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1957-02-15 第26回国会 参議院 本会議 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月十五日(金曜日)    午前十時三十一分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第六号   昭和三十二年二月十五日    午前十時開議  第一 所得税法の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案趣旨説明)(前会の続)  第二 昭和三十一年産米穀についての所得税臨時特例に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第三 租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、所得税法の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案趣旨説明)(前会の続)  一昨日の趣旨説明に対し、これより質疑を許します。平林剛君。    〔平林剛登壇拍手
  4. 平林剛

    平林剛君 私は日本社会党を代表して、二月十三日、この本会議において提案説明のあった所得税法の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案に対し、その問題点を指摘しつつ、岸総理大臣臨時代理池田大蔵大臣に対し、責任ある答弁を求めようとするものであります。  まず、私が政府提案減税政策に関し、質疑を試みる基本的な考えを明らかにしておくことといたします。私は、政府施政方針演説においても、国民に対する宣伝においても、いわゆる一千億減税と一千億の積極財政を表看板にして、これは仁徳天皇以来の大減税である、これだけの減税は、いわば明治維新以来初めてだと誇大に吹聴しておりますのは、危険なインフレ懸念と、水増しの自然増収をたよりにした選挙政策であることを指摘したいと思うのであります。(拍手)今回の減税政策は、決して石橋内閣の善政ではなくて、保守政権のもとで、重税に苦しみぬいた国民層政府に反撃した結果、しぶしぶ実施した国民世論の勝利であります。現に予算編成の初めに、減税をするとインフレになると国民をおどかしたのは池田大蔵大臣であります。減税などはけちくさい考えであると、積極財政を唱えたのが、今は病む石橋総理大臣でありましたが、今、国民世論に押されて、所得税法の一部を改正する法律案等が議会において検討されることになったことを、私は国民大衆とともに大いに喜ぶものであります。またそれだけに、いわゆる一千億減税を、戦後著しく過重、かつ不公平であった現行税制をあとう限り是正して、真に国民の期待する減税政策、一部特権階級に利用されない減税を目途として、政府原案を修正したいと念願する次第であります。  政府提案の二法律を検討するに当りまして、私は五つの疑問をとらえて質疑を試みたいと存じます。一つは、政府減税政策国民生活にどういう影響を与えるか。一つは、この減税はだれが一番その恩恵を受けることになるか。一つは、政府減税政策の中に不純な政治的産物が隠されていないか。一つには、減税財源が税の自然増収当てにしておりますので、その見積りの誤まりから、かえって徴税強化とならないか。もう一つは、臨時税制調査会でも問題となりました税制全般の筋についてでありまして、これは委員会における質疑に譲りたいと存じます。  そこで、まず岸総理大臣臨時代理お尋ねをいたします。私は減税政策は、言うまでもなく国民にとって税負担軽減になるとともに、国民生活引き上げるものでなくては、その意義を失うばかりでなく、政党としては国民を欺瞞し、政府としては減税に期待する国民の信頼を裏切る結果となると思う心であります。戦後、幾たびか実施されました減税政策は、当時の物価の値上り等に即したもので、実質的には、ごまかしの減税という定評となりました。今回政府のいわゆる一千億減税も、わが社会党議員質問と追及に対し、最近では池田蔵相も、一千億減税は、一の標語であると了解を求め昭和三十二年度の減税は実質的には七百二十億円であると述べるに至りました。しかし、まだこれにも誤まりがあることは、同僚議員のしばしば指摘したところであります。すなわち、国民生活と深いつながりのある酒税の百六十億円、専売益金においては、たばこ消費税を含めて六十七億円、砂糖消費税物品税において五十六億円が、それぞれ昨年より増徴されまして、これに鉄道運賃値上りによる大衆旅客の損失は三百六十億円、今後の消費者米価値上りや、政府インフレ予算による物価高を勘定に入れますというと、結局大多数の国民生活に対するはね返りは、ゼロまたは増税という結果になるのであります。すなわち政府御自慢の減税政策は、減税はしてみたけれども生活がよくならない、こういう政治になるのではありませんか。特に、石橋内閣は一千億減税を振り回して、あたかも国民生活をよくするかの錯覚を与えようといたしておりますが、勤労者でも、事業者でも、所得のある者は約二千七百三十万、税を納めておるのが九百九十万、従って減税に当る九百九十万は別にいたしましても、残りの千七百四十万の家計は、鉄道料金の値上げ、たばこ販売規制消費者米価値上り等で、かえって増税になると同じであります。政府はこれらの階層に対して、社会保障の充実で救うと弁解をいたしてはおりますが、その予算増は、わずかに百億に足らず、日雇い労務者は日給二百八十二円から三百二円、たった二十円の政治恩恵を受けるだけであります。大蔵省は専売益金増加で、新生やバットなどの大衆たばこを売り惜しみ、貧乏人もピースを吸えの政策をとろうとしておるのであります。岸総理大臣臨時代理見解をお伺いしたいと思います。何ゆえ、せっかくの自然増収が見込まれたこの機会に、実質的に国民生活をよくする減税と、そうして施策を実施し得なかったか、私は一千億円減税という標語にとらわれた政府が、この減税政策をかざしたのは、選挙目当てのアドバルーンであると批判するゆえんは、ここにあるのであります。(拍手)  昭和三十二年度の税制改正が、中間層減税重点を置いたため、年間所得五十万以上の国民にとって恩恵のあることは私は認めるにやぶさかではありません。今まで税金が高過ぎたのでありますから、負けるのが当りまえであります。ただ、問題となりますのは、今回の税制改正においても月額二万一千五百円、夫婦子供三人の標準世帯でも、課税対象となっていることであります。私が岸さんに考えてほしいのは、この月額二万一千五百円の家族五人暮しの生活実態についてであります。月額二万一千五百円の生活は、エンゲル係数で言えば、五〇%以上、飲食物費家計の半ばを占める最低生活すれすれの線にある国民層で、政府政策によって、通勤費増額に泣き、消費者米価では米びつを心配する税の犠牲者であります。アメリカにおいては、邦貨に換算して年間百万円で所得税課税を受けず、イギリスでは年間百万円になってようやく五%の負担となり、西ドイツでは七十万円で一・四%、百万円で六・三%を負担しておるにすぎません。もとより国情と国の経済が違いますから、単純な比較は無理にいたしましても、まだ日本税金が高いのはおわかりのことと存じます。  私の第二の質問は、政府は、今回のいわゆる千億円減税で能事足れりとする意思であるか、それとも、少くとも社会党の主張する程度の基礎控除引き上げによりまして、低額所得者減税を検討する意思があるのか、あるいは近い将来において、再び実質的減税をする必要を感じておりますか、お尋ねをいたします。  第三は、これも岸総理大臣臨時代理お答えを願います。政府提案による税制改正は、租税負担軽減合理化をはかるとともに、合理的な租税制度を確立するために、税制全般的な整備を行なったと、私はその説明を聞いたのでありますが、見のがすことのできないのは、いわゆる一千億減税の中に、不純な政治的な配慮、すなわち一部特権階級資本家に奉仕する措置が隠されているということであります。たとえば貯蓄奨励をすると称しまして、銀行利子免税措置に便宜をばかり、期間の延長をはかっているということ、株券の配当金に対して税控除特例を残しているということ、生命保険料控除引き上げも、国民に対する恩恵は第二義的で、保険会社資金を活用することによって積極財政の片棒をかつがせ、多くの国民生命保険に加入することによって会社を太らせる効果をねらっていること、租税特別措置法による免税額年間一千五十一億円に達するにかかわらず、この整理には、臨時税制調査会答申を破って、わずか初年度二百億円にとどめていること、私は租税原則が、ときに経済政策を遂行するために、ある程度取り入れられぬことを否定するものではありませんが、しかし、今日の世論も、専門的検討結論も、鼓を鳴らして税負担の不公平を強調しておると思うのであります。あえて資本家擁護政策を踏襲した理由いかん。一千億減税の派手な看板に隠れて、これら政治的妥協をした政府の責任ある答弁を求めるものであります。  池田大蔵大臣に対する私の質問は、貯蓄奨励と称して、租税原則を破った理由についてであります。銀行利子免税、株の配当控除、また生命保険料控除引き上げに関し、あなたは過日、衆議院予算委員会におきまして、貯蓄奨励増強のために、答申を破って長期預貯金に対して免税することは、いろいろの方面から考えて苦慮したことでありますと告白をしております。しかし貯蓄奨励のために、銀行利子免税で百十億冊の減収、株の配当控除で六十億円の恩典を許したそろばんは、どこに根拠があるのか、私は大きな疑問を持つものであります。大蔵大臣は、この措置で幾らの預貯金増加考えておるのでありますか。もしかりに、税法上の特例を廃止したら、預貯金目標額は幾ら減少するとお考えになるのでありますか。私は数字をもってお示しを願いたいと思うのであります。おそらくこの数字は答えることはできないと思います。政府は、昭和三十二年度の金融機関における預貯金増加を六千億円から七千億円と期待しておるようでありますが、このために国の税収、当然入ってくる百七十億円を捨てたということは、不当な措置であると言わざるを得ません。まして国民の大多数は、まだ貯蓄するだけの余裕のない現状であります。ほんとうの貯蓄増強というものは、通貨価値を安定し、国民生活を向上して、そこから始めなければならないと思いますが、大蔵大臣見解をお伺いしたいと存じます。  大蔵大臣、第二の質問は、所得税法改正によりまして、一体だれを一番有利にさせておるかという問題であります。私は今回の税制改正は、あまりにも高額所得者中心にした減税であると断言をするのであります。政府提案による減税は、税率の緩和に重点を置いておる結集、納税者九百九十万の中で全般の八・八%、約八十八万人のための減税であると批判をいたしましたが、一例をあげれば、年間に百万円の所得ある者に対しては八万一千六百三十五円の減税であるのに対して、年間三十万円の所得者に対しては、わずかに三千四百五十円であります。特に石橋内閣の性格を雄弁に物語っておりますのは、配当控除を受ける少数の階層一般勤労者との比較でありまして、政府主税局の解説によりましても、株の配当金だけで生活をしておる夫婦子供三人の標準世帯が、現行制度のもとで、一年間に八十九万円の配当金がありましても無税だということであります。今回一税率累進度が緩和されますと、そのままでは、年間二百三十四万円の配当金がありましても税金は取られないという結果になります。そこで、さすがに税率を百分の二十に修正をいたしましたが、それでも一年間に百四十五万円の配当金がありましても一銭の税金もかからない。しかるに、年収百四十五万円の勤労所得者は、現行税率で四十四万円、改正税率でも二十五万円の税金を納めねばならぬ。株の配当金が百四十五万円で無税勤労所得者はあすか二十五万円で税金がかかる、こういうばかばかしい税制は世界のどこを見ても見当りません。国民のための減税ではなくて、高額所得者のための減税だという批判に、大蔵大臣は何と答えられますか。(拍手)  最後に、政府減税政策財源に関連をしてお尋ねをいたします。石橋内閣財政政策が、昭和三十二年度千九百二十億円の自然増収見積りに基く一千億減税と一千億の積極財政であることは、すでに指摘したところであります。それだけに、もし自然増収見積りに誤算があれば、施政方向を誤まるだけでなく、税務署徴税強化、税の取り立てをやかましくすることは自明の理であります。池田蔵相自然増収見積り根拠につきましては、たびたび御説明がありまして、これには強い御確信をお持ちのようでありますが、なお見積りが多過ぎるという批判を消すことはできません。そこで予算書を検討してみますと、各税種目収入見込みも、昨年に比較して大きめに見積り徴税歩合も高める苦心の跡が歴然としておるのでありまして、自然増収は、減税予算規模につじつまを合せるからくりがあると私は思うのであります。この疑問に呼応するがごとく、国税庁ではすでに神武天皇以来の好景気を宣伝をして、事業所得者に対する課税額引き上げをあおっている事実がある。私の調査によりますと、国税局では、昨年の課税額に対し青色申告で一二五%、一般でも一二三%の引き上げをばかり、いわゆる割当課税を督励しているではありませんか。政府が吹いている神武景気の風の亀とで、中小企業者は、政府減税当てにならぬ、税務署取り立てがきびしくなるから同じことですと、本能的恐怖感を抱いておるのであります。農業所得者も、特に貧農層は、税務署の「桃の木を見たら課税を思え」、「あぜ豆収入を見落すな」、「馬の多い所は金肥が少いから肥料の経費を減らせ」、こういう国税局の訓示がありました。鶏の卵、庭の柿の木までねらわれる結果になることを私は指摘するのであります。  さらに、自然増収千九百二十億円の中に、滞納税額が四百五十一億円、ことしはこの半分の二百四十億円の整理を見込んでおるのであります。しかし、これも神武景気によりまして整理した残りの、いわゆる焦げつき滞納が多いだけに、徴税強化は善良な国民の恨みを買うことになりはしないか。石橋内閣の不評判は別にいたしましても、政治にゆとりと温かみなくしては、私は民主政治が泣くことを憂えるものであります。このような結果にならないことを、政府国民に明らかにすべきであります。  法人税法の一部を改正する法律案その他の質疑は、時間の都合で委員会に譲りまして、私の税制に関する一般質問は、これで終ることといたします。(拍手)    〔国務大臣岸信介登壇拍手
  5. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 平林君の御質問に対してお答え申し上げます。  今回の税制改正は、勤労所得税減税中心として各種の税にわたっておりますが、この改正によりまして、税を負担しておる人々にだけしかその効果は及ばないじゃないかという問題につきましては、もちろん税法改正でありますから、当然そういうことになりますが、さらに税を納めない人々に対しましても、各種社会政策を強化することによって、われわれは広く国民に、今回のわれわれの経済政策全体の効果が及ぶように努めております。  税の負担軽減につきましては、もちろんこれをもって足りるのではございませんので、今後も考えなければなりませんが、三十二年度の減税につきましては、政府の提出しております案を最も適当と考えております。  第三に、われわれが今回提出いたしておりまする税法改正は、もちろん臨時税制調査会答申を参考とはいたしておりますが、各種の事情も十分考えて、これを適当に調整して今回の税制改正を出しておるわけであります。これによって国民税負担の均衡をはかることを主眼に置いて考えておるのであります。もちろん税制改正につきましては、他の経済政策ともにらみ合して、総合的に考えなければならない面がございますので、われわれは、あるいは貯蓄奨励や、その他経済発展全般をにらみ合して、今回の税改正を出したわけであります。(拍手)    〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  6. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 平林さんの御質問に対しまして、総括的の問題は岸臨時総理大臣代理お答えになりましたので、少し専門的になりますこまかい問題につきましてお話し申し上げたいと思います。  今回の税制は、一昨年設けられました租税制度調査会答申を基本として行なったのでございます。そのうちで、今の情勢から考えまして、取捨選択をいたしたのでございまするが、問題の預貯金に対しましての課税でございます。従来、預貯金に対しましては源泉で取ったり、あるいは総合にして徴収したり、また、近年におきましては定率の総合しない分にし、二、三年の間は無税にしておったのであります。私は今の金融情勢等から考えまして、資本蓄積が重大な政策であるこの際、長期預貯金につきましては、過去二年行なった無税の方法をとることが適当であるという結論に達したのでございます。で、先ほど減税インフレに通ずる道だということにつきましては、私は一つ考え方として申しました。しかし減税はまた国民生活の向上にぜひやらなければならぬ問題でございます。しこうして、国民減税されました所得増加貯蓄して下されば、これは減税効果が全面的に現われますので、私は答申に反しまして、長期預貯金につきましては免減をいましばらく継続しようとしておるのであります。で、これをやめたらどうなるかという計算は、これはなかなかむずかしい。質問者お答えにならぬだろうとおっしゃる通り、どれぐらい減るかということは問題でございますが、少くとも貯蓄奨励に支障のあることは確かでございます。昭和三十年には一兆円の資金蓄積がありました。昭和二十九年に七千五百億円がありました。私は今年度と申しますか、昭和三十二年度におきましては、一兆一千五百、あるいは一兆二千億、こういう貯蓄目標を立てまして、国民貯蓄してもらおうとしておる際でございますので、この際は長期預貯金免税することが適当であると考えたのであります。  なお、生命保険について、私が税制調査会答申にないのをあえてやったのは、これはやはり資金蓄積一つの手段としてやったのであります。外国の例をお引きになりましたが、今後住宅建設等長期資金を得るためには、生命保険会社資金を使うことが最も便利であります。各国ともこれによっております。しかも生命保険料所得控除につきましては、各国にその例を見ないほど日本はまだ低いのでございます。私はこの際、貯蓄増強あるいはまた住宅建設の観点から、生命保険料控除を、最高七千五百円までを増加いたしまして、最高二万二千五百円の控除にいたしたのでございます。  次に配当の問題につきまして御議論がございました。私は方向としては平林さんのおっしゃる方向へ進んでおるのであります。皆さん御承知通り配当所得税課税するか、いなかの問題は、明治時代から問題になっておりますが、大正八年の原内閣までは課税しておりません。その後六割を課税し、八割を課税し、最近におきましては全額を課税することになったのでございます。しかし、もともと法人擬制説法人というものは個人の出資によった一つ個人延長だから、法人税をかけている以上は個人には所得税をかけるべきでないという議論が強いのであります。で、アメリカからシャウプ博士が参りまして、この法人擬制説を採用して、そうして配当個人に総合する場合においては、源泉で徴収した一割に加うるに、三割五分を所得税から控除する、こういう規定を置いておるのであります。しかし、これはいかにも法人擬制説にとらわれ過ぎているのであります。従いまして、今回は合わせて四割あるいは四割五分を三割五分まで引き下げておるのであります。そして、外国にその例がないとおっしゃいまするが、おおむねこの例を引いております。イギリス日本を除いては一番強くやっております。アメリカ、ドイツも皆やっております。われわれは、シャウプ博士のこしらえましたあの税制を、徐々に日本国情に合わせるようにやっておるのであります。従いまして、一千万円の配当につきましては、その率を一〇にいたしまして、もう一千万円以上の配当所得者は非常な増税と相なっております。こういう方向で進んで行っております。これまた税制調査会の意見を変更いたしまして、徐々に実情に沿った方向に向って行っているのであります。こういう状態でございまするから、配当所得につきましては、非常に法人擬制説の立場によって法人税をかけているから、個人に課説しないという建前でやっているのを、だんだん直しつつあるのであります。  なお、自然増収につきまして、いろいろお話がございましたが、私は、今の日本経済情勢から見て、千九百二十二億円の自然増収ははっきり出ると確信を持っております。これは、いずれ事実が証明することでございましょう。しかし、自然増収をそれだけ見たからといって、決して苛斂誅求はいたしません。最近におきまして、税務行政は昔ほど非難がなくなって参りました。非常に喜ばしいことでございまするが、この税務行政円滑化につきましては、この上とも努力したいと考えておるのであります。(拍手
  7. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これにて質疑通告者発言は終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。      ——————————
  8. 近藤鶴代

    近藤鶴代君 私は、この際、遺家族処遇問題に関する緊急質問動議を提出いたします。
  9. 小酒井義男

    小酒井義男君 私は、ただいまの近藤君の動議に賛成いたします。
  10. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 近藤君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よってこれより発言を許します。近藤鶴代君。    〔近藤鶴代登壇拍手
  12. 近藤鶴代

    近藤鶴代君 さきに行われました首相代理施政演説でも、また、大蔵大臣財政演説の中にも、遺家族処遇問題には少しも触れておいでになりませんでしたので、私は、この機会政府のお考えを伺いたいのでございます。  遺家族処遇の問題を、戦後十二年を経ました今日になっても、なおかつお尋ねしなければならないということは、まことに遺憾にたえないのでございますが、大切な基本的な問題を残したまま、遺族問題の解決が遅々として進まない状態にありますので、この際、遺族処遇問題の二、三の点について承わりたいのであります。  遺族の団体は、本来、英霊の心につながれて、相携えて祖国の再建に尽して行くという精神的な使命を主眼としたものであったと思うのでありますが、ここ数年の動きを見ますと、恩給、年金、扶助料等の獲得または増額運動にのみ没頭しているかの感を与えられるのであります。しかし、これは政府が戦後の国内問題処理に当って、その序列を誤まっていたことの一つの証左ではないかと思うのであります。最近の世相は、確かに、求めずんば与えられずの感があり、賃金要求組合運動が年中行事となっている時代とは申しながら、遺族処遇は、その特殊性からいっても、求めざる前に、感謝をもって合理的に処置すべきものであります。遺族処遇の基本的な問題は、まず公務扶助料があまりにも不当な取扱いを受けているということであります。御承知通り昭和二十一年勅令六十八号をもって、軍人遺族に対する一切の国家補償を停止して、二百万の遺族世帯を苦境のどん底に陥れて以来、昭和二十七年援護法が制定され、それに基いて、翌年恩給法の一部が改正されたことによって、ようやく旧軍人等に対する恩給法が復活いたしましたが、その際にも、七年間受給権の不当な停止に対して、政府財政上の責任をとり得ないということであり、遺族もまた決してこれを追及しなかったのでありますが、この復活した恩給法は、仮定俸給においても、号俸のとり方においても、また公務扶助料算出の大きな要因である倍率の決定におきましても、文官恩給に与えられるものに比較して、まことに低い線にとどめられたのでありましたが、このことについても、遺族は、再建途上にある国家財政の重大さを認識し、あえてこの不平等をも甘受したものであります。そうして、時の政府としても、国家財政の許す限り、文官のそれと同一水準まで引き上げる約束をいたしたのであります。昭和三十年に至って、号俸と給与ベースが改められました際、兵にして約二万七千円が三万五千円に、確かに金額の上では増額になりましたが、大切な扶助料算出の支柱である倍率は、兵にして二六・五割に、依然として据え置かれたのであります。試みに、この間の文官恩給の状況を見ますと、戦後の財政困難な中にも中断されることなく、倍率も逐次上昇して、今日四十割が適用されているのであります。私は、このこんとんたる戦後の時代にもかかわらず、文官だけでも、その状態が続いてきたことをとやかく申すわけではありません。がしかしながら、一片の赤紙で召されたことを誉れとして、勇ましく国難に殉じた兵士たちが、最後の瞬間までおそらくは心を残したであろうと思われる妻子、老父母たちだけが、戦争と、それに敗れた責任を背負わなければならぬ道理はないと思います。(拍手)にもかかわらず、たまたま、占領下における勝者の敗者に対する懲罰的精神で貫かれた指令による恩給の停止に端を発して、十年余り、このような不平等を遺族の上にのみしいてきたことは、時世とは申しながら、あまりにも片手落ちに過ぎるものと言わざるを得ません。それならばこそ、国家財政も立ち直り、史上空前の好景気をうたわれる今日、遺族が、公務扶助料の倍率を四十割に、せめて文官の人々と同じようにと、血の叫びを上げているのに対し、政府としても、愛情を持って真剣に耳を傾けるべきであります。  第二次大戦における軍人軍属の犠牲は、二百万の多数であったため、その遺族の数も膨大なものでありましたが、年とともにその数も減少し、昭和三十年六月の調査によれば、扶助料の受給者は百五十万人、そのうち約百万近い者は兵長以下の下級軍人遺族であります。また一面、遺族の年令構成を見ますと、老いたる父母の平均年令は六十七、八才、遺児のそれは十七、八才と推定されております。これらの人々は、ここ二、三年の間に、加速度的に受給の権利を失って行くわけであります。従って政府は、本年度において六百五十五億の扶助料予算を計上いたしましたが、この数字は、現行の扶助料を持続する限り、本年度を頂点として著しく減少して行くのでありますから、今日四十割の倍率を認めても、将来財政上にさまで大きな負担にはならないと思います。もしまた、それによって財政の破綻を来たすならば、そのときこそ、そのときこそあらためて文官も遺族も平等に恩給を引き下げて、国家財政を助けることが合理的であり、だれしも納得のできることではないでしょうか。今年度予算における扶助料増額は、すでに改正された法律の不備を是正した結果に基くものであって、遺族全般にわたっての基本的問題解決の予算は、毛頭考慮されていないようであります。私は、減税もベース・アップも喜ばしいと思いますが、これとあわせて、遺族問題の基本線について何らかの処置を講じ、この問題に正しい解決をつけるべきときは今であると思うのであります。  次に、戦没動員学徒、被徴用者等、国家総動員法によってかり出された人々の犠牲が、適正に償われていない点を申したいのであります。若き学徒が、有能な報道班員が、経験に富んだ技術者が、軍人と同一またはそれと非常に近い義務を負わされて、その生命を祖国防衛、戦力増強のためにささげたことに対する弔慰は、十カ年年賦の三万円だけであります。人間の生命は、もとより金品によって償いきれるものではなく、評価し得るものでもありません。がしかしながら、軍人と同じ立場で職域に殉じたこれらの人々に、三万円の弔慰金が果して当を得たものでありましょうか。しかもこの人々の死が、第一線における戦時災害によるものであるときに限るのであって、公務の疾病は弔慰金支給の対象となっていないのであります。推定対象者総数七万と言われるこれらの殉国者に対しても、政府は当然弔慰の内容を改善すべきであると思います。なおまた、傷痍軍人に対する処遇につきましても、長きにわたって不適当なままに放置されているのでありまして、遺族公務扶助料倍率の問題と、国家総動員法によって徴用された人々への弔慰の問題と、あわせて解決の方途を講ずべきであります。遺家族処遇に関する問題は、その対象が老人、未亡人、遺児たちが大部分でありますだけに、あたたかい国の施策を待つものが多く、たとえば遺族金庫とでもいったものを作れば、世事にうとい人々が繁雑な手続にわずらわされず、高利の金を借らなくて済むであろうというように、大小幾多の内容を持っておりますが、何と申しましても、さきに申し述べました三つの点を合わせますと、一応かなり多額の予算措置を必要とするものでありまして、大蔵大臣の勇断を待つわけであります。  わが国は独立回復以来、国運は繁栄の一途をたどり、昨年末には待望久しかった国連加盟も実現し、名実ともに国際社会の一員として立ち直りましたが、反面には、以上申し述べましたように、いまだに戦争の創痍がいやされない人々がなお多数存在することも事実であります。私は、こうした問題こそ一切の国内戦後処理諸政策に優先して、道義と人道と国家の名において、急速に解決されなければならない課題であると信じますが、政府はどうお考えになっておられるのでありましょうか。道義の頽廃を嘆き、祖国愛の欠如を憂える為政者は、時代を問わず、国家のために最大最高の犠牲を払った英霊に対して、国の続く限りは、民族の続く限りは、敬虔な感謝をささげるべきであり、靖国神社を国費によって護持する信念と、遺家族処遇問題の解決を、だれはばかることなく、最優先する決断とが望ましいのであります。以上申し述べました公務扶助料倍率是正と戦没準軍属に対する補償並びに傷痍軍人処遇の問題は、今において解伏しなければならない、もはや遷延を許さぬ問題であると思い、ここに首相並びに大蔵大臣の御所見を承わりたいと存ずるのであります。(拍手)    〔国務大臣岸信介登壇拍手
  13. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お答えをいたします。  戦後処理のいろいろな問題のうち、戦傷病者、戦没遺族処遇問題は、最も重要な問題の一つであることはお説の通りであります。政府は、すでに平和条約発効と同時に遺家族援護法を制定し、翌二十八年には軍人恩給の復活を行い、さらにその後、年金額の引き上げ、公務傷病の範囲の拡大等、いろいろな施策を講じてきましたが、まだこれをもって十分であるということはもちろんできませんので、今後におきましても十分検討を加えまして、でき得る限りの措置を講じたいと思います。(拍手)    〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  14. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答え申し上げます。  軍人恩給につきましての増額のお言葉でございますが、御承知通り昭和三十年にこれを実行いたしまして、三十二年度でようやく平年度になってくるのであります。お言葉の点、われわれよくわかります。今回引揚者に対しまするいろいろな措置等、いろいろ戦後処理があるのでございまするが、各般の事情を検討いたしまして十分考慮いたしたいと思います。(拍手)      ——————————
  15. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第二、昭和三十一年産米穀についての所得税臨時特例に関する法律案  日程第三、租税特例措置法の一部を改正する法律案(いずれも内閣提出衆議院送付)  以上、両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員長廣瀬久忠君。「審査報告書は都合により第十一号末尾に掲載〕    〔廣瀬久忠君登壇拍手
  17. 廣瀬久忠

    ○廣瀬久忠君 ただいま議題となりました昭和三十一年産米穀についての所得税臨時特例に関する法律案外一法律案につきまして、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、昭和三十一年産米穀についての所得税臨時特例に関する法律案について申し上げます。  本案は、昭和三十一年産米穀について、生産者からの事前売り渡し申し込みによる集荷制度を実施し、所要数量の確保をはかったのでありますが、昭和三十年産米穀の場合と同様、昭和三、十一年分の所得税について、その売り渡しの時期の区分に応じ、玄米一石当り平均千四百円を非課税とする措置を講じようとするものであります。  委員会の審議に当り、各委員より、米穀の予約売り渡し制度に伴う減税問題は、単に租税負担の公平の原則からのみ論ずべきものではなく、売り渡し価格、その他農業政策全般からみて決定せらるべきものではないか、また早場米の少い西日本地方の硬質米については、特別な考慮を払うべきではないか等の質疑があり、政府委員より、これらの意見を尊重し、十分考慮いたしたいとの答弁がありましたが、その他詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。  質疑を終了し、討論、採決の結果、全会一致をもって衆議院送付通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、住宅の新築または増築の場合、所有権の保存登記をするに当り、登録税率を価格の千分の六から千分の一に軽減する等の措置に関するものであり、昭和三十一年十二月三十一日で適用期限が切れたことになっておりますが、目下の住宅建設促進の必要性にかんがみ、この期限を昭和三十三年十二月三十一日まで延長しようとするものであります。なお、昭和三十二年一月一日から改正法施行までの間に登録税を納めた者には、改正法による税額をこたえる部分を還付する等、所要の改正をいたしております。  委員会の審議に当り、各委員より、本法の提出がおくれた理由いかん、適用の範囲いかん、立法の形式等について熱心なる質疑応答がありましたが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。  質疑を終了し、討論、採決の結果、全会一致をもって衆議院送付通り可決すべきものと決定いたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  18. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。両案全部を問題に供します。両案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  19. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって両案は、全会一致をもって可決せられました。  本日の議事日程は、これにて終了いたしました。  次会の議事日程は、決定次第公報をもって御通知いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午前十一時二十三分散会      —————————— ○本日の会議に付した案件  一、日程第一 所得税法の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案趣旨説明)(前会の続)  一、遺家族処遇問題に関する緊急質問  一、日程第二 昭和三十一年産米穀についての所得税臨時特例に関する法律案  一、日程第三 租税特別措置法の一部を改正する法律案