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政府委員(河井彌八君) だんだん文化財
保護のことにつきまして、非常な御
心配のある御
議論を伺いまして、ほんとうにありがとうございます。私は、初めからの
いきさつは知りません。ただ書類により、また
事務当局の説明を聞きまして、大体了解しておるのでありまするから、皆さん方が急激におただしになりましても、十分な説明はできないかもしれぬと思います。しかしながら、概括的に申しますと、この問題が二十八年の五月……満四年も延びて、まだ解決ができないということは、非常に遺憾に
考えるのであります。できるだけ早く正しい——これは理想的に正しいかどうか知りませんが、とにかく実行し得べき結論を出しまして、そしてこの問題を片づけて、そして足らざるところは、また
あとから、いろんな点において補っていくというようなことも
考えるべきものではないかと
考えております。
そこで今、前回もそうでありましたが、本日も、この
所管官庁の間の
連絡がはなはだ悪いという点、これは私も率直に遺憾に思います。結局
建設省なり、運輸省なり、あるいは宮内庁なり、また、文化財
委員会ももちろんでありますが、それぞれ権限を持っております。従って、その権限を実行する場合においての
連絡が欠けておったということは、何としてもこれは、申しわけないことでありますが、事実であります。私は、そういうことにつきましては、少くとも文化財
委員会に関する限りにおきましては、やはり文化財
委員会の許可が優先すべきものでありまするから、そう
考えておりますから、やはりそういう問題について、できるだけ
関係官庁との
連絡を緊密にして、しかも、急速にこれをやりたいというように
考えております。
奈良県の
道路の問題につきまして、だいぶいろいろな御批判を各方面から承わったのでありまするから、それ以来、各
所管官庁の間の
連絡というものが、それで安心することはできないのであります。たとえば、
道路の
建設の問題でありましても、路線の変更に関する今回の実例に見ましても、文化財
委員会には何にも断わりなしに、まず
建設省なり、運輸省なりの方にその申請を出すというような事実があるのであります。というようなことで、われわれの方もぼんやりしておったかもしれませんけれ
ども、そうしてついに、その各自の独立の権限の結果、かようなそごを来たしておるんではないかというように
考えるのでありまするから、どうかそういうことのないように、私は、これからも。と
連絡を密にする、小くとも閣議においてこういうものをお取り計らいが間違いなくいくようにまでいたしたいというふうに私は
考えておるのでございます。
それから、今の御質問の、新しい路線についてどうするのか。不許可にするのか、あるいは許可するのかというようなことを
お尋ねいただいたのでありますが、これなどは、どうも私から言うと、ちょつと苦しいのでありまするけれ
ども、やはりこれまでの
連絡というようなことなどがうまくいっておりませんから、つい慎重を期する上におきまして、延び延びになったんじゃないかと、こういうふうに
考えます。でありまするから、私は、ただいまも申しましたしように、どうか問題を
一つはっきりといたしまして、間違ったところは直す。そして将来、これならばいいという、何といいますか、取扱いの道をここに確立いたしたいということを
考えております。
それから、ただいま岡田局長から、この四百メートルの
関係についてどうするかということの説明が若干出たわけでありますが、なお、私は申し上げます。この長い問題の解決は、結局
文化財保護委員会といたしましては、
関係の各官庁の間の
協議をいたしまして、それが三月一日であります。そしてその
協議の事項といたしましては、二月の二十六日に、これは昨年の九月十九日以降未決問題になっておったのでありますが、それは、文化財の審議会というものを開きまして、史跡部会を開きまして、二月二十六日に、こうやったならばよかろうという決定の答申を得ましたので、その答申に基きまして、これを
関係の
建設省、運輸省、宮内庁と文化財
委員会との間に
協議をいたしまして、それがよかろうということの結論を得ました。そして、
委員会におきましては、ちょうど私、病気で寝ておりましたが、
委員会はその翌日決定をいたしたのであります。その決定はどういうことかと申しますと、その申請にかかるところの、設計変更にかかる自動車
道路は、ちょうど今四百メートルという説明があった個所ですをれは、その取りつけの
部分、すなわち正倉院の北側の隅でありますが、そこから少くとも二百メートルから、できるだけ早くすみやかに完全な舖装をすることという条件。それからその舗装が完成するまでは完全な散水、水まきであります、散水をいたして、防塵、塵埃を防止する実をあげること。それから第三番目には、その新設の
道路に、塵埃防止に役に立つ植樹等を行うこと。それから第四に、大へん
心配になった点でありますが、設計変更にかかるこの自動車
道路の坂りつけ
部分、すなわち正倉院の東北部の下にある個所でありますが、そこに暗渠を新設した、その暗渠及び上流の排水溝の閉寒を防止する措置を講ずること。そういうことで、以上の諸条件の実施については、すべて県
教育委員会の指示に従うべきことである。その他つけたりといたしまして、史跡保存事項については、県
教育委員会の指定に従うことと、こういう条件が
委員会を経まして決定いたしたのでございます。まだ私が病気等のため、また、こちらの
委員会の八木先生あたりから、しばらく待てというような御意見もありましたが、発表といいますか、それぞれの
関係者に通知はいたしておりません。しかし、それだけのことは、
委員会といたしまして決定をいたしたのであります。
それで、長い間の問題をさかのぼって
考えてみますというと、取扱い上ずいぶん遺憾なこともありましたけれ
ども、しかし、とにかく今後においては、さようなことはないように、手続上万全を期したいということを私は
考えております。
それから、この条件の許可の実行につきましても、これはいろいろまだ問題が起るであろうと思いまするけれ
ども、それは、その問題それぞれにつきまして適当な方法を
考えてみたいというふうに思うのであります。で、先に一たん許可をいたしまして、そしてそれが
道路の敷地が、すなわち東大寺の北の谷、知足院というところの裏にある谷地でありますが、それは所有者が売買を取り消したために、新しく上の方に
道路をきめて、今のだいぶ、許可があったとかないとかいうような問題で、御
心配をかけましたあの通路でありますが、その
道路と
両方、前の売買を取り消されたるその路線との比較をいたしましても、これは、一番問題となりまするのは、正倉院の建物並びに正倉院の御物、宝物の保存というものに、どういう影響があるかということであります。これにつきましては、宮内庁におきましても、この塵埃とか、あるいは有毒な空気というようなものを、どうしてその害を免れさせるかというような問題について、鋭意研究しておられるのでありまして、その内容等につきましては、私ここに申す必要もありませんけれ
ども、しかし、あの大切な宝物類の保管につきましては、今日、正倉院において行われておりまするのは、まず一番最上ではないかとわれわれは
考えておるの、でございます。そして特にその中に納めてあるところのそれぞれの宝物の取扱いにつきましては、いろいろ研究の結果、まず有毒なガス、また塵埃というものを防ぎまして、そしてその害を免れるという方法といたしまして、やはりそれぞれの宝物を入れる、格納する入れもの、それから入れ方等の問題でもって、大体において、まず被害はないというような実情であるという今日までのデータによっての結論を得ておりまするので、これは私
ども文化財保護委員会が、どうしろ、こうしろということを申すわけではございませんけれ
ども、すでにそれにつきましては、宮内庁当局においてこれに気づかれまして、そしてそれを実行しておられるのであります。でありまするから、ただいまの決定をいたしましたことにつきましても、これでもってもう完全無欠であるということは、これはでまきないかもしれませんけれ
ども、今日の
現状におきましては、この
程度のほかはないという結論に達しておるのでございます。
御物の
保護に対しましてのことは、やはり今後も引き続いていかなければなりません。まず、校舎をどうするかという問題もあると思います。それからまた、その
一つ一つの品物についての取扱いということも、綿密な研究ができるであろうと思いますが、それはわれわれが今直接にどうということはできませんが、そういうことのできることを
考えております。
それから、もっと申しまするというと一体、東大寺の境内地を史跡として指定してありまするが、あの中にずいぶんだくさんの人が住んでおりますというようなことな
ども考えて、もっともっと抜本的な大きな
計画から正倉院を守るというときがこなければならぬというように
考えておりますが、これは私の何と言いますか、空想か何か知りませんが、夢であります。しかし私そういうことはほんとうに大切ではないかというように
考えております。
ちょっと言い落しましたが、正倉院内のこの塵埃を防御する方法といたしましては、この間実際に見ましても、まだまだあの屋敷の、つまり
道路沿いの方面に適当な木を植えるというようなことが、ほんとうに役に立つのではないかというようなことも
考えておったのであります。
大体、本件につきまして大へん御
心配をわずらわしましたけれ
ども、これからどうやって行くのだというような具体的の事柄を十分には申すことができませんけれ
ども、しかし、もっと事柄をすみやかに解決いたしまして、そうして適当な方法を立てて行くほかはないということで、ただいま説明を申し上げましたような条件でもって許可するということに、
委員会は決定いたしたのでありまするから、まだそれは発令はいたしておりませんけれ
ども、その御了解をいただきたいと思います。なお、この点につきましては、どうやったらいいかというようなこと、また、われわれの力の及ばない点につきましては、どうぞ十分な御忌たんのない御批判を仰ぎたい、かようにお願い申す次第であります。