○加瀬完君 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されました
地方交付税法の一部を
改正する
法律案に対し反対をいたします。
関係当局並びに自民党の行政部会の各位が、
交付税の引き上げに非常な御努力をいたされました点は、敬意を表するにやぶさかではございませんが、なお、付帯決議による一・五%の税率の引き上げを御決定なさいましたが、これらの点につきましては、
交付税法から見て違法ではないかという幾多の疑点も残されておりますので、以下、反対の何点かをあげたいと思います。
反対の第一点は、
政府が、地方財政に対して、はなはだ認識を欠いておるという点であります。
交付税法の第三条によりますと、「自治庁長官は、常に各地方団体の財政状況の的確な、は握に努め、地方
交付税の総額を、この
法律の定めるところにより、財政需要額が財政収入額をこえる地方団体に対し、衡平にその超過額を補てんすることを目途として交付しなければならない。」、こういう
規定がございます。御存じのように、財政需要額と財政収入額をいかに判定するかということが
交付税における大きな問題であります。そこで、自治庁の地方自治体に対する実態
報告を見ますると、その一といたしまして、財政再建団体などは行政の最低水準すら割る状態であり、特に団体間の行政格差が大きくなってきた。その二といたしまして、計画の
内容に無理があるので、消費的経費だけではなくて一投資的な経費すら相当切っておる、この方法をそのまま進めるならば、住民のための事業というものは停止しなければならない。その三といたしましては、赤字は一応三十年度において押えることができたけれども、それは事業を押えて黒字を出しておるということにすぎないので、新
市町村の建設の促進でありますとか、過年度の災害の解決でありますとか、公債の処理でありますとか、こういう地方財政にとりましては至急解決をしなけりゃならない基本的な問題は、そのまま残されてしまった、こう述べておるのでございます。このことは、明らかに、
地方交付税法第三条三項の
運営の基本として記されておりまする「地方団体は、その行政について、合理的、且つ、妥当な水準を維持するように努め、少くとも
法律又はこれに基く政令により義務づけられた規模と
内容を備えるようにしなければならない。」、こういう
内容に違反する状態と言わなければなりません。具体的に数字をあげますならば、再建団体の歳出歳入年次計画におきますると、財政計画の基本年度といたしました
昭和二十九年度と、再建計画の最終年度といたしておりまする年産とを比べますと、佐賀県においては、消費的経費が二二%減り、投資的経費が六三%減っております。徳島県におきましては、消費的経費が一四%、投資的経費は、驚くなかれ、七六%減らしてバランスを合わせておるのであります。消費的経費のうち、
給与費について見ますると、
昭和二十九年と三十年と三十一年分各十月を押えますと、昇給を停止しておりましたのが、
昭和二十九年は二でありますけれども、
昭和三十一年は三十四にふえております。昇給を延伸しておりますのが、
昭和二十九年は十九でありましたのが、
昭和三十年には二十八という状態であります。特に、この再建計画が一番しわ寄せされました教育予算によりますると、たとえば、学級規模調査、こういう統計を見ますと、御存じのように、米、英、仏、ソ、こういう諸国におきましては、小学校の一学級は最高二十五人から四十人という編成だそうでございますが、わが地方団体におきましては、小学校におきましては、五十五人以上の学級が、鹿児島においては全体の一八%、
熊本においては二三%、佐賀県におきましては二九%という数を表わしております。中学校におきましても、鹿児島は五十人以上の多学級が二八%、
熊本は二三%、
大分は二五%という数を表わしておる。しかしながら、量よりも質である、教員の質がよければよろしいじゃないか、こういう御議論もあろうと思いますので、教員構成を調べてみますと、正教員でない、いわゆる無資格者の教員によって教育が担当されております率が、北海道におきましては三〇・三%、青森においては二二・一%、群馬においては二丁七%、
宮崎においては二〇・四%こういうように義務教育の最低限度すらも、はなはだしくその最低を割っておる状態でございます。このように行政水準を非常に切り下げましても、三十年度だけは赤字を押え得ましても、二十九年度の決算による各県の実質赤字というものはそのまま残っておる。たとえば、兵庫、京都においては土十五億、新潟二十三億、
福島二十二億、
長野においては十五億、宮城県十四億、秋田十三億、鹿児島、
千葉十億という、おびただしい赤字をそのまま残しておるのであります。もしも
交付税を
改正するということでありますならば、当然この地方財政の実態の上に
改正が行われなければならないはずでありますが、歴代の
政府は、この財政状況の的確な把握というものを怠ってきました。現
政府におきましても、この認識は、はなはだ欠けると言わなければなりません。こういう地方財政の的確な認識を欠くところに、
交付税の算定の基礎というものは発見することができないのであります。これが反対の第一の理由であります。
反対の第二は、
交付税の算定に誤まりがあるということであります。三十年度の決算を見ますと、財政計画に対応する決算と計画との差は六百億前後、歳出においても歳入においてもあります。ところが
昭和三十一年の十一月の決算見込みで調べますと、地方税におきましては決算が三千五百六十七億、計画が三千五百七十六億で、十億に足らないところの差であります。ここで地方税というものを問題にいたしたいのでありますが、二十八年度以降、計画と決算のアンバランスというものを、地方税の増徴でまかなってきたという傾向が非常に強いのであります。たとえば二十八年は地方税を三百億、雑収入を三百億ふやして、六百億の赤字を埋めました。二十九年は地方税を四百二十五億、雑収入を百八十二億ふやしてバランスをとりました。三十一年におきましても、地方税で三百九十六億、雑収入で五十億、こういう形で財政計画のアンバランスを補っておるのであります。この資料から私は二つの結論が言い出せるかと思うのであります。一つは、計画と決算のアンバランスを地方税で補ってきた、しかし現在は、どのように見ても地方税の伸びというものをもう望むことができない。それは計画と決算が十億だけしか違わないということでも明らかではないか、こういう点であります。しかし
政府は、本年度の地方財政計画におきましても、税の増収計画というものを非常に多く見積りまして、府県税で三百八億、
市町村税で二百六十五億、その他を合わせまして六百八十九億という数字に見込んでおります。これは無理がないかと、こういう点を検討して見ますと、
昭和三十二年度の地方財政における収入見込み額と決定額を比べますと、地方税を自治庁では最初三百二十九億しか取れないと見込みましたところが、大蔵省の決定では、これが六百八十九億に伸ばされておる。その差が実に三百六十億であります。地方
交付税を三百八十八億だけどうしても必要だと計算されましたものが、三百四十億に落されまして、百四十八億というものが歳入見積りから減らされております。公債費の処理というものには、どうしても百九十五億かかると自治庁が予定いたしましたものが、七十六億に押えられましたので、百十九億不足を生じております。結局、見込みよりも減らされたものが三百四十七億、見込みよりもふやされたものが三百六十億、七百七億の差が出て参りました。このことは、地方から取るものは、無理をして三百六十億取った、
政府の出すべきものは三百四十七億出し惜しんでおる、こういう結論が言われると思うのであります。こういうふうに財政計画そのものに欠陥があるわけでございますから、こういう財政計画から
交付税をはじき出しては、この
交付税がまた間違ってはじき出されるということになるのであります。非常に財政収入の面で地方税というものを大きく見ておりますけれども、これは
政府の発表された日本経済の発展率という表から見ましても、三十年と三十一年では一二%ふえておるというのに対しまして、農林水産生産水準と、いうものは三・六%減っております。また分配国民所得を比べますと、三十年と三十一年と三十二年の見込みでは、全体に対する構成比が一九・三、一六・一、一四・八と減っております。これは地方にとりましては、神武景気とか何とかいう風は全然吹いてこない。むしろ地方税の税のもとは減ってきておる、こういうことになろうかと思うのでございます。これは自治庁の発表された本年度の資料によりましても、ふえております地方税を分類いたしますと、
東京、大阪、神奈川、愛知、福岡、兵庫、この六都府県が百七十三億、その他が百三十五億、税収増が非常に一方的に片寄っておるのであります。これからは
交付税の算定というものは出てこない。これが反対の第二でございます。
反対の第三点は、付帯決議の
内容を、
法律の成文となし得ないことはないということでございます。付帯決議によりますると、三十三年度から一・五%
交付税率をふやすということでありますが、
交付税法の第三条の2によりますと、「国は、
交付税の交付に当っては、地方自治の本旨を尊重し、条件をつけ、又はその使途を制限してはならない。」ということが書いてあります。ところが、本年度の計画によりますると、
交付税の繰り越しの見込み額の中から、七十六億だけはひもをつけて公債費の処理に充てております。これは
交付税法の違反であります。この点でございますが、自治庁長官は、お説の通り
交付税法ではひもはつけられない、そこで
交付税法の一部の
改正をお願いしているんだ、財政上、三十三年度は当然これを考えるのだ、こう言っておる。従って、三十三年度からは、
交付税率は当然変更しなければならないことを明白に物語っておるわけであります。こういう場合には、
交付税法では、その収支が引き続いて合わない場合には、第六条第一項の税の率を変えるということが
規定されておるのであります。なぜ、一体、税の率を来年から一・五%上げるというのならば、今年変えられないか。こういうことに対しまして、
衆議院におきましては、三十二年度におきまして三十三年度の財政を縛るわけにはいかないという理由をあげておりますが、これは税率を
改正する理由にはならない。なぜかと言いますと、
交付税法が初めて
昭和二十九年に生まれましたときに、本則第六条では、税率を百分の二十二として、二十九年度特例付則第三項というもので百分の一九・八七四という二段がまえの税率にしたわけであります。地方税の
改正におきましても、住民税を、本年度の
改正で
昭和三十三年度は百分の二十六、三十四年度以降平年度は百分の二十八と、次年度、その次の年度というものに対して、
法律ではっきりとしたひもをつけてある。
交付税法だけでつけられないという理由はないと思うのであります。問題は、地方財政をこのままにしておきまして、
政府は、住民の福祉というものをほんとうに考えておると言えるかどうかという問題に帰着するかと思うのであります。来年やらなければならないという理由を本年度発見をするならば、発見したときに
交付税法は変えなければならない。これが
交付税法の精神でございます。
以上、三点を申し述べまして反対の理由といたします。(
拍手)
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