○永岡光治君 私は、ただいま
趣旨説明のありました
一般職の職員の給与に関する
法律の一部を改正する
法律案に対しまして、
日本社会党を
代表いたしまして、岸内閣
総理大臣及び
関係各大臣に対しまして、以下数点にわたって質問を行いたいと思うものであります。
質問を行いますに当りまして、まず
政府の方にお願いをいたしておきたいと思うのでありますが、従来、この本会議でいろいろ質問をされましても、質問の全部に答えずに、端折った答弁ばかり行われておりますことは、きわめて遺憾でございますので、本日私が質問を申しますすべての点につきまして、漏れなく御答弁をいただきたいということと、岸内閣には、とんとん大臣とか、検討大臣とか、非常に多いようでございますが、どうか、よく検討してなどということのないように、はっきりした態度で御答弁をいただきたいと思うのでございます。
質問の第一は、給与体系についてでございます。改正案に示されております給与表を見て直感されますことは、身分に基く給与に著しい差別をつけた職階制が非常に強く打ち出されておるということでございます。すなわち行政職の俸給表に例をとりますならば、ただいまも説明がございましたが、七等級にこれを区分をいたしまして、一等級が次官、二等級が部局長、三等級が課長、四等級が課長補佐、五等級が係長、六等級が上級係員、七等級が下級係員、こういうようになっておるのであります。しかも、その七等級の最高が月給一万五千三百円でストップされておるのであります。六等級の最高が二万二千六百円と、こういうところにストップをされておるという、きわめて不合理な体系であるわけであります。従いまして、係長とか、あるいは課長とか、局長、そういう役付きにならなければ、非常に低いところの給与で頭打ちになってしまうというのが、今説明されましたところの
政府の原案による体系であるわけであります。例を技能労務職にとってみますならば、初任給が五千百円でございます。六カ月たちまして、やっと百円の昇給というのであります。日給じゃないのであります。月給で百円というのであります。六カ月でわずかに百円しか上らないというのが、この給与表に示されておる内容であります。しかも、その後しばらくの間半年ごとに百円ずつ昇給をいたしまして、四年半勤続いたしましても、わずかに五千九百円という、こういうものになっておるのであります。さらに順次昇給いたしまして、月給が六千三百円になりますと、それ以降は九カ月の昇給期間に相なっております。また、月額六千七百円に達しますと、二百円の昇給をするのに一年間の期間を要する、一年間昇給をしないということになっておるわけであります。さらに、月給が七千五百円以上になりますると、一年半経過いたしまして、わずかに三百円の昇給、しかも、その最高が八千四百円で頭打ちになっておる、こういう俸給表であるわけであります。さらに言いかえますならば、これは五千百円で採用されたといたしまして、以後順調に昇給いたしましても、月給八千四百円もらうのに、何と驚くなかれ、十五年間の勤続をしなければならぬということになっておるのが、この俸給表であるわけであります。(
拍手)さらにまた、運転手に例をとってみますならば、採用後二十四年九カ月、二十五年です、二十五年で月給がわずかに一万四千八百円というのが、この俸給表であるわけであります。実に驚くべき内容を持っておるのであります。
ところが、そういう下級職員に対しましては、きわめて冷酷な取扱いをいたしておりまする反面、係長以上の管理職の昇給はどういうことになっておるかと言いますと、非常に優遇をされておるのでありまして、例を行政職にとってみまするならば、係長の場合は、一年間で月額千円からの昇給をいたします。一年間で千円であります。また、課長クラスになりますると、一年間で月額千七百円の昇給ということになっております。部局長になりますと、一年間で月額二千二百円昇給と、こういうことになっておるわけであります。しかも初任給は、新制高校を卒業いたしまして五千八百円、
昭和二十九年一月に改訂され、そのままの金額が据え置かれておるのであります。初任給の据え置きであります。三年三カ月を経過いたしました今日、物価を見ましても、あるいは民間の給与を見ましても、相当程度上っておるにもかかわらず、下級職員に対しましては、そのままくぎづけにするというきわめて冷酷きわまりないところの態度を持っておるのであります。さらに、先ほど申し上げました昇給期間で適用して参りますと、この新しい俸給表を適用されますと、三年後には、この金額を一文もつけ加えてもらわなくても、現行のままの俸給表で行って、現行の俸給表の方がよくなる。つまり三年後には、この新しい俸給表で参りますると悪くなってくる、こういう俸給表の内容を持っておるのであります。枯れススキのように、三年後にはずっと下ってくるわけです。枯れススキ俸給体系と私は呼ばなければならぬと思うのでありますが、こういう下級職員と上級職員との差別が実にひどくつけ加えられておるものでありまして、私が以上申し上げましたことで十分おわかりと思うのであります。しかしながら、私がこう申しますと、あるいは労働大臣は、次のように抗弁をするかもしれません。すなわち、下級職員は頭打ちになっても、さらに若干の昇給はできるように便法を考えておると、こういうように答弁するかもしらんと思うのであります。しかし、その場合におきましても、三年間ですよ、三年間たたないと一号俸しか上らないという、そういう便法であります。しかも、それはせいぜい一、二回でございましょう。問題にするほどのことではないのであります。
以上、要するに全国家公務員の七三%を下級職員が占めておるのでありますが、この下級職員は、長年勤続いたしましても遅々として昇給は進みません。しかも、その終着駅たるや、きわめて低い金額で押えられておるのでありまして、それにもかかわらず、上級の管理職になりますと、とんとん拍子に、しかも最短期間で高額の昇給をもって昇進をいたしまして、部局長クラスになりますと、月給六万四千円までもらえる、こういうことになっておるのであります。しかも、上級管理者にとりまして皮肉なことは、大学を卒業いたしまして、一最短コースでとんとん拍子で昇給して参りますので、大体今日の各官庁の状況を見ますならば、四十二、三歳で部局長になるでございましょう。四十六、七歳で次官になるでございましょう。公務員街道の終着に早く行ってしまいます。そうして、これからという働き盛りの年配になりまするのに、後進に道を開かなきゃならぬという
理由のもとに、とうとう官を辞して民間の会社に売り込まなきゃならぬ、こういうばかげたことになっておるわけであります。私は、上級管理職の給与そのものが民間の場合に比較をいたしまして、必ずしも高いとは申し上げません。ただ、あまりにも下級職員との区別がひどいということでございます。このような私の追及に対しまして、あるいは松浦労働大臣は、それはまあ終戦以来の経済不安定の状態も昨今やっと安定して参りましたので、給与にも能率給を加味した方がよいと、こういうことをしばしば言っておりましたし、そういう意味で、あるいは弁解をするかもしらんと思うのであります。果して経済が安定したかどうか、これは疑問がありますし、私たちは本三十二年度の予算案を実行に移して参りますと、インフレを招来し、経済はより不安定なものになると考えておりますが、それはしばらくおくといたしましても、十分な給与が保障されているならばとも
かく、経済が安定したからといって能率給に切りかえる根拠にはならぬと考えるものであります。第一、能率給、能率給と口ぐせのように
政府は申すのでありますが、一体能率給とは何かということであります。
政府は管理職の職務にあるものが能率のいいものだと、このように考え違いをしておるのではないかと思うのであります。能率給というものは、その持ち場、持ち場での熟練度に応じまして支給されるのをいうものと私は考えておるものであります。従いまして、それは管理者であれ、あるいは一般の平の係員であれ、あるいはまた技能労務者であれ、差別をつける筋合いはないものと考えております。係長や課長や局長も
国民にとっては大切な方々でありましょうが、同時にまた公務員全体の七三%を占めておりまする下級職員も、運転手、オペレーターも
国民に奉仕しております大切な人なのであります。場合によっては、課長のかけがえはありましても、余人をもってかえることのできない大切な仕事をあずかっておる係員もたくさんあるのであります。工場長よりも月給をたくさんもらっておる職工さんもいるというのが、先進諸外国の例を見るまでもなく、
わが国の民間におけるりっぱないい例ではございませんか。優秀な職工さんはその持ち前を生かすことによって、会社のためにもなり、社会のためにもなるのでありまして、その職工さんを課長にしなければ月給を上げることができないというばかげた俸給与体系が、今
提案されております
政府の改正案であるわけであります。(
拍手)局長や課長のみが偉くて、下級職員はどうでもよいのだと、それは民主主義ではございません。この意味では、この
政府案は人権を尊重しない非民主的なものと言われても、抗弁の余地はないものと思うのであります。(
拍手)もっと言うならば、職階制を強化することによって、昔の封建主義、官僚主義、出世主義が強くなって参りまして、社会奉仕の
精神、公僕
精神が失われてしまうのであります。そしてしまいには、
国民に奉仕しなければならないところの公務員が、逆に
国民から奉仕を受けなければならない官僚横暴時代に返ることを私は一番おそれるものであります。(
拍手)
さらに、このような職階制は、公務員の士気を沈滞さして勤労意欲を低下させる結果になるということであります。すなわち、下級職員には特に低い金額で最高額が押えられておりますだけに、将来に対する希望が全然持てないのであります。果してこれでは、
岸総理が政策の
一つに掲げておりました士気高揚になるか、私は絶対にならぬと思うのであります。私がこのように申しますと、あるいはまた松浦労働大臣が別の角度から抗弁をするかもしれません。すなわち、この改正案の職階制は人事院の勧告にあるから、その勧告を尊重して、こういうものを作ったのだと言うかもしれません。しかし、もし人事院の勧告の尊重という、そういうことに建前をとるならば、
昭和二十九年五月に人事院から勧告をされました地域給の改訂は一体どうなっておるのでありますか、いまだに実施をしていないではありませんか。尊重はいたしていないのであります。あるいはこれに対しまして、あなたは、この地域給の改訂について検討しておるという答弁が必ず私はあろうかと思うのであります。その検討の際に、
昭和二十九年の五月に人事院から勧告されたそれを尊重すると、はっきり答弁ができるかどうか、その点を私は労働大臣にはっきりお答えいただきたいと思うのであります。
さらにまた、
昭和二十八年の十一月人事院から勧告をされました。それは公務員の退職年金制度を改正しろという勧告であります。これもいまだに尊重されておりません。実施をしていないのであります。また今、
政府が
提案をいたしております、そのよりどころにしておりますこの人事院の今回の勧告につきましても、尊重されていない部分がたくさんあるわけであります。なるほど職階制は尊重したかもしれませんけれども、その他のものについては尊重いたしておりません。たとえば、これは非常に重要な問題でありますが、人事院はこの昇給期間につきましては、
政府改正案に見えるように、最低一年にしなさい、こういうようなことは一言も触れていないのであります。現在の
法律によりますと、昇給額が五百円未満までは六カ月ごとに昇給をさせなさい、こういうことになっております。五百円未満は六カ月ごとに昇給しなければならぬことになっております。先ほどの下級職員の場合を見ますと、六カ月は、わずかに百円であります。さらにまた一千四百円未満は九カ月ごとに昇給をさせなさいということになっております。昇給額が一回千四百円未満のものは九カ月ごとにどんどん昇給させなさい、こういう
法律であります。千四百円以上のものは一年以上で昇給をさせなさい、こういうようになっておるのでありますが、現在この
法律については人事院は何ら触れておりません。つまり現在の方がよろしいということになっておるのでありますが、そういう一言も触れていないことについては、勝手な解釈をして、人事院の勧告を、いうならば尊重せず自分勝手に、一年の昇給期間をきめておるわけであります。従いまして一年間の昇給期間になりますから、六カ月で昇給しておった方々にとっては、非常に損をすることになります。たとえば六カ月で五百円、一年間で一千円の昇給をするといたしますと、六カ月で五百円昇給すれば三千円の得を前取りすることになります。それを
政府は、一年間にいたしておりますので、それだけ財源をかせげておるということになるわけでありますが、このほど一年間に昇給期間を延ばしましたために、公務員には、きわめて不利な状態が出てくるわけであります。
政府のいう尊重は、私がただいま申し上げましたように、きわめて御都合主義の尊重でございまして、世間には通用いたしませんが、この点を労働大臣はどのように解釈をいたしておりますか、その御所見を承わりたいと思うのであります。
こう見て参りますと、この職階制を強引に実施させようとするその
政府の意図の中には、何か別なものがあるのではないか。すなわち公務員制度を改悪をして、そういう意図のもとに公務員法を改悪しようというねらいがあるのではないか、こう考えられるのであります。特に技能労務職を分離いたしまして、新しく職種を設けましたことは、次の公務員法改正の機会におきまして、公務員からこの技能労務職をはずしてしまおう、そういう意図があるのではないかと思うのでありますが、そういう意思があるかどうか、この際、
岸総理大臣にお尋ねをいたしておきたいと
思います。
さて、以上るる申し述べましたが、今次、
政府の改正案は、下級職員にとっていかに冷酷なものであるかはよくわかるのでありまして、従いまして公務員の諸君は、このような改正案を押しつけられるくらいならば、むしろ、一文の予算増額も要らないから、現行給与体系を据え置いてもらいたい、こういうことまで言っておるのであります。その心情は、まことに察するに余りあるものがあるのであります。事実、
政府の改正案によれば、先ほど申し上げました
通り、初年度は若干の昇給にはなるでありましょうが、全体の七三%を占めるところの下級職員のほとんどが、この枯れススキ給与体系によりまして改悪されてくる、悪くなってくる、こういうことになるのでありまして、公務員諸君があげて反対いたしておるのも、まことに無理からぬものがあると思うのであります。
一体
政府は、何で公務員の喜ばないところの給与体系を押しつけるのか、私には全然了解がいかないのであります。給与予算の修正がどの程度できるかわかりませんが、とに
かく給与予算を使うことになるのでありますが、その金をもらっても、ありがたくもない、まことに迷惑千万と、そっぽを向かれるような使い方をなぜしなければならぬのでありますか。金を使って、かえって公務員の勤労意欲を減退させるような、そんなばかなことを
国民は絶対に納得しないものと
思います。ごく少数の上級管理者は別でありましょうが、公務員の諸君があげて反対をいたしております真剣な問題であるわけであります。
二百四十万の官公労の職員、その家族を合わせまして六百万をこえる
国民が、どうかこの給与体系はそのままにしておいてくれと、
政府に強くお願いしておるのでありますが、それにもかかわらず、
政府はわざわざ念の入った改悪法を作りまして金を使おうとしているのであります。それも、先ほど申し上げましたように、金を出して公務員が喜んでくれるならば別でありますが、喜ばれもしないのであります。そうしてそれが原因で、各省にわたって公務員は
抗議のための職場大会を持っております。ところが
政府は、それは国家公務員法違反だからと、こういう名のもとに警官を動員いたしまして、組合の諸君を引っくくって豚箱にぶち込む、あげくの果ては、内閣に春闘弾圧のための連絡会議を作ったり、官房長官の挑発的声明までも出しまして、いよいよ公務員の諸君に挑発をかけて参ります。公務員の諸君は、ますますそれに対して抵抗を強化して行くでありましょう。これに対しまして、
政府は厳罰をもって臨もうといたしております。そうして各省内にまけるトラブルは、いよいよ激化して行く、これが今日の実情であるわけであります。一体、何のための給与改訂か、
国民は了解に苦しむでありましょう。これこそまさに、
政府がみずから進んで争議に火をつけて回っておるようなものであります。岸内閣には、一体労働政策はないのでありますか。岸内閣の労働政策というものは、トラブル・メーカーのための労働政策なのか。こうあなた方は批判されても、それに対する抗弁の余地がないというのが現状ではありませんか。(
拍手)
岸総理は、おそらくこのようなばかげた内容を持つ職階制給与であるということをお知りにならずに、
提案することに
賛成したものと私は思うのであります。二百四十万公務員に重大なる
影響を与える給与体系でありますので、どうか慎重な態度で臨んでもらいたいと思うのであります。一内閣の調査室の諸君で、この二百四十万に及ぼす重大なる
影響をきめるという、なまやさしい問題ではないのであります。
そこで、ひとまず現行体系のままでベース改訂を行い、あとでじっくりと労使双方、あるいは労識経験者等、適当な
代表者で構成される、たとえば給与審議会で給与体系を審議する用意はないか、
岸総理の所見をお尋ねいたします。
次に質問の第二は、給与改訂の金額についてであります。国家公務員の給与ベース改訂は、遠く
昭和二十九年一月にさかのぼるのであります。それ以来、三年三カ月の長きにわたりまして、そのまま放置されて参りました。昨年七月、人事院は給与改善という名のもとに、
政府及び
国会に勧告をなされたのでありますが、その資料によりましても、国家公務員の給与は、民間等の給与に比べまして二%低い、すなわち金額にいたしまして月額千九百二十円低いということになっておるのであります。一方では神武以来の好景気と言われ、笑いのとまらない病気がはやっておる、一方では国鉄運賃のどんどん引き上げが行われ、消費者米価も値上りしょうとしております、そういう今日であります。先般は、民間の労働者に対しまして千三百五十円、あるいは千三百円等の給与改訂が行われました。その際に、今日国家公務員の諸君が二千円アップの要求をするのは、けだし当然と言わなければなりません。(
拍手)このようなみじめな国家公務員に対して、
岸総理、あなたは真剣な気持でこの給与改訂を考える意思はないのでありますか。
政府はこれに対しまして、今回、月額千二百七十円の給与改訂を行うということになっております。さらに、一千億減税をもって穴埋めを行うのだと弁解するでありましょうけれども、しかし、今説明されました千二百七十円の内容は、実は本俸には、わずかに八百三十三円しかこの金が使われないのであります。あとはすべて手当になるのであります。また一千億減税で、あるいは大蔵大臣は、公務員のそのような給与の穴埋めをみるというかもしれませんけれども、この減税というものは、ひとり国家公務員のみに適用されるものではないのでありまして、官民を問わず、同様に取り扱われるのであります。のみならず、給与所得者は御承知の
通り、その税金は、月々一文の滞納もなく、びしびしと俸給袋から差し引かれているというのが、今日の実情であるわけであります。さらにまた、公務員の大多数は、この減税に浴することは、きわめて薄いばかりでなく、減税にあずからない下級職員も相当数に上るのであります。その反面、前にも述べましたが、
政府は国鉄運賃を引き上げようとしておりますし、ガソリン消費税も引き上げようとしております。近く消費者米価も引き上げる魂胆のようであります。これらが物価の値上りや、生計費の増大を招くことは言うまでもございません。池田大蔵大臣は、物価には
影響しないと、のんびりしたことを本会議でも答弁をいたしておりますが、国鉄運賃が値上りするという声を聞いただけで、われわれの世帯の中には、木炭のごとき、すでに若干の値上りを示しているのが実情であります。公務員の二千円アップの要求は、当然過ぎるほど当然と
思いますが、
岸総理大臣、油田大蔵大臣及び松浦労働大臣のお考えを承わりたいと思うのであります。
質問の第三は、給与改訂の実施時期であります。
政府は、御都合主義の人事院勧告尊重の態度であることは、前にも述べました
通りでありますが、その勧告の資料は、昨年一月調査されたものでありますから、
政府が人事院勧告を尊重するというのでありますれば、給与改訂の実施期日は、昨年一月にさかのぼるのが筋であります。百歩譲りましても、すみやかに実施しろと、こういう人事院が勧告をいたしました昨年七月か、おそくも本年一月には実施すべきものと思うのでありますが、労働大臣はどう考えるか、お答えを願いたいと
思います。もっとも、大蔵大臣は金がないと言うかもしれませんが、しかし
政府は、本三十一年度は、税の増収分が約一千億に上った、こういうことで、その中から産業投資特別資金といたしまして三百億、地方交付金に百億の支出を予定しているのであります。
政府が公務員の待遇是正に誠意を持ち合わしておりますならば、本年度内実施も可能と思うが、池田大蔵大臣の理解ある御答弁をいただきたいと思うのであります。
岸内閣
総理大臣は、かつて自民党の幹事長をいたしておりました。昨年十二月初め、官公労の
代表とあなたは会見をいたしまして、公務員の切なる
要望に応じまして、給与改訂の年度内実施に最善の
努力をする、あなたはこういうことを申しました。私もその席上立ち会いました。あなたの誠意ある御答弁を非常に感謝をいたしておりました。今日あなたは、内閣
総理大臣になりました。一体そのお約束をお果しになるつもりはないのか、
岸総理の心境をお伺いいたしたいのであります。
質問の第四は、三公社五現業に関する給与改訂についてであります。それは昨年来の国鉄のダイヤ改正当時の労働強化等もありまして、国鉄の労使双方で給与改訂の妥結を見たのであります。ところが
政府は、その実施につきまして横やりを入れまして、とうとうその実施を阻害して参りました。そのために争議が長引いた事実があるのであります。去る九日、国鉄、電電、郵政、専売等に調停案が示されましたが、組合は忍びがたきを忍んで、これを受諾するということを決定いたしましたにもかかわらず、
政府はこれを拒否して、今日やっと仲裁
委員会に持ち込むという、きわめて不誠意きわまりない態度を示して参りました。この事実を見ても明らかであります。
政府がどのような抗弁をいたしましょうとも、争議を長引かしておるものは
政府であります。紛争を長引かしているものは
政府であるということを知らなければならないのであります。あげて
政府の責任であるということを重ねて
警告をいたしたいのであります。
最後に、くどいようではありますが、今回の国家公務員の給与法改正は、なかんずく給与体系の改悪は、その及ぼすところきわめて重大でありまして、官公労二百四十万の諸君があげて反対しておるものでありますので、円満なる事態の解決をはかるためにも、ひいては公務員の士気を阻喪させないためにも、現在の給与体系のもとにベース改訂を行われることを強く望んでやみません。従いまして、法案を出したから、もうどうしようもないのだということでなくて、あなたは、
岸総理は、近く自民党の総裁にもなられるのでありますが、その岸内閣
総理大臣は、公務員の
代表とひざをつき合わせて、じっくりと本問題の解決に当る用意はないか、また、総裁でありますので、与野党の話し合いにも、あなたは責任の持てる方でありますので、与野党ともじっくり話し合って、この解決をはかる用意はないか、特に岸内閣
総理大臣の所信をお尋ねいたしまして、私の質問を終ります。(
拍手)
〔国務大臣岸信介君
登壇、
拍手〕