○
政府委員(
奧野誠亮君)
地方税法の一部を
改正する
法律案要綱にかなり詳しく書いてありますので、これに従いまして
補足説明をさせていただきたいと思います。
第一は
住民税に関する事項でございます。今回
所得税が大幅に減税されますので、減税後の
所得税額を
課税標準として課します三十三年度以降の
住民税におきましては、
所得割の税率を据え置きますと、
住民税におきましても自動的に大幅な減税が行われるということになるわけであります。しかし、
地方財政の状況は積極的に減税をすることを許しませんので、どうやってこの
補てんをするかということが
臨時税制調査会や
地方制度調査会におきましてもいろいろ議論になったわけであります。しかし
地方税の中で
住民税の
所得割が基本的な性格を持っている税でありますので、そのウエートを著しく少くするということは、
地方自治運営の円滑を期する上においても好ましくございませんので、やはり
税率調整によって
補てんをする道を選ぶべきだということになっておったわけであります。その場合でもどの程度まで
税率調整によって
補てんをするか、これが非常に議論のあったところでありまして、
臨時税制調査会におきましては、
年所得五百万円ないし一千万円ぐらいから下のところはみんな税率を調整しても従前の制度による負担をこえることがないようにしなければならない、こういうような
考え方が一般的にとられておったわけであります。そこで大体減収を計算しますのに、かりに二七・五%に調整をした場合にはどの程度の減収になるだろうかというふうなことが答申の中に出ておるわけであります。要するに二七・八%までは
税率調整やむを得ないだろう、従いましてその
考え方に即して今回平年度で二八%に調整をしたい、二八%に調整します結果は、平年度におきまして
住民税においても百十六億円減税をする結果になるわけでありまして、
年所得千三百万円以下の人であれば
住民税も減税される、こういうことになるのであります。ただ、
所得税の減税の仕方が、今三十二年度は
初年度でありまして、三十三年度以降の
住民税の減税の程度の四分の三ぐらいを減税する、こういう仕組みになっておるわけであります。従いまして三十二年の
所得税額を基礎とします三十三年の
住民税所得割、
所得税の減税は、平
年度減税の四分の三程度でありますから、率を調整します場合にも若干低目にしてよろしい、そういうところから三十三年の
住民税の
所得割の税率は
道府県市町村を合せまして二六%にとどめるということにいたしたわけであります。税率を二六%、二八%に調整をするのでありますが、調整をしましても、なおかつ
住民税自体においても減税になっているんだということは、お手元に
地方税及び
地方譲与税収入
見込説明の
改正関係とした印刷物をお配りしておるわけでありまして、その中に詳細にお書きいたしております。四十数ページのものでありますが、一例を
給与所得者で夫婦及び子三人という標準的なところで見ていきますと、二十五ページから二十六ページのところにそれが出ておりますが、たとえば
年所得五十万円のところで見ていきますと、
住民税の現行が一万一千十七円になっております。
改正案では
初年度が八千八十二円、平年度は七千二百四円、こういうように下ってくるわけでありまして、所得五十万円のところでありますと、
初年度で
軽減額が二千九百三十五円、平年度が三千八百十三円と、それぞれ軽減になるわけであります。各
所得段階ごとに、また
家族構成の
種類ごとにこまかく計数をそれぞれ出しておりますので、御了承願っておきたいと思います。
二ページの二行目へ参りまして「この場合において
道府県民税所得割の額及び
市町村民税所得割の額に
当該所得割の
課税標準となる
所得税額を加えた額が課税総
所得金額の百分の八十に相当する額をこえることとなるときは、
道府県民税所得割の額と
市町村民税所得割の額が、
当該課税総
所得金額の百分の八十の額に相当する額から
所得税額を控除した額に相当する額となるようにそれぞれの額をあん分減額するものとすること。」ということを加えようとしております。要するに
所得税と
道府県民税と
市町村税、この三者の
合計額が課税総
所得金額の八割をこえるようなことになる場合には八割にとめて置く。二割だけは国民のふところにそのまま残して置く。こういう性質の
改正であります。このような
改正をする必要が生じて参りましたのは、
所得税の
累進税率の限界、現行じゃ六五%でありますが、
改正案では七〇%に
引き上げられております。また
住民税の
所得割が現行は
道府県、
市町村合せまして二一%でありますが、これを二八%に
引き上げられようとしております。そうしますと、限界の税率を調べますと、現在は
所得税の最高が六五%であります。これに現在の
住民税の
所得割の二一%を乗じますと、一三・六五%になります。言いかえれば課税総
所得金額の一三・六五%になるわけであります。この一三・六五%と
限界税率の六五%を加えますと、七八・六五%になります。言いかえれば、最高のところで七八・六五%
どまりであります。八割
弱どまりであります。これが
改正案によりますと、
所得税の
限界税率が七〇%に
引き上げられます。これに今度調整される
住民税の
所得割の二八%の率を乗じますと、一九・六%と、いうことになります。この課税総
所得金額に対しまする一九・六%と、
所得税の
限界税率の七〇%を加えますと八九・六%になるわけであります。
高額所得者でございますると、九割まで税金で持っていってしまう、こういうことになるわけであります。
住民税の性格から考えましても、八〇をこえて課税をしていくということは適当とも思われませんので、現在の最高の七八・六五%をめどにおきまして、八〇%で押える、八〇%をこえる部分は両
住民税を按分減額する、こういう制度を設けようとしておるわけであります。
(2)は「
市町村民税所得割を課税総
所得金額又は課税総
所得金額から
所得税額を控除した金額を
課税標準として課する場合における税率は、次表上欄に定める金額の区分及び当該区分ごとの金額に応じて順次適用されるべき同表下欄に定める率に準じて、当該
市町村の条例で定めるものとすること。」とあり、第二課税方式、第三課税方式は、それぞれの
市町村の実態に応じ、所得段階の区分の仕方をし、それにまた見合った税率のきめ方ができるというところに大きな特色があると思うのであります。この特色を抹殺することは、私たちとしても適当でないと考えているわけであります。しかしながら、現状があまりにも不均衡がはなはだしいわけでありますから、準則を
法律的にきめておきたい。こういう程度の
考え方でありまして、従いましてこの要綱をごらんいただきますと、次に掲げるような区分や率に準じて
市町村の条例できめるのだということを書いておるわけであります。これを標準としろ、あるいはこの通りやれ、こういうきつい言い方をしておるわけではありませんで、これに準じておやりなさい、またこれに準じてやるということになって、
法律の上で明文化されますと、今までのように第一方式の
市町村の負担と比べて、同じ所得でありながら三倍、四倍の税率をきめていくと、おそらく
市町村議会としてもとうていそういう案は承認できないと思うのでありまして、そういうところから、間接的にこういうような制度のもので調整していきたい。とういう
考え方を持っておるわけであります。この通りやらなければならないと考えておるわけでもございませんし、またこの
課税標準の段階ごとに制限税率を定める例もないわけであります。大体のっとるべき
基準だけを
法律に書いていきたい、しかしこう書くことが間接的にはこれに近いところへ
改正されていくだろう、その結果現在のような極端の不均衡は緩和されていくのではなかろうか、こういう期待を持っておるものであります。第二課税方式、第三課税方式のものでは、どちらかといいますと、少額所得者の多い地帯でございます。そういう意味においては下の段階でもう少し
課税標準をこまかく刻んだ方がよいのではないかと、こういう
考え方もあるわけでありますが、刻んだ場合にどういう率を用いるかということについてもいろいろ問題がございます。一応
所得税において刻まれております所得段階、それに右にならえして実は刻んだわけであります。第三課税方式においてそういうことはありませんので、率の方から逆算をいたしまして
課税標準の段階を刻んだという方が適当だろうというふうに思います。しかしこういう率をきめる結果、だんだんこれに近寄ってくるだろう、その結果は、現在こういう方式による大幅な増収を得ておる団体の増収が減ってくるのではなかろうか、その額が四十九億円くらいになるのじゃないだろうかというふうに見込んでおるわけであります。地方交付税を計算します場合は、第一方式で全部計算しております。その結果、第二方式で増収を得ておる団体は、一種の含みの財源を持っておるわけであります。その含みの財源を取り上げてしまうということになってしまうということになっていくわけでありますので、激変緩和の措置は講じていきたい、要するにこういう団体で、収入が減退していくような団体には、経過的に特別交付税を交付するような措置をとりたいというふうに考えております。
(3)は、「前項の
課税標準の全額の段階区分及び率は、昭和三十二年度及び昭和三十三年度においては、それぞれ次表のとおりとすること。」この率をごらんいただきますとわかりますように、三十二年度よりも三十三年度の方が率が下っております。平年度の方がさらに率が下っております。そのことによりまして、第一方式の場合には率が二一%から二六%、二六%から二八%と率が上ってくるのに、実質的には減税になっておるのだという趣旨をおわかりいただけるだろうと思うのであります。これもそれぞれ
所得税法によります所得の段階区分、これに右にならえして第二方式の方は刻んでおるわけであります。
それから六ページに参りまして、「(4)前二項によって
所得割を課する場合においては、現行のとおり、当該
市町村の税率によって算定した
所得割の額が、
課税標準額の、それぞれ第二課税方式にあっては百分の七・五、第三課税方式にあっては百分の十五の額に相当する額をこえることとなるときは、それぞれこれに相当する額とすること。」現在でも第二方式の場合には七・五%を最高の負担にする、それ以下であれば
市町村は幅広く自由に課税をしてよいのだ、こうきめられておるわけであります。言いかえれば、
市町村に七・五%分だけ留保されておる、こういう形になっておるわけでありまして、府県分の二・五%と合せまして一〇%だけは
市町村に取っておく、こういう
考え方になっておったわけであります、それはやはりそのまま踏襲して参りたいと思っております。第三課税方式の場合には
課税標準額の一五%の額の範囲内で適宜にきめていくということでございます。「(5)総
所得金額から基礎控除のみを控除した金額又は当該金額から
所得税額を控除した金額を
課税標準として
市町村民税所得割を課する場合においては、
市町村の条例の定めるところによって扶養親族の数に応ずる税額控除を行うものとすること。」先ほどもちょっと申し上げましたように、第二課税方式や第三課税方式は、
市町村住民の所得状況等の実態に即した課税ができるのだというところに妙味があるわけでございます。国としては、政策的に資本の蓄積を助長する、そういう意味においては、株式配当の所得がある場合には、二〇%ないし三〇%の税額控除を施行しまして、
市町村で隣近所
住民税の負担と見合って、そういう考慮から、片方の資産所得者の負担がかかるのだということがあっても、なかなか納得できないわけでありまして、そういう場合にはそれによらないで、あった通りの所得で
住民税の負担をきめていくのだ、こういう措置をとらせようとするわけでありまして、社会保険の控除にしてもしかりであります。あるいはまた、扶養親族控除の問題にしましても、地域によりまして、あるいは住民の生業によりまして、金額には、もし最低生活を保障するという
考え方がとられているとしますならば、金額に差違あってもしかるべきだと思うのでありますが、国税では、その差を設けることは実際問題として不可能だと思うのであります。
住民税なら、そういうことができるのじゃないかと思います。こういうことが第二課税方式でも、第二課税方式の中でただし書方式をまた許されているわけであります。ただし書方式によります場合には、総
所得金額から基礎控除だけをしたものをもって課税総
所得金額にいたすわけでありますので、結果的には、扶養親族の多い家庭が生活費がかさむのに、税負担の面においては軽減されない、こういううらみがあるわけであります。今回不均衡緩和をはかろうとする際でありますので、扶養親族の数に応ずる税額控除だけは法定をしたい、こういう
考え方をただし書方式の場合にはとろうとしているわけであります。しかしながら、税額控除の額そのものは、やはり
市町村の実態に応じて
市町村がきめたらいいんじゃないだろうか、こういう
考え方を持っておるわけであります。
「(6)給与支払報告書が提出期限までに提出されなかったことその他特別の事情がある場合においては、
市町村長は五月三十一日後においても特別徴収税額を通知することができるものとし、その通知のあった場合においては、特別徴収義務者はその通知のあった日の属する月の翌月から翌年の三月まで毎月当該特別徴収税額の月割額を徴収して
市町村に納入しなければならないものとすること」。会社などの給与支払者に、源泉で
住民税を徴収してもらいます場合には、五月三十一日までに特別徴収税額を通知しなければならないことになっております。しかしながら、給与支払報告書等がおくれますと、自然通知がおくれるということになるわけでありまして、現在の
法律の書き方を見ていきますと、もし五月三十一日をおくれてしまうと、源泉徴収ができなくなるのじゃないだろうかというふうに読まれるおそれもありますので、そういう特殊な事情があった場合には、五月三十一日後においても特別徴収税額の通知ができる。そのかわり、その場合には、通知の日の翌月からやはり月割りで徴収してもらうのだ。一ぺんに、通知がおくれたからということで、たくさん徴収されたのじゃ納税義務者が困るわけでありますので、やはり月割りで徴収をするのだ、こういうことにいたしておきたいと考えているのであります。
第二が事業税に関する事項であります。その(1)が、「中小企業法人の事業税負担を軽減するため、所得を
課税標準とする事業を行う一般法人についてその標準税率を次のように引き下げること。」、所得のうち、年五十万円以下の金額が百分の八、所得のうち年五十万円をこえ、年百万円以下の金額が百分の十、要するに、年百万円以下の部分につきましては、全部現行よりも二%ずつ引き下げるということになっておるわけであります。所得のうち年百万円をこえる金額及び清算所得の金額は現行制度のままであります。
年所得が百万円をこえるような法人といいますと、利益法人のうちでは二割ぐらいしかございません。八割は
年所得が百万円以下でございます。従いまして、実質的には、全部の法人が二%税率が軽減されるという結果になるというふうに考えております。
その(2)は「個人商工業者の事業税負担の軽減を図り、あわせて業種間の事業税負担の不均衡を是正するため、第一種事業を行う者の課税所得のうち年五十万円(基礎控除前の所得年六十二万円)以下の金額については、その標準税率を百分の六に引き下げる」ということであります。やはり
年所得六十二万円をこえるような事業者というものは非常に少いのでありまして、全事業税の納税義務者のうちの三%に足りない、こう考えておるわけであります。やはり九七%をこえる人たちが二%ずつ税率が引き下げられたと同じ効果を持つ
改正になるわけであります。同時にまた、戦前商工業者に対しましては営業税が課されておりました。営業税の標準的な税率は、都市計画税割を合せまして七・四%程度であったわけであります。当時は、基礎控除制度がございません。現在は、基礎控除をいたしまして、六十二万円以下が六%であります。それをこえる部分が八%でありますので、両者を比較いたしますと、三百三十万円ぐらいの
年所得以下の人でありますと、戦前よりもみんな負担が下っております。三百三十万円前後から上が若干負担が上る、ごくわずかでありますが、そういう
改正の結果になるわけであります。商工業者に対しまする事業税負担——戦前でありますと営業税負担でありますが、これを比較いたしますと、今度の
改正によりまして、戦前よりも全体的にかなり軽減されてくるのだということを御了承願いたいのであります。
その(3)は、「バス事業との間における負担の均衡を図るため、地方鉄道事業及び軌道事業の
課税標準を所得に改める」ことであります。地方鉄道事業を行なっておりまするものは、百四十六社ございますが、この
改正によりまして、非常に収益状況のいい会社は、むしろ負担がふえることになるわけであります。そういう会社は十九社しかございません。従いまして、大部分の会社にとりましては、これが減税措置になって参るわけであります。もともとこの
改正は、バス事業との間におきまする負担の均衡をはかろうとする趣旨に出ておるものでありますが、結果的にはそういうことになるわけであります。
(4)が「公衆浴場業を第三種事業とする」ということであります。公衆浴場業が第三種事業であったこともございます。現在は第一種事業になっておるわけであります。当時第三種事業で肩を並べておったものは、クリーニング業とか理容業というふうなものがございます。それが現在は第三種事業になっておるものでありますから、公衆浴場業につきましても、昔あったように、第三種事業に移せという議論が絶えなかったわけであります。今回税率につきましても
改正を加える機会に、公衆浴場業が料金について公的に規制を受けておるということも考え合せて、第三種事業に移したわけであります。
第三は、娯楽施設利用税に関する事項であります。(1)は「スケート場を法定の課税対象施設の範囲から除く」ことであります。スケートがスポーツという見地から律せられなければならないということから、逐次学生の利用する部分は課税をしないとかいうふうに外してきたわけでありますが、今回全面的に、法定の課税対象からは削除するようにしたいというふうに考えたわけであります。
その(2)は、「ゴルフ場の利用に対する課税については、条例の定めるところにより、ゴルフ場の利用の日ごとに定額により課税することができるものとし、その標準税率を一人一日につき二百円と法定する」ということであります。現在は、ゴルフ場の利用に対しましては、利用料金の五〇%を標準税率と定めております。ところが、ゴルフ場の経営の仕方というものは非常に区々なものでありますから、利用料金の範囲というものを的確に把握しがたいわけであります。ゴルフ場を利用しようとする場合には、まず入会金を出さなければならない、あるいは株式を持たなければならない、あるいは年会費の定めがある、あるいはまた、会員と非会員との間に料金の差を設けておる、あるいはグリーンフィーとかメインラナンスフィーとか、あるいは強制寄付金のような格好のものもありましたり、非常に区々でありまして、グリーンフィーだけをとらえて課税していきますと非常に少額になりますし、入会の金額を課税対象に入れていきますと、べらぼうに高額なものになっていくだろうと思います。現在の実績を利用者の員数で除していきますと、ゴルフ場の総平均では九十八円ということになっております。私たちとしては、ゴルフ場の利用一人一日九十八円という金額は少な過ぎると思うのであります。その九十八円も、ゴルフ場そのものによって非常に区々になっているわけでありまして、もっと低いところもあれば、もっと高いところもある。そのことは、ゴルフ場の経営のあり方から起る不均衡なのでありまして、そういう点を考えますと、むしろ定額課税を行なった方がよろしいのではないかということから、今回こういう規定を設けようとしたわけであります。少くとも利用料金の中に入れてよろしいのだというふうにはっきり考えられますものをとって、五〇%の税率をかけていきますと、百九十九円くらいになるわけでありますので、二百円という標準税率を法定しよう、こう考えたわけであります。
第四が遊興飲食税に関する事項であります。
その(1)は、「旅館における一人一泊の料金が八百円以下である宿泊及びこれに伴う飲食に対しては、遊興飲食税を課することができないものとすること。なお、基礎控除額は、現行の五百円を据え置くものとすること。」新らしく、旅館につきましても免税点の制度を置こうとしているわけでありまして、このような免税点の制度を置いて、ほんとうに少額な料金で泊っておる、そういう人たちは課税からはずしていきたい。むしろ課税範囲を狭め、た、その狭めた範囲においては、的確な捕捉課税ができるように持っていきたい、こういう配慮に基いているものであります。旅館の中で、標準料金が八百円以下のところを拾いますと、全旅館数の八二・三%に当っておったと思います。大部分の旅館は課税からはずしてしまう、もちろん、それ以上の標準料金をきめておるところでも、八百円以下で泊る人もあるでありましょうし、八百円の標準料金のそれより高いところで泊ることもありましょうが、大体において、そういう
考え方から、八百円をこえるところでは、そのかわり一律に一〇%の課税を行なって、すっきりした徴税ができるように持っていきたい、こういう
考え方をいたしておるわけであります。
その(2)は、「飲食店、喫茶店その他これらに類する場所及び旅館における一人一回の料金が三百円以下である飲食及びその他の利用行為に対しては、遊興飲食税を課することができない」ようにしようとするものであります。今まで申しましたように、普通飲食店においては、今は一人一回二百円でございますが、それを一人一回三百円までの部分については課税をしないということにしたい、まあ五%くらいなら負担してもらってもよろしいじゃないかということが、八百円以下や三百円以下についても言えるかもしれませんが、そういうものは一切課税からはずしてしまう、そのかわりに、それ以上は一〇%の税率を使って、実際税を負担する人にもわかりやすいし、税金を徴収する人もやりやすいというような方向に持っていきたいというように考えておるわけでありますが、現在、旅館につきましては、免税点の制度がございません。普通飲食の場合には、一人一回二百円までの料金は課税しないのでありますが、旅館でありますと、休憩をいたしましても、あるいは食事いたしましても、二百円以下でも課税をするという形になっておりますのを、この際普通飲食の場合と同じように、三百円までであれば課税しないという免税点の制度を旅館についても加えようと、こう考えておるわけであります。
その(3)は、「あらかじめ提供品目ごとに料金を支払う飲食については、一品の価格が百五十円以下のものに対しては遊興飲食税を課することができないものとし、標準税率は、百分の十とする」ということであります。普通飲食に対して免税点を五割
引き上げます。そうして税率を一律に一〇%にします。それとはずを合わせて、一品百円というものを五割
引き上げまして、百五十円にし、税率を一〇%にいたそうとするものであります。
その(4)は、「飲食店、喫茶店その他これらに類する場所における飲食及びその他の利用行為で一人一回の料金が三百円をこえ五百円以下のものであっても、三百円をこえるものについては、公給領収証を交付するものとすること」ということであります。要するに、税を負担するような部分は、全部公給領収証制度の適用範囲にしよう。そのかわり、零細なものは課税からはずしてしまおうという
改正のねらいになっておるわけであります。
その(5)は、「課税客体ごとの標準税率の区分を次により単一化すること」、現在四段階に分れております。それを一五%ないし三〇%のところは一五%に一本化する、また、五%ないし一〇%のところは一〇%に一本化する、こういう
考え方をとっているわけであります。こういうように、税率の単一化をねらいましたのは、これは、役人が徴収していくんじゃございませんで、業者に徴収してもらう税であります。役人が徴収するのですと、ある程度複雑でも差しつかえないと思うのでありますが、業者にやってもらおうとしますと、できるだけ簡素なやり方をしなければ、やりにくいわけであります。さらに、業者にやってもらうということもからみ合せまして、実際に税金を負担する人がよく納得する、わかりやすい仕方に持っていかなければならないのであります。そうすれば、この店は一〇%一本、ここの店ならば一五%一本だ、こういうふうにする必要があろうと思うのであります。現在でありますと、旅館において泊る、千円以下であれば五百円を引いて五%、千円をこえると五百円を引いて一〇%、晩飯に芸者を接待させると、飲食は一五%、芸者の花代は三〇%だ、こういうふうになっておりますから、非常に複雑な姿になっておりまして、実際に税金を負担する利用者にもよくわからない、こういうような形だと思うのでありまして、それを、税金を徴収する側にもやりやすいし、税金を負担する者にもわかりやすい、こういう姿に持っていって、税金が確実に課税されていくように持っていきたい、これが一つの
考え方であります。もう一つは、税率にあまり差を設けておきますと、最低のところと最高のところが開きが大きくなり過ぎて参ります。それでは、それぞれの税率を適用する業態というものが非常にはっきり区分できるかといいますと、区分できないのであります。たとえば、料理店といいましても、新橋赤坂の料亭から場末の小料理店まであるわけであります。また、普通飲食店といいましても、うどん、そばを売っている店、あるいは東京会館や帝国ホテルのようなところもあるわけであります。婦人のサービスを伴うか伴わないかということを考えましても、それだけでまた非常な差があるわけであります。従いまして、料理店系統の一番下のところと、普通飲食店系統の一番上の系統を見た場合、むしろ普通飲食店の上の方が税率が高くてもいいじゃないかと思われるところもあるわけであります。そうしますと、今までのような税率の差というものは、むしろ開き過ぎておるじゃないか、小料理店ならば、三百円、四百円でも一五%で課税される。れっきとした普通飲食店であっても五百円まで五%だ、五%と一五%の開きはいかにも大き過ぎると思うのであります。だからこそ、今日まで料理店と旅館との間の不均衡がいわれておるのであります。利用行為が料理店の方から旅館の方へ移っていく、料理店ならば一五%、旅館ならば五百円まで五%であり、五百円をこえても一〇%、そうしますと、どうしても税率の幅も小さくする必要があるのでありまして、現に業界などでも、単に消費金額だけで税率区分を設けてくれ、こういう向きもあるわけであります。そういうことを考えまして、一番下と上とを比べまして、まん中の一五%、一〇%の二本建の税率にする、そういうことによって負担の均衡をはかりたい、負担の均衡がはかられますれば、強力に税務行政を進めて行きたい、そうして税収を確保するように持って行きたい。
もう一つ付け加えまして、大へん説明が長くなって恐縮でありますが、いろいろ新聞でも議論されておりますので、申し上げたいのでありますが、芸者その他これに類するものの花代が現在三〇%になっておりますのを一五%に引き下げるということになっております。何か非常にぜいたくなものの税率を軽減するのではないか、こういう誤解を与えているようでありますけれども、私たちは、税務行政を適正化するために、こういう措置をとりたい、この適正化によって、差しあたりは減収となっても、将来においては増収を確保していけるのだと、こういうまあ
考え方を持っているのであります。戦前芸者の数は八方でございましたが、逐年減って参りまして、現在では二万五千人であります。それでは、その関係の人数が減ったのかといいますと、減ったのではございませんで、私たちは、何倍にもふえていると思うのであります。要するに、業態がいろいろと変って参っているわけでございます。そのことは、世の中の風習が変ってきたこともございましょうし、また、遊興飲食税が多少そういうことに拍車をかけている面もあるかと思うのであります。だから現在は、芸者と名乗っていれば、三割課税が行われる。そこで、芸者から籍を抜きまして、料理店に遊芸仲居として住み込んでおります。また、芸者から籍を抜いて、第二検番を作っています。まあ芸者の家政婦みたいな格好の者がだんだんできているわけでございます。そういうところのサービス料というものが課税からはずれていく、こういう問題が起ってきます。また、キャバレー業態というものが非常に発展して参りまして、たくさんな女給がそこにいるわけであります。相当なサービス料が客からは徴収されているわけであります。この間において、非常に負担の不均衡を来たしているわけであります。それでは、女給とかあるいは料理店の遊芸仲居とか、そういうもののサービス料を三割課税すればいいのじゃないか、こういう
考え方もできょうかと思うのでありますが、女給のサービスや遊芸仲居のサービス料は、芸者の花代のような料金の徴収の仕方がなされていないわけでありまして、税の面から、一時間何円式の徴収の仕方をしろと強制すること自体が、できない相談ではなかろうか、こう思っているわけであります。そうなって参りますと、現在では、ごく一部になってしまった存在についてだけ三割課税を強行していこうとすること自体が意味をなさないのではないだろうか、こう思うのでありまして、税制面からそういうものを抑圧するという
考え方もまた、とっていいかとって悪いかもまた非常に問題かと思います。それなら、全体を通じて公平な課税をする。わざわざ脱税的な第二検番を作ってみたり、ことさらに籍を抜いて、遊芸仲居になったりしないでも済むような制度にして、その代り完全把握をやっていきたい、業態の実態に即した課税をやり、収入をあげていきたい。これが、私たちが今回遊興飲食税につきまして、このように税率を単一化して、税金の徴収事務を徹底的に簡素化する、こういう
考え方を持ったゆえんでありますので、この
改正の
考え方を御了承願いたいと思うのであります。
第五は、固定資産税に関する事項であります。その(1)は、「外航船舶に対する固定資産税の
課税標準を価格の六分の一に相当する額に引き下げることとし、これに伴い、外航船舶以外の船舶(もっぱら遊覧の用に供する船舶その他のものを除く。)に対する固定資産税の
課税標準を価格の三分の二に相当する額に引き下げる」ということであります。外航船舶につきましては、船舶に対する固定資産税の制度というものが、世界各国一様ではございませんので、船舶に対しまして固定資産税を課していない国におきまする船舶の負担と比べた場合には、わが国の船舶の負担が重過ぎる、こういうことになるわけであります。そういう事情も考慮して、外航船舶の固定資産税を引き下げるわけであります。しかし、港湾所在の
市町村としては、財政収入に欠陥を生じますので、別途設けられます特別トン税を港湾所在の
市町村に譲与することによって、その穴埋めを行いたいというふうに考えているのでございます。外航船舶の負担を下げまする結果、これとの均衡上、内国船舶につきましても、負担軽減の問題が起って参りますので、三分の一程度を引き下げることにいたしたい、かように考えておるわけであります。
その(2)は、「大規模償却資産に対する
市町村の課税限度額を次のように改めるものとすること」でありまして、ワクの中に書いてあります人口段階ごとの金額は、いずれもこの制度を設けましたときに、経過的に所在
市町村の課税額を
引き上げておこうということできめておった金額でありまして、この経過措置を恒久的な措置に
改正いたしたいという考えであります。
その(3)も同じことであります。「大規模償却資産に対する
市町村の課税額を保障するため定められる前年度の
基準財政需要額に対する割合は、百分の百三十に
引き上げ」ようとするものであります。所在の
市町村としましては、非常に恩典に相なろうかというふうに考えておるわけであります。二百内外の
市町村に対しまして、八億近くの財源が(2)と(3)によって増額されるということになるわけでございます。
(4)は、「新たに建設された工場及び発電所の用に供する償却資産で大規模償却資産に該当することとなるものに対する所在
市町村の課税限度額については、当該
市町村の
基準財政収入見込額が当該
市町村の前年度の
基準財政需要額の、それぞれ当該償却資産に対して固定資産税が課されることとなる最初の年度及び第二年度にあっては百分の百八十、第三年度及び第四年度にあっては百分の百六十、第五年度にあっては百分の百四十の額に達するまでに増額するものとすること。この場合において、一の納税義務者が当該大規模の償却資産とそれ以外の償却資産とを所有するときは、両者を区分し、当該大規模償却資産についてのみ適用するものとすること。」、工場ができました当座は、あるいはこれに下水道の施設でありますとか、あるいは道路施設でありますとか、
市町村としても財政需要額がかさむわけでありますので、大規模の償却資産が設置をされました当座五年間だけは、所在
市町村の課税限度額をこの程度
引き上げておきたいというふうに考えるわけであります。
その(5)は、「自治庁長官又は
道府県知事の評価に係る固定資産で、納税義務者の申告遅延等のため、当該固定資産の価格等の通知が遅延する場合においては、
市町村は、前年度の固定資産税の
課税標準額を仮に
課税標準として算定した額の二分の一の範囲内で当該年度分の固定資産税を仮に徴収することができるものとし、自治庁長官又は
道府県知事から価格等の通知が行われた場合においては、その通知が行われた日以後に到来する納期において税額の調整を行うことができるものとすること。」発電施設でありますとか、あるいは鉄軌道施設でありますとか、あるいは船舶でありますとかというようなものにつきましては、自治庁長官または
道府県知事が一括して、価格を関係の
市町村に配分いたしておるわけであります。ところが、鉄軌道でありますとか、あるいは発電施設でありますとかは、納税義務者が自治庁長官あるいは
道府県知事なりに申告しなければなりません。その申告がおくれている関係から価格の決定がおくれ、関係
市町村への配分がおくれてしまう。そうしますと、四月に固定資産税の第一期の納期が始まるわけでありますけれども、それまでに通知がいかない
市町村としては財源が入ってこない、こういうことで、困ってしまいますので、そういう場合には、前年度の固定資産税の
課税標準額をかりに
課税標準として徴収しておくことができるのだ、こういう仮徴収制度を新たに設けようとしているわけであります。もとよりこの場合におきましても、徴収額は二分の一を限度にしておるわけでありますが、納税義務者としては、実態が変っているということであります場合には、異議の申し立てができるのだという措置もあわせて立法いたしております。
第六、電気ガス税に関する事項としては、「(1)水銀鉱、石綿及び可燃性天然ガスの掘採又はマグネシウム地金、焼成りん肥及び焼成りん肥にりん酸液を作用させた肥料の製造のために使用する電気に対しては、電気ガス税を課さないものとすること。」、肥料などのように、その後の製造がだんだんと発展してきて、新しい製法に基く従来非課税になっている製品と同じようなものができてきた、あるいはまた、今までは外国から輸入しておったけれども、日本でも新規の産業が興ってきた、やはり基礎資材の関係から、使用する電気料金が相当の部分を占めているというようなものについては、従来のものとの均衡上、非課税品目の中に加えたいということで、この追加をいたそうとしているわけであります。
その(2)は、「漁業協同組合、漁業協同組合連合会、水産加工業協同組合及び水産加工業協同組合連合会並びにこれらの法人以外の法人又は個人でその所有する製氷設備に係る製氷能力の合計が政令で定める
基準に満たないものが設置する製氷工場において製造する氷をもっぱら漁船その他政令で定める場所における水産物の保存に供している場合には、当該工場において直接氷の製造に使用する電気に対しては、電気ガス税を課さないものとすること。」
「(3)漁業協同組合等が前項の工場に併置する冷蔵倉庫でもっぱら水産物の冷蔵又は凍結の用に供するものにおいて、直接水産物の冷蔵又は凍結に使用する電気に対しては、電気ガス税を課さないものとすること。」ということであります。製氷いたしますのに電気を多量に使うという点においては現に非課税になっているものと同じ性質を氷が持っているわけであります。しかしながら、製氷が一般の消費財としての部分も相当多いわけでありますので、消費財についてまで電気ガス税の非課税の範囲を広げていくことは適当ではない。そこで、漁民用の氷について非課税範囲を新たに設けたい。その面については、氷も一つの生産財と考えられるのじゃないだろうか、こういうような
考え方に立脚しているのであります。しかしながら、大規模なものになってきますと、その企業は、漁民用の氷ばかり作っているわけじゃございませんで、一般の家庭冷蔵庫用をやるとか、アイス・キャンデーの用に使われている。必ず漁民の氷だけが値下げされるというような保証もないわけでありますので、漁業協同組合等の製氷に限って非課税の措置を定めるということにいたしたわけであります。協同組合関係以外のものにつきましては、小規模の企業者の行なっております、もっぱら漁民のための氷を作っている場合だけを免税にしようとしている趣旨であります。
第七は、木材引取税に関する事項でありまして、「価格を
課税標準として課する場合における標準税率を百分の四、制限税率を百分の五に引き下げること。」であります。木材引取税の課税が
市町村間において区々になっているということで、いろいろ非難を受けておるわけであります。そういう事情もございまして、むしろ税率を下げて、課税の適正化をはかりたい。しかし、税率を引き下げますについても、山村の有力な財源になっているわけでありますので、やはり収入ということも考慮しなければなりませんので、百分の五を百分の四程度に、言いかえれば、二割程度の引き下げにとめておきたいというふうに考えているわけであります。
第八は、入湯税に関する事項でありまして、「入湯税を環境衛生施設その他観光施設の整備に要する費用に充てるための目的税とすること。」であります。総額で入湯税は三億円ぐらいのものでございます。しかし、鉱泉浴場所在の
市町村にとりましては、有力な財源でございます。鉱泉浴場所在の
市町村としては、世の中が安定して参りますと、やはり環境衛生施設その他観光施設を整備していかなければならないのでありますが、地方交付税の計算に当りまして、
基準財政需要額をそれだけ割増ししていくといいましても、なかなかその計算が困難であります。そこで、こういう
市町村の特殊な財源であります入湯税は目的税に切りかえて、地方交付税の財源からはずしてしまう。
基準財政需要額にも加えない。そのかわり、この財源を基礎にして、環境衛生施設や観光施設を整備してもらおう、こういう
考え方をとったわけでございます。
第九は、軽油引取税に関する事項であります。
その(1)は、「特約業者又は元売業者が軽油を使用して軽油以外の自動車の内燃機関の用に供することができると認められる炭化水素油を製造する場合における軽油の使用については、軽油引取税とみなす課税ができるものとすること。」現在は、特約店で軽油と他の油とをまぜまして、まぜてでき上ったものが法定の軽油の規格からはずれたものでありますと、その軽油にも課税しないことにしているわけであります。その結果、脱税的な行為がありましたり、あるいはことさらに規格をはずす努力をして、自動車用にそういう油を使っているという傾向もありますので、軽油と他の油を合せる場合でも、自動車に使うような場合でありますれば、使った軽油については、やはり軽油引取税を課していくというように改めようとしているわけであります。
「税率を一キロリットルにつき九千円に
引き上げる」、揮発油課税の率が五割程度
引き上げられることになっておりますので、それにはずを合せているわけであります。
「その他各税目を通じて規定の整備を要する事項」、これはいずれも事務的な問題でありますので、簡単に申し上げたいと思います。
第一に、総則に関する事項でございまして、「過納又は誤納に係る地方団体の徴収金を還付する場合における還付加算金の日数の計算の終期は、還付のため支出を決定した日であることを明確にすること」、これは、国税徴収法の取扱いに合せて、字句の整理をはかったわけであります。
第二は、
住民税に関する事項でありまして、その一は、「
道府県民税及び
市町村民税の
所得割額の端数計算については、それぞれの税額について十円未満の端数金額を切り捨てるものとし、また
市町村民税の
所得割額を
課税標準として
道府県民税の
所得割額を算定する場合においては、
市町村民税の
所得割額をそのまま用いるものとすること」、端数計算につきまして、
道府県や
市町村の
考え方に従ってこのように改めようとしているわけであります。
その二は、「法人が法人税法第二十六条の四の規定によって欠損金の繰戻による法人税額の還付を受けた場合においては、還付された法人税額を五年間を限って法人税割の
課税標準となる法人税額から控除するもの」としようとするのでありまして、現在は、会社が欠損を出す、法人税の繰り戻しを受ける、そういう繰り戻しを受けた部分の欠損金は、
住民税の場合は、
住民税を繰り戻さないかわりに、これを繰り越して、かりに所得を計算するわけであります。かりに計算した所得から、また法人税額をかりに算定をしまして、法人税割を計算する方式をとっているわけであります。ところが、法人税額につきまして、二段階税率をとられることになって参りましたので、損金を繰越して法人税額を計算するということになって参りますと、非常に複雑なことになりますので、それには、繰り戻しを受けた法人税額を将来の法人税割の
課税標準から落していく換算のやり方をしていきたい、こういうふうに考えておるわけであります。
その三は、「法人税割の分割
基準については、事業税における場合と取扱を同じくするため、従業者の定義を明確にし、法人が解散し、又は合併した場合の清算所得に係る法人税割の分割
基準である従業者の数は、解散の日又は被合併法人の合併の日の属する事業年度に属する各月の末日現在における数値をそれぞれ合計したもの」としようとするのでありまして、現在は、法人税額の
課税標準の算定期間中の各月末現在の従業者数の合計数としているわけでありますが、両税の取扱いを合せようと考えているわけであります。
第三は事業税に関する事項であります。
その一は、「
地方税法の施行地において事務所又は事業所を設けないで事業を行う外国法人であっても、事務所又は事業所に準ずるもので政令で定める場所がある場合においては、事業税を課する旨を明確にすること」であります。外国法人で、損害保険事業を行なっている、日本には事業所はない、事務所はない、しかし今、代理店をやっている、そういう場合には、そういう外国法人につきましても課税をしたいという
考え方であります。
その二は、「鉱物の掘採事業と精錬事業とを一貫して行う者の事業税の
課税標準となる所得の算定については、所得の区分計算ができる場合はその方法について
道府県知事の承認を受け、区分計算を行うことができるものとすること。また、この区分計算の方法によることとした者が、その方法を変更する場合においても、承認を要するものとすること」であります。現在は、全部法定の方式によって按分をいたしております。しかし、分けられるところまで強制的に按分することは適当でございませんので、分けられるものは分けて計算した方がよかろう、そのかわり、その区分計算の方法について、あらかじめ承認を受けておかなければならないし、変更する場合においても承認を要する、一貫して同じやり方をやらせようとしているわけであります。
その三は、「事業税が課税される場合で法人税が課税されない場合においては、
道府県知事の調査による更正又は決定をすることができる旨を明確にすること」であります。
第四は、不動産取得税に関する問題でございまして、「住宅を新築した等により土地の取得等に対する既納の不動産取得税を還付することとなる場合の還付加算金の日数計算の始期は、納税者が還付の申請をした日から起算して十日を経過した日とすること」としようとするのであります。日数計算始期についての明確な規定が抜けておりますので、はっきりこのように規定を設けたいと考えておるのであります。
第五は、遊興飲食税に関する事項であります。
その(イ)は、「遊興飲食税の特別徴収義務者が、客から料金を徴収せず、又は通常の料金に比較して著しく低い料金を徴収して、遊興、飲食、宿泊等をさせた場合においては、その特別徴収義務者に対し、その行為者が当該場所における当該行為について通常支払うべき料金を支払ったものとみなして算定した遊興飲食税を課することができるものとすること。」であります。法人経営の旅館において、配当しませんかわりに、優待券を送っているところがあります。その無料の優待券で泊った場合には、料金がございませんから、遊興飲食税が課せられません。そういう場合には、通常の料金の定めに従ったものを
課税標準にして、遊興飲食税を課税できるようにしたい、こういう考えであります。
その(ロ)は、「遊興飲食税の特別徴収義務者が料金及び遊興飲食税の全部又は一部を受け取ることができなかったことにより、
道府県が既に納入されている遊興飲食税に相当する額を還付する場合において当該特別徴収義務者に未納の税金があるときは、これに充当することができるものとすること。」でありまして、単なる整備でございます。
第六は、固定資産税に関する事項でありまして、「固定資産税額が条例で定める額に満たない少額のものについては、一の納期においてその全額を徴収することができるものとすること。」その全額を徴収できるものとしようとするのであります。地方町村民税につきましても、均等割の場合には徴収ができることを規定しておりますので、税務行政の簡素化という趣旨で、こういう規定を置いておきたいということでございます。
七は軽油引取税で、「軽油の引取が行われた後販売契約の解除によって、その引取に係る軽油を返還した場合において軽油引取税を還付することとなるときの還付加算金の日数計算の始期は、特別徴収義務者が還付の申請をした日から起算して十日を経過した日とすること。」これも規定のないところをはっきりさせておきたいと考えているのであります。
第八は、都市計画税に関する事項でありまして、「都市計画税を固定資産税とあわせて収納する場合においては、それぞれの税額について十円未満(現行両税を合算して十円未満)の端数金額を切り捨てるものとすること。」でございます。これは、
道府県民税と
市町村民税の場合と同じ
考え方でございます。
第九、「法人税の
改正に準じ、次のように
改正を行うこと。」でございまして、
道府県民税及び
市町村民税について、「法人税が課されることとなる法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定のあるもの(以下「人格なき社団等」という。)については、法人税割を課税するものとすること。」収益事業を行います人格なき社団等に対しましては、法人税が課せられることになりますので、法人税割も課税することにしたいということであります。
(ロ)の事業税の(i)は、「輸出水産業組合を法第七十二条の二十二第四項の特別法人に追加するとともに、」これは、新しくこういう組合ができることになったからでございます。「漁業生産組合及び生産森林組合で当該組合の事業に従事する組合員に対し、給料、賃金、賞与等の給与を支給するものは、」これは、普通法人と実体が変らないということになるわけでありますから、特別法人から除外しまして、普通法人として課税しようとするわけであります。「従ってまた、法第七十二条の十八第三項の
課税標準の特例を受ける法人の範囲から除外するものとすること。」除外しようとしているわけでございます。
課税標準の特例を受ける法人といいますのは、一般の協同組合でありまして、一定の積立金額が得られるまでは、配当として組合の外部に支払ったものだけを
課税標準にして課税をしていくという範囲でございます。
(ii)「人格のない社団等に対しては、法人として収益事業から生ずる所得に対し事業税を課税するものとすること。」であります。
第十、その他としまして、「娯楽施設利用税、遊興飲食税又は軽油引取税について保全のための担保又は徴収猶予に係る担保を徴した場合においては、当該担保に係る抵当権の取得等についての登録税を免除するものとすること。」として、この
法律の付則で登録税法を
改正することにいたしております。
以上でございます。