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参考人(
松根宗一君) 私、
電気事業
連合会専務理事をいたしております
松根でございます。きょうは会長の管がまかり出ましていろいろ御
説明を申し上げるはずであったのですが、寒いので、急に神経痛を起しましてこの間から寝込みましたので、私が
かわりに参上いたしました。
ただいま
東北、
北陸両社から
料金改訂のことについてそれぞれ御
説明がありましたので、その点につきましては私
意見を申し述べませんが、全体として日本の
電力事業の
電気料金というもの、あるいは
電気の
コストというものはどういうふうになってきただろうかということを最初に申し上げてみたいと思います。
この
電力の
需用の
増加に応じて
計画的に
電源の
開発をいたして参るわけですが、普通の
状態でありますと、普通の
需用の
増加というものは年に六%か七%ということで、従ってそれに応ずる
電源の
開発をやって参ったわけであります。ところが、この
新規の発電所の
原価というものは、先刻からるる
お話がありましたように、水
火力ともに従来のものより非常に高いということが、
電力料金の問題にむずかしい問題を生じてきて、普通の商売であればたくさん売れば、だんだん安くなるというのが、たくさん売ればだんだん高くなるという妙な現象に相なっておるわけであります。
全国平均で申し上げますと、たとえば
火力の場合だと、従来の古いものでも、一キロワット・
アワーあたりが六十三銭ぐらいになっておりますが、新しく作りますものは一円五十八銭、これは今申し上げたのは大体
火力でございます。水力におきましては、古いものは九十四銭、新しいものは三円七十六銭というふうに、三、四倍近く水力においては上っておる。従いまして、
需用が六、七%というふうに緩慢にふえて参ります場合は、その間、技術の改良なり、ロスの軽減なり、あるいは
企業の
合理化によりまして、ある程度それが
吸収していけたのでありますが、昨年来その需要の
増加が、三十一年度においては一七%、今年度においても少くとも一五%はふえるだろう、従って
電力は足りない、こういうふうに非常に
需用がたくさんふえますために、新しい高い
コストの
電源を
開発していく、そういう
コストが入ってくるということに相なるわけでございまして、全体的に見まして、こういうふうに急に
需用がふえますと、その
電力が不足する以外に、非常に
収支の上に大きな
影響を、つまり
吸収し得ない分が出てくるわけであります。特に今回
料金の
改訂を
申請された
東北、
北陸の両社は、もともと
水力地帯の安い
原価の地底でありましたために、
料金も比較的安いところであったのでありますが、そこへ持ってきてその地区に特に需要がふえ、たくさんの工場がそこに集まったために非常に
需用がふえた。昨年のごときは、なかなか両社だけの手持の
電源では間に合いませんで、他の七社が総動員いたしまして、古い
火力まで動員いたしまして融通を行なった。それでも相当の
期間、御迷惑をかけるような
状態であったのであります。ともかくもそういうふうに特に
需用が急増するところほど、採算が悪くなるという現象を呈しておるのであります。
しかし、この傾向は他の七社におきましても同様でありまして、特にこの両社以外の東電、中部、関西、九州、その他、
火力を使っておりますところは、最近
新鋭火力という非常に優秀な
火力ができまして、石炭の消費量は減ったのでございますが、炭の値段が非常に上って参りまして、今年一部
値上げのきまりかかったところ等の標準を見ましても、一年に八十億ぐらいの石炭の
値上げを負担しなければならないという状況であります。従って先刻来申し上げましたように、ある程度の需要の
増加でありますれば、その
値上げを
吸収できると思いますが、こういうような急激な膨張に対しましては、とうていそういう
企業の
合理化、新鋭化等で
原価の
値上げを
吸収できないという
状態になっておるわけでございます。そこへ持ってきまして、特に皆さんにお聞き願いたいのは、
コストの上がる方では、水利権の使用料が
値上げになりますとか、従来ありました資本税の軽減措置というようなものが廃止になるというような悪い方の材料がここに重なって出て参りました。一段と
電気事業の
収支を悪化させております次第であります。従来比較的
需用の伸びも普通であり、また、過去数年割合豊水に恵まれておったという時代は、割合に黒字で、従ってそういう社内留保が
収支の上に返りまして、非常によかったのでありますが、先刻来申し上げましたような
事情から、この
東北、
北陸両社のほかにも、おそらく
赤字になります会社が、数社私は出てくるのではなかろうか、
赤字になりますということは、多少ともそれを補うために、
料金の
値上げを必要とするという会社が、今後数社出て参るのではなかろうかと想像されるのであります。
これは
電力料金のような政府の認可を必要とする
料金というものの一つの考えなければいけないことは、事業を
発展させ、言いかえますれば、
電気事業の場合に、
電源の
開発を積極的にやるというようなことは、あまり
料金を押えますと、非常にその
企業意欲といいますか、
企業努力というものが萎靡するのではないか、これはかえって日本の
電気事業、ひいては日本の
産業全体に、かえって悪い
影響を与えるのではないかという反省が、私は必要じゃなかろうか、これは単に
電気事業だけではないと思うのでありますが、
料金を政府で認可される事業については、特にそういう問題がある。この問題は社会上、あるいは
産業上、非常に
影響を与える問題で、ただそれじゃ上げたらいいという問題ではないと思うのでありますが、そこにおのずから一つの合理的な線があるのではなかろうか、こういう意味において、
電気事業の
料金につきましても、その辺のことを、他
産業とにらみ合せて考えなければいけない時期に来ておるのではなかろうかと存じます。
たとえば、同じような性質の
料金を戦前と比べてみますと、大体
電気料金というのは戦前に比べまして百五十倍くらいになっております。これに対して鉄道、ガス、郵便というようなものは、大体二百倍から三百倍くらいになっております。これは
一般の消費物価が三百何十倍になっております、それから見ますと、まだこれでも低いのでありますが、特に
電気はそういうふうに低い
料金でもいけたということは、いろいろ
理由もあると思うのでありますが、割合に
設備の近代化が、これを補ったのではなかろうかというふうに考えておりますが、それにいたしましても、先刻来申し上げたように、こういうふうな急激の膨張では、
吸収しきれない現状に来ておると思うのであります。
それから外国等の
料金に比較いたしましても、これは一、二の例でありますが、アメリカ等の
電灯料金は十一円くらいのものが多うございます。それから
電力につきましても、五円台のものが多いようでございます。従いまして日本の
産業……、特に安い
料金はアメリカ等にもございますが、普通の
料金といたしましては、そういう程度のものでありますので、特別に安い
料金で、日本の
産業が海外に競争する必要はないのであります。ある程度に、世界の水準までの程度は、
電力事業の
発展も考慮してやる必要があるのではなかろうかと存じます。
それからさっき
委員長から御質問がありまして、両社の今度の
料金制度は、特に
北陸電力の
特別料金制度の問題についてどうかという
お話でございますが、もともと九
電力の
料金につきましては、従来は一斉にいろいろお取り扱いを願っておったのでありますが、その後は各社も独立採算になり、しておりますので、個々にその
需用に応じて処理するということになっておりますので、今回もたまたま、両社の二つの会社がそういう
事情が起ったのでありますが、
特別料金の問題、あるいは一本
料金の問題等は、これはまあ理屈から言えば、いろいろあると思うのでありますが、特に
北陸さんの
特別料金は、今後は
電気は高いのだ、その分だけは高く買ってもらいたい、まことに
原価計算主義といたしましては、はっきりした考え方だと存じます。しかし、この
料金というようなものは、大体
需用家の方がお払いになるわけでありまして、その間の長い歴史といいますか、取引といいますか、この
需用家の方の御納得の上でできる、御都合のいいような
制度がいいということになりますので、それぞれの地区の特殊の
事情を勘案して、各社でおきめ下さることが、あまり違ったものは工合悪いと思いますが、少々の違いはそれでもかまわんのじゃないかというふうに考えております。そのうちにいずれが、やっておりますうちに、これはこっちの方がいいというような問題から、自然に統一される時期がないとは言えないと思います。
それから、去年やりました
電力の融通の問題でございますが、ことしも
電源の
開発が間に合いません。といいますのは、
予定以上に
電力が
需用がふえましたので、九柱間で
電力の融通をやって、急場をしのごう、大体
年間十億キロワット・
アワーぐらいのものをかき集めて融通しよう。それでもなかなか
電力が足らぬというような
状態でございますが、この
状態も極力昨年末からこういう事態に備えて、
電源の
開発を促進しておりますので、おおよそ三十四年か五年になりますれば、大体
需用に追いつく
供給力が得られると思います。
現在行われております
融通料金の単価の問題でありますが、これは大体運転実費と申しますか、石炭代に運転する人間の費用等を見ました程度でありまして、それで各社がもうけを出す、もうけを取って融通するという建前はとっておりません。ただ、そういうふうに融通いたしますときは、どうせ
電力が足りないときでございますので、非常に
コストの高くなる古い発電所も一緒に使うというようなことになりますので、勢い先刻来
お話しのありましたように、
融通料金の
原価が高いということに相なるのかと存じます。
大体私から申し述べたいことば以上であります。