○
国務大臣(
岸信介君) 憲法調査会法は第二十四
国会において成立した
法律でありまして、自来その
委員の構成等についていろいろ議論もございまして、まだ実際に発足しておらないのであります。私は実は憲法改正の問題につきまして、私自身は自主憲法論者でありますが、しかし国内において、いわゆる平和憲法擁護論と、それから憲法改正論とが対立しておるという実情にあることは、私はこういう国の基本法であるものについて、そういうふうに政党において対立した
考えを持っておるという形は、非常に私は遺憾の
状態であると思う。もちろん国民が全部こぞって一致するということにはできないかもしれませんけれ
ども、少くともこれは当然のことでありますが、憲法で、
国会において三分の二以上の同意がなければいけませんし、さらに国民投票において過半数を得なければならないものでありますから、私はやはりこういう問題については超党派的に研究をされ、
結論を国民に示して、その国民の
理解と判断にまかすというような形に進んで行くことが望ましいことである。そこで憲法調査会法を、私が当時自民党の幹応長として提案をする際に、社会党にもわれわれの
考えを率直に申し込んで、両党の共同提案にしようということを私は申し入れたのであります。またそうすることがこの
法律の性質上望ましい形であると私は信じておったのでありますが、不幸にしてその同意を得ることができなくて、自民党の単独提案という形になりました。しかしこれが
国会を通通し、
法律が成立した後におきましても、私はこの調査会においては、
両方の理論を持っておる人が十分に各方面からこの憲法を検討して、その議論がこの調査会において現われ、たとえ少数の
意見でありましても、二つの
意見として国民に示されるというような形において、多数はかりに甲という
結論になったけれ
ども、少数の
意見として乙という
意見があるということも示して、その
理由も十分国民に明らかにして、そして国民の判断と
理解によるところのものにして行かなければならぬ、こういう
見地に立って、社会党の方々にもこれに参加されるように、幾たびか私はあらゆる方法でこのことを説得いたして参ったのであります。しかし今日までついにその同意を得ることができません。そこで、もちろん
国会に席を持つ者だけでなくて、広く国民のうちに憲法に関する有識者を網羅して、この問題を検討することが望ましい、こう
考えております。従ってたとえ社会党の方が参加されないという場合においても、私はこの調査会の運営を見られ、またいろいろな国民の世論等も聞かれて、社会党が
一つ考えをひるがえして参加されるようになるように期待いたしまして、奥議員の定数のうち、社会党が参加される場合の席をあけておいて、実は出発したいというのが私の
考えであります。私はこれはまじめに、社会党の方も国民の世論を聞き、憲法というものに対して
考えられるならば、そういう
態度が正しい
態度であり、望ましい
態度である、実は私自身、我田引水でなく国家のためにそう
考えておる。そういう
意味において、私はやりたいと思いますが、今
お話のように、
国会にそういう制度でなしに
委員会を置いて、そうして両党の
国会における構成に準じた
委員会を作ったらどうかという
お話でありますが、私は今のような趣旨でできた調査会にも御参加にならない社会党では、そういう
国会内に置いた
委員会にも入らない、もしくはそれをそういう制度にするということで、またさらに混乱を生ずるようなことが絶対にないということの保証が私にはつかないのでありまして、むしろせっかく
国会の
意思としてきまった
法律を、先ほど申したような悲願を胸に込めつつ
一つ出発いたしたい、こう思っております。