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1957-04-17 第26回国会 参議院 農林水産委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月十七日(水曜日)    午後三時五十三分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     堀  末治君    理事            重政 庸徳君            藤野 繁雄君            東   隆君            清澤 俊英君    委員            青山 正一君            秋山俊一郎君            雨森 常夫君            佐藤清一郎君            柴田  栄君            堀本 宜実君            羽生 三七君            上林 忠次君            島村 軍次君            千田  正君   政府委員    農林省振興局長 大坪 藤市君    水産庁次長   奧原日出男君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君   説明員    大蔵省主計局主    計官      大村 筆雄君    水産庁調査研究    部長      藤永 元作君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○委員長報告農林水産政策に関する調査の件  (北太平洋オツトセイ条約に関する  件)   —————————————
  2. 堀末治

    委員長堀末治君) ただいまから農林水産委員会を開きます。  最初に御報告申し上げます。農業委員会等に関する法律の一部を改正する法律案について、昨四月十六日、地方行政委員長から農林水産委員長あて、お手元にその写しをお配りいたしておきましたように、「農業委員会等に関する法律の一部を改正する法律につき、本委員会において別紙の通り決議した。よって善処されたい。」として、   決議   農業委員会等に関する法律の一部を改正する法律案内容を見るに、現行地方自治制度の本旨に副わない憾があるから将来再検討を要するものと認める。  右決議する。 という決議が届けられましたので、御報告申し上げておきます。   —————————————
  3. 堀末治

    委員長堀末治君) 次いで、北太平洋オツトセイ保存の件を議題にいたします。  この件について、去る三月二十五日政府から北太平洋オツトセイ保存に関する暫定条約批准について国会の承認が求められたのであります。この条約がわが国の水産業に重大な関係がありますので、この際政府当局から説明を聞き、これが取扱いについて御協議を願うことにいたします。  なお、この件については、ただいま政府から水産庁次長の奥原君と、大蔵省主計局主計官大村君が見えております。  まず、当局説明を求めます。
  4. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) ただいま国会批准を要請いたしておりまする北太平洋オツトセイ保存に関する暫定条約につきましての大綱を、御説明申し上げます。  条約前文本文十三カ条、末文及び付表からなっておるのでありますが、これは前文におきましては、この条約が、オツトセイ資源最大持続的生産性を達成することを目的といたしまして、各国共同で行いまする科学的調査についての取りきめであるということを述べておるのでございます。  本文におきまして、この共同調査内容説明いたしまするとともに、その調査計画の作成、調査結果の検討を行いまするための委員会を、加盟四カ国をもって設立をする、こういうことを規定いたしておるのであります。また、条約期間中、各国オツトセイの商業的な海上猟獲を禁止して、その他必要な取締り措置を行うということを約束いたしておるのでございます。他方におきまして、オツトセイ繁殖等管理しておりまする米ソ両国は、おのおのその繁殖場捕獲いたしましたオツトセイの獣皮を、繁殖場を有しない日加両国へ分配するということになっているのでございまして、日本に関して申し上げますれば、アメリカプリビロフ島におきまする捕獲頭数、及びソ連コマンダー及びロベン両島からの捕獲頭数の、それぞれ一五%を分配してくれると、こういうことに相なっておるのでございます。  付表におきましては、共同調査の一部でありまする陸上オツトセイ黒色乳幼獣に対しまする標識の数、及び四国がそれぞれ調査のために行いまする海上猟獲の数について、規定をいたしておるのでございまして、日本に関しましては、第一年度及び第二年度におきまして、二千七百五十頭ないし三千二百五十頭の捕獲をするということが定められておるのでございます。以上、ごく簡に要旨を申し上げました。
  5. 堀末治

    委員長堀末治君) 御質疑がございましたら。
  6. 千田正

    千田正君 今、次長から節単に御説明ありましたが、きょうは外務省側、来ないんですね。
  7. 堀末治

    委員長堀末治君) 来れない。
  8. 千田正

    千田正君 外務省は来れないそうでありますが、このオツトセイの問題は、農林水産委員会農林水産委員会という名のもとに委員会が形成されない以前、水産委員会時代から、すでに八年を経過しております。この問題については、しかも昨年に至りましては、国際会議として、わが方から外務官並び水産庁を代表して、ここに御出席藤永博士が当時の代表者として国際会議に臨んでおりますから、当時の重大な要点だけ一つここで御報告願つて、それについてお尋ねいたしたいと思いますので、藤永部長から一応御説明額いたいと思います。
  9. 藤永元作

    説明員藤永元作君) それでは、簡単にオツトセイ会議内容を申し上げます。  オツトセイ会議は一昨年の十一月二十八日から開かれまして、約一年がかりでようやく条約が結ばれた、非常に長くかかったものでございます。それで、このオツトセイ問題は、御承知のように、一九一一年に条約が結ばれまして、その際に、当時は北太平洋オツトセイというものは、多年にわたりました乱獲の結果、わずかに二十万頭程度にすぎなかったのであります。それで日本ソ連アメリカと、当時はイギリスでありますが、その四カ国がワシントンに集りまして、何とかしてこのオツトセイの絶滅を防ごうというので、いろいろ折衝しました結果、一九一一年から海上におけるオツトセイの猟獲を全面的に禁止いたしまして、陸上におきましてもわずかに雄だけを選択的にとるというような方法をとりまして、今日に及んでおるのでございます。この海上猟獲を全面的に禁止して、陸上においてはわずかに三才または四才の雄をとつて繁殖をはかったのでございますが、それが効を奏しまして、自来四十年間にわたりまして、現在では北西太平洋オツトセイは約二百万頭といわれるようになつたのでございます。  それとともに、また一方では、オツトセイがあまりにふえ過ぎたために、特に日本近海では、このオツトセイがふえ過ぎて漁業に相当な被害を与えるようになつたということも、やはり事実だろうと思っております。その間、日本はたしか昭和十四、五年だったと思いますが、どうも日本近海ではオツトセイがふえ過ぎて日本漁業に相当な被害を与えるから、もう一ぺん一つオツトセイ条約の改正をやろうじゃないかというようなことを三カ国に通告したのでありますが、どうもうまくいきませんで、昭和十六年には、日本が一方的にこのオツトセイ条約から脱退するということを通告しまして、十七年から、日本は独自の立場海上猟獲を始めたわけでございます。その後、終戦になりましてから、御承知のように、吉田・ダレス書簡によりまして、再び海上におけるオツトセイの猟獲が禁止されるようになつた次第でございます。  その後、無条約のまま現在に至ってずっと来たのでございますが、これではいけないというので、アメリカの主唱で、一昨年十一月からワシントンにおきまして、もう一ぺん四カ国間のオツトセイ条約を結ぼうじゃないかというので開いたわけでございます。会議に私は出席いたしましたが、様子を大体見ますと、日本だけは海上猟獲を主張する、ソ連アメリカカナダは何とかして海上猟獲はやらせたくないという、二つに大体分れたようでございます。この見解は、会議冒頭におきまして各国代表者がそれぞれステートメントを発表しましたが、それによく各国の性格が出ておると思いますので、それをここでごく簡単にお話ししてみたいと思います。  アメリカは、この開会冒頭におきまして、ステートメントを発表しましたが、それにはオツトセイに関する五原則ということを言っております。それを見ますと、このたびの会議は、北西太平洋におけるオツトセイ群最大持続的生産性をはかるために、条約をもう一ぺん結ぼう、ただし、オツトセイ群があまりにふえて、商業的に重要な魚族に被害を及ぼす場合には、また別に考慮しよう、これが第一。それから第二は、オツトセイは、条約締約国政府管理下にある陸上だけでオツトセイをとる、海上猟獲をやると、どうもオツトセイ最大持続的生産性というものとは相反する、これが第二原則。ただしアメリカは、その第二原則の中で、今度集まつた国の中には、海上猟獲をぜひやりたいというような国もあるから、それもまた大いに討議してみようと、こういうことを言っております。それから第三は、オツトセイの皮の配分は、一九一一年の条約によって樹立された一般的な方式をそのまま踏襲しよう。それから第四は、これは罰則でございますから略します。それから第五番目は、これがアメリカが最も強調したところでございますが、それは管理方法が一九一一年とは違う。なぜ違うかといいますと、アメリカの考えでは、一九一一年におきましては陸上で屠殺する、あるいは管理しておることは、陸上を持っていない国が何ら容喙することができなかったのでありますが、このたびの条約の中には、この四カ国が委員会作つて、その中に共同研究テーマを持って、その研究によって得た結果によっては、あるいは各国政府にいろいろな勧告をすることができる。つまり日本は、具体的な例をとつてみますと、日本コマンダー、あるいはロベン、あるいはプリビロフというような所の繁殖場オツトセイについても、いろいろ発言権があるというようなことになるわけであります。以上がアメリカ会議冒頭に述べた五原則であります。  次に、ソ連はどのようなことを申しましたかと申しますと、これは徹底的に海上猟獲反対であります。ソ連も四項目あげましたが、第一項目は、べーリング海、オホーツク海、日本海を含む北緯三十度以北の太平洋におけるオツトセイは、条約国市民海上においては絶対にとつてはならない。二番目は、これはアメリカと同様でありまして、オツトセイを殺す、屠殺することは、条約国のうちで繁殖島を持っておる国だけがやる。ただし、アメリカと違うところは、ソ連領内にあるプリビロフロベンオツトセイを合せて十万頭以下になつた場合には、商業的猟獲を禁止しまして、従って皮の配分も停止するということであります。三番目と四番目は、これは取締り関係でありますから、これは略すことにいたします。  それにつきまして、日本はどのようなことを申したかと申しますと、一九一一年の条約によって大体オツトセイ繁殖ということは目的は達した、現在においては日本はむしろオツトセイがふえ過ぎて困っている。そしてまたこのオツトセイが集まる所は日本で最も大事な漁場であつて日本漁獲高の約三〇%はこの三陸沖オツトセイの集まる所で魚がとれておる。それだけに、オツトセイ被害というものは相当重大に日本人としては考えておる。それにまた目の前にオツトセイがきているのに、これをとらないということは、あるいはまたこれをとらせないということは、国民感情からしてもどうも納得いかない。さらに、この東北三陸沿岸漁民というものは、大部分は零細漁民であつて、特にオツトセイの集まる冬期においてはほかに仕事はないのであるから、従って、日本としてはどうしてもこのオツトセイがとりたい。ただし、とるといいましても、無制限にとるというのではない。よく統制をとつて秩序ある、それからまた政府も厳重に監督して、一定のオツトセイをとる。そうすることによって日本としては、北太平洋オツトセイ資源が減少するということは少しも考えないということを、るる説明したわけであります。  それから、またカナダはどのようなことを希望したかと申しますと、カナダとしては、オツトセイに対しては非常に関心が薄いのであります。つまり、オツトセイ繁殖島は持っていない、またカナダ漁民も、一部の現住民を除きまして、オツトセイ猟獲をやろうというような漁民はいないのでありまして、ただアメリカからなるべく多くのオツトセイの皮の配分をもらえばもうそれで十分だというような国でありますから、きわめて消極的でありまして、カナダステートメントをことさらには述べないで、カナダ意見はこれからあらゆる機会にときどき申し上げようというにすぎなかったのであります。  このように、日本だけが海上猟獲を主張し、あとの三国は海上猟獲を否定するという、もう初めから根本的に意見が食い違つてつたわけであります。それで会議は総会を一日、二日開きまして、すぐ二つの小委員会に分れたわけであります。一つ原則及び起草委員会というものと、それからもう一つ生物委員会、この二つに分れました。それから原則及び起草委員会というものは、別に仕事はないので、つまり生物委員会が、海上捕獲がいいのか、あるいは悪いのか、あるいは陸上捕獲海上捕獲合せてやつたら初めて最高の持続的生産性があるようになるのか、とにかく学問的なものをもう少し生物小委員会で突き詰めて、それから原則及び起草委員会を開こうということになりまして、結局生物小委員会がそれから毎日会議をやつたわけであります。  その生物小委員会に課せられた問題というものは二つありまして、オツトセイに関する今日の科学的知識吟味ということ、二番目は、将来引き続き基礎として求められる共同調査の範囲と性質という、この二つの問題が生物委員会仕事になって参りまして、そしてこの一番の、オツトセイに関する今日の科学的知識吟味という中には、これを四つ項目に分けまして、一番は、最大持続的生産をあげるためには、オツトセイ陸上だけでとつた方がいいのか、あるいは陸上海上と合せてとつた方がいいのか、これを一つ吟味してくれということ、それから二番目は、オツトセイが他の海洋生物にどのような影響を与えるかということ、三番目は、オツトセイ回遊状態はどうであるかということ、四番目は、各繁殖鳥におけるオツトセイの分はどのような増加の傾向を示しておるかということ、この四つについて科学的に一つ吟味してくれ。そこで、原則及び起草小委員会は、生物委員会としての報告を出してくれということになつたわけであります。従いまして、生物委員会は純科学的な問題を討議することになつたわけでありますが、しかしながら、そこに列席しておる者はそれぞれ国の利害を背負つておりますので、必ずしも科学的な論議ばかりではなくて、科学的という名に隠れて相当国利害というものが反映したわけであります。従いまして、ソ連はあくまで、いろいろな資料をもちまして海上猟獲絶対反対を唱え、日本は、またこれもいろいろな資料をもちまして、海上猟獲をやつて資源影響はないのだということを立証しようとする。アメリカカナダとは、日本ソ連の両極端の間に立ちまして、まあまあといってなだめるというような状態でありました。そこで、この報告を書く役になりますと、それぞれ意見が違うので、いつもアメリカカナダとは一緒になって報告を書く、日本はまた別な意見を書く、ソ連ソ連でまたソ連意見を書く、こういうようなことに相なっております。  それで、第一番のオツトセイ猟獲は陸上がいいか、あるいは陸上海上を合せてやつた方が合理的であるかという回答につきましては、ある程度日本アメリカカナダの三国は意見が一致しまして、純理論的、純生物学的にいえば、現段階においては陸上のみによる場合と、陸上海上捕獲両方を合せたものとにより、どちらがいいかということになると、どちらがいいともいえない。つまり、これは純生物学的に見た場合はどちらがいいともいえない。しかしながら、海上猟獲というものには大きなロスがある。というのは、海上では鉄砲でとりますので、どうしても皮に傷ができるわけであります。また、たまに当つたもの全部をとるわけには参らないのでありまして、約日本沖合いでは六%海に沈んで、とれない。あとの六%はたまにあたつたまま逃げてしまう。つまり日本沖合いにおきましては、約一二%のロスができる。これをアメリカの側で見ますと、約二〇%から二二%くらいのロスができる。それからまた、オツトセイの皮に鉄砲の跡のある皮は、値段が大体そうでない皮の四七%くらいきりにしか当らない。この両方を考えてみると、つまり陸上でとる場合に比べて、約三分の一しか皮に価値がないんだということは、アメリカカナダも申すわけであります。それから、もうソ連は申すまでもなく絶対的に反対で、海上猟獲をやれば、たちまちにして資源は激減するということを盛んに言いまして、一つも協調のあとはないわけであります。日本側としましては、そのとき日本側主張したのは、現在特にプリビロフでありますが、プリビロフオツトセイ群は、大体今百八千万頭ぐらいになっておりまして、十年以前から頭打ちになって、もうふえてこない。つまり、それは非常にむだが多いわけです。頭打ちになって、ちつともふえないということは、どこかにむだがあるわけです。そのむだに比べれば、日本海上でとつて、一二%や一三%のロスがあるのは大したことではないではないかということを盛んに言つたわけでありますが、とにかく海上猟獲というものは、たとえ資源影響がなくても、皮そのものに非常なロスができるということを、盛んに米・加ともに強調したわけであります。  それから日本の周りにオツトセイが何頭くらい来るかということになりまして、日本側主張としては、二十万頭から三十万頭の間であろう。まず二十二、三万頭と見ても、決して過大な評価ではあるまいということを申しましたら、アメリカは、大体十二、三万頭である。しかも、この十二、三万頭のオツトセイは、七〇%がアジア系オツトセイである。わずかに三〇%だけがアメリカから来るものである。従って、日本沖海上猟獲をやつた場合には、アジア系オツトセイに致命的な打撃を与えるに違いないというのが、アメリカカナダソ連も一致した見解でありました。日本側主張は、日本沖に二十万頭から三十万頭のオツトセイが来て、そのうちの七〇%がアメリカ系である。わずかに三〇%だけがアジア系である。従って、日本沖で少々海上猟獲をやつたところが、資源にほとんど影響はないだろうというようなことをまあ言つたわけであります。  それから漁業に対する被害でありますが、アメリカカナダソ連も、オツトセイは少しも漁業には被害を与えない。オツトセイの食べる魚というものは、経済的にはあまり価値のないものを食べる。また少々経済的に価値のある魚を食つたところで、それがその魚そのもの資源影響するとは思えないんだということを盛んに言いました。日本側としましては、いや、そうではないんだ、確かにオツトセイ日本沖ではふえ過ぎて、漁業にずいぶん大きな影響を与えておると言いますと、それではその証拠を出してくれ、数字的な証拠を出してくれ、まあこう言うわけであります。そこでわれわれといたしましては、それは証拠を出せといったつて、それは無理だ。しかしながら、漁民感情としては、目の前で自分のとりたいと思う魚をじやんじやん食われれば、被害があると思うのは当然じゃないか。つまり日本沖とつオツトセイの胃の内容物を調べてますと、ランタン・フイツシユというのが五〇%以上になっております。これはあまり直接には漁業の対象とはならないものであります。その次はイカでありますが、イカというものは日本人にとつては非常に大事なものであるということを言いますと、今度はソ連日本の統計を持ってきまして、オツトセイがどんどん食うといいながら、イカ漁獲高というものは毎年ふえておるじゃないか。確かにイカは、終戦後最もふえたものの一つなんであります。それで私どもは、それは確かに日本全体として見た場合には、イカはふえておる。しかし東北三陸沿岸においては、あるいはふえておるかもしれませんけれども、それとは別問題で、つまり漁民感情として、目の前で競合すれば、必ずオツトセイというものはけしからぬじゃないかと思うのは当然であつて、つまり東北の目の前に来るオツトセイを、しかもそのオツトセイは、だれのものともいえないような、それを目の前に来るのをとつてはだめだといったところで、それはそういう条約というものは決して守れるものじゃないんだから、つまり条約を守るためには、どうしてもある程度のオツトセイというものを、三陸沿岸日本漁民にとらせないことには、どうにもならないというようなことを盛んに言い合いまして、一月のたしか三日だったと思いますが、今度は日本がもう一ぺんステートメントを出したわけであります。それは、日本に今後三カ年間、毎年二万頭のオツトセイをとらしてくれ、これによって、果して海上猟獲がオツトセイ資源影響を与えるかどうか、これを判断してみようじゃないか。そうしてまた生物委員会でも言っておるように、陸上猟獲のみがいいか、陸上海上猟獲とを組み合せたものがいいかということは、なかなか理論的、生物学的にはどちらともいえないというような判定を下しているじやはいか。つまり海上猟獲がいいとか悪いとかいうことは、現段階においては、学問的な証明というものは何もないのであるから、とにかく試みにやらしてくれ。しかも、ただいま申し上げましたように、日本国民感情としても、あるいはまたオツトセイの生息する三陸沿岸漁民立場から考えてみても、どうしてもある程度オツトセイをとらないことには、日本としてはおさまらないんだというようなことを盛んに述べたわけであります。特に東北沿岸漁民の零細なこと、またオツトセイの三万頭くらいといわれるもの、その三万頭のオットセイをとるということが、漁民の生活にどのくらいプラスになるかということを、るる述べたわけであります。  この日本の声明に対して、これはもうまつ向から三国とも反対いたしました。今まで割合同情的に日本を見ておりましたカナダも、この三万頭という数にびつくりして、とてもそれはだめだ。カナダあたりが予期しておったところは、大体日本は、日本沖でまあ五千頭くらいは要求するだろう、あとから聞きますと、こう腹で思っておつたそうであります。ところが、三万頭とらしてくれと言つたので、びつくりしまして、一ぺんにソ連カナダアメリカ一緒になりまして、盛んに日本を攻撃したわけであります。つまりソ連は、もう初めから終始一貫して反対しておりますから、ソ連のことは申しませんが、カナダでさえも盛んに反対しております。しかしながら、カナダアメリカも、その反対のうちにも、ある同情は持っております。つまり日本沿岸漁民が非常に苦しいということは割合知っておるわけでありましょう。とにかくそれは、日本沿岸漁民のためにオットセイをとらしてくれという気持はよくわかる。しかしながら、これをやれば必ずもう太平洋オットセイというものはだんだん減つて、もう一ぺん一九一一年のような状態にならないとも限らない。そうすれば、むしろ漁民のためにもならないのではないかということを盛んに言います。ソ連反対には、その沿岸漁民の何といいますか、貧困さというようなことには全然触れませんで、ただまつ向から反対しておるというような状態であります。特にアメリカが、何といいますか、反対のうちにも割合同情的な目を持ちながら、反対をしておりました。  アメリカ反対理由を簡単に申し上げてみますと、つまり海上猟獲というものは、たとえ資源影響を与えないといっても、皮そのもの陸上の場合に比べて三分の一きり価値がない。従って、むしろ分け前だけもらつた方が日本としては得じゃないかということを、盛んに言うわけであります。それからまた、沿岸の漁師というものはとかく目先ばかり考えて、永久なことは考えないのではないか。これは教育とそうして研究によって、長い間かかってなだめられれば承知してくれるというようなことを申しておりました。そうしてもう一つアメリカの発言のうちで注目されるのは、沿岸漁民がそんなに困っておる、その沿岸漁民のために何とかしなければならないということが日本政府の腹であるならば、何もオットセイだけについて、とらせるということだけが唯一の方法ではあるまい。つまりアメリカあるいはソ連から分けてもらう皮の分け前の半分でもいいから、その東北沿岸漁民に還元したらどうだろう。そうすれば沿岸の漁民は、みずから海上でとるよりも、むしろ喜ぶのじゃないだろうか。そうすることによってこのオットセイ資源を守つていこうじゃないかというようなことを申しております。そうしてアメリカが申したことは、つまりアメリカからもらう、あるいはソ連からもらう皮の価格の半分を沿岸漁民の利益になるような何とか方法をとる、そうしてまたあとの半分を別な仕事に使えばいいじゃないか。そうして合衆国の例をあげまして、合衆国では、プリビロフオットセイの皮の総売上高の六〇%は、オットセイ研究費とそれからプリビロフの島のいろいろな諸経費に使つておる。あとの二五%はアラスカの漁業研究に使つておる。日本もそれにならいなさいと言わんばかりに、そういうことを申したわけであります。  それから、これでまっ向から日本反対になりまして、これで会議は決裂した状態になりましたが、結局カナダの首相が、この今度の条約一つ暫定措置として、調査するための条約にしようじゃないか、とにかくオットセイの知識というものが現在は非常に貧弱であるから、約六年間くらいは一つお互いに研究して、六年後にもっと科学的な基礎に基いてはっきりした条約を作ろう。つまり、このたびの会議は、保存条約というよりか、保存条約保存条約でも、むしろ調査研究というものに重きを置く条約にしようじゃないかということを申し出まして、これに日本も賛成し、アメリカも賛成したわけであります。ソ連はずいぶん長い間これには賛成しなかったわけでありますが、結局ソ連もそれに賛成しまして、このたびの条約調査するための六年間の条約ということになって、ようやく幕を閉じたわけであります。  私どもがオットセイ会議で述べましたことは、カナダアメリカ、あるいはソ連の人たちは、ずいぶん無茶を言うと思われたかもしれませんが、私どもが考えてみましても、ある程度のオットセイ海上猟獲というものは、決してオットセイ資源影響を与えるものではあるまい、このように確信しておりましたから、会議でもわれわれの主張を強く言つたわけであります。と申しましても、むやみにとつたら、必ず一九一一年前のような状態になることは明らかでありますが、とにかく統制があり、秩序のあるとり方をすれば、決して資源が枯渇するようなことはないと、今でも思っております。しかしながら、条約ではこの六年間というもの、海上猟獲というものは、調査に使う約四千頭余りのもの以外は、絶対に禁止されましたから、これからは、この禁止の条項というものは厳重に守らなければならないと、かように思っております。と申しますのは、これはソ連が盛んに言つたことでありますが、また前にも申し上げましたように、日本では鉄砲オットセイをとつておりますので、どうしても皮に穴があきます。それからまた逃げるものも出てくるわけであります。そういう手傷を負つたオットセイロベンコマンダーにずいぶん上るそうであります。これも盛んに言っておりました。日本は密猟は絶対にしないのだ、こういうことを主張しましたら、ソ連が言うのに、そんなことはない。日本とはあえて言いませんが、とにかくオットセイが通過する所で、どこかで鉄砲で撃たれた形跡が十分にある。それは、ロベンコマンダーに上ってくるオットセイが、みな手傷を受けている。これが何よりの証拠だ。それで私どもが、それでは一件ロベンコマンダーに上るオットセイの何パーセントくらいがこの手傷を受けているか、数字を見せてくれと言いましたら、数字は今手元にない、しかしとにかく相当な数に上ることは確かだ、こういうことを言っておりました。従って、ことしあたりからはおそらく鉄砲にあたつた数を正確に調べるだろうと思います。そうすると、もしことしあたりでもなおオットセイの密猟があるとすれば、ことしの十一月にまた会議があると思いますが、そのときには、もう顔色ないまでにやられてしまうのじゃないか。日本は相変らず密漁をするじゃないか、この証拠を突ざつけられますと、今度は返事に窮するようになる、かように考えおります。従いまして、ことしからは密猟というものはほんとうに禁止して防いでもらわぬことには、国際的に頭が上らないことになりはしないか、かように考える次第であります。はなはだ簡単でございますが……。
  10. 青山正一

    ○青山正一君 このラッコ、オットセイの問題は、先ほども千田さんがおっしゃったように、第三国会、第四国会に、たしか社会党の丹羽五郎先生というお方が小委員長になりまして、そうしてこの問題をいろいろやつたわけでありますが、その当時、進駐軍ですが、これの命令のままに法制化されたものであつて、たしか私どもも泣きの涙で付帯決議をつけて、反対ではあったのですが、付帯決議をつけてしまつて、そうして承認したのだ、こういうふうないきさつになっていたわけであります。それで、その当時の話によりますと、たしか丹羽さんから、このオットセイ資源量というものは大体百五、六十万頭おる。その百五、六十万頭のオットセイが、つまり一日一頭当り一尾程度のサケ、マスを食つたと計算するならば、サケ、マス漁期を通じての総量は少くとも一億五千万尾になるということを、まあ盛んに言うておつたわけであります。ところが、これを翻つていろいろ考えてみますると、昨年度の日本のこのサケ、マスの総漁獲量が約八千万尾である。オットセイの食うやつが一億五千万尾というようなことになりますというと、日本のサケ、マスを昨年度とつた額が、オットセイの食う額の約半分にすぎない、こういうふうな状態であります。これはどうしてもこの海上捕獲をしなければならぬ、こういう理屈にもなるわけなんですが、そういった点は、交渉の過程において日本側からいろいろ交渉があっただろうと思いますが、そういった意見をいろいろ戦わしてみたかどうか、その点を一つ承わりたいと思います。
  11. 藤永元作

    説明員藤永元作君) その点は、五年ばかり前に日本沖で、これはアメリカがおもにやつたのでございますが、日本水産庁の者とアメリカの漁類及び野生動物局に勤めているオットセイの専門家が、船を三ばい、ときには六ぱいにもなりましたが、日本近海オットセイをとりまして、腹をみんな調べたわけでありますが、残念ながらそのときにも、北海道まで行きましたが、そのときにはサケ、マスがもう通過したあとだったのですが、日本沖とつた腹を見ますとランタン・フイッシユ、これを日本語ではハダカイワシといっておりますが、これは商業的漁獲の対象にならない魚で、これが五〇%以上であったわけであります。それからイカが、今数字はうろ覚えですが、約三〇%くらい、あとはサンマのようなものを食べています。  それからアメリカの方で見ますと、やはりあまり商業的な価値がないような魚の方が多いようです。
  12. 青山正一

    ○青山正一君 日本側で調べた結果、サケ、マスは全然なかったというのですか。
  13. 藤永元作

    説明員藤永元作君) ええ。日本側調査では、サケ、マスが入っていませんでした。もっとも日本側ではサケ、マスが三陸沖にあまりおりませんから、これは当然です。しかし、これが何でしよう、今のアリユーシヤン回りを通過するときには、相当これは食べると思います。
  14. 青山正一

    ○青山正一君 それなら、もう一点お聞きしたいと思いますが、このオットセイ条約批准は、大体日本のそういった、百五十隻ですか、百五十隻に上るこのオットセイ業者という者がおるわけなんですが、そういった業者のこの生活権にまあ相当に関連があろうと思うのですが、先ほど部長さんのおっしゃったようにですね、この条約が実施に移されると、この船のいろいろな、先ほどお話があった鉄砲とかそういった火器を、すべて押収されるようなことになりますが、そうした場合ですね、これに関係したれの業者に対してどういうふうな補償をしようとするのか。何かその見返りの漁業権も必要だと、こううふうに考えておりますが、まあいろいろ聞いたところによりますと、さめなわ、はえなわ漁業に転換させる道を講じておると、こういうふうなうわさもあるわけなんですが、さめなわ、はえなわ業者に転換するにしましても、中型のカツオ、マグロ漁業の許可がからんでこようと思うんですが、その際全部に新規許可を与えるのかどうか、その点をやつぱりお聞きいたしたいと思うんですが、この新規許可とか見返り権利がどうしても認められない場合にはどういう方法を講ずるのか。まあ十三隻は調査船に指定されておるわけなんですが、残りの百三十七隻は、批准後事実上これは操業不能となりますが、そういった点についてどういうふうな補償をやるのか、これは次長一つ承わりたいと思います。
  15. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) オットセイの猟獲に関しましては、ラッコ、オットセイに関する法律に基きまして許可制をしいており、実際は一件も許可いたしておりません。昨年の十二月に、この法律の締結が署名が近いという時点におきまして、これを禁止漁業ということにいたしておりますので、現在はオットセイの漁船は全然存在をいたしておりません。しかしながら、ただいま御質問のありました点は、日本が解禁をいたしておりました当時にオットセイ漁業をやつておりました漁業者が、イルカ漁業に転換をいたしておるのが現在百七十一隻あると、かように承知をいたしております。で、これはオットセイの猟獲をかつてやりましたのと同様に、突棒船をもちまして、海上において鉄砲によってイルカを猟獲をいたすのでございます。その際往々にして、同時にオットセイも、混獲と申しましょうか密猟と申しましょうか、相当数のものがとられておるというのが実情であるように承知をいたしておるのであります。そこで、このイルカ漁業に関しましては、必ずしも採算のよい漁業でもございませんし、またオットセイ条約を誠実に実行していくという観点から見ますれば、これを他の適当な漁業に転換をしていくということが必要になろうかと、かように考えております。幸いにいたしまして、イルカ漁業者の諸君は協同組合に全国的な組織を整備しており、また他の漁業に転換して、自主的に鉄砲管理その他の方法により、イルカの漁獲を取りやめる、こういうふうな意欲をもっていろいろわれわれとも話し合いをいたしておるのでございます。  で、われわれといたしましては、イルカの漁船が転換いたしまする適当な漁種といたしましては、一月から六月のこの期間を通じて漁獲をあげ得る、しかも同じ海域におきまして漁業のできる漁種といたしまして、モウカザメのはえなわの漁業が適当であろうかと、かように考えておるのであります。現在モウカザメのはえなわ漁業は、知事許可の漁業に相なっております。県当局とも、これが許可につきまして、いろいろ打ち合せをいたしておるのであります。またモウカザメのはえなわ漁業をいたしますれば、その間にカツオ、マグロの混獲という問題も起つて参るのでありまして、これに関しましては、現在カツオ、マグロの許可制が二十トン以上、全部農林大臣の許可に相なっておるということを、かねてから再検討して、一定トン数以上に要許可トン数を引き上げるとともに、それよりも下のものにつきましては、これを知事許可に移すというふうなことも必要なのではないかというふうな検討を、実はいたしておるような状況であるのでございます。で、転換いたしまする漁種については、そういう検討をいたしておるのでございますが、この転換に当りましては、やはり国といたしまして、必要なる助成、あるいは融資等の措置を講じていかなければならないと、かように存じておるのでありまして、ちようど条約も明日から衆議院におきまして本格的な審議に入るのでございまして、できる限り取り急ぎまして結論を得たいと、かように存じて、目下大蔵省ともいろいろ打ち合せをいたしておるところでございます。
  16. 清澤俊英

    清澤俊英君 私は、これはこの表は——この資料です、これを見ますと、昭和二十七年かと思いますが、そこで二十七年のうちに、日米加三国の北太平洋オットセイ漁業調査が行われたと。その一部分が今発表せられたと思うんですが、それで今発表せられた場所であれば、部長が言われる通り、これはほとんどサケ、マスのおらぬ場所だと思うのです。従って、もっと広範な組織で合理的にこの調査が行われたと思いますので、地図を付して、そしてどの場所とどの場所とどの場所で、どういう方法でやつた結果、どういうものが出たかというやつを、資料としていただけませんか。
  17. 藤永元作

    説明員藤永元作君) 報告が出ております。かしこまりました。
  18. 清澤俊英

    清澤俊英君 ありますか。
  19. 藤永元作

    説明員藤永元作君) ええ。
  20. 清澤俊英

    清澤俊英君 それを一つ資料としてちようだいしたいと思います。
  21. 千田正

    千田正君 ただいま藤永部長から、この四カ国条約における状況を伺つたのでありますが、そのうちで、私は、やはり当委員会として問題になる問題としましては、アメリカ側の意図するところは、とにかく日本海上猟獲はやめてもらいたいと。やめるためには、漁民が困るというならば、皮の配分のうちからですね、その半分ないし何十%かはその漁民の生業に資するように考えるべきではないかと。そのために皮の配分もわれわれは考慮してやるのだと、こういうように思うのであります。この問題については、昭和二十七年の調査のとき以来、国際会議におきましても一五%という線がなかなか出てこなかった。最後に、今度この条約批准する直前において一五%——カナダと同一のパーセンテージが出てきたということはですね、やはり海上猟獲というものはあくまで禁止して、そのかわり、それに従業しておったところの漁師の生活を、それによって一応解決してやるという一つの考え方であると私は思うのであります。  で、この問題はやはり大蔵省——ちようど大村さんが見えておりますから、この間予算委員会におきまして、並びに当委員会におきまして、大蔵大臣にこの問題の処置をどう考えておるかという私の質問に対しまして、大蔵大臣は、農林当局からの申し入れを十分検討して、そして協力してこの問題を解決したいと、こう言っておりますので、一体どういう方式でこうした漁民の生活を転換さして、再び密猟しないように——この条約を結ばれた以上は、国際信義を守つていかなければならない。この信義を守るためには、万全のいわゆる策を講じなければならないと思うのでありますが、その具体的措置としてはどういうことを農林省は考え、そしてその考えに対して大蔵省はどれほどそれに対して協力しておるか、これがなければおそらく、幾らどんなことがあつても、密猟という問題は決してとどまらないと私は思うのでありまして、この際真剣になってこの問題を考えて国際信義にこたえ、また国内におけるところの漁民の生活の安全を考えてやらなければならないと思いますが、水産当局と大蔵省当局両方から、私のただいまの質問に対してお答えを願いたいと思います。
  22. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) イルカ漁業のモウカザメ漁業に対する転換についての問題につきましては、まず第一は、イルカの突棒漁船というものが非常に小さい漁船である。大体その主力は十トンから二十トン見当の船が圧倒的に高い割合を占めております。モウカザメのはえなわ漁業をやりますには、これはどうしても三十トンの船でなければ沖合いに出ることはできない。それから突棒漁船は、通常の漁業をやりまする漁船といたしましては、操業上都合はよくないのでありまして、従って、むしろこういう小さな突棒漁船は、転換と同時にむしろ沈めた方がいいと、こういうふうに考えられるのでございます。  そこで、われわれといたしましては、一方において、三十トン未満のそのままではモウカザメに転換できない突棒漁船を廃船するということとともに、これらの漁業者がモゥカザメの漁船として必要な規模の漁船を建造するに当りましての建造費でございますとか、あるいはモウカザメのはえなわ漁具でありますとか、そういうふうなものに対して助成をしていくというふうな方角で問題を考えなければならないと、かように考えております。また、何分にも非常に貧困な地方でございまするし、また現在のイルカ漁業者の生活も非常に苦しい状況にありますので、水産庁といたしまして、その地帯の沿岸漁業を振興させるためのいろいろな方策というものを、こういう施策と対応して集中してその地方において考慮しなければならないと、かように考えております。
  23. 千田正

    千田正君 そうしますというと、まあ漁業の転換ということによって、一方においてはこの零細な突棒漁船をある程度これは廃止すると、廃止して新しい漁業転換に必要な、多少大型になりますけれども、その建造資金を何か考えてやる、こういうことでありますね。  で、私は理論的にいって、今まで皆さんが密猟だ密猟だと言うのは、私自身の論理からいえば、本質的においては密猟でない。なぜならば、これは駐留軍によって押しつけられた、いわゆる日本の国に生息しない動物に対してかけられたところの不法な法律であつて、そうしてその間に密猟として取り締まられ、あるいは刑罪に付せられたのは、私は非常に遺憾だと思うのですよ。で、この今度批准になってから、いわゆる国際条約のもとにおいて国内法というものが守られて、初めて、その守る国内法を破つたものに対しては密猟という名前をかすことはできるけれども、今までの場合は、ちようど占領中において占領軍が勝手な法律作つて、戦敗国民に押しつけた強制的な法律である。そのもとに苦しめられたこうした漁民は、密猟という名前はかせられているけれども、これは一つの法的な名前だけであつて、実質的においては密猟でない、私はそういう観点から立っておりますので、過去においてそういう長い間、日本で強制的に押しつけられたこの法律のために相当刑罰を受けたり、あるいは猟ができなかったりして苦しんでおつたのであります。で、こういう人たちが、まあ今度の国際条約に基いてこの法律が厳然として国内法が生きておる、これからがいわゆる密猟である密猟でないかというのが批准後において起る問題であつて、今までの相当損害をこうむつたことに対しては、水産庁は何ら考えないのですか、どうなんです。
  24. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) 私たちは、国の補償という観点から、この問題を検討いたします際には、やはりそこに制度の筋道として、補償をしなければならない因果関係というものが非常にはっきりしておるものでなければ、これは取り上げることは、これは補償という言葉に属する限りにおいては、非常に困難かと、かように考えるのであります。しかしながら、私たちといたしましては、漫然と関係のイルカ漁業者諸君に国の助成金を渡すということよりも、むしろイルカ漁業者の諸君が、漁業者として経営が成り立つような次の建設というものに対して、その施設についての助成をしていくということによって、十分その漁業経営を安定させ、生活の基盤を与えるという方角において、この際善処をいたして参りたいと、かように考えております。
  25. 千田正

    千田正君 そのお考えはけつこうでありますが、さらに翻つて、先ほど青山委員が申しましたが、当参議院の水産委員会が、当時マツカーサー元帥の占領しておった治下において、強制的に日本にその国内法を制定させられたときの付帯条件としては、私の記憶がもし間違いがなかったならば、これは暫定的措置であるが、正式に国際法が、国際条約が結ばれるときにおいては、この法律はいずれ改廃しなければならない、そういうことを要望を付して、残念ながらあのときの強制的な圧力に屈したという国は記憶を持っておりますが、そういうことから考えまして、今後この問題の推移を考えてみたときに、真剣になって国際信義を守るようなやり方をやらなかったら、私は相当将来影響するところが大きいと思うのであります。そこで、ただいまの水産庁の考え方に対して、大蔵省といたしましてはどういう方針で臨んでおられるか、その点は大村さん、どういうふうにお考えになりますか。
  26. 大村筆雄

    説明員大村筆雄君) お答え申し上げます。今回のイルカ業者の転換措置に対する助成措置につきましては、先般来農林省とも交渉いたしておるのでございますが、どの程度までやるかということにつきましては、考え方が非常にむずかしい点があるかと思っております。ただいま水産庁次長から御説明もございましたように、このやり方は補償という観点からやるのじゃないということでございまして、補償という観点からやるといたしましても、その内容をどう考えるかという点につきましては、いろんなむずかしい点がありまして、私どもも実はちょっと弱つておるのでございますが、すなおにながめますと、お気の毒はお気の毒なのでございますから、すみやかにできるだけ筋の通るようなことを考えなければいかぬのじゃないかということを考えまして、従来の前例等も水産庁でお調べ願いまして、また今回の事態に即応するようなやり方というものを考えまして、目下農林省からも資料を出していただいたりいたしまして、検討中でございまして、まだ結論は実は出ていない状況でございます。
  27. 千田正

    千田正君 これは、大村さんによく考えていただきたいのは、これはだれが苦難の道を歩んで、こういう一つの外国から金が入ってくるかといいますというと、日本政府が一生懸命やつたわけでもないので、むろん代表としては藤永さんたちが行きましたけれども、イルカ業者の犠牲のもとに新しく日本に金が入ってくるのでありますから、先ほど藤永さんが言うように、アメリカなりカナダなりが考えておられるように、海上猟獲を禁止することによってその生活が脅かされる漁民に対して十分考えてやつてほしい。そういうことが一〇%から一五%になつた。その経緯がありますから、大蔵省としましては、補償という意味じゃないと言うにしましても、それならばどういう項目のもとに出すか。従来のほかの問題とは全然違うのでありまして、これはいわゆる漁民の犠牲のもとに思わざる金が入ってきたので、その金を、これは大蔵省としては国の収入だから勝手には出せないのだという。そういう建前もわかるけれども、実際は日本政府がそう苦労もしないで入ってきておる。こういう観点に立つというと、この禁止された結果、十分な猟獲もできない、生活も十分じゃないということを考えられて、業種転換、漁業転換に対する、あるいはそれにプラスして、補償ということは表面に出さないとしましても、ある意味においてはそういうものを加味した施策をやらなかったならば、再び、これこそ今度は国際信義のもとに守らなくちやならない国内法を、破るような問題が出てくるというと、まことに遺憾でありますので、大蔵省としましては、十分この点を明察されて善処してほしいと私は思うのであります。
  28. 東隆

    ○東隆君 今、千田さんの言われたことは、これは非常に大切なことなんですが、イルカを漁獲する業者が転換をする場合、転換をしないであくまでイルカをとるのだというその立場を強く主張した場合には、どういうことになるんですか。
  29. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) 現在、先ほども申し上げましたように、イルカ漁業者の諸君が協同組合として全国的な組織を持っており、その組織において個々の業者諸君に相当な指導力を持っておられるように、われわれも理解をいたしておるのであります。従って、国において転換に対する施策を打ち出せば、かつまたそれは転換の助成の程度ということもこれは非常に関係をいたして参ると思いますが、そういう施策を打ち出せば、現在のイルカ漁業者の諸君は、その施策の方に乗つてきてくれると、こういうふうな見通しを十分われわれは立てておるのでございまして、従いまして、あくまでも自分としてはイルカだけをとつていきたいのだというふうなことは、実際は起らないのじゃないかと、かように考えております。
  30. 東隆

    ○東隆君 その場合に、イルカをとることが非常に、今の処理の仕方とかその他の関係からいって、利益にならない、その一点だろうと思うのですが、そういうことなんじゃないですか。
  31. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) イルカだけでございますれば、決して有利な漁業ではございません。実際問題といたしましては、ただいま密猟という言葉は使うべきでないという千田先生のお話がございましたが、オツトセイを混獲することによって採算がどうにか立っていると、こういうふうな状況にあるようでございます。従って、モゥカザメ漁業等に、国からの助成あるいは融資のあつぜん等によって、転換し得る見通しが立てば、漁業者の諸君はそちらの方に進んでいってくれる、かように考えております。
  32. 東隆

    ○東隆君 私は転換をするのに二つ方法があると思います。それは、一つは今のような転換の方法と、それからもう一つは、イルカの漁獲そのものが利益になるような方途を講ずるということも、これはほつちらかしておくとますますイルカがふえてきて、そうして沿岸におけるところの漁獲を少くするということも考えられる、そういうような点を考えてみて、イルカそのものをやはり捕獲をすることを前提において、それの改良をやる。これは私あまりよく知りませんから、当らぬかもしれませんけれども、たとえばイルカの肉とそれからほかの肉とをまぜて、そうしてソーセージを作るとか、そんなようなかりにことを考えてみて——においでもってだめかもしれませんけれども、しかしそういうような改造が、研究がやり進められてしかるべきだと思う。そういうような方面を開拓することによって解決をすることが、これがほんとうの解決の仕方じゃないかと思うのですが、イルカそのものをとらないで、ぶんなげておいていいのですか。
  33. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) イルカに関しましては、オツトセイについてかつてわれわれが国際会議において主張いたしましたような食害の問題については、しかく懸念する問題はないそうでございます。かつまた、イルカの処理、加工につきましては、これはもちろんいろいろ研究をしなければならない、その点はあるのでございますが、まあイルカという魚の肉質その他の観点から、これが今急に採算のとれる漁獲対象になるとはとうてい考えられないのでございまして、またイルカ漁業をやるといたしますれば、これはたとえば静岡の戸田湾あたりでは湾に入り込んでくるものを湾を閉め切つてとるというような漁業をやつておりますけれども、海上でとる以上は、どうしてもこれは鉄砲でとらざるを得ないのでありまして、そういたしますると、先ほどもお話に出ておりましたように、猟師の気持といたしまして、それとまあ並んで泳いでくるオツトセイにやはり手が出るというのが、これは自然な姿だと、かように思いますので、それやこれや考えますれば、イルカの漁業をむしろより有利なものに転換するということの方が適切な対策じゃないか、かように考えます。
  34. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 これは大体ある程度研究してからかからなければ、われわれ全くしろうとだから……。これは陸上では、鉄砲によらずにどういう捕獲をしているかということですね。なお、三陸沖では日本では鉄砲よりほかにとる方法がないというが、それは何かとる方法研究する必要もあるし、この六年間にはそういう考えを持っておらぬかどうかという質問です。
  35. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) 先ほど申し上げました三つの繁殖島におきましては、撲殺をいたしております。なおただいま御指摘がございましたように、この条約期間中に、委員会におきまして、オツトセイ資源事情に関しまするあらゆる科学的な検討をするのでございますが、その検討事項の一つといたしまして、どういう猟獲方法が最も適当であるかということも、きわめて重要なる項目一つと相なっておるのでございます。
  36. 千田正

    千田正君 この間の会議における一貫しておる考え方は、アメリカ側は商業的な皮の価値をあくまで主張しておる。あくまでコンマーシヤル・ヴアリユーというものを主張して、彼らはわれわれに対して海上猟獲を許さない。日本側は、これは生活権の問題である。その違いがあるだけに、真険にこれは考えていただきたい。向う側は商売に皮を保存したい。そのために、日本の猟師に皮が傷つけられてくるのは、商業価値もないのだから、海上猟獲を許さない。種族保護というのは第二義的な問題で、一枚看板に掲げておるけれども、実際にはアメリカあるいはソ連は皮の価値というものを中心に考えているということと、日本側は別個の立場主張しなければならなかった立場でありますので、これは将来とも考えなければならない。私はそう思うのであります。第二点としましては、これは六年間は暫定措置である。六年が過ぎたならば、あるいはまた条約を作るのかあるいはどうなのかわからぬが、その六年間といえども、日本側はやはり研究を持続していかなければならないと思いますが、その点はどうなんですか。調査研究は、六年間といえどもわれわれはこれを続けていって、六年後においてはやはり日本に有利な立場において、彼らとある程度の議論を戦わさなくちやならないと思うのですが、その点はどうなんです。
  37. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) ただいま第一の問題といたしまして、日本側主張沿岸漁民の生活権というものに根ざした主張である、こういう御議論があったのでございますが、先ほど来補償というふうな言葉が諸先生から出ました。その実態につきましては、私は、生活権の問題とともに、東北地方の漁民感情として非常にわかる気がするのであります。従って、この問題の転換につきましての措置につきましては、そういうことを十分心組んで善処をいたして参りたいと、かように考えるのでございます。  それからまた、この条約は暫定措置であり、その間において適正な猟獲方法についての検討をし、できれば海上猟獲ということができるような検討を進めるべきじゃないか、こういう点につきましても、条約の審議の過程におきましてとりました日本立場は、先ほど藤永部長も申し上げました通りでございまして、この条約によりましても、六カ年目の早々に、この間におきまする検討の結果を持ち寄つて、適正な漁獲方法をそこで議論するということが条約の上でもはっきりととりきめられておるのでございまして、われわれもそういう観点から、ただいま御指摘になりましたようないろいろな点にわたりまして、研究を継続するつもりでございます。
  38. 千田正

    千田正君 最後に、さっき重政委員から御質問があったのでありますが、まあそういう点の研究も必要なんですが、この条約のうちの第七条には、インデイアンとかエスキモーとか、あるいはその他は、火器を用いないでカヌーをあやつつてとる場合には、この条約には抵触しないように書かれておる。それだったら、日本漁民にも火器を使わずに、小さい船であやつつて猟獲する分においては、あえて差しつかえないのか。それとも、日本側はエスキモーやインデイアンと同種類に見られるのがまずい、おもしろくないから、これにはあえて触れなかったと、こういうのですか、どつちですか。
  39. 藤永元作

    説明員藤永元作君) これは仰せの通りでありまして、まさか日本漁民をエスキモーやインデイアンと一緒にするわけには参らないので、その点には触れなかったのでございます。
  40. 千田正

    千田正君 じや、大体われわれもよく研究はしてみますが、ただいまの水産庁次長がおっしゃっております点ですね、十分に漁民の諸君が納得いくように、そうして国際信義を破らないような、この国内法に抵触しないような方向によっていくという方法を考えていただきたい。大蔵省といたしましては、先ほど私が要請申し上げました通り、この処置が誤まるというと、国際的な問題が再びぶり返してくる。そうして残念ながら、日本人というものは不信行為があるじゃないか、こういうようなレツテルを張られることはわれわれとしても遺憾で、せつかく当委員会としては、約八年にわたってこの問題は研究しておるのでありますから、どうか大蔵省としましてもその点を十分お考えになって、農林省ともども、協力的な立場に立ってこの問題を解決していただきたい。その点を要請しておきます。
  41. 清澤俊英

    清澤俊英君 調査方法というものは、この条約のうちにきめてあるのですか、調査方法をきめる……。
  42. 藤永元作

    説明員藤永元作君) 規模その他は、条約ではきまつておりませんです。日本は独自でやるわけなのです。ただし、どういう調査方法をやるかということは、各国に通告することになっております。
  43. 清澤俊英

    清澤俊英君 それは、向うで禁止区域といわれるような区域に入って行っても、通告すればできるのですか。
  44. 藤永元作

    説明員藤永元作君) それは、やはりたとえば領海内に入るというような場合には、たとえば日本コマンダーの領海内に入るとか、あるいはロベンの領海内に入るというときには、あらかじめソ連の了解を得なければならぬのであります。
  45. 清澤俊英

    清澤俊英君 その際に、了解は与える原則ですね。
  46. 藤永元作

    説明員藤永元作君) これは、日本調査員が向うの島に行くこともできるわけであります。ですから、調査をやる場合には、領海とか、そういうことにはあまりこだわらないでやることになると思いますが、しかしながら、あらかじめやはり当事国で相談しなければならぬということにはなっております。
  47. 堀末治

    委員長堀末治君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  48. 堀末治

    委員長堀末治君) 速記を起して。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時二十七分散会