運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1957-03-07 第26回国会 参議院 法務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月七日(木曜日)    午前十時五十五分開会   —————————————   委員の異動 三月五日委員森下政一君死去された。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     山本 米治君    理事            雨森 常夫君            一松 定吉君    委員            青山 正一君            大谷 瑩潤君            赤松 常子君            岡田 宗司君            河合 義一君            小酒井義男君            宮城タマヨ君            辻  武寿君   国務大臣    法 務 大 臣 中村 梅吉君   政府委員    警察庁刑事部長 中川 董治君    法務大臣官房調    査課長     位野木益雄君    法務省民事局長 村上 朝一君    法務省刑事局長 井本 臺吉君    法務省矯正局長 渡部 善信君    厚生省社会局長 安田  巖君    労働省婦人少年    局長      谷野 せつ君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○下級裁判所設立及び管轄区域に関  する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出) ○滞納処分強制執行等との手続の調  整に関する法律案内閣送付予備  審査) ○検察及び裁判運営等に関する調査  の件  (売春防止法施行運営に関する  件)  (法務行政基本方針に関する  件)   —————————————
  2. 山本米治

    委員長山本米治君) ただいまから本日の会議を始めます。  本日は、初めに下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案並び滞納処分強制執行等との手続調整に関する法律案予備審査)の両案を、便宜一括して議題といたします。  まず、提案理由説明を聴取いたします。
  3. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) ただいま議題に供されました両案について、逐次提案理由趣旨を御説明申し上げます。  まず、下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明します。  この法律案は、最近における市町村廃置分合等に伴い、下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律に所要の改正を加えようとするものであります。以下、簡単に今回の改正要点を申し上げます。  第一は、簡易裁判所の各称の変更であります。すなわち、簡易裁判所名称で所在地の市町村名称を冠しておるものは、市町村廃置分合またはその名称変更に伴いまして、これを改める必要がありますので、三重県多気郡三瀬谷町の廃止、大台町の設置に伴い、三瀬谷簡易裁判所名称大台簡易裁判所変更し、青森県三本木市を十和田市とする名称変更に伴いまして、三本木簡易裁判所名称十和田簡易裁判所変更しようとするものであります。  第二は、簡易裁判所管轄区域変更であります。すなわち、裁判所管轄区域は、行政区画またはこれに準ずべき区域基準として定められておりますが、町村廃置分合等に伴い、二つの簡易裁判所管轄に分属することになった新設町村区域を一体として、単一の簡易裁判所管轄に属させることとする等の必要がありますので、埼玉県入間郡富士見村の設置に伴い、浦和簡易裁判所管轄に属する同県北足立郡旧水谷村の区域川越簡易裁判所管轄変更するほか、二十八簡易裁判所管轄区域変更し、また、土地の状況、交通の利便等にかんがみ、有用簡易裁判所管轄に属する長崎県北松浦郡小値賀町及び宇久町の区域佐世保簡易裁判所管轄変更しようとするものであります。  第三は、下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律別表整理であります。すなわち、市町村廃置分合名称変更等に伴いまして、同法の別表第四表及び第五表について当然必要とされる整理を行おうとするものでございます。  なお、以上説明いたしました簡易裁判所名称及び管轄区域変更につきましては、いずれも地元市町村関係官公署弁護士会等意見を十分しんしゃくし、最高裁判所とも協議の上決定したものでございます。  以上がこの法律案趣旨でございます。何とぞよろしく御審議のほどをお願い申し上げます。次に滞納処分強制執行等との手続調整に関する法律案について提案理由説明いたします。  現行制度のもとにおきましては、同一の財産に対しては、滞納処分強制執行または競売との手続を、重複して行うことは許されないというのが従来の一般解釈とされております。しかしながら、一方の手続が開始されると、その財産について他方の手続が行い得ないということは、不合理な結果を生ずる場合があります。  すなわち、従来は滞納処分が先に行われた場合には、一般債権者は、滞納処分による差し押え解除を待って強制執行を始めるほかはないのでありますが、目的たる財産滞納処分により差し押えられましたまま、長期にわたり放置されるときは、その間強制執行または競売による権利の実行ができないばかりでなく、差し押え解除後、目的財産が直ちに他に譲渡されますると、もはやその財産差し押えることができなくなります。また、強制執行または競売手続が先に行われた場合には、租税その他の公課は、競売売得金から交付を受けることができ、しかも、原則として私債権に優先して満足を得られますので、この点では私債権に比して有利な地位にあるのでありますが、強制執行等手続財産換価を見ないで終了した場合には、直ちに滞納処分による差し押えな、しないと、目的財産の譲渡によってその効を奏しないおそれがあるのであります。  従いまして、右に述べましたような不都合を除くため、動産不動産船舶等に対し、滞納処分強制執行等との手続を重複して行うことができることといたしますとともに、両者が競合した場合の手続調整をはかるため、何らかの立法措置を講ずることが、かねてから各方面から強く要望されてきたのであります。政府におきましても、その具体的方策につきまして法制審議会意見を徴するほか、租税徴収制度調査会諮問して調査研究して参りましたが、このほど成案を、得るに至りましたので、ここにこの法律案を提出した次第であります。  この法律案要点は、次に述べる四点でございます。  第一は、民事訴訟法により強制執行をすることができる有体動産不動産または登記される船舶に対しては、さき滞納処分が行われていても、さらに強制執行または仮差し押え執行をすることができることとし、強制執行等が重ねて行われた場合の手続調整措置を次のように定めたことであります。まず、後に行われた強制執行による財産売却のための手続は、原則として、滞納処分による差し押え解除された場合に限り行うことができることといたし、次に、滞納処分による差し押え解除すべき場合には、収税官吏等は、その占有する有体動産を、後に強制執行等をした執行吏に引き渡さなければならないこととし、さらに、滞納処分による売却代金について滞納者交付すべき残余は、これを後に強制執行等をした裁判所または執行吏交付し、裁判所または執行吏は、その交付を受けた金銭について競売による売得金処置と同じ取扱いをすることといたしました。  第二は、すでに強制執行が行われている有体動産不動産または登記される船舶に対しても、さらに滞納処分を行うことができることとし、滞納処分が先行する場合の措置と対応して、後に行われた滞納処分による売却手続を制限するとともに、強制執行による差し押え解除すべき場合には、執行吏は、有体動産収税官吏等に引き渡すべき義務を負うことを定めたことであります。なお、仮差し押え執行後に滞納処分が行われた場合につきましても、仮差し押えの性質に反しない限り、滞納処分後に強制執行が行われた場合と同様の取扱いをすることといたしました。  第三は、滞納処分強制執行とが競合した場合に、換価手続促進をはかる措置を講じたことであります。すなわち、執行裁判所は、さきに行われた滞納処分手続法令規定またはこれに基く処分によって進行しない場合等において相当と認めるときは、差し押え債権者等の申請により、強制執行を続行する旨の裁判をすることといたしました。また、これに対応して、執行裁判所は、さきに行われた強制執行手続中止または停止された場合に、相当と認めるときは、収税官吏等の請求によって、滞納処分の続行を承認する旨の裁判をすることといたしました。  第四は、滞納処分競売法による不動産または船舶競売との競合及びこれらの手続促進につきましても、滞納処分強制執行との手続調整措置に準じてこれを取り扱うことといたしたことであります。  以上がこの法律案提案理由の大要であります。何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。
  4. 山本米治

    委員長山本米治君) 次に補足説明を求めます。
  5. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 滞納処分強制執行等との手続調整に関する法律案につきまして、補足して御説明申し上げます。この法律案は四つの章に分れておりまして、第一章におきまして総則的な規定を設け、第二章では滞納処分が先行する場合の強制執行等との調整規定を設けました。  第三章では、逆に強制執行または競売法による競売が先行する場合の滞納処分との調整規定を設けました。  第四に、雑則といたしまして委任規定を設けたのであります。  このうち総則についてまず御説明申し上げますと、第二条に定義があげてございますが、滞納処分と申しておりますのは、国税徴収法と申して明治三十年にできました法律かございまして、国税を強制的に徴収する場合の手続がこれに規定してあるわけでございますが、そのほか地方税に関しましても、その他の租税公課にいたしましても、国税徴収法による滞納処分の例によって徴収するということになっておるものが多数あるのでございます。お配りしてあると存じますが、国税徴収法規準用法令調というものに列挙しておりますが、七十七ばかり、約八十近い法律で、国税徴収法滞納処分の例によって徴収するという規定を設けておるのでございます。それらの滞納処分を一括してこの法律滞納処分と呼んでいるわけでございます。  それから第二条の定義規定の中で有体動産及び不動産について定義をあげてございますが、これはまず有体動産の方について申し上げますと、国税徴収法動産と申しておりますのと、民事訴訟法有体動産としておりますものと多少範囲の違う点がございます。たとえば記名社債記名株券等民事訴訟法では有体動産に対する強制執行手続によることになっておりまして、有体動産の中に含めておるわけでございますが、国税等処分の方では動産のほかに有価証券という言葉を用いておりまして、そういう意味で多少範囲が違いますので、特に民事訴訟法にいう有体動産をさすのであるということを定義したわけでございます。ただ、民事訴訟法に定めました有体動産に対する強制執行手続というのは、通常考えられます動産のすべてに適用があるわけではございませんで、たとえば自動車などは道路運送車両法及び自動車抵当法によりまして、民事訴訟法執行手続とは全く違った手続によることになっているわけでございます。かような民事訴訟法有体動産に対する執行手続きの対象にならない有体動産は、一応この法律による調整措置からは除外されておるのでございます。不動産につきましても、たとえば地上権とか永小作権とかいう不動産上の権利につきまして、民事訴訟法は、これを不動産に対する強制執行手続によることといたしまして、不動産の中に含めているのであります。国税徴収法は必ずしもそうなっておりません。かような点を考慮いたしまして、不動産につきましても、民事訴訟法の用いておる不動産という意味であることを明らかにいたしておるのであります。  次に第二章の滞納処分が先行する場合でありますが、ただいま提案理由の中で説明されましたように、国税その他の租税公課滞納によりまして、差し押えが行われております場合に、従来の解釈によりますと、一般債権者あるいは抵当権者等は、それに対してさらに差し押えをすることができないことになっておりますので、中には債務者が、債権者執行を免かれるために、ことさらに租税等滞納して差し押えられたままの状態において長く放っておくような例もしばしばありまして、この不都合を解決しなければならぬというような要望が、かねてからあったのでございます。で、この法律におきましては、重複をした差し押えができることを明らかにいたしますとともに、重復した差し押えができることになりますと、両方手続を進行させますと、いろいろ混乱が生じますので、一応あとから行われた手続差し押えをしたままの状態でとめておきまして、先に行われた手続の方が先行して参るわけでありますが、何らかの理由で先に行われました手続き解除されました場合には、あとに行われました差し押え手続の方が先行していくことになるわけでございます。また、前に行われました手続が進行して、目的物を金にかえて、租税等滞納の支払いに充てた残りが出ました場合には、これをあと差し押えました執行機関の方に引き継ぎまして、後の手続によって換価された代金と同じように措置していこうというわけであります。また、先ほど申し上げました例のように、債務者がことさら租税滞納をしたままの状態におきまして、債権者抵当権者の追及を免れるというような措置をとっておりますような場合に、裁判所の判断で強制執行手続の方をあとから行われたにかかわらず、先行する方が相当であると認められる事情があります場合には、裁判によって強制執行手続の方を先行していく、先に行われた滞納処分手続をとめておくというようなこともできることになっております。  第三章は、逆に強制施行が先行しております場合の規定でございますが、大体におきまして、滞納処分が先行する場合に照応いたしまして、同様の解決をはかっておるわけでございます。  次に第四章の雑則で、政令及び最高裁判所規則に対する委任規定でございますが、これが裁判所手続行政機関手続両方にまたがっておりますために、この法律施行いたしますための細目につきまして、政令あるいは最高裁判所規則でさらに定める必要があると考えられますので、さような規定を設けた次第でございます。なお、この法律施行期日は本年十月一日からということになっておりしまの人であるというのが現状でございますが、これはこの法律が成立いたしましたならば、執行機関収税官吏等に十分この法律趣旨説明いたして、徹底させる期間が必要でございますので、かように定めておるのであります。
  6. 山本米治

    委員長山本米治君) ただいま説明を聴取いたしました法案につきましては、本日の審査はこの程度にとどめまして、質疑は次回に譲りたいと存じますが、よろしゅうございますか。——御異議ないと認めます。
  7. 山本米治

    委員長山本米治君) それでは次に検察及び裁判運営等に関する調査といたしまして、売春防止法施行運営に関する件を議題といたします。本法の施行を目前に控えまして、ただすべき点、検討を要する事項等、明らかにいたしたいと存じます。御質疑並びに御意見のおありの方は御発言をお願いいたします。
  8. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 法務大臣に二、三点お伺い申し上げたいと存じます。初めに、内閣にございます売春対策審議会の各関係大臣のうち、一番責任大臣として法務大臣がその任でいらっしゃると思いますけれども、いかがでございますか、その点をちょっとお伺いいたしたいと思います。
  9. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 法律制定そのものにつきましては、もちろん法務省が主管でございます。従いまして法律制定の業務は前国会以来法務省中心でやって参りました。なお、これを実施運営する段になりますと、法務省使命が本来犯罪検挙及びその後の処置中心使命といたしておりますので、法務省が本来犯罪検挙するということは、検挙によって犯罪をなくしていく、犯罪の傾向の根源をなくしていくということには大いに関係はございますが、ことに売春関係のごときものになりますと、厚生省あるいは労働省等ほかの省において努力をしていただく面もたくさんございますから、法律実施運用の段になりますと、これは法務省厚生省労働省等がともに相提携をして、いずれかが責任者であるというように、一方に片寄らないで、政府全体としてこれに力を注いでいくべき事項かと考えます。
  10. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 そこで法務大臣の最も御関係の深いというこの立法の面でございますが、売春防止法で一番大事な点がもう半分残っておると思います。つまり保安処分の問題でございますが、この法案は一体いつごろ審議会提案されるという御予定でございますか。
  11. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 保安処分立法措置はすみやかにいたしたいと考えまして、目下その具体的の進め方並びに保安処分としてはどういうことが売春防止上適切であるかということを、法務省として目下慎重に検討いたしておるのでございますが、できるだけすみやかに売春対策審議会諮問手続をいたしまして、この審議会の適切な答申を得て、少くとも次の国会には出す措置を講じたい、かように考えております。
  12. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 保安処分について、次の国会でございますか、今国会にはお出しになるということはできない御予定なんでございますか。
  13. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 当初、今国会提案したい考えで、いろいろな調査を進めておったのでありますが、これから審議会諮問をいたしますると、果して今国会に間に合うかどうか、その点疑問を持っておりまする次第で、まあおそくも次の国会にはその成立を見るようにいたしたいと、かように考えておる次第であります。
  14. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 ただいま大臣は衆議院の法務委員会にお呼ばれになっておるようでございますが、私はきょう重要問題でもうあと二、三点お伺いしたいと思いますので、委員長ちょっと速記中止さしていただけますか。
  15. 山本米治

    委員長山本米治君) 速記をとめて。    〔速記中止
  16. 山本米治

    委員長山本米治君) 速記を始めて、念のため申し上げますが、ただいまの問題の関係では、刑事局長井本さん、厚生省社会局長安田さん、労働省婦人少年局長谷野さん、これだけ見えておられますから、どうぞ御質疑をお願いいたします。
  17. 赤松常子

    赤松常子君 私は厚生省安田局長にちょっとお尋ねいたします。婦人相談員の任命がだいぶ進捗しておるようでございますが、どういう状況でございましょうか。
  18. 安田巖

    政府委員安田巖君) 一月末現在で、三百四名という報告がきておりますので、三分の二というところでございますが、その後まだ報告がきておりませんけれども、実際に置いている所もあるであろうというふうに考えております。
  19. 赤松常子

    赤松常子君 それは、今年の四月一日から売春婦の保護が行われる予定でございますが、三月の、きょうは七日でございますのに、まだ三分の二の程度で十分できるのでございましょうか。いかがでございますか。
  20. 安田巖

    政府委員安田巖君) 実は、これは予算としては、昨年の十月からの予算でございますから、十月から置けるわけでございますが、そういう意味では二重に申しわけないわけでございます。大体この進み方でいきますならば、三月一ぱいには何とか目鼻がつくだろうというふうに私ども考えているのですが、なお一そう督励をしたいと考えております。
  21. 赤松常子

    赤松常子君 私それはいかがかと思うのでございます。相談員御自身の方も、法律の内容をよく御存じない方も実はございまして、私ども方々歩いておりまして、まことに意外な相談員にもお目にかかっているわけでございます。ある県では、さっそく十月一ぱいに任命いたしまして、研修を始めておいでたる県もあって、大へんよくやっておいでになる所もあるのでございますけれども、ある府県のごときは、まだまだ十分ではございませんし、私の調査いたしたところによりますと、全然手もつけていない県が四県もございます。こういう状態で、三月一ぱいになさるとして、果してそういう方が四月からさっそく活動なさるのに十分な資格と、それから力を持ってお臨みになれるかどうか、非常に不安でございますが、その点いかがでございましょうか。
  22. 安田巖

    政府委員安田巖君) 御指摘のように、全然置いてない所が四県ございます。これは、婦人相談員仕事というものはなかなかむずかしい仕事でございますし、各県なり、市でそういった人を一探すのに骨を折っておられますことも実情だろうと思いますが、私どもといたしましては、できるだけそういう人たちに早く実はのみ込んでいただきますために、さっそくそういった婦人相談員の手引きを書きまして、各府県に配付いたしたような次第でございますので、御心配の点はまことにごもっともでございますが、なお一そう一つ督励をいたしまして、できるだけ早く全部の定員を充足させ、なおまた、実施に差しつかえないように訓練をいたすように指導して参りたいと思います。
  23. 赤松常子

    赤松常子君 せっかく任命なさいました婦人相談員中、長野県、福島県のごときは全部男子でいらっしゃいます。こういうことが果して更生しようという彼女たちのよき相談相手になり得るか、大へん疑問だと思うのです。ことに、婦人相談員の任務は、売春婦のよき相談相手、更生の際のよき指導ができるように、それからまたそういう売春婦を探し出すことも婦人相談員使命になっているのであります。ことに、福島県のごときは、二十四歳の男子がなっているということで、これが果して適当でしょうか、いかがでしょうか。
  24. 安田巖

    政府委員安田巖君) 婦人相談員を男にしたらいいか女にしたらいいかということで、この前にもこの委員会でいろいろお話がありましたのでございますが、まあ私どもは、婦人相談員ではありますけれども、やはりこれは男でも女でも、そういったことについて理解があり、また能力があり、熱情を持った人であれば差しつかえないではないかという扱いでいっております。しかし、全般的に見ますと、大部分が女す。ただ、これは府県なりあるいは市の当局にその人選をまかせてございますから、全部男であったから非常に不都合であるとか、あるいは全部女であったから不適当であるというふうなことまで、私どもはそこまで言えないじゃないかというふうに考えおるのであります。非常に不適当な人でありますならば注意しなければならぬ、こういうふうに思います。
  25. 赤松常子

    赤松常子君 長野県のごときは、これは少し誤解があったかと思うのでありますが、厚生省指導の方のお言葉の中に、婦人よりも男子の方が適当だというようなことをちょっとおっしゃったらしく、それで、受け取る方も非常にその点を強く受け取って、全部男子にしたという御報告もいただいております。もちろん業者を相手の説得の場合もあるでありましょう。いろいろ手ごわい相手を説得せんならぬのですから、全部女子ということもあるいは無理な点もあるということは考えられますけれども相手女子の場合でございますので、全部男子ということは非常に私どもは不安なんでございますが、これをかえてもらうとか女子をまぜるとか、そういう処置は願えないのでしょうか。
  26. 安田巖

    政府委員安田巖君) 一たん任命いたしまして、さしてその人が不適当でないといった場合に、女ばかりであるから男を入れるとか、男ばかりであるから女を入れたらどうかというところまでは実はどうかと思っております。  なお、先ほど三十五歳の男の人がということでございましたが、私どもが出しました通牒では、三十歳以上ということを一応の基準にいたしまして措置をいたしておるわけでございます。なお、もう一度よく調べてということにいたしたいと思います。
  27. 赤松常子

    赤松常子君 その点、私も現地に行って調べたわけでなく、東京の婦人相談員からそういう報告を聞いたのでもう一度私の方も調査いたしたいと思っております。  それからもう一つ婦人相談員に任命されておる人が、外人相手の女に部屋を貸している。これは横須賀の例でございまして、この二月の十五日の毎日新聞に大きく載っているのであります。で、その人は横須賀の市長から婦人相談員の任命を受けていながらクラブ・パラダイスという外人専門のカフエーを経営して女給さん八人にそれを貸している、そして毎日アメリカ兵が泊りに来る。こういうことが堂々と新聞に出ている事実があるのでございますが、こういうことが、一体まあ何という、どう説明してよろしいでございましょうか。  それからなお、私この間も売春防止法施行後の状態を調べに関西へ参りました。大阪で業者の代表を集めまして懇談いたしました。それは一般業者は売春防止法に対し、実現のために努力しているのか、協力しようとしているのか、こういうことを中心にした懇談会でありました。そこにやはりすでに任命されておる婦人相談員の方の御出席を願ったのです。婦人相談員二名御出席になりました。ところが話が進むにつれまして、私どもは強くこの法の実施を迫っておりましたが、話を聞いて、一人の婦人相談員が退席なさったのです。それで、その懇談会は終りまして、もう一人の婦人相談員が私に耳打ちなさるのに、赤松さん、あの退席なさった方は業者とぐるになって、この公娼制度の存置論者で有名だったのですよと。それがどういう風の吹き回しか婦人相談員に任命されている。こういう全く法の方向と相反する人が婦人相談員になっておる。こういう、私どもとしては及びもつかない、想像もできないことが、府県で行われておるのでございますが、この点に対しまして、もう少し目を届かしてもらうことはもちろんですけれども、こういうことに対して、一体どういうふうに処置したらいいのか、適格、不適格はどこでどういうふうにこれを考えてきまりをつけたらいいのか、このまま放置していいのか、法と逆行するようなことをただ見ていてよろしいのか、御見解を聞きたいと思っております。
  28. 安田巖

    政府委員安田巖君) 今御指摘になりました横須賀市で、はなはだ婦人相談員たるに不適当な人が相談員に任命されておるじゃないかというようなお話でございましたが、これは、私は実は新聞記事を見たわけでございまして、いろいろ聞き合してみたのでありますが、この人は産婆さんで、もと家庭裁判所の調停員もしておりましたし、そして現在日赤の横須賀支部の副会長もしておって、そういった点で世話好きな有力者のようでございます。ただ横須賀の一般の家庭では、いろいろ間貸しをしておる人かたくさんあるようでございますが、この人も別にバーを経営しているわけでなくて、ただバーの女給が下宿しておるということだそうでございます。これは市当局からの話でございますが……。そこで、そういう問題が起ったというので、女給さんはむしろ産婆さんが気の毒だということで、自分で他に転出したということまで聞いておるのでありますが、それ以外には、市当局といたしましては、大して不適当な人ではないと、さして不都合な人ではなく、むしろ非常なそういう点については熱意のある人だというふうな見解をとっておるようでございます。一般的に申しまして、もし非常に適当でないというようなことがございますならば、もちろん私どもに任命権があるわけじゃございませんけれども、そのつど、そのときどきのケースにつきまして、私どもの方から注意を与えたいと思っております。どうぞ一つよろしくお願いいたします。
  29. 赤松常子

    赤松常子君 どうぞ。今横須賀の問題は……、そうでした、自分が病室を持っていて、それにパラダイスの女給さんを泊めていたということでありましたが、しかしこういうことがだれも知らないわけではなく、みんな周囲の人も知っているし、付近の人の話でも有名で、男をつれ、男が出入りするということをよく周囲の人も知られておるというような人が、どうしてまた婦人相談員に任命されたのか。私はその後ちょくちょく聞きますと、やっぱり、これは福井県の例でございましたけれども、ただ、今まで有名である婦人で、有名だからというような婦人かその適格、不適格を重要に考えないで、簡単に任命されている。これは福井県の例であります。そういうふうなことが簡単に行われている例もたくさんございますし、私非常に今後、まだ任命されていない府県も五つございますので、その点強く御注意を願うと同時に、この横須賀のその後の結末を厚生省の方でお調べになって、一応御報告願いたいと思っております。それで、婦人相談員のことは強く要望申し上げて、これらの御活躍が十分に効をあげていただくようにお願いいたしたいと思います。  それからもう一つ、方々を回りまして、この法律が昨年出まして以来、くるわから抜け出て来る女の方もぼちぼちございますのですが、そういう方の処置をどうしたらいいかというお訴えを聞いております。この間も福井県でその例を二つ私伺って、取りあえず救世軍の保護施設を教えて、その方へと申しておきましたけれども、ぼちぼちこういうふうに出て来られる方々の実際の処置というものが、御存じのように非常に予算が少くて、まだまだ十分にございませんのですが、この過渡期を一体厚生省としてどういうふうになさるおつもりでございましょうか。十分御対策があるのでございましょうか、お伺いしたいと存じます。
  30. 安田巖

    政府委員安田巖君) だんだんこの法律ができましてから、私どもの方の保護施設の中のいわゆる売春経験者とそうでない人の割合というものが、売春経験者の方がだんだんふえてきたということが見られますから、赤松先生のおっしゃるようなことは、私は事実だと思うのでありますが、ただ、今婦人相談員もようやくそういったように置いたばかりでございますし、それから婦人相談所も八大府県でようやく今店開きしたばかりでございますので、その取扱いの上で保護施設が非常に足らなくて、すぐ困ったというほどのところまでまだいってないのじゃないかと、しかしだんだんそういうふうになることを考えまして、来年度におきましては、保護施設を三十九ヵ所ふやしたいというふうに実は考えているわけであります。最近も名古屋の相談所が店開きをしましたところが、もう店開きを待ちまして、すぐに飛び込んで来たような人があるのでありますが、大体自分で自発的にそういうふうにかけ込みをやったような人の更生の成績は割によくて、それから検挙なんかで送られて来たのはどちらかというと、あまりよくないというような話を聞いております。それらのことをいろいろしんしゃくいたしまして、今後の対策を立てていきたいと思います。
  31. 赤松常子

    赤松常子君 この四月からその業はしてはいけないことになっているのですから、全国赤線地帯十五万と言われ、青線地帯三十万と言われている人々が、どおっと潮のごとく出たら、どういうふうに処置なさるおつもりでしょうか。
  32. 安田巖

    政府委員安田巖君) 取締りの規定は来年の四月からでございまして、この四月からは保護更生の童だけが実施になりますから、まだ一年猶予期間があるわけです。でもこの猶予期間というものがどういう性質のものかということは、いろいろ御見解があると思いますけれども、ともかく猶予期間がある間は、そういうものが急になくなるということも考えられませんので、そういった取締りなりあるいは転廃業の状況とにらみ合せて、保護更生の措置なりあるいはそういったことが必要になってくる、そういうことも考えまして、できるだけ来年度におきましてそういう点について努力いたしたいと思っております。
  33. 赤松常子

    赤松常子君 大臣に今の点もう一度お尋ね申し上げます。もうぼちぼち足を洗って出てくる女の人たちもいるのでございます。ところが非常に予算が少いものですから、十分それを収容する所ができていない。この一年間の、その混乱と申しましょうか、そういう処置は一体、どういうふうになさっていらっしゃるわけでしょうか。
  34. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 先日も御指摘をいただきましたように、昭和三十二年度の予算としては、主として厚生省労働省関係に盛り込んだわけでありますから、これも御指摘のようにまことに不十分で、われわれとしても遺憾に思う点もありますが、予算が成立をいたしましたならば、私ども一としては急速にこれらの善後措置をまず第一次的に担当されております厚生省労働省の方面で全力を尽していただいて、われわれ閣員の一人といたしましては、万一それらの処置についてどうしても運営上やってみたけれども金が足らぬというような事態が起きましたならば、その際は政府としてもこれは適切な措置をさらにとってでも、できるだけ手の及ぶ限り努力をすべきものである、かように考えております。
  35. 赤松常子

    赤松常子君 すでに十七ヵ所宗教関係の方に委託しておいでになる施設がございますが、それの収容能力はどのくらいでございましょうか。またお調べいただいて御報告願いたいと思います。私どものところにも、いろいろ言ってこられる方もございまして、私的には連絡はいたしておりますけれども、そういう所へ、増設とかあるいは収容能力をもっとふやすとか、そういうことのお考えをやっていらっしゃるのでございましょうか。
  36. 安田巖

    政府委員安田巖君) 十七ヵ所で大体八百五十人ぐらいの定員でございますけれども、現在おりますのは七百名くらいです。
  37. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 先ほどの続きでございますが、法務大臣にお答え願いたいのでございますが、ことに、法務大臣に私お伺いしたいという点は、今度の予算法務省予算としては四百万にも足らないほんとうにわずかなもので、その内容を伺いますと、それは関係当局の者を会議に呼び出す費用だということでございますが、その点につきまして、私はことに責任ある答弁をお伺いしたいのは、もちろん売春婦を刑の対象として私どもは考えたくないと思っております。更生保護の対象として取り扱いたいと思うのでございますけれども、この予算から見ますというと、いかにも私は売春婦を、そのパーセンテージはわかりませんけれども、あまり甘く見ている考え方ではないかというように思いますが、その点法務大臣のお考えいかがでございましょうか。実はこれは、全国家庭裁判所の取り扱っていらっしゃるそのケースなんかから考えましても、なかなか海千山千の売春婦もおりまして、そのパーセンテージは全体の半分といい、あるいは三割といわれておりますけれども、それは三割にしても一割にしても、ただ、今まで全国十七カ所ございますような施設に、あの施設らしいものに入れて、一体取締りがおさまるかどうかという点、その点は大臣どういうふうにお考えでございましょうか。私の考えでは、これは全ヨーロッパだってそうでございますけれども、ただいま日本の施設としてございます少年院程度のものはどこでもございます。その点いかがでございましょうか。
  38. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) これは、私ども決して甘く見ておるわけではございません。非常に容易ならないことであると心配をいたしておるのでありますが、法務省の担当しておる仕事といたしましては、今年度の、昭和三十二年度の予算に計上いたしました経費をもちまして、明年度より施行されます刑罰関係の諸準備を進め、また関係者の会同等を催しまして、これに対応する措置を、すみやかに、今年のうちに検討をして築き上げておきたい、かように考えておるのであります。とにかく赤線地区、青線地区等、これを加えますと四十万からになります人員でありますから、なかなか売春防止法の運営だけで、これらの完全な転業及び売春を完全に絶滅するということにつきましては、実際これは容易ならないことであると思うのであります。従いまして、できるだけ皆さんのように熱心に売春の防止についてかねてから御論議をいただき、御研究いただいております方々のお力等も拝借いたしまして、できるだけこれは売春業者関係及び売春婦関係の自発的転業の意図が盛り上るように、世論を喚起していく必要があるわけです。この世論の喚起と政府の行政措置とが相まっていきませんというと、とうてい計上された予算や行政官庁の措置だけでこれを絶滅し、売春防止の完全な目的を果すということはなかなか至難かと思いますので、私どもといたしましては、どうか天下の識者の方々の一そうの売春防止に対する世論の喚起についての御協力を賜わりたいと、かよう考えております。
  39. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 私が第二点に触れたいと思いますことも、この世論喚起の点でございましたが、それにつきまして、政府の方では何か具体的の御案がございますでしょうか。実は全国歩いてみますというと、どこに参りましても売春防止法はざる法だ、ざる法だと言われる。実にざる法だと言われますけれども、これはこの言葉がどこから出た言葉か知りませんが、しかし私はこれはざる法ではない、これはこれだけの法律を作っただけでもとにかく世界並みになったわけなのでございますから、ざる法ではない。ただしかし、この第一条に道徳規定がございまして、売春行為を悪であるという、その悪であるということが法律において明らかになったということは、確かにこれは私どもとしても大いに喜んだことなのでございますが、しかし翻って考えると、こう言わなければならない。一体この売春が悪であるなんていうことを法律規定しなければならないというこの現状を、私は嘆かなくちゃならないと思うのでございます。それで、それに対して一体どういう政府は考えを持ち、手を打つつもりだろうか。今の世論関係と申しますか、国民道徳の高揚といいますか、国民思想の善導といいますか、とにかくこれは法律でのみ規制しても役に立たないことでございますので、どうしても日本人全体が恥を恥として知るというような指導という点が、私この立法に対しても非常に肝心なものじゃないかというように考えております。  実は業者の転廃業につきましても非常に問題がございますけれども、今度歩いてみまして大へんびっくりいたしましたことは、だんだん業者は宿屋に変り、そして宿屋の女中に売春婦がなるという、これは女中として宿屋におりましてかせぐということは、なかなかこれは取締りの上でもめんどうなことでございましょうというように思っております。そしてまた女あんま業というようなものが現に熱海あたりでは大へん多いということを聞きましたのでございます。で、こういう取締りも次に出てくることと思いますけれども、しかしその前に、今大臣のおっしゃった問題——全体の世論喚起というようなことの具体的な御案があれば、一つ示していただきたいと思っております。
  40. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 世論喚起ということは、非常にこの法律目的を果す上において、御指摘の通り重要であると私どもは考えております。さしあたり近く売春対策協議会の幹事会を開いてもらいまして、この幹事会で世論喚起に関する一つの政策を立案していただきまして、大体今われわれの考えておりますことといたしましては、売春対策審議会委員の方々にまず一つ陣頭に立って啓蒙運動をしていただく。幾つかの班を作りまして各方面に御出張願いまして、売春の実情の調査とあわせて、啓蒙運動の第一陣として一つ御活躍をいただきたい、かように考えておりまして、現在御審議いただいております予算の中にも、私数字は明確に記憶いたしませんが、所要の経費を計上してあるはずでございます。まあそういうようなことをやり、さらに広範な世論喚起の努力を続けて参りたい、かように考えております。
  41. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 その問題は重要問題でございますので、また折を見ていろいろ伺いたいと思っております。時間がございませんのでもう一点だけ伺いますが、この保安処分をされるときに、まあ入れものの問題なんでございますけれども、私は先ほども少年院程度ということを申しましたが、その意味合いは、自由にまあ外に飛び出すことができないような、つまり逃走を防止するようなことは、この全体ではございませんけれども、ほんとうの悪質な者だけに対して設備は要らないかということと、それから集団的な保護が一体効果があるかどうかということ、そうして政府はこの職業補導、それから次に私は最も大事だと思っておりますけれども、彼女たちに対する生活補導というような点について、一体どんなお考えがおありでございましょうかということを伺いたい。
  42. 渡部善信

    政府委員(渡部善信君) 保安処分といたしまして、これらの婦人を拘禁してそれに更生の道を与えていくということは、これは非常にむずかしい問題でございます。現在法務省といたしまして、いかようなこれを形に持っていくかということを、あらゆる面から検討いたしておるのでございます。宮城委員の仰せのごとく、これに矯正教育を施していこうと申しましても、拘束力の全然ない、どこへ持って行っても差しつかえないとか、逃げたいときに出ていくというようなことでは、とうていその目的も達せられない面もあると存ずるわけでございます。ある程度の自由を拘束して、そうしてこれに所要の職業教育を施していくというような方法も講じなければならぬと存じておるわけでございます。かような面で、実は現在婦人を入れております刑務所でも同様な矯正教育を施しておりまするが、宮城委員もごらんになっていただいたと思いまするが、笠松の刑務所におきまして、こういう女子の矯正教育の一つの面を、これは持っておるわけでございます。しかし、これらの現在の刑の執行としての場と、また保安処分としての場とはおのずから異なって参らなければならぬと思うわけでございます。その辺の考え等も十二分に考慮に入れまして、特に職業補導の面を強化していきたいというふうに実は考えておるのでございます。
  43. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 私は初めに刑を対象とするということでなしにということを大臣に対する質問にも申し上げましたけれども、毛頭私は刑の対象として初めからかかるということを申しているのではございません。どうかほんとうの婦人として、日本の母として、もう一ぺん更生さしたいということが私どもの念願でございます。だけれども、私はそうなまやさしいことで……、ほんとうに愛情があるならば強いむちも当てなくちゃならぬというのか私は事実であろうと思う。そこで、このきづのつかない、つまり前科者としての焼印を押されるのじゃないけれども、ある放らつな生活、または仕事をきらっているなまけ者、少し薄ばかな者に対する処置としては、やはり法務省法務省関係において私は考えるべきであって、どうもことしの予算なんかの多寡から見ますというと、これはほんとうに厚生省関係でもってやれば事が足りるといったような、何か考え方じゃないかというように私は考えておりまして、これはほんとうにりっぱな適切な入れものからまず考えたければ、この仕事は、たとえ売春防止法が、今の保護立法ができまして完全になりましても、事実としては運営が私はできないと思う。この十七の保護施設は、今までの成績を政府がたびたび答弁していらっしゃるのですけれども、ごく最近はまだ伺っておりませんが、入れても逃げていって、そうして、実際は開店休業だというような所もあります。私の見ました北海道なんかは、ほんとうにだれも入ってこないので、たまたま入れてもすぐ逃げてしまうというような事実も伺っておる。だから今世間一般としましては、保護せい保護せいと、あの人たちはかわいそうだかわいそうだと言うけれども、ほんとうにかわいそうだと思うならば、政府は、もう少し私は強いむちを当てなければ、ほんとうにかわいそうな女は救えないと思っておりますが、いかがでしょうか。そうして、その予算が取れないというのは一体どういうわけなんですか。
  44. 渡部善信

    政府委員(渡部善信君) 私が申しましたのは、決して刑と同一にやるというわけではございませんので、私が申しましたのは、実は笠松の刑務所は、これはかきはございません。へいはございません。あすこは紡績の工場を改造いたしたもので、全然これはかきねはございません。それで刑務所の刑の執行をいたしておるのでございます。しかも、現在では笠松の刑務所では逃走はこの近年一つもない。先般も保安表彰を受けたわけでございますが、さようなことで、かきねがなくても刑の執行をいたしておる。従って私は刑の執行でない保安処分におきまして、さような高いかきを設けるというようなことはいたしたくないので、そこをどの程度に持っていって拘束を持たしていくかということに大きな悩みがあり、また、今後非常に検討を要するところがあるということを私はつくづく感じておるわけでございますが、決して刑務所と同じ考え方を絶対に持っておらないということを申し上げておきます。  なお、この予算がないではないかということはごもっともでございますが、実はかような婦人矯正施設は、今後できまする保安処分と相待っていくわけでございますが、保安処分規定が成立いたしますれば、当然にこれに伴う収容施設を早急に作らなければならぬ。この保安処分の法規ができますると同時に、当然予算はつくべきである、かように存じております。なお、仰せのごとくわれわれといたしましては、ほんとうに画期的な立法といたしまして、りっぱな保安処分執行すべき施設を持ちたいということを考えております。しかし、なかなかこの予算の獲得につきましては非常に困難性を伴うということは私は予想しております。どうぞ強い一つ御支援によりまして、りっぱな予算の獲得のできまするように、今後とも一つ御協力を願いたいと思います。
  45. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 まことに残念でございますが、ぜひとも出席しなければならぬ会がございますので、これで打ち切りたいと思いますが、また次の機会にお願い申し上げます。
  46. 赤松常子

    赤松常子君 中村法務大臣にお伺いいたしたいと思います。  法務大臣政府の中に売春対策審議会が設けられておりますことは御承知だと思います。もう数十回にわたって慎重にこの問題と取っ組んで、りっぱな答申案をお出しになったことは御承知だと思います。ところが、それを閣議にかける段階になりますと、非常に私どもは不明朗なことを聞いたのでございます。そして結局うやむやになりまして、何だかその処置が筋道が立たないようなことになってしまつて……。その辺の御事情をはっきりおっしゃっていただきたいと思います。
  47. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 御指摘をいただきました点はまことにわれわれとしては苦心をいたしておるのでありますが、御承知の通り、法務省あるいは厚生省の直接売春問題に関係をいたしております所管の一同は、常に熱心な御議論を拝聴いたしまして、十分理解を持ち、また熱意を持っておるわけでございますが、なかなか政府全体の予算の編成等の段になりますと、直接そういう問題に触れていない人たちとの間に、どうしても精神的なギャップが起きてくると思うのです。こういう点を私ども大いに政府部内におきましても今後各関係方面の理解を深めることに最善を尽して参りたいと思います。御指摘の通り、売春審議会の答申の精神が、そのまま生かされ、そのまま活発に動き出さないのは、どうも不都合ではないかというお叱りごもっともだと思うのですが、なるほどそういったような傾向が起きて参りますのは、やはり直接その任に当って深い関心を持っておるものとそうでないものとが、同じ政府部内におきましてもあるいは行政官庁同志におきましても、感じの開きが常にございますものですから、この開きをなくしていく努力が私どもの努めだと思います。今後、お話のように、そういうギャップをなくしていくことに最善を尽しまして、売春対策審議会等で御審議になり、また一つの結論を得ましたものについては、ほんとうに政府が一体となって強力に実施できますように、微力でありますが最善を尽したいと思います。
  48. 赤松常子

    赤松常子君 今のどういう取り扱いになったか、この私の質問申し上げたあとで、その処置の方法もちょっと御答弁願いたいと思います。この業者から出ております新聞に、自民党のある有志議員が出ておいでになります。ずいぶん御出席になっていらっしゃいまして、十人以上でございますが、その方々が、非常に業者を鞭撻していらっしゃいまして、この答申案は業者をなま殺しにする非人間扱いする答申案であって、そういうことはわれわれとしては承服できない、「あの答申案は全く血も涙もないものです。」、これは自民党の有志議員の御発言です。「あれでは政治はないと同じだ。政調会でやるか、または特別委員会をつくるか致します。ただし私は答申案に拘泥する必要はないと思う。」、またほかの委員は、「由々しき社会問題です。私は先頭に立って断固斗います。」ある有志議員は、「結束を乱しては弱い、なんといっても集団の力は強い。」、こういうふうに、業者のその団体を保守党の先生方が激励しておいでになる。私は、こういうことを政府の当局者が知ってか知らずでか、このまま放置しておいでになることもけしからぬことだと思うし、こういうことがあるから、答申案がもやもやとして、閣議にもかけられないで握りつぶしの運命にあっているのではないでございましょうか。この辺のつながりというものをちょっとはっきりおっしゃっていただきたいと思います。
  49. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) だれか結局そういうような一部議員の有志の人が、そういう会合に出ておるようだから、自然党内及び政府部内においても何かの動きをしておるのじゃないか、しておるならばはっきり言え、こういう話だと思うのです。しかし、私の寡聞にしてまだそういう人から直接の交渉を受け、話を受け、あるいは現在の政府としても、そういう有志の人たちがそこに出てどういう勇ましいことを、逆のことを言っておるか知りませんけれども、公式に政府やわれわれ関係の者に申し入れておる事実は全然ございません。従いまして、そういうことのために動かされて、審議会の御意思が曲げられておるとは考えておりません。ただ、前に私も新聞等で拝見いたしたのでありますが、根本官房長官の時代に、売春に関する官房長官談話を発表したのも大へん問題になったようであります。今後われわれといたしましても、審議会の方々熱心に論議を尽され、そうして方向をきめ、具体策等についても御意見を表明していただきましたものについては、ほんとうにまじめにこれを突っ込んでその精神を生かし、結論を生かすように最善を尽して参りたい。残念ながら実は、どういうことになっておるかという何か裏がありそうなお気持ちでの御質問のようでございますが、私そういう事実は承知いたしておらないのであります。
  50. 赤松常子

    赤松常子君 あるからお伺いしたいのです。大へん意地の悪い質問でございますけれども、こういうことが業者の新聞に載り、これがまかれておるということは、売春法案に誠意を持ってやっていこうという熱意が全然見られない現象だと思い、それに今申しますように、これは満場一致で去年の国会で通った売春防止法であるにかかわらず、その満場一致の党の議員の方が御出席になって反対運動に参画しようとしておいでになる。それで、私は与党の中にも売春対策特別委員会というものをお設けになったと聞いておりますが、それはどういう意図でお設けになったのか、また次の機会でよろしゅうございますから、この売春防止法の前進のためか逆行のためか、はっきりこの次の機会までに……。
  51. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 先ほど宮城さんもお触れになりましたけれども売春防止法が来年の四月一日から施行される前に、すでに新しい形に移行しておる、新しい組織が生まれつつある。たとえば先ほどあげられましたような宿屋に転業してそして女中が売春婦であるというようなお話、あるいはまあこれは従来からあったのでしょうが、熱海に見られるような女あんまのこと、それからまた今後予想されるコール・ガールのシステムが広がっていくというようなこと、そのほか新しい形でいろいろ出てくるだろうと思う。たとえば最近問題になっております鳩森のような事態ですが、ああいう連れ込み宿が非常にたくさんふえてくる。これが一方において法律を作りましても、そういう新しい形態をなかなか捕えにくいことも起ってくるのですが、これに対しまして、すでにその新しい形、今後そういうものが生まれてくるような事態について、調査研究をされておるか、それに対して何か手を打つ準備をしておられるか、その点をお伺いしたいと思います。
  52. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) お話のように、これは各国とも非常に売春の防止については長年苦労してきておるところで、日本としては昨年この法律が成立をいたしたばかりで、これから実施をいたし、法律目的を果して実を結ばしていこうというわけなんですか、一方を食いとめて参りますと、自然にそれがどこかへはみ出していく危険性というものが、これは必然的に考えられることであります。先ほど宮城さんか赤松さんでしたか御指摘がありましたように、一部ではこの法律がざる法律であると言う人もあるようですが、どういう意味でそういう言葉が言われたかわかりませんが、この法律自体に、やはり単純売春を処罰しないということは、まあざると言われる一つの根拠だと思うのですが、自然計画的な売春というものが刑罰を受け、あるいは保安処分を受け、その他の方法で締め出されて参りますと、単純売春の方向へ流れていく危険性というものは、これはどうしても今から考えてその用意をしていなければならぬと思いまするが、まあこれらも一拳には全部を解決することができないから、こういう進み方を政府としてもまた国会の議決としても進行しておるのだと思いますが、それらの点につきましては、今どういうはみ出し方をして、その量がどうなって、それがどうなるかというこまかいデータができていないと思いますが、事務当局はある程度具体的に資料を集めておるかもしれませんが、おそらくまだ結論に達していないと思います。われわれとしましては、そういう御指摘の点は十分一つ考慮に入れて、今後全体としての目的を果すように、要するにはみ出していく方向への注意も十分払って、それが見のがせないようなものであるならば、それに対しては適当な方法を講じ、逐次法律目的を達成するようにやっていく以外にはないのじゃないか。かように考えております。
  53. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 問題は、擬装された組織売春、新しい形の擬装された組織売春の形だろうと思う。それに対してはもうすでに新しい形が発生しておるわけなんですから、これは一つ法務省の方もよく十分に調査研究して、敏速な処置をとられるような方針をとらぬと、それが組織に広がってしまって、大きくなってからは抑えにくいですから、早くそういう調査研究をしていきますならば、それに対応する策が立つと思うのです。ですから、その点は十分に一つやっていただきたい。  それから次に、まあ法律施行されるまでの間に、実は業者が自発的に相当やめるだろうということが予想されておった、ところがそれが比較的少いのですね。その少いのはなぜかというと、先ほど赤松さんが指摘されましたような、新聞に出ておりますように、なかなか勇ましい方があって、大いに激励しておる而がある。それからもう一つは、その方々かあるいはほかの方々か知りませんが、補償をするということをにおわして、業者の方でも政府の方で補償をしてくれるだろう、それを何とかしなけりゃということで、運動をしようというような努力もあると聞いておる。こういう点について、やはり政府の方ではっきりそういうことはしないのだということを、重ねてはっきりさせておいていただかぬといかぬのじゃないかと思いますが、その点はどういうふうに……。
  54. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) これは売春防止法制定されるまでもなく、本来は道義に反したことでありますし、また、各都道府県等の地方行政の上におきましても、刑罰は従って軽いかあるいは訓示的な規定であるにせよ、やってはならないということに、ほとんど全国的になっている事柄をやっておる者があったわけでありますから、さような違法な営業、本質的には、立法措置売春防止法ができる前から違法な私は業態であると思うのであります。こういう違法な業態を法律の制度ができて完全な禁止をして、場合によっては刑罰も課する、こういう制度を確立しました以上は、これに対して転業の補償というようなこと、あるいは営業の補償というようなことは絶対あるべきものじゃないと私は思います。ただ、この人たちが転業しやすいように政府が何らかの考慮を払うということは、これはあってしかるべきかもしれないが、分業の補償をするというようなことは、私はあるべからざることだ、かように考えております。また先刻お話の擬装された転業というようなものも確かに予期し得るところでありますから、これは擬装された計画的な転業ならば、これは転業ではないので、本質はやはり従来の売春行為、法律に触れる行為を継続しているものと断定して差しつかえないものであろうと思いますから、これらに対しては、法の運用上、看板が変ったから中身は変らぬでも法には触れないのだということはあり得ないことでありますから、十分法の運用上われわれとしては注意をして参りたい、かように考えます。
  55. 山本米治

    委員長山本米治君) なお皆さんに申し上げますが、この問題は警察庁の中川刑事部長が来ておられますから御了承願います。
  56. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 これは、じゃ一つ警察庁の方にお伺いいたしますが、最近の取締りの状況並びに先ほど私がちょっと申し上げましたように新しい形への移行、それについての御調査がありましたら、それらについてお伺いしたい。
  57. 中川董治

    政府委員(中川董治君) この売春関係事犯の私ども警察関係におきまする取締りの状況でございますが、すでにお話もあったかと思いますが、来年の四月一日から刑事処分に関する規定が全面施行されるのでありますが、これは、売春防止法法律趣旨ができるだけ行政措置によって、ことに保護更生等の措置によって、だんだんこういった社会悪をなくしていこう、こういう精神に法律構造がなっておりますので、現段階におきましては現行法の、すなわち現行法と申せば刑法とかあるいは地方の都道府県等の条例と昭和二十二年の勅令九号、こういった現行法に基きまして、取締りに当っておるのであります。現行法によって取締りに当っておりますので、売春防止法全面施行のごとく、きちんと十分条文の趣旨に沿うという取締りについては、相当に隘路があるのでございますが、ことに強制的売春をやらせるとか、非常なこの婦人等に対して迷惑をかけることが顕著で、売春が行われておる、こういったものを中心に取締りを逐次強化いたしておるのであります。従いましてこういった人身売買、いわゆる人身売買という関係が予知されるものにつきましては、相当の取締りの実績を上げておるのでございます。  次にお尋ねの擬装といいますか、いろいろくぐっていろいろまあ考えはせぬだろうかというお話でございますが、これはすべての犯罪について言えることでございましてたとえば窃盗につきましても、人の物を窃取するについてはいろいろ工夫して、なかなか人に見かけられぬように詐取するというふうに、犯人としては考えるのでございますので、売春事犯関係につきましても同様なことがあり得るわけでございますが、われわれ最末端におきまして犯罪の捜査に従事している者といたしましては、経験のいかんを問わない、実態が法の禁止するところであるかどうかということをきわめて参ることでございます。いわゆるコール・ガールというようなシステムを用いている人たちもございます。お話もありましたが、コール・ガールというシステムを用いてやっておりましても、婦女を売春のために強制していると、あるいは婦女をそういったように管理していると、こういう実態を持っておるということにつきまして証拠が得られましたものにつきましては——これは証拠収集ということが、隘路によって若干うまくいかないという事例もないことはありませんが、証拠によりまして、たとえば勅令九号の違反、こういうことが立証できたものにつきましては、どしどし検挙いたしておりますので、いろいろ世間ではあれやこれやを考えて、あの手この手を考えておるというふうに言われておるのでございますが、私たち捜査当局といたしましては、あの手この手を考えましてもその実態を究明していく、われわれ捜査当局としては証拠に基いて証明する必要がございますので、そういった点についてはいろいろ工夫いたしまして、警察官の教養等も、そういった趣旨の教養も徹底いたしまして、警察庁はもちろんでございますが、関係機関と大いに協力いたしまして、売春防止法制定された趣旨に即応して、私たちの任務を果して参りたいと、こう考えておる次第であります。
  58. 赤松常子

    赤松常子君 私ちょっと大臣に一言申し上げて終りにいたします。  先ほど答申案の処置をまだ御答弁になっておりませんので、答申案がどういうふうに取り扱われているかということの御答弁を伺いたいと思います。  それからもう一つは、私大へんきょうはうれしく思ったのですが、この前の法務委員会では、業者の転廃業に対する大臣の御決意を伺ったときに、大へん私たちはあいまいな御答弁を伺って実はびっくりして、また再質問した。この転廃業に対する国の補償であるとか、あるいは融資であるとかということに対して、ふっと大臣予算措置なんとおっしゃってびっくりしたのでございますが、きょうはそういうことに対しては一切協力しない、善導はするけれども指導はするけれども、そういう経済的な面の協力はしないとはっきりおっしゃって、私は意を強ういたしました。  それからこの前、法務委員会で実は宮城委員もおっしゃったのですが、私もこの間女子刑務所を歩いて感じたことの一つで、妊婦が刑を受けて刑務所に入りましてそして分娩をいたします。それは戸籍にその分娩した所の番地が従来は載っていたのですけれども、最近は非常にあたたかい措置で、刑務所長さんの住んでおられる番地にするとか、あるいは外で分娩さして、その医院の番地にするとか、ややあたたかい配慮がなされておりますけれども、まだまだそういうことのできていたい点もあり、またこの前質問申し上げましたときに、関係当局がなかなか刑を受けている人を外に出すというときのいろんな手続とか何とかということが不便のように御答弁なさいましたけれども、しかし、すでにある監獄法及び刑事訴訟法で、妊婦の扱いというものをこの法律の中のある条項を適用すれば、外で生ますことができる、あるいは外で生むと刑の執行が少し猶予されることもあるのでありますが、すでにあるこういう法律を十分御適用下さいまして、そういう点の御配慮を願いたいと思います。ほんとうに一つの生命が生まれるわけでございますから、よほどそのときは女囚であるとかあるいは受刑者であるとかというような低い考えではなく、ほんとうにこれは生命の誕生であるという尊厳な考えで、その関係の人々が丁重に扱っていただくように、私たちはこれを適用すれば、今申しますように女で受刑ができる。それで非常に中におりましても外で分娩できるという、そういうゆるやかな扱いの条文があるのですから、これをさらに強く採用なさっていただいて、そういう場合の妊婦の女囚に対するあたたかい御配慮を強くお願い申し上げておきます。
  59. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 受刑者といえども今日は応報主義で刑罰を課するのでないという建前でありますし、なおのこと生まれる子供には罪はありませんので、たぶん今までも聞いておるところでは、刑の執行停止をした者等もあるそうでありますが、今後一そう御趣意を体しまして、ただその受刑者が逃亡のおそれが多分にあるとか、あるいは精神状態がどうも病院に出しておけない状態であるとか、非常にいら立った状態にありますとかいう特殊の者を除いては、できるだけそういう期間は刑の執行停止をいたしまする法条もございますから、そういう既にありまする法条を適切に運用いたしまして、できるだけ人道にかなうような道をとっていくことについて、私どもとしては大いに関係当局を督励いたしまして、御趣意に沿うように今後も努めて参りたいと存じます。
  60. 赤松常子

    赤松常子君 答申案の処置について一言どうぞ。
  61. 井本臺吉

    政府委員井本臺吉君) 売春防止法の円滑な施行を期するための行政措置というのが、いろいろうわさをされておりまするが、これにつきましては昨年の十二月十七日に事務次官会議で申し合せ事項を決定いたしまして、その行政措置を円滑に施行するように、関係次官から都道府県知事にその旨の通牒が出ております。従って、その趣旨に基きまして、各行政機関がこの売春防止につきまして歩調をそろえて、円滑に所期の目的を達するように、お互いが協力してやっていこうという態度に出ているはずであります。
  62. 赤松常子

    赤松常子君 私の申しますのは、閣議にかけるということが、答申案の一応筋道ではないですかということを聞きたいのですが、なぜ閣議にかけられなかったかということを聞きたいのです。従来のそういう諮問機関の結論というものは、大てい閣議に報告されるはずなんです。それが今度に限って閣議に諮られず、次官会議で取り扱って、それで閣議にかけられなかったという点に疑問があるのです。なぜ閣議にかけられなかったということを伺いたいのです。
  63. 井本臺吉

    政府委員井本臺吉君) 私も詳細にちとわかりかねているのでありますが、閣議で決定するまでもなく、事務次官会議できめてやればいいじゃないかということで、事務次官会議で内容をきめまして、それを関係の次官から都道府県に通知をいたしまして、それによって早く処置しようというようになったと思います。
  64. 赤松常子

    赤松常子君 今後御報告願いたいと思うのでございますが、従来のこういう政府機関内にある審議会なり何かの答申案はどういう処置をされておったのか、従来の例は、今度のこの売春対策審議会の答申案とは違っていると私は思っておらないものですから、その辺の疑問を、どうぞこの次の法務委員会で御解明願いたいと思います。以上で私は終ります。
  65. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 これは売春防止法案に関する問題ではないのですが、二つお伺いいたしたいと思います。  第一は、相馬ケ原の農婦射殺事件の、例の米兵犯人ですね。あれの裁判管轄権の問題ですが、その後どういうふうに進行しておるか、折衝がどういうふうに進行しておるかその点お伺いしたい。
  66. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) これは日本側としましては、傷害致死という検察庁で県警察部から送検を受けました事件を、詳細に現地の検証、その他証拠調べを重ねて参りまして、結論としては、傷害致死という結論を得、同時にこの事案は公務としての作為、または不作為から起きた犯罪ではないという結論を得まして、そうして米軍側の方にこの申し入れをいたしまして、その後米軍側の方へすみやかに結論を出すように督促をして参りましたところが、最近になりまして、アメリカ側では、直ちに日本側の要求に応じられないということで、結局合同委員会審議をすることになりました。聞き及んでいるところでは、本日午後合同委員会がありまして、ここで一応の論議をいたしますので、まあ審査をいたしまして、多分両国の間に刑事裁判権分科委員会というものが設けられておりますので、この委員会におろされて、ここで討議して最終結論を出すと、こういうことになるはずでございます。従いまして、日本側としましては、担当の検察庁で出ました結論を、あくまで諸般の資料を出しまして主張を続けて、目的を果すようにいたしたい、かような段階に現在ございます。
  67. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ただいまの問題につきまして、おそらく日米合同委員会におきましても意見が対立するものと思います。こちら側の意見はぜひ貫いていただきたい。裁判管轄権は当方にあるように言っていただきたいのでありますが、しかし、おそらくここでアメリカ側が日本側の主張になかなか応じるとは思えません。そういたしますと、これはもう法務省の問題ではなくなると思いますが、これは内閣として外交折衝に移されるつもりであるかどうか、その点について法務大臣の御見解をお伺いしたい。
  68. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) どうしても裁判権分科委員会で論議をしまして、そうしてそれぞれ証拠を出し、根拠を示して主張し合いまして、意見の一致を見ない場合には、お説のような方向をたどるかと思いますが、従来私ども管轄問題で両国間に意見の相違を来たしました事案がたくさんございますので、それらの結末を実は確かめておるのでありますが、大体最後には話し合いがつきまして、管轄権の結論が出ておるようでございます。で、従来の例からいいますと、アメリカ側としては、日本の主張が、根拠が確かに十分の資料があって、正しいと認めた場合には、いさぎよく譲歩しておるのがどうも今までの例のようでありますから、私どもとしては外交折衝にまで移すほどの暗礁に乗り上げないで解決の見込みが立つのではないか、そのような期待を持って現在はおる次第であります。
  69. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 これは占頭中によくあったことですが、アメリカ兵が犯罪を犯した、そうすると日本の方でもって、これに対してのいろいろその事実を訴えて向うの方で黙って本国へ帰しちまうという例が非常に多い。これは占領中のことです。しかしこういうような事態が起って参りますと、往々そういうような問題もあるいは起らぬと限らぬ。大ていないとは思いますけれども、しかし起らぬと限らぬ。今の犯人の米兵はどういう状態に置かれておるか。また日本側としては、それが軍の命令、あるいは軍の移動と一緒に本国へ帰ったしまうようなことがないのかどうか、その点はっきりさしてあるのかどうか、お伺いしたい。
  70. 井本臺吉

    政府委員井本臺吉君) 本人は熊谷の在のアメリカ側の施設にとどめておるというふうに聞いております。なお、本人がこの問題が解決する前に帰るということがないように、アメリカ側当局と私どもの方で約束ができております。
  71. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 第二の点は、自衛隊の死の行進事件の問題です。これは国会でも非常に取り上げられまして問題になっております。どうも自衛隊側の答弁あるいは防衛庁長官の答弁というのは、あいまいをきわめておる。矛盾をしておりまして、いろいろ突っ込まれてへどもどしておるような状態、この事件については今の自衛隊においては憲兵隊がございません。従って当然警察庁が捜査すべき問題、おそらく捜査しておるとと思う。捜査をしておるかどうか、そうして捜査はどの程度まで進んでおるのか、それをはっきりさしていただきたい。
  72. 井本臺吉

    政府委員井本臺吉君) 自衛隊には御承知の通り憲兵はございませんが、憲兵に似たような警務官制度が自衛隊法の九十二条に規定がございまして、この問題につきましても、警務官が取り調べを進めております。取り調べの結果につきましては、所轄の神戸地方検察庁に報告がきておるようでございます。なお、その最終的な結論につきましては、いまだ報告に接していないのでございまするが、その捜査の終結を待って、何らかの形で関係の記録を引き継げば、事件の送致をして、公正な検察庁の判断に待つという態度をとっておりますので、私どもの方といたしましては、近くその結論が出せるというように考えております。
  73. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 これは検察庁で自分でもって捜査することはできないのですか。
  74. 井本臺吉

    政府委員井本臺吉君) やってやれないことはないのでございますが、とにかく検察庁はごく限られた少数の人しかかかえておりませんし、どの事件にも手を出して調べるというわけには参りませんので、この事件の取調べも一応自衛隊側の警務官の調べに待っておるのでございますが、調べがどうしてもうまくいかぬというようなことがございますれば、場合によっては検察庁の調べもなし得る状況でございますので、さようなことがないとはいえないのでございますが、現状では、一応警務官の調べを待っておるというのが実情でございます。
  75. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 おかしな話ですね。とにかく手がないから調べない。もちろんこれは自衛隊の内部で調べておるでしょうけれども、しかし、これはどうもぐるのようになるおそれがある。これはあなた方、そういうことは御存じだと思う。ですから、こういうふうに人が死に、しかもこれだけ大きな問題になったものならば、検察庁としての独自の立場で調べるのが当然じゃないか。それを調べてないというのは、私はまことにおかしいと思う。その点どうですか。
  76. 井本臺吉

    政府委員井本臺吉君) 私は自衛隊の警務官がやはり誠実に職務の執行をしておるというように了解しております。この事件につきましても熱心に調べておるようでございまして、現在私どもが得ている情報では、曲げた調べをしているというふうには考えておりませんので、その調べの結果を待っておるのでございまするが、もし調べが曲った調べをするというようなことでございますれば、またわれわれとしても別途の考えを持っております。
  77. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 もしこの事件について告発があったらどうしますか。おやりになりますか。
  78. 井本臺吉

    政府委員井本臺吉君) 先ほど申し上げましたように、とにかく司法警察の仕事をするのが一次的には自衛隊では警務官がおりますので、警務官の活躍に待たざるを得ないのでございまするが、たびたび申し上げましたように、その調べが妥当でございませんければ、私どもとしてはまた別途に考えるという段階になっております。
  79. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 第三者から告発されたらどうなるかということを聞いている。その際には、あなた方がお調べになるかどうか。
  80. 井本臺吉

    政府委員井本臺吉君) 告発を受けましても、態度は同じでございます。
  81. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 それはおかしいんじゃないですか。告発をされたら捜査をするのが当りまえじゃありませんか。
  82. 井本臺吉

    政府委員井本臺吉君) 告発を受けた事件を全部検事がみずから手をつけてやらなければならぬというわけでもございませんので、その事情々々によりまして、警務官、あるいは警察の方にまず調べていただきまして、その上で検事がこれをまた調べるというようなやり方もございまするし、場合によっては直接検事が乗り出しまして調べをするということもございます。要するに事件の性質によってきめるわけでございまして、その関係は、事件の性質とか、あるいは私どもの方の手の関係等を勘案いたして、結局最も適当な方法でやるということに尽きると思うのでございます。
  83. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 手の関係、手の関係と言われますけれどもね、もし人がなぐり殺されたり何かした場合には、これは手の関係でおれの方はしばらく待つというようなことになりますか。
  84. 井本臺吉

    政府委員井本臺吉君) 刑事訴訟法の改正によりまして、犯罪捜査の第一次の捜査義務は、警察官が負っておりますので、警察官がまず調べをするということになるのが普通でございます。ただし、私どもの方も犯罪捜査権を持っておりますので、その調べについきまして納得がいかなければ、みずから進んでやることになりまするが、まず第一段といたしましては司法警察官の活躍に待つというのが現在の刑事訴訟法の建前であると考えております。
  85. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 あの事件が起こりましてからはだいぶ日にちがたっているんです。国会でもずいぶん問題にしているんです。それでまだあなた方の方へ報告がない、あるいは防衛庁長官の方へも報告がないんです。とすると、ずいぶんその手間もかかるし、何かどうも私どもには解しかねる点があるんです。だから私はそういう問題をお聞きしたんですがね。そうお考えにならませんか。
  86. 井本臺吉

    政府委員井本臺吉君) 先ほど申しましたように、報告がないわけではございませんので、そのつど、調べがまとまりますつど、私どもはある程度報告を受けております。ただし、正式な書類の送検というようなものはまだ出ておりませんので、さよう申し上げたわけでございまするが、だれだれを調べてどういう供述があったというようなことは、調べのつどわれわれは報告を受けているのでございます。
  87. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 その最終報告はいつごろになる見込みですか。国会が済むころですか。
  88. 井本臺吉

    政府委員井本臺吉君) ただいまちょっとどの程度になるか見通しはつきませんが、できるだけ早く送検するように関係者には言ってありますので、そう長くかかるとは思っておりません。
  89. 赤松常子

    赤松常子君 だいぶ時間も過ぎて恐縮でありますが、売春防止のことでちょっと谷野局長に一言お尋ねいたしておきたいと思います。  いよいよ四月から彼女たちの保護更生に乗り出さなければならないのでございますから、一人でも落ち込むことのないように、転落者を一人も出さないようにという点に、これからほんとうに努力しなければいけないと思います。その点につきまして、婦人保護の面から、最近あるいは昨年、この防止法ができまして以来、転落防止のためにどういう御処置をなすっていらっしゃいますか。御決意をちょっと伺わしていただきたいと思います。
  90. 谷野せつ

    政府委員谷野せつ君) 婦人少年局におきましては、売春の防止について、前から調査、啓蒙を実施いたして参りましたが、特に転落の問題につきましては、どのような径路をたどって売春婦に転落をするか、女性が転落をするかという点につきまして、私どもはまだ調査を持っておりませんので、昨年から特にその問題につきまして調査実施いたしました。まだ発表の段階には至っておりませんけれども、この調査に基きまして、私どもは、また皆様の関係機関といろいろ御相談いたしまして、転落しないためのいろいろな資料を提供いたしますと同時に、また皆様のお力を拝借いたしまして、広く啓蒙の段階に活動を集中いたしたいと思っております。また、そのほかに婦人少年局では一般の売春問題について、とにかく売春の悪ということにつきましても、またその他の一般の今度の売春防止法趣旨につきましても、啓蒙いたします役割りを持っておりますので、広く婦人問題の見地から皆様とお力を合せまして、大きな売春防止のための啓蒙活動を年々重ねて実施いたして参りたいと思っております。今地方には私どもの出先機関の婦人少年室がございまして、その婦人少年室も今度の売春防止法に基く行政措置要鋼に基きまして相互の連絡協議会——県の段階の連絡協議会の一員に加わっておりますので、皆様と御一緒に力を合わせて、転落防止、売春防止のために十分力を尽したいと存じております。
  91. 赤松常子

    赤松常子君 ほんとうにおっしゃる通り予算も少いこともよく承知いたしておりますけれども、最近よく新聞にまだ未成年の子女が犯されていたり、売られていたりして、非常に胸を突く記事もぼちぼち見えているわけでありますので、私どもも負うべき責任がございますが、どうぞ一そう落ちる人の一人もないように努力していただきたいと要望申し上げます。
  92. 山本米治

    委員長山本米治君) 他に御質疑はございませんか……。  それでは、本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十一分散会