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1957-03-15 第26回国会 参議院 本会議 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月十五日(金曜日)    午前十時四十七分開議     —————————————  議事日程 第十三号   昭和三十二年三月十五日    午前十時開議  第一 原水爆禁止に関する決議案笹森順造君外九名発議)(委員会審査省略要求事件)  第二 一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案趣旨説明)  第三 航空業務に関する日本国とスイスとの間の協定の締結について承認を求めるの件 (委員長報告)  第四 日本国ブラジル合衆国との間の航空運送協定批准について承認を求めるの件 (委員長報告)  第五 日本国ドイツ連邦共和国との間の文化協定批准について承認を求めるの件  (委員長報告)  第六 日本国とインドとの間の文化協定批准について承認を求めるの件(委員長報告)  第七 理科教育振興法の一部を改正する法律案内閣提出)(委員長報告)     —————————————
  2. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 諸般の報告は、  朗読を省略いたします。     —————————————      —————・—————
  3. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、原水爆禁止に関する決議案笹森順造君外九名発議)(委員会審査省略要求事件)  本案は、発議者要求通り委員会審査を省略し、直ちにその審議に入ることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。  よって本案議題といたします。まず発議者趣旨説明を求めます。笹森順造君。   [笹森順造登壇拍手
  5. 笹森順造

    笹森順造君 ただいま上程されました決議案につき、提案者代表して、その理由を申し途べ、全員賛成を仰ぎたいと思います。  初めに案文を朗読いたします。    原水爆禁止に関する決議   本院はさきに「原子力国際管理並びに原子兵器禁止に関する決議」及び「原水爆実験禁止に関する決議」を行い、国際連合並びに関係各国の善処を要請したが、原子力国際管理に関する適切なる措置はいまだに講ぜられていないのみならず、原水爆実験は、あるいは無警告に、あるいは予告を伴いつつも、なお依然として続行されており、近くは、英国政府日本政府の再三の要請にもかかわらずクリスマス周辺において新たなる実験を実施せんとしていることは、はなはだ遺憾にたえない。   本院は、原子力利用を専ら平和的目的に限定し、今後原水爆製造使用及び実験を一切禁止するため、国際連合並びに関係各国が速やかに有効適切な措置を講ずることを重ねて要望するとともに、事態をこのままに放置するときは、放射能物質人類生命に救い難い危険を生ずる程度にまで達することを憂え、英国ソ連及び米国に対し深甚な反省を求め、予告有無かかわりなく、現に計画中の原水爆実験中止せんことを要請するものである。  右決議する。  以上であります。(拍手)  続いて、提案趣旨を申し述べます。  本決議案は、戦争を目標とする原水爆製造保有実験使用の一切を禁止し、原子力利用をもっぱら平和的目的に限定するために、国際連合並びに米、ソ、英など、関係各国において有効適切な措置を講ずるように要請することを趣旨とするものであります。また、焦眉の問題としては、英国クリスマス周辺計画中の原水爆実験中止し、さらに、無警告にして、いつ何どき実験を行うかはかり知られないソ連に対して、また、しばしば実験を行なった米国に対しても、原水爆実験をすべて中止することを強く要請することであります。(拍手)  二十世紀に急速に発達してきた原子科学の偉大な成果に基いて、各国が競うて原子力エネルギーをば、一方において平和目的に供する努力を傾けることによって、人類の幸福と繁栄に洋々たる前途を開いております。しかるに他方において、米、ソ、英が戦争防止のためと称して用意した千数百に上る原水爆が、もしも一たび戦争のために爆発することとなったならば、生きとし生けるものは、ことごとくこの地上から滅亡し去るというおそるべき危険を包蔵しているのであります。今や全人類は、原子力の使い分けによって、繁栄滅亡かの関頭に立たせられているのであります。  よって本院は、昭和二十九年四月、第十九国会において原子力国際管理並びに原子兵器禁止に関する決議を行い、国際連合に対し、原子力の有効な国際管理の確立、原子兵器禁止につき適切な措置を講ずることを要請いたしました。国連においては、この問題につき、かなり活発に議論したのでありますが、東西陣営相五問の不信と疑惑が解けず、自国が原水爆保有することは、他国が起さんとする戦争を防止するに必要であると考え、原水爆の投げ合い合戦には、双方に勝敗なく、全人類破滅を来たすとの懸念を持ちながらも、進んで一斉にこれを棄てる勇断を欠いているのであります。  その理由一つとしては、原水爆が禁ぜられても、強大な地上軍隊を持つ国がそのまま放置されるならば、地上軍隊の威力がかえって増し、それから来たる脅威と不安が加わるということがあるからだとされております。従って原水爆禁止は、根本的には軍縮と全世界軍備撤廃につながるものと言わなければなりません。(拍手)しかるに国連においては、原水爆禁止具体的方法軍縮に関して、いまだ意見一致を見ておりません。かく国際間における原水爆製造実験の競争は、とどまるところを知らないのであります。この実情を憂えて、本院は、昭和三十一年二月、第二十四国会において、原水爆実験禁止に関する決議を行い、原水爆全面禁止成るまでの暫定的措置として、とりあえず、その実験禁止を提唱し、国連及び関係各国に対し、すみやかにその有効適切な措置をとることを要請したのであります。  しかるに、不幸にもその要望は満たされず、また、日本政府が再三にわたって中止を要求したのにもかかわらず、英国政府は、来たる八月一日までにクリスマス周辺において原水爆実験を行う計画を放棄せず、現に去る十日には、英国水爆投下機がホノルルに向い、またクリスマス島には高性能爆薬数百万トンに相当する強力な水素爆弾がすでに到着し、天候が許し次第、核爆発実験を行う準備ができていると報ぜられております。これがために広大な海域航海の危険が予告され、航海者や漁民に一大不安を投じておるのであります。  また、他方ソ連政府は、しばしば無警告にこれが実験を行なっております。たとえば昨年十一月十七日には、核兵器実験を行なったことをみずから発表しておりますし、また去る九日、米国原子力委員長報告によりますると、三月八日には西南シベリアにおい七新しい核兵器爆発実験が行われたということであります。英国政府予告したために、日本国内に非常な反響を巻き起し、ソ連が無警告実験しているために、その悪質な危険を一そう強く感ぜしめております。しかし、予告有無かかわりなく、原水爆実験は、いかに高く打ち上げても、地球全面放射能物質をますます累積させ、その量は一発は一発と増加し、すでに二十発に及ぶと言われる爆発は、地上水中のもろもろのものを汚染し、人類生命に対する危険の度を増しております。もしこれまでの割合で爆発実験が続くならば、ここ十年後には、地上水中放射能許容量を越す危険な状態に達すると、専門の学者警告を発しておるのであります。よって米、ソ、英の為政者は、その実験に伴う放射能物質の累積により人類に及ぼす危害につき、重大な責任を負うべきだと考えられます。(拍手)  わが国は、本年一月十八日、カナダ、ノルウエーとともに、原水爆実験届出制及び登録制に関する決議案国連総会に提出したのは、原水爆製造実験を容認しようというのではなく、何とかして実験を阻止しようとする当面の緊急対策にすぎません。原水爆全面禁止は、われわれの要請するところであります。  残虐きわまる原爆実験台となり、名状することのできない被害の苦悩を、身をもって体験したただ一つの国たる日本国民は、このような惨禍を二度と再びいずれの国民にも及ぼしてはならないという痛切な悲願を持つものであります。(拍手)全世界がこの悲願に耳を傾け、まず英国がこのたびの実験を断念することによって、いまだかつて一たびも原水爆爆発によって大気を汚染する大害悪をまき散らしたことのない光栄ある国としての名誉を失わないならば、またこれを契機として、米、ソが思いを翻し、原水爆全面禁止の挙に踏み切り、ひいては人類歴史から戦争を根絶することになるならば、また、かくして原子科学研究と活用のため巨費を投じている米、ソ、英を初めとして、各国あげて原子力エネルギー平和目的のみに活用し、新しい希望の世紀を開き得るならば、これを提唱するわが国を初め、すべての国の人々は安堵し、無限の恩恵に浴することができるでありましょう。この実現を期するために、われわれは万国の世論に訴え、わが国平和外交の尊い使命努力したいと思います。(拍手)ただに、わが国のみならず、全世界安全繁栄のために、本院は全員一致をもってこの決議案賛成せられることを望むものであります。(拍手
  6. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 本案に対し、討論通告がございます。順次発言を許します。竹中勝男君。    〔竹中勝男登壇拍手
  7. 竹中勝男

    竹中勝男君 日本社会党代表しまして、ただいま上程されました原水爆禁止に関する決議案に対し、賛成討論をいたします。  クリスマス島における英国水爆爆発実験は、この三月から向う五カ月間にわたって強行されようといたしております。今回の実験規模は、一九五四年三月アメリカビキニ環礁で行なったもの、五五年十二月ソ連国内で行なったもの一五六年五月アメリカがエニウェトックにおいて行なったものに次ぐ大規模なもので、水爆のほかに誘導弾弾頭を含む一連のメガトン級のものと言われ、英国としては最初本格的水爆実験であります。英国もまた世界水爆保有国として、その技術的実験回数を重ね、その軍事的利用準備を進めておることに注意されなければなりません。ここに、われわれがさらに注目しなければならないことは、今や原水爆実験は、単なる技術的実験としての段階から、漸次軍事演習的性格に変りつつあることであります。核兵器製造が開始され、その保有蓄積がなされるようになって以来、その実験回数はいよいよふえ、その軍事的利用可能性が増大しております。一九五六年十一月までに推定される相当大きな核兵器爆発実験回数は、アメリカが六十回、ソ連が十二回、英国が五回であります。  このように、核兵器爆発実験は、今日原水爆を所有し、製造し、蓄積している国々技術的進歩の宣伝という、政治的、軍事的意図をもって、それが続行的となり、競争的となり、すでに右にみたように、相当大規模実験がすでに八十回に及ぼうとしておるのであります。これほど大きな危険がほかにありましょうか。これほど深刻な不安が今日ほかにありましょうか。極言すれば、民族歴史も、人類文化も、その生命とともに滅び去ろうとする歴史の瞬間が近づきつつあるというべきでしょう。  原水爆実験からくる災害危険は、直接的地域的なものと、間接的時間的なものとがあります。直接的な危険は、最小限度に避けることが努力されております。すなわち、爆風や熱線、第一放射能線ガンマー線中間子線)の災害を、その地域から避ける努力がなされております。それにもかかわらず、ビキニ環礁における実験がもたらしたように、海水を汚染して、その海域の漁業を不可能にし、空気を汚染した放射能灰が、日本人漁夫生命を奪っておるのであります。第二の間接的災害の危険は、さらにおそるべき深刻な危険であります。今回の実験が、たとえ高空で行われたとしても、成層圏に達した放射能灰は時間をかけて地球大気を汚染します。その灰が北緯十度ないし二十度に達すると、秒速数十キロの西風に巻き込まれて急速に散布されると、気象学者が発表しております。昨年秋来朝した世界的遺伝学者であるボールデン博士は、人間が〇・〇一レントゲンだけ余分に放射能にさらされると、それが人間の死亡や、遺伝に一定の影響を与えると申しております。しかるに、日本気象研究所の調査によれば、一昨年は放射能が一カ月平均一ミリ・レントゲン、すなわち〇・〇一レントゲン以下であったものが、昨年十月には十五ミリ・レントゲンに増加しておることを指摘しております。同様のことが、アメリカのワシントンでも報告されております。国連科学委員会日本政府代表都築博士は、過日、衆議院科学技術特別委員会で、「過去二年間に行われた原水爆実験が、この比率で今後も続けられるとするならば、十年後には人体内のストロンチウム90はその許容限度になる」と述べております。  このように水爆実験の継続は、はかり知れない間接的な災害人類にもたらすことが明らかにされております。クリスマス水爆実験安全性を強調しておった英国自体世論も変って参りました。三月七日のマンチェスター・ガーディアンは、「人類への危害を軽視するな」と警告し、一カ月も沈黙を守っていたタイムズ紙も、七日の論説には、「日本抗議は正当である」と論じ、十二日のニューズクロニクル紙は、「水爆実験中止せよ、今からでもおそくない」と論じております。  最初唯一原爆被爆国民である日本人原水爆実験阻止に対する世論と熱心は、クリスマス実験を前にして、今やその極点に達しようとしております。すでに三千四百十七万の国民がこの禁止要望書に署名し、今回の実験抗議するための船団をすら出そうというような、突きつめた気持を持つに至っております。これを一がいに、かつての特攻精神や、いわゆるすわり込み戦術の一種だと考えてはならないと思います。これは、核兵器の最も恐るべき破壊力を身をもって体験した国民が、血を吐くような思いをもって、その実験使用の恐るべきことを世界に向って警告し、阻止しようとする、平和的国民人道的義務感盛り上りであると考えます。(拍手抗議船団というような方法については、異論もあり、慎重に検討を要します。しかし、本国会は、何らかの形で、この精神と熱情を生かす方法研究し、実現しなければならないと考えるものであります。  本年一月十六日、国連第一委員会における沢田代表原爆実験登録制に関する発言は、早急に原水爆実験中止することが不可能な現状において、現実的な措置として、原子兵器実験をあらかじめ国連のしかるべき機関に知告せしめよと提案したものであります。ソ連が現在通告なしに実験を行なっておる限り、この実験登録制提案は意味を持っておるとは考えますが、われわれ本国会において原水爆実験禁止決議をなしたものとしては、実際上その実験を認めることになるこの登録制提案には、矛盾があると考え、反対せざるを得ないのであります。(拍手)この沢田代表提案は成立しませんでした。この案を含む案を、将来、国連軍縮小委員会で検討しようというアメリカ案が可決されたのであります。このように、国連は今日なお、その総会においては、原水爆実験を停止し、ないしは禁止する何らの決議も動きもなしておりません。  そこで政府は、さらに国連を通じ、再三再四、実験禁止に関するさらに強力、有効な働きかけや提案努力すべきであると思います。(拍手)しかし、政府はただ国連を通してだけでなく、この際、原水爆実験禁止に対するあらゆる方策に力を尽すべきであります。  この際、原水爆禁止日本協議会提案しておる方式政府並びに国会が慎重に検討されることを望みます。その方式は、政府が英、米、ソ三国に対し、この三国が原水爆禁止協定を結ぶよう即時交渉を行うこと、この交渉中は、とりあえず三国とも実験禁止すること、こういう考え方であります。  総理が近くキリスト教会の長老を総理特使として英国に派遣されようとするその熱意に対して、われわれは賛同を惜しむものではありません。しかし八千万国民がひとしく実験禁止悲願に立ち上っておる今日、政府は広く国民の各階層から代表を英、米、ソの三国に派遣し、また原水爆実験禁止を三回も決議したわが国会からも代表を出して、人類破滅から守るための超党派的、国民的外交を強力に展開、推進することを切に望むものであります。(拍手)  岸総理は、通常国会終了アメリカを訪問されると伝えられております。この際、日本総理大臣岸信介氏に心から望みたいことは、日本独立と平和を守る自主的な権威ある外交交渉を進めていただきたいことであります。(拍手政府与党は、日本外交の基調は自由主義陣営諸国と協力する点にあると強調しておられます。これはしかし、中ソその他の国々とは、これ以上国交を深めないということではないと信じます。一国の外交は、その国の現実と将来について冷静かつ的確な判断によって決すべきでありまして、イデオロギーを中心に決定されるべきものではありません。アメリカ及び自由主義諸国とは、もとより親善関係を長く保たなければなりません。しかしながら。日本アジアの一角に位置しております。日本は、アジアアラブ諸国の動向とも歩調を合わせなければ、その進路を失う危険があります。日本関係の深い大国は、東のアメリカ、西の中国、北のソ連であります。わが国独立と平和を全うするためには、これらの三大国日本独立と安全を保障する関係になかったならば、たとえ憲法を改正して百万の軍隊を持ったとしても、日本の安全は保障されないのであります。(拍手)  そこで、まず、日米対象とする中ソ友好同盟条約と、中ソを対象とする日米安全保障条約とを相互に改廃し、日米日ソ、日中の多辺的な国交調整と不侵略友好条約を結ぶべきであります。このような中立的友好的関係を基礎としてのみ、最も力強く厳然たる態度をもって、原水爆保有する両陣営に向って、その実験禁止を要求し、国連における両陣営を動かして、原水爆実験使用禁止の動議を結実し得るものであると考えるものであります。(拍手)  最もおそるべき憂うべき核爆発の灼熱と死の灰のもとに生き残り、その中から立ち上ってきた民族として、日本国民こそ世界に向って核兵器の廃棄を叫び、差し迫ったクリスマス水爆実験をやめよと強く激しく要求するものであります。これこそ、今日、日本民族世界の他民族に負うところの義務であり、崇高な民族使命であると信ずるものであります。そのためには、この目的が達成されるまで、繰り返し繰り返しこの使命のために戦うことを国会国民の前に誓って、この原水爆禁止決議案賛成するものであります。(拍手)     —————————————
  8. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 石黒忠篤君。    [石黒忠篤登壇拍手
  9. 石黒忠篤

    石黒忠篤君 今やクリスマス島の上空において、英国水爆の大実験を行わんとする際に当りまして、ここに決議案が上程せられましたのであります。私は緑風会代表いたしまして、これに賛成をいたすものであります。(拍手)  原水爆実験は、核分裂または融合の力の平和利用ということに対しましては、何の必要もないことであります。のみならず、むしろ妨害になるということすら言われておるのであります。それゆえに本院は、決議案に述べてある通り原水爆に関しましては再度にわたって禁止決議をやっておるのであります。そうして国連並びに関係各国に対して、われわれ原爆被害唯一民族悲願を強く要望したのでありました。しかしながら、国連においても、これに対していまだ何ら有効な措置がとられておりません。また原水爆保有の米、英、ソいずれの国におきましても、依然としてその実験が続行され、繰り返されておるのは、まことに遺憾千万でございます。あるいは予告をもって公々然とこれをやり、あるいはまた口に、わが国禁止主張と全く同意見だなどと言いながら、その舌の根のかわかぬうちに、知らぬつらでもってどんどんとやっておる。(拍手)われわれ日本国民の意思の表明は何ら顧みられるところなく、実験はあっちでもこっちでもどかんどかんと引き続いてやられておるのであります。しこうして、その公式に確認されたものだけでも、二年を合計いたしますというと、数十回に及んでおると言われておるのであります。  しこうして実験実施理由は何であるかというと、その結果、東西陣営の力の均衡がもたらされ、冷戦が熱戦に転化することを回避するという論拠にほかならないのであります。今般のわが政府中止申し入れに対する英国政府の拒否の回答も、まさにこの理由に過ぎないのであります。  ロイターの通報によりますると、本月五日、英国マクミラン首相は下院において、労働党のゲイッケル氏に対して、「私は英国米ソに劣る立場に置くつもりはない。政府はむしろ核兵器一般兵器にわたる全軍備の削減に関する包括的協定を望んでいる」、こう答えております。こういう大国の思想が、やはりかの原水爆実験登録法案なるものが、国連で、軍縮小委員会の方にたな上げの形になってしまったという事実においても、よく表明せられておると思うのであります。しかしながら、私は原水爆実験禁止は、軍備の問題とは別に、広くかつ遠い全人類の問題といたして、独立に取り上げらるべきものであると確信いたしておるものであります。  原水爆の問題は、かくのごとくにして、主として軍備縮小国際均衡、ないしは各国間の世界平和というような観点からのみ論ぜられておるのでありまして、レシプロシティ、すなわち交互主義の論法の結論といたしまして、だれかが悟って、みずからこの循環を断ち切るということにあらざれば、いつまでたっても、どの国もそれをやめ得ないのであります。あるいはそれを意識しておりながら、やめようとしないのではないかとさえ思われるのであります。いずれにもせよ、三大国首脳者は、だれもそれをやめるという方向に、口先だけでなく、真剣に考えて、事実を進めておるということはないのであります。そうしてかれ一回、これ一回、実験を繰り返して行くうちに、人類滅亡に導くところの放射能物質が、そのたびごとに蓄積せられて行くのであります。そうして、それを今さらどうすることもできないということになってしまうのであります。今、学者は、過去二年間の比率で、今後十年原水爆実験が続けられれば、ストロンチウム90の集積は、人体に及ぼす許容限度に達すると認めておるのであります。そうしてわが国民は、知らず知らずの間に健康を害し、子孫の遺伝影響をするということをおそれておるのであります。まことに人類は死滅のふちに陥ってしまわんとしつつあるわけであります。(拍手)何ともおそろしいことであり、人類の将来に対して申しわけのないことであり、しこうして、これほど愚なることはないと考えるのであります。(拍手)  政府中止申し入れに対しまする英国の二月十二日付の回答には、「実験を行うことが、自由主義国のために英国政府に課せられたる義務である」、こう申しております。しかし、われわれは今日、水爆の結果成層圏に高く打ち上げられたストロンチウム90の沈下がだんだんとやって参ります十何年かの後の世において、自由主義国たる共産主義国たるとを問わず、全世界の全人類のために、この際、実験中止することこそ英国政府義務ではないかと考えるのであります一(拍手)  われわれ原爆被害国民は、どこどこまでも熱心に、しかしながら、冷静に、あくまで科学的に結果を観察をいたし、研究を進め、思考を練りまして、その結果をもって、世界政治家初め人々を説得をいたして、現代人が、全人類の永遠の繁栄のために取り返しのつかない罪を犯を犯すことなからしめるということに、あくまで努めなければならぬと考えております。(拍手)  ここに、この決議賛成をいたし、どこどこまでもこれを貫徹することに努力をいたしたいと考える次第でございます。(拍手)     —————————————
  10. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 千田正君。    〔千田正登壇拍手
  11. 千田正

    千田正君 ただいま議題となりました原水爆禁止に関する決議案に対しまして、心から、無所属クラブを代表いたしまして、賛成討論を行うものであります。(拍手)  第十九国会並びに第二十四国会におきまして、原子力国際管理並びに原子兵器禁止及び原水爆実験禁止に関する決議が当院におきまして行われましたが、ここに三たびこの提案をしなくてはならないというこの悲惨さを考えまして、われわれは、原子爆弾及び原水爆実験被害をこうむった世界唯一民族として、この叫びをさらにあげなければならないと思うのであります。  顧みますれば、昭和二十年、広島、長崎に投下された原子爆弾によってこうむった被害者が幾十万、しかも戦争が済んで十三年を経た今日におきましても、今もってその被害が絶えないのであります。先般、一昨年のローマの世界の医学大会におきましては、日本の広島、長崎に生まれてきた戦争後の子供たちが、約一三%不具、廃疾の子供が生れてきておる、さらに将来、日本のこうした被害地の子供たちの受ける影響というものは非常に大きいだろう。ある学者は、「世界のうちで、原子核の実験あるいは原子放射能によって滅び行く民族があるとするならば、それは一番先に日本であるだろう」ということを言うております。さらに昨年は、日本におきましても、この関係の医学会において、いろいろ貴重な材料が報告されております。  一方、こうした問題のみならず、さらに日本の水産業に及ぼすところの影響は、はかり知れないものがあります。昭和二十九年三月一日におきましては、あのビキニの環礁において、アメリカの、原水爆実験によってこうむった被害は、皆様がよく御承知の通りでありましょう。そのとき、その被害総額二十五億をアメリカに向って国家賠償すべしと要求したのであります。にもかかわらず、アメリカは、わずかに七億を日本に対して、賠償とは申さずに、見舞金として交付してきたにすぎなかったのであります。これに対しまして、本院におきまして、何がゆえに日本国民がかかる被害をこうむったのに対して、日本政府が堂々と国家賠償を請求しないかという諸君の追及に対しまして、当時の岡崎外相は、われわれは自由国家群の一員として協力しなければならないから、かようなことでがまんしなければならないと答弁しておりました。しかし今日、おそらく岸総理大臣兼外務大臣は、かような弱気なことであっては、日本九千万の国民の非願が達成されないと私は思います。(拍手)どうか、こういうことに対しましては、われわれ民族のこの大きな叫びを実現していただきたい。一体、今度のクリスマス島の実験通告に対しましては、再三政府英国に申し入れておるようでありますが、英国のみならず、またアメリカにおきましては、ネヴァダ並びにビキニにおいて、今後といえども実験を継続すると称しております。さらにソ連国内においては、われわれの知らないうちに実験が繰り返されておる。こうした大国実験によって、われわれだけが、何ゆえに日本民族だけが、その被害をこうむらなければならないのでしょうか。私は、ここに日本の九千万の国民世界に向って要求しなければならない平和の原則は、あくまで貫かなければならないと思うのであります。世界平和とは何か、大国国際連合において、世界平和と、そうして世界人道のために叫んでおりながら、一方においてはハンガリアの問題、あるいはエジプトの問題、彼ら大国がみずから平和を破っているのではありませんか。しかも今度の原水爆実験は、まさに世界人類の「死の行進」への準備行動としか、われわれは受け取れないのであります。この際、わが日本政府としましては、あくまでも日本民族がこの死の断崖に立たされておるということを直視して、国際連合並びに米、英、ソを初め世界各国に向って、世界唯一原水爆被害者であるところのわが国民の要求を、この原水爆禁止の声を、高らかに、そして日本民族悲願として、平和の大道をあくまで貫くことこそが、日本政府の与えられた最大にして最高の使命であるということを考えて、何とぞ原水爆禁止のこの決議案によって、政府が力強く世界平和への大道を歩まれんことを強く要望しまして、私の賛成討論を終りたいと思うのであります。(拍手
  12. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これにて討論通告者の発言は、全部終了いたしました。討論は、終局したものと認めます。  これより本案の採決をいたします。本案賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  13. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。(拍手)  ただいまの決議に対し、外務大臣から発言を求められました。岸外務大臣。    〔国務大臣岸信介君登壇拍手
  14. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) ただいまの御決議に対しまして、政府の所信を申し述べたいと存じます。  政府といたしましては、ただいま満場一致をもって成立いたしましたこの御決議趣旨を体して、強い国民要望である原水爆実験禁止の達成に、この上ともあらゆる努力をいたす所存でございます。(拍手)      —————・—————
  15. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第二、一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案趣旨説明)  本案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めます。松浦国務大臣。    〔国務大臣松浦周太郎君登壇拍手
  16. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) ただいま議題となりました一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨の説明をいたします。  この改正案は、昨年七月十六日付の人事院勧告の趣旨にかんがみ、一般職国家公務員の俸給制度の改正を行い、新制度への切りかえに当って必要な調整措置を講じようとするものであります。すなわち第一に、現行の五種類の俸給表を合理化して、職務の特性に応ずるように、行政職俸給表、税務職俸給表、公安職俸給表、海事職俸給表、教育職俸給表、研究職俸給表、医療職俸給表及び技能労務職俸給表の八種類十六表の俸給表を設けることといたしました。  第二に、現行の十五級の職務の級が、職務の段階の実態に即応しないものがありますので、各俸給表ごとに七等級を原則とする等級区分を設けることといたしました。  第三に、俸給表の各等級の俸給の幅を合理的なものとするとともに、等級ごとにこれに応ずる適正な昇給金額及び一年を標準とする昇給期間を定める等、昇給制度を改めることといたしました。  第四に、職員の俸給を現俸給額から新俸給額へ切りかえるに当っては、原則として現行の俸給表による一号上位の額を基礎として切りかえることとし、かつ切りかえ時期または切りかえ後の昇給期間を調整する等の措置を講ずることといたしました。なお、この切りかえ措置によって、職員の俸給額は、前年度に比し平均約六・二%の引き上げが行われる見込みであります。  この法律案は、以上の趣旨に基きまして、一般職の職員の給与に関する法律及びその他の関係法律の改正を行うとともに、必要な経過措置を規定いたし、本年四月一日から施行しようとするものであります。  母上が、一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案趣旨でございます。何とぞ御審議の上、すみやかに御議決あらんことをお願い申し上げます。(拍手
  17. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。永岡光治君。    〔永岡光治君登壇拍手
  18. 永岡光治

    ○永岡光治君 私は、ただいま趣旨説明のありました一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案に対しまして、日本社会党代表いたしまして、岸内閣総理大臣及び関係各大臣に対しまして、以下数点にわたって質問を行いたいと思うものであります。  質問を行いますに当りまして、まず政府の方にお願いをいたしておきたいと思うのでありますが、従来、この本会議でいろいろ質問をされましても、質問の全部に答えずに、端折った答弁ばかり行われておりますことは、きわめて遺憾でございますので、本日私が質問を申しますすべての点につきまして、漏れなく御答弁をいただきたいということと、岸内閣には、とんとん大臣とか、検討大臣とか、非常に多いようでございますが、どうか、よく検討してなどということのないように、はっきりした態度で御答弁をいただきたいと思うのでございます。  質問の第一は、給与体系についてでございます。改正案に示されております給与表を見て直感されますことは、身分に基く給与に著しい差別をつけた職階制が非常に強く打ち出されておるということでございます。すなわち行政職の俸給表に例をとりますならば、ただいまも説明がございましたが、七等級にこれを区分をいたしまして、一等級が次官、二等級が部局長、三等級が課長、四等級が課長補佐、五等級が係長、六等級が上級係員、七等級が下級係員、こういうようになっておるのであります。しかも、その七等級の最高が月給一万五千三百円でストップされておるのであります。六等級の最高が二万二千六百円と、こういうところにストップをされておるという、きわめて不合理な体系であるわけであります。従いまして、係長とか、あるいは課長とか、局長、そういう役付きにならなければ、非常に低いところの給与で頭打ちになってしまうというのが、今説明されましたところの政府の原案による体系であるわけであります。例を技能労務職にとってみますならば、初任給が五千百円でございます。六カ月たちまして、やっと百円の昇給というのであります。日給じゃないのであります。月給で百円というのであります。六カ月でわずかに百円しか上らないというのが、この給与表に示されておる内容であります。しかも、その後しばらくの間半年ごとに百円ずつ昇給をいたしまして、四年半勤続いたしましても、わずかに五千九百円という、こういうものになっておるのであります。さらに順次昇給いたしまして、月給が六千三百円になりますと、それ以降は九カ月の昇給期間に相なっております。また、月額六千七百円に達しますと、二百円の昇給をするのに一年間の期間を要する、一年間昇給をしないということになっておるわけであります。さらに、月給が七千五百円以上になりますると、一年半経過いたしまして、わずかに三百円の昇給、しかも、その最高が八千四百円で頭打ちになっておる、こういう俸給表であるわけであります。さらに言いかえますならば、これは五千百円で採用されたといたしまして、以後順調に昇給いたしましても、月給八千四百円もらうのに、何と驚くなかれ、十五年間の勤続をしなければならぬということになっておるのが、この俸給表であるわけであります。(拍手)さらにまた、運転手に例をとってみますならば、採用後二十四年九カ月、二十五年です、二十五年で月給がわずかに一万四千八百円というのが、この俸給表であるわけであります。実に驚くべき内容を持っておるのであります。  ところが、そういう下級職員に対しましては、きわめて冷酷な取扱いをいたしておりまする反面、係長以上の管理職の昇給はどういうことになっておるかと言いますと、非常に優遇をされておるのでありまして、例を行政職にとってみまするならば、係長の場合は、一年間で月額千円からの昇給をいたします。一年間で千円であります。また、課長クラスになりますると、一年間で月額千七百円の昇給ということになっております。部局長になりますと、一年間で月額二千二百円昇給と、こういうことになっておるわけであります。しかも初任給は、新制高校を卒業いたしまして五千八百円、昭和二十九年一月に改訂され、そのままの金額が据え置かれておるのであります。初任給の据え置きであります。三年三カ月を経過いたしました今日、物価を見ましても、あるいは民間の給与を見ましても、相当程度上っておるにもかかわらず、下級職員に対しましては、そのままくぎづけにするというきわめて冷酷きわまりないところの態度を持っておるのであります。さらに、先ほど申し上げました昇給期間で適用して参りますと、この新しい俸給表を適用されますと、三年後には、この金額を一文もつけ加えてもらわなくても、現行のままの俸給表で行って、現行の俸給表の方がよくなる。つまり三年後には、この新しい俸給表で参りますると悪くなってくる、こういう俸給表の内容を持っておるのであります。枯れススキのように、三年後にはずっと下ってくるわけです。枯れススキ俸給体系と私は呼ばなければならぬと思うのでありますが、こういう下級職員と上級職員との差別が実にひどくつけ加えられておるものでありまして、私が以上申し上げましたことで十分おわかりと思うのであります。しかしながら、私がこう申しますと、あるいは労働大臣は、次のように抗弁をするかもしれません。すなわち、下級職員は頭打ちになっても、さらに若干の昇給はできるように便法を考えておると、こういうように答弁するかもしらんと思うのであります。しかし、その場合におきましても、三年間ですよ、三年間たたないと一号俸しか上らないという、そういう便法であります。しかも、それはせいぜい一、二回でございましょう。問題にするほどのことではないのであります。  以上、要するに全国家公務員の七三%を下級職員が占めておるのでありますが、この下級職員は、長年勤続いたしましても遅々として昇給は進みません。しかも、その終着駅たるや、きわめて低い金額で押えられておるのでありまして、それにもかかわらず、上級の管理職になりますと、とんとん拍子に、しかも最短期間で高額の昇給をもって昇進をいたしまして、部局長クラスになりますと、月給六万四千円までもらえる、こういうことになっておるのであります。しかも、上級管理者にとりまして皮肉なことは、大学を卒業いたしまして、一最短コースでとんとん拍子で昇給して参りますので、大体今日の各官庁の状況を見ますならば、四十二、三歳で部局長になるでございましょう。四十六、七歳で次官になるでございましょう。公務員街道の終着に早く行ってしまいます。そうして、これからという働き盛りの年配になりまするのに、後進に道を開かなきゃならぬという理由のもとに、とうとう官を辞して民間の会社に売り込まなきゃならぬ、こういうばかげたことになっておるわけであります。私は、上級管理職の給与そのものが民間の場合に比較をいたしまして、必ずしも高いとは申し上げません。ただ、あまりにも下級職員との区別がひどいということでございます。このような私の追及に対しまして、あるいは松浦労働大臣は、それはまあ終戦以来の経済不安定の状態も昨今やっと安定して参りましたので、給与にも能率給を加味した方がよいと、こういうことをしばしば言っておりましたし、そういう意味で、あるいは弁解をするかもしらんと思うのであります。果して経済が安定したかどうか、これは疑問がありますし、私たちは本三十二年度の予算案を実行に移して参りますと、インフレを招来し、経済はより不安定なものになると考えておりますが、それはしばらくおくといたしましても、十分な給与が保障されているならばともかく、経済が安定したからといって能率給に切りかえる根拠にはならぬと考えるものであります。第一、能率給、能率給と口ぐせのように政府は申すのでありますが、一体能率給とは何かということであります。政府は管理職の職務にあるものが能率のいいものだと、このように考え違いをしておるのではないかと思うのであります。能率給というものは、その持ち場、持ち場での熟練度に応じまして支給されるのをいうものと私は考えておるものであります。従いまして、それは管理者であれ、あるいは一般の平の係員であれ、あるいはまた技能労務者であれ、差別をつける筋合いはないものと考えております。係長や課長や局長も国民にとっては大切な方々でありましょうが、同時にまた公務員全体の七三%を占めておりまする下級職員も、運転手、オペレーターも国民に奉仕しております大切な人なのであります。場合によっては、課長のかけがえはありましても、余人をもってかえることのできない大切な仕事をあずかっておる係員もたくさんあるのであります。工場長よりも月給をたくさんもらっておる職工さんもいるというのが、先進諸外国の例を見るまでもなく、わが国の民間におけるりっぱないい例ではございませんか。優秀な職工さんはその持ち前を生かすことによって、会社のためにもなり、社会のためにもなるのでありまして、その職工さんを課長にしなければ月給を上げることができないというばかげた俸給与体系が、今提案されております政府の改正案であるわけであります。(拍手)局長や課長のみが偉くて、下級職員はどうでもよいのだと、それは民主主義ではございません。この意味では、この政府案は人権を尊重しない非民主的なものと言われても、抗弁の余地はないものと思うのであります。(拍手)もっと言うならば、職階制を強化することによって、昔の封建主義、官僚主義、出世主義が強くなって参りまして、社会奉仕の精神、公僕精神が失われてしまうのであります。そしてしまいには、国民に奉仕しなければならないところの公務員が、逆に国民から奉仕を受けなければならない官僚横暴時代に返ることを私は一番おそれるものであります。(拍手)  さらに、このような職階制は、公務員の士気を沈滞さして勤労意欲を低下させる結果になるということであります。すなわち、下級職員には特に低い金額で最高額が押えられておりますだけに、将来に対する希望が全然持てないのであります。果してこれでは、岸総理が政策の一つに掲げておりました士気高揚になるか、私は絶対にならぬと思うのであります。私がこのように申しますと、あるいはまた松浦労働大臣が別の角度から抗弁をするかもしれません。すなわち、この改正案の職階制は人事院の勧告にあるから、その勧告を尊重して、こういうものを作ったのだと言うかもしれません。しかし、もし人事院の勧告の尊重という、そういうことに建前をとるならば、昭和二十九年五月に人事院から勧告をされました地域給の改訂は一体どうなっておるのでありますか、いまだに実施をしていないではありませんか。尊重はいたしていないのであります。あるいはこれに対しまして、あなたは、この地域給の改訂について検討しておるという答弁が必ず私はあろうかと思うのであります。その検討の際に、昭和二十九年の五月に人事院から勧告されたそれを尊重すると、はっきり答弁ができるかどうか、その点を私は労働大臣にはっきりお答えいただきたいと思うのであります。  さらにまた、昭和二十八年の十一月人事院から勧告をされました。それは公務員の退職年金制度を改正しろという勧告であります。これもいまだに尊重されておりません。実施をしていないのであります。また今、政府提案をいたしております、そのよりどころにしておりますこの人事院の今回の勧告につきましても、尊重されていない部分がたくさんあるわけであります。なるほど職階制は尊重したかもしれませんけれども、その他のものについては尊重いたしておりません。たとえば、これは非常に重要な問題でありますが、人事院はこの昇給期間につきましては、政府改正案に見えるように、最低一年にしなさい、こういうようなことは一言も触れていないのであります。現在の法律によりますと、昇給額が五百円未満までは六カ月ごとに昇給をさせなさい、こういうことになっております。五百円未満は六カ月ごとに昇給しなければならぬことになっております。先ほどの下級職員の場合を見ますと、六カ月は、わずかに百円であります。さらにまた一千四百円未満は九カ月ごとに昇給をさせなさいということになっております。昇給額が一回千四百円未満のものは九カ月ごとにどんどん昇給させなさい、こういう法律であります。千四百円以上のものは一年以上で昇給をさせなさい、こういうようになっておるのでありますが、現在この法律については人事院は何ら触れておりません。つまり現在の方がよろしいということになっておるのでありますが、そういう一言も触れていないことについては、勝手な解釈をして、人事院の勧告を、いうならば尊重せず自分勝手に、一年の昇給期間をきめておるわけであります。従いまして一年間の昇給期間になりますから、六カ月で昇給しておった方々にとっては、非常に損をすることになります。たとえば六カ月で五百円、一年間で一千円の昇給をするといたしますと、六カ月で五百円昇給すれば三千円の得を前取りすることになります。それを政府は、一年間にいたしておりますので、それだけ財源をかせげておるということになるわけでありますが、このほど一年間に昇給期間を延ばしましたために、公務員には、きわめて不利な状態が出てくるわけであります。政府のいう尊重は、私がただいま申し上げましたように、きわめて御都合主義の尊重でございまして、世間には通用いたしませんが、この点を労働大臣はどのように解釈をいたしておりますか、その御所見を承わりたいと思うのであります。  こう見て参りますと、この職階制を強引に実施させようとするその政府の意図の中には、何か別なものがあるのではないか。すなわち公務員制度を改悪をして、そういう意図のもとに公務員法を改悪しようというねらいがあるのではないか、こう考えられるのであります。特に技能労務職を分離いたしまして、新しく職種を設けましたことは、次の公務員法改正の機会におきまして、公務員からこの技能労務職をはずしてしまおう、そういう意図があるのではないかと思うのでありますが、そういう意思があるかどうか、この際、岸総理大臣にお尋ねをいたしておきたいと思います。  さて、以上るる申し述べましたが、今次、政府の改正案は、下級職員にとっていかに冷酷なものであるかはよくわかるのでありまして、従いまして公務員の諸君は、このような改正案を押しつけられるくらいならば、むしろ、一文の予算増額も要らないから、現行給与体系を据え置いてもらいたい、こういうことまで言っておるのであります。その心情は、まことに察するに余りあるものがあるのであります。事実、政府の改正案によれば、先ほど申し上げました通り、初年度は若干の昇給にはなるでありましょうが、全体の七三%を占めるところの下級職員のほとんどが、この枯れススキ給与体系によりまして改悪されてくる、悪くなってくる、こういうことになるのでありまして、公務員諸君があげて反対いたしておるのも、まことに無理からぬものがあると思うのであります。  一体政府は、何で公務員の喜ばないところの給与体系を押しつけるのか、私には全然了解がいかないのであります。給与予算の修正がどの程度できるかわかりませんが、とにかく給与予算を使うことになるのでありますが、その金をもらっても、ありがたくもない、まことに迷惑千万と、そっぽを向かれるような使い方をなぜしなければならぬのでありますか。金を使って、かえって公務員の勤労意欲を減退させるような、そんなばかなことを国民は絶対に納得しないものと思います。ごく少数の上級管理者は別でありましょうが、公務員の諸君があげて反対をいたしております真剣な問題であるわけであります。  二百四十万の官公労の職員、その家族を合わせまして六百万をこえる国民が、どうかこの給与体系はそのままにしておいてくれと、政府に強くお願いしておるのでありますが、それにもかかわらず、政府はわざわざ念の入った改悪法を作りまして金を使おうとしているのであります。それも、先ほど申し上げましたように、金を出して公務員が喜んでくれるならば別でありますが、喜ばれもしないのであります。そうしてそれが原因で、各省にわたって公務員は抗議のための職場大会を持っております。ところが政府は、それは国家公務員法違反だからと、こういう名のもとに警官を動員いたしまして、組合の諸君を引っくくって豚箱にぶち込む、あげくの果ては、内閣に春闘弾圧のための連絡会議を作ったり、官房長官の挑発的声明までも出しまして、いよいよ公務員の諸君に挑発をかけて参ります。公務員の諸君は、ますますそれに対して抵抗を強化して行くでありましょう。これに対しまして、政府は厳罰をもって臨もうといたしております。そうして各省内にまけるトラブルは、いよいよ激化して行く、これが今日の実情であるわけであります。一体、何のための給与改訂か、国民は了解に苦しむでありましょう。これこそまさに、政府がみずから進んで争議に火をつけて回っておるようなものであります。岸内閣には、一体労働政策はないのでありますか。岸内閣の労働政策というものは、トラブル・メーカーのための労働政策なのか。こうあなた方は批判されても、それに対する抗弁の余地がないというのが現状ではありませんか。(拍手岸総理は、おそらくこのようなばかげた内容を持つ職階制給与であるということをお知りにならずに、提案することに賛成したものと私は思うのであります。二百四十万公務員に重大なる影響を与える給与体系でありますので、どうか慎重な態度で臨んでもらいたいと思うのであります。一内閣の調査室の諸君で、この二百四十万に及ぼす重大なる影響をきめるという、なまやさしい問題ではないのであります。  そこで、ひとまず現行体系のままでベース改訂を行い、あとでじっくりと労使双方、あるいは労識経験者等、適当な代表者で構成される、たとえば給与審議会で給与体系を審議する用意はないか、岸総理の所見をお尋ねいたします。  次に質問の第二は、給与改訂の金額についてであります。国家公務員の給与ベース改訂は、遠く昭和二十九年一月にさかのぼるのであります。それ以来、三年三カ月の長きにわたりまして、そのまま放置されて参りました。昨年七月、人事院は給与改善という名のもとに、政府及び国会に勧告をなされたのでありますが、その資料によりましても、国家公務員の給与は、民間等の給与に比べまして二%低い、すなわち金額にいたしまして月額千九百二十円低いということになっておるのであります。一方では神武以来の好景気と言われ、笑いのとまらない病気がはやっておる、一方では国鉄運賃のどんどん引き上げが行われ、消費者米価も値上りしょうとしております、そういう今日であります。先般は、民間の労働者に対しまして千三百五十円、あるいは千三百円等の給与改訂が行われました。その際に、今日国家公務員の諸君が二千円アップの要求をするのは、けだし当然と言わなければなりません。(拍手)このようなみじめな国家公務員に対して、岸総理、あなたは真剣な気持でこの給与改訂を考える意思はないのでありますか。  政府はこれに対しまして、今回、月額千二百七十円の給与改訂を行うということになっております。さらに、一千億減税をもって穴埋めを行うのだと弁解するでありましょうけれども、しかし、今説明されました千二百七十円の内容は、実は本俸には、わずかに八百三十三円しかこの金が使われないのであります。あとはすべて手当になるのであります。また一千億減税で、あるいは大蔵大臣は、公務員のそのような給与の穴埋めをみるというかもしれませんけれども、この減税というものは、ひとり国家公務員のみに適用されるものではないのでありまして、官民を問わず、同様に取り扱われるのであります。のみならず、給与所得者は御承知の通り、その税金は、月々一文の滞納もなく、びしびしと俸給袋から差し引かれているというのが、今日の実情であるわけであります。さらにまた、公務員の大多数は、この減税に浴することは、きわめて薄いばかりでなく、減税にあずからない下級職員も相当数に上るのであります。その反面、前にも述べましたが、政府は国鉄運賃を引き上げようとしておりますし、ガソリン消費税も引き上げようとしております。近く消費者米価も引き上げる魂胆のようであります。これらが物価の値上りや、生計費の増大を招くことは言うまでもございません。池田大蔵大臣は、物価には影響しないと、のんびりしたことを本会議でも答弁をいたしておりますが、国鉄運賃が値上りするという声を聞いただけで、われわれの世帯の中には、木炭のごとき、すでに若干の値上りを示しているのが実情であります。公務員の二千円アップの要求は、当然過ぎるほど当然と思いますが、岸総理大臣、油田大蔵大臣及び松浦労働大臣のお考えを承わりたいと思うのであります。  質問の第三は、給与改訂の実施時期であります。政府は、御都合主義の人事院勧告尊重の態度であることは、前にも述べました通りでありますが、その勧告の資料は、昨年一月調査されたものでありますから、政府が人事院勧告を尊重するというのでありますれば、給与改訂の実施期日は、昨年一月にさかのぼるのが筋であります。百歩譲りましても、すみやかに実施しろと、こういう人事院が勧告をいたしました昨年七月か、おそくも本年一月には実施すべきものと思うのでありますが、労働大臣はどう考えるか、お答えを願いたいと思います。もっとも、大蔵大臣は金がないと言うかもしれませんが、しかし政府は、本三十一年度は、税の増収分が約一千億に上った、こういうことで、その中から産業投資特別資金といたしまして三百億、地方交付金に百億の支出を予定しているのであります。政府が公務員の待遇是正に誠意を持ち合わしておりますならば、本年度内実施も可能と思うが、池田大蔵大臣の理解ある御答弁をいただきたいと思うのであります。  岸内閣総理大臣は、かつて自民党の幹事長をいたしておりました。昨年十二月初め、官公労の代表とあなたは会見をいたしまして、公務員の切なる要望に応じまして、給与改訂の年度内実施に最善の努力をする、あなたはこういうことを申しました。私もその席上立ち会いました。あなたの誠意ある御答弁を非常に感謝をいたしておりました。今日あなたは、内閣総理大臣になりました。一体そのお約束をお果しになるつもりはないのか、岸総理の心境をお伺いいたしたいのであります。  質問の第四は、三公社五現業に関する給与改訂についてであります。それは昨年来の国鉄のダイヤ改正当時の労働強化等もありまして、国鉄の労使双方で給与改訂の妥結を見たのであります。ところが政府は、その実施につきまして横やりを入れまして、とうとうその実施を阻害して参りました。そのために争議が長引いた事実があるのであります。去る九日、国鉄、電電、郵政、専売等に調停案が示されましたが、組合は忍びがたきを忍んで、これを受諾するということを決定いたしましたにもかかわらず、政府はこれを拒否して、今日やっと仲裁委員会に持ち込むという、きわめて不誠意きわまりない態度を示して参りました。この事実を見ても明らかであります。政府がどのような抗弁をいたしましょうとも、争議を長引かしておるものは政府であります。紛争を長引かしているものは政府であるということを知らなければならないのであります。あげて政府の責任であるということを重ねて警告をいたしたいのであります。  最後に、くどいようではありますが、今回の国家公務員の給与法改正は、なかんずく給与体系の改悪は、その及ぼすところきわめて重大でありまして、官公労二百四十万の諸君があげて反対しておるものでありますので、円満なる事態の解決をはかるためにも、ひいては公務員の士気を阻喪させないためにも、現在の給与体系のもとにベース改訂を行われることを強く望んでやみません。従いまして、法案を出したから、もうどうしようもないのだということでなくて、あなたは、岸総理は、近く自民党の総裁にもなられるのでありますが、その岸内閣総理大臣は、公務員の代表とひざをつき合わせて、じっくりと本問題の解決に当る用意はないか、また、総裁でありますので、与野党の話し合いにも、あなたは責任の持てる方でありますので、与野党ともじっくり話し合って、この解決をはかる用意はないか、特に岸内閣総理大臣の所信をお尋ねいたしまして、私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣岸信介君登壇拍手
  19. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 永岡君の御質問に対してお答えをいたします。  今回の給与改正に関する法律は、言うまでもなく、人事院の勧告を尊重いたしまして、その趣旨である給与体系の改正と、これの切りかえに際する給与の改善という線に沿うて、これを立案をして、御審議を得ようとするものであります。内容的に、いろいろ御意見をまぜて御質問でございましたが、詳細な内容につきましては、委員会において十分に一つ御審議を願いたいと存じます。  なお、この案につきましては、これが公務員全体の士気にも関係する問題であり、またさらに、給与だけを上げて、給与体系というようなものについては、内閣に別に給与の審議会を作って、それで審議したらどうだという御意見でございましたが、人事院が勧告をいたしますに際しまして、その点については十分に検討をされたものであり、また、人事院制度というものの性質から見まして、私は、別にそういう審議会を置いて審議する意図は持っておりません。  なお、この改訂につきまして、従来、今永岡君の御質問の中にもありましたが、私が自民党の幹事長として、官公労の方、永岡君にも、当時親しくお目にかかって、年末給与の問題に関連しましてお話し合いをしたことがあるのでありますが、その際にも私は申し上げたように、われわれはできるだけ人事院勧告というものを尊重して、これを実現する。従来の年末等の給与が、何か予算上のからくりによってこれを始末するというやり方は適当でない、改正すべきものは法律を改正して、堂々と人事院勧告を実現するということに努めることが、人事院制度を、また、公務員制度の上からいって必要であるという考えを述べたのでありますが、私はその考え方に立って、今回の改正を出したわけであります。  ただ、本年一月からなぜ施行しないかという、その当時、私はなるべくこれの実現については、できれば年度内においても、これを実現したいということをたしか申し上げました。また、そういう意味でこの案を提案する場合にも検討したのでありますが、いろいろ財政上の問題や、あるいは財政法規に関係して、さかのぼって給与するというような事柄が、従来例のないことでありまして、これはとうていできないということで、できるだけ早い四月一日を目途として、これを改正するようにいたしたのであります。また、こういう問題につきましては、私はずいぶん、まだ公務員諸君にも内容等についての誤解があると思います。十分に一つそれを理解してもらって、正しい理解の上に立って、この人事院勧告に沿うところの給与改善が行われることが、私は公務員制度にも、またその実現の上から必要である。(「だから話し合うのだ」と呼ぶ者あり)従いまして、話し合うことを私は辞せません。のみならず、できるだけ、そういう機会もいいでしょうし、また、十分に委員会等において、この国会を通じて議論がかわされまして、これによって正しい理解が進めて行かれることも望ましいことであると思います。(拍手)    〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  20. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。二点について私から申し上げたいと思います。  一般行政職の給与と民間の給与は、お話の通り、大体一一%程度の差があることは人事院の認めるところで、われわれもそう思っております。しかし、公務員の中には、一般行政職よりも高い俸給をもらっている職種もありますので、大体平均して見ますると、人事院も六%程度の差と言っておられるのであります。従いまして、われわれは人事院の勧告の六%程度の引き上げを行なった次第でございまして、二千円引き上げる気持はございません。  第二の、本年度内、すなわち三十一年度内に俸給引き上げを実施すべきじゃないか、こういう御質問でございまするが、従来、同一年度内では手当その他でさかのぼった例もございまするが、過年度分につきまして個々の追加の払いをしたことはございませんし、財政法上も疑問がございます。(拍手)しかして政府におきましては、人事院の勧告が出ますと、鋭意検討を加えまして、三、四カ月を要したような次第でございます。こういう点から、来年度から改訂によって支給することにきめておるのであります。(拍手)    〔国務大臣松浦周太郎君登壇拍手
  21. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) お答え申し上げます。詳細に述べろということを前提に置いておられますから、ちょっと時間がかかりますけれども、詳細に述べたいと思います。  第一点は、職階制を強化して公務員を不利に陥れたのではないかということでございますが、そういうことはございません。今回の改正案は、現行の俸給制度と同様に職務給の考えで立案したものであります。従って、それのみならず、生活上の要素も十分加味しておりますから、両者の調和をはかったものであります。従って、今回の改正によって職員に特に不利益を与えたという点はございません。また御指摘になりましたように、多分そう答えるだろうとおっしゃったですが、私はそう答えます。この七等級にいたしましたけれども、各等級とも十五号俸になりましたならば、年限はかかりますけれども、順次昇給することにワク外に認めておる点は、以前の頭打ちよりもずっと変っておるということを御了承願いたいと思います。  地域給のことについて鋭い御指摘がございました。地域給の点については御指摘の通りでありまして、社会党とともに相談して、約百八十六億ということに直したのです。われわれが直して、政府提案しようと思っているせつなに解散されちゃったんです。だからやれなかった。そのあとに鳩山内閣ができた。ところがこのわが党の内閣になりましてから、今これをやろうと、改善しようとして検討中でございます。  六カ月を一年にいたしたのは、公務員制度調査会の答申によったものであります。一年にしたからといって、決して不利ではありません。六カ月のときよりも、かえって有利な計算になっております。  この技能職の問題について、いろいろ御指摘があったのですが、ところが技能職というと、技術を軽視して事務を尊重したのじゃないかというようなふうに聞えますから、その点、私はよく御納得のいくように申し上げておきたい。技能職とわれわれが言っておりますのは、運転手と交換手のことを言っております。それで先ほど御指摘になりましたような五千一百円が上らないじゃないかと、それは、交換手の初任給であります。でありますから運転手と交換手を技能職と言っております。そこで一般行政職の事務官系統と技術官系統につきましては、最高は七万二千円であって、初任給が五千八百円である。そのことは教育の場合におきましても、同様の七万二千円と、初任給は七千四百円であります。それから研究職、つまり技術者の研究職、これも最高七万二千円であって、初任給は五千八百円であります。またお医者さん、この医療職につきましても、技術の最高は七万二千円であって、初任給は一万八百円であります。このことを御了解願いたい。それは、皆さんが技能職とおっしゃるのは、看護婦と交換手があります。(「どうして違うんだ、あとと先と」と呼ぶ者あり)交換手の初任給が五千一百円であることは、前の俸給表も同じことなんです、前と変るわけじゃない、前と同じなんです。  上が厚くて下が薄いのじゃないかということの御指摘が、いろいろございました。その点は、現在の十五級と同じ率をもってやっております。全然変えたわけではございません。現在と同じであります。  内閣委員会決議によって、衆参両院の決議によって、ことし中に、一月からなぜやらなかったかという御指摘でございますが、これは人事院の勧告によったものでありまして、先ほど大蔵大臣から御答弁のあったことと同じでありますが、〇・一五の手当は、年末に払っております。しかしこの新俸給制度は、四月一日からやることが最も便利でありますから、四月一日からやったのであります。  三公社五現業の問題に対しまして、なぜ調停案をのまないかということでございますが、調停案は、企業体と労務団体との間に自主的協定によって行うものであって、調停案自体に政府が介入すべきものでないことは皆さん御存じの通りであります。なぜのまないかというと、これは一律に全部千二百円なんです。それに理由書がないのです。国民の尊い税金を払うのに、百五十億あるいは百七十億というような多額のものを払うのに、はっきりした理由書がないのに、これはやることはできませんから、目下その理由書の検討をいたしておりまして、そこでそれがまとまったものでありますから、きょうは午前中に国鉄の方では仲裁裁定を出しました。あとの二公社四現業とも、きょう中に仲裁裁定に対する申請をなすことになっておることを御了承願いたいと思います。(拍手
  22. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これにて質疑の通告者の発言は、終了いたしました。質疑は、終了したものと認めます。    〔笹森順造登壇拍手
  23. 笹森順造

    笹森順造君 ただいま議題となりました日本国とスイス間、及び日本国ブラジル合衆国間の航空協定に関する二件、並びに日本国とインド間、及び日本国ドイツ連邦共和国間の文化協定に関する二件、以上四件につきまして、外務委員会における審議の経過と結果を一括して御報告いたします。  まず、航空協定二件について申し上げます。政府の説明によりますと、スイスとの航空協定は一昨年五月二十四日に、またブラジルとの航空協定は、昨年十二月十四日に、それぞれ署名が行われたものでありまして、これら二つの協定の内容は、さきに締結されました日米、日英等の航空協定とほぼ同一のものであります。すなわち日本国と相手国の領域間に民間航空業務を開設し、業務運営開始の手続及び条件を定めるとともに、付表において当事国航空機の運行路線を定めたものでありまして、これら協定の締結により、わが国の航空企業は、相手国たるスイス及びブラジルと、双務的かつ平等の条件で相手国に乗り入れる権利を有することとなるわけであります。  委員会におきましては、「わが国国際路線の今後の拡張計画いかん、わが国国際航空企業に準備が十分できないうちに協定を結んでいる傾きはないか、特にスイスとの場合のごとく、相手国のみに先に乗り入れを許しているのは、将来、競争上わが方に不利とならないか」という質問、また、「ブラジル路線の開設は、わが国からの移民輸送に重点を置いたものか、ブラジルとの協定の路線には、将来、大阪への乗り入れを規定しているが、大阪空港、すなわち伊丹飛行場を国際空港とする準備がなされているか、米軍の管理下にある日本の空の管理を逐次わが方に回収して行く必要があると思うが、いかん」等の質問がございました。  次に、文化協定に関する二件は、伝統的に深い文化関係を有するわが国とインドとの間及びわが国ドイツ連邦共和国との間には、一昨年来、文化協定締結の交渉が進められて参りまして、インドとの協定は、昨年十月二十九日に、ドイツ連邦共和国との協定は、本年二月十四日に、それぞれ署名が行われたものであります。  この二協定は、さきに締結されました日仏、日伊、日タイ等の文化協定とおおむね同様の内容を有するものでありまして、わが国と相手国との間に伝統的に存在しております文化関係を一そう緊密なものとするため、出版物、映画、学者、学生の交換等を通じて、文化交流に努むべきことを規定しており、これらの協定の実施により、相手国との文化関係を通じて、両国民間の相互理解はさらに深められ、ひいては両国間の政治的、経済的友好関係の増進が期待されるとの政府の説明でありました。  委員会におきましては、「今後はいかなる国と文化協定の締結を予定しているか、国交の十分でない東南アジア諸国等とも協定を結ぶべきではないか」という点、また、「アジアにおけるインドの影響力にかんがみ、仏教を通ずる親善増進、その他バンドン会議でも強く要望されたアジア文化交流の機運に沿い、アジア全体につながるインドとの文化交流は、一そう具体的に推進すべきではないか」という点、「ソ連からは文化協定締結の申し出があったかどうか、また、東独との貿易、文化の交流に関する政府の見解いかん」という質問、「技術の交流を考慮すべきではないか、さらにまた、この種文化協定を空文に終らせないように、有効に実施するためには、予算措置が不十分であるから、予算面について、政府の今後の努力要望する」等の質疑及び要望が熱心に述べられましたが、詳細は会議録に譲ることといたします。  委員会は、三月十四日、以上四件の採決を行いましたところ、四件とも、全会一致をもって承認すべきものと議決いたした次第であります。  右、御報告いたします。(拍手
  24. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより四件の採決をいたします。  四件全部を問題に供します。委員長報告通り、四件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  25. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって四件は、全会一致をもって承認することに決しました。      —————・—————
  26. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第七、理科教育振興法の一部を改正する法律案内閣提出)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。文教委員長岡三郎君。    〔岡三郎君登壇拍手
  27. 岡三郎

    ○岡三郎君 ただいま議題となりました理科教育振興法の一部を改正する法律案につきまして、文教委員会における審議の経過と結果を御報告申し上げます。本法案は、現在わが国の急務であります科学水準の向上をはかるためには、初等教育及び中等教育における理科教育を一そう充実、振興させる必要があるという理由により、理科教育振興法に基き、従来、公立学校に対して行なったと同様に、私立学校に対しましても、理科教育設備等の充実のため、国が補助を行うことの改正規定を加えんとするものであります。  委員会の審議の過程におきましての質疑応答の主要点を申し上げますと、まず、矢嶋委員からの、「応急最低基準に到達するには、幾年を要し、その額は幾ばくであるか」との質問に対しましては、「公立学校については、国庫補助約六十億円を要し、約十三年、私立学校については十七億円を要する。何年というようなゆうちょうなことでなく、次の機会には、ぜひ十分な予算を取り、すみやかに充実したい」という答弁がありました。また、「理科教育にたずさわる助手の不足並びにその身分、待遇等について」の質問に対しましては、「その充実をはかるため十分検討したい」との答弁でありました。次に、湯山委員からの「補助金配分について」の質問に対しまして、「現在は、奨励金の程度を出ないから、将来は、一校当りの補助金も高め、補助金の交付を受ける学校数をも増加しなければ間に合わないと思う」旨の答弁がなされました。「都道府県知事の管轄下にある私立学校と教育委員会の管轄を受ける公立学校との間に、補助金等についても、ややもすれば差別的取扱いがあるのは遺憾であるが」との安部委員の質問に対しましては、「今後そのようなことのないよう注意する」旨の答弁がありました。高田委員からの、「私学財政の貧困等の理由で、二分の一の国庫補助を受けられない例もあり、それが学校差の素因となるのではないか」との質問に対しましては、「外部の人々の声をもよく聞き、最善の努力を試みる」旨の答弁が、文部大臣からなされました。「教員の養成計画、理科教育の内容いかん」との加賀山委員の質問に対しましては、「理科教育審議会からの建議も出ており、この際、検討中である」との答弁がありました。  かく討論に入り、高田委員から賛成意見の開陳がなされましたが、その詳細については、会議録に譲ることにいたします。  次いで、矢嶋委員より、次のごとき付帯決議を付すべき旨の提案がありました。付帯決議案を朗読いたします。   本委員会は、理科教育振興法の一部を改正する法律案を可決するに際し、次の付帯決議を付する。   政府は次の事項の実施に努めるべきである。   一、理科教育振興のための設備基準を可及的すみやかに高めるべく、省令を改めるとともに、設備充実の経費について、強力な予算措置を講ずること。   二、理科教育における実験、実習に従事する助手の定数を確保するとともに、その待遇を改善するためすみやかに適切な措置を講ずること。   三、理科教育振興のため、教員の養成計画を樹立し、特に現職教員の再教育に意を注ぐこと。以上であります。  続いて採決の結果、本法律案は、全会一致をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。なお、付帯決議につきましても、全会一致をもって可決いたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  28. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  29. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。  本日の議事日程は、これにて終了いたしました。  次会の議事日程は、決定次第公報をもって御通知いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後零時四十一分散会      —————・————— ○本日の会議に付した案件  一、日程第一 原水爆禁止に関する決議案  一、日程第二 一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案趣旨説明)  一、日程第三 航空業務に関する日本国とスイスとの間の協定の締結について承認を求めるの件  一、日程第四 日本国ブラジル合衆国との間の航空運送協定批准について承認を求めるの件  一、日程第五 日本国ドイツ連邦共和国との問の文化協定批准について承認を求めるの件  一、日程第六 日本国とインドとの間の文化協定批准について承認を求めるの件  一、日程第七 理科教育振興法の一部を改正する法律案