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参考人(渡邊
素良君) 国立病院や国立療養所の
職員で組織しております全医労の書記長の渡邊でございます。
先ほどから多くの
参考人から今回の
給与体系
改正と申しますか、に関する多くの意見が出されたことと思いますので、私は特に国立病院、療養所の
職員に
関係の深い職種の供給表につきまして意見を申し述べたいと思います。私たち病院、療養所の
職員の俸給表は、今回の
改正によりまして、現在まで
一般職俸給表一本でありましたものが、行政職俸給表の(一)、行政職俸給表の(二)、また医療職俸給表の(一)、(二)、(三)、この五つの俸給表の適用が行われることになるわけでございますが、行政職俸給表の(一)及び口につきましては、それぞれ
先ほど来
参考人の方から御意見が出たことと思いますので、後ほど少しく触れるということにいたしまして、この際は医療職俸給表の(一)、(二)、(三)についておもに意見を申し述べたいと思うわけでございます。お手元に「医療職俸給表に対する意見」と書きましたお粗末なものでございますが、資料を差し出してございますので、御参考にしていただきながらお聞き願いたいと思います。
まず冒頭に書いてございますのは「医療職俸給表の等級について」、今のように各俸給表の間で、医療職俸給表の(一)は五等級、表の(二)は六等級、表の日は四等級と分れておりますが、これが実際に病院、療養所の運営のためには全く不都合であるというように思われるのでございます。でありますので、
衆議院におけるいろいろな討議もあり、社会党、自民党両党一致による
修正というふうに決定をしたわけでございますが、当参議院
内閣委員会におかれましては、いま一度この点については病院、療養所の実情をあわせ
考えられて、各俸給表間の等級の差をなくするように御
審議を願いたいと思うわけです。
その
理由と申しますのは、まずこのように
一つの俸給表の中に等級を分けることが、病院、療養所の実態から非常に無理ではないかというふうに思うものでございます。また
先ほど人事院の
給与局長も申しておられましたが、
昭和三十年の十一月に出されました
公務員制度
調査会の答申案には教育、研究、医療の各職権につきましては、職階制を導入することは非常に無理であるというふうな答申が出されているわけです。この点については
人事院は、今回の
人事院勧告は職階制をそのまま導入したものではないということをあらゆる機会に申し述べておられるようでございますが、どう言われましょうともわれわれが
考える限り各課長、係長、部長、そういうものについて俸給表の等級を分けていくということは、職階制の導入であるというふうに断ぜざるを得ないわけです。で、そういうふうな職階制の導入が病院、療養所でいかに無理であるか、あとしばらく意見を申し述べたいと思うわけですが、そこの表に出しております現在の病院、療養所における医師の定員の分布をまずごらん願いたいと思うわけです。
それをごらんいただくとおわかりになりますように、病院長におきましても十一級からの病院長がおります。ところが実際には十三級の医員がいるわけでございまして、十三級の医員にとりますと、自分と同じ
給与及びそれ以下の病院長が全国で二百二名もいるということになっております。これが今回こういう職階的なものが医療職の俸給表に導入されました場合、果して院長ということで上の等級に格づけされ、平医員ということで下の等級に格づけされるということは、全く矛盾が起きてくるというふうに思うわけです。御存じのように病院、療養所の形態というものは国立病院、療養所においても一本ではございません。非常に大きい病院もあれば小さい病院もある。そういう場合におきましては、大施設の平医員、という言葉は非常に失礼でございますが、わかりやすいのでそれを使うといたしますと、往々にして大施設の平医員より小施設の院長の方が、学識、経験、手腕ともに下であるという場合が多いのでございます。そういうことにつきまして、これを職階制を導入いたしました各等級に分けますと、どういう矛盾が起きてくるかということは大体御想像いただけると思うわけです。
またこの点につきましては非常に卑近な例ではございますが、取り上げてみるとなお一そう御理解がいただけるのではないかと思います。まず結核の治療等に関して非常に世間にも高名であられる方に、この近くの清瀬病院の島村院長、またおやめになりましたが
東京療養所の宮本という先生がおられました。また現在、昨年の参議院選挙で参議院議員に当選をなさいましたが、元、高知療養所の坂本先生といろ方がおられます。この三人の先生方は大学においてはそれぞれ同期である、そういうふうなことであったわけですが、そういうことで大体今までは俸給等におきましてもほぼ似通った上昇率を示して参っているものだというふうにわれわれは理解をしておるわけです。ところがもしも新しく今回
衆議院で
修正決定されましたようなものが通過いたしますならば、そうしてその運用において大いなる考慮が払われません場合には、この同じような手腕を持ち、また同じようにそれぞれ患者から信頼をされ、同じ学歴を持っておられる方々の間に俸給において差が出て参りますし、また今後の昇給においても大きな差が出てくるというような非常に矛盾した事実が生ずるわけでございます。そういう点からまずこういうことをなくするためには、この医療職俸給表の(一)におきまして等級の差を全部なくして、1から5まですべてを通し号俸にするということでなければ、今の欠点は克服されないというふうにわれわれは思うものでございます。
ただこれらにつきましては、ごく最近出されました
人事院の資料等を拝見いたしますと、そういう
状態が起ることを考慮いたしまして、病院長及び副院長等に準ずる医師については二等級まで進めるというふうな取りきめをいたしておるようでございますが、そこまで進める取りきめをいたしますならば、何のためにこういう等級の区別をつけなければならないのか、また一そう理解に苦しむところでございます。今、医師の場合について
一つ非常に卑近な例を申し上げたわけですが、医師が医療職の場合の非常に代表的な職種であるということから、なお医師の場合にこういう等級の区別をつけることがいかに無理かという例を少しく申し述べたいと思います。
まずこれはいいことか悪いことかは別といたしまして、現在病院、療養所の医師等は、それぞれ各大半の出先機関というと語弊がございますが、いささかその傾向を持っておるわけです。たとえば
国立東京第一病院はかりに東大であるとするならば東大系の方で占める、またある療養所は慶応系で占める、そうしてその間におきまして大学とその施設との間の交流はございましても、施設同士の交流ということは望みがたいという
状態が起きておるわけです。ですからかりに職階的な医者の場合の俸給表の取りきめをいたしました場合、ある程度技術が上ってきた場合には、小施設の医務課長なりまた副院長なりに出していく、そうしてそこで腕が上ると大きい病院の副院長に戻す、そこからまた小施設の院長に出していくという交流がスムースにかりに行われるとすれば、この等級によって差をつけるというようなことも理解ができないわけではないのですが、現実においては全くそういうことは行われておらない。そういうことからもこの等級差を医師の場合につけることは全く不
合理である、無理であるというふうにわれわれは思うものです。また現在施設長等においては管理職手当というようなものがついておりますので、同一の学歴を持った人がどんどん俸給が上っていく、ある人はその病院管理の能力を買われて副院長になり院長になっていく、そういう場合においては昇給によって差をつけるのでなく、管理職手当というものによってその職務に応じた
給与を支払えばいいではないか。こういうようにも
考えられますので、そういう点からも医師の場合、等級によって俸給表を分けるということの不
合理が生じてくるわけです。
また御存じであると思いますが、各専門科、内科とか外科とか小児科とか耳鼻科とかいうものによって、先生方の専門的に区分けがされておるわけですが、たとえば耳鼻科なら耳鼻科、眼科なら眼科ということでは神様のようにいわれている方でありましても、大病院に行きましてはなかなか院長になれないというふうなことも往々あるわけでございます。そういう場合に果してその先生方に報いる十分な給料が、こういう俸給別に分けた場合に払い得るかどうかという点については、全く疑問であると思うわけです。そういうことから今非常に医師の場合を中心にして申し上げたわけですが、医療職全般について等
級別に分けていくことについては、われわれとしてはこれは実情に全くそぐわないものである、これを通じて一本にすべきであるというふうな意見を強く持っておるものでございます。ただしこれを早急に一本に統合することが不可能であるといたしますならば、そこに書いてございますように、医療職俸給表(一)については一等級を二つ別とし、二、三等級すなわち病院長と施設長を一本にくくり、また四等級、五等級を続けて、一、二、三の三等級制にしたらどうであろうか。また医療職俸給表の(二)及び(三)につきましても、そこに資料に出しておりますような区分けをいたしましたならば、ただいま申しましたような矛盾がいささかでも解消するのではないかというふうにまあ
考えておるわけです。
以上は主としてわれわれ医療職
関係につきまして、等級によって俸給を区別することの不
合理さを申し述べたのでございますが、今度の俸給表に
給与体系の変えられるに当ってわれわれが一番強く希望いたしたいことは、医療従業員の
給与が全般に低いということを強く申し述べたいと思うわけです。その点は二番目の意見としてそのお手元の資料に書いてございますが、これは昨年一月
人事院が
調査したと称せられておる数字でございまして、これは正式に発表されておらないかと思うのでございますが、それにあげられておる数字を見てみますと、
民間給与に比べて大体一割から二割はみな少いということがはっきり出ておるわけです。われわれが実際に体験しております数字としてはこんな差ではない、もっと
民間の数字とわれわれとの間には差があるというふうに感じております。それは多くの
民間の医師では、たとえば往診をしたときにそれに対する補助が出るとか、また研究手当と称して、実際は研究等に使わなくても済む費用がいろいろな名目で出されておる。こういうふうなことを知っておりますがゆえに、こういうふうな差ではないと思いますが、一応現われた数字を見てみましても、二〇%の
開きは出ているということははっきりしておるわけです。これを非常に卑近な例で申し上げますと、現在国立病院、療養所は非常に医師不足に悩んでおりますが、北海道、東北、北陸の地方におきましては医者が少いということもございますが、それぞれの地方の大学で派遣基準をきめておるわけです。たとえば北海道の場合経験五年の医師であるならば、少くとも四万ないし五万の手取りがなければ大学から派遣をしないというふうな内規がひそんでおるようでございます。それに対して現存のといいますか、今度
給与を引きげたというふうに
政府が言っておられます今度の俸給表を適用してみますと、五年の医師がわずか一万七千円にすぎないのでございます。三分の一以下の給料で果して優秀な医者が喜んで赴任して来るかどうか、この点は詳しく申すまでもなく御理解いただけることだと思うわけです。そういう点から医師のこういう俸給表の
改訂に当りましては、医師を中心とし、医療従業員全般の給料をもっと引き上げることに十分御考慮を願いたいと思うわけです。また医師の場合インターンというものが終戦後できたわけですが、このインターンができたことによる一年間の空白といいますか、実際は自分の医学というものをより一そう深めるための期間でございますから空白ではないわけですが、これが
給与行政の上では空白として扱われ、そのために今までの医者との間に
開きが出てきておる。またこれは教育職
関係のお医者さんとの間に
開きが出ておったことも事実でございます。これは今度の
給与表
改訂では
是正をされたというふうに聞いておるのですが、またその辺もはっきりとは伺いませんが一応
是正されたといたしましても、現在の三月三十一日の
給与を基準として切りかえます場合に、二号俸だけ低い、一年分だけ低い
給与の医者に対してどういう措置がとられるのか、ということも大きな矛盾でございます。この点は非常にわずかな額のようですが、
先ほどから申しましたような医者の俸給表が総体にぐっと低い、このことは
人事院の
総裁初め
給与局長その他がわれわれに対して、いつも認めておられたことでございますが、この解消がされなければならない。その中では非常にわずかな額でも、われわれとしてはぜひこの
改訂に当って織込んでもらいたいという希望を強く持っているものでございます。
また次の二枚目にありますが、医療職俸給表三の看護婦の俸給表についてでございます。この点につきましては、あと
参考人として
国立東京第一病院の総婦長さんがお見えになっておられますので、この点を中心にお話いただけると思いまするから、私としてはごく簡単に申し述べますが、まず分れております四等級、いわゆる准看護婦の俸給表が現行よりはるかに低くなっている、ということを次の表でごらんいただきたいと思うわけであります。実線は現行俸給であり点線が今度の新しい
改訂案でございますが、とのような措置は
人事院としてはとらないということがいろいろ言明されているやに聞きますが、准看護婦は看護婦と違う、今までは
給与がよかったということで、現在持っている権利といいますか、当然そこまで上るべき俸給を下げられるというふうなことは、私たちとしては何としても了解に苦しむところであります。この点あとの
参考人から意見を開陳されると思いますが、十分お
考えをいただきたいと思うわけであります。なお准看護婦は現存新制中学卒業後二年間の学歴を持ち、都道府県の試験を受けて准看護婦になるわけでありますが、旧制の看護婦法によりまずそれと同等の資格であり、昔は乙種看護婦と申しておりましたが、それの一部をもこの准看護婦俸給表、すなわち医療職俸給表目の四等級に入れるということを、
人事院として進められているやに聞いておりますが、そういたしますと、この准看護婦及び旧制乙種看護婦の方にとりましては、
先ほど申しましたように、現在持っております
既得権が侵されてくるというようなととが明々白々として出てくるわけであります。この点については当参議院の
審議段階において御
修正をいただきたいと思うのであります。
なお医療職全般について詳しく申し上げますならば、医療職俸給表の(二)に入ります各種の職種がございますが、その職種の
関係の中でも、特に医療職に非常に深い、医療職としてまた代表的なエックス線技師とか病理細菌技師とかが入る、また栄養士とか歯科技工士、歯科衛生士、マッサージ師というものが入るというふうに聞いておりますが、またそれに非常に密接な
関係を持つ医療従業員として国立病院、療養所の医療に携わっておりますたとえば療工である、磨工と申しますが、病院に行きますといろいろ機械をといだりしております。これも医療
関係の非常に経験を必要とする職種があるのでございます。また物療
関係というのがございます、また義肢工と申しまして義手義足を作っている職種の者もおります。そういうもの、また結核療養所、
精神療養所に行きますと作業療法指導員というふうな者もおります。またほかに非常に最近伸びたものとして、行政職の中に入れられるのだと思いますが、メディカル・ケースワーカーの仕事、医療社会事業の仕事というものも、非常に専門的な医療知識を持って仕事をいたしております。それらのそれぞれがその職務の能力及び責任に応じて格づけされているかというと、なかなかそうわれわれは理解が持てないという
状態でございます。この点につきましても適当な、当然受けるべき地位にそれを上げるよう、
一つこの参議院段階において御討議をいただきたいと思うわけでございます。
なお時間もきたようでございますのであと簡単に申し述べますが、このように
一つの俸給表における号俸のワクを大きく伸ばしましたために、次のような点に矛盾が起きるのじゃないかということを憂えております。それは現在
人事院規則九の八の二におきまして、初任給のものの格づけの場合に、大体原則としてその等給の一号俸に格づけされる、ただし、たとえば一年の昇給期間であるならば、一年半の経験があれば上の号俸に、一号上につけるというふうになっていたものでございますが、そういうような規則をもし今後もずっと適用されるといたしますならば、経験五年、七、八年、十年なんというふうな長期間の経験を持った者が病院、療養所に参りました場合に非常に低いところに格づけされるのじゃないかというおそれが生ずるわけでございます。この点も運用の問題ではあろうと思いますが、非常に医療従業員の全体の
給与が低いということは、
先ほどからも繰り返し申し述べたような
状態でございますので、そういう点においてもこまかい点に
一つ御配慮をいただきたいと思うわけです。また現在医師の
給与等が低いと申し上げましたが、その低い医師の
給与が、新しい俸給表によって、なお一カ所新俸給表の方が低くなる個所が出ておるのでございます。それは現在医者になりまして七年経験を持つ者は一万九千八百円の俸給に達するわけですが、これが新俸給表によりますと一万九千四百円になるという、非常におかしな例が出て参るわけです。こういう点もなぜかと申しますと、今までは七級から八級へ、八級から九級、九級から十級に上ります場合、それぞれ飛び抜けて上るというふうな
状態を運用上されておったわけですが、今度非常に
一つの等級の号俸の幅が延び接したために昇格が延びてくる。早く二年なり三年なりで昇格ができない。こういうふうな
状態から今申しましたような矛盾が生じてくると思うのでございますが、こういう点につきましても俸給表等の
審議の際に十分御検討をいただきたいと思うわけです。
以上非常にこまかい、われわれ病院、療養所の
職員が仕事に当っておりながら、この新しい俸給体系、俸給表について検討をいたしました結果を申し述べたわけでございますが、総体のいわゆる
給与体系
改正の意図がどこにあるのか、またどういう矛盾が生じているかというふうな点につきましては、今ここで触れるのは避けます。具体的な事例としてわれわれ病院、療養所の医療従業員がこの俸給表について不満に思い、なおかつ
修正を希望いたしております点について意見を申し述べた次第でございます。どうか参議院の
内閣委員会における討議の中で、十分われわれ病院、療養所従業員の意見をお汲み取りいただきまして、妥当な
修正をいただきたいと思う次第でございます。