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政府委員(井本臺吉君)
公務執行中の作為、不作為に基く
犯罪であるかどうかということで、
日本側と
アメリカ側が
意見が違いまして、一年近くもかかったという事例は、自動車による業務上
過失傷害の
事件がございまして、われわれ
日本側といたしましては、従来
公務執行妨害などの法律解釈といたしまして、ごく狭い範囲で
公務執行中ということを考えていたのでありますが、アメリカにおきましては、自分の公舎から役所まで自動車で出勤して参りまするその途中の事故並びに役所から自分の官舎に帰ります帰途の事故、それらのものも
公務執行中と認めてもらいたいということを申して参り、
日本側ではさようなのは
公務執行中とは認められないということで、これが両方の争点となりまして論議して参ったのでございますが、しからば諸外国ではどういうふうに扱っておるかということで、外務省を通じまして世界各国の例をいろいろ集めました。そのために長時間かかったわけでございますが、結局さような官舎から役所に直接出勤して参る途中も
公務の執行中というのが大体の世界的な傾向でございます。そのほか
日本側におきましても、
公務災害などで
補償金を払うというような場合には、出勤の途上において災害を受けたというようなものは
公務補償金を受けております。さような
意味をいろいろ勘案いたしまして、これは
アメリカ側の方にある程度折れるのが
相当であろうという
結論になりまして、直接役所に出て参る途中の事故はこれは
公務執行中と認めよう。並びに直接役所から自宅へ帰る事故もこれと同じように認めよう。ただし役所から料亭べ寄って酒を飲んで帰ったとか、あるいは役所におきましても
公務が終って一ぱい飲んで酔っぱらって帰ったというようなときには、これには酒を飲んで娯楽、楽しみをしたということで、
公務はそこで切れるのだという解釈をとりまして、その点も
アメリカ側は了解をいたしたので、そこで
日本側、
アメリカ側は完全に
意見の一致をみまして、この問題の懸案になっていた
事件全部一掃したわけでございます。さようなことで、
相当長くかかりましたのでありますが、一般的にはさように長く問題がかかるとは考えておりません。この
本件の事案な
ども、事実がはっきり確定いたしますれば、法律問題といたしましてはそうむずかしい問題はないと私は考えるのでございます。たとえば一部の方々の
お話のように、
薬莢を取りに来た者をいたずら半分に撃ち殺したというようなことになりますれば、さようなものが
公務執行中のはずであると言えるはずのことはございません。ところが
アメリカ側が主張したというように伝えられておりますが、群衆を追い払うために空に向けて発砲したところが、間違ってそれが
過失でたまが当ってしまったというような認定がかりにありといたしますれば、さようなものは
相当公務性を持っておりますので、問題が少しく複雑になってくるというように考えるのでございます。それから問題の、との
公務の時間中であるかないかという問題は、昭和三十年の三月三日に最高裁判所で判例がありまして、これはMPが巡視中に人の家に入りまして強姦をした
事件でございますが、巡視中、時間中でございますので、さようなものも
公務中であるという問題が提起されたのでございますが、
日本側は強姦をするようなととが
公務であるはずはないということで、
公務の時間中ではございましたが、
公務ではないということで、その問題は
日本側で外人
裁判権を行使いたしまして、結局最高裁判所で、昭和三十年三月三日に判例が出まして、はっきり
公務ではないという判決がおりまして、この問題につきましては
アメリカ側もその判決を容認しております。さようなことで、この問題も事実の確定をいたしますれば、そうむずかしい問題ではないので、短期間に
結論が出るというように予想をしております。