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参考人(
永田清君) 前回に、
放送協会としても事態の進展に応じていろいろと考えていくところがあろうが、それらをできるだけ整理して秩序正しくやっていかないと、あれもやろう、これもやろうといっても、なかなかそうもいかないだろうから、計画的な推進を望むという山田
委員からの御
意見がございまして、私も、実はその
通りに考えておったのでございます。しかし、お説の
通り、最近の
放送事業の社会的意義なり、あるいは国際的な意義、
技術的な発展、そういったことが
各国とも急速調でございまして、これはよほど努力をしていかなければ、この
責任はなかなか果せないというふうに考えまして、内部機構といたしましては、従来の審議室を強化
拡充しまして、長期計画を着々と立てていくという
方針をとったわけであります。長期計画というのは、結局将来の
方向を十分勘案しまして、計画的に進む、計画的に進むということは、何も問題を先に流すという
意味ではなくて、着々仕事をするためには、そういう計画性が必要だ、こういう前提のもとに立っておる次第でございます。そこで、御承知のように、また今
お話がございましたように、ことしで三十三年の年を迎えた
NHKといたしましては、それはそれなりに歴史的な
任務を果して参ったと思うのでございますが、やはり目立ちますのは機械の老朽化という点でございます。これは
電波技術そのものが非常に急速に最近進歩しているという客観的
状況と相まって、この
設備更新というものを急がねばならない、これはなかなか金もかかりますし、同時に国産化だけでは間に合わないというものもございまするので、しかし、さればといってどんどんどんどん外国品を輸入するということは、やはり
日本の経済全体にいろいろと影響いたしますので、できるだけ国産化を、長年の
技術研究所を通じてメーカーに指導を与えつつ、どうしてもやむを得ない場合は、特にそれから
法律的に
規定されている特許その他の、ある場合にはむろんそれに従わざるを得ないわけでありますけれ
ども、その国産化の速度、しかし、またそれを待っておれないという場合にはどうするかという
方針で機械の更新を進めておる次第でございます。
次に、
編成内容につきましては、やはりこの前にもここで
お話がございましたように、
公共放送という
意味の
任務を果すことが中心でございますので、できるだけ教育、教養の
内容を深めたい、そういう
意味で
編成番組の時間的な割合や、進んでその
内容について、十分
公共放送のあるべき姿を打ち出して参りたい。これは実際問題といたしますとなかなかむずかしい問題を含んでおりまして、何しろ
ラジオについては、千八百三十万世帯の
人たちがこれを聞いており、これは一人というのではなく、やはり何人かが聞いておりますので、おそらく六千万の
人たちが聞いておる、こういう前提のもとに
編成を行うわけでございますが、まあ大別しまして、
公共放送の
任務といたしますところは、これもおっしゃる
通りに、健全娯楽と正確な報道とそして教育、教養、こういう三つの支柱に支えられておるわけで、その
任務を、どういうふうにバランスをとって仕事をしていくか、
任務を果していくか、こういうことになる次第でございます。また、実際に娯楽と申しましても、これを聞く人の立場に立って考えますと、千差万様でございまして、生活構造体が違う、生活環境が違う、経済の地盤が違うと、こういうことになって参り、その全部にどう応ずるかということ、個人々々の
意見を全部聞いたんでは
放送時間の
編成の中にとても入りきれないということにもなりますし、また非常に複雑化しますので、これは
一つよく御
意見を聞いてその
方針を貫きたい。早い話が、たとえば農村に向ってベートーヴェンやショパンを送っても、それは必ずしもその
任務を果し得ないじゃないか、やはり一日の勤労を終って、そして明日の労働の再生産への時間というものは、やはりそれにふさわしい
編成番組があってしかるべきではないか、あるいはまた都会の文化的な生活環境にある人にとっては、またそれなりに
編成を行わねばならないというようなことに相なる次第でございます。ただ、BBCの第三
放送が国の名誉として、その
効果も歴史的に非常に大きいというふうに判断されますので、特別教養番組を
編成いたしまして、これは初めは
聴取者が非常に少いじゃないかという覚悟のもとに進んだのでありますが、しかし、これが二年、三年たてば必ずその目的を達するだろうという所信のもとに出発いたしましたが、これは幸いにしましてBBCでは
聴取率が一%以下でございますが、
NHKの場合には六%乃至八%という
聴取率を示しております。
聴取率が
日本の場合六%乃至八%と申しますと、大体二百万の
人たちが聞いておるだろうという推定ができるわけでございます。これではあるいはシェークスピアものとか、あるいは高度の
音楽番組であるとか、あるいは学術
講演会とか、あるいはまた
日本古来の伝統的な芸術を理解してもらうと、こういったことに進んでおる次第でございます。それから総合しまして総括的に、
編成についてはできるだけ教育、教養の
方向に進んで参りたいというふうに
編成変えをいたしました。しかし、やはり大衆の上に
NHKは立っておりますので、その大衆の生活意識、考え方というものをよくつかんで、その上に準拠してやりませんと、ただ理想に走り過ぎたんでは、やはり
NHK本来の仕事ではないと、これはまあ強く理想を求めて五年、十年後の
効果を現わすという方法もいろいろありましょうけれ
ども、現実に大衆の
料金の上に立っておる
NHKとしては、大衆の
希望に沿いながら、しかも大衆
一般が何か心に美しい結晶体がどこかへ残っているというような望みをしんぼう強く持ちまして、仕事を続けて参りたいと思っております。
さらに、内部の組織でございますが、これも長い伝統を持っておりまして、いろいろと組織化ができておりますけれ
ども、何しろ最近のように激しい動きを示しますときには、やはり内部も十分合理化して機敏に活動できるように、そしてまたむだなものはどんな小さいものでもこれを省いていくという形に進めて参りたいというわけで、全体の組織も簡素化に進んでいくわけでありますが、しかしこれもやはりいろいろな
意味で機械力を利用できるように機械を使い、そして人間の労働はその上にプラスされていく、人間のまた知能的な作業も機械を使いこなして、その上になお
効果を現わすように仕事をしていく、こういう
方針でおりまして、決して機械化によって作業人員が減るということは、これは事実起りませんし、不可能だと思います。また、仕事そのものが機械工業と違いまして、人間の知能的労働でやっておりますので、そういう
意味では、
一つの発揮ができるようなことに進んで参りたいし、また実際に仕事がどんどんこれから
拡大化しますので、それに応じて合理的な仕事ができるような組織態勢をもって参りたい、かように考えております。
さらに、同じ
編成につきましても、仕事につきましても、
事情がだんだん
ラジオから
テレビヘというように発展して参りまして、
テレビ受像数も、三月末で大体四十万台になりましょうが、これも
日本のように非常に山の多い所では、聴視
状況が地方によって必ずしも明確でない場合がございますので、それを急速に整備して参りたい。そういう
意味で、できるだけ
国民に対して機会は均等に与えねばならないという、所信のもとに、全国ネットワークを一日も早く完成して参りたい、かように考えておる次第でありますが、まだこまかいことはたくさんございまして、実際これもやりたい、あれもやりたいという
状況でございますけれ
ども、それを十分秩序正しく、ある場合にはしんぼう強く推進していくほか仕方がないし、また実際いい仕事をやろうと思えば、これはやはり素手ではできませんので、どうしても経理的裏づけがなければならない、経理的裏づけは、また一方大衆的
負担にもなりますので、それをどういうふうに満たしていくかということについても考慮して進まねばならないと思っております。しかし、概括してやはり経理的な
意味で、いろいろと仕事が制約されて参りますので、内部的にはできるだけの節約、合理化をはかって、それを
国民にサービスで尽して参りたい。しかしそれでもなおできなかった場合には、
一つ皆さん方にも御相談いたしまして、一体このままでいいのか、それともいい仕事をしようというならば、それは
国民にすべて返っていくし、また世の中の進展に資することだから、これはこうすべきでなかろうかという御
意見もございましょうから、それも拝聴した上で、積極的に推進していくように努力いたしたいと思っておる次第でございます。