○
林田正治君 第二班は
海野議員及び私が
福島、
宮城、
岩手三県を視察いたしたのでありまするが、その
概要をこれから申し述べたいと存じます。
福島、
宮城、
岩手の三県は、
一口に
東北といっておりましても、おのおの
事情を異にいたしており、すなわち
福島県は
農業人口は約五二%でありますが、第二次、第三次
産業がこれに次ぎ、
後進東北の中では最も進んだ
工業県であります。また
宮城県は
農業人口六〇%、大
工場らしいものはほとんどないのであります。ただ
仙台という
東北商業圏の
中心地があって、第三次
産業が比較的率が高い。
岩手県は
農業人口七〇%に近く、
農業以外には第三次
産業、第二次
産業の順序になっており、いわゆる
東北地方においても最も
後進性の強い県であると思います。このようにその県によって
産業構造はおのおの異なっておりまするが、いずれにいたしましても
農業人口はその過半数を占め、
国民所得の三六%は
農林水産業であるので、
地域により若干の差はあっても、この
動きが
東北経済の
動きのもとになるわけであって、しこうして昨年もこの
部門も
割合に明るかったために、
一般産業といたしましては、一部に問題はありましたが、全体としては明るくなっているように見られたのであります。
まず、
農業の面から申しまするならば、本年の
東北の稲作は
全国で最もよく、作況の
指数で見ても
全国平均の一
○四%に対して、
東北では一二一%となっており、
東北六県の三十一
年度の
推定実収高も千五百八万六千四百石となって、これはまさに二年
続きの大
豊作であります。しかし表
日本の
福島、
宮城、
岩手等の各県は
脱穀調整期に天候不順に見舞われましたるために売り渡しは
相当おくれ、これがいわゆる
早場格差金の流入を前年よりも約一〇%も減少せしめたと言われているのであります。
農家経済は悪くはなく、信連の
預金は六県
合計ではありまするが、前年よりも二十億円ふえて、
貸し出しは逆に四億円少くなっているのであります。しかしこういう二年
続きの
豊作の中にあって見のがすことのできないのは、農民間の貧富の差がますます大きくなる
傾向であって、家族一人
当りの粗収入が十万円にも達しない
零細農は
消費水準の上昇に追いつけず、
土地を手離す者もある反面、
上層農は新しい農機具を買い入れて
生産力を高めたり、
土地をさらに買い集めているというような
現象が現われているのであります。
次に、
水産業の面に目を転じますると、
東北の
水産界は
春ニシン、
サンマの
不漁のためやや
沈滞気分でありました。
サンマのごときは
東北十五港の
合計で四千四百六十万貫で昨年の半分にとどまり、
東北水産界に大きな
打撃を与えたようであるが、
水揚高の不振のかわりに、幸いに
漁価が
相当高かったので、金額としては昨年よりやや多く、この点では明るいといってよかろうと思います。またこの
不漁の
影響は、
肥料業界にも及び、
例年一千万貫以上魚を処理するために
設備その他の更新、
拡充を行なったところ、今年は一昨年の二一%しか処理できず、業者の大半は
設備資金の金利に苦しんでおるという
状態であります。
次は、
鉱工業、いわゆるマイニングでありますが、
東北の
鉱工業も
全国的好況の余波と
輸出の好調によりまして、業種を問わず、全般的に
好況に恵まれ、これを
仙台通産局の
調査によりまするというと、
鉱工業の
生産指数は二十四年を一〇〇として三十年が二一八、三十一年は二五四%というように二八%も上回っており、これを
全国平均の二一%に比べますると、多少は落ちまするが、大体において
活況を呈しておると言っても差しつかえないと思います。特にここに注意すべきは、二十八年、九年の両年の間その不況に呻吟しておったところの
常磐地区石炭業が市況の好調と低
品位石炭の活用の
見通しによりまして
石炭ブームと言われるような二十六年、二十七年に近い
好況を続けておる事実であってしこうしてこの
部門でも他の
部門と同じく
中小企業や
零細企業は相変らず
原料高製品安に苦しんでおるとのことで、大
企業と
中小企業との差がますます大きくなりつつある
現象を見るのであります。また
鉱工業生産好調の一因となった
輸出も昨年に比べますると、約七%も
増加いたしておるのであります。
次に、
電力の問題でありまするが、このように、今申し述べましたような
鉱工業生産の著るしい
伸びもその
動力源であるところの
電力の面からは
相当大きな制約を受けておるのであって、すなわち
東北の
電源開発は最近の
好況によるところの
電力消費量の
伸びに追い付かず、三十二
年度には十三億キロワット・アワー不足する見込みである。この
需用の
伸びに加えて昨年来
異常渇水に見舞われて
出水率は十二月が九五・二%、一月に入ってはさらに
渇水が著るしくなって八〇%台にまで落ちたのであります。そのためほかの
電力からの、他の会社からの
電力の融通を受けるほか、一月十七日から週一回休電、
大口需用の三割
制限という三、四年来見られなかったような強力な
法的制限が行われておったのであります。
次に、結局こういうような
電力の隘路のために
輸送の方面にも大きな
影響を受けて、
例年でありまするならば
滞貨は夏には減り、冬がふえるのが普通であるのに、昨年は夏から
滞貨がふえて、国鉄はその
目標を八万トンもこえるような
輸送実績を示したにもかかわらず、
滞貨は七月までに前
年度に比べまして五割もふえておるのであります。二月の十日現在で
滞貨は盛岡、秋田、
仙台各
監理局の
合計で四十二万トンにも相なって、その
滞貨の量は
例年の四倍ないし五倍というような
状態である。これらの問題は直接的には
産業界の
活況とあるいは
大雪等に原因がありましょうけれども、根本的には鉄道の
複線化、あるいは電化、
貨車操作場の能力の
拡充というような根本的の
解決をはからなければこの
滞貨の
解決はできないじゃないかというように相なっておるのであります。
次に、
東北の
商況の概観を申し上げまするならば、
東北の
商況は先ほど申し上げました
産業界の
好況と
豊作の
影響を受けて
一般には昨年よりも
好況を呈したのでありますが、その背景により非常に
厚薄の差がはなはだしいのであって、すなわち
福島市、石巻市の
売上高のことときは昨年の四割
増しと言われておるに反して、
サンマの
不漁に大
打撃を受けましたるところの塩釜、気仙沼あるいは
岩手県の
南部海岸の諸
都市のごときは売り上げが前年の二割減に相なっておるのであります。昨年の
東北の
景気の性格は
米景気というより
産業界の
全国的好況に負うているものと言うことができます。従って全般的に見て
都市は
景気がいいようでありまするけれども、
農村は凡調であるといって差しつかえないと思います。
次に、
労働の問題について若干申し述べてみたいと思います。
好況の波のおそい
東北でも、
労働雇用の
状況の緩和がやや見られてきたようであります。すなわちこれを
東北の
労働指標で見ますると、
新規求人の数は三十一年にいって五百人ないし三千人を上回り続けておるのに、
求職者の数はむしろ減って参っておるのであって、また
解雇者数も各月とも前年の同期を千人前後下回っておるのであって、賃金の不払いというような
現象もだんだん減って参っておるのであります。このような
労働事情の好転も、
全国のそれにははるかに及ばないのでありましょうけれども、しかしながら
後進県
東北にもやはり
経済の
好況の
影響がここに及んだものといっても差しつかえないと思います。
次に、
金融の面について申し述べまするならば、
金融の面に見られるところの
特徴は、
中央がやや
金詰まりの
傾向にある今日、
東北におきましてはまだまだそういうような
状況に至らずして、むしろ緩慢なる
状態にあって、
中央とは
相当に時期的なずれが見られるのであります。すなわち
預金は本
年度の
東北地方の全
金融機関の
貯蓄目標は、前
年度より五十一億円、
増しの四百五十五億円と定められておったのが、
年度の内第三・四半期までの
増加実績はすでに六百五億円に上り、前年同期の
増加額五百四十億円を大きく上回って、達成率におきましても、有史以来の成績であるといっていいような
状態であるのであって、一方
貸し出しの面におきましても旺盛なるところの
資金需要を反映して、十一月までは増勢を続けたのであるが、十二月に入ってからは目立った繁忙を呈せず、単位農協を除く十二月の預貸率は前年同月の八〇・三%を下回って七八・二%にとどまったのであります。手形交換の高は枚数、金額ともに前
年度を大きく上回っておるのでありまするが、不渡り手形の交換高に対するところの
割合は大きくまたこれも下回っておる。一枚
当りの金額は小口化し、
零細企業におけるところの資金繰りの窮屈さをこの点では物語っておると思ったのであります。
次に、地方
財政の点について申し述べたいと思いますが、
東北地方における地方公共団体の
財政も、三十
年度、三十一
年度におけるところの国の地方
財政に対する特別
措置と、地方公共団体の積極的なるところの努力及び
一般経済界の
好況を反映しての税収入の
増加によって全般的に好転して参り、
赤字の
増加はようやくとどまり
財政の再建が軌道に乗りつつあるものと思われるのであります。しかしながら反面
赤字団体は、税収が少い上に税収の七〇ないし八〇%を占むるところの
公債費の処理に頭を悩しておるのが
現状であります。これを
福島県、
宮城県、
岩手県の県
財政で見てみますると、すなわち
福島県は三十
年度末
赤字二十一億四百万円を再建債の借り入れにより、十カ年
計画により再建せんとするものであります。再建の年次
計画に従えば、三十一
年度末が五千九百万円の
赤字にとどまる予定になっておるが、冷害、水害、
公債費等の
増加のために税収の自然増にもかかわらず、決算見込みは一億七千万円の
赤字と予想されるのであります。そこでこの一億一千百万円の狂いが生じたのでありますが、三十一
年度補正
予算が成立すれば、
計画通りにいく予定であるとのことであったのであります。また
地方債の現在額は、三十一
年度で
財政規模の半分に近い七十一億円に達し、
公債費は八億八千百万円で、起債額が二十八億八百万円であるから、再建債分を除いた新規起債額よりも返済額の方が多いわけに相なるのであって、また
県税収入は二十億円であるからして、借金の利払いに約半分持っていかれるというような勘定に相なるのであります。
次に
宮城県の
財政を見てみると、同県は三十
年度末十三億六千九百万円の
赤字を再建債の借り入れによって、九カ年
計画で再建しようといたしておるのでありますが、再建の年次
計画に従えば、三十一
年度の
赤字は千五百万円にとどまる見込みであったのが、決算見込みは逆に二千九百万円の黒字が予想されておるのであります。また
地方債の現在額は三十一
年度で七十二億円で、
財政規模百三十五億円の半ばをこえておるし、
公債費も
県税収入の六割に及んでおるのであります。
次の
岩手県は三十
年度末の
赤字は三億二千六百万円で、これを五カ年
計画で再建しようといたしておるのであります。三十一
年度末の収支は当初
計画によれば、三千五百万円の
赤字の見込みであったものが、
赤字が大体出ない
見通しであるのであります。
公債費は三十一
年度には六億八千万円であって、
県税収入の十一億八千万円に対しましてその半ばをこえておるのであります。このように
東北の各県は、
公債費の
負担にあえいでいるのであって、
東北地方の
後進性を脱却するためには、どうしても開発を進めなければならないが、同時に開発を進めるには、
県税収入が少ないので、勢い起債に頼るほかは道がない、この
公債費が
財政の一番の圧迫となっておることは先ほど申した
通りであります。そこで昨年から行われておるところの交付税の投資補正をさらに強化し、一歩を進めて
地方債の元利補給の問題はこれは慎重に検討を要する問題であると考えておるのであります。
次に、開発
計画の
進捗状況について申し上げてみたいと思いますが、
東北地方は面積も広く、天然資源も多いので、開発は
国民経済の要請にもひとしいと言っても差しつかえないのであります。しかして
東北全体を通じて、
県民の所得の水準も
全国平均の七〇%というような低い
状態を脱却するためには、どうしてもこの開発が必要であると言わざるを得ないのであります。すなわち
福島県では具体的にこの例を申すならば、
福島県では、鮫川
総合開発と、只見特定
地域総合開発の二つが現在行われておりまするが、前者は常磐炭田、小名浜港を
中心として第二の京浜地帯を作るところの
計画であるが、
工業用水道の
事業、小名浜港の浚渫の
事業がまだ残されておるのでありまして、また只見地区はすでに国土
総合開発法に基くところの指定を受けて、三十一
年度より十カ年で完成される
計画であるが、
電源開発と鉄道を除きましては、その
進捗率は遺憾ながらわずか一〇%以下の
状態であります。
宮城県においては北上地区、三陸地区、仙塩地区、仙南
地域の四カ所でありますが、特に特定
地域総合開発として指定されましたる
事業は北上地区だけであり、三陸、仙南地区はいずれも県の現在のところ単独
事業であり、仙塩地区は
調査の段階にあるような
状態であります。また北上
総合開発は、
岩手県と両方にまたがるものであり、この
宮城県分は発電所
建設を
中心としたところの公
企業的なB種公共
事業は二七%に進んでいるが、
一般のA種公共
事業、国土保全、交通施設の方面はまだ二五%であるというように両方の間には多少の差があるのであります。
岩手県におきましては、前述の北上川を
中心としたところの北上特定
地域総合開発と北上山脈の東部を
中心としたところの北奥羽
地域総合開発の二カ所の
計画がありまするが、指定を受けた
事業は北上地区だけであって、この
進捗率は十カ年
計画の期間をすでに四カ年経過したにもかかわらず、三十一
年度ではまだまだ二〇%であって非常におくれておるのであります。
また北奥羽
地域総合開発計画は指定を受けていないため、県単独
事業として進められており、全体
計画の一六%程度しか進んでいないのであり、北上特定
地域の
総合開発は
全国第一号として指定されただけあって、その必要度は
現地を見てひとしく痛感いたしたところであります。北上川をはさんで一奥羽、北上の両山脈があり、一ノ関付近において急に川幅がせまくなり、雨量が少し多いとたちまち洪水となる地形ができているのであって、この治水と利水をかねるところの
事業はほんとうにわれわれは
現地を見ましたる場合において、絶対にその必要を痛感いたしたのであります。
このように開発
計画がおくれておるのは、国家
財政の緊縮政策に災いされたことも事実であるが、また県の
財政が
赤字であり、再建団体に指定されたるために
事業制限を受けておることにも大きな原因があると言わなければなりません。いずれにいたしましても、
後進地開発のため必要な
事業につきましては、
赤字団体であっても、この
事業制限をはずすことが必要であり、さらには指定
事業に対するところの
補助率も北海道並みに引き上げる必要があると私たちは痛感いたしたのであります。
次に、最後にこういうような見地からいたしまして、
現地の方々が
要望されたるところの問題を結論として申し述べます。
全部の
要望事項を申し述べることと、とうていこれは許さないのでありまして、ここではその大きなる問題だけを申し述べておきたいと思いまするが、第一は、
東北開発促進法の制定であります。
赤字財政の
現状と、開発の促進に関連して、どうしてもこの特定
地域として指定を受けた
事業については、
補助率を北海道並みに上げること、第二は、交付税率を二八・〇五%に引き上げること。
公債費が多く、自己財源が乏しい
現状では、これよりほかには道がないのであって、第三は、二月初めに、
岩手県の三陸沿岸を襲いましたるところの暴風浪の災害
対策であります。これは漁港施設と漁業施設に約一億一千万円の災害を受けたものであって、これに対するところの救済を
要望されたのであります。第四は、駐留軍の離職者の
対策であります。
仙台におけるところの駐留軍労務者は、昨年初めから千八百名の解雇を見たのであるが、現在なお三千六百名の労務者がおりまするが、しかし近く予想されるところの
米軍引揚が実現されるならば、その被解雇者が、さらに多くの数に上ることは、これは見えすいた
現象でありまするが、これに対して、これを吸収し得るところの
産業に乏しい
宮城県といたしましては、非常に困ったる
現象であって、これによって社会不安を生ずるおそれがあるので、これは何とか国家におきましても、
相当の
措置を講じてもらいたいということでありました。第五は、
東北の横断鉄道と道路の開設であります。
東北の鉄道は、
東北と
中央をつなぐところの縦断鉄道が
割合に便利に発達しておるけれども、表と裏をつなぐところの横断鉄道は、未発達、不便であり、これが
東北の開発を非常におくらかしておるといっても差しつかえないのであります。道路もまた同様であります。
岩手県の釜石港と花巻を結ぶところの道路のごとき、冬季は途絶し、鉄道以外にたよるものがないのである。これではせっかく世界三大漁場の一つであるところの三陸漁場をもっていても、消費地に直送の便がないために、非常な不
経済になっておるのであります。われわれは
現地において、今
計画されておとるころの仙人墜導の開さくにより釜石と花巻を結ぶところの道路の開設の悲痛な願いを聞いて、さっそく実現の必要を痛感いたしたのであります。
以上の五項目は、最も切実なるところの要求であり、慎重にこれが
対策を検討し、
財政の許す限度において、その実現を努力すべきものであると、感じたのであります。
以上で大体われわれの視察の
状況の
報告を終りまするが、要するに、
東北におきましては、この神武以来の
景気といいながらも、まだまだその浸透の度合は、
都市と
農村とによっての差が見られ、
産業にあっても、大
企業と
零細企業、富農と貧農との差、そういうような事実が認められておるのでありまして、どうしてもこういうような観点からいたしましても、
東北の開発の急務なることを痛感いたしたのであります。