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国務大臣(
岸信介君) どういう形の侵略が行われるかということにつきましても、これは専門家の間であらゆる場合を想定して、それの可能性なりその危険性というものに対処するように、
防衛力というものを増強して参って、そしてこの国の
安全保障をしなきゃならぬことは言うを待たないところであります。そこで、今
お話になったように、局地的な侵略、その結果として局地的な戦争といいますか、事態が起るというものに対処する場合と、それから世界戦争みたいな全面的な
一つの戦争に対処する場合と、あるいはまたその全面的な戦争におきましても、
兵器についてあらゆる
兵器を用いてやる場合と、あるいはそういう場合においても一種の
兵器に制限があって、そういう全面戦争ではないというような場合も
考えられる。いろんな場合を想定して、これに対処しなきゃならぬことは言うを待ちませんけれ
ども、何といっても
日本の国力、また
日本の
防衛力の実情からいい、また国力、国情から申しまして、あらゆる侵略に対してもう万全である、一切の危険がないのだというふうな
防衛力を持つということは、これはとうてい不可能だろうと思う。そこで、われわれとしては、一番大事なことは、言うまでもなくこういうものについて、戦争なり侵略が行われないようにするという努力をしていかなきゃならない。だから
日本の
安全保革ということを
考えてみますると、ただ単に狹義の
防衛力といますか、
自衛隊というものを増強する、質的にも数的にも増強するだけでもって、この
日本が安全になるというものじゃなしに、あらゆる点における戦争の危険もしくは侵略の危険性というものをなくするように努力しなきゃならぬのは言うを待たない。それが外交であり、もしくはいろいろな機会におけるところの友好の状態を世界平和の理想に向って、
国連を
中心にして今後われわれが努力していかなければならぬ一番大きな道である。しかし、それにもかかわらず起る侵略というものに対して、一応のわれわれが安全感を持つというのが、私は
日本が持っておる一切の
防衛力の現状であり、また
日本の国情なり国力から申して、そういう程度にしか持てないと思うのです。従いまして、私はいかなる場合においても、
日本の
国民感情からいい、またわれわれの理想からいって、
核兵器でもってわれわれが装備するならば、非常に強くなるがどうだという
考えもありましょうけれ
ども、それはやらない。しかし、いろいろな点におけるところの科学的な
兵器についての研究もするし、進歩にもおくれないように努力はする。しかし、それはあくまでも今言ったような程度であって、従って、今おあげになりましたような全面戦争であるとか、あるいは非常な大きな
意味のたとえ制限戦争といってもこの全面的な戦争の場合においては、
国連を
中心として、あるいはこの
日米安全保障体制によるところの
日本の安全ということを
考えていかなければなりませんから、これらのものを見合わして、われわれはやっていくというのが現状であり、また、将来の
計画をわれわれが立てておる目標も、そういうところにあるわけでございます。