定しております。で両大臣が今お答えになったのは、去年の輸入のうちで在庫補充になっておる分ということだろうと思います。
  174. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 在庫補充量と従来のものと合わせて五億から六億という数字ですが、大蔵大臣もその点はその通りですか。
  175. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 私はその数字の違いにつきましては、まだ十分検討しておりませんが、私の調査によりますと、ただいま答えた通りであります。現に自分が行って調べたわけではございませんので、事務当局のあれでは、大体輸入原材料が、昨年の三月に比べて今年の三月が数量的に倍程度に相なっておると思います。評価の問題でございますから少しは違うと思います。
  176. 佐多忠隆

  177. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 在庫の調査は、実は通産省で正確な調査をやっておりますから、その点では、われわれも数字は大体通産大臣の申されたことの基準であります。
  178. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その点は、どうも三大臣非常に自信がないような御答弁で、これはもっとこの点いろいろ論議をしたいと思います。と申しますのは、これをどう見積るかということは、私から申し上げるまでもなく、さっき問題にした輸入がどこでとまるかという問題に直接関連する問題だし、この問題については、どうも大蔵省あるいは通産省、特に大蔵省の方は過大評価をしておられるように思う。企画庁長官の方はむしろ過小評価の数字になっているかと思いますが、これらの点は正直におっしゃいませんから、私はこれ以上追及をしませんが、ただ、非常にあいまいであるのは遺憾だと思います。今言ったと思います。今言ったように非常に重要な問題でありますし、目前の今の金融政策をどうするかについても、あるいは三十二年度の上半期の外貨予算を編成する基礎にもなる問題でもございますから、この在庫の調査は、一つもっと徹底的に大がかりにきちっとしたものにして、各省の意見を統一して、政策の基礎にしていただきたい。これを要望しておきます。
  179. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 私の記憶が違っておりまして、今の二億五千万ドルないし三億ドルというのは増加と訂正いたします。従いまして、通産大臣の五、六億ドルということにお考えいただいた方がいいと思います。今の在庫の増は、申し上げた通りに、昨年のそれに比べまして数量は倍になっております。
  180. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうも在庫指数その他から見て、それが過大評価だという問題がありますけれども、この問題はこれ以上入りませんが、とにかくこれは一つ徹底的に調査して、もっと正確なものとして、そういうものとして数字その他もお出し願いたいと思います。  そこで、輸入の問題はそんなに楽観を許さない。従ってもっと赤字がふえるという問題に関連をすると、輸出をもっとふやさなければならぬ。二十八億輸出ということ自体が非常にむずかしいと思いますが、それにもまして、その計画数字以上に達成をすることを考えないと、なかなか問題はむずかしい問題になって参ると思いますが、そのときに中共貿易からのプラスを相当大きく見積ってしかるべきだと思いますが、この点を通産省としてはどのくらいに見積っておられるか、どういうふうに組み入れようとしておられるか。
  181. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 御承知のように、中共貿易は第四次協定を五月にやることになっておりますが、この協定において貿易方式あるいは決済方式、そういうものがこちらの望むように改善されるということであったら、現在よりは二割増ぐらいの拡大を期待されるのではないか。そうしますというと、八千万ドルに対して約一億ドル近いものとなりますが、そこらの大体規模を現在われわれは考えております。
  182. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その点二割程度増というお話ですが、もう少しこの点に力を入れて積極的におやりになる考えさえあれば、中共ではごく最近も発表されておりますように、物質不足に非常に悩んでいるという状態であります。さらに技術その他の協力なり援助をするという決意さえすれば、これを倍にすることはそんなにむずかしくないと思いますが、そういう意味において、これは非常な力を、むしろこの際貿易の危機が叫ばれているときに、特に力を入れるべき問題だと思います。これをどうするかという問題一つ一つについては、一般質問のときに質問をしたいと思いますが、ただ一点だけ。昨日、中共へ行方不明者調査のための人を、しかも役人を派遣をしてもいいというお話がありましたが、これに準じて、通商に携わる役人を何らか別な資格で向うに置いて、この貿易の実質上の効果を収めるという措置を、今はもはやとるべき段階だと思いますが、この点について通産大臣はどういうふうにお考えですか。
  183. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) ただいまのところでは、民間ベースによる貿易の交渉を期待しておりますので、こんどの第四次協定というようなときには、いわゆる三団体が主になって協定をやってもらうということで、まだ政府がそこに参加して行くというようなことは現在考えておりません。
  184. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 これは国交が回復してなくても、政府間交渉なるものはあり得ることだし、今までやった経験もたくさんあると思います。しかしそれが表面からむずかしいとすれば、何らかの措置をとって積極的に推進をするという方法があり得ると思いますが、そういうことを特別に御考慮にならないのかどうか、それはなってしかるべきだと思いますが、この点はきのうの御答弁と関連して総理に特に御答弁願います。
  185. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 昨日の御質問に、私はこれは純粋の人道上の見地から、たとえ国交を回復しようが、しまいが、ぜひそういうことはやりたいという意思を述べたのであります。中共との関係につきましては、社会党の多数の方と私どもは見解を異にしておりまして、今日の段階においては、貿易の拡大はぜひ考えて参りたいが、しかしそれは政府レベルではなくして民間レベルにおいてやりたい。そこで今、通産大臣お答えしたように、民間の間に、こちらの三団体と向う側の代表との間に話し合いの基礎の上に進められております。しかし、なるべくこの貿易を拡大するという意味から申しますというと、いろいろ貿易の拡大をはばんでおるような事態をなくして行くというように行くべきが当然であると思いますから、具体的のことはこの民間三団体とのもう少し、第四次会談と言いますか、交渉を待って、それと見合って考えて参りたいと、こう思っております。
  186. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 次に国庫収支の問題について、金融政策との関連を大蔵大臣に御質問したいと思いましたが、どうも時間を超過しておるようですから、これを省きまして、物価の趨勢について、経済企画庁長官は、三十二年度の物価をどういうふうに推移するとお考えになり、どういうことを目標に物価政策をおやりになって行こうとしておられますか。
  187. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 三十二年度の物価は、三十一年度末までに、年末以来の物価は大体上昇傾向をたどって参っておりますが、三十二年度に入りましては、そのままの水準で横ばいと、こういうふうに思っております。
  188. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 簡単に横ばいと言われますが、あなたのところの計画によると、卸売物価が二・六%上り、CPIは〇・四%しか上らないという計画になっている。ところがこれは、一昨年は物価を引き下げるという方向だった、昨年は大体ストップするという方向だった、ストップするという方向であるにかかわらず、昨年はあなたの計画に出ておるように、卸売物価は六%上り、CPIも一・二%上っている。ところがいろいろな要因から考えますと、ことしの物価の上昇の傾向は去年なんかと比較にならないぐらいに強含み、むしろ上げ要因をたくさん含んでいると思うのでありますが、それにもかかわらず、これでとめ得るということになれば、非常に強い規制をあらゆる方面にやらなければならないと思いますが、その覚悟と用意がおありになるのかどうか。
  189. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) この輸出ないし再生産に必要な方面の物価については、非常な変動はないと、こういうふうに見ております。またCPIを中心とする生活所要物資等の傾向を見ましても、この一月、二月には特別な商品、あるいは輸送との関係で一部分季節的な騰落はありましたけれども、三十二年度全部といたしましては、そんなに大きな規制を加えなければならないと思うような要因は、ただいまのところないと考えております。
  190. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そういうふうに簡単に考えておられれば非常な間違いであって、しかしこれは一年の後に、来年もう一ぺん数字を見ながら論議をいたしたいと思いますが、そういうお考えでは今後の物価騰貴の傾向をなかなか抑えて、今のこの目標通り達成をするということは不可能であり、そういう意味では、この計画が完全に失敗をするだろうということを私はここではっきり申し上げておきたいと思います。  最後にもう一点。今までいろいろお話を聞いておりますと、経済企画庁長期計画は、これまでいろいろな食い違い、その他を明瞭に出しております。これは過去三カ年間にどういうふうに計画実績が食い違って参ったかということを、一つ一つについて資料をお出しを願いたい。しかもどういう見込み違いで、そういうものが食い違ってきたのか、それらを詳細に説明をした資料を提示していただいて、それに基いて長官の御説明を願いたいと思っておりましたが、これも他の機会にさらに質問をし、討議をいたしたいと思いますが、一点だけ、この五カ年計画なるものは改訂をされようとしておるのか、改訂をする場合は、先ほどから問題にしておる目標、年度割の問題、その他作成の方法であるとか、方式であるか、そういうものを大まかに、どういうふうに今まで批判をされておるのか、私はじんぜんこういうふうに、次の計画があるのか、ないのか、あいまいなままに置いておかるべきものではなくて、あなた方がほんとうに計画的に経済運営しようとおっしゃるのならば、もっときちっとしたものが出されてしかるべきだと思うが、出ていない。これをどういうふうにお考えになるか。
  191. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 三十五年度を目標といたしましたただいまの計画の中で、どうしても改訂を必要とする、たとえばエネルギー対策等につきましては、昨年十二月に一部分の改訂をいたしております。その他の産業部門におきましても、どうしても目標を突破したものもありますから、当然改訂を必要といたします。その改訂をする場合の基本線は、国民分配所得伸びを七ないし八の線に持って、総生産に対する見通しも大体平均して七%前後のところで押えて行って、そうしてその拡大率を中心として、非常な国内にアンバランスの起らないような均衡のとれた経済拡大をはかりつつ、そうして雇用量増大を期待いたしたい、こういうのが基本線であります。で、ただいまの経済伸びは、当初考えておりました五%に対して非常に伸び率が高かったものですから、その伸び率の高いことによって起った輸送とか、鉄鋼とか電力とか、そういうふうな非常な隘路やアンバランスが出てきております。それを当面緊急調節をはかり、そういたしまして、今までの伸び率に合わないような計画を四月から作業に取りかかりまして、そうしてただいま申し上げましたような方向で作業に移りたいと考えております。そして作業の仕上げは大体九月までには仕上げたいと、こういうふうに思っております。そうして年度は三十三年から五年といたさなくてはならないと、こういうふうに思っております。
  192. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そういう構想を持っておられれば、長期経済に関して、計画的にこれを運営して行くということをさらにはっきり打ち出してこられなければならないし、今までの論議を通じて明瞭になっておりますように、いろいろな面におけるアンバランスができてきておる。そのアンバランスの調整の問題をやらなければならない。そうすると、たとえば化学工業振興法の問題であるとか、あるいは鉄鋼の安定法の問題であるとか、あるいは中小企業の組織法の問題であるとか、さらには、最もこれはすぐ問題になると思うが、資金の規制の問題等が出て参ると思うのであります。従ってそういう点においては計画的に、しかも総合的に問題を運営して行かなければならない。そうなれば、あなた方が呼号されておるところの自由経済では、もはややって行けないということが明瞭になって参っておると思うのです。今の計画にしても、計画の部門の、特に隘路産業等は、非常に計画的に、しかも非常な規制といいますか、積極的な伸ばし方をしなければならないし、そうだとすると、それ以外の部門には相当規制を加えなければならない。これは金融の面においても同じような問題が出て参る。これらの点を企画庁長官、あるいは通産大臣、さらには資金の規制の問題を大蔵大臣はどういうふうにお考えになっておるか。各大臣の御答弁を願います。
  193. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 新しい経済計画を立てて参ります場合に、この非常な経済に無理な統制をかけなければならないような経済成長率要求すべきではない。むしろ国民各位の企業心を、創意工夫を伸ばし得るような経済規模の拡大率を求めて、その中に成長と、そして雇用の吸収力の増加をはからなければならない。それが新しい計画基本線と見ておりますので、お説のように非常な規制を加えざるを得ないであろうというような、そういうふうな伸び要求する計画は立てない方がよろしい、こういうふうに考えております。
  194. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 経済計画に沿って、経済計画はいわば一つ目標でございますから、この目標到達のためのいろんな産業施策を私どもの方はする。で、そのやり方は、全く自由経済を抑えるというのじゃなくて、やはり公正な自由競争によって産業の拡大をはかるという基調ははっきり変えませんので、従って、過当競争によっていろんな故障が起るというふうなものは、これはさっきおっしゃられましたようないろんな立法によってこれを防いで、公正な競争力を中小企業につけたい。あるいは、これが二重投資、過剰投資になるというような部面は、許可制度そのほかで抑えるというようなことによって、国の立てた計画目標に到達するように産業行政の助長をやるということで、自由主義経済という基調を捨てた産業政策をやろうというふうには考えておりません。
  195. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そういうことでは、たとえば中小企業組織法が考えている設備制限の問題であるとか、価格統制の問題であるとか、あるいは団体交渉の問題であるとか等は、所期の目的を達せられないはずだ。鉄鋼の安定にしても同じようで、需給に対して、あるいは価格に対して適切な規制をするにあらずんば、この問題は解決をしない問題。同じような問題がすぐ電力についても参ると思うのです。さらには、さっき言ったような化学工業振興法というような問題にもその問題がある。それらははっきり、もはや自由経済運営の不可能を暴露して、やむなく何か彌縫的にそういう方向に進んで、従って、そういう計画なり、そういうものの運営が何ら実を示さないで、非常な矛盾と撞着と混乱を起しておるというのが、あなた方の政府の治下における経済政策だと思う。総理大臣はこの点を、こういう傾向、こういう方向から考え、今後の日本の経済運営をどういうふうにしようとしておられるか。特に私は総理にこれをお尋ねをしたいのは、世界のこういう総合的な計画的な経済運営、しかも先ほどから、午前中から問題になりました雇用を中心にした、失業という事後措置ではなくて、雇用という事前措置をどうやるか、しかも、雇用を中心にしたその問題をいかに計画的に、しかも総合的に運営をするかということが非常に必要な時期になってきておる、段階になってきておる。しかも、特にわが国においてはそのことが必要になってきている。それに対処するのが、先ほど言った諸統制法規であり、あるいは資金まで融資の規制をしなければならないし、市中銀行の諸君すら、シンジケート団を作ってどうどうというような問題を取り上げざる得なくなっておるという段階、こういう段階において、この問題を、この運営をどうしていこうとしておられるか。特に岸総理大臣は、戦前の最も評判の悪い官僚統制の経験を持っておる。あの官僚統制の弊害なしに、民主的な運営であって、しかもなおかつ、計画的に総合的に運営をする、しかも、その経済政策の結果が、資本家だけが利益して、さっき言ったような労働階級が、雇用の面においても実質賃金の点においても、むしろ低下の方向を示すようなこういう神武以来の好景気でなくて、ほんとうに国民の大衆の生活安定、社会福祉ということを基本にするならば、経済政策はおのずから違ってこなければならないと思う。もはや、あなたの言うような自由経済なり、資本主義方式では、これはやっていけない段階に到達をしておる、そういうふうに私たち考えるのでありますが、総理はいかがお考えでありますか。
  196. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 佐多委員の今の御質問は、いわゆる社会党の理念に立って経済をごらんになった経済政策の私は理論であると思います。私どもは自由経済主義を堅持しておるものでありまして、そこは根本的に意見を異にいたしております。私どもはやはり経済の発展、産業の繁栄というものは、国民の自由な創意と活動によることが最も有効適切であるという見地に立っております。しかし、その自由なる創意活動ということが、現在の社会産業経済の実情を見まするというと、いわゆる経済力の強いものが経済力の弱いものとの間におけるバランスの調整をどうとるかという問題ももちろんあります。また、各産業の種別におきまして、いろいろその国の産業を全体として発展せしめるために一つの指標を与える、目標を与えるという必要のあるものもあります。従って、私どもは一つ産業が発展し、経済が発展していき、また各国民の自由な創意と活動の方向とかいうものに対して目標を与え、また努力の方向を明かにするためには、やはり産業経済の全体について一つ計画を持ち、その計画国民に示して、この計画というものはあくまでも総合的に国民経済の全般を見回しまして、そこに均衡のとれた一つ目標計画というものを示して、その目標に向って国民各位が自由なる創意と活動によって経済を発展せしめていくというのが最も望ましい仕方である、かように考えておるわけであります。
  197. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それじゃこれでやめます。
  198. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 昨日の吉田委員質疑に関連いたしまして中村法務大臣大久保国務大臣及び神田厚生大臣出席されておりますから、この際関連質問を許可いたします。
  199. 湯山勇

    湯山勇君 資料を配っていただくようなお話があったのですが、まだできないのでしょうか。昨日吉田委員の御質問に対する大久保国務大臣並びに神田厚生大臣の御答弁に関して若干質問をいたしたいと思います。  ただいま配付になりました資料によりましても、吉田委員の「大体この業というものは数百年の歴史をもっておるものでありまするによって、一朝にしてこれをつぶすということは一つの革命的行為のように考えられるのであります。」そういう内容を含んだ御質問に対して大久保国務大臣は、法の示すところによってやって参りたいという意味の御答弁をなさったあと「しかし先に申しました通り歴史がありますから、歴史はある程度尊重いたしまして、無理なことはいたさないように」云々と答えられております。この歴史があるということは、これは吉田委員の御質問によって明瞭でございますし、大久保国務大臣もお認めになっておるのでございますが、一体、歴史があるということだけが尊重すべき条件になるかどうか。私どもはこの売春防止法案のできるに当りましては、なるほど長い歴史はあるけれども、その歴史は日本の国民にとっても、日本の民族にとっても、きわめて不名誉な歴史である、恥ずべき歴史である、こういうものをこの際なくしなければならない、こういう観点に立ってあの法律ができたのだと確認されております。このことは、おそらく大久保国務大臣も同様だろうと思うのでございますけれども、にもかかわらず、昨日の御答弁においては、大久保国務大臣は、歴史はある程度尊重しなければならない。この法律は俗にざる法案と呼ばれておりますが、そのざるの穴をもっと大きくするような担当大臣の御答弁であって、私どもはこの御答弁を聞きのがすわけには参らないのでございます。ことに、業者の方々の陳情等を聞きましても、決してこの歴史を尊重してくれ、そういう訴えはいたしておりません。長い間の歴史を何とが認めてもらいたい、何とか考慮してもらいたいという陳情はあるようでございます。けれども、それを通り越してともかくも、こういう歴史を尊重するという担当国務大臣の、しかも公式な場における御答弁というものは、全く納得がいかないのみならず、こういう歴史を認めてくれとか、認めなければならないとかいう人々の立場は、おおむねこの法律に反対の人の根底をなしておる思想でございます。そういうものをこの法律の直接担当する大久保国務大臣がおっしゃるということは、私ども、どうしてもこれは納得いかない点でございまして、この点について、大久保国務大臣の明確な一つ答弁をいただきたいと思います。  それから次に厚生大臣お尋ねいたしたいのは、厚生大臣の御答弁の中には「ただいまの大久保国務大臣からのお答えの大体通りでございます」という、大久保国務大臣の御答弁を全面的に肯定さた御答弁がございます。そこで、ただいま大久保国務大臣に対してお尋ねしたことは、そのまま一つ厚生大臣に対するお尋ねとおとりいただいて、厚生大臣のこの点に対する御答弁も伺いたいと思います。まず最初それだけです。
  200. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) 昨日、売春法案についてのお尋ねにつきまして御答弁申し上げましたことについて、ただいま御質問がありましたが、私はきのう申し上げました概要をさらに繰り返して申し上げてみたいと思います。第一点に申し上げたのは、売春法案がせっかくできたのでありますから、今年、すなわち三十二年度においては、その準備機関として婦女子の相談機関を設けたい。そうしてこれら関係業者の転業その他についての相談に応じて指導していきたい。三十三年度におきましては、新しい法の、売春法の罰則が適用になるのでありますから、新しい売春法によって取締りをやっていかなければならぬ、またやるつもりである、こういう大体の筋道をお話ししておきました。しかし、この法案について、ただいま湯山さんからのお話もありましたが、そこをよく一つ考えていただきたい。そういう意味で言ったのではない。歴史という—(「そういうことを言っておる」「速記があるよ」と呼ぶ者あり)歴史という言葉は、この法案は御承知の通り長い問かかってできた法案です。それは前にも習った通り、一朝一夕にできたものではない。従って委員会の経過その他の経過なり、長い経過を持っておるのだから、(「そんなことではない」と呼ぶ者あり)これらの法案ができました歴史といいますか、経過といいますか、(「違う違う」と呼ぶ者あり)そうしてそのことを頭の中によく入れて取締りを川迷いなくしたい、こういう意味で申し上げたのであります。(「それは違う」と呼ぶ者あり)歴史を尊重するということは、どこまでもよく了解して頭の中に入れて、経過の規定を知って、経過のあれを知って、そうしてやっていく、こういう考えで申し上げたのでございます。(「全然違う」と呼ぶ者あり)もし速記にそういう意味があれば、今私が申し上げましたのがほんとうの話であります。その通りに御了解を願いたいと思います。
  201. 神田博

    国務大臣(神田博君) 湯山委員の御質問に対してお答え申し上げます。私が、昨日大久保国務大臣お答えをされましたが、そういう意味で申し上げるつもりでありましたので、大体その通りでございますというような言葉を使ったように思います。速記にも残っておることはよく了承しております。私の真意は、昨日お答え申し上げたのは、言葉が少し足らなかったようでありますが、厚生省といたしましては、今年度は婦女子の保護、更生に一つ十分努力いたしたい。さらに来年度からの問題になるのでございますが、業者の転業等について指導したいという意味は、決して業者が擬装を転業をするというようなことに私ども耳を傾けというような意味で申し上げたのではないのでございまして、(「業者の要望に沿う……」と呼ぶ者あり)十分指導いたしましてそうしてまじめな転業をやるというような方については指導をしよう、こういう意味でお答え申し上げたのであります。それは、あとでまた御審議を多分委員会でお願いすることに相なると思いますが、旅館業法伝の一部改正も心がけておりまして、こういう面につきまして売春法案がせっかく努力によってできたのでございますから、十分一つすみやかな成果の上るように努力いたして参りたい、こういう意味でお答え申し上げたつもりでございまして、御了承を願いたいと思います。
  202. 湯山勇

    湯山勇君 ただいまのお二人の大臣の御答弁は、私は納得することができません。それは、大久保国務大臣は、法案の歴史というような意味でとおっしゃいましたけれども「法案は、成立までの経過はありましても、それは歴史というような言葉で表わすというのは非常識だと思います。大臣は当然これはお取り消しにならなければ、この記録を読んだ者は、大臣のおっしゃるような意味にはとりませんから、一つお取り消しの用意、御訂正の用意があるかどうか。それから厚生大臣に続いてお尋ねいたしたいのは、厚生大臣ははっきり、希望、要望に沿うような措置をしたい(「それぞれ」と呼ぶ者あり)ということを述べておられるのです。これはきわめて重大でございまして、(「売春業者の要望」と呼ぶ者あり)売春業を営んでおる人たちは、実際旅館に転業することを希望しております。現在の経営者が現在雇っておる婦女子をそのまま連れていって旅館を営む、飲食店を営むということになれば、一体どういうことになるか、これは大臣よく御存じのはずだと思います。現に鳩森小学校の例でも、大臣の耳に入っておるし、厚生省当局もいろいろ御指導しておるようでございますが、三十年度においては、わずかに八軒の旅館新設の申請しかなかったものが、三十一年度になってからはすでに二十三軒を数えております。飛躍的な増加でございます。そしてこの中には、明らかに公式の場で述べられたところによりましても、立川その他の赤線業者がこれらの旅館の経営に当っておる。そういう具体的な例もありますし、あるいは第三国人等がこれへ測り込んできておるというようなうわさもあります。そこで、あなたの厚生省としては、それらの業者に対しては、現在出している申請を取り下げるように現に指導しているではございませんか。そういうふうにあなたの省としては、申請したものを取り下げるような指導をしておりながら、大臣がここで、それでれの要望に沿うように努力するというようなことをおっしゃったのでは、せっかく環境浄化に努力しているあなたの省の役人の方々は、一体どういうことになりますか。(「これは在外資産のような補償も含めた要望に沿うという意味も含まれている」と呼ぶ者あり)そうして先般自民党の方々と業者との懇談会においても、業者の方々も赤線が青線化することが一番おそろしいと言っているのでございます。こういうことを考えあわせますと、大臣が今旅館法というようなことをおっしゃいましたけれども、一方においてはそういう指導、指示をしておりながら、一方においては、最も現在の業体に近い旅館とか飲食店にこれを転業さすようにしたいというようなことは、まことに私ども納得がいかない。不思議な気持がいたします。そこでこの点について、もう一ぺん一つ厚生大臣の明確な御答弁をいただきたい。それから要望に沿うような措置をとるということの中には、融資とか、あるいは補償とか、そういうことも含まれておるのかどうか、これについては厚生大臣並びに法務大臣の御見解が伺いたいと思います。  なお、この問題に伴って、文部省では先に池上小学校のときに環境浄化の通達を出し、今回ももちろん出しております。こういう厚生大臣のおっしゃったような事態がどんどんふえてくれば、これは教育に及ぼす影響もきわめて大きいので、この点については、文部大臣の御意見も承わりたいのでありますけれども、これはおいでにならないようでございますから、またの機会にいたしまして、結局、私はこの法律を実施するということは非常に困難な問題がたくさんあると思います。そこで政府としても、よほどこれについては慎重にして、しかも強力な体制をおとりいただかなければ、ざる法案のざるの目がますます大きくなるというようなことを懸念いたしますので、岸総理のこの点に対する御所見も、最後に伺いたいと思います。
  203. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) ただいま(「あっさり取り消せ」と呼ぶ者あり)歴史ということについて非常に詳しい御説明があった。私の歴史という意味は、経過という意味であります。もっとこまかくいえば、法案成立についての経過と、こういえばいいのであります。もう少し簡単に歴史と誓ったために誤解を招きましたが、もし御希望があれば、そういうふうに訂正して一向これは差しつかえありません。そういう意向であります。(「訂正するなら時間かからぬ」「吉原の歴史を尊重してどうなる」と呼ぶ者あり)
  204. 神田博

    国務大臣(神田博君) 昨日のお答えにつきまして、いろいろ誤解を招いた点もあるようであります。私の真意が通じない点がございますれば、これは用語の不備な点は取り消して私けっこうだと思いますが、ただ、私が申し上げました点は、ただいまもお答え申し上げましたように、擬装転業というようなことは、これはもう断固相手にしないことは当然なことでありまして、まじめな正当な、要望があれば、これは聞くにやぶさかでない、こういうことなんでございます。  それからもう一つ、この転廃業等について、融資であるとかあるいは補償ということを考えているかというお尋ねでございましたが、この点、厚生省といたしましては、一そこまでは考えておりません。はっきり申し上げておきます。
  205. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) お答えいたします。融資あるいは補償のようなことを考えているかという御質問に対しましては、これはどちらかといえば厚生大臣の所管に属することであると思いますが、私の方は起りました刑罰に対しての措置を、あるいは保安処分等について担当すべき立場にございますが、われわれといたしましては、売春行為というようなものは、過去の法令あるいは地方の府県条例等に照らし合せましても、これは全くの違法な行為でありますから、違法な行為のものが転廃業するのに対して補償するというようなことは毛頭考えておりません。(「それはいい」「そういうふうに答弁しなさい」「法務大臣だけだ」と呼ぶ者あり)
  206. 岸信介

    国務大臣岸信介君) この売春禁止の法律成立につきましては、いろいろの経過をとっておりますが、これが一たび法律として成立いたしました以上、政府においてこれが施行に万全を尽すことは、これは当然であると思います。ただ、御質問にもありましたように、私どもはあくまでもこういう事実は一つの社会悪としてこれを除くことに全力をあげなければなりませんが、いろいろ困難な問題が幾多実施上あると思います。従いまして、従来の例を見ましても、ややともすると形を変えて実質が残るというような弊害もずいぶんあります。従いまして政府としては、一面において違法なものを取り締らなければなりませんけれども、私はこういう問題に関しては、さらに社会の世論なり、あるいは教育なりあるいはさらに、政府機関その他によって補導なりあっせんなり、いろいろな方法をまぜてやらないというと、ただ法規に照らして罰するというだけでは、この法律というものは目的を達せぬと思います。いろいろ困難な事情もございますけれども、政府としては、法の趣旨を徹底するようにあらゆる面から万全を尽したいと思います。
  207. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) お諮りいたします。委員外議員赤松常子君から発言を求められましたが、これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  208. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 御異議ないと認めます。赤松常子君。
  209. 赤松常子

    委員外議員(赤松常子君) 私、貴重な時間を十分間ちょうだいいたしましたので、要領よく大久保大臣、それから厚生大臣、最後に岸総理にもちょっとお尋ね申し上げたいと思います。  先ほど湯山議員のお尋ねの中に、昨日大久保大臣お答えの言葉の中に歴史という言葉があって非常に紛糾いたしました。この速記録を見ますと、確かに大久保大臣がこうおっしゃっております。「大体この業というものは数百年の歴史をもっておるものでありまするによって、一朝にしてこれをつぶすということは一つの革命的行為のように考えられるのであります。」と、はっきり申しておられます。それをきょう今伺いますと、法案のできる経過というようにすりかえておいでになる。私、これは非常に不明朗だと思うのでございますが、もう一ぺんこの点についてはっきりお答えを願い、どういう風に訂正なさるのか、その案文をはっきり伺いたいと思います。
  210. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) ただいまのは私の話じゃないと思います。私の話は先に申しました通りが正しいので、歴史ということだけであります。言葉は、歴史というのはただいま説明なさいました通り歴史で、もし間違いがありますならば、歴史という言葉でなく、この言葉を成立の経過、経過ということにしても一向差しつかえないのです。
  211. 赤松常子

    委員外議員(赤松常子君) どうも失礼いたしました。それは質問におっしゃったのでございましたけれども、そのお答えに対し、今申しますように、「歴史はある程度尊重いたしまして、無理なことはいたさないように」と、非常にやさしくおっしゃっております。こういうことも今のお話によりますと、ただ法案のできたその経過とは私言えないと思うのであります。どういうふうに案文をこうこうお書きになるのでございましょうか。それともその歴史というものが、法案なのか、業者の数百年にわたる歴史をさしておられるのか、もう一度明確にどうぞおっしゃっていただきたいと思います。
  212. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) ただいまのお尋ねでありますが、歴史といいますのは、今述べました通り、法案成立についての、これは長くかかりました法案でありますから、いろいろな経過がありますから、その経過のことでありまして、この経過が長くかかりました関係上、取締りの警察官としてはその経過を知っていなくちゃならぬと思います。この経過を詳しく知って、そしてこれを尊重して、間違いのない取り締まりをしたい。こういう風に考えております。
  213. 赤松常子

    委員外議員(赤松常子君) どうも私、それはずらしておいでになるということを、もう一度私は申し上げたいと思います。これは良識ある者がこの答弁書を見、あるいは質問書を見て正しく判断するでございましょう。  なお続いて私大久保大臣お尋ねいたしたいと思います。それは、せんだって私ども一月下旬に国会からの視察をいたしまして、売春法ができまして以来、業者がどういうふうにこの法案に対し誠意を持って転廃業しているかいなかということの調査に参ったのであります。その席上、その指導に当られた、あるいは取締りに当られる警察当局の方も御同席を願いましたその席上で、なお業者の発言は、できればこの法案の延期をと言っておられる。あるいは転廃業に対する融資を要求しておられる。こういう警察の方のおられる前で業者がこういうことをぬけぬけとおっしゃっておられる、こういうことに対して私どもはがく然としたのでございますが、そういうことに対しまして、警察の人々に対しどういう指導をしておられるのか、また業者に対して警察を通じてどういうふうにこの法律の順法を指導していられるのか、具体的にお示し願いたいと思います。
  214. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) ただいま地方の警察に出張されました場合の地方民と警察官との談話のお話がございました。これはごく一小部分お話でございまして、私どもは直接そういう話を聞いておりませんばかりでなく、私自身としては、そういう考えは毛頭ございません。法ができた以上は法の精神を守って、これを徹底して取り締るというのが私どもの考えであります。さように一つお含みを願いたいと思います。
  215. 赤松常子

    委員外議員(赤松常子君) これは一地方と申しましたが、はっきり申し上げると大阪でございます。大阪は東京に次ぐ売春業者の多い所であります。この動向というのは、一地方の一些事として見過ごすことはできないと思うのでありますから、一応そういうことに対しまして、私どもが行なったその会合のてんまつを記録にとってあるはずでございますから、一応ごらんおき下さいまして、そうして一些事であるというふうな軽い見方をなされないで、これが業者の大体の動向であろうし、また警察当局の大体の立場であろうかと思うのでございますから、一応よくそれを御研究願って、対策をお願いしたいと思っておる次第でございます。
  216. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) ただいまのお話よく承知いたしました。調べまして、もしそういうことがありますれば、適当な指導をいたしたいと思っております。
  217. 赤松常子

    委員外議員(赤松常子君) いよいよ四月一日から保護、更生の期間に入るのでございます。もうあと残すところ半月でございます。それに対して、そういうことで具体的にどういうことをなされておるのか、もう少し明確にお聞かせ願いたい存じます。
  218. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) それは一番先に申し上げました通りに、準備時代が三十二年度である。つまり今年度、三十二年度、これは準備時代。法を施行するのは三十三年度からでございますから、まだ一年以上ございます。この間に十分御趣旨に沿うて、そういうことの起きませんように十分注意いたします。
  219. 赤松常子

    委員外議員(赤松常子君) 私は、大へん先ほどの言葉と矛盾しておると思うのであります。たとえあなたのお言葉を百歩下って信ずるといたしましても、この法案のできますのにはずいぶん長い時間がかかったのであります。これをいよいよ施行するのに一年間しかないのでございます。たったこの短かい一年間にそういう大事業が今からできるでございましょうか。今伺ったら、何も具体的にしておられない。それだのにこの一年間でこういう大きな仕事がおできになるのかどうか、私は非常に不安でございます。もう一度明確にお答え下さいませ。
  220. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) こまかく申し上げれば、今年においても多少その準備のために、警察費はほんとうのちょびっとばかりでございましたが、増加いたしております。しかし、それでもって十分とは言えませんが、来年度は相当の予算の計上をお願いしょうと思って、今準備いたしておりますが、この転業その他のあっせんについては、これは警察でなくして、厚生省の方の所管になりますから、厚生大臣から一つお答えを願いたいと思います。
  221. 赤松常子

    委員外議員(赤松常子君) そう、お逃げなさらないで下さいませ。いつも警察の人が申しまするには、手が足りないということをよく申されます。よくその事情はわかっておりますが、もっとそれに対して予算を増額してその人員をふやして、そうしてそういう指導に当る第一線の警官の訓練ということもぜひ望ましいことだと思うのでありまして、どうぞ来年度はそれに対する十分措置をお願いしたいと思います。  次に厚生大臣お尋ねいたします。いよいよ四月から更生婦人の保護をいたさなければなりませんが、今年の予算はたった千四百数十人しかその収容する施設ができないことになっております。これはやがてだんだん潮のように廃業してくる婦人が出ました場合には、どういうふうにしてこれを救い、収容するのでございましょうか。この予算で足りるのでございましょうか、いかがでございましょうか、お考えをどうぞ。
  222. 神田博

    国務大臣(神田博君) ただいま赤松議員のお尋ねでございますが、おっしゃられるように、この四月一日からもうほんとうに婦人の保護、更生ということにもうすぐかからなければならないわけでございます。今日でもそういうことは指導して参ってきておるわけでございますが、いよいよ本格的に四月一日からこれをやるという法律の建前でございますので、厚生省といたしましては、一つ予算の通過を目標にしまして今準備を進めております。ただいま御心配のありました計上予算が非常に少いようではないか、こういうような予算の程度で十分の効果を上げるかというお尋ねでございまして、これはもう全く今私どもも心配の種でございますが、しかし何しろ、何といいますか、二十万からと言われておるこうした非常な困難に当面しておる女子の要保護でございますので、できるだけ一つ予算の効率を高めて、十分目的を達成していきたいと、実は心を痛めておる次第でございます。限られた予算ではございますが、できるだけ一つ成果を上げたい、こういう決心でおります。
  223. 赤松常子

    委員外議員(赤松常子君) 厚生大臣の御決意よく承わりましたけれども、しかし、過渡的に、どうして、できた女の人を収容能力がないのに収容しなくちゃいけないということに対しまして、いずれこれは委員会でもっと詳しくお尋ねいたしましょう。  もう一つ最後にお尋ねしたいことは、最近鳩森小学校の周囲も、実に教育上忌まわしい状況になりつつございます。これをどうしても旅館業法の一部改正で防止しなくちゃいけないという御意思が厚生省にあると伺っております。大へん私はけっこうでございますが、その旅館業法の一部改正の提出すら、何かもたもたと不明朗なうわさも聞いておりますが、今国会にその旅館業法の一部改正をお出しになって、そうしてその通過を見るように御努力されましょうか、いかがでございましょうか、その点一点伺っておきたいと思います。
  224. 神田博

    国務大臣(神田博君) お答えいたします。いろいろ不健全といいましょうか、いかがわしい旅館等の増加が顕著に見えて参っているわけでございまして、先般も次官通牒をもって、各都道府県知事に、旅館の許可については十分一つ周囲の生活なり、あるいは業者の状態等を調べて、万全の策を立ててもらいたい、こういうことを出しております。そこで、今の、先ほど私がお答え申し上げたのでございますが、旅館業法の一部改正でございますが、これも今急いで、大体成案を得ておりまして、近目中には提案のできる考えでございます。ただ、今御心配になられました、何かその提案について他から圧力といいましょうか、何か申し出でもあるかというような御心配でございましたが、私そういうことは何も承わっておりません。私ども今度の旅館業法の一部一改正によりまして、そうして忌まわしいような旅館を一つ一掃したい、旅館がほんとうに国民生活の清潔な場所として、十分その目的を達せられるようにいたしたい、こういう考えをもちまして、成案を急いでおります。そう長くかからないつもりでございます。たしか法制局で今審議願っておると思います。
  225. 赤松常子

    委員外議員(赤松常子君) それでは最後に、岸総理にちょっとお伺いいたしたいと思います。  先ほど私大久保大臣にもお尋ねした中にございますように、業者の方の懇談会の席上で、警察当局の方もお招きして、ともども懇談いたしたのでございます。その席上で、なお業者の人が、今申しますように、この法案の実施の延期を正堂々と言っている。それからまた、融資もぜひしてもらいたい、堂々と言っておられる。こういう長い間、反社会的な業務についておられる人が、転廃業なさるときに、なぜそういう融資をしてくれということを、なおなお言っておられるのか、これは私は非常に不可解に思うのでございます。その席上に警察もいられるのです。事もなげにそういうことを当然のように言っておられる。こういうことに対して、非常に私どもは不可解に思うのでございまして、いつも、この法案の今までのずっと経過を見ますと、何かその裏にいろいろ忌まわしいことがあったということの裏づけを私どもはまざまざ見て参りました。これが私非常に今大久保大臣お尋ねしなくちゃならない悲しい点であったのでございますが、どうぞ今後そういうことのないようにということを、総理からも御決意をおっしゃっていただきたいことが一点。  それからもう一つは、何で業者がそういうふうに強い態度で臨んでいるのか。できればこの法案を空文化し、死文化しようとしているのか、これに対しまして私は非常に悲しい事実をここで報告しなければなりません。それは、この法案ができましたのは、昨年の五月の第二十四国会でございました。その後、業者の人々がしきりに会合を持っております。そうして今申しましたような、法案の死文化、法案の空文化、できれば骨抜きをしようということを中心に懇談しておられます。これをごらんになればよくわかると思います。その席上に与党の有志議員が名前をずらっと並べておいでになるのです。そのお名前を言えとおっしゃれば、今では新聞に公表されているのでありますから、名前はここに出ておりますが、そういう与党の衆参両院議員がこの業者の会合に出席して、そして激励をしておられる。(「名前を読んで下さい」と呼ぶ者あり)新聞に出ていることでございますから、私大へん失礼でございますけれども、申し上げまして、御注意を願いたいと思うわけでございます。当日の出席議員は、椎名隆、山本粂吉、大森玉木、上林山榮吉、小金義照、渡邊良夫、淵上房太郎、池田清志、田口長治郎、以上衆議院議員、参議院では本多市郎、谷口弥三郎、高野一夫、松岡平市、井上知治、安井謙、以上の方がこれに出ておられます。はっきり私は、こういう業者の骨抜きの懇談会に出ておられるということは……、それで一体どういう御決意でこの法案に満場一致賛成なすったのでありましょう。これが業者を非常に強気にさしている。これは一体総理はどうお考えでいらっしゃいましょうか、お伺いいたしたい。
  226. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほどもお答え申し上げましたように、この法案ができますに際して、相当長い国会における審議経過をとっていることは、御承知の通りであります。とにかく私は日本の社会におけるああいう制度というものは、一つの社会悪として、これこそさっきから問題になっているはなはだ忌まわしい歴史でありますから、歴史的にも相当長い歴史のあるものであります。従って、これを法律を制定するということにつきましても、当時こういうことに関係している業者等からは、相当な反対もありましたし、いろいろな陳情のあったことも、御承知の通りであります。しかし、国会としては十分御審議の上、日本からこういう社会的悪をなくしていこうという非常な決意のもとに、この法律ができたわけであります。ところが、これを施行するに当りまして、先ほど来申し上げているように、いろいろな私は困難があると思うのです。しかし、困難があるからそのまま仕方ないのだというべきものではないので、どんな困難があっても、ちょうどこの法律が制定せられるのに、ずいぶん制定そのものにも困難であったけれども、それを非常な決意を持ってこれを成立せしめた。同じように、われわれはいかなる困難があっても、この法の目的を到達することには、あらゆる面からいかなければならない、こう思っております。しかし、業者のうちには、あるいはこの法律の制定のときにも反対であり、今日もそういう従来からの因習とか、自分たちの、とにかく忌まわしいことではあっても、あるいは稼業というような考えから、これをやっていきたいというような希望も、私は、気持があるということも、これもいなめないと思います。そこで、そういう何に対して、一面においてこういうことに従事されている従業婦の方の更生の問題を十分に考えていかなくちゃならない問題と、それから、業者そのものをきれいな他の仕事に転廃業させなければいけないという二つの問題があって、まずそういうような業者の間に会合があるのだから、これに対しては十分に事情を調べ、また事情を、これをやらなければならないという国の、この法律の精神を説き聞かして実現をするということに努めていかなければならぬ、私はその会合のことも知りませんし、それに出席された方がどういう言辞をそこで言論されたかもそれは知りませんけれども、私はあらゆる機会にこれらの業者がそういうふうな気持を持っておるとすればそれが間違っており、またどうしても転業しなければいかぬ、転業するのにはきれいな仕事を何しなければならぬという法の精神を説き、社会をきれいにしていくということの理想を説いて、そうして苦しくともこの法の実現を期するということに協力させるようにあらゆる面から、またあらゆる人が、この問題に関心を持っている人に私は協力を願い、また努めていかなければならぬ、警察官等は何といっても第一線において一番指導、もしくは取締り等の任に当るものでありますから、十分に先ほどお話になりましたように担当の大久保大臣を通じて徹底するように、政府としては努力をいたしたいと思います。また将来ともこれが実施につきましてはわれわれは固い決意をもって、困難ではあるけれどもあらゆる方面と協力をしてこれを実現したい、こう思っております。
  227. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 赤松さんまだ……。
  228. 赤松常子

    委員外議員(赤松常子君) もうこれでおしまいにいたします。  ただいま総理の御決意のほど伺いまして非常に力強く存じました。どうぞ関係当局、関係大臣とよく御連絡下さいまして、まことにこの法律は自民党内閣のときできた法律でございますから、せっかくその有終の美を飾りますように、私どももまた御協力申し上げるつもりでございますから、私は今の大臣の御決意に御期待申し上げまして私の質問はこれで終了いたします。
  229. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) それでは総括質疑を続行いたします。    〔内村清次君「議事進行」と述ぶ〕
  230. 苫米地義三

  231. 内村清次

    内村清次君 ただいま委員長のお約束の通りに、昨日の吉田萬次委員発言からきまする所管大臣の問題で、一応この問題は済んだようでございますが、ただ私はここで委員長にお願いしたいことがある。それはきのうの吉田萬次君のこの発言をされました内容につきまして、もちろん私は当時この席におったものですからよくその発言内容は存じております。そこで私は吉田委員の主題に対してとやかく言おうとは存じません。同時にまたその言論につきましてはこれは言論の自由という点を認めまして、この言論に対しましての趣旨に対しましては、私どももまたこれをあまり強くとがめようとはいたしません。が、しかしただ言論は自由ではございまするけれども、やはり参議院の品位というのはこれはお互い議員同士で守り合っていかなくてはならない問題です。そこでその品位の点につきまして、あるいはこの羅列されました一つの表現というものがどうであろうかという点もあるでございましょう。しかしここにありまする問題は、私はこれはただ表現の自由だというような点とは少し離れた、また深刻な意味を含んだものであろうと思うのです。かねて私は吉田委員に対しましてはその人格の点におきまして、またその品位の点に対しましても、知性の点に対しましても敬意を表しておる一人でございますが、昨日の発言の表現の中には大体一軒の家には床の間もあれば云々というようなことを言っておられるのです。私も昨日帰って考えてみました。ところがこの中には私は非常に女性の人権をじゅうりんしたような、現在いわゆる法律が出ますまでの長い間に売春制度というものがあって、そこで婦女子の方々が非常に泣いておられる現実を見たんです。それをそういう表現でもってこれを言い現わされるのかどうか。これはいい半面におきましては、こういうふうなところであればこそ今回売春の禁止の法律が出たのだということに当てはめていきますと、私たちは納得いくのです。が、しかしこういうような表現をなされたその真意というものは、あの軍政時代、軍国主義時代、特にまた終戦後の婦女子の非常に人権をじゅうりんしたところの時代、ああいうような時代の市長さんとして、あるいは県会議長さんとしての考えが表現されておりますが、私はこの点だけは賢明な吉田委員速記録を取り消されるか、また委員長によってこういう不穏当な言辞は取り消されるか、こういう点だけは同僚議員として参議院の品位を高めていただきたい、こういうふうに思うわけでありますが、この点に対して委員長の御意見はいかがですか。
  232. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) けさほど小林君からそのお話がありまして、その点に対しましては吉田君の発言中に不穏当な個所がありましたならば速記録をよく検討いたしまして、委員長において適当に処置をいたしますと、こうお答えをしておりますから、よく一つお話の点も含んで検討いたします。  それでは高橋君。
  233. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 総理大臣お尋ねを申し上げたいと思いますが、第一点は東南アジアとの経済提携について、総理並びに外相としての御所見を承わりたいと存ずるのであります。国連加盟によりまして、終戦後初めてわが国の国際社会への完全復帰が達成されたものと存ずるのでございまするが、従ってわが国外交も初めて世界的な視野にあってその施策を伸ばすことができると思うのであります。私はこの視野にあって、わが国の外交施策全般についてあらためてお伺いしようとはいたしませんけれども、ただこの立場におきまして、東南アジアの経済提携という点について御所見を伺ってみたいと思うのであります。一口に東南アジアと申しましても、具体的にはフィリピンはフィリピンなりに、インドネシアはインドネシア、あるいはビルマはビルマと、それぞれ個々的にはすべてその国の政治的あるいは経済的、かつ社会的な事情が異なっておりまして、従ってわが国との関係もすべて一様ではないと思うのであります。特にこれらの国々はわが国とはかっては経済圏を構成し、また戦前にありましてはわが国の拓殖企業として、相当わが国の企業進出の地域でございました。    〔委員長退席、理事堀木鎌三君着席〕 しかし戦後はいずれも申し上げるまでもなく政治的に独立を獲得し、経済的にも強く自立しようとして、その開発意欲に燃えておるところの地域でございまして、これが開発にはわが国との関係におきまして、地理的にも経済的にもきわめて緊密なるところの経済的提携が望まれておる地域と言わなければならぬと思うのであります。このような情勢下においてこれら東南アジア諸国との経済提携につきまして、まず第一点お伺いいたしたいことは、他の欧米諸国に対する関係のように大体貿易の相手方としてではなく、両国の恒久にわたる経済提携の基礎となるべき経済協力というものが相当両国間においてそれぞれ話し合ってそうして計画的にかつまたその施策というものを長期にわたって進める必要があろうと存ずるのであります。かつその進め方は従来の戦時におけるがごとく、ともすればわが国の利潤を主にいたしましたいわゆる拓殖企業的な立場ではなく、むしろこれらの国々が政治的に独立し、これらの国の経済開発というものをその相手方の立場に立って、わが国が経済協力するところに主点があり、そのためにあるいは技術的に、あるいは資材の面において、あるいは資金の面において、そうしたところの観点から、わが国としてはこれらの地域に対して協力すべきであると考えるのでございまするが、総理のこの点に対する構想なり御所見を承わりたいと存じます。
  234. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お答えをいたします。東南アジアに対する経済外交の推進は、私は日本の外交方針の非常に大きな課題の一つであると思っております。ただこれを進めて参りますには、今お説のごとく東南アジアと一口に申しますけれども、国々によって事情がいろいろ違っております。従って日本の経済外交を推進すること、すなわちその国々において経済協力をわれわれがどういう形において、どういうような方法で進めていくかということは、国々の事情を十分考えなければならない問題でありますが、その場合におい今御質問にもありました、御意見として拝聴したのでありますが、いずれの場合におきましても大事なことはこれらの国々の多くは最近政治的独立を獲得したのでありまして、長い間の西欧の植民地から独立をしましたそういう国でありますから、自然民族的な意慾が非常に盛り上っておりまして、また政治の独立は得ましたけれども、その政治の独立を裏づけるような経済状態がまだできておらないという事情にあることはほとんど共通でございます。私どもはこの東南アジア諸国に対する経済協力を進めていく場合において、その国々における民族独立のこの民族的な気持をよく体して、そうしてあくまでもその国の経済の基盤を作り上げることに対するそれらの国々の人々の考えに日本が協力して、そうして経済の発展を考えていこうという心持を持つことが最も必要である。過般外務省におきましてアジア太平洋公館長の会議をいたしまして、東南アジア諸国から大公使諸君が帰ってきたのでありますが、これに対し私は特にその点を強調しまして、今後の日本の経済外交を進めるように申し述べたのもその意味でございます。
  235. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 総理の東南アジアに対する御見解を承わりましたので、非常にわれわれとしても意を強うするものでございますが、ただいま総理お話にもありました通り、一口に東南アジアと、こう言いましても、その国々の個々的な事情が全く、特にわが国との関係において異なるので、従ってそういう意味で非常に具体的な事情を鮮明してこれに当るというお話を伺って、非常に意を強うするのでありますが、私は今から十数年前に、戦前におきましてジャワに参りました際にも、ジャワの日本の商品が、どうも日本の貿易なり、あるいはいろいろなやり方、品物についても、たとえばと言って寝巻を見せてくれたのです。それはきれいな日本の友禅の寝巻ですけれども、友禅模様が日本では非常にきれいに見えるやつが、ジャワでは、ああいう暑いところでは、非常に暑苦しく感じる。ところが一方ドイツからきている品物は、淡紅色で、見るからにあっさりした、いかにも暑いところにふさわしいような模様であり、また柄なのであります。一例はそうでありますが、こういったようなやはりわれわれの内地で考えるような、言いかえれば日本色というものを相手国に押しつけるということではなく、どこまでも相手国の立場になって、その個々的な事情に応じて、そうしてその実態に応じた相手国の立場になって、ほんとうに長期にわたって考えてやるということで、初めて私はこの東南アジアの個々の経済協力というものができると思うのであります。従ってそういうためには、まずこれらの国々に駐在する外交機関であります、これが他の欧米諸国のように、一年かあるいは二年程度で、諸国を単なる外交機関として回って歩くと、こういうことでは、私はこのただいま申し上げたような目的が達成されないのじゃないか、どうしてもこれは公使級の人なりなんなりが、場合によっては、フィリピンなり、あるいはインドネシアなり、ビルマなり、タイなりに、それらの国々にその生涯を捧げて、ほんとうにただいま総理お話のような、わが国の謙譲なるところの気持を持って、これらの開発あるいは経済提携に協力する一つのかぎになると、こういう心がまえと、そういう外交的な配置というものが必要であり、そういう意味で外交に、その国に駐在せられるところの人々も他の地域におけるがごとく、単なる外交機関としては十分でなかろうと思うのでございまするが、この点についての総理のお考えを承わりたいことが一つと、それから同時にこれらの地域がただいまお話のように、単なる貿易なりあるいはビジネスの相手ということではなく、むしろ国民国民とが永久にわたって結ばれると、こういうので初めて達成されるということでございまするから、初めてこれは国民が総力をあげる国民外交でなければならぬ。そのためには、わが国におけ機構等につきましても、十分民間機構というものを整備して、そうしてこの両国間に対するそういう恒久的な構想あるいは施策が樹立する基礎といたしまして、こういう民間的な外交の機構というものも整備する必要があると思うのでございますが、これらの点についての総理の御見解を承わりたいと存じます。
  236. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 在外公館の人の配置ということにつきましては、言うまでもなくその国に駐在して日本を代表して参っておる以上は、十分日本の内地との関係も密接にいかなければなりませぬが、何といってもその駐在しておる国の国情にぴったりとして、そうしてその国の要求なり、国民の気持があるところを十分につかんで、そうしてこれに対して適切な日本としてやるべき協力等を考えて進めていかなければならぬと存じます。そういうことから申しますというと、どうしても相当同じところに長く駐在するということが自然必要になってくる。ところが御承知のように、東南アジア諸国は気候その他生活環境が相当に、日本人には適しておるというわけにいかない事情がいろいろあります。それにまだこれらの地域における公館の設備や、あるいは住宅の設備、あるいは医療の関係というような点において非常に恵まれておらない点があります。従来のこれらの地域に駐在した外交官の健康状態等を見まするというと、本人または家族等になかなか健康を害する者が多いのでございます。私はこの点を非常に心痛いたしておるのでありますが、今度の予算にもごくわずかでありますがこれらの公館に属する館員の住宅問題の一部を解決するような予算を計上いたしておりますが、いろんな点において私どもは考えて、ほんとうに落ちついてその土地に、先ほどからお話があるように十分に解け合って、その使命が達成されるように生活環境の改善等も考えまして、十分に、なるべく長く同じところにおってその目的が達成されるように人的な配置を考えて参りたい、かように考えております。さらに進んでお話のごとく、ただ在外公館の動きとかそういうものだけでなしに、国民国民とが互いに理解し合い、互いに手をつないでいくというような親善関係ができるということは非常に望ましいことでありまして、このためにはただ指導者が人的な交流をするだけではなくして、あるいは青年層においても、あるいはビジネス・マン、あるいは技術者におきましてもいろいろ交流を盛んにして、できれば日本が技術的に、産業的に進んでおりますから、こういう技術なりあるいは経営なりの面においてこれらの国々の将来ビジネス・マンとなろう、中堅となろうという人々が、日本内地においてそれらの技術なり必要なことを修得できるような施設も考えていって、国民国民とが理解し合って手をつなぎ合っていくというふうに進めていかなければならぬと、こう思っております。
  237. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 次に海外移住の問題について御所見を承わってみたいと思います。従来わが国の海外移住というのは、ともすれば人口問題の解決であるとかそういう点において考えたのでございますが、私は終戦後もっと別な度角からこの問題が取り上げられていくべきではなかろうかと思うのであります。よく言われる平和共存であるとか、あるいは国連機構による集団的な平和増進であるとかいうようないろいろな言葉を使われておりますけれども、終戦後における私は世界のこうした機構なり情勢というものは、おのおの各国がその分において各国の平和共存の実を生かして、同時にそれが世界全体の平和的な開発に貢献するというところに私は意味があると思うのであります。そういう観点から見ますると、相当世界各国においては未開発の部分がございます。で、私は約二年間にわたって今からやはり十数年前東南アジア各地をこの移住地の問題で歩いたのでございまするが、いろいろな政治的な問題があったり、あるいは地理的な問題があり、経済的な問題がございましたが、たとえば北ボルネオにたどり着いた際において、あそこは御承知の通り、ノース・ボルネオ・チャーター・カンパニーという土地会社が全部の登記をしておる。そしていろいろ話し合ってみると土地をやることはできないけれども九百九十九年のコンセッションならやろう、そのかわり十年後においては適当な地代は納めてくれというので、約五百家族を平和裏のうちに移住させたことがございます。その他かりにミンダナオにしても、かつてはわが国人があそこの土地に二万数千もの人が働いたという事情もあり、またニューギニアにいたしましても、その他東南ア諸島におきましても相当、原始民、あるいは他の国人においては開発できないというような、しかもそれらの地域におきましては十分、かつての委任統治地域でありました南洋群島におきましても、その他のニューギニアにおきましても日本人が平和的な農業国民として、あるいは資源の開発国民としてその成果を上げておるのであります。あるいはまた南米におけるウルグァイ、パラグァイにおきましても、相当日本人というもののそうした開発能力と申しますか、そういう技術というものが相当そういう点において評価され、また高められておるのでございますから、従ってたとえば今の北ボルネオの問題にいたしましても、今日国連に加盟し、十分イギリス政府とそれらを話し合うとか、あるいはその他の地域におきましても個々的に話し合い、十分その了解がつくならば、日本人がただいま申し上げましたところの新しい世界の全体の平和共存あるいは開発という点においてりっぱに日本人は日本人としての世界的なそうした面においての私は貢献がやれると思いますし、同時にまたこれは強く、あるいは国連を通してなり、あるいは全世界に対してなり、そういうものは強く私は日本人のそうした能力なりあるいは素質なりというものを訴えて、そうしてこれらの移住問題というものを、そういう角度において世界的に活用させるということが私は適当であり、また必要であると考えられるのでございまするが、総理のこれらに対する点についての御所見を承わりたいと存じます。
  238. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 海外移住の問題はいろいろな点から私はこれを観察することができると思います。ただ、過去の実績から見ましても、これが非常な大きな人口問題の解決というふうにはなかなか数量的にいかないこともこれは御承知の通りであります。しかし、同時に民族の若い青年層に一つの自分たちの活動の場面が、この狭い内地だけではなくして、国際的な見地に立って、視野において、いろいろ活動ができる分野が開けておるということを持つことが一つ希望を持ち、将来に対する一つの夢を描き得る意味におきまして、民族的にも私は大いに海外に発展するということが望ましいと思います。また従来移民ということが単に農業移民だけ考えられておりましたけれども、さらに移民には日本の中小企業が一つの中小企業として移住するという形もありましょうし、あるいは企業と結んだ企業移民の形もありましょうし、いろいろなことがありますけれども、何といっても日本の農民が持っている優秀な勤勉な本質を農業移民として発揮するということが、従来世界の各国においても非常な優秀性を持っているということが認められておるのでありまして、南米等におきましては非常に日本のそういう移民を歓迎する機運すら上っております。そこでこれをどういうふうに進めて行くかという問題につきましては、なかなかいろいろな点にネックがあるのでありまして、今日御承知の海外移住振興会社を中心に進めておりますが、これに対しまして財政的な支援を非常に強化いたしまして、また、移民の輸送力の点の船等の移民船の建造等考えております。しかし、中南米だけではなくて、東南アジア諸国に対してもわれわれはもちろん考えていいことでありまして、ただ、その国々のこれも事情がありまして、直ちにわれわれが優秀であり、われわれがそういう理想を持っておるからといって、直ちにこれが実現するわけでもございませんけれども、そういうものについては、今お話がありましたように、国連に加盟いたしまして、国連を通していろいろ話し合うという機会もたくさんありましょうし、また、国々との通商航海条約等を結ぶに際して、いろいろ話し合う機会もございまして、できるだけ一つ移民は積極的に振興して参りたいと、こう思っております。
  239. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 ただいま総理兼外相の移住に対する構想を承わったのですが、ただいまの御構想を承わりますにつきましても、私はやはりこの移住というものが、相当わが国の国策に非常なウエートのある問題であり、同時にこれまた、先ほどの東南アジアに対すると同じように、単なる外交機関というような形では、なかなかこの問題は解決できないのでありまして、これまたやはり、じみな、同時に長期間にわたってこれらの移住者を世話し、また、相手との間に立って、それらを円滑にならしむるというような点が必要でありますので、その点について私は十分お考えを願いたいと同時に、こちらから行く移民につきましても、ともすれば従来のように、あるときには棄民とまで言われるほど、とにかく人口問題の解決、こういう形で取り上げられたのが、先ほど申し上げました通り、もっと新しい観点に立って、世界のそうした未開発地の開発、こういうものに対する、あるいはわが国もしくはわが国民のそういう分に応じた一つの貢献であると考えるならば、むしろ最もわが国民の優秀なるものを私は選定して送るべきでなかろうか。同時に、またその送られるべき移民に対しましては、移住者に対しましては十分なるこれは訓練と教養とを与えるというような点を考うべきであり、これに伴うところのそれら移住者の送出機構というものも、そういう観点においてこれは考えられなければならぬと思い、また、これに対する相当の財政的な裏づけも必要であると考えるのでございますが、総理のこれらに対する見解をお伺いしたいと思います。
  240. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 全くお説の通りでありまして、今度の予算にもその意味で、これをもって十分だとは申し上げかねますけれども、相当の予算を計上しておる次第であります。
  241. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 次に、総理並びに大蔵大臣農林大臣に米の統制問題についてお伺いをいたしてみたいと思うのであります。昨日、八木委員質問に対して総理から、米の統制については慎重にこれは処さなければならぬ。その言葉の中に、あるいは米価の維持なり、あるいは日本米という特殊な事情の点のお話がございましたが、わが国のこの米に対する統制の歴史を振り返ってみますると、当初はむしろ朝鮮米なり、台湾米なりを含めた過剰米の処理ということで統制が始まったと記憶しておるのであります。従って、四月号の中央公論を見ましても、ある経済学者が、今年あたり、あるいは昨年あたり非常に大豊作であるから、本来なら米価が非常に下るだろうというようなことを言っておりますけれども、私はこういったような見解は、昔の過剰米時代における残滓が今なお観念的に残っておる一つの言葉ではないかとさえ思うのであります。さらに、戦時中もしくは戦後になりますると、今度は米の絶対量がどうしても足りない。言いかえるならば、国民の飢餓を救うという意味での数量確保的な供米制度というものが、新しい形でこれが供米制度という形で米の統制に入ったと思うのであります。これはむしろちょうどソビエトが一九一八年に革命に入って、その数年間というものが、ちょうど戦時経済を行なったと同じような、ある意味においては強制的な供米制度でございまして、相当の無理があり、ソビエト自身すらも、わずか三年有余にいたしまして、もうこの制度を放棄して、新しい経済政策によってそれを置きかえた、こういう歴史さえあるのであります。従って今、日本のこの米の統制というものが、戦時及び終戦後に引き続いての供米制度のなごりが、相当の形において、特にいろいろ機構なり、あるいは人なりの関係において、そのまま温存されて、今日こうした形を持っておるのでなかろうかとさえ思うのであります。それでありまするから、現在のわが国の米の統制に対する間接費が、われわれが考えましても莫大なものが非常な負担となって負担されておりまするから、先般もあるいは消費者米価の引き上げであるとか、あるいは米価の問題であるとか、しょっちゅういろいろな実際上の問題と、これが統制の運営とにおいてそごいたしておるところが、私は今日において露呈して参ったものと思うのであります。従って、こうしたわが国における過剰米処理あるいは供米制度、こういうような統制の形をそのまま現在受け継いでおるのでございまするが、わが国の米穀は御承知の通り、現在におきましては、すでに朝鮮、台湾米がなく、絶対量においてもう絶対これは不足しておるのであり、同時にまた、世界経済の立ち直りで、直ちに戦時中のようなああした変調的な経済に、世界経済あるいはそれに伴うわが国も入るとは考えられないのであります。そういうような観点から見ますれば、この辺でもう一度、日本の米の統制と申しますか、米穀あるいは食管制度というものは、新しい観点において私は考え直さるべき時期でなかろうかと思うのであります。今この古いいろいろな段滓と、しかも莫大な間接費を負うておるところのこの食管制度というものが、単に米価の維持というような形、あるいはまた、日本米であるという特種な事情というだけで、これを維持するに、果してそれだけの値打があるかどうか、同時にまた、現在のような制度そのもので、この間接費のたくさんかかるような形において、果してこれを保持すべきものかどうか、もっと絶対量の足りない日本の米穀については、間接統制か、もっと手ぎわのよい、もう少し、これらの食管制度というものを考えるべきではなかろうかと思うのでございまするが、これらに対する総理の御見解を承わりたいと思うのであります。
  242. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先日もお答え申し上げましたように、私は米の食管制度の問題につきましては、いろいろ検討すべきものはあります。しかし、日本の主要食糧であり、農民の主産物であり、農業経営の基礎をなしておる米という問題についての取扱い方というものは非常に慎重にしなければならぬ。かつて統制撤廃を叫ばれた時代とはよほど事情がまた変っておるので、十分慎重に考えなければならぬが、私自身は、今直ちにこれを廃止する意思はないということを申し上げたのであります。  なお、この食管制度に伴うあらゆる問題を検討して、これの合理的な姿を検討するために特別の調査会を作りまして、十分検討したいということを申し上げましたが、そういう考えであります。
  243. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 ただいま総理の統制についてのお話を承わったのでありますが、これについては、いろいろ議論をいたしますれば意見になりますので差し控えますが、農林大臣に、私は一点お伺いしたいと思うのです。ただいま申し上げた通り、今の食管制度というものがある意味からいえば、米価の維持という問題と非常にひっからんでおりますけれども、私は宮城県でありますが、宮城県の農家の一例を申し上げますると、大体平均が八反歩でございますが、六割以上は六反歩——六反歩というと、二石二升平均にいたしますると、十三石やそこいらであります。そうしますと、大部分のものは売る飯米というものはわずか六石かせいぜい七石という……。で、われわれは今の農村なり農家の事情から見るならば、むしろこうした売る飯米のほとんどない、あるいはきわめて少いこうした農家経済なり、農村経済というものの向上に農林行政の主点を置き、場合によっては、食管制度というものをもう一度考え直して私は間接費の大部分というものを、こうしたむしろ零細農家というものの向上に主点を置くべきでは一なかろうか、と思うのが第一点と同時に、あまりにも日本人の食生活というものが米にだけ偏重するので、むしろわれわれ東北から言うならば、有畜農業その他によって相当の——畜産その布によって食生活というものもこれももう一度考え直して向上させるべきではないかと考えるのでありますが、この点に対する農林大臣の御所見を承わりたいことと、もう一点は、現在東北におきましても、全国におきましても、灌漑その他たくさんの食糧増産上のいろいろな事業が、長い間予算関係ではばまれておるのは御承知の通りであります。われわれはそういう意味から言えば、この絶対量の少い日本の食糧の増加のために、こうした干拓事業であるとか、灌漑排水であるとか、いわゆる農業生産に関するものは、場合によっては生産公債として公債を発行してまでやるべきじゃなかろうかと考えるのでありますが、この点に対する大臣の御所見を承わりたいと存じます。
  244. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) お答えをいたします、米の統制撤廃の問題につきましては、昨日も八木委員に対しま「して、また、ただいま高橋さんに対しましてお答えをいたしましたのと私も大体同感でございます。少しつけ加えさしていただきますならば、今米は、直接統制として残っておる唯一の物資でございます。これはたとえ配給の日数が少いという非難はありましても、消費者に一つの安心感を与えておることば事実でありまするし、また一方、生産農民に対しましても、一つの価格安定という作用をしておるということは間違いなかろうと思うのであります。まあ現在の食管制度に対するいろいろな御批判もございまするけれども、私はまだこれをはずして自由に持って参るということは何か危険があるのではないか、社会不安というふうなものになっては相ならぬ。ことに、米の絶対壁は足らぬのでございまして、日本人の食生活、この日本米に対する特殊の味覚と申しますか、こういうあたりから考えて、外米というものが必ずしも内地米の代替性をもっておらぬというようなあたりも検討しなければならないと考えるのであります。従いまして、一つは食生活改善の問題等ともにらみ合せまして、食管自体に、今御指摘のような欠陥のあることも十分承知をいたしておりますので、もう少しこれは慎重に検討をさせていただきたい、こう考える次第でございます。  さらにまた、東北の農業についての御見解を承わりましたが、これはやはり零細な農家に対しては、別個な農業施策をもって当らなければならぬと考えておるのでありまして、その意味で、東北のごときまだ一つの大きな可能性を持っておる地帯に対しましては、畜産等をも含めた総合的な施策というもが当然考えられなければならぬ、このように思う次第でございます。
  245. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 食糧増産につきましての予算上の問題についての御質問でございまするが、土地改良その他食糧増産についての予算はできるだけ盛っておるのであります。ことに今回は、多年県案でございました干拓等いわゆる村作りの方面に力を入れたいというので、新たに特定土地改良工事特別会計を設けまして、本格的に食糧増産に向ってスタートした次第でございます。
  246. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 総理にちょっとお伺いしたいのですが、最近いわゆる農地補償の問題について世論が相当やかましいのでございますが、この問題に対する総理の御見解を承わりたい。
  247. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、その問題に対する質問に対しましてお答えを申し上げましたように、補償ということを政府がやるとするならば、補償義務のはっきりしたものでなければ政府は補償すべきものでない。農地改革による地主の人々が言っておるような意味において補償をする意思は持たないということを明確に申し上げたのであります。ただ言うまでもなく、一つの農地改革というものが、農村社会における非常な革命的な事実でありましたために、社会的な急激なる変化からいろいろの問題が生じておりまして、旧地主等において生活にも困り、あるいはいろいろな生活環境上非常に困っておるものに対しては、いろいろな社会補償その他の面において考慮していくということを考えなければならぬけれども、いわゆる補償という考えは私は持っておらない、こういうことを申し上げたわけであります。
  248. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 次に、建設大臣にちょっとお伺いしたいのですが、国民生活は一口に衣食住と言われておりまして、大体衣と食につきましては、今ほとんどまあ満たされたと思うのであります。ところが、最も困難な住宅問題につきましては、非常な国民生活に不安を与えており、これがいろいろな社会的悪の助成になり、また、生活の不安定の根源をなしておると思うのでありますが、その中でも現在その基盤となるべき土地問題、これがどうも非常な隘路になって、そうして住宅問題が解決しない、こういうようなことに考えられるのでございますが、住宅の土地問題に対する建設大臣の構想を承わりたいと思います。
  249. 南條徳男

    国務大臣(南條徳男君) お答えいたしますが、御質問のように、三十二年度は特に政府におきましては住宅の画期的な増大をいたしましたのであります。それに伴いまして、この宅地造成の問題が最も隘路でありますことはお説の通りでありますので、この点については、建設省におきましてもその対策を十分練ったわけであります。従来ともその対策をいたしておるのでありますが、三つの今方法を考えております。  その一つは、日本住宅公団が三十年度以来三カ年にわたりまして、約三百万坪の宅地造成をいたしまして、これが三十二年度には完成することに相なっているのであります。従いまして、三十二年度の住宅公団の住宅計画につきましては、その宅地造成については何ら不安のないことに相なっております。さらに、三十二年度からは、百二十五万坪を三カ年間に拡大いたしまして、宅地を造成するという計画でやっております。さらに、この本年度の予算に計上いたしておりますように、海岸あるいは湖等の埋め立て造成によりまして、これを住宅公団に当らせまして、この宅地造成をいたすように予算措置をいたしておるようなわけでございます。  第二の方法といたしましては、未利用資源の利用と申しますか、特に国有地、公有地等の放置された面をこれを活用することによりまして、この宅地造成をいたしたいというのであります。特に大蔵省とも折衝いたしまして、大蔵省も管財局で国有財産の処理を今度考慮いたしてくれまして、この点について特別会計を作って、そして大幅に国有財産の整理をしていただいて、これによって今まで利用されなかった、まあ京神あるいは中京方面、北九州等に約六十万坪以上のものが利用されることに相なっておるのでありまして、これをこの方向に向けたいと思います。  また第三には、この土地の利用をはかりたいというので、このたび中層建築と申しますか、耐火高層建築にいたしまして、高度に土地を利用したいというので、このたびの予算にも、この住宅金融公庫の改正法案によりまして、この中層建築の構想も御審議を願っておるようなわけで、大体さような次第であります、
  250. 堀木鎌三

    理事(堀木鎌三君) 高橋君、時間が……。
  251. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 もう一点。最後に、厚生大臣にちょっとお伺いしたいのですが、先ほど来から売春問題その他でも問題になったのですが、結局私はこれらの問題の一番この実体的な根幹は、要するに、母子保護対策というものが十分でない言いかえれば、子供というものが将来社会国家において全部これをまあ活用するにかかわらず、ほとんど……特に夫を失い、父親のない子供というものが、母の手によってのみその生活を担当していくというところに私は非常に問題があると思うのです。従って、この母子保護対策に対する厚生大臣の御見解を承わりたいのが一点でございす。
  252. 神田博

    国務大臣(神田博君) ただいま高橋委員お尋ねでございますが、母子家庭に対するいわば特殊な事情でございます。何とか政府の手厚い保護をするということが、ひとり売春問題に限らず、社会すべての点に明るさを増すというか、社会の健全さを増すということにおいて、きわめて重要だということはお説の通りだと私は考えております。そこで、政府におきましては、三十二年度の予算措置といたしまして、今までの母子家庭に対する福祉資金をずっと続けて参ったのでございますが、なかなかこれは地方財政の関係もあって十分消化されないうらみがございます。今年度は政府一つ三分の二を持ちたい、今まで半額になっておったのでございますが、三分の二を持って、さらに資金を増額いたしまして、五億九千万円というような見当に引き上げて、それからさらに母子加算と申しまして、月に千円加算して参りたい。まあ今までに要保護者に五百円ついておりますから、これはまあ五百円と一緒になるわけでございますが、さような特殊な事情を一つ十分くみ取りまして、施策をまあ立てたわけでございます。さらに、これはひとり母子だけの問題ではございませんが、医療貸付制度等も本年から新しく設けまして、母子家庭については特に重点的な施策を打ち立てて参りたい。  それからこれは将来の問題でございまするが、母子並びにこれはまあ老齢者の問題もあわせてございますが、年金制度を打ち立てたい、こういう構想をもちまして、これに伴う調査一つ三十二年度において実施いたしたい。三十二年度だけでまとまるとは思っておりませんが、できるだけ早く達識者の委員を委嘱いたしまして、早くそういう制度を打ち立てまして、今お述べになりましたような生活上の不安を除去いたしまして、健全な家庭また子弟の育英その他に支障のないようにいたしたい、こういう構想で予算措置をいたしている次第であります。
  253. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 私は第一に、日ソ間の最大の懸案でありまする領土問題について非常に問題が重要であると思いますので、さらに確かめたい。それは昨日の曾祢議員の総理に対する質問に対して、総理よりお答えになった点であります。領土問題で国後、択捉については何ら疑念を残しておらない。問題は北千島、南樺太の問題であります。総理は、昨日の御答弁で、これらの領土はサンフランシスコ平和条約においてわが方がこれを放棄した、従って、この領土に関する将来の取りきめというものが、サンフランシスコ平和条約に参加している国の間における協議に待つべきものであるという趣旨のお答えがあったのであります。もちろん、国民感情に基く政治的の配慮、考慮、これは別であります。総理の言われた通りであります。私はこの前段のサンフランシスコ平和条約との関連における総理の御見解は、私自身は同感なんであります。    〔理事堀木鎌三君退席、委員長着席〕 ただ、昨年日ソ交渉に責任を持って当られました前重光外相のこの点に対する見解は多少違っているように記憶しているのであります。重光前外相は、ソ連はサンフランシスコ平和条約には参加しておらない、従って、わが方はこれらの領土はこの平和条約において放棄したのは締約国に対して放棄したのだ、だからこの領土の将来におけるソ連との取りきめは平和条約と関連なしに行い得るのである、それは条約法理上当然のことであるという趣旨の見解を述べられたと記憶いたしておるのであります。もちろん、重光前大臣も、政治的の意味合いでアメリカその他のサンフランシスコ平和条約に参加の国々に対して話し合いをするということは、これは当然のことであるということはつけ加えておられたのでありますけれども、法理上当然これは日ソ間において放棄をしょうが、あるいは返還を要求しようが、話し合いをきめ得る性格のものであるというお答えがあったと思います。おそらく岸総理は御承知であろうと思います。もし今申しました点に私の記憶の相違なり、あやまちがありましたら御指摘を願いたい。私がこれを申し上げますことは、御承知の日ソの根本的な平和条約の締結は将来の問題、領土の問題はすべて一括してその処理を今後の平和条約にかけておるわけであります。事は、わが国の今後の日ソ間の平和条約締結に関連して非常に重大な問題だと思うので、重ねて総理の御見解を伺うわけであります。
  254. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私の見解は、曾祢委員お答えをいたしましたように、南千島については、わが国の固有領土としてあくまでもわが国に返還さるべきことをわれわれは主張し、それを実現するように努めたい。北千島及び南樺太の問題は、これはサンフランシスコ条約でわが国が領土権を放棄したのですから、サンフランシスコ条約署名の国々において話し合いによってその帰属がきめらるべきものであるという見解を明らかにしたのであります。重光前外相がどういう意見を発表されましたか、正確には私存じませんけれども、大体今梶原君がお話になりましたような意味において意見を述べられておるように思います。ただその場合においても、なぜそれじゃそういうことができるかという何については、すでに日ソ交渉を始めるに際しては、サンフランシスコ条約署名の主要国であるアメリカに対しても、われわれは領土問題を含む何について、平和条約について話し合っておるということを通告してあるし、いろいろその間の連絡もしておるんだと、ところが、そに対しては何ら積植的に反対という意向が述べられておらない以上は一種の黙認されておると——われわれの方にそういう話し合いをし、われわれが処分、帰属をきめるということを黙認しておるというふうに考えて、国際法上それはやってもいいんだというふうな意見であったように私は記憶いたしております。しかし、私はやっぱり条約上の解釈としてははっきりして、そうしてそのはっきりしたところに基いて日ソ間の領土問題を含む平和条約を日ソ間において進めてゆくことが正しいやり方である、こういうふうに考えております。
  255. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 この問題は申すまでもなく、昨年夏から秋にかけての日ソ交渉において、自民党内部におきましても二つの考え方があったように承知をしておるのであります。結果におきまして、おそらく岸総理の御見解、それから以前の重光さんのお考えも、現実の政治上の処理としては、結果は私は同じことになるであろうと思います。しかしながら、同じく保守党であって、しかも日ソの話し合いがきまったのは、昨年押し詰まって、年が変って日もきわめて短かい。平和条約の締結がいつになるか、これはにわかに想定はできないでしょうけれども、この領土に関する基本的な考え方に、国の責任者の考え方が変るということは私は非常に遺憾なことであると、こう実は思うのであります。将来にわたりまする重要な問題でありますだけに、慎重な一つ御考慮を今後もお願いしたいと思うのであります。  次に私は、米の問題に関連して二、三お尋ねをしたい。若干昨日の八木委員及びただいまの高橋委員質疑応答に重複する点があるかもしれませんが、お許しを得たいと思います。三十二年度の予算の編成の過程において、また、でき上りました予算案に関連いたしまして私は非常な暗影があると思う。そのことは非常に遺憾に思うのであります。その暗影は何かといえば、消費者価格引き上げの問題であり、また、食管特別会計に生じておりまする赤字及び生ずるであろう赤字の措置に関して、この大きな一般予算に関連を持ちまする事項が未解決のままにあるということは、私はすみやかにこの暗影というものを払拭しなくてはなるまい、かように考えるものであります。まず、この食管特別会計に生じておりまする赤字、三十年度の分はすでに本年度の補正予算で処理をされることになっておるようでありますから、それはいいといたしまして、三十一年度及び三十二年度に想定されまする赤字について、これをいかに措置をするかについての大蔵大臣の御見解を承わりたいと思います。
  256. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 食管会計の赤字処理の問題につきましては、従来その年度の補正で埋める場合と、決算確定を持って一般会計から補てんする場合と二通りの方法がとられたのでございます。私は三十年度の赤字三十三億五千万円につきましては、三十一年度の補正予算で決算確定を見ましたので埋めるつもりでおります。三十一年度の百六十一億円と予定を一応いたしております分につきましては、私は食管法付則第二項の規定によりまして決算確定を待ってこれを一般会計から補てんすることが適当である。ことに今回は食管会計の合理化をはかるために特に学界、あるいは学識経験者の委員会を開きまして、今後このあり方について御検討を願うことに相なっておりますので、その結果を見て、決算確定を待ってやることが適当と考えましてそういたしたのであります。
  257. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 三十一年度の赤字については、これは決算確定を待って一般会計より繰り入れて、補正によって措置をする、その補正昭和三十二年度において行われることに相なるわけでありますか。
  258. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 三十二年度の補正予算につきましては、ただいま云々するわけには参りませんが、これはもし万一、三十二年度の補正予算を作る場合がございまして、そうしてそのときに適当な財源がございますれば、三十二年度の補正予算でやることもございます。また、三十三年度において繰り入れる場合もあるのであります。
  259. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 この赤字に対する措置につきましては、いろいろの問題があろうと思いますが、別の機会に譲ることにいたします。  企画庁長官にお伺いしたいのでありますが、消費者価格が三十二年度の中であるいは改訂してこれを引き上げるという結論になるかもわからないのであります。そういう可能性があり得るわけであります。ただいまできておりまする三十二年度の経済計画大綱において、おそらく諸般の計画を立てられる上において、この消費者の米価というものは、現在の消費者価格を据え置くという想定といいますか、前提で私できておるであろうと思うのであります。果してそうであるかどうかということと、もしそうであるといたしますれば、年度の途中、いつになるかわかりませんが、消費者価格が何がしか引き上げられたという際において、経済計画の中で若干の変化、影響がありはしないかと思うのであります。それはどういう変化と想定が予想されるであろうかということ、それから経済計画外におきましても、消費者価格引き上げがいろいろ経済計画を立てて行く上において、関連的に影響を生ずることが予想されるのでありますが、どういう影響があるか、これらについて一つ御見解を承わりたい。
  260. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 経済計画全般に対する改訂を加えなければならないような影響は起らないと、こう思っております。また、生計費あるいは消費者物価に対する影響は、非常な重大な影響を与えるというふうな数字にはならないとこう考えておるわけであります。
  261. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 もちろん、消費者価格の引き上げの程度にもよりましょうけれども、まずまず経済計画なり、その他の面において、さしたる影響を及ぼさないであろう、こう理解してよろしいわけですね。
  262. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 消費者米価を据え置くという建前でおりますから、計算は持っておりませんけれども、この年末以来唱えられておりましたような程度のものでありますならば、家計費ないし消費者物価に及ぼす影響は、非常に微弱であると思っております。
  263. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 次に、私は内閣に今度は特別調査会が設置される、食管特別会計に関連してのようでありますが、相当政府におきましてもこの特別調査会なるものに期待と申しますか、責任と申しますか、まあおんぶせしめておられるようであります。私、農林大臣に伺いたいのは、この内閣に設置されました特別調査会の調査の対象なり、範囲というものはどういうものですか、また、調査会の権能といいますか、機能といいますか、そういうものはどういう構想であるかということを、一つお教えを願いたい。
  264. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 今回発足をいたします臨時食糧管理調査会は、先般来問題になりました消費者価格の問題でありまするとか、あるいは米麦価の体系の問題、いわゆる中間経済費といわれるものの分析でございますとか、その他現在食管会計の中に農産物価格安定法によりまする食糧、あるいはテンサイ糖、えさ、こういうふうなもののあり方等にまでもわたりまして、検討がされるわけだと思っております。なおまた、この機関で十分に検討をいただきましたものは、政府としてこれを尊重をいたし、政府の腹がまえを、それによってきめたいと、このように考えております。
  265. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 大体が食管特別会計のまあ基本的な事項といいますか、今お示しの事柄であるわけでありますが、昨日の総理の八木委員に対する御答弁では、この特別調査会の調査の対象が、相当広範囲のように実は私この席で伺ったのであります。農林大臣の言われること、私それはそれでとやかく申し上げるつもりはないのであります。ただ、食管特別会計は申すまでもなく現在の食管法とこれはうらはらなんであります。食管法というものを一応そのままにしておいて、そしてその食管特別会計だけに直接関連する合理化ということになりますというと、私は実は大した期待が持てないのであります。言いかえれば現在の食管特別会計に生じておりまする赤字にいたしましても、その他の事柄にいたしましても、おおむねそれは食糧管理法及びその運用、言いかえれば食管制度自体から来ているものが多いのであります。従って問題の範囲をそういうふうに限定される、これは限定されることに一つの意味合いがあろうと思いまするけれども、当面しておりまする食糧管理全体の問題を考えますると、はなはだ私はその制限が、制限といいますか、制約が不適当のような感じがするのであります。もちろん、これは調査会の機能それ自体と関連があるでありましょう、総理の御答弁と食い違いがあるわけであります。まあ、それはそれでいいのであります。ただ、答申の結果を政府としては尊重していくというお話し、これは当然のことでありましょう。ただ、ここで私総理に、これは希望になるかもわかりませんけれども、申し上げたいことは、吉田内閣のときにやはり内閣に食糧審議会ですか、設けられた、緒方副総理が大体主宰されたのであります。当時もその調査会に対して、これは食管制度全体の再検討といいますか、改善の問題がかかってくる、当時も政府自体は何ら実は見解を出さずに、しかるにいわゆる答申は尊重いたしますというわけで、食管の持っておりまする、食管制度運用に関連する最大の責任者である政府というものは何らの、その何といいますか、責任を果さずに、全部それは調査会にまかしてしまった。私ははなはだ無責任であるという感じがしたのであります。今回におきまして消費者価格の引き上げにいたしましても、あるいは米麦価の問題にいたしましても、その他農林大臣の御指摘のような点についても、それぞれ政府自体としてかくあるべしという私は見解があってしかるべし、また、そういう方針があってしかるべし、そういうことを打ち出さずに調査会にしかるべしということで、表われた結果を尊重いたしますというようなことでは、私は今日の食管制度の改善ということは、とうていでき得ないということを遺憾に思うのであります。調査会を活用されることは、けっこうでありますけれども、少くとも政府自体はこの問題について責任というものを、はっきりと打ち出していただきたいということを期待するわけでありますが、岸総理一つ御見解を承わりたい。
  266. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろん、食管制度なり、あるいは食管特別会計におけるいろいろな問題を処理することは、政府全体の責任でございます。ただ、これにつきましては、あるいは消費者米価をめぐっていろいろな議論もございますし、また、合理化すべき点がいろいろあるということも、いろいろな機会に論ぜられております。ここで、われわれは相当の赤字が連年できておるというこの事実を、いつまでも放置しておくわけにはいかないことは、言うを待たないのでありまして、従ってこれを合理化し健全なものにするためには、どうするかという点につきまして、これはいろいろな議論があることを考えまして、十分有識者を網羅して、その審議によって、その結論を尊重していくというのが、私はこの際の政府態度としては正しいのであって、今梶原君の言われるように、何かそれに対して責任ある政府一つの方針であるいは考え方を述べて、それに対しての意見を聞くという形よりは、あくまでも自由な、また公正な立場でこの問題を根本的に検討して、その結論を得られて、それを政府は尊重して、政府の責任において内閣において決定し、これを実行するということが私はいい、こういう考えでございます。
  267. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 それも一つの方法でありましょうけれども、食管制度の改善というようなことになりますれば、今のお考えでは、私はほんとうの効果を期し得ないことを実は懸念して申し上げたわけであります。  次に、私はこの米価の問題について簡単に伺いたい。現在食管法においては、米価は形の上においては二本建であります、生産者価格、消費者価格と。元来米価というものは本質的に私は一本であるべきだ、もちろん生産者の立場、消費者の立場というものが一本の米価の中に織り込まれて、普通の商品とその面においては変りはない。米穀統制法なり米穀法のときにおきましても一本の米価、一元的な米価というものを統制の対象にしてきたのでありまして、食管法は形の上において両建でありますけれども、これまでの結果を見ますると、大体これは一本の価格のように、結果においてなって参っております。このことは決していわゆる二重米価というものを否定するものではなく、食管法において二重米価というものを私は否定するわけであります。しかし二重米価というもの、いわゆるコスト主義じゃなしに、二つの価格制度をとる場合に、そういう立て方をするだけの必要な前提条件が現実に私はなくっちゃいかぬと思う。そういう前提条件があって、初めてコスト主義を捨てて両建をとるということ、これは当然であろうと思う。ところが、食管特別会計の方は、おそらく米価一本主義といいますか、両建じゃない形になっておるように思うのでありまして、それらに関連して常に米価の問題に一つの混迷がある、はなはだ私は遺憾に思うのであります。このいわゆる二重米価、これについての一応総理の見解を承わりたい。
  268. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御質問にもありましたように、本来この価格というものは一本の価格で、要するに消費者の立場、生産者の立場というものを、両方を織り込んだ、自由経済においては一つの値段になることとは、これは普通の原則であると思います。ただ、米につきましては、今日国家において責任をもって配給するというふうな強力な統制が行われておる物資でありまして、国民生活の上から、あるいは農村経済の上から、きわめて重要な主食の問題でありまして、かつ戦時中もしくは終戦後におきまして、社会経済の上からいって、いわゆる二重米価でいく必要が、当時は非常に緊切にあったと私は思う。しかし、一たびそういう制度がある程度普及いたしますというと、理論は今言うように、本来価格は一本にあるべきものだという考えは、私も理論としては正しいと思いますけたども、そういう沿革を持ってきている米の値段、また、国において強力な統制をしておるこの米の値段というものについて、直ちに単純に、一本の価格が原則であるからといって、すべてをコスト主義で律するというわけにも、私はいきにくいと思うのです。しかし、このいわゆ二重価格というものが非常に幅を持ったものであることは、今の社会情勢からいっても、いろいろな経済事情からいっても適当でないでしょうから、ここに食管特別会計の検討をする際に合理化、その健全化ということになりますというと、自然生産者米価や消費者米価にも触れて研究をされなければならぬということになると思いますが、私は今日すぐ、直ちにこれを一本化すということについては、いろいろな点を考慮しなければならぬ事情がまだあると、こういうふうに思っております。
  269. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 実は一応理屈といいますか、建前は総理の言われた通りなんであります。ところで現実は、過去において一応二重価格の体制を食管法はとっておる格好をしておるのであります、形はですね。過去の米価をきめてきた経過を見ますると、形の上においては両方になっておるけれども、実質的には一本米価のような扱いといいますか、そういう結果になってきておると私は思うのであります。その結果どういうことかといえば、御承知のように終戦後間もなく、昭和二十三、四年からずっとどちらかといえば、生産者価格はそのためにひた押しに押えられてきたと私は思うのです。それはまあ、いろいろ見方はありましょうけれども、ほんとうの見方をすれば、むしろあのとき二つに分けていってよかった、ところがそうじゃなかった。ところが、大体経済が安定してきて、先ほど企画庁長官の言われたように相当ゆとりが出てきたときに、どちらかといえば二本建の論議がこう出てきている。これはやや私には理解でき得ないのです。果して現実の、現在の情勢において、冷静にこの問題は判断されることを私は必要とするのじゃないかと思うのであります。この点はこの程度にしたいと思います。  それから統制の基本の問題であります。この点については、八木委員に対してお答えになった点、私は趣旨において全然同感であります。ただ、これまでこの食管制度の統制のあり方の問題を論議されるときに、現在の全面的かつ直接統制、それに何か手を加えると、すぐに統制撤廃という論議に飛躍をするのであります。先ほど農林大臣もそういう趣旨のことを言われた。私はこの論議の飛躍というものが、現在の食管制度をして今日の窮境に持ってきた最大の原因だと思う。何か食管制度を改善し、よくしようといえば、すぐそれは統制撤廃という一つの論議の飛躍があって、手がつけられない。政府自体は非常に憶病であります。手がつけられない。政党方面でも、もやもやしてしまう。その結果が今日のみじみな食管制度の現状に私はなっておるのじゃないかと思うのです。米価の問題にしてもそうであります。前内閣は価格を上げないと言われた、消費者価格を。しかし、現実は希望配給の形において、三十年度においても、三十一年度においても、消費者価格は上っておるのであります。なるほど希望配給と政府米は違いますけれども、消費者の立場から言えば何も区別がない、同じ米なんです。現にそれは上ってきておるのです、そういう点が。現実と食管制、度とは非常に遊離してきつつある。これをどうしても直さなくちゃいけない。私はこの統制を撤廃しろとか、そういう飛躍的な考えは毛頭持たない。総理の見解と同じであります。基本的のこの制度はこのままでいいかとなれば、決してよくない、これは。相当改善する必要があるのです。そのことが農民のためにも、消費者のためにも、正しい農業政策のためにも、財政の政策のためにも必要だと思うのです。これをこのままにしておくということは、私は許されないと思う。少くとも政府はその食管制度を真剣に再検討して、何らか改善の施策をここで打ち出すという意図をもって、私は真剣に研究されることをお願いするのであります。これまではそういう研究すら行われておらないと思います。非常に残念ながら。最小限度、食管制度を根本的によせとかいうわけじゃございません。間接統制に持っていこうと……。そういうことじゃないのです。少くとも制度自体の改善すべき点は多々あると思う。総理に対して、私はこの基本的の考え方はけっこうでありますけれども、おそらく現炭このままでいいとは言われないと思う。ぜひ改善といいますか、改革について、少くともこれを改善し、改革するという意図をもって検討するということを、私御答弁に期待したいのであります。
  270. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お説の通り、私は数回にわたりまして、お米の管理制度について私の意見を申し上げましたが、それは現状をこのままいいんだといって肯定しているわけではありませんので、十分真剣に、適当でないこの制度を合理化し、健全化することにおいて、望ましくない事態は十分にこれを検討して、そうしてできるだけこれを健全化し、合理化することに努力したいと思います。
  271. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 梶原君、総理は御退席のようでございますから……。
  272. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 農林大臣、大蔵大臣にお伺いしたいのであります。先ほど申しましたように、食管法の建前と、その運用の現実との間には、相当の開きが出ております。食管制度自体は私は遊離をしてきたと思うのであります。たとえばそれらの事例を一々あげる必要はないと思いますが、出来秋から三月ごろにかけしまては、言えかえればほとんど出回り期を通じて、ある地方においては月のうち一日も政府米の配給のない地帯もあります。配給しても二日、三日の地常もあります。また、三十二年度の食管特別会計を見ますると、十一月からは十五日内地米が配給になっている。大体食糧の窮迫しました終戦後といえども、内地米の配給は二十日されたのであります、食管法において。食管法は最大を尽して、全部流通する米は、消費者に配給する責任を持っておった。ところが、それは今年の作況はわかりませんけれども、二年続きの豊作であるにもかかわらず、なぜ一体十五日に配給を減らすのだ。御承知のように現在の制度は消費規制なのであります。それ以上の米は、食わさぬというわけなのであります。目の前に米があっても、政府米でない限りは、これは食ってはいかぬ、食えばこれは取締りの対象になるのであります。なぜ米があるにかかわらず十五日の配給で、それ以上はいかぬというのであるか、農林大臣としては、いろいろその説明の理屈はあろうと思うけれども、私には納得ができない。一定の価格で十五日分、あるいは十日分、あるいは八日分、これを一つ配給するぞあとは君たちしかるべく、これはわかります。これは話がわかる。しかしそれ以上は食わさぬという制度、これが現在の食管制度なんです。こういう現実と建前とは非常に遊離してきている。従ってそこにいろいろ無理がきている。豊作であって三千万、四千万買う必要はない、価格は安定している。先ほど農林大臣の言われた通り現在の食管制度の持っている一つの役割、食生活の安定、生産者に対する一つの安定感、この作用があることは、私も十分評価するのであります。しかし、十五日の配給にして、もしやみがなければその日に食管制度は崩壊するのです。その面からいえばやみが食管制度を支持しているといいますか、サポートしているというふうに言っても、あるいはこれは言い過ぎでないかもしれない。こう  いう状況を続けていくことに対して、私は農政上非常にいびつな問題が起ってくる、米の生産もそうであります。米の品質もそうであります。農業政策としてこれは検討されなければならないということを痛感するのでありまして、単に食管制度のこの赤字の問題を、消費者価格引き上げの問題を、いろいろ検討されるのもけっこうでありますけれども、それだけでは再び必ず赤字を繰り返すこと疑いない。どうしても一つもう一歩踏み込んだ検討を、農林大臣のこれは私は責任だと思うのでありますがお願いしたい。昨日の文部大臣は、ともかく順法精神から言って国民がついていける制度にしてもらいたい、これは私ももっともだと思う。それから中村法務大臣はいろいろ言われましたが、半分農林大臣の役割を引き受けた発言がありましたけれども、やはり現行制度で、私中村法務大臣は有能な人ですけれども、責任を持てないだろう。法務大臣なり文部大臣なり政府自体が責任を持ち得る制度に、一つやはり私はこれを切りかえていくべきではないか、こう思うのであります。これは何も統制撤廃とか、そういうことではなくて、工夫と努力をすれば、少くとも百パーセントでなくても改善される面が必ず出てくると思うのであります。御所見一つ承わりたい。
  273. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 梶原さんが深い御経験に基いて、だんだんとお述べになられました点は、われわれも非常に参考に相なるわけでございます。まさしく現在の食管のあり方というものは、いろいろと苦悶に満たされておると思うのでございます。これをいかに解きほぐすかという観点に立ちまして、私微力ではございまするが、この問題とただいま取り組んでおる次第でございます。御専門の梶原さんにいろいろ申し上げても始まりますまいが、そういうつもりで処して参ることをこの際申し上げ、御了承を得たいと存じます。
  274. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 適当な時に適当な手術と申しますか、治療をしないと、本体を殺してしまうということを私心配するものであります。  次に、私水産のことを簡単に伺いたい。現在日ソの一漁業委員会において折衝が行われておる。それから日本、アメリカ、カナダ間の漁業条約の問題、それから近く締結されるのですか、北太平洋のオットセイの保護の条約、あるいは南氷洋の鯨の捕鯨の国際条約、こういう一連の国際的な漁業に関する条約というものは、いずれも何と申しますか、水産資源の保護ということを基調にしておると私は思うのであります。これまでの水産行政の面で、資源の保護涵養ということが魚をとるという施策に比べて、私どちらかと言えば、手薄であったんじゃないかと思うのであります。もちろんトロールの制限でありますとか、底びきの取締りでありますとか、いろいろ水産行政としては施策があったでありましょうけれども、これらは果して十分であったかどうか疑問であります。特に最近新しい化学工業のまあ発達といいますか、あるいは電源開発による工事とかいうふうなことで、水質の汚濁、これは私相当のことだろうと思うのであります。あるいは遡河魚族に対する措置等が果してうまくいっておるかどうか、最近の状況は詳しくは知りませんけれども、おそらく憂慮すべき状況ではないかと思うのです。この資源の保護ということは、もちろんその科学性がそれに伴わなければ意味をなさないのであります。国内のこの沿岸、近海の漁業はもちろんのこと、内水面もそうであります。ことにこの国際的な漁業の関連において資源の保護とそれに関連する科学的な施策というものの現状がどうなっておるか、それらについての一つ農林大臣のお考えを、御見解を承わりたいと思う。
  275. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 御指摘のように、国際的な諸条約も結ばれまして、資源の保護という観点が、戦後は非常に強くなって参っております。これはやはり従来の日本の漁業のあり方にも一つの反省を加えなければならない。率直に申しまして、そういう問題だろうと思うのであります。そこで御指摘の、沿岸漁業が非常に衰退をしておる。それはまあその通りでございましょう。そこで、まあ当面の措置といたしましては、やはりこの漁ろうの方法によりまして、その業種に一つの再編成を加えるというふうなことを考えなければならぬと思うのでありまして、当面まあこの沖合漁業については一部禁止区域などを設定することによって、そこでまあ、資源の培養をはかることも一つの方法でございます。また、三十二年度予算におきましては沿岸漁業を助成する意味において、または浅海増殖と呼ばれておりまする費目を前年に比べますると、約五割くらいふやした次第でございます。当面そういう措置で扱って参るつもりであります。また、水質汚濁の問題は、近時工場の廃水でありますとか、あるいは都市の膨張等に伴って、沿岸にそのような現象をきたしておる点は、実はきわめて憂慮にたえぬのであります。これに対しましては何らかの立法措置も要するのではなかろうか、しかし、これはあるいは通産行政とも関係がございます。厚生行政にも影響がございます。当面、これらの間で話し合いを続けておるという次第でございまして、御趣旨の線に沿って十分検討をいたすつもりであります。
  276. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 漁業の内部自体で、たとえば禁止区域を設けるとか、漁の方法を制約するとか、そういう施策はそれはけっこうでありますが、特に私お願いしたいのは、化学工業であるとか、あるいは電源開発の大きなダムによって遡河がとまるとか、そういう他産業からくる水産資源に対する脅威ですね。これに対して原始産業の資源を保護する観点から、農林大臣は十分一つ考えてもらいたいと思う。大体弱いのだ。そういう場合においては弱い立場に立たされておる。若干その漁民の生活費等なり、あるいは漁業権を補償する、これは一応補償で済む問題ではないと私は思う。補償で片を済ますというようなことではなしに、どうしても化学工業を起してそれが水質を汚濁することであれば、相当金がかかっても、それをはやり保護するだけの施設を、これは法律でやるとすれば、法律を出して資源を保護をするということが、私はやはり国家百年の問題だと思う。こういう点になると、先進国アメリカその他においては相当いわゆる産業者面においても理解があって、進んでその資源の保護に協力しておる。なかなか日本はそういうところにいかないのだ。まず農林大臣が通産大臣に折衝して、まごまごするということでは、はなはだ残念でありますから、ぜひ一つ考えを願いたい。  最後に一つ農林大臣にお伺いしたいのは、新農村建設であります。この問題であります。この問題は言うまでもなく、前河野農林大臣の持っておられた構想の一つ政策であったと思います。河野農林大臣考えとして、一応の理念があったと思うのでありますが現在の段階において進行中でありますが、五カ年計画による新農村建設計画ですか、これに対して井出農林大臣は、大臣としての何か新しい構想をこの計画にお持ちであるのかどうか、この点であります。それから今のような客観情勢から見て、五カ年間に、新しい農村がどういう内容か私はよく知りませんが、満足な成果を一体期待し得るかどうか、期待し得ると考えておられるどうか、この点も伺いたい。  それから農村の建設といいますか、問題として私非常に大事な問題は、この相続に関連する土地の細分化の問題及びそれに関連を持つのでありますが農村の二、三男に対する対策の問題が新農村建設に関連してきわめて重要じゃないかと思う。それらに対してどういう考えを持っておられるか。先ほど高橋君は総理との問の移民の問題についての話があった。農村の二、三男の移民の問題も、これは大量は期し得ないでしょうけれども、十分考えなければならぬ問題だと思う。いわゆる新農村建設についての大臣の構想なり見通しなりを、この際にお述べを願いたい。
  277. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 御質問はいろいろ広範な内容を含んでおったと思いますが、まず新農山漁村建設計画でございまするが、これは河野前大臣によって着想せられました。三十一年度の実績というものは、着手いたしまして期間も短かかったということもございまして、今現われた成果だけで批判をすることは、いかがかと思いますけれども、私はやはりこの方向というものが、農村に一つ希望を持たせるという意義は、十分にあると見ているわけであります。そこで、従来の何か停滞した暗い農村の姿というものでいいのかどうか、もう少し進取活発の気分をふるい起すために、特に農村においての、地域に即した自主的な下から盛り上るものを実は期待をして始められたわけでございますが、そこに適地適作という考え方が導入をせられておるわけであります。ただ、まあ考えねばならないことは、これが非常にマンネリズムに陥る、あるいはただほしいままになされるということであってはいかがかと思いますのでやはり一つの指針といいましょうか、目標といいましょうか、こういうものは十分に示唆を地方に言ってあげなければならない、農林省はよき相談相手にならなければならない、こういうまあ気持でおるわけでございます。で、今年はその実施町村数も、町村地域もふやしましたが、同時に、私はこれを担当する青年の役割、ほんとうにこの農村の青年の諸君がプロモーターになって、これをになっていかなければならぬというところに実は重点を置きまして、そのための予算も若干計上をいたしまして、まあ、これは研修費というような名目でございますけれども、まず農村の青年が自分の村のことを考え、地域社会のことを考え、そうしてその中に営農というものをどういうあり方をもってつないでいくかというあたりに、一つ力点を置いてみたいと考えておるわけであります。従いまして後段お触れになりました移民の問題等も、そういうあたりから農村青年が一つの自己診断をして、そうして、そこから農業だけでこれが解決をし得ないものであるとするなら、他の産業との関連も生まれて参るでありましょうし、これは海外進出ということも出てくるでございましょう、そういう点から、まあ一つ産業開発青年隊という構想も一環に相なるでありましょうし、あるいは派米青年、アメリカへ送って参りました青年なども、各地で知識を身につけ、あるいは合理的な農業の姿というものを見て取って帰って参りまする場合は、これはやっぱりこういう人たちも活用の道が、あるいは移住の第一線に立ってもらうということも出てくるかもしれません。まあ、そういうような考え方でこの新農山漁村建設には一つ大いに肩を入れてやって参る所存でございます。
  278. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 本日はこれにて散会いたします。    午後六時四分散会