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1957-02-26 第26回国会 参議院 文教委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月二十六日(火曜日)    午前十時四十九分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     岡  三郎君    理事            有馬 英二君            野本 品吉君            矢嶋 三義君            常岡 一郎君    委員            川口爲之助君            佐野  廣君            林田 正治君            吉田 萬次君            安部 清美君            高田なほ子君            松澤 靖介君            松永 忠二君            湯山  勇君   事務局側    常任委員会専門    員       工樂 英司君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○派遣委員報告   —————————————
  2. 岡三郎

    委員長岡三郎君) これより文教委員会を開会いたします。  まず、派遣委員報告を議題といたします。第一班佐野廣君、第二班松永忠二君であります。  第一番に、第一班佐野廣君より報告を聞きます。
  3. 佐野廣

    佐野廣君 第一班は、矢嶋湯山委員と私、それから調査室から吉田調査員菊地調査主事とが参加しまして、去る二月十日から一週間、香川愛媛大分の三県を調査して参りました。  今回の調査目的は、教育委員会運営の実態、教育財政現状教育職員昇給昇格実施状況等が主たるものでございましたが、なお、国立大学運営状況等調査いたしました。以下、各項目について関連性を持たせながらその大要を御報告申し上げます。  まず、教育委員会運営についてでありますが、香川県教育委員会におきましては、新法施行後も従前と大差なく、知事の理解も深く、議会当局ともきわめて円満に運営されており、予算編成支出命令教育財産等についてもほとんど委任されている現状であるということでございました。新委員の選任は、県議会において満場一致をもって円満に行われた由でありまして、委員構成は、医師実業家人事委員会事務局長高等学校長、あるいは教諭の前歴を持つ人々からなり、政党関係者または知事との特別関係者は一人も含まれておらず白紙中正であるということでございました。ただ、委員報酬は、旧法時代に比べますと、約二割程度減額となっております。それにもかかわらず、毎月の定例会その他の臨時会が二回ないし五回開かれることは従前と変りない状態であるということでありました。本県では、高松、丸亀、坂出の三市の教育長県教委出張所長と同一人が兼務しておりまして、これによって教育行政の円滑な運営を期し、着々その成果を上げている由であります。このことは市からの希望によるものだそうでありますが、珍しいケースであると思いました。県費負担教職員人事管理につきましては、新法実施以来、県教委市町村教委に対し密接な連絡のもとに内申を行うよう指導するとともに、今年度末の人事異動についてはその方針検討中であり、教職員服務については、従前から服務規定準則を制定して地教委を指導し服務の適正を期してきたが、その準則の改正について目下検討中であるということでありました。また、本県町村教委には三人委員のところは大体なく、教育長助役兼務もきわめて少数であるという報告でございました。  次に愛媛県について申し上げます。本県教育委員構成は、医師一、農業二、弁護士一、著述業一、教育経験者一、うち女性一人でありまして、政党関係者は全くなく、また特定政党からの圧迫等も全然ないということでありました。委員会運営の面においては、予算等については、県当局に対し、法的には対抗できないという意見を述べており、その一例として、高等学校授業料を従来の月額六百円を百円値上げして七百円とすることが、県議会において決定されんとしており、教育委員会としては、これに賛意を表するものではないが、いかんともいたしがたいという口吻でございました。  人事管理につきましては、地教委からの内申について事前協議をたびたび行なって調整する考えであり、現在の十二の出張所を五つの出張所と七分室にまとめ、これを大きい柱として、郡市間の人事交流を行いたいということでございました。  本県町村教委中、三人委員のところはほとんどないという報告でございました。それから本県教育委員会委員報酬も、従前の約二割減額となっておりました。  大分県教育委員会委員構成は、医師一、僧侶一、会社重役一、無職二でありまして、教育経験者政党所属者も含んでおりません。当県では、任命権者内申との関係については、従前よりも密接な連絡のもとに円滑に行われているということでございました。  地教委に関しましては、地教委連合会が組織されており、この連合会から町村長会市長会予算についての申し入れを行なって、両者間の調節をはかっているということでございました。  なお、各県ともに認められましたことは、指導主事の充実を必要とするということでありましたが、新法第十九条の四号に示されておりまする指導主事は、大学以外の公立学校教員をもって充てることができるという措置が、まだ適確にとられていないためであると考えられました。  本県地方教委のうち、三人委員のところは四カ所であり、また全県の教育委員三百二十四名中政党所属者は自民党四名、社会党一名という数字が上っておりました。  なお、本県に関しまして、特に御報告申し上げたいことは、学校安全会の設立についてでございます。本県については、児童生徒等学校管理下における災害の防止等学校生活における安全に必要な事業を行い、もって学校教育の円滑な遂行に寄与することを目的とする法人組織学校安全会をいち早く設立しておりますが、すでに小、中学校の八〇%、高等学校全部がこれに加入しており、幼稚園加入希望もありましたが、そこまでは拡張しない方針であると言っておりました。  次に教育財政昇給昇格実施状況について申し上げます。  まず、香川県について見ますと、本年度教育費は二十四億円弱でありまして、県歳出額の三六・七%に当っておりますが、このうち義務教育費は約六七%を占め、その九〇%が人件費であります。教職員構成は、小、中学校教職員五千八百人中助教がわずかに二百人にすぎず、この助教の少いということが本県の特徴でございます。職員一人の平均給与小学校一万七千四百六十八円、中学校一万八千二百二十五円となっており、全国比較の中位に位しております。  昇給については、休職中の者及び長期欠勤者を除いて完全に実施しており、本年度は十月昇給まで実施済みであります。一月昇給発令準備中でございました。昇格については、県職員には頭打ちが相当数出ているけれども、教員については特殊の措置をとり、三十年度から昇格所要経験年数の三割を延伸することとした結果、現在の級において、それぞれ昇格を九カ月ないし一年十カ月延伸することとなりましたが、昇給は行うのであるから実質的には大きな影響はなく、また組合専従者についても同様措置をとっているということでございました。  明年度における小、中学校生徒児童数は、差引千五百名の減少となりますが、教員の定数は従来の通りとして増減なく、小学校学級児童数は、最高六十人、平均五十八人に押えているという報告でございました。  なお、小、中学校関係教員最高年令者は五十六才でありますが、最近は希望退職が年に十名ないし十五名というきわめて少数であり、今後は年令勤務年数能力等を勘案して、勧奨退職を実施することもあり得るということでございました。  次に愛媛県の状況は、本年度教育費が約四十億でありまして、県歳出額の約三五%を占め、そのうち約三十七億円が義務教育費であり、人件費はその九三%に当っておりますが、義務教育費国庫負担法に基く国と同額の半額の上に、さらに約一億円の県費を支出しているということでございます。  本県は五カ年計画再建団体でありますが、再建債は受けておりません。三十一年度の税の伸びが十九億円をやや上回るそうでございますが、しかし四億ないし四億五千万の赤字が予想されるということでありました。  明年度における小学校児童数は二千四百名増、中学校生徒数は二千八百名減、差引四百名の減少となり、県当局から教職員百十八名の減員申し入れがあったが、八人減の線で話がついたという報告でありました。  また、学級編成は、小学校最高五十八人、平均四十八人、中学校最高五十六人、平均三十九人の予定であるという説明でありました。  教員平均給与は、小学校一万六千百九十六円、中学校一万七千二百四十円となっており、先の香川県のそれに比べますと、それぞれかなりの開きがあると認められますが、このことは本県が条例に基いて昇給延伸措置を実施していることによることでありましょう。延伸は一回を限度として昇給はさせるが、給与は元の額に据え置き、自後昇給することに一号ずつ低い給与が続いていくという内容であります。この昇給昇格のことに関連して本県においては県職員県立学校職員及び小、中学校職員についてそれぞれ勤務評定要領を策定し、これによっておのおの職員勤務評定を実施しておりますが、このことについてはすでに当院文教委員会並びに地方行政委員会においても審議の対象として取り上げられておりますので、これについては私どもが現地において県教委当局説明を受け、さらにPTA代表地教委代表校長代表教職員組合代表及び言論報道機関等から聴取いたしましたところの意見の概要を御報告いたしたいと存じます。  まず、県教委当局説明によりますと、勤務評定昇給昇格とは画然と区別して考えている。ただし評定は副参考とする考えである。しかし従来の一律昇給に対しては必ずしも批判がないわけでもないから多少勤務成績も加味して昇給を行うべきであるという根本方針であります。ところが三十一年度における財源から見て、全員の七割しか昇給できない実情であったために成績いかんにかかわらず三割の人員を落すというふうに誤解された。しかし十一月の初めになって税の伸びも明らかになったから、現在では成績良好者昇給可能の見通しもつき、従って誤解は晴れたことと思います。  勤務評定昇給昇格にも関係があるが、職務管理にも資する目的である。一月十七日までに定期評定を終り、二月七日までに臨時評定を終ったが、この臨時評定は年四回定期昇給該当者について行うのである。目下周桑郡三十四校のみが提出を拒否しているが、近く解決する予定である。規定上の欠格者のみを除き他は満足のできる予算措置されるものと思うし、産休職員に対して差別的取扱い考えていない。組合専従者については評定は行わないし、昇給昇格も行い得ないが、専従を解かれて帰任した場合はその者の同期生等比較勘案して給与の調整を行う考えであるとの説明がございました。  ここでちょっと評定内容について概略を申し上げますと、小、中学校教員については、第一次評定者校長、第二次評定者市町村教育委員会審査者県教育委員会となっており、小、中学校長については、第一次評定者市町村教委県教委審査者となっております。また県立学校教員及びその他の職員については、校長評定者県教委調整者校長の場合は、評定者調整者とも県教委となっております。それから評定の基準は、たとえば計画性責任感、常識、研究心処理力、勤勉、指導力等の十要素が掲げられてあり、そのおのおのについて評定者が百点満点による採点を行い、それを平均七百点以内となるように評定せよとなっております。また評定要素以外の事項をも加えて総合所見を記入し、前述の評定合計点と双方勘案して、勤務成績良好のものからイ、ロ、ハ、ニ、ホ、ヘの五段階に評定する。この場合に、イは十分の一以内、イロ合せて十分の三以内となるように決定することとなっております。  県教委当局は、「定時評定で下位の者であっても臨時評定で普通であれば昇給に支障はない。各地教委、各学校ごとに不均衡の生じないことを望んで作ったものであるが、これを最終至高のものであるとは考えていない。さらに検討してよりよきものを追求したい。この評定要領文部省関係課長に示したところ、賛否の表明がなかったが、関係局長は、個人としては教師に点数をつけることは不賛成であるとの意見であった。これは点数に関して誤解があるものと思われる。この点数は間隔と序列を示すことによって、勤務者の差を見るものであり、優良者に対しては、さらに高く報いんとすることが委員会の悲願であって、決して予算節約のためでないということも理解されつつある。来年度教育予算も決して悲観すべき見通しではなく、将来は優秀者の二号増俸実現もあながち不可能でないと思う。要は本県教育発展向上を期して行なったことである。」との説明が付加されました。  これに対する各代表の所見の概略を次に申し上げます。  まずPTA代表からは、(一)生活給能率給が加味されることは教育上よいことである。しかし教育者としての立場では、勤務評定を行う場合、何となくぴったりしない点がないでもないし、昇給と結びつけることはなお研究余地があると思う。(二)評定そのものは、理論的にはよいとしても、その方法には考慮の余地がある。(三)もともと政治的問題から感情の激突を見たので、PTAは心配した。(四)校長教組脱退個人意思によるとしても、松山市だけでも十七人もあるので驚いた。(五)現場の影響や先生の生活権にかかわる場合は、PTAとしても考える。(六)教育予算の確保を要望する。  以上のような意見でございました。  次に地教委代表からは、(一)周桑郡三十四校が勤務評定を提出しないのは、勤務評定そのものは賛成であるが、実施要領については事前の話し合いをしないで、一方的に押しつけたという理由による。(二)形式的には会合をもったけれども、県の方針を一歩も譲らなかった。(三)百点法は実施困難であり、現状以上のマイナスとなる差別昇給となるから提出しない。(四)無記名投票の結果、同郡四百五十名の教員のうち、賛成者は三名であった。(五)決定したものは順守するが、新法実施前の四月七月の内申協議書による昇給昇格を実施してほしい。(六)以上のような状態であるから、議会の文教委員学校長地教委とがさらに話し合いをして結論を得たいと思っているが、立案に先だつて、地教委学識経験者意見を徴すれば円滑に運んだであろう、という意見でございました。  次に校長代表意見としては、(一)点数をつけることは困難であるが、比較点数であるからできないことではない。(二)採点対象となる十カ条の要素について、これ以上のものは見つからなかったし、内容研究余地はないと思う。(三)予算不足から起ったことであるが、全員昇給できる予算を組んでもらいたい。(四)これが昇給の根拠となるなら、一校のみでなく、他校との比較に重点を置いてもらいたい。一校単位ではかえって逆効果を呈するおそれがある。(五)評定によって落ちた者をいかなる方法で救うかの事後処置を慎重に考慮してもらいたい。その者が教育の熱意を失う結果となるならば、大きな教育上の問題である、等が述べられました。また校長教組脱退については、校長会は郡市単位にもたれているが、評定案説明会県教委から招集されたときに、出席を拒否したのは、教組との板ばさみとなったためであって、校長だけの立場で全県の校長がじっくり話すという自主性をもつために、個人々々の意思によって脱退したものであるという説明がございました。  次に教職員組合代表の主張するところは、(一)評定昇給は画然区別すべきであり、評定そのものには反対しないが、昇給とからみ合わすことには反対である。(二)評定比較評定でなく、絶対評定でなければならない。この評定比較評定であって、その内容は不可能に近いものが盛られている、(三)教員の側からは九〇%以上反対であり、校長校長会反対した。(四)地方財政法特例条令が発動した昨年十月以前の昇給については顧みられないが、これは県教委にその義務があるものとみなす。(五)本年四月以降において評定内容について研究しようと確約したにもかかわらず、県教委は一方的に作成したのである。(六)県財政に余裕のできた現在では、二割も三割も落されるものはないと思うが、今年の評定で落されたものは、明年もしよりよい評定要領ができたときには、悪い尺度ではかられたこととなり、不公平を免れないということでありました。  最後に、言論報道機関の記者数名との会見においては、何ゆえに無理をしてまで勤務評定を作らなければならないかという、その裏面には、政党の力が影響しているからではないか。教員組合弱体化を意図するのではないか。同時に公務員だから一律に昇給させるやり方は改めるべきである等の発言がありました。  これを要するに、勤務評定そのものには、必ずしも不賛成ではないが、作成の手続、評定内容評定結果の利用方法等に関しては、相当の不満が看取されるとともに、今後研究余地が残されているものと察せられたのであります。  次に大分県について申し上げます。本県の三十一年度当初予算においては、教育費は約三十六億円でありまして、県予算額の三四%でありましたが、その後五月、七月、九月、十二月と累次にわたる追加補正により約四十億円に達しております。従って今回の自主再建計画による教職員義務整理数は二百八十七名でありますが、新規採用分を見込んで総数四百名程度整理となるということでありますが、整理対象高給者二百名、その他五十四才以上の校長、助教諭、五十才以上の教員、また本俸合計四万五千円以上の夫婦共稼ぎの二十四組をも対象としております。また一方昇給についても延伸措置を講じ、これによって経費の節約をはかっております。なお、整理の際の退職金普通退職の二倍であって、二十年以上の勤続者に対してはプラス・アルファをも考慮しているということでありました。  以上で教育財政昇給昇格についての御報告を終り、次は国立大学状況について申し上げます。  香川大学は、経済学部学芸学部のほかに県立松山農科大学農学部として移管し、明年度をもって移管完了予定となっております。  経済学部学芸学部とは道路をはさんで隣接しておりますが、校舎はいずれも貧弱でありまして、毎年増改築は行われているようでありますが、国立大学としての体裁を整えるには、今後なお相当な日子を要することが想像されました。施設の面で最も困難を感じているのは、学生寮不足でありまして、経済学部の使用しているものは以前工員の寮であったバラックであって、現在百人の学生を収容しているが、風の強い日には危険を感じる状態であり、学芸学部には寮は全然なく、民家を借り上げてごく少数の者を収容しているが、この学部には女子学生が多い関係上、特に学寮の必要を痛感しているということでありました。卒業生就職状況は、経済学部については、県外からの入学者が多い関係もあって、大体において好調であるが、学芸学部については県内で消化し切れず、昨年度は東京、大阪、岡山方面へ進出した者も百名ほどあるが、なお産休補助要員幼稚園に勤めている者もあるという報告でありました。  農学部は先ほど申し上げました通り目下移管進行中でありますが、本県が全国の塩の生産高の三〇%を占めている現状にかんがみ、また塩業界からの強い希望もありますので、塩業講座を設置する計画を立て、文部当局と折衝の結果、三十三年度から考慮してもよいが、一年前から実績を持つ必要があるという示唆に基き、とりあえず明年度において県費支弁をもって農芸化学科塩田工学の科目を設け、教授、助手おのおの一名、助教授は兼任として研究旅費講座料等を支弁し、設備に関しては若干の県費と業界の協賛により逐年充実する予定であるということでありました。  本大学における一般的問題としては、教官研究費の貧弱ということが強く述べられました。研究費学部によって多少の差はありますが、実質的には予算額の三分の一程度しか活用できない状態にあることはまことに遺憾であるという意見を聞かされました。また経済学部農学部卒業生に対しては、昔の専門学校卒業生の方が実力があったという世間の声をたびたび耳にするが、現在の大学制度を再検討して大学院だけの大学を設けてこれを純粋学問の府とし、自余の大学においては実務能力のある人材を養成すべきであるとの意見も開陳されました。  次に愛媛大学でありますが、これについては県立松山農科大学国立移管に関連した問題を主として御報告いたします。農大国立移管は、昭和二十九年から年次移管により今年二月末日をもって完了する予定でありましたが、現在残っている三十四名の職員全員愛媛大学に吸収することが困難でありますため、移管完了期を一カ年延長し、その間さらに研究の上、適切な措置を講ずることになっております。  松山農大学長のお話では、この三十四名は助教授一名、助手四名、他は技官と雇用員であるが、畜産、果樹、園芸等の実習のためには、現在の人員ではきわめて窮屈であって人手不足を感じているから、これらの理由により昭和三十三年度において残っている者の半数くらいは認めてもらいたいと思っているが、三十二年度は物性、物理、原子炉等要員関係実現困難であるという文部省の意向であった。とりあえず三十四名の人々農大付属校として移管する農業高等学校に新年度から専攻科を置き、その職員として残すことに文部、大蔵当局の承認を得たと申し述べていました。  それから愛媛大学教育学部音楽科特設課程を設置することに関して久松知事辻田学長重松教育学部長の名において陳情を受けましたが、これは四国地方音楽センターを置く場合に、愛媛大学に置いてもらいたいという趣旨でありまして、それがために愛媛大学教育学部音楽科特設課程設置期成会を組織し、さしあたり楽器等の整備に必要な費用として五百万円の浄財を寄付して国の負担を軽減し、四国地方の立ちおくれている情操教育の向上に資したいということでありました。  なお、先ごろ火災のため校舎の約半分を焼失した教育学部付属小学校の建築について、文部当局経費の申請をしているが、これが実現に協力を願いたいという陳情を受けましたことを申し添えます。  次に大分大学についてでありますが、ここでまず問題となりましたことは、三十二年度から学生定員減に伴い教官定員減少することは、従来から教官定員の少い本学としては苦痛であるから、何とかしてこの措置を中止してほしいということでありました。  それから経済学部専攻科を置くこと、学芸学部付属小中学校精神薄弱児童特別学級を置くことを文部省に申請しているが許可されない。精薄学級には現在の定員から二名の教官をさいて当てているが、無理があるし、一方この研究は重要であるからぜひ実現を期したいと希望しておりました。ここでも学寮不足研究費の少いことが訴えられましたが、学生の学力や新制大学あり方等に言及いたしましたとき、現在の学生語学力の弱さが指摘され、文法等の基本的な力に欠けるところがあり、いわゆる耳学問の傾向があって、これが就職に響くということでありました。また旧専門学校に比べると今の新制大学生の方が人間としての幅があるように観察されるけれども、一方経済学部にあっては簿記などの実務能力が社会の要請にこたえられないから、これらのものを自由科目として設ける必要を感じているが、やはり経費の面で行き詰まるし、語学力補強等教官不足のため百人を合併授業で教える現状では成果は上らないということでありました。卒業生就職状況は、経済学部は昨年も好成績であったが、本年は百パーセントに行く予定であるに比し、学芸学部は昨年は五五%くらい、本年も昨年の残りと合せて処理しなければならないが、県教育委員会との連携のもとに努力するということでありました。施設の面では経済学部の書庫、学芸学部の図書館、付属中学校校舎の建築が急を要するという希望でありました。この大学は両学部が相当遠くに離れておる関係でもありますが、両者の間が必ずしも緊密な状態にない模様で、各種の行事も全然別個に行われているそうであります。のみならず教養科目の講義なども、教官が両学部へそれぞれ出向き繰り返して行なっているということを聞きましたが、これは同じ大分市内にある二つの学部として、また教官の労力や時間経済の点からも、大いに考慮しなければならないという感を深くした次第であります。  最後に定時制高等学校その他一、二の問題について申し上げます。  定時制高校の入学生が概して都市に多く農村に少いことは、各県に共通した現象でありまして、従って農村または山間の小規模学校が統廃合の対象となる傾きがありますけれども、規模の大小をもってのみ律することは、教育の機会均等の見地からも妥当ではない。文部省明年度予算で当初要求した定時制に対する四割の国庫補助が実現したならば、統廃合のような教育上好ましくない措置はとらないで済むことゆえ、四割の国庫補助はぜひ復活してもらいたいという強い要望が各県からなされました。  また、養護教諭不足の問題も学校衛生上大切な問題でありますし、県費負担以外のいわゆるPTA負担教員が意外に多いことについても早急に何らかの解決方法を講ずる必要を認めた次第であります。  以上をもちまして、一応調査報告を終りますが、なお御質問がございますれば、私及び同行の各委員からお答えいたしたいと存じます。
  4. 岡三郎

    委員長岡三郎君) それでは続いて第二班松永忠二君より御報告を願います。
  5. 松永忠二

    松永忠二君 第二班の御報告を申し上げます。  第二班は去る二月十日から十六日までの七日間、田中委員、常岡委員と私並びに調査室から前田調査員が随行し、山梨、静岡、愛知、神奈川の四県を調査いたしたのであります。  調査の事項はすでに御承知のように、(一)新教育委員会運営の実態。(二)地方教職員昇給昇格。(三)教育財政等でありましたが、私たちはこの調査のため、山梨、静岡、愛知、神奈川の各県教育委員会のほか、甲府、静岡、熱海、名古屋、横浜の各市教育委員会について、それぞれ実情を調査し、また特殊教育関係としては、山梨、静岡、神奈川においては県立盲ろう学校を視察し、現地の要望で、甲府市立の僻地学校をも視察いたしました。  さらに、山梨、静岡、名古屋、横浜の各大学にも参りまして、おのおの実情を聴取するとともに、各大学における特徴のある研究室を視察いたしました。  文化財関係としては、甲府市の塩沢寺地蔵堂、熱海市の熱海美術館、及び名古屋城跡と、幸い疎開していたので残った名古屋城のふすま絵を陳列している絵画館を視察いたしました。  以上のほか、静岡県では本年秋の国体競技場を、横浜市では新設の図書館、音楽館にも参り、熱海市では昨年問題になりました母親文集の事情も聴取しましたが、それらの詳細は省略いたします。  なお、現地では幾多の視察が計画されておりましたが、時間的制約その他の事情等で省略を余儀なくされたことは、はなはだ遺憾に存ずるのであります。  以下順次御報告申し上げます。  まず、視察順に山梨県から申し上げます。山梨県の教育委員会委員は、昨年七月新発足とともに全員新しいメンバーで構成されました。地方教育委員会のメンバーもほとんど更新されました。新法施行後の教育委員総数は三百六十一名、うち婦人二十八名となっております。この委員年令は、五十才以上が三分の二を占めております。政党関係者は、自民党九名、社会党二名を数えるのみで、その他はことごとく無所属となっております。  県教育委員会定例会は、毎月第一、第三水曜日になっておりますが、臨時会もありますので、新委員会発足以来、すでに百回以上も会議を開いているという状況でした。そこで今後は会議の回数を減らすことに努めているが、月三回ぐらいは避けられないだろうといっておりました。  地方教育委員会も、経験を重ねて運営向上し、能率化し、また地方教育委員会相互及び県教育委員会との連絡も密接になって、その活動も人事面に限らず、指導行政の面にまで広がってきたことは喜ばしいとの説明がありました。しかし、地方教育委員会の実態を知るために提供された資料によって、その設置状況について見ますと、七市二十七町、五十四村に分れておりますが、その六二%の町村は、人口六千人以下であります。従って、設置規模のきわめて小さい町村の多いことがうかがわれました。これがため委員長及び委員報酬も月額五百円ないし千円までのものが圧倒的に多く、甲府市でさえ新法律施行後は日額制となり、委員長六百円、委員五百円という状況であります。地方教育委員会としての要望事項がありましたが、それは、(一)市町村の合併に伴い地域給に差ができたのでこれを是正していただきたい。(二)教育長給与等に関連して、市町村教育委員会に対し国庫補助金を交付していただきたい。(三)年に一回、文部省主催のもとに全国小、中学校長会を招集し、教育行政の一貫性を実現されたい。なお、この際における旅費は、国または県から支出し、出席者の選考は地方教育委員会によって行いたいということでありました。  また、県の教育委員会では、新法施行に伴い、県に人事任免権が移ったので、年度末の大異動が問題になることが予想されますが、人事は地方教育委員会内申を待って行うので、今のところ問題はないが、実際には一度やってみなければわからない。よく話し合うということに問題があるのではないでしょうかといっておりました。何しろ大きな問題は、財政窮乏による教職員整理であるから、教育の水準低下ということをも考慮して悩みの種だと嘆いておりました。  昭和三十一年度における県の予算総額は七十二億三千九百二十万円、教育委員会所管教育費は二十五億一千八百二十万円、県予算総額中に占める教育費の割合は三四・八%でありまして、比較的大きく、しかも教育費の八六%は人件費であることをみれば非常に窮屈な予算であり、人件費の縮小には限度がありますので、財政の縮小が事業面に大きな圧迫となることを示しております。  また、甲府市教育委員会説明によりますと、三十一年度の市予算総額は九億五千六百七十万円に対して、市教育予算総額は一億八千六百八十万円、市予算総額中に占める教育予算総額の割合は、一九・五%になっております。  甲府市の三十二年度における予算編成の構想は、市予算教育費比率の増加と、政府の助成政策の拡充、教育起債の特別認可等に期待し、教育予算の充実と、PTA依存から脱却するよう考慮しているといろ説明がありました、戦災都市共通の貧困財政のため、市予算だけでは間に合わず、年々PTAに相当依存している実情でありますが、PTA会費中、公費支弁に該当する経費は、児童生徒一人当り小学校二百九十二円、中学校五百四十三円、高等学校千三百六十五円になっております。  次に昇給昇格の問題について申し上げます。  御存じのように、山梨県は昭和二十九年度において実質赤字が約七億九千七十万円に達したため、昭和三十一年度から同三十八年度までの八年間は財政再建団体の指定を受けることになり、教育行政が財政面の規制を大きく受けて、今後数年の運営の困難さがうかがわれます。このような県財政の極度の逼迫により、教職員昇給昇格も苦しくなり、昭和二十九年度は、高等学校教職員については標準給料以上の高給該当者として総員の約四割が昇給ストップを受け、昭和三十年四月以降はついに全職員昇給期間、昇格期間が延伸されたのであります。それによって実施されました延伸内容は、従来の六カ月昇給該当者は三カ月、九カ月昇給該当者は五カ月、十二カ月昇給該当者は九カ月、それぞれ昇給期限を延伸して昇給が実施されたのであります。これによる予算節約は約四千万円になっております。昭和三十一年度においては全教職員が以上の昇給昇格実施要綱に基き、各二回の延伸適用を受ければ、順次条例に規定する昇給期間、昇格期間で昇給昇格ができるように措置され、従って現状においては、(一)延伸一回中のもの。(二)延伸二回中のもの。(三)延伸適用を終り条例に定める昇給昇格期間に復帰したもの、の三様に分れ、従って毎月昇給昇格該当者がある状況になっております。  次に市教育委員会希望で、僻地教育代表校となっている能泉小、中学校を視察しました。本校は甲府市に合併以来、甲府市小、中学校教育目標を基準に、本校独自の教育目標の設定と、その具体的な体系化に努力している学校で、小学校児童数六十六、学級数三、教員数五、また中学校生徒数四十、学級数二、教員数四、小、中学校校長で、小、中の一貫性や、小規模学校及び複式学級の経営、さらに僻地性を加えての特殊事情に立ちながら、教員組織の総力と地域社会との協力によってその研究に多大の成果が期待されるところから、県教育委員会並びに文部省昭和三十年度実験学校に指定されたのであり、桜井校長の言葉によれば、僻地における文化の中心は学校であるから、施設、教材、教具は充実させなければならない。また、複式学級教員の疲労度は絶大なものがあるから、僻地には最優秀な、かつ身体強健な者でなければならない。しかし貧困な県財政のしわ寄せばいつも僻地に押しつけられるのが実情であるから、永遠に僻地教育は改善されないというのであります。  また、県教育委員会説明によれば、山梨県の僻地の五級地で七百五十円の月額手当を支給されている学校といえば、南巨摩郡硯島室畑分校がその一例であります。ここは本校から谷川に沿って三里の山奥であり、日用品販売店もなく、無電灯地帯であります。教員は土曜日に山を下って米その他を購入し、日曜日にまた山にのぼる生活を繰り返しております。このように僻地教員の労苦は大へんでありますが、その僻地手当は最高七百五十円にとどまっているのに対し、甲府市では地域給二千円ないし三千円が支給されており、その取扱いの差異に大きな問題があります。これら僻地の問題と関連した山梨県の特徴として、僻地に指定されていない分校教育対策が強く叫ばれておりました。  分校という狭い地域社会のゆえに、児童生徒の社会性は貧困であり、経験領域は狭小であり、分校なるがゆえに劣等感を根底に持っており、教員は僻地校と何ら変らぬ過重勤務を余儀なくされております。その上本校優先の考え方が根強く、分校は第二義的に考えられ、その施設、設備も貧困であります。しかも都市と僻地との中間のため、地域給も僻地手当も受けられないのであります。これがため、(一)僻地手当の大幅増額による指定校の増加。(二)複式手当の義務支給。(三)僻地勤務教員と都市勤務教員との人事交流。(四)複式教科書の編集、複式用指導書の編集、に努力してほしいという強い要望がありました。  次に静岡県に移ります。静岡県教育委員会委員は、前委員の任命はなく全員新たになりました。この委員年令は最低四十八才で、最高七十才、平均五十九才で、全国平均五十五才に比して四才もふけております。職業は弁護士、会社社長、銀行頭取、無職となっており、教育専門家は入っておりませんが、地方教育委員会とは密接な連絡をはかって円滑に運営されておりました。  三十一年度における静岡県の教育費財源別内訳及び一般財源と基準財政需要額との比較は次のようになっております。最終予算推定額は、六十五億八千二百二十八万円であり、この内訳は国庫支出金は二十二億九千三百四十六万円、特定財源は五億五千六十五万円、一般財源は三十七億三千八百十六万円であり、基準財政需要額は三十二億一千百万円でありますので、差引超過負担額、すなわち県費持出額は五億二千七百十五万円となっております。  本年における児童数は、小学校九千三百人増、中学校三千六百五十人減、高等学校千八百人増となっておりますから、教員定数の確保が問題となる気配があると言っておりました。  次に教職員昇給昇格問題でありますが、県財政逼迫の理由で一昨年十月の定期昇給延伸されまして問題となりましたが、現在は円滑に実施されておりますからこの面の闘争は完全に終ったという状況であります。ただ三月に行われる人事異動が相当深刻なものがあるだろうと申しておりました。  地域給の問題は、ここでもうるさく取り上げられておりましたが、これに伴う人事交流は行政措置でなければ不可能な状況だという説明もありました。  次に静岡市教育委員会の実情について申し上げます。委員会は、委員長は任期四年の僧侶が就任し、任期一年の会社重役委員長代理、任期三年の会社重役、任期二年の婦人並びに教育長構成で毎月定例会臨時会並びに協議会を十回内外開いて活発な活動を続けております。  静岡市は戦災を受けた上、再び大火災に見舞われましたが、今は完全に復興いたしております。それだけに学校関係の仕事も並み大ていではなく、学校は全部鉄筋建にし、起債によって建てるのだと言っておりました。  三十一年度の市決算額、十五億三千二百万円に対する教育費決算額、三億七千万円の比率は、二四%と相当高率になっておりますが、これは校舎を鉄筋にしたためであって、校舎さえりっぱにしておけばいい教員も集まるようになると言っておりました。小学校の方はすでに片づいているので、これからは中学の建築が問題になりましょう、とも言っておりました。  さらに本委員会では、中学校の給食の実現化ということが大きく問題になっておりましたが、これはどうにもならぬ問題であって、市としては赤字財政であるから処置困難であろうし、委員会は頭痛はち巻の体で、いかにも悩んでいる様子でした。  一方県教育委員会では、沼津工業、磐田農業、島田商業等の定時制高等学校には給食施設を整備し、給食を実施しているということを聞きました。  なお、静岡市では社会教育の面の活発な動きが見られました。たとえば一カ月間の行事を見ても、(一)職場成人学校大工科、これは大工技能者の養成、期間は年間百日、三年間継続。(二)職場成人学校洋服科、これは洋服技能者の養成、期間は年間百日、三年間継続。(三)職場成人学校製パン科、これは製パン技術者の養成、期間は年間百日、三年間継続、(四)視聴覚技術者打合会、これは毎月第二水曜日、ナトコ技術者視聴覚指導。(五)巡回映画会、これは年間随時希望により市内各所で実施。(六)よい映画を見る会、これは毎月第三土曜日、公会堂にて行う。(七)青年学級、これは二十学級を開設、年間実施、一学級百二十時間以上。(八)婦人週間、これは婦人の社会的向上のため一週間実施。(九)地域別婦人学級、これは婦人の実生活に役立てるため、地域問題をテーマに、各学区別にて、年間を通じて百二十回実施。(十)社会学級、これは市内遠隔地を対象に月一回または二回実施、等が行われておりますが、このために三十一年度予算で五百万円を計上されております。人口三十万の静岡市としては、相当大きな負担であるが、勤労青少年と婦人の道義の高揚と風習の純化に努めるために推進しているのだと言っておりました。  次は愛知県に移ります。県教育委員会は、平均年令六十才という相当老令の五名で構成されております。職業別に見れば、会社社長二名、会社副社長一名、無職二名となっております。会議は月三、四回の割で、定例、臨時及び緊急の委員会が開かれております。  愛知県における教育費の現況についてでありますが、三十一年十二月末現在における予算総額は二百七十三億三千余万円で、このうち教育費は九十億一千余万円であって、県の総予算に対する教育費の占める割合は約三〇%となり、教育費のうち、人件費が占める割合は約八九%となっております。  また、三十一年度における昇給昇格は完全に実施されたと言っておりました。  次に名古屋市教育委員会について申し上げたいと存じます。同委員会委員は、全部新任の五名で構成されております。職業は会社重役、病院長、大学長、無職となっており、委員会の会議は定例会及び臨時会で、定例会は毎月第一金曜日に開くことになっております。  教育予算についての市長と教育委員会との関係を申し上げますと、補助執行の規程を定め、二十万円以下の経常的軽易なものは教育長が代決することができることになっておりました。  三十一年度における市費総額は、百十六億六千百万円となっておりますが、そのうち、教育委員会所管の分は十五億二千三百万円で、これは一三・一%に当り、短大、大学費の分は三億二百万円で、これは二・五%に当っております。  次に愛知県における定時制教育現状を御報告いたします。定時制高等学校数は、県立五十九、市立七、私立十五、計八十一校でありまして、その生徒数は一万五千六百二人になっております。大体昼間制二、夜間制八の割合で、性別に見れば、男子八、女子二の割合で、これらは全国平均とほぼ同率であると申しておりました。三十八の夜間学校では、給食施設を整備して、全員に週三回以上、所要栄養量の給食を実施し、約一万二千百九十二人の生徒が、二十五円ないし三十円で給食を受けているそうであります。また、パンまたはミルクを希望者に販売している学校もたくさんあると聞きました。  次に以前本委員会でも問題になりました公立高等学校の学区制の問題について申し上げます。三十一年度から、志願者に学校選択の自由を与えるという趣旨から、公立高等学校の普通課程と家庭課程の通学区域を、従来の一校一学区から、県下を名古屋市を含む尾張学区と、三河学区の二学区に改正したのであります。そしてその長所を伸ばすと同時に弊害は小さくするために、各高等学校の施設、設備における学校差を小さくするよう努めるとともに、進学者は各高等学校の実情とか、自己の進路とか、通学時間とかをよく考えて、いたずらに世評だけで学校を選択したり、遠方の学校を志願するようなことなく、なるべく近くの学校に、みずから進んで志願するように、進学指導することを、各中学校に対して指導してきた由であります。また各中学校においても、生徒に対し、そのように指導に努めているので、その後の調査によりましても、いたずらに有名校に殺到せず七〇%以上は旧学区の学校希望しているそうです。学区を広げたことによる混乱はない、というのでありました。しかし県教組及び高教組からは反対陳情がありました。  次に神奈川県について申し上げます。神奈川県教育委員会は、現在一名欠で、四人の委員構成されております。神奈川県と横浜市がいずれも五十八才以上、七十一才までの老人組で、職業は大学学長、会社社長、会社重役、会社役員となっております。  三十一年度県の教育予算は六十三億八千四百万円を計上しており、学校施設整備充実のために一番悩まねばならないことは、児童生徒の異常的な社会的急増であると申しておりました。ここで問題になりましたことは、学校用地を想定しても、早急にこれを確保しなかった場合は、買収も不可能になる場合が多く、かりに適当な土地があっても、土地価格の急激な上昇で、どうにもならなくなることであります。これがため、児童生徒の増加に伴う不足教室の補充に対し、また学校用地確保のために、特別起債の措置を早急に講じてもらいたいという懇請がありました。  次に昇給昇格の問題であります。  神奈川県には、給与条例についてまだ定めがないので、教職員に対しては、国家公務員に準じ人事院規則をそのまま適用実施しておるのだそうであります。従って他県のように昇給昇格の問題は起らないわけであります。先般来問題となっておりました高等学校入学試験実施の問題については、県教育委員会、県教組、県高教組から異なった陳情があり、問題が多いと考えられました。  次に特殊教育の面で視察して参りました盲ろう学校に触れさせていただきたいと存じます。  私たちは、甲府、浜松及び平塚における盲学校並びにろう学校を視察いたして参りましたが、各学校で共通した問題として懇願されましたことは、次の諸点でありました。(一)設備費関係の国庫負担PTAによる財政的援助は期待し得ないので、教材費を増額してほしい。(二)学習上の問題として、1、就学奨励法が高等学部にも全面的に適用されるよう、すなわち、高等部も義務制とするよう、法の改正に配慮してほしい。2、国立点字出版所の設立方を促進させてほしい。すなわち現在の個人経営の出版所は、印刷不正確、かつ期日は守られず、値段も高く、教科書出版をこれにまかすことは不適当であること。3、盲学校教科書の改訂出版を急ぐこと。すなわち現在使用されている教科書は、終戦直後のものであるから、社会的情勢から見て、時代おくれのものもあり、またミス・プリントが多いこと。4、弱視者用教科書の出版を促進させること。(三)職員待遇上の問題として、1、寮母の超過勤務について、国庫負担法を適用すること。2、盲ろう学校小中学部の事務職員に超過勤務手当が出るよう規定すること。3、産業教育振興法の適用を盲ろう学校の区別な丸全面的に及ぼすこと。  以上の諸点については、私たちも六カ所の盲学校及びろう学校を視察して、これは絶対に必要であると痛感いたしました。  以上で各県の教育委員会関係事項の報告を終り、次に大学の問題に移ります。  まず、山梨大学から申し上げますが、私たちは三十二年度予算において醗酵化学科が工学部に設置が予定されているので、同大学の醗酵研究室を視察いたしました。この研究室はわが国唯一の果実酒に関する研究機関で、特に山梨県の特産物であるブドウ酒を中心として、その醗酵に関する微生物学的並びに化学的研究をしておるのでありますから、山梨大学も近き将来、この面で大いに特色を出すようになるだろうと言っておりました。すでにフランス製の中級程度のブドウ酒の醸造に成功しているとも言っておりました。その種類も十五、六種に上っているそうです。  また静岡大学では放射化学研究室に参り、核分裂生成物を取り扱う放射化学実験の説明を聞きました。その際第五福龍丸から取ったビキニの灰を示されましたが、当時を想起するとともに、放射性元素の研究と、放射性落下塵の観測にささげてきた約十名の研究員に、心からの敬意を払ってきました。なお、この研究室で特に要望されたことは、科学研究費等補助金の配分が顔によって流れるような感じを受けるが、これを何とか是正してほしい、ということでありました。  また、浜松の電子工業研究所室にも参りましたが、ここではテレビジョン研究のためのいろいろな設備や実験を見たのでありますが、最近のテレビは諸工業に応用されて、諸機械の監視や無人運転に用いられる研究にまで進んでいる、という説明を聞きました。なお研究室を昇格して研究所にしたいという熱心な要望も、大学関係者からなされました。新制大学には、付属研究所は認められていない現状でありますが、充実したものについては研究所設置も認められてもよいと思いました。  さらに精密工学科も視察して参りました。旧浜松工専時代から、多くの卒業生業界に送っただけに、伝統ある本学部のごときものはさらにさらに充実させたいと痛感いたしました。  次に名古屋工業大学に参りました。短期大学部に今度新たに夜間三年制の工業化学科が増設されたので、その施設を視察したのです。その際清水学長から、次のような談話がありましたから、ここにつけ加えておきます。(一)短大について。開設当初から技術者の再教育を目途としてきた。入学試験も学部と同じ日時で行なってきているが、志願者は数倍に達している。高校の三年と合せて五年制度の課程にしたらとの意見もあるが、日本の現実に徴して工業短大二カ年の制度は価値は少いし、工業高校の三年も不徹底である。双方通じた五年制がよいのかもしれない。(二)科学技術教育について。小学校から大学まで一貫性を持たすことが必要である。この種教育にあっては、何といっても教員の素質が問題であるから技術教員の養成、理科教育には特に力を入れてもらいたい。しかるに理科教育の補助金が非常に少い。オートメーションとか原子力とか、今日技術の革新期にきており、生産管理も変ってきている。従ってこれに対応した新教育がなさるべきであるが、その研究施設に対する要望がなかなかかなえられない。新技術の養成には金がかかる。産業界の援助のほかに国庫の思い切った援助がほしい。なお、以上の国立大学ではいずれも研究費不足が痛切に訴えられました。  最後に横浜市立大学に参りました。ここでは学長から公立大学に対する国の援助要請の説明を聞きました。以下同学長の意見のおもなるものを御紹介申し上げます。菊地学長の意見によりますと、公立大学国立大学と同じ目的ないし使命をもって設置運営されているにかかわらず、これまで国の援助を受けたことがないというのであります。また、公立大学をもっている地方公共団体が大学施設充実のために起債しようとしても全く許可されなかったのであります。公立大学運営は、国立大学に準じているので、授業料、入学金、寄付金等による大きな大学独自の財源を獲得できません。私立大学は現に私学振興会法によって相当大きな国の援助を受けておりますが、公立大学には現在その道すら開かれておりません。こうした悩みをもっている公立の大学理由なくして設置されたものでもなければ、意義なくして存在しているものでもないというのであります。この設置は地方住民の熱烈なる文化向上の熱意や国の要請にこたえたものであります。その存在は二万四千に達する公立大学生に対する最高教育と高度の研究とによって高く評価されなければならないという意見なのであります。  以上で大体の第二班の報告を終りたいと存じますが、なお報告漏れの点につきましては田中委員、常岡委員及び私から補足いたしたいと思います。
  6. 岡三郎

    委員長岡三郎君) ただいまの報告に対し質疑がありましたならばこの際特に御発言願いたいと思います……。特段に緊急質問もないようでありまするので以上で委員派遣の報告を終ります。  ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  7. 岡三郎

    委員長岡三郎君) それでは速記を始めて。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時一分散会