運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1957-03-22 第26回国会 参議院 大蔵委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月二十二日(金曜日)    午前十時四十一分開会   —————————————   委員異動 本日委員武藤常介君辞任につき、その 補欠として前田佳都男君を議長におい て指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     廣瀬 久忠君    理事            木内 四郎君            西川甚五郎君            天坊 裕彦君    委員            青木 一男君            岡崎 真一君            塩見 俊二君            高橋進太郎君            土田國太郎君            苫米地英俊君            大矢  正君            野溝  勝君            杉山 昌作君   事務局側    常任委員会専門    員       木村常次郎君   説明員    大蔵省主税局税    制第一課長   塩崎  潤君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○所得税法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○法人税法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○租税特別措置法案内閣提出、衆議  院送付) ○中小企業資産評価特例に関す  る法律案内閣送付予備審査)   —————————————
  2. 廣瀬久忠

    委員長廣瀬久忠君) これより委員会を開きます。  議事に入ります前に委員異動について御報告申し上げます。本日付をもって武藤常介君が辞任され、その補欠として前田佳都男君が委員に選任されました。   —————————————
  3. 廣瀬久忠

    委員長廣瀬久忠君) 所得税法の一部を改正する法律案外十三件を便宜一括して議題として、質疑を行います。
  4. 土田國太郎

    土田國太郎君 中小企業資産の再評価についてちょっとお伺いいたしたいのでございますが、この前の再評価をやらないもの、または八〇%に達しないものも、もう一ぺんできるのですか。二回目のものですね。
  5. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) お答えを申し上げます。中小企業資産の再評価特例に関する法律案は、税金の部面に関しましては私の所管でございまするけれども一般的には理財局所管になっております。ただ私の知り得る範囲においてお答え申し上げます。  今回の再評価のねらいが、前回二十九年に行われましたところの資産評価におきましては、資本金五千万円以上の会社、それから資本金五千万円未満でございましても、資本金が三千万円以上でありまして、再評価をいたしますれば減価償却資産価額が一億円以上になるものにつきまして、再評価強制したわけでございます。しかし一方強制しました会社のほかに、なおその他の法人、個人につきましても、再評価をいたしますれば強制されました会社と同等に扱う。ただ同族会社等につきましては、資本の組み入れ等につきまして特例がございますけれども、おおむね同等に扱う。かように取り扱ったわけでございます。ところが昭和二十九年は御承知通りに非常に景気がよくなかった、そういう関係で、強制されました会社は別でございまするけれど、一般的に強制されなかった会社につきましては、収益状況から再評価の決断がなかなかつかなかった、こういう状況がございます。そこで今回は新らしく再評価を認めることにいたしたわけでございますが、その趣旨は、前回強制されました会社、それから強制はされませんでしたけれども、やはり強制会社と同様に減価償却資産の再評価額限度額の八〇%以上を任意にやりました会社、これを除くことにいたします。その他の会社または法人につきまして再評価を認める。こういうことにいたしたのでございます。従いまして、今申しました資本金五千万円以上の会社、それから資本金五千万円未満三千万円以上でありまして、減価償却資産が再評価額で一億円以上であるというものを要再評価会社と言っておりますが、これを除きます。それからその他の会社におきましても限度額を八〇%以上行いましたものを除きます。従いまして大体中小企業がこの範囲に入ってくるのではないか、かように考えております。
  6. 土田國太郎

    土田國太郎君 そこで、この前まあ大体主力を大会社に置いたようなことになって、その当時あれは固定資産評価というものが伴ってくるんですが、あれは第二次か第三次に地方固定資産評価を再評価並みに上げないというような手続があったように考えていますが、あれは二次か三次だったですかね、何年間か税金を上げないという、地方税を……。そういうのがあったと思いましたが……。
  7. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) 第三次におきましては、再評価いたしました資産につきまして固定資産のような評価について特例がございます。御承知通り固定資産評価時価評価いたすことにいたしております。ただ減価償却資産につきましては、現実にはなかなかその時価というものがわからない関係上、大体簿価中心となって市町村におきまして評価基準となっておる事例が多いわけでございます。そこで、その再評価をいたしたその関係帳簿価額が上った、そういう関係固定資産税が上るというのも少し酷な面がありゃしないかということで、昭和三十年度から三十二年度までの固定資産税評価基準につきましては、昭和二十九年分の課税標準を大体そのベースにとれ、再評価をやりまして上ります分につきましては、評価を上げて課税の対象にするな、という規定企業資本充実のための資産評価等特別措置法の三十三条に規定がございます。この趣旨は、昭和三十年度から三十二年度までにいたしましたのは、御承知のように固定資産税評価というものは三年ごとに行われております。従いまして、昭和三十三年度に固定資産評価基準を新しく作り直すことになっておりますので、それまでの特例と、こういうことにいたしております。従いまして、今回の荷評価におきましては、もう来年が評価がえの時期でございますので、前回の再評価いたしましたものとのバランス上、今回の再評価特例法におきましては、固定資産については特に規定を設けない、一般に同様に三十三年におきまして固定資産評価をすると、こういうことにいたしたわけであります。
  8. 土田國太郎

    土田國太郎君 そうしますと、今度再評価しました中小企業地方税たる固定資産税は、三十三年まではやはり据え置きと、こういうふうに考えてよろしいのですか。それとも今度の再評価並み評価額地方自治団体は値上げになるわけですか。
  9. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) ただいまも申し上げましたように、第三次再評価を行なったものにつきましても、まあ三十二年度までの特例措置となっておりまするから、やはりそれらとのバランス上、三十三年度におきまして一般的に評価がえをいたします。ただ御承知通り固定資産税評価基準というものは時価でございますので、必ずしも再評価額にとらわれないのが本側でございまするけれども、一応まあ再評価額帳簿価額を下ってはならないという規定がございますので、それが中心として評価されることと思います。特例はございませんので、一般並みに三十三年度におきまして評価がえが行われるということになるわけでございます。
  10. 土田國太郎

    土田國太郎君 そうしますると、この前強制的にやられたもの、あるいは任意でも相当やった企業者は、この地方固定資産税で、三年間ですか非常な恩典に浴しておるわけですが、今度一番貧弱な中小企業が再評価するということになって、税金はなるほど三分の一になっておりますが、この地方税固定資産評価を直ちにやはり評価がえされてしまうということは大へんな痛手であって、中小企業としては困るという面に直面する立場になってくるんですが、いかがですか。これは大蔵省自治庁とお話し合いになりまして、中小企業を救うという意味において、同じくこの前の再評価をやられたように、地方自治庁とお話し合いになって、これも三年なら三年の間は、評価がえを、特に今度やったものは延期するというような法律をお出しになればいいわけで、必ずしも一緒にやらなければならないということはないだろうと思う。こういう臨時措置をおやりになる大蔵省のことですから、やはりその方面も一緒減免税措置をおとりになるのが当然じゃないかという感じがするのですが、いかがですか。
  11. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) お答え申し上げます。今回この特例法案によりまして、再評価いたすものにつきましては、おそらく現在の帳簿価格等は低いわけでございます。従いまして市町村評価いかんによりますけれども、おそらく第三次再評価いたしたものと同様に、昭和二十九年度の簿価あるいはそれ以下かもわかりませんが、それで固定資産評価されているのではなかろうか。従いまして、そういたしますと、第三次再評価をいたしましたものと同様に、やはり固定資産税は今までは低く評価されているのではなかろうか、かように考えております。従いまして、第三次再評価いたしたものが三十二年度まで特例を設けておりますのは、再評価をしたからといって特に簿価を上げないということのほかに、しなかったものとのバランス、それからまた評価がえの時期を考えました関係でございますので、一般的に第三次再評価をしたものとのバランスも考えまして、今度評価がえするならば不公平は起らない。また先に再評価いたしたものが損をするというようなことも不公平でございますし、第三次再評価をいたしましたものの中には、中小企業方々相当多いということになっております。  それからもう一つ理由は、強制をいたしました関係上、再評価強制することによって固定資産税簿価が上り、固定資産税が上るというのも少し無理じゃないか。今度はまた任意でございます。今申しましたような理由から、第三次におきましては相当中小企業者も再評価をやっております。それらとバランスをとりまして、一般的に評価をやり直すことは、かえってその方が公平ではなかろうか、かように考えております。
  12. 土田國太郎

    土田國太郎君 今、塩崎課長の御意見によりますれば、しない人は三年間そのまま安い評価でいったから同じことじゃないか、得しているじゃないかというような御意見のように私は拝聴いたしているんですが、その当時、第三次の再評価をおやりになった方は、これは三年前におやりになった方であるから、その点は利益かもしれないが、一面、そのために固定資産税以上の償却というものの額が非常に高率になっているわけです。だから固定資産税以上に再評価されたものは利益になっているわけだから、あなたの今の御説明がちょっと私には公平論としての納得ができないんですが、どうでしょうか。
  13. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) 御承知のように再評価というものはたびたび認めるべきじゃなくて、時期を限って認めているわけでございます。前回におきましても、中小企業者にはもちろん、中小企業者といわれなくても、相当大きな方々にも道が開かれておったわけでございます。そういうときに、収益状況の悪い人でも、中には決断いたしまして再評価税を払いながら再評価をしたという方もあるわけでございます。これらのバランスを考えてみますと、ことさらおくれて再評価をする、第四次の再評価の方がむしろ新しい恩典と考えるべきではないか。そういたしますと、先にやったものは必ず損するというようなことのないようにした方がいいのではなかろうか。御質問償却の点はございますけれども、今後におきましては、今度再評価をいたします方々には、やはり償却もおくれますわけでございますから、固定資産税との見合いからいいましても決して損にはならないのではないか、かように考えております。
  14. 土田國太郎

    土田國太郎君 もう一つ。それから中小企業要望は、今の地方税を、固定資産税を三年間、再評価を今度しても据え置きしておいてもらいたいという要望は、再評価税免税にしてくれ、こういう要望なんです。念のために申し上げておきますから、十分一つ御検討を願いたいと思います。
  15. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) ただいま土田委員の御質問に対しまして、第一の固定資産税評価の問題、これはお答え申し上げた通りでございます。で、再評価税免税の問題がもう一つ要望があるわけでございますが、再評価税をいかに考えるか、昭和二十五年から非常に問題があったわけでございます。この再評価税課税というものが、御承知のように金銭債権を持っておった者とのバランス、あるいは勤労所得者とのバランス、単純に物的な資産を持っておった者に対してだけ、貨幣価値の下落に応じますところの再評価を認め、それによりまして償却を多くして、利益から償却額を引き、法人税を免除する、あるいは法人所得税を免除することはどうか、御承知のように金銭債権で金を借りまして、物的資産を作りますそのものが全部株主に帰属するということは、果してどうか。金銭債権はそのまま貨幣価値が下落いたしましても、元のままの価値で返されておるわけでございます。それらからみますと、どうしても再評価税は取るべきではなかろうかということで、昭和二十五年から六%の税率で、一次、二次とやって参ったわけでございます。三次におきましては御承知のように強制ということが大きなスローガンで出まして、限度額の六五%までは三%取り、限度額の六五%をこえるものにつきましては無税、こういうことをいたしましたわけでございます。そのかわり再評価限度額の八〇%以上再評価したものに限り、しかも資本の組み入れ、減価償却配当その他につきましても、間接的な強制をいたしております。で、結果を見て参りますと、再論価をいたしましたところの法人の再評価税実効税率と申しますか、納めましたところの再評価税額と再評価差額との割合は大体三・四%くらいになっております。しかも三次の中には、収益が悪かったけれども企業健全化という意味で無理に再評価をした中小企業方々が多々あるわけでございます。従って、おくれたからといって、これを免税にすることはむずかしかろうということで、種々の考え方があったわけでございますが、ここで押えておりました人とのバランス、今申し上げました三・四%あたり基準でございます。これらを基準といたしまして、しかし今回はこれらの再評価をいたすものが中小企業であるということを頭に置きまして、二%と、かようにいたしたわけでございまして、しかもまた二年間の均分納税でございます。これを償却額比較いたしますれば、はるかに再評価をした方が得でございます。たとえば現実に十五年の耐用年数を持っている資産を再評価いたしますれば、大体償却率が一四%でございます。従いまして中小企業法人税は大体三五%くらいでございまするから、この一四%に三五%をかけますと、大体五%くらいになります。ところが一年閥に納めますところの再評価税は、二%の半分でございまして、一%、そういたしますと四%くらいは大体得をいたすということになります。ただいま申し上げましたのは法人税だけでございまして、そのほかに法人税割所得に対しまして五・四%、それからまた事業税課税標準は国税と同様でございますので、事業税の一〇ないし今回の改正案によりまして八の税率も出て参りますが、八から一〇%程度事業税に軽減されます。こういうことになりますので、二%程度課税した方が負担の公平が期せられるのではないか、かような考え方で私どもは御提案申し上げた次第でございます。
  16. 土田國太郎

    土田國太郎君 ちょっと塩崎さんにお聞きしたいのですが、この再評価をして——私は法人についてお伺いしますが、中小企業法人と同じことですけれども法人について聞きますが、再評価した従来の財産の評価と違う差額がここへ出ますね。十万円だか二十万円だか存じませんが、ある差額がそこへ出る。それとプラス積立金の何がしをその会社増資にする場合ですね。よろしゅうございますか。再評価差額プラスその当該会社積立金を何ぼかくずして増資する場合に、この再評価の分は無税でもよいのかどうか、またその積立金をくずして一しょに増資をする場合に、そのものについては源泉課税を受けるのか、これは株式を発行しなければ源泉課税はかからぬというような税法のように見ているのですが、それをいつまでもその会社が発行しない場合に、まあ無期限というわけにはいきませんが、ある時期まで株式を発行しない場合には、株主に対して積立金の分だけは源泉課税をされるのかどうか。
  17. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) お答え申し上げます。今回の中小企業の再評価特例法案におきましては、再評価積立金資本組み入れば再評価税を完納した日と三十五年一月一日のいずれかおそい日まで一応留保していただきまして、その後は資本組み入れを認めております。再評価積立金資本組み入れいたします際には、これはもとでも六%取っておりますから、資本組み入れいたしまして株主にいたしましたときには、これは課税いたさないことになっております。ただ増資いたします際に、往々にいたしまして会社利益準備金と組み合せまして抱き合せ増資をやる、こういうことが多いわけでございますが、そのあとの方の利益準備金資本に組み入れる分につきましては、これは配当と同様でございますので、これは配当といたしまして課税することにいたしております。従いまして利益準備金の部分だけにつきまして源泉徴収がある、こういうことになります。
  18. 土田國太郎

    土田國太郎君 それは株式発行の場合は源泉徴収をすることになるのだろうと思いますが、株式発行しなければ源泉徴収はできないことになっておるので、それを次の来たるべき納税確定申告をする時期でございますね、三月十五日なら三月十五日までに源泉課税ができないような場合ですね、株式発行しないで、その会社が。そのときにはやはり確定申告として届出をさせる必要があるのかどうか、その株主に対してですね、その積立金をくずしたものに対する、それをお伺いしたい。
  19. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) お答え申し上げます。利益準備金資本組み入れの際に今、土田委員御指摘の通り現実株式を発行する場合、単純に資本を組み入れましていく場合と二つあるわけでございます。私どもといたしましては、準備金資本に組み入れるのは配当と同様に考えておりますので、現実株式を発行いたさなくても、これは配当と見まして源泉徴収をいたす、かようなことになります。従いまして、歴年中に資本組み入れいたしますれば、その組み入れ額につきましては配当と見られますから、その通知を受けましたところの株主は翌年の三月十五日までに申告していただきまして、配当として申告所得税税金を、配当後ではございますけれども、納めていただく、こういうことになります。ちょっと、再評価積立金の全額資本組み入れの時期について申し上げましたが、正確に申し上げますと、大体二年間は一割だけ再評価積立金のまま置いていただきまして、九割は資本に組み入れてもよろしい。しかし全額組み入れることができる時期は、今申しました再評価税を完納した日かあるいは三十五年一月一日かいずれかおそい方、こういうことになっております。
  20. 杉山昌作

    杉山昌作君 所得税法人税臨時措置法等で小さい問題ですが二、三承わりたいと思います。  この所得税の今度の改正は、大体税率の引き下げで七百億円、いろいろの控除の引き上げ等で三百億円、合せて一千億円の減税だ、こういうことになっております。従いまして何か印象的には、中堅の所得層に対して非常に有利なあれで、低額所得あるいは収入少い人は不利だというような印象を与えるわけです。ところが今までの説明なりを承わっておると、必ずしもそうじゃないので、やはり今度の減税は、所得が少くなる人ほど減税工合は多くなるというふうな説明をしておられるわけなんです。そこで、これはむしろ逆に減税率が多くなるというよりも、結果的に、今度の改正をやった結果、一体実際の税を納める税額は、低額所得者は大体収入の何パーセント、中等の所得者はどのくらい、たくさん取っている人はどのくらいというふうな結果ですね、いろいろな途中の説明は省いて、改正の結果、一体どんなふうに累進程度がなっていくものか、その何か数字がありませんか。
  21. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) お答え申し上げます。杉山先生、「昭和三十二年度税制改正要綱」というのをお持ちでございませんか。現実負担から申し上げたいと思いますが、「昭和三十二年度税制改正要綱」あるいは「昭和三十二年度租税及び印紙収入予算説明」いずれかでよろしいのでございますが、現実負担が書いてございます。その十一ページの……どちらの方をお持ちでございますか。
  22. 杉山昌作

    杉山昌作君 収入……
  23. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) それの三十八ページをごらんになっていただきまして、三十八ページの、私どもがいわゆる夫婦及び子三人で標準世帯といっておるものについての今回の改正案によりますところの税負担の推移を見ていただくことにいたします。減税後の累進率がどういうふうになるかという点をこれによって明らかにいたしたい、かように考えます。三十八ページの夫婦及び子三人、現行改正案が出ておりますが、簡単にいたしまして平年分と現行とを比較していただきたいと思います。しかも累進率を見ます関係で、カッコ内が百円当りの納めるべきところの税額でございます。そういたしますと、三十万円の方々現行法におきましては百円当り二円十六銭納めていただいておったわけでございます。ところが今回の改正案によりますと、七十五銭になります。その次の四十万円のととろを見ていただきますと、現行では百円当り六円十二銭納めていただいておったわけでございますが、今回は三円十二銭、かようになります。その次が五十万円でございますが、五十万円は現行におきまして十円四十九銭納めておった。今回の改正案によりますと五円十四銭になります。だんだんと累進度がこれによって上って参りまして、一番右の欄の千万円のところを見ていただきますと、現在では百円当り五十六円六十二銭納めていただいておったわけでございますが、今回の改正案によりますと、平年分におきましては四十円四十銭。従いまして三十万円の百円当り七十五銭から千万円では四十円四十銭、かような累進になる。これが完全なお答えになるかどうかわかりませんが、こんなととろで所得税累進率は表われておりますし、私ども考え方といたしまして、定額所得者所得税負担も非常に軽くなるのだ、かようなふうに考えておる次第でございます。
  24. 杉山昌作

    杉山昌作君 なるほどこれを見ますと、改正案が平年度分で七十五銭から——三十万円ですか。
  25. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) 三十万円でございます。
  26. 杉山昌作

    杉山昌作君 三十万円のところは七十五銭しか出さないのに、千万円のところは四十円四十銭になるのだ。そうすると、一つカーブができるのですが、一体累進カーブというものはこのカーブが一体適当だというようなことは、理論的なあれか何かあるのですか。それともただ感じでよその国の税制は大体こんなになっておるのだ。あるいは前にはこうだったが、この程度になるのだと、まあまあこんな程度ということになるのですか、どうなんですか。
  27. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) 所得税累進カーブをどういうふうに描くかというのは、非常にむずかしい問題でございまして、財政学者あるいは租税学者の書物を見ましても、定説というものは見当らないようでございます。現実に一番私どもが頭におきますのは、やはり今の現行納めておる税額との比較ということをもちろん頭におきまして、それから負担軽減割合を考えまして作り上げるわけでございます。もちろんその際には、外国の累進率との比較もいたしますし、また今回におきましては昭和十五年あたり累進カーブ相当参考にいたしまして考えた次第でございます。適当なところというよりも、現実には今納めておる税金から見て、しかも所得階層がどの程度方々が多いか、これあたりを考えながら、減税どこらあたり中心として考える、累進カーブをどういうふうに描くかというのを考えてきたし、またそんなところが一つ基準にならざるを得ないのではないか、かように考えております。
  28. 杉山昌作

    杉山昌作君 それはそんなことかもしれませんですね。それはそれでいいとして、次に法人税で今度初めてこの人格のない社団法人に対しても課税するのだというふうなことを始めるわけなんですが、それでまずこの法文の方で改正の五条の第三項に「前二項の規定は、人格のない社団等について、これを準用する」とあるのですがね。その前項の問題はわかるのですが、第一項を人格のない社団等について準用するというのはどういうふうな意味になりますか。
  29. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) お答え申し上げます。この第五条の規定昭和二十五年に改正されました規定でございます。それ以前は公益法人につきましては全所得につきまして課税しておらなかったわけでございますが、昭和二十五年以来公益法人でも収益事業を営めば、その収益事業部分の所得に対して課税する。従いまして五条一項のかしら書きにございますが、そのかわり収益事業から生じた所得以外の所得につきましては課税しない、こういう規定を挿入したわけでございまして、逆に申し上げますれば、収益事業から生じますところの所得は、次のような列挙法人につきましては課税する、こういう趣旨でございます。
  30. 杉山昌作

    杉山昌作君 この第五条の第一項に掲げてある各種のものに対しては収益事業から生じた所得以外の所得に対しても課さないのでしょう。
  31. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) 五条の趣旨収益事業から生じた所得以外の所得に対しては法人税は課さないということに書いてございまするから、一条の納税義務者の規定は、法人には課税するということになっておりますので、収益事業以外の所得収益事業から生じた所得以外の所得に対しては課税しないけれども収益事業から生じますところの所得に対しましては課税すると、こういうことになるわけでございます。
  32. 杉山昌作

    杉山昌作君 課税するのですがね、今の五条の第三項に、第一項の規定を準用してみたところが、第一項の方では何々法人とかなんとかいうことにちゃんと限定されているのですね。ところが人格なき社団等に準用することになるのですか。
  33. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) 五条の一項の「収益事業から生じた所得以外の所得に対しては、各事業年度の所得に対する法人税は、これを課さない」、こういう規定を準用しておるわけでございます。
  34. 杉山昌作

    杉山昌作君 そうですか。そうすると、もう人格のない社団等については収益事業からの所得だけを課税する、こういうことを言おう、こういうわけですか。
  35. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) さようでございます。
  36. 杉山昌作

    杉山昌作君 そこで今度は何をもって収益事業とするかということで、これは先般三月十四日付の資料、衆議院にお出しになった資料をいただきました、これを見ているのですが、たとえばこういうものはどうなりますか、具体的な問題になりますと、タバコの耕作組合というふうなものがある、これは現在のところでは法人ではない、それでこれが組合員であるところの農家のために肥料の共同購入なり、農薬の共同購入なり、あるいは苗床で使う寒冷紗の共同購入なり、乾燥用に使う石炭の共同購入なりというようなものをやるのですね。それが、これがいただいた資料によってみると、資料の第一のカッコの二のカッコのト、そこに「継続的に事業場を設けて」云々ということになる。それで、たとえば今の場合は肥料は年に一回です。農家の肥料というのは年に一回しか大体やらない。それから寒冷紗は、やはり苗床は一回ですから年に一回、それから石炭も乾燥時期は年に一回だから一回、農薬もまあ大体その畑にタバコがある間だけ使うんだから、それも一回で済んじゃう。それぞれのものは一回ずつですが、しかしこれを合せれば、肥料をやり、農薬をやり、寒冷紗をやり、石炭をやり、ということが、時期的には半年以上に連続する場合もあり得るだろうと思うんです。こういうのはやはりその一つ一つのものが、何というか、年に一回というふうなものだからして、これは継続的にやっているというふうなことにはなりませんか、それともなりますか。
  37. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) 具体的なケースで、直ちに断定的なお答えはむつかしいかと存じますが、そういう共同購入的な事業が私どもの考えておりますところの収益事業に該当するかどうかが第一点の問題であります。いわゆる協同組合になりますれば、そこは共同事業でございまして、手数料を取りましても、あとではまあ事業量分配金の形で本人に返るわけでございます。そういう場合におきましても、事業量分配金につきましては個人の方で事業所得といたしまして課税しておるわけでございます。しかもまた協同組合の方に手数料が残りまして、留保所得になりますような場合に、あるいはまた配当所得になりますような場合には、これは法人税が三〇%ではございまするけれども課税になっておるわけでございます。まあそれと同様な形態ではなかろうか、さように考えます。ただその間に周旋業あるいは代理業的な手数料を取ってるか取ってないか、まずそこらが問題であろうと思います。そのあたりが判断の一資料だろうと思います。  その次は、継続的に行われるものかどうかという点でございますが、それはやはり協同組合と同様に考えて、まあ農家の経営というものは年に一回の肥料を購入します。その点は実体的には同じではなかろうかというふうに私どもは今気がいたしております。ただ現実の判定といたしましては、たとえばそれが手数料を取って行われるかどうか、あるいはたまたま行なって、その後はやらないというものであるかどうか、よく具体的に判定すべきものではなかろうか、かように考えております。
  38. 杉山昌作

    杉山昌作君 継続的にというのは大体そういうふうなことかと思いますので……。ただ今のそれが果して収益事業であるか。たとえばここには「物品販売」というような字が使ってありますが、まあ販売というようなことになりますと、需要を見越してあらかじめ仕入れる、それに若干のマージンをかけるというふうなのが常識的なんです。共同購入なんということになりますと、あらかじめ需要を見越すということは実際問題としてないんで、一々の農家から自分のところではこれだけ、あれだけという要望、希望を集めまして、集まった数量を注文する。ただ注文のときにただあっせんということじゃなしに、自分が買主として注文はしますがね、会社に対して。しかしそれは思惑とか何とかでやってるんじゃ、ない、ほんとの希望数量、集めただけのもので注文する、来たものは配達する、配達すれば、配達するについては、これは実際運賃なり何なりという実費がかかりますから、それだけは値段に吹っかけて出さざるを得ないと、こういうことになるんです。その点に何ら手数料とか、収益とか、利益とかいう意味でやるんでなしに、そういうようなことになりますね。そうすると、これはいわゆる販売というのとは非常に性質が違って、何としても収益事業であるというふうなことに言うのはむずかしいように思いますが、まあこれも具体的に今言質をとろうという意味じゃないですが、考え方の問題です。
  39. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) 現実にそういうものを物品販売業以外とするかどうか、あるいは先ほど申し上げましたように、公益法人収益事業は施行規則の一条の三において列挙されております。その中に周旋業あるいは代理業、これらに該当するかどうか、そこの判定だろうと、かように考えております。ただいまのお話のように実費の場合には、おそらくそこで一ぺん運賃を立てかえ払いをするというようなものは、現実に払いますれば、その人格なき社団の方には利益として残らないので、現実には法人税課税にならない場合が多いんではなかろうかと、かように考えておりますけれども現実にまたそれが利益が出ますれば課税になる、こういうことに私ども考えております。
  40. 杉山昌作

    杉山昌作君 それから今のこれは人格のない社団の問題でも、今の五条そのものの問題なんですが、これが二十五年に変ったというんだが、公益法人なんかは実際は公益的な事業は大体マイナスになって、これはまあ会費を納めてもらってやるというふうなものが多いだろうと思いますが、しかしなかなか会費も取りきれない、たまたまその公益法人の何といいますか、公益的事業と関連のある収益事業が行われる、その収益をもって公益の方の赤を埋める、会費の軽減をはかるというふうなことが実際問題じゃないかと思う。ことに人格のない社団でやっているのはそういうものが多いと思いますが、そういうことから考えると、一体法人にしても、公益法人にしても、あるいは今度の人格のない社団等についても、その公益の方の赤は赤でこれはもういいんだ、しかしその赤を埋めるために内部的に黒が出て、その内部的な黒は別計算でそれだけは課税するというのは、その公益法人あるいは人格なき社団法人全体の運営という面から見ると、非常に残酷なやり方だと、こういうふうに思うんですが、これは今度の改正よりむしろ二十五年の改正の問題ですが、一体そういうふうなことを考えて、五条を変えるというようなことは、あなたがたの方でお考えになったことが何かありませんか。
  41. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) 公益法人課税の本質にからむ問題でございまして、非常にむずかしい点でございます。二十五年の改正の際にも、その点問題になりまして、私どもは慎重に検討したつもりでございます。まあ課税趣旨が御承知通りに同種の事業を営む企業との競争上課税すべきではないか、こういうふうに考えまして、収益事業部分についてだけ課税するという趣旨規定を設けたわけでございますが、しかし何と申しましても、今申し上げましたような趣旨もございますので、まず第一点は税率を普通法人よりも軽減しております。現在におきましては普通法人は三五%ないし四〇%までございまするけれども、その公益法人収益事業部分の課税につきましては三〇%にいたしております。これが第一点でございます。第二点は、利益が上りましても、そのうちから三割部分は公益法人の事業の方につぎ込めばそれは損金と見る、従いまして利益百上りますと、三割は無条件で、公益法人の方へ入れますれば、七割に対して課税になる、従いまして現実税負担は二十一になる、かようになっております。これがまた社会福祉法人でございますれば五〇%まで損金に算入する、こういう制度を設けまして、その点の調整をはかったつもりでございます。
  42. 杉山昌作

    杉山昌作君 それから次に、臨時措置法の方の問題ですが、従来は第五条の四というので概算控除があったが、今度これをやめてしまったわけです。概算控除というのはどっちかというと所得税なんかでみますと、個人でも会社でも基礎控除的なものですね、非常に全体の納税者が潤うが、特に控除的なものであるから、低額の所得者に対しては非常に大きな恩典だったわけです。今度いろいろな所得税改正によりまして、負担の軽減をはかるから、この概算控除はやめてしまってもいいだろうというようなことでやめたのだろうと思いますが、一体ほんとうになぜ概算控除をやめなければならなかったかというその理由をもう一度聞かしていただきたいのです。
  43. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) お答申し上げます。この概算所得控除制度は、御承知のように昭和三十年度の改正の際に設けられました制度でございます。創設の趣旨が、アメリカに選択概算所得控除という制度がございます。これにならったと言われております。現行法におきましては、社会保険料控除、医療費控除、雑損失控除、この三つにかわるものといたしまして、それを支払っても支払わないでも所得の五%、最高一万五千円まで控除する、こういう制度でございます。現実に社会保険料あるいは医療費あるいは雑損失を受けたもの、こういう支払いのあったものについて、所得税法ではただいま申し上げましたように、控除の理由ありといたしまして控除しておるわけでございます。と申しますのは、担税力がそこで減殺されたからだと、こういうのがその趣旨でございます。ところが今申しましたように、社会保険料も払わない、医療費も払ったか払わないかわからない、雑損失もほんとうに盗難、災害を受けたか受けないかわからないものについて控除するというのは、どうも趣旨といたしましてはおかしいじゃないか、こういう私ども感じがいたしておるわけでございます。アメリカの方は非常に控除項目が多くございまして、四十何項目と言っておりますが、たとえば離婚した奥さんの別居手当、あるいは自動車に使いましたガソリンにかかるところのガソリン税、それからまた営業に関係いたしませんところの借金の利子、これら数十項目につきまして控除する、所得の一割にとどめる、こういう制度でございます。アメリカみたいに控除原因の非常に多いところでありますならば、一々証明をとったりなにかするのは大へんでございますし、証明をとらなくても、そのいずれかには該当しておる。従いまして一〇%引くということが、これは払ったか払わないかわからなくても一つジャスティファイできるのではないか、かように考えてできた制度ではないか。これにつきましてもアメリカでも、おかしい、そういうものは基礎控除あるいは扶養控除でカバーすべきじゃないか、基礎控除、扶養控除はそういう事業に関係のない部分の生活費におきまして担税力の減殺される面につきまして控除する制度でございます。それによってカバーすべきじゃないかという意見がアメリカにすらあるわけでございます。いわんや日本は先ほどから申し上げておりまするような三つの控除原因、項目しかないのに、これを支払ったものと見、雑損失を受けたものと見て控除することが果して担税能力に合うかどうか、こういう点が税制の理論からなかなか出てこないというのが第一点でございます。  第二点は、これは制度の創設の趣旨からも言われておりますように、完全にアメリカの制度を持ってきたというのではなくて、御承知のように社会保険料控除制度は組織的な勤労者に非常に恩典を与えておる。しかるに一方、中小企業に働くところの労働者あるいは中小企業者あるいは農民につきましては、社会保険に入ろうと思ってもなかなか入れないということが言われております。その身がわりとして一時社会保険が普及するまでの暫定的措置として、これをかわりに設けるのだということが言われたわけでございます。ただ私どもは社会保険料控除は社会保険料控除として所得税課税標準から引くことに理由があると、かように考えております。  御承知のように社会保険料の中に二つの性質がございまして、一つは短期給付でございます。短期給付の方は、御承知のように医療費給付の前払いと見られるべき部分でございます。ところが所得税におきましては、医療費はやはり所得の三%を越します分につきましては最高十五万円まで、担税力を減殺するものといたしまして控除することになっております。そのかわり社会保険で相殺された分は、填補された分は、そのかわり所得税の方では控除いたさない、かようになっておりますので、短期給付の分を所得から引きますことは医療費の前払いと見ていいではないか、こういうように考えられるわけであります。それからもう一つ長期給付部分がございます。これは年金、恩給その他でございますけれども、こういうものは現実に支払われないものに課税するというのは趣旨がおかしいではないか。御承知のように月給から天引きされるわけでございます。そのかわりその後もらいます際に全額課税するということになれば、現実には支払われない、所得を構成しない、そのかわり後日支払われ、もらった際には全額課税する。そのかわり勤労控除を認めているわけでございますけれども、長期給付に基く年金や恩給は給与のあと払いと見るべきである。従って社会保険料を支払う際に給与を支払ったものと見るべきでない、こういう理論から来ておるわけでございます。  そういたしますと、社会保険料控除は担税力が減殺するということから来ておりますのに、その身がわりに支払われないものまで控除するというのは、社会保険の身がわりとしても趣旨が不合理ではないかというのが私どもの第二の考え方でございます。  第三には、もう一つ、同じ所得の控除項目といたしまして、今の三つのほかに、現行所得税法におきましては、今回改正いたしました生命保険料控除というのがございます。生命保険料も往々にして言われますが、これも支払ったか、支払われないか、受取その他についても問題がございます。しかも社会保険と違いまして、任意に加入でき、また任意に支払いできるものでございます。これが概算所得控除のらち外にあるものでございます。これから見てもおかしいではないかということが言われるわけでございます。御承知のように、先ほど申し上げました社会保険料の長期給付部分は社会保険に加入しないものにとりましては生命保険と同様な性格を帯びておるものではないか。そういたしますと、生命保険料控除まで入れまして全般的に概算所得控除的なものを設けるならまた話は別でございますけれども、これは貯蓄奨励の見地から来ておりますので、これは簡単には入れるわけにはいかないということになっておりますので、それから見てもおかしいではないか。現実に今申し上げましたような生命保険控除、社会保険控除と合せてみましても、勤労者と営業者との負担を見て参りますと、なるほど社会保険控除の金額は勤労者の方が多いわけでございます。しかして一方社会保険がそこまで普及していない状況もございますけれども、生命保険控除の方は営業者の方がはるかに多い状況でございます。私どもは社会保険がございますので生命保険に入らないでもいいという気持を持っていますので、現実には加入していない人が多いようでございます。この両者を合せますと、昭和二十九年分の資料でございますが、一人当りは、営業者は八万八千円の控除を受けておる。ところが給与所得者の方は七万七千円でございます。これから見まして、私どもは生命保険控除を入れるなら別でございますけれども、それを入れない以上は、やはり筋を通して、この概算所得控除をやるべきではないかと、かように考えます。ただこういう中小企業者負担の点は、私ども考えなければならぬと思いまして、地方税の方では事業税の軽減がはかられておる。それからまた中小法人につきましては、国税におきましても逓減税率の適用の範囲を拡張いたしまして五十万円から百万円まで広げる、こういうことにいたしております。税制上の理由のあるところは軽減する。それから軽減する理由がないものは特別措置の整理の機会でございますので、整理したいというのが私どもの気持でございます。
  44. 杉山昌作

    杉山昌作君 今理由は非常に税の負担の公平というか、租税の理論からいってごもっともなことなんですが、実際問題としてどうなんでしょうかね。今の概算控除は、控除されなくてもいい人が控除されるというところにおかしな面があるということなんですがね。ほんとうは控除されるべき人でも雑損があった、あるいは医療費を支出しても、なかなか日本の今の現状、ことに所得少い人はなおさら手も少いというようなことで、一々領収書をとってくるとか、そういうふうな証明をするとかというふうなことがわずらわしくてできなくて、結局そういうふうな雑損控除、医療費の控除というようなことは書かれてあって毛、なかなかその適用というか、恩典に浴し得ない、たまたま概算控除制度があるからそこで救われるのだ。これがなくなれば、むしろ絵に描いたもちのようになるのだということになると思うのです。それを今の控除をすべきでないのに、この制度で理論的にはおかしい恩典を受けている部分と、それからこの制度をなくしたお陰で、理論的に恩典を受けるべき人が事実受けられないという部分、そこらは一体どういうふうに考えておられますか。よほど理論上恩典を受けるべきでない人が受けている恩典の方が非常に多いのですが。
  45. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) ただいま御指摘の点は相当問題となる点でございます。まず第一点の医療費の控除原因があるのに、なかなか受取、その他で控除できないというのがあるのではないか、こういう点でございます。私ども医療費調査もときどきやっておりますけれども現行所得税法の建前が、所得の五%をこえる場合において控除をするという点でありますと、なかなか医療費を計算いたしてみますと、五%をこえる場合におきまして控除をするということになっておりますので、その五%をこえない場合が相当多いのではないか、こういう点があるのではないかというのが第一点でございます。現実の扱いにおきましては、受取をなかなかお医者さんの方が出しにくい、あるいは申すのを渋るという事例も私ども見ておりますけれども、出すというなら早くこれは出していただきまして、社会保険料あるいは大きな病院になりますと受取書は相当出していただけるのではないか、税務署の扱いにおきましても、相当事実が判明いたしましたら、そうやかましいことを言っていないのではないか、こういう感じがいたします。  第二の雑損失控除の方も所得の一〇%以上、一〇%をこえるということがございまして、その点なかなか問題ではないか。言うならば五%あるいは一〇%の制限というようなその範囲のものは、基礎控除あるいは扶養控除でいくべきであるという考え方でございます。従いまして、まああまりに医療費の控除があるのに医療費控除の特典が利用できないものということの不公平を救うために、言うならば所得税の基礎控除あるいは扶養控除を引き上げるべきであって、領収書の受け方のうまいかまずいかの間に不公平をもたらさないようにすべきではないか、こういうことになるかもしれませんが、現実の扱いにおきまして注意いたしますれば、この点は救われるのではないか。所得税の基礎控除、扶養控除を上げますれば、この点はもう少し考えるべきではないか、かように考えております。
  46. 杉山昌作

    杉山昌作君 それからその次に税制調査会の答申と、今度政府の出した案とを比べてみて、一番大きなのは医師の社会保険診療報酬の所得計算の特例を依然として法案では認めている。それから農家の供米代金についてもこれはやはり所得の計算の特例を認めている。それから利子収入についての課税の特典を認めている。これらはいずれも税制調査会の答申ではやめてしまって、本筋に返すべきだというふうになっている。われわれ考えてもそう思うのですが、この中の医師の社会保険診療報酬の所得計算の特例について、実はおととしでしたか、この委員会において私は頑強に反対したのです。大蔵大臣と厚生大臣お二人に出ていただいて、それぞれ所見を承わって、これは租税の理論を真向からくずすので、結局健康保険診療の単価が安いからというので税金をまけろ、それならば官公庁の勤務者の諸君が、給料が安いから税金をまけろといったらまけなければならないのじゃないか。租税の体系そのものがくずれてしまうのじゃないかということで反対したけれども、あの当時のいろいろの情勢でそのままになったのですけれども、これをやはり今度も政府は税制調査会の意見と反してそのままやっているのですが、それはやはり何ですか、何か特段な理由があるのですか。
  47. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) お答え申し上げます。税制の理論的な建前から申し上げますれば、杉山委員のおっしゃる通りでございます。私どももそういう気持をもちまして、各省あるいは各方面とも話し合ったわけでございますが、社会保険診療報酬の特例につきましては、今申しました一点単価との関係、それらを全部合して考えるべきではないか、一点単価を一点上げますれば百億くらい要るというようなことをよくいわれております。この一点単価の問題と合して考えるべきではないか。それから米作所得課税特例につきましても、これもまた不合理な制度でございまするけれども、米穀管理制度、この推移とあわせて考えるべきものじゃないか、こういうことにきまりましたので、私どもといたしましては、現行のまま存続するような御提案を申し上げておる次第でございます。ただ米作所得課税特例は、毎年行われます単行法でございますので、今回食管制度につきまして特別な研究がなされておるようでございます。それらとあわせましてなお検討をしたいと、こういうふうに考えております。  それから利子所得課税特例その他につきましては、税制上の理由だけではなくて、最近におきますところの経済情勢から見て、この程度のことはなお必要ではないかという考え方から出発いたしまして、かような提案を申し上げておる次第でございます。
  48. 杉山昌作

    杉山昌作君 これはいろいろな政治的な配慮というのですか、そういうものがおもでしょうから、これは政府委員に承わってもちょっと的はずれでしょうからその程度で……。ただ農家の供米についての税の控除の問題と関連しまして、現在の農家は所得税をまるで納めていないのじゃないか、非常に税の負担が軽いということがしばしばいわれている。先だってのこの公聴会でも井藤半彌先生もやはりそういうことを言っているのですね。で、農家では、その農家の二割くらいの人数の者しか税金を納めていない。ある人は、農家が納めている税額を農家の所得で翻ったパーセントは〇・四%しかならないが、勤労所得者の納めている税額は、勤労所得で割れば三・九%になる、こういうようなことをいっているのです。私はここで疑問に思うのは、ただ全体の税額を割って、農業所得で農業所得者の納めている税額を割ったパーセントが少いから、それで負担が軽いといえるのだろうか。というのは、一体税金なんというのは所得者全部が合計して納めるのじゃない、個人々々が納めるのだ、だからいかに農業所得が多くても、一人々々の所得は少い。言ってみれば、その所得階層別の人員の構成が、勤労所得者の方では割合それが上になっている、農業所得者の方はそれが下になっている。というのは、累進関係等からいって、農業所得者の納める税額が全体としては減ってくるのは、これは当然だと思うのですが、何かそういうふうな勤労所得、事業所得、農業所得所得別に今の所得階層別の人員構成というような数字がありませんか。
  49. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) ただいまの御質問は、また資料を作成いたしましてお答え申し上げるべきことだと思いますが、確かに農業所得課税というのは非常に少いわけでございまして、昭和三十二年度の課税見込み人員は六十万七千人で、一割五分か二割近くまでしか納税人員がないわけでございます。これはただいま御指摘の通りに、所得階級構成の問題であろうと、かように考えております。御承知のように、日本の農民の階層を見ますと、零細経営者が相当多い。しかもまた扶養親族が相当多い。こういう点が、その所得税課税人員の減になって現われるのではないか。もと税額控除の時代におきましては、扶養所得控除じゃなくて税額控除時代には、相当農業者の納税人員も多かったわけでございます。扶養所得控除になってから納税人員が減って参ったわけでございます。これは農民の所得階級構成が相当粒ぞろいと申しますか、同じところあたりで、課税最低限すれすれで並んでいるところが多いのじゃないかということが一点でございます。それから今申し上げましたように、扶養親族の数が、他の業種とも圧倒的に違っております。先ほどごらんになっていただきましたところの「租税及び印紙収入予算説明」の十二ページにもございますが、営業者におきましては、扶養人員は一人当り三・五人でございます。ところが農業の方におきましては五・〇四人、その他事業は三・六九人、その他は三・四七人、かようになっております。このあたり納税人員が少くなるんじゃないか、かように私どもは見ております。
  50. 杉山昌作

    杉山昌作君 私も、扶養家族の問題もありますが、もっと根本的に今の所得階層別の人員構成があるだろうと思って、これは今ここで伺わなくてもいいですが、おっしゃるように、農業人口のほとんど全部が最低限のところに固まっておる。従って課税されることが非常に少くなるので、全体としては農業所得に対する課税が非常に少いようになるのは当りまえじゃないかというふうな気がするので、何かそういう数字がありましたら、あとでよろしゅうございますから、数字だけはあとでまた一つ教えていただきたいと思います。
  51. 野溝勝

    ○野溝勝君 簡単に質問をいたします。私はきょうは聞き役に回っていようと思ったのですが、ただいま杉山先生から、あまりにも農家の税金が軽いんじゃないかというような御意見がございまして、これに対する課長の答弁が、まことにあいまいなものでございまして、家族人員、控除人員が多いからというようなことに結論を持っていったらしいのですが、理論的な答弁としてはまことに薄弱でございまして、むしろ、そんなものを聞いておる本員としては慨歎にたえない。もっと堂々と現下の財政事情なり税制事精を、理論的に課長からとくとお話があるものと思っておりましたところ、まことに若い青年官僚として、物足りない感じがしました。今議題になっておるのは所得税でございますが、租税法定主義を中心に論議することが正しいと思う。この建前で所得税という税一環を審議するに当りまして、ただいまのような農家に対する負担の問題、課税の問題が出た場合には、この所得税創設の当初、同時に改正になった段階、ことに戦後の事情、それと地方の財政との問題、続いてシャウプ勧告以来の中央、地方税の問題が積極的に論理的に説明されなければ、杉山君に対する答えが出てこないのじゃないかと思うのです。そこで最近の地方財政が中央依存になっておるとき、地方の目ぼしい独立財源なんていうものはない。また、国も貧乏なんだから、そこで財源として所得税付加税という確固たる財源を地方に与えようという点で、私地方財政を担当している当時、大蔵省の主税局長平田君、主計局長河野君、事務次官大野君、これらの間に論戦がかわされたわけであります。結局その財源のかわりに入場税を委譲するというようなことで、その他、交付金比率等によって一応妥協した、所得税付加税は大蔵官僚に押えられてしまったわけだ、ざっくばらんにいうと、そういう経過がある。そこで、今日所得税のみを切り離して論議いたしますならば、農民は少いといえるが、逆に地方税というものが多くかかっておるのですよ。この点、杉山さんは十分検討願わなければならぬと思う。百姓の身になってみれば、地方税であろうと、国税であろうと、取られる気持には変りはない。税金には変りはない。御承知のごとく地方税の総額が四千六百五十億、一人当りが五千五十四円取られておる。三十一年度は一人当りが四千四百八円です。七百円近く多くなっておのです。それに今度、固定資産税に対するこれまた課税標準というものが過酷である。原主税局長と私の間に質疑をかわしたのでございますが、これまた農民に重くなっておる。いわば神武天皇以来の景気も、農民にとっては物価高になり、課税標準高になっておる。こういうような点が具体的に検討されなければ、ただ所得税の対象になる人が農家の二割ぐらいじゃないか、三割ぐらいじゃないか、そういうようなことだけで問題を片づけられておりますると、私は黙っていられません。若手官僚の塩崎課長等が今後立案されるときに、杉山さんの意見を正当なる意見のごとく取り上げ、あるいは正当評価されたのでは、今後、所得税改正の節、農民に重課せられたらとんでもないことになるから、かような点について見識ある課長から、論理一貫のある答弁を聞いて質問を継続したいと思います。
  52. 杉山昌作

    杉山昌作君 関連質問。これは関連質問ですが、質問というよりも、野溝君に対しての考え方ですが、私は農家の負担全体が重いか軽いかという問題を言っておるのじゃなく、それは野溝先生のお考えと全く同じことを考えておる。ただ、先般のこの公聴会で井藤半彌先生が、所得税だけについて、今の納税人員であるとか、所得に対しての納税額の率がどうとか、そういうような数字だけで、非常に農家に対する所得税は軽いというようなお話があったから、それでむしろそれはおかしいので、今の所得階層別の人員構成まで突っ込んでみないと、全体としての所得額と税額というような考え方は、むしろ突っ込み方が少いのじゃないか、突っ込んでいったら軽いのが当りまえじゃないかという数字が出てきやせぬかということを聞いておるわけです。従って課長の答弁が、結局私のそういうような所得だけの問題だから、全体のあれに、農家負担の問題には言及されなかったのでしょうが、私はそういう意味から見て課長にお伺いするのだが、やはり全体の問題として、私は所得税については井藤先生なんかが言ったようなことでない、もっと違った考え方が出るようなことになるだろうと、その数字があなたのところにあるかということをさっき伺ったわけです。
  53. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) お答え申し上げます。私の今申し上げましたような、所得税だけのお話でございまして、地方税でありますところの市町村民税、ことに農民の方々はオプション・ワン以外のオプション・ツーあるいはスリーによって、相当市町村税を負担しておりますことは、私もよく存じております。そのほかに農民といたしましては、一番大きな生産資産でありますところの土地につきまして固定資産税がかかっておりますことも十分知っております。今申し上げましたことは、所得税についてだけ申し上げたのであります。所得税は御承知のごとく農民だけにかけるとか、あるいは中小企業者だけにかけるというのじゃなくて、基礎控除、扶養控除は、いかなる所得者につきましても平等でございますので、その所得税の控除あるいは税率を適用いたしますと今言ったような姿になるのだ、こういう趣旨を申し上げたつもりでございます。地方税まであわせて考えますと、なるほど御承知通り所得税では失格はいたしておりますけれども、オプション・ツーによりまして基礎控除だけしか認められない、ただ扶養親族につきまして税額控除はございまするけれども、まあそれによりましても農民の方々相当納めておることは十分存じております。この全体をひっくるめまして、いわゆる直接税で所得税、それから地方税でございますところの市町村民税あるいは府県税も入るわけでございます。それから固定資産税、なお中小企業者等につきまして事業税がかかっております。これらを入れまして各階層、農業者、営業者、勤労者、これらにつきましての国民所得に対しますところの負担割合はどの程度になるかということが研究さるべきであろうということは、私ども当然存じております。ときどき私どもも研究はいたしております。しかし、なかなかその数字がうまく出て参りません。ことに地方税関係で農民の方々にどの程度納めていただき、それから固定資産税のうちで農民の方々にどの程度納めていただいておるかということは、なかなかわかりませんので、これらはなお今後研究いたしまして、真実の負担というものを私どもは出してみたい、かように考えております。
  54. 野溝勝

    ○野溝勝君 私は今の答弁では黙って聞いておるわけにいきません。実は所得税だけならば農民は負担が軽いかもしらぬが、税全般から見ると必ずしもそうでありません。このことはどう考えているか、御答弁がありますならば打ち切ります。また、杉山先生の御意見も、学者が言うたからその御意見を聞くということもいいが、議員としては、学者といってもブルジョア学者もあれば社会主義学者もありましょうから、それを何もかもわれわれはそれが全部うのみにすることは成り立たないんだから、そういう点については見識のある発言をしてもらわぬと、農民生活に影響するところが大きいんですから……。私は以上を申し上げまして終ります。
  55. 廣瀬久忠

    委員長廣瀬久忠君) 本日はこの程度にいたしまして、来週、月曜日午前十時からまた委員会を開きます。  本日は、これにて散会いたします。    午後零時四分散会