○千葉信君 ただいま
議題となりました
引揚者給付金等支給法案につきまして、社会労働
委員会における
審議の経過並びに結果を御
報告申し上げます。
まず、本法案提出の理由並びに法案の内容について
説明いたします。
過般の大戦の終結により、きわめて多数の同胞がその生活の本拠とする外地から、ほとんど無一物になって引き揚げ、縁故の乏しい内地で生活の再建をはからねばならなかったのでありまして、内地の戦災者等に比較いたしましても、その再起更生にさらに大きな障害があったことは、あらためて申し上げるまでもないところであります。これら引揚者に対しましては、その実情にかんがみ、応急的な
援護が行われるとともに、住宅の供与、更生資金の貸付等の
援護更生施策が実施されてきたのでありますが、多年の懸案であった在外財産問題につきましては、昨年六月、
内閣総理大臣から在外財産問題
審議会に対し、在外財産問題処理のための引揚者に関する措置方針について諮問がなされたのであります。同
審議会は、昨年十二月に至り、
内閣総理大臣に対し、その諮問に対する答申を行なったものであります。
政府は、右の答申の趣旨にのっとり、できる限り引揚者の要望に即することを旨として種々考慮して、ようやく先般諸般の調整を終り、本法案を提出するに至ったということであります。
次に、本法案の概要について御
説明申し上げます。
まず第一に、終戦時、外地に六カ月以上生活の本拠を有していた者等、所定の要件を満たしている者を本法にいう引揚者とし、これら引揚者に対しましては、終戦時の年令区分により四段階に分け、最高五十才以上の者に二万八千円、最低十八才未満の者に七千円の引揚者給付金を支給することであります。なお、外地に長く残留することを余儀なくされ、講和条約発効後引き揚げた者は、その実情にかんがみ、外地に生酒の本拠がなかった場合においても、引揚者給付金の支給対象とし、さらにそのうち、いわゆる戦争受刑者につきましては、年令にかかわらず、すべて二万八千円を支給することにいたしてあります。
第二に、ソ連の参戦または終戦に伴って引き揚げねばならなくなった者、あるいは外地に残留することを余儀なくされていた者が外地において死亡した場合及び引き揚げ後二十五才以上で死亡した場合は、それぞれその遺族に対し遺族給付金を支給することとし、その額は、外地で死亡した者の遺族につきましては、死亡した者の終戦時の年令の区分により、十八才以上であった場合は二万八千円、十八才未満であった場合は一万五千円とし、引揚後死亡した者の遺族につきましては、引揚者給付金の額に見合う額といたしてあります。
第三に、一定金額以上の所得のある者等、現に生活基盤の再建をなし得た一者には給付金を支給しない趣旨のもと可その所得税額が八万八千二百円をこえる者及びその配偶者には、引揚者給付金及び遺族給付金を支給しないことといたしております。
第四に、引揚者給付金及び遺族給付金は、記名国債で交付することにし、その利率は年六分、償還期限は十年以内、発行期日は
昭和三十二年六月一日といたしてあります。その他、不服申し立て、国債元利金の免税、実施
機関等、所要の事項を
規定いたしておりますが、この法案により、引揚者給付金及び遺族給付金の支給件数は約三百四十万、国債発行総額は五百億円に達するものと見込んでおります。以上がこの法案の大要であります。
なお、本法案は衆議院において修正されております。その修正の要旨は、終戦後引き続き外地にある間に、いわゆる戦争受刑者として拘禁された者で、講和条約発効前に引き揚げ、かつ引き続き
昭和二十七年四月二十九日以後にわたって拘禁されていた者は、講和条約発効後も外地において拘禁されていた者と同様に取り扱うことといたしたのであります。
本法案に対しましては、五月七日の
委員会におきまして、厚生大臣より
提案理由を、衆議院議員野澤清人君より衆議院修正案について、それぞれ
説明を聴取した後、慎重
審議をいたし、五月十五日には、特に岸総理大臣の出席を求めて
質疑を行なったのであります。
委員会において特に論議された諸点は、本法案の性格、船付金の支給
範囲及び資格条件、引揚者の住宅並びに更生資金貸付等の
援護施策、在外財産に対する条約上、憲法上、国の補償責任の有無等についてでありますが、その詳細については
会議録によって御承知を願いたいと存じます。
かくて
質疑を打ち切り、次いで討論に入りましたが、別段の
発言もなく、採決に入りましたところ、
全会一致をもって原案通り可決すべきものと
決定したのであります。
なお、本法案に対しまして、榊原
委員より各派共同の付帯決議案が提出されました。その案文は、
一、本法は、その適用
範囲を終戦
日以降に限られているが、その以前引き揚げた者であっても、その実情が同様の状態であった者に対して、は適正なる措置を講ずべきである。
一、特に終戦直前に、閣
議決定に基いて強制的に引き揚げを命ぜられたような立場にある者に対しては、本法が適用されるよう十分考慮すべきである。
というのであります。
右の付帯決議案に対し、採決をいたしましたところ、本決議案は
全会一致をもって可決した次第であります。
以上をもちまして御
報告を終ります。(拍手)