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1957-03-07 第26回国会 参議院 内閣委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月七日(木曜日)    午前十時五十分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長            亀田 得治君    理事            上原 正吉君            大谷藤之介君            秋山 長造君            竹下 豐次君    委員            寺本 広作君            松岡 平市君            荒木正三郎君            伊藤 顕道君            田畑 金光君            永岡 光治君            八木 幸吉君   国務大臣    法 務 大 臣 中村 梅吉君    国 務 大 臣 宇田 耕一君   政府委員    調達庁長官   今井  久君    調達庁不動産部    長       松木 豐馬君    行政管理政務次    官       楠美 省吾君    行政管理庁管理    部長      岡部 史郎君    法務政務次官  松平 勇雄君    法務省刑事局長 井本 臺吉君    外務省欧米局長 千葉  皓君    厚生政務次官  中垣 國男君    厚生大臣官房総    務課長     牛丸 義留君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君   —————————————   本日の会議に付した案件派遣委員報告厚生省設置法の一部を改正する法律  案(内閣送付予備審査) ○科学技術庁設置法の一部を改正する  法律案内閣送付予備審査) ○法務省設置法の一部を改正する法律  案(内閣送付予備審査) ○国の防衛に関する調査の件(相馬ケ  原演習場事件に関する件)   —————————————
  2. 亀田得治

    委員長亀田得治君) これより内閣委員会を開会いたします。  まず、派遣委員報告の件を議題に供します。  九州班派遣報告につきましては、委員長である私も参加いたしましたので、派遣委員を代表して、便宜私から報告させていたたきたいと存じます。  竹下委員松岡委員と私の三名は、内閣委員会の決定に基きまして、二月十九日より同月二十七日までの九日間、福岡大分及び宮崎各県下の飛行場基地及び国の出先機関業務運営等実情調査して参りました。視察先は、福岡管区監察局福岡調達局板付飛行場九州大学福岡県庁築城飛行場、第七管区海上保安本部八幡製鉄所大分県庁大分地方監察局宮崎地方監察局宮崎県庁新田原基地、航空大学校でありまして、以下視察いたして参りました順序に従いまして、御報告いたしたいと思います。  まず、日程の第二日は、福岡管区監察局に参りまして、監察業務運営状況並びに今年度中に実施した監察具体的成果などについて調査いたしました。特に監察業務運営説明に当って、第一に、監察を行う者として、特にその身を持することに厳でなければならないことは、言うまでもないことであるが、福岡管区内においては、一般的に見て、清廉の点においては、他の官公庁にその比を見ないものがあると自負しており、職員は、乏しい日常の生活に耐え、職務に関連する誘惑を排除しつつ、黙々とその職貴を果しつつあること、第二に、行政監察は、会計検査と異なり、政府に対して独立の存在をなすものではなく、一般行政機関の一つとして、政府の政策に服し、完全にその益統制に従う仕組みになっているが、その益性格上、監察行政執行自体については、ある程度の独立性を保持すべきであろうと考えていること、第三に、監察手段方法の問題として、公共企業体や公団、公庫等業務全体の経営分析をなし、企業体としての能率増進に寄与すること、及び行政機関の各種の行政に関し、その執行の大体の傾向を把握し、制度、法律上所要の改正を促すという方法はもとより必要であるが、一面、これらと並行して、個々の不当不正事例を求めて、即座にその不当不正行為の是正を求めるとともに、具体的に責任の所在を追及し、責任者に対する適当なる措置を促し、もって綱紀の粛正をはかるという方法も、監察効果挙揚のために併用する必要があるということ、第四に、各省内部でそれぞれ行なっている自体監察との益重複の問題については、各省の自体監察は、それぞれかなり成果をあげているようであるが、自体監察の宿命的な問題として、ある程度以上触れ得ないことがあり、やはり監察局は、独自の立場より監察を行う必要があり、現状においては二本立の監察はやむを得ないこと、第五に、監察業務は、これを受ける機関からは例外なしに敬遠され、いやがられる仕事であるのみならず、世間的にもきわめて地味な、俗受けのしない性格の仕事である関係上、職員をして感奮興起せしめ、もって監察業務の完璧を期するため、国会初め政府並びに社会一般の理解と特段の配慮を要望する旨の意見がそれぞれ述べられたのであります。  なお、苦情相談業務は、厚生、農林関係に多く、直接自分に関係のある問題で、関係官庁に手続をしてもなかなかはかどらないものについて、相談を持ち込まれることが多く、これらを解決して感謝状の送られてくることがしばしばあり、非常に好評を博している旨の説明を聞き、喜ばしい傾向であると感じた次第であります。私どもは、時間の関係上、監察業務実績については、説明を受けることを省略し、資料によって調査いたしたの益でありますが、相当の成果をあげておるように思われました。最後に、人員、旅費、予算等について、具体的事例をあげてその不足を訴えられました。  終って、監察局長益あっせんにより、福岡管区監察局職員組合代表者から、今般の公務員給与改訂問題について陳情を受けました。その趣旨は、切りかえにより、当初は少額のアップを見るにしても、昇給期間が延長され、直ちに昇給率が減少されること、新俸給表によっては、給与の頭打ちは何ら解決されないこと、俸給表を中央、地方の二表に分けたことは、地方にいる公務員を極度に冷遇するもの益で、ひいては中央、地方人事交流の円滑を欠くこと、監察局業務特殊性から、年令層が高く、逆ピラミッド型を形成しているため、大多数のものの昇給期間が十五カ月以上となり、昇給率事務能率の向上に支障を来たすおそれがある。以上の観点から、政府案の益ごとき給与改訂がなされるよりは、むしろ現在の給与体系の存置を希望するというにあり益ました。  以上で福岡管区監察局を終り、ついで福岡調達局へ参りまして、行政事務運営現状板付飛行基地及び築城飛行基地現状等につきまして、局長より概略の説明を受けました。局長説明によりますと、板付飛行場は、国内でも比較的容易にジエット機を発着せしめ得る飛行場の一つであって、わが国の民間航空が使用するとともに、米第五空軍指揮下の第八戦闘爆撃隊がこれを使用しており、昨年十一月から、従来のF86ジェット機にかわって、一そう高性能のF100ジェット機が配置されたので、これに伴う騒音その他の問題につき目下調査中であり、なお、提供関係懸案事項として、計器着陸信号装置及び航空標識灯用地等追加要求があるが、これらの必要な土地はすべて民有地であり、買収しなければならないのであるが、種々折衝の結果、現在においては、買収価格につき関係者協議を進めている段階であるとの説明がありました。  次いで、学校騒音防止対策工事航空機による事故補償航空機離着陸による住家の移転問題及び農耕阻害問題、板付基地移転促進協議会の結成と活動状況米空軍板付配置に伴う軍の施策等について説明を聴取いたしましたが、調達同としては、板付飛行基地移転問題は、軍の立場からは、戦略的、経費、時間的の問題から、なかなか困難なものがあるようであり、基地反対運動趣旨も十分理解しており、局全体をあげて、住民の迷惑となることは、直接間接を問わず、これが排除に努め、排除し得ないものについては、完全なる補償を行うことを心がけ、今後ともあらゆる努力を尽したい旨の発言がありました。  なお、米軍による災害事故補償問題について、地元関係者調達局との間に意見の食い違いが見られますので、この問題につき、調達局長にただしましたところ、事故補償は、昭和二十九年三月以前はすべて県において取り扱い、講和発効後、調達局へ引き継いだときは、未済事件として六件だけ引き継ぎ、これらはすでに処理済みであり、地元関係者の言う二十八件というのは、正確に掌握していないので、さっそくこの問題につき調査する旨の発言がありました。  次に、築城飛行場地区についての説明を受けたのでありますが、調達局説明によりますと、築城飛行場地区は、飛行場及び稲童高射砲陣地からなる総面積約六十八万坪の区域であり、飛行場は、駐留軍使用度が減少するとともに、航空自衛隊がこれが返還引き継ぎ要望したが、日米双方に、引き継ぎに関する合意が見られず、今日に及んでおり、現在では、すでに防衛庁飛行場のほとんどすべてを使用中であり、米軍は、わずかに軍事顧問団を残すのみとなっておるとのことであります。高射砲陣地は、講和発効後引き続き在日駐留軍各部隊並びに陸上自衛隊関係部隊射撃演習場として使用されておったところ、たまたま昨年十一月射撃砲弾暴発事故が発生し、一時演習を中止していたが、調達局としては、現地軍と再三折衝した結果、軍側において砲座の移動、射撃方向の変更などの安全措置を講ずることとなり、他面、従前の補償案件についてはできる限り善処することで、演習再開に関し地元民の了解を得るに至り、今日に及んでおるとの説明がありました。なお、先般板付墓地において発生した米軍発砲事件につきまして、調達局長福岡警察本部長から説明を受けました。  調達局説明を聴取した後、私ども一行は、板付飛行基地へ参りまして、板付空軍基地司令官オニール大佐の案内で施設内を視察し、終って板付飛行基地問題について、同司令官と懇談いたしました。まず司令官より、米空軍板付に駐留することの必要なるゆえんの説明があり、さらにジェット騒音問題については十分なる考慮を払っており、たとえば、離陸の際はできる限り早く旋回して、市の中心部から離れること、演習は必ず海上において行うこと、着陸の際は、できる限りエンジンを吹かさぬようにすること、地上における始動テストは、特別の防音壁内でやること等をパイロットに指示している旨の説明がありました。次いで、私から若干の質問をいたしました。その第一は、板付重要飛行基地となっておれば、事あるときは攻撃されるおそれがあると考えるが、今後の飛行墓地は、住民の多い場所を離れるのが原則ではないかと思うがいかん。第二に、F100ジェット機原爆攻撃機ではないか。第三に、ジェット音は将来ますます大きくなると思うが、完全な解決はアメリカにおいても困難ではないかの質問に対して、第一点は、第二次大戦に経験したことであるが、戦争になれば、基地のあるなしにかかわらず、大都市は爆撃目標になる。第二点は、現在のジェット機は、すべて原爆搭載能力を持っている。第三点については、非常に困難な問題であることは十分承知している旨の答えがありました。  次に私どもは、滑走路延長線下にある月隈地区及び二股瀬地区を経て、筥松小学校防音装置を見て参りましたが、ここは、昭和二十九年度に工事を施行したため、現在のF100ジェット機に対してはあまり効果が上らず、また、室内を密閉するため、空気の汚染、温度、湿度の上昇に対する処置等が大きな問題となっているようでありました。  この後、さらに九州大学に参りまして、大学当局より、飛行機爆音調査記録に基き、騒音の強度、頻度につき詳細なる説明を受けるとともに、すでに夕方になり、時間の関係上、実際にジェット機が飛来しませんでしたので、録音再生により、ほぼ現実に近い音を出してもらってその音を聞き、測定器で測定いたしましたが、密閉した鉄筋コンクリートの中の教室においてすら、その音のいかに大であるか、騒音の披露について認識を新たにいたした次第であります。このあと、大学当局より、講義中にジェット音の振動がテーブル、椅子、靴の裏から感ぜられ、講義は中断し、実験については、能率がきわめて低下する。さらに墜落事故は、離陸後二、三分の間が最も危険であり、九大はちょうどその脅威にきらされており、もし墜落したときは、若い貴重な生命が一度に大被害を受けるため、安んじて講義。が受けられない等の切なる訴えを聞いたのであります。  以上で九州大学における調査を終えましたが、日程を強行いたしまして、夜に入ってから、県庁関係調査事項について、土屋知事説明を受けました。  第一に、給与改訂に関する人事院勧告に対する所見でありますが、地方公務員給与改訂に要する必要財源は、全額国において特別の措置をされたいこと、改訂方法のいかんによっては、各都道府県間の職員給与にはなはだしい不均衡を生ずることもあるので、実施に当っては、給与切替準則を定め、国家公務員に準じた、統一された給与改訂が行われることが望ましい。また、勤務地手当制度の廃止には原則的には賛成するが、勤務地手当の廃止または減額により、職員給与が実質的に減額されることのないよう、慎重に配慮されたい旨の所見が述べられました、  第二に、国の出先機関の問題でありますが、耕地関係事業等で、補助金の決定がおくれ、支障を来たす事例が多いので、改善をはかられたいという点、財務局の融資関係事務で、膨大な資料を要求されることがあるので、必要最小限度にとどめるよう、事務簡素化をはかられたいという点、労働関係施設の人事で、中央の干渉が強すぎる面があるので、改善をはかられたいという点、業務監査の場合、関係各省別個の監査があって、県庁においては、その応接にいとまがなく、業務に支障を来たすので、同時にあるいは統合して行われたいという点、以上四点が要望せられました。  日程第三日は、午前中県庁において、福岡市当局及び地元関係者の方々の陳情を受け、懇談いたしたのでありますが、その趣旨の概略を御報告申し上げますと、まず、板付基地移転促進協議会関係者から、協議会福岡市の貧民一体となって超党一派的に構成されており、全市をあげて市民運動により、板付基地移転促進をはかることに努めている。不断の爆音は、教育、衛生、産業にまで重大な悪影響を与えつつあり、ことに一朝有事の際は、まっ先に爆撃を受け、六十万市民の生命財産も、一瞬にして灰じんとなるおそれがあるのみならず、現実に頻発する事故により、各種の被害が続出している。軍事基地は、人口密度少い所に設置すべきである。ジェッ音は、三時間も聞けば、もはや人間の住む世界ではない、会話、ラジオ聴取も不能であり、空を見てうらまずにはおれない旨の発言があり、市教育長からは、基地移転は望ましいが、現実問題として容易なことではない。従って、次善の策として、とりあえず学校の防音装置に全力を尽すべきである。防音のための教室の密閉によって起る空気汚染、湿度、温度の上昇等の問題があり、これが対策として、教室数を増加して、一教室当り生徒数を減少きせることが必要で、その予算措置について尽力されたい旨の発言があり、農耕関係者からは、耕作地は戦後年々減少し、今や日雇の出かせぎに出たり、あるいは遠隔地に田畑を買って出作りしている状態で、生活は困窮し切っている。加えて、事故による危険にさらされて、今日の生命を守るために、残り少い土地を売ろうかとさえ考えるようになる。今回、さらに付帯施設設置のための拡張計画があるが、今度の拡張は、国会においてぜひ阻止されたい。また、子供の通学距離が長くなり、不便と危険が増大し、住民が農協へ行くにも、歩いて一時間を要し、燃料採取のため、山へ行くにも三、四倍の労力を要し、農耕中は、ジェット音で馬が狂奔して、すきを折り、馬がけがをすることもあった旨の切実な訴えがありました。  県庁において陳情を受けた後、私どもは、板付飛行場から航空自衛隊輸送機築城飛行場へ飛び、現地の視察をいたしました。まず、航空自衛隊臨時築城派遣隊隊長より、当隊の任務、編成、教育状況管理状況等につき簡単な説明を受けた後、施設を視察しました。なお、この際、田原代議士あっせんにより、築城町長から、ジェット機爆音による被害対策離着陸低空飛行による農耕阻害と、危険区域に対する防止対策並びに被害補償及び軍事基地としての飛行場存続によって、被害をこうむる築城町に対する特別交付金交付方について陳情を受けました。  次いで、築城飛行場地区内にある米軍高射砲射撃場を視察した後、行橋市公民館において、地元関係者陳情を受け、懇談いたしました。  この概略につき御報告申し上げますと、行橋市長からは、射撃演習のための無人機の落下による危険に加えて、昨年末砲弾の暴発事故があり、ついに隠忍自重も限界に達し、最近板付基地関係者にならい、基地対策委員会を構成するに至り、基地撤廃が最良の方法であるとの結論に達すると同時に、現実の問題として、生命、林産の保全並びに正当なる補償を要求したい。敗戦の責を負わねばならぬのは国民全体であるにもかかわらず、何ゆえわれわれのみが、しかも、子孫に至るまでそれをしいられる理由があるのであろうかと、強い訴えがなされました。また、漁業関係者からは、射撃演習の間断を利用して、危険を冒して出漁している状態であり、ことに午前午後にわたる終日演習は、漁船による漁撈時間を皆無にし、漁民の生活を根底からくつがえすものである。また、損失補償金は、申請に対して支払われる額は微々たるものであるが、この補償金に対して、税務署では課税の対象として徴税する方針であり、不合理きわまりないものであるから、ぜひとも免税の措置をとられるよう願いたい旨の要望があり、さらに学校関係者からは、登校下校の際の不安、教室内におけるジェット騒音防止装置設備等について、強い要望がありました。  日程第四日の午前中は、門司の第七管区海上保安本部に参りまして、行政事務運営現状及び管内における業務実績等につき説明を受けました。詳細につきましては、別添資料に譲らせていただきまして、第七管区における業務上の特殊性について、簡単に御報告いたします。  第七管区におきましては、対馬、壱岐、五島列島、奄美群島などの離島が多く、管轄区域が広大であり、また、朝鮮、中共、中国などと近距離の間にあるため、密入出国及び密貿易、公海での日本漁船に対する韓国その他からする脅威などの国際的な問題が比較的多いのが特色であります。  第一に、密入出国及び密貿易は、韓国至近距離にある関係から、非常に多く、昭和三十一年十月までにおける当管区内での検挙件数は、全管区の総検挙件数に対し、前者は六一%、後者は七六・三%を占めております。  第二に、いわゆる李ラインをめぐり、韓国艦艇による日本漁船拿捕、銃撃あるいは追跡等不祥事件がきわめて多く、昭和三十一年中における韓国による拿捕事件発生状況は、総計拿捕隻数十九隻、拿捕人員二百三十五名となっております。なお、最近の拿捕事件の趨勢として特筆すべき点として、次の四点を指摘しております。第一は、既往の拿捕対象船舶は、主として以西底曳網漁船あぐり網漁船などの中型漁船であったが、最近においては、対馬周辺小型漁船までがその対象となっている点、第二は、これら被拿捕船拿捕位置は、韓国側の報道では李ライン内、漁船報告では李ライン外となっており、その当否は判断しがたいが、巡視船の実証その他諸般の状況より推断して、李ライン外拿捕が敢行されていることが推察される点、第三は、警備艇は被拿捕漁船の釈放を要求する巡視船に対して応答しないばかりでなく、あまつさえ停船命令、追跡、自動小銃による威嚇などの挙に出ることもあり、事態は楽観を許さない現状にある点、第四に、昨年十二月の第一千鳥丸脱出事件に刺激されて、警備艇警備力は相当強化された模様であり、現実に、今年一月に入って、七隻の大量拿捕事件が発生しておることを考えるとき、今後は一そう厳重な警戒が必要である等の四点であります。  以上の実情にかんがみ、現在、もっぱら韓国側拿捕に備えて、済州島の周辺海域に、常時四百五十トン型巡視船二隻ないし三隻を配置して、特別哨戒を行なっているとのことであります。  なお、説明の中で、韓国側拿捕件数昭和二十八年当時と比較して半数以下に減少してきているが、これは、特別哨戒を行なっているという理由のほかに、漁船の方で、拿捕をおそれて、李ラインに近づきあるいは李ラインの中へ入ることをためらうようになってきたためであり、事実上は、李ラインから締め出されているのであり、韓国側の態度が緩和されたためではないという説明がありましたが、この点は、注目すべきことではなかろうかと考える次第であります。最後に、巡視船航空機急速増強の必要を痛感する旨の所見が述べられました。  午後は、防衛産業の一環としての基礎産業という観点から、八幡製鉄所を視察いたしました。同製鉄所は、現在防衛庁とは直接の発注関係はございませんが、製鉄所の好意によりまして、所内を視察いたしました。  日程第五日は、大分県庁大分地方監察局に参りました。まず、大分県庁において、給与改訂に関する人事院勧告に対する所見について説明を受けましたが、俸給表の種類については、行政職公安職教育職医療職技能職の五種類でよいものと思われるが、行政職の(ニ)については賛成できない。等級については、現行の十五級の分類は不合理であり、すでに行き詰まっているので、新等級制度の採用は賛成である。号俸については、本県の実態とは多少遊離しているので、国家公務員俸給表をそのまま適用できない個所が多く、本県としては、現員の分布状況と将来の昇進政策とを考慮して定めたいと思っている。通し号俸制の否定については、それなりに意味はあると思われるが、号俸数の繁雑、昇給率減少率の大きき、事務上の煩らわしき等から考えたときは、通し号俸制の方が利便が大きいと考えられる。昇給期間については、一応妥当なものと思われる。ことにこのことによって、号俸数簡素化され、号俸の幅をある程度延伸する余地を得たことは適当である。勤務地手当の廃止については、一応妥当と思われるが、生活給の一部として観念されている現在、これを一挙に廃止することは、職員の士気に著しい悪影響を与えるおそれがあるので、職員の感情の納得の範囲内で、漸次これを解消していく方法をとるよう考慮する必要がある。最後に、切りかえ措置については、本県職員俸給額は、むしろ国家公務員給与水準より低下していると思量されるので、今回の給与改訂に当っては、本県職員についても、当然国家公務員に準じた同様の切りかえ措置をとる必要がある旨の意見が述べられました。なお、大分県における新給与切りかえに要する経費は、市町村を含めて約三億円を要するとのことであり、この財源については、全額国において措置されるよう願いたい旨の要望がありました。  次に、大分地方監察局に参りまして、監察業務運営状況並びに本年度中に実施した監察具体的成果などにつき調査いたしましたが、同監察局と、後に視察いたしました宮崎地方監察局における調査の結果は、便宜上別添資料に譲らせていただきますが、両局とも、監察具体的成果については、かなりの効果をあげているようであり、苦情相談業務についても、それぞれ好評を博しているようであります。なお、福岡管区監察局においても要望せられた問題でありますが、旅費予算等の不足のため、十分なる監察計画の樹立が困難となり、自然、近接区域あるいは交通便利な地域に偏し、調査対象も固定化する実情であり、旅費予算の増加を切望している旨、及び監察職員の待遇について、行政官判検事中間程度のものを考慮されたい旨の要望がありました。なお、このあと、局長あっせんに、より、職員組合より、今般の給与改訂についての陳情を受けました。  日程第六日は、大分より宮崎までの車中の旅行に費しまして、次いで、日程第七日には、午前中宮崎県庁において、給与改訂に関する人事院勧告に対する所見及び新田原基地問題に対する県当局の見解について説明を受けました。  まず第一の、人事院勧告については、その内容は、等級制による職階制の実施と、これに伴い職務給的性格を強く打ち出しており、生活給的な従来の考え方から見ると、画期的な変革であり、今後はこういう方向に当然転換すべきものと考えるが、地方公共団体と政府機関とは、職制、機構、職員の構成状況等において若干の開きがあるので、人事院勧告に基く給与改訂方式をそのまま適用することはなお相当検討の余地が残されているものと考えられるので、地方公共団体における給与の基準については、自治庁においてこれらの実情を検討した上、技術的な助言と指導が行われることが望ましいと考える。なお、給与改訂に要する財行源としては、市町村を入れて約二億円の経費を要することとなり、政府の財源措置が前提要件をなしておるのであって、そのため、地方交付税交付率の引き上げ、国庫補助職員の補助率並びに補助単価の引き上げを強く要望する旨の発言がありました。  第二の新田原基地問題については、防衛庁側と当該地区の土地所有者との間で、買収価格の点等で交渉中であったが、昨今ようやく解決の段階に到達し、県としては、地元の意向を第一義的に考えており、その要望が全面的に受け入れられることを希望する旨の所見が述べられました。  この後、給与問題について、宮崎県庁職員労働組合、市職員組合及び教職員組合代表者からそれぞれ陳情を受けました。  次いで午後、私ども新田原基地に参りまして、現地を視察したのでありますが、この基地は、旧陸軍飛行場跡でありまして、防衛庁において、航空自衛隊第三操縦学校分校をここに設置する計画を立て、現地測量を終り、用地買収について交渉中のものであります。現地視察の後、新田村役場において、地元関係者の賛成者、反対者双方とともに一堂に会しまして、それぞれの意見を聞いたのでありますが、双方より、率直で熱心なる意見の発表がありました。  まず、大木新田村村長より、経過の説明がありましたが、それによると、一昨年末頃、初めて新田村旧陸軍飛行場跡を防衛庁においてジェット分校として使用したいという話が持ち出されてから、賛否両論が出て、新田、富田両村でも、村議会その他各種団体が板付及び築城基地の現地を調査の上、村議会においては、一度反対の決議がなされたが、その後の防衛庁との折衝により、関係者の多数が賛成の意向を持つようになり、昨年七月には、村議会で用地の買収価格及び補償、道路橋梁の整備、学校の防音装置、地元労務者の優先採用、事故に対する損害補償等についての要望をつけて賛成の決議を見るに至ったのである旨の説明がありました。この後、賛成、反対双方の意見を聞いたのでありますが、その概略を申し上げますと、まず、賛成意見としては、農民としてはあまり利益とはならないが、国防の必要性という見地に立って賛成している。反対者の中には、圧力をかけられて賛成に導いたという発言があるが、それは誤まりであって、かかる事実はない。買収価格等についての交渉はほとんど妥結しており、希望には限りがなく、この線ならばやむを得ないという態度である旨の発言がありました。反対意見としては、まず、反対地主の立場から、飛行場ができることにより、役場までは現在三キロあるのが、迂回するため二倍にもなり、非常な不便となり、農産物の搬出にも響き、ひいては価格にまで影響を来たさぬとも限らない、旧滑走路が現在澱粉かすの乾燥場となっているが、その従業員二百人以上の生活の基礎を奪うことになる。そして、賛成者の中には、本心では反対であるが、防衛庁においてジェット分校設置を決定すれば、反対をしても取り残されてしまい、後になっては買上値段も安くなるかもしれないし、また、防衛庁相手に土地収用の裁判問題になれば、とても勝てぬという説が流れたりして、不本意ながら賛成派になった者がかなりいる。また、関係者の大部分が賛成であるといっても、それは、買上予定地主だけのものであって、村民の大部分は反対なのであり、村民大会の開会を要求したが、いまだ何ら開かれたことはない等の意見が述べられました。また、宮崎地評の代表者より、村当局は、ただ買上予定地主及び飛行場入植者を中心として話し合いを進め、地主の意見のみで設置賛成を表明しておるが、土地に関係がなく、飛行基地のできることにより影響を受ける村民多数の声が聞かれていない。地主は、土地を売って金を受け取り、村を出ていけばそれで済むが、あとに残って、長い将来にわたりジェット機の影響を受ける多数の村民の声なき声を内閣委員会で審議の上、飛行場設置を中止されるよう願いたい旨の発言がありました。また、中学校が現在村内一校のみであり、最も遠い距離の生徒は、往復十六キロメートルを通学しているが、ジェット分校設置により、通学道路が変更になり、さらに四キロくらい迂回せねばならぬこととなれば、毎日の登下校の心身の疲労及び飛行機の離着陸による危険等の見地から、生徒はもちろんのこと、父兄の心配もきわめて大きいので、上新田に中学校の分校を設置されたいという、村民大多数の強い要望が訴えられました。  なお、念のために申し上げますと、現在絶対反対の立場をとっている地主は、全地主約三百四十名中八名いるとのことであります。  日程第八日、午前中は航空大学校を視察いたしました。本校は、運輸省の附属機関として、民間航空従事者を養成するために、昭和二十九年七月一日に設立されたものでありまして、本科と専修科に分れており、本科は二年課程で、卒業後は事業用操縦士となるもので、現在学生は二十名であり、専修科は、事業用操縦士の資格のある者を上級事業用操縦士を対象教育するもので、修業期間は四ヵ月、現在学生は八名であります。教育特殊性と、発足後日も浅い関係で、きわめて小規模なものでありますが、わが国の民間航空の発達のために符与することは大なるものがあろうと考えた次第であります。  以上をもちまして、私どもの視察、調査の経過の概要を申し述べました。なお、その詳細につきましては、別添資料として、委員会会議録の末尾に添付することといたしますから、御了承願います。  以上をもって報告を終ります。  ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  3. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 速記を始めて。  ただいまの派遣報告にかかわる別添資料につきましては、これを本日の会議録の末尾に添付することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 御異議ないと認めまして、さよう決定いたしました。別に御発言がなければ、派遣委員報告は、これをもって終了いたします。ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  5. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 速記つけて。   —————————————
  6. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 次に、厚生省設置法の一部を改正する法律案を議題に供します。まず、提案理由説明を願います。
  7. 中垣國男

    政府委員(中垣國男君) ただいま議題となりました厚生省設置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。  この法律案は、厚生省の大臣官房に新たに官房長を置くこと、厚生省の付属機関として、国立ろうあ者更生指導所及び国立精神薄弱児施設を設置すること並びに水道及び下水道に関する権限規定等を改めることをその主な内容とするものであります。  改正の第一点は、官房長の設置についてであります。御承知のごとく、近年における社会保障制度の目ざましい進展に伴い、厚生省の所管する行政が質量ともに、著しく拡充されて参りました結果、現在各部局に分掌されております各般の事務の増嵩のほか、さらに、これらを社会保障という統一的見地から、部内並びに部外にわたり連絡調整すべき新たなしかもきわめて重要な事務がとみに増加しつつある傾向にあるのであります。官房長の設置は、かかる実情に即応して、これらの事務を一体的に処理し推進する機能の強化をはかるとともに、官房事務のより効率的な運営を確保しようとするものであります。  改正の第二点は、国立ろうあ者更生指導所の設置についてであります。身体障害者福祉法に規定するろうあ者更生施設は、現在公私ともに設置されておらず、聴覚障害者、音声機能障害者及び言語機能障害者の福祉に欠ける状態にありますので、明年度においてこの国立ろうあ者更生指導所を設置いたしまして、これらの障害者を収容しその更生に必要な治療及び訓練を行う等、その福祉の向上に努めようとするものであります。  改正の第三点は、国立精神薄弱児施設の設置についてであります。精神薄弱児のうち、その程度が著しい児童または盲もしくはろうあとの二重の障害を持つ児童は、精神的にも肉体的にもきわめて複雑な問題を有し、一般の精神薄弱児とは別個に、特別な保護及び指導を行う必要がありますので、今回国立の施設を設置いたしまして、これらの児童を収容し、早期より一貫した保護及び指導を行うことにより、その福祉の向上をはかろうとするものであります。  改正の第四点は、水道及び下水道の権限規定等を改正することについてであります。御承知の通り、従来水道及び下水道の事務厚生、建設両省の共管するところとなっておりましたため、この行政責任の明確性が必ずしも十分とは言えず、また、事務簡素化にも欠くるところがありましたので、政府といたしましては、今回水道及び下水道に関する事務のうち、水道及び下水道の終末処理場を厚生省において、終末処理場以外の下水道を建設省において、それぞれ処理することといたしたのであります。従いまして、これに伴い、厚生省の権限及び分掌規定を整理しようとするものであります。  以上が、この法律案を提出いたしました理由であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。
  8. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 別に御発言もなければ、本案については、本日はこの程度にいたしまして……   —————————————
  9. 永岡光治

    ○永岡光治君 委員長、議事進行について。  大へん政務次官を前にして恐縮でございますけれどもね。やはり予備審査といえども、これは本会議の提案理由にかわるものです。で、大臣が出て、私は、参議院軽視という、こういう形をなさぬように、十分大臣が出て説明すべきだと思うのですがね。何か特別な理由があったのですか。どうして大臣が出ないのか、理由もわからずに。そういう不見識なことは私はいかんと思います。
  10. 中垣國男

    政府委員(中垣國男君) お答えいたします。ただいま厚生大臣は、参議院の社会労働の委員会におきまして答弁中でございまして、ここへ出ることができませんでしたので、私がかわって参りました次第でございます。
  11. 永岡光治

    ○永岡光治君 そういう事情なら、そうせくことはないんですからね。大臣があいたときに私は出て、そして説明するべきだと思うのです。あまりすうすう、大臣も出ないで説明を聞くという、これはきわめて不見識だと思うのですが、どうですか。これは、院の権威にかかる問題だと思うのです。こういう癖をつけちゃいかぬと思うのですがね。
  12. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私も非常に、今日はそのほかの法案説明もなさる予定のようですがね。今日は、大臣が出られるかどうか疑問に思っておったのです。少くとも提案理由説明は、原則として大臣がすべきということは、これは常識ですよ。それはまあやむを得さる場合、それは、政務次官がかわっておやりになることについては、別に異議は申しませんが、しかし、そのほかにも今日は法案の説明があるようですがね。これ、大臣が出られるのかどうかですね。私は、やっぱりこの原則は、提案理由説明というような重要な問題については、これは、委員会には、大臣が出席されて説明なさるのが私は当然だと思うのですがね。こういうことが確認されておって、今日はやむを得ないからこうなったんだというなら、若干の了承はいたしますがね。今日はどうも、衆議院の予算委員会等の関係からみて、大臣出られないんじゃないかと私は思っておったのですが、そういう点ですね。私はやっぱり、委員長、理事の方のまあ協議においても、私どものそういう考えを尊重してもらいたいと思います。きょうは要望しておきたいと思います。
  13. 寺本廣作

    ○寺本広作君 原則としては、永岡さん、荒木さんの言われることに賛成ですが、まあ両院の運営を能率的にやるためには、ほかの委員会との関係もありますことですし、原則通りいかぬ場合もあろうかと思います。おそらく今日、こういうふうに提案趣旨説明を、すっと並べられた際、理事会では、そこいらの打ち合せもあったんじゃないですか。まあ原則としては、おっしゃる通りだけれども、衆議院との関係、他の委員会との関係などで、必ずしも大臣が政務次官に代行していただく場合もあり得ると、これは、委員会の運営上やむを得ぬことじゃないかと思います。そのために、大臣の代理をする政務次官制度というのがあるわけですから、必ず大臣でなければならぬという結論にはならぬように思います。
  14. 永岡光治

    ○永岡光治君 おいでになっている政務次官をどうこうと言うんじゃないですから、その点は御了解願います。そうでなくて、承われば、社労委員会に出ておられる。その方を政務次官かわって答弁されるなりして、いやしくも提案ですから、これは、そういう重要な問題について、それじゃ社労委員会の方が内閣委員会より大切なんだ、内閣委員会の方は、これは軽視してもいいんだと、こういう理論にもこれはなりますよ、あなたのような理論なら。だから、そういうことのないように、それで、委員長、理事の打ち合せも、大へん御迷惑ですけれども、少くともこの提案理由説明というものは、大臣の出られる日を選んでやってもらいたいと思うのです。
  15. 中垣國男

    政府委員(中垣國男君) もう少し具体的にお答えいたしますと、実は、ただいま参議院の社労委員会におきまして、食品衛生法がかかっておるのでありますが、厚生省といたしましては、引揚者に関する給付の問題がございまして、連日ほとんど徹夜同様のことを四、五日繰り返しておりまして、大臣がここ四、五日その委員会に出ておりません。そこで、参議院の社労の委員会から、大臣が出席しなければ審議をしないといったような強い要望がございましたので、それまでは、私がかわって答弁いたしておったのでありますが、きょうは、そういう意味で、参議院の社労の委員会に大臣は出席をきれたわけであります。まことにやむを得ないということで、私がかわって参ったわけでございます。
  16. 寺本廣作

    ○寺本広作君 事情を承わってみますと、まことにやむを得ぬものがあるようですから、そういう場合もあり得るということで、一つ政務次官が代ってすることを御了承いただきたい。
  17. 亀田得治

    委員長亀田得治君) ちょっと速記とめて下さい。    〔速記中止〕
  18. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 速記をつけて。  午後二時まで休憩いたします。    午前十一時四十六分休憩    —————・—————    午後二時十一分開会
  19. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 休憩前に引き続き、委員会を再開いたします。  まず、科学技術庁設置法の一部を改正する法律案を議題に供します。  宇田国務大臣から、提案理由説明を願います。
  20. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) ただいま議題となりました科学技術庁設置法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  原子力の平和的利用は、ここ二、三年の間に急速な進展を見つつあります。近く日本原子力研究所においてわが国最初の原子炉が運転を開始し、来年は引き続き第二号炉が設置されんとしておる状況にあります。他方アイソトープについてもその研究と利用とは、急速な発展を遂げ官民の多数の試験研究機関、事業所等において広範に使用され、わが産業面、医療面、その他において多大の成果が期待されておる次第であります。  しかしながら、これら原子力の利用には、一面ややもすれば放射線の障害というマイナス面を伴うので、今後原子力の開発の進むに従い、厳重な放射線管理と放射線の障害防止措置を講するとともに、放射線による障害の診断、治療等医学的調査研究の急速なる確立をはかることの必要性が痛感される次第であります。  従って政府としては、別途原子炉等の規制に関する法律案(仮称)及び放射性同位原素等の放射線による障害の防止に関する法律案(仮称)を今国会に提案することとし、目下これが準備を急いでおりますが、これとともに、放射線医学に関する総合的調査研究等を行うため、科学技術庁の附属機関として、放射線医学総合研究所を設置することとしたのであります。もともとこのような研究所の設立につきましては、従来、日本学術会議等の要望もありましたので、本案の決定までには、科学技術庁及び原子力委員会において日本学術会議初め学界、業界における学識経験者の意見を徴し、慎重にその計画について検討を行なったものであります。  放射線医学総合研究所はその所掌実務として放射線による人体の障害並びにその予防、診断及び治療に関する調査研究を行うことはもちろんでありますが、あわせて放射線の医学的利用並びに放射線による障害防止、及び医学的利用に関係する技術者の養成訓練を行うこととしております。  なお本研究所は、三ケ年計画をもって茨城県東海村の国有地に新設いたしたい考えでありますが、用地取得の手続等の関係上最終的結論に至っておりませんので、とりあえず設置場所は政令をもって定めることにいたし、結論を得ますればあらためて国会の承認を仰ぐことにいたしたい考えであります。  以上が科学技術庁設置法の一部を改正する法律案趣旨でございます。  何とぞ慎重御審議の上御賛成あらむことをお願いいたします。
  21. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 別に御発言がなければ、本案については、本日はこの程度にいたします。   —————————————
  22. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 次に、法務省設置法の一部を改正する法律案を議題に供します。  まず、提案理由説明を願います。
  23. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) 法務省設置法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  出入国管理行政は、申すまでもなく、わが国における外国人の公正な管理を目的とするものでありまして、その基調は、あくまで円満な国際常識にのっとりつつ、国内治安その他国の安全及び利の面をも考慮し、円滑かつ強力にこれを実施することでなければならないと考えておりますが、最近における諸外国との国交の回復、国際連合加盟等によりわが国と外国との往来はますますひんぱんとなり、外国人管理行政は今後ますますその複雑性と困難性とを加えるものと思われるのであります。  そこで、政府といたしましては、これらの新事態に対処するため、この際出入国管理行政の機構上の不備を改善いたしまして、適切な業務の運営を行ない得るようにその体制を整備いたしたいと存じまして、本法律案を提出いたしました次第でございます。  以下本法律案の内容について概要を御説明申し上げます。  第一は、広島入国管理事務所の新設であります。出入国管理行政地方機関の中枢をなす入国管理事務所は全国十二箇所に設けられておりますが、現在中国地方は下関、高松及び松江の三入国管理事務所の管轄下に分れているばかりでなく、その中心地たる広島市には下関入国管理事務所の港出張所が設けられているのみで独立の入国管理事務所はございません。中国地方における統一的な治安対策の実施等について関係機関との連絡にも事を欠きまして、業務の遂行に種々不便を来たしているのであります。  そこで、この際、松江入国管理事務一所を廃止して、新たに広島市に広島入国管理事務所を設置し、広島県、岡山県、鳥取県、島根県及び山口県のうち岩国市をその管轄区域といたしますとともに、従前の高松入国管理事務所宇野港出張所並びに下関入国管理事務所の広島港出張所、同じく尾道港出張所及び同岩国空港出張所を広島入国管理事務所に所属を変更いたしまして、またこれに新たに松江出張所を配属し、もって中国地方における出入国管理行政の円滑な運営をはかろうとするものであります。  第二は、日ソ国交回復に伴う新事態に対処するため、新たに稚内港、根室港、酒田港および敦賀港に、それぞれ入国管理事務所の出張所を設けまして、一応臨機の必要に応ずる体制を整えるとともに、従来駐在官を派遣して出入国管理事務に当らしめておりました立川空港及び板付空港に出張所を設け、これらの空港における出入国審査事務の充実を期したいと存ずるのであります。  第三は、神戸入国管理事務所の管轄区域中、兵庫県伊丹市を特に大阪入国管理事務所の管轄に変更することであります。  現在神戸入国管理事務所の管内にある伊丹空港は、客年九号日本航空株式会社の沖縄定期航路が開設されて以来、同社航空機の発着がとみに増加いたしまして、乗員乗客の出入国ないし寄港地上陸もこれに伴なってひんぱんになってきたのでありますが、地理的にもまた時間的にも大阪入国管理事務所をしてその審査に当らしめるのが便利でありますので、この際伊丹市を大阪入国管理事務所の管轄区域といたしたいのであります。  以上が法務省設置法の一部を改正する法律案趣旨でございます。なにとぞ、よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
  24. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 別に御発言がなければ、本案については、本日はこの程度にいたします。   —————————————
  25. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 次に、国の防衛に関する調査のうち、相馬ケ原演習場事件に関する件を議題に供します。  ちょっと速記をやめて。    〔速記中止〕
  26. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 速記をつけて。  まず、当局から、本件に関するその後の経過について御報告を願います。
  27. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) いわゆる相馬ケ原事件につきましては、去る二月九日に、前橋地方検察庁におきまして、高崎警察署から、被疑者ジラード・S・ウイリアムズにかかる傷害致死被疑事件として事件の送致を受けました。自来同地検において、鋭意関係者の取調べその他証拠の収集に従事して参りました。  過般、本件は、結局被疑者ジラード・S・ウイリアムズが傷害の意思をもって発砲し、その結果被害者坂井なかさんを死亡するに至らしめたという結論に到達をいたしました。なお同時に、被疑者の本件行為は、行政協定にいう公務執行中の作為または不作為から生ずる罪ではないという認定をするに至ったのであります。  しかしながら、米軍側は、本件は公務執行中の作為または不作為から生じたものとの見解を持っておりましたために、本件は日米合同委員会に提案されて、目下その合同委員会にかかってきたわけでありますが、提案後、本日開かれました合同委員会におきまして、この件は、合同委員会の刑事裁判権分科委員会に付議して、ここで討議決定をする、こういうことに相なりました。刑事裁判権分科委員会は、今月の来たる十二日に開こう、こういう予定になっております。ここで、わが方といたしましては、主張の根拠を十分示しまして、日本側の主張を貫くようにいたしたい、かように考えております。
  28. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 質疑に入る前に、先般、当委員委員長及び理事打合せ会の申し合せに基き、各会派有志の委員による現地視察を行いましたので、便宜その報告を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  29. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 御異議ないと認めます。
  30. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 内閣委員会委員長及び理事打合せの結果に基きまして、二月十四日に亀田委員長外大谷、上原、竹下、荒木、伊藤の五委員は、群馬県相馬ケ原の米軍演習場内において、一月三十日発生した米兵の日本婦人射殺事件を調査するため、現地視察して参りました。  私どもは、まず、熊谷市にある米軍籠原キャンプへ参りまして、レスター・J・チェース副司令官と会見し、本事件に関する米軍の地元現地部隊の見解をただした後、群馬県警察本部、前橋地方検察庁当局より、日米合同調査状況や、犯罪容疑の点などについて現在の状況を聴取し、引き続き現場を実地に視察いたしました。  なお、現場調査の後、引き続いて相馬村中学校において、地元の相馬村村長及び日本側の事件目撃者三名にも会って、当時の模様や、その後の対策などについて聴取して参りましたので、以下、視察の順序に従いまして、簡単に御報告いたしたいと思います。  私どもは、二月十四日朝自動車で国会を出発いたしまして、まず、米軍籠原キャンプにおいて、チェース副司令官と会見いたしました。私ども内閣委員とチェース副司令官との間にかわされた質疑応答のおもな点を申し上げますと、その第一点は、今回の相馬ケ原事件の裁判管轄権問題については、日米間に若干意見の食い違いがあるようだが、この事件の裁判管轄権は日本側にあると確信するので、早急にそのような措置をとってもらいたいと思うが、これに対する米側の見解はどうかという質問がなされましたが、これに対しまして、現在はまだ事件の調査中であり、第一次裁判権が日米双方のいずれの側にあるかという点についての最終的結論はまだ出ていないと思う。なお、この問題は、上級司令部と日本政府との間で協議された結果決定されることであって、現地部隊立場からは何も言明できない旨の答弁がありました。  その第二点は、事件発生以来今日まで、だいぶ時日が経過しておるが、何ゆえかように長引くのであるか。公務執行中の事件か公務外の事件かという点、あるいは傷害致死罪か殺人罪かという点について、日米間に意見の食い違いあるため手間取っているのであるか、一体、事実関係についての現地部隊としての調査は完了したのであるか、続行中であるかという点について質問がなされましたのに対しまして、米軍は、日本側警察と協力し、双方の調査の結果を照り合せるため手間取っているのであって、公務執行中かいなかの点や、傷害致死か殺人かの点は、上級司令部と日本側との間で決定されるべき問題である。なお、事件の性質上、慎重に調査は続行中である旨の答弁がありました。  その第三点は、二月七日の新聞の報道によると、米軍当局は、加害者米兵はねらい撃ったのではなく、空に向って発砲したのだと公式発表しているが、これは、今から見ると、誤まりであったことがわかるが、かかる軽率な内容をもった公式発表がなされたことは遺憾であると思う。この公式発表は、この司令部でなされたのであるかという質問に対しまして、この司令部ではなく、第一騎兵師団から出されたと思う旨の答弁がありました。  第四点は、この事件の収拾策としては、第一に、事件の実情を誇張せず、また隠蔽もせずして、公正な結論を出すこと。第二には、将来再びかかる不祥事を繰り返すことなきよう対策を考える必要ありと思うが、これに対する所見いかんとの質問がなされましたのに対しまして、米軍側は、隠しだてはしない。日本側と協力して、公正な結論を出すよう努力している。なお、事件防止の具体的対策は、目下検討中であるが、また結論は出ない旨の答弁がありました。なお、この行ほか、事件発生当日の演習は、いかなるスケジュールによってなされたか。また、上級司令部から部隊内に対し、今後再びこの種の不祥事を繰り返さぬよう注意を喚起した布告が出されたかどうかというような点について質問がなされましたが、これらの点については、通訳不十分のため、質問趣旨が徹底しないままに終りました。  なおまた、内閣委員側より、被害者の家庭は窮状にあるので、特に遺族に対し、十分なる補償を考慮してもらいたいという点、さらに、異民族間の接触は、とかく誤解を生じやすいから、この点、米軍側においても、日米友好関係をそこなわぬ上からも、特に今後慎重に配慮してもらいたいという点等が強く要望せられ、チェース副司令官も、これを了承したのであります。  チェース副司令官と会見後引き続き、自動車で群馬県警察本部に参りまして、石岡県警察本部長及び岡田刑事部長と会見し、若干質疑応答を行いましたが、そのおもな点を申し上げますと、  その第一点は、加害者の身柄を米軍に預けたまま事件の調査を行うことは、捜査上不便であり、かつ捜査も長引き、事実関係もゆがんでくる危険はないか。また、捜査の上での日米間の意見の食い違いはどういう点にあるか。殺人罪か傷害致死罪かという点については、いかなる所見を持っているかという点につき質問がなされましたのに対しまして、通常の事件であれ、は、三日ぐらいで片付く事件であるが、日米共同捜査方式をとっておるため、調査が長引いたが、大体現在は完了した。米側の捜査機関は公正かつ協力的である。物的、人的証拠を集めて捜査することが基本であるから、加害者の身柄を米軍にとられておるために、特にやりにくいということはなかった。日米間の意見の食い違いいかんの点は、たまを撃ったのは一発か二発かという点、また、空に向け撃つたか、ねらい撃ちかという点等である。なお、理論を突き詰めると、殺人罪を構成できないこともないし、これまでの捜査途上において、そのような意見も事実出てきたが、加害者が驚いて被害者にかけ寄った点、殺意の有無の不明瞭なる点等より、傷害致死と考えるのが妥当と思う旨の答弁がありました。  その第二点は、去る二月八日、地元の県警察当局で、殺人罪として決定したにもかかわらず、九日正午ごろ、中央の警察庁と打合せの結果、夕刻に傷害致死に変更したものと聞くが、中央から何らかの形で地元警察に圧力がかけられたのではないかという点が質問せられましたのに対し、さような事実はない旨の答弁がありました。  こののち、私どもは、すぐ近くの前橋地検に参りまして、杉本次席検事と会見し、今回の事件についての地検としての結論いかんという点、いつごろ起訴するか、起訴の問題は、裁判管轄権がいかにきめられるかという問題にかかわりなく、並行的に進めるべきではないかという点、罪状決定につき、中央から何らかの圧力がかけられているのではないかという点、また、殺人罪にきめることについて自信はないのかという点等について質問がなされましたのに対し、本日、十四日最高検との打合せの結果、大体の最終的結論が出てくるはずである。事実関係は固まる見通しが大体がついたが、最終的にはもう少し調べる必要がある。いつごろ起訴できるか、まだ言えぬが、上司の指示を受けてやりたい。なお、中央からの圧力がかかっておるという事実はない。捜査途上において見解を発表することは、事態をかえって紛糾させ、真相の究明に害を与えるから、何も言明できぬ旨の答弁がありました。  杉本次席検事と会見後、私どもは、再び自動車で、事件発生の現場である相馬ケ演習場に向いました。射殺現場である物見塚へは、チェース副司令官の案内で、ジープに乗りかえて参りましたが、現場では、チェース副司令官のほか、マーキュリ憲兵隊長、下平県警捜査課長、地元県議会議員、県庁職員数名、MP十名近くの立ち会いのもとに、岡田刑事部長より実況検分の結果について詳細なる説明がなされました。この説明によると、加害者ジラルド特務三等兵の自供と日本側目撃者の証言が、距離、方向などについて大きく食い違っておるとのことでありました。特に日本側目撃者は、加害者が二発をねらい撃ちしたと証言しているのに対し、加害者米兵は、一発しか撃たなかったと自供しておるという点、また、犯行が行われたとき、加害者の近くにいた直属小隊長モーホン少尉、ジガンテ少尉、ホートンペリー一等軍曹の三名は、米側証人として、発射音を聞かなかったと証言しておるとの説明は、強く私どもの印象に残った点であります。  私どもは、この現場視察後、引き続き相馬村中学校において、事件の目撃者である小野関英治、坂井軍平、坂井久司の三君及び相馬村村長久保田浅次君等に会って、いろいろと当時の模様について聴取いたしました。この五名の目撃者の説明の中で、私どもの印象に残った点は、加害者米兵は、薬莢を十個ばかりばらまいて、日本式の手まねきをして、おびきよせるのを自選したという点であります。  次に、内閣委員と久保田村長との間に行われた質疑応答の主な点を申し上げますと、たま拾いに集まる村民の数はどのくらいであるかという点、相馬ケ演習場は、日米行政協定による正式の指定地域になっておらないが、これは、農民の耕作要求が強く、これとの調整がつかぬために指定が延びておるのかどうかという点、演習場周辺の日米間の平素の感情問題はどうかという点、このほか、演習場があるために、特に住民が受ける利益があるかどうかという点等について質問がなされましたが、これらの点につきまして、次のごとき答弁がありました。すなわち、たま拾いをする人数は、相馬村の人口約四千人のうち約百五十人、桃井村人口約五千人のうち約百五十人、合せて約三百人の住民がたま拾いをしており、そのうちの約一割は婦人であるということ、なお、人数の多い日は、五百人くらいの村民がたま拾いに集まるときもある。演習場が指定地域になっておらない理由については、自分は、戦時中この村で組織された満州移民団の一員としてこの村を離れ、村長になったのも最近であるため昔の事情や経過を知らないからわからないが、農民の耕作要求が相当強いことは事実である。演習場周辺における平素の日米間の感情問題いかんとの点については、米軍住民に対し好感を持っており、個人的に親切である。なお、演習場のため受ける利益の有無の点については、常駐の米兵はいないし、特に村が受ける利益はない。道路等公共施設がよくなるという利益もあるが、むしろ演習場のため、大水、旱魃の被害を受けることの方が多いという答弁がありました。  なお、久保田村長より、左のごとき強い要望がなされましたので、この際あわせて御報告を申し上げます。  その第一点は、演習場のための土地接収は、村の経済状態を著しく圧迫しておる状態にあるので、土地を返還してもらうことが一番望ましいことであるが、日米行政協定の存在する現在の状況下では、補償の強化により、村に対する経済的うるおいを与えるよう努力してもらいたい。なお、耕地として利用できる面積が約百五十町。歩あるが、そのうちの五十町歩だけでもとりあえず返還してもらいたい旨、第二点は、将来演習地立入り禁止を強化されると、たま拾いにより生活を支えている零細農民の死活問題となるので、この点、あまり厳格にしてもらいたくない旨、以上二点が強く要望せられました。  私どもは、以上の通り視察を終りまして、午後六時ごろ現地を出発し、帰京いたしました。  以上、御報告を終ります。
  31. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  32. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 所管大臣でありませんから、伺うのはどうかと思いますけれども、たま拾いの問題ですね。立入り禁止のところであれば、やはり……。
  33. 亀田得治

    委員長亀田得治君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  34. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 速記を始めて。
  35. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 それで、これは、隣接の村が請負うというとおかしいのですが、村で一定の期日をきめて、たまを全部拾う、そうしてそれを売った金で、その村の比較的生活の困難な人のためにその金を使うといったような、ごくこれは思いつきのような何でございますけれども方法はお考えになりませんでしょうか。今の報告を伺いますと、たま拾いをあまり厳格にすると、隣接の生活困難な人の生計を奪うので、困難だということ、これはごもっともでありますけれども、同時に、立ち入り禁止のところに入ってくると、また同じようなことが起ることがだんだんあると思いますので、演習のない日は、村で話し合って、その人が公然とそこに落ちておるたまを拾う。しかし、だれが売るということになると問題になるから、隣接の村なら村で売り、今までたま拾いをしておった人で、あまり生活の豊かでない人に分けるといったようなことを当局ではお考えにならないか、伺ってみたのですが。
  36. 今井久

    政府委員(今井久君) お答え申し上げます。このたま拾いの問題は、御承知のごとく、事故の発生ということをできるだけ防止するという点が一つの目標であります。それから、先ほど御指摘になりました通りに、できる限り村の人がたま拾いをして、それによって収益が村に落ちるようにするという、この二点にあると存じます。相馬ケ原につきましても、事故の直後、二月の十日過ぎに、群馬県庁が中心になりまして、関係町村、相馬村、桃井村という村の代表者たちと、それから軍の方からも出まして、そうしてこのたま拾いの問題について、円滑にやるようにということで、いろいろ話し合いをしておる次第でございます。軍といたしましては、ただいままでの話し合いでは、事故の発生ということを非常に心配をしておりまして、できる限り、そのような組織につきましては、これは統制あるものであって、その統制のもとにたま拾いをしてもらう。勝手に演習地に入ってもらうというようなことのないようにということだけはぜひ保証してもらいたいというようなことで、いろいろ話し合いをしておる次第でございます。私どもといたしましても、ぜひそのようなことで話し合いがまとまりまするように、いろいろ話をあっせんしたり、進めておるような次第でございます。
  37. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 村の方で、統制団体というか、村営というか、その話は進まないのですか。進まないとすればどういうところに隘路があるのですか。
  38. 今井久

    政府委員(今井久君) ただいままでのところは、県が中心になっておりまして、やっておる次第でございますが、これは、相馬ケ原の演習につきましては、こういう日に射撃がある、こういうところで立ち入りの注意を与えてもらうというような通報が基地司令官の方から県に参りまして、県から関係町村にさらに通知をして、十分事故の防止をするという建前で従来やっておったのでございます。そういうような関係で、県が中心になって、そうして関係町村が集まって、いろいろお話し合いになっておるようでございますが、私どもが聞いておりまするところでは、やはり軍の方が、なるべく県とか町村とかというものは、絶対責任を持ってやるようにしてほしい、できれば組合等でなく、そういう責任の所在をはっきりして一つやってもらいたいという、こういう希望が強いように聞いております。そういうような点について、まだ細目的には話し合いがまとまらぬというふうに聞いておる次第でございます。
  39. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 今のお話ですと、軍から県にいって、県から村へいって、村から村民にそれを伝えるという経路のよううかがえますが、県庁仕事なんかは、なかなかどうしたってにぶいものですから、その演習場の近くに、村が二つなら二つ、三つなら三つあるとすれば、そこの村当局が連合して、代表者にだれかをきめて、軍と、出先機関ですな、村とすぐに連絡できるように、もっと早い経路でお話せぬと、また問題が起るのじゃないかと思いますけれども、それはいかがですか。
  40. 今井久

    政府委員(今井久君) ただいま、私お話申し上げましたのは、演習場の射撃等につきましては、一週間前でございましたか、大体こういうふうな予定で演習をする、射撃をするという通知が参っております。それが県へ参りますものですから、県の方では、ちゃんと責任者を作ってありまして、通報がしてありまして、この人が責任者だということがきまっておりまして、その責任者から関係町村に知らせる。関係町村から周囲の人に、演習があるということをすぐ通報するように、平素から連絡会議を常にやって、今日まで来ておる次第であります。たま拾いの点につきましては、関係町村が、相馬村と、桃井村と、箕郷町と三つあるようでございますが、おもにそういう村で、早く村と軍との間に話し合いができまして、そうして責任ある組織を作るようにすることが必要であるという考えを持っておりますことは、御指摘の通りでございます。
  41. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 その村で組織は早急にできないのですかな、話し合ってやるということに。もっと簡単に話ができるように思うのですが、積極的にお進めになっていますか。
  42. 今井久

    政府委員(今井久君) 村では、たまを拾う組合を作りまして、そうしてその組合で拾わせてもらいたいというような意向があるようでございますが、その組合というものが、本当に統制力ある組合であって、その組合以外のものは絶対に入らないと、こういうような統制あるものになりますれば、やはり事故の発生ということが非常に心配になるものでございますからできれば町村とか県とかいうものが責任の地位に立ってもらいたい、こういう話し合いが進められておるような次第でございます。私といたしましては、ただいま御指摘になりました通りに、なるべく早く組織あるものにして、そうして事故の防止をすると同時に、地元の方へたま拾いを合法的にさしてもらいたいということにつきまして、十分一つ努力いたしたいというふうに考えております。
  43. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 強力迅速に一つ、その組織をお進めになるようにお願いしておきます。
  44. 竹下豐次

    竹下豐次君 今のに関連して、簡単にお尋ねしたいのですが、県が仲に立って、町村と、それから軍との間の話を進めていく、調達庁はどの程度にそれに関与しておられるのですか。もう県庁の方や町村の方へおまかせになって、別にあなたの方で御意見としてどうしろとか、どうした方がいいというようなことはお出しにならないのでしょうか、陰でやっていらっしゃるのでしょうか、表向きに関係してやっていらっしゃるのでしょうか。
  45. 今井久

    政府委員(今井久君) お答えいたします。調達庁当局の、前橋に調達事務所というのがございまして、その前橋の調達事務所が、相馬ケ原の演習場につきまして、調達庁の第一線の出先機関になっております。従来相馬ケ原の演習場につきましては、日米の打ち合せ会議というもの、が開かれておりまして、そこで、県、関係町村、それから米側から三ケ尻の司令部から参りまして、そうして打ち合せをいたしております。その席に、やはり私どもの方の調達事務所の責任者も出ておりまして、そうしてそれらの打ち合せに従っておるような次第でございます。私どもの所管といたしましては、施設の提供、返還、それから米軍による不法行為がありました場合の補償等の事務を所管いたしておりますけれども、今回のような事故の発生につきまして、今後再びそのようなことがないようにということで、実は先般も、全国に調達局が八つございますが、この八つの調達局長を招集いたしまして、そうしておのおの所管内におきまして、演習、射撃における状況等も実は聴取いたしまして、今後の事故の発生について、いろいろ協議をいたしたのでございますが、いろいろ聞いてみますると、その地方々々でいろいろ事情が違うようでございます。従いまして、これらの事情をまあ十分のみ込みまして、その事情に即したいろいろな対策を講じていくということが必要であるように実は存じまして、その調達局長に指示をいたしておる次第でございます。今回、相馬ケ原の問題につきましても、私の方から、地元の調達所長はむろんのこと、本庁の東京局の部長を派遣いたしまして、そして県の意向を聞き、地元の要望も聞きまして、一切それらの点についてすみやかに、先ほど御指摘のありましたような点について、組織あるものができるように、実は努力いたしておるような次第でございます。
  46. 竹下豐次

    竹下豐次君 先ほど、八木さんからもちょっとお話がありました通りに、知事も熱心に世話して下さるでしょうけれども、ややもすると、ゆっくりになりやしないかという懸念がないでもないのであります。私どもなどが国会で会って、お尋ねしたり、御意見を聞いたりしていても、知事といっても、なかなかまどろっこしくてしょうがないのであります。どうしてもあなたの方がむしろ実質的に中心になって努力していただかないと、延び延びになってしまうのです。そうむずかしいことでなく、割合に短い期間でなんとか話し合いがつかなければならないことのように思うのであります。ことにこういう事件がはっきり起りましたのでありますから、こういう機会にそれでおきめになることの方が、仕事がしやすいように思うのでありますが、このことも、特別の御努力を希望しておきます。
  47. 今井久

    政府委員(今井久君) ただいま御指摘になりました通り、十分すみやかにその組織ができるように、私どもの方としても努力いたしたいと思っております。
  48. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 今井長官に伺いますが、先ほどのたま拾いの問題に連関して、相馬ケ原では、地元民の要求をいれないで、正式の払い下げに応じていないわけです。そうすることによって、地元民の生活もいろいろ気づかわれるのですが、この点について、どうお考えになっておりますか。
  49. 今井久

    政府委員(今井久君) この点につきましては、二月の十三日でございましたか、初めて県関係者が集まりまして、そしていろいろ米側とお話いたしました。自乗数回話し合いが進んでおるのでございますが、先ほど申し上げました通りに、組織ある強力なものができて、今後事故の発生が再びないようにしたいという米側の希望もありまして、それらの点について、最後の話し合いができておりませんということは、まことに遺憾に存じております。すみやかにその点はできるように、実は先日も本庁から部長をやりまして、東京調達局の総務部長が参りまして、そして群馬県の当局その他の関係当局といろいろ話し合いまして、すみやかに組織を作るように、実は強く要望しておるような次第でございます。今後さらに十分努力するつもりでおります。
  50. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 このたま拾いに対する米軍の態度が地区によってまちまちなんですね。報道によりますと、水戸では協約ができておるように聞いておるのです。それから、前に新聞で見ましたが、京都、宇治等では、たま拾いを窃盗罪として警察は扱いたいと、また、扱うように進めておる、そういうようなことも聞き及んでおるわけです。今回の相馬ケ原では、地元民の要望をいれていない、正式な払い下げはしないというふうに、幾つかの地区を拾ってみても、皆まちまちなんです。この点について、どういうふうにお考えですか。
  51. 今井久

    政府委員(今井久君) 今御指摘になりました通りに、地区によってまちまちであることは事実のようでございます。ただ、たま拾いの問題につきましては、一応落ちましたたまは、米軍でこれの所有権を放棄するということがありませんと、一応これは米軍に所有権があるんだ、こういう建前をとっておる次第でございます。で、そのようなことが、ときによりまして、ただいま御指摘のありましたような窃盗罪で問われるというようなことになったんではないかと実は思うんですが、そのようなことがありまするから、ぜひとも各地区において、米軍との話し合いをつけまして、そうして今のようなことの起らないように協議いたさなければならないというふうに実は私どもも考えまして、先日、各調達局長に、その土地の事情に応じて適切なる方策をとるように、米軍と話し合いをするように、指示をいたした次第でございます。なお、ただいま御指摘のございました茨城県の水戸の飛行場におきましては、地元でありますところの勝田市が米軍と話し合いをいたしまして、勝田市の経営といたしまして、たま拾いをきせておるのでございます。勝田市で人を雇いまして、その人にたま拾いをさせる、こういうことで、米軍との間に協定を結んでおりまして、茨城県の水戸飛行場におきましては、その点がきわめて円滑になっておる次第でございます。で、これらの点につきましても、調達局長に実は私どもの方から指示をいたしましたが、その関係市町村がそこまで、全部市営なり町村営なりでこれを行うんだというところまで、実は熱意を示して参りますれば、比較的それらの点も円滑に運ばれるんじゃないかと思いますが、全国で、所によりますと、実は町村としても、広い演習場のところを全部町村で責任を負うということは、なかなか容易でないというような観点で、それらの話し合いが進んで参っておらないところもあるようでございます。そのように、事情がいろいろ違うのでありますが、要は、たま拾いを円滑に組織的にやらせてもらうということが、これが根本であると思いまして、その目的のもとに、すみやかに組織を作るということが必要であるというふうに考えまして、その趣旨のもとに努力をいたしておるような次第でございます。
  52. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 今の水戸の例もありまするし、やはり農民がそういう危険を冒してまでもたま拾いをしなければならない、そういう窮地に追い込んだのはだれかということを考えた場合に、やはり一番安全を考えて、正式に払い下げて、それを演習休止の状態にあるときに、村民の連中からなるところのそういうたま拾いの組合、そういうものを作って、それに正式に払い下げるのが一番安全だと思うんですね。正式でないと、やはりわれ勝ちに、また危険区域に入るような面も出てくるし、そういう観点から、そういう原因を作ったのはとにかくどこにあるかということを考えた場合、正式に払い下げるという程度のことは、水戸の例もあるし、今回の相馬ケ原でもできないことはないと思うんですがね。そういう意味で、一つ正式に、今後再びこういうあやまちを繰り返さないためにも正式に払い下げそれを演習の休止状態のときに村民に、組合に渡してやる、そういうことを徹底さすということがあやまちを防ぐゆえんだと思うんですが、その点いかがですか。
  53. 今井久

    政府委員(今井久君) ただいま御指摘になりました点は、その通りでございまして、組織をすみやかに作りまして、そして軍との話し合いをしていくということが必要になっておるのでございます。ただ、先ほどちょっと申し上げましたが、たまというものは、一応軍に所有権があるのだという建前をとっておりまして、これは、やはり軍の規則に根拠があるように聞いておりますが、そういう点がございますものですから、それらの点について、どういう形で契約を結んだらいいかということは、おのおの各地の軍によって多少意見が違うところがあるように聞いております。おのおのの規則に応じまして、円滑にそういう点を統制してやっていくようにいたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  54. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 同じく相馬ケ原の問題に関連して、前からあったことですが、相馬ケ原の演習地域外の民家や民有地に、流れだまがしばしば落ちているということに基いて、前橋の調達事務所でも、その現場を調査したところ、その事実を確認しておるのです。こういうようにして、区域内でしたらまた話が別ですが、区域外の民家や民有地に流れだまが落ちる。現にそういうことを前橋の事務所が確認しているのですから、これは事実と見て差しつかえないと思うのですが、そういうことでは、いつ農民がたまに見舞われるかわからない、非常に不安だと思います。私ども、離れておればさほど感じませんけれども現地周辺の農にとっては、一大脅威だと思うのですね。そういう点については、何とか一つ抜本的な方策でも講じないと、なかなかこういう悲劇は次々と繰り返されていくと思うのです。今までの事例を見ても、これはやはりあやまちがあった、聞違いがあった、これを調査して補償すると、そういうことを繰り返していったのでは、なかなかこういう悲劇はやまないと思うのです。そういう点についての具体的なお考えがあったら、承わりたいと思います。
  55. 今井久

    政府委員(今井久君) ただいま御指摘になりました、区域外に流れだまが出るということは、これはきわめて遺憾なことでございます。これらの事実につきましては、よく調査いたしまして、これがどういう事情で御指摘のようなことが起きたかということは、十分根本的に調べてみまして、これの対策を講じなければならないと思います。また、そのようなことによりまして、付近の方々に損害を生じました事柄につきましては、十分調査いたしまして、補償もいたきなければならないというふうに考えております。
  56. 亀田得治

    委員長亀田得治君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  57. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 速記を始めて下さい。
  58. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 今の演習地外の被害の問題で、ごく最近ですが、五日の新聞によりますと、例の東富士の演習区域から約一里離れた所で、静岡県の須山村ですか、その付近に爆弾が二個落されたということで、ちょうど近くに農夫二十人ぐらいがおったけれども、あらかじめ危険を察知したので、危うく難を逃れたというような事態は同じような問題なのですね。これはまあ、一里も離れておるのだから、飛行場からもまさしく区域外であるということは飛行士も確認できる、そういうふうに目撃者は見ておるわけです。わずか距離でしたら、あやまちもときにはあるでしょうが、一里、四キロも離れておる所で、そういうようなことは、とうていこれは過失とは考えられないのですけれども、こういう点は、最近の一つ事例ですけれども、今までもこのような問題はあったと思うのですけれども、こういう点は、やはり根本的に改めないと、こういう面の悲劇も繰り返されると思うのですけれども、この点についての東富士の問題については、調査済みですか、それともどういうふうになっているのですか。
  59. 今井久

    政府委員(今井久君) 東富士の、今御指摘になりました駿東郡の須山村という所に、先日爆弾らしきものが落ちた、そのために穴があきまして、樹木等に損害を与えたというのは事実でございます。私どもといたしまして、それがどういうことで落っこったかということにつきまして、早速司令部の方に申し入れまして、司令部の方から、現地の方を調べてもらうことにいたしたのであります。まだ、その結果につきましては、私どもの方へ報告が参っておらない次第でございます。すみやかにその報告を聞きまして、そうしてその点についての十分原因をきわめまして、措置をいたしたいというふうに考えております。
  60. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 まあ今のは、一つ、二つの例を申し上げたわけですが、要するに、演習区域外に爆弾を落すとか、流れたまが飛んでくるとか、そういうようなことは、日本側でよほど強い態度に出ない限りは、繰り返されると思うのですね。今後は、区域外に爆弾を落すという、そういう大それたこと、この東富士の問題も、場合によれば、二十人、三十人の被害があったと思いますが、これこそ大問題です。幸い事故がなかったから、これで済んだと思いますけれども、そういうふうに、金属的には、問題にされない問題が相当あると思います。たまたま国会で問題になり、あるいは報道機関で伝えられて、初めて問題化されるというのでなく、やみからやみへほうむられておる、泣き寝入りしておるという問題が山積しておると思います。こういう点については、私ども、前にもよく承知したわけでありますが、ここで、こういうようなことについては、米軍に厳重な申し入れをして、そういう大それた問題を起した場合には、日本側で基地をもう回収してしまう、そのくらいの強い申し入れをしない限りは、向うでも馬耳東風で軽くあしらって、同じあやまちを繰り返しておると、こういうふうに受け取れるのですが、全国的に見ると、たまたま新聞の報道の面を見たたけでも、相当あるわけです。まだそういう新聞の記事に載らないようなのは、はかり知れないと思います。一つ、そういうような意味合いで、もうそういう問題を起した場合には、徹底的な一つ追及をしていただかない限りは、あやまちが繰り返されると思うのですが、これは、尋常一様の申し入れぐらいでは、相手が相手で、問題にしないと思います。今までの事例から、こういう点について、一つ断固たる措置をとっていただきたいと思います。その点について、どういうふうにお考えですか。
  61. 今井久

    政府委員(今井久君) 地域と指定された外に爆弾が落ちるというようなことは、これはもう、申し上げるまでもなく、非常に遺憾なことであります。今回、東富士におきまして、そのような事故の発生があったということを承知いたしましたので、直ちに総司令部へ行きまして、これらについて、厳重な調査を要求いたしておる次第であります。そのような事故がもし発生するようなことがありました場合には、御指摘の通り、相当の決心をもちまして、強く善処を要望いたす考えであります。
  62. 竹下豐次

    竹下豐次君 たまの所有権ですね、これは、地方民や警察官の間に、今、長官のお話があったように、アメリカ軍にその所有権は依然として残っておるのだというふうに考えないでですね、アメリカ軍はもう放棄しておるのだというふうに考えているのが相当にあるのじゃなかろうか。現に私、今まで、やはりアメリカが放棄しておるのだ、それで実際困っているということを聞かされまして、そう思い込んでおったところが、今、そういう御説明がありましたので、やっとわかった。私自身がそうなんであります。そういうふうに誤解をしておる警察官や地方民が多いと存じます。警察官や地方民の立場とすれば、もう所有権がないとすると、だれが拾っても拾い得だという気持になるし、所有権はまたアメリカに残っているのだ、これはうっかり取ってしまえば、窃盗罪でやられるのだということをはっきり認識したら、今までのようなむちゃなことをしなかった人も相当に多かったのじゃないか。生命の危険のほかに、窃盗罪で検挙されるという危険があるわけですから、その点がどうなんですかね。所有権は皆アメリカにある。検挙されれば窃盗罪が成立するということがわかっているんですか。どういうふうにごらんになっておりますか。
  63. 今井久

    政府委員(今井久君) その点につきましては落ちましたたまは、アメリカが所有権を放棄しておるのだという気持で、事実上の問題として今日まで来ておるというのが事実だと思います。ただ、今度の場合に、もしそういう点についてどうなっておるのかということで、実は、私どもの方も、司令部の意向等も聞いてみたのであります。そういたしますと、これを放棄しない。所有権は放棄しない。放棄していない限りはアメリカのものだ、こういう結論が一応出まして、この間、群馬県の当局の三ケ尻の司令官に対して、その点を聞いてみましたところが、やはり所有権は、放棄しない限りはアメリカにあるのだ、こういう立場をとっておるわけでございます。しかし、それは、こと改めて聞きますればそういうことでございますが、要は、やはり安全にたまを拾うということが目的でございますから、向うに所有権を放棄してもらうといいますか、何といいますか、いろいろ言葉の関係はございましょうが、こちらで拾っても差しつかえないのだという話し合いをしまして、そうしていくのがいいのじゃないかというふうに実は考えておる次第でございます。あるいは所によりますと、まあ向うは捨てておくのだから、放棄されたものだという建前で、そこの地元の人たちがたまを拾っておるというのが事実じゃないかと思います。こと改めてそこを聞きますると、そういうことになるのじゃないかということになりますので、そういうことを先ほど申し上げた次第でございます。
  64. 竹下豐次

    竹下豐次君 私も、うっかりしておったんですが、だれからそういう話を聞いたか、いつであったかということも記憶しないぐらいぼんやりしておりましたが、そういう問題が起ったときに、裁判になったところが、所有権がないという例まであるのだという話まで、どっかで聞かれされたことがあるのです。そこは、所有権があるということがはっきりしますれば、窃盗罪をしちやいけないということぐらい、日本国民は皆考えておる。だから、今後の交渉をきれる、両方で話し合いをきれる上においても、所有権が向うにはっきり残っておるのだということをはっきりさせた上で、そうして話を進めていかれるということは、私は話を進める上においてもやはり非常に有益だ。それを逆に考えて話をするということになったら、これは、話はしにくくなりますよ。これは、われわれ、ああいう相馬ケ原の事件が起ったのは、日本国民としてまことに遺憾千万だ。日本人をばかにしているという感情も起ります。それはそれとして、窃盗になるということを承知しながら、日本人が取ってしまうというようなことは、これはまた、許すべからざることです。それはそれで、厳重に制裁を加えなければならない。生活権の問題と言ってみたところで、生活権の問題があるから泥棒していいということは言えないわけですから、警察としても、きぜんたる態度をとらなければならない。その点はあなたの方としても……。それから、アメリカの軍隊でも、地方によっては、そこを誤解しておるところがあるのじゃないか、こう思いますが、その点をもう少しはっきりさせるお考えはございませんか。これは、法務大臣の方でも、一つお考えを願いたいと思うのでありますが、いかがでございましょうか。
  65. 今井久

    政府委員(今井久君) 先ほどのお話は、まことにごもっともでございます。相馬ケ原の問題につきましても、県と米軍関係町村の方々との打ち合わせ会議には、警察の人も出ておるわけでございます。この組織ができまして、そうしてたまを拾うという形が整いますれば、それらの点も自然に解決する。そういう組織がちゃんとできているのに、ほかの者がこっそりやるというようなことは、これは非常に困る問題でございます。自然にそういうようなことも解決するのではないかと思います。そういうような会合の際にも、米軍としてはやはり所有権は一応あるのだということを前提として、いろいろ話し合いをしておるようでございます。ただ、先ほど御指摘のように、そういう点が、従来とかく不明確な点をはっきりする。また、不明確のために、いろいろ問題があったと思います。これらの点につきましても、今後気をつけまして、対処していきたいというふうに考えております。
  66. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 法務大臣に伺いますが、二月二十二日、わが党の代表が石田官房長官とか検事総長にお会いしておるわけです、相馬ケ原の件で。その際、官房長官は、日本の裁判権を確認して、政府としては、既定方針通り強力にやる、そういう回答があったわけです。また、検事総長としても、米軍もおそらく日本の裁判権を認めるであろうというような所見を発表しているわけです。それが、先ほどの御報告で、この公務中か公務外かということで対立のために、刑事裁判権分科委員会で問題になっているというように聞いているのですけれども、そのときの発表の動向とだいぶかけ離れているように思うのです。この点につきましては、どうなのですか、見通し等については……。
  67. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) 本日の合同委員会で刑事裁判権分料委員会におろされたわけでありますが従来の例を私、この事件が起きましてからいろいろ聞いてみましたところ、従来も、分科委員会までおろした事案は、たくさんあるそうでございます。しかし、ここで双方がそれぞれの主張をいたし、その主張の裏付けとなるべき論拠を明確にいたしまして、論拠が明確になって、日本側の主張が正しいという大体態勢になりますと、アメリカ側でなお固執して、折り合いがつかなかったということは一ぺんもありませんで、なるほどという、日本側の主張すべき主張とその論拠を明示することによって、だれが聞いても納得のいくという線の場合には、必ず向うも譲歩いたしまして、最後の折り合いがついておるようでございますから、本件の場合におきましても、日本側としましては、これは、単なる出先の検察庁が一存できめたわけでもありませんし、いろいろ調査をいたしまして、取り調べその他を通じての資料現地の検事正、次席検事等が中央に持って参りまして、最高検で会議を開いて得た結論でございますから、もちろんこれは、日本側の主張が是なり、正しいという論拠を十分に裏付できるものと、私は確信をいたしております。従いまして、本日の合同委員会の分科委員会の方に下りましたが、十二日に分科委員会を開かれて、即日は、もちろん意見が対立して、相違している以上は、決定はできないかもしれませんが、必ず日本側の主張を通して解決できるだろう、こういう実は目下のところ見通しになっておる次第でございます。
  68. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 私どもとして考えても、アメリカ側の目撃者の証言と、日本側の目撃者の証言を比べた場合、その確実性において、相当隔たりがあるのです。日本の目撃者の証言は、三人が三人みんな同じことを、何回聞いても明確に発表をしておるわけですね。アメリカ側の証言については、あるものは全然たまの者を聞かなかった。あるものは一発だったというふうに、まちまちであった。そういう点からも、これは十二分に根拠があると思うのです、こちらに有力な。やはり問題は、故意か過失か、勤務中か勤務外か、こういうような点が重大な問題で、特に、勤務外か勤務中かという点に争点がしぼられておるのですけれども、そうしますと、先ほどの報告で、アメリカ側では、故意であったということは認めておるわけですね。そうして、勤務中の故意の事故であったと、そういうふうに解釈してよろしいのですか。
  69. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) 私も、直接みずから事件の取調べに当ったわけではありませんから、なんですが、察するところ、アメリカ側としては、勤務中のできごとであるから公務である、こう言っているのだと思います。しかし、勤務中といえども、公務にはおのずから限度がございますから、人を傷つけるような行為は、これは公務であると認めるわけにいかないというのが日本側の建前であると思います。かつてのやはり裁判権の管轄で対立をいたしました事件等を聞きましても、勤務中のできごとであっても、そのこと自体が公務と認められない場合には、公務にあらざるものとして、日本側が裁判権を持って裁判をいたしました例もございます。それから、京都に起きました事件等を聞いてみますと、これが合同委員会までかかりまして、アメリカ側は、日本側のその主張をいれて、そうして、日本に裁判権を渡して、日本側が裁判をいたしたのでありますが、被告自身が、自分の行為はあくまで公務中の行為である。従って、日本が裁判管轄権を持つということは、行政協定からいっても違法である。こういう抗弁をいたしまして、これが一審、二審、最後、上告まで参りまして、日本の最高裁判所で、その事案は、たとい勤務中といえども、それは勤務中即公務であるという解釈はできないから、やはり日本側に裁判権があるのだ。こうい6最高裁判所の最終判決、が下って、確定した事案等もあるようであります。従いまして、本件については、私どもは、最高検察庁が、現地の直接調べに当りました担当官を集めまして、そうして合議をして、協議の上得た結論というものは正しいものであると、かように私も信じておる次第でございます。
  70. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 その点は了承しますが、そこで、故意か過失かということも、本問題処理に当って非常に大事な問題だと思うわけですけれども、明らかに薬莢を二回まで銃口に差し込んでおる。そういう過失ということは考えられないわけですけれども、一応、そういう観点から、これは故意であるということに解釈してよろしいのですか。日本側では、そういう態度をとっておるわけですね。
  71. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) きょうでございます。私ども、調べた調書をみずから読んだわけでもありませんから、そういう具体的な点についてはなんですが、とにかく前橋の地方検察庁が十分の調査をいたしまして、証人も調べ、検証等もいたしまして、そうして得た資料を持ち寄って、専門家の最高検で、故意の傷害致死である、こういう結論を得たのでありますから、私どもは、その裏づけとなるべき材料は、今までの証拠調べ、証拠の収集、調査によって、明確になっておるものと、かように信じておる次第でございます。
  72. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 その点は了承しますが、そこで、前の報告でも申し上げましたように、前に、籠原キャンプで一方的な声明を発表した。それに対して、政府側で強力な抗議を出してもらうことになっておったわけですが、そういう相馬ケ原事件等を通して、米軍がどのように自粛してきたか、そういう具体的な動きは見えませんか。ただ、今まで通りで、何らたとえば、全軍に対して最高司令官の訓示を出すとか、そういうような面は何も出ていないわけですか。どういうふうなものが具体化しておるか。もしそういう措置が講じられていないとすると、日本政府を全然問題にしていないということにも解釈できるわけで、非常に大事な問題だと思いますから、そういう点について承わりたい。
  73. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) 現地の指揮官が声明か談話を発表したというように伝えられたのでありますが、国会でももちろん問題になりまして、われわれも非常に重視いたしまして、直ちに、あのときに、法務省としましては、裁判権管轄に関する分科委員会が法務省にありますので、その委員長をして米軍側の委員長を訪問さして、あのように、まだ事態も明瞭ではないじゃないか。おそらく米軍側としても、真相が究明されていない段階で、こちらも調査に着手したばかりの段階で、ああいう一方的の声明をきれることは、非常に国民も心配するし、迷惑である。つつしんでもらわなければならないということを申し入れましたところが、よくその趣旨は了承をきれたが、しかし、私どものレベルだけの話では、全体に趣旨が徹底することが至難だと思うから、日本の合同委員会の代表者から米軍側の代表者に、なお念のため正式に話をしてもらいたい、こういうことになりましたそうで、外務省の欧米局長が日本側の合同委員会の代表だそうでありますから、直ちにその方に連絡をいたしました。そして日本側の代表から米軍側の代表に、同様のことを申し入れておりますわけで、この点は、よく趣旨が徹底しておると思います。アメリカ側としましては、それは、正式の談話とか声明とかというものではないので、新聞記者が来て尋ねられたので、そういう見解を発表した。なるほど、それは軽率であるといえば、それは軽率であるが、そういう事態であって、改めて出したものではない。こういうような弁明等もあったように聞いております。かようなわけでありますから、そのこと事態は、これは、全体に徹底すべきものかどうかわかりませんが、とにかく個々のケースとしては、そのような処置を一応あの当時われわれとしては直ちにとりましたような次第であります。
  74. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 この相馬ケ原事件に限らず、先ほど重ねて申し上げておりますように、各基地周辺で、そういう不祥事が次々に繰り返されておる。米軍の方で、日本人に対する態度を根本的に改めない限り、これは繰り返されると思うのですよ。そういう点、きわめて重大な問題であるので、一つこの点について、強力な申し入れをしてほしい。これは、尋常一様の方法では、なかなか徹底しないと思うのです。もう繰り返し、厳重な態度で臨んでほしい、そういうことを要求したいと思うわけなんです。
  75. 田畑金光

    田畑金光君 ただいまの伊藤委員質問に対しまして、大臣から御答弁になりましたが、特に伊藤委員の念を押された点について、何一つ、日本政府としても、具体的な手段方法を講じていないと判断せざるを得ないのです。と申しますのは、その後の事件の頻発というものは各地に見受けられるわけでありますが、たまたまきょうの日本経済新聞を見ますと、福岡で起きた事件でありますけれども、米兵になぐり殺された。この記事は見られたと思うのですが、二月二十六日の夜、福岡市で人夫をしておる秋田国広さんという人が、同市の鹿児島本線踏切付近で、こん棒のようなものでなぐられ、頭蓋骨骨折で死んでいた。ちょうどまた、同じ夜に、女給の林百合子という女の人が米兵二名から顔面をなぐられ、全治十日の傷を負った、こういう事実を聞き込んで、警察署で直ちに調べたところ、板付基地にいる空軍憲兵の協力で調べたところが、そのなぐられた林さんという女給さんに顔を点検させた。ところが二人、案の定出てきた。それで、この二人が女給さんをなぐった張本人であったが、だんだん調べていったところが、そのうちの一人が人夫の秋田国広さんをなぐった。福岡地検では、七日傷害致死容疑で二人の身柄引き渡しを米軍に要求する一方、板付基地司令官ウェプスター大佐と、空路誘導中隊長キャンベル少佐は、六日県庁を訪れ、補償を申し出た。この事件は、本日の朝刊にれっきとして載っておるわけであります。しかも、福岡の地検は、傷害致死容疑で、本日二人の身柄引き渡しを米軍に要求しておる。この事件の性格を見ますと、これは、公務中だ、公務外だという問題外であって、まさにこれは、公務外における夜遊びに乗じた米兵の暴行事件であることは、はっきりしておるわけなんです。  この事件の経過を見ましても、今論議されているこの相馬ケ原の農婦射殺事件と、そのやり方、その手口、その性格というものは全く同一なんです。一体、こういう事件を頻発さしていて、日本政府としては、一連の最近のこの悲しむべき事件に対して、何の反省もやっていないのか、何の具体的な手も打っていないのか、こういう問題になって参ると思いますが、まず最初に、この事件について、当局の聴取されておる現在の段階における報告の内容について、承わっておきたいと思います。
  76. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) 九州の事件でございますか。
  77. 田畑金光

    田畑金光君 そうです、今言っているのは。
  78. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) 御指摘の事件は、私どもも聞いておりますが、今、日本側におきましても、捜査に着手して、調べておるという段階でございます。犯罪の状態については、新聞に出ているほどに、具体的には連絡がきていないようでありますが、現地の検察庁で今取調べ中のおもむきであります。
  79. 田畑金光

    田畑金光君 大臣の御答弁というのは、まことに熱意のない御答弁ですね。日本の人が二人なぐられ、一人は頭蓋骨骨折で死亡しておるのです。しかも、あんたの所管行政の下にある福岡地検は、傷害致死容疑で、二人の身柄引き渡しを求めておる。しかも、これは、決して日本人同士の暴行事件でもなく、しかも、それは、基地の問題、基地にある米兵の問題で、そうして米兵と日本人との間に起きている事件なんです。こういう重大な、外交的にも、あるいは国際的にも、あるいは国内の治安の面からいっても重大な事件について、大臣の今のお話というのは、きっぱりどうも、その辺の市井のちまたで夜ごとに起きている事件を扱っておられるような態度ですが、そういうような態度では、これは、問題の解決は、一歩も前進せぬと思うのです。もう少しこの事件の真相、性格についてどう判断しておるのか、御答弁を願いたいと思います。
  80. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) 現地の検察庁ですでに捜査に着手しておる事件でありまして、御指摘の通り、きわめて重大な日米間における性質の事件ではございますが、私どもとして、まだ詳細な報告を入手いたしておりません。ここに参りました刑事局長は、若干私どもよりは詳しい事情を承知しておると思いますから、私からお答え申し上げますよりは、知っておると思いますから、政府委員から事の成り行き、現状を御説明申し上げたいと思います。
  81. 田畑金光

    田畑金光君 政府委員に御説明を求められ、井本さんから御報告なさることはけっこうですが、大臣としてですね。私は、こういう重大な所管に属する問題が起きて、こういうような事件の取扱いというものについての大臣の熱意というものがどの程度あるのか、疑わざるを得ない。これは、相馬ケ原事件とその性格が同じです。この事件は、相馬ケ原事件がまだおさまらない……先ほどからの質問を聞いておりますと、ちょっと私調べてみましたが、二月七日に本委員会で相馬ケ原事件を取り上げて、そうしてこれは、早急に検察庁としての結論を出して起訴をやりたい。こういうような話があったわけなんです。かれこれ一ヵ月後、この点については、私たちは、あの当時の政府関係者の答弁によると、いずれ合同委員会あるいは刑事裁判権分科小委員会に移して結論を得るのも、もう二月いっぱいで出てくるだろう、こういう期待を持っておりましたが、たまたま本日、ようやく刑事裁判権分科小委員会に移される。こういうような問題は、時間を放っておくと、結局やみの中に葬むられる、こういう心配をわれわれは強く持っておったから、衆参両院の内閣委員会あるいは本会議等で、この問題を常に追及しておったわけですが、なお今日、同じような状況にある。こういう態度であるから、こういう重大な問題で、先ほどのような御答弁を承わらなければならぬ。新聞の朝の報道で、われわれの知っておる以上のものが大臣からお答えが期待できない。これは私は、熱意の問題であり、気がまえ、態度の問題だと思う。私はこういう大臣の態度では、相馬ケ原事件あるいは福岡におけるこのような事件というものは、今後とも頻発するだろうと思うのです。日本人がかくのごとく惨殺されて、これは、即死ではないようですが、翌日死亡したとなっておりますが、頭蓋骨骨折で、いずれにしても、こういう残虐な扱いを各地で受けておる。この問題についてはもう少し大臣として真剣に取り組んでもらわなければならぬと、こう思うのです。私はこの点について大臣にはなお質問を継続いたしますが、新聞を見られたのですか、見られなかったのですか。それから一つ承わりたいと思います。
  82. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) 私ども責任ある立場でございますから、新聞社でありましたら現地の検察庁あるいは警察の動き等を見まして情報を収集して、記事に直ちに書くことはできると思いますが、われわれといたしましては現地に役所の機関がございまして、ことに検察庁がそれぞれの地域にありまして、その地域の検察庁が責任を持って捜査段階にあります事件を、公式の報告を入手いたさないで、それはこうでございます、ああでございますということは、実は言いかねるものでございますから、差し控えておるような次第でございます。いずれ捜査の適当な段階において報告をこちらからも求めますし、当然現地からも報告がくるものと思いますから、明確になりました際に、責任ある事態の明確化を委員会においてもはかりたい、かように考えます。  なお、それから相馬ケ原事件の結論が非常に延びておりますことは私ども非常に遺憾に思いますが、日本側の結論はあの当時申し上げましたように、最高検で最終的な討議をいたしまして結論を出して、そしてアメリカ側に犯罪通告と同時に管轄権の通報をいたしました。その後、アメリカ側ではこの出来事の結論を得るのに非常に手間取っておりまして、こちらからその間何回か非公式に催促をきしておったのでありますが、もう少し結論を出すまで待ってもらいたいということで延びてきまして、ようやく本日の合同委員会ということになりましたわけでありますが、その結果、分科会に移されまして、分科会が来たる十二日に開かれる。御指摘の通り先月中にでも結論を得べく私どもは期待を十分持っておったのでありますが、さようなことで延び延びになっておる。  それからあわせてお答えを申し上げておきますが、この種の事件というものが各地で起って参りますことは、これは非常に日米間の国交の上にも、国民感情の上にも、また日本のいろいろ法を保護する上からいいましても、非常に遺憾至極にたえないところでございます。従いまして、御指摘のありましたように、事件の起きましたつどはもちろんのこと、その他の場合におきましても、日米側の接触をしておる機関におきましては、かようなことのないように、米軍側で駐留中遺憾な事件の起きないように、最善の手配をするようにということは、常に申してあるはずでございます。私ども自分の国から直接アメリカ側に言うておるわけではありませんから、必要がございましたら、その関係者から直接お答えをきせるようにいたしたいと思いますが、もちろんこの種の事件の絶滅をわれわれは望んでおるのでありますが、残念なことにはしばしばこういう事件が起きまして、ことに九州の事件は大体今聞いておるところによりますと、相馬ケ原の事件よりはまだ何といいますか、質が悪いといいますか、相馬ケ原の事件というのは演習場であり、その演習場へ日本の人が入っておった、その機会におきましての事件ということでありますが、一方はまだこれよりも質が悪いとさえ言えるような事案のように、感じでは持っておるのでありますが、いずれにいたしましても事案の真相については、これは私どもとしては軽々にこの事案はこういうものでございますからということを公式の資料を得るまでは慎しんだ方がよかろうかと、かように考えておるような次第でございます。
  83. 田畑金光

    田畑金光君 今の大臣の御答弁は、これはどうも言いのがれですね。この事件の起きたのは二月の二十六日の夜です。もう十日もたっておるではありませんか。十日も。しかも福岡地検は直ちに捜査し、検察権を発動しているでしょう……。少くとも十日間には相当の証拠の収集、その他身柄はもちろんこれは引き渡しを受けておるのかと思うのですが、少くとも中間報告ということは検察の中においてもあることだし、またそれが当然のことだと思うのです。相馬ケ原事件についても常に中間報告内閣委員会において行われておる。国会についても行なわれている。この事件はすでに十日を経過しているのですから、今事件の真相が明らかにならないから、ここで話すわけには参らぬということは、まことにこれは怠慢を隠すためとしかわれわれは見るわけに参らぬ。この点に関しまして、これはまことに今の大臣の態度は遺憾であり、そういうようなことだから万事こういうような事件が次から次へと起きてくるわけで、後ほど大臣の考え方についてはさらにお尋ねいたしますが、この事件の真相について、井本刑事局長から現在承知される限りにおいて御報告願いたいと思います。
  84. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) 本日詳細な別途報告現地の検察庁から来るわけでございますので、正確なことはその別途報告によってお答えした方が間違いないと思いますが、概略どもが電話で報告を受けておりました状況をお答え申し上げます。  被疑者はロバート・ウオルシュ二等兵という者でありまして、先月の二十六日に新聞にありますような福岡市の出来町国鉄鹿児島本線踏み切り付近で根棒状のものでなぐられて死亡した事件がありまして、その事件についていろいろ捜査をいたしました結果、犯人がロバート・ウオルシュという者であるという大体の推定がつきましたので、これは日米両国で共同して調べをしておったのでありますが、三月の四日にアメリカ側がロバート・ウオルシュと同時に、その共犯の疑いのあるエドワード・ライスという二等兵両名を逮捕したのでございます。日本側ではすぐその翌日検事が一応両名について取調べをしております。六日には、かような犯罪があるというので、ロバート・ウオルシュにつきまして傷害致死罪でアメリカ側に犯罪の通報をやっております。新聞に身柄の引き渡しを米側に行要求してあると書いてございますのは、これは日本側の取調べに応じて、随時出頭きせるということを確約させた趣旨であるということを現地から言って参っております。  なおエドワード・ライス二等兵につきましては、ロバート・ウォルシュ二等兵と共謀してこの秋田という被害者を殴打したという嫌疑はやや薄いので、共犯の事実は現在のところははっきり認められないのでございますが、他の日本人に対する傷害事件があるらしいという見込みがありますので、その点につきましてもなお厳重に取調べを進めているわけでございます。  なお、かような事件につきましては、これはもう当然日本側に裁判権があるので、相馬ケ原事件のように、裁判権がどちらにあるかというような問題は全然起きないというように考えております。
  85. 田畑金光

    田畑金光君 これは明らかに公務外の私用中の、しかもこれはおそらく夜飲んで歩いていた、そういうさなかにおける事件だと思うのです。従って、裁判権もこれは当然日本にあるわけで、また身柄も日本において留置して取調べを進める、こういうことなどが当然とらるべき方法だと思うのです。こういう事件が起きた場合、今お聞きしますと、ようやくきょうあたり電話連絡で現地と話をなされたようでありまするが、おそらく新聞に出たから皆さんの方でもあわてて、あるいは現地の方からもあわてて中央報告がなされたような感じが起きるわけです。こういう日米の重大な問題等について、事件が起きた場合、この種の事件が起きた場合の取扱いというのは、これはどうなっているのですか。
  86. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) とにかく二月の二十六日に被害者が倒れておったというような状況があったわけであります。この被害者に対する犯人は、急遽検挙しなければいかぬということに当然なると思うのでありますが、ようやく三月四日に一応犯人とおぼしき者を確定しまして、取調べ始めたということで、おそらく、これはまだ正確な報告ではありませんが、三月五日の検事の取調べで、被疑者ロバート・ウォルシュ二等兵であろうという大体の想定がつきましたので、先方から昨夜おそく電話がかかったのでございますけれども、その後の調べを正確にいたしまして、可能な範囲で一応本日電報で報告をよこすと言うておりますので、本日はもう少し正確な事情がわかると考えるわけでありまして、ただいま申しましたように、現地の検察官といたしましては、まず第一に迅速な犯人の検挙並びにその被疑者の確定、取調べということを主にしておると思います。と同時に、事情がわかりますれば、その状況は電報なりあるいは電話なりでわれわれの方にも報告して参るというふうに考えております。
  87. 田畑金光

    田畑金光君 大臣はこの問題について先ほど一応型通りの御答弁はなされたわけですが、何せ相馬ケ原事件でまだ最終的な第一次裁判権の話し合いもつかぬこの段階において、お言葉を借りるとより悪質だ、よりこの事件は重大だと、そう大臣自身がお認めになるような基地に伴うこういう事件が起きておるわけなんです。こういうような事件について、最近国会が開かれて、国会がこういう問題をやかましく取り上げて、ようやく世論もこれを注目する、こういうようなさ中において、このような事件が次から次に起きてくるということ、これはもう少し私は真剣に考えてもらう必要がありはせぬかと思うわけです。こういう各地に起きておる事件の性格を見ますと、とにかく占領中の考え方というものが、抜け切れぬのじゃなかろうか。あるいは人種差別的な考え方すらもその人方のどこかにひそんでいやせぬか、こういう印象を受けるわけなんです。日本がやはりまだ隷属しておるというような感じ、日本はまだ独立をしていないのだ、占領されておるのだという意識が、アメリカの兵隊たちのどこかにあるから、こういうような事件が起きやせぬかと思うのです。大根でもゴボウでも切るようなものじゃないですか。こういう人間軽視とか人権尊重とか抽象的な言葉では常に論議されておるが、実際このような事件が起きてみた場合、これはどう考えられますか。また単に成規の手続を経て申し入れをするときはちっとも力の入っていない型通りの文句で抗議を申し入れる。そんなことでこれは済まされるものかどうか。この基地問題あるいはこれに伴う問題というものは、もう少しこれは真剣に考えてみる必要がありはせぬかということですね。大臣は一つこの点について、このような事件が頻発しておるのですが、どうこれから具体的に対処されようとしておるのか、これは大臣だけに聞いてもどうかと思うのですが、これは岸総理にも聞かなければならぬと思いますが、まず関係大臣として法務大臣はどうこれを処理されようというお気持なのか、お答えを承わりたいと思います。
  88. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) 犯罪関係を担当いたしておりますわれわれといたしましては、直接なまの事件を取り扱っておりますから、一そう田畑委員と同じような感じを強く持たざるを得ないのであります。なるほど米軍の首脳部においては、もうすでに占領中と講和条約が発効して安保条約の段階に入りましてからとは、おのずから考え方は当然達っておると私は信じておりますが、ただ、米兵全体から見ますならば、下の方の者については、何か引き続き日本に駐留をいたしておりますので、まだそういうような誤まった考えを持った者があるかもしれない、あるのじゃないかという疑いすら御同様私も感ずるのであります。従いまして、機会あるごとに日本側としましてはアメリカの駐留軍はもちろんアメリカの政府機関に対しましても、強くこの点は反省を促し、こういうことの再発をいたしませんように、十分の注意を喚起するように今後一そう努めたいと思います。
  89. 田畑金光

    田畑金光君 十分の注意をすることに努められるということは、これはまあ当然のことで、よくわかるわけです。先ほどの相馬ヶ原事件に関する伊藤委員質問に対しましても、大臣からはしかるべき御答弁があったわけですが、しかし具体的に何をなされたかということは、われわれは承知していないのです。ただ相馬ケ原事件が世論の激しい批判を浴びて注目を集めるに至って、ようやく政府は動き出した。それがまだ解決されないうちにこの問題が再び起きてきた。これはもう少し掘り下げて考える必要があると、こう思うのです。基地問題に伴ういろんな犯罪事件、あるいは教育上に及ぼす影響、あるいはまた日本人との関係、こういうようなことを考えたとき、今のような言葉だけでは、これは私たちは納得はできないのですが、もう少し何か日本政府の腹あるいはまた日本人としての気持を強く訴え方法はないのかどうか、この点もう一度一つ承わりたいと思います。
  90. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) 私ども考えますのに、一片の文書をもってアメリカに抗議を申し込むことは簡単でありますが、そういうことで効を奏するのではなくして、日本側とアメリカ側と接する機関ことごとくがその気持を、ちょうどあなたのおっしゃるような意を体して、そうして機会あるごとに十分の注意を喚起する、これが私は最も効果的であり、そうすべきであると思うのであります。おそらく従来も私どもは最近就任をいたしたのでありまするが従来も政府の各機関といたしましては、それぞれの機会に十分努めては参ったと思うのでありますが、御指摘の点はまことにごもっともでありますから、私どもとしては一そう注意を喚起するということに努力をいたしたい、こう申し上げる以外にどうも方法がないと思うのであります。
  91. 田畑金光

    田畑金光君 井本刑事局長にお尋ねいたしますが、この種の事件というものは今までもたびたびあったかと思います。この種の事件の取扱い、これは相馬ケ原事件とお話のように性格は違っておるわけでありますし、裁判管轄権が当然日本にあるわけでありまするから、この事件の処理というものは、もう少し積極的に、またスピーディにできると考えまするが、このような事犯の処理というものは、一体どのような時間を一応かけて判決あるいは最終的な処理画までに至っているのか、従来の経験に照らしてお答えを願いたいと思います。
  92. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) 詳細な報告がきませんので、この事件はどういう経過で検挙したかよくわからないのでございます。とにかく二月二十六日に被害者が倒れておったのを、いろいろな関係から割り出して、アメリカ人の犯行であるという見込みをつけて、俗に面通しと申しますが、アメリカ兵を集めて顔を見せたりいたしまして検挙したのでございまするから、おそらく相当現地の検察官は努力をしておる状況は見受けられまするし、ある程度これはほめてやってもいいんじゃないかというふうに考えております。  かような事件の大体の処理の見込みでございますが、どのくらい、何日でどうなるかということを明確には申し上げられませんけれども、日本の法律によりますると、検事の起訴前の捜査に使われる日数が、警察の分と合せて二十三日ございますから、大体その限度内には必ず調べが終了いたしまして、日本側の裁判所に、普通の事情でありますれば起訴されるということになると存じます。起訴いたしますれば、これは一、二カ月のうちに全部一審の裁判が済んで、一審の判決がおりる。さらに高裁、最高裁とあるわけでございまするけれども、そう長い期間はかからずに裁判が済むので、これが何カ月も何ヵ月もかかるということは、従来の例に徹しまして考えられないのでございます。大体今まで相当むずかしい事件でも四、五カ月のうちに全部、最高裁までいきましても、事件は済んでおるようであります。
  93. 田畑金光

    田畑金光君 この事件は、法律的な取扱いとしてもきることながら、もう少し政治的な観点から、政府としてはきぜんたる態度をもってこの事件の処理促進をはかっていただきたいと思うし、従いましてまた私は本日のところお話を承わっておりますと、事件の詳細な内容等も承知することができぬわけでありますが、少くともこういう事件については、問題の性質上、国会で取り上げられる以前において、私は十分に関係者においては経緯等について把握しておかれることを要望するし、そのことがまた、政府がこの種問題についてほんとうに真剣に熱意を持って取り組んでおるという具体的な一つの基準であろうと思うわけであります。不幸にして先ほどお見受けするところ、大臣も質問されてあわてられる、これではまことに遺憾だと思うのです。先ほど相馬ヶ原事件に関連いたしまして、この刑事裁判管轄権分科会に本日ようやく移されて、十二日ですか、初めて分科会が開かれる、こういうような御答弁でありましたが、私たちもお話のように、この種のはっきりとした証拠あるいはその他の資料が収集されている以上は、日本に第一次裁判権がある、このことを相手側も認めるとは思いますけれども、しかし、なお相手方は全面的にそれを認めておる段階でもなさそうです。そうなって参りますとこの分科委員会における今後の見通しでありますが、この点についてはどういうような判断を持っておられるのか、もし、この分科委員会等で処理できないとするならば、それはさらに上級の機関に移される、あるいは外交折衝というか、外交当局の話し合いに移される、こういうようなことになってきょうと思いますが、せっかく外務省の方からだれか局長が見えておるようでありますが、この点、外務省としてはどのようにタッチされてきておるのか、伺いたいと思います。
  94. 千葉皓

    政府委員(千葉皓君) お答え申し上げます。外務省といたしましては、この問題を合同委員会に移しまして、裁判管轄権分科委員会の開催を要求いたしておりましたところ、先ほど御報告ございましたように、本日いよいよそれにかけることに先方の同意が得られました。これはもちろん私どもといたしましては、その分科委員会で解決がつくものと考えております。そういうことはないと存じますが、もしそこで話がつかなければ、合同委員会の本会議においてさらに討議をしなければならぬ、そういうことになるわけでございますが、しかし司法当局が中心になって構成しております裁判管轄権分科委員会で解決がつく、私どもはそういうように思っております。
  95. 秋山長造

    ○秋山長造君 ちょっと関連して。局長に私ちょっとお尋ねしますが、あなたは日米合同委員会の日本側の委員なんですね。
  96. 千葉皓

    政府委員(千葉皓君) そうでございます。
  97. 秋山長造

    ○秋山長造君 この問題は、合同委員会の本会議といいますか合同委員会で話し合いをしたけれども、なかなか込み入って話し合いがつかないから、分科委員会におろして、その結果を待って、あらためて本委員会でやるという順序になるのですか。それともこれは問題が刑事事件だから、その方の専門家で構成した分科委員会へ初めからおろしてしまって、その結果を見るという順序になるのですか。
  98. 千葉皓

    政府委員(千葉皓君) お答え申し上げます。この事案は、刑事裁判管轄権にかかわる非常に技術的な問題が含まれております。初めからこれは分科委員会で討議することが適当と考えまして、そういうふうにいたして参っております。
  99. 秋山長造

    ○秋山長造君 先ほど法務大臣のお話では、従来この分科委員会で解決した先例がたくさんあるというお話があったのですが、こういう事件は今おっしゃるようなやり方で、最初からもうあなた方がタッチされないで、すぐ分科委員会へおろしてしまう、こういうやり方をしてこられたのですか。
  100. 千葉皓

    政府委員(千葉皓君) 合同委員会にわかります案件は、本会議にかかりますものも、それから分科委員会にかかりますものも、全部一応合同委員会そのものの議題として、全部合同委員会本会議にかかるわけであります。しかし問題によりまして、合同委員会の本会議において、討議を経ておろされるものと、しからずして直ちに分科会におろされるものと、二通りになるわけであります。
  101. 秋山長造

    ○秋山長造君 ではこの事件は、最初合同委員会の方でこの事件を受け取ったのはいつであって、そうして今日分科委員会に付託されるまでの合同委員会としての取扱いということがどういうことになっておるか、その点を一つ具体的かつ詳細に知らせていただきたい。
  102. 千葉皓

    政府委員(千葉皓君) ちょっと正確に記憶いたしませんですが、たしか二月の十八日に合同委員会を通しまして、この問題についてはわが方に裁判管轄権があると思われるから、それについて米軍側との話し合いをしたいという申し出をいたしたわけでございます。その話し合いの場所といたしましては、裁判管轄権分科委員会が適当であるということもその当時申し出たわけでございます。これはあるいは二、三日前後しておるかもしれませんが、その二月十八日ごろに申し出ましたに対しまして、今日御報告がございましたような返事があったわけでございます。
  103. 秋山長造

    ○秋山長造君 そうすると、合同委員会ですでに二月十八日に取り上げられたのだから、そのときまでには少くとも日本の政府側としての態度、方針というものは、はっきりきまっておったわけだろうと思うのですがね。そうしてそれを合同委員会に二月の十八日に持ち込んで、そしてこれを分科委員会でやろうということを向うへ提案した、そうしてそれに対する返事が今日まで十何日間かかった、こういうことですか。
  104. 千葉皓

    政府委員(千葉皓君) その通りでございます。
  105. 秋山長造

    ○秋山長造君 その点が先ほど田畑君も繰り返し質問されていましたが、私どももやはりきわめて遺憾な感じを受けるのですね。大体もう事実そのものはこれはアメリカ側が見ても日本側が見ても、だれが見てもはっきりしておるのです。これはもうねらって撃ったにきまっているので、問題は、ただ公務執行中の行為であるかどうかというようなことなんですけれども、しかしそれにしてもこの事件そのものが事案問題としてははっきりしておること、だし、それからどうせ従来分科委員会でささいな問題まで扱ってやっておるということだったら、先方としても当然十八日にこちらが提案すれば、もう二つ返事で、じゃそれでやろう、こう応じてこなければ私はうそだと思うのですね。いわんや、新聞であれだけ大きく騒がれて日本の国論を沸騰させた事件なんですから。これはどういう事情なんですか、今日まで延び延びになってやっときょうになってそれに応じてきたというのは。
  106. 千葉皓

    政府委員(千葉皓君) ただいまの御質問について明確なお答えいたしかねるのでございますが、私どもといたしましては、これはアメリカ側からすぐにも回答はもらえるものと実は考えておりまして、再々督促いたしましたが、何か先方の事情があって今日まで遷延いたしました。
  107. 秋山長造

    ○秋山長造君 まあ先方の事情については、これは局長に聞いても想像以上の御答弁は得られないと思います。日本の政府の方の態度というものは、まあこれも先ほどの皆さんの御質問をまた繰り返すことになると思いますが、これははっきりしているのでしょうね、この合同委員会に持ち込むまでにはっきりしているのですか、もう一度お尋ねします。
  108. 千葉皓

    政府委員(千葉皓君) わが方の態度ははっきりしております。
  109. 秋山長造

    ○秋山長造君 はっきりしているのですね。で、そのはっきりしているということは、これはジラードというアメリカ兵が空砲に薬莢を詰めて故意に坂井なかさんに対して発砲した、その結果死に至らしめた、傷害致死だ、この事実がまずはっきりしているということです。それからさらに第二として、この問題はこれは公務執行中の行為とは認めがたい、従って裁判の管轄権は日本側にある、この二点を含んでいると思う、両点ともはっきり明確になっているのか、政府の態度ですね。
  110. 千葉皓

    政府委員(千葉皓君) 私がただいま政府の態度がはっきりしていると申しましたのは、この事案についての裁判管轄権は日本側にあるの、が至当である、そのことにつきましてわが方の態度がはっきりしているということを申しました。私の立場におきましては、その事件にかかる事実についてどうであるということは申し上げられません。
  111. 秋山長造

    ○秋山長造君 今の第一点の方は法務大臣から御答弁をいただきたい。
  112. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) この点は日本で結論を得て、犯罪通報いたしますまでに、先刻も申し上げましたように、現地の捜査に当りました検察庁の関係官と最高検の関係官とが合議をいたしまして、その決定をして、その結論を得て犯罪通報をいたしているのでありますから、これは日本側としては動かすことのできない結論であるし少くとも検察庁陣としては動かし得ない結論である、かように考えます。
  113. 秋山長造

    ○秋山長造君 ただいまの大臣と局長の御答弁で、日本の政府側の態度、見解はきわめて明確だということはわかります。  そこで、ついでに法務大臣にお尋ねしたいと思うのですが、先ほどもるる御答弁がありましたように、勤務時間中のたとえ行為であっても、その行為自体は公務と認めがたい、これは公務執行中の行為とは言えない、これは日本の国内法では、これは判例においてもはっきり確定された原則なんだというお電話があった、これはその通りだと思います。で、おそらくこれはアメリカの国内法においてもやはり同じようなんじゃないかと私は思うのですが、その点はいかがでしょうか。公務であるかないかという解釈は、アメリカの国内法においてどういうふうに扱われているかということは御存じですか。
  114. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) 公務執行中に対する見解でございますが、法律的な見解はございまするが、大体そうアメリカ側と日本側と違うわけじゃございませんが、しかし微細な点につきましていろいろ説がありまして、日本側でも、たとえば公務執行中の時間中の行為は全部公務執行中の行為であるという見解もあるやに聞いておりますが、アメリカがどのような態度をとっているか、現在のところはまだはっきりわかっておりません。
  115. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 今のお話ですけれども、そういったようなアメリカの判例のようなものを当然この際お調べになる必要があると思います。お調べになって至急ここに提出してもらいたいと思いますが。調べればこれはわかると思いますが。
  116. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) 自動車で人を傷害したというような事案につきまして、たとえばある車で官舎から役所に出勤の途中であるというような場合には、その行為は公務中のものであるというようなことをアメリカでは主張しているわけでございます。日本側では従来は公務執行妨害などはごくせまく解釈いたしまして、現に公務を行なっている者についての妨害行為が、刑法の公務執行妨害になるわけでございますが、かような点につきまして、少し前に、アメリカ側の軍人が出勤の途上で日本人を自動車で傷害した事件がありまして、その事件につきましてこれは公務執行中の行為であるか、あるいはせまく解釈して公務執行中とは認められないということになるかということで、だいぶ討議したのでございますが、この点につきましては、日本側でも災害の補償などをやる場合には、たとえば出勤の途上でけがをしたとか、あるいは死亡したというような。者につきまして、ある程度公務執行中もしくはそれに準じて扱うというようなことにかんがみまして、いろいろ討議をした結果、さようなものはアメリカ側の主張も、いろいろ検討いたしましてもっともであるという観点に立ちまして、役所に出勤する途上の行為につきましては、公務執行中というふうに認定したことがございます。さようなものにつきましても、アメリカ側の判例はありますが、本件のような、演習中に薬莢を鉄砲に詰めまして、付近におった者に傷害を与えたというようなものに対しての判例は、ただいま調べましたところでは、まだ見当らないのでございます。この前にもたしか申し上げたと存じますが、これがわれわれが認定したような傷害致死罪であるというようなことになりますれば、どうも公務執行中の過程における行為とは考えられませんので、私どもは、これは公務執行中にあらずという結論を出しておるのでございますが、アメリカ側がどういうことを言って参るか、まだわかっておりませんので、この十二日に開かれまする刑事裁判権分科委員会の席で、先方の言い分もはっきりするというように考えております。
  117. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 先ほど法務大臣が、勤務中にあった行為でも、それが公務以外の行為であるならば、公務執行中の行為と認めない、こういう最高裁か、大審院の判決例があったという、きわめて明確なお話でしたが、私の伺うのは、日米の交渉の過程において、先方がどう言った、こちらがどう言ったということでなしに、アメリカの国内法として、主として、まず第一に、軍隊を中心として勤務中に行なった行為が公務以外の行為で、何か民間に対して損害を与えた場合に、それを公務執行中の行為と見るか見ないかという、ちょうど先ほどお話の判例と同じようなものが、アメリカの大審院と申しますか、判決例的なものがあるかどうか。第二は、軍隊でなくて、民間の同じような場合でも、あるかないかということをお調べにならなければならないのじゃないか。それを調べておけば、日米交渉の場合に、その判例がこちらの一つの有力な武器になるじゃないか。ただ、向うとの日米交渉の間だけで話をやりとりするのでなしに、アメリカ自体の国内法的な判決をお調べになるだけの用意が必要ではないかということを伺っておるので、もしお調べでないなら、お調べを願いたいということを伺っておるわけであります。
  118. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) これは、私、事務当局のような知識はございませんが、おそらくアメリカの判例を調べるということになりますと、アメリカは行政関係でもそうでありますし、司法関係におきましても、州によってそれぞれ異なった法律解釈をしたり、判例を下したりしておりますようで、そういうものをこちら側が調査研究して、それをたてにして、この問題を論争するということになりますと、かえって論争の幅が広くなって、適当じゃないのじゃないか。日本のこうした事件についての管轄権の争いについては、行政協定に明確な文句が書いてありますから、その行政協定の正しい解釈を下し、その解釈に当てはまるかどうか、公務としての作為か不作為か、こういうことの判断で、日本は日本側のやはり十分の論拠と、それを裏づけする資料とをもって主張すべきものは主張する。この方がどうもよろしいのではないか、かように考えておる次第でございます。
  119. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 お調べになって有力なものがあれば使うし、あまり気のきいたものがなければだまっているだけのことで、調べるだけの手数はするのが当然ではないかと思いますが……。
  120. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) ただいままでのところ、私どもも刑事事件に回顧のものがないかということで、いろいろ調べておるのでございますが、今までのところは適当な判例が見当らないのであります。しかし、この上ともなお努力いたしまして、われわれに有利な判例を調べてみたいと思っております。
  121. 秋山長造

    ○秋山長造君 どうも私もアメリカの国内法のことはよく知りませんけれども、しかし聞くところによると、やはり公務というものの解釈は非常に狭いのじゃないですか、アメリカの国内法では。ところがこの行政協定の場合にうたわれている公務ということは、やはりアメリカと日本という御承知のような関係で、非常に広く解釈して押しつけてきている。これは断言してもいいと思うのです。だからこういう点については、われわれは何も反米感情をあおるものではありませんけれども、これは反米とか親米とかいうこととは別のことです。純法律的なことですから、だから日本の政府当局はもう少し腰を据えて、たまには一つ国民のりゅういんを下げるようなてきぱきした処理をやってもらいたいと思うのです。これはきわめて公務という範囲を拡げて押しつけてきていると思うのです。アメリカの国内法というものに比べて、はるかに拡げて押しつけてきていると思うのです。吹っかけているのですよ。現にいつだったか舞鶴で、MPがパトロール中に、日本の婦人を強姦未遂でつかまったことがあるでしょう。あれなんかだって、パトロール中の行為だから公務だと言って最後まで吹っかけてきたでしょう。それとこれとが同じだとは、私は言いませんけれども、これはやはりアメリカ対日本という関係になると、何と言っても向うは国内法における公務というものよりはるかに広げて、何でもかでも公務のワクに入れて押しつけようという態度が見える。これははなはだ遺憾です。だからいやしくもそういうことをうやむやのうちに多少でもこちらが譲歩して、ほかの法律的な立場以外の政治的その他の考慮に押されて、そういう法の筋というものをいききかも曲げられるようなことのないように、事態をはっきりしていただきたい、責任の所在をはっきりしていただきたい、こういうことを重ねて当局にお願いしておきます。法務大臣のその点につきましての御見解をもう一度、しつこいようですけれども、お尋ねしておきたい。
  122. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) お説の通りわれわれとしてはあくまで行政協定に明記してございますその文理並びに精神解釈、この成文の解釈を正しくとりまして、この主張で一貫をいたしたい、かように考えております。ただ、先ほど刑事局長が申し上げました交通事犯等は、賠償との関係等がございまして、結局出勤するときの事故を、公務中の事故ということに、両方でいろいろ分科委員会で協議した結果、なっております。帰りに途中で一ぱい飲んで帰るというのは、たとえ宿舎へ帰る途上でありましても、これは公務ではない、その区分けをいたしまして、分科委員会でかつてそういうような基本的な話し合いをつけてあるそうでございます。本件につきましては、御指摘のように非常に重大な案件でもありますし、われわれとしましては、わが方の是なりと信ずる現在の主張を貫くことに最善を尽したいと思います。
  123. 上原正吉

    ○上原正吉君 私はアメリカの国内法で、公務に従事しておる場合の犯罪と、そうでない場合の犯罪の、裁判の管轄権が違うということはないのじやなかろうかと思うのです。ただ考えられますことは、往年の陸軍刑法のようなものがあって軍人の犯罪は陸軍刑法によって律するということがあるかもしれません。おそらく軍人の身分によって、陸軍の軍人は陸軍刑法によってやるというようなことになるのではないかと想像しているわけです。  そこで、問題になりますことは、アメリカでは、アメリカの公務員が民衆に危害を加え、損害を与えたら、国家はこれを賠償するというような制度があるかどうか。これもついでにお調べ願いたいと思います。これは先ほどの公務によるのと、公務によらないのと、裁判権の管轄があるのかないのか、これはなかろうかと思いますが、こういう点をお調べいただきますと、お調べが早くなるのじゃないかと思いますが、その点お願いしておきたい。
  124. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) 御注意いろいろ感謝いたします。確かに、お話しの通りアメリカの国内としては、おそらく公務ということは、公務執行妨害罪とか、いろいろそういう犯罪を通して、公務とは何かという解釈の仕方は一応あると思います。日本におきましても公務執行妨害の場合における公務とは何かという判例もこれはあるわけでありますから。しかし日米行政協定における公務としての作為か、不作為かということになりますと、公務執行妨害罪に言う公務の範囲と、おのずから別な角度からこれを見て判断をしなければならない性質のものかと思います。  なお、御注意をいただきました点につきましては、政府機関によりまして、できるだけそういうような研究も至急いたしたいと思います。
  125. 田畑金光

    田畑金光君 事務的にお尋ねしますが、日米行政協定の第二条のいわゆる施設とか基地、これは一体現在いくらくらいあるわけですか。特に協定に基く施設基地ですね。これの数はいくらくらいあるのか。
  126. 今井久

    政府委員(今井久君) お答え申し上げます。日米行政協定の第二条によります施設は、現在五百四十五と記憶しております。
  127. 田畑金光

    田畑金光君 相馬ケ原の演習地は、いわゆる第二条に基いて協定された演習地ではなくして、これは岡崎・ラスク会談に基く、一応占領中から引き続き使用するのだ、そういう内容の演習地であると、こう聞いておるわけでありますが、このような演習地というものは一体どれくらいあるのか。いわゆる正規に協定された施設というものと、今言われるような、そうでない施設というものの法的な性格の相違というか、これについて御説明願いたいと思います。
  128. 今井久

    政府委員(今井久君) お答え申し上げます。今御指摘になりました岡崎・ラスク協定によりまして、占領中より引き続き今日まで使用れております施設は二十三でございます。これは施設性格といたしましては、第二条によりますのと何ら変ったところはないのでございます。
  129. 田畑金光

    田畑金光君 井本さんにお尋ねいたしますが、相馬ケ原の演習地はいわゆる岡崎・ラスク会談に基くものである。従ってこの地区に刑事特別法の第二条の施設侵入というこの条文を適用するということは妥当でない。こういうような解釈をとられておるということをわれわれは聞いておるわけなんです。この解釈は、われわれといたしましてもこの関係条文を見ますと非常にデリケートな解釈を生むと思いますが、しかしやはり日本側の立場としては、少くともそのような考え方のもとにできるだけ基地を日本に返還きせる、あるいは解放する、こういう考え方でいくのが私は適切なあるいは妥当な態度であり、解釈ではなかろうかと、こう思うのです。この解釈について私のお尋ねしたいことは、アメリカ側はこれを認めたのかどうか。この点どうですか。
  130. 亀田得治

    委員長亀田得治君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  131. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 速記を起して。
  132. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) 相馬ケ演習場が行政協定二条一項の施設区域であるという一般論につきましては、私ども別に争わないのでございます。ただ、行政協定二条一項のこの施設区域と一応認めて、諸般の、たとえば政府が損料を払うとかいうようなことについての問題につきましては、私何ら異論はないのでございますが、昭和二十七年の外務省告示の第三十三号などを見ましても、行政協定二条一項の施設区域として次に掲げるのはそうであるといううちに明らかに「保留」と書いてあるものは除くというような記載がございます。それらの点から見ますと、果して二条一項の施設区域ということができるかどうか、多少の疑問があるのでありまして、この問題の昭和二十七年外務省告示第三十三号の見方によりましては、さような保留のものを含めて行政協定二条一項の施設区域だと言えないこともないのでございますが、われわれといたしましては、刑事法規を扱うのでございますから、それはなるべく厳格に解釈しなければいかぬという観点で、刑事特別法の二条の立ち入り禁止の規定を適用して処罰するのは穏当ではない。これは積極的適用は慎しむべきであろうという結論に達しまして、もし処罰するならば、軽犯罪法か何かでやるべきだという考えを持っておることは、先般申し上げたようなわけでございます。
  133. 田畑金光

    田畑金光君 その点は私たちも新聞で見まして、井本さんの解釈というものは私たちは非常にまあほめるようだが、りっぱだとこう思うのです。そういうような解釈で私はやるべきだと思うのです。そこで、その解釈についてアメリカ側は、とにかく、またさきに所有権の問題が出ておりましたが、この薬爽や廃弾はアメリカの所有だ、こういうようなことになってきますと、また同様にこの刑事特別法の適用があるのだという解釈等もアメリカとしては主張してくることも心配されるわけですが、今までの話し合いの中で、刑事特別法を適用するとかしないとか、こういうような問題等は、両者の話し合いにのらなかったかどうか。この点は井本さんの解釈のような態度で向うも臨んでおるのかどうか。この点をお聞きしたいのです。
  134. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) 少くとも私どもに関する限り、相馬ケ原の演習場につきまして、刑事特別法二条を適用すべしというようなことを言って参ったことはございません。アメリカ側といたしましては、ほかの演習地と同じように、自分たちが演習に使えればそれで十分満足ではないかというように思っておるのでございます。それに、かような演習地で、しかも立ち入りを禁止された地域に入っておるものが処分されるのでございますから、もし処分するのであれば、これはまあ刑事特別法の第二条の方が重いわけですけれども、軽犯罪法でもやればやれるのでありまして、何もこれを無理してやることはないというように考えるのでございます。少くとも私どもに関する限りは、この問題について刑事特別法の二条を適用すべしというようなことを言って参ったことは全然ございません。
  135. 松岡平市

    松岡平市君 議事進行。田畑議員が聞いておられるのは、アメリカ側も日本のあなたの解釈に同意するとかあるいは、同意せぬとかいうような意思表示をしたことがあるかどうか。折衝の過程はどうかということを聞いておられるのだから、そこのところをもう少しはっきりして、あまり時間をかけないようにして下さい。もう少しはっきりわかるように。
  136. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) この問題についてアメリカが何ら意思表示をしたことはございません。
  137. 田畑金光

    田畑金光君 それでは私先ほど委員長からお話がありましたように、福岡事件のより詳細な報告があったとするならば、報告をこの際お受けしたいと思います。
  138. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) ただいま手元に入りました電信の要領を申し上げます。  この事件の被疑者はアメリカ軍の所属部隊一九五五航路航空通信中隊の階級兵籍番号A/2cAF一一三〇四七〇六という番号ですが、ロバート・エイ・ウォルシュという十八才になる者であります。いま一人は同じ部隊で階級兵籍番号A/2cAF一二四七六五四四エドワード・ダブリュ・ライスという者で、年は二十才になるのであります。この両名が飲酒の上で昭和三十二年二月二十六日の午後十一時三十分ごろに福岡市の馬場新町、花月というバーでささいなことから憤慨いたしまして、このロバート・エイ・ウォルシュという者が、女給の林百合子当二十四年の顔を手拳で殴打いたしまして、同人に治療十日を要する顔面挫創を負わしめた後、さらに同日午後十一時五十五分ごろに同市上辻堂姫野理髪店前路上におきまして、折から通行中の福岡市人夫秋田国広当六十一年の次次を認めるや、被疑者ロバート・エイ・ウォルシュにおきまして、やにわに同人の顏面を手拳で一回殴打して路上に転倒せしめ、後頭部を強打し、翌二十七日午後十一時二十分ごろに同市の斉藤外科病院で頭蓋骨折等の傷害によって死亡するに至らしめたものであるというのが容疑事実でございます。  犯罪発覚の事情といたしましては、この(ニ)の秋田国広の死亡が警察にすぐわかりまして、博多警察署で鋭意聞き込み中でありましたところが、その問題の死亡事件の直前に、先ほど申し上げました女給を殴打した事実が判明いたしましたので、三月四日に板付飛行場のアメリカ空軍第八憲兵隊前におきまして、二月の二十六日に夜外出をいたしました同飛行場所属の将兵を百五十名ほど集めまして、この被害者の林百合子ほか三名の者に面通しをさせた結果、本件の被疑者二人がその犯人と認められるということになりましたので、これは直ちにアメリカ側で被疑者二人を逮捕いたしまして取り調べましたところが、(ニ)の犯行も一緒にこのウォルシュの方で自白いたしまして、大体犯罪事実がわかったわけでございます。  この事実のほかに、さらに外出いたしました二月二十六日の午前零時三十分ごろに、板付飛行場付近でこのニドワード・タブリュ・ライスという者が、日本人をなぐったということを自白しておりますので、この被害者を調べ中でありますが、まだ現在まで被害者の方がわかっていない模様であります。なお、このライスの方は傷害致死事件の方には直接の関係は現在のところはない見込みのようであります。身柄の処置につきましては、米軍側で逮捕いたしましたが、検察庁において取調べの際は何どきでも出頭きせるという確約のもとに、三月二日には一応検事が被疑者両名の取調べをいたしましたが、先ほど申し上げたような事実を自白しておるわけでございます。  なお詳細につきましては、後から調べの結果を報告するという建前になっておりますが、犯罪の事実、並びに検挙の事情はさようなことになっております。
  139. 田畑金光

    田畑金光君 報告を承われば承わるほど、この問題は非常に悪質、凶悪な犯罪事件のように見受けるわけです。私はこの問題についてさらに質問を継続したい、こう思うけれども、時間でありまするから、さらに詳細の報告を待って、適当な時期に質問いたしますが、特に私はこの問題、この事件の処理に対して、当局がどのように適時適応の処置をとられたか、これも強くこの次の機会に御報告をお願いすることにしたいと思います。またさらに、私は質問を継続しようとしましたが、合同委員会に、あるいは刑事裁判権の分科委員会等に外務省の代表も入っておられわけなので、私はこの種事件は単に刑事犯罪事件としてではなくして、より高位の政治外交の問題として適時適応の対策が当然とられるべきだ、こう考えているわけで、その具体的な手段は、方法は何であったか、こういうようなことを実はお尋ねしたかったわけでありますけれども、これはこの次の機会に譲りたいと思います。
  140. 亀田得治

    委員長亀田得治君) じゃちょっと最後に一点だけ相馬ケ原の問題についてお聞きしておきたいと思います。  それは、先ほどたま拾いの質疑がありましたが、例の地元の農耕地の問題ですね。地元では実際に演習場に使われておらない所がある。しかし地元では非常に土地がほしい、少くともこれは正規の指定がしてない、そういうわけですから、私は最少限これは一つ農耕地を地元に返すように、何かそういう措置をとる方がいいのじゃないかという感じを、現場を見て、実は持っておるのです。その点についての検討をされておられるかどうか、お聞きしておきたいと思います。
  141. 松木豐馬

    政府委員(松木豐馬君) お答えをいたします。ただいまのお話の相馬ケ原の演習場の農耕地の一部分は、大体私たちの調べでは、十五町歩ばかり農耕可能区域があると思っておりますが、そのうちの演習に差しつかえない部分を返せということは、前から米側と交渉して参っておりまするけれども、米側の砲座の位置が非常に工合が悪くなるということがございまして、非常に話のらちがあかんということで、まことに申しわけないと思うのですが、この問題は今後もそこを返還してもらうように努力を続けていきたい、かように考えております。
  142. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 今のお話によると、ちょっと食い違いがあるようなので……、私ども現地で村長を中心に聴取したところによると、耕地として利用できる面積は約百五十町歩である。それを全部返してとは申し出ていないわけです。せめてその三分の一の五十町歩でも返していただけると、農業経営上非常にありがたい、そういう切なる念願であったわけで、その点はどうですか。
  143. 松木豐馬

    政府委員(松木豐馬君) お話のように農耕可能地が非常に広いということでございますが、私たちの方で調べておりますところは、今申し上げたような程度でございまして、食い違いの点は、早急に一つ調査してみたいと思いますが、いずれにいたしましても、農耕地を返してほしいという線で交渉を続けていきたい、かように考えております。
  144. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 委員長からも要望がありましたように、これは私ども現地視察に行った際、切なる願いとして受けとめてきたわけです。一つ緊急に農民の納得するようないい結論を出して解決を急いでいただきたいと思います。そういうふうにお願いしておきたいと思います。  以上です。
  145. 亀田得治

    委員長亀田得治君) それでは、本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十六分散会