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1957-03-19 第26回国会 参議院 内閣委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月十九日(火曜日)    午前十時四十六分開会   —————————————   委員の異動 三月十五日委員寺本広作辞任につ き、その補欠として西岡ハル君を議長 において指名した。 三月十八日委員小沢久太郎辞任につ き、その補欠として泉山三六君を議長 において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     亀田 得治君    理事            大谷藤之助君            秋山 長造君            竹下 豐次君    委員            木村篤太郎君            荒木正三郎君            伊藤 顕道君            田畑 金光君            永岡 光治君            八木 幸吉君   国務大臣    労 働 大 臣 松浦周太郎君    建 設 大 臣 南條 徳男君   政府委員    内閣総理大臣官    房審議室長   賀屋 正雄君    大蔵政務次官  足立 篤郎君    労働政務次官  伊能 芳雄君    労働大臣官房総    務課長     村上 茂利君    建設大臣官房長 柴田 達夫君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君   説明員    労働省職業安定   局失業対策部長  澁谷 直藏君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○建設省設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出) ○公共企業体職員等共済組合法の一部  を改正する法律案内閣送付、予備  審査) ○労働省設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○雇用審議会設置法案内閣提出)   —————————————
  2. 亀田得治

    委員長亀田得治君) これより内閣委員会を開会いたします。  委員の変更について御報告いたします。三月十五日付寺本広作君が辞任せられ、その補欠として西岡ハル君が選任されました。三月十八日付小沢久太郎君が辞任せられ、その補欠として島山三六君が選任せられました。以上御報告申し上げます。   —————————————
  3. 亀田得治

    委員長亀田得治君) まず建設省設置法の一部を改正する法律案議題に供します。建設大臣より提案理由説明を願います。
  4. 南條徳男

    国務大臣南條徳男君) ただいま議題となりました建設省設置法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその要旨を御説明申し上げます。  まず、建設省所掌いたします事務は、土木建築等直轄事業に関するものが多く、その遂行に当っては事務技術を問わず特に専門的知識を要することが少なくないのでありまして、建設省所管事業の合理的かつ能率的な遂行をはかるためには、これらの業務を担当する職員の資質の向上をはかる必要があると考えます。ここにおきまして今回、土木建築及び測量その他建設省所管行政にかかる専門技術及び事務を担当する職員養成及び訓練をつかさどらせるため、従来当省付属機関である地理調査所及び土木研究所において実施して参りました研修業務をも統合いたしまして、新たに付属機関として建設研修所を設置して、職員の組織的な研修を実施することといたしたいと考えるのであります。  次に、河川に関する行政は、その性格上治水、利水の両面におきまして関係するところが多く、その円滑な運営をはかるためには、広く関係行政機閥及び学識経験者意見を取り入れる必要があるのであります。河川行政諮問機関としては、古くは臨時治水調査会土木会議等が設けられ、現在は、法令に基かない建設省限りの機関として河川審議会を設けてその運営をはかって参ったのでありますが、河川行政重要性にかんがみ、これを法制上の審議会とし、河川及び海岸に関する重要事項建設省所管に属するものを調査審議させることといたしたいと存じます。本審議会通常によりまして河川及び海岸行政の一そうの推進を期する所存であります。  第三に、水道及び下水道に関する事務につきましては、現在厚生省建設省の共管するところでありますが、その所管を簡素明確にし、行政運営合理化能率化をはかるため、下水道に関する事務を、終末処理場に関するものを除き建設省所掌することとし、水道に関する事務及び終末処理場に関する事務厚生省所掌とすることといたしたのであります。  筑四に、建設省直轄事業または公共団体の行う建設事業産業開発青年隊を導入して、実際的な教育を行うことは、これら諸事業推進をはかり、また地方青年就労対策としても必要でありまして、昭和二十八年度以来これに関する事務を取り扱って参ったのでありますが、今回これに関する規定を整備いたし、本事業の一層の推進をはかりたいと存じます。  その他、受託事務の範囲及び部内における事務所管につきまして若干の改正を加えることといたしました。  以上が建設省設置法の一部を改正する法律案提案理由及びその要旨でございますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
  5. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 本法律案につきましては、本日はこの程度にいたします。速記をとめて。    〔速記中止〕   —————————————
  6. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 速記を始めて。次に、公共企業体職員等共済組合法の一部を改正する法律案議題に供します。  まず政府側より提案理由を御説明願います。
  7. 足立篤郎

    政府委員足立篤郎君) ただいま議題となりました、公共企業体職員等共済組合法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を御説明申し上げます。  政府は、前国会に、健康保険法等の一部を改正する法律案提案し、引き続き今国会で御審議を願っているのでありますが、これに伴いまして、公共企業体職員等共済組合法につきましても健康保険法と同様の改正を行い、あわせて長期給付に関する規定を整備することといたしまして、この法律案提案いたしました次第であります。  次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。  第一に、今回の健康保険法改正におきまして、療養の給付についての一部負担制度改正されることとなっておりますので、公共企業体共済組合につきましても、これと同様に一部負担制度改正いたそうとするものであります。ただし、これによって余裕財源が生じた場合は組合管掌健康保険に準じて、一部負担金の払い戻しその他の措置を行うことができることといたしております。  このほか、保険医療機関に関する規定不正受給者等に関する規定等につきましても、それぞれ健康保険法改正に準じて所要改正をいたすことといたしております。  第二に、公共企業体共済組合法におきましては、長期給付について、従来の恩給国家公務員共済組合法による長期給付とを原則的に統合して新年金制度を創設いたしましたが、その経過措置に関する現行法規定のうちに、恩給法における取扱いとはやや異なる取扱いをいたしておるものがありましたので、恩給法との関係等を考慮してこの際修正を加えることといたしました。さらに、従来の恩給のうち増加恩給につきましては、これを受ける権利を有する者の恩給公務員期間は、組合員期間に算入しないこととしておりますが、この措置により受給者が不利となる場合もありますので、本人が希望する場合におきましては、増加恩給を受ける権利を消滅させ、その恩給公務員期間組合員期間に算入して、受給者の利益をはかることといたしました。  なお、その他長期給付に関する規定等について、現行法施行後における運営状況等にかんがみ、所要改正を行うことといたしました。  以上公共企業体職員等共済組合法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げました。何とぞ御審議の上すみやかに御賛成賜わらんことをお願い申し上げます。
  8. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 本法律案審議は本日はこの程度にいたします。  ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕   —————————————
  9. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 速記を始めて下さい。それでは次に、労働省設置法の一部を改正する法律案議題に供します。本法律案につき御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  10. 秋山長造

    秋山長造君 労働省官房長を置くということになっているのですが、これは政府の方で各省官房長を置いたり、置いてなかったりされているのは、何か一つの基準があってそうなっているのですか、どういうことなんですか。
  11. 伊能芳雄

    政府委員伊能芳雄君) この前行政機構の相当大きな改革をやりましたときに、局も非常に多いし調整すべき事務が多いという省だけ置いたのでありますが、当時労働省は局は四つしかないし、各局の間の調整も大したことはないというので、官房長を置くことの省から除かれたものと考えておりますが、その後御承知のように、労働行政も非常に複雑広範になって参りまして、調整事務も多くなってきたといちところから、今回この法案提案したのであります。今回今まで除かれておって提案いたしておりますのは、御承知のように、厚生省労働省二省において官房長を置くことにして提案しておる次第でございます。
  12. 秋山長造

    秋山長造君 四つの局があって、それを調整してゆく必要があるということはよくわかるのですが、これは大体今までなしにやってこれだということは、政務次官のほかに事務次官というものがあるわけですから、事務次官の手元でこういう機能が十分果せてきたのじゃないか、また事務次官というものの仕事がそういうことが主たる仕事じゃないかというように私は思うのですけれども、事務次官との仕事の面での関係はどうなりますか。
  13. 伊能芳雄

    政府委員伊能芳雄君) 官房長を置かない省においては、お言葉のように事務次官が当然部内調整をしながら大臣を補佐してきているわけであります。こういうふうに複雑になってきましたので、次官の下に一応部内調整をして、そうして次官の下へつくという形のものがぜひほしいというところから提案したわけでございまして、機構を複雑にしたりあるいは定員をふやしたりするということにつきましては、現内閣といたしましては極力現在戒めている段階でございますが、最近の労働行政の情勢から見まして、これはやむを得ないだろうということで政府部内としては決定したような次第でありまして、従いまして、今までは次官がそういう役もあわせてやっておったということになるわけでございます。
  14. 秋山長造

    秋山長造君 労働省には従来局が四つですね、大臣官房には秘書総務、会計、国際労働の四課が置かれ、そのほかに労働統計調査部がある。こういうことで職員定員その他についても増減はないようですが、ただ抽象的に総合調整を要する事項が非常にふえたということだけじゃなしに、特に今までなしですませたものを置かなければならんという、具体的な理由をもう少しはっきり承知しておきたいと思うのです。たとえば別に労働省と比べる必要はないわけですけれども、文部省にしても法務省にしても、ずいぶん扱っている仕事広範囲にわたっている。特に文部省あたり広範囲にわたっていると思うのですが、にもかかわらず文部省あたりは特に官房長を置くということじやなしに、今まで通り次官で間に合わせているという状態を考える場合に、労働省の場合特に官房長を置かなければならぬという積極的な理由ということがよくわからない。もう少しそこらを打ち割って御説明願いたいと思うのです。
  15. 伊能芳雄

    政府委員伊能芳雄君) 文部省法務省の例をお出しになりましたが、文部省法務省は非常に事務縦割りで、お互いの局の関連が比較的少いというところから、官房長を置く必要はないということになっておるようでありますが、労働省の場合にいたしますと、給与の問題は一応労働基準局であるけれども、婦人少年局とも非常な関係があり、労政局とはなお関係がある。あるいは雇用の問題を取り上げましても、主として職業安定局のことではありますけれども、これもまた婦人少年局労政局に深い関係を持っておるというようなことから、局の間の調整というものを、この四局の間に非常に必要とすることが多いのでございます。ことに最近学校卒業生の問題にいたしますならば、職業安定局で一応やりますが、これはあわせてまたほかの局とも関係をしながら、文部省との関係を持たなければならない。また経済自立五カ年計画というようなものになりますと、やはり雇用の問題を主といたしますけれども、婦人少年局にも労政局にも非常に関係を持ちながら、経済企画庁と非常な密接な連絡をとらなければならないというように、非常に複雑化し同時にまた事務量が大きくなってきた。しかも調整をしなければならない事務が多くなってきたというところから、この際ぜひお願いしたいというので、官房長設置決定したような次第であります。
  16. 秋山長造

    秋山長造君 その点は文部省仕事縦割りで、労働省の方が横のつながりが深いということは、ある面によってはそういうことを言えることがあるかもしれませんけれども、それはまあ役所仕事ですから、同じ役所に属する各部局が全然お互い関係のない仕事をしておるということは言えないので、文部省の扱っておる仕事といえば、局は違ってもおよそ教育に関する仕事ですから、これはそれぞれ密接な両方つながりというものを持っておることは当然の話なんで、だから一つの省の運営をやっていく場合に、それぞれの部局の間でそれぞれの担当者が不断に連絡を密にしてやっていかなければ能率が上らないということも、これまた申すまでもないことなんでありまして、これは特に局と局との連絡調整をやるという専門の人がいなくても、局と局との間の仕事局長局長が相談し合ってやればいいことであるし、また課と課の問の連絡は、それぞれの課長なり何なりがお互い連絡して、十分その調整連絡という目的は果せるはずだと思うのです。そうでなければ、事ごとお互い連絡をやるのに、もう一つ第三者立場の人を作らなければ調整ができないというようなことは、どうもはなはだわれわれの常識からいうと理解に苦しむのです。ただ省全体をまとめていく、そういう意味で連絡調整を保っていくということも、これはそういう立場の人も必要であることはわかりますけれども、しかしそのためにこそ事務次官があるので、政務次官が置かれておるということも、事務次官があまり外部の政治向き仕事にわずらわされないで、もっぱら部内総合調整というようなことに全力を集中させるために、事務次官制度というものができているのだと思うのですけれども、結局僕は、官房長を特に今設けなければならぬという積極的な理由というよりも、やはり役所同士いろいろ会合なんかやられる場合には、よその省にはやはり官房長というものがあって、官房長という肩書きで出てくるけれども、労働省の場合にはそれに匹敵する立場の人がないので、どうも工合が悪いというような、ただばく然としたことから、たとえば官房長会議というものがあっても、どうも労働省からだれが一体出ていっていいかわからぬので、秘書課長とか総務課長とか、何かそういうような人がちょこちょこかわって出ていかなければならぬ、これでは労働省の影が薄いというようなところから、官房長を置こうということになったのじゃないですか。
  17. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 御指摘の点でございますが、他省との振り合いという問題、これはまあ私ども御答弁申し上げるのはいかがかと存じますが、具体的に総合調整を要する事項としまして、ここ一、二年来特に目立ってきた事例を申し上げますと、経済自立五カ年計画ができて以来、特に雇用問題であるとか、中小企業対策であるとか、給与問題であるとか、比較的、長期にわたって検討しなければならない問題として具体化して参りました。従来は次官の下の段階において総合調整をいたしておりますのは、官房総務課でそういった企画面調整をやっておりましたが、経済五カ年計画ができまして以来、雇用問題を調整するにいたしましても、あるいは給与問題あるいは中小企業問題等を扱いますにしましても、そのつど問題を簡単に調整して終るという性質のものでもございませんので、継続的に問題を掘り下げて調整して参るという必要が生じて参りました。それで実は内々の内部的な機関でございますが、給与問題につきましては給与審議室という、一つ関係課長グループ会議といったようなものを作りまして、秋山先生承知のように、最低賃金の問題その他の給与問題をその審議室でやる。あるいは最近に至りまして産業界の発展、それから労働力需給調整現状から見まして、労働者に対する技能の付与ということが、非常に重大な問題になって参りました。その技能労働者の問題をとらえましても、職業安定局では職業補導をやる、労働基準局では技能者養成をやるということで、両局にかかわります問題でありますので、官房職業訓練審議室という、いわば関係課長グループを一応かりに名づけたような機関でございますが、そういうものを置いて、継続的に問題の調整を行うというのが実は現状でございます。なお御承知のように、中小企業の労働問題にいたしましても、労働省では労政局職業安定局労働基準局、あるいは婦人少年局、いずれにも関係いたします問題で、どこの局で専管せしめるというのも適当でない。こういうようなことでありまして、官房調整せざるを得ない、こういうような事情に相なっております。官房総務課でそのつど主義に調整すると申しましても非常に困難である。こういうような事態になっておりますので、この際、官房長を設けまして、そのもとに的確なる調整をいたして参りたい、かように考えておる次第でございます。具体的に調整を要する問題としましては、ただいま申し上げましたような長期の問題としてあがって参る次第であります。
  18. 秋山長造

    秋山長造君 従来は官房関係は、事務次官が直接掌握していたわけでしょう。
  19. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 大臣に対する補佐的立場では次官がやっておりましたが、各部局に対する所掌事項の面から見て総合調整というのは、大臣官房所掌、特に官房総務課所掌の中に総合調整に関する事項が入っておるわけでございます。
  20. 秋山長造

    秋山長造君 だからその各部局の間の総合調整をはかる場合に、まあいわばそれも事務的な調整というものと、もう少し高度のいわゆる調整というものがあると思うのですね。その総務課の方では総務課長がその低次の調整仕事をやっておる。それから今ここで提案理由に述べられているような、より高いレベルの調整事務次官が大体やっておられたのだと思うのですがね。そこへ新しく官房長というものができますと、従来の事務次官官房長との関係というものはどういうようになるのでしょうか。まあこれは今労働省の問題がたまたま出てきたからお尋ねするわけですけれども、従来官房長をすでに設置されていた各省についても、私はその点非常に疑問を持っているのですがね。事務次官という者と官房長という者とが、身分上の関係はわかっていますけれども、部内調整をはかっていく、あるいは部外とのいろんな折衝をやっていくという面で、どういうこれは関係になるのですか、事務次官官房長と。
  21. 伊能芳雄

    政府委員伊能芳雄君) 局長間においての調整を、官房長のある場合には官房長がやって、局の仕事についてこういうふうに両方意見があるからこういうふうに調整してはどうかということで、関係局長の意向をみなまとめて、そうして官房長のところで、これを裁定というわけにいきませんから、こうしたらどうだ、ああしたらどうだというような調整をした上で、次官のところへ持ち込み、官房長がなければ次官が直接各局調整をしながら、次官のところで次官会議決定して大臣に持ち込むという形になるわけでありまするが、できるだけ円滑にやっていくには官房長という役がおって、そこかう各局間の調整をしたものを、次官のところでどうしても調整がつかない場合には、これは大臣次官決定でいくよりしようがないのですが、なるべく円滑にやるためには、官房長というような役で関係局意見調整したものを、大臣次官のところで最後的な決定をしていくという方が、部内の平和という上から見ましても非常に適当ではないかと、こういうところに官房長の意義がある、かように考えております。
  22. 秋山長造

    秋山長造君 そうしますと、官房長が設けられれば、官房長というものの権限機能というものが非常に大きくクローズアップされて、これは事務次官なんかというものは何も用事がなくなってしまうのじゃないですか。それは一応まあはんこはつくでしょうけれども、はんこをつく程度でもう次官室でぽかんとしているようなことになってくるのじゃないでしょうか。
  23. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 事務的に申し上げますと官房長は要するに官房の長でございます。従いまして本省の内部部局関係におきましては局長と相並びまして一つ部局の長であるわけでございます。その関係から見ますると、官房長固有事務といたしましては、予算であるとか人事であるとか、あるいは文書等であるとか、いわゆる官房に属しますところの事務官房長がつかさどるわけでございます。そういう固有事務を持った地位と、それからもう一つ総合調整を行う地位でございます。これは官房の中の総合調整機能を取り扱うということでございます。しかしながらこの総合調整と申しましても、先ほど秋山先生指摘のように、低い段階総合調整と高度の総合調整と申しますか、そういうものがあろうかと存じます。高度の総合調整ということになりますと、組織法上の機関ではございませんが、各省とも通常省議というものをもちまして、各局間のこの高度の調整省議でやるというような形をとっているわけでございます。これはもちろん運用の問題でございます。従いまして官房長段階総合調整をいたすといたしましても、それはほかの局長の持つ権限を侵すものではございません。官房所掌事項の中にある総合調整に関すること、こういう事項官房長がつかさどるわけでありまして、その限りにおきましては調整をいたします事項についても、その種類、態様、程度というものはおのずから限界があろうかと存ずるものでございます。従いまして高度の問題、非常に複雑かつ政治的にも重要度が高いというような問題につきましては、もっと高い段階において調整されると、かように私どもは考えておる次第でございます。
  24. 秋山長造

    秋山長造君 その点がどうも私、屋上屋を重ねる感じがしてならないのですがね。なるほど官房長というものはこれは官房事務的な長であるにすぎないので、各局長とまあいわば同等、肩を並べる程度のものにすぎないということですけれども、しかしやはりなるほど官制の上ではこの程度のものにすぎないにしても、官房長というものの果す機能というものは相当やはり各局長より高いものだろうと思うのですね。きわめて政策的な、特に労働省の場合にはきわめて政策的な機能も果さなければいかんし、それからまあもちろん人事予算というような一番大もとを握っているわけですし、それからまた渉外のいろんな方面との折衝等もやはり官房長がやるということになるから、この説明にも書いてあるようにいわゆる総合調整という言葉が使われているのだろうと思うのですが、その上に事務次官があり、さらに政務の方を担当する政務次官がありということで、どうもかえって責任、権限というようなものが混同されて、混乱をきたすのではないかというような感じがしてならないのです。たとえば終戦前後でしたが地方県庁あたり官房長という制度があったことがありますね。その後取りやめになってしまったのですが、まあ地方庁と、また中央官庁とこれはいろいろ事情は違いますけれどもね。これはどうもあの県庁あたり官房長という制度廃止になったのも、どうも一応もっとものようで、実際やってみて、かえって総合調整といいながら、調整調整をまたやらなければならないようなことになるのであの廃止になったのではないかと私は想像するのですが、地方官庁にしても、最近は少し機構簡素化ということが言われながら、実際には、こういう面でかえって仕事が、担当の事務というものが混淆されている。そうしてかえってまとまりが悪くなるような面があるのではないか。むしろ、今まで通りの形で、そして事務次官というものがもう少し積極的にその機能を果していけば、政務次官というものもあるわけですから、政務次官事務次官両者相協力して、総合調整ということをやっていけば、相当十二分にこういう問題は片づいていくのではないかと思うのですけれども、この点は、まあ幾ら言ったってきりがないわけですけれども、どんなものですか。
  25. 伊能芳雄

    政府委員伊能芳雄君) 先ほどもお話がありましたように、この総合調整段階は、総務課長で済む程度段階もあり、すぐ次官まで持ち込まないで、官房長程度で一応済ますという段階もあり、さらに政務次官という段階もあるのでありますが、そこにもう一つ段階を作った方が、調整の上から見まして、より一そう部内が円滑に、そうしてうまく運ぶのではないか。よその官房長を置く例を見まして、そういうように考えたわけでありまして、いろいろこれによって複雑化するかもしれないという御心配も、ごもっともだと思いますが、これは、よそのうまく官房長を利用しておる省を十分見まして、運営の全きを期したい、かように考える次第であります。
  26. 秋山長造

    秋山長造君 これは、この次官までいかない、総務課長段階よりはちょっと高い。その中間に、総合調整機能をやるということなんですね。まあこれは、どうにでも説明がつきますが、結局やはり次官、きつき言われたように、他の省との振り合いといいますか、これは一つの、官房長を置くというはやりだと思うのですよ。流行だと思うのですけれども、私は、あまりこういうものを次から次へ設けて、そうして完全雇用政策には合うかもしれぬけれども、次から次へ設けて、かえって複雑にするという点があるのじゃないかというように思えてならない。私の質問は、一応この程度にとどめておきます。
  27. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 先ほど、次官説明のうちに、今の質問に対するお答えがありましたが、文部省のお話がありましたが、縦の関係で、文部省では官房長を置くという案が一応内輪に出たのでしょうか。それがつぶれたのでしょうか。何か、ほかの省のことをお伺いしますけれども、初めから出ない。出たのがつぶれたのでしょうか。
  28. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) これは、行政管理庁の所掌でございますので、私ども仄聞していることをお答えしますのは……。
  29. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 さっき、ちょっとお話が出ましたから、ちょっと見当違いのお話だと思いますが……。
  30. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) いかがと存じますが、仄聞いたすところによりますと、今回、労働省厚生省官房長を置くことにきめております。あと置かないのは、文部、法務を置いたらどうかという点について、行政管理庁の方でも確かめたそうでございますが、文部も法務も、置かなくともよい、こういう見解をとっておられたそうですが、ただしこれは、私の仄聞しておりますところでございますから、その点御了承願いたいと思います。
  31. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 そうしますというと、今の御説明によりますというと、内閣として、一応そういう省を比較検討してみて、労働省の方には、この際これを置く必要がある。しかし、文部省あたりには、その必要がないということが前提ですか、それでこの案が出てきた、こういうふうに了解しておいていいわけですか。
  32. 伊能芳雄

    政府委員伊能芳雄君) お言葉のように、行政管理庁の立場といたしましては、各省検討の上、今回労働、厚生両省に、そのほかの省は今の段階では必要ない、こういうことに一応決定をみましたので、この両省について官房長を置く法案を両省そろって出したというように聞いております。
  33. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 その点わかりましたが、先ほど、秋山委員からたびたびお尋ね、御意見もありましたように、私としても、やはりどうも総務課長ではちょっと足りないから、一段上のところを置くということもあるだろうと思っておりますが、まあ私個人としては、先ほどから調整の問題が主として両方で、御質問、お答えで、ありましたけれども、相当に仕事がふえて、ほかの仕事次官は相当に量が多いので手が回りかねる結果からと、自分で意思を決定する前に、一段高い官房長を置いて、それに仕事をしてもらって、そうして最後の相談に自分が乗ってきめるというわけで、両方が対立するというようなことにはならないのじゃないか。ただし、それがために、事務が早くきまらずに、ことが二重になるがために、相当にひまどるというような弊害が起ってくることもあると思いますが、その点の、事務次官仕事の量全体のことをよく承わりませんと、ただ調整事務調整事務ということで説明されるというと、秋山さんの御質問がどうも御もっともだというような感じがするのであります。その点いかがですか。
  34. 伊能芳雄

    政府委員伊能芳雄君) お言葉のように、最近労働行政は非常に複雑になり、広範になって参りましたことは、お認めいただけると思うのでありますが、従って、次官も相当有能な次官で活動しておりましても、なおかつ、部内調整がうまくいかないようではいけないという心配から、労働行政の完全を期したいという意味で、ことに専門的な事項で、相当調整をしなければならないことがふえて参りましたので、こういう案が出て参ったというようなわけであります。
  35. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 これで、厚生省労働省官房長ができれば、あと置かない省はどこの省ですか。
  36. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 官房長を置かない省は、文部、法務、郵政、三省だけでございます。
  37. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 大臣みえましたから、私の質問はこの程度にします。
  38. 亀田得治

    委員長亀田得治君) ちょっと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  39. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 速記を起して。
  40. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 大臣にお伺いしますけれども、官房長をお作りになるということですが、次官なり各局長があるのだから、要らないように思うのですが、端的にいって、どういう必要があるのでございましょう。
  41. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) だんだんと労働省仕事もふえて参りまして、その他この完全雇用その他の、まあ政府の目標を達成するために、雇用審議会等の設置のこともございますが、いろいろ仕事の内容が複雑になり、また、広範にわたって参ったのでありますから、ぜひ一つ御承認を得て、官房長を置きたい、かように思っておる次第であります。   —————————————
  42. 亀田得治

    委員長亀田得治君) それでは次に、雇用審議会設置法案議題に供します。  本案につき、御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  43. 田畑金光

    ○田畑金光君 大臣がお見えになりましたので、雇用審議会設置法に関して、二、三お尋ねしたいと思いますが、従来内閣には、失業対策審議会というものが設置されていたわけであります。それが今回、失業対策よりも、さらに積極的に、完全雇用の達成を施策の目標とされて、この問題解決のために、雇用審議会を設けられたと、こういうことになっておるわけでありますが、失業対策審議会も、今日までいろいろ、諮問に対する答申あるいは意見書等をみずから出しておられますが、従来の失業対策審議会も、それぞれの時代、時期あるいは経済条件あるいは労働力市場等の実情に即して、答申をなされて参ったわけであります。あるいは意見書等も出してこられたわけであります。法文の内容を見ますと、なるほど今回設けられた雇用審議会というものは、より積極的な意味を持つかのごとく考えられますけれども、しかし、実体はほとんどかわりないじゃないかと、こう思うわけでありますが、どのように違いがあるのか。実際的に、どういう立場あるいは観点に立たれて、今後の審議会運用をなされようというお考えであるか、これをまず最初に承わりたいと思います。
  44. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) ただいまの失業対策審議会雇用審議会との差は、それは、積極性と消極性のまず差があると申し上げたいのであります。私、このことを自分自身強く主張いたしまして、承認を政府から得たのでございますが、これは、私はこういう考えなんです。この内閣が完全雇用を達成するということで、雇用量の増大を目ざして経済の拡大均衡をやる、いわゆる積極財政といいますか、積極産業経済をやるという建前をとっております。それ自体が完全雇用になる、こう簡単に考えておりますが、完全雇用を求めるためには、ただ企業が拡大されただけでは完全雇用にならないというのが私どもの考えでありまして、一面において、企業の拡大、雇用量が増大するとともに、他面において、この労働市場を圧迫しておるところの老齢の人々が労働市場から安定生活にかわっていけるという、一つの社会保障制度がなければならない。また、幼年工その他が十分修業できておらないのに、職場を圧迫するということであるならば、これまたそれに対することを考えなければならない。制度を考えなければならぬ。社会保障制度と産業政策の積極的な面とが相総合して、初めて完全雇用の道に行くのではないか。  それからもう一点は、完全雇用の現在の状況は、大体経済企画庁の方ともいろいろ話し合っておるのでありますが、今年の状況は、七・六%の産業の伸びを考えまして、この雇用量というものは、八十九万人と算定いたしております。また、百三十万人の新人口というものに、大体日本は人口の六八%が勤労いたしておりますから、それを掛けますというと、大体八十九万人でございまして、いわゆる雇用量と供給量がやや同じになる。そうなると、現在の失業者は、そのまま残っていくのです。そこでまた、潜在失業者もそのままになっておりますというようなことが、これは経済企画庁でやることではございますけれども、雇用の問題に対する的確な日本経済の動き、日本の社会の動きというものが完全雇用へいく一つの的確な計画のもとにいかなければならぬ、そういうような事務を全部やらせるのだという考え方で、つまり雇用に対する参謀本部的な役割を演じさせたいというのが私どもの考えでありますが、その内容は、第二条に規定いたしておりますから、十分御審議あずかったことと思っておりますが、そういう意味で考えておるのでございますから、御審議の上、ぜひ一つ御賛成賜わらんことをお願い申し上げます。
  45. 田畑金光

    ○田畑金光君 大へん構想は大きいわけでありますが、御趣旨の点、まことにわれわれも賛成であるわけです。そこで、雇用の問題は、産業政策の面と社会保障制度の面等も考えていかなければならぬ、全く同感であります。  そこで、具体的にお尋ねいたしますが、本年度は、昨年に引き続き、経済も一般的に好景気を維持するであろう。ただし、伸び方は昨年に比較して落ちる。ことしの伸びは、今お話のように、七・六%前後である、こういうように見ておられますが、そこで一体今、日本の失業者というものはどれくらいいるのか。失業者と申しましても、完全失業者あるいは不完全失業者、こういう失業者の数を一体どの程度に見ておられるか。しかもまた、失業者の分布というものは、あるいは都市とか農村等、いろいろありましょうが、その失業者の農村における状況、あるいは都会における状況は、どのように見ておられるのか。まずその点を承わりたいと思います。
  46. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 今の不完全就業者については、一定の定義がないのです。けれども、まあいろいろの見方があります。いろいろな見方で発表いたしておりますが、これは、内閣の統計局の主たる調査に基くものでありますけれども、俗に一千万人あるというのは、週三十四時間以内の働きしかしないという人、それから八千円以下の収入をもっている人が、これはやはり六百十三万くらいあると思います。しかし、完全失業者で、いつでも転用できる、何か企業ができたら、すぐ転用できるという者は、企画庁と相談いたしまして、二百二十万から三百万の範囲内とにらんでおります。われわれが今一番問題にしておるのは、この二百二十万から三百万の、いつでも転用できるというものにまだ手がつかないのですよ。これは今、雇用量を増大して、完全雇用をやると言っておる今の内閣の政策であるが、七・六%本年伸びて、新しいものを吸収するだけで精一杯でございますから、この二百二十万ないし三百万というところへ手が届かない。これを実行するためには、そう短い時間では行われない。この完全雇用を現わしたから、腹の減ったときにお茶づけをかきこんだようになるかというと、なかなかそうはいかないというところに、これは非常なむずかしさがあると同時に、これをやることが日本経済の務めでございますから、どんな苦労をいたしましてもそうやっていきたい、かように考えております。
  47. 田畑金光

    ○田畑金光君 話を進めていく上から申しまして、一つ一つお尋ねをしていきたいと思うのですが、政府の言われておる完全失業者というものは、一体どういうものをさすのか。完全失業者というものは幾らぐらいいるのか。これをまず、大臣から承わりたいと思うのです。
  48. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 完全失業者は、やはり完全失業者のことを申しております。大体二十九年の平均は、これは五十九万人ぐらい、三十年は六十九万ぐらい、それから三十一年は六十四万といっておりますが、企画庁との折衝においてでき上っている数字は、三十一年を六十万、三十二年も六十万と予想しておる数字は、企画庁との間の折衝数字であると思います。
  49. 田畑金光

    ○田畑金光君 完全失業者というのは完全失業者であると、こう言われては、これは話にならぬわけです。まあその点はよろしゅうございます、私わかっておりますから。  それから、先ほどお話の、週三十四時間以内の労働は幾らいるのか、お話を承わりますと、八千円以内が六百十三万、こう言われております。ところが、大臣が衆議院の予算委員会で、社会党の成田委員の質問に対して答えられておる内容を見ますと、週三十四時間以内の労働は一千万と言われておるわけです。一体それは一千万なのか六百十三万なのか。さらに、三十四時間以内の労働というものは、これは完全失業者なのか不完全失業者なのか、どういう定義に属するものか、承わりたいと思うのです。
  50. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 大体三十四時間以内を働いておるのは、潜在失業者という言葉を使っております。とにかく三十四時間働いているのですかう。しかし、完全就業者ではない。すなわち潜在という言葉を使っております。あるいは不完全就業という言葉も使っております。三十四時間以内は、成田委員のときにそう答えました。今日もさっき、三十四時間以内のものは一千万と申しました。それから最低賃金制の問題でも、ずいぶんもみ合いました。そのときに発表した数字は、八千円が最低賃金の御要求でございますから、八千円以内の就業の人は六百十三万でございます。
  51. 田畑金光

    ○田畑金光君 最低賃金と関連して、六百十三万という答弁をなされたようでありますが、あの最低賃金の場合は、単に八千円という金額でなくて、年令という制限条項があるわけですね、満十八才云々と。この場合の八千円以内六百十三万というのは、これは年令等の関係はどうなっているのですか。
  52. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) ちょっとその点は、局長から。
  53. 澁谷直藏

    説明員(澁谷直藏君) ただいまの点でございますが、これは、内閣統計局で毎年調査しております労働力調査をソースにいたしまして、発表いたしておる数字でございます。月収八千円未満の雇用者の数でございますが、昭和二十九年が四百九十六万、三十年が五百二十七万、三十一年が六百十三万、こういう数字になっておりまして、これは最低賃金等との関係とは切り離して調査いたしております関係上、年令には関係がございません。
  54. 田畑金光

    ○田畑金光君 今、大臣お聞きのように、これは最低賃金の問題とは全然関係がないのです。いわゆる最低賃金で論議されている八千円というのは、年令十八才という基準において論議をされているわけで、三十一年における八千円以内のものが六百十三万に上っているのは、日本の低賃金労働の実態を示したものと言わなければならぬと、こう思うわけなんです。さらに、先ほどの大臣の御説明の中に、転用可能の者二百二十万ないし三百万おるというお話でありますが、転用可能というのは、これはどの層からの転用可能をさしているのか。今御説明のありました、いわゆる潜在失業者ないし不完全失業者一千万の転用可能を言われているのか。転用可能ということは、どういう基準から転用可能というものを言われておるのか、これを一つ……。
  55. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) こまかしい数字に対しまして、局長から答弁をしていただきたいと思いますが、先ほどの最低賃金の問題で論争をいたしましたときに使いました数字は、六百十三万でありますと言ったのであって、その最低賃金の論争のときに使ったということで、それを最低賃金そのものに当てはめたものではないのでございます。今のこまかしい数字については局長から……。
  56. 澁谷直藏

    説明員(澁谷直藏君) ただいまの数字でございますが、大臣からも答弁がありましたように、企画庁と私の方で、いろいろこの点については検討を加えておるのでございますが、何分、対象自体が不完全就業者あるいは潜在失業者ということでございまして、定義をどういうふうにきめるかということで、数字自体も動いて来るわけでございます。従いまして、いろいろな観点からしぼりまして、転用可能な不完全就業者といたしまして、二百二十万ないし三百万という数字を想定いたしておるのでございますが、その転用可能という意味は、ここに新しい雇用の要求があった場合に、直ちにそこに動いて、完全なる労働力として働き得る状態にある労働者、こういう意味でございます。具体的に申しますると、この不完全就業者というものの中には、家事労働に従事しておりますところの家族就業者、特に一家の家庭の主婦というものが相当入っておるというふうに考えられるのでございますが、こういった一家の主婦としての地位にある者は、ここに新しい雇用がありましても、直ちに完全に転用可能な状態にあるものとは言えないのじゃないか。そういう意味で、そういったものは一応対象からはずしまして、しぼって行った数字が二百二十万ないし三百万程度じゃないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  57. 田畑金光

    ○田畑金光君 大体、失業者の数字についてはわかりましたが、そこで、この失業者について、本年度の産業政策として、どのような吸収を政府として考えておられるか、これを承わりたいと思うのでありますが、特に、お話のように、昭和三十一年度のわが国経済成長率は、一二・五%に上ると言われておるわけであります。本年度は七・六%、こういう見方をなされているわけであります。しかもこれは、経済企画庁の調べによりますと、昭和三十二年度は、三十一年度に比べて、総人口で約八十万人、生産年令人口で約百三十万人、労働力人口で約八十九万人増加の見込みであるが、お話のように、本年度増加する八十九万人については、新しい産業規模の拡大の中において吸収できるのだという前提の上に立っておられるわけであります。そこで、八十九万をどういう形で吸収できると政府は見ておられるか。すなわち、私の具体的にお尋ねしたいことは、第一次産業部門にどの程度吸収し、あるいは第二次産業部門、第三次産業部門等において、どのようにこの新規労働力人口が吸収されていくのか、この点を承わりたいと思います。
  58. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 第一次の方は、これはもう、現在の状況ではふえないという見込みであります。むしろ第一次から第二次の方に移りつつあるような状況であります。ただ、非常に不安定だと思いますことは、第三次産業の方が相当やはりふえていっておりますことは、これを答えましたら、すぐ御指摘になるであろうと思いますが、健全な姿ではないと思っております。願うことは、第二次産業部門が拡大されていくことを祈ってやみません。ただし、縦貫道路あるいは国土の総合開発というようなものがもっと進んで参りましたならば、第一次産業の方に相当ふえていくだろうと思いますが、来年度は、それは見込まれないと考えております。
  59. 田畑金光

    ○田畑金光君 第一次産業部門は見込まれない、第二次と、そして第三次に、こういう見込みを持っておられるようでありますが、第二次産業部門に一体八十九万のうちどれだけを吸収できるという見通しなのか。それは、どういう観点から、まあ何ぼ見ておられるか知らぬが、そういう数字を出しておられるのか、これをちょっと承わりたいと思います。
  60. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 企画庁の方と折衝した数字を、部長の方から申し上げます。
  61. 澁谷直藏

    説明員(澁谷直藏君) ただいまの御質問のございました、三十二年度経済計画におきまして、就業者総数の伸びを八十九万と押えておるわけでございますが、どういう部門でこの八十九万の就業者が伸びるかという点につきましては、企画庁といたしましては、関係各省といろいろ打ち合せをいたしました結果、最近の第一次産業の就業者の動き方から見まして、三十二年度におきまして、第一次産業において就業者の伸びを見るということは無理があるのではないかという考え方から、第一次産業におきましては、就業者の増をゼロと見ておるわけでございます。もう少し詳しく申し上げますと、これは暦年度でございますが、昭和二十九年から三十年に対しましては、農林業務の就業者が三十九万ふえております。これは、御承知のように、非常な大豊作の関係でございまして、そのため、農林業務の方へ就業者が相当ふえていったということが見られるのでございますが、それが三十一年になりますと、逆に四十三万人、農林業から就業者が減少してきております。その四十三万人という減少は、相当大幅な減少でございまして、しかも、これと対照的に、非農林業、すなわち第二次、第三次産業におきましては百二十二万という、近来にない大きな就業者の増加を見ておるのであります。これは、田畑先生も御承知のように、昭和三十一年度におきます生産活動の伸びが非常に伸びたということの反映であると思われるのでございます。従いまして、昭和三十二年度の経済計画におきましては、第一次産業におきましては、就業者の伸びはゼロであろう。それで、経済の規模が七・八%伸びる想定でございますので、その程度経済規模の拡大があるならば、第二次、第三次におきまして、八十九万程度の就業者の伸びが見込まれるのじゃないか。それで、第二次、第三次のそれぞれの部内別にどの程度かという御質問だったと思います。その点につきましては、いまだ固まった数字を出しておりません。大体大きな総体といたしまして、第二次、第三次産業で八十九万程度伸びる、こういうふうに見ておるわけでございます。
  62. 田畑金光

    ○田畑金光君 先ほど来、御答弁を承わっておりますと、経済企画庁と打ち合せしてうんぬんという言葉があったわけです。たとえば、その中では、昭和三十一年度の完全失業者を、労働省としては六十四万と踏んでおられるわけです。労働省の踏まれておるのは、おそらく職業安定所の窓口等の実際の動きを中心としてとらえられた数字が六十四万であると、こう見るわけでありますが、経済企画庁は、昭和三十一年度の完全失業者というものを六十万と踏んでいる。また、三十二年度につきましての経済企画庁の見方は、完全失業者は、同じく前年度同様に六十万と見ております。労働省が自分の出先機関を通じ、確実に雇用、失業問題をとらえておるわけでありますから、労働省のつかんでおられる数字がより正確な数字であり、また権威のあるようにも考えられるが、お話によると、企画庁の数字にこれを合せていっておられる。一体どれが権威があるのか、その数字が、お互いの話し合いによっていつでも変更できるというようなことになりますと、先ほど来の私がお尋ねしておりまする、今年の八十九万の新規労働力について、第一次はゼロと見込んでおるが、第二次、第三次に吸収できるのだ、こういうような点等も、一体どの程度信用していいのか、まことにこれは、おそれるわけですが、どうでしょうか。
  63. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 御不満のあることは当然で、数字を六十万と言ったり、六十四万と言っておりますから、御不満のあることは当然でありますが、これは、暦年度と年度末の違いがそういう数字に出ておりますので、もとは皆同じであります。内閣統計局によっているものであります。暦年度ですと、六十四万になります。年度末になると、六十万人になります。
  64. 澁谷直藏

    説明員(澁谷直藏君) ちょっと補足して御説明申し上げますと、労働省の六十四万というのは、昭和三十一年の一月から十二月までの想定でございます。暦年で一月から十二月までで、実際六十四万という実績になっておるわけでございます。ところが、企画庁で発表されております六十万の見通しでございますが、これは、予算等も消耗する関係がございまして、年度で一応想定をいたしておるわけでございます。すなわち、経済計画におきましても、昭和三十二年度経済計画、こうなっておりますので……。ところが、言うまでもなく、一月、一月は最近発表になりましたが、当時としましては、一月、二月、三月における完全失業者の統計がどういう数字になるかということは、これはもう予定する以外に方法がないわけでございます。それで最近の傾向等から推定いたしまして、三十一年度の完全失業者は、大体六十万程度であろう、こういうのが企画庁で発表した数字でございまして、この点につきましては、労働省とも十分打ち合せした上での数字でございますので、食い違いはございません。それで、実際はどうなっておるかと申しますると、三十一年の四月から十二月までの完全失業者の、これは実績でございますが、平均いたしまして五十八万となっております。それで一月が最近発表になりまして五十七万でございますから、大体五十八万程度で少くとも本年の一月までは推移しておる。ただ二月、三月というのは、御承知のように季節的な要員もございまして、この完全失業者の数も非常に波乱を示すのが通例でございますので、そういった季節的な要員も合せまして、大体六十万程度じゃないか、こういうふうに見通しておるわけでございます。数字に食い違いはございません。
  65. 田畑金光

    ○田畑金光君 正常な雇用のあり方かういたしまするならば、第一次産業あるいは第三次産業等に雇用量が増大していくということは、これは望ましい姿ではないと、こう考えるわけです。ことに日本の農林業あるいは農山村における今日の人口の状況、あるいは所得の問題等を見ました場合に、飽和状態であるどころか、過剰労働力の非常に大きなものを農山村にかかえておる。むしろ過剰労働力をその他に配置しなきゃならぬ。これが今日の農山村の状況であろうと考えるわけです。同様にまた、第三次産業部門を見ましても、これに雇用量が増大していくということは決して正常な姿ではない。しかもそれは家内労働等の不健全な内容を持っておる。一方においては非常に低賃金である。流通過程に伴ったわずかな利潤に帰属する層である。こういうことを考えましたときに、やはり雇用の正常な姿としては、どうしても第二次産業部門に吸収するということでなければならぬと思うのです。ところがこの第二次産業部門を見ました場合に、大企業というものは、最近あるいは労働生産性の向上、あるいは機械化の促進等々が行われて、企業の合理化が行われて、かえって雇用量というものはふえるどころか低滞する、あるいは減っていく、こういう傾向にあるわけなんです。そこで結局八十九万というものは、この第二次産業部門と申しましても、大企業、しかもそれは労働条件やあるいは配分所得等について非常に水準以上の恵まれた所においては、今言ったような傾向が見られておる。もし第二次産業部門の中でも、新しい雇用を吸収し得る部門というと、中小企業あるいは零細企業の部門だと、こう思うのです、中小企業、零細企業の部門。しかしながらこの中小企業、零細企業というものは、いつでも潜在失業にかわり得る要件というものを中に持っているわけですね。こういう面を考えましたとき、正常な雇用政策というものがどうなければならぬか、こういう問題が出てくるわけですが、そういう点に対して、労働大臣としては具体的にどういう考え方のもとで、具体的にこういうような問題に取り組んでいかれようとする御方針であるか承わりたいと思います。
  66. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 田畑委員の御指摘になりました問題は、日本経済——日本の現在において最も大きな問題であると思います。また非常に御研究なさっておられる、うんちくを傾けられまして、私ども非常に参考になるのであります。御同様に考えております。やはりこの第一次産業、第三次産業というものは、ふえるということは望ましいことではございません。しかし政府の施策が、今、決議を皆さんにしていただきました脊梁山脈を縦貫する道路を作るということは、大きな国土開発になるんですね。もう一つは、私は北海道でありますけれども、今年農林省が考えておりますところの寒地農業転換策がほんとうに具体的に今考えておるようにやれますというと、デンマークのような農業経営に——暖地農業が亜寒帯農業経営にかわって参りましたならば、一千万人ぐういの収容力がある、あれだけの広い所でありますから、あると思うのです。その施策を行えば、第一次産業であっても完全な雇用量であると思うのです。そうでない現在の状況で、二三男が農村に潜在失業の姿においております場合においては、ほとんど第一次産業には雇用量を吸収する能力がないと私は思っております。そこで、第一次産業をふやそうとするならば、今の目先といたしましては、縦貫道路の完成を急ぐ。もう一つは、東北、北海道の暖地農業経営というものを亜寒帯農業経営に切りかえる——寒地農業経営に切りかえる。それに対する総合施策をやるということが行われた場合においては、これは第一次産業がふえますから、その施策をある程度来年度から、幾らの金が見込まれるかわかりませんけれども、その金が投じられるに従って、その資金の効率は上っていくものと思っております。それから第二次産業の問題であります。今も御指摘になりました、オートメーションあるいは大企業の企業合理化あるいは労働の生産性ということによって、日本の産業がむしろ失業者を出す形体ではないかという御指摘でありますが、これはごもっともであります。しかし私はオートメーション、近代設備、生産性向上ということは、一時失業者が出ても、これはやるべきであるという考えの上に立っております。そこで大企業の方は大体その方向に向っておりますから、今後やらなければならぬのは中小企業であると思うのです。この中小企業そのものは、日本の貿易に対して大きな役割を果しておりますが、現在の設備、現在の科学化というか、技術化というか、他国と比べてみるというと非常に劣っております。劣っておるが、日本の労力が非常に安いものですから、それに勤勉ですから、どうやら貿易をやっておるのでございますが、この貿易量をふやすということについては、やはり中小企業を育成していく、中小企業を近代設備化していくということなんです。その近代設備化するといいましても、大企業のオートメーションのようなふうにはできませんから、まあ近代的な機械と技術を導入するということであります。そうして日本の使命は、これらによって良品廉価で国際市場を獲擬することに成功したならば、仕事の量はますますふえますから、そこで初めて雇用量が増大される。現在の二十四億あるいはことしは二十八億でありますが、それだけのものを作るだけのオートメーションや機械化であったのでは、それは何にもならないと思うのです。私は、日本の経済の発展というもの、日本の雇用量の増大というものは、二つの柱の上に考えるべきだ。一つは国土総合開発計画の完成、地下資源も海洋資源もあるいは農業の方面もみな入るのでありますが、それの完成、一つはやはり加工貿易の線において生命をつなぐ。でございますから、加工貿易を自国の産業の中心と考えるのであるならば、他国の設備よりも優秀なものであって、優秀な設備でなければならない。そうしてそれがどこの国よりもよいものであって、どこの国よりも安いものでなければならないということが、私は一つの条件であると思う。それを行うためには、やはり関税障壁なんかの問題がございますから、経済外交というものをかね備えていかなければならない。そういうことになって参りましたならば、一時的には失業者があるいは出るかもしれません。あるいは一時的に。今日非常なへんぱな労働時間になっております。第二次産業がある程度進化してきた。ところが技術者がないものでありますから、一週六十時間も七十時間も働かせられる。それはかわりがないというようなことでありますから、こういうような問題についても、これは完全雇用関係するものでございますが、日本の教育はやっぱり変えていかなければならない。文科本位のものを八〇%も出しておる。日本の産業経済の要求しておるものは、逆に八〇%の技術員であって、二〇%はこの文科でいい。オートメーション時代に帳づけするだけなのですから、何も文科出はあまり要らない。ところが教育はそうではないというようなことでありますから、こういう点も、今申しましたような日本の産業が進み、日本の貿易が伸展するとともに、並行して、日本の教育制度、日本の技術者の養成ということも、これは忘れてはならない要素であると思うのであります。今申しましたような総合施策を立てていくもとの審議をすることが、雇用審議会の私は一番大きな要素であると思っております。でありますから、今お問いがありましたからお答えいたしたのでありますが、私は議員もいたしておりますけれども、小さな商売をいたしております。毎日私は朝は貿易の報告を受けております。私の携わっておるのは材木でありまして、ヨーロッパにはナラのインチ材、アメリカには北海道の特殊合板を出しております。その報告を毎日聞いております。ところが最近の状況は楽観を許しません。それはなぜかというと、やはり日本のコストが上ってきておる。これを克服していくのでなければ、日本の貿易は発展しないと思うのです。日本の貿易が発展しなければ、あとの金の分け合いを何ぼ協議したり、何ぼ論争したりしたって、もとがふえなければ何にもならないのでありますから、私はどうしてもこの他国と競争していくということについては、加工貿易と国内の資源の総合開発、この二つの線の上に沿って、この雇用量の増大をし、完全雇用に持っていきたいというのが私の考えであり、現内閣におきましてもこの考え方は変らないと思います。その線に沿って努力いたしたいと思いますかう、御協力願います。
  67. 田畑金光

    ○田畑金光君 大へん大臣の広範な御答弁がありまして、私の質問がどこに飛んでいったか忘れた始末でありますが、やはり大臣はさすがに政治家だと思って敬意を表します。教育から政治、経済、外交、あらゆる面にわたって御説明になり、特に大臣の携わっておる御商売の点からも、経済の動き等について非常に敏感な、適切な御批判、御意見を承わりまして、非常に勉強になったわけですが、そこで私は具体的にお尋ねして参りたいと思いますけれども、今、大臣のお話しの国土総合開発、まことに私はそうだと思います。それから縦貫自動車道路の建設、これもしごくもっともだと思うのです。東北、北海道の開発、私も東北の者でありますから、大臣と同じように北海道、東北開発を重点におかねばならぬと、こう考えておりますが、それで、縦貫自動車道の建設は確かにいろいろな資源の開発に大きな寄与をなすと思うのです。大臣のお答えなさったのは、縦貫自動車道を建設するというこの建設そのものに伴う公共事業としての雇用面の吸収、この面があると思うのです。それからもう一つは、自動車道路を建設することによっての資源の開発、こういうことを言われておるのだと思います。
  68. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) あとの方を考えております。
  69. 田畑金光

    ○田畑金光君 さらにまた東北、北海道の、この問題は同じような内容の問題でありますが、そこで私は今の農村に一体何百万の過剰労働力があるのか、こういう問題になってこようと思うのですね。これはおそらく六百万、七百万おるかもしれません。かりにそのような国土総合開発をやりましても、現在農村の過剰人口というものが果してそれによって吸収できるかというと、吸収できないと思うのです、労働量を。それをさらに一面においては、大臣の説によりますと、加工貿易によって吸収していくのだ、こういうことになってこようと思うのです。オートメーションあるいは機械化によって貿易を拡大していくのだと、こういうお話ですが、なるほどオートメーションに伴って一時的には失業が出るかもしれぬ、長い眼で見れば、これは生産の拡大によって吸収されるのだと、こういう御説です。私もそれは原則論として正しいと思うのです。しかし、やはりオートメーション化し、あるいは機械化して出産力が拡大していくその過程における摩擦失業というのか、臨時的な失業をどう吸収するか、また吸収し得るかという問題は、やはり経済が、あるいは貿易が、原則的に伸びて発展できるかどうかという問題だと思うのです。そういうことになって参りますと、これは私たちいろいろ意見もありますが、議論もありますが、それをやっていたのではとても時間が足りませんので申し上げるわけには参りませんが、そこで、いずれにしても、農村には何百万の過剰労働力があるのです。ところが現実に失業者というのは、一二・五%経済が伸びたにかかわらず、完全失業者に六十万おる。今年も同じく七・五%経済が伸びれば、新規労働力は吸収できるかもしれませぬが、完全失業者六十万は従前と同じように停滞をする。これから昭和三十四年、三十五年ごろまでは同じような新規労働力が労働市場を圧迫する、新規労働力が同じく毎年々々カーブを描いて上っていって労働力市場を圧迫する。こういうことになっているわけですね。その場合に、完全失業者が六十万おる、あるいはお話しのように転用可能の労働力が二百万ないし三百万おる。この人方に対して一体いつしからばお話しのように完全雇用の機会を与えるのだ、いつこれができるのか、どういう見通しの上に立って具体的に進めておられるのか。  それからもう一つ御答弁に関連して、中小企業が日本の産業構造、経済の中で非常に重大な役割を果しておる。貿易の面からいっても非常に重大な役割を果しておる。その通りだと思う。中小企業についていかにして機械化し、合理化するかという問題、あるいは機械化をとり入れるかという問題、大きな問題だと思うのです。ところが遺憾ながら開発銀行とか輸出入銀行とかあるいは電源開発会社に対する財政投融資、これは二千億を超えておるのですね。ところが中小企業金融公庫あるいは商工中金、こういう中小企業専門の金融機関に対する融資なんか見ると、一千億を前後しておる。こういう点から見たとき、ほんとうに中小企業を強化していこうとする政府は腹があるのかどうかという問題が、私は一つ出てきょうと思う。  もう一つ私たち不思議に思うことは、今通産省の方で中小企業団体法とかあるいは中小企業組織法という法律案を出そうと考えておられる。これは中小企業をああいう考え方で保護し、助長しなきゃならぬということで、通産省は中小企業団体法というものを準備されたと思うのであります。ところが経団連なんかの反対によってあれが今国会に出るのか出ないのかという問題で、今政府も態度をきめかねている。ほんとうに中小企業を育成強化しようとするならば、私はやはりわが社会党が出しておる中小企業組織法案、これとある程度違っておりますけれども、今政府で準備しておる中小企業組織法案、こういうような問題は当然今国会に出して、中小企業の育成、強化をやるべきだと思うのだが、先ほどの答弁の中に出てきましたので、関連して、この点どう考えておられるのか、お尋ねしたいと思います。
  70. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) あまり言うと話が長くなって、答弁しない方がかえっていいかもしれませんが、お問いにたるから答えなければなりませんが、今の中小企業の問題から先に申し上げますが、御承知通りに、今参議院で御審議にあずかっておりますところの予算の内容は、御承知のように六百七十六億ぐらいの財政投融資を見込んでおります。そのうちの大体三分の一を中小企業の方向に向けるつもりであります。また今年税の軽減をいたしましたが、これについては税の軽減が、つまり免税をされておる人には何も恩恵はないじゃないかという御批評はありますけれども、中小企業及び中堅層には相当なやはり減税になりまして、かれらの資本蓄積というものを助長していくことができるであろう。大体去年よりも多くやります分として六百七十億ばかり財政投融資がふえる。これは三分の一ぐらいは中小企業の方に向うような構想になっております。  それからさらにもう一点は、まだでき上りませんけれども、これは為替予算ですね、について私はこういう要求をしておるのですよ。まあ要求が当るか当らぬかわからぬけれども、石橋さんの時代はやろうと言ってくれたけれども、その後どうなりますか。けれどもそうしなければならないと思うのです。それは中小企業のオートメーション化までいかなくても、近代設備でいいのですよ。今まで中小企業の一番悩みとするところは、加工貿易の日本として加工の場が貧弱だということです。ですから、この加工の場を直すために、為替の方も相当一つ中小企業の機械を導入するということについて考慮しなければいかぬ。機械を入れるということになると、機械屋が非常に怒るのですよ。ところが私の経験からいって、それは日本の鋼材というものをもっと進歩させなければ、他国の製品と同じようなものはでき上らない。でありますから、どうしても日本は特殊鋼というものをやっていくのでなければ……。日本の機械技術というものは相当なものです、しかし鋼材が悪い、どうしても一種類のもの一基は輸入しなければいかぬ。あとは鋼材を輸入して日本でできます。それを私は合板協会を指導いたしておりますから、自分で合板のドライヤーを買ってきまして、その一基を買ってきたことによってコー・ドライヤーです、それが百五十基できまして、それが、日本の合板というものを飛躍的にアメリカに送るようになりました一つの大きな原因になっております。そういった部分はどの企業にもあるのですよ。でありますから、一方において減税し、一方において資金を貸してやるということをきめた。同時に為替の方も西独その他スエーデン方面の優秀な機械を日本に入れるということを考えるのでなければいけない。そこで初めて日本の中小企業は息を吹き返すのですよ。そこでそういうものになれば、現在の日本は労銀は御承知のようにアメリカよりもうんと安い。八分の一ぐらい、あるいは見方によっては五分の一と見るところもありますが、イギリスよりも安い、ドイツよりも安い。そういう安い労銀の中に日本の人が勤勉に働いても競争にならないというのは何か。それは設備が悪いからです。設備が近代化されて、よその国々と同じものができるならば、日本人の方が安くできます。ですから、どんどん競争ができますから、やはりそういう方向に向うべきである。そういう政策を今とっております。けれども、今年一年でこれを終っちゃいけない。倍加的に来年、再来年というふうにやっていかなければこれはいけないのであって、そうして進んでいきましたならば、最後に御指摘になりました完全雇用の線は、今年度の分は七・六%やることによって新規の労働力は吸収できますけれども、来年度、再来年度後においては、そこまで行って初めて転用のできる二百二十万ないし三百万というものが順次減っていくのである。それをやらなければ、私はやはり雇用の増大というものは起らないのではないか。大企業の方は原料生産です。電気もそうです。鉄もそうです。石炭もそうです。日本の貿易を盛んにするとするならば、やはり中小企業が原料を持ち、あるいは原料を買って加工方面に行くような場を作ってやることが一つの政策でなければならぬというように考えております。これによって完全雇用はできるであろう。でありますから、政府、大蔵大臣並びに企画庁長官あるいは通産大臣という方面に向って、私はこれを強く推進いたしております。
  71. 亀田得治

    委員長亀田得治君) ちょっと速記をやめて下さい。    〔速記中止
  72. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 速記を始めて。
  73. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 大臣にお伺いしますが、雇用審議会は失業対策審議会を積極的にし拡充強化する、一言でいえばこういうことでありますが、そこで内容に入りますと、失業対策審議会よりも専門委員が二十二人ふえて幹事が五人ふえる。予算の面で八十三万五千円ふえる。そういうことなんでしょうが、そこで私伺いたいのは、失業対策審議会の答申要綱で、実際の施政面に非常に貢献したというようなおもな点を一つ、二つ伺っておきたい。つまり失業対策審議会がどれだけ効果があったかということを、ごく大きな点だけでよろしゅうございますから、参考に伺いたい。
  74. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 八木さんの御質問ごもっともでありますが、従来のことでございますから、部長から……。
  75. 澁谷直藏

    説明員(澁谷直藏君) ただいまの件でございますが、失業対策審議会は、御承知のように例のドッジの安定政策を強行いたしまして、そのために相当大量の失業者が出た状態の昭和二十四年に設置されまして、それから現在ま、でに六回の答申と四回の意見の具申をいたしております。ほとんど毎年答申をされておるわけでございますが、資料としてお配りいたしましたように、そのときどきの社会経済あるいは失業情勢に対処いたしまして、きわめて適切な答申を出されておるのでございます。大別的に申し上げますると、昭和二十四年から昭和二十六年に至る間三回答申を出されておりますが、この三年間は、主として失業者が発生しました、その発生した失業者に対して、直接に救済するための施策をどうするかという点に重点がしぼられております。従いまして中身といたしましては、公共事業通常の仕方、特に失業対策事業のやり方、それから失業保険の運営の仕方こういう点に重点が置かれて答申が出されておるのでございます。それが三十年の第四号の答申になりますると、従来の答申と性格が変って参りまして、日本の失業という問題は、単に景気の変動に伴うような摩擦的な失業現象ではない。いわば日本の産業構造に根をおろしておりますところの構造的な失業の現象でございまするので、これに対処する政策といたしましては、単なる失業対策ではとうてい解決できない。それで、これに対しましては生産の拡大、所得の上昇を企図いたしますところの雇用政策に転換しなければならない、こういうふうに大きく性格の転換を示したのが昭和三十年の第四号の答申でございます。それから昭和三十年の十二月に第五号、昭和三十一年の十一月に第六号と答申が出されておりますが、これらの答申は、いずれもただいま申し上げましたような雇用政策という観点に立ちまして、従来の消極的な自後救済としての失業対策のほかに、積極的な雇用対策を進めるためには、産業政策をどうしたらいいか、中小企業対策をどうすべきであるか、さらに進んでは科学技術の振興をはからなければならないというように、非常に広範囲にわたって答申が出されてきているのでございますが、一言で申しますると、これらの答申の内容は、そのときどきの状態にきわめて妥当な答申でございますので、これは予算の編成その他におきまして、特に労働省といたしましては、この答申を貴重な御意見といたしまして、施策面に盛って参ってきております。
  76. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 私は、大体審議会や調査委員会みたいなものは原則的に反対の立場なんです。労働省においても労働大臣以下それぞれ専門のお方がおられるし、それから失業対策部にしましても、定員が四十六人でございますけれども、大体の問題のラインというものはわかっているのだから、こういうものを作らなくても、省内だけで相当真剣にお取り組みになれば、普通の審議会の答申くらいのことは大臣以下でやられても大体わかるのです。それを実際施策面にどういうふうに実現するかという実現の方法がむしろ問題であって、原則的なことは、特にこういう人たちの知恵を借りなくたって済むのじゃないかという気がするのですが、ごく大局的に大臣どういうふうにお考えになりますか。
  77. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 御説ごもっともでありますが、それで不十分なものですから作ったのですが、これは企画庁、通産省、その他から、大蔵省からも出しまして、この役所一つ作ろうということになったのは、先ほどから田畑さんともずいぶん話し合ったのですけれども、四月一日から始めて九月の末でないと、第二次というか、やり直しというか、五カ年計画ができないのですよ。今予想で話しているのですよ。これは国家に対して済まぬと思うのです。しかしとてもああいう広範なものを急激に作って、今まで高碕さんのときに失敗したから、あれはいい失敗であったからいいけれども、逆にいったら大へんなことになるのです。そこで雇用の問題だけは企画庁からもなにして、それで単独に一つ案を立てる。それで企画庁の案とも組み合せていこう。完成するのが大体九月か十月の初めになると思うのです。それが三十二年から五カ年計画になると思うのですが、そういうわけでございまして、お説のようにできぬこともなかろうと思うが、やはり各省意見をまとめるところに一つの妙味がある、こういうわけであります。
  78. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 本日の委員会は、これにて散会いたします。    午後零時四十五分散会