運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1957-02-19 第26回国会 参議院 農林水産委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月十九日(火曜日)    午前十時五十九分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     堀  末治君    理事            藤野 繁雄君            東   隆君            清澤 俊英君            島村 軍次君    委員            青山 正一君            秋山俊一郎君            雨森 常夫君            佐藤清一郎君            柴田  栄君            仲原 善一君            堀本 宜実君            安部キミ子君            北村  暢君            小林 孝平君            羽生 三七君            上林 忠次君            千田  正君            北條 雋八君   政府委員    外務省アジア局    長       中川  融君    農林政務次官  八木 一郎君    農林大臣官房長 永野 正二君    農林大臣官房予    算課長     昌谷  孝君    農林省農林経済    局長      渡部 伍良君    水産庁次長   奧原日出男君    農林水産技術会    議事務局長   塩見友之助君   事務局側    常任委員会専門    員       安樂城敏男君   説明員    外務省アジア局    第三課長    白幡 友敬君    林野庁林政部長 明石 長助君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○天災による被害農林漁業者等に対す  る資金融通に関する暫定措置法の  一部を改正する法律案内閣送付、  予備審査) ○農林水産政策に関する調査の件  (第三繁栄丸不法抑留事件に関する  件)  (北太平洋のオットセイの保存に関  する暫定条約に関する件)  (農林水産基本政策に関する件)   —————————————
  2. 堀末治

    委員長堀末治君) これより委員会を開会いたします。  まず、天災による被害農林漁業者等に対する資金融通に関する暫定措置法の一部を改正する法律案(閣法第十八号、内閣送付予備審査)を議題にいたします。  本法案は、去る十二日当委員会予備審査のため付託ざれたものであります。  まず、政府より提案理由説明を求めます。
  3. 八木一郎

    政府委員八木一郎君) ただいま提案になりました天災による被害農林漁業者等に対する資金融通に関する暫定措置法の一部を改正する法律案提案理由を御説明いたします。  この改正法律案内容のおもなる点を要約いたしますと、おおむね次の五点の通りであります。  その第一点は、第二条第三項第三号の規定に関するものでありまして、年三分五厘以内の利率の適用の基準が、現行規定では単に、政令で指定する地域における被害農林漁業者に適用するというにとどまるのでありますが、これによっては、指定の基準が不明確でありますのと、指定された地域内の被害農林漁業者被害の程度のいかんにかかわらず年三分五厘以内の資金融通を受け得ることとなり、不均衡を生ずる場合もありますので、この点を是正するため、年三分五厘以内の利率を適用するための地域を指定する基準を明確にするとともに、その地域(「特別被害地域」と称しております。)内の被害が著しい者(「特別被害農、林、漁業者」と称しております。)のみに年三分五厘の利率が適用されるようにいたしたいのであります。ここで「特別被害農、林、漁業者」とは、生産物収入減五割以上ないし所有施設損失額七割以上の者で市町村長の認定を受けたものをいうのであります。また、「特別被害地域」とは特別被害農、林、漁業者被害農、林、漁業者のそれぞれにつき一割以上に達する地区で都道府県知事農林大臣の承認を受けたものを申します。  次に第二点は、第三条第一項の規定に関するものでありまして、現行規定では国が補助いたします利子補給及び損失補償契約方式が複雑に過ぎ、末端被害農林漁業者への資金融通が確実に行われないおそれもあり、また債権管理の面からも不十分でありますので、この契約方式を整備単純化いたしまして、利子補給につきましては末端単協に対してこれを行うこととし、損失補償につきましても原則として単協に対して行うこととし、ただ自己資金を欠くかまたは著しく乏しい特定の組合のみについては、連合会単協に対する転貸資金貸付についても損失補償を認め、資金融通に万遺憾ないよういたしたいと存ずるのであります。  第三点は、第二条第三項第一号の規定に関するものでありまして、現在牛の所有農家に対しましてその経営資金借入限度を三万円上増ししておるのでありますが、乳牛の所有農家には、その経営実情にかんがみ、その借入限度上増しの特例を現行の三万円から五万円に引き上げようとするものであります。第四点は、第四条第二項の規定に関するものでありまして、三分五厘資金利子補給についての国の補助率が、現行規定によりますれば、利子補給額から年二分五厘の額を控除した額となっておりますのを、利子補給額の百分の六十五に相当する額に改めようとするものであります。すなわち、現行規定では、金利動きいかんにかかわらず、地方公共団体は常に二分五厘を負担しなければならないのでありますが、これを、国の補助率を定率に改めることにより、金利動きに応じて地方公共団体の負担が軽減されるようにしようとするものであります。  第五点は、この法律の運用の適正をはかるため、農林大臣の権限の一部を都道府県知事に委任できる規定を新たに設けて、単協貸付事務指導監督都道府県知事をして行わしめようとするものであります。  また、以上のほか、これらの改正に伴う字句の修正等法文上必要な整理を加えることといたしております。  以上簡単にこの法案内容改正の趣旨を御説明いたしましたが、どうぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  4. 堀末治

    委員長堀末治君) 本法律案審査は、後日に譲ることといたします。  ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  5. 堀末治

    委員長堀末治君) 速記を起して。  議題に追加いたしまして、第三繁栄丸不当抑留の件を問題にいたします。  この件については、先刻陳情をお聞きとりになったのでありますが、この問題に関して秋山委員から発言を求められておりますので、この際御発言をお願いすることにいたします。
  6. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 外務当局にお尋ねいたしますが、ただいま陳情のございました、インドネシア政府において去る三十年七月二十二日から三十日間もわが国の漁船不法に拿捕した事件についてでございますが、高知県のマグロ漁船の第三繁栄丸が、マグロ漁業をやるためにセレベス島の東北方を航行しておりましたときに、ただいま申しました一昨年の七月二十二日に、その付近で漂流しておる小型の漁船を発見いたしまして、調べてみましたところが、インドネシア人であって、その人員は七名であったようであります。これが、先ほど陳情にございましたように、長い間漂流しておって、一週間も食糧が絶えておったというような疲弊困憊しておった人たちを救い上げた。ところで、外国でありますので、直ちに繁栄丸船長は、所属の高知県室戸町の無線局を通じまして、外務省人命救助をしたから、インドネシアシャウ島に緊急入域の手続をとってもらいたいという電報を打ったはずでありますが、外務省はその電報を受け取っておられますか。この点をまずお聞きいたします。
  7. 白幡友敬

    説明員白幡友敬君) お答え申し上げます。確かにその連絡は、水産庁を通じて、外務省の方で受け取っております。
  8. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 そうしますと、それに対して、翌日電報を打ったということになりますが、入域差しつかえないという電報を打ったことも事実でありますか。
  9. 白幡友敬

    説明員白幡友敬君) 事実であります。
  10. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 そういたしますと、その電報を打つについては、インドネシア政府交渉して、了解の上で電報を打ったものであるかどうか、その点を伺いたい。
  11. 白幡友敬

    説明員白幡友敬君) お答え申し上げます。通常、かようなある種の海難関係の事故の場合には、非常に緊急な事項でございますので、時間的に非常に緊急な措置をとらなければなりませんし、また一般国際法の慣行上、特に相手方交渉いたしませんでも、法的に通知をいたしただけで十分足りるのであります。従って、われわれは一方的に、こちらからジャカルタ総領事館を通じまして、インドネシア政府に通告いたしましたので、それで大丈夫であるということをお知らせしたわけであります。
  12. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 そうしますと、ただいまの外務省のとりました措置は、国際法の何らかの根拠によっておるのであるか、慣習であるか、その点はどうでございますか。
  13. 白幡友敬

    説明員白幡友敬君) 大体、普通の慣習でございます。国際法上の慣習でございます。
  14. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 第三繁栄丸が貴重な人命救助いたしまして、しかもその所属しているシャウ島の港に、日本政府了解のもとに、これは当の船長その他といたしましては、インドネシアとの交渉があったかどうかは、もちろんその場合に知るよしもないのでありますが、ともかくも漁船としては正当なる、正しい手続をとって入港したに間違いはないわけであります。そうしたところが、それが、先ほど陳情にございましたように、シャウ島において一週間の抑留をされ、しかもそれがほとんど理由がわからない。漁船といたしましては、その土地の人七人をも救助したのであるから、非常な喜びをもって迎えられるはずのものであるのに、これがわけもわからず抑留され、しかもさらにまたメナド港に回航されて、軍隊が監視した上で、そして不法抑留を受けた。満足な取調べもなしに、便々と三十日間も抑留されておって、その間に精神的に受けた漁船船員の苦痛は非常なものであったろうと想像するのであります。  当時この陳情がございまして、わが外務省当局に対して、この点を、すみやかに漁船を返すようにという交渉をやり、そうして外務省努力をされたのであります。ついに三十日間の抑留の後、何が何だかわからずに、とにかく船としては帰ってきたのでありますが、その後すでに一年半を経過いたしましても、このこうむったところの莫大な損害に対して——これは一般的にいうと莫大でないかもしれませんけれども、小規模な漁業経営者としては大きな損害であります。すなわち、漁業に出かけてえさを積み、あるいは氷を積んで何かする途中において、人命救助し、そうして二十日間も抑留されれば、氷は大てい解けてしまいます。えさも使用にたえなくなるのは、これは当然であります。やむを得ず帰国してきた。船員もからだをそこねておりましたでしょう。そうして、その後これに対する補償の道を交渉いたしましても、一年半を経過した今日、何らの措置がついておらぬ。私は昨日この話を聞きまして、驚いたのであります。外務省は一体何をしておったのか。一昨年の夏でありますので、私も実は忘れておったくらいでありますが、今日なおこのままに置かれているということは、実に驚き入った話でありますが、この処置に対して、外務省は一体どういう処置をこれまでとってこられたか、その経過一つお聞きしたい。
  15. 白幡友敬

    説明員白幡友敬君) お答え申し上げます。御承知のように、この事件は一昨年の七月に起りまして、八月の中旬ぐらいまで約一カ月間不当に拿捕されておりました。その後帰って来たわけでありますが、船主側損害賠償要求が出ましたのが、十二月でございます。その後、先方ジャカルタ総領事館を通じまして、インドネシア政府交渉をいたしておったのでありますが、とかくはっきりした返事が来なかったわけであります。  ところが、その後、昨年の二月ごろになりまして、先方の、これは口頭でございますが、外務省の方で、この問題についてはインドネシア側責任があるというような口吻を漏らしまして、同時に、損害賠償の額を、自分たちはどういうふうに算定すべきであるか、その経験もないので、算定の基礎を一つ示してもらいたいという希望がございました。これを水産庁を通じまして、船主の方に明細書を、大へん迷惑な仕事であったのでありますが、お願いいたしまして、これを英文にいたしまして、さらに先方に五月に送っております。  その後、一向にらちがあく様子もございませんので、昨年の十月ごろ、さらに強硬に向うに、ジャカルタの総領事から申し入れさせましたところが、たまたま当時インドネシア外務省領事部長が交代をした。従って、前任者からよくこの問題についての引き継ぎを受けていないものだから、詳しいことを自分がまだ勉強していない、少し時間をかけて勉強さしてくれという話でございます。それで一応待っておったわけでありますが、依然として先方から返事もございませんので、十一月になりまして、さらに在京のインドネシア総領事館を通じますのと同時に、ジャカルタのわが方の総領事館を通じまして、公文書でもって強く督促をいたしました。この場合には、どうもこの問題の解決が長引くようであるから、船主側犠牲補償する意味において、損害額に対する金利をも計算に入れるということの要求を出したわけであります。ところが、その後も依然として返事が参りませんので、ごく最近に至りまして、再び向う督促をいたしまして、とにかく向うから返事をとれということを言ってやっている状況でございます。
  16. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 先ほど陳情者の言葉のうちにもございましたが、これはまあ、正式なものでないかもしれませんけれども日本賠償問題とからめて、この問題に因縁をつけているがごとき感じをわれわれは受け取ったのでありますが、外務省はその点についてはどういうふうに聞いておりますか。
  17. 白幡友敬

    説明員白幡友敬君) 特に先方では、今日までの話し合いの中では、賠償にからませて云々というようなことは、申しておりません。しかしながら、残念ながら、今までインドネシア日本との関係におきまして、いろいろな問題がございますが、とかくその解決が遷延しがちでございます。そうして結局、もちろんわれわれ正式の交渉者に向いましてというわけではございませんが、まあ間接的に、すべてかような日本との間の問題は、賠償問題が解決したときには全部解決するのだ、というようなことを言っていることは聞いております。しかし直接にこの問題自体賠償問題にからませてやるのだというようなことを、向うから正式に申し出たわけではございません。
  18. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 もし、そういうふうな感じ相手方にあるといたしますれば、これはまことにわれわれとしては納得のいかない問題でありまして、賠償問題は国と国との問題でなければならぬ。しかも、この第三繁栄丸の問題は、向うの人のいわゆる人命救助をした尊い行為なんであります。その行為のために不法抑留するということ自体が、もうけしからぬ話である。しかも、それが大きな損害を与えたということになれば、これは賠償などという問題とは全然切り離して考えなければならぬ別個の問題であります。しかも、そういうものであるにもかかわらず、そういうふうな賠償問題とからんだような気持でもってこれを遷延させているということであり、外務省が今もってこの解決にめどをつけないとするならば、これは日本政府がその責任をある程度背負わなければならないのではないかと考えるのであります。すなわち、賠償問題が解決した後にこれを解決するといたしまして、日本政府はその間において、との尊い行為のしかも犠牲者に対しまして、何らかの補償制度、あるいは代払い制度方法をとるというようなことが適当ではないかと思うのですが、外務当局はその点をどうお考えになりますか。  なお、私はこの際につけ加えて申し上げたいのは、一昨々年でありましたか、その前の年でありましたか、台湾のいわゆる蒋介石政権下におきまして、長崎の山田漁業部漁船が二隻台湾海峡において撃沈されております。人命を失っております。しかも、その交渉は一応、蒋介石政府との交渉の結果、ある程度非を認めたかになっておりましたところが、後にはうやむやになって、今日何らの解決を見ておりません。これは外務省のやり方に私は何らか手ぬるいところがある、あるいはどうも誠意がないのではないかという疑いを抱くのであります。  このはっきりした人命救助によって受けた損害を、自後なお一年半もほったらかしておかなければならないということは、私は外務省の大きな責任ではないかと思いますが、その点どう感じられますか。
  19. 白幡友敬

    説明員白幡友敬君) 私どもといたしましては、もちろん今までたびたび船主の方々からお話を伺っておりまして、経済的にも非常にお困りになっていらっしゃる状況もよく伺っておりますので、極力一日も早くこの問題を解決いたしたいと思って、数回にわたりまして、先ほど申し上げましたように、強硬な公文書を送りまして抗議をいたしておるわけであります。しかしながら、まことに残念なことでございますが、この問題の起きましたインドネシア国内では、非常に政府部内の連絡というものが円滑に行っておりませんために、あらゆる問題につきましてその問題の解決が時間的に非常におくれるという実情にございます。私どもも、そういう事情にもかかわりませず、何とかして早く解決したいと思いまして、とにかく向うに強硬にくらいついて、そうして早く損害賠償金額向うから受け取るという方法をとりたいと思って、努力いたしております。
  20. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 責任問題はどうなんですか。その国内的補償の問題は、どう考えておりますか。
  21. 白幡友敬

    説明員白幡友敬君) これはまだ、私どものところでは、ただいまのところでは、もっぱら先方から損害補償させるということだけに専念いたしておりまして、国内補償処置をとるということにつきましては、農林省の方ともよく考えを伺ってからのことでなければ、ただいまはっきりしたことは申し上げられないわけでございます。
  22. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 この事態はもう、論議の余地はない。こちらには何らの非がないどころではない、非常な尊い行為をなしておるということは、これははっきりしておるのです。しかも一年半にわたっても何らの解決を見ず、この後いつになったら解決するかわからぬということになりますと、先ほど陳情者も申されました通り、小規模な企業者としては、これは大へんな経営難であります。ようやくにして、まあ賠償が取れるであろうという見込みのもとに、金融等をやって、どうにか食いつないできておりますが、これがいつまでたっても解決しないということになると、この企業体はこわれてしまうのではないかと思う。  そこで、私は先ほど申しましたように、当然これは受け取るべきものであり、また向うは支払うべきものであるということは、だれが考えてみても間違いないのでありますから、いずれはそういう処置はとられるでありましょうが、この緊急な場合に、日本政府といたしまして、かような尊い行為に対しましても、また外務省当局交渉がはかどらないという責任におきましても、何らかの代払い処置をとるといったようなことはできないものか。かつてビキニの原爆の被害のときにも、日本政府はある程度の代払いをした実例もございます。そういう面におきましては、現在の第三課長にこれをお伺いしてもお答えはできないかと思いますが、農林政務次官が幸い政府委員としてお見えになっておりますので、政務次官はこの問題についていかようにお考えになられますか。
  23. 八木一郎

    政府委員八木一郎君) 問題が農林水産政策とかいうのでなく、全く、お話通り人道上の問題であり、われわれの国民感情からすれば、表彰してもいいほどのりっぱな行為をなさった罹災者の皆さんに対しては、何とか政府としても尽すべきは当然だと考えます。しかし、外交の手に移りましてせっかく努力中でございますこの問題を、御指摘のように、代払いその他政府が肩がわりしていくということは、他の例にもなり、あるいはここまで進みつつあります外交交渉を頓挫させるようなことも退いて考えなければならぬ。従って、ほかの方法融資の便宜を与えるとか、あるいはつなぎ融資面における適切な措置考えるとかいうようなことは、農林当局も積極的に進んで外務当局と話をつけたいと思います。御了承いただきたいと思います。
  24. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 たしかビキニのときには、政府ビキニ補償がとれる前にある程度の手を打ったと思いますが、それは例として見ていいのではないかと思います。従って、まごまごしているうちに企業体が参ってしまったあとでは、いかなる名医が来てもしようがないのであります。重態のときに、病気のときに何とかして救ってやるということが肝心なのであります。この点について特に一つ考えていただきたい。  私は、政府間におきまして、外務省経過は今伺いましたが、アジア局長がお見えになりましたけれどもアジア局長がお見えになりましても、今の御答弁と別に目新らしい御答弁はないだろうと思います。これはアジア局長、前からよく御存じのはずです。ですから、こういうふうに一年半もこのままになっておったということは、私ども実に驚いておる。今お話ししたのですが、台湾の問題だって、うやむやのうちに、わけがわからなくなっている。これもほおっておけば、そうなる。ですから、この際に何とか処置を講じていだたきたい。で、私はくどくどお願いいたしませんが、外務省当局農林当局、その他関係当局におきまして、この問題をよく御研究になりまして、次の委員会に、どうするかということを一つお答えを願いたい。そうすれば、当事者もそのお答えによっては、またとるべき処置もあろうと思いますので、外務省農林当局がよくお話し願って、どういう処置をして一応おさめるか、この点を一つ相談の上で、次の委員会一つ御報告をいただきたい。よろしゅうございましょうか。
  25. 八木一郎

    政府委員八木一郎君) ただいま御指摘ビキニの場合の例を、私は着任早々でございますので、今説明させますから、お聞きとりをいただきたいと思います。
  26. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) ビキニの場合におきましては、アメリカ合衆国との間に補償する額についての話し合いができまして、手続がおくれておりまする間において、予備費措置をいたしまして内払いをいたしたことはございます。ただ、本件の場合におきましては、なお目下外務省でせっかく交渉中の状況にあるのでございまして、従って、われわれといたしましては、経営に必要な資金融資をどうするか、こういう面においてできる限り御相談にもあずかり、解決をはかって参りたいと、かように考えております。
  27. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 そうなりますと、私一言また申さなければなりませんが、そうすると、この問題は向うが、インドネシアが払わなければほったらかすつもりでありますか、外務省なり農林省なりは。どうしてもとらなければならぬ私は問題だと思うのですが、とるのだということであるならば、前もってそれをある程度出しておいても、政府が出しておいても不都合はないと私は思います。とにかくそういった尊い行為をなした者が非常に苦しんでおるということは、実に不思議な話なのであります。そういう意味におきまして、ビキニの問題と——額がきまらないといいますが、インドネシアの方も非をある程度認めておるということであれば、支払いの意思はあると思うのです。またこの金額の適、不適につきましては、私はよくわかりませんけれども農林当局との非常な正しい計算によってこれが積算されておるものとすれば、ここに何らの水増しもなければ不都合もないと私は考えますが、そういう意味において、今日何らかの政府措置をとってやらなければ、人道上の問題としても、また尊い行為に対しましても、私は国民が承知しないだろうと思います。従って、今申しましたように、一つ農林当局外務当局とがよくお話し合いの上で、どうするか。金額にして大したものじゃありません。だけれども当事者にとってみれば大きな問題でありますから、この点を一つお願いしたいのであります。その点を一つ、次の委員会に何らかの処置の御報告をいただけるかどうか。
  28. 八木一郎

    政府委員八木一郎君) 着任早々で、こんなに手間どった問題がけしからぬという気持は、実はよくわかるのでございます。次の機会までに至急善処の道を立てて、お答えいたしたいと思います。
  29. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 どうぞお願いいたします。
  30. 清澤俊英

    清澤俊英君 今、第三課長から交渉経過を聞いておりますと、はっきりしないところが非常に多いのです、ぼうっとしておって。まず第一にお伺いしたいことは、この事態をインドネシア賠償責任あるものと確認しておるかどうか、現在。
  31. 中川融

    政府委員(中川融君) 第三課長から御報告申しました通りの経緯でございますが、インドネシア政府の当局者は、口頭で話します際には、なるほどそれは申しわけないことであったということを言っておるわけであります。その意味から申せば、これはインドネシア側の方に間違いがあった、非があったということは認めておると思われるのでありますが、しかしこれを、それでは暫定的なものでもいいから何か書いたもので、向うに非があったということを認めさせようとしたのでありますが、それについては、なかなか言を左右にして、書いたもので認めるところまでは行かないのであります。われわれとしては、向う金額的に幾らを払うかということまで、はっきり話をつけたいということで、当初から交渉しておるのでありますが、なかなか先方金額についての話をまとめようとし、ない段階におきましても、原則的に向うに非がある、つまり賠償責任があるということを認めさせて、まず第一段階として認めさせたいと思って、それに努力したのでありますが、書いたものでのそういうことでは、向うは言を左右にしてなかなか応じないというのが、現在の折衝状況であります。しかし根本的に向う側に非があったということについては、向うも反駁のしようがないのでありますから、その気持でおることは十分察せられるのでありますが、遺憾ながら、はっきりした言質を向うが与えるに至っていないというのが、実情でございます。
  32. 清澤俊英

    清澤俊英君 そうしますと、それをやる手段として、何かただ同じことを一年半も繰り返しているだけでは、いつまでたっても同じことだと思うのですが、何か別の手を打つお考えはないのですか。
  33. 中川融

    政府委員(中川融君) これは、相手がインドネシアという、いわば新興国でございまして、国際の慣例その他のことに十分精通していない、経験もないというようなことから、また向うの行政組織、行政体制というものが、これは事件の起ったときからすでにいやなほど体験したのでございますが、一つの問題を片づけるのに、普通の国であればたとえば二日か三日で片づくものが、一カ月も一カ月半もかかる、こういう実情でございまして、つぶさにその苦い経験をなめておるのでありますが、そういう実情でございますので、なかなか適確に事が運ばないというのがはなはだ遺憾な点でございます。  しかし、方法といたしましては結局、この今のような外交交渉でやるということ以外には、やはりないのではないかと考えております。一つ考えとしては、たとえば国際司法裁判所というようなところに出すという問題がございましょうが、これとても先方、それからわが方と、双方が合意しなければ、これも裁判所に出せないのでありまして、従って、この方法で行くことと同時に、いわゆる賠償問題というものが片一方に起ってきておりますので、この賠償問題が片づけば、こちらからたくさんの金を向うに渡すわけでありますから、その際には必ずこの問題も、向うとしても解決するのに比較的楽になるのではないかということも考えられます。従って、そういうことも考えつつ、やはり外交交渉で進めていきたいと考えておる次第でございます。
  34. 清澤俊英

    清澤俊英君 私は、問題点がそこにあるのじゃないかと思う。外務省としては、今言われる通り、国際裁判が、云々とかいうようなことを言われるが、幸い国連にも入りましたし、あるいは国連の議題等にかけて、一つ人道問題ですから、そういうところで、こういうことを放置することはどうも国際上おかしいというような話で、私は議題になるのじゃないかと思う。そのことは、外務上のことは知りませんから、お伺いしますが、何らかの手段でこれは、世界全体の世論に訴えても、不法不法として取り上げる処置は私はあると思う。そういうことを遠慮しておいでになることは、何か賠償をスムーズにいかせるために、ここで一つの紛争を、小さなものを犠牲にして大きな虫を解決する上に障害になってはいかぬというような御考慮が、結局二の足踏んで、そして解決がおくれているのじゃないか。こういう感じが、さっきからのいろいろお話の中に、どうも私は感じとられるのです。そういうことが感じとられているんです。これは全く秋山さんが言われる通り日本賠償と個人の損害というものは、絶対に私は別なものだと思う。そういうことに遠慮することは要らないと思うが、もしあるとすれば、これは今秋山さんが言われる通り、その間の何らかの処置は、見通しによって、国が何らか考えてやることは、私は当然の帰結であろうと思う。そういうことは議論的に出てくると思う。  そこで、そういう外部に現わせられない非常にデリケートな外交上の問題があるとすれば、これはここで率直に一つお話ししていただいて、場合によりましたら、外務大臣兼総理大臣代理がおるのですから、これと一騎打ちの談判もしてみたいと思うのですから、遠慮なしに一つ御心境をお伺いしたいと思う。
  35. 中川融

    政府委員(中川融君) 外部に出し得ないようなデリケートな事情、たとえば賠償問題との関連においてこれの交渉を若干遠慮するとか、そういうような事情は一切ございません。これは御指摘のように、全くこちらに何ら非がないどころか、こちらは人道上のことをやって、その結果として非常な被害をこうむったのでありまして、非は先方に全部あるわけでありまして、これについては賠償問題等を考慮することなく、当然この問題として強く交渉するのが当然であり、そのつもりで交渉しておるのであります。  賠償問題のことをちょっと言及いたしましたのは、先方も国が若いというようなことから、こういう国際上の非行に基きまして補償する、賠償をするということをあらかじめ考えておらず、従って、その意味での金額等も予算に計上してないというようなことも想像されますので、もし、かりにそういうようなことでもあれば、それはいずれ日本との間の賠償の問題で、金銭——金銭といいますか、こういうものの受け渡しがあるわけでありますから、そのときにたとえば片づけるという方法もあろう。しかしながら、原則問題として非が向うにあった、で、その損害が幾らであるということはきめられるわけではないか。きめれば、ただいま御指摘のような、日本国内においてあるいは内払いということもできるでありましょう。そういう実際的なことを考えまして、われわれは原則的にまず向うの非のあること、次いでその補償の義務のあること、さらに金額もきめる、さらに向うからその補償を払わせる。もし払えないような事情があれば、賠償等の問題の際にそれは別途やるとして、その間、内払いをやるというようなことを、一連の考えをずっと計画を立てまして、それに基いて交渉をしておるのであります。その関係賠償ということも言及したのであります。全然賠償のためにこれを遠慮しておるというような事情はございません。
  36. 清澤俊英

    清澤俊英君 わしがそういうことを申し上げますことは、この問題が起きたとき、約二週間くらい見て、ここへ陳情せられたと思う。そこで農林委員会は、秋山さんや青山君その他の人たちが、ずいぶん強く、ここでもうわあわあと言い出し、そこで初めて外務省が本腰になったんじゃないかと思う。そして現地の領事か何か、さっき言われる通り、内政上ほとんどうまく連絡のとれない場所で、政府の命令を聞かぬ地区に入港して来たからとか何とかいうことで問題になっておりますが、ここまで現地の領事か何か行って交渉して、わずかあと一週間くらいで帰すようになったんだと思うが、その間ほとんど外務省として、何かやっていたのかいないのかわからぬというような、わしらあのときに印象を受けたのですがね。  今もそういう話をしていたのですが、こういう事件があったかと言うと、いやその問題の別だ、こういう話があった。相当、それと同じような工合で、何かほかにあって、外務省は本気にやっておらぬのじゃないかという、わしら感じが強いのですがね。あなた方本気にやっているなら、こんな人道問題が、いいとか悪いとか、やらぬとかやるとか、賠償問題が片づけばそのとき一緒に片づくのだとか何とか、おかしなことを言われて、ぐしゃぐしゃになっているところは、一つも私はないと思うのだ。一応は金の額くらいはきめるが、支払いは賠償の際にどうするとかいう話くらいは、もっていかれるものであると思うのです。原則として悪いことは認めている……。認めたならば、額くらいのものはある程度まではきめて、それは今払わぬが賠償のときやるとか何とかいう話くらいには、もっていかれるんだと思う。それがちっともいかないで、また逆戻りして、何が何だかわけのわからぬようになっている。大切のところを、突くところを突かないでやっているんじゃないかという、わしら感じがしますがね。この前だって相当、ここでわあわあ騒ぐまで、外務省は投げておいたんじゃないかと、わしら思う。
  37. 中川融

    政府委員(中川融君) 外務省は一生懸命やっておるのでありますか、普通のやり方ではなかなか片がつかないこと、御承知の通りだと思うのであります。この事件が起りました当時、なかなか片づかず、結局一カ月半ですか、ずいぶんかかりまして、ようよう現地に係官が参りまして、これはしかも係官だけ行ってはだめなので、向うインドネシア政府当局者を連れまして現地に乗り込んで、現地の裁判所なり、あるいは官辺なり、あるいは軍司令官なりというものを歴訪いたしまして、説き回った結果、しかもなかなか現地には認識がなかったのでありますが、国際慣例がこうである、ああであると説き回って歩きました結果、ようよう認識を改めまして、釈放したというのが、そのときの経緯でございます。これはここで、農林水産委員会で問題になりましてから一、二週間のうちに片づいたということをただいま御指摘になりましたが、要するに、それまでの間に一生懸命交渉しましたが、普通の方法ではどうしてもらちがあかないので、また現地に行って向う政府当局者を連れて乗り込むというような手段をとって、まあようよう目的を達したわけなのであります。  この補償問題につきましても、償問題につきましても、やはりそういう考えで行かなければならないと思いまして、これはただいまの白幡第三課長を先般インドネシアヘわざわざ派遣いたしまして、現地当局者とも詳細にこれについて折衝させたのでありますが、しかしながら、この補償の問題になりますと、なかなか船を釈放するというだけの問題でなくて、先方が非を認め、さらに金を払うという問題でありますので、なかなかそういう方法をとりましても、いまだに片づかないというのが現状でございます。通常の外交方法をもっていたしましては、なかなからちがあかないと思いますので、やはり船を釈放した際と同じような、いわば非常的な方法を講じまして、何とかこの補償問題の解決を促進したいと考えております。
  38. 清澤俊英

    清澤俊英君 この非常方法というのは、どんなことになるのです。
  39. 中川融

    政府委員(中川融君) 結局、やはり今向う日本総領事館が折衝しておりますが、さらに東京からでも人をまた派しまして、それで向うの、単に外務省のみならず、これを扱っております各関係官庁に直接話し合いをさせて、そうしてこの問題の向う措置を促進せしめるというようなことしかないだろうと思っております。
  40. 清澤俊英

    清澤俊英君 そういうことで、この前の例もありますので、一つ片づくという目安がつきましたら、いわゆる非常手段でも何でも至急おとりになるように、一つ要望しておきます。
  41. 千田正

    ○千田正君 中川局長に伺いたいのですが、申すまでもなく、今までのお話はわかるのですけれどもインドネシア国内が十分正常な状況にないということと、そうして国際法その他について専門にするような人たちもいないというような意味で、お話があっておりますけれども、しかし根本的にいいますると、日本向うの大使館なりあるいは公使なりを認めて、こちらからも向うに派遣しておる。国と国との間においては、すでにそうした外交官を取りかわして、在外公館を置いてある。そうしたのに、さらにまた、外務省としましてはこの事件の発生した当時において、シャウ島に入港差しつかえなしというような答えを出しておいて、そして今もって解決ができないということが、われわれは何か世にも不思議な物語を聞いておるようにしか感じない。この点は、外務省はあくまで責任をもって早く解決しなければならないし、国内的には外務省責任としまして、農林省話し合いをつけまして、こうした被害を受けた漁業経営者につきましては、速急に手を打っていただかなければ、いつまでたってもこれは解決ができないのじゃないかと思う。今の御答弁だと、見通しがありますか。全然ないようにわれわれは考える。この賠償問題解決と同時でなければ見込みはないのじゃないかというように、今のお言葉によって察するよりほかないと思うのです。その前に解決がつくという見通しがつきますかどうか。それができなかったとするならば、農林省でこの問題を中心として方針をよく外務相と打ち合わして、一日も早く善処してもらわなければいかぬと思うのです。どうなんです、一体。
  42. 中川融

    政府委員(中川融君) 賠償問題と歩調を一にするという趣旨ではないのでありまして、ぜひこの問題は、賠償問題と切り離して、それよりも先に片づけたいと思っておるのでありますが、見通しがそれじゃはっきりとあるかということになりますと、これはやはり相手国との話し合いになりますので、その点についてはっきり見通しがあると申し上げるわけにいかないのであります。従って、国内的に何らか便法を講ずるということにつきましては、われわれ全く同感でございまして、この点につきましては、御指摘のような趣旨で、農林当局と十分お打ち合せしたい、そういうふうな方向に向ってわれわれとしても進んでいきたいと考えております。
  43. 千田正

    ○千田正君 それでは、先ほど秋山君から質問がありましたが、それに関連して申し上げますけれども台湾の問題、漁船撃沈に関して台湾政府に対するところの損害賠償その他に対して、その処置も全然できておらないのですが、これはどういうふうな進行をしておるのですか。
  44. 中川融

    政府委員(中川融君) 第三十一及び第三十二山田丸の撃沈事件でございますが、これもその後機会あるごとに国民政府と折衝しておりまするが、遺憾ながらこれまた向うが従来の態度を変えていないのでありまして、これにつきましても、はっきりといつ解決するという見通しはつきかねる実情でございます。この件も、ただいまの第三繁栄丸と同じく、われわれとしては何らか被害者に対して国内的に便宜措置を講ずべきではないか、かように考えております。この点につきましても、農林当局と十分お打ち合せしたいと思っております。
  45. 千田正

    ○千田正君 今のような問題は、被害にしては非常に大きなものではないけれども、現実にとっては、日本政府外交そのものが非常に弱腰じゃないか、何もやっていないじゃないかという結論にしか到達しない。たとえば李承晩ラインの問題にしても、今もって解決しておらない。韓国の抑留者の問題もその通り。さらにラッコ、オットセイの国内処置という問題にしても十分でない。ことごとくが外交と相待ってやらなくちゃならないところの水産行政という点においても、非常にわれわれは不満足であります。責任を一体だれがもってやるんだ。少くとも二年たってもまだ解決できない、三年たってもまだ解決できない。一体これで日本が独立国といえるか。私は、大臣がいたら、それに対して追撃をしなければならぬと思っていたが、きょうは来ておらぬから、局長に申し上げますけれども、これは早急に解決していただきたい。そうして農林当局も熱意をもって外務省と折衝して、この問題が外務省が結論を出すまでどうにもできないとするならば、国内措置をやってもらいたい。一体今の台湾の問題はどういうふうにあなた方考えているか。ちょうど水産庁の次長もおりますし、八木政務次官もおりますからこのお答えをいただきたいと思います。
  46. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) 従来、こういう種類の問題につきましては、水産庁外務省との間におきましての連絡関係というものは、これはきわめて緊密であった、かように考えるのであります。いろいろその問題自体解決が非常に遷延しておりまする関係上、御批判はいただいておりまするが、お互いの連絡あるいは気持において疎隔するところは全然なかった、かように考えております。  ただいまお話のございました台湾沖の撃沈された漁船の問題及び第三繁栄丸措置の問題等につきましては、今お約束いたし得ることは、融資面においてできる限りのわれわれとしてのごあっせん、御協力を申し上げたいということを申し上げ得ると思うのでございますが、なおよく、補償の問題につきましては、これは全然新しい事例でございまするので、よく政府部内におきまして関係方面とも協議しました上で、お答え申し上げたいと思います。
  47. 千田正

    ○千田正君 融資ということであれば金を貸すということでしょう、利息のついた金を貸すということでしょう。
  48. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) その通りであります。
  49. 千田正

    ○千田正君 私は、国の責任で、そういう事態に対していわゆる善良なる国民を保護するという意味からいえば、それは正しいところのいわゆる行政措置でないと考える。だから、やむを得ないから金を貸すのだということでは、今申し上げたような結論にしかならないだろうというのです。一日も早く解決して、そういう金を貸さなくては救えないという状態じゃないやり方を考えてもらいたい。韓国の抑留者にしてもその通りでしょう。わずかなところの処置しかやっておらない。そういう日本の国としてやらなくっちゃならない、いわゆる外に向ってはあまり弱過ぎるという点について、私はまことに痛憤をせざるを得ない。私はきょう大臣が来ていないからやらないが、それだから、政府委員に聞くのです。大臣はどういうふうにして、政府としてやるべき手段を国民に対して公明正大に発表できるかと聞きたい。三年たっても解決できない、それは何を意味するかということを、私は聞きたい。日本政府の弱体じゃないですか。相手がものがわからないとか、そういうことばかりじゃないと私は思う。ですから、よって生じたそうした国民に与えた被害に対しては、国がもう極力そうした人たち被害をカバーするだけの処置を、一日も早く実行していただきたい。特に要望しておきます。この次の委員会に、秋山議員の質問に対して政府がその処置の具体的な御説明があるというから、私はそれまであとの問題はお待ちしておきますが、強く要求しておきますから、どうぞ。
  50. 堀末治

    委員長堀末治君) じゃ、本件は、本日はこの程度にとめて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  51. 堀末治

    委員長堀末治君) 本件は、それじゃこの程度にとめます。   —————————————
  52. 堀末治

    委員長堀末治君) さらに、議題に追加して、北太平洋のオットセイの保存に関する暫定協約の件を議題にいたします。  この件については千田委員から発言を求められておりますので、この際御発言を願うことにいたします。
  53. 千田正

    ○千田正君 ラッコ、オットセイの国際条約が先般調印された。その内容について、重点的な問題でけっこうですから……。日本の国が国内処置をしなくっちゃならない問題が相当起きてくるのでありますから、根本的に日本国内処置をしなくっちゃならない重大な問題に対して、このラッコ、オットセイ条約の調印に基くところの、条約の国内処置に関する問題に対していろいろ質問したいのですが、一体どういう調印をしたのか。どういうことについて納得して調印したのか、その点をはっきりお答えを願いたいと思います。
  54. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) ラッコ、オットセイの保存に関する暫定条約に関しまして、そのごく大筋の内容を申し上げたいと存じます。  この条約は、目的は、オットセイの最大の持続的生産性を達するために、科学的な共同調査を加盟国の間において行なっていくと、こういうことを骨子といたしておるのでございます。これが共同調査計画を作成、調製いたしますために、各国一名ずつの委員を出しまして、北太平洋オットセイ委員会を設けるということに相なっておるのでございます。また条約に基きまする共同調査実施のかたわら、北緯三十度以北の北太平洋におきまするオットセイの商業的海上猟獲というものを、これを禁止するということに相なっておるのでございます。で、そのかわりに、海上猟獲禁止期間中に、米ソ両国は日本及びカナダ両国に対して、毎年、繁殖島、すなわちアメリカにつきましてはプリビロフ、ソ連につきましてはコマンダー、ロベン両島において猟獲いたしまするオットセイ獣皮を、それぞれ一五%づつ引き渡す、こういうことに相なっておるのでございます。第一年及び第二年におきましては、日本は、上限下限がございますが、三千頭見当の海上調査のための猟獲をする、こういうことに相なっておるのでございます。で、条約の規定によりまして、二千頭以上の海上猟獲をいたしまする際には、ソ連は、プリビロフ島に比べてソ連所属の両島の資源が非常に貧弱であります関係と、調査のために比較的多くの負担を負っております関係から、他の国に対して皮の配分は行わない、そのかわり一部アメリカの方で数をふやして日本に皮を供給する、こういうふうな条約に相なっておるのでございます。条約の有効期間は六カ年。これがこの条約の骨子でございます。
  55. 千田正

    ○千田正君 当委員会はしばしば、ラッコ、オットセイ捕獲禁止法なる法律国内において日本国の法律として作られておる、非常にこれはわれわれは、マッカーサー元帥が日本に来ていわゆる占領当時におけるところの強制的な法律として、国辱法として、当委員会としては幾たびとなく政府に向ってこの法律の撤廃を要求してきたのであります。この条約が結ばれた後におけるところのこの法律は、どういうふうに政府としては考えておるわけですか。
  56. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) ただいまこの条約の内容について御説明申し上げましたごとく、この条約は、オットセイの資源の保続的生産を維持していくということのために、資源の状況及びこれが合理的な漁撈の方法等についての研究を継続する、こういうふうなことに相なっておりまして、その間において海上猟獲はこれを禁止するというかわりに、ただいま申し上げたように、皮の配分を受ける、こういうことに相なっておるのでございます。従いまして、ラッコ、オットセイのあの法律に基きまして、オットセイに関しましては海上猟獲を禁止する、こういうことをいたして参りたいと、かように考えておるのでございます。
  57. 千田正

    ○千田正君 あの法律は、日本に生息しないところの動物に対して日本の国がみずからわなをもって作ったような法律でありまして、これからこういう国際条約が結ばれてこそ初めてああいう法律は生まれるべきであって、過去においてこの法律がかつて作られた、その法律によって受けたところの漁業者被害は非常に甚大であります。これに対しては、政府はこの際何らか考えておりますか。これからの法律は、国際法が新しく生まれて、それによって既存の法律をまた延ばしていきたいとあなた方はお考えになるかもしれないけれども、われわれから言いますれば、日本の国に生息しないところの動物であって、しかも日本の魚族を荒し回るところの害獣をとっちゃいけないという、外国の力によって強制的に作られた法律によって、日本の漁民が非常なる被害をこうむっておる。そういうことに対して、政府は何か、この法律ができるのに際して、新しくとの国際条約が結ばれるのに際して、過去のそういう漁業者被害に対して何か考えておられますか。
  58. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) ラッコ、オットセイの猟獲禁止に関する法律は、これは非常に古いことに相なりまするが、明治四十四年の日米加露の四カ国の、前のオットセイ保護条約に基いて国内法として制定をいたしたのでございます。そこで、ただいまお話に出ましたように、なるほどラッコ、オットセイというものは、これは日本には生息いたしておりません。しかしながら、われわれは、水産生物の資源の保護ということについては、国内的にも漁業調整にいろいろ苦慮をいたしておりますが、また同時に、国際的な漁業調整というものを、条約の根拠の上においてこれを実行していかなければならないと、かように思うのでございます。ラッコ、オットセイに関しましては、今の段階におきましては、いろいろ調査研究を進めなければならない問題も残っておりまするが、ただ、海上猟獲をするということが必ずしも適当な漁撈方法とも考えられませんので、そこでまあとにかく調査研究をするかたわら、繁殖島において撲殺によってラッコ、オットセイを猟獲する、こういうふうに条約で取りきめましたところによってわれわれは措置をいたして参りたいと、かように考えるのであります。  ただ、これによりまする漁民の損害の問題でございまするが、これは必ずしもオットセイの回遊によって漁民が非常にその食害による漁獲量の減少を招いているということは、科学的にはまだ全然不分明なことであるのでございます。また、今日この法律に基きまして、オットセイの猟獲に対しましては許可制をしいておりましたが、しかし実際は全然一件も許可をしないで今日までやって参ったのでございまして、従って、今この新しい条約を締結するということによって直ちに漁民に損害を与えるというふうなことには相ならないかと、かように考えております。
  59. 千田正

    ○千田正君 今の次長のお答えは、はなはだ腑に落ちないです。明治四十何年にラッコ、オットセイの国際条約が結ばれた。しかし、日本は途中で脱退しております。何ら国際法に縛られる理由はないはずであります。国際条約から脱退しております。だから、国際条約から脱退して、フリーである日本が、どこでとっても差しつかえないわけです。今度いよいよ国際条約が新たに生まれたわけであって、前の国際条約を破棄した後における日本は、自由であったはずである。それにもかかわらず、その自由なときに、アメリカからの強制によって国内法を作らなくちゃならないという理由は、まことに残念ながらわれわれには納得できない。  そうして、あなたは魚族資源保護と言うたけれども、魚族資源保護ということは、とりもなおさず、日本の近海の漁業その他を保護しなければならない。そのために、日本国内的においては、漁船をある程度整理し、統合し、そうして沿岸から海洋へ、海洋から遠く極地にまで足を伸ばせという政策を、あなた方はとっておりましょう。矛盾しておりますよ。片方に驚いては魚族資源を保護するために、漁船を整理したり、漁民を転業さしたりして、片方においてはまた、ラッコ、オットセイが日本の沿岸に押し寄せてきて、かりに科学的に証明はできないとしても、動物園に行ってごらんなさい、オットセイがどれだけのイワシなり何なりを食うか。一頭一貫目としても、三百万頭のラッコ、オットセイが海上を浮遊して日本の沿海を行った場合においては、一日三百万貫という魚類は食い尽される。そういうことをあなた方、今まで研究しておらないというのは不思議であって、しかも、アメリカの強制の法律を守るために、つまらないことを言っておるのは、われわれはけしからぬと思っている。もう少し研究しなさいよ。
  60. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) 私は、漁業調整ということにつきましては、これは日本国の立場だけで進退するということは、今日の国際慣例から見まして、許されないことであるのであります。今の段階におきまして、今の科学的な究明のこの状況から見まして、オットセイの保存に関する施策といたしましては、やはりただいま御説明申し上げましたような骨子によって、日本の沿岸におきましてオットセイの漁獲を抑制していくということが、オットセイの将来の、今の段階においての対策といたしまして、日本としてこれを当然受け入れるべきではないか、かように考えて、この条約を調印をいたしておるのでございます。  で、ただいまオットセイの食害の問題についてのお話が出たのでございますが、これは確かにオットセイはイカあるいはイワシ、また一部には貴重なサケ、マスも食害をいたす点もあるのでございますけれども、しかし、資源の方面という点から考えてみますと、オットセイが一方においてそういうふうな害をするということで、直ちに全体の資源量に致命的な影響を与え、沿岸漁村の窮乏をオットセイのために招いておるというふうには、われわれは必ずしも考えていないのでございます。そこら辺もまだまだ、今後科学的な検討によって具体的に解明されるべき点ではあると思うのでございますが、そういう観点から、オットセイの海上に回遊するということによる被害ということについては、ただいま御指摘のような点には、必ずしもわれわれその通りであるとも思っておらぬのであります。
  61. 青山正一

    ○青山正一君 関連して。千田さん、まことに失礼ですけれども……。どうも次長さんは、水産庁の次長でないような発言をしておられるように、こちら、聞えてならぬわけですが、これは千田君も責任があろうと思うのですが、私もこれは責任があるのです。昭和二十五年にこの法律を、私らが反対しておるにかかわらず、当時社会党の丹羽五郎君と私、千田君あたりが、これはまっこうから反対しておったわけですが、マッカーサー司令部にちょっと強姦同様な形で、この法律というものが、日本国内法でちゃんときまっておりながら、それを破棄してしまって、マッカーサー様々というふうな形でもって、その意見通りにこの法律を作ったわけなんです。それで日本にはいろいろ憲法を直すとかなんとかという議論もありますが、憲法より先に、こういった関係のものは、これは直していかなければならぬと思います。当時の速記録をごらんなされば、いかにこの法律が悪法であるかということははっきりしておるわけです。二十五年の速記録をごらんなされば、その間の事情もわかりますし、また懇談会、懇談会というふうなことで、懇談会ばかり十二、三回やったわけです。それによってやっと、私らが、強姦同様にきめられたのがこの法律だと、私はそういうふうに解釈しておるわけです。これは千田君もあとから御承知になるだろうと思いますが、この問題はその当時非常に問題になっておったことで、日本国民は、サケとかあるいはマスというようなものを、これはまあ十分に食って生活しておるのだ。こういったサケ、マスをオットセイがやはり、動物園のさきの例の通り、一日に相当食べておる。日本の漁場を侵しておるのだ、そういうふうな建前から、何とかしてこのオットセイを退治しなければいかぬというふうなことが、その当時一番やかましく論議されておったわけです。  その点を、奥原次長も、その当時の速記録なり、あるいはその当時のいろいろな経過を、農林省にもその文献もあるはずですからして、一つ十分御研究願わぬことには、何だかオットセイが魚か、魚がオットセイか、ちょっとわからぬような議論のように聞えてならないわけですが、その点一つ十分に御研究願いたいと思います。
  62. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 今のお話で、私もよくは知りませんが、今の北洋漁業の鮭鱒の日ソ漁業関係下において、オットセイがサケを食う食わないという点が論点になっているかに、私は新聞で見ておる。ソ連、アメリカは、いや、オットセイはサケを食わない、日本はサケを荒されて困るということが、論点になっているようでありますが、今、奥原次長の話を聞くと、日本の官庁では米ソの意見に従って同調しているかに聞えるが、その点はこの交渉の上に影響はありませんか。
  63. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) これに関しましては、オットセイの暫定条約を締結いたしまする際の議論の経過というものを申し上げた方がよいと思うのであります。  食害の問題につきましては、科学的にこれを十分解明するいかなる研究もまだないのでございまして、従って、この点は別といたしまして、水産庁といたしましては、オットセイの海上猟獲をある頭数をきめて解禁さるべきであるということを、オットセイ来遊地帯の漁村の振興という観点から、会議において非常に強く主張をいたしたのでございます。これに対してアメリカ、カナダ及びソ連、三国は、日本自分の力でオットセイをどんどんとるということが、北太平洋の繁殖等における資源に非常な影響を与えておる。あの島々におきましては、弾痕のあるオットセイが相当多数あがっておるのであって、あくまでも海上猟獲を抑制してもらいたいということを、非常に強く主張をいたしたのでございます。  結局、この問題には、同時に、北太平洋におきまするこれらの四国の間におきまするいろいろな漁業に関しまする協約、すなわち日米加の問題、あるいは今、委員会を設置して具体的に交渉をいたしておりまする日ソの問題等におきまする日本の立場というものに対して、非常に微妙な関係を持っておるのでありまして、会議の中途において、その日本の議論に対しまして、たとえばアメリカ側におきましても、日本がそういう立場を固守する限りにおいては、とうてい日本と手を握るように諸国の間をあっせんすることはできないというふうな態度を表明をいたしたのでございます。そこで日本といたしましては、この大局から見まして、オットセイにつきましては、ただいま取りきめておりまするような条約を締結するということが、これが日本が生きていく道である、かような考えに立もまして、この条約を締結いたしましたような実情であるのでありまして、われわれは、食害の問題というよりも、むしろただいま申し上げましたような観点に立っての海上猟獲ということによるオットセイの資源の利用ということが、科学的な検討の結果容認されるというふうな日が来ることを、一面において強く希望いたしておるのであります。
  64. 千田正

    ○千田正君 だいぶ時間があれですから、また次の段階に聞きますけれども、どうもさっきから、次長さんのお話だというと、日本水産庁の代表じゃなく、アメリカかソ連の代表みたいな話し方なんだ、僕らから言うと。ざっくばらんに言うというと、日本の国に住んでいない、どうしてそういう動物を極力あなた方が保護しなければならないという理由が成り立ちますか。漁民の生活までを無視して……。それはあなたが言う国際信義以外、何ものもないでしょう。
  65. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) これは国際信義というお言葉が出ましたが、この問題はオットセイだけの問題にとどまらないのでありまして、鮭鱒、カニ等を通じます、北太平洋におきまする全体の水産資源に対しまする日本の立場というものに、非常に深い関係を持っておるということを申し上げたのでございます。
  66. 千田正

    ○千田正君 それは外交的な問題にもなりますが、とにかくこの問題は、われわれはまだまだ論議をしなければならないと思います。ということは、ただいまのお話によって、一応皮の配分によってがまんしてもらいたいと、それによって調印したようでありますが、しからば、それをたとえば金にかえた場合において、そういう金はどうするかというような問題があります。  そういう問題は決定する前に、私が先ほど前提として伺ったのは、日本が過去のラッコ、オットセイ条約をみずから破棄して、そうして自由な見地においてラッコ、オットセイの海上猟獲をしておった。ただ、残念ながら戦争に負けて、アメリカの駐留軍が来て、その管轄下において、さっき青山君が言うた通り、強姦のような立場において、われわれは日本国内に生息しないととろの動物に対して強制的な法律を作らされた。そうして漁民は、平穏に当然漁獲して差しつかえなかったところの自由な立場にあったものが、この法律ができたために、あるいは密漁であるとか、あるいはこの法律によって罰金を命ぜられる、あるいは抑留される、漁具を取り上げられる、非常な迷惑をこうむっております。こういうような悪法によって、少くとも過去五年間というものを押えた、こういう人たちに対して、この条約が結ばれて、さらに国内法律が強化されるに至る段階に来ておる今日において、この人たちに対して、過去のそうした損害と、それからこれから受けるであろうところの強制的ないわゆる禁止という問題に対して、いかなる処置水産庁はとるか。これを私は、この次ですが、小笠原同僚議員もこの問題については、特に水産庁及び外務省、あるいは大蔵省にただしたいと言っていますから、来週これは明らかにあなた方の御答弁を承わりたい。その際に、過去においていわゆるあったものと、条約が批准されてから起るであろうところの禁止によって、漁獲ができない人たちをどう保護するか、過去における損害に対してどういうふうに考えるか、この二つの段階から、今後におけるところの行政処置考えてもらいたい。これはあらためて来週になると思いますけれども、小笠原同僚議員も特に質問したいと言いますし、私もまだまだこの問題については、日本の国会が批准するに当りまして、われわれが国民として、また国際的な立場から日本のいわゆる独立国家としての立場において、この問題は慎重に審議しなければならない、かように思っておりますから、どうぞあなた方も十分研究していただいて、御答弁をお伺いしたいと思います。
  67. 清澤俊英

    清澤俊英君 かりに皮というものをとって、それはどんな処置をされるつもりですか。
  68. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) 条約期間は六カ年でございますが、本年中に批准が終りますれば、今年の六月に遡及をして皮の配分を受けることに相なりますので、七カ年ということになります。ところが、皮を受け取りましてから、これを加工いたしまして市場に入札いたしまするまでに、約二年歳月を要します。従って、今後約九カ年くらいの間におきまして、三十億の収入が主としてアメリカから日本に配付されることに相なるのでございます。で、皮の加工に要しまするコストが約その半分かと、さように考えますので、ネットの収入といたしましては、約その半分の見当に相なろうかと、十七億くらいのものをわれわれ見ております。
  69. 清澤俊英

    清澤俊英君 この金は国庫の収入になっちゃうんですか。
  70. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) ただいま千田先生から御質問のありました点なんかが、やっぱり核心はその問題であろうと、かように考えるのでありますが、今われわれといたしましては、これを具体的にどういうふうに配分するかということをここで言明する時期ではないものと、かように考えております。ただ、われわれは、この条約の完全な実施のためには、あの地方におきまして今日イルカをとっておりまする方々との間に御協力を願わなければならない。同時に、その方々も幸いにして組織を持っておられ、またわれわれと協力しようという考えをいただいておるのでございまして、その協議、話し合い等をも十分いたして参りたい、かように考えております。
  71. 青山正一

    ○青山正一君 次長、如才ないだろうと思いますが、やはりそういった長年の間御苦労願ったそういうような補償の点も、おそらく考えられると思いますが、どうなんです。その点も……。
  72. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) 正面から補償する考えがあるかというお尋ねに対しましては、私はこれはいわゆる補償ということで処理さるべきものではないと、かように考えております。しかしながら、ただいま申し上げましたような趣旨もあり、かつまたあの地帯の漁村は、私も一回伺ったのでございますが、決して恵まれた生産条件を持っておるとも考えられないのでございまして、従って、そういう点をも十分考慮の中に入れて検討しなければならぬと、かように考えております。
  73. 堀末治

    委員長堀末治君) 本件は、本日はこの程度にとどめて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  74. 堀末治

    委員長堀末治君) それでは、本件は、本日はこの程度にとどめます。ここでしばらく休憩いたします。    午後零時二十九分休憩    —————・—————    午後一時五十一分開会
  75. 堀末治

    委員長堀末治君) 午前に続いて委員会を再開いたします。  農林水産基本政策の件を議題といたします。  この件については、過般、委員会の御決定に従って、本日から両三回にわたって農林省の各庁及び各局別に所管の予算を含めて所掌事務の現況、その問題点並びに今後の政策等について官房長及び各局長から説明を聞くことにいたします。  本日は、農林省の官房長から官房関係についてまずお聞きすることにいたします。
  76. 永野正二

    政府委員(永野正二君) 官房といたしましては、先般予算の総括的な御説明を申し上げておりますので、特にこの際御説明を申し上げなければならない事項につきましていろいろ考えて参ったのでございますが、お手元に「農林省の機構及び事務」という一冊つづりの薄いものがございますので、それの付属表に農林省の機構の絵がかいてございます。この農林省の機構を御説明申し上げまして、今後各局からの事務のお聞き取りに便宜なような御説明をいたしておきたい、こう考えておるのでございます。  この絵でごらんいただきますように、農林省には、内局といたしまして左の方にずっと並んでおります大臣官房、農林経済局、農地局、振興局、畜産局、蚕糸局、一官房五局が内局としてあるわけでございます。右の方に外局が並んでおりますが、食糧庁、林野庁、水産庁、なお大臣直属の機構といたしまして農林水産技術会議というものがあるわけでございます、それらの各局につきまして、これから所管事項の御説明を聞いていただくわけでございますが、所掌事務といたしましては、大臣官房は御承知の通り、省全体の人事、あるいは会計、経理その他農林行政一般についての企画調整及び農林行政の考査あるいは国際関係農林省としての取りまとめ事務というものをやっておるわけでございます。  次に経済局でございますが、これはもう御承知の通り、農業団体の関係、農業委員会とかあるいは農業協同組合というような農業団体の関係、あるいは農業共済の関係、あるいは農林水産にわたります貿易でありますとか、金融でありますとか、あるいは中央卸売市場でありますとか、それから肥料の行政、こうい流通面の仕事と申しますか、そういう各局にまたがります仕事をまとめてやっておるわけでございます。農林経済局には部を置きまして、参事官一名と、統計調査部、それから農業協同組合部という部を置いております。    〔委員長退席、理事藤野繁雄君着席〕  本国会でこの経済局の関係は相当法案も多いのでございますが、御承知のように、先年から問題になっております農業共済の改正法律案、あるいは金融関係では農林漁業金融公庫に対する出資をふやします関係法律案、あるいはいわゆる天災融資法と申しております災害に際しての営農資金融通法律改正案等を控えておりますので、これらの点につきましては、後ほど担当局長より十分御説明をお聞き取り願いたいと、こう思っておるのでございます。  次の農地局は、御承知の通り、土地改良を中心にいたします農地改良の仕事、それから開拓、それから農地法の事務の施行というような仕事がこの局の所掌になっております。この局でも本国会におきましては、例の特定土地改良特別会計の問題がございます。また、開拓者の営農振興のための新しい法律案というものも目下提出するために取り急いでおる段階でございます。それらの関係がございますので、それらの法律案並びにこれに伴う予算の関係等につきまして十分お聞き取り願いたい、こう思っておるのでございます。  その次の振興局は、これは先ごろまで農業改良局といわれておった局を母体にいたしまして、その農業関係の技術指導の関係に合せまして、昭和三十一年度から実施されております例のいわゆる新農村と申しますか、農山漁村の振興計画の仕事及び農業改良資金の仕事等がこの局の所管でございます。ただいまのところ本国会におきましては、この局の関係では法律案はないではないかと、こう考えております。  次の畜産、蚕糸、これはもうよくおわかりいただけますように、畜産行政及び蚕糸行政をおのおの一局をもってやっておるわけでございます。  そのほかに外局といたしまして、食糧庁に総務、業務第二業務第二という三部を置きまして、ここにちょっと絵が非常にわかりにくくなっておりますので恐縮でございますが、こういうふうな課を置きましてやっておるわけでございます。  林野庁におきましては、林政部、指導部、業務部という三部を置きまして、その下にこれだけの分課を置きまして仕事をしておるわけでございます。  水産庁におきましても、次長のほかに漁政部、生産部、調査研究部という三部を置きまして、その下にこういう分課を置きまして仕事をいたしておるわけであります。  法案といたしましては、林野庁の方から森林法の一部改正提案いたしたいということで今準備中でございます。水産庁関係では法案はございません。  なお、官房といたしまして一言つけ加えておきたいのでございまするが、毎年農林省設置法の改正ということで、この機構権限につきまして必要な改正を行なっておるのでございまするが、本年度も予算にからみまして非常に小さな目立たない点でございますが、たとえば、農業水利の関係の研修所を設けるというような点で設置法の改正をいたしたいと思っております。ただこの点はなお政府部内におきます協議が済んでおりませんので、その設置法改正を出さなければならぬかどうかという点につきまして若干問題が残っております。  そのほかにつけ加えておきたいことは、来年度の予算から御承知の通り、寒冷地対策の予算がとれたわけでございまするが、これの仕事は農地局におきます土地改良を主眼とした対策、それから振興局及び畜産局の両方が協力をいたしまして、寒冷地の畜産を取り入れた経営を確立いたしますための大農具と申しますか、機械の導入及び家畜の導入ということをいたしたいと考えております。また、これに伴って、農林技術会議の方での技術研究の決定も必要でございます。従いまして、これらの総合調整をやる必要が生じて参ったのでございます。また農林省といたしましては、たとえば、北海道庁でありますとか、あるいは北海道開発庁でありますとかというような関係官庁との事務連絡も密接にいたさなければならぬというような点もございまして、これは大臣官房に寒冷地農業対策室というものを設置したいとこう考えております。ただこれは、設置法の改正等によらないで、現在の人員を利用いたしまして、事実上の総合調整の室として設置したいとこう考えておりますので、来年度を待たず、本年度中にこの機構を設置いたしたいと思いまして、目下その人選、機構の決定等を急いでおります段階でございますが、こういう点が現在の農林省の機構におきまして問題の点であります。むしろ私といたしましては、今後各局からの問題点が重要でございますので、官房といたしましては、簡単に農林省全体の機構を頭に入れていただきますための御説明を申し上げておいた方がいいのではないかと、こら考えておるわけでございます。何か御質問でもございましたら……。
  77. 藤野繁雄

    ○理事(藤野繁雄君) 以上の説明に対して、御質疑があったらば順次御質疑をお願いいたします。  御質疑がなかったらば……。
  78. 北村暢

    ○北村暢君 全体のことで、寒冷地対策その他について特別の室を設けられるとかいう、あるいは食糧の調査の機構は農林省としてどんな構想で今進められているのかちょっとお伺いします。
  79. 永野正二

    政府委員(永野正二君) ただいまの御質問の点は、今問題になっております食糧管理特別会計の改善のための調査会の御質問と承わったのでございますが、この問題は先般大臣からもお話を申し上げましたように、この食糧管理特別会計の根本的な運営の改善をはかるために、内閣に臨時食糧管理調査会というものを設置したいということで、すでに閣議決定を見ておるわけでございます。目下その人選につきまして、取り急いで事を運んでいきたいと考えておるのでございます。遠からずこれが設置することに相なろうと思います。農林省といたしましては、この調査会のいろいろな庶務と申しますか、そういう事務を取り扱うことに相なると考えておるのでございまして、このために食糧庁の機構にいろいろ手直しをする必要があるかというような点でございますが、現在では一応現在の機構を変えるつもりはないのでございます。ただ、この調査会の仕事自体が非常にまあ今後の運営次第によりまして、そういう必要が生じますれば、調査官を活用するとかあるいはそのためのスタッフを強化するとか、いろいろなことはあるいは必要が起るかとも思っておりまするが、現在のところではその程度に考えております。
  80. 北村暢

    ○北村暢君 その食糧管理の機構そのものをどうということをまあ農林省として考えておらぬ、そういうことを聞いておるのでなくして、実際に内閣にこれを協議会を置くわけなんですが、実際の事務は農林省が担当せられるだろうと、こういうふうに想像するので、実は人選の方法とかそういうものを一つお伺いしたいんですが、どんな考え方で人選を進められておるか。調査のための委員の人選の考え方ですね、これをちょっとお伺いしたい。
  81. 永野正二

    政府委員(永野正二君) この調査会につきましては、こういう方針で調査会を設置するという点が閣議できまったのでありまして、その委員は、学識経験者を大体十五名以内の委員ということで考えておるのでございます。    〔理事藤野繁雄君退席、委員長着席〕  これを内閣総理大臣が委嘱をする。そういうことに相なっておるわけでございます。これの人選につきましては、まだ正式に取り運んでおるわけではないのでございます。いろいろこの点につきましては、各方面の御意見を伺った上で取り運ばなければならないと思っておりますので、内閣の方あるいは農林大臣の方で各方面の御意見も聞きながら、人選を今後進めていくということに相なっておるわけでございます。
  82. 北村暢

    ○北村暢君 各方面といわれるのは、生産者団体、消費者団体、そういうような考え方からきている人選、こういうふうに理解いたしていいのですか。
  83. 永野正二

    政府委員(永野正二君) 御案内の通り、今まで置きました例の米価解議会等におきましては、相当生産者代表でありますとかあるいは労働組合方面を基盤にしての選出委員というようにはっきりいたしておったのでございます。今般置きます調査会の委員を、そういうふうにはっきり何と申しますか、職能別に選んでいくというような点は、実はまだきまっておらないのでございます。そういう点につきましても、農林大臣といたしましては、与党の方面の意向その他各方面の意向か取り入れながらこの委員の構成をきめていかれるというように私どもは承知いたしております。
  84. 北村暢

    ○北村暢君 了解しました。
  85. 安部キミ子

    安部キミ子君 私はおそく参りまして聞きませんでしたが、農林省の機構ですね、今度変えられるのですか。
  86. 永野正二

    政府委員(永野正二君) その点につきまして先ほど説明を申し上げたのでございますが、先般も農林省設置法の改正があるかもしれないということで御説明を申し上げたのでございますが、今考えております設置法は、現在の本省の機構をどうこうというような点は全然考えておりません。むしろ付属機関として、今二、三の場所に散らばっております農業土木の関係の研修所を一つの研修所として表に押し出そうかというような、まあ全体から申しますとささいな点の改正でございます。従いまして、本年の農林省設置法の改正で、この機構を大きく改正するということは全然考えておりません。ただつけ加えて御説明を申し上げましたように、来年度の予算で寒冷地対策の予算がとれております。この仕事は農地局、振興局、畜産局、農林水産技術会議というふうな、冬部局にまたがった仕事がございますので、それらの総合調査をやるという意味で、大臣官房に寒冷地対策室というものを、これは事実上の機構として置きたい、こう考えております。現在、機構の点で変えたいと考えておりますのはその点だけであります。
  87. 安部キミ子

    安部キミ子君 政府では、前国会でも機構改革の問題が出ましたが、農林省の今の機構に、さらにまた足りないところを補足するという意味で、今のあなたの御説明になった通りだと思うのですが、そういう今の機構で、農林省の機構としてはりっぱなものだ、何ら事務を遂行するに支障はないというふうに考えておいででしょうか。
  88. 永野正二

    政府委員(永野正二君) 私、御説明申し上げましたものは、農林省の事務当局の立場で、現在どういうことを考えておるかということの御説明でございまして、なお、農林省に限りませず、各省の機構全般にわたりまして、行政組織法の改正とかいうような問題が、行政管理庁並びに内閣の問題としてあるのでございます。たとえば、政務次官を複数にいたしますとか、その他の各省を通ずる一つ大きな改正をしようというような案があるようでございます。それらの点につきましては、実は内閣全体で御相談になりまして方針がきまるのでございまして、そういう点にまで私が触れて、そういうこともかれこれということを申し上げたわけではございませんので、その点は御了承を得たいと思います。
  89. 安部キミ子

    安部キミ子君 私がお尋ねしたいことは、まあ今農林省の問題なんですが、農林省の今ある機構で、あなたがいろいろな仕事の上から、何ら支障はない、やはり何とか機構改革を根本的にせにゃならぬというふうな必要を痛感されたことがあるかどうかということをお尋ねしたいのであります。
  90. 永野正二

    政府委員(永野正二君) その点は、あくまでも私ども事務当局として、現在の各局の所掌をどうするかという事務的な考え方としては、本年直ちに設置法を改正してどうこうということを考えておる問題がないということを申し上げただけでございまして、各省の事務を遂行いたします上に、各省を通じて大きな改正考えるというようなことになりますと、むしろこれは内閣の方の問題でございますので、そういう点にまで触れての御答弁は、私からは御容赦を願いたいと、こう思っております。
  91. 安部キミ子

    安部キミ子君 たとえば農林、水産というふうなことは、農林省になっておりますね。そうして今のように、水産庁とか、林野庁とか、食糧庁とかというふうになっておりますが、この水産庁が、あるいは水産行政が農林省に包含されているということは、いろいろな点で不便じゃないか、ことに手が回りかねる、率直にいって私そういう実感を持っておるのですが、あなたはどういうふうに考えておられますか。
  92. 永野正二

    政府委員(永野正二君) 私ども農林省の事務の取りまとめをいたしておる立場から申しまして、特に現在の水産庁の機構で水産行政を担当して参りまするのに、根本的な欠陥があるというようなふうには考えておりません。もちろん機構というものは、これを充実、整備をすればするほど望ましいことは当然のことでございまするが、一方、官庁の行政機構全般をなるべく簡素化していくというような要請もあるわけでございまして、そういういろいろな要請をにらみ合せて、この機構の問題は決定される問題であると存じます。私ども現在事務をとっております見地からいいまして、水産庁一つの省でなければ、どうしても仕事ができないというほどには実は考えておりません。
  93. 安部キミ子

    安部キミ子君 水産庁の予算が、今年は概算二十四億でしたかね、大体その程度だと、私今年度の予算をそう見ておりますが、私はこの間農林省の方から説明を聞いてそういうふうに記憶しておりますが、その予算は、現在の日本の水産行政の立場からいえば、非常に軽いと思うんです。農林省が水産行政に対して、何か熱意がなさそうに思えて仕方がない。午前中もいろいろな水産の問題が議題になりましたけれども、これは結局政府が水産行政に対して熱意がないような印象と、それから現実日本の漁民は、同じような形で困っている。非常に困っていると私は思うんです。日本の今日の水産行政は、根本的に建て直さなければならない危機に立っている。極言すれば、危機に立っているといって毛過言ではないほど日本の水産行政は行き詰っているんじゃないか。一部大資本家がやっておられるところは、それは遠洋漁業や何かでどんどん資本を拡大して、規模を大きく持っていかれますけれども、中産階級——中産階級というふうなものは漁業にはありませんよ。実に零細漁民が辛うじて命を保っている。さかなが陸に上れば、もうすぐ死んでしまうように、漁民も、概して職業の転換とか、就職をかえるというようなことができないのが実情なんで、この水産行政を根本的に建て直さなければならない事態になっているというふうに考えて、私は農林省水産庁というふうな形で、従来割りに水産というものを重く見ていた時代から今日を考えますと、非常に私は扱いが冷たい、こういうふうに考えますと、やはり農林省に付随しているという、この機構の矛盾、私からいえば矛盾と言いたいんですが、何といっても日本の国は四面を海に囲まれ、海に依存しているし、また、漁業の面で蛋白源を供給し、外貨を獲得しなければならない。水産の占める位置が非常に大きいのに、旧態依然として水産行政に対して、新しい研究とか、あるいは何といいますか、この時代に沿うたような水産行政というものが打ち立てられていないように思う。そういう意味からしまして、農林省の中に水産庁を含めて、いやが上にも小さく押し込めたというふうな感じがしてならないし、また、実際に水産行政に当っては、政府も冷淡だと思うんです。やはり水産庁というものを、独立した水産省というようなものにでも作っていかなければいけないんじゃないか、こういうふうに考えますが、あなたはそういうことはちっとも感じない、そういうふうにお答えなんですけれども、その点どうでしょうか。やはりどこまでも今の機構の中で水産庁を扱った方がいいというふうに考えておられるんですか。
  94. 永野正二

    政府委員(永野正二君) 重ねての御指摘でございまして、私どもも長い間この水産の仕事にも直接間接タッチをいたしております立場といたしまして、現在の水産関係の予算なり、あるいは行政機構なりというものが、水産業を伸ばす上から見まして、百パーセント理想的なものに達しておるとは考えておりません。今後機会あるごとに、この水産を伸ばしていきますための現実の措置というものを講じて参らなければならない、こう考えておるわけでございますが、ただ水産業の行政の性質から申しまして、これは農業なり、あるいは林業なり、水産業の、この零細な形態の多い原始産業といたしまして、実は共通の行政と申しますか、共通の必要性ある問題が非常に多いのでございます。これらを処理する上におきまして、農業、林業、水産業が、一つの大臣のもとに行政をされておるという点につきましては、これはあながちそれがマイナスばかりであるとも私は考えておらないのでございます。行政機構の問題は、これは実はもっと大きな立場でおきめ願う問題でございまして、私ども事務当局では、あまりそういうことまで決定的なことを申し上げることは、これはいかがかと思うのでございますが、私どもも今後機会あるごとに、御指摘のような水産行政の拡充というようなことにつきましては努力をして参りますけれども、これは今すぐ直ちに独立の省とすべしというような意見は、農林省の事務当局としては持っておりません。
  95. 安部キミ子

    安部キミ子君 事務当局の立場ではそういうことは権限でないと思いますね。けれども、実際に事務に当っておられる方はあなた方なんで、私はいろいろと不便があり矛盾がありはしないかと思うのですよ。そこでやっぱりあなた方のこうした気持が、まあ政府なりあるいは国会議員なりにはっきり言ってもらった方が、やっぱりしなきゃならぬことだったら、そのことがあるいは動機になろうということもあろうし、やっぱり事務を扱っているあなた方が、そのことをはっきりさせられることが必要じゃないかと思うのですよ。そういう点で、事務員だから、事務の立場だからそれは言えないとおっしゃるけれども、はっきりこの際言ってもらいたいと思う。
  96. 永野正二

    政府委員(永野正二君) 重ねての御要望でございますが、私どもも水産の関係の事務に長年直接間接タッチして参ったのでございますが、あながち水産の仕事が全然農業、林業等の仕事と別個になって、一木立になっておる方がいいかどうかという点は、なかなか軽々に判断できないと思うのでございます。たとえば、現在農林漁業金融公庫という制度がございまして、そこからの融資が農業、林業、漁業にひとしく出ておるわけでございます。漁業にも三十数億というような資金のワクでもって出ておるわけでございます。こういう場合に、水産が全然別の機構で、水産金庫というようなものが独立してあった方がいいという考え方もございますし、現在こういう零細な原始産業が手を携えて一つの特殊金融機関を作っておる方が現実的には可能性が多いというような考え方もございますし、そういう点はいろいろ検討すべき問題が実はあるのでございます。ただ問題は、水産に関する行政をいかにして徹底させ、施策をいかにして充実させるかということが、最終の目的であると思うので、これは現実問題といたしまして、今直ちにどうしても水産省を設置しなければ水産行政がうまくいかないというふうなことは私どもとしては考えておりません。
  97. 安部キミ子

    安部キミ子君 この問題は、事務当局のあなたにはっきり言えという私の方が無理なんで、これは大臣に所信をお伺いし、また、水産行政の根本的な考え方をお聞きするのが順序であります。私はきょうも大臣がおいでになったらいろいろの問題をお尋ねしたいと思っていたのでありますが、今たまたまこういう機構問題が出ましたし、それと関連しておりますので、事務当局の意見をお伺いしたいと思って伺ったので、その方針については、大臣がおいでになりました際に、あらためてお尋ねしますので、これでおしまいにいたします。   —————————————
  98. 堀末治

    委員長堀末治君) 官房関係について御質疑がなければ、次は林野庁関係に移りたいと思います。明石林政部長が出ております。
  99. 明石長助

    説明員(明石長助君) 林政部長でございます。これから林野庁所管行政の概要につきまして御説明申し上げたいと思います。  御承知のように、林野行政の運営につきましては、主として一般会計予算によりまして、民有林を中心とする一般の林政を、国有林野事業特別会計によりましては、国有林野の管理経営を行なっておるのでございますが、この両者の間におきまして有機的に連携を保ちつつ行政運営に当っておる次第でございます。たとえて申し上げますと、国有林の経営機構を活用いたしまして、市町村有林等の公有林に国の経費で造林を行いまして、その収益を折半するという官行造林を行いますとか、あるいは共用林、部分林等を国有林野の中に設置いたしまして、地元民の利用をはかりますとか、これまでも林政の推進に国有林野事業の運営を協力させて参ったのでございますが、明年度におきましては、官行造林事業をさらに拡充いたしまして、水源林の造成に重点を置いて実施いたしたいと存じておるのであります。  なおこのほか、共用林野内の放牧採草地の改良につきましても、国有林側の協力施設を行う等いたしまして、この線をさらに推し進めて参りたいと思うのでございます。  明年度におきまする事業の規模は、一般会計といたしましては、公共事業費といたしまして、治山、造林及び林道の三種の事業につきまして、九十八億八千八百万円、前年度に比較いたしまして、四億六千万円の増でございます。その他非公共事業予算といたしまして、林業経営の改善指導、団体の育成、技術研究普及等の事業につきまして十四億七千八百万円、これは前年度に比較いたしまして、約四千万円の減でございます。  この金額を計上しておりまするほか、特別会計といたしましては、国有林野事業特別会計におきましては、歳入歳出とも四百二十九億八千八百万円、前年度に比較いたしまして、約二十億八千万円の増加でございます。  以上のようになっておるのでございます。  なおまた、森林火災保険特別会計におきましては、歳入歳出とも四億六千八百万円、これは前年度に比較いたしまして、約五千万円の増加でございます。この金額を計上いたしておるのでございます。  次に、明年度の事業を中心といたしまして、当面のおもな問題点並びにそれに対しまする施策の大要を御説明申し上げたいと存じますが、その前に、木材の需給に関しまする現状並びに将来の見通しにつきまして一言申し上げさせていただきたいと存ずるのでございます。  最近の日本経済の発展に照応いたしまして、昭和三十年度の木材の消費量は、一億四千五百万石にのぼる次第でございます。戦前の基準年度、昭和九年ないし十一年度でございますが、その平均消費量の約二倍に達しておるのであります。今、これを主要部門別に見てみますならば、建築におきましては約五千万石の木材の消費が行われておりますが、現在の住宅不足及び今後の新規需要を考えまするならば、さらに需要は増大いたしまして、昭和三十五年度におきましては、五千八百万石にも達するかと思われるのでございます。なおまた、パルプ材の消費量につきましては、同じく昭和三十年度におきましては、戦前基準の約三倍半に上りまする二千七百万石の消費に相なっておるのでありますが、さらに内外におきまする各種紙類の旺盛な需要と化繊工業の最近の躍進ぶりをあわせ考えまするならば、同じく昭和三十五年度におきましては、パルプ用材の消費量は三千五百万石にも達するものと推定されるのでございます。このほか、包装用材、枕木、電柱、枕木、車両、家具、このような用材につきましても、国民生活の向上、産業の発展に関連いたしまして、今後ますます増加することが予想されるのでありまして、これらすべてを合わせまして、五年後の昭和三十五年度におきましては、三十年度の一三%増の一億六千四百万石に達するかと思われるのでございます。およそ、林業と申しますのは、御承知のように、その生産期間が著しく長いのでありまして、今後の需要動向を問題といたします場合には、三十年ないし四十年後の状態まで見通さなければならないのでありますが、このような意味におきまして、四十年後の将来の昭和七十年度あたりの状況を推定いたしまするならば、その総需要量はおよそ三十年度の約二倍に当る二億八千万石程度に飛躍的に増大するように考えられるのでございます。このような最近の木材需要の増加傾向に対しまして、その主たる供給源であります用材林の伐採量を見ますると、三十年度におきましては一億八千万石でありまして、これを既開発林の年成長量に比較いたしますと、その約三倍に及んでおるのでありまして、依然として顕著な過伐の状態が続いておるのでございます。従って、かかる事態を緩和いたしまして、さらに木材需給の安定をはかりますためには、未開発林の開発利用、木材消費の節約と、その利用度の向上、外材の輸入等の措置を引き続き実施いたしまするとともに、さらに人工造林の拡大によります森林生産量の増大、優良品種の植栽及び育林技術の改良普及によります森林生産力の引き上げ等のいろいろな施策を計画的に推進する必要があるのでございます。林野庁といたしましては、かかる実情と将来の見通しの上に立ちまして、明年度の施策に当るわけでありますが、そのおもなものにつきまして申し上げたいと思います。  まず第一に、人工造林の拡大の問題であります。造林事業につきましては、戦後の重要な課題でありました造林未済地の造林は、経済の安定化に伴いまする造林意欲の向上と、これに加うるに、各種の助成措置によりまして、本年度末までには完了の見込みと相なっておるわけでございます。従いまして、明年度以降におきましては、将来の木材需要の増大趨勢に対処いたしますために、天然林の林種転換に重点を置きました造林事業を推進いたしたいと存じておるのでございます。人工造林地を拡大する計画といたしましては、国有林及び民有林をあわせまして、昭和三十五年度末におきまして七百三十四万五千町歩、そのうち民有林につきましては六百万町歩、他は国有林野を当面の目標といたしまして推進いたしたいと考えておるのでございます。  明年度の事業計画といたしましては、国有林につきましては、北海道の風倒跡地の造林二万町歩を含めまして六万七千町歩、民有林につきましては、一般の補助造林二十七万五千町歩、融資造林一万町歩、自力造林四万八千町歩、水源林造林六千町歩、合計いたしまして三十三万九千町歩、このほかに、官行造林二万四千町歩を予定いたしております。なお、造林、補助金の総額は本年度とほぼ同額の二十九億六千万円でございますが、明年度は林種転換に伴いまする造林の比重が増大いたします関係上、予算単価を増額いたすことに相なっておるのでございます。  次に、人工造林を拡大いたします計画と並行いたしまして、林業の生産力とその収益性の向上をはかりますために、林木の品種改良事業を積極的に推進いたすことが急務であると存じておるのでございます。このために来年度から予算上の新規事業といたしまして、林木品種改良事業を実施することといたしたいのでありますが、その事業の内容は、まず採種林につきましては、新しく林木育種の見地から検討いたしまして、その選定調査を行いまするほか、精英樹の選抜及び精英樹クローンの養成事業を国と都道府県が協力いたしまして、組織的にかつ計画的に実施しようとするものでございます。これがために、国におきましては、明年度国有林野事業特別会計の分といたしまして、北海道と関東の二カ所に、一般会計分といたしまして九州に、合計三カ所の国営の育種場を設置する計画でございます。なお将来の計画といたしましては、三十三年度におきまして、東北、北陸、中国、裏日本の四カ所にこれを設置いたしたいと考えておるのでございます。なおまた、都道府県に対しましては、採種林の選定調査、精英樹の選抜、精英樹クローンの養成、これらの事業に必要な経費はすべて助成をいたす予定に相なっております。  次に、第二といたしましては、治山事業でございますが、この事業の計画につきましては、戦後の相次ぐ大災害及び財政上の理由によりまして、そのつど改変を余儀なくされて参ったわけでございますが、昭和三十一年度から治山事業実施五カ年計画を策定いたしまして、この線に沿って事業を進めて参っておるような次第でございます。明年度におきましては、国土保全上重要な河川上流の崩壊地の復旧及び背後の農耕地の維持及び造成に資する海岸砂地造林を重点的に実施いたしまして、すみやかな経済効果を期待するようにいたしたのでございます。明年度事業といたしましては、直轄治山事業費が四億円、治山事業費の補助が三十五億六千四百万円を予定いたしております。  次に、国有林の治山事業につきましては、北海道国有林の風倒被害に伴いまする地すべり性崩壊の緊急復旧と拡大防止を重点的に実施いたす計画でございます。特に、水源林造成事業につきましては、今後の進め方といたしましては、官行造林によることを建前といたしたい考えでございますが、明年度におきましては、このほかに、従来通りの補助方式による分を残しまして、この両者を合せまして二万六千町歩の造成をいたしたいというふうに存じておるのでございます。  次に、林道事業についてでございます。既開発林の過伐度を現状以上に悪化させないことを目途といたしまして改訂いたしました民有林林道五カ年計画におきましては、事業量二万四千キロ、これによりまする開発面積が百五十万町歩、その蓄積六億五千万石を目標といたしておるのでございますが、これに対しまして、明年度におきましては、国庫補助林道一千九十二キロ、この補助金が十八億八百万円、融資林道が四百八十九キロ、その他、林道千九百四十キロの実施を予定いたしておるのであります。このほかに、北海道民有林開発林道といたしまして、延長九十五キロ、これの補助金が一億六百万円、これを開設する計画にいたしております。  なお、明年度から林道の補助率につきまして、内地につきましては、三割、四割、五割、六割の四段階に、北海道につきましては、四割、五割の二段階の区分に改めまして、国費使用の効率化をはかりますとともに、地方財政の現状にかんがみまして、都道府県の義務負担制を任意負担制に改めることにいたしたのでございます。  また、国有林の林道につきましては、北海道所在国有林の開発促進と輸送力の強化をはかりますために、流送を陸送へ切りかえること、及び老朽軌道を車道へ改良することを中心といたしまして実施する計画でありますが、その事業量は、新設九百二十七キロ、改良一千百一キロ、修繕一万七千七百九キロの計画でございます。  なお、これと関連いたしまして、森林開発公団の事業の実施状況につきまして御説明申し上げまするならば、御承知のように、この森林開発公団は、森林開発公団法に基きまして、昭和三十一年七月十六日に設立されたのでありますが、公団の行います林道開設事業につきまして農林大臣の定める基本計画は、三十一年の十月二十日になって決定いたしたのであります。公団は、この基本計画に基きまして、着々事業を進めているのでございますが、本年一月現在の状況といたしましては、奈良県の篠原線、奥地川線、徳島県の千本谷線の三路線に着手実行中でございます。なおまた、数路線につきまして近く着工予定になっております。明年度におきましても、所定の計画に沿って事業を推進いたす所存でございますが、明年度分の事業費十億円につきましては、御承知のように、余剰農産物見返円資金の借り入れが期待できなくなりましたので、この調達につきましては、資金運用部からの借入金九億円、及び国庫補助金一億円をもってこれに充てることといたしたのでございます。  次に、お配りいたしました資料にはございませんが、第四といたしまして、森林計画制度の運営についてでございます。御承知のように、森林法の規定によりまして、国が基本計画を立て、都道府県知事は、これに基いて森林区ごとにその施業計画を定めまして五カ年間の森林施業を計画いたしまして、これによって毎年度の実施計画を立てて各森林所有者に通知いたしまして、その実施を指導しておるのでございますが、この制度は、昭和二十六年以降五カ年を経過いたしまして、最初の一巡が終えたわけでございまして、明年度から新しい計画樹立の巡環に入りましたのでございますが、この機会に若干の改正を加えたいと考えておるのであります。その内容といたしましては、この森林計画に、もっと積極的な指導性を持たせまして、個別の経営への浸透をはかりますとともに、これまでの実績等にかんがみまして、適正伐期令級未満の林木の伐採の許可制度を広葉樹につきましては取りやめまして、事前の届出制に変えるということ、それから市町村有林の管理経営実情にかんがみまして、その経営の合理化を進めますために、これら公有林の経営につきまして、市町村長の申請に基きまして都道府県知事がその計画の作成指導に当るというふうにすること、そういう措置考えておるのでございまして、これらの点に関しましては、森林法の一部改正をお願いいたしたいと存じておるのでございます。  第五といたしまして、林業経営の改善についてでございます。林業経営の改善につきましては、森林組合の育成強化を軸といたしまして、林業技術員の活動をより積極化いたしますとともに、農山漁村建設事業の一環といたしまして、山村の振興施策を総合的に推進して参りたいと考えておるのでございますが、まず、森林組合につきましては、引き続き定例検査等を通じましてその育成指導に当って参りますとともに、組合経営の改善面につきましてさらに指導を加えまして、組合の区域の広さ、事業内容等につきましても検討を行いまして、適正な経営規模を確立いたしまして、販売購買の経済事業を推進するように指導して参りたいと考えておるのでございます。  次に、組合の整備状況につきましては、再建整備の対象となりました組合は、単位組合五百六十六組合、連合会三十九連合会に上ったのでございますが、三十一年三月末までにおよそその八〇%以上が目的を達成しておるのであります。また、連合会の整備促進につきましては、三十一年までに、岩手、福島、長野、広島、山口、大分の六連合会が指定されまして、整備計画に基きまして欠損金の整理を行なっておるのでありますが、明年度におきましては、さらに千葉ほか四連合会を対象組合として指定する予定でございます。森林組合の状況につきましては、別表にある通りでございます。  次に、林業改良普及事業につきましては、現在、都道府県に林業専門技術員七百一人、林業技術員二千四百四人を配置して実施しておりますが、明年度からは専門技術員の一部を地区技術員に繰り入れまして、第一線地区技術員の強化をはかりますとともに、専門技術員につきましては、これまでの補助単価の低過ぎた点を是正するために、単価の引き上げを行いたいと考えておるのであります。  なお、普及事業の今後の進め方につきましては、新農山漁村建設総合対策の一環といたしまして実施いたしつつあります山村振興対策と有機的な関連を持たせつつ、林業改良普及の推進地区を設定いたしまして、普及活動を重点的に実施いたしまして、それによって林業経営の合理化と地区内農山村経済の振興をはかりまして、さらにこれを軸として広く林業改良の普及徹底を期したいと思っておるのでございます。  なお、この際、国有林野事業の、明年度におきまする事業の概要をまとめて御説明申し上げたいと思います。明年度の国有林野事業特別会計の事業規模は、先ほど申し上げましたように、歳入歳出ともに四百二十九億八千八百万円でございまして、前年度より二十億八千三百万円の増加でございます。歳入につきましては、事業収入といたしまして三十億八千万円の増加を見込んでおりますのは、これは収穫量の若干の増加と木材等林産物の売払単価の増に基くものであります。歳出につきましては、管理費につきまして五億三千八百万円の増加、製品費は北海道風倒木処理事業の進捗に伴います経費の減によりまして八億二千四百万円減になっております。これに反しまして、将来の木材需要の増大に対処いたしまする林力増強計画に基きまして、造林、林道の仕事は相当拡大されております。すなわち、造林につきましては、本年度より九億五千五百万円の増加でありますが、これは先ほど申し上げましたように、造林の面積が北海道風倒跡地の二万町歩を含めまして六万七千町歩——本年度五万町歩に拡大されることによるものであります。  また、これも先ほど申し上げましたように、林太品種改良事業を組織的に実施いたしますために、育種場二カ所を新設いたすことにいたしております。  また、官行造林につきましても、先ほど申し上げましたように、水源林の造林二万町歩を含めまして二万四千町歩を施行する予定でございます。  林道費については、北海道の国有林の開発と輸送力の強化をはかりますために流送を陸送に切りかえる、あるいは森林鉄道の自動車道への改良事業を中心といたしまして、本年度より六億一千八百万円増を計上いたしております。  なお、治山費につきましても、先ほど申し上げましたように、北海道の国有林の風倒被害に伴います地すべり性崩壊の緊急復旧とその拡大防止に重点的に投入いたしますために、二十六億二千四百万円を計上いたしているのであります。  最後に、今回の国鉄運賃の値上げが発表に相なっておりますので、この機会に一言申し上げたいと存じます。今さら申し上げるまでもなく、林産物は加工度のきわめて低い商品でありますとともに、生産地が遠隔地にありまして、消費地が中央部に集中されているというために、遠距離輸送が余儀なくされているのであります。従いまして、木材の価格構成因子の中に占めます運賃の比率はきわめて高いのでございまして、原木についてみますると、一一・七%、製材につきましては九%を占めているのであります。従いまして、運賃値上りによる影響はきわめて大きいのでございます。しかも今回の値上げ案によりますと、現行では八百キロまで逓減されておりましたものが、五百キロで打ち切りになるということに相なりましたので、林産物のように遠距離輸送を余儀なくされるというような物資につきましては、平均一三%の値上りということに相なっておりますが、原木、製材、木炭等にしてみますると、一八%の値上りというようなことになりまして、相当額の運賃の負担増を来たすというふうに推定されるのでございます。過伐によりまして林産資源がだんだん枯渇いたしまして、年とともに九州、中国、四国等の資源に対する依存度が高まっているのでありまして、かような折に、このような運賃負担の増加を来たすというふうに相なりますと、林産物の正常な交流を阻害いたしまして、需給の困難を招来するというふうにも考えるのでありまして、この成り行きにつきましては非常に憂慮いたしているのでございます。  以上簡単でございますが、林野庁関係の所管のことにつきまして概略御説明申し上げました。
  100. 安部キミ子

    安部キミ子君 お尋ねしますが、私どもが汽車に乗って各地を旅行して一番感ずることは、今この計画によりまして造林が進められているようでありますけれども、まだまだ裸山がたくさんあるということ、それからここの表で木材の需要見通しの中でパルプ材の需要が非常に高くなっておりますが、そのパルプ材を見ますと、樹齢が三十年ぐらいで、もう十年か、十五年ぐらいしたら独立した材木として役に立つりっぱな木がどんどん切られているのですね。そうしてもうそのパルプの値段が高いというので、木を持つ人で困っているような人はついみんな売ってしまうようですが、あのパルプの樹齢に対する何かの法的措置というものはないものでしょうか。こういうものがなければ私はやっと一人立ちしそうになった木が、もう何といいますか、人間で言えば、中学生か高等学校くらいの年令でみな切ってしまわれるというふうに感じますがね、どうなんでしょうか。
  101. 明石長助

    説明員(明石長助君) お話の点につきましては、先ほども御説明の中に申し上げましたように、適正伐期令級というものを設けまして、これは各地によりまして樹齢の押え方は異なるのでありますが、適正伐期令級未満の材の伐採につきましては許可制をしいているのでございます。このたび森林法の改正を企図いたしているのでございますが、その中におきましては、針葉樹は今まで通りといたしまして、広葉樹につきましてはこの許可制を廃しまして、届出制にするということを企図いたしているのでございますが、この趣旨はお話のような点もございまして、できるだけ広葉樹の利用をはかって参りたいという趣旨も入っているのでございます。
  102. 安部キミ子

    安部キミ子君 その適正伐期樹令ですか、それはいつしかれたのですか。
  103. 明石長助

    説明員(明石長助君) 昭和二十六年森林法が制定相なりますとともに、各樹種ごとに適正伐期令級を定めているのでございます。
  104. 安部キミ子

    安部キミ子君 その法令が徹底的に運用されているかどうか、私どもが見ましても、汽車に積んである杭木なり、それからパルプ材を見ましても、みんな若い木が、しかも針葉樹ですね、松とか何とかと、お毛に松が目立つのですけれども、大へん多いのです。私どももまあしろうとですけれども、大体この木は三十年、この木は五十年というふうなことはわかりますが、大体三十年にも足りないような木がたくさん積まれているのですが、これはどういうことですか。
  105. 明石長助

    説明員(明石長助君) 森林計画制度の適正な運用につきましては、特に県に、先ほど申し上げましたように、林業技術員が設けられておるのでございますが、これらの人たちの活動を通じまして、適正な運用をはかって参っておるのでございますが、お話のような事例も全然ないとは申し上げかねる実情だと思いますので、今後その適正な運用をはかりますためにも、先ほど申し上げました広葉樹の点につきましては許可制を廃しまして、簡素な手続の届出制に改めるというふうなことになっておるのでございます。
  106. 安部キミ子

    安部キミ子君 この許可制はだれが許可するのですか、知事さんですか。
  107. 明石長助

    説明員(明石長助君) 知事でございます。
  108. 安部キミ子

    安部キミ子君 そうしますと、その知事は許可するに当っては、専門的な技術員を派遣して、調査して、そうして許可するのですか。
  109. 明石長助

    説明員(明石長助君) お話通りでございます。
  110. 安部キミ子

    安部キミ子君 そうしますと、各県にそういう技術員が置いてあるはずですが、その県の状況によって違うでしょうが、何名くらい一県平均置いてあるのですか。
  111. 明石長助

    説明員(明石長助君) 先ほど申し上げましたように、専門技術員と地区技術員とございますが、主として地区技術員がこれに当るわけでございますが、その員数は二千四百四名でございます。
  112. 安部キミ子

    安部キミ子君 そうすると、一県に平均して何名くらい配置になりますか。
  113. 明石長助

    説明員(明石長助君) 一県にいたしますと、五十名ないし六十名に相なるわけでございますが、大体、森林区というのがございまして、各森林区に少くとも一人は配置するということで、多いところは二名以上配置しておるという実例もあります。
  114. 安部キミ子

    安部キミ子君 その技術者の許可があって伐採されるということになるのですが、その許可の仕方が公明であるかどうかということを、私は若い木がどんどん切られていく事実を見ると、疑惑を持つわけです。そうでなければ、そんな若い木を切るはずがないのですよ。そういう点で農林省はどのような監督なり指導をしておいでになるのですか。
  115. 明石長助

    説明員(明石長助君) 末端の林業技術員につきまして、さような不明朗な事実が行われておるというふうには存じておらぬのでございますが、ただ私ども感じておりますことは、林業の改良普及をはかりますとともに、今の森林法の運用にも当るということからいたしまして、この員数はいかにも人手が足らな過ぎるという感じを持っておるのでございまして機会あるごとにこれが増員あるいは質の充実等に努めておるのでございますが、なかなか財政の都合上思うようには参らないのであります。ただ、先ほども申し上げまししたように、明年度におきましては、補助単価の増大をはかるという点が予算上認められたのでございます。
  116. 安部キミ子

    安部キミ子君 私は日本のいわゆる形状といいますか、山の姿を見まして、まず戦争の跡始末がまだできていないということはこういう形にも出ていると思うのですけれども、少くとも小さな、三年生、五年生くらいな木がどこの山にも、もう戦後十一年にもなることですから植え付けられてしかるべきだと思うのですよ。そうして青い木だなんて思うような地区がありましても、今申しましたように、三十年足らずの針葉樹がどんどん切られているということは、やはりその監督なり責任に当っておられるあなた方が、もっと実情をよく調査下すって、その対策について根本的に考え直して方法を立てられなきゃいけないと思うのです。たとえば、毎年暴風が来るとか何とかいって、山口県でも九州でも常襲地帯だということを言われますけれども、そのもとをただせば、山に木がないということなんですね。そういうことから考えますと、この森林対策というものは農林省にとってはいの一番に取り上げられなければならないと思います。私は水産のことを言いたいんですけれども、山のこんな姿を見ますと、ただこれが木が多くなるとが少くなるとかいうのじゃなくて、風水害の、災害という問題もからんで、これは業者、まあ失礼な言い分かもしれないけれども、パルプ材を買い取る人たちは大体大資本ですね、大きな業者ですよ。そういう人たちが金に飽かして国の森林政策というようなものを無視して、どんどん自分たちの勝手気ままのように木を切らすというふうなことは、私は何とか強い法律を出して押えなきゃいけないと思うのです。それには今申されたような、技術員が足りない、あるいは定員が足りないとかいうふうな問題もありましょうけれどもそういう問題とあわせて、やはり根本的な対策を、これは五カ年計画なり十カ年計画なり計画を立てられて、有機的に立てていかなきゃならない。そういう点では今の日本の政治なり、経済形態が資本主義の形になっておるというところに根本の原因があると思いますけれども、これがもし社会主義制度だったら、こんなばかな政策はとらないと思うのです。ですけれども、やはり大きな見地から立って、農林省は計画を立てて、そうした資本家に対する、横暴を押えて、国全体の立場を守ってもらいたい、こういうふうに考えますので、今年度の予算の貧困も、また、私がこのように申しましても理想には遠いものだと思いますけれども、なるべく心持ちされてしていただきたいと思います。
  117. 雨森常夫

    ○雨森常夫君 ちょっとお伺いしますが、民有林等の補助率が変って、そうして都道府県の義務負担を任意制に改める、この点でございますが、三十二年からもう補助率が変ったけれども、国の出す割合は今までと変りはないということを前提にしてお伺いするのですが、一つは都道府県が義務負担をしないということになると、事業者が負担が多くなると思うのですが、そうなってくると、林道開発事業が後退してきはせぬかということが一つ。  それから二番目には、任意制というてもすべての県が負担をしないことになると思いますので、そういうことを予想されておるかどうか、任意制ということでなしに、要らないということを意味しておるのかどうか。  それから三番目には、そういうふうになってくると県に補助するのではなくて、国の補助金を交付する事務を県に委託するような形になると思うのですが、この三点を伺います。
  118. 明石長助

    説明員(明石長助君) 第一に国の補助率の点でございますが、四段階を設けたのでございますが、全体をならしてみますると、今までよりよくなっているのじゃないかというふうに考えております。  それから都道府県の任意負担の制度につきましては、私たちといたしましては、義務負担ではないが、できるだけ負担はお願いしたいというふうに期待は持っておるわけでございます。従いまして、第三に御質問のありました補助の方法につきましては、やはり従来通り、県の補助事業に対しまして補助するという間接補助の方式を踏襲するというふうに考えております。
  119. 雨森常夫

    ○雨森常夫君 そうすると、県の事業者に対して交付する補助金を国は全額を補助するというのですか、県に対して。それがちょっと疑問に思うのですが。
  120. 明石長助

    説明員(明石長助君) 都道府県の自己負担の全然なされない府県におきましては、お話のようなことに相なるかと思いますが、先ほども申し上げましたように、従来程度の負担はでき得ればというふうに期待いたしておるのであります。
  121. 雨森常夫

    ○雨森常夫君 県の財政状態を見て、この県は負担しなくてもよろしい、この県は負担をこれだけすべきであるというような何か標準が作られてなされるのですか、ただ期待するだけですか。
  122. 明石長助

    説明員(明石長助君) 県によりまして負担の有無をきめるということではございませんで、先ほどから申し上げておりますように、各府県とも従来程度の負担はお願いしたいというように考えておるのでありますが、しかしながら、都道府県の実情によりましては、これを義務負担にするということはなかなか財政の都合上できかねる場合もあると思いまして、こういうふうにしたわけでございます。
  123. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 今質問になった分ですが、それは義務負担にしないということになると、県の財政の再建計画等々とにらみ合して、受益者の負担にかかっていくようなことになると、実際に施行しようとする場合に国が見てやればいい、義務負担にはしないというし、そこの見解がどうもはっきりしないように思うのですが、その最後のしわよせというものは、受益者というものの負担の増額になるような気がします。その点についての見解並びにちょっと前に返りますが、もう他の方から御質問があったかとも思うのですが、三割、四割、五割、六割の四種にするというのですが、それはどういう地域別、どういう見解、基礎によって、その四階級に分けようとするのか、その点がはなはだ不明瞭ですので伺います。
  124. 明石長助

    説明員(明石長助君) 都道府県の負担がつかない場合は、当然受益者にはね返りまして、受益者の負担が増加するということになるのはお話通りでございますが、先ほどから申し上げておりますように、従来通りの負担を期待しておるということで御了解願います。  それから三割、四割、五割、六割の四段階にいたした点でございますが、林道の開設によりまして、開発されます資源の内容、工事の難易、その他いろいろの事情を勘案いたしまして補助の必要度を考えまして、この四段階に路線ごとに区分して実施するということでございます。
  125. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 それじゃ見立て割ですか、大体の基準によっておのおのあなたの方で設計書によって勘案して区別しよう、こういうだけですか。
  126. 明石長助

    説明員(明石長助君) 見立て割ではございません。一定の算式を設けまして、その方式によりまして、この路線は何割というような結論が出るような、私も実は詳細は承知いたしておらぬのでございますが、こまかい算定方式があるのでございます。
  127. 東隆

    ○東隆君 私は先ほど説明されたときに、このごろ貨物運賃で頭が一ぱいになっておりますが、一三%値上げでは困る。こういうように説明されたのですが、事実は一三%になっておらぬのです。もっともっとひどい。おそらく調整されたものでも一六%以上になっておるでしょう。ひどいのは二〇%以上にもなっている。そういうことを考えたときに、先ほど貨物運賃の値上げについて林野庁が言われたけれども、あの発言は、熱がないという表現にもなると思うのですが、交渉、その他は内部的にどういうふうになっておるのか、その点をお聞かせいただきたいのですが。
  128. 明石長助

    説明員(明石長助君) 私先ほど申し上げましたのは、平均一三%の値上げといっておりながら、木材等にこれを当てはめてみますと、一八、九%の値上げになるということを申し上げたのでございます。
  129. 東隆

    ○東隆君 そういう説明じゃなかった。それはあとで速記録をごらん下さればわかると思いますが、一三%で満足しておるわけでないけれども、一三%では困るのだ、こういうふうに言われたので、中身はそうじゃなくしてひどく上っておるだが、そこで内部的にはどういうふうに交渉されておるか、その点を伺いたい。
  130. 明石長助

    説明員(明石長助君) 運賃の問題につきましては農林省といたしましては、農林経済局で農林水産物全般の問題について取り扱っておるのでございます。従いまして、林野庁といたしましては、農林経済局を通じまして非常な値上りをいたすことのないように、国鉄その他との交渉をお願いいたしておるのであります。
  131. 清澤俊英

    清澤俊英君 今聞いていますと、需給を中心にした造林計画というのですか、という方にだけ予算が重点的に見られておって、まあ今の説明からいきますと、当然ある年代がくれば足らぬようになることはわかっておりますが、従って消費面をやはり転換せしめる予算というものが一つ見えませんね。これは何か別のところに入っているのですか。たとえば、塩見さんの技術会議の方にそういうものが回されているとか何とかいうふうに入っているのですか。入っていないとしたら、いま少し木材を効率的に使うような消費面のやはり制圧をやれるような予算が相当必要になるのじゃないか、こう思うのですが、この点どうなんですか。
  132. 明石長助

    説明員(明石長助君) 木材の消費面の合理化あるいは節約等の問題につきましては、主といたしまして林業試験場等の研究機関を通じまして、これらの研究機関で、たとえば加工木材の研究でありますとか、あるいは木炭の歩どまりの向上に関する研究でありますとか、このようなテーマを取り上げて研究を実施いたしております。
  133. 清澤俊英

    清澤俊英君 大体どれくらい見ています、それに回すのは。
  134. 明石長助

    説明員(明石長助君) 今手元に資料を持っておりませんので、詳しくは後ほど申し上げます。
  135. 清澤俊英

    清澤俊英君 これはお持ちじゃないということはいいですけれども考えていないということの証明になるのだなあ、元来は。もっとやはりそういうものを積極化することが有効なものじゃないかと思うのですが、何か私らはしろうと過ぎて何も知りませんが、詳しいことはわかりませんが、たまたま木材研究所等へ行ってできておる品物の性質などを見れば、家具類などでも近い将来においては、家具屋さんなどはこんなことを言うている、もうくぎで打つような家具はなくなるだろう、全くある種の木材を使うというようなことはなくなるだろう、これくらいのところまでいっているのじゃないかというだぼらを吹いて話していますので、そういう面にちっとも意欲が向いていないということになると、どうもなすべきことを置き忘れていられるのじゃないかと、こういう感じがありますから、これは再検討していただきたいと思います。木炭などの問題がたまさか出ましたが、これらは、先に漁民の問題がいろいろ出ておりましたが、日本の木炭生産などというおくれた生産態勢をとっているものはないと思う。あれなどはもう少し金をかけて指導をしていくことは、私は十分ななにがあると思うのですよ。そういう点には一銭も見ていないのだ。木ばかり作って材木屋さんばかり太らせるようなことを考えていても、使う方がだらしないことを考えているから、さいの川原ということになるだろうと思う。だから両々相進んで現代の科学に追いつくような方法考えてもらわなければならない。御一考をお願いしたい。
  136. 上林忠次

    ○上林忠次君 私しろうとのものでありますけれども農林省は最近国土の緑化ということを盛んに唱道しておられますが、これに対して緑化の方向にどういうような施策を講じておられるか、具体的に。私はときどき出張などのたびに山の格好を見てくるのですけれども、国有林は計画的に伐採のあとにちゃんと植えられている。ところが、はげ山などを見て、なぜ植えぬのかなあと言うと、あれは民有林でなかなかその資力がないのだということを聞く。そういう山がかなり鉄道沿線にある。こういうようなところを解消しない限りは、緑化はいつまでたってもできないのではないか。それでは準備をしているかというと、どこに苗圃を作っているか知りませんけれども、苗圃があまり見当らない。なんぼ緑化の笛を吹いても踊り子が踊っておらぬのではないかという気がするのですが、こういう点等についてはいかなる処置をとっておられるのか。金が足らなければ金を融通するとか、苗木ができないなら国の苗圃で作ってやる。そして伐採したときにその収益の何割でも政府でとるというようなことでもいいし、とにかく苗木を作らなければいかぬのではないか。苗圃が見当らぬ。こんなことをしているうちに三年でも五年でもたってしまう。まず苗を養成さして、まずこれに対する金融措置——労力的措置は別に考える。できないなら国で苗木を養成して分配してやるというところまでやらなければ、緑化は声のみではないかと考えるのですが、どういうような具体的な措置をとっておられるのか、まあしろうとの質問でありますけれども、現況を一つお聞かせ願いたい。
  137. 明石長助

    説明員(明石長助君) お話のように、造林の促進につきましては健全な幼苗を得る目的のために、従来県へ苗畑の助成がいたされておったのでございまするが、この点につきましては、幼苗養成とともに、健全な木から健全な実を取るという趣旨からいたしまして、毬果の採取につきましてやはり県がやる場合に助成があったのであります。この二つの制度があったのでありますが、明年度の予算につきましては、苗畑の方は一応打ち切りまして、毬果の採取の助成だけが残っておるのであります。なお一般の苗木の養成につきましては、公共事業の造林事業といたしまして種苗養成の補助がなされておるのでございます。
  138. 上林忠次

    ○上林忠次君 それで山を伐採して、これは個人有の林野がそのまま解放されてあとの苗木の始末もしていない、準備もしていないというときはどういうような措置をとられる、農林省は。
  139. 明石長助

    説明員(明石長助君) 造林の、伐採跡地の造林がなされない場合におきましては、特に二年以内に造林が行われない場合には、造林の義務を森林所有者に課しておるわけであります。  なお、苗木の問題につきましては、県が森林組合、系統機関等と協調いたしまして、苗木の需給につきましてはいろいろあっせんをいたしまして、お話のような事態のないように措置いたしておると存じます。
  140. 上林忠次

    ○上林忠次君 私は、伐採地の跡始末をしないような連中はこれは国有にしてしまう、そして国で大きな見地のもとに日本の林地を調整していく。伐採はいつ、何年後にこの土地は、この山は何年後に切るのだ、国有林でやっておられるようなあの式に、個人有の土地で十分な手当ができないのなら、国で行うというところまでいかないと、山は緑化しないのじゃないか。ただやいやい言ってですね、苗を植えろ植えろと言うだけではいかぬ。まずこれに備えて、国の方で苗木を養成して、幾らでも、できるならただで植えろというところまで進めないと、これはだめじゃないか。今のような二年間植えないと団体の方でこれを経営していく、植樹していくというようなことが強硬に遂行されない限り、緑化運動は宙に浮いているのじゃないかと考えるのですが、もっと具体的に、ほんとうに緑化するという方向には進められないですか、農林省で。
  141. 明石長助

    説明員(明石長助君) お話の点につきましては、たとえば伐採跡地の造林を行わないものにつきましては、これを国有にいたしまして、国で造林するというようなお話もあったのでございますが、ただいまのところ、広くそのような措置をとるというふうには考えておられないのでありまして、ただ特に保安林につきましては、特に水源地帯の保安林につきましては、国でこれを買い上げまして、造林その他治山上必要な措置をして参るということができるように相なっておりまして、現にそのような措置が続けられて参っておるのでございます。
  142. 上林忠次

    ○上林忠次君 何といっても、苗木が大事だと思う、つくづく、旅行しまして。この間も農林水産委員会から行って四国の山を見てきましたけれども、あまりに苗床の準備が、苗圃の準備が足らぬのじゃないかというような、しろうとの目で見た感じです。これは苗木の養成ということが一番大事じゃないか。ことによったら、先ほど申しましたように、これは県なり国で養成して、ただでもやるというところまでいかぬと、いかぬのじゃないか。それがまあ資金的にできないのなら、資金融通もしてやらなければいかぬし、伐採のときにこれを差引するというような規定があるのかしらぬと思っておりましたが、それも聞いておりませんけれども、とにかく苗木を早く作って、切ったところを予想しながら、切った跡にはすぐ苗木を当てがうというところまでやってやらぬと、ほんとうに緑化はできないとつくづく感じたので、ちょっと感じたところを申し上げしまて、御参考に願いたい。できるなら、国で苗木をただでやるというところまでの踏み込みをしてもらわぬと、緑化運動はむずかしいじゃないかと思うわけであります。
  143. 柴田栄

    ○柴田栄君 一体、今の問題は、苗木の需給については、交流圏とも考えて、毎年造林計画に合わせて苗木の養成と配分を計画しているのじゃないですか。それなら、それをはっきりとお答えになったら……。
  144. 明石長助

    説明員(明石長助君) 苗木の需給の問題につきましては、先ほど私の申し上げ方が足りなかったと思いますが、国でもって種苗業者の団体等とも連絡をとりまして、一定の需給圏を設けまして、苗木の利用に対しまして、需要に即応してこれを充足するという方策はとられておるのであります。  なお、苗木をただでやったらいいじゃないかというお話もあったのでありますが、この点につきましては、造林事業につきまして補助金の制度があったのは、御承知の通りでございます。国の補助は三割でございますが、新値に利用する事業費の三割でございますが、大体これは苗木代に相当するものでございます。この補助金は、森林組合を通して流れる場合が多いのでありますが、とのような場合は森林組合が苗木をあっせんいたしまして、必ずその補助金が苗木代には回るようにというような措置が、大部分とられておるのでございます。
  145. 柴田栄

    ○柴田栄君 一つだけお伺いしたい。先ほど放牧採草事業についても、林野として何か協力するというようなお話でありましたが、それは具体的にどういうことをお考えになっておりますか。まあ御承知の通り、ことしあたり畜産増強、あるいは食糧対策全体として、大いに畜産を振興しようという政策がとられておるわけですね。そういう意味において、もっともっと積極的に林野も農地も一体になってこういうことを進めるべきだと思うのだが、どの辺までお考えになっておるのか、ちょっとそれだけ聞かして下さい。
  146. 明石長助

    説明員(明石長助君) 国有林の特別会計に、牧野の改良のための事業費として盛られております金額は非常に少いのであります。三十一年度から五百万円の金額が計上されておりまして、明年度も継続計上されることに相なっております。  その事業の内容といたしまして、たとえば牧柵の設置でありますとか、あるいは庇陰木の造成でありますとか、ただいま実施しておりますものはかような内容のものでありますが、将来はもっと積極的に、優良な牧草、あるいは肥料のための優良な牧草のはえる素地を作るような、いろいろな積極的な手も考えていこうじゃないかという考えであります。
  147. 柴田栄

    ○柴田栄君 それは大へんけっこうなことだと思うのだが、そういう場合に、まあ農林省全体として、特に林野としては、家畜については知識がないわけだね。そうすると、畜産の方あたりと十分な連絡のもとに、畜産事業に相応するような総合的な協力態勢はできているのでしょうね。
  148. 明石長助

    説明員(明石長助君) お話の点は十分畜産局とも協議いたしまして、お互い連絡の上、実施いたすことになっております。
  149. 東隆

    ○東隆君 簡単な問題ですけれども、いつも問題になっているのにこういうのがあるのですが、国有林の立木の払い下げの場合ですね、何か基準があるのですか、払い下げの場合に。特に私の聞きたいことは、農業協同組合の連合会等が製材工場を持っている場合に、立木の払い下げを受けたい。この場合に、普通の木材業者が払い下げるときと非常に違った形でもって払い下げをする、こういうことが行われているわけです。というのは、農業協同組合の連合会というものは、これは消費者の団体であるわけですから、そこで消費者の団体に払い下げる価格でもって出す、それから材木業者はそうじゃないのだと、こういうお考えのもとに処理をされているようですが、これは私は大きな間違いじゃないかと思う。やはり材木業者と同じように、一つの大きな団体を構成しているのですから、その場合には、それに当然同じ形でもって払い下げをしなければならぬものじゃないか、こういうふうに考えるのですが、そのように行われているのじゃないですか。
  150. 明石長助

    説明員(明石長助君) 国有林の立木の売り払いにつきましては、直接私の担当ではないのでありますが、お話の点は、一般の業者に売り払いいたします場合には、実需者に渡るまでのマージンは一応計算の中に見込んでいるわけであります。それから実際消費者、実需者に渡ります場合には、そういうものを見込みませんで、消費者価格を基準として算定しているのでございますが、お話の農協の場合は、私は、どういう取扱いをしておりますか、実は承知していないのであります。
  151. 東隆

    ○東隆君 実はこれは非常に相違を来たしているわけなんです。北海道における一つの製材工場で、連合会経営している工場で、たとえば水田の温床苗代の障子をこしらえるとか何とかいうわけで、原木の払い下げを受けよう、こうした場合に、消費者団体であるからというわけで、非常に業者と区別をつけて払い下げをやりやすい。従って、連合会において経営をするときには、製材業者から買った方がかえっていいという、そういうような——これは非常に乱暴なやり方でないかと思うのです。そういう区別をつけているわけですね。それでそういう区別がもしないとするならば、それを正して、そうして正当な卸価格で——卸価格というと語弊がありますが、第一、業者と同じように取り扱ってしかるべきじゃないかと、こう考えわけです。で、それから地元の単協経営しているという場合においても、私は運賃その他がかからないのですから、当然これは安く渡ってしかるべきものである。ところが、そういうようなものも高くなる。こういうことになれば、これは非常に過酷なやり方をやっているし、それから山村その他において、木材を中心にしたところの林産加工であるとか、そういうようなものが発達をするわけがないのです。だから、根本的に間違った林業政策がそこから出てくるのじゃないかと、こういうまあ考え方になるわけです。その点は、もし事実が、そういうような事実があるならば、それを直させる考え方があるのならば、それをお聞きしておきたいのですがね。
  152. 堀末治

    委員長堀末治君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  153. 堀末治

    委員長堀末治君) 速記を起して。
  154. 北村暢

    ○北村暢君 先ほど説明を受けまして、この林政の基本方針とか何とかと、こう出ておりまして、この中で非常に長期の計画というようなものも考えられて、相当の数字も出ているようです。これは聞くところによると、国有林についての長期需給計画なり、あるいは国有林の合理化の方針というものが、非常に林野庁内部において検討され、近くこれがまあ完成するだろうということを聞いておるのであります。しかしながら、私はやはり林政の、林業政策の問題は、国有林ももちろん大切でありますけれども、やはり民有林行政というものが私どもは非常に大事だと。これが相当な計画的な見通しがない限り、国有林のせっかくの長期計画も狂ってくるのではないかというふうに思うのです。それで先ほど来の御説明を聞いてみますと、非常に矛盾を感ずることは、鉄道運賃の値上げによって非常に木材の価格に影響してくる。しかも山は荒廃をしてきて、北海道とか、九州にたよらざるを得なくなってきている。現実に部長自身も、山は荒廃しているということをお認めになっておるようであります。ところが、政策を聞きますというと、造林の方も力を入れている、それから林道にも力を入れている。何も心配のないような説明をされておられる。非常に論旨が一貫しておらないし、何を説明しようとしているのかということがわからなくなってくるわけです。従って、私は国有林のそういう長期計画なり、合理化計画なりが検討せられると同時に、今日の木材資源、森林資源の枯渇という問題については、非常に大きな重大危機に来ているという認識に立っておるのですが、民有林の施策と、長期計画というものについて、国有林ほどはそれは精密にできないにしても、その計画を一つ——あるとするならば、一つ資料として出していただきたい、そして十分検討をさせていただきたい、こういうふうに思いまするので、一つ要望として、なるべく早い機会にその資料を提出していただきたいと思います。こういうことを要望しておきます。
  155. 堀末治

    委員長堀末治君) 今すぐ資料を申し込んでおきましたから、出しますそうです。   —————————————
  156. 堀末治

    委員長堀末治君) それでは、林野庁の関係はこの辺で、もう少し恐縮ですが御勉強願って、幸いに先ほどから農林水産技術会議事務局長の塩見君が来て待っておられますから、どうか一つその点の説明をお聞きを願いたいと思います。
  157. 塩見友之助

    政府委員塩見友之助君) お手元にお配りしてありますところの、農林水産技術会議の部というのがございますので、それによって大体御説明をいたします。  一番最後の十七ページを見ていただきますと、今年の予算の関係が出ております。各試験場別に出ております。農業組合研究所となっているのは、これは農業総合研究所の間違いでございます。この最後の計の所を見ていただきますと、全貌が出ておりまするが、人件費においては、前年度に対しまして約一億九千万円の増、それから試験研究費のうちの事業費につきましては、次の事業費の三十一年度と三十二年度を対比していただきますと、三千五百万円の増加、それから施設費において約九千万円の増加というふうな形になっております。  それで、その技術会議が昨年六月に発足いたしましたわけでございまするが、当初でございまするので、定員の方は七名、兼任関係が三十名余りというふうな数でございまして、これは一応試験研究機関だけを扱うわけでございまするが、それも一応は原局において処理しまして、その上に技術会議というものは調整をはかり、あるいは指導をやると、こういう建前になっておるわけでございます。で、技術会議としましては、前年度施設費において一億五千万円、研究費において一億円というふうなものを研究機関として最も有効に活用する経費をもちまして、それでいろいろな新しい研究、あるいは施設の不足というものを補なったわけでございまするが、今年度は施設費としては約二億円、研究費として約一億五千万円というふうにふえまして、それを各研究機関の新規の研究、あるいは施設の整備拡充というふうなところに予定するようになっております。  で、技術会議は、御存じの通りに、委員会がございまして、東畑精一さんが会長になって、七名の委員でもってできておりまするが、その方針といたしましては、第一にやはり農民、漁民、産業のためになるところの研究というものを推進していくと。これは大学等の学術研究機関とは違いまして、産業庁に設置された試験研究機関でございまするので、そういう点に重点を置いて指導をして参りたいということと、もう一つは、近来の研究は、個々ばらばらの個人プレーでの試験では大した成果は上らない、ことに産業的な試験となりますると、どうしても各専門分野の人々の協力によりまして試験が行われないと、実用価値が高まらないというふうな点もございまするので、そういうふうな意味において、第一線の研究者の共同的な組織的な研究というものを育成していくと、こういうふうな方針をとって、それで研究機関の指導をやって参りたい、こういうふうに考えております。  そういう意味で、昨年いろいろと各研究機関及び各局の方から研究の要請をとりまして、それで非常に大事な問題、今までの研究では非常に欠けている、さっき申しましたような、産業的な意味でも、あるいはそういう共同的な組織的な研究が必要だという意味でも抜けておりますような問題を本年度は取り上げまして、これが二ページにございますところの、七つの問題を取り上げたわけでございます。これらの問題は、これは農地の関係の研究、畜産も含むのでございますけれども、これが八つの地域の試験場と農業技術研究所というふうなものに、技術的な部門だけでも九つに分れておりまして、その間の連絡調整が必ずしもやりにくいという点がございます。それから水産の方が八つの海区及び淡水系の研究所がございまして、そのほかに真珠の研究所等がございまして、これはみな独立研究機関になっているので、その間の連絡調整が十分いっていないというふうな欠陥がございます。で、林業試験場であるとか、蚕糸試験場であるとか、家畜衛生試験場であるとかいう所は、本場、支場という関係を持っておりまして、地方にあります機関の方も、そういう関係で一連の関係をつけながら研究をやっておるというので、そういう関係は比較的まあうまく行っているというふうな状態にもございますので、ここで取り上げられた問題も、その農業試験場関係の方が五つになっております。すなわち一、二が水田及び畑の問題、それから三、四、五が畜産の問題、それから六、七が水産に関係した問題というふうになっておるわけでございます。  で、この七つの問題の大略を簡単に御説明申し上げますと、稲作における土壌と水に関する研究というのは、従来いろいろ品種の改良、施肥改善、病虫害の防除等が行われておりまするが、稲作についての問題は、非常に従来研究がむずかしい点等もあっておくれておりました部分は、結局水のかけ引きの問題というのが非常に重要だというふうな点でございまして、戦後において特に農民の要望も強く、土地改良事業、ことに排水あるいはそれに伴う灌漑というものを中心としての膨大な国費を投下しておりまする土地改良事業の効果というものを、最も有効に発揮させるというふうな意味においては、そういう部分の研究が最も大切なわけでございまして、そういうふうな意味において、一つは低位生産地であるところの湿田、冷害田、漏水田、干拓田というふうなものに対して、土地改良事業を行うと同時に、それに最も適応した水のかけ引きということを検討しなければならないので、中国その他においては節水栽培等の問題も相当要請されておるというふうな形になっております。これらの問題は、その土壌の関係と、それから水稲の根の関係に結局関係してくるわけでございまして、土壌の管理をよくした場合に、水のかけ引きをよくした場合に水稲の根がどういう状態になって、それがあと地上部の成育と、あと収量にどういうふうな結果になってくるかという点が、収量を上げていく場合に非常に大きい問題として出てくるわけでございまして、その部分が土壌の人、あるいは水利の人、あるいは作物の人、あるいはいもち病等の病気も関係を持ちまするが、それらの専門技術者間の協力がないと、この研究は十分には進み得ない、こういう形になっておりますので、この問題を一つ取り上げておるわけでございます。これによって土地改良の事業の効果というものを最高度に上げるようなことができれば幸いだと、こう考えて、この問題にかなりな力を入れたい、こう考えております。  それから第二は、畑土壌の生産力に関する研究でございます。この畑作改善の問題は、全般的に非常に立ちおくれておりまするし、重要性はあるわけでございまするが、畑作改善の問題の中で、やはりある程度研究の方法もまとまるし、一応基礎的なものとして一番大事だと考えられますところの畑土壌の研究から発足したわけでございます。で、畑土壌の問題につきましては、土壌改良、あるいは施肥の改善というような点についてもある程度のことが行われておりまするが、研究部面につきましては、やはり水田に比べますとずっとおくれておるというふうな点が多うございます。主として地質母岩の関係、それから土層断面の形態、理学性あるいは化学性というふうなものを通じて、土壌中の水の関係というふうなものを中心といたしまして土壌の区分をやりまして、土壌別にどういうふうな管理方式をとったら、どういう作物についてはどういうふうな栽培法をとれば収量が上るかというふうな、試験場の圃場だけではなくて、農家の圃場を対象としたような研究がかなりおくれておる、こういうふうな形になっておりまするので、そのもとになるところの土壌調査と、それからあとは土壌の管理あるいは作物の管理というふうな点を、土壌別にどういうふうな形が適当であるかというふうな研究を進めるための協議会を持つと、こういう形で進めております。これは昨日から明日にわたって協議会を連続今実行中でありますが、この問題もやはり土壌の関係者、土壌調査の関係者と肥料の関係者と、これは専門が現在は分れておりますが、そういうものと、それから作物の関係、これは畑作物ですからかなり範囲は広くなりまするが、そのほかに病虫害の関係者というふうなものが集まりまして、ここらの研究をやっていくと、こういう体制を作っておるわけでございます。  それから(ハ)として草地の問題がございます。この問題は国会においても非常に強くお取り上げになって推進をはかられた問題でございますので、私らの方としても重点を置いてやっていきたい、こう思っておるところでございますが、草地は御存じの通りに傾斜地が多い、それから土壌的に見ても非常に強い酸性の火山灰土が多いというふうな形と、それから多年略奪によりまして地方が非常に減耗しているというふうな傾向がございまして、これの利用面の改良についてはいろいろの問題がございます。これも連続して改良を続けておりまするが、研究方法等についてはやはり一応高度集約牧野というふうなものに対する研究の方式というものと、それから粗放牧野といいますか、天然牧野といいますか、土をひっくり返して耕耘をするということなしにそのまま利用していくというふうな形態の牧野というふうなものについてはかなり研究方法等を考えなければならないというふうにも考えられまするし、さらに農家の圃場の作物というふうなものの中へ組み合せを考えて、一つの輪作形態の中に草を取り入れてやっていくというふうな問題になりますと、これは経営の問題、畑作改善の問題と非常に関係を持ちまするので、そういう関係を十分見た上で、そのおのおのに合った研究方式をとるべきであるというふうな考え方をとりまして、ことに牧野につきましてはいろいろな種類の牧野を分類する必要があろう、これは土壌学的にも分類する必要もあろうし、それからもう一つは植生によって分類する必要があろう、植生によって分類するというふうな方法も併用する必要があろう、そういうふうな各種類の牧野に応じましたところの適切な処理方法をとる必要があろう、こういうふうなところに今の段階は来ております。  それからその次の家畜の飼養標準に関する問題でございますが、これはある場合には、農家の飼養につきまして検討いたしますると、蛋白が足りなくてそのために非常に病気を起しておるというふうな問題もございまするし、あるいは逆に蛋白を過給して、多過ぎでもってそのために繁殖障害等の疾病を生じておるというふうな場合もございまするし、日本では外国、デンマークであるとかアメリカであるとか、そういう国々において試験をされ、決定されましたところの飼養標準というものを、それをそのまま借りてきて今までやっておるという関係がありまして、日本の農家は彼らとは違いまして、飼料作物を自分の畑で必ずしも自給できるという形にございませんし、ある場合には農作物の副産物となっているところの藁稈類であるとか、いもづるであるとかを相当高度に利用いたしますし、稲わら等も粗飼料としてはある程度利用するというような関係からして、給与飼料が非常に違ってきまするので、やはり日本農家に適したところのそういう標準、基準というものがないと、非常にその指導が全きを期し得ないという関係で、これらは当然従来やっておいてよかったことではないかと考えられる部分ですけれども、やっておらなかったというような関係がございますので、その点について進めて参りたい。これは、ただ非常に家畜が金がかかりまするのと、飼料費等が非常にどうも膨大にかかりまするので、試験研究材料の牛を相当たくさんは与えにくい、こういう関係もございまするので、畜産の試験場とそれから種畜牧場、それから県の種畜場等もこれに協力をさせまして、それで場合によれば、農民の方の進んだ農家等の飼養管理の調査等もこれに加えまして、そういうふうな機関が全部一体になってそれでこういうものを作り上げていく一つの機構を作って参りたいと、こういうふうな考え方で、これは明後日から会議をやるというふうな形で、いろいろ準備の会議はやっておりますけれども、取り進めておる、こういう状態でございます。これと関連いたしまして、家畜の繁殖障害であるとか、疾病の関係が家畜衛生試験場の方でも考えられておるわけで、そういう栄養障害の問題を疾病については考えなければならないわけですけれども、この栄養障害の問題を検討していきまする場合に、やはり飼養管理の問題、ことに飼料の問題との関連が非常に深いというふうなことがはっきりして参りましたので、この研究のやり方というものは、家畜衛生のそういう栄養障害の問題を一緒に、一体としてそれで総合的に考えるというふうな研究方式をとって参るように、最近では変更をいたしました。幅が広くなってきたわけでございます。  次に、家畜の育種に関する研究でございますけれど、従来の育種、これは乳牛から入るわけでございますけれど、従来のは外形標準、体型等を中心としまして、多くは勘にたよってやってきたわけでございまするが、これは進んだ国では最近集団育種学というものを応用しまして、あとの子の能力というものを現実に当って、それでいい種類のものを残し奨励する、こういう形をとっております。これは現在人工授精が相当普及いたしましたし、それからもう一つは超低温、マイナス七十何度という低温でやりますれば、精液がずっと長くもつというふうな研究も今、千葉の方でやらせ始めたわけでございまするけれども、そうなりますると、死んだ牛についても非常に優秀な牛のものはそれは長く保存されて、死んだ牛の種をつけることができるというふうな形にもなりまして、それで従来個々の農家が、自分が種つけする牛を、相手を見てあれを種つけたいというふうな形でなくて、見ない牛、死んでしまった牛等の精子を利用して、それで種つけをやるという形がぐんぐんと進んで参ります。そうなりますると、どうしてもそれは従来のようなルーズな、外形等でもってその能力を判定してこれを種づけたらいいだろう、これは農家の方もある程度責任を持てるわけですけれども、そういう人工授精や、ことに超低温精子というようなものが出て参りますると、これは目に見えないわけですので、相当その種については指導、奨励する方も責任を持たなけりゃならないということになります。そうなりますると、どうしても子供の能力というものを十分検定をした上で、それでこの牛の種は間違いないというふうなことをやはり確認するような措置をとっていかないと、責任が持ちにくいという関係がございますので、これは進んだ国々では、そろそろとそのやり方等が始まっておりまするが、そういう形でもってこの育種の方も改変していかなければなるまい。これもやはり、やり方としましては、国の試験場だけではなくって、種畜牧場、種畜場、あるいは農家というものまでに協力を求めまして、そういう一体化された形で進めていかないと、なかなかいかないわけでございますので、そういう方式を今検討中でございます。これは、きょうと明日、今会議でやっておる最中でございます。  それからその次が、水産資源に関する研究でございます。これは、戦後やはり乱獲の問題等も相当ございましたし、ことにイワシ資源及びニシンの資源というものが、大きく暖かい方の水と、寒い方の水で変動が参りましたので、特に注目されて、水産の研究の中心部分を占めてきたわけでございます。その後、マグロの問題であるとか、底魚の問題であるとかいうものが、それぞれ行われておるわけでございまするが、戦後の研究の結果としましては、やはり行政的に問題になる部分としては、どうしてもマイワシが減ったならば、それじゃ、何がふえたんだ、カタクチイワシもふえ、あるいはサンマもその影響を受けたことであろうと、こういうふうに考えられるわけですけれども、海の中にあるところの栄養分については、そう大きい変化がないというふうな場合が多いわけでございまするから、そういう前提になりますと、ある種の魚が減ればある種の魚がふえるというのは当然でございまして、そうすると、変化した魚に対するところのその漁法なり、あるいは漁船数はふえてもいい、こういう結果になるわけで、そういう点をやはりこの資源調査から求める。行政的な結果としては、大事な部分として考えなきゃならぬ。そういうふうな研究の方式をとるとしますと、これは個々の資源をばらばらにやっていただけではできないわけでございまして、たとえばリマン海流ならリマン海流系の資源というものをある程度総合的につかむとか、あるいは対馬暖流なら対馬暖流系の水系を総合的につかむというふうなことが必要でございまして、現在北海道でも問題になっておりまするところのニシンの不漁なんかにつきましては、やはり暖かい水が非常に優勢で、寒い冷水の海域の面積が非常につまっている。そういうふうな形からしてニシンの生息範囲が非常に狭まってきている。で、ニシンは、当然そういう形のもとでは減少せざるを得ない。そのかわりに、底魚としてのカレイがふえたんではないだろうかというふうな想定が成り立つわけでございまして、まあ、そういう点の相互関係というものが追及されるような研究方式にならないと、これが十分な利用価値を持ち得ない部分が多いわけでございます。そういうふうな研究に入りたいわけでございまするけれども、そういう魚の生物社会としての研究方法というものになりますと、世界各国とも戸惑っておりまして、まだそういう研究方式が確立されていないという形でございまするけれども、必要性からいいますると、そういうふうな方式に結果がまとまるような研究にならなければならない。ですから、個々の魚を取り扱っていくけれども、その間の相関関係というものを十分つけながら取り扱うか、それとも、生物社会として一本で扱うかというふうな、研究方法等が基礎的に問題になりますので、そういう点を検討して、できるだけ実用価値の高いものに持っていきたいと、こう考えております。瀬戸内海等につきましては、沿岸漁業を総合的に考える、そういう形を今進めつつあるような状態でございます。  それから水質汚濁に関する研究でございます。御存じの通りに、各種の鉱工業から出ますところの悪水による被害というものが、年々増加して参ります。で、各種の研究ができております。それは、工場でもって廃水をどの程度まで処理すればいいかとか、あるいは処理の方法をどうすればいいかとか、いろいろなばらばらに研究はございまするが、まあその廃水の濃さ、許容限度というものがどのくらいのものかということを突きとめますると、結局それは生物に対するそういう汚水の影響というものを突きとめませぬと、最後の結論は、これが悪水である、この程度までは許容されるということは、なかなか決着がつきにくいんで、そういうふうな意味での水産生物を使ったところの試験調査等が非常に欠けておるという関係にございます。で、こないだ、研究会を第一次をやったわけでございまするけれども、まず第一に、やはりそういう部分の研究と調査を相当進めないことには、この問題は、従来のただ廃水の濃度を薄める工場での処理というだけでは、おさまるまい。その研究に非常に弱点があると考えられまするので、そういう研究を進めて参りたいと、こう考えておるわけであります。  昨年度発足しましてから、さしあたり取り上げました問題は、この七つの問題でございまするが、そのほかに、これと関連して準備的にやっておりまするのは、林業の関係としては、どうしても集約的な林業に移らないと、こういう狭い国土では困るというふうな関係からして、精鋭樹を選抜いたしまして、新品種の育種を交配等によってさらに進めてやっていくというふうな品種改良事業と、それからやはり優良なものをやりますと、どうしても病気に弱いとか虫がつくとかいうふうな関係を考慮しなければなりません、投資も大きくなりまするから。そういうふうな関係の森林病虫害関係の方の、そういうふうな防除に関する調査研究をやらないといけない。また、そういうふうに集約的に参りますると、どうしても林地肥培の関係を、ことに造林初期における林地肥培については相当の効果が認められるので、そういうふうな点についての研究等も進めなければならない。そういうふうな意味で、集約林業を確立するための各種の研究というものを、育種場の設置、品種改良事業の林業における進展と並行しながら進めて参るというところへ最重点を置かなければならない、こう考えておるわけであります。  もう一つ、養蚕の問題につきましては、軟化病というものが御存じの通りございまして、日本の蚕糸の方は、春蚕が非常に比重が高かった戦前と違いまして、むしろ夏秋蚕の方が比重が高い、産繭量では。そのように集約的に桑を利用するような形態をとっておりますが、その夏秋蚕に軟化病が非常にふえる。数十億の被害を出しておる。保険で出している金だけでも相当な多額になっておるという形になっておりまするが、これの原因が、ただ病原菌だけを追究していたのではおさまりませんで、どうしても桑の質と関係があるというふうな大体見込みを持っております。結局、その悪い桑の質には土壌の条件が悪いというふうな関係も、どうも相当関与しているように思われまするので、これはどうしても蚕、それから病気、それから桑、あるいは土壌というものを総合的に研究をやっていきませんと、こういう産業的に大事な問題の研究が確立されていないというふうな形にありまするので、そういう点にかなりな重点を置いて進めたい、こう考えておるわけでございます。  これらの研究と、それから十三ページにこまごまと書いてありまするが、その後各試験場あるいは原局等でもってこういうものを試験をぜひやってもらいたいというので、大蔵省とも交渉いたしまして、それらの研究はやってもらっていいだろうと、こういうふうに認められたものがたくさんここに我っておりまするが、そういうもの等を含めまして、それで技術会議といたしましては、研究の終ったものから、大体予算の見通しのついたものから、研究設計を十分審査いたしました上で、三十二年度にその予算をつけて参りたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  この新規研究の方は、これは前の七つの項目に比べますと、こまかい問題が多うございまするので、ここに書いてあるのを特に御説明いたしませんが、それからもう一つは、十五ページにございます原子力利用に関する試験研究、これはおもに農事の方としてはトレーサー、追跡因子といたしまして、燐であるとか窒素であるとか、窒素の利用は農林省が一番古いわけでございまして、アイソトープの実験は、今講習をやります場合にも、農林省の研究機関を原子力局等は利用させてくれと、こう申しておるくらいに早くから取り上げておりまするが、かなりいろいろ効果を出しております。そのほかに、昨年から本年にかけて非常に強力に進めておりまするのは、品種改良にこれが利用できない。これはガンマー線が主体になりますコバルトを利用しまして、それを本年三つの試験場に作りましたが、来年はさらに二つ作りたい。アイソトープの方は、逐次これは五年、十年とたつに従って、地域の試験場だけでなく、県の試験場等でもアイソトープの利用は始まるのではないかと思いますので、そういうような意味で、農林省としては逐次そのやり方等についても十分研究しながら進めて参りたい。これが前年度大体五千万円くらいの予算でございましたが、今年は一億五千万くらい、施設費が重点でございますけれども、大体ついております。  それからその次が寒冷地の基本対策でございまするが、これについては、もちろん試験研究の方としては、別途国の方で持ちました研究の中から、北海道を中心としましたテンサイであるとか、畑作物であるとか、あるいは飼料作物であるとか、あるいは畜産であるとかいうものに、必要な研究費及び施設費は充当する見込みでやっておりまするが、そのほかに、やはり寒冷地の基本対策については調査を十分やる必要もあろうというふうな意味からいって、一千万の予算がついております。この予算は、これは単に技術的なととろだけではなくて、経済的な面、政策的な面等も調査を一緒にやらなければならぬわけでございまして、そういう点は技術的な基礎がかなり問題がございまするので、会議の方でもって統括して運用をしてもらいたいという形になっておりまするので、その調査については現在検討中でございます。畑作についてはいろいろなむずかしい問題があるようでございまするが、それらを現地について十分調査をし、指導、普及、研究等の重点等もここでもって再検討する必要もあろうかと、こう考えておるわけで、その調査費を有効に使って参りたい、こう思っております。  それからあと一千万円余の応用研究費というものがありまして、これは県であるとか、あるいは大学であるとか、その他の民間研究機関に必要なものは配っておる、こういうふうな形でございます。この項目は非常にこまかく分れておりまして、これの使い方等については、学術会議の方からも、あるいはわれわれの方の会議の委員会の方からも、この使い方について、もう少し産業的な意味を持たせ、重点的に必要なものを選択するのを少し強めてはどうかというふうな意見もございまするので、研究における権威者と思われる人を六、七人集めまして、それのやり方について検討中でございます。もう少しこれは産業的に有効に使える部分が多いのではないか、こう考えております。これらは原局でそれぞれ案を立ててきたわけでございますけれども、立てる基準等につきまして、われわれの方針をきめて最も有効に使える方向に持っていきたい、こう考えておるわけでございます。  大体そういうことが仕事の内容でございまして、定員も少いし、ほとんどの人間を兼任関係でもってやっておるというふうな形をとっておりまするので、一応の第一次の仕事は各局の方で受け持ち、われわれの方としては、試験研究の方はどうしても原局としまして、それほど時間をかけて丁寧に見る、そして将来の産業の基礎を確立するためにどういうことをやればいいか、どういうやり方でいけばいいかという点の検討が不十分のようで、そういう点で研究機関の組織であるとか、運営計画とか、研究方法を強化して参るとか、そういう点について専心力を入れて参るという関係からして、行政的な部面は一応原局にまかせまして、われわれの方としては、総合的に大きい方向をきめながら指導しておる、こういう建前でございます。  大体以上の御説明をもって終りたいと存じます。
  158. 柴田栄

    ○柴田栄君 ただいまいろいろ技術会議の御説明を聞きまして、非常に心強く思うわけでございますが、ようやく本格的なところをスタートしたというような感じでございますが、そこでちょっと細部、いろいろお聞きしたいのだが、稲作の土壌と水との関係の研究というものは、これは当然瑞穂の国であるならば、今までも大きな関心を持たれなければならない問題だったと思うのだが、土壌と水の使い方という場合に、水というものは一様に見ておられるかどうかということでございますが、水質に関して何か特にお考えになっておられますか。
  159. 塩見友之助

    政府委員塩見友之助君) その点は、やはり主として戦前にも、これは塩入博士等が秋落ちの問題を考える場合に、こういう観点が入っていたわけですけれども、それが非常に中心問題として取り上げられたのは戦後でございます。それで水質の問題は昭和十九年に、これは多摩川、荒川、東京の近郊ですけれども、それの水質の調査はなされておりましたし、その後そういうふうな観点から養分としての水質の問題等も検討はされております。ここでもって考えられておりますのは、主として水の持っておりまする酸素ですね、あるいは腐植との関係、有害要因としての異常還元によって根がいたむという関係が非常に大きいようでございまして、従来の秋落ちの研究は主として鉄の問題に集中しておりますのを、そうじゃなくて、植物の根の方から考えますと、酸素の不足によって腐植の型によって異常還元が起って、根が早く参るというふうな形がかなりあちらこちらにある。そのために、西南暖地等におきまする早植え栽培、これはむしろあと牧草を入れるとか、経営改善を、あまり稲が王様のような顔をして、時期を自分の好きなとき取って、経営改善の役に立たない形になっては困るというふうな意味もあって、やったのですけれども、農家の方はむしろ、稲作で増収になるから、これに食いつくのだ、そういう形が多い。その原因等も、やはり早く植えるために異常還元を起さない、根がいたまない。根がずっと強くいくので、肥料をずっと吸い続けるという関係が収量の増加に相当関係しているような形でもっと、水質の問題等はやはり相当な問題でございます。ことに低生産地等において干拓地、秋田の八郎潟とか、悪水の問題もございますので、プラスの面はカリとか石灰とか、そういう塩基の問題はやはり中に入っております。
  160. 柴田栄

    ○柴田栄君 まあ、現在の段階ではこういうことかもしれぬが、将来進んでいけば、水源との関係等がやはりファクターとして考えられなければならぬですね。そういうこともお考えになっているわけですか。
  161. 塩見友之助

    政府委員塩見友之助君) ええ。
  162. 柴田栄

    ○柴田栄君 それから草地造成も、これも実に残された大きな問題だと思うし、当然もっと力を入れられなければならぬという問題であったと思うのだが、まあ、ようやく手がついたという感じがしますが、まあ草地改良、それから畜産政策の推進という問題と、この進捗状況とのテンポが合わないという問題が起ってこないですか。
  163. 塩見友之助

    政府委員塩見友之助君) その点は従来、さっきも申し上げましたけれども、大家畜の研究になりますると、稲ならば何千個体扱うということはわけはないけれども、家畜になりますと、乳牛でそろったものを十頭、二十頭飼うということでもって、相当膨大な経費と定員を要するわけでございますので、研究が十分できていない。それから草の研究の方は非常におくれて、研究者の数も非常に少いという関係から、事業の方が先行しておるような傾向がございます。おくればせながらでも、これを強化して参らなければなりませぬが、やり方が非常にむずかしい。林業関係の方で混牧林の研究がある程度歴史を持って行われておって、ある程度の結果が出ておりますが、一般草地につきましての研究は、戦後初めてできたけれども、研究者も足りないし十分ないというふうな形で、研究のやり方等についてもかなりの問題がございます。そこらの態勢をきちんと固めながら、少い人でもっとも有効な研究を進めて、ことに局限された試験研究機関の圃場だけでやらないで、できるだけ民間のやっておる圃場の実際の事業と関連をつけながら、そこを調査や、ある場合には研究の足場としてそれで進めていくという形がどうでも必要なんじゃないか、こういうふうな結論に大体なりそうな形になってきておりますけれども、それに必要な経費を十分つけて参りたい、こう考えております。
  164. 柴田栄

    ○柴田栄君 お話のように、これはどうしてももっともっと促進していただきたいということと、実際の畜産振興にテンポを——畜産振興事業自体もむだのないようにテンポを合せていただくということも一つ考えいただくのが、農林省として必要じゃないかという気がいたしますが、それからもう一つだけちょっとお伺いしたいのだが、今の試験研究費の助成でございますか、これへ相当盛りたくさんに各方面に出しておられると思うのですが、実績はどんなものですか。
  165. 塩見友之助

    政府委員塩見友之助君) 応用の研究費でございますか。
  166. 柴田栄

    ○柴田栄君 応用研究費……。
  167. 塩見友之助

    政府委員塩見友之助君) その実績の確認——実際は農林省の試験研究機関の研究でも、厳密にいいますと、戦後は試験設計の検討と、試験の行われた結果を検討して、これはもう行政施策に移していいものか、それとも試験の内容を変えてやるものかというふうな、試験結果の検討は十分行われてないのです。そういう点にこの研究協議会をやりながらずいぶん力を入れておるわけです。本来の各試験場でやっている試験研究も、それをうんとやらなければならぬということでございまするが、この応用研究費に至っては、試験設計の、初めから非常に、どんな形で結果が出るかどうかわからないようなものにも出ている。だから、非常に総花になりやすい。それがどうしても、行政機関の人たちがこういうことをやったらいいじゃないかという薄い考え方から、ばらばらやられるというふうな形になるものですから、そういう形に使われているので、これは学術会議等からも何とか、もうちょっといいものにするように考えてほしいと、こういうあれがあるわけで、総花主義をやめまして、これは試験研究機関の方の人にも責任を持たして、その人たちにどういう研究が——国ではできない、国との研究の見合い、県との研究の見合い、どこでどういう研究をやってもらうと、総合一体化された場合に非常に試験が生きるかと、こういう態勢をとりまして、できるだけ研究費は活用したい。研究機関からもそういう要望はあったわけでございますけれども、本気でやるというと相当の負担になる、試験研究機関としては。しかしほんとうに考えますと、試験研究機関としましても、自分の研究だけが研究じゃないので、大学の研究、府県の研究、あるいは民間の研究が相補足し合って産業としては役に立つものができるわけですから、そういう部分は相当分担すべきじゃないかというふうに各上長連中も申しておるので、できるだけそういう関係をつけまして、内容をしさいに当って組みかえをやって参りたいと、こういうふうに考えております。これは相当の仕事なんです、これだけでも。われわれの方としましては、われわれの方で定員をそうべらぼうにとってきても、屋上屋になりますし、研究者の方もいいのが抜けますから、できるだけ研究機関との兼任の形で協力して築き上げていこう、こういう形をとりたいと思っております。
  168. 柴田栄

    ○柴田栄君 ありがとうございました。応用試験の研究費が非常にこまかく、しかも系列なしに各分野から出されて、按分のようなかっこうで出されておるために、なかなか効果がつかめないのじゃないかという気がしておりましたので、でき得るならば、今お話しのごとくだったら大へんいいのですが、各機関が総合して一つのテーマを、目標を持ってお進めいただいて、そういうことで効果を示しつつ、足りなければもっとふやしていただくという必要があるのじゃないかと、こう思っておりますので、どうぞ一つお願いいたします。
  169. 北村暢

    ○北村暢君 ここで説明をお伺いしまして、そういう試験研究というものを総合的にして、産業効果に有益にするということは非常にいい着眼であるし、ぜひやってもらわなければならないことだと思うのですが、この研究の結果をさらにやはり総合する意味において、農業そのものが経済基盤に非常に弱い産業である、私はそう思う。で、ちょっとした増産というものが過剰生産になるということが、直ちに起ってくるわけです。そういうようなことからして、今後の畜産なり、草地改良なり、あるいは畑作なり、稲作なりというものの経済的な効果というものについての総合研究経営化が、農業技術でやっているようですけれども、そういうものから考えて、この中でやはり流通面なり何なりまで、やはり総合した研究というものがなされなければならないんじゃないかと思われるのですが、そういう点について何か計画か何かがあるのかどうか、ちょっとお伺いします。
  170. 塩見友之助

    政府委員塩見友之助君) ただいま農業総合研究所、それから農業技術研究所、あるいは地域の農業研究所の経営等において、おっしゃったような問題は扱っているわけですけれども、それらは十分な連係をもって、一定の目標のもとに、そういう政策的に大事な問題を必ずしも取り上げているという形ではなくて、かなり個々の研究者が事項を選択しているという関係にございまして、どういう問題をどういうふうにやるかと申しますと、これはやはり統計調査部で、十数億の金をかけた調査資料が年々できているわけです。ことにいい資料が相当あるわけですけれども、それが必ずしも活用されていないという形にございますので、農家の実際の動きというものは、数十年の統計をずっと整理すれば、農家はこっちの方向をとっている、ある面はこっちをとらないというけれども、農家はこっちへ行っているじゃないかという点もはっきりわかりまするし、農家の動向というものにマッチしながらこっちもある程度、経営的には農家が判断しながら、これがそろばんに合う、いいと思ってやっているわけですから、そこらをやはり十分確かめた上で、確かなものはその方向が生きていくような形を、こっちの方としては裏づけていかなければならない。そういうふうな意味で、研究項目等の確定については統計調査資料を十分利用する、こう考えまして、今農業総合研究所、農業技術研究所経営部と、それから統計調査部というものを協力さして、それでそういう研究をするという方向へ持っていきつつあるわけなんです。今とりあえず、一応昨年からは畜産に関しての各種の資料を整備しつつございまするし、また来年の畜産センサス等もそういうふうな意味で、産業的にうんと有効にできるような調査項目にしたいというふうに考えて、検討をしているわけでございます。かなりそれは過去の統計で、利用すればいいものがある。その利用することを考えると、また統計に注文も出てくる。こういうものがないのは困るというふうな注文も相当出てくる。  地帯別に日本では、かなり違いますから、南と北と違いますし、それを一般的といって北の問題で南へ押しつけちゃ間違いなので、山間部の方と平坦部の方と問題が違ってくる。そういうふうな点で、地帯性を相当考えながら、しゃくし定木にならないような行政にしないと、うそなんで、そういうものが相当考慮され、そうなりますと、統計資料というものは相当有効に利用できる。それをあまりにやらなさ過ぎるというような形になりますので、今後は統計も、利用できるような統計にする方にも、こっちから働きかけて協力して参りたい、こう思っているわけであります。その研究の方法はなかなかむずかしいけれども、やはりあれだけの人間がおればある程度のことはできると思います。
  171. 仲原善一

    ○仲原善一君 いずれも重要な研究項目のようでございますが、私最後の水質汚濁の問題についてちょっとお伺いしてみたいと思いますが、そこにも書いてあります通り、いろいろな産業が起きて、どうしても水を使いますので、この水は、一番私の経験で、体験で問題になっておりますのは、漁業者との問題であります。パルプ工場などが非常に悪水を流しまして、その補償の問題等、地方的な問題でずいぶんごたごたする問題がたくさんございます。その問題を取り上げて今盛んに研究さしておるようでありますが、先ほどお話の中でも、廃液のいろいろな問題、今薬品の許容限度と申しますか、そういうようなものについてもいろいろ研究せられておるようでありますが、問題が非常に緊急で、まあ毎日のように問題がありますので、その結果の見通しですね、これはなかなか長くかかるのか、あるいは案外早く結論が出て、たとえばPHが幾らでなければならぬとかというようなととが、そういうことで廃液を統制できるような道があるかどうか、その辺についてのお見通しをちょっと聞かせていただきたい。
  172. 塩見友之助

    政府委員塩見友之助君) この問題は大事な御質問だと思いますが、技術者の方の研究結果では、時間はかかると思います。ことに許容限度等の問題になりますと、まあ厳密にいえば、生物実験をやらなければいけない。バイオアッセと書いてありますが、バイオアッセではだめで、厳密には生物実験をやらないとできない。生物実験の方法が非常にむずかしい。今瀬戸内海のところだけにやれる施設と技術者があるわけですけれども、やはりこれがかなり時間も食いますし、それからあそこだけでは不十分だというので、こういうふうな生物実験の部分をうんと進めていかなければならないと、こう思いますので、これはなかり時間がかかると思います。  それから悪水の大体範囲というものの確定ですね、これもそれと関連を持ちますが、それのやり方、調査の仕方等の問題はありますが、これはある程度のところは、片方の許容限度がはっきりするならば、見通しはつくと思いますが、そこらについてはなお相当問題がありますが、行政的な処置としては、やはり研究段階が中間中間で一歩一歩進めば、その結論を利用してやっていってもらうというふうな形になるとも思いますし、それからことに工場におけるところの処理の施設とか、その他の問題になりますれば、これは農林省だけではどうしても扱い得ないというような関係にありますので、私の方からは設立当初から科学技術庁の方にこの問題を総合的に扱ってくれということは申し入れてあるわけでありますけれども、それらのものになると、各産業別にどれだけの金をかければどれだけの悪水を許容限度まで下げることができるかというようなことを調べるのですが、しかしこれは農林省では技術者がおりませんから、十分なこの研究はできない。その部門になりますと、どうしても他部門の方に、科学技術庁あたりで研究してもらわなければならない部門もありますが、一応一番おくれている部分は、どの程度の濃度になれば生物にどういう障害があるかという点ですね。障害も、致死量と、それから生物的に影響を受ける影響量、それからにおいがいやだ、色がいやだといって、魚が回遊して来なくなる量、この三段階を区分して検討しなければならないという問題等もありまして、この研究結果のはっきりしたものがそう急速に出るという形にはなりませんが、中間的な研究結果というものは、相当行政的に利用され得る、こういうふうにお考え願いたいと思います。
  173. 仲原善一

    ○仲原善一君 いろいろ研究の結果、たとえば工場方面で出している研究結果なり、それから漁民の代表の方で調べた結果なりがいろいろあろうと思いますが、私の承知しているところでは、この工場関係で出しております実験結果というものは、非常に大工業の方に有利なような成績が出ている。漁民関係の方は非常に幼稚な知識で、なかなかそれに太刀打ちできないというので、今お話しの通りに、技術庁等で、どっちにもとらわれない第三者の立場で、厳正な研究結果というものが望ましいと思いますので、そういう点も、よく両方の立場を理解した上で、研究結果を取りまとめられるようにお願い申し上げておきたいと思います。
  174. 塩見友之助

    政府委員塩見友之助君) 私の方としましては、これは水産庁が中心でございますから、どうしても水質、それから生物に対する影響、生物実験という部分が、非常に欠けているので、そこのところへかなり中心を置きながら研究を進めたいと、私の方としましてはこういうふうに、一応中間的な結論となっております。一方、科学技術庁の方へ、やはり引き続き要求していきたいと考えます。
  175. 東隆

    ○東隆君 ここの十七ページの一覧を見まして思いますのは、結局試験場の予算の場合に、人件費と、それから事業費のバランス、これは戦前は……。
  176. 塩見友之助

    政府委員塩見友之助君) 六、四か七、三です。
  177. 東隆

    ○東隆君 ところが、これが今逆になっておりますね。そこで私だいぶ無理がいっているのじゃないかと思います。それで思うように試験ができない今日のような状態になっていると思うのですが、これは何ですか、試験場が要求をされるのは、技術会議でもってやっておられるのですか、あるいはまとめて各省別、各局別とか、そういうようなことで要求したものですか。
  178. 塩見友之助

    政府委員塩見友之助君) ただいまの点、非常に重要な点ですが、これは一応各試験場から各局に出しまして、それで、それを予算課の方でも審査いたしますが、そういう点については、私の方でも内容審査いたしまして、それで出すわけです。本年度の要求としましては、逆の比率、大体五割七分くらい研究費の方を上げていきたい、元に戻したい、その要求でもって予算課の方でも相談して、大蔵省の方へ出したわけですが、これはやはり大蔵省の方としましては、ほかの試験研究機関が科学技術庁関係にたくさんありますので、それら全部のバランスがあるので、今年は前年度通りということを前提として、全部査定するから、それでがまんしろと、こういう形で結果は終ったわけであります。やはりこの問題になりますと、農林省だけ比率を変えるというのは、かなり困難でございます。科学技術庁、全体の研究、全体の問題になってきまして、そういう点で、農林省関係ではこの会議ができたので、新規研究等については、ほかよりも幾らかゆとりがあるいはあるかもわかりませぬが、そういう基本的な問題はもちろん解決されておらない、こういう状態であります。その点については、われわれの方でも、内部的にもう少し、事業費がなぜ、どこに不足しているかという点の研究等も十分にやらなくちゃならない。これは二カ月間くらい、各試験研究機関の研究費の中を洗いまして、大蔵省にいろいろなデータをもって折衝したわけですけれども、これはかなり、農林省だけの問題では片づけにくい、研究機関全体の問題にどうしてもなりますので、そういうふうな形で、かなり困難はございます。  研究機関全体としては、農林省のみならず、やはりそういう点はみんな持っておりますので、これはわれわれから見れば、科学技術庁がもっとそこへ重点を置いて、原子力だけにうつつを抜かさないで、もう少しそういう大事な研究の方面へも、もっと強力にやってもらいたい、こういう希望を持っております。
  179. 東隆

    ○東隆君 今のお話ですが、実はもう、研究所の中身を見ますと、農業あるいは畜産関係、そっちの方面は前年度よりも事業費が減ってきているわけですね、実際のことを申しますと。それでふえているのは林業だの水産、そっちの方は多少ふえている。事業費の関係の方が減っているのですが、御努力をされたのはもちろんだと思うのですけれども、数字が減っているし、それで逆な傾向が相当出てきているので、これもちょっと質問したいのですが。
  180. 塩見友之助

    政府委員塩見友之助君) 比率にいたしますと、人件費が、ここでごらんになりますように一億九千万円、その関係から見て、それにバランスしてふえてはいません。施設費で九千万円、それから事業費で三千何百万円ですから、それはその点からも落ちております。農業の方が減っておりますけれども、これは新規研究あるいは施設費の関係、そういうふうな方面では相当大蔵省と折衝した過程においてそれが相当比重がそっちが高いわけです。この一番上にありますところの農林水産技術振興費となっておりますところの二億九千六百万円、その前年度における割り振り、それで機械器具等の整備を相当進めた、そういうふうな関係等もございまして、機関間の公平は十分その中でとれる、そういうところも見合って大体考えておるわけでございます。額自体としては、ここで研究機関に割り振りされたのは減っておりましても、実質は会議の方から相当大きいものが参りますから、十分調整つくような形で施行して参りたい。ただ基本の事業費の、さっきおっしゃった問題は、これは重要な問題ですから、片づいておりません。
  181. 東隆

    ○東隆君 もう一つ、実は水田の方の土壌を中心としてのことと、畑の方の生産力を中心としてのことで進められておりますが、非常に大切なことだと考えますが、私は両面で積雪地帯における土壌、雪の降らない方面における土壌、これは簡単にいえば土壌の風化の問題一つ取り上げてみても非常に違っておると思います。そういうような点で、これは年がら年中、北海道における水田なんかを考えてみますと、冬は雪におおわれている、夏は水、それでかわくひまがない、こういうような状態におかれておるところとか、それから冬の間畑になって、作れる、裏作の関係で……そういうような所との間に、非常に大きな開きがあると思います。そういうような点でもって研究の態度を全然変えてみなきゃならぬ問題があろうと思います。それで問題は、北方農業という立場から見る場合と、南方の団地農業のような考え方から見る場合と、非常な違いが出てくると思うのですが、従って、研究の態度その他において、私は、同一の水田あるいは畑を中心にして見る場合に、別な角度から見ていかなければならぬ問題がたくさんあると思います。そういうような問題を、私はいろいろな協議会や何なりで相当出てくると思うのですが、そういう点をどの程度処理をされていかれるつもりですか。
  182. 塩見友之助

    政府委員塩見友之助君) その点は、おっしゃる通りに、当然出るわけでございます。ことに水田においてかわくか、かわかないか、それから寒いか暑いか、先ほど申しました腐植、有機質が片方の方じゃたまって有害な因子として働く、片方ではそれが腐植が解膠して肥料分として利用されるという面等について、全く違ったような動きをする場合もあるわけです。そのために、地域の試験場というやつを、その場所場所、北海道は北海道、北陸は北陸、研究テーマもかなり変ります。ことに北海道等におきましては、冷害の関係等は水稲だけでなくて、畑作物についても相当の問題があります。あそこには冷害実験室と、ほかの地域にはないようなものを持たせるというふうな形で進めなければいけないというので、内容はやはりその地域でやはり大事な問題を中心的に扱うように、決してどこの地域も同じだという形ではなくて、その地域でやはり大事な問題に集中させるというふうな形にもっていきたい。それが幾らか現実には重複している部分があります。この地域はここへうんと重点を置けばいい、この地域でできた研究で南の方へもっていって大体普及ができるのじゃないか、こういうふうな問題を何でもかんでもやりたいというふうな傾向は幾らかあります。こういう研究の調整はやって参ります。その地域の特色として最重点的の問題は、これは地域の試験場に施設を持たせてやる。必要ならば人工圃場を作らせてやりたいと思います。
  183. 東隆

    ○東隆君 草地の研究のことですが、中央の方でもって研究されるように予算が組まれておるわけです。私はこれこそ北方でもって大がかりにやらなければならぬ問題じゃないだろうか。そしてそこで得た成果というものは、将来日本における岳麓地帯といいますか、緯度の高い地帯に当然行われる研究にもなろうと思います。それを平地でもって、研究しやすいからという形でもって、中央で行われるよりも、私はやはり寒冷地帯の研究として大きく取り上げた方がいいのじゃないか、こういう気がいたしますが、その辺どうですか。
  184. 塩見友之助

    政府委員塩見友之助君) 今は草の問題は、調査費も研究者も少いし、また定員も少いので、あるいは中央の方が大きいようにごらんになるかもわかりませぬけれども、北海道は中央に大体近いくらいの人とあれを持っております。北海道はりっぱな人もかなりおります。今の程度では、中央はまだ非常に弱体な状態です。中央と申しましても、千葉で研究室があります。それから那須には草地に関する三つの研究室があるくらいでありまして、草地部を持っておるのは北海道だけです。西日本の方は、関東近辺に比べて研究は少い。やはり北と南と中央と、この三つぐらいは強化しないと工合が悪いと思います。南は非常に弱い。それから東北は相当広範な適地を持っておるのですけれども、今のところは北海道に比べると非常に弱い。もうちょっと強くしたいという申し込みをしております。草地の研究は全体としては非常に弱いわけです。おそらく北海道の方は、先進地としてやり始めておるわけですが、まだ足りないということは当然あると思いまするが、ほかの地帯に比べてまだまだいいという形になっておりますので、これから草地全体の研究強化をしなければならない状態だと思います。中央が特に強いという形にはなっておりません。
  185. 上林忠次

    ○上林忠次君 国以外の試験研究に対する助成というのは、おそらく大部分が県立の農事試験場に対する助成だと思います。大学に対してはどのくらい来ますか、あるいはその他、関係のある機関というのはどういうふうになっておるか、かような状態を一つお聞きしたい。
  186. 塩見友之助

    政府委員塩見友之助君) これは府県の方に、このほかに指定試験であるとか、連絡試験であるとか、その他の研究補助金が、原局の方から相当の額、億をこしたものが行っております。これは応用研究費というので、かなり産業的な意味を持たせた研究費でございますが、これの内訳はただいま持って来ておらないのですが、大略を申しますると、やはり府県の部分がかなり多いと思います。府県、大学及び民間の団体に相当行っております。ことに経営の部面とか調査の部面とか、さっきも御質問がございましたけれども、そういうような国の研究機関でまだ十分できていないような部面ですね、そういうふうな部面がかなり大学、民間団体の方へ調査をやるというような調査が多いようですけれども、やっております。なお必要があれば、あとまたお届けいたします。
  187. 上林忠次

    ○上林忠次君 日本では、中央にも試験場があるし、府県にもあるのですけれども、大体大学の農学部、あの農学部の利用が足らないのじゃないかという感じがいたします。前に一ぺん塩見さんに申しましたけれども、大学をもっと利用したらいいじゃないか。利用できるというのは、大学に農事試験場をくっつけたらいいじゃないか、その方が能率的でいいじゃないか。現在大学では研究費が足りなくて困っております。優秀な人材がおりながら、仕事ができない。ただ農事試験場だけが試験をやっておる。あれだけの人材を遊ばしているというのは惜しいですから、何か補助でもやって大学の程度を高くして、研究室もよくしていく。研究の素質をよくするためには、やはりいろいろな研究をしなければならぬ。金がないのだから、農林省が補助したらいいじゃないかという感じがするのです。私はおそらく、この何千万円かの相当部分は大学へ行くのじゃないかと想像したのですが、今のお話でわかりましたけれども、もう少し大学を利用する、そして日本の研究程度を高めていくということが必要だと思います。  それから前に農林省では農村の実態調査というのをやりましたね、あの数字などがどういう工合に今使われておるか。新しい農村の建設なんていうところからいきますと、指導方針はあれをもとにして、もっと有効にできないか、あの調査の有効な利用ができないか。どういう工合にしておられますか。昔の経営実態調査ですね、せっかく何年間かかかってやられたものを、もう少し有効な利用法はないものかと思います。  それに、私がこんなことを申しますのは、日本の農村は実は、何を基準にしてどういうような経営をやったらいいのか。もともと土地が狭いのだから大きな期待はできませんけれども、今の経営状態よりはもっとうまく土地を利用する手があるじゃないか。果してあの前の調査をもとにして今どんなことをやっておられるか、どういうような利用法が見込まれるか、そういうような点は、塩見さん、いかがお考えになりますか。
  188. 塩見友之助

    政府委員塩見友之助君) 大学の研究につきましては、文部省の方からも出ているのです。ただ、これはねらいは学術奨励です。産業的な方面から、おっしゃる通り、もっと大学に協力してもらっていい部分があります。これはわれわれの方の方針としましては、できるだけ国の研究、県の研究というものと見合いまして、大学にはやはり基礎研究として非常に、組織的な研究所は大きい組織が要りますけれども、非常に突っ込んだ部分、分担してもらう部分は当然出てくるし、そういうところはもっと、協議会などをやっておると、非常に具体化されてくる。そういうものを有効に流して、大学の先生がただやりたいから金をくれというのでなく、学術奨励の意味で、ないような意味の部分を、ずっと連絡をつけて強化して参りたい、こう考えております。  それから今の経営の問題でございますけれども、過去の経営調査の方は、私ももちろん全部見たわけでないし、会議として直接そういう調査の方を所管しているわけじゃございませんが、大体は経営を総体として見て、それで赤字だ黒字だとか、欠陥はどこにあるのだろうかというような点が出てくるくらいなもので、経営改善にほんとうに資するとなりますると、たとえば乳牛を買った。乳牛を買った結果で、この農家はどことどこにどういう影響がきたか、隣の農家とここの農家とを比較した調査の結果を見ますと、こことここでこういうように変る。片方は飼料を相当自給している、片方は自給してない、この結果がここにこういうような結果として現われたのだという形で、農家に直接役に立つ。大学の教授が論文を書くのに必要なような、いろいろ経営の実態を考慮したような調査はかなりある。そのうらみは非常に強い。農家がそれをつけたのを、農家が普及員から読んでもらって、ここがうまい、ここが悪いというように、これがわかるような、簿記の整理もしてなければ、そういう形になっていない。経営調査というのは、農民のための簿記であるとか経営の調査であるという形にするのはかなり困難でございまして、それは数年前から私言っているのでございます。大学教授の論文のための調査はやめて、それを作れといっているのですが、それをやるとなると、かなりやはり問題がたくさんあって、そういう部分の調査は十分には必ずしも行っていない。こういう状態にあります。ある程度の見当はあれからもつくのですけれども、そういう部分が非常に欠けている。そういう部分で統計調査の方へも研究をやっている面で相当注文をつけてもいいじゃないか、こう考える。ことに普及面から相当つけられる。こういう感じを持っております。
  189. 上林忠次

    ○上林忠次君 新しい研究目標、改善目標は出ておりますが、こういうことになりますと、農家の収益にも相当変化が出てくる。生産もふえてくる。従って、昔やったあの実態調査などというものは、もう再検討しなくちゃならないということになって、実態が変ってきますけれども、何とか、われわれの日本では大体経営はこういうような方向に行けという指針が必要だ。それに対して、これという資料がない。それではこれから経営専門の試験場でも作ろうか、あるいは昔の書類を引っ張り出して、資料を出して机の上にも一つのプランを作るかということになりますけれども、その経営の試験場とかいうものを作るというような考えはありますか。
  190. 塩見友之助

    政府委員塩見友之助君) それは、おっしゃる通りに、農家が現実にやっている状態をしっかりつかむことが非常に大事であって、これは日本の農家は勝手に、自分経営に必要な面積を借りて、労力を賃借りしてやれるという形ではなくて、労力も自家労力で、圃場もやはり歴史的にきまった圃場というものを対象にしてやっている。これは農家が一番体験者で、月給取りの技官が、月給をもらって、食うには困らないで、圃場を引っかき回して、こういう経営がいいのだと言って農家に教えられますかどうか、非常に疑問で、そういう経営の問題は、金を使うよりは、いい調査をやる。過去の調査で生かせるものは極力利用して、経営改善の大体の方向を打ち立てるべきだ、こう思います。やはり主体性がある。  ことに畜産の入れ方が一番、現実には農家が悩んでいる問題です。それについて、畜産を加味した経営内容の分析というものは非常に大事な部分で、その部分はいろいろなデータを利用してみているけれども、やはり十分ではなくて、畜産の各立地ですね、飼料の自給の点から見た立地、それから市乳あるいは原料乳というような点、そういう点等も考慮しまして、それで地帯的に検討を進めていく。その地帯の分析ができるというような形での経営調査というものが望ましいと思う。過去にやっております統計調査部の生産費調査、いろいろなものが副産物として、そっちの方にかなり利用される部分がありますけれども、本格的にそういうものを設定しようと思えば、やはりそれを目的としたような調査というものをそれに加えてやらないと、利用ができない状態だと考えます。
  191. 上林忠次

    ○上林忠次君 農民の一番困っているのは、地帯で、実は地方によって違いますが、この地帯でこのような経営規模の土地を使っていくなら、何を中心にして、どういう工合にしていったらいいかということを望んでいると思う。それは今できておらない。先ほど聞きますと、経営試験場などは、やってもなかなかむずかしい。数字的にはよっぽど、数字的な資料を集めて方向を見つけてやるよりほかに仕方がないという話ですが、やはり農林省としては、特に新農村の建設ということを言われているが、一応地帯別の進む方向を、これをやってやらなくちゃいかぬじゃないか。これは今五里霧中です。何をやれといっても、すぐ、まとめて生産を上げると、値段が落ちる、金が取れなかった。これでは新しい農村建設はできないじゃないですか。金を取らす。しかもあまり変動なしにきまった収入のあるような経営方法を、その指針を作っていただきたい。  それで、やはり経営試験場をお作りになりますかという質問もしたのでありますけれども、まあ大体方向はわかりましたけれども農林省におかれましては、大体地域別の農村の経営の指針というやつを、一つ作っていただきたいということをお願いしておきます。
  192. 堀末治

    委員長堀末治君) これで御質疑もないようでございますから、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十一分散会    —————・—————