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1957-04-26 第26回国会 参議院 農林水産委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月二十六日(金曜日)    午前十時四十九分開会   —————————————   委員の異動 本日委員大和与一君辞任につき、その 補欠として小笠原二三男君を議長にお いて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     堀  末治君    理事            重政 庸徳君            藤野 繁雄君            東   隆君            清澤 俊英君            河野 謙三君    委員            秋山俊一郎君            雨森 常夫君            佐藤清一郎君            柴田  栄君            下條 康麿君            田中 啓一君            仲原 善一君            堀本 宜実君            安部キミ子君           小笠原二三男君            小林 孝平君            鈴木  一君            上林 忠次君            島村 軍次君            千田  正君            北條 雋八君   政府委員    農林省畜産局長 谷垣 專一君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君   説明員    公正取引委員会    委員      蘆野  弘君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○連合審査会開会の件 ○農林水産政策に関する調査の件  (酪農振興に関する件)   —————————————
  2. 堀末治

    委員長堀末治君) ただいまから農林水産委員会を開催いたします。最初に、委員の変更について御報告申し上げます。本日大和与一君が辞任されて、小笠原二三男君が選任されました。   —————————————
  3. 堀末治

    委員長堀末治君) 次に、本院規則弟三十六条に基き、環境衛生関係営業運営適正化に関する法律案について、社会労働委員会連合審査会を開催することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 堀末治

    委員長堀末治君) 御異議ないと認めて、さように決定いたしました。ただいまの決議に基き、委員長社賃労働委員会に申し入れることにいたします。   —————————————
  5. 堀末治

    委員長堀末治君) 酪農振興の件を議題にいたします。この件については、青森県三八集約酪農地域指定私的独占容疑との問題に関し、去る三月二十九日委員会の問題になったのでありますが、この件についてさらに質疑の御要求がありますので、重ねて問題にいたします。御質疑の向きは順次、御質疑を願います。  なお、この件については、政府からは公正取引委員蘆野弘君と、農林省から畜産局長、同じく酪農課長が見えております。
  6. 田中啓一

    田中啓一君 幸い本日は蘆野公正取引委員がおいででございますから……。どういう点が問題になっておるのか、伺いますると、公正取引委員会としましては、何というのでありましたか、私的独占禁止法等違反疑いありとして、審判を御開始になったということでございますが、いかなる疑いがあるのか、それらの点にまず御解明をお願いしたいと思います。
  7. 蘆野弘

    説明員蘆野弘君) 御質問は、雪印乳業青森県における酪農事業独占しようとした容疑事件について、当委員会審判開始決定措置をいたしましたことについて、その容疑内容はどういうことであるかということのように承わったのでありまするが、簡単に申しますと、雪印乳業株式会社という事業者乳業会社でありますが、事業者が、青森県の青森市を含めましてあすこからずっと東部の一帯の地域、まあかりにこれを青森県の東部酪農地域と申しておきますが、青森県の東部酪農地域内における乳業一手に収めようと、他の事業者を排除して自分だけで全県の乳業一手に収めようと、こういう企図をいたしまして、いろいろな方法によって着々それを実現して参ったのであります。これが私的独占禁止法の第三条の事業者私的独占をしてはならない、こういう規定に該当する疑いがある、こういうことで審判手続開始することに決定したのであります。  この前の委員会において、たしか畜産局長の方から、この違反事件容疑内容について、もっと詳しい御説明があったように承知いたしておりまして、大体畜産局長お話通りで間違いないのでありますが、ただ要点は、青森県の乳業地域のごく一部でなくて、ほとんど、西の方は除きまして、東の方のいわゆる十和田集約酪農地域として指定されておる地域と、それからその後三八集約酪農地域として指定された広い範囲全部にわたって、雪印乳業一手にしようという点が、われわれの方の考えでは、独占をしてはならないという規定違反する、それによって手続開始した、こういう点にあるということをつけ加えて申し上げておきたいと思います。
  8. 田中啓一

    田中啓一君 雪印乳業が、青森東部酪農地帯におきまして、そのうち大部分がいわゆる十和田指定地域、三八指定地域になっておるものでございますが、一手集乳を企てたことが、それが私的独占禁止法に触れるのだ、こういう御見解のように伺いましたのでありますが、一体雪印乳業は、おっしゃるような東部地帯におきまして、一手集乳独占しよう。こういうことで青森県へ乗り出したものでございましょうか。その点につきまして、どういう御見解をお持ちでございましょうか。  そこで、段階的にお尋ねしたいのでありますが、ある程度事情なり経過は、今お話しのように、畜産局長から当委員会経過を聞きましたので、私も承知しておるわけでございますが、初めに全販連の持っておりました牛乳処理施設を買って、その次に、何と申しましたか、青森県の県とか公共団体等株主になって作った牛乳処理会社を引き受けた。こういうことでございますが、その二つ行為というものをもって、一手に引き受ける意思でやったのだ、それだからいけないのだ、こういうふうにお考えなんでありましょうか。その段階についてはどういう御見解になりましょうか。その辺をお伺いいたしたいと思います。
  9. 蘆野弘

    説明員蘆野弘君) 違反に該当する行為が、果してその行為内容は何々であったか、いかようであったかということを確定いたしますのは、これから審判手続を経まして、最後に委員会としてこう認定するということを確定的に決定いたす、わけでございまして、今の段階ではそういう確定的のことは申し上げられませんが、その疑いありとして審判開始するに至りますまで認められたところのこの容疑の事案は、ただいまお話しになりました通りに、まず雪印乳業青森県のいわゆる全販連の経営しておった各乳業施設を買収する、これには全販連側また青森県側の希望もあったようであります。これを買収するにつきましては、それだけでは経営上不十分である、それだけでもってやっていく自信はない。それについては、青森県の今お話しになりましたところの青森畜産振興株式会社でありますか、県が今大株主になって設立されておるところのいわゆる県策会社でありますが、これもあわせて買いたいということを雪印の方から申し出たようであります。そうして青森県もこれに応じまして、これを青森畜産振興会社施設も買うことになり、その他なお小さな二、三の乳業施設も次々に買っております。  御質問要点は、あるいは、雪印が積極的に自発的に青森県の乳業独占したいと、こういう考えからして、青森県に乗り込んで行って、ただいま申しましたような施設を次々に買っておったのではなくして、むしろ青森県の方から買ってほしいと言われたに対して、雪印はそういう条件でもって引き受けていったのではないかと、こういう御趣旨かとも承わったのでありますが、あるいはそうであるかもしれません。その点はわれわれはまだ確認しておりませんで、どっちが積極的であったか、あるいはどっちの発意に基いたかというようなことは、今後審判手続でおいおい判明いたすことと思いますが、法律違反の要件といたしましては、どっちが積極的であったか、あるいはどっちが先に言い出したかということは実は問題になりませんので、とにかく雪印乳業会社が、その動機あるいはその目的等いかようともあれ、とにかく青森県下における乳業独占しようとしたという事実があれば、独占禁止法違反を構成するには十分なのでありまして、その点までは確めずに、ただそういう独占しようという事実があったということに基いて、審判開始決定いたしたわけでございます。
  10. 田中啓一

    田中啓一君 その後、十和田地区雪印が、何といいましたか、酪農振興法に基く中心工場というのでありましたか、あれを指定を受けるときには、まあそう問題にもならなかったようでありますが、三八地区指定についてはだいぶ地元はもめておったように、いろいろなところから耳にいたしておるわけであります。そこで、まあもめた結果、いろいろもんで、結局はやはり三八地区におきましても雪印乳業中心機関として指定された、こういう事実のようでありますが、そのときの決定の経緯について、公正取引委員会ではどういう御見解を持っていらっしゃいますか。それは、私がお聞きしたいというところは、つまり先ほどの独占ということに拍車をかけることになったのだ、この辺で積極的になってきたのだ、こういうふうな御見解になるのでありますか、その辺はいかがな御見解でありましょうかということを、お伺いしたいわけであります。
  11. 蘆野弘

    説明員蘆野弘君) 十和田地区だけでもって雪印乳業中心工場指定され、その結果、十和田集約酪農地域においては、まあ独占と申しましょうか、独占的になっておったが、そのときは別に問題にはしなかったが、三八の方までまた雪印中心工場指定されるような動きになっていったところで、われわれは初めてその措置をとったのはどういう理由かということでございましょうが、まあ必ずしも、地元でごたごたがあったので初めて取り上げたというわけでもございません。もっとも、この事件を取り上げる端緒になったのは、三八地区における雪印乳業中心工場指定されることに反対の酪農民の方からの申告に基いて、それからして調査開始したわけでございますが、これは独占ということが、これもある程度まで程度の問題でございまして、そこのどこから独占と認めるかということは、これは一々の場合についてみな違うので、一般的にほとんど標準は申せないくらい微妙なものなのでございますが、まあ単に十和田地区だけにおいて雪印乳業独占的の地位を持っているということは、まだ問題にするに足りないのであって、これが三八地区までもこめて、まあ広い地域において、さっき申しました、青森県の東部酪農地帯全体、そこが雪印ひとり舞台になるということになりますというと、いわゆる独占になって、これに牛乳を供給するところの生産者というようなものの利益も、著しく害されるのではないか、こういうふうに見まして、そうしてその段階になって初めて違反事件を取り上げるようになったわけであります。
  12. 清澤俊英

    清澤俊英君 まあ、いい加減のところで何でありますが、この議事を進めまするのに、公取委員会審判決定の何か理由書のようなものを出されたのですね。その要綱でもありましたら、一つ至急御提出願いたいと思う。それがないと、どうもわれわれは取り扱う上に非常に困りますので、新聞やその他のことでほぼわかっておりますけれども、そういうものが公式に出ておりませんと、非常に議事の進行上混乱すると思いますので、至急一つ出していただきたいと思います。
  13. 堀末治

    委員長堀末治君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  14. 堀末治

    委員長堀末治君) 速記を起して。
  15. 田中啓一

    田中啓一君 まあ十和田地区だけならば、まだしもであったが、三八地区まで指定を受けたとなると、まあほとんど東部酪農地帯、あるいは、実は青森県ではほかに乳牛を相当飼っている所はございませんから、青森県全体ということになるわけでしょうけれども、まあその主たるところの十和田、三八地区の両方の指定雪印一手にとったということは、まあどうもその動機目的のいかんにかかわらず、結果から見れば、独占格好をなすという御見解のようであります。そういうことは独占禁止法違反すると、こういう御見解のように伺ったのでありますが、実は酪農振興法によって指定をしている区域はたくさんにございます。ほとんど全県にわたっていると思うのであります。そこで、他に一体一県に幾つ地区があって、少くとも二つ以上ありましてね、それを一つ会社指定を受けているというような例はないのでございましょうか、あるのでございましょうか、それを伺いたいと思います。
  16. 蘆野弘

    説明員蘆野弘君) ただいまの全県一会社あるいは一工場という例があるかないかという点については、詳細な点は畜産局長の方が御承知で、畜産局長からお答えしていただくのが適当かと思いますが、私の承知しているところでは、そういう一県に一社しかないという所もあるように承わっております。公取がただいま申した、今御指摘通りに、東部酪農地帯と私は正確に申しましたけれども、まあ早くいえば青森県全県が独占になるようなことになるが、公取が、全県に及んだときに初めて独占禁止法違反事件として取り上げたと申しますのは、一県が一社になるからという理由ではございませんで、それだけの理由ではございませんで、相当の広範な地域、しかもその地域が地勢的に、あるいは地理的に、ほかの酪農地域とちょっと隔絶しておって、つまり牛乳生産者がほかへ容易に持っていけないというような関係にある、そういう一つの独立した集乳地域というものをなしているその地域、しかも、その二つ地域指定されるくらいな、現在はともかくも、将来としては相当多量の牛乳を生産する見込みのあるその広い地域、そこでしかもほかと多少離れて独立した地域、そこ全体を一社にまかせる、一社がやるということは独占になると、こういう見解に基いて審判開始決定いたしましたので、必ずしも一県一社は当然いかぬのだ、こういうことではございませんですから、その点をちょっと私から申し上げておきます。  なお、具体的な詳細なことは、御必要ならば、畜産局長にお尋ねいただきたいと思います。
  17. 田中啓一

    田中啓一君 それでは、畜産局長にお伺いします。今の蘆野委員の御答弁と同じような状態の所で、私はどうも一社が指定を受けている所はあるように思う。私は率直にいえば、ことごとくそうじゃないかと私は思う。がしかし、そう高飛車に初めっからきめつけては質問になりませんから、一つ畜産局長の方から、今のような似た所で一社になっている所があるかどうか、一つ答弁願いたいと思います。
  18. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) 今全国のあれはちょっと数字がはっきりいたしませんけれども、東北のあの近くでは、福島県が酪農地帯、たしか三つほど指定いたしておりますが、これが全部森永一社の中心工場ということになっております。
  19. 田中啓一

    田中啓一君 そこで私は、福島県の、森永が三地区にわたって三つ指定工場を、指定を受けておるというその状況と、それからいわゆる青森東部状況二つ地区にわたって指定を受けておるというう状況、これを一つ比較をいたしたいと思います。  で、もし……。まず第一に、蘆野委員にお伺いしたいのでありますが、福島県の事情は、今藤野委員のお述べになりましたような私は状態にあると思う。(「その通り」と呼ぶ者あり)それにもかかわらず、その方は別段おとがめはないわけです。青森県の方はおとがめがあるという点、どうも私はふに落ちないわけであります。一つ事情——事情といいますか、それは福島県はこういうふうに違うのだ、こういうことでありますか、どうでありますか、お伺いをいたしたいのであります。
  20. 蘆野弘

    説明員蘆野弘君) これは私、実は大へん重要な点を一つ、ただいままでの御説明に落しておりまして、申しわけないのでありますが、われわれの方で私的独占と申しますのは、単なる独占状態1ある事業界にある一つ企業者しかなくて、ひとりでやっておるという状態だけを言うのではございませんので、私的独占というものは、他の事業者事業活動を排除し、あるいは他の事業者共同してと、こういう特殊の、独占のためにある特殊の作為をして、独占状態をもたらす、そういう場合を初めて独占と申して、そうしてこれを私的独占禁止法で禁じておるわけなんでございまして、単なる自然的に発生した独占状態というものは別に問わないのでございます。  ただいま福島県が三地区あって、それがことごとく森永がそれに指定されておって、いわゆる独占状態になっておるというお話でございますが、これはどういう事情かは存じませんけれども、まあかりにもとから森永一社がそこでやっておって、そしてこれが一番適当な、中心工場として、自然的に条件が備わっておって、自然である、おそらくそういう状況に立脚して、その理由でもって三地区にことごとく森永工場中心工場指定されたという事情ではないかと想像いたすのであります。  青森の場合は少し違いまして、この点も私さっき御説明中に申し上げませんで、はなはだ申しわけございませんが、雪印は決してもとからそこに事業をやっておって、自然に発展しておって、そして集約酪農地域指定される場合に、その中心工場になるという自然状態が備わっておったわけではございませんで、いろいろそこで作為をいたしまして、あるいは独占禁止法で申しまする他の事業者共同してと申しますのは、たとえば全敗連工場を買うとか、あるいは進んである牛乳生産者がほかの工場へ持っていくのを妨げるというような工作をするとか、いろいろ作為をいたしまして、故意に独占状態というものを作り出した、これが独占禁止法に触れたということでございまして、万一福島の方でも、森永がそういったような事情独占をしているということであれば、これも問題にしなければならないのでありますが、そういうことは聞いておりませんで、おそらくそういったような作為的のことはなく、自然に古くから森永さんがやっておられて、これが中心工場指定されたといったような事情ではないかと存ずるのであります。
  21. 田中啓一

    田中啓一君 まあ要するに、結果は独占になっても、作為がなければよろしいと、こういうまあお話のように伺ったのでありますが、一体今ですね、おもなるところといいますと、やはり森永明治雪印というものは一番おもなる今日牛乳業者だと思いますが、そしてそれぞれの地区指定を受けております。中には、お話のように、県内に地区幾つもあるのを、ほとんど一社が指定を受けておるというような事実も、私はあるように思うとります。そこで、そういうことが成立するまでに、今おっしゃったようなですね、全く天然自然にそうなったので、共同をしたとか、排除したとかというような事実がないというような所が、一体あるでありましょうか。御承知のように、集乳合戦というものは酪農始まって以来の、これはもうその業者競争なんです。私は必ずしも悪いと思っちゃおらない。それは全国的に競争が行われておるんですよ。それが一個所ずつに現われるわけです。結果から見れば、独占格好に現われる。ところがもう明治森永の歴史をごらんになれば1私はちっとも明治を非難するものじゃございません。ちっとも非難するのじゃありません。そうやらなければ、やってくれなきゃ困るんです、百姓にとりましても、あるいは消費者にとりましても。私はそれは尊い競争だと思っておる。が、しかし、あなたのおっしゃるようなですね、つまり業者を合併すると、まあ共同でしょうね、おっしゃる。それから共同、合併に応じないでいったやつは、つぶれるというようなことで、今日できとるんだと私は思うとります。どうも青森だけが特異な現象だとは、どうしても私には思われない。その点が、何が御意見がありますならば、伺いたいと思います。
  22. 蘆野弘

    説明員蘆野弘君) いかにもお説の通り、あるまあ明治でも森永でも、ある地方で集乳地域を開拓していくということについては、御指摘のようないろいろな、あるいは値段を安くするとか、あるいはその他いろいろな方法を使ってやっておるに違いないと思うのでございますが、まあ青森県の場合は、特に青森当局、あるいは経済連であるとか、あるいは経済中央会であるとか、そういったような有力なところと話し合いをして、その力普通のたとえば取引上のサービスをよくするとか、値段をよくするとか、そういったような普通の正常な手段以外に、いろいろな方法でもって牛乳自分の方へ集めるといったようなことをして、あるいは程度の違いとおっしゃればそれまでかもしれませんけれども、その正常な商業上の手段でないいろいろな方法を用いてやったという点に、青森県の今度の問題の特色があって、特に公取が、ほかは問わずに、これだけを取り上げたという理由があるわけでございます。
  23. 田中啓一

    田中啓一君 どうも、岳ただいまの御答弁では、私はその点は納得できません。全国ことごとくしかりでないかと。しかも、それは当りまえのことだ、こういうふうにしか私は思われませんのでありますが、そこを押し問答はやめまして、この程度で、別の方面のことについての御見解を伺いたいと存じます。  この集約酪農地区中心工場指定ということは、酪農振興法に基いておることなんであります。で、この点について酪農振興法そのもの独占禁止法とは調和しないところがあるとか、あるいはまた法律自体はまず差しつかえないのだが、その運営を誤まっておるというふうにお考えになるようなことはございませんでしょうか。まず、その点をお伺いしたいと思います。
  24. 蘆野弘

    説明員蘆野弘君) お説の通りに、法律自体規定自体は何も独占禁止法と矛盾することはないと存じます。これは法律を作る前にも、当局の方ともその間の調整はいたしまして、独占禁止法範囲内において酪振法は運用するというお話し合いの上、われわれもこの法案に賛成したわけでございまして、その点はちっとも矛盾がございませんし、また中心工場指定するということは、何もその地域における集乳独占させるという意味はないものと存じまして、運用についても別に、法律的な独占禁止法自体に触れているとか、そういうことは今のところはないと思っております。
  25. 田中啓一

    田中啓一君 ここで三八地区に帰りまして、雪印中心工場指定を受けましたあとで、あの地区内で他にも牛乳の集荷をしておるような事業体がございますか、それを伺いたい。
  26. 蘆野弘

    説明員蘆野弘君) 三八地区におきましておもなものとしては、八戸にある明治乳業工場が前からやっておりまして、今も続いてやっておると存じております。
  27. 田中啓一

    田中啓一君 それが続いてやっておるならば、みな排除したわけではないのですね。だから、中心工場指定をしても、あるいはその中心工場へ多くの農民牛乳を納めることにしましても、そういった他に、農民意思に基いて牛乳を納めておる事業体もある、事業もやっておるということであれば、一体雪印乳業のやったことはその程度のことをやったので、えらいその他の事業事業者の排除でもないようにも思うのでありますが、その辺の御見解はいかがでありますか。
  28. 蘆野弘

    説明員蘆野弘君) われわれがこの二月に審判開始決定いたしますときまでの状況では、雪印がだんだん進出いたしまして、この東部酪農地帯における集乳のまあ大体七〇%までを一手に収めたという認定でございます。独占と申しましても、全面的に全部、一〇〇%独占になって初めて独占というのではございませんで、これはそのときの状況によって、何%からを独占と見るかということは、これはいろいろ問題でございますが、とにかく七〇%くらいまでも一手にやるということは、いわゆる独禁法で申します競争というものは実質的にこれで制限されるという考えでございます。  で、現状はそうでございますが、御承知通り青森県の牛乳生産量というものは、現在ではまださほどではございませんが、しかし今後だんだんに酪農ということは発達させていかなければいけない事情にあって、従って、農林省等におきましてもまた県等におきましても、酪農の振興というものは非常に力をお入れになっておるように承知しておりまして、これはもう一年々々、どんどんこの量はふえていくと思うのでございます。このときに、中心工場指定されておりますれば、牛乳生産量が上り酪農が盛んになっていくにつれて、どんどん工場を大きくしていくことができます。が、指定工場になっておりませんと、牛乳処理施設というようなものを新設するについては、御承知通り、酪振法に制限がございまして、もちろん禁ぜられてはおらず、また許可制というような厳密なことではございませんが、一応、たしか県知事の承認を得なければならないというようなことになって、これによって相当制限されるおそれがあるのでございまして、今の比率は七〇%と三〇%内外といったようなことでございますが、これを今現在で見ますとそうでございますが、発展していく状況考えてみますというと、片方はどんどんその割合がふえていく、片方は、必ずしも押えられるとも限りませんが、しかし、酪振法の運用いかんによりましては、これを制限されるということで、この割合というものは非常に変っていく。七〇対三〇が、片方はどんどん自由に発展できる、片方はそれによほど制限があるということで、将来のことまで考えますというと——まあ現在でも七〇%というのは、われわれの方では競争の実質的制限と見ておりますけれども、将来のことを考えると、一そうそのおそれが強いと、こういうことでございます。
  29. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 関連しまして。今までの御説明を聞いていますと、酪農振興法には欠陥がない、そう言っておって、また御答弁の限りにおいては、この七〇%がそれ以上にもなって独占的になっていくのではないかということですが、私詳しい事情はわからぬのですが、かりに、たとえばある県において酪農地域指定が数カ所ある、数工場入っておるという場合でも、この指定のための条件といいますかが一元集荷というようなことになっておるとすれば、かりに農民の団体である農協、農協の系統団体である経済連が、一切の会社農民を代表して団体交渉をする、そうして乳価その他もきめて、農協が一手に集荷をして、それぞれ処理能力に応じて工場に出してやる、こういうやり方をかりにやっておるとします。その場合に、ある会社工場のサービスなりあるいは価格の問題で、折り合いがつかぬ、従って、その工場には、だからやらぬ、それで、処理能力の高いある指定工場なら指定工場を中心として、そこに集中して乳を出す、こういうようなことは、私は酪農振興法においてあり得ると思うんです。そのことが、もう独占のおそれに触れるんだということになるなら、法律そのものにもう欠陥があるのではないだろうか。また知事の承認その他が、農民の利益という建前から、工場を集中化する、集約化していくということで、何と申しますか、多数工場を認めないやり方で承認の法律事項が扱われるということになれば、また、そういう方向に行くと思う。一にかかって、集乳を処理する側の会社自体が能動的に働こうが働くまいが、農民自身が、あるいは農民自身の組織が、この工場でなくちゃならぬときめて、そこに集中して集乳を売り渡すというようなことが起って、それが独占のおそれに触れるんだということになるということであれば、私は、これは、農民の利益を守るという立場からいうと、困ったことになると思う。これは、私詳しい事情がわからぬので、しろうと論議で申して、はなはだ恐縮ですが、私が一般的に例示して申し上げるようなことが触れるのか触れないのか。  そうしてまた、三八地区において雪印乳業いかようなことをやろうがやるまいが、農民自身の意思として、また農民を代表する組織の意思として、かりに雪でやっていこうということが、どうしていけないんだ、この点が私わからぬのですね。一般的な例示した点についても解釈をお願いしたいし、それからその農民自身、生産者の立場に立って、自発的に問題をきめていくという形と、会社の方が能動的に働きかけていくという問題と、いろいろ立場があると思う。その立場いかんによっては、独占に触れたり触れなかったりするものかどうか、この点をお伺いしたい。率直に申して、農民自身が団結して一工場にだけ乳を売り渡すというようなことから、結果、幾つかの工場は作ったものの、他の工場は操業ができない、そういう場合でも独禁に触れるのかどうか、こういう点を御説明願いたい。
  30. 蘆野弘

    説明員蘆野弘君) 酪振法には別に独禁法と矛盾する点はないと申し上げましたのに対して、その土地の農民、農業協同組合なり経済連というようなものが、中心工場にばかり出荷するということにすれば、自然独占になるのではないか、それは独禁法に触れるのか触れないのかというお話のように承わったのでありまするが、これは、別に酪振法があってもなくても、ある地域の農業協同組合なり連合会なりが、たとえばA会社とB会社と両工場があって競争しておるときに、Aの方がいいということを決定してAにばかり持っていくということになれば、Bは立ちいかなくなるということは、これは起り得るのでありまして、AとBとの正常な競争の結果、生産者がAの方ともっぱら取引する、これは独占禁止法に触れるどころか、それこそまさに独占禁止法のねらうところでございます。必ずやその土地の協同組合がA会社ならA会社取引する意味は、そっちと取引するというのは、A会社が価格なりその他の点についてよく勉強する、いいということが認められた結果、そういうことになるのでありまして、その結果、その地域においてA会社独占状態になりましても、さっき申し上げたような故意な作為によってなったのでない、正常の競争の結果そうなったのでありまして、これはちっとも妨げないことでありまして、これは、酪振法のあるなしにかかわらず、そういう状態であると思うのでありまして、酪振法というものについて別に変化はないと思うのであります。  なお、ただ、そう言いますと、酪振法によって中心工場指定されるととは、何と申しましても、いろいろな利益がありまして、単に、かりに、ただいま例に申しましたA、Bという会社が、同じ立場で、もっぱら経済的にあるいは商売的に、同じ立場にあって、指定された方がいろいろな利益があるということは疑えませんで、独占状態を幾らかたやすくするという傾向はあるのでありましょうが、先ほどもちょっと申し上げました通りに、比較的狭い地域において集乳というようなことが独占的になるということは、これは必ずしも非難すべきことではないのではないかと思います。どんな生産量の少い所にも、必ず二社も三社もあって、それが血みどろの競争をしなければいけないのだ、そういうことではありませんで、ただいま問題になっておりますのは、その十和田地区一つの集約酪集地域指定されるくらいな、将来は少くとも相当な牛乳生産量に達する見込みのある所、三八地区もまたもう一つ集約酪農地域として指定されるくらいの収入見込みのある所、これを両方を一つ会社にまかせる。指定されたこと自身をかれこれ言っているのじゃございませんで、そういうふうにもっていって独占をしようとした雪印会社行為は、これは独占禁止法に触れるのではないかという点でございます。
  31. 田中啓一

    田中啓一君 そもそも、中心工場指定というものは、農林省農民意思も聞かないで、天下りにやった事実は私はないと思います。つまり農民というものは、こういった経済行為におきましては、農協というものを作って、そこで意思を結集して、そうして経済行為をやる。そのために農協があるようなものであります。そういう、ことで、三八地区農民というものは農協を通じて、村では単協でございましょうし、それを大きく代表したものは県の経済連でございましょう。また経済連を指導したものに農協の中央会、県中央会もございましょうし、また農協の一般的監督官庁であるところの県庁もございましょう。指導者であります。そういうようなものが一つになりまして、そうして雪印を選択したのです。今小笠原君から例を出してお話しになりましたように、選択をした。そこで初めて中心工場として雪印指定すれば、ここへは相当量の牛乳が集まる。ただ、そういうふうに行くことが望ましいというのが中心工場指定の制度でありますから、こういうことで雪印中心工場指定を受けた。  そうなりますと、作為作為とおっしゃるのは、前に全販の施設を買ったということ、それから県策会社施設を買ったということ、それは作為だ、こうおっしゃるのですが、そういう一体作為のない地域があるか、日本中探して一つもない。それから、結局は指定を受けるについて、これはもう明らかに東北乳業雪印競争の立場に立ったわけです。そうじゃありませんか。私は地方から、両方からの人のいろいろな陳情を聞いておるのでも、大競争をやって、まことに、私どもに言わせますと、お互い非難しあってというようなところまでやったのです。まだやっておるかもしれません。そういうことだが、しかし筋をたどってみれば、この指定工場というものは農民が選択したということなんです。そういうふうにAとBとを比較して、いい方に農民が選択することは望ましいことだとおっしゃる。そうであってみれば、これは一体ほかの県のところと、どこが違うかということです。そのけんかのところへ、独占禁止法を振りかざして飛び込まれたわけです。そういうことにはならないのですか。一つ見解を伺いたい。
  32. 蘆野弘

    説明員蘆野弘君) 中心工場指定ということは、大体その現場の農民意思を基礎にしてされるということは、私は詳細のことは存じませんので、大体そういうことに規定にもなっておるように存じておりまして、まさにその通りでございまして、農林省が今度指定されました手続について、われわれはかれこれ申しているのではございません。農林省では大体現地の地元意思もそこにあると御観察になって、そういう御決定になったのだと思います。その点はわれわれの調べたところでは少し違いまして、このいわゆる発表された農民意思というものは、必ずほんとうの自発的の意思ではない疑いがあるというふうに思っておるわけでございますが、それをもまた雪印がいろいろそういうふうに仕向けて、農民自分の方へ引きつけたという疑いがあると思っておるのであります。が、決して、それがゆえに農林省指定が間違っておったということを申すのではございませんが、そういうふうにした雪印行為独占禁止法に触れる疑いがあるということでございまして、果して現地の酪農民が、何と申しましても、今のところでは酪農民の割合は御存じの通り非常に少いのでありますが、今一番痛切な利害関係のある酪農業をやっておるところの農民諸君の大多数の意思がどうかということは、これはまだもっと詳細に調べてみなければ最終の結論には達しないので、これは今後審判手続において両方から証人を出し、証拠を調べて、果してどちらになるかということをきめる段取りになるわけでございますが、ただいまのところでは、われわれはその農民のいわゆる意思の現わされました手続について、雪印が故意に雪印の支持が多いようなふうに見えるように工作したという疑いを持っておるということを、申し上げておきます。
  33. 佐藤清一郎

    佐藤清一郎君 今までのところを聞いておりますと、何か農民意思に反して違反行為が醸成されておる、また雪印がそういう策動によってやっているというふうなことをお話しになっているのですが、一体酪農組合にしても、あるいは他の農業協同組合にしても、組合の総会において承認をされ、そうして、そういうふうに雪印なら雪印に売ろうということになって、もしほかに反対の二、三の者があっても多数決できめられて、そうしてそれがそういうふうになったというような場合、それはやはり公取違反になるということになるのでありますかどうか。一体、今のような集荷の競争の激しい場合においては、かりに二、三の反対があってもきめられる。それがあとになってから、あれはこうだ、ああだというような裏面工作が、反対側に工作が行われて、かような紛糾を来たすような場合も、われわれは想像しておるわけです。そういうことになりますと、せっかく酪農振興という大きな役割をもって生まれた振興法が、あなたの方によって阻害されてくる。そうしてまた農民意思というものが、いつでも満場一致というわけには参らぬことは、想像にかたくないと思うのです。そういうような今日までの三八の現状から、われわれいろいろ考えてみまして、公取がこれを取り上げてそうしてやっていくというのは、何を目的としてやっておるのか。  今、大体独占禁止法違反になるようなものはあまりないから、結局公取委員の人は暇だから、こんなことでもつついてやっているのじゃないかというような感じを、一般は持っておる。一体、こういう振興法というような大きな目的をもって生まれた法律に対して、横やりをやって、そうしてこれを阻害していくというやり方は、大乗的な見地から見て、はなはだ遺憾だとわしらは思う。それで、いかなる法律でも規定でも、要は運用いかんにある。運用がその法律の魂を殺してしまうような横やりをやったならば、これはどうにもならぬのです。ここにお集まりの委員の方々はだれもが、みんながみんな、何がためにこういうことをするのだ——、率直に私は申し上げるのですが、何のためにこれをやるか、おかしなことをするのじゃないかというような感じをもって、みな質問しているわけなんです。そうすると、のらりくらりとして、焦点をはずれた返答をしておりますから、一向われわれはわからぬということになるわけなんです。  第二に、それほど重大なこれは問題として取り上げるべき性質のものであるかどうか、この二つ一つお尋ねいたします。
  34. 蘆野弘

    説明員蘆野弘君) 酪農振興法が、わが国の比較的おくれた酪農を大いに振興させようという大目的をもりていることは、われわれもよく了解しておりまして、決して酪農振興法のほんとうの目的を妨害しようというようなことは、毛頭考えておりません。また独禁法の運用が非常に重要であるということも、ごもっともでございます。われわれは常に反省して、ほんとうの目的に達するように運用するように、常に及ばずながらやっておるわけであります。  今度は、全地域を一社にするがいいか、二社がある方がいいかということは、どっちもお説があるようでございます。われわれは必ずしもそういうことではなしに、雪印が一社になるということは、この場合現地の生産者には多分に不利な面があるということをおそれまして、これを問題として取り上げたわけでございます。
  35. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 関連して。酪農振興法は、御承知のように、最初酪農地帯指定したわけです。酪農地帯指定する場合には、五百頭とか六百頭という乳牛がたくさん入っておって、しかもその地帯がきわめて酪農に適しておるというわけで、酪農地帯指定する。その場合には、あるいは農協なり、あるいは個人なりが乳を集めておるとか何とか、いろいろのことをやっている。それが二軒なり、三軒なり、これがだんだん奨励して乳牛が多くなるというと、ある一定に至ったら、やはりここに中央市場という指定をしてこねば、農民が非常に不利になる、こういう段階になるのです。そう考えてくると、中心工場が来たときに、何らかの作為をせなければ、中心工場指定せられて入ってきても成り立たない。あるいは農協の施設を買収するとか、それから買収に応じない場合にはそれと競争するとか、いろいろそういうことが必ず生じてこなければ、中心工場というものは成り立たない。なお中心工場も当初においてはよほど奮闘努力しなければ、経営が成り立たない、乳が少いのですから。少くとも百五十石集乳しなければ、経費が持たぬ。それを標準にして、中心工場はみなやっておるのです。ところが、青森県の場合は、明治牛乳とか何とか雪印に匹敵したものがあったから、問題を公取は取り上げたように私は感ずるのですよ。とにかくそれに類することは、中心工場指定する場合には、必ずどこの酪農地域においても起ると思う。  だから、そういう意味からいきますと、公取の独禁法に対するあなた方のお考えと、この酪農振興法運営に対する問題というものは、いつまでもそごすると思う。あなた方が取り上げようと思えば、全部の中心工場を取り上げられるということになる。そこがきわめて私はおかしいと思う。そういうことから考えると、とにかく法律上はいつでも出られるのだけれども、私はそういうものに出るべきじゃないように思う。もし出るべきだということであれば、いつまでもそういう状態で長く放置しておくことができない。この振興法をかように非常に心配しておるのですが、その点どうお考えになりますか。そういう場合には、大なり小なり、そういうものは必ず起る。行為がなければ目的が達せられない。農民が一定の資本をもって、しっかりした中央市場を設置しなければ、非常に不利益を招く、こういうことになると、あなた方の考えようでは、どこにでも手が入る。そうすると、私どもはこの振興法に対して相当考えていかなければならぬ。こういう非常に重大な問題なのです。そこをお考えになって、一つ答弁をお願いいたしたいと思う。
  36. 蘆野弘

    説明員蘆野弘君) ほかにも類似の状態がどこにもあるのではないかというお説のように承わりましたが、青森県の場合は、雪印乳業青森で仕事を始めるに対して、大体全県の牛乳一手にまかせるという初めから条件でもって、そしていろいろ全販連施設その他の会社を買収するというようなことをやったということでありまして、よほどこれは著しい例で、そういうことがあっちこっちにもあるとは考えられないのでありまして、しかも、今お話しになりました一地域内、一集約酪農地域内だけのことではございませんで、まあ二つでありますが、とにかく全県というような広い範囲において、しかもその地域たるや、地理的にほかと離れておって、出荷者はそれ以外に出荷する道がないというような所を、全部を一つ会社がやるということは、これは果して現地の生産者の利益であるかどうか、これは私はよほど問題であろうと思います。この点は、ほかの地域事情を一々調べたわけではございませんが、そういったことが、そうあちこちにあるとは思いません。決して御心配になるように、利益になり、独占になるからといって、一々公取が出ていって、それをじゃまだてするというような御心配はないのではないかと思います。
  37. 河野謙三

    ○河野謙三君 短時間でやりますから、一、二回、ちょっとやらせていただきたいと思います。  私が伺いたいのは、農民の組織する団体が、農民と相談の上で、地域の狭い広いにかかわらず、スムーズにどこの会社と契約しても、それは私は問題じゃないと思うのですが、この場合私が想像するに、問題になるのは、青森県が持株会社として出資している青森畜産並びに全販連の処理工場、これを雪印が買収するに当って、青森県はその中に介入しておると私には想像される。県は、これは権力者ですね。農民団体は権力者じゃありませんよ、これは。そういう権力者である県が、その間に立って、どういう役割を演じたか、演じていないか、その点が私はあなた方の方で一番重大視しておるのではないかと思います。県はどういう立場において、どういうことを一体、仲介の労をとったというか、どういう仕事をされたのか、これが理由書の中にもあると思いますがね。権力者である県が、いろいろこの問題について発言し、いろいろこれをきめるに当っての推進力になっておるとすれば、私はこれは重大であると思う。それによって、そこのところは県は何も関係ないのですか、あるのですか。
  38. 蘆野弘

    説明員蘆野弘君) 県が、雪印乳業青森県進出について、どれだけ介入したかという、あるいはどれだけ推進したかという点かと存じますが、これは初めにもちょっと申し上げましたように、県がいかなる役割をしているかということは、ある意味においては非常に重大だと思いますが、われわれの立場から申しますと、独占禁止法というものは、事業者行為を規制する法律でありまして、公正取引委員会ももっぱら、事業者行為独占禁止法違反しておるかどうかということでございまして、その他、県とか、あるいは農協、そういう官庁あるいは地方団体、その他の権力者——事業者でないものの行為というものは、われわれはどうすることもできない。そういう権限は与えられておらないのでありまして、ただ問題とするところは、事業者であるところの雪印乳業が、どれだけ働きかけ、どれだけあるいは県庁等を利用して、自分独占目的を達するように使ったかという点においては、関係はあるのでございますが、県自体の行為その他の行政措置というようなことについては、われわれは一切触れる限りではないのでございます。
  39. 河野謙三

    ○河野謙三君 私、平たく伺いますが、平たく伺ってもどう伺っても同じですが、われわれはちょっと想像できますことは、赤字会社である全販連工場なり、青森畜産というものを、雪印がただ引き受けるわけがない。また引き受けてもらうといっても、ただ引き受けてくれとは言えないはずである。そこで、これを引き受けてくれれば——私の想像ですよ。引き受けてくれれば、この地区牛乳は全部お前の方にやるから、お前の方は思い切って引き受けてくれ、こう言うのじゃないかと思うのですよ。この場合に、赤字会社が農業団体の、農民の組織する団体の出資会社であれば、また農民だけの純粋の会社であるならば、これは問題じゃないけれども、そこに青森県が出資しておる会社であるということになりますと、当然青森県というのも入るでしょう。そこらにやはり一つの、他の全国、ほかの地域にないところのケースがここにあるということを重視しておられるのではないかと思うのですがね。そうでないのですか。
  40. 蘆野弘

    説明員蘆野弘君) 県のとった行為については、私なるべくここで触れたくないのでありますが、しかし青森県の、いわゆる県が大株主になっているところの青森畜産振興の買収の話が成立するにつきましては、条件としては、大体青森県の全体の乳業をまかせるというような趣旨の覚え書が取りかわされていると私は解しておりまして、これは御指摘通り、まさにこの問題の特異な点であると存じております。
  41. 河野謙三

    ○河野謙三君 私は全く、皆さんほかの委員の方も第三者でありますが、先ほどからお話にあるように、農業団体が雪印とどう契約をしようと、私はそれは公取が取り上げる問題じゃない、取り上げること自体が非常に不謹慎だと思うのですが、青森畜産というものは農業団体じゃないのでしょう、農民の組織する会社じゃないのですね、厳密にいえば。だから、この会社の利害ということは、即農民の利害ということに、青森県下の酪農民の利害ということに、必ずしも百パーセント一致していないのですね。そこらに問題があると、こういうふうに思っておられる。私の意見は別です。あなたの方で、そこらの問題があると、こういうことじゃないのですか。そうじゃないのですか。
  42. 蘆野弘

    説明員蘆野弘君) 趣意が、もし畜産会社の処置について県がとったことを非常に問題にしているのかという御質問であれば、われわれの立場としてはそうではないのでありまして、そういう状況に、青森県が畜産会社を何とかしなければならない状況にあったということは事実でございまして、その状況を利用してと申しますか、雪印乳業が、県側がそういう状況にあるときに、その状況を利用して、そういう有利な条件、つまり県側も、青森県全体の牛乳雪印に行くように努力しよう、こういったような条件を取りつけて、そうして青森県に進出したということが、われわれの方から見れば、問題の中心点であるのであります。
  43. 河野謙三

    ○河野謙三君 別の角度から伺いますが、青森畜産という会社が県の出資会社じゃないのだ、純然たる青森県下の農民の資本によってできておる会社である、その青森畜産という農民の組織して、出資している会社が、純然たる農民会社ですよ、これが今回のように雪印といろいろ契約してやった場合と、現実に青森県畜産というものは、私がただいま申し上げた純粋の農民会社じゃありませんね、そういう場合と、おのずとあなたの方の見解は違ってくるのじゃないのですか。そこのところに非常に問題があると思う。そこのところは同じですか。
  44. 蘆野弘

    説明員蘆野弘君) 青森県畜産会社は、県とそれから青森県の各市町村とが株主になってできた会社であります。御指摘通り、直接に農民自身の会社というわけではございません。かりに、もしほんとうのあそこの農民たちだけが自分で作った会社であるという場合と、どう違うだろうかという御質問でございますが、県とそういう特殊な関係があるというために、県当局がその持っているいろいろな影響力、権力を利用して、雪印に特別の便宜をはかろうということができる立場にある、そういう会社でありまして、ですから、ただいまのお説のような純然たる、すなわちそういう関係のない、何も権力を持っていない会社取引することとは、まさにお説の通り、非常な違いがあるのでございます。
  45. 河野謙三

    ○河野謙三君 そうしますと、先ほど佐藤先生初め他の方からお話があったように、農民の組織する団体なり農民の純然たる会社が、地域の広い狭いにかかわらず、どこの会社にどういうふうに売ろうと、それに対してはあなたの方では容喙する筋ではないということは、はっきり言えるでしょう。そうでないですか。それと今度のとはケースが違うということでしょう。それだけはっきりしておいて下さい。
  46. 蘆野弘

    説明員蘆野弘君) 先ほど申しました通り農民会社がどこの会社を相手にしようと、その結果ある会社が非常に有利になり、あるいは独占的になろうとなるまいと、そういうことはわれわれは全然容喙いたしません。
  47. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 関連で持ち回っているのですが、その間にどうもはっきりしない点があるので、進行上あなたから整理してもらいたい。それは、この青森の三八地区の問題については、十和田地域、あるいは三八の地域、両方持っておる。それを一社で持とうと企図したことが独禁法に触れるんだという話をしながら、なお関連で質問をされると、こういう予断を持っている。あなたは、乳業がだんだんふえてくると、今日でさえも七〇%雪の方に渡しているのだから、雪の設備拡張に伴って、どんどん独占的に雪の方にだけこの集乳が流れていく。そのことは農民の利益にもならぬ、生産者の利益にもならぬと思う。で、一般的には一社でやろうが二社でやろうが、それが直ちに独占だということにはならぬが、この地区においては乳業がふえ、そして独占的な形が濃厚になれば、農民の利益にもならぬ、こういう予断をも含めて御答弁になっておられる。ところが、あなたが、独禁法の対象にするのは、雪であれ、明治であれ、森永であれ、事業会社の方が対象になるのであって、農民の何も利益とか生産者の立場というのはあなたの方とは関係ないのです。そうでないですか。それがこの生産者の利益になるとかならぬとかいうことが、公取の判定の範疇の中に入るのですか。この点を明らかにしておいていただきたい。  それから第二としましては、これは全くの仮定の問題ですが、かりにあなた方がこの問題で独禁法に違反すると判定したからといって、この中心工場指定酪農振興法のそれによる規定で、取り消さない。農民自身はまた、一元集荷の乳をこの中心工場に売り渡すということも動かない。こういうことになれば、あなたの方の判定の結果はどこに効果が出てくるのですか、どういう実際的な結果が生まれるのですか。この点を私わかりませんので、はっきりしていただきたい。  それから第三には、あまりもう私には当らないと思うので(笑声)この際申し上げておきますが、あなたはこういうことが酪農の発展を阻害するという考え方を持っておられますが、逆にある地域等においては農協、経済連が中心になって一元集荷する。相当の乳量になっているから一元集荷するという形で、事を取り運ぼうとしておるのに、一方、一つ会社がその農協の一元集荷に反対して割り込んで、そうしてその会社系統の酪農組合を作るために画策をし、それぞれの人を集めて、そうして酪農振興法による指定が取り消されたって、かまわない、この方がお前たちの利益なんだということで、そういう農民の結集された意思とか組織とかを、結果としては壊してしまって、さまざまに割り込んでくる。こういう姿も他の地域においては現実にあるのですよ。こういうことは、公取がこの問題を取り上げてきたことが、他の地域指定の中にいろいろな形で影響しているという一つの事実なんです。で、公取の方は独禁法の建前から問題を処理されるということであっても、そのことが酪農振興法に伴う生産農家の利益を守り、乳業資本の収奪から生産農家の利益を守ろうとしておるこの運営の仕方を、阻害しておる。阻害するというような結果になるような、そういう動きが現実に現われておるのだ。そういう点を考えれば、あなたの方は、かえって、あなた方の考えるようにするのが、生産農家の利益のためなのだというけれども、酪農振興法の立法の趣旨からいえば、そういうことは生産農家の利益には反するのです、逆な場合には。そこで、あなたの方では青森の三八地区という問題だけを考えるだけでなしに、この問題の波及するところ、また酪農振興に影響するところ重大であるということを考えるならば、この乳業資本が全国的にどういう形で競争をし、どういう形で集乳し、また自己の会社の発展といいますか利益といいますかのためにやっているかという、全体的な問題も御調査なすったらいかがですか。そうして、その中でこの三八地区という地域の問題を考えるということをおやりになったら、私はよほど角度は変ってくると思うのです。そういう建前であなた方は、酪農振興、生産農家の利益のためも考えられるほどのそういう広いお気持を持っておられるならば、もっとこの現在の、全国的に酪農振興法による指定が行われ、この酪農の発展のためにいろいろな努力をしていることについても、十分御調査になることを、これはつけ加えて私要望しておく次第であります。  前の二点についてお答え願いたい。
  48. 蘆野弘

    説明員蘆野弘君) 牛乳生産者の利益が害されるかどうかということは、公取の関心事であるかどうかということが、第一の御質問であったように存ずるのでありますが、先ほどから申し上げております通り雪印乳業青森県全体の乳業独占しようとした、その行為独占禁止法規定違反する疑いがあるということで、今度の事件を取り上げたわけでございますが、単に独占という、まあ法律規定した独占に該当することがあったというだけで、すぐ事件にするのでありませんで、それによってだれかが不当な不利を受けておる者があるということがあって、初めて問題として、われわれ事件として取り上げるわけでございます。この場合、青森県における牛乳雪印独占いたしましたとして、いわゆる牛乳の製品を売る方、これは市乳は別といたしましても、大部分を占めるところの酪農製品でありますね、これはもう全国的に、貯蔵もできますし、輸送もできますからして、どこへでも売れるので、これには御承知通り明治とか、森永とか、北海道バターとかいう有力な会社もたくさんありますからして、売る方の面では、独占の弊害というものは別段ないのであります。もしありとすれば、青森県全体の集乳事業独占される、つまりそこには価格の競争もなければ、サービスの競争もなくなるということが、牛乳生産者にとっては不利益ではないか、不利益のおそれがあるというので取り上げましたので、第一の御質問の——われわれはただ明治とか森永とか、その乳業者の競争だけを問題にするというのではございませんで、その結果が、牛乳生産者の利益を害するおそれがあるということで初めて事件にするのでありまして、第一の御質問の、牛乳業者の利益をわれわれ問題にするかどうかということは、まさにそれを問題にしておるわけでございます。  それから第二に、これがかりに独占であった、違反であったという認定になりましたときに、どういう措置がとれるか、指定を取り消させるわけにはいかないじゃないかというお話で、これはまさにその通りでございまして、われわれの与えられた権限は、事業者に対して、その独占状態を排除するような適当な措置を命ずることができるというだけでございまして、これは雪印乳業が、その権限内でできること以外は命ずるわけにはいかないのでありまして、これを実際どういうふうな措置を命ずるかということは、これは一つ審判の結果を待ってみないと、今から申し上げることはできません。
  49. 清澤俊英

    清澤俊英君 議事進行について。ちょうどいいところへ入りましたので、(笑声)これはやはり資料をお願いしたいんですが、ということは、何か生産者が非常に実害をこうむっておって、それが独占禁止によって実害を受けて提訴した、こういうんだが、その提訴書がありましたら、だれが、どの団体がこういう提訴をしたかということを、一つ資料でちょうだいしたいと思います。
  50. 蘆野弘

    説明員蘆野弘君) これは審判手続に関する資料でございますからして……。
  51. 堀末治

    委員長堀末治君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  52. 堀末治

    委員長堀末治君) 速記を始めて下さい。
  53. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 第二点の答弁に関して、もっと確かめたい。今のお話では、結果がそうなれば、雪の方に対して何らかの措置に出ることができるということですが、それは具体的には、お前の方は乳の量も幾ら以上は引き受けて処理してはならぬ、あとは他に回せというようなことが、その一つの処理の仕方ということになるわけですか。その場合に、また生産農家の方の組織は、それにかかわりなしに、やはり雪の方に大量渡していくという結果が出てきた場合には、それはどうなるか。また公取としては、その生産農家の方をも規制していくことができるのかどうか、こういう点を明らかにしてもらいたいと思う。  そうして、あなたのおっしゃることを発展していけば、生産農家の意思として、自由に、ある中心工場に乳を大量に渡していく、それがだんだん拡大していくという、一方でいえば酪農振興法が企図するような形が出ていくことは、当然独禁法の方に触れていくという形になっていく、そういうふうに私はその答弁を聞きとったのです。どこでも、もう実態として、量が片方にふえ片方に減ってくるということになれば、これはあなたの方の建前からいえば、独禁法の方に触れてくるというふうに集約されるように答弁を私聞きとったのです。私の誤解であればこれは幾らでも取り消しますが、もう一度、これは他地域に及ぼす影響が大きいことですから、的確な御答弁をお願いしたい。
  54. 蘆野弘

    説明員蘆野弘君) 第一の点の、かりに雪印違反が確定した場合にどういう措置を命ずるかということについては、これはどうも審判の結果を待ってみなければわからないのでありまして、審判の結果を予想してかれこれ今申し上げることは、差し控えるべきであろうと思うのでありまして、ただ、法律規定だけを御説明しておきますと、さっき申し上げました通りに、まず第一に、雪印乳業事業者としてなし得ることには命ずることができない。これは明白でありまして、同時に、また雪印乳業事業者としてなし得ることならば、そうしてまたその違法の状態を排除するに必要なことならば、いかようなることも命じ得るということに法律規定がなっておるわけでございまして、その範囲で必要で最小限度の措置を命ずるということになると思います。  第二の点でございますが、私が先ほどから申し上げましたことは、農業団体が一元集荷して、それが自由にどこの会社へでも出荷する、その選んだ方に出荷するということは、これは自由でありまして、その結果がある一社のみに乳が集まってほかへ集まらなくても、これは独占禁止法違反でもなければ問題でもないということを申し上げたのでございまして、今のお考えと反対のようにおとりになったかとも思うのでありますが、もしそうなれば、そういうことでありますので、農業団体が自由に一元集荷して、そうして自由に取引先をきめるということが、独禁法上もいいのであります。
  55. 千田正

    ○千田正君 今非常に、小笠原君の質問に対してお答えが矛盾していると思います。ところが、この私的独占禁止法の第六章においては、御承知通り適用除外の法文があります。第二十四条第一項をごらんになればおわかりの通り、組合に対しては独占禁止法は適用を除外するただし書きがあります。しかしながら、今のあなたのお答えを聞くというと、たとえば事業者であるところの雪印なら雪印にある程度の命令をした場合に、あるいは集乳するその乳の量を制限するとか、いろいろな制限を命じた場合におきましても、農業協同組合あるいは酪農組合がそれを、どうしても雪印でなければならない、こういった場合においては、今あなたが最後の段においてお答えになったように、これはあなたの方で禁止するわけはありませんね。この独占禁止法の適用を除外するような第二十四条第一項をごらんになればおわかりの通り、これとの関連はどうなんですか。今読みますが、第六章は独占禁止法の「適用除外」という法文の第二十四条の第一項であります。一定の組合の行為、「この法律規定は、左の各号に掲げる要件を備え 且つ、法律規定に基いて設立された組合の行為には、これを適用しない。但し、不公正な取引方法を用いる場合又は一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより不当に対価を引き上げることとなる場合は、この限りでない。」、これは今のだんだんの各委員の御質問に対するあなたのお答えによるというと、必ずしも不正な取引行為でもなければ、不当ないわゆる対価の引き上げでもない。生産者の営農を維持するための生産者価格を当然要求しているだけであって、問題はないと思いますが、組合がその会社を選んで、われわれは一致してこれを納めようということに対しては、全然あなた方の方としては、この独占禁止法によって禁止できない、適用除外、これと今の事業者との間の関係において取引が行われた場合においても、この法律はどういうふうな行き方をするか、この法的疑義について一つお答えいただきたい。
  56. 蘆野弘

    説明員蘆野弘君) 今のお読み下さった独占禁止法の適用除外あるなしにかかわらず、この事件の審決として、農業協同組合その他の業者に何も命令することはできない。この雪印に売ってはいけないということは、ほかの人に命ずることは法律ではできないのであります。どこまでも本件を、被審人とわれわれ称しておりますが、被告でありますが、この場合雪印乳業でありますが、雪印乳業に、かくかくの行為をしてはいけない。あるいはかくかくの行為をせよ、こうい命令をし得るだけでございまして、相手方に対して、雪印取引してはならないとか、そういう命令をすることはできないのであります。
  57. 千田正

    ○千田正君 そうなると、一方的な意思によって、農業組合なり農業協同組合なりが、たとえば千石なら千石の牛乳雪印に納めたい、しかしあなた方の審判の決果、確実に五百石以上の取引をしてはならぬ、こういう命令があった場合において、そこに大きな矛盾が出てきます。これに対する考え方はどうでしょうか。
  58. 蘆野弘

    説明員蘆野弘君) 先ほどからお断わり申し上げました通り、これから公開の手続で慎重に審判をするという段取りでありまして、その結果をいろいろ予測するようなことは、この際私から申し上げるべきではないと思うのであります。ただ、法律上どこまでが可能であるという法律規定だけを、さっき御説明申し上げたわけでございまして、今お話しの、雪印に、お前は牛乳をこれ以上買ってはならぬというような命令をするということは、するしないは別として、法律的には可能で、まさにその通りでございます。そうすると、その必然的結果として、相手、つまり売る方にも制限するような結果になるということになるので、直接命令はできないが、結局雪印とは取引できないということになって、相手が拘束されるようなことになるという矛盾と申しますか、そういうことは法律的には起り得るわけでございますが、実際排除措置を命じますときは、その法律としては、違法の行為を排除するに必要な措置は何でも命ぜられることでありますが、そこはいろいろ関連事業者との利害もよく考えまして、あまり無理なことや、雪印違反を排除させるという一点張りで、ほかの関連事業者の利害とか立場というものを無視したようなことは、公正取引委員会はそういう命令はすべきものではないと思って、十分考えて処理いたしたい、こういうことでございます。
  59. 東隆

    ○東隆君 これは簡単なんですから……。明治とそれから雪とが指定を受けるために競争をしておることは、お認めになりますか、青森地区で。
  60. 蘆野弘

    説明員蘆野弘君) 認めます。三八地区指定工場について競争をいたしております。
  61. 東隆

    ○東隆君 それならば、施設明治森永が両方とも実は譲り受けをやっておるわけです。その場合に、親近感を持っておるところと取引をすることは、これは公正取引に反することですか。たとえば明治の場合は、東北乳業青森明治乳業会社に変り、それが今度は明治乳業に変ってきた。それから県策会社とそれから全販連工場は、これは雪ときわめて親近感のある全販連に移ってきておるわけです。それから県策会社も、もとよりそういうような形になって移ってきたわけです。これは親近感のある所と取引をしたと、こういうことなんですが、これは公取委員会の何か適正な取引でないとか何とかというような、そういうことに触れますか、この行為は。
  62. 蘆野弘

    説明員蘆野弘君) 別段、めいめいが親近感のある所と取引するということ自体は、何も法律上問題ではないと存じますが。
  63. 東隆

    ○東隆君 全販連とそれから雪印とが工場取引をしたことについて、何か特別に触れるようなものがございますか。
  64. 蘆野弘

    説明員蘆野弘君) 全販連施設を買ったこと自体、そこでとまっており、また無条件であれば、別にそれは問題にするに足りないと思いますが。
  65. 東隆

    ○東隆君 それでは、青森県の県策会社雪印が買っていくというそのことについて、やはり取引上に何か間違ったことでもございますか。
  66. 蘆野弘

    説明員蘆野弘君) 畜産振興を買うについてですね、これに青森県全体の、まあそういう言葉では書いておりませんが、早く申せば、集乳といいますか、酪農事業一手にまかせるように努力するという約束、そういう条件で買ったことは大いに問題になると思うのでありますが。
  67. 東隆

    ○東隆君 東北乳業がですね、青森明治になり、それからそれが明治乳業に変ってきておる。その過程は明らかに、一手指定を受けようというこれは明治側の意図でないかと思うんです。あるいはそこに橋頭塗をこしらえて、そういうことをやろうとした行為じゃないかと思うんです。そうすると、これと、それから県策会社も、それから全販連も、これは経営はうまくいかなくって、そうしてその経営を転換するために自分たちの親近しておる会社に譲り渡すと、こういうことは、これは明治乳業の場合におけるやり方も同じじゃないかと思うんですが、この点はどうですか。
  68. 蘆野弘

    説明員蘆野弘君) その点は、先ほども申し上げました通り青森畜産を買うこと、ひいてはさかのぼって全販連を買うことについて、県との間にそういう条件をつけたと、そういう約束ができ上ったという点で、明治が東北乳業、あるいはその前はやはり何か協同組合組織があったようでありますが、それを買ったことと違う点があるのでございます。
  69. 東隆

    ○東隆君 そうすると、県が中に入ったということが問題になってくるわけですね。
  70. 蘆野弘

    説明員蘆野弘君) 入ったと申しますか、単にあっせんしたということでなしに、県からそういう約束を取りつけて買ったということが問題となります。
  71. 東隆

    ○東隆君 酪振法でもって、三八地区中心工場をこしらえるときには一つを選ぶと、こういうことは、これは県の手を通して指定をされてくると思うのですが、あるいは県が農林省の方に副申をして、そうして農林省の方で決定をすることなんですが、その行為というものはあくまで、どうしてもやらなければならぬ行為だと思いますが、その行為は公正取引に何か反するような力になりますか。
  72. 蘆野弘

    説明員蘆野弘君) 県が中心工場指定について農林大臣に意見を副申するというその行為は、独禁法には別に何も反しておるものじゃございませんです。
  73. 東隆

    ○東隆君 そうすると、県が何か意図があって、県が何か意図があって、県策会社雪印に売却をする場合に、不当な利益を交換条件に、指定条件にしてとったという、そういう中身が問題になっておると思うのですが、そうですが。
  74. 蘆野弘

    説明員蘆野弘君) 単なる不当な条件というばかりでなしに、県全体の乳業をお前にまかせるといったような内容条件で畜産振興を買収したということが、問題になって参ります。
  75. 東隆

    ○東隆君 しかし、その点は非常にあいまいだと思うのです。県は雪とそれから明治と両方をどちらを指定するかというときには、条件の備わったものを県は指定をするのですから、条件のないものは指定をしないはずです。そこで、条件の整備のために、いろいろな条件の整備をやるのは、これは両方でもって競争をしているのですから、これは当然な行為でないでしょうか。この行為がもし公取の方に触れるということになれば、これはもう何も県はできないことになります。その点はどうですか。
  76. 蘆野弘

    説明員蘆野弘君) 指定される条件を整するために、先ほど申しましたような、県との了解に基いて、いろいろ県の役人あるいは経済団体の上層部等の影響力というようなものを利用して、無理に雪印取引先を広げていったと、こういう疑いを持っておるわけであります。
  77. 清澤俊英

    清澤俊英君 関連です。今の場合、まあ大体何かで工場を売るとすれば、工場自身は問題でないと思うのです。その工場についておる背景、これが重要な問題になるのです、こういう牛乳会社等の何を売る場合には。その際に、たとえば県が、一県をおまかせします、これはあなたに全部あげますと、こう言うてみましたところが、農協法は厳として存在しておりますから、農協法の規定によって、県が何と言ったって、いやなものは自由に売らぬで済むんだと思うのです。これはもう何なら何を、経済局長でも畜産局長からでも、その点は後にお伺いいたします。差しつかえないと思うのです。そうすると、向うのものを条件として売って、ただ一応今ここに整備せられた組織があるからこれにつけて売りますと、こういうことをかりに言うたって、これは大した問題はないと思うのですが、その点はどうなんです。今売る場合に、農協法からいいますれば、強制して、いやでも売らぬければならぬという規則はないのです。これには訴える方法もあれば何もある。自由意思は束縛せられておらないと……。そういうものを条件にして売ったからというて、それが問題になっては大へんだろうと思う。その点、どうお考えになっておるか。
  78. 蘆野弘

    説明員蘆野弘君) 全敗連の処理工場を売ったというようなこと自体は、問題にしておりませんで、その上各集乳所、そのほかにも小さな集乳施設を買いましたが、そこで牛乳の出荷について、お話通り、農協に命令することはできませんし、そんな義務もないのでありますが、これはまあ実際の整理と申しますか、影響力を用いて無理に雪印の方に出荷させるようにしたという疑いのある事例があるのであります。
  79. 清澤俊英

    清澤俊英君 詳しいことはいずれあれがありますから、そのときに譲りますが、以上の点ですよ。私はどうも納得いかないのは、工場だけを売買したって、これは何にもならない、実際問題として。そこへ集まっておるまあ農民の組織、これが重要な問題になる。そうしてみまするならば、この工場についてこれだけのものは差し上げます、このくらいのことは言わなければ、工場なんか買ってもらえないと思う。工場は立ちいかなくなる。店だけ持っていきますということはできませんよ、現実にはできない。それが、しかし、その通りにして売れましても、売って売買は済みましたが、しかしながら、農協法が厳として立場をとっておる限りにおいては、これを強制して、いやでもお前売れと一言うてみたって、これは無効な話なんです。無効なんです。  われわれの所では、そんなことはたくさんありますよ。これは養蚕でも、郡全体で養蚕の製糸場を作った、いやでも売れ、そんなことを言う権利はありません。指定されたら売ればいいのだからといって、どんどん売っておる。何とも処分もできない。権力をもって指定を解こうとしてみましても、それをはね返して、やっております。これは農民の意識の問題であって、それは教育の問題なんです。決して法律上から見て、それがいいとか悪いとかいうことは、どうもおかしいと思うんです。これで、きょうはやめておきますが……。
  80. 東隆

    ○東隆君 そこで、県とそれから経済連と、こう二つ力を与えたものが出てくるわけです。お話を伺っておりますと、県が力を与えた、それから経済連が圧力を加えた、こういうことになるんです。そこで県の問題については、指定したりなんかして、そういうような問題については別に関係はない。そうすると、今度は経済連の関係なんです。経済連は、自由なる意思によってこしらえた農業協同組合の連合会であります。この連合会は、先ほど千田君の方から言われたように、適用除外になっている。そうして民主的にできた団体なんですね。連合会が農民意思を代表して買うということを決定をして、そうして買ってもらいたい、こういうふうにやったものが、これがやはり圧力ですか。圧力を加えた、この点はどうですか。県の問題でなくて、今度は経済連の問題。経済連が圧力を加えて、県に指定をさせるようにやったということになるのか、どっちか。それは両方に働きますが、経済連がやった行為そのものは、これはここにひっかかることになるんですが、そうすると、雪の方が悪いのか、県の方が悪いのかという問題になりますから、非常に大切なところなんです。
  81. 蘆野弘

    説明員蘆野弘君) 別に経済連が県に指定させるように働きかけたということは私ども申しておりませんで、指定するについては一定の基盤がなければならぬ。その基盤である実績を作る上について、経済連がある団体なり生産者なりに圧力を加えて、雪印の方へ出荷させるようにした疑いはある、こういうことであります。
  82. 清澤俊英

    清澤俊英君 いろいろのお伺いを公取にする関係上、非常に重要性があると思いますので、一月の三十日に何か後藤さんが農協に対することで、性格に対することで新聞発表せられたそうでありますが、その資料と、それから藤野さん、あなたです、あなたが十一月の七日に雪印乳業の何か結論に対する審査についてという談話を、新聞記者に発表せられたそうでありますが、これを一つ資料として、やはり一緒にちょうだいしたいと思います。ということは、われわれがなるべく審議の手数を省いて、そうして核心に触れていろいろお伺いしたいと思うから、お願いしたいと思います。
  83. 蘆野弘

    説明員蘆野弘君) 十一月七日の藤野の談話の写し、これは差し上げます。一月三十日に後藤事務官が新聞発表というようなことは別にしておらないんですが……。
  84. 清澤俊英

    清澤俊英君 これはしておられるんです。確かにしておられます。もし何ならば、後藤さんの覚書でもいいんです。しておられる。
  85. 堀末治

    委員長堀末治君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  86. 堀末治

    委員長堀末治君) 速記を起して。  先ほど清澤君から要求のございました資料は、今蘆野委員と話しまして、これは提出することに御承諾を得ました。  いずれこの問題はあらためて御協議することにいたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十八分散会