運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1957-03-25 第26回国会 参議院 大蔵委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月二十五日(月曜日)    午後一時四十五分開会   —————————————  委員異動 本日委員前田佳都男君辞任につき、そ の補欠として成田一郎君を議長におい て指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     廣瀬 久忠君    理事            西川甚五郎君            平林  剛君            天坊 裕彦君    委員            青木 一男君            木暮武太夫君            塩見 俊二君            高橋進太郎君            土田國太郎君            苫米地英俊君            宮澤 喜一君            大矢  正君            栗山 良夫君            椿  繁夫君            野溝  勝君            杉山 昌作君            前田 久吉君   国務大臣    大 蔵 大 臣 池田 勇人君   政府委員    国税庁長官   渡邊喜久造君   事務局側    常任委員会専門    員       木村常次郎君   説明員    大蔵省主税局税    制第一課長   塩崎  潤君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○所得税法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○法人税法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○租税特別措置法案内閣提出、衆議  院送付)   —————————————
  2. 廣瀬久忠

    委員長廣瀬久忠君) これより委員会を開きます。  議事に入ります前に、委員異動について御報告いたします。  本日付をもって前田佳都男君がやめられ、その補欠として成田一郎君が選任されました。
  3. 廣瀬久忠

    委員長廣瀬久忠君) それでは前回に引き続き所得税法の一部を改正する法律案外十二件の税関係法律案を便宜一括して質疑を行います。御質疑の方は御発言を願います。
  4. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 資産合算制のことについて伺いたいんですが、これは一面から見るともっとものように思われますけれども角度を変えて見るというと、同一家族に属する親子の間、その他譲与した場合に税金がかかってくる、また相続する場合にも税金がかかってくる。そういうふうな移動をするときには税金をかける。そうしておいて今度は税金を取るときにはそれをすべて合算して税をかけるということには矛盾があるように思われるんですが、その点はいかがでしょうか。
  5. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) ただいまの御質問の点につきましては、すでに主税局長からお答えがあったかもわかりませんが、私どもは次のように考えております。  今回の資産所得世帯合算制度は、世帯担税力に着目いたしまして、その担税力中心といたしまして累進税率を適用して税額計算して、資産を持ってる各々の人について税額計算する、こういう建前でございます。それはしかも所得税からも担税力考えておるわけでございます。従いまして贈与税とは観念的には違うものだとかように考えております。贈与税は御承知通り相続税の一種でございまして、相続税死亡の際の相続のときにかかるものでございますが、贈与税は、死亡前にだんだん贈与いたしますと相続税がそこで大きく抜けるわけでございます。従いまして生前贈与におきまして将来の相続税の減殺を防ごう、こういうのがねらいでありました。従いまして所得税は全然性格の異なるものであると、かように考えます。所得税の方はその資産から生ずる所得について、その所得を一グループがどういうふうに処分しておるか、どういうふうに担税力が現われておるか、これらを着目いたしまして所得税課税しようというのが今回の資産所得合算制度のねらいでございます。
  6. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 御説明は一応筋の通るように思いますけれども贈与によって各個人財産が所属する、この場合に移動に対して課税をしておるのは相続税の前払いだというような観念でございますが、現在の制度では同じ家庭に住んでおっても戸籍は別になっておると、全く別個単位として存在しておるのであるからして必ずしも合算しなくてもいいはずであるし、また場合によるというと、現在の日本状況では、同じ家庭に住んでおりながら全く別個の経済を行なっておる家庭もあるように私は見受けておるのであります。それを無理に合算して、合算すれば担税力がふえるんだからよけいに取るというのは税金を取ることが目的であって、合理的にそうしなければならないというような建前ではない。担税力があるからして取ってやれというふうな考え方のように見受けられるのですが、どうでしょうか。
  7. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) お答え申し上げます。ただいまもお答え申し上げましたように所得税課税単位の問題から出てきておるわけでございまして、先般内容説明を申し上げました際に、こういうことを申し上げておきました。たとえば現在不動産所得事業所得を夫一人が持っておりまして、妻が扶養親族である場合に、それが両方合せまして二百万円ある、こういたしますと税金は四十八万八千五百円でございます。ところが夫が事業所得を持ち、妻が不動産所得を持ち、おのおの百万円ずつでございますれば、その税金はおのおの……先ほどのも。改正後の税額でございますが、おのおの改正後で十九万円ずつでございますから、合せて三十八万円でございます。そういたしますと四十八万八千五百円と三十八万円との差は十万八千五百円の差が出て参ります。同じような生活状態でありながら、なぜこういうふうに負担が違っていくのだろうか、かような疑問が出てくるわけでございます。そういうところをどういうふうに考えるか。非常にむずかしい議論でございますし、また外国の例などもども研究して参りました。過去の例におきましても、私ども税法は創設以来合算制度をとっております。今回の資産所得合算のみならず、勤労所得まで合算しておったのでございます。勤労所得等につきましては、これは別個角度から合算しない方がいいのではないか、むしろ合算の方から軽減するというような考え方をとったわけでございます。こういうような税金の差が果していいのであろうか、ことにまた資産所得性質から見て、これだけの税額アンバランスが出ていいのであろうか。ただいま申し上げましたのは二人の場合でございますが、これを多くに分けてございますと、こういう税額の差はますますひどくなる。こういう税制上の欠陥が出て参ります。外国の例を見ましても夫婦合算してないところもないようでございますし、子女につきましても大体資産所得につきましては合算しているような事例が多いのでございまして、今回減税の機会に負担の公平をねらう意味で、こういう制度を提案申し上げた次第でございます。
  8. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 夫婦の場合は一番強い場合で、その例をとられたけれども、もっと遠い場合は、おじいさんと孫というような場合で戸籍は全然別になっておる。この夫婦の場合は戸籍一つなんですが、ところがほかの場合はこの戸籍が全然別になっておる場合に、これを合算していくというところに無理があるのではないか、私はこう言うのです。
  9. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) ただいまの御質問は、戸籍が別の場合には合算しない方がいいのではないか、戸籍一緒の場合に合算すればいいのではないか、こういう御質問のようでございます。今回の十一条の三の資産所得合算制度戸籍中心として考えておりませんので、生計を一にする世帯につきまして合算をいたす、こういうことになっております。ただいまの御質問おじいさんとお孫さんが生計を全く別にいたしておりますれば、これは合算する対象にはならない、こういうことになるわけでございます。
  10. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 同じ建物の中に住んではおるけれども生活は全く別であるというような場合にですね、税務署の方では同じ家に住んでいるではないか、こういうことになると思うのですが。
  11. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) お答え申し上げます。そのようなことのないように私どもまあ種々研究いたしたわけでございますが、そこで二点ばかりそういうような欠陥を排除する意味におきまして、まず第一に子あるいは孫に配偶者がございますれば、こういう人の資産所得合算いたさない、こういうことにいたしましたのが第一点でございます。第二点は子あるいは孫の方が総所得九万円以上、九万円を超えまして独立の納税義務者となるということになりますれば、そういう方々の資産所得は主たる所得の方に合算いたさない、こういうふうにいたしております。従いまして日本家族制度では、往々にして親夫婦あるいは子夫婦一緒生活することがございます。そのときに親子夫婦子供夫婦資産所得合算するというようなことはいたさない。そういう場合に、子供がなければ親夫婦の間、子夫婦の間においてのみ合算が行われる、こういうようなことに考えております。
  12. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 大体わかりましたが、そうすると親子が同じ屋敷内に住んでおって、子供世帯を持っておる、親も世帯を持っておる、けれどもその生計はやはり別になっているときは合算されない、こういうわけですね。そこでそのときに起ってくるものは、私は相続税が高過ぎるという感じを持っております。これは一町相続税は不労所得だからみんな取ってもいいのだという議論があったわけでありますけれども、運が悪くて短い期間に二回も葬式を出して相続をしなければならないと、相当の家はつぶれてしまう。私も現実にそういう例を見ておるのでありますが、相続税については、今のままでいいというお考えですかどうですか、それを一つ
  13. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) 御承知のように相続税昭和二十五年にシャウプ勧告によりまして根本的に改正されたわけでございます。当時の思想として所得税法最高率はできるだけ低く——できるだけと申しますか、ある程度低くいたしまして、生きている間の勤労意慾と申しますか、事業意慾を発揮させるようにやろうじゃないか。しかし、その人が死にましたときには、一ぺん財産税として過去の所得から累積いたしました財産について相当高度の税金を納めていただこう、こういう思想昭和二十五年にシャウプ勧告によりましてとられたわけでございます。しかも、その思想が今までの財産課税思想ではなくて取得者ごと課税いたしますところのもので、取得者課税は、財産が多くの子供に分散されるならば、なるべく税金を安くしよう、こういう考え方をとられたわけでございます。そういう根本的な改革がございましたが、今言ったような思想がございまして、当時は最高税率九〇%までいっておりました。それを二十八年でございましたか七〇%にいたしまして、現在までに至っておるわけでございますが、その後の状況を見まして、私どもといたしまして果してこれでいいかどうか、なお、根本的に再検討しなければならぬ、かように考えております。しかし取得者課税制度も、財産が分割されますところの資産について取得者課税は有利であり、しからざる財産については不利である、こういうような御議論もございます。こんなようなことを考えまして、私どもといたしましては根本的にこの所得税あるいは相続税関係、それから今申し上げました相続税体系を根本的に考えていかなければならぬ、かように考えておりますが、この際に合わせまして、今の相続税税率は決して私どもは低いと思っておりません。根本的に改正したい気分で、相続税は御承知通り所得税のように毎年々々その人に適用される税じゃございません。その年に人が死ぬと適用になる税金でありますし、体系といたしまして非常に重要なものでございますが、より根本的に研究しなければならぬ、かように考えておりますので、今回の改正には適用しなかったわけであります。おっしゃる点十分検討して参りたい。しかも今、相次相続の点につきましては、相続が十年以内に行われます場合には、過去に納めました税額一定割合を控除するというふうにいたしまして、相続が何べんも重なることによりまして財産が急激に減るというようなことはなくしたいような制度はございます。
  14. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 相続税については研究中とのお話でありますから、ぜひこれは十分研究して改めていただきたいと思います。なるほど今の相続税は、戦後は非常に変って分散されておりますけれども、親の業務を継いで商売をやっていくというような人については非常に不利になる。それがとにかく昔と違って、財産はみんな分散されてしまった。しかし業務は続けていかなければならない。また続けていくことが有利であるという場合に、その業務を続け得ないような相続税が今のところかかっている実情があるのでございますから、ぜひこういう点をよく御考慮、研究されて、近い将来に改正案を提出していただきたい。かように存ずる次第でございます。  次に、これは私勉強しないで伺うのはまことに済みませんが、学校法人と、私立学校法第六十四条四項の規定により設立した法人というのはどういうふうに違っておりますですか。
  15. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) 学校法人については、学校教育法第一条の小学校、中学校高等学校大学、盲学校聾学校養護学校、幼稚園、これを目的といたしますところの学校法人がございます。私立学校法にも同様な学校法人規定がございまして、ただいまのお尋ねの六十四条四項は、今申し上げました学校教育法第一条の学校ではなくて、「各種学校を設置しようとする者は、各種学校の設置のみを目的とする法人を設置することができる」という規定によってできました学校であろう——これは文部省所管でありますので、私が有権的解釈を下すのが果して適当かどうかと思いますが、条文ではさようになっております。
  16. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 そこで今度の、例の法人にあらざる団体に対する課税問題で、学校法人というものも収益事業をやれば課税される、だから私立学校法第六十四条四項の規定により設立した法人課税される、収益事業をやれば課税される。こういうことになってきますね。そこで学校法人というのは、今のお話だというと、大学高等学校、中学、小学というような系統のものであり、それからほかの部分はその範疇に属しない学校法人である。こういうことになりますが、これは私は平等には扱えないし、扱ったら大へんなことになると思うのですが、その取扱いについてどういうふうにお考えでしょうか。
  17. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) ただいまの御質問収益事業の問題でございますが、これは人格なき社団の問題とは私ども別の問題と考えております。現在法人税法の五条の第一項によりまして、左に掲げる法人につきましては、収益事業以外の所得については法人税を課さない。従いまして逆に申し上げますれば、収益事業から生じた所得に対しましては課税する。こういうふうになっておりまして、ここにございますところの学校法人並びに私立学校法第六十四条第四項の規定により設立した法人は、収益事業部分については課税になるということは、すでに現行法であるわけでございます。従いまして、現在その収益事業が何かということは、法人税法施行規則の第一条の三に二十九業種列挙してございまして、その中の一番は物品販売業だと思いますが、物品販売業を、たとえば学校法人が購売部というような形で作りまして、物品を売りますれば、これは現在のところ、学校法人でも私立学校法第六十四条第四項の規定によって設立した各種学校を営む法人でございますか、これにつきましても、課税になっているわけでございます。問題は、人格なき社団とは全然別の問題でございまして、最近毎日新聞に出ましたが、ある生花のお師匠さんが財団法人になりますと、今までは個人としまして課税になっておりましたのが、急に課税にならなくなってきた。ある学校は非常な大きな資産を持ちながら、よく調べてみると学校法人になっているがゆえに課税にならない、こんなようなとが世上よく言われておりまして、現在のところ、各種学校が六千七百ぐらいございますが、その中五千五百ぐらいは個人で経営されているわけでございます。これは私立学校法によりまして、各種学校ではございますけれども法人形態をとっておりませんで個人になっております。従いまして、洋裁の先生それから料理の先生、こういうようなものは各種学校ではございますが、個人の形でありますれば所得税がそのままかかっているわけでございます。ところがこれが各種学校、いわゆる準学校法人といっております各種学校法人それから学校法人がその各種学校を兼業いたしますれば、現在の法人税法施行規則第一条の三では課税にならないわけでございます。すなわち収益事業に該当いたさない。列挙事業は二十九業種ございまして、いわゆる技芸を教えるようなものは現在のところ収益事業と見ていない、こういうことになっているわけでございます。そこでそういうふうなアンバランスを放っておいていいかどうか、これらにつきましては、各地からいろいろな批判が出ているわけでございまして、これらにつきましていかに考えるか、私どもも現在研究いたしておりまして、文部省と打ち合せ中でございます。私ども問題のあることはつとに存じておりまして、各種学校といたしまして知事の認可を受けまして教育としてやっているものにまで課税するのが果していいであろうかどうか、しかし一方今申し上げましたように、すでに五千五百の個人立各種学校につきましては課税いたしております。そういうことでいいのかどうか、あるいは最近の傾向を見ますと、少し大きな企業的な形態各種学校が運営されて、果してそれが教育事業と言えるであろうかどうか。そのあたり少し検討してみなければいかぬということで現在のところ文部省と打ち合せ中でございます。おっしゃるような人格なき社団の問題とは別個の問題というふうにお考え願えれば仕合せでございます。
  18. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 私も今御説明通り非常に暴利をむさぼって脱税している、これから税を取ることは賛成なのです。ただその原則としては課税しないというてあるけれども法人税法第五条のところの規定、「前項各号に掲げる法人は、同項の収益事業から生ずる所得に関する経理」云々という条項があって、その次に第三項のところに「人格のない社団等について、これを準用する」とこうあるので、この収益事業というものの性質が非常に重大な影響を持ってくると思って、この前にもお伺いしたのですが、くどいようですけれども、そこのところを今のところどのくらい検討されておるかと考えましてお伺いしたのですが、文部省協議中というお話ですから、まだ判明しておらないと思いまするので、これ以上お尋ねしてもむだだと思いますので、私はこれは後日に至ってまた一つ適当であるかないかを検討してみたいと思います。これはどうか、一方において不正な脱税を防止すると同時に、そうでないものに対して非常にやかましくして、結果の悪くなるという、知をためて牛を殺すというようなことのないように御奮闘願いたいと思います。  次に、更正決定のときの利子の問題ですが、確定申告のときに税務署が認めない、税務署によって決定してきたと、その場合に再調査を要求するということがよくあるのでありますが、この更正決定税務署の方が間違っていたということが明らかになって、更正決定を認めたというような場合でも、利子だけは本来の納付期日から収めなければならぬことになっておりますね。これは私は少し無理じゃないかと思うのですが。これはもし更正決定が認められない場合ならそれでいいと思うのでございます。けれども税務署の方が間違っておったから更正すると決定した場合には、更正された場合以後に金利を取るのは、もし納めなければ金利を取るのはいいけれども更正決定を認めておきながら、初めに戻って金利を取るというのは、これはちょっと無理のような気がしますね。これはどうでしょうか。
  19. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) 今の利子税制度は、これは申告納税になりましてでき上りました制度でございます。昔の賦課決定の時代におきましては、滞納になりましてから延滞加算金を取っておったわけでございます。申告納税制度になりまして、まじめに申告していただいた方等のバランス等で、やはり納付期日から利子を取るべきじゃないか。これは種々の、いろいろな課税所得計算についてむずかしい条件がございます。しかし一般金利に近い金利ならば、これはやはり申告納税建前からみまして、税務署更正決定をしようがどうしようが、やはり納付期日から納めるべきではないか、こういう建前でございます。ただ更正決定があとで減額になりまして、むしろ納め過ぎであったような場合は、逆にこちらは今度は還付加算金をつけます。しかもまた更正決定のみならず、申告内に過剰に納め過ぎた、これはまあ法人税の場合には特に事業年度期間計算の問題で、しょっ中、あるときは納め過ぎ、あるときは納め足りないということがあります。すなわち税務計算は必ずしも会社計算と一致いたしませんので、ある期の納め過ぎの分についてはやはり納付期日から還付加算金をつける。また納め足りない分については、そのときから利子税をつけるというわけで、ともにそこは見合っておるわけでございます。従って申告納税制度建前がございます以上は、やはり納付期日から利子税をつけるべきではないか。  なお、利子税昭和二十五年以降四銭でございましたのが、昭和三十年でございましたか、三銭にいたしておりますので、それからもう一つ更正決定が一年後に行われます際には一年目は利子税は取りますけれども、その後は税務署が、おくれたという責任を税務署が負うということにいたしまして、その後のものにつきましては特殊の事情がない限り、——特殊の事情と申しますか、脱税——悪意脱税でございますね、そういうような脱税がないような場合には一年後の分については利子税は取らない、かような建前になっております。
  20. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 そういうお話のように進んでいれば非常にけっこうなんですけれども、こちらは申告をしていくと税務署が認めない。これを認めないなら納めない、円調査を要求するということで、納めないで再調査をしてもらって、それで更正決定が出てくると、こういう場合があるのです。そのときに、なるほど再調査してみたところが申告している人間の方が正しいということがわかってきた場合に、まだやっぱり金利を初めから払わなくちゃならない、こういう場合があるのです。これは無理じゃないかと、こういうのです。
  21. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) 私どもはまあ税務行政もだんだんよくなりまして、無理押しの課税はないと思っておりますけれども、さような場合にもやはり再調査をお願いいたしまして、再調査請求税務署にし、あるいはそれが不服ならば協議という式に持っていきまして審査請求に移す。それが確定いたしますれば利子税は一応つきますけれども、その後税金の納め過ぎの場合には先ほど申しました還付加算金がついて税金が返ってくるということでやはり見合っておるのではないかと思います。その点は救済の道も開けておりますから、利子税の問題も私はそう酷にわたるようなことはないのではないかと、かように考えております。
  22. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 それはすなおに納めてしまえばそういうことになるのですよ。ところがすなおに納めないで再調査を要求する人があるわけですね。そうして再調査を要求して、再調査してみたところが本人の言う方が正しいということで認められた場合ですね、それでも今の法律では金利を取られるわけなんですね。
  23. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) ただいまのお話、ちょっと私も了解しかねるわけでございますが、納めないでおりまして、再調査の段階で税務署の方が負け、納税者の方が勝ちますと、それだけ所得税減額になりますので、利子税の問題は起らないのではないか。ただ差し押えいたしておりますると、その間の利子につきまして督促状その他参りますけれども、再調査によって原告の方の言い分が正しければ税金は元の納税者言い分通りになりますから、利子税はつかないことになるのじゃないか、かように思います。
  24. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 これは実例があるのです。アメリカ軍に徴用された財産について、本人の言うところとそれから税務署の言うところと違っているので、納めないとがんばっているのです。けれども今の法律だというと利子だけは納めてくれと、こういうのですよ、税務署は。
  25. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) おそらく税務署納税者との争いは、総ワクについていわれる場合がございましょう。しかし、少くとも税務署納税者の一致している下積みの部分がございます。その部分も全部納めない場合は、その下積みはあとで再調査によりまして全体百は無理である、しかし、五十になったという、五十部分については利子税を納めてもらわなければなりませんので、その分については将来を考えて早く利子税を納めていただきたいと、こういうことをいっておるのではないかと思います。百全体が税務署の方が間違いであれば、これは利子税の問題は起りませんが、百は間違いであるといたしましても、その下積み部分の五十については所得税が確定するという際には、五十につきまして、全体を納めないとその五十につきましてはやはり納付期日を制限しなければならないということになっておりますから、利子税もつくということになるわけでございます。
  26. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 そういう場合には下積みの分だけ払っておけばあとは免除されると、こういうことになるわけですか。  そこで、これはそちらへお伺いしてもお答えの範囲にならないかもしれぬけれども、この徴用された家屋とか何とかいうものについて、徴用された方は日本政府というものを相手に考えているし、国税庁へ行くというと、これは自分の方のことで、そっちはほかの係だと言う。わきの方へ行くというと、これはおれの方の関係はこれだけだと、総体的に考えてくれないのですね、そうして非常に迷惑をかけている、ところが、裁判を起したり、強情をはったやつは非常に有利に解決されているのです。また土地なんかの場合になれば、砂川のように騒ぐというとだんだんせり上げられる、しかし、弱い個人の場合にはそれが押しつけられてしまうというようなことで、非常に自分の責任でなくて窮地に陥れられている人があるのですが、こういう場合でも税制の方においては何の仮借もなくやっておられるということは、これはちょっとおかしいと思うのですが、どんなものでしょうか。
  27. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) 先ほどのお尋ねの下積みの部分税金利子の問題でございます。これは納付期日までに納めていただければ、その分につきましては利子税がつかないわけでございます。その点お答え申し上げておきます。  第二点の収用の問題でございますけれども、現在の特別措置法によりますと、収用につきましては譲渡所得計算の特例がございまして、収用価格を再評価額といたしまして、過去の取得価格との差額について六%だけの再評価税でよろしい。いわゆる譲渡所得税はそれだけで済ますという規定がございます。そのうちに日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法を入れまして、収用と同じにふうに考えております。事実問題、私詳しく存じませんが、それによりまして収用の場合の負担の急激な、その際に所得が、自分の意思に関係なく譲渡所得が実現いたします。その譲渡所得を総合所得に入れまして課税することが、負担の面からみて無理ではないかということを考えまして、単純に再評価税の六%だけで済ましております。そういう適用の関係はあります。事実問題といたしまして今申しましたような関係から適用があればいいわけでございます。
  28. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 今の問題はこれはむしろ予算委員会でお尋ねすべき問題で、ここでは無理だと思いますが……。  その次に減価償却の特例でございますね、今の法案には出ておらないんですけれども、この減価償却をやる場合に、全国一律にやっているということに私は少し無理があるのじゃないか、同じ建物でも積雪寒冷地とそうでないところとは減価償却の年限を縮めるとかというような措置があってしかるべきじゃないかと思うんです。地域別な特例というものは御考慮になり得るか得ないかということをお聞きしたいんです。
  29. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) おっしゃる点はごもっともな点がございます。で、現行の制度におきまして、大体まあ法定耐用年数が一律にきめられておりますけれども、特に特別な事由がございますれば、国税庁長官の承認を受けた場合に限りまして、耐用年数の特例が認められることになっております。ただまあその認定の範囲が非常にむずかしいので、現在のところあまり適用がないわけでございますが、一応制度といたしましては、ございまして、寒冷地帯のみならず、たとえば事業におきまして、使い過ぎまして、この耐用年数は法定耐用年数ではだめだというようなときには、承認を受けまして特例措置が認められることになっておりますが、現実の面で運用の問題ともう一つは認定の範囲が非常にむずかしい、いわゆる地域給的にどこどこの地域まで認めるか、非常にむずかしいことになりまして、現実になかなかむずかしい問題でございますが、制度の道だけは開けているわけでございます。
  30. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 工業機械なんかの場合にはそういうことがあるだろうと思いますけれども、家屋などの場合になりますと、これは住民全部にかかってくる問題なんです。ところが、大きな会社とか何とかいうのは承認を得るということもできますけれども、一般住民はそういうことはできないわけなんです。ですからこれはむしろ認定を得るというようなことでなくて、別な方法で規定する方がよくはないか、こんなふうに考えているんですけれども
  31. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) お答え申し上げます。ただいま申し上げましたのは機械のみならず工場建物も入るわけでございます。ただその一般住民の家屋の減価償却をおっしゃられたのでございますけれども、われわれの所得計算の際には減価償却は一応全然無関係でございます。生活部分は償却とは関係ございませんので、住宅用の家屋につきましては減価償却の計算はございませんから……。
  32. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 営業用の。
  33. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) 営業用につきましてはできまするけれども、それも今申し上げましたように、非常に数の多いものの中から特に選びまして一々認定することができるかどうか、あるいはまたそういうところの建物はまた寒冷地帯向きにできているような点もございまして、あるいはそのあたりまで特例を認めますと、ほかの方は、また温暖地の家屋はまた構造も違っております。そういうような関係で、あまりに特殊別扱いいたしますと、温暖地帯の方の家屋につきましてもまた構造が違うというわけで、耐用年数の例外といいますか、特別扱いを認めろということになりゃしないか、こんな感じがいたしますのでなかなかその点普通のものにつきまして一律に取り扱うことはできないのじゃないかと、かように考えております。
  34. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 それができないとすれば、修理費を相当認めてもらえるということであるけれども、これもまたなかなか困難らしいのです。修理費を認めてもらえば……一体耐用年限というやつは修理のいいか悪いかということによほどかかってくるわけです。修理が悪ければ耐用年限は持たない、修理がよければ耐用年限以上に持つ、それで所得税の場合にどうしてもそういうことがやりにくいならばその地域々々の税務署で修理費というものを必要度程認めてもらえば同じ結果になるわけですが、これも考慮できませんでしょうか。
  35. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) 非常にむずかしい問題でございますが、たとえば東北地方に雪が降りまして毎年雪かきが要るというような場合に私は経費じゃないかと、かように考えております。そのほかいろいろな点がございますが、税務の実際におきましてそこまで認定することができるかどうか、これは具体的には認めなければいけませんけれども、一律に取り扱うということは、中央から指示いたしまして一律に取り扱うということはなかなかできんのじゃないか、現地によりまして具体的に認定してやるべきじゃないかと、かように思います。ことに修繕費と資本支出の範囲は非常にむずかしい問題でございます。この点につきまして画一的にやりますとかえって弊害が出て参りますので、これは具体的に税務署で判断していただいた方がいいのじゃないか、かように考えております。
  36. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 修理費の場合に私は一律に認めろというんじゃないんです。ただ税務署があまりやかまし過ぎるんです。修理費をなかなか認めないんです。そういうところをもう少し税務署の方で実情に即して修理費を認めてもらえば問題が起らないんですが、これを私は決して一律に修理費は何パーセント認めよと、こういうんじゃないんですよ、これは取り扱いの問題なんです。取り扱いがあまりに厳重過ぎて、そのために不平が起っている、こういうことなんです。
  37. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) 私どもの地方においてどの程度の修理費の取り扱いができているかつまびらかにいたしませんが、先ほどもお答え申し上げましたように、資本支出と修繕費の関係はなかなかむずかしい問題で、なるべくトラブルの少い方法を私ども考えて通達などもいたしておりますけれども、具体的な適用範囲になると非常にむずかしい問題がございます。そのあたり十分調査いたしましてなお研究してみたい、かように考えます。
  38. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 これは私、次の問題ですが、回答を求めようとは思いません。例の名義貸しの問題ですが、これをどの程度にどうするということは影響が大きいと思いますので……。ただこれをあんまり厳重にするとか、申告についてあと非常にやかましい調査をするとかいうことになると、大きな混乱が起きると思う。この点は一つ十分注意して混乱の起らないようにやっていただきたいと希望を述べておく次第であります。
  39. 廣瀬久忠

    委員長廣瀬久忠君) ではこれでしばらく休憩いたします。    午後二時三十五分休憩    —————・—————    午後四時二十一分開会
  40. 廣瀬久忠

    委員長廣瀬久忠君) 休憩前に引き続き質疑を行います。
  41. 野溝勝

    ○野溝勝君 私、財政上について非常に疑問の点がありますので、国税庁長官がお見えになりましたのでお伺いしたいと存じます。財政はもちろん政策といたしましては公平を期することであるという点はよくわかるのでございますが、特に日本のような戦後における底の浅い経済のもとにおきましては、より一そうこのことが痛感されるのでございます。特に戦後におきましては、財閥、軍閥が解体されまして、ようやく民主的な日本ができると思っておりましたところ、またぞろ昔のように、三井、三菱、安田、古河、住友というような名前ではございませんが、戦後新たなる財閥体系ができてきたわけでございます。しかし依然として日本の経済の底が浅い。人民の生活は決して安定はしておらぬのでございます。かようなときにさような財閥体系ができて、いわば独占資本体系になってきたわけでございますが、こういうような事実に対しまして長官はどういうふうにお考えになっておられますか。この点をまず一つお伺いしたいと思います。
  42. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) 野溝委員のおっしゃいました財閥の復活といったような考え方、これはいろいろな見方があろうと思っております。新しい形で出ておりますから、必ずしもわれわれは財閥の復活といったような言葉でこれを云為するのが正しいかどうかという点については疑問を持っておりますが、ただわれわれといたしましては、要するに課税は公平なものでなければならぬ。税法は適正に執行されなければならぬ。税法自体の御審議は国会でなされ、国会で法律をお作りになるわけでございまして、われわれといたしましては、結局作られました法律を適正に施行していくということにおきまして、公正な負担を各人がしていただけるようにということで日夜努力しておるわけでございます。
  43. 野溝勝

    ○野溝勝君 きょうはこの問題で掘り下げて論議いたそうとは思いませんが、特にお聞き取りを願いたいのは、本員は社会党ではございますが、労使の問題につきましては、もちろん労働者を擁護するために主張いたします。しかし日本の産業に対する問題は日本の産業事情から論ずるし、日本の民族産業を守る点については、人後に落ちないつもりであります。この点についてはいかなる機会におきましても、アメリカ依存ないしはアメリカの独占資本の日本に対する経済収奪のからくり、動き、かくして日本産業への圧迫、こういう点については、私は本委員会においても敢然として日本産業を擁護する立場において発言しております。しかし国内における経済事情からみて、特に税制方面からこれを検討すると、ただいまの長官の御答弁とは逆な方向に事実はなりつつあるのでございます。その点に対して長官は税の公平を期する、その点に努力しておるという御説でございますが、私は今、各会社のあるいは日本における巨大産業の事情、戦後における経済の発展の度合い、比重等を一々ここで申し上げようとはいたしません。しかし長官自身よく検討されればわかる通り、戦後は巨大産業の擁護といたしまして、戦後の物価体系を見ればわかるが、内容は、昭和九年、十年、十一年の三ヵ年間の平均をこれを基準年度といたしまして、農村の物価は六二・五、工業生産物においては、ただいま大臣も来られましたからお聞き取りを願いたいと思うのですが、六五の率による物価体系規定した。これから見ると、二・五だけ工業生産が利益を得ておる。さらに池田さんの前大臣のとき、産業合理化法を作り、巨大なる産業資本閥は資金的にも非常に恩恵を受けております。こういう状態でございますので、詳しくは申し上げませんけれども、すでに計数的に示されています。税体系に関し能力を持たれておる長官でございますから、(笑声)わかっておられるのであります。ですから大臣と相談されまして、日本の財閥体系に対する課税の比重という点を一つ考えてもらいたい。時間の関係ですからこれ以上あなたからお聞きしたいとは思いません。いつか機会を見てゆっくりとこの点をお話と、また御意見を聞きたいと思います。  それに関連して、私が新興財閥体系として申し上げておきたいのは、人民これを称して新財閥体系と称しておるのであります。それは戦後におきまして飛躍した収入族と申しましょうか、そういう階級があるのでございます。それはたとえば歌手特にビクター、コロンビア会社と契約ある人、私は芸術を否定するものではございませんが、映画俳優の方々、あるいはそれに類した方々、特に労働に対する報酬として優遇されることはけっこうですが、あの莫大なる給料を与えて、それで一方日本の古典芸術家たちとの待遇格差、芸術家として非常に虐待されている、これが賃金差といいますか、収入差の開きに対しまして、どこに一体こういった矛盾があるのかということをわれわれは疑問に思っております。ところがそれが競って映画会社あるいはそれぞれの会社が特定の俳優なり歌手なりを採用せんため、会社間の競争となり、それが莫大な給料を払うから、そのはねかえりを今度は大衆に転化され、観覧料、高い入場料等を取られるわけです。政府当局としてはこの際大衆擁護のためにも、もっとこれを安く聞かしたり、見させるというようなことはできないものか。私は、そうするには、あなた方がよくそれぞれ関係業者と話しをして、お前さんたちが高い給料であまり抱えすぎるから、こんなに入場料を高くするのだということに話し合いができないものか。またそういうようなふうにして課税の公平なり、人民の疑惑を解くということに努力できないものか。この点を一つ所属長官からお伺いしたいと思います。
  44. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) 今お話しの、そうした歌手あるいは俳優という、いろいろな、映画俳優の給料の問題でございますが、その契約の金が高いか安いかといったような問題にわれわれが口を出すというのは、これはちょっとわれわれの仕事といたしましての範囲内の外にあるのじゃないかというふうに思います。ただしかしそういう人々におきましては、おのずから所得が高い。それに応じまして相当多額な税金負担していただいているということは、これは当然われわれの方の仕事でございまして、そういう面につきましても、調査その他につきましてはかなり的確に非常に努力しております。御承知のように、こういう人たちにおきましては、大部分の収入は所得税法によりまして源泉徴収の制度を受けております。従いまして収入金額が何ほどあるかという点についてはかなり的確な把握ができるわけでありまして、問題は経費がどれくらいかかるかという点が残るわけでございますが、何と申しましても収入金額がかなり的確につかまれておりますだけに、その場合の課税というものはかなり的確に行われるのじゃないか、かように考えております。
  45. 野溝勝

    ○野溝勝君 同僚委員から大臣を招かれまして質疑をかわすことになっているので、私はこの程度で、また後日この問題については一つ質疑をさしていただくことを了解を得まして、この程度で……。
  46. 平林剛

    ○平林剛君 私は大蔵大臣に対して先回質疑を残しておりました点をきょうはもっとこまかくお聞きしたいと思います。それは所得税法第六十一条関係の、いわゆる名義人の支払い調書を提出する限度額についてであります。先回、大臣にこの点をお尋ねいたしましたところ、まだ政府の考えがまとまっておらない。下僚において検討中であるから、まとまったら、いずれ考えをきめる。そういう趣旨のお答えがありました。そのあとで主税局長とこの問題について若干の質疑を行いましたところ、大体きょうあたり政府の検討した結論がまとまるというお話しがあったのであります。そこで政府の検討した結論がまとまったかどうか。各界から注目されておる点でありますので、もはや今日の段階では大蔵大臣の胸三寸の中にある、こう思われますから、大臣からその点についてその後の検討、結論に関してお答えを願いたいと思うわけであります。
  47. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 名義株の配当課税につきまして事務当局でその後検討しておることと思いまするが、ただいまのところまだ私のところに事務当局の考えは参っておりません。従いまして、できるだけ早い機会に事務当局の意見を聞き、自分の考えをきめたいと思います。
  48. 平林剛

    ○平林剛君 この問題について大蔵大臣が全く関心の外にあるということは考えられないことであります。今まである程度の事情についてはあなたも事務的にもお聞きになっているはずだと思うのであります。今考えられておりますのは、政令の中に限度額を設けよう、こういうふうに聞いておるわけでありますが、そうでしょうか。あなたは全くその限度額を引くということについても話しを聞いておらない。私は全く知らないという今の御答弁なのか。それともある程度の輪郭をあなたは御存じのはずである、私はきょうはそれをお聞きしたいのであります。
  49. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 六十一条の規定によっての申告義務をどの範囲にするかということは、負担の公平の問題もさることでございますし、また財界その他に及ぼす影響もございますので、事務当局がかなり慎重に検討しておることと思います。私もこういう問題を言い出した一人といたしまして、自分の気持は持っておりますけれども、まだ自分で十分調査する時間がございませんので、まだ最後の結論までいっておりません。
  50. 平林剛

    ○平林剛君 まあ最後の結論までいかないということは、場合によっては政令を出す必要がない、こういうようなお考えもありますか。
  51. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 私はそういうことは考えておりません。いずれはきめなきやあいかんと思います。
  52. 平林剛

    ○平林剛君 そういうことになるというと、結局限度額を幾らできめるかということが、今後大臣の判断を待つということになるわけであります。この間もその点についていろいろお尋ねをいたしましたところが、配当所得支払いに対する限度額が前の法律案審議の際に、政令として出されまして、これは大体一万円ということが限度として報告する義務がつけられたように記憶しているわけであります。今度の限度額については最終結論はつけられておらないということはわかりましたけれども、限度額をつけなければならない理由は一体どこにあるか。これを一つお尋ねいたします。
  53. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 名義貸しでない、自己所有のものにつきまして、従来からある程度の報告義務免除額があるのでございます。これはぐっとさかのぼって申しますると、二、三十年前は十三円、あるいは十八円、二十円というふうな限度になって参っております。最近では三千円あるいは年六千円あるいは年一万円ということに相なってきております。これはずっと昔からの惰性で参っているので、だんだんふえて参っておるのであります。しかるに今回の名義貸しの問題につきましては、これは過去数十年間と申しまするか、戦前におきましては名義貸しを認めておりました。そうしてそれは行政裁判所の判例におきましても名義はだれであろうとも、実際の所得者に課税するという考え方と、一応名義人に課税するのだという考え方で訴訟もあったことがありますが、いずれにいたしましても名義貸しの問題につきましては、実際の所得者に課税するということでやってきたのでございます。しこうして終戦後の産業基盤が非常にごたごたした場合におきまして、実際払い込みその他につきましても、なかなか厄介な問題がございまして、日ごろの状態とは違ってきておるのであります。日本の経済が一たんこわれてしまって、再生しつつあるときであるのに……見方によりましては、もう戦後ではなくて、非常によくなったという見方もございましょう。従ってこういう過去の経過をたどって見て、今まで公然と認めておった名義貸しの問題を、今急にこれをやめるということにつきましては、相当産業界に影響することが大きいのであります。角をためて牛を殺すようなことはしたくございません。従いまして、十分株主の分布状態、また業態別にこれを検討いたしまして、私は適正な判断をやっていくのがいいのではないかと思っておるのであります。ただ限度だけを問題にしておられるようでありますが、一月、二月にきまったもの、あるいは昨年の十二月の決算期で二月に配当を受けた人と、それから法律通りまして、四月、五月、あるいは六月の決算期のものと、そうして三月の決算期のものとを、どういうようにするかということは、広い意味の限度でございまするが、市場の点やいろいろな点を考えなければいけない。こういう議論を私がいたしますのは、少し早過ぎると思うのでございますが、御承知通り、最近は名義貸しの問題につきまして、株が上ったり下ったりすることを考えますと、これは単に、私は事務当局ばかりではなしに、全体の経済の見通し等もつけて、慎重に考えなければならぬ重大問題だと思います。
  54. 平林剛

    ○平林剛君 今まで名義貸しが公然として認められていたというお話がありましたけれども、実はそうじゃないのじゃないですか。税務官吏は質問検査権というものがあって、本来であれば、調べが十分届いていなければならぬはずである。ところが、税務官吏が質問検査権を使って調べようとも、証券業者の方では態度をあいまいにして、応ずるかのごとく、応じないかのごとく、これをぼかして、現段階においても、一体幾ら名義貸しがあるかということを政府自体がつかめないでいる。こういう実情でありまして、公然として認められていたという大臣のお言葉は、少し筋が違うのじゃないか。また今度法律をここに出してきた趣旨は、それではどういうことにあるのか、これが不明確になってしまう。もう一度この点をお答えいただきたいと思います。
  55. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 所得に対しまして、税務官庁の調査権限は、もちろん所得税法規定してございます。しかし、実際問題として今度御審議願っておるような条文がございませんので、なかなかそれが実行できないというのが、公然と認められたといいますか、事実上ほとんどできなかった。あるいは今までにおきましても、税務の特別調査、あるいは査察による調査によりまして、相当出たのもございます、出てきてわかりました分は、もちろん所得税法上の規定によりまして、課税はいたしておるのであります。だから今回の御審議を願うような条文を置きましたことは、法律上当然にこの問題ができるようにいたしたのでございます。
  56. 平林剛

    ○平林剛君 公然と認められていたというお言葉が、事実上できなかったということで、御訂正がありましたから、この問題についてはあまり触れません。しかし、今この法律を提案をした趣旨についてお話しがあった通り、当然脱税なり、税の公平の建前から、この改正が必要になったということは、言うまでもないことであります。それにかかわらず、今、大臣の方では、限度額をいろいろな事情から考えなければならぬ、こういうお話であります。いろいろな事情とは一体どういうことであるか、もっと一つ具体的にお聞かせ願いたいと思います。
  57. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 公然と認められておったということについての追及でございまするが、これは税務官庁の所得税法による調査権限によりまして、これは調査はできたのでございます。しかし一般的に、証券業者に、名義貸しの内容を一々出せと、こういう規定はなかった、そう御了承願いたいと思います。そういうのでございます。従いまして、公然とは、全部の証券会社に名義貸しを出せということは、これは所得税法からはできません。しかし今度はできるようにする。今まで公然と認められておったということは、個々の問題につきましては調査ができます。しかし、証券業者にお出しなさいということはできなかった。こういうことを言っておるのであります。いろいろの問題があるということは、これは人の心理状態から申しまして、税務当局にはそういう権限がないのだから、たまたまほかのことで調査をせられて、見つかればいたし方がない。このままでいけば大体見つからぬことだと思ってやっておられる人がおありなんです。そういうのを今度一ぺんにぱっとやって、そうして過去からずっとやり来たったことと同じように取り扱うことがいいか悪いか、これは問題でございます。そういうところがいろいろな点という一つでございます。
  58. 平林剛

    ○平林剛君 私に言わせれば、いいか悪いかという判断の余地など少しもないのじゃないか。一般の国民が、こういうような方法で脱税をするということ自体が税法上間違いであって、これに対しては、やはり一般の国民と同じように納税をしてもらう。税を負担してもらうという建前がほんとうである。それを、今伝えられておりますように、一銘柄について一万円だ、五銘柄が限度額であるというようなきめ方をすることは、いろいろな事情というけれども、それ以上に、私はこの事実を一般の国民が知ったならば、やはりこれは適当でないというふうに思うと思うのです。だから私はいいか悪いかの判断の余地なんか少しもない。それは、証券市場の影響ということを考えなければならぬとか、大衆の投資について考えなければならぬという理屈はあるかもしれませんが、じゃ、それは一体どういうものかということを突っ込んでいけば、それは見せかけの理屈にしかすぎない。証券市場の影響が一体どれだけあるかということは、これはなかなか具体的に示せるものでもない。また大衆的な投資と、こう言われるけれども、今伝えられているように一銘柄一万円、五銘柄までというようなことだとすれば、これは元本から考えれば相当大きな租税負担能力を持っている人たちです。そういう意味から考えますというと、一銘柄一万円ということ自体だって私はけしからぬ話だと思う。この点について、もう少し一般の国民が納得するようなお答えを大臣から承わりたいと思います。
  59. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 私は一銘柄一万円、五銘柄というふうなことは聞いたことはございません。その考え方は、私はいかにも今までのものにとらわれているのじゃないかと思う。今までのものは、記名株であって、名義貸しでない分も、一年間一万円までは届出しない、こういうことに相なっておった。そうして今までの分は何も五銘柄に限っておりません。株式を分けさえすれば、十銘柄でも二十銘柄でも百銘柄でもできます。だからあなたのおっしゃるような一万円以下五銘柄というふうなことは、何か新聞にはちょっと載っておったようでございましたが、私は考えたことはない。  それから今の記名式の分を一万円にするのがいいかどうかということは、これは限度の問題でございます。しかしこの問題は経済界の進展につれて、先ほど申し上げましたように、二、三十年前は十二円、十八円、ずっとふえてきたわけであります。最近におきましては三千円、六千円、一万円ときた、こういう趨勢も考えなければならない。しかも今までは税法調査しないということになっておったのが、今度調査するのでございまするから、こういうことにつきましては、いいことをやろうとしているのだが、その分は摩擦があってもあしたからやらなければならぬというものでも、政治というものはないと思う。徐々に、影響を少くして、なるべく早い機会に本筋に返していくことが政治だと思うのであります。従いまして、名義貸しをいかにきめるかによって株がどれだけ下がるか、これは持っている人の株ではございません。今まで記名式で普通にやっておる方に影響するのでございます。たとえば、だいぶ平林さんお詳しいようでございますが、今、一つの銘柄を二十万株、五十万株売り出した場合に、その株がどうなるかということはおわかりでございましょう。しこうして私の見るところでは、一人で五十万株、百万株を持っておられる方がおありのようで、名義株、そういう点を考えますと、今まで一万円だったから今度もすぐそれを一万円にしろといったときに、その五十万株を五十軒のたとえば証券業者に預けるというふうなことにもせられぬことはないわけです。だから預金利子の問題でも、十万円までは免税だということを二十万円にいたしまして、それで一千万円持っておる人が五十口同じ銀行に預けたというときにはどうするかというと、銀行は非常に手数がかかるわけです。私は昔、財産税をやりましたときに、ある銀行の支店に三千円というのが六百数十口ございました。一人の名前で。私は三千円というのは六百口あるからこれはとるべしというので、三千円未満は取らないけれども、三千円以上は取るというのでやったことがございます。いろいろな逃げ道がありまして、その逃げ道を変なことをしないような方法でいかなければ、政治をする人としてはなかなかむずかしいのでございます。いいことでございますから、徐々に直していきまするけれども、これは実態に沿うようなことをやらないと、先ほど申し上げましたように、角をためて牛を殺すというふうになってはいかぬというのが私の心境でございます。
  60. 平林剛

    ○平林剛君 まあ私も新聞やその他の情報からいろいろ証券業者あるいは大口投資家等の動きを知るだけでありまして、今大臣の言われたような点もあるかもしれません。ただ今日までの情報からいきますというと、あるときには一万円までだとか、それからしばらくたつと三十万円、五十万円ということ。私は議会においてこの点を追及して参りますというと、どうも国民感情からいってあまり幅の大きいのはいけないという批判が強くなり過ぎた。そこで最近では一番持ちこたえていた四大証券のうちの野村証券までがこのごろは投げてきた。こういうようなことまで伝えられてきておる。そこへ持ってきて先ほどから言われておるように一銘柄一万円ないし五万円、こういうようなことまで伝えられておる。ある意味では観測があるかもしれません。私が今一つの事例を申し上げたら、そういうことは考えておらない、こういうお話でありました。従って今後それをおきめになる場合に、先ほど例をあげたように、貯金の場合でも二十万円までは免税になっておるが、それを五口に分ければ百万円までいい。こういうことは正しいやり方ではない。政府のいろいろな貯蓄奨励の政策も、決して大口の資本家の脱税の幅を与えるというために免税の措置がとられているのではないと私は思うのです。そういう意味からいきますと、この名義貸の問題についても、やはり一般の国民の感情ということを考えて、あなたの、全般の経済界に与える影響ということは、もちろん大蔵大臣としては考えなければならぬ点かもしれませんけれども、十分その点は縮小する、できればゼロにする、こういうような気持が必要だということを、きょうは要望しておきたいと思います。  それから結局この法律がかりに作られましても、今度はいわゆる名義人が配当所得の支払いを受けるものは支払い調書を出さなければならぬ。しかし現在のところこの証券金融業者とそれから——きょうは渡邊国税庁長官が来ておられますけれども、その関係を見ておりますというと、徴税事務に対してはなはだ協力的でない。これはやはり私に言わせると、極端な言い方になるかもしれませんけれども、今の法のゆるやかなところを抜けて、いわゆる名義貸しの脱税者があることを証券金融界においてそれを認めている。道徳的にすでによくない事例だと思うのであります。国税長官が今まで衆議院の大蔵委員会においてお話しになったところでも、大へんその点苦心されておるということが言われました。結局今後かりにこの法律がきめられましても、証券金融界の方で協力的になる、法律の趣旨というものを正しく理解をして協力をしてくれるということでなければ目的が達せられない。従って、もしその裏づけがないとすれば、今度は法律でこういう規定をして、その後にまた税務官吏が質問検査権を使って大いに目的を達する、こういうことにしていかなければならぬ。この間も主税局長にその点をお話しをいたしまして、一体あなたの方の考えはどうか、こうお聞きしましたら、この法律がまとまれば、私が言ったような趣旨はある程度達せられると思うというお話しがありました。一つ大蔵大臣からもこの点についての保証を私に与えてもらいたい。
  61. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) この名義株の問題につきましては、御承知通り証券業者はこれは名義株だといって区分経理いたしまして、源泉で徴収せられた税金は証券会社の法人税から差っ引かないことになっております。そこでたとえば私が——私の例を引いてはいけません。甲なる者が株を持ちまして、二万円の配当がありました。そうすると源泉で二千円とられておる、そうしてまた一万八千円の一割は証券業者がとれば千八百円、そうすると三千八百円とられまするから、二万円にいたしましても一万六千二百円しかない。それを今度は、甲なる者が自分名義にいたしますと、二万円の配当を一万八千円もらいまするが、所得申告しますと国から二千円戻してもらえる、こういうことになっておるのであります。だから名義株が、その人の所得が何百万円、そうして上積みになるという場合はあれでございまするが、今ほうっておいて取られっぱなしになる、証券会社には源泉徴収したあとの一割は払っておりまするから、とにかく二割程度のものは捨てられておる。そのうち一割は国が取りっぱなしにしておる。こういう場合もあることを御想像願いたいのであります。で、これが総合所得税を納める人ならば、一割を犠牲にし、そうして証券業者に残りの一割をまた手数料として払っておる。だから私は、片一方におきましては脱税じゃない、徴税が多くなる場合もある、納税者が得する場合も非常にあるわけでございます。名義株……しかしいずれにいたしましても、法律をおきめ願えれば、その法律の施行に忠実なることは、これは行政官庁当然のことでございます。何も、私も国税長官も税の執行について違ったところはございません。
  62. 平林剛

    ○平林剛君 まあ従来、私はあとで大蔵大臣にその見解を尋ねたいと思っておるのでありますが、従来どうしても金融界に対する徴税事務というものはとかくの批判があったわけであります。証券金融業界もあるいは銀行関係においても、なかなか政治力がありますから、その政治力を使っていろいろな減税措置をやらせたり、あるいは徴税事務に対してもこれをなるべく有利なように防ぐ、こういう傾向が強かったのであります。私は租税特別措置法の点でも大臣に指摘しておきましたけれども、ここに一つの具体的な例がある。私は、この「金融機関に対する預貯金の調査について」という見出しで国税庁長官が各国税局長に通牒を出しておる。この通牒を見ますというと、金融機関の調査に当ってはいろいろな制限を設けている。結論としていえば、こういう金融機関の預貯金が実際上できないような仕組みになっている。そしてこの通牒を読みますというと、今後預貯金の調査をなす場合においては、税務署長の証印のある書面を調査先の金融機関に提示する。こういうことまで書いてあるわけであります。一般の国民の中において、税務官吏が質問検査権、その他の権能を使って調査をする場合でも、こんな手厚いようなやり方をもってやってくれてはおりません。金融機関あるいは金融界にだけどうしてこういう恩典を与えるのか、私はまことに不思議な話だと思っておるわけであります。この通牒を見ると、昭和二十六年十月十六日、国税庁長官の通牒になっておる。こういうようなことは、政府において再検討しなければならぬ問題ではないか、私はこういうふうに思うのでありますが、一つ大臣も、手元にこの通牒が行っていると思いますから、ごらんになって、あなたの御見解を承わりたいと思います。
  63. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 昭和二十六年に国税庁長官から出しました通牒は、私がこういう通牒を出すように命じたのであります、出した方がいいと。それは当時所得税法規定に従って、全面的に預金調査をやるというふうなことも聞いておりましたし、いろいろな点で行き過ぎの点が私の耳に入りました。経済再建途上において最も微妙な関係を持つ金融機関について、しかも公的性格を持つ場合において、これは所得調査が絶対必要でございます。しかし全般的に大網をかけてやるというやり方は、しばらく見合せた方がいい。こういうようなことは調査はしてよろしい。しかしその調査には、これは必要だというので税務署長が証印するようにしろ、こういう指令を出すように国税庁長官に話した記憶はございます。その後どうなっておりまするか。昔は、そのころは源泉選択の制度がありましたか、あるいは預金課税をいたしておりました。そういういろいろな点がありますので、預金は無税にしたというふうなこともございます。それからだんだん経済かよくなってきましたから、今回、原則の無税というのをやめて有税にするが、経過的に長期契約については二年間無税にする、こういうふうに相なったのであります。だからやはり租税の負担の公平を建前とし、調査の厳密なることをこれはモットーといたしまするが、やはりそのときどきの経済情勢によりまして、理想は理想でございまするが、理想に近づくように、そしてまた将来の日本の経済がよりよくなるように、各方面から考えて措置しなければならぬことだと私は思っておるのであります。
  64. 平林剛

    ○平林剛君 ただ銀行関係に対する税金上の恩典は、初めは税金をとっておる。いろいろな経済上の理由をつけて、その後世論が非常にやかましくなったので、銀行利子の免税をやる。最近は税金をとらないようなことにした。そこに持っていって徴税上の疑惑のあるときに、こういう銀行に対して、国税庁がいろいろな制約を受けて、二重にも三重にも恩典を与え、一般の国民と違うような恩典を与えるということは、これは一面において貯蓄の増強、資本の蓄積という政治的な目標がありましても、あまりに不当ではないだろうか、こういうふうに思うのであります。またこういうようなことをたびたびおやりになるということは、国民から多大の疑惑を持たれる。一体何のために金融機関の預貯金の調査だけに限ってこういうかきを設けるのだろうか。税務署長の証印がなければ金融機関の調査に行けないということならば、大物の政治家が行って、おい一つこのことについては何分頼むよ、こういうことが行われれば、ある程度手心を加えるということもできるのではないか。そうしてこういう通牒を出す裏には何かありはしないかというような、よけいな疑惑を生むというようなことになると思うのであります。今日のように銀行利子に対しての無税、その他いろいろな恩典が加えられておる時期におきましては、こういうよけいなワクをはめる必要はないじゃないかと思うのであります。昭和二十五年と今日では相当期間がたっておるわけであり嵐して、大臣もこの点については一つ御検討を願って、適当な措置をとっていただきたいと思いますが、いかがですか。
  65. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) この通牒は、税務署の職員が特定銀行に、こういう預金を全部出せ、こういうことは行き過ぎだから、必要なときには税務署長に相談して行け、こういう意味なんであります、えてして過去におきまして行き過ぎの点がございましたので、こういうことにいたしておるのであります。で、これは税務執行上のあれで調査するなというのではございません。ただ銀行も一つの公共企業であると同時に営利機関であります。やたらに預金の調査で、何十万円以上の人を出せとかというのではいかぬから、銀行の預金の秘密性と申しますか、こういうものについては、やたらに網をかけて調べるのじゃない、調査のときには手続をとって調査しろ、こういう意味でございまして、これを免税の方へ置こうとか、あるいは治外法権的な考えにしようという意味ではもちろんございません。
  66. 平林剛

    ○平林剛君 この資料の提出はきょういただいたわけでありまして、私はその実態についてはまだ全般的な調査が届いておりません。今の大臣のお答えだけでは満足できませんから、適当な機会にもう一度この点についてあなたの御意見を伺うことにいたします。  名義貸しに関する質問はこれで一応終ります。  今度は、昭和三十一年度における税の自然増収の点について大臣の御見解を承わりたいと思います。  昭和三十一年度も大体三月の末近くなって参りまして、税の自然増収が一体どれくらいになるだろうかということはほぼ明瞭になってきたと思うのであります。新聞その他では私も大体承知はいたしております。先般三月十五日に大蔵大臣は、衆議院の大蔵委員会で、同僚議員からの質問に答えられまして、当初大体九百三十億から九百四十億円という見込みであったが、その後の状態がきわめてよくて、一千億円を上回るというようなお答えを承知いたしておりますが、この際もう少し詳しく三十一年度における税の自然増が幾らになるかということを委員会に対して御報告願いたい。これは大蔵大臣でなくてもけっこうでございます。
  67. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) ここ四、五日の収入状況は見ておりませんが、五、六日前は、私の見込みでは一千百億円前後と見通しをつけております。今月は三月三十一日が日曜日でございますので、少しぐらいは狂いがあると思います。一千百億円ちょっとぐらい上回るんじゃないかと思います。そのうちおもなるものは、やはり所得税法人税、おのおの三百七十億から九十億、法人税は三百六十億から三百八十億程度にいくと思います。その次はやはり関税でございます。関税が百億、それから酒税、こういうふうに相なってくると思います。
  68. 平林剛

    ○平林剛君 まだ参議院の大蔵委員会に対してはこまかい資料の提出がありませんから、新聞その他では私承知しておりますけれども、別に事務当局の方からこの資料を出しておいていただきたいと思います。将来の参考にしたいと思っておるわけであります。  そこで、大体自然増収が昭和三十一年度においても予想よりはるかに大きくなるということは、現実の問題として現われてきております。私ども、初めはこの自然増収が水増しがないか、あるいは今後の自然増の根拠に誤差が出ないかということを非常に心配をしておったわけであります。この心配が全く消えたというのではありません。全く消えたというのではありませんけれども、衆議院の大蔵委員会で、この間も公聴会が開かれて、幾人かの参考人がおいでになったときに、高木教授が、大体昭和三十二年になるというと、自然増収は二千五百億円ぐらいになるのじゃないか、こういうような説まで言われておる。大蔵大臣は、われわれが三十二年度の千九百二十億は水増しじゃありませんかと、こう言うと、いや、それは水増しじゃない、絶対に確信がある、こういうふうにお答えになる。それならば、逆に解して、高木教授の説などからいうと、こんなに自然増収があるということだが、これをこえるのではないかと、こう言うて質問するというと、大体二千億円ぐらいが妥当ではないかと、こういうふうに答えられまして、ばかに最初の線を固執しておられるようであります。しかし百歩譲りまして、大体今の状況からいくというと、その中身は別にして、かなり政府の思ったよりふえるのではないかという予想は強いことは強い、私もこれは認めます。そこで、もし自然増収が政府の予想よりも大きくなった場合、今後その財源を使ってどういう政策をやるか、これは岸内閣としては、今後そういうことを総合的に検討して、新しい政策をお立てになると思いますけれども、私はこの場合は、やはりもう一度減税政策を実行に移す必要を感じておるわけであります。臨時税制調査会において今度の減税案が検討せられた当時の自然増収は、わずかに六百億か七百億円ぐらいのところで議論をしておった。ところが案に相違して、昭和三十一年度においても千百億円をこえる、こういう見込み違いがあったわけでありますから、そういう意味でも今の一千億円減税という基礎というものはくずれ去っておるわけであります。議会においていろいろ公聴会を開いて参考人をお呼びして御意見を聞きますというと、異口同音にこういう場合においてはなお税制に手直しを加えるべきであるという主張をされている。現段階においては、政府としては現在提出されている所得税法等、税三法を通過させることがお考えであるとは思いますけれども、明らかにこういうことの予測せられる場合、将来なお減税について検討する用意があるか、大蔵大臣に一つ御見解をお聞きしたいと思います。
  69. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) せっかくの御質問でございまするが、私は大体二千億円程度の自然増収が動かないと見ております。従いまして、大蔵委員会で慶応の高木君が二千七百億円と申しましても、大蔵大臣としては、そんな数字を仮定して今後の財政施策はお答えできません。
  70. 平林剛

    ○平林剛君 現在はまだ仮定の問題でしか議論ができませんけれども、あなたは大体もう二千億円程度だと、こう言われるけれども、今までの、政府が臨時税制調査会に提供したときの見積りでは、五百ないし六百億円である。ところがそれの二倍に当る自然増収があったわけです。大蔵大臣は今、私の見込では二千億円だと、こう言うけれども、今日はだれも信用しませんよ、そういうのは。そういうことになりますというと、やはり国民の代表として、議会においでになった公述人たちが、国民の声を代表して述べられているように、やはり今後の税制改正に足りなかった点については十分手直しをするという態度が、私はやはり責任者の謙虚な態度ではなかろうか、こう思うのですがね、どうでしょう。
  71. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 自然増収がどれだけ出るかわかりませんので、私はあまり出ないと見ているのであります。過去の歴史を考えてみましても、自然増収が一番たくさん出ましたのは昭和二十九年であったと思います。昭和二十九年の一兆円予算、あのときは一兆円予算をするために、歳入を相当軽く見まして、そうして歳出を一兆円以下に切り詰めたわけであります。そういう無理な歳出をあれするときに、やはり自然増収が六百九十億出たと思います。そうして当年度に四百数十億円、その次の年はこれは二百六十億円ぐらいしか出ない、こういうまあ大体二百億円程度でございます。今回千億円出たというのは、これは異常な、例を見ないところであります。こういうことをすぐあれしまして、二千五百億とか二千八百億円とか言われることは、何ぼ国民の代表であるとおっしゃっても、私は直ちに信じ得ません。しかも税制調査会で六百億とか九百億とか千億とかいうのを、昭和三十二年度の予算でもし大蔵事務当局で言ったならば、私はその点は誤まりだ、私があのときに大蔵大臣だったならば、昭和三十二年をもっとこう見るのだと言いたいくらい。だから私は予算を編成します場合におきまして、常に事務当局は引っ込み思案なんです、大蔵省というものは。しかし私は新聞記者にもしゃべっておりますように、九月の決算はいいと、十二月の状況を見なければならぬ、そうして年末の調整を見なければいかぬ、一月の十二、三日ごろぐらいが自然増収の山だと、こう私は言っておったので、相当そうなるとしては自信たっぷりのことを言うとおっしゃるかもわかりませんが、過去大蔵大臣としてもたびたびやってきております。税の方につきまして数十年苦労してきておりますから、大体私はこの見込みは動かぬと思うのであります。ただ最近におきまして賃金の上昇、ことに仲裁裁定等、また労働争議につきまして、最近の見通しで給与所得がどうなるかということは、ある程度あれでございまするが、私は全体の問題としてそう多くを期待し得ない。だから議会当初におきましては、水増しとかいろんな議論がありましたけれども、私は水増しでない、そしてそれよりももっと多いだろうと、今度は、最近いろんな議論が出るようでございますが、そう楽観は許さないと見ておるのであります。
  72. 平林剛

    ○平林剛君 その点はあなたが大蔵大臣であれば臨時税制調査会にああいう数字は出せなかったと、こう言われるわけだけれども、しかしあなたが大蔵大臣であるなしにかかわらず、政府としてやはり出されたものでありますから、臨時税制調査会で議論したときの提出した資料というものは、大きな誤りがあったということの事実だけは消すことはできないと思うのです。また今後、今あなたが非常に信念のある気持で自然増収についての見解を述べられたけれども、またこの問題がはっきり見定まってくるときに、さてどういうものであるか、そのときまで大蔵大臣をやっておられるなら、これはあなたに政治的責任を追及することができますけれども、そうでないまた大蔵大臣が来ると、私があのとき大臣であったならば、実際はもっとあったと思うと、こう言われてもまた困るわけです。今日の段階ではこれは水かけ論になりますから、これ以上追及いたしませんが、私どもとしてはなお残された税制の問題についての質疑を通じて、大臣に対してももう少し、税制計画を立てた基礎が違っていたのだから、その違っていた事実に基いて何らかの必要な修正を加えるべきである、こういうことを申し上げたいと思います。  きょうはまあこの程度にして、次回にまたお尋ねをすることにします。
  73. 廣瀬久忠

    委員長廣瀬久忠君) それでは本日は質疑はこの程度にして散会いたします。    午後五時二十二分散会