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1957-05-07 第26回国会 参議院 内閣委員会 第28号 公式Web版

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  1. 国の防衛に関する調査の件 (会議録情報)

    昭和三十二年五月七日(火曜日)    午前十一時六分開会   ―――――――――――――   委員の異動 四月二十七日委員井村徳二辞任につ き、その補欠として前田佳都男君を議 長において指名した。 四月三十日委員横川正市君辞任につ き、その補欠として松本治一郎君を議 長において指名した。 四月六日委員谷口弥三郎辞任につ き、その補欠として井村徳二君を議長 において指名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     亀田 得治君    理事            上原 正吉君            大谷藤之介君            秋山 長造君            竹下 豐次君    委員            植竹 春彦君            木村篤太郎君            迫水 久常君            平島 敏夫君            前田佳都男君            松岡 平市君            松村 秀逸君            伊藤 顕道君            田畑 金光君            永岡 光治君            松本治一郎君            八木 幸吉君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    建 設 大 臣 南條 徳男君    国 務 大 臣 小滝  彬君   政府委員    法制局長官   林  修三君    法制局次長   高辻 正巳君    総理府恩給局長 八巻淳之輔君    行政管理政務次    官       楠美 省吾君    行政管理庁監察    部長      岡松進次郎君    防衛庁次長   増原 恵吉君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 林  一夫君    防衛庁装備局長 小山 雄二君    建設省住宅局長    事務取扱    鬼丸 勝之君   事務局側    常任委員会專門    員       杉田正三郎君   説明員    厚生省引揚援護    局援護課長   小池 欣一君   参考人    日本住宅公団副    総裁      河野 一之君    日本住宅公団理    事       吉田安三郎君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○国の防衛に関する調査の件  (国の防衛に関する件) ○参考人出席要求に関する件 ○国家行政組織に関する調査の件  (住宅公団金岡団地住宅建設に関  する件) ○臨時恩給等調査会設置法案内閣提  出、衆議院送付)   ―――――――――――――
  2. 委員長(亀田得治君)(亀田得治)

    委員長亀田得治君) これより内閣委員会を開会いたします。  委員の変更について御報告いたします。四月二十六日付、成田一郎君及び木島虎藏君が辞任され、その補欠として植竹春彦君及び井村徳二君が選任されました。四月二十七日付、井村徳二君が辞任され、その補欠として前田佳都男君が選任されました。四月三十日付、横川正市君が辞任され、その補欠として松本治一郎君が選任されました。五月六日付、谷口弥三郎君が辞任され、その補欠として井村徳二君が選任されました。以上御報告いたします。
  3. 委員長(亀田得治君)(亀田得治)

    委員長亀田得治君) これより国の防衛に関する調査を議題に供します。本件について御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  4. 秋山長造君(秋山長造)

    秋山長造君 私は核兵器憲法の問題についてごく率直にお尋ねをいたします。まず第一にお尋ねしたいことは、一体日本自衛隊核兵器を持つということは日本憲法違反するものである、こう私考えるのですが、総理大臣の御見解を伺いたい。
  5. 国務大臣(岸信介君)(岸信介)

    国務大臣岸信介君) 核兵器という言葉で用いられている各秘の兵器を、私はことごとく技術的に承知いたしませんけれども名前核兵器であればそれが憲法違反だ、秋山委員のお考えはそういうふうなようでありますが、そういう性質のものじゃないのじゃないか。一方から言えば、われわれは、やはり憲法精神自衛ということであり、その自衛権内容を持つ一つの力を備えていくというのが、今のわれわれの憲法解釈上それが当然できることである。しこうしてそれぞれ科学発達等からやはり兵器発達というようなものにつきましては、科学的の研究をしていかなければならぬという建前におきまして、いつまでも竹やりで自衛するという性格のものではなかろう。しかし今日いわゆる核兵器という言葉で言われておるその中心をなす原水爆のごときもの、これは当然われわれは自衛権内容としてそういうものを持つということは、憲法上許されないということについては、私も異論ないのでございますけれども、今言っておる科学的の技術的の研究なり、発達というものと見合せて、あくまでも憲法精神であるところの、われわれは他から侵略される場合において、その侵略を阻止するという性格のもの以上を持つということは、これは憲法禁止しておることであり、憲法に反することである。そこのにらみ合せの問題でありまして、ただ核兵器と名がっくから一切いけないのだと、こういうことは私は行き過ぎじゃないかと、こう思っております。
  6. 秋山長造君(秋山長造)

    秋山長造君 総理大臣は、核兵器というときわめてばく然としたでたらめな名称のように、呼び名のようにおっしゃるけれども核兵器という以上はおのずからその性格なり範囲などというものはきまったものだと思う。何でもかんでも核兵器といえるものではない、核兵器だから核兵器だ。現に政府自身イギリスソ連アメリカに対して核実験の中止の申し入れをなさったり、あるいは実験禁止についての国際的なアッピールをなさっておる。書面を見ましても、これは当然のごとく核兵器々々々という言葉を使っておられるじゃありませんか。にもかかわらず今ここで質問をすれば、一がい核兵器といってもその内容はいろいろだ、というきわめてぼやかした御返事しかいただけないということは、私はなはだ不満なんだ。その点について政府あるいは総理大臣は、核兵器々々々と口ぐせのように言っておられる。その核兵器というものはどういうものを言っておられるか、その点をはっきりしていただきたい。
  7. 国務大臣(岸信介君)(岸信介)

    国務大臣岸信介君) 私どもが強く諸外国に向って、ことに英、米、ソ連に向ってその実験禁止を要望しておるのは、言うまでもなく原水爆一般に言われておる、今実験をやろうとしておるが、そういうものでありまして、そういうものに対する何については、私どもは強く反対をし、またそういうものを持つということは、日本自衛隊に許されないということにおきましては、私ども秋山君のお考えと同一な考えを持っております。しかしずいぶん誘導兵器研究自衛隊においてもいたしております。しかしその誘導兵器がことごとく核兵器であるかどうかということについては、これはずいぶん議論があるようであります。私はそういうような、今自衛隊研究をしておるような誘導兵器研究をし、あるいはそのうち日本自衛力のために持つというようなことは、これは決して憲法違反しておると、こういうふうには見ておらないのであります。
  8. 秋山長造君(秋山長造)

    秋山長造君 私の質問しておるのは、自衛隊がたとえばエリコン誘導弾なるものの研究をやるということとは別の問題なんです。これは核兵器そのものについての質問をしておる。だから今日まで総理大臣以下核兵器には絶対反対だ、現にマクミラン首相に対する書簡においても、核兵器生産使用及び実験、とにかく一切を禁止すべきだという呼びかけをやっておられるわけなんです。にもかかわらずそういう呼びかけの裏にはただし書きがついておって、ただし自衛範囲内なら、あるいは攻撃的でない、きわめて小型防御的なものなら、日本さえも、世界に例のないと言われておる平和憲法を持っておる、その日本平和憲法からでさえもあえて違反じゃないというようなただし書きがついておるようなことでは、これはもう政府がいかに口で核兵器生産使用実験を行うのをやめろということを世界に訴えられたところで、これはただ今の国民感情に対する私はジェスチュアにすぎぬ、あるいは外国に対しても単なる一時的の、思いつきの感情論にすぎないという結果に私はなるのじゃないかと思うのですが、その点はどうお考えなんですか。端的にお伺いしますが、自衛範囲内ならば、あるいはきわめて小型のものならば、あるいは防御的なものならはというようにワクさえつけば、核兵器を用いてもあえて憲法違反ではないというようにお考えになっているのかどうか。
  9. 国務大臣(岸信介君)(岸信介)

    国務大臣岸信介君) 先ほど来お答え申し上げておりますように、この日本憲法精神自衛ということに限られているのでありますから、従ってこの自衛ワク内において、いろいろな科学的の進歩と申しましても、われわれの持つところの兵器は制約されることは私どもは当然であると思います。そこで今御質問になっております、核兵器とこう称せられているところのものは、今発達の途上にありますので、いろいろな場合を予想しなければならないのでありまして、ただ核兵器という名前がつくから、原子力をどういう形において用いているものでもこれは一切いかぬ、というように窮屈に考えるということは、われわれがむしろ自衛力の増強について量より質ということを考え、われわれはやはりこの近代的科学技術発達に即応した有効な兵器をもって、自衛を全うしなければならぬという見地から申しますと、今日われわれの普通に核兵器考えられている原水爆やこれを中心としたようなもの、これはもっぱら攻撃用性格を持っているものであると思いますが、そういうものを用いてはならないことはこれは当然でありますけれども、ただ言葉だけの観念でもって、核兵器名前がつけばいかなるものもこれは憲法違反と、こういう法律的解釈につきましては、今私がお答え申し上げましたように、その自衛力の本来の本質に反せない性格を持っているものならば、原子力を用いましても私は差しつかえないのじゃないか、かように考えております。
  10. 秋山長造君(秋山長造)

    秋山長造君 私は重大な御発言を今初めて聞くんですが、原子力を用いた兵器でも自衛範囲内ならばかまわない、これはその通りなんですか。原子兵器を用いてもいいのですか、自衛ということならば。
  11. 国務大臣(岸信介君)(岸信介)

    国務大臣岸信介君) 私は科学発達から見ますと、今火薬でいろいろなわれわれが一つ兵器を動かすとか、あるいは原子力潜水艦が動かされるというような、一つのエネルギーとして原子力を使うというようなことが、今後発達についてはやはり予想されるであろうと思います。しかし今言っているように、一つのこの原子力それ自身がその破壊力といいますか、原水爆みたいなような形でなしに用いられる場合もあるんだろう、いろいろな発達の前途を考えてみると、ただわれわれがこの核兵器という、原子力が用いられるとか、あるいは誘導性兵器であるとかというようなことでこれはきめられない。問題はわれわれがあくまでも自衛力範囲であり、自衛力というワクを越えないということが、自衛権範囲を越えないということが憲法精神であって、やはりそういう意味における科学発達というもの、技術発達というものについてそれを一切制約するというものではなしに、自衛権という本来の本質ですべての兵器というものの性格をきめるべきものである、かように考えております。
  12. 秋山長造君(秋山長造)

    秋山長造君 自衛ということを非常に絶対的なものに考えての御答弁なんですけれども、しかし自衛権といえども私は絶対のものじゃないと思う。自衛という認定さえすれば、何でも持てる、何でもやれるというものじゃない。さらにいろいろなやはりそれに制約がかかってくると思う。原子力基本法をごらんになっても書いてある。わが国に関する限りは原子力研究開発及び利用は、すべて平和目的に限定される、こういうことがはっきり書いてある。だからその面からも、原子力利用というものは何にでも使っていいというものじゃないと思うのです。その原子力基本法の第二条の大原則というものは、その自衛ということとどういう関係になるのですか。
  13. 国務大臣(岸信介君)(岸信介)

    国務大臣岸信介君) 原子力基本法原子力基本法として私は解釈していかなければならない問題であると思います。しかし今ここで御質問になっておるのは、憲法九条の関係における憲法論として、私はあくまでも持ち得るところの兵器は、今後原子力以外にもいろいろなものを科学発達として考えなければならぬと思いますが、そういう場合においてわれわれは、やはり自衛権というものが憲法に許されておる範囲であって、あくまでもその自衛を全うするために持ち得る兵器というものは、自衛権という憲法に許されておる範囲内のものでなきゃいかぬ、そういう性格のものでなければいかぬということが言えるんじゃないか。今の原子力基本法の問題とは私はおのずから別の問題である、こう思っております。
  14. 秋山長造君(秋山長造)

    秋山長造君 いや、それは違いますよ。原子力基本法原子力基本法で、日本における原子力研究開発利用は一切平和目的に限定するというワクがはまっておりながら、自衛隊の方は自衛隊の方でおれはそんなことは関係ないのだと、とにかくおれは自衛権解釈次第でどんどん進めていくんだというような、そんなばかなことはないですよ。やはり原子力基本法というものは、日本国憲法というものから出発しておるのです。従って、それが自衛隊で使おうと何で使おうと、とにかく原子力基本法平和目的に限定するというワクというものは、これは日本国に関する限り一切の分野に適用さるべきものだと思う。そんなばらばらに御解釈されては困ると思う。これは一つ考え直しを願えませんか。そういうことでは納得しませんよ。国民も納得しませんしわれわれももちろん納得できぬ。どうですか。
  15. 国務大臣(岸信介君)(岸信介)

    国務大臣岸信介君) 私は今憲法九条におけるところの範囲自衛権で持ち得る兵器範囲を申し上げているわけでありまして、もちろん日本のすべての法律憲法全体から出てきておる問題であることは、これはまあ言うを待ちませんけれども、しかし、原子力基本法にそう書いてあるから、あるいは自衛権本質としてわれわれが当然憲法範囲内において許されておると考えられるものまでも禁止するということは、適当でない。憲法の今の九条のワクの問題でありますから、これはこれとして考えていきたいと思っております。
  16. 秋山長造君(秋山長造)

    秋山長造君 総理大臣は、憲法九条の自衛権というものを非常に抽象的に考えておられると思う。私は憲法というものはそういう抽象的なものじゃないと思うのですね。やはり原水爆あるいはその他の核兵器というものに対する、日本国民のこれだけ深刻な国民感情、これは国民感情も深刻です。しかし同時にその背後には、やはりこういう国民感情の結晶としての憲法九条、平和憲法そのものというものがその背景にあるから、さらにこれだけの国民感情盛り上りがあり、そうしてまた対外的にも対内的にも、核兵器使用禁止という訴えというものが迫力を持ってくるべきものだと思う。そうでなければいくら外国に対して核兵器をやめろやめろと言ったところで、実は日本自身もこれは憲法上は持とうと思えば持てないことはないのだというような抜け道を作っておいて、いくら外国に対してやめろやめろと言っても、これはやはり説得力はないと思うのですね。どうですか。これは国民感情もある。しかし同時にわれわれは世界でただ一つ核兵器被害国でもある。同時にまた世界に例のない平和憲法というものを持っておるのですね。この三つのものが三位一体となってわれわれのバラックに厳然としてあるからこそ、総理大臣としても東南アジアに行きあるいはアメリカに行って、国際的に核兵器生産使用実験禁止というものを強力に呼びかけられる足場というものができているのだと思うのですね。それがなければアメリカだってイギリスだってソ連だってみな自衛範囲内だと、防御的の実験にすぎないのだと、自衛のための実験にすぎないのだと、こう言っているのですから、だから日本がそれはだめだと、防御だろうと攻撃だろうと、およそ核兵器そのものがこれは本質的に反人道的であり、人類に対して破滅的なやはり影響を持つものであるがゆえに、これの禁止を呼びかけているのであって、それにただし書がついたり、いろいろな条件がついたりすべきものではないと思うのですが、どうお考えになりますか。
  17. 国務大臣(岸信介君)(岸信介)

    国務大臣岸信介君) 私は実は原水爆実験禁止に対して強く反対をして、各国反省を求めておりますが、その理由一つは今秋山君の言われた、われわれがその損害を受けたことから生ずる国民的感情一つ理由であることももちろんであります。またわれわれが理想として持っておる人類の福祉の上からいって、人類を破滅に及ぼすがごとき事態にわれわれがあくまでも反対するという、高い人道的見地からのわれわれの理念、もう一つ現実科学的の根拠において、これが実験を続けられていくということが、核兵器原水爆自身使用して、現実人類を破滅せしめる戦争の行為以外にたとえ実験を継続しても、それが空中に残すところの汚染で人類全体に及ぼす影響という科学的のわれわれの理由と、この三つ根拠で、実は私は強く諸外国反省を求めておるわけでありまして、その考えにつきましては少しも変っておりません。私が先ほどから自衛権憲法解釈範囲議論をいたしましても、私の信念及び私の外国に要望しておるところのものはちっとも変っておりませんし、今秋山君が憲法がこうなっておる、日本憲法禁止しておるということが向うに呼びかける一つ理由であるというお話でありますが、私はそうは思わない。私の最も強く要望しておるのは、憲法がどういう規定であろうとも、今申しました三つの点から強く世界に呼びかけ、これらの国々反省を求める当然の理由があると、かように思っております。
  18. 秋山長造君(秋山長造)

    秋山長造君 これは言葉をお返しするようで恐縮ですけれども、これは憲法があるということは理由にならぬとおっしゃるけれども、私は有力な理由一つだろうと思うのです。これは有力な足場ですよ、あなたが外国に訴えられる場合に。外国に対してこの核兵器を持ってはいかぬということを呼びかける以上は、現にわれわれ自身もこれは持つつもりもないし、また日本基本法である憲法でも禁止されておるのだということは、これはあなたの外国に呼びかけられる場合の有力な足場になると思うのですね。それが三文の値打もないようにあなたがおっしゃるのは、私ははなはだ不穏当だと思う。  さらにお尋ねしますが、総理大臣は先だっての二十五日の予算委員会で、湯山君の質問に対して、核兵器というものは、私は今日の憲法解釈において、自衛権の立場からいってこれは憲法上適当でない、こういうように思っておりますと、こういうようにはっきり答弁されているのです。だからこのときの総理大臣のお考えは、これはやはり自衛権といっても、自衛権なるがゆえに絶対なものではない、自衛権にもおのずから限度がある、だからこの核兵器というようなものは、これは自衛のためだとか攻撃のためだとかいうような次元とは、別な次元考えるべき性質のものではないか、そういう性質のものであるがゆえに、ここまでこれは世論が沸騰し、また日本国民あるいはそれを代表して総理大臣世界に対して繰り返し繰り返し訴えられておるのではないかと思う。そうでなければ、この核兵器というものに自衛権というものを持ち込んできたら、これはどこの国だって、みな攻撃のために持っておるということは言ってないのですから、みなそれぞれ防御のために、自衛のために実験をし、自衛のために生産をし、自衛のために使用しようとしておるのだと言っておるのであるから、これは非常に説得力が弱まる。にもかかわらず、これはあくまで憲法解釈論としてはこうだ、実際政策としては岸内閣は持つつもりはないけれども、しかし憲法解釈上は持とうと思えば持てるのだという、そういう逃げ道をこれは作っておかなければならぬ必要がどこにあるのですか。私はそれを疑わざるを得ない。
  19. 国務大臣(岸信介君)(岸信介)

    国務大臣岸信介君) 今普通に核兵器という言葉が用いられております原水爆中心としておるようなものは、これは私は先ほど来申し上げましたように、自衛権内容としてそういうものを持つべきものじゃない、憲法禁止しておると私は解釈しておる。私はそういう解釈をとっておりますし、先ほど来申し上げているように、科学進歩技術進歩からいって、いわゆる核兵器というような言葉で用いられるものには、これはどういうふうなものが出てくるかわからぬという状況にありますので、言葉、ただ核兵器という概念を先にきめちゃってどうだ、今日の原水爆中心としての各国がお互いに競うておる核兵器というようなものは、これは私は憲法禁止されておるということには異存がないのでありますけれども、先ほど申したように、いろんな発達がありいろな研究がこれから進んでいく場合において、いやしくも核兵器原子力が何かに用いられるということであれば、ことごとくいかぬというようなことになるということは、むしろわれわれは自衛権として自衛力を持つ場合においては、量よりも質を高めてそして自衛目的を達しなければいかぬ、われわれが他から攻撃を受け、もし侵略を受ける場合に、国土を守り民族を守っていかなければならない。こういう見地から言いますと、ただ核兵器という名前がつけばこれはいかぬ、というようなことの解釈は適当でないというのが私の考えであります。もちろん今私どもは、一般に言われているような核兵器を持つ意思もありませんし、そういうものは憲法禁止しておる、こう解釈しておることは私も同感であります。しかし、あなたから言うと非常に御不満であろうと思いますけれども、何か核兵器名前がつけば、これは全部いけないのだ、こういうことは少し行き過ぎじゃないか、こう思います。
  20. 秋山長造君(秋山長造)

    秋山長造君 そうしますと、今まで外国に対して抗議を申し入れたり何かしてこられた文書というものは、核兵器々々々という言葉を使っておられるが、それはどういう意味で使っておられるのですか。そういうしごくあやふやな言葉を使って幾ら訴えてみたところで、これは外国に対してききめはない。聞いてみれば核兵器々々々と一がいに言えないというそんな解釈で、イギリスに対してもアメリカに対してもソビエトに対しても、核兵器禁止核兵器禁止と言う。なぜそんなあやふやなことを言われるのですか。もっとはっきり具体的なことをおっしゃったらどうですか。
  21. 国務大臣(岸信介君)(岸信介)

    国務大臣岸信介君) 今申しましたように、英米ソ連等で行なっている実験は、原水爆中心としてこれに類似した実験をやっておるのであります。私どもはこれに対して強く反対するのに、核兵器という言葉を使ったり、あるいは原水爆という言葉を使ったりしておるわけでありますが、今ここで法律論として、憲法解釈論としての正確なる法律論を展開する場合においては、私は核兵器というもののあらゆる場合を考えなければならぬというので、今一般英米ソ連でやっておる実験は、これは核兵器の中でも、原水爆中心にしたそれに類似したところのものであって、これが人類に非常な災害をもたらすものであり、先ほど言ったような理由で、当然われわれはその禁止を求める力はあるのでありまして、憲法上の今の解釈を私はしましたからといって、決してこれらの国々のやっておるところの実験そのもの反省を求めるということについて、ちっとも理由を弱めるものだとは私は考えておりません。
  22. 秋山長造君(秋山長造)

    秋山長造君 私はいろいろ御答弁を聞きましても納得が全然行かない。一体核兵器の問題について、その政策的に持つ持たぬという問題と、憲法上持っていかぬものであるかどうかという問題は、なぜ使い分けなければならぬのか、使い分けの必要がどこから出てくるのだろうかということについて、どうしてもこれは承服できない。一体これは端的に最後にお伺いしますが、今度アメリカへ行かれて原子戦略の問題がこれは必ず持ち出されると思う。そのときにやっぱり総理大臣としては、内々は日本核兵器で武装しようという底意を持っておられるのじゃないか。今それを表明することは国民感情に反するから口には出されぬ、そぶりは見せられぬけれども、行く行くは核兵器日本自衛隊というものを武装しようという伏線があるのではないか。あるいはまたアメリカから原子力自衛部隊の日本駐留という問題もありましたが、こういう問題に対しても必ずしも絶対にノーという返事ができないような、何か伏線があるじゃないか。アデナウアー首相は公然と原子力で武装するということを天下に声明している。公然と踏み切った。あなたはこれはこそこそとやっぱり国民に知らせないで、こっそり原子力武装に対して踏み切らざるを得ないというようなことになってくるじゃないかという、私は非常な不安と疑問を持つのです。その点に対する総理大臣としての態度を、これはもうこの際はっきり国民の前に明らかにしておいていただきたい。
  23. 国務大臣(岸信介君)(岸信介)

    国務大臣岸信介君) 私はかねてアメリカ原子力部隊が日本に駐留するということに対して、はっきり私の所信を明らかにしておりますように、それは拒否するということを従来もとっておりますし、今後におきましてもたとえアメリカへ行っていろいろ話が出ましても、その考え方には違いありませんし、そうして日本自衛隊原子力をもって武装するという考えは毛頭持っておらない、ということを明確に申し上げておきます。
  24. 田畑金光君(田畑金光)

    ○田畑金光君 岸総理の先ほど来の答弁を承わりまして感じたわけでありますが、憲法解釈についても相当また発展して参ったわけであります。その点については後刻伺うことにいたしまして、近く東南アジアを訪問する、あるいは米国に行かれる、これに関連いたしまして、昨日もアメリカの方から三月の参議院の原水爆禁止に関する決議案に対しまして、回答が参っておるわけであります。すなわちその内容は、アメリカは一切の核兵器実験を制限し、これを全廃することの努力を続けているが、核兵器の統制及び処理に関する有効な取りきめがきまるまでは、自由世界の安全保障のために実験禁止するわけには行かぬ、こういう態度でいるわけであります。このことはまた同時に、総理の特使としてイギリスに渡られた、松下特使に対する英国政府の態度も、同様であるわけであります。こういう情勢に対しまして、総理はなお原水爆禁止に関する世界の世論に訴えるという努力をなされる御方針であるのかどうか。ことにまた松下特使からの意見といたしまして、国際司法裁判所への提訴等も勧告されておるように聞いておりまするが、政府といたしましても国際司法裁判所への提訴等も検討中、こういうことも聞いておるわけであります。こういう点に関しまして政府といたしましてはなお今後世界の大国に対し、あるいはまた国連に対し、あるいは世界の世論に対しまして、こういう努力を続けるという御意思であるかどうか。
  25. 国務大臣(岸信介君)(岸信介)

    国務大臣岸信介君) 原水爆等の実験禁止の問題に関しましては、私ども、ことに私は終始一貫してこれが禁止に向ってあらゆる努力を続けて参っておりますが、今までのところいまだその目的を達せないわけであります。今後といえども私はあらゆる方法でこの禁止に向って努力をするつもりであります。司法裁判所の提訴の問題につきましても、いろいろ法律的な検討やその他を十分検討いたしております。また国連に対しましてもさらに有効な方法でこれが禁止に向っての方法を講じて参るという、あらゆる努力を今後といえどもさらに一そう強く続けていきたい考えでございます。
  26. 田畑金光君(田畑金光)

    ○田畑金光君 東南アジアにおいでになりました場合にも、当然東南アジアを六ヵ国回られますが、この六ヵ国の中にはコロンボ・グループ諸国とSEATOに参加しておる国があるわけであります。タイ国にいたしましてもパキスタンにいたしましてもSEATOに参加いたしております。しかしインド、ビルマ、セイロンという諸国はいわゆるコロンボ・グループの諸国であります。従いましてこの二つのグループはそれぞれの国防方針等において異なった形をとっておるわけであります。外交においても同様であります。ことに過般セイロンのバンダラナイケ総理は英国のクリスマス実験を前にいたしまして、セイロンが音頭をとって世界の世論に訴える運動を起したい、こういうこと等も言っておられますが、ネールとも会談されあるいはバンダラナイケとも会談される総理は、こういうコロンボ・グループの諸国とともに、今お話のようなもし決意があるといたしますならば、当然核兵器禁止等に対する世界世論のアッピールということがなされてしかるべきだと考えますが、この点はどうお思いになりましょうか。
  27. 国務大臣(岸信介君)(岸信介)

    国務大臣岸信介君) このたび東南アジア六ヵ国を歴訪するにつきまして、当然この原水爆実験禁止等の問題に関しまして、これらの諸国の首脳部と意見を交換するということになると思います。しこうしてこれらの国々の立場というものは、今御指摘になりましたように相違もしておりますけれども、私ども世界に呼びかけておるこの精神そのものについては、おそらくこれらの国々も私は高い人道的な見地からいって当然賛成を得る問題であると思います。従いまして今回の東南アジア訪問も、やはりこの御指摘のように禁止に対して世界の世論をさらに高めることに役立てるということができれば非常に仕合せだと、こう考えております。
  28. 田畑金光君(田畑金光)

    ○田畑金光君 私は具体的にネールやバンダラナイケや、あるいはウ・ヌー総理とお会いになって、これらの諸国が原水爆禁止に対する世界世論の喚起をやろうという呼びかけに対しまして、総理はこれに応ずる具体的な準備を携行されるかどうか。同時にまた今度おいでになるタイにいたしましても、パキスタンにいたしましてもSEATOに参加しておる諸国であります。ところが五月二日から開かれたNATOの会議を見ましても、すでにNATOの加盟諸国も原子武装に踏み切っておるわけであります。時期はおそかれ早かれの問題にすぎません。ところがこういう傾向はすでにアメリカ世界政策でありまするから、NATOがそれに踏み切った、私は次にはSEATOにくるとこう考えておりますが、そういう質的な違いがあるわけであります。そういうような諸国を訪問されまするが、そういう諸国に対しまして、特にこの原子核兵器の問題あるいは原子核兵器実験の問題等と関連いたしまして、SEATOに参加する諸国に対する態度と、そうでない諸国に対する態度に関しまして、どういう態度でいかれるのか、これをはっきりお聞きしたいと思います。
  29. 国務大臣(岸信介君)(岸信介)

    国務大臣岸信介君) それは先ほど申し上げましたように、私は日本の態度、立場、主張というものは、相手国の立場、態度によってそれで私の方が態度を変える必要は毛頭ないと考えます。のみならず今おあげになりましたNATOやSEATOの中心であるところのアメリカイギリスに対しましても、私どもは真正面からその禁止、中止を、要望しておるのであります。従って向う側のいかんにかかわらず日本としての主張、日本としての考えというものはすべて一貫して私としてはいきたい。そしてまた向うからの働きかけではなしに、私の方から、実はこの問題については、すでに世界のうちにおいて一番積極的にすでに強く意見を主張しておる国は日本でありますから、その日本の立場から、これらの国国に私はむしろ働きかける、ということは言えるかどうかしりませんけれども、私の方から意見を述べて、そして世界の世論の興起に協力してもらうという態度に出たいと思っております。
  30. 田畑金光君(田畑金光)

    ○田畑金光君 それでわかりましたが、原子力基本法原子力研究開発利用の全部門を平和の目的に限りということをうたっておるのであります。そしてこのことは日本のあらゆる原子科学者の総意でもあるし、世論の支持のもとに原子力基本法というものは生れているわけであります。これは原子力に対する日本の大方針だと考えます。で、こういうことを考えて参りましたときに、この方針というものは、少くとも日本に関する限りは原子力というものは平和利用に限るんだ、従って武力にはこれは用いないのだという前提のもとに、原子力基本法は確立されていると考えます。私は先ほどの秋山君に対する答弁をお聞きいたしまして、まことに解釈の混乱を来たしたわけでありますが、少くとも原子力兵器に用いないのだ、あくまで平和目的のために日本は国策として、政治の大方針として進めるのだ、このことは岸総理としては認められてよろしいと考えまするか、どういうようなものでしょうか。
  31. 国務大臣(岸信介君)(岸信介)

    国務大臣岸信介君) 先ほど秋山委員に対する私の答弁は、言うまでもなく憲法九条の解釈問題として私は申し上げたのであります。しかしこの原子力基本法で定められておる根本の、日本において原子力というものはもっぱら平和利用のためにやっていくという基本法は、あくまでもそれを私は重視すべきものである、かよりに考えております。
  32. 田畑金光君(田畑金光)

    ○田畑金光君 さてそういうことになって参りますならば、私はこういうことが疑問として出てきょうと思うわけであります。原子力はどこまでも平和目的のためにもっぱら使うのだということです。そういうことになって参りました場合に、憲法第九条との関係でありまするが、先ほどの御答弁を聞いておりますと、すべての核兵器といわれているものが憲法違反であるという考え方は早急である、こういうような御答弁であったわけであります、岸総理の御答弁を伺っておりますると。しからば憲法第九条の中において許し得る、あるいは認められる核兵器という概念があるのかどうか、こういう問題になってきょうと思います。さらにまたお話を推察いたしますと、原水爆というようないわゆる戦略原爆というものは憲法禁止するところであるが、今後の核兵器の発展等を考えてみた場合に、必ずしもそういう大型の戦略的なものだけではなくして、戦術的な小型核兵器というものも考えられるであろう、これが一つ岸総理の答弁の前提になってきょうと思います。  それからもう一つの岸総理の答弁の前提の中には、攻撃的な核兵器というものは憲法は認めていないが、防御的な核兵器は将来あり得るのだ。従って防御的な核兵器等というものは、憲法第九条の禁止するところではないのだ、こういう解釈に立っておられると思いまするが、核兵器の概念について、総理が考えておられる、いわゆる自衛のため最小限度必要なものは現行憲法では認められるのだ、という場合の核兵器の概念というのはどういう内容のものであるのか、これをはっきりお聞かせいただきたいと思います。
  33. 国務大臣(岸信介君)(岸信介)

    国務大臣岸信介君) なかなか兵器防御用とかあるいは攻撃用とかいうふうに分けることも、これは非常に困難であろうと思います。従ってこの概念としてはある程度にきめられましても、事実問題にあてはめて考えると非常に不明確に私はなると思います。しかし現在いわゆる核兵器といわれ、いわゆる原水爆中心としての今各国が競うてやっているようなものは、これは一般の常識から考えてみましても、その性能から考えてみても、これは主として攻撃目的としておる性格を持っておると思うのです。しかし一方私どもが常に科学発達技術発達におくれないような兵器をやはり研究していくという考え方も、これもわれわれは自衛力の増強の上からいうと当然考えなければならぬところでありまして、従っていわゆる核兵器というものが発達の途上にありますので、今日私の一番心配することは核兵器というこの言葉だけから言うと、どの辺まで核兵器といわれるのか、どういうものがいわれるのかということが明確に概念的にきめ得ないのじゃないか。そこでいろいろなものが出てくる場合において、いわゆるそれが学問上もしくは技術核兵器と名がつくのだということで、これがすべて憲法違反になるという解釈をすることは、憲法解釈としては行き過ぎじゃないか。悪法はあくまでもこの自衛権というものがその九条の本体であります。これを逸脱することは許されないけれども、その範囲内に属するものとして考えるならば、今は原子力が非常な一つのわれわれの新しいエネルギーとして出てきておりますが、さらに学問の研究なり技術研究発達においていろいろなものか出てくるであろうが、そういうことを予想してくるときにおいては、あくまでも自衛権という一つワクというものは憲法がはめておるワクであって、その範囲内にすべてのものを考えていかなければならぬという意味において、まあはなはだ常識的でございますが、主として攻撃に用いられるもの、もしくは攻撃用考えられるようなものは、これは持てないことは当然である。しかし防御というような意味において、その防御を全うするためにはこの程度のものは考えておかなければ、とても一般攻撃兵器発達その他によって日本への侵略を防ぐことはできないというような場合も私は起ってくると思います。そういう意味において憲法解釈としてはそういう場合において、たとえただ単に核兵器といわれたから、これはもう一切いけないのだというふうに解釈することは憲法解釈としては適当でないだろう。しかし私はこの原子力基本法があり、これは今の憲法の何のもとに作られておるので、日本においてはこの原子力というものをもっぱら平和利用研究するという一つの方針が立てられております。しかし、これは私は憲法範囲内においてそういうふうに解釈し、そういうふうに定めることは、一つの立法政策の問題であって、そういう立法政策によってできておる以上は、その法律に従って現在日本においては原子力基本法に基いて、もっぱらこれを平和利用のために研究していかなければならぬということは当然であると思います。しかし、憲法九条の解釈としての本旨というものは自衛権であり、そういう範囲というものは、今申したようにただ原子力を何らかの形において用いられている兵器は一切いかぬ、というように解釈することは行き過ぎじゃないか、こう考えております。
  34. 田畑金光君(田畑金光)

    ○田畑金光君 岸総理の今の御答弁は、しどろもどろです、全く体をなしていない、こう申し上げたい。ことにただいまの答弁を伺っておりますと、自衛権の名において学問や科学発達に応じていかようにしても自衛権の裏づけある力を持てるような御解釈でありますが、しかし、一方第九条には明確に陸海空軍その他の戦力、これを保有しないとうたっております。またがっての吉田内閣のもとにおける自衛力解釈は、いわゆる近代的な戦争遂行の能力を持たぬ限りにおいては憲法違反に該当しない。その近代的な戦争遂行の能力は何かというと、ジェット戦闘機と核兵器であったわけであります。原水爆であったわけであります。お話を承わっておりますと、将来の学問や兵器発達等考えた場合に、いわゆる核兵器の中でもこの憲法禁止する戦力概念から、はずされるものがあるような解釈でありますが、むしろ兵器発達とかあるいは技術進歩というものは、ますます小型化して、しかも大量殺戮の目的を最高限に強化する、それこそ今後のやはり武器の発達であり、技術進歩であろうと思います。ますます科学兵器発達というものは、核兵器中心として憲法禁止する戦力の方向に強化発展していくことは明らかなんです。むしろ岸総理の答弁の方向とは大よそ異なった方向に発展していくことをわれわれは予測しているわけなんです。そこで私は第一にお尋ねしたいことは、吉田内閣のもとにおいて、元の木村防衛庁長官がお答えになりました近代的な戦争遂行の能力、すなわち原爆とかジェット機を持たぬ限りにおいては憲法違反にならないのだ、というこの解釈を一歩飛躍されておると思いますが、その点はどうでありましょうか。それからもう一つ私は岸総理に考えていただきたいことは、四月の十二日に西独の科学者がアデナウアーの原子武装宣言に対しまして一つの声明を発した、その中にこういう一項目があります。現在の戦術的原子兵器がいかに小型であっても、その一発の破壊力はかつて広島に投下された一発に相当することを思えば、その国民に及ぼす害悪については区別はない、こう述べております。それからもう一つ防衛庁の方で作っておられる防衛年鑑一九五七年版、その中にこういうことが書いてあります。いわゆる総理の、攻撃的な原爆と防御的な戦術兵器の区別についてでありまするが、「一般に比較的小型の原爆をもって主として戦場において武装兵力や軍事目標に限定して使用するのを戦術的使用といい、広く後方地域において軍事目標や戦略目標(例えば交通要点、軍需生産工場、政治中心都市等)に対して使用することを戦略的使用というように解せられているが、これも決して厳密なものではない。」実際は、今日の兵器進歩は、事実上戦略原爆と戦術原爆との区別をあいまいにして、戦争哲学も混迷の状態に陥っておる、はっきりこううたっております。少くとも核兵器に関する限りは、戦略兵器にいたしましても、戦術兵器にいたしましても、その境はあいまいである。防衛庁のこの一九五七年版にちゃんとうたってあるじゃありませんか。西独の科学者も明白にうたっておるじゃありませんか。わが国の原子力基本法にもはっきりと、わが国の原子科学者は将来このことあるを予測いたしまして、平和的目的に限るということをうたっておるじゃありませんか。もし学問あるいは真理に忠実であるといたしますならば、総理の先ほどのような答弁というものは許されないと考えております。私は、もう少し謙虚に科学者の教え、学問の発達に忠実に従われる方が、これはやはり政府のとるべき態度だと、こう考える。憲法を堂々と改正して、この戦力規定をはずして、それから、今言ったような解釈をなさるのが当然でありまするが、そうでなくして、現行憲法のもとにおいてこのようなことをやるということは、私は許すべからざる憲法を侵すものであり、国民に対し法律を尊重しろと言っても、国民法律を尊重するわけに参らぬと考えております。また、私の質問に対しまして、アメリカに行っても、東南アジアに参りましても、あるいは世界の世論に対しましても、今後とも原水爆核実験禁止を訴えるということを言われましたが、やはりその訴えには、道義的な力を持つことによって、初めて世界の世論もこれに耳を傾けると考えております。私は、道義的な立場を日本があくまでも堅持することが正しいことだと思う。すなわちそれは、憲法を守ることだと思う。憲法解釈に忠実であることだと思うのです。総理の先ほどの答弁というものは許されません。もう一度明確に御答弁願いたいと思います。
  35. 国務大臣(岸信介君)(岸信介)

    国務大臣岸信介君) 憲法九条第二項の戦力というこの解釈の問題でありますが、われわれが自衛権があり、この自衛力を持つという場合において、自衛のために必要な最小限度の力、実力を持つということは、これは当然であって、これは憲法九条第二項の禁止しておる戦力に入らぬと私は解釈をいたしております。それなら、自衛のために必要な最小限度の実力とは何ぞやということになりますというと、それは私は、先ほどから申しておるように、やはり科学発達や、いろいろな技術発達を取り入れていかなければならぬということは、これは当然であります。私は、日本において憲法がそう解釈があるからというて、それじゃ原子力基本法を無視して、これを平和的利用以外に研究し、そうしてこれを用いていこうというような政策をとるものでないことは、これは言うを待たないのです。私のさっきから申しておるのは、憲法九条の解釈論を言っておるのであって、日本がどういう方針で進んでいくという原子力に対する態度というものは、これは原子力基本法がはっきりきめておるのであって、私は、それを無視して、そういう兵器を持つとか、そういう兵器を、われわれが原子力をそういうふうに用いるということを今やるというようなことを、私は申し上げておるわけじゃありませんで、従って政策としては、あくまでも、日本がこの原子力というものを平和的利用にもっぱら用いるようにいわゆる研究をし、それに精進するということは、これは当然であります。ただ、先ほど来の問題は、憲法九条の解釈として、それが憲法違反だという解釈に対しましては、今言っているように、自衛のために必要な最小限度の実力を持つということは、これは私は、憲法九条が禁止していない。これは、この自衛力そのものを持つ、そういう実力を持つということは、一切憲法違反だという解釈をされて、たとえ竹やり一本でも持つということはいけないのだという見解をする人と、われわれとの相違はあります、そこに。しかし、その自衛権を許され、自衛のための最小限度の実力というものは、私は、今、学問の発達技術発達によって、内容的には変ってくるこう思っております。
  36. 八木幸吉君(八木幸吉)

    ○八木幸吉君 私は、政策と法律を分けて、まず法理論から伺ってみたいと思います。第一は自衛隊憲法第九条との関係についてお伺いをいたします。  歴代内閣の憲法解釈は、相当の変遷があったと思います。第一に、吉田内閣は、第九条第一項は自衛戦争を否定していないが、第二項で自衛戦力を否定しておる。そうして戦力の解釈としては、近代戦を有効適切に遂行し得る総合的実力、こういう解釈をしておられました。鳩山内閣に至っては、自衛のための必要な相当程度の実力を持つことは、憲法に反するところでない。また、自衛隊法が国会を通過して、国会が憲法違反法律を通すわけはないから、これは違憲でない、こういうような解釈で、しからば、違憲の審査権は、最後には国会にあるか、最高裁判所にあるかという問題まで発展したのでありますが、この点はしばらく別問題といたしまして、さて、岸内閣憲法第九条の解釈を伺うのでありますが、第一に、憲法第九条第二項の「前項の目的」、これをいかように解釈されますか。侵略戦争を指すとお考えになりますか、あるいは第九条前段の「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」、これを受けておるとお考えになりますか。
  37. 国務大臣(岸信介君)(岸信介)

    国務大臣岸信介君) やっぱり言葉通りですよ。第一項の全体の趣旨を受けておると、こう素直に解釈するのが適当じゃありませんか。
  38. 八木幸吉君(八木幸吉)

    ○八木幸吉君 そういたしますと、第二項は、侵略戦争に関連する規定であるというふうな戸田理論や清瀬理論じゃなくて、その問題に関する限りは、吉田内閣と同じお考えであると思います。そこで、第二項の陸「海空軍その他の戦力」、この戦力をいかようにお考えになりますか。
  39. 国務大臣(岸信介君)(岸信介)

    国務大臣岸信介君) 戦力という言葉自体から申しますと、おそらく戦争を遂行するに必要な実力といいますか、そういう解釈になるだろうと思いますが、先ほど私が申し上げましたように、一項が自衛権というものを否定しておらない、自衛ということは当然である、従って、それを裏づける、その自衛のために必要な最小限度の実力というのは、二項で禁止しておる戦力には入らない、こう解釈すべきではないかと思います。
  40. 八木幸君(八木幸吉)

    ○八木幸君 そういたしますと、岸内閣では、ここで禁止しておる戦力のうちには、自衛のために必要最小限度のものは入らない、つまり自衛のために必要最小限度のものは戦力でない、こういうお考えですか。
  41. 国務大臣(岸信介君)(岸信介)

    国務大臣岸信介君) 二項にいわゆる禁止しておる戦力ではないと、こう思っております。
  42. 八木幸吉君(八木幸吉)

    ○八木幸吉君 そこで、二項の末尾に、交戦権の規定がございますが、これは何のために入っておると御解釈になりますか。
  43. 国務大臣(岸信介君)(岸信介)

    国務大臣岸信介君) 国際法上いわゆる交戦権に属する国の活動というものは、いろいろ範囲が広いだろうと思います。あるいは戦争中に船舶を拿捕するとか、いろいろな交戦権の範囲に属すると国際法上考えられている行動があると思いますが、私は、この自衛ということは、あくまでも、われわれが他から急迫不正の侵害をされた場合においてこれを阻止するということに限られているのでありまして、いわゆる広い国際法上でいわれているような交戦権というものをいかなる場合においても持って、交戦権として許されているような一切の行動をやるということは許されない、こういう趣旨に解釈すべきものだと思います。
  44. 八木幸吉君(八木幸吉)

    ○八木幸吉君 ただいまの御説明は、交戦権に対する政府解釈をお述べになったのでありますが、なぜ交戦権放棄の規定がここにあるかということに及びますと、吉田内閣当時の法制局長官の御答弁では、つまり第九条第二項の戦力放棄の規定のだめ押しのための交戦権放棄の規定であって、二重にわが国は、陸海軍はもちろんのこと、その他の戦力も持たないということをエンファサイズするためのこれは規定であると、こういうふうに御説明になったのであります。現内閣のこの第九条に対する御解釈では、自衛のための必要最小限度の戦力は持ち得るのだ、しかもその戦力は、第九条第二項の戦力には該当しないのだ、こういうふうな御答弁でありますが、その必要最小限度の戦力がだんだん発展して参りまして、大型の原水爆はともかくとして、戦術的の核兵器等もやはり必要最小限度の戦力の中に包含されるのだ、こういうふうに先ほど来の御答弁を伺っておりますと、論理の帰結として当然そうなるのだと思いますが、必要最小限度の戦力であれば、戦術上の兵器であっても持ち得るのだ、政策論は別といたしまして、法理論的には持ち得るのだと、こういうふうに現内閣としてはお考えになるのだと思いますが、いかがでございましょうか。
  45. 国務大臣(岸信介君)(岸信介)

    国務大臣岸信介君) 第二項の交戦権を持たないということは、むしろ第一項において、自衛権は持っておるけれども、これに対してわれわれの方から、積極的な戦争は一切国際紛争を戦争によって解決するというようなことはこれを放棄してある、これをむしろ裏づけるような意味解釈すべきものであろうと思います。そうして内容的には、先ほど申したように、いわゆる国際法上でいっている交戦権に属するところの行動が禁止されておる。で、私はあくまでも、先ほど来申し上げているように、この日本憲法九条は、本来、国として許されておる自衛権という限られたこの限度において、われわれが持ち得る一つの実力は否定していない、その実力というものは、今申したように、あくまでも自衛のために必要な最小限度のものでなければならぬ、こういう解釈で一貫しておるつもりでございます。
  46. 八木幸吉君(八木幸吉)

    ○八木幸吉君 ちょっと観点を変えますが、今の駐留軍の装備、人員はどのくらいになっておりますか。
  47. 国務大臣(小滝彬君)(小滝彬)

    国務大臣(小滝彬君) 日本におります駐留軍の装備は、在来の兵器でございます。御承知のように、オネスト・ジョン、ナイキを持った部隊はおりまするけれども、その他すべて在来の兵器でありまして、全体の数は、海のものを加えますと、大体十万という程度でございます。
  48. 八木幸吉君(八木幸吉)

    ○八木幸吉君 駐留軍は当然軍隊だと思いますが、いかがですか。
  49. 国務大臣(小滝彬君)(小滝彬)

    国務大臣(小滝彬君) その通りでございます。
  50. 八木幸吉君(八木幸吉)

    ○八木幸吉君 駐留軍の装備と自衛隊の装備と比較して参りますと、内容の詳しいことは私はわかりませんが、駐留軍以上、少くとも人員の点におきましては、日本自衛隊はあるわけなんです。しかも今、防衛庁長官のお話になりましたように、駐留軍は当然軍隊であると、こう考えますならば、これよりも多くの人員を擁し、かつ同等程度以上の装備、編成を有する日本自衛隊というものは当然軍隊である。従って、憲法第九条第二項の陸海軍の概念に相当するものである、かように考えるのでありますが、総理はいかがでありますか。
  51. 国務大臣(岸信介君)(岸信介)

    国務大臣岸信介君) アメリカの駐留軍が軍隊であるというのは、必ずしもその数が多いから軍隊であり、少いから軍隊でないとかという問題じゃないと思います。私は、国際法上完全に交戦権を持っており、いわゆる軍隊としての、たとい数は少くとも、軍隊としての性格を国際的にもはっきりしておるものだと思います。これに反して、日本自衛隊というものは、数はあるいはアメリカの今駐留しておるものよりも多いでしょうが、あるいはその装備等につきまして、装備がどうであるかということは別として、先ほど申したように、憲法第九条第一項において限られた性格を持っておるものでありまして、その行動につきましても、いわゆる国際法上の軍隊のような広い活動のできない、交戦権を持たないというような制限もございますし、従って、これをいわゆる軍隊とは、駐留軍が軍隊であるからといって、これと比較して、これを軍隊ということは適当でないと、こう思っております。
  52. 八木幸吉君(八木幸吉)

    ○八木幸吉君 交戦権を問題にして、軍隊でないというふうなお話でありますが、これは少しくどうも詭弁であると私は思うのです。人員と装備が同じであれば、当然憲法第九条第二項の陸海空軍に相当するものであると、かように私は考えて、自衛隊そのものは憲法違反であると、こう思うのでありますが、交戦権は、これは日本が戦力を保持しないための、いわゆる先の佐藤法制局長官言葉でいえば、だめ押しの規定であるのでありまして、交戦権を除いて、第九条第二項の前半の方からいえば、当然自衛隊は、今のお話の駐留軍と比較いたしましても陸海空軍の中に包含される。従って、憲法違反である、こう私思うのでありますが、その点を重ねて伺いたいと思います。
  53. 国務大臣(岸信介君)(岸信介)

    国務大臣岸信介君) 今申し上げましたように、私は、あくまでも日本自衛隊というものは、憲法第九条の制約のもとに置かれておる一つの実力であって、従って駐留軍と比較してみて、駐留軍自身アメリカの軍隊であることは、これは言うを待たないのでありますが、それと比較して、数がどうであるか、あるいは力がどうであるかということで、直ちに自衛隊本質を、それだから軍隊だと、こう解釈するのは適当でないという、先ほどお答え申し上げました見解を私は依然として考えるものであります。
  54. 八木幸吉君(八木幸吉)

    ○八木幸吉君 自衛のため必要最小限度の概念の中に、戦術的な核兵器は入るとお考えになりますか。
  55. 国務大臣(岸信介君)(岸信介)

    国務大臣岸信介君) 今日いっているいわゆる戦略的兵器とか、あるいは戦術的兵器というふうに分けておりますけれども、私は先ほども申したように、核兵器でもって日本自衛隊を武装する意思も持っておりませんし、また、そういうことをする考えはありませんか、しかし、ただ核兵器という言葉がつけば、いかなる場合においても、すべての核兵器憲法九条が禁止しておる戦力であるというふうに解釈することは、憲法解釈としては、私は行き過ぎである、こういうふうに思っております。
  56. 委員長(亀田得治君)(亀田得治)

    委員長亀田得治君) 八木さん、ちょっと質問を集約して……。
  57. 八木幸吉君(八木幸吉)

    ○八木幸吉君 イギリスの新国防計画は、原子兵器に踏み切っております。アメリカも、装備計画の重点を原子兵器にかけておりますし、NATOの理事会でも、西欧諸国としては、防衛的にやはり戦術的近代兵器を保持しなければならぬということを言っておるのでありまして、政策論としては別でありますけれども、法理論として、自衛の最小限度の必要を政府が認めるならば、またその必要の実力を持つことを憲法が許すというならば、戦術的の核兵器を当然持ち得ると私は考えるのであります。それを今、総理は、非常にあいまいな言葉答弁をしておられますけれども、このたとえば八インチ砲のすでに原子兵器もできておる、あるいは百五ミリの榴弾砲もできておるというふうにいわれておるのでありますから、これは日本防御の最小限度必要というところへ重点を置けば、当然戦術核兵器日本が持たなければ、防御の完璧は期せぬというならば、これは私は当然のことであると思います。また、安保条約で、米軍がいかような軍備をするということに対しても、日本は注文をつけられないという現状であるなれば、米軍がかりに沖縄に原子部隊を持って参りましても、あるいは戦術的の核兵器を持って参りましても、日本憲法上、これはノーということは言えないというのは、私は法理論上当然であると思います。そこで私は、岸総理行に伺いたいのでありますが、日本日本を守るという最小限度の自衛の完璧を期するために、戦術核兵器を当然持つということに踏み切るか、あるいはどこまでも国民感情、人命尊重の人道的な立場からいって、絶対に、多少国防上に欠陥があるとしても、原子兵器を戦術的のものでも持ち込まないということに踏み切るか、この二つのどちらかに決心をしなければ、両方とも危ない、中途半端なものになってしまう、こう私は考えるのであります。もしも総理が、人道上の建前から、また国民感情上の建前から、法理論はともかくとして、政策的に、戦術的の核兵器でも、たとえ世界兵器発達に目をおおうても、日本に持ち込まないという固い決心かおありになるならば、安保条約の中にこれを書き込むか、あるいは別の公文書にするか、アメリカにおいでになったときに、原子核兵器日本並びに沖縄に持ち込まないということの書面上の確約を得てこられる必要があると思います。これは、非常に私は重要な問題と思いますので、国防を犠牲にするか、人命尊重の立場に立つか、どちらに踏み切るお考えであるかということを明確に伺いたいと思うのであります。
  58. 国務大臣(岸信介君)(岸信介)

    国務大臣岸信介君) 私は、憲法解釈の問題と、今の政策の問題とは、また別に論ぜなきゃならぬと思います。憲法解釈論として先ほど来申し上げたことは、将来の発達する場合において、現に、あるいは過去において、先ほど御指摘になりましたが、ジェット機による飛行機は持たないというような、これは、今日の観念からいって、ジェット機になっていくというのは、当然そういうことに私はなっておると思うのです。従って、憲法上の解釈としての議論は別として、政策の議論について――政策論として、私自身の信念は、あくまでも、この原子力部隊を日本に駐留せしめる、あるいは、たとえ戦術的兵器であっても、それでもって日本自衛隊を武装するという意志は私は持っておりませんから、そういう意味において、政策論として、そういうものを持たないということは、私の信念でございます。
  59. 八木幸吉君(八木幸吉)

    ○八木幸吉君 法理論は別としてという意味は、憲法では差しつかえない、こう了解してよろしゅうございますか。
  60. 国務大臣(岸信介君)(岸信介)

    国務大臣岸信介君) 憲法論としては、先はど申しましたように、核兵器というものが非常に不明確でありますけれども、現在主力になっておる原水爆や、あるいはこれと同様のような性格を持っておるところのものは、私は、これはもっぱら攻撃的な性格を持っておるものであって、そういうものは、自衛隊自衛権――限られた自衛権という範囲に属せないから、憲法禁止しておる。しかし、核兵器という観念のうちに、いろいろな兵器が将来想像できるが、そういうもの一切に核兵器という名前かつけば、これはもう憲法違反だという解釈は私はとらない。しかし、今の日本の立場から申しまして、国民感情あるいは人道的立場から申して、政策論としては、そういうものを武装しない、こういうことであります。
  61. 伊藤顕道君(伊藤顕道)

    ○伊藤顕道君 時間がないそうですから、一点だけ問題を集約してお尋ねいたします。総理の先般の言明と、本日の御答弁を伺っておりますと、少くとも核兵器については、根本的に大きな食い違いがあるということを認めざるを得ないわけです。いやしくも一国の総理である、権威ある総理が、一たん国会で答弁されたことを、あとで曲げて解釈されるというようなことは、きわめて遺憾とするところであります。そこで、もし岸総理が、きわめてあいまいな政府の統一解釈を、これを認めて、みずから核兵器は持たないという道義的立場をくずしたならば、このままでアメリカに行かれるということは非常に危険だと思うわけです。さらにまた、日ごろから原水爆禁止を強く主張しておられる子の立場とも矛盾して相容れない。そこで岸総理は、即刻さきの言明の線まで立ち戻るべきであろうと思うわけです。この点について、確たる御答弁をお願いいたします。
  62. 国務大臣(岸信介君)(岸信介)

    国務大臣岸信介君) ただいま八木委員に、私は明確にお答えしたつもりでありますが、憲法解釈論としては、過般防衛庁長官か政府の統一的解釈であるとして答弁申し上げたことを、私はやはり憲法解釈論としてはとるものであります。しかし、政策的立場――政策論として、それではこれを持ち込むというようなことを、私は従来の国会において答弁しておることを曲げておることは毛頭ない。また、私自身の信念から申しましても、そういう点は少しも、私が従来答弁しておることを曲げておらないつもりでございます。
  63. 松本治一郎君(松本治一郎)

    松本治一郎君 私は、きょう登院の途中に、ある人からこういうことを言われた。岸首相はタヌキとキツネをまぜたような答弁をする、しっかりやってくれ、こういう国民の声を聞いたのです。きょうここで、同僚議員の質問に対する答弁を聞いておると、その人の言葉が当っておる。キツネとタヌキをごっちゃにして答弁をしておるようなふうに聞えた。しかし、その答弁に対して、一々私は拾うて質問したいのでありますが、時間がない。だから岸君は、きょうの内閣委員会の速記録をよく読んで、そうして考え直してもらいたいと思う。矛盾だらけです。岸君に先日こういう質問をした同僚議員がある。あなたが陰謀と欺瞞とおどしによって、国民を戦争一本にかり立てたあの戦争は負けた、そしてあなたは、その当時の閣僚であった、それに対してどういう責任を感じておられますかという質問に対して、あなたはこう答えられておりますね。確かに私は、あのときの閣僚であった。閣僚であって、あの戦争に巻き込まれた。それを阻止し得なかったことについては、大なる責任を感じておる。その罪の償いとして、民主日本、平和日本を打ち立てるために努力いたしたいと考えておりますという答弁をしておる。その通りですか。そうですね。ところが、今度アメリカに行かれる。あなたが今度アメリカに行かれるのは、アメリカとどういう約束をしに行かれるのか、それを聞きたい。
  64. 国務大臣(岸信介君)(岸信介)

    国務大臣岸信介君) 私がアメリカを訪問する目的につきましては、しばしば申し上げておりますように、いかなる約束をしに行くかというお問いでありますけれども、決して約束をしに行くつもりではございませんで、日米の将来あるべき友好関係の基本的な考え方について、率直に私の考えを述べ、またアメリカ側の意見を聞き、いわゆる何かの交渉という意味で参るのではなしに、意見の交換に参るつもりでございますから、今御質問がありましたが、どういうことを約束しに行くのかという意味の、約束を取りつけにいくということではございません。
  65. 松本治一郎君(松本治一郎)

    松本治一郎君 あなたのお話は信じられないというのが世評であります。世間では、今度アメリカに行かれるのは、軍事同盟を結びに行くのではないかということは、国会においての質問応答、憲法九条に対するところの解釈など、どうもそのくさみが強い。日本憲法九条をうたって戦争放棄をしておる。しかし、放棄していながら、あなたは自衛々々と言われる。政治的に外交的に、この問題についての自衛権は捨てていない。今の世界は平和を進めておる。国と国との話し合いは、政治的に外交的に、自衛権をもって話が進められると思う。それを考えないで、ただ、どこかの国のしり押しによって、憲法九条の解釈を曲げてやられておる。そういうことをあなたに聞いたところで、そうじゃありません、今申し上げた通りと言われるだろう。しかし、あなたは、憲法の前文を読まれたことがありますか。九条をはっきり記憶されておりますか。九条は、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」  こううたっておるということはわかるでしょう。これを文字通り解釈するならば、あなたのような答弁はできない。私は、昭和二十八年、九年、三十年、三十一年、四カ年にわたって外国を回ってきた。この旅行を私は世界平和行脚旅行と称しております。どこに行っても、一番に聞かれることは、日本はまた再軍備するのか、また戦争する日本を作るのかと。あなたは今度東南アジアに行かれる。第一番にそれを聞かれると思います。そうすると、この国会において答弁されたことがぐっと響くと思う。行ってちゃんと聞いて下さい。世界はそういう日本を求めておるのじゃない。日本の人たちが外に出にくいのは、再軍備する日本はこわいから入れないという声が強いのであります。今度東南アジアに行かれ、それをよく調べ、よく聞いて帰ってもらいたい。私は、きょうは少し長く話したかったのでありますが、どうも委員長が時間がないぞというような顔つきをされておるから、この程度にいたしますが、終りに、あなたは先日伊勢神宮に参られましたね。のりとがあげられた。あれは正気ですか。もうすでにあんなものは試験済みだ。あの負け戦争の最中、最後の年の三月の衆議院の予算委員会、午後三時ごろだったと思います。あの和服を着て、つねに白たびをはいている深澤豊太郎という議員が、委員長に緊急発言を求めまして、大へんだ、今、天皇陛下は伊勢神宮にこっそり参られた。恐懼の至りだ。そうして伊勢神宮に天皇が行って、間もなく伊勢神宮は爆破された。天皇が東京へ帰ってきて、宮城に入ろうとすると、宮城がやられた。生き神様でなかったですね。そういうところへ行って何をされるか。それよりも、この平和憲法の記念日の五月三日には。政府としては何の催しもしていない。あんな気違いじみたのりとを聞きに行くよりも、平和日本を打ち立てるために、憲法記念日くらい大々的にやるべきだと思う。やらなかったことについては、また何か考えておられるか、それを一つ聞いておきたい。
  66. 国務大臣(岸信介君)(岸信介)

    国務大臣岸信介君) 私がアメリカへ行ったら、必ず軍事同盟をして来るというような考えでおるというふうに国民考えておるという言葉でありましたが、これは、私ははっきり申し上げておきますが、そういうことは絶対にございませんし、帰ってきて、私がその言葉を裏切るかどうか、これが実質的に明瞭になる問題だと思います。絶対にそういうことはございません。それから、伊勢神宮にお参りしたことにつきましてのお話でございますが、これは人、人の気持ち……、その際に、いろいろ新聞記者からも聞かれたのですが、こういうことを慣例にするつもりかという話がありましたけれども、私は、慣例にするつもりは毛頭ない。ただしかし、こうしてお参りの人がたくさんあるように、私も国民の一人としてお参りするということは、これは私は、自分の国民感情一つの現れとして、私がそういうことをする。これを、総理になったから必ず行かなければならぬ、どうしてもしなければならぬという一つの慣例にする意思は毛頭ない。しかし、私自身は、お参りするという気持があるから、こうしてお参りするのだということを申したわけであります。そういうつもりで実はお参りしたわけであります。
  67. 松本治一郎君(松本治一郎)

    松本治一郎君 参詣されるのは個人の勝手なんです。ただ、私が問いましたのは、五月三日ですね。その日は平和憲法の記念日です。それに対して、何も政府としてはやらなかったことについて、どう感ぜられておるかということを聞いたのです。
  68. 国務大臣(岸信介君)(岸信介)

    国務大臣岸信介君) 五月三日の憲法記念日に、政府として何か催しをすべきではないかということにつきまして、政府部内におきましても研究をいたしました。することもけっこうでありますが、しかし、過去において、最初三年くらいたしか続けられてやられたのでありますが、その後やられておらない慣行になっております。一方、憲法に関しましては、いろいろ改正論及び平和憲法擁護論の二つの議論もございまして、政府が大々的にやるということにつきましての今お話がございましたが、そういう要望につきましても、いわゆる平和憲法擁護連盟の方から御要求もございました。しかし、いろいろな政治的の影響等も考慮しまして、従来、この数年やっておらないのであるから、やらない方が適当であろうということでやらなかったのでありますが、これについては、いろいろ私は、御批判があり、御意見は、私ども考えたことと、すべての人が全部同じようにお考えになるとは実は考えておりませんけれども、もちろん、この問題を取り上げて、十分検討した結果としてやらないことに決定をいたしたわけであります。
  69. 委員長(亀田得治君)(亀田得治)

    委員長亀田得治君) 委員会は、これにて暫時休憩いたします。    午後零時四十二分休憩    ―――――・―――――    午後二時六分開会
  70. 委員長(亀田得治君)(亀田得治)

    委員長亀田得治君) それでは、休憩前に引き続き、委員会を再開いたします。  国家行政組織に関する調査のうち、行政監察に関連して、住宅公団金岡団地住宅建設に関する件を議題といたします。  本件に関し、日本住宅公団副総裁河野一之君、同理事吉田安三郎君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  71. 委員長(亀田得治君)(亀田得治)

    委員長亀田得治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。  本件に関し御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  72. 秋山長造君(秋山長造)

    秋山長造君 私は、前三回の委員会におきまして、金岡団地の問題について、各当局に対してそれぞれ若干の質問をしてきたんですが、その結果、建設省、それから住宅公団並びに行政管理庁において、それぞれ金岡団地の現地について調査結果をまとめられて、われわれの手元へもお配りいただいたわけです。これらを詳細に読んだわけですが、その中でも、行政管理庁の監察の結果を拝見してみますと、さらにいろいろ、まだ論議の尽されていなかった新しい問題点が幾つか出てきているわけなんです。で、それらの点について、二、三取りまとめて、簡単に一つ関係当局に対してお尋ねをしたいと思います。  この行政監察の結果によりますと、従来日本住宅公団では、用地の買収に当って、土地評価審議会というものを設けて、そこで買収価格その他について審議決定をやっておられるようですが、この組織が、住宅公団の内部の人だけで組織されておるために、必ずしも適正な結論が出ておらないということを指摘されておるわけです。この点について、公団の河野副総裁はどのようにお考えになっておるか、まずお尋ねしたい。
  73. 参考人(河野一之君)(河野一之)

    参考人(河野一之君) お答え申し上げます。公団の中で作っております土地評価審議会は、これは本所と支所と両方あるわけでございまして、軽微なものにつきましては支所、それから本所におきましては相当の大団地、あるいは価格も相当単価の大きいものについてやっております。これは、御指摘のように、内部の職員、本所でありますれば理事、支所でありますれば、担当の部長ということでやっておるのでありますが、これは、名前は評価となっておりますが、評価の問題でなしに、その団地が適当であるかどうか、つまりいろいろな地勢もございますし、それから設計上のいろんな点がございますので、そういった点とあわせて、宅地関係あるいは建築関係、その他単価の問題では経理関係、そういうふうな仕組みでやっているわけでございます。それで、もちろん、一番問題になりますのは、価格がどうであろうかということでございますが、この仕組みといたしましては、近傍類地の価格というものを全部、最近のものを調べて参ります。それから、固定資産税の評価額というものも調べるわけでございます。ただ、この外部の方を入れて、御評価願いますこと自体につきまして、いろいろ内部でも、発足の当時から多少議論がございましたのでありますが、御承知のように、土地というものは値上りするという形勢に、これは御承知の通りでありますが、ありまして、また、どこの団地をどういうふうに手をつけるということになりますと、それがもし漏れますと、非常な値上りをいたしておるのが現状でございます。それで、私どもの方の土地調査には、非常な細心の注意を払っておるのでございますが、その関係で、各方面の意見を内部的に当ってみる。つまり勧銀の方にお聞きしてみたり、あるいは税務事務所、あるいは公共団体の御当局に当って、その辺ではどの程度のものでございましょうか、あるいは公営住宅でどういうような値段でお買いになったのでしょうかということを側面的にずっと調査しまして、そうして、そのできました調査を基礎にしてやるという建前の方が弊害が少いのじゃないか、内部の動かし方の問題でございますが、それの方かいいのじゃないだろうかということで、実は意識的に外部の方を除いておるわけでございます。もちろん、そういう委員会の組織だけでなしに、執行部だけできめてもいいことでありますが、やはり各方面……非常に内部の組織の間の連絡調整を保つという意味で、そういうふうなことをやっているということを御了承いただきたいのであります。御指摘の点については、まだ私ども内部としても、検討してみたいと思っております。
  74. 秋山長造君(秋山長造)

    秋山長造君 建設当局にお尋ねしたいのですが、建設省が公団に対して監督官庁という立場であるということは、これは申すまでもないのですが、ただ監督官庁といってもこういう面の具体的な運営にまで建設省が監督の手を伸ばさなければ、ただ監督といってみたところで、たまたま結果だけ見て、悪かったからそれをあわててどうこうするということでは、ちょっと後手になってしまうと思うのですが、こういうものに外部の人を入れるということについては、なるほど今、副総裁がおっしゃったように、特に現地の民間の人なんか入れた場合、人選がうまく……ほんとうに純粋な立場で相談に乗ってくれる人ならいいけれども、妙な人が入って、そうしてかえって地価の引き上げの方へ大いに活躍されるというようなことがあっても困るけれども、しかし、少くとも建設省あたりは、こういう点までもう少しやはり相談に乗る体制の方がほんとうに実質的な監督ということが行き届くのじゃないかというふうに思うのですが、その点は、どうお考えになっていますか。
  75. 国務大臣(南條徳男君)(南條徳男)

    国務大臣(南條徳男君) 御指摘の問題は、こういう土地の価格の評価ということばかりでなく、建設省としては、公団の運営そのものというものの実体を私ども考えていきたいと思います。ということは、公団という――名前は公団でありますが、事実上やはり自主的に民営でやっていくという建前で、政府がやらぬのでありますから、一応民営であります。民営でやるということは、一面においては、きわめて迅速に、また、こういう住宅政策なんというものは、非常な政府が力を入れてやる問題でありますから、弊害があってはいけませんが、できるだけ迅速に、そして目的が達する方向にいくためには、あまり監督を政府がやるということは、いい場合もありますが、また弊害がある場合もあると思います。これはひとり住宅公団ばかりではございません。私は、国鉄の運営についてもそういう面があると思います。それでありますから、そういう面においては、できるだけ公団自体の理事者に責任を負わして、そして運営を善処せしむるということが、迅速にしてかついい結果をもたらすものと思うのでありまして、さような面からいいますと、今の公団の中に、土地を選定する場合の委員会等が自主的に設けられて、そうして弊害のないような、しかも迅速にこれをきめるという方向は、私はいい方向だと思います。それについては、建設省としては、一応監理官等もありまして、弊害のないような方向に進めてはおりますが、その運営に弊害のない場合においては、できるだけ公団の自主性を尊重することが私はいいことじゃないかと思っておるのであります。
  76. 秋山長造君(秋山長造)

    秋山長造君 行政管理庁にお伺いしますが、公団側も、監督官庁の建設大臣も、今のような答弁をされた。あなたの方のこの監察報告によると、この面を検討すべきだということを書いてあるのですが、管理庁としては、具体的にどうしたがいいというお考えなんですか。
  77. 政府委員(楠美省吾君)(楠美省吾)

    政府委員楠美省吾君) 今度の事件は、いろいろ詳細にやってみましたが、私は、それは、いろいろ土地の買収等の問題でも、坪八百円で買っておりますけれども、それを三千八百円で売っておる。しかし、一般の地価の値上りや何かから見たら……水道とかいろいろな設備をやったり、ガスをやったり何かしておる問題からいっても、そう高いとも思いませんし、それを営団に売ったからして、大阪府がそれの代替地を求めて、それ以上の金を出して土地を買っておりますし、まあいろいろ創立当時で、営団も監督が十分でなかったり、請負者のたとえば指定その他の監督が十分でない点、その人も若かったり、いろいろ間に合わない点が若干ございましたが、それほど大きく取り立ててだめであったという点もたんとなかったのじゃないかと思いまして、できるだけ私ども、この住宅公団等については、今年度の監察の対象にもしておりますから、いろいろ今年度中に全般的な監査をまたやろうと思っておりますが、取り立てて、ここをどうしてもこうしなければならぬという、大きな隘路と申しますか、メスを大きく入れなければならぬという問題は、少くともこの問題ではあまり大きくなかったのじゃないかと現在考えております。しかし、まあ私らは、こうしたものを監査する役所でございますから、せいぜいこうした、一時でも、入った人のいろいろな不便等を来たさないように、できるだけの手を広げて、監査、監督をしたいと思っております。
  78. 秋山長造君(秋山長造)

    秋山長造君 それは、私のお尋ねしたことに対しての答弁じゃないです。とんでもない答弁です。そんなあなた、監察をやって、これだけ問題点を羅列しておいて、大体今度の問題は大したことじゃないと言うとはなんですか、その答弁は。政務次官、これは、この問題をほんとうに真剣にお調べになったのですか。人をばかにしておりますよ、そんな答弁
  79. 政府委員(楠美省吾君)(楠美省吾)

    政府委員楠美省吾君) 私は、なにもばかにしておるわけでもありませんし……。
  80. 秋山長造君(秋山長造)

    秋山長造君 じゃ、私の質問したことに答弁して下さい。私がお尋ねしておることは、今御答弁があるようなことをお尋ねしておるのじゃないのです。具体的に、この報告書の二ページに、この土地評価審議会というものを部内のものだけで組織してやるということは、再検討の余地があるということをあなたの方で書かれておる。だから、その具体的に再検討するというのは、どういうように再検討したがいいとお考えになっておるかということを聞いておるのです。
  81. 政府委員(楠美省吾君)(楠美省吾)

    政府委員楠美省吾君) その秋山委員のお尋ねしておるのは、土地のたとえば評価委員会の問題で、内部からだけでやらずに、外部からも入れていいじゃないかというような御意向の御意見ですか。
  82. 秋山長造君(秋山長造)

    秋山長造君 そうじゃない。ここに書いてあるのが、内部のものだけで審議会を組織しておる。これは、今後の公団運営面の問題点として検討する余地がある、こうあなたの報告書は書いてある。だから、具体的にどういうように検討したがいいとお考えかということを聞いておるのです。
  83. 政府委員(楠美省吾君)(楠美省吾)

    政府委員楠美省吾君) それじゃ、事務当局に一つ答弁させます。
  84. 政府委員(岡松進次郎君)(岡松進次郎)

    政府委員岡松進次郎君) 審議会の土地評価につきまして、内部的できめてしまったというような形が、先般来秋山委員その他から、土地の評価について疑問もあるというような疑いも持たれるのでありまするので、今公団からも御説明ありましたように、あるいはいろいろな事情で、委員としては内部的な方々で構成しなければならぬ場合もありましても、やはり評価の基礎となる場合に外部の人の意見も徴したというような、何と申しますか、形の上において現われるような形をとった方がいいのじゃないかというような意味で検討した方がいいだろうと、再検討した方がいいと、こういうふうな意見を述べたわけであります。委員に外部の者を入れなければならぬというような強い意味で、この意見を述べたのではございません。
  85. 秋山長造君(秋山長造)

    秋山長造君 その点は、あとでもう一度お尋ねしますが、第二点として、この報告書の六ページから七ページにかけてですが、当時の工事の入札状況について書いてあるのですが、その中でA地区、B地区、C地区、D地区、E地区、F地区、いずれも入札業者が八人ですね。八人で、しかも、それぞれ六回あるいは五回の入札を繰り返しておる。しかも、その六回とも、また五回とも、それぞれ同一の業者に落札しているわけですね。この事実に基いて、管理庁は、「談合が行われた気配もうかがわれる。」こういう結論を出しておる。私、この前の委員会で、加納総裁に対して、談合云々といううわさがあるがどうかというお尋ねをしたのに対して、加納総裁は憤然とされて、そういう事実は断じてないと、こういうことを答弁されておる。ところが、権威ある行政管理庁が調査された結果は、談合が行われた気配は十分うかがわれるということを書いてある。そして、その事実を証明するところの表がここに載っておる。どうですか、副総裁この点、どうお考えになりますか。
  86. 参考人(河野一之君)(河野一之)

    参考人(河野一之君) 談合が行われたとか行われないとか、これは、私どもといたしましては、実際は調べる手がないのでございます。ただわれわれ、契約、落札をしている状況で言いますと、なかなか最近の私どもの単価では、落ちないのが実情でございます。それで、われわれの予定価格が低いということもございましょうが、業者の間におきましては、それぞれ入札をされるわけでありますが、まあ自分の方としては、ぜひに取りたいということで最低を出されるのだ、その結果として出るのだと思いますが、私どもの今まで経験した範囲で、初めから、この方に落そうとしてやっているというような事実は、まあ私寡聞ではありますが、まだそういうことはないと私は思っております。これはしかし、私どもの方で的確にそういう事実を突きとめる手も持ちませんので、そう申し上げるほかありませんが、私は、あまりそういう弊害は、今までのところなかったのじゃないか。ことにこの工事につきましては、御案内のように、非常に単価が安かったがために、六回も五回もやっておるというのが実情でありまして、何回も同じ人が最低であったということがそういう立証の一つになるとすれば、また別でございますが、私どもとしましては、現在のところ、そういう事実があったとは認めておらない。
  87. 秋山長造君(秋山長造)

    秋山長造君 ここへ書いてあるこの表ですね。これも、A地区については、銭高組が六町とも最低価格ですね。それからB地区については、松村組が六回とも最低だ。それからC地区については、明産興業が五回ともそうです。それからD地区についても安藤組、E地区は中道組、F地区は畠中組、いずれも五回とも同じところへ落ちているですね。これが一つの談合が行われたという結論を出される私は根拠になっておるんだろうと思う。これは、私が言うんじゃない。管理庁が調査された結果、ここに出してある。しかもその落札した業者が自分で工事をやるんではなしに、さらにまた、多くの弱小業者に下請をさしておる。しかも、その下請をさしておるこの業者というものは、公団の方へ半数程度しか届出がされてない。あとの半数は、公団もだれも知らぬ業者が勝手にやっておる。だから、いざ修理なんということになった場合は、これは、公団から落札した業者に連絡する。その落札した業者から、また実際の工事をやった弱小業者に連絡する。そういうようなことで堂々めぐりで、めぐりめぐっていくものですから、ちっとも修理がはかどらない。しかも、その多い中には、逃げてしまって、行方もわからぬという業者もおる。だから、結局ナシのつぶてで、修理しろ修理しろと言っても、連絡したけれどもしっ放しで、あと修理がいつできることやらわからないというような状態が、今度の問題のそもそもの発端になったんだと思うんです。こういうようなだらしのないことをあなたの方が、国の資金を使ってやっておる公団が、そのまま見のがしておるということは、私ども承知できぬ。今後も、すべてのこの住宅建設について、こういうだらしのないことをやっておかれるのかどうか、お尋ねをしたい。
  88. 参考人(河野一之君)(河野一之)

    参考人(河野一之君) 私ども、一番最初の工事でありまして、非常にその不始末から、入居者の方に御迷惑をかけ、また各方面へ御迷惑をかけ、まことに申しわけなく思っております。この現在の状況といたしましては、一応ジョイント・ヴェンチュアというような組織がまだ一般化されていない現在の状況といたしまして、入札を受けました者がある程度下請に出すことは、やむを得ないことであろうかと、私思っております。ただ、その数が多過ぎるという点も、御指摘の通りだと思います。その結果からして、このクレームなんかのハンドリングは、あっちに行ったりこっちに行ったりしたという事情もはっきり指摘されておりますし、今後私ども、大いに戒慎して参らなければならぬと思っております。それにつきまして、私ども現在やっております、この中にも書いてございますが、ある、二年間ほどは、業者の瑕疵担保でやっておる。つまりいろいろな瑕疵が出ました場合には、業者にやらせておるわけでございますが、それが幾つかの業者に分れておると、御指摘のようなことになるのでございまして、私どもといたしましては、今考えております行き力としましては、そういうクレームができたならば直接やる、あるいはもちろん請負に出すのでありますが、そうしてその金額を契約代金から差し引くと、そういうふうなやり方を考えたらどうかということで、この御指摘の点を反省いたしまして、今後のやり方を考えていきたい、実行いたして参りたい、こう考えておる次第でございます。
  89. 秋山長造君(秋山長造)

    秋山長造君 とにかくこの表を見ますと、抽出事例ですから、全部じゃありませんが、A地区、B地区、この建築工事についても、下請業者に渡しながら、しかも、その下請業者なるものがA地区については二十二名のうち、公団の方に届けているのは十二名、あとの十名というものは公団は知らない。公団の知らない、確認しておらない業者がやったものを、あとから修理させるの、瑕疵担保なんて言ってみたところで、これは追っつかないと思う。それからB地区についても、四十名の下請業者にやらして、そのうち届け出ておるのは二十四名、あとの十六名というものは、だれがやったのかわからない。これは、あまりにもだらしがないと思う。だから、結局責任のなすり合いで、堂々めぐりになって、いつまでたってもこの修理個所というものの修理ができないという結果になるのは、私は当然だと思う。その点は、今副総裁がおっしゃった通りですね。これは、ぜひ一つ、もう少しかっちりしたことをやっていただきたいと思う。こんなことでは、われわれは納得できないのですよ。  それからさらに、次にお伺いしたい点は、この報告書の十ページの(六)というところの最後のところに書いてある、「公団は、竣工検査乃至手直検査の具体的内容、検査結果等を知るために必要な資料を喪失したと称しているが、云々」と書いてある。こういう重要書類がなぜ紛失するのですか、どういう事情で紛失したのですか、ついこの間のことが。
  90. 参考人(河野一之君)(河野一之)

    参考人(河野一之君) この点、弁解がましくなりますが、私ども発足いたしました、ことに大阪支所につきましては、非常な手薄と申しますか、ほんのわずかの、この中にも御指摘を受けておるのでありますが、非常にわずかな人員でやりましたということが一つでございますが、そのほかに、次から次へ大団地の工事をなにしまして、その間において庁舎が、庁舎といいますか、事務所が変りまして、一応会計検査院の検査を受けましたものでございますから、その書類を実は的確に保存すればよかったのでございますが、そうしている間に、廃棄したのでありますか、どうなんですか、この事件が起りまして、いろいろ調べたのでありますが、見当らなかったことをはなはだ申しわけなく思っておる次第であります。しかし、工事報告その他から、あるいは検査日誌等から、実態ははっきりいたしておりますので、決して意識的にそういうことをやったのでございません。この点については、手抜かりがありまして、軽率のそしりをまことに免れないと思っておりますが、意識的にそういうふうにいたしたのではないということを弁明さしていただきたいと存じます。
  91. 秋山長造君(秋山長造)

    秋山長造君 さらに、この問題点は、もちろんたくさんに指摘されておるわけですから、読まれればよく思い当られると思いますので、一々は申し上げませんが、さっきも申しました、修理個所を迅速に修理するという問題ですが、この報告書にも書いてあるのですね。修理個所の申し出があった場合、どういうような連絡系統になっておるか。「建築部工務課を通じて、施工業者により行われる瑕疵修理については、サービス班より工務課、工務課より施工業者、施工業者より下請業者等の相互間の連絡が容易につかず、遅れ勝ちであり、又、この経路における中間処理が確実に行われないため、工事が中断されたまま放置され勝ちとなり、然も、この場合、担当係員に実情が把握できないので、益々修理が遅れた云々」、これは説明は要りません。これは、お聞きになる通りなのです。大体こういうことで万事やられておるから、あの金岡団地のような問題が起って、特に副総裁は見られたかどうかしらぬが、三号館なんかっていうものは言語道断ですよ。私は下から上まで見たのですが、しろうとが見ても言語道断だ。これで問題が起らぬのが不思議だと私は思った。こういう問題は、これは数え上げればきりがない。一つこれは、今後徹底的に再検討し、公団の運営そのものについても、私は考え直していただきたい。どうですか。
  92. 参考人(河野一之君)(河野一之)

    参考人(河野一之君) 管理のハンドリングが悪かった。ことにクレームが出てから、それが処理されるまでに非常に時間がかかりまして、入居者の方に御迷惑をおかけしたことをまことに申しわけなく思っております。ことに公団としては、先ほど大臣も申されました通りに、企業としてやっていく上においては、サービスを第一として職員が考えていかなければならぬ。このことにつきましては、もちろんこのことを契機といたしまして、職員に対して厳重なる通牒をいたしたわけでございますが、この改善のやり方といたしましては、つまり段階的な系統というものを一つにするということを今考えております。つまり現在、管理部というものを作りまして、そこに補修を専担とするような係を置いて、つまり瑕疵担保の期間であっても、一応そこが全責任を持ってやる。つまり次から次へキャッチ・ボールみたいにしていかないということを考えております。それから、クレーム自身が入居者の方から出てくるまでもなく、こっちから積極的に行って、その工合をお聞きするというような行き方にしなければならぬと思いまして、それにつきましては、このサービス班を拡充するわけでございますが、特別な修理車を作って、各団地を毎日あるのは一日置きにぐるっと回って、入居者の方の御注文を聞いて参るというような体制を現在整備しつつございます。当該修理車につきましては、先般この事件がありました後、修理車を現在注文いたしまして、不日、今月中にはできて参ると思いますが、そういうふうな新しい体制でこの問題を今後処理して、今後こういうことのないように庶幾いたしておる次第であります。
  93. 秋山長造君(秋山長造)

    秋山長造君 金岡団地だけの問題でなしに、公団住宅全体について、今おっしゃったことを直ちに実行していただきたい。私は、特に念を押して要望しておきます。それから、行政管理庁にお尋ねしますが、この報告書の扱いは、どういうふうになさるのですか。
  94. 政府委員(岡松進次郎君)(岡松進次郎)

    政府委員岡松進次郎君) れこたは、国会の御要求もありまして、また、それでなくても、われわれ、問題になりましたので、調査いたしたのでございますので、これは、担当省であります建設省に渡しまして、将来の参考にしていただくということにいたしておるわけであります。
  95. 秋山長造君(秋山長造)

    秋山長造君 これは、渡しっぱなしなんですか。どうですか。
  96. 政府委員(岡松進次郎君)(岡松進次郎)

    政府委員岡松進次郎君) 監察の結果でございますから、将来の改善に資するように、勧告の形式で出したいと思っております。
  97. 秋山長造君(秋山長造)

    秋山長造君 これは、せっかくこれだけのものを監察をされた結果をまとめられて、それぞれ建設省なり、あるいは住宅公団なりにお渡しになる。住宅公団べもお渡しになるのでしょう。
  98. 政府委員(岡松進次郎君)(岡松進次郎)

    政府委員岡松進次郎君) 住宅公団は、監察対象ではございませんので、監察に関連した調査でございますので、一応建設省を通じて住宅公団べ渡すことにいたします。
  99. 秋山長造君(秋山長造)

    秋山長造君 この中には、ずいぶんたくさん問題点が指摘されておると思うのです。その問題点について、渡しぱなしで、そうして、その問題点に対してどういう関係当局が対策を、どう処理したか。この問題点について、どういうふうな処理をしたかということについての報告露はお出しになりませんか。
  100. 政府委員(岡松進次郎君)(岡松進次郎)

    政府委員岡松進次郎君) 勧告いたします際には、これは調査書類でございますから、この中から改善を要する事項をピックアップいたしまして、勧告いたしますので、それに対する建設省の改善処置の回答は求めることになっております。
  101. 秋山長造君(秋山長造)

    秋山長造君 それはお求めになるのですね。
  102. 政府委員(岡松進次郎君)(岡松進次郎)

    政府委員岡松進次郎君) 当然求めることになります。
  103. 委員長(亀田得治君)(亀田得治)

    委員長亀田得治君) 本件に関する質疑はこの程度で終了いたします。  なお本件に関し委員会決議をいたしたいと思いますが、便宜委員長より決議案を朗読いたします。     決 議   内閣委員会は、日本住宅公団金岡団地住宅の建設の実状につき、三回にわたり調査した結果、その工事の設計、施行及び監督の上に幾多疎漏の点あることを明らかにした。本委員会は、日本住宅公団が、これら工事不完全のため、入居者に多大の迷惑を与えたるのみならず、ひいてはその信用をはなはだしく失墜せしむるに至ったことを指摘し、ここに遺憾の意を表明する。   日本住宅公団は、この際、その負荷せられた責務の重大なる点を深く反省し、また公団の監督官庁の地位にある建設省当局は、今後公団に対する監督を更に厳にし、将来金岡団地住宅の建設におけるがごとき失態が再び繰返されざるよう十分戒心を加えられんことを強く要望する。以上であります。ただいま朗読いたしました決議案を委員会の決議とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  104. 委員長(亀田得治君)(亀田得治)

    委員長亀田得治君) 御異議ないと認めます。よって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  この際行政管理庁、建設省並びに日本住宅公団当局において本決議に対する所信の表明等あれば承わりたいと存じます。
  105. 国務大臣(南條徳男君)(南條徳男)

    国務大臣(南條徳男君) 当委員会が金岡団地につきましてのいろいろ住宅公団の手落ちにつきまして、しばしば回を重ねて御審議を願いました。だんだんとこの内容も明瞭になりまして、ただいま御決議になったような委員会としての御処置に相なりましたことは、監督官庁であります建設省といたしましてもまことに遺憾のきわみでございまして、このことかいろいろな意味において弁解の余地もあるようでありますが、しかも重要なる公共事業費、その他重要な住宅政策の任に当りますこの住宅公団の運営といたしましては、今後十分戒慎いたしまして、今後かような粗漏のない運営方法にせしめなければならないものと考えておる次第であります。従いまして建設省としては十分その監督上今後の運営につきましては、先ほど申し上げましたようにできるだけ民営のいい点を尊重しまして、法律的な、自主的な立場において公団を運営せしめることが主体でありますけれども行き過ぎたりあるいは粗漏のある場合におきましては厳重なる監督をいたし、かくのごとき粗漏のないように今後いたしたいと、こう考えておるようなわけであります。たまたまこの問題が初期に起きたのでありますが、これを機会に十分将来に対する戒めとして、今後かかることを繰り返さないように建設省において十分なる監督をいたしたい、こう考えておるわけであります。
  106. 政府委員(楠美省吾君)(楠美省吾)

    政府委員楠美省吾君) ただいま御決議にありましたように行政管理庁としましても十分に調査した結果、この報告書を出したような次第でありまするが、今年度の監察方針としても公団の仕事を監査する方針になっておりますし、草創の際でいろいろ先ほど申し上げたように公団としてもやむを得ない点もあったと思いまするけれども、われわれとしてもこの決議に従いまして十分全国にわたりまして監査の仕事をやりまして、建設省を通して公団にも厳重な監督をしてみたい、この趣旨に従いまして鋭意努める方針でございます。
  107. 参考人(河野一之君)(河野一之)

    参考人(河野一之君) このたび住宅公団金町団地の問題につきまして、私どもの手抜かりからまことに申しわけない事態を引き起しましたことにつきまして、深くお詑び申し上げる次第であります。今回このような決議をいただきまして、深く深く反省いたしておる次第であります。この上はわれわれも一致協力、誠意をもって今後業務の改善に努力いたしまして決議の趣旨に沿いまして、誓って今後こういうことのないように処置いたしたいと考えておる次第であります。所信を披瀝いたす次第であります。
  108. 委員長(亀田得治君)(亀田得治)

    委員長亀田得治君) 別に御発言もなければ本件に関する調査は一応これをもって打ち切ることといたします。ちょっと速記をやめて。    〔速記中止〕   ―――――――――――――
  109. 委員長(亀田得治君)(亀田得治)

    委員長亀田得治君) それじゃ速記を起して下さい。次に、臨時恩給等調査会設置法案を議題に供します。まず本案の内容につき細部の御説明を願います。
  110. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) 臨時恩給等調査会設置法案内容につきましては、提案理由の中で述べられておることでございますが、この臨時恩給等調査会の設置の目的につきましては、現在文官恩給ないしは軍人恩給というものに対しまして、退職公務員並びにその遺族の恩給に関する恩給上の処遇というものにつきましては、特に昭和二十八年の法律百五十五号というものによりまして、いわゆる軍人恩給の復活ということが見られました以後におきましても、数回の恩給法の改正によりまして漸次改善措置が行われて参ったわけであります。しかしながら今日なお検討を要する問題が少くない。しかもなおその問題たるや早急に解決しなければならないというふうなことがございますので、各方面の公正な意見を反映されることによりまして、総合的なそうしてまた合理的な対策を立てるためにこうした強力な調査会を設置する必要がある、こういうことでございます。  この調査会のいたしまする仕事は、この臨時恩給等調査会設置法の第二条に書いてございますように、第一点は「旧軍人の公務傷病恩給、旧軍人の遺族の公務扶助料その他旧軍人又はその遺族の恩給に関する事項」ということが第一号に掲げてございますが、第一号は旧軍人の公務傷病恩給、公務扶助料、そのほか旧軍人に関する恩給、すなわち普通恩給であるとか、あるいは遺族の普通扶助料であるとか、そうした恩給に関することについていろいろ調査審議をいたそう。概括的に申しますと、第一号は軍人恩給に関することをこの調査対象にしようという意味でございます。それから第二号は「前号に掲げる者以外の者の恩給に関する事項」と書いてございますが、これはひっきょう旧軍人恩給以外の恩給、すなわち一般的に申しまするところの文官恩給というものを対象にしようということでございます。それから第三号は「前二号に関連する戦傷病者、戦傷病者又は戦没者の遺族等の援護に関する事項」、これはいわゆる戦傷病者戦没者遺族等援護法上におきますところの援護上の処遇、遺族なり戦傷病者に対する援護法上の処遇というものにつきましての諸問題を第三号で取り上げていこう、こういうことでございます。「その他前三号に関連する事項」と書いてございますが、これは第一号、第二号、第三号というものに盛り切れない、しかしながらこれと関係が非常に深いというふうな問題で、漏れているものがあるならば、これはやはり調査会の審議の対象にしよう、こういう意味におきまして第四号を設けたわけでございます。  それから第三条は組織でございますが、組織はこの「調査会は、委員二十五人以内で組織する。」この二十五人というものは国会議員と関係行政機関の職員、学識経験者の中から内閣総理大臣が任命するということにいたしております。それから第四条は会長に関する規定でございます。第五条は幹事に関する規定でございます。  第六条でございますか、この調査会は、第二条に関連いたしまして調査審議した結果というものは、これは今年の十一月の十五日までに結論を得て、そうして内閣総理大臣に報告をするようにという義務規定をおいております。このことは調査会の審議対象たる諸問題が早急に解決を要する問題であると同時に、また調査会が発足いたしましてから約半年ぐらいの期間を与えれば、調査審議の結論は得られるであろう、という見通しをもちましてこの時期をきめたわけでございます。この時期をきめますことは、またとりもなおさずこの調査審議の結果というものが、来年度予算の編成にまた反映することができるであろうということを考えまして、この時期をきめた次第でございます。  第七条は庶務に関することでございますし、第八条は細部にわたっての問題は政令に委任することができるという委任規定でございます。大体この法案の内容は以上の通りでございます。
  111. 委員長(亀田得治君)(亀田得治)

    委員長亀田得治君) 本案につき御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  112. 伊藤顕道君(伊藤顕道)

    ○伊藤顕道君 この法案を見ますと恩給法改正の基本的なねらいについては、戦没者遺家族、それから傷痍軍人の処遇改善、これを目標に調査審議しようというふうに解せられるのですが、まずその点についてお伺いいたしますが。
  113. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) この調査会の審議対象になりまする問題がたくさんございまするけれども、しかしその中で大きな問題というのは、何と申しましても戦傷病者戦没者という方々に対する援護なりあるいは恩給である、恩給の問題が大きなウエートを占めておる、こういう意味におきましてはお説の通りであります。
  114. 伊藤顕道君(伊藤顕道)

    ○伊藤顕道君 そうだといたしますると、この今いただいた衆議院内閣委員会の付帯決議にはなっておりますけれども、付帯決議には見受けられましたけれども、旧国家総動員法等において徴用し、これはたとえば満鉄の社員などがこれに入るのだと考えられます、そういう徴用やそれから動員学徒、こういう君の戦没者遺族に対しても、遺族年金を支給するということは当然考えられて然るべきと思うのですが、先ほども言ったように付帯決議にはなっておりまするが、何らそういう点か本文に見受けられない、この点お伺いしたいのですが。
  115. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) 第三号には戦傷病者戦没者遺族等の援護に関する事項ということでございまして、援護法上の諸問題を調査審議をいたそう、こういうことでございます。従いまして援護法上の問題ということになりますると、すでに援護法上の問題としてこれらの者に弔慰金で打ち切るのでなく、遺族年金を継続的に支給すべし、支給してもらいたい、こういう陳情請願等に現われております。問題となっておりますところの今御指摘の動員学徒の問題であるとか、あるいは開拓団員の問題であるとか、そういう方々に対する援護法上の処遇という問題をどうするかということも、当然この審議会の審議の対象になる、こう考えております。
  116. 伊藤顕道君(伊藤顕道)

    ○伊藤顕道君 一つの例を申し上げますと、私も満洲におってよくその実態を承知しておりますが、あの満ソ国境地帯であの事変の当時に忠実に職務を守ってそのために戦没したという満鉄社員等が相当おったわけです。むしろ旧関東軍等は情報を知っておるので先に逃げてしまった、そういう事例をたくさん知っておるのです。そこで戦没者の遺家族、傷痍軍人の処遇を考えられる場合、場合によってはそれ以上忠実に職務に殉じたこういう遺家族に対しても、今申し上げたように当然措置が構ぜらるべきであって、これを重視しないという点においては片て落ちのそしりを免かれないと思う。この点についてお考えを承わりたい。
  117. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) ただいま御指摘の点についてどういうふうに処遇をすべきかというふうなことに対する答案は、私すぐ申し上げるわけに行きませんけれども、その調査審議会の調査審議の対象として、こうした問題が取り上げられるかどうかという問題に関する限りにおきましては、第三号にいわゆる戦傷病者、戦没者遺族等の援護に関する事項、すなわち援護法上の問題とずばりと当てはまるかどうかわからないが、少くとも援護上のワクの中にそういう人を入れるべきであるかどうかという問題である限りにおきまして、四号の「その他前三号に関連する事項」ということであるいは取り上げられるということが考えられるとこう考えます。
  118. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 関連。そういうことをずばりでお答えできないというのは誰が答えられぬのですか。
  119. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) そういう方々に対する処遇を直ちに援護法上で扱うことがいいのかどうかという問題は、私は恩給法に関することしか所管しておりませんので、援護法に関する限りは厚生省の所管である、こういう意味において控えたわけでございます。
  120. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 これから私たちは突き進んだ審議をしたいと思いますが、これは恩給局長が内閣の責任者として答弁できますか。
  121. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) その内容によりまして、その所管外のことになりますと、所管の省の局長なり政府委員の方でないとちょっと答弁できません。
  122. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 所管の国務大臣はだれですか。きょうはどうして出てこないのですか。
  123. 委員長(亀田得治君)(亀田得治)

    委員長亀田得治君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  124. 委員長(亀田得治君)(亀田得治)

    委員長亀田得治君) 速記を始めて。
  125. 竹下豐次君(竹下豐次)

    ○竹下豐次君 第二条の二号に「前号に掲げる者以外の者の恩給に関する事項」と書いてありますね。これは文官等というお話だったのですが、文官のほかに何ですか、以外の者というのは。今、永岡さんから学徒というようなお話が出ました、これは非常に大事なお話なのです。それは第二号の方に入るのか、第四号に入るのか。四号の「その他前三号に関連する事項」とはどういうことを指しておるのか。その使い分けを御説明願いたい。
  126. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) ただいまの例におとりになりました動員学徒の処遇の問題であるとか、そういうことになりますると、今までの動員学徒に関する処遇につきまして、その方の職務で倒れられたという方に対する遺族の処遇といたしまして、弔慰金で打ち切っておったのを遺族年金というものを支給すべし、というような要望の問題として考えるというならば第三号の問題である。あるいは第三号で盛り切れないという意味であるならば、第三号に関連しての第四号というふうに考えております。
  127. 竹下豐次君(竹下豐次)

    ○竹下豐次君 私のお尋ねしておるのは、学徒動員みたいな関係はおそらくこの調査会で取り扱うということになろうと思っております。それは「前号に掲げる者以外の者」といううちに入りますか、入りませんか。
  128. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) それは援護法上の援護でありまして、恩給ではないものですから、従いまして二号の旧軍人に関する者以外の恩給と申しますると、やはりあとは文官の恩給しかございませんから、結局二号は文官の恩給を指しておるのです、
  129. 竹下豐次君(竹下豐次)

    ○竹下豐次君 この恩給制度をどういうふうに改めていくか。それに加えていく必要があるかないかという問題も起ってくるでしょう。だから恩給問題を研究する上において動員された学徒とかいうようなものは、研究調査の対象にすべき性質のものじゃないとされるのではないかという疑問を持っております。今の御説明によりますと、今の恩給を受けておる者というだけに限定された審議会というように聞えましたが、そんな狭いものではないのじゃないですか。学徒動員というようなものも広く考えて、やはり恩給の性質を有するもの、あるいは恩給に準じたものを支給するというようなことも、この調査会で取り扱わせる政府考え方じゃありませんか、この案の趣旨というものは。
  130. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) 一号、二号は恩給のことでございます。それから三号は恩給法上の公務員でないがために恩給としての処遇はできませんから、これは戦傷病者戦没者遺家族等援護法のいわゆる遺族年金なり、弔慰金なりというような処遇で行く、いわゆる援護の方の関係になるというようなわけでございます。少くとも恩給に関する限りは一号で軍人恩給の問題、二号で文官の問題を扱い、また文官恩給として考慮すべしというふうな諸問題がございますれば、それは四号の恩給に関連する事項としてまかなうというような考えであります。
  131. 竹下豐次君(竹下豐次)

    ○竹下豐次君 そうすると、もう一ぺん念のためにお尋ねします。この調査会では、今申しました学徒とかいうようなものも大体取り扱ってもらいたいという気持なのでしょうね、政府としては。そういうように了解してよろしゅうございますか。
  132. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) その通りでございます。
  133. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 今、竹下さんから質問がありましたわけですが、二号というのはあれですか、現に受けている恩給者ですね、あるいは恩給を受ける対象になる文官、その人の金額とか何とか、そういうものについて、例をあげればそういうものだけであって、言うならば昔の雇用人ですね、つまり事務官になっていない人、そういう藩についての恩給と申しますか、年金と申しますか、そういう問題は二号でなくて四号というのですか、私の後段に言ったのはどっちに入るのですか。
  134. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) 現在の恩給法上の公務員でない方々を、恩給法をそれにかぶせて恩給法のワク内で処理すべし、こういう問題になりますと、厳格に言えば一号、二号は、現在恩給をもらっている方で恩給についていろいろな問題がある、こういうことである限りにおいては一号、二号としか読めない。従ってこれから恩給法のワクの中に追い込むのだ、こういう問題でありますれば、どうしても四号になる、こういうふうに考えます。
  135. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 そうすると松浦さんに聞いた方がいいかと思うのですけれども、公務員制度調査会で、公務員全般についての退職年金制度についての答申が一応出ているわけですが、それにまた新しくこの制度を作って、またそれを検討するというのですか。
  136. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) これはあくまで一号、二号というのは、現在すでに退職して恩給をもらっておる、四号はですから最小限度に、あまり広くいきますとこれはすでに退職年金に関する新しい人事院勧告なり、あるいは公務員制度調査会の勧告なり出ております、それについて別途新退職年金制度というものについては検討されているわけです。それはそれに譲るべきであって、調査会はその方に踏み込んで、それを拘束するような立場になってはいけない、こう思っております。
  137. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 いやこれはちょっとおかしいですよ。公務員制度調査会の勧告にしても人事院の勧告にしても、現在恩給をもらっておる人とかもらい得る人、そういう問題は、これは関連してくる公務員全般についての退職年金制度を勧告しておるのですから、だから過渡的措置として、かりに現在もらっておる人でもそれをどう調整するか、という問題もまた起きてくるかもわかりませんが、あれは公務員全般の問題ですよ。
  138. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) 退職年金制度で扱ってこれから立てようというのは、少くともこれから退職する人に対して、どういうふうな給与条件なりいろいろな条件に伴う新退職年金制度を考えるかということなんです。これは、この調査会はあくまでもすでに退職した旧制度といいますか、現在の恩給法ですね、新退職年金制度から言えば旧制度でございましょう。現在の制度ないしは現在の制度につながる部分の旧恩給法、それ以前の制度ですね、明治時代からずっとつながった、その上に乗っかって現在恩給をもらっておる方々、その方々の間にいろいろなアンバランスというものがあるのじゃないか、これをどうするかというのが重点なのでございます。
  139. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 もう少し明確にしておきたいのですが、そうすると、今恩給をもらっておる人の調整を主眼とした調査ですか。そうすると私たち心配しておるたとえば学徒動員の問題、もちろん今もらっていないのですからよろしいのですが、あの遺族についてはまあ関連性が出てきはせぬかという問題が一つ。それと同じような意味において、現在恩給をもらっておりませんけれども、恩給のついておる年限に達している人がおりますね、公務員の中で、文官の中で。それからやがて現在の恩給法でいくならば何年か後にはもらえる人、こういう人々の問題についてはあなたはこれに触れていないことになるわけですね。なぜならば私の質問しておるのは、そういう問題については人事院とか公務員制度調査会で一つの答申を出しておるわけです。そうしてあなた方は既存のものだけについて、その額が高いか低いか、ベースアップをしたからそれに応じて上げるかという、それだけの問題に限定した非常に狭い調査になる。こういうような気がするのですが、狭い調査ですか、広い調査ですかどっちですか。
  140. 竹下豐次君(竹下豐次)

    ○竹下豐次君 関連して。同じようなことをお尋ねすることになるのですが、もう少し具体的に、現行の恩給法等のうち不均衡がありますね。これを是正するということがこの調査会のねらいの大部分ではないかと思います。そのほかに何があるのですか、調査会でやらなければならないことはそれだけですか。
  141. 委員長(亀田得治君)(亀田得治)

    委員長亀田得治君) 一括して答弁して下さい。
  142. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) ただいまの永岡先生、竹下先生のお尋ねに一括申し上げますと、この調査会の調査対象というのは、もちろん第四号で「関連する事項」ということで、少くとも現在まで退職してその恩給法上の処遇なり、援護法上の処遇なりを受けておられる方々ばかりではなくて、当然これから恩給法の適用を受けるなり、あるいは援護法上の適用を受けるという方々についても、調査、審議の対象にし得るという幅を四号で設けておることはその通りでございます。しかしながら、一方におきまして、公務員に関する少くとも文官恩給に関する限りにおきましては、新退職年金制度というふうなものは、これから退職する人たちについては新しい制度に移行する、こういうふうな問題も含まれておるわけでございます。その方向をあまり拘束するような決定がこの調査会で出てくるということは好ましくないであろう、その限界において四号で、関連事項というものが調査、審議の対象になるであろうというようなことを私どもは予想しておるわけであります。で、逆に裏返して申しますると竹下先生御指摘のように、現在恩給を受けておる方々、そうして現在の制度なりあるいは旧制度なり、そういうものを包含した一つの現在における恩給制度の上で甲と乙とがアンバランスであったり、また前のものとあとのものとがアンバランスであったり、そういうようなことがないように、一つ十分総合的に検討していこうというのが調査会のねらいです。
  143. 委員長(亀田得治君)(亀田得治)

    委員長亀田得治君) ちょっと速記をやめて。    〔速記中止〕
  144. 委員長(亀田得治君)(亀田得治)

    委員長亀田得治君) 速記をつけて下さい。
  145. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 どうも今の答弁では範囲が非常に限定されるようですね、だからおそらく衆議院あたりで付帯決議が出てきたゆえんのものもそこにあるのじゃないかと思います。これはすでにもらっている人を重点に置いて調査するということが主点で、新しく対象にしようというようなものは四号にありますけれども、これはごく限られた問題であって、私はどうもこの調査ははっきり明確に、どういうものに重点を置いてやろうとしているのか答弁してもらいたいと思うのです。  そこでその際に、四号のその他三号に関連する事項、あなたは、いろいろ関連するものがあると予想されますということでありますが、その予想される今あなた方が考えているもの、どういうものですか、予想されるもの。
  146. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) 第四号で予想されるものは、たとえば現在陳情、請願等に現われておりまする問題から見ましても、旧満州国の官吏としてあるいは軍人として在職しておった、そうして終戦になった、こういう方々が、また再び日本政府の官吏として就職した場合は、昔の満州国時代の在職年を通算する問題とか、さらには広がって、再就職いたしましても向うで在職した期間に対する退職給与というものを、向うの政府において決裁を受けておられる、その退職給与というものについて、恩給法上の処遇を与えられたいという要望等も出ておりますので、結局そういうふうな問題は第一号にも第二号にも該当しない問題でございますので、どうしても第四号で関連した事項ということで、そういう問題が扱われなければならない、こう思っております。
  147. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 先ほどから新しく恩給を受ける人とか、たとえばその三号に学徒動員や徴用等というものも入れようという問題は、これは想定していないのじゃないですか、想定しているのですか。
  148. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) いや、今申し上げましたように、新しい……
  149. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 それだけですか、その二つだけですか。項目を言って下さい、予想されるもの、満州国の官吏、軍人、それから。
  150. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) いやそればかりでなく、それから陳情、請願から出てくる問題を拾って参りますと、旧外地鉄道職員として在職した期間を、恩給法上の在職年に通算しろというふうな問題、それから援護関係になりますると、先ほどちょっと触れましたように動員学徒ですか、開拓団員の戦没者の遺族に遺族年金を支給されたいというふうな要望であるとか、そういうふうなものが考えられるわけです。
  151. 秋山長造君(秋山長造)

    秋山長造君 ちょっと関連して。今おっしゃるのは、それは陳情としてそういうものが出ておるということをおっしゃったのであって、この案を作った政府の立場としては、そういうものは初めから予想していなかったのじゃないですか、今の問答から聞くと。やっぱり満州国の官吏、軍人等の恩給を通算するというような問題は予想しておられたでしょうけれども、徴用者とか動員学徒等の問題等は、あなた予想していなかったのじゃないですか。ただ永岡君からそういう質問が出たから、あなたは苦しまぎれにそういう陳情書が出ておりますという事実をおっしゃるんで、その点どうですか、あなた、はっきりおっしゃって下さい。
  152. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) その点は私からお答えするより、むしろ厚生省からお答えした方が確からしく見えますから、どうぜ一つ
  153. 説明員(小池欣一君)(小池欣一)

    説明員(小池欣一君) 第二条の第四号の「前三号に関連する事項」というのはどういうことを予想しておるか、こういう御質問であろうかと思います。厚生省で担当いたしております戦傷病者戦没者遺族等援護法の関係におきましては、ただいまいろいろ御指摘のございました学徒動員によってなくなりましたところの学徒の方の遺族、あるいは徴用を受けまして働いておられるうちになくなりました方の遺族の方、あるいは満州開拓団、あるいは特別未帰還者というような方に対する援護の問題にあわせまして、こういう方々が戦傷を受けられた場合、こういうような場合につきましても、戦傷病者と関連をする事項ということで調査会ができました暁に、私どもの方ではやはり考えて行かなければならない事項ではなかろうかというふうに考えております。
  154. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 考えて行かなければならないということではなくて、それを対象にするつもりでこの法案を作ったのですか。今言われたから研究してみようかということになったのですか。
  155. 説明員(小池欣一君)(小池欣一)

    説明員(小池欣一君) この調査会設置法案ができます折に、当然そういうものも私どもとしては考えなければならぬじゃないか、こういうふうに考えておる次第であります。
  156. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 対象になることは、大体四号のあれはわかりますが、恩給局長の方にお尋ねするのですが、今恩給をもらってない文官についてのあれは二号でやるのですか、それとも公務員制度調査会の方でやるのですか、人事院の勧告に基くあれでやるのですか、どっちですか。
  157. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) 二号は少くとも文官の恩給に関する事項でございますから、たとえば、われわれ在職中のものがやめた場合の恩給についても、これは調査審議の対象にすることができるようなわけであります。従いまして、たとえば一例をあげますと、自衛官の恩給というものは、これは停年制というものがあるから若年停止というものは排除しろ、今四十才から全額停止になっておりますが、自衛官が四十才でやめればこれは停年制でやめたのだから全額若干停止というものはよくない。全面的に支給するようにしろというような要望もございます。こういうような自衛官に関する恩給を若干停止するとか、あるいは警察官に関しての恩給は若年停止を排除する。こういうような問題につきましては、一応条文の上では対象にし得るわけであります。しかしながら、そういう問題につきましては、一方、将来の新退職年金制度で打ち立てるべき内容にもなっているわけです。従いまして、この調査会として、もちろんそのワクの中に入りますけれども、その問題についての回答をここで与えるのがいいかどうかということは、当然、調査会として考えなくちやならぬ問題だと思っております。
  158. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 この現在恩給をもらっておる人に対する額の問題とか、調整の問題が対象になると私も想像するのです。しかしそれは、そうなれば今度は結果的には、将来もらうであろう文官の問題にも結果的には影響してくると思うのです。そこであなたのお話によると、一応対象にするけれども、現在の公務員全般についても新退職年金制度で、いずれ恩給が変るわけですから、名前は変っても、いうならば内容は恩給ですね。恩給ですが、それは公務員制度調査会や人事院からいろいろ勧告があるから、それにはあまり触れたくない。こういう意向のようですね。明確に言えることは、今予想されることは額と調整ですか、それだけを大体考えているのですが、新しくその分野を拡げて、どういう制度がいいかということは考えていない。そういう調査を目途にしているわけですね。
  159. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) 御指摘の通り重点は、重点はと申しますか、この調査会の審議の対象になる量的な大きさから申しますれば、すでに退職した方々の中での軍人と文官の間、軍人相互の間、あるいは文官相互の間におけるいろいろな公平を保とうじゃないかというような面から見たいろいろな問題があるということから、この調査会でそれらの問題を討議するということから出発しておるわけでありまして、この調査審議の対象といたしましても、そういうものが大部分だということを申し上げておきます。
  160. 竹下豐次君(竹下豐次)

    ○竹下豐次君 同じようなことを繰り返しお尋ねしますが、恩給の問題につきましては、恩給なんてやめてしまえという意見もありますわね。もとは、役人は民間の方よりも月給は割合に少かった。だから恩給であとを救済しようというような理川もついていたが、今は、官と民との給料も比較的接近して、どっちが高いか、どっちが平均して少いかということについては、これもまた見る人によって意見が違うぐらいに接近しておる。そういうようなことと、国家財政の都合なども考えて恩給などはやめてしまえ、役人だけうまいことをしてるじゃないかという意見も一部にはあるのですが、それもまた二つに分れて、これから採用する人をそういうことにすればいいじゃないかという意見、それから順々にそういうふうに返って行ったらよかろうという意見もあるのです。そういうふうな問題は、この調査会で取り扱う範囲の外にしてあるわけですか。先ほどから承わって、恩給制度そのものの根本問題については、この調査会で取り扱わないということになるわけですか。
  161. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) この調査会は今申し上げました通り、現行の恩給制度及びそれに関連したその他の援護法の構成、そういうようなワク内で起っておりますところの問題、これをどうするかということに限定しておるというのか、このねらいであります。
  162. 伊藤顕道君(伊藤顕道)

    ○伊藤顕道君 そうすると、局長にお伺いしますが、先ほどの言葉を要約していうと、現恩給受給者の不合理是正、こういうことに尽きるわけですね。重点をおいておるのは、現在恩給を受けておる人方のいろいろな不合理是正、それがねらいであるというふうに解釈していいわけですか。
  163. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) すでに退職された方々で恩給を受けておる方の間におけるいろいろな問題が主であるかという点は御指摘の通りであります。なおすでに退職しておるけれども、恩給上の処遇なり、あるいは援護上の処遇を受けておらない、この恩給上の処遇につきまして、すでに恩給を受けておる者と同じようにこれを扱ったらどうか、大体同じような条件であるにかかわらず、一方は恩給をもらっておる、一方は恩給をもらっていないということにおけるいろいろな調整問題というような問題かあるといたしますれば、そういうような問題もこれを対象にしたい、こういうふうに考えております。
  164. 伊藤顕道君(伊藤顕道)

    ○伊藤顕道君 そうしますと、援護課長にお伺いしますが、今承わりますと、大事な動員学徒とか、あるいは徴用者、そういう者については、いつどこで重点的に考えられるのか、今度のこれではそこに重点を置いていないということがはっきりしたわけですね。
  165. 説明員(小池欣一君)(小池欣一)

    説明員(小池欣一君) 徴用者あるいは動員学徒につきましては、なくなった場合には遺族の方々に現在三万円の弔慰金しか出ていないのでありますので、いろいろ陳情、請願等も出ておるのは御承知の通りであります。これは第二条の第四におきまして、他との関連において十分これを考えて行くというように私ども考えておるわけであります。
  166. 伊藤顕道君(伊藤顕道)

    ○伊藤顕道君 そういうことであれば一応了承できますが、これは繰り返して申し上げるように、動員学徒とか、徴用者については、軍人遺家族に対する処遇と何ら差別なしにやらなければならぬ事情のものが相当あるわけですね。これについては、ただついででなしに、十分そこに重点を置いてやっていただかないと、私どもとしても納得できないと思うのです。その点についていま一度決意のほどを伺いたいのですが。
  167. 説明員(小池欣一君)(小池欣一)

    説明員(小池欣一君) ただいま御指摘の点は、十分重点を置いてその調査をしていただくというふうに私ども考えておる次第であります。
  168. 伊藤顕道君(伊藤顕道)

    ○伊藤顕道君 次に、この法案を見ますと、この件につきましては、事柄は当然慎重に審議されなければならないと思うのですが、こう見ますと、昭和三十二年の十一月十五日を目途として内閣総理大臣に報告するというふうに、だいぶ先を急がれておるような感じを受けるわけです。どうして、そう急がなければならぬ事情か何かあるわけですか、その点について……。
  169. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) これは大体半年ぐらいの期間をかければ、この審議内容というものは大体一応の結論が得られるであろうということで、半年ぐらいの期間を先に見ましたということと、それからまた、こうした調査会はできるだけ集約的に勉強していただいて、早く結論を出していただきたいということと、それからもう一つは、何分にも恩給の問題なり、援護の問題というものにつきましてのいろいろな解決方策というものが、当然予算に響いて参りますので、それが予算に響くものとすれば、来年度の予算編成に間に合うように答申をしていただきたい、こういう意味で、大体この半年くらいの先を見て十一月の半ばということにいたしたわけであります。
  170. 伊藤顕道君(伊藤顕道)

    ○伊藤顕道君 そうしますと、課長に重ねて伺いますが、この半年くらい、十一月十五日くらいまでを目途として、大体の徴用者とか動員学徒についての調査を十分なし得る、そういう目算はあるわけですね。
  171. 説明員(小池欣一君)(小池欣一)

    説明員(小池欣一君) この問題は援護法が制定になりましたのが昭和二十七年でございますが、その後引き続き問題になっておる事項でございまして、厚生省といたしましても、従来ある程度の調査もいたしておりますというような関係で、この予定で、この第六条で私どもはそれほどの支障はないのじゃないかというように考えております。
  172. 伊藤顕道君(伊藤顕道)

    ○伊藤顕道君 次に、この委員を二十五名、内閣総理大臣か任命するという項がございますが、何か委員を任命する場合に基準というようなものが設けてあるのですか、まずそれをお伺いしたいのです。
  173. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) 大体の数で、内訳につきましては、それぞれの定数をきめておりませんけれども、ただいま私どもの心づもりといたしましては、他の振り合い等もございますので、国会議員は九名、関係行政機関の職員五名、学識経験者十一名という構成で参りたい、こういうように考えております。
  174. 伊藤顕道君(伊藤顕道)

    ○伊藤顕道君 そのうちで比較してみますと、学識経験者をやや多く見ておるわけですけれども、これはまあ公正な意見が反映されるようにという、そういう意図であろうと思うのですが、それにしても、いま少しふやした方が、ほんとうに公正な意見を反映させるのには、これは結局こちらを加えると十四対十一ということになるわけですが、いま少し学識経験者をふやした方が、ほんとうに公正な意見が反映されるというふうに私どもとしては考えられるが、その点についてはいかがですか。
  175. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) これは人数の問題は、多ければ多いほど各界広くというわけでございますけれども委員会の運営の面から申しましても、なかなかそう大きな委員会はまた運営がむずかしいし、また国会議員から選ばれますところの九名の方々はもちろんのこと達識の方で、大局的な見地から広い視野に立っての御意見が出るわけでございます。役人の関係を除きましても、十分二十名の委員方で公正な各界の意見が反映する、こう思っております。
  176. 伊藤顕道君(伊藤顕道)

    ○伊藤顕道君 各項の数の割当等について今伺ったわけですが、この国会議員なり、行政機関、学識経験者、それぞれの各項については、具体的にはどうお考えになるのですか。
  177. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) これは九名というふうに割り出しましたのは、社会保障とか、在外財産とか、いろいろな今までの委員会の例を見まして九名と考えておりますが、これは衆議院の方か五名、参議院が四名、それぞれ各党各派から出しておるというようなことであります。
  178. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 この六条の答申の時期ですが、十一月十五日までに総理大臣に報告しなければならぬということになっておりますが、このねらいとするところは、三十三年度予算に反映できるような時期を選ぶと、こういう御説明がございましたが、答申が十一月十五日までにという、かりにこの日が守られたにしましても、それを内閣が受けて検討して予算に反映させるということになりますと、予算の編成には間に合わないような気がしますがね。大体各省はおそらく折衝はこの夏ごろから計画を立てる、だろうと思うのですが、その辺の自信はあるのですか、おそきに失しやしませんか。
  179. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) 今までの例によりまして、九月の初めには一応の概算要求を出すわけでございますけれども、重要政策等におきまして、なかなかきまらないもの等につきましては、それをはすして、骨格的な概算要求を出して、そうしてその年末ぐらいまでにきまりました重要政策を盛り込んで、そうして最後の折衝にかかるというふうな従来の経験に徴しまて、この辺で答申をいただければ、来年度予算に反映させることはそうおそくはないと、こう考えております。
  180. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 その時期の問題もさることながら、これは政府の方で出した案ですからね。内閣提出になるわけですから、おそらく内閣では、そういう法案を出して十一月十五日ということを明示する限りにおいては、この三十三年度予算でこれを実現させるという方針がある、そういう決意のもとにこの調査を進める、結論が出次第、必ず三十三年度実施するのだ、こういうふうに解釈していいわけですか。これはあなたでは御答弁できないと思うのですが、あなたでもけっこうですから、一つその辺の考え方ですね、決意ですな、これは。
  181. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) これは来年度予算の編成のことで、私から申し上げても、これはあまり重みがないわけなんでありますけれども、この調査会の法を作りましたときの趣旨、または大蔵省等とも折衝いたしました経過から考えまして、この答申を得まして、その答申をできるだけ尊重して、来年度予算に組んで行く、少くともわれわれの立場といたしましては、答申をいただいて、それでもって政策的な予算というものは、さらにそれに加えて行くというふうな考え方でおることだけは、これは恩給局の事務当局としても言えることであります。
  182. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 これはそれじゃ大蔵大臣か、しかるべき国務大臣に、持てる人から答弁をもらわないと、ただ調査会を作ったわ、尊重しますわと言っても、どうもこれはあんまり気に入らぬということになって、結局、従来公務員制度調査会を作ってもあの答申が重んじられない。人事院というはっきりした機関を作って、それから答申された公務員の退職年金制度すら四年間も放置されているという内閣ですから信用できないのです。これはあらためて、はっきりした大臣から、大蔵大臣は池田さんか、だれになるか知りませんが、岸総理大臣は間違いなく総理大臣で、自民党の政権が続く限りやると思いますが、そういう責任あるはっきりした答弁を次の機会にお願いしたいと思います。  続けて質問いたしますが、第二条の四号が私はふに落ちないのです。今あげられたのは、満州国官吏、軍人、外地の鉄道職員、これは外地の鉄道職員ということになれば、これに類似した事業の職員なんかもあるのですね。満州電々なんかあるでしょうね。そういうところとか、動員学徒、それから満州開拓団団員、徴用者、それから特殊会社でしたか、今厚生省の援護課長の言われるのは特殊会社のように聞きましたが、今予想されるものをここで列挙していただけませんか。「その他前三号に関連する事項」というものは、今予想されるもの、緊急事態として新しく起ってくるのは別だけれども、あるいはうっかりして忘れていたというものがあるかもしれませんが、大体予想されるものがあると思います。それを一つはっきりここで明示してもらいたいと思います。
  183. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) 先ほど申し上げましたのは、私どもが一応今までに国会に対する陳情、請願なり、あるいはわれわれの方の事務当局に対して出て参りました御要望なりというものをずっと洗いざらい一応検討いたしましたが、一号、二号、三号で盛られないのは先ほど申し上げたようなものだけであろう。そのあと、またこれから先いろいろあるいは陳情、請願等が出て参りますかもしれませんが、今までの私どもの調べた範囲内ではその程度であろうと、こう考えております。
  184. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 満州の場合に例をとりますと、官吏、軍人、それから鉄道が入るわけですか、外地鉄道、それから満州電々がどうなりますか、入るのですか。
  185. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) 満州電々の職員については、今までの陳情、請願等をずっと調べました結果出ておりません。
  186. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 陳情があれば検討するが、陳情がなければ検討しないというのはちょっとおかしい。もう少しはっきりした……いかなる基準できめるのか。
  187. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) いかなる問題があるかということになりますれば、これはたとえば外地鉄道に関する限りにおいては、これが問題になるのならこういう問題もあろう、こういう問題もあろうと、いろいろな問題がある。もちろん陳情、請願のあれとしては、利益団体としては、それだけのものとして出てくるでありましょう。しかしいろいろな問題があるわけなんでありまして、それを洗いざらい私がここでもって全部一から十まで今書いて出せ、こう言われても、すぐには頭に浮かんでこないので、調査会が発足いたしまして、そのときの議題を整理するという幹事役になりましたときにはそういうことをやります。
  188. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 それはきわめて頼りないですね。言われたから一つ考えてみましよう、陳情が出たものについてどういうものが関連するか、これから検討してみようという、そういうあいまいなやつなんですか、第四号というものは。少くともこの程度のものはやりたいというものはあったのじゃないですか。「前三号に関連する事項」、こういう文句を考える場合には、ある程度想定があると思うのです。ただあげられたそのものしか想定しなかったのですか。
  189. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) この第四号を書きましたときは、先ほども厚生省から説明がございましたように、動員学徒の遺族に対する遺族年金の給付の問題につきましては、前国会あるいは前々国会から付帯決議の趣旨もございますので、そういう問題は明確に頭の中に入っておったわけであります。それがあるがゆえに、第三号で読めないだろうというので第四号を置くべきであるというふうな法制局の議論も出たわけであります。そういう頭にある問題というものがあったからこそ四号が置かれたわけです。従ってまた四号というものが幅広く活用されて、こういうものも四号で読めるじゃないか、調査会の対象にすべきじゃないかというふうな問題は、それはこれからあり得ると思いますけれども、頭に置いて考えたというのは、先ほど援護局の方から言われました動員学徒の問題というようなことが頭にあって、そうして四号というものが書かれた、こういうふうに御了解願いたいと思います。
  190. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 そうすると、特に四号を起案するときに想定したものは、動員学徒及び徴用者、その程度しか考えていなかったということでありますが、これではやはり不十分だと思うので、私は一つ例をあげて、こういうものが対象になるのかならないのか聞いてみたいと思うのですが、北支那開発、中支那開発、それぞれ特殊会社の法人がありますね、国策会社です。それの職員は対象になるのですか。
  191. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) ちょっとお尋ねがよくわからないのですが、北支那開発の職員のあれをどうする……。
  192. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 それによって戦没した者についての援護ないし扶助料ですか、恩給、そういうものを出すようなことがいいか悪いかということについて研究するのかしないのか。
  193. 説明員(小池欣一君)(小池欣一)

    説明員(小池欣一君) ただいま御質問のありました方々につきましては、もとの陸軍または海軍の要請によりまして戦闘に参加した。そうしてその結果、負傷または疾病にかかられてなくなったという方につきましては、現在三万円の弔慰金を差し上げているわけであります。こういう方々につきましても、動員学徒あるいは徴用工のような国家総動員法によりまして協力させられたものと同様の扱いを従来しているわけであります。当然今度の調査会におきまして、こういう問題もあわせて検討を願わなければならぬというふうに考えております。
  194. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 それは戦没した人はそれで一応対象になりますが、これによりますと、二号に関連するということになるわけで、四号を想定した満州国の官吏、軍人、つまり言うならば公務員です。あの特殊法人についての職員、これは戦没しない人は対象にならないのですか、なるのですか。
  195. 説明員(小池欣一君)(小池欣一)

    説明員(小池欣一君) 遺族援護法におきましては、陸海軍の要請によらないで死亡した方は対象になっておりません。
  196. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 遺族の援護についてはそうですが、第二号はこれは現に生きている人です。恩給をもらっている人について検討するというのです。台湾総督府とか、朝鮮総督府とか、そういうところに勤めておってやめられた人、これは現にもらっている人だけを限定しているのですか、そうでないという話であったものですから私聞くのですが。
  197. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) 現にもらっている人はかりでなく、現にもらっている人あるいは恩給法上の公務員につきまして、恩給上の処遇というものが問題になっている限りにおきまして、それを問題にしよう、こういうのが第一号、第二号でございます。しかしながら、現在、恩給法上の公務員でもない。恩給をもらっておらない。しかし恩給法上の公務員と同じような扱いにして、しかも恩給をもらいたい、こういうような問題がありとすれば、それは四号の問題として扱われるべきものじゃないか。そういう意味におきまして、御指摘のいわゆる民間会社、外地の国策会社と申しましょうか、そういう会社にお勤めになられた方について、これを恩給法上の公務員と同じように扱ってくれ、そしてそれにも恩給をやってくれと、こういうような問題がありとすれば、それが果して妥当であるかどうかということを検討するということになれば四号で扱うと、こういうことになろうと思います。
  198. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 なればじゃなくて、今私もこの恩給の内容は詳しく知らぬからお尋ねするわけですが、こちらから向うに派遣されて、官吏をやめて向うの職員になった、特殊会社の、国策会社の。そしてこっちへ帰ってまた勤めておる。その期間は一体通算されることになっておるのですか、いないのですか、そういう期間の通算等についても検討の対象にするのか、それは旧外地鉄道職員については考慮するということを、あなたは検討の対象になるということを言ったから。
  199. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) 恩給法の上では、日本国政府の職員、すなわち恩給法上の公務員が外国政府の招聘によって外国政府に就職いたしまして、そしてさらにまた日本国政府の職員として復帰してくる、こういう方につきましては、外国政府の職員としての在職期間というものを通算するという措置が、恩給法ですでに講ぜられておるわけであります。ところで日本政府の職員、すなわち恩給法上の公務員から、外国政府ではなくて、一般の会社、国策会社と申しましょうか、そういう会社に就職された方について、ただいま申し上げました恩給法上のそうした特例は一応ないわけであります。従ってそういう方で外地へ行かれ、外地の満州とか、北支とか、そういうところの国策会社に勤められた方は、一ぺん役人を退職して、こちらで日本国政府としての一時恩給なり普通恩給というものをもらって、そして向うへ行って、そして向うで退職されたときに、向うの会社の退職給与というものを受けて、それからまた、こちらに再就職したということになるわけでありまして、その場合には通算が働かないわけであります。ところで、まあ向うでの在職期間というものに対して、本来、退職給与を受け得べかりしものを、向うの機関が解体したためにその退職金を受けられなかったと、こういうものをどうするか、こういう問題であろうと思います。そういう問題を恩給法上の問題としてこれを取り上げろと、こういうことの御要望であるとすれば、それは果して恩給法上の問題として扱うべきが妥当であるかどうかということを調査審議するといたしますれば、やはりこれは第四号の問題であろうとこう思っております。
  200. 竹下豐次君(竹下豐次)

    ○竹下豐次君 どうせ調査会ができますれば、政府から諮問されるのか、どうでございますか。
  201. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) これは調査会は、独自の権限と申しましょうか、第二条に、この法律そのものでもって、こういう事項を調査審議するという権限を与えられておりまするし、それが任務となっておりまするから、諮問をしなくても、これについての問題点を調査審議して、そしてその結論を内閣総理大臣の方に出す、こういうことになっております。
  202. 竹下豐次君(竹下豐次)

    ○竹下豐次君 その権限はあるだろうと思いますが、諮問される考えはないのですか。諮問機関ということは、これにはうたってありませんね。だから諮問されないのかもしれませんが、諮問される心がまえはないのですか。在外財産の問題のときに諮問されましたね。諮問されるということになれば、範囲が非常にはっきりしてくるのです。先ほどからの問題等が非常にはっきりしてくるわけなんです。諮問されるということでありました。諮問されるということになれば、先ほどからの第四号に対する質問応答が消えてしまいます。徴用工の問題について諮問するのか、学徒の問題についても諮問するのか、しないのか。諮問に対して答えるということでありましたら、そうすると、その徴川工のことについて諮問がなかったならば、もう調査会では審査しないことになるだろうと思います。それは権限もありましょうから、別にそれも考えられましょうが、大体そういうことになるのじゃないかと思うのですが、諮問される気持であるか、ないかということは、まだはっきりしないわけですか。
  203. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) これは普通の諮問してその答申を得るという形であれば、そういうふうなことを書くわけでありますが、調査会も独自の権限を、一号から四号までに掲げられた範囲内のことを調査審議して、そうしてやるわけでありますが、もちろん調査会の御審議を願う際には、幹事役としてわれわれなり、また厚生省なり、それが一号から四号に含まれるすべての議題というものを整理して、そうして調査会というものが調査審議の万全を期することができるようにおぜん立てをするということは、これはわれわれ事務当局の任務であります。こう考えております。
  204. 竹下豐次君(竹下豐次)

    ○竹下豐次君 諮問されないということになりますれば、第四号の解釈は、調査自身がやるのですから、徴用工を含むか含まないか、動員学徒を含むか含まないかというような問題は、これは調査自身解釈してきめればいいわけであります。こういうことになるわけですね。
  205. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) その通りでございます。
  206. 竹下豐次君(竹下豐次)

    ○竹下豐次君 その通りになりますね。そうすると、諮問される意思は今のところないというふうに、この際は了解しておいてよろしゅうございますか。
  207. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) その通りでございます。
  208. 竹下豐次君(竹下豐次)

    ○竹下豐次君 普通の場合、調査会とか、審議会というものでは、その会長というものができて、ある程度の、事実上政府と連繋をとって、政府の方は、どのくらいの範囲でこれはわれわれ調査してもらいたいという気持があるのかどうかということを実際、正式でないにしても、下打ち合せがあるのが普通なんですね。そうすると、あなたの方としては、まず諮問の形をとるといなとにかかわらず、徴用工の問題は取り扱わないようにしてもらいたいとか、動員学徒の問題は入れてもらいたいとか、二つとものはてもらいたいというような心がまえがはっきりしなければならないと思います。そうでないと、幹事におなりになった人は、実際返事のしようがない。調査会では、これはどうですか、ちょっと私答弁ができませんから、帰って政府に聞いてみますというようなことになってしまわなければならぬ。そんなぐずぐずしておったら、十五日に間に合いませんね。だからこの点は先ほどからの御説明を聞きますと、まだあなたの方の心がまえがはっきりしていないのじゃないかというような感じを私は受けたのですが、それがはっきりしておるなら、もうちっとはっきりした御答弁ができるのじゃないだろうか。請願がどうだ、こうだということでなくして、そういう感じを私は受けたのですが、どうなんですか。在外財産引き揚げのあれなどは、非常に限定された諮問が出ておる。私も実はあれをやったのです。だから比較的問題が審議会としては取り扱いやすかった。これを自由に解釈しろ、審議会で勝手に取り扱えということだったら、これは恩給制度そのものの根本的問題に触れ得る形になりましょう。この法律では。先ほどの御説明の中に、公務員制度調査会の方でも答申しておるから、それと重複しないように、抵触しないようなふうにしないというと、ちょっと工合が悪いところもあるからという御説明がありました。これは私は政府としては一応お考えだろうと思います。しかし、そんな制限は第二条に入っておりませんでしょう。だからその点は、もう少し政府の方ではっきり練っておいでにならないと、調査会が起ってから混乱しやしないかと思います。
  209. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) その点の御注意はまことにごもっともでございます。私どもこの幹事役として委員会の運営の下働きをいたして参ります立場といたしましては、できるだけ議題というものを整理して、そうしてこの調査会の間口があまり広くなり過ぎて収拾がつかなくなるというふうなことにならないように、できるだけ議題を整理して、そうして差し上げたい、こう思っております。しかし在外財産調査会のように単一の問題でないのでございまして、問題はたくさん分れております。従いまして、その幾つかに分かれておるたくさんの問題を個別に、また政府の頭でこれだけをやってもらいたい、これはネグレクトしてもらいたいというふうな、政府の頭で取捨選択して諮問していただくというのもこれはいかがかと、むしろ問題とされておるところを一応整理して差し上げて、それをどうするかということの御判断を調査会の方にお願いするという方がいいのじゃないか、こういう意味で、むしろ諮問という形を避けたというところでございます。
  210. 委員長(亀田得治君)(亀田得治)

    委員長亀田得治君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  211. 委員長(亀田得治君)(亀田得治)

    委員長亀田得治君) 速記を起して。
  212. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 これは恩給局長にお尋ねするわけですが、第二条の一号で、旧軍人の中に旧準軍人を含むということを明示されておりますが、これは軍属とか、司政官とか、ああいうものではないかと思いますが、具体的に職純はどういうものか、明確にしてもらいたいと思います。
  213. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) 準軍人の概念は、旧恩給法の二十一条の第二項で、「準軍人トハ左ニ掲クル者ヲ謂フ」とあって、一号で、「陸軍ノ見習士官及海軍ノ候補生」、二号で、「勅令ヲ以テ指定スル陸軍又ハ海軍ノ学生生徒」というのであります。
  214. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 そうすると、軍属、司政官等は入らないのですか。たとえば看護婦あたりでも、従軍の軍属で野戦病院あたりに行っておると思うのですが、それは対象にならないのですか。
  215. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) 軍属と申しましても、いわゆる援護法でいっておる軍属と、それから恩給法でいっておる軍属と、概念が違うのでありますけれども、御指摘の陸軍の看護婦を例にとりました場合に、それが判任官の看護婦である場合を例にとれば、これは恩給法上の公務員であります。またもしそれが判任官でないという場合には、援護法上のいわゆる軍属と。こういうことになるわけであります。まあ一般的に考えまして、大体恩給法上の公務員でない、いわゆる高等官、判任官でない、いわゆる官吏でないという方々で陸海軍部内の職員という方々は、おそらく援護法の軍票という範囲間に入るという概念で、軍属と考えて差しつかえないのではないかと思います。
  216. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 そうすると、婦とか、司政官とか、郵便夫とか、いろいろありますが、ああいう軍属の人の援護は、今度の対象にならないのですか。
  217. 政府委員(八巻淳之輔君)(八巻淳之輔)

    政府委員八巻淳之輔君) それは、そうした恩給法上の公務員でない方々で陸海軍の雇用関係にあった方々、そうした職員の方々についての問題は、これは軍属として援護法上の問題になるわけであります。援護局の方の御所管の援護法の処遇を受けるわけであります。
  218. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 そうすると、華人の中でも、判任官になっていないもの、下士官は判任官ですか、そうすると、兵の方は旧軍人だから一号に入るわけでしょう。ところが看護婦とか、任官していない人はこれに入らないのだ、援護局の方でやるのだと、援護局の方でまたこれに見合ってやるのですか。
  219. 説明員(小池欣一君)(小池欣一)

    説明員(小池欣一君) ただいま御質問のありました件は、第三号の中で考えなければならぬと思います。
  220. 永岡光治君(永岡光治)

    ○永岡光治君 「前二号に関連する戦傷病者」、その中に入るわけですね
  221. 委員長(亀田得治君)(亀田得治)

    委員長亀田得治君) それでは、先ほど委員より要求のありました資料は、なるべく明日開会するまでに御提出をお願いしておきます。別に御発言がなければ、委員会はこれにて散会いたします。    午後四時十九分散会