○
委員外議員(永岡光治君) ただいま議題となりました
郵政事業職員等共済組合法案について、
提案理由を御説明申し上げます。郵政事業のごとき、現業的労務を主体とする企業体におきましては、
日本国有鉄道、
日本電信電話公社等の場合と同じく、その職員の職務内容は、一般公務員のそれとは趣きを異にし、自然他に転職もできませんし、老後の生活安定いかんが職員の
勤務意欲に与える影響はきわめて大きく、従って、長年勤続者に退職後の生活を保障できるような年金
制度の確立は、企業能率向上のためにきわめて必要なことでありまして
日本国有鉄道、
日本電信電話公社、
日本専売公社の職員につきましては、昨年より公共企業体職員等共済組合法が適用せられることとなりまして、恩給
制度の適用を受けている者と、共済組合の年金
制度の適用を受ける者とが一本に統合され、これらの間にありました不合理、不均衡は逐次是正せられていくこととなりましたことは、すでに御
承知の
通りであります。郵政事業におきましても、これら国鉄、電電公社ときわめて類似する、あるいは密接不可分な現業的労務を主体とした事業体でありますことは、元来この三事業、あるいは二事業が、かつて運輸
通信省、あるいは逓信省という同一行政機構のうちにあったことがあり、電電公社とは
昭和二十四年まで一箱であった沿革に徴しても明らかであります。しかも、電電公社分離以降現在におきましても、その末端機関とは同一局舎を使用しているものが多く、かつ同公社から委託された業務に従事している多数の職員は、公社職員と全く同一職務内容の
勤務に販している
現状でありまして、今後ともこのような実体は持続されることになるのであります。
しかしながら、現在の郵政事業における職員の年金
制度は、約十二万名の任官者は恩給法、その他の約十四万名は共済組合法と二本建になっておりまして、そこには次に御説明申し上げますような他の官庁には例を見ない多くの不合理、不均衡が山積し、事業運営上からも労務管理上からも早急な解決を迫られている
実情にあります。すなわち現行両
制度を比較しますと、その給付内容はほぼ同
程度であるにもかかわらず、恩給法納金は共済組合の長期給付掛金に比べ著しく低いので、実質的に給与上の差別待遇となっており、特に郵政事業におきましては、その職員二十六万名の約半数を占める特定郵便局職員の場合は、任用
制度上、
昭和十八年以前は全く任官という道がなく、従って恩給法の適用を受けることができなかったため、現在任官している職員であつてもそれ以前の不利益、不均衡は依然未解決のまま残されており、これが解決の要望は久しく叫ばれてきたのでありますが、現行
制度のもとでは是正救済の道がなく、これに基因する不平不満はますます深刻化し、勤労意欲にも重大な影響を与えている
現状であります。さらに現行
制度上、恩給法上の公務員となるためには、御
承知の
通り任官ということを前提
条件とされておりますが、郵政事業におきましては、他の一般行政官庁と異なり任官が非常におそく、採用後平均十数年もたたないと任官できない実体にあります。これは実質的な給与上の不利益というだけにとどまらず、これがため長年忠実に
勤務した者が退職に際し、共済組合法または恩給法のいずれからも、年金受給
資格を取得できない多数の職員を生ぜしめるという致命的な欠陥を招来している
現状であります。その他全国一万六千にわたる現業局
従事員、特に外勤
従事員等につきましても、現行
制度ではとうてい救済し得ない不合理が多々ありまして、事業運営上重大な支障となっておりますことは、人員の少い一般行政官庁におけるそれとは根本的に異なるものがあるのであります。
以上御説明申し上げましたように、現行
制度をこのまま郵政事業職員に適用しておくことは、いかなる観点から見ましてもまことに不適当であることは明瞭でありまして、これらの矛盾と不合理を解決する道は、任官という制約を受けない合理的な一元的年金
制度を確立する以外になく、これが早急な実現は全職員の多年の熱望とも合致いたしますし、ひいては、職員の勤労意欲を増進し、郵政事業の円滑な運営に資するきわめて適切な施策であると信ずるものであります。以上のような観点に立ちましてこの際、国鉄、電電等三公社職員が現に適用となっております公共企業体職員等共済組合法に準じた内容をもって、ここに
郵政事業職員等共済組合法案を提出した次第であります。
以下この
法律案の内容の大略について御説明申し上げます。
第一に、
郵政省には国家公務員共済組合法に基く共済組合があるのでありますが、本法案においてはこれとは別に、郵政事業特別会計においてその俸給を支弁する職員等を対象として、別個の共済組合を設け、長期給付、短期給付及びその他の福祉事業を行おうというのであります。
第二に、恩給と共済組合の長期給付とを統一して、一本化した退職年金
制度を全職員に適用することといたしておりますが、各年金及び一時金について簡単に述べますと、まず退職年金は、二十年以上組合員であった者が退職したときに支給することとし、その年額は俸給年額の百分の四十を基礎として、二十年をこえる年数により一定の金額を加算することといたしましたが、その支給開始
年令は五十五才を原則といたしております。
また組合員期間二十年以上の者が五十五才前に年金の支給を希望する場合には、退職年金のかわりに減額退職年金を支給できることとしましたが、その年額は、退職年金の年額から五十五才と実際の支給開始
年令との差年数に応じた一定額を減じたものとすることといたしております。
次に、遺族年金は、退職年金受給
資格者の遺族に支給することとし、その年額は退職年金の半額といたしました。なお、それを受ける遺族の範囲は、国家公務員共済組合法による遺族と大体同様といたしました。
次に、一時金については、国家公務員共済組合法によるそれとほぼ同様でありますが、退職年金の充実を重視した
関係上、早期退職者に支給されるものは掛金の払い戻し
程度に押えることといたしました。
次に、廃疾年金については、給付事由はほぼ国家公務員共済組合法のそれと同様でありますが、その年額を不具廃疾の
程度に応じて俸給年額の百分の六十、百分の四十五及び百分の三十五の三
段階とした点が異なっております。
第三に、短期給付については、国家公務員共済組合法のそれと全く同様であります。
第四に、長期給付に要する費用は、組合員の在職中の掛金とこれに見合う郵政事業特別会計の負担金とを基金として積み立て積立金とその
運用益によってまかなうことといたしておりますが、掛金と負担金との割合は、国家公務員共済組合法の負担割合と同じく、四十五対五十五といたしております。この結果掛金率は約四三%負担金率は五・二%となります。
なお、以上の掛金率は、国家公務員共済組合法とはほぼ同
程度でありますが、恩給法の二%に比べますと二倍以上となっております。
しかしながら新
制度におきましては、恩給法及び国家公務員共済組合法の適用を受けた期間を、新
制度の組合員期間に通算することにいたしておりますが、従来の恩給
制度は基金
制度によっていないので、積立金は全く存在せず、また、共済年金
制度においてもたび重なる年金改訂及び給与改訂のために、現実に積み立てられている金額は、本来必要であるべき積立金に比べまして巨額の不足を生じている
状態であります。この不足額は新
制度のもとにおいても、そのまま引き継がなければならないのでありますが、これら不足額は、従来の
制度においては国家が負担することになっておりますので、新
制度においても従来
通り郵政事業特別会計が負担することといたしました。しかして、その支払の
方法については、将来にわたる郵政事業特別会計の財政経営
状態を勘案しつつ、漸次補てんしていくことといたしております。なお、この金額は、年金受給者の増加に伴い、逐年増加することになりますが、新組合に引き継がれた過去の組合員は、一定年数の後には次第に減少いたしますので、将来においては、法施行後新たに加入した組合員のみが残ることとなり、従って郵政事業特別会計の負担額は恩給
制度が引き続き適用されておる場合に比べれば、相当軽減されることとなるのであります。
次に、短期給付の掛金と負担金との割合は、国家公務員共済組合法と同様五十対五十といたしており、その率はいずれも約三%となっております。
以上本案の主要点について御説明申し上げましたが、新
制度実施前の権利義務
関係の取扱い方をきめるいわゆる経過
措置について、きわめて詳細な
規定をいたしておりますが、最後に、この
法律施行の日に在職する郵政事業職員及び国家公務員とが相互に交流できるように、この
法律による給付と恩給または国家公務員共済組合法による長期給付との調整を講ずることといたしております。
以上、
郵政事業職員等共済組合法案の
提案理由及びその内容の概略を御説明申し上げた次第でありますが、何とぞ十分御審議の上、すみやかに御可決下さいますよう御願いいたします。