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説明員(磯崎叡君) 去る一月二十九日の当
委員会におきまして、各先生方からいろいろ御
意見が述べられましたその結果、私どもの方に資料の御要求がございました。お手元に資料の御提出をいたしておるはずでございますので、それに基きまして御
説明さしていただきます。
なお、先般の
運賃の問題につきましては、後ほど運輸省の方からも御
説明があると存じます。とりあえず、この資料について簡単に御
説明を申し上げたいと存じます。
前回の資料の御要求は、
運賃と原価の
関係がどうなっているかという問題が
一つと、それから
国鉄貨物運賃につきまして今度どういうふうな改訂の内容を考えているかということの御
質問がございました。それに基いて、資料によって簡単に御
説明を申し上げます。
まず、
運賃と原価の
関係につきましては、お手元の資料にございますが、現在私の方の
昭和二十九年度におきます決算の原価は、貨物の面におきましては、貨物の収入の一〇〇に対しまして一一一の赤になっております。これを私の方では、貨物については車扱いと申しまして一車まるまるの扱いと、小さい貨物の小口扱いと、二種類がございますので、この車扱いについて見ますと、この原価割合いは一〇九となっております。私どもといたしましては、一応全体の収入で全体の支出をまかなうという建前になっておりますので、私の方の単位当りの
運賃と、単位当りの原価とは、大体見合うような形で作られております。二十九年度にたとえて申しますと、一トン一キロを送ります平均の
運賃が二円四十七銭九厘でございます。
これにつきまして、これと
運賃との
関係を見ます場合に、二つの面からこの問題を見なければいけないと考えまして、資料を作成してみましたが、第一は運送距離から見た
運賃と原価の問題でございます。運送距離については、大体貨物の輸送は発駅あるいは到着駅で、ターミナル・コストと申しまして、いろいろ積みおろし等の費用がかかります。その後、貨車に載せて列車につながれましてから、ある程度距離がふえるに従い、必ずしも正比例して輸送の原価は上らないわけであります。貨物運送については、ただし途中の駅でもっていろいろ操車場というものがございまして、大体現在の輸送情勢について見ますと、百キロに一回ずつ操車場に入れて貨車の組みかえ、入れかえ等をいたしておりまして、従いまして、最近の非常に御
承知のような輸送難の状況におきましては、この回数が非常にふえて参りまして、その面の原価が割合に高くなっております。現在一トン一キロ当りの原価が百キロメートルで三円六銭八厘でございます。千キロメートルにつきましては二円二十一銭八厘となりまして、現在の逓減割合は
運賃原価の方は三〇%減っている形になっております。ところが、後ほど御
説明いたしますように、
貨物運賃の方は、非常に
遠距離に参りまして逓減率が割安になって参っておりますために、輸送の原価と
貨物運賃との割合の差がだんだんひどいのでございます。特に最近におきましては、貨物の足が非常に延びて参りました。平均輸送キロが長くなりましたために、先ほど申しました貨車の組みかえ、入れかえの作業の回数がふえ、また、からでもって貨車を走らす。大体わが国の貨物輸送の
現状が、東京から向いまして北にあるいは南に空車が走って行く、そうして東京に対して実入りの車が走って来るというような状況に相なっておりますので、貨車足が伸びることはそれだけ、からの車を長く走らすということにも相なるわけでございます。
もう
一つは、等級別に見た
運賃と原価でございまして、御
承知の
通り、現在貨物の
運賃は主として、各貨物の持っております負担力でもって
貨物運賃を定めております。トラック
運賃等は負担力を全然考慮いたしませんで、もっぱらトラック
運賃に要します原価を中心として
運賃を定めておりますが、私の方は負担力主義で
運賃を定めておりますために、あらゆる物資を十五の等級に分けて
運賃を収受いたしております。一級から十二級までと、特別に
生活必需品等につきましては二十台をつけまして、二十一、二十二、二十三という三つの等級をつけております。これらの等級から見た原価の
関係を申し上げますと、等級では大体七級が
運賃と原価と見合うような
運賃を作成いたしておりまして、その七級を中心といたしまして、各級別に率を乗じまして
運賃を収受いたしております。従いまして、各等級ごとにおきます
運賃と原価の
関係は、後ほど表で御
説明いたしますが、一級から六級までが大体原価を償い、また八級以下は大体原価を割っているという形に相なっております。従いまして、逆に申しますと、八級以下の不足の
運賃は六級以上の貨物でこれを負担し、そうして全体としての収入が原価を償うという形で
貨物運賃を構成しております。それを数量的に申しますと、現在鉄道で輸送いたしております総物資の中で、原価以上のものは三一%、大体原価と同額のものが三二%、それから原価を割っているものが三七%というふうに相なっております。これを農林物資だけについて考えますと、原価を割っている割合は約七〇%と相なっているわけでございます。
以下簡単に表につきまして御
説明申し上げますが、別表を三枚つけさしております。
別表の一は、運送距離別に、先ほど御
説明いたしましたように、
運賃と原価との
関係がどうなっているかという表でございまして、一番右の欄にいろいろ指数が出ております。左の欄に距離がございまして、
運賃に対する原価の割合は、十キロメートルのところでは一〇〇以上になっておりますが、それからずっと下りまして二千キロのところで一二一と、すなわちこれだけ、何と申しますか、
運賃が原価の方は高くなっているという勘定になるわけでございます。これを今回改訂いたしました場合で申しますと、一番右の欄で、二千キロのところで一二一が一一四になるというような勘定に相なるわけでございます。
次に別表の二でございますが、これを距離と等級と両方の面からごく簡単に見ますと、別表の二のような表に相なりまして、この表の中で黒い線の中で囲みました部分が
運賃と、何と申しますか、原価を償っているという部分がこの黒い線の中で囲んだ部分でございまして、従いまして、右の下の方の一角並びに右の上の方の一角、黒い線の外側にある部分が、
運賃と原価の償っていない面を示しておるわけでございます。たとえて申しますと、七級で、上の方に七とございますが、七級の貨物で申しますと、四百キロまではペイをいたしておりますが、五百キロからになりますと、
運賃と原価が償っていない、こういうふうにごらん願えればけっこうでございます。なお一番上の点線の方は、これはごく最低
運賃を申しまして、特に御
説明するほどのこともない問題でございます。まるをつけましたのは、各級別に見てどのくらいその級のものが輸送の足が延びるか、輸送の距離が延びるかという、輸送距離を示したものでございます。御
質問によってお答えいたします。
最後の別表の三の表は、等級別に見まして、各等級ごとに
運賃と原価がどうなっているかという表でございまして、一番上の欄が等級の欄でございます。次に原価を書きまして、
運賃をその下に持って参っております。これは平均輸送距離における
運賃を示したものでございます。そこでAとB、原価と
運賃とを比較いたしますと、一級から六級までにおきましてはプラスの数字になっております。七級で大体見合いまして、八級から以下マイナスになっておるということで、大体八級から二十三級まで——この二十一、二十二が途中に入っておりますのは、賃率指数と申しまして、指数の順番に並べましたために入っておりますが、八級以下は全部三角ということに相なっております。
それでは次に、全体の貨物が等級別にどういうふうに割り振られておるかと申しますと、私どもの方の全体として送っておる貨物を一〇〇といたしますと、七級の貨物が圧倒的に多く、これが三二%でございまして、これは石炭が七級でございますので非常に多いわけでございます。それからその次に農林物資についてどうかと申しますと、もちろん
農林水産物資でございまして、
水産品もこれに入っております。これで参りますと、下から二番目の欄でございまして、二十三級が三四%でございます。そのほか二十二級、二十一級等に比べまして、七級、八級にも木材
関係等が入っておりますので、多少の率を持っております。なお、各等級ごとに、それでは農林物資がどういうふうに入っておるかという数字を申しますと、一番下の欄でございまして、ちょっとこれは非常にまずい表で、ごらんになりにくいかと思いますが、たとえば七級の欄をごらん願いますと、七級の欄の、全体の国鉄の輸送量のうちで一・二%が農林物資と、こういう意味の表でございます。たとえば右の方の二十二級になりますと、二十二級品は全部農林物資である。多少の切り下げ、切り捨てもございますが、全部農林物資である。また二十三級もほとんど農林物資であるというように、各等級における農林物資の割合をお示しいたしました数字でございます。
以上が前回御要求のございました
運賃と原価の
関係についての
説明の資料でございます。
引き続きまして、もう
一つの方のプリントの「
国鉄貨物運賃について」という表につきまして、簡単に御
説明申し上げます。
現在
運賃の改訂につきましては、私の方では運輸省の指示によりまして、目下作業を進めておりまして、なおまだ確定的な具体的な数字を出すまでに至っておりませんが、先般当
委員会から御要求もございましたので、一応いろいろな試算をいたしておる
段階でございまして、従いまして、以下述べます数字も、必ずしも確定的なものでなしに、試算の
段階にあるものというふうに御了承願いたいというふうに存ずるわけでございます。
まず、
遠距離の逓減問題と特別
割引問題でございますが、
遠距離問題につきましては、先ほど原価について申し上げました
通り、非常に最近貨物輸送の足が延びて参りました。ところが、
運賃の方は十キロメートルの
運賃を百円といたしますと、八百キロメートルでは二十円に、千五百キロメートルでは十八円になっておるというふうに、非常に高度の逓減率で
運賃を定めております。現在貨物輸送の全体の平均の輸送キロが二百七十六キロ、戦前に比較いたしまして約百キロ足が延びておるという次第になっております。このために、最近非常に
遠距離貨物が増加いたしましたことと、交錯輸送と申しまして、同じ品物が相当な距離を、上り下り線を同じ品物が上ったり下ったりしているという
実情も数字に出ておりまして、これらも
運賃の
遠距離逓減制との関連もございますし、また海上貨物につきましてもある程度、不自然なと申しては恐縮と存じますが、多少無理に陸上輸送をやっているそのために、けさ現在でも二百十五万トンという滞貨を沿線に現在かかえております。一日五十万トンの輸送をやっておりますが、なお現在の数字はちょうど昨年の一番繁忙期の、十二月の中旬の在貨の実績に匹敵するだけの実績をけさ現在、各線の沿線に持っておるような次第でございます。
今回の改正におきましては、現在極度に輸送力の逼迫のために、これを何とかして合理的に輸送力を使いたい、また経済的に使いたいという意味から、ある程度
遠距離逓減の修正を
実施いたしたいと考えましたが、なお先ほどのお話の
通り、
日本全体の地理的な
関係から申しまして、非常に長い輸送をしなければならないような状況もございますので、三千キロの区間におきまして——三千キロと申しますと、
日本の輸送の一番長い輸送でございます。鹿児島から稚内間の一番長い輸送でございますが、三千キロ送りまして約九%程度の開きがあるという
遠距離逓減の修正をいたしたいというふうに考えております。
また、次の物資別の特別
割引でございますが、現在これは七十九品目に対して物資別の特別
割引をいたしております。それによります
割引の額は年間で約十七億円に達しております。すなわち十三億円だけ
割引しているという数字でございます。このうちで
農林水産関係の物資は、品目にいたしまして七十一品目、
割引額が約十五億でございまして、大体現在の特別
割引のうちの八割五分程度のものは
農林水産物資でございます。先ほど申しました等級の問題は、等級できめましたものはさらにこれだけの
割引をするということになっておりますので、その点は
割引額を入れての数字でございます。
割引額を入れて等級できめましたものを、
運賃からさらに割り引いたものはこういうことに相なっておるというのでございます。これは二十八年の
運賃改正のときに種々問題もございまして、暫定的な
措置ということになっておりましたが、この
割引の内容は、大体端的に申しますと、いわゆる
遠距離割引という形になっております。中には若干そうでもないものもございますが、大部分が
遠距離割引で、何百キロ以上は何分という形になっておりますので、私どもの何と申しますか、考えているままに申させていただきますれば、今回
遠距離逓減を修正しながら
遠距離割引を残すということはおかしいじゃないかという理屈もあるようではございますが、今回は各物資に対する
影響を最小限度にとどめたいという意味から、
遠距離逓減の
方針といささか違いますが、
割引は残していきたいというような考えを持っておりますが、まだ確定的にはっきり申し上げる
段階には相なっておりません。これによりますと、額が先ほどの十七億、
遠距離逓減によります修正の増収が約十二億で、差引約五億程度の
割引によります減収の方が多いという形に相なっております。
また
北海道の
割引につきましては、現在十七品目につきまして適用いたしておりまして、その
割引の品目は、内地のものと同じ品目毛あれば、また
北海道だけの品目もあるということに相なっておりますが、同じ品目でありましても、
割引率をある程度高くいたしております。これは
昭和二十八年の改正のときに、非常に青函航路のキロ程を短縮しろというお話がございましたときに、それをいたしませんでしたその
関係上、
北海道につきましては非常に
割引を強度にいたしたわけでございますが、これらにつきましては、私どもの考えといたしましては、一般的な
割引にまで戻していただきたいという考えを持っております。そういたしますと、わら工品が二割、木材が内地並みの一割一分、鮮魚が内地並みの五分ということに相なるわけでございます。
また
制度の改正につきましては、私どもの貨物輸送の
制度は非常に、何と申しますか、複雑でございまして、いろいろ利用者の方々から各種の御要求がございますので、この際に若干の
制度改正をいたしたいというふうに考えておりますが、まず第一に、青函航路のキロ程を短縮いたしたいということでございます。現在四百五十キロでもって
運賃をいただいておりまして、この四百五十キロと申しますのは、何と申しますか、現在鉄道と船舶とを通算いたしまして
運賃を、鉄道の
運賃並みの
運賃でもって計算をしていただいております。旅客の方の
運賃は船と鉄道と別々に計算いたしていただいておりますが、航路の方は
昭和十五年に通算制をいたしまして、その当時船のキロ程を鉄道のキロ程に換算いたしまして、それ以後四百五十キロで
運賃をいただいておりますが、今回それを三百五十キロに改めるというふうに考えております。これをもちまして約九億の、何と申しますか、減収に相なることになります。これによります実例は表に書きましたので、省略させていただきます。
また関門のトンネルにつきましても、今まで三十キロで
運賃をいただいておりましたが、これを六キロ三分の鉄道のキロ程に直したいと考えております。これでやはり年間七億ぐらいの減収に相なる次第であります。これによりまして、たとえば山口県と福岡県、あるいは西
日本と九州との輸送は、二十数キロの、何と申しますか、
運賃計算のキロ当りが減るという形になりますわけでございます。
次に、三番目は重量減トン
制度の改正でございまして、重量減トン
制度と申しますのは、現在荷主の御要求で十トンの貨車をくれという御要求がありましたときに、私どもは、十トンがないからもうしばらくお待ち願いたい、十五トンならございますと申し上げましたときに、いや、十五トンでもと言われましたときには、十トン分で扱いまして、十一トン分の、一割増しの
運賃をいただく扱いをいたしております。これを適用いたしますのは現在百四、五十品目でございまして、
農林水産物資のうちで米、麦、カンショ、バレイショ、リンゴ、ミカン、飼料等七十二品目、約半分が
農林水産物資でございまして、これがすなわち、十トン車の要求に対しまして十五トン車をお使いになったときにも、一割増しの
運賃でいただいておりました。今回この一割増しを廃止いたしまして、十トン車の御請求に対しまして十五トンを差し上げた場合にも、十トンの
運賃でやりたいと考えますので、この際一割の割増しを廃止して参りたいと考えますとともに、新しく、この
制度を
拡充いたしまして、約八十品目についての
制度の拡張をいたしたいというふうに考えております。それでもって約五億程度の減収に相なるかと存じます。
次に、貨物等級と軽量減トンの一部の修正でございますが、貨物等級につきましては、御
承知の
通り、
昭和二十八年に根本的な大改正をいたしまして、今回の
運賃改正の中には貨物等級の改正をほとんど含んでおりません。と申しますのは、貨物等級の改正と
運賃の改訂を一度にやりますと、非常に
運賃の
値上りのひどい物資が出てくるというような
関係からいたしまして、貨物等級につきましては、この問題が片づきましたあと、各界の権威者の方々に集まっていただきまして、等級審議会というようなものを設置いたしまして、約一年か二年時間をかけまして、ゆっくり等級問題について論議し、また新しい等級
制度をきめさせていただきたいというふうに考えております。従いまして、この際は
昭和二十八年の改正のときに
調査ができておらなかった分につきましての若干の改正をいたしたいというふうに考えております。
次に、第五番目でございますが、割増
運賃の計算方法の改正、これも非常にこまかいことで恐縮でございますが、現在いろいろ、冷蔵車を使う、あるいは急送品を輸送するというときには、割増しをいただいておりますが、この割増しを、現在互いにかけ合った相乗法で計算していたものを、和に直すということで、若干の修正をいたしたいと考えております。
最後に、最近非常にひんぴんとして起ります、荷主の都合によりまして、着駅の変更をされることが始終ございます。たとえば東北の鮮魚を東京
市場に送られたものが、東京
市場の値段が安いということで、急にこれを大阪
市場に着駅を変更されるという場合が、最近非常に多うございます。その場合に、荷主の指図によりましてそれを大阪
市場に変更いたします際に、今までは打ち切りの計算のものを、今度は通算するという点で、このことは鮮魚
関係の荷主の方々には非常に便利になる
制度だと考えております。
以上非常にこまかいことを申し上げて恐縮でございましたが、一応今考えております
運賃制度の改正の内容につきましては、以上の
通りでございます。