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政府委員(加藤精三君) ただいまの御質問は、私たち、
地方行政に長年経歴を持っているものにとっても、多年疑問としておったところでございまして、非常に大きな問題に関連していると思っておるのでございまして、とうてい御満足のいくようなお答えを申し上げることはできないだろうということを
前提にいたしまして、それでも、私たちとにかく勉強して考えておりますることの輪廓を申し上げたいと思っております。と申しますのは、
地方自治体というものは、とにかくこれは、住民に対してあらゆる可能な、あらゆる望ましきサービスをしなければならぬというのが私は本来の姿だと思うのでございまして、それで、そのサービスをどの
程度にするかということは、住民のこれは自主的な決定を主にすべき
部分が相当多かろうと思いますが、国の
行政の委任事務的な面がまた
一つございまして、その部面におきましては、全国的な、ある
程度の同一性を保つことが、この個人、
地方というものが
国家として結合する
一つの最小限度の必要であろうと考えております。それで、そういう面からいたしまして、しからば具体的にはどういうふうな形になって現われるか、また、
政府の措置としては、それがどういうふうに具体化してくるかという問題でございますが、これは、私の考えを率直に申しますれば、
地方財政と一口に申しましても、その間には、数千の
地方団体が生活しているのでございまして、その間の大きな総和というものが
地方財政というものになっておりますので、その内部には、非常な多様性があるということが考えられるのでございまして、その多様性のままに、それならどんな水準におっつくかと申しますれば、そこには、各
地方団体ごとの住民の住民意思が世論になって、各自治体の議会を動かして、最終決定するという形になるという一応の理論だろうと思います。そうでございますると、
地方財政計画というもののこの政治的な、社会的な意義というものも、現在ある状態を大体容認しまして、それにある
程度将来の理想を織り込むということで、非常な飛躍は考えられない、徐々に改善していくという形になってくるのじゃないかと思いますが、単に、貧乏人は麦を食え式の縮小均衡の理論で行くときには、弱小
団体はますますひどくなる、また、
地方財政全体が非常な力のないものになって、住民の生活や生産の上に役に立たないものになるということになると思いますし今回、たとえば、道路費の測定単位に道路の面積だけをとらずに、延長をとったという
一つの改善ですら、これはもう、非常な大きな改善になってくるのだろうと思うのでございまして、そこには、従来の現在的現在の
考え方の上に、今度は、未来的な現在の
考え方が生れてくるというような
一つの発展があると思うのでございます。それで、私たちは、具体的な姿で、それならば、どの
程度の水準に抑えられるかということになりますと、あるいは
再建計画の
指導なり、あるいは起債のときの一坪
当りの建築費とか、あるいは一坪
当りの埋立費とか、そうした具体的な尺度がとられまして、それが積み上げられ、また、それが
一つの
基準になりまして、知らず知らずの間に、各
地方団体の
予算編成をしますときにそれに近づく、もっと社会学的に言えば、同一県内の市町村は、その同一県内の市町村の
財政規模、施設の水準等に比準して、そうして
予算を組んでいくというような形のものになるだろうということを考えているのでございます。
で、鈴木先生のような点につきましては私たちも非常な
現状に対する矛盾を感じております。たとえば私が
地方団体として最も貧弱なる
財政力しか有してない東北の県の
実情を体験しているのでございまして、たとえば保健所のごときは、五人の医者の
定員の保健所でございましても、
現実にはお医者さんは一人しないない。また結核予防法の
予算の不足から、また国民健康保険の経済の逼迫から、入院の承認ということがなかなか手数がかかるように仕組んであったり、またあまり適時に適正に承認を与えない、少し承認を与え渋るというような
関係から、結核療養所や公立結核病棟等の入院患者が非常に減ってるというような、悲惨な
状況を呈している
事情もあったのでございます、で、これも保健所において医師を招聘するについては、現在の医師は開業資金をなるべく早く準備したい、あるいはなるべく早く学位を取りたいというような別の目的も相当ございまして、そしてまた自己の一身の都合を顧みず
地方の予防衛生、治療衛生に貢献したいという気持の人ばかりじゃないのでございまして、税引きで六、七万円の月給がなければなかなか
地方に来てくれないというような場合におきましては、この保健所という制度で予想されておりまするところの
一つのサービスの
基準が、
実情は非常に低く見積られてるんじゃないか。これを国庫補助
事業の場合についていえば、補助基本額という概念で考えられているのでございますが、往々にして
政府が考えております補助基本額なるものが、
実情に合わないというようなことが非常に多くありまして、また補助基本額そのものは
実情に合った場合におきましても、その
事業の実施に関連して起る
経費について国がなお
財政措置を要する場合があります。たとえば学校を作りましても、その建築そのものには補助、起債がありまして、それが
財政的な措置を施されておりますけれども、敷地の買収費とか整地費とか、通学道路の費用とか、あるいは水道を引く費用とか、こういうようなものについては十分措置されていないし、また
地方財政の
ワク外に相当な
基準外の必要
経費の
財源を持っている
団体におきましては、それが何らかできますけれども、そうでない
団体におきましてはそれがきわめて困難であるというようなところが、
現状におきまして非常に
行政水準が不十分だという点だろうと私たち考えているのでございます。で、たとえば今回はそれらの点にかんがみ、保健所法の改正によりまして、ある
程度国庫の補助率を増すことを希望されたのでごごいますが、国の
財政で十分にいかなかったのであります。また医師の充足率の向上につきましては、かねての軍医養成とか、あるいは師範学校の給費とかというような制度を新しく考え出しまして、今度立法になっていることは御承知の
通りでありますが、そうしたようなわけで
地方財政だけでも
地方財政の問題は解決できないと、国の施策の面で相当な施設をやって、そして
地方財政の負担を軽くする。国が相当の保健所勤務の医師の養成費を出しておれば、それに関連して何年間か
地方の保健所に勤めなければならぬという場合には、さき申しました税引き六万か七万円の月給を取らなくても保健所に勤務してくれて、それによって
行政水準が適正に確保されるという面もあるのでございまして、学校建築そのものには敷地の獲得の
経費、整地費等はありませんけれども、警察法の改正におきましては警察署の敷地の購入費、整地費等に国が助成する、起債を考えるというふうな面も加味されたというようなことでございまして、この
地方財政の水準を上げるためには、単に
自治庁のみならず各省がその気になってこれに協力してくれるということによって水準を確保し、また向上させていくものだろうと、そういうふうに考えております。