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1957-04-16 第26回国会 参議院 商工委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月十六日(火曜日)    午前十時四十四分開会   —————————————   委員異動 四月十二日委員木島虎藏君、大倉精一 君及び山本經勝君辞任につき、その補 欠として西田隆男君、島清君及び藤田 進君を議長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     松澤 兼人君    理事            阿具根 登君    委員            大谷 贇雄君            古池 信三君            小西 英雄君            白井  勇君            阿部 竹松君            相馬 助治君            加藤 正人君            豊田 雅孝君            大竹平八郎君   政府委員    科学技術政務次    官       秋田 大助君    科学技術庁長官    官房長     原田  久君    科学技術庁調査    普及局長    三輪 大作君    通商産業政務次    官       長谷川四郎君    通商産業省重工    業局長     鈴木 義雄君   事務局側    常任委員会専門    員       小田橋貞寿君   国立国会図書館側    国立国会図書館    副館長     中根 秀雄君   参考人    東京大学工学部    助教授     加藤信八郎君    日本化学工業協    会副会長経済団    体連合会産業技   術委員会委員長  池田亀三郎君    三菱鉛筆株式会    社社長日本中小    企業団体連盟副    会長      数原 三郎君   —————————————   本日の会議に付した案件日本科学技術情報センター法案(内  閣提出、衆議院送付) ○機械工業振興臨時措置法の一部を改  正する法律案内閣提出) ○電子工業振興臨時措置法案内閣提  出)   —————————————
  2. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) これより委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。去る四月十二日大倉精一君、山本經勝君木島虎藏君がそれぞれ辞任され、島清君、藤田進君、及び西田隆男君が委員に復帰されました。   —————————————
  3. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) それではこれより本日の議事に入ります。  本日の案件は公報をもってお知らせいたした通りでありますが、その前に、去る十一日委員会散会後、委員長及び理事打合会を開きまして、次のことを決定いたしました。  第一は北海道北海道炭汽船船株式会社清水沢本坑坑内火災事件に関し、委員派遣を行うことにするが、その時期については後日改めて協議すること。  第二に、日本科学技術情報センター法案審議について、十六日、すなわち本日でありますが、委員会参考人出席を求めまして意見を聴取する、その人選、手続については委員長に一任する、この二つのことを決定いたしました。第二の参考人につきましては、人選の上理事方々の御了承を得まして、東京大学工学部助教授加藤信八郎君、日本化学工業協会会長経済団体連合会産業技術委員会委員長池田亀三郎君、三菱鉛筆株式会社社長日本中小企業団体連合会会長数原三郎君、以上三人の方々に御足労を願うことにいたしまして、本日出席されております。なお、このほか国会図書館館長中根秀雄君が出席をいたしております。右御了承を得たいのでございますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 異議なければ、これより四人の方々の御意見を聴取いたしたいと思います。御意見を聞く順序でございますが、順序といたしまして、加藤池田数原中根の諸君の順にいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) ではさよういたします。  参考人方々には、御多忙のところ本日委員会に出上席いただきまして、ありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚くお礼を申し上げます。大へんお待たせいたしまして恐縮でございますが、日本科学技術情報センター法案に関しまして、それぞれのお立場から御意見を承わりたいと存じます。  まず、東京大学助教授加藤信八郎君にお願いいたします。
  6. 加藤信八郎

    参考人加藤信八郎君) 私は東京大学工学部応用化学におります加藤でございます。大体専門化学工業でありますから、従って私のただいまから申し上げる意見というものは、やはり化学工業という面から見た意見ということになりますので、その点あらかじめ御了承を得たいと思います。  実は、つい数日前に参議院の方から、日本科学技術情報センター法案、それに付随した参考資料を送っていただきましたばかりでございまして、実はまだ十分に読んでおりませんので、この法案について、直接、どうこうということは差し控えたいと思うのでありますが、私が長年考えております理想的な案というものがありますので、それについて申し上げたいと思います。  この日本科学技術情報センター法案提案理由というものを見ますと、とにかく「わが国における科学技術進歩を一段と推進するためには、急激に増大しつつある内外科学技術情報を、迅速かつ的確に収集し、これを学界産業界等各般の需要にこたえて提供する必要がある」、こういうことで、これは一原則的に私は賛成するものであります。この点はわが国科学技術振興させる上には根本なことであるというので、大賛成であります。  しかしよく考えてみますと、いろいろ問題がこの中にありまして、まず「内外科学技術情報」と、こう書いてあるのでありますが、これは何を意味するかと、こういうことがまず根本であります。科学技術情報という書架の中には、二つのことが私は考えられます。一つは、すでに世界的に公表されている、あるいは公刊されているといいますか、雑誌、あるいは図書に公開されている科学技術でありまして、これを普通はわれわれは文献と申します。あるいは文献資料、これは公開されている部分でありますから、だれでも見ようと思えば見られる、そういう公開された部分というもの。それからもう一つは、公開されていない秘密部分秘密情報といいますか、こういう二つのもの、それでこの秘密部分というものは、たとえば特許、特に特許関係いたしましてその核心、中心であるものが、いわゆるノウ・ハウというものであります。ノウ・ハウ、この秘密情報、これば現在わが国科学工業その他諸般の会社外国から買ってくるもので、容易にこういう情報センターなどでは扱えない部分であるとは考える。この秘密情報に関したところは扱えない。そういたしますと、すでに世界的に公表されている文献、これを扱うということになる。ところが、最近におきましては、この世界的に発表されている文献資料というものは、きわめて膨大でありまして、われわれ学界の者、あるいは民間会社方々、そういうところだけで、この世界の公表された文献というものを全部集めて、それを一々目を通すということは容易でないのであります。従って毎年政府から日本におきましてもおそらく数十億という研究費が出されているのでありますが、少くとも日本科学技術根本的に推進するためには、この世界的に発表されている文献がここまであるということが、全部の人にわかっていなければならないのであります。従来の研究をいろいろ見ておりますと、すでに外国では発表されているもの、そのずっと前のところを、研究しているという例がたくさんあるのであります。それでは研究費というものは生きてこない。従って世界的に文献がここまで出ているということを十分に理解した上で、その先の秘密情報にわたる部分研究するということが、絶対に必要なのであります。特にわが国のごときは、乏しい研究費でありますから、これを有効に使うということが、絶対必要なのであります。そのためには世界的の公表文献というものを、とにかく国家的機関において全部収録する、集めるということがまず第一であります。そうしてその集めた文献整理、あるいは分数する。項目別にずっと整理分類いたしまして、さらにそれを必要に応じて各問題について能率的に探し出せるということが必要なのであります。たとえばあるAならAというものを作るには、どういう技術があるか、今まですでに発表されているかということを、世界的の文献の中からピック・アップすることが迅速にできるということが、最も肝心なのであります。  このためには、各文献カード式整理いたします。それにたとえば現在でありますと、能率機械というものがいろいろ出ております。IBMあるいはレミントンとかいうような能率機械でさっと分類して、そうして自分の必要とするものを全部そこに出す。そうしてこれとこれとこれとこれだけの文献を見れば、現在までにこの段階まで技術進歩しているということがわかるように、それを知った上でその先を研究するということがなければ、日本科学技術はいつまでも世界うしろへくっついている、世界科学技術のあとを追い画しているにすぎない、こう思うのであります。そういう要するに科学技術を全部集めたいわば新しい意味図書館科学技術図書館、そういうものを国家的に設けるということは、これは早晩わが国においても、必ずやらなければならないことなのであります。そういう科学技術世界的の文献を集め、それを分類整理し、能率機械で探し出す方式、こういうものが確立いたしておりますと、われわれ学者はもちろんですが、工場技術者、その他関係方々が全部それを利用するということはこれは間違いない、立ちどころに利用することになるのであります。あえてそれを、その情報その他を流してやるなんという必要はないのであります。言わなくても、もう門前市をなして研究者あるいは業界、その他からその問い合せが来る、あるいは調査に来るわけであります。そういう意味において、私は科学技術図書館というものを設立することが、わが国においては最も重要な点であると思うのであります。  実はここ五、六年前に私はアメリカにおいて発表されましたPBリポート、それに続いて原子力リポートというものの一括購入ということを主張いたしまして、国立国会図書館へこれを全部買い入れたことがあるのでありますが、おそらく数年にわたって二億何千万円かの金をつぎ込んだのであります。現在赤坂離宮の中にPBリポートというものがあるのでありますが、このPBリポートというものはもうすでに御承知と思いますが、これは第二次大戦中に連合国がドイツの会社工場、あるいは研究所から取り上げた資料であります。それをアメリカ政府発表、公刊した、こういうものでありまして、これは従来の公表された文献とは内容がまるで違う。さっき言った秘密情報に属する部類であります。このPBリポートというものは、世界最大文献でありまして、およそ十五万件、一千万ページに及ぶものであります。でこれを利用することによって、わが国科学技術というものは急速に進歩するということは間違いないのでありますが、すでに五、六年もたつのでありますが、国会図書館に入ったきりで、活発に利用し得ないという状態であります。これは非常にまずいことであります。こういうものを活発に分数、整理して、迅速に探し出せるような体制を作るということが必要なんであります。そうしないと、せっかく買ったものが生きてこない。これはまあ一つの例でありますが、こういうことで、要するに国内にある公けの機関政府機関、ここには科学技術に関する文献資料というものはずいぶんあるわけなんです。これをまず第一に一つ所に集める、こういうことがまず根本であります。それからそれを集めたならば、カード・システムによってこれを分類整理して、能率機械にかける。そういたしますと、的確、迅速に関係文献が全部わかる、こういうことであります。で、これができておれば、実際に情報を流すというような必要はないのでありまして、利用者はこぞってこれを利用する。でこの情報の収録を雑誌その他によって頒布する、あるいは、どうするというようなことは、これは言うべくして実際は行い得ない。それほど膨大なんであります。たとえばここにアメリカ化学会で出しておりますケミカル・アブストラクツというものがあります。これは化学に関する世界のおもなる発表文献を全部短かく収録したものであります。現在では一年にこのくらいあるのであります。厚みがこのくらいありまして、これでもまだ完全とは言えない、完全とは言えないのでありますが、とにかく世界的に文献を収録したものが、ケミカル・アブストラクツ、これを発行するためには、アメリカ化学会は相当なる人と設備と金をつぎ込んでいるわけであります。これは化学だけの面でありますが、そのほかにいろいろな技術があります。それを全部こういうアブストラクトにして出すということは、とうてい不可能であります。しかも、これはきわめて損な方法であります。ということは、そういう公刊物でみんなに知らせるということになりますと、共通のロスが多いのであります。利用者はそのうちのごく一部分を必要とするのであります。それに対して全面的に知らせるということは、非常なむだであります。各人がほしいものはある特定のものでありますから、それだけを調べればいいのであります。日本全国雑誌にして流すとか、あるいは何とかいうことは、これは非常なむだを生ずる。そうして実際的には完全なものはとうていできない。このことは私の長年の経験でありまして、第二次大戦中、あるいは終戦後、世界文献がなかなか手に入らないというときに、たまたま何らかの方式で入ってきた文献を、簡略にいたしまして流す、日本中に流したらよかろうというので、ずいぶんやった経験はあるのでありますが、こういう不完全なもの、これは現在ではあまり意味がないのであります。しかも、非常なむだをするという面で私は賛成しないのです。それよりも、とにかくこの科学技術図書館というものがあって、そこに分類整理が全部できていれば、各人が望みの問題を持って、そこへ問い合せる、あるいは行く、そして今の能率機械でさっと文献が出れば、それで事は十分足りる、そう思うのです。まあ、言えばそうでありますけれども、けれどもこの科学技術図書館というものの設立ということは、先ほど申し上げましたように、PBリポートというものだけから考えましても、相当膨大なものになるのでありまして、これはどうしても国家的の見地から、相当大きな構想を持って始めないとならないのでありまして、初めから膨大にということは、とうてい財政が許しませんがその一部分を始めていくということであってほしいと思うのであります。  以上申し上げましたのは、きわめて根本で、この日本科学技術情報センターというものを私が見た結果、私が長年考え、長年希望しているもの、すなわち科学技術図書館設立ということを横木的に申し上げたのでありまして、直接この日本科学技術情報センター法案のどこがどうだということは、ちょっと今日はまだ私は言えないので、以上の根本概念を申し上げて、御参考になればけっこうだと思うのであります。
  7. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) ありがとうございました。  次に、日本科学工業協会会長経済団体連合会産業技術委員会委員長池田亀三郎君にお願いいたします。
  8. 池田亀三郎

    参考人池田亀三郎君) 私は先だって衆議院の方にも参考人に呼ばれまして、またきょう重ねて申し上げることはないと思っておったのでございますが、きょう呼ばれましたので申し上げますけれども、なおきょう一時から私は衆議院の方へまた参考人で呼ばれておりますので、だいぶ時間も経過いたしましたし、なるべく簡単に申し上げたいと思いますが、私はちょっと加藤さんとは違った立場からこれを見るわけでございます。そのおつもりでお聞き取りを願いたいのであります。  技術振興というような問題につきましては、どなたも反対の力はございません。皆さんがそうおっしゃいます。ただこの振興必要性の認識の程度が非常に違うのじゃないかと思います。私どもわが国の大体のこの資源なり、人口なり、その他世界の中に置かれた立地条件からしまして、どうしてもこの技術振興というものは、むしろ行き過ぎたくらいに、国家最高政策としても考えていただきたい、こういうふうにかねがね考えておるものであります。大体皆さんが賛成するようなことは、皆さんもやらないのです、大体。私どもかつて、PBリポートの問題も、今お話がありましたのですが、ちょうど吉田内閣のときでございましたが、何かこの与野党の共同の広場として、技術振興というものを考えたいということで、科学技術振興協議会というものを作りまして、それはその当時の衆議院議長さんに会長になってもらいまして、参議院の副議長、社会党の三木さんでありましたか、この方に副会長になってもらいまして、私が常任委員長ということでいたしましたのですが、そのときちょうど今PBリポートというお話しも出ましたから申し上げますけれども、これは実際買うのに非常に金もかかる、たまたま吉川総理は非常に御理解があって予備金から出して下さいました。それで加藤さんのおっしゃった通り国会図書館に備えつけることができた、こういうことをおもになされました。その後、だんだん技術振興のことがやかましくなりまして、議員連盟というもの、かたしか二百五十何人くらいおったと思いますが、これが、議員連盟が非常にいろいろな弊害があっておもしろくないということで、解散しようということで解散なさったようでございますが、そこで、その後にこの関係で生まれましたのがこの経済団体連合会ですが、そんなことで、いろいろ私ども民間人としてちょくちょくそんなところに呼ばれて参りましたのでございますが、どうしても科学技術庁というものを、そういったものをぜひ作りたい。これは最初の科学技術振興協議会の時分から問題になっておったのでございます。たまたま一昨年の秋に、私ども行政審議会科学技術庁設立についての諮問をされまして、結局できたものが答申案より非常に弱いものでございまして、遺憾ではありましたけれども、とにかく一応科学技術庁というものができ上ったのであります。そこで、でき上った結果の第一の問題といたしますと、きょう問題になりました科学技術情報センター、それから技術開発公団、それから分析センター、こういったものが企画されたのでございますが、不幸にして技術開発公団は私一番必要と思っておったのでありますけれども、これはいろいろ反対もございましたようです。結局はただ調査費だけで二百四十万円ですか、そのくらいのものがちょっと頭を出してきたということのように伺っております。なお、分析センターの方は科学技術庁にはできませんで、結局工業技術院の中に一部そういう設備ができたということのようでございます。  そこで、情報センターでございますが、これの大体の機関なり規則を私拝見しますと、今加藤さんからお話がありましたように、まことに程度の低いもので、予算も非常に少いので、私も実際にこれで十分やり得るかどうかということは疑いを持つのでございます。しかし、このできましたのも非常におそ過ぎたと思ったくらいですから、まず一応こういうものでもできたということは、私どもも非常に喜んでおる次第でございます。そこでこの情報センターにつきましては、大体初めから大きないろいろ衆議院でも希望がございました。伺っておりますと、これはみな理想論でございまして、結局そういった大きな将来での大理想を掲げていくことはけっこうだと思います。しかし、今の国家財政関係から、一足飛びにこれをやるということは、困難じゃないだろうか、一応ここで、この辺のところで一番能率よく考えて成果を上げるようにやっていくということが、第二要務じゃないかと、こういうふうに考えたわけでございます。  それでなお情報センター必要性でございますが、今お話し伺いますと、科学図書館ができればいいということでございましたけれども、私ども仕事をしておる者からいいますと、相当それぞれみな情報を取るには金と労力を使っております。そうしていろいろお話があった通り、大体とります文献も調べておるところのおよそもう同じ程度のものを見ているのじゃないか、こう思います。これならばおのおのがいろいろ苦労して金を使ってやりませんでも、中核的な国家機関がでまして、そこでやって下さるということでありますと、大へん仕合せであります。われわれはこの上の専門が必要だというお話であったなら、やむを得なければ買おうじゃないか、こういうことを考えております。例を申しますと、私どもずっと十年ほど引っ込んでおりました。いろいろ技術振興だとか工業教育とかといった問題があるのですが、そういうのをずっと考えてみますと、最近この技術進歩原子力とか、オートメーションとか、あるいは石油化学とかいうことを申されます。私は昨年の四月にこの年寄りでいろいろな今までの主張もいたしまして、石油化学会社を創立いたしました。さて考えてみますと、今度発足する会社が十社ございますが、どれもこれも全部外岡技術を導入する、特許、ロイアルティに莫大な金が要る。大体私の存じ上げているところでは、国家研究機関そのほかで一年の予算が大体百六十億くらいじゃないかと思いますが、今度外国技術からとるものが、どのくらいになりますか。今私はっきり覚えませんけれども、相当の金額になります。これはいつまでも外国技術を導入していくことであっては、とうてい資源も少い、人口の多い日本は外に立ち向っていくということはできないと思います。結局は技術振興以外には日本は生きる道はない、私はふだんからこういうふうに確信しておるものでございます。それで戦争中からかけまして、戦後ずっとますますそういう先進国との間に技術程度の格差が、むしろ近づくよりは離れんとしておる、こう申し上げてもよかろうかと思います。  そこで石油化学工業ということを申し上げたのですが、これも石油化学というと簡単でございますけれども、作るものが大体従来石炭あるいは発酵工業等で作られておるものにかわるものを作るということだけでありませんで、全然新製品を作るということでございます。これは天然物にかわるもの、あるいは鉄、金属にかわるもの、御承知のように全部新製品でございます。たとえばポリエチレンの例をあげますと、ポリエチレンの名は安定したものでございますけれども内容から申し上げますと、何十種があるわけです。これは次々と非常な遊歩を遂げております。これの情報を取るということも、そう簡単ではございませんで、今の進歩ですとそういうとったものは何にもならないと思うのです。なるべく迅速に的確に情報を得たい、こういうことを考えます。  そんなことをも考えまして、まず大体この技術振興の基礎をなすために、その一つの一翼として、情報を得たい、こういうふうに思っております。これは発行されました、公刊されたものを見るだけではいけませんので、その他のものを使いまして、今言った情報の一部を使ってやっておる、こういうことがあるのであります。それから国と国との間で、われわれの手ではどうしてもできないものを、国家間で公刊してやるということでありますれば、これは容易にたくさん出てくるのではないかと思います。そんなことも考えまして、何といってもなるべく早く情報センターを作って、これを拡張して理想的なものにやっていただきたい、こういうふうに私は考えております。  なお、遺憾ながら日本は、ヨーロッパのまん中でもありますといいのですが、交通が不便でございますから、またあるいは会議に出るとか、会議資料をもらうとかいうこともございますが、なかなか日本のように離れておって、言語も違いますので、この点が非常に不利でございまして、むしろ、われわれはアメリカ、ヨーロッパ等で考えておる、あるいはやっている以上のことをわれわれはやらなければ、この技術振興に対処することはできないのじゃないかということを心配しております。そんなことで今加藤先生がおっしゃった通り、なるべく早く確実な情報を取り入れまして、これは今言ったような状態でばらばらでございます。これを一括して、各図書館でもけっこうでございますけれども図書館だけでは、なかなかそこへ足を運んでいくということは困難でございますから、やはりこれは整理し、そうして分数もしましてこれを消化しまして、そうして一般に普及していただきたい。ただし、これは用のないものはこの限りではない。会社に投資しますが、これは利益配当の必要はありません。この辺のところは技術的にどうするかということは、今後の問題だと思います。私たちが会社を経営する場合でも、こういうものをやりますには企画が一番大切だと思います。企画をやりますについて、金を使って、融資をして、まずこの企画を十分に、やっていただきたい、こういうふうに考えておるものでございます。  なお、これにはむろん集める、そうしてそれを消化する、分数するということになりますと、自然系統的にもなります、総合的にもなります、非常に便宜があるのじゃないか、こんなふうに考えるのであります。そうしてこれを技術的な問題になりますけれども、適時適宜に必要な方面になるべく効果的に流していくということが、絶対条件であろうかと、こんなふうに思っておるものであります。こういったことが、この運営についての非常に重要な問題となると思います。  で、この前に衆議院委員会でも問題になりましたのですが、一体科学技術とは何ぞやというふうな問題もありました。私にはこれはお答えはできません。行政審議会のときも、これはすぐ問題になったのでございますが、たまたま根本長官が、これは産業技術科学技術だ、こういうことをおっしゃられまして、初めて私どもはその審議会の諮問の意味もはっきりいたしまして、ああいった答申を出した次第でございました。科学技術といえば、一応人文科学も入ることになります。それは、将来の理想としてはけっこうでございますけれども、なかなか二億や三億を一年に使いましてこの面までこれを伸ばしていくことは、これば絶対不可能だし、また、やってもむだだ、こう考えておりますので、私の希望から言いますと、自然科学を基礎とした技術振興をやって、なお、その中でも重点的に一番効果のあるような日本技術振興、国民経済に影響を来たすような問題を取り上げた方がよくはないかというふうに希望を申し上げたいのであります。せんだって、長官から経団連の幹部を呼ばれまして説明会があったときも、石川君から、実際の自分の経験から言いまして、そういった方面の意見がございました。私もかねがねそう思っております。少くともこの面では、この情報センターは、一番確かなもので一番効果的なものだというふうなことからだん、だん始めていきたいと、こういうふうに私は希望いたします。  それからなお、法律を見ますと、協力関係のことが書いてございますが、これは、国会図書館そのほか大学の図書館等、その方面での政府の行政機関の強力な御協力を得ないことには当然むずかしいと思います。ことに、初めて店を開きましたらば、なかなか人が新たに、仕事も新しくやるのでございますから、この情報センターがそういったような図書館またそのほかに協力するというよりは、むしろ、当初は、この国家施設のもとに民間の施設の十分な協力を得るということが当然必要かと、こんなふうに考えておるものでございます。  なお、今中しました行政機関、これがもしかりにでき上りましても、各行政機関がそっぽを向いておって理解がないということでは、もうとうてい成功がむずかしいと思います。私ども民間の者も、できるだけ物心両面でも御協力申し上げたい、こういうことをお約束した次第でございます。  私はちょうど経団連の産業技術委員長をしておりましたりして、説明も聞きました。私どもの年来の熱望でもありましたから、さっそく当局のお話も伺いまして、それでたびたび委員会も聞きまして、その結論としまして、ぜひ早くこれをやってほしいということを要望もいたした次第でございます。それには、私ども委員会のほかに、顧問会にかけ、あるいは推薦委員会にかけ、理事会にかけ、常任理事会にかけまして、それぞれの機関を通しまして研究した結果、いつでしたか、要望書を出したのでございます。そんな結果としまして、こういうふうなものが今生まれるということは、私どもとしてまことにありがたいことと考えておる次第でございます。  なお、私もう一つ希望を申し上げさしていただきますと、一体この幹部はどういう人がなるのかということでございます。これはもう事業も人なりです。やっぱりこういうものも人なりでございますから、できるだけりっぱな者を理事長に持ってきていただきたい、こういうふうにしていただきたいと思います。また、待遇があまりよくないらしいので、私どももあの人だと思うような人が仕事をやって下さるかどうかということを疑問に思いまして、大体兼任を許さないということになっておるのでございますが、ただ、総理大臣の認可を得ますと兼任を認めるということになっておるようでありますが、私の希望は、最初はそういう適当な人がございますれば、兼任でもやむを得ない、やがておいおいと基礎もできましたときに、専任の人を持ってくるということになるのじゃないだろうか、こんなふうに考えをするのでございます。  なお、私どもが一番問題にしておりますのは、大体規模が非常に小さいし、ほんとうは政府が独自でやって下さるのがいいと思うのですけれども、これまた財政難の関係もございますと思いますから、民間も当然これに協力申し上げなくちゃいかんだろう、こう思っております。そこで、むろん一番大きく受益するのは民間でございますから、当然の資金上の御協力を申し上げなくちゃいかんということは、よく私ども承知しておりまして、これはせんだって長官がいらしったときも、はっきり石坂会長からもお約束申し上げた次第でございました。これからその人もきまりまして、どうなりますかわかりませんが、小さく生まれるのですけれども、なるべく大きく育っていくことを私は切望して、やみません。  なお、この人事、機構のほか、政府の監督でございますが、当初からあまりむずかしい監督をされますと、動きにくいのじゃないか、こう思います。まあ結局は、あまりむずかしい機構、人事、監督で、官僚的にならないように、私ども希望を申し上げる次第でございます。
  9. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) ありがとうございました。  次に、三菱鉛筆株式会社社長日本中小企業団体連盟会長数原三郎君にお願いいたします。
  10. 数原三郎

    参考人数原三郎君) 私は、中小企業の関係について簡単に申し上げたいと存じまするが、この科学技術情報センターというものは、そのねらうところは、むしろ大企業に重点があると思うのであります。取り扱うすなわちねらう層が高度の技術をねらうところに新鮮味があり、効果が上がるのでありますから、この情報センターの事業の重点が大企業に偏するということは、異議ないところであります。  しかし、今日の中小企業の現状を見ますると、すでに御承知のように、中小企業の技術は、大企業と比較いたしましても、また、海外の中小企業と比較いたしましても、日本のものは程度が非常に低いのでありまして、量は多いのですが、いかにも粗雑な未熟なものでございます。従って、この中小企業の技術を高度化し、これをもっと技術的に水準を高めていくということは、中小企業の振興上、また、日本の産業政策として、最も重要な点であることは、いまさら申すまでもないことであります。従って、先ほど加藤先生のお話しにもあるようにPBリポートのような広範な資料日本にあるのに、一向に利用されない、あるいは、ことに中小企業などでは、そのあることすらほとんど知らないような状態であります。もっとも、あのPBリポートアメリカ発表されたときに、われわれは人をちょうど海外にやっておりましたから、特にアメリカに回ってこれを調べさしてみたのです。その後、そのものが全部日本へ持ち込まれたので、数人の人間を一ヵ月にわたって、その中から自分の仕事に関係のある部分を調べさしたこともあるのであります。しかし、あの資料を知っておる者はそういう努力もいたしますが、これは一つにはあのPBリポートが比較的古いものでありまして、戦争中の資料であって、今日ではちょっと古くなっておるという関係もあり、またあまりに膨大である、玉石たたき込まれているという関係で、あれを調べ上げるということは非常な努力も要るというような関係で、どうも今日まで十分に利用されていないように、これは私ども感違いかもしれませんが、そんなふうに思うのであります。これらから見ても、今度の、これは一つの例になると思うのですが、情報センターができて、ああいう中の資料で、そのうちの新しいいいものを選別整理して、これを資料化してもらうというようなことになれば、あのものも非常に生きてくるのじゃないかと思うのです。先ほど池田さんからのお話しにもありましたように、日本は地理的にもかなり遠い、その上に言語的に言葉で大きな制約を受けておるために、中小企業などは、ほとんど海外に資料を求めるということは、人の取り得たものをまねする程度に過ぎないのであります。そういう面からいたしましても、この情報センターが今回もしできるならば、非常なる進歩であり、中小企業としても、これによって大いに技術水準を上げることが可能であろうかと思うのであります。  なおつけ加えますと、先ほどのお話しにもございますが、ヨーロッパは共同市場とまで言われるごとく、一国のような科学技術という点からいうと一つの国みたいなものでありますから、あそこにおりますと、人と話をしていて即座にヨーロッパ中に電話で資料を求め、物を探すということができるのであります。日本ではあそこまで出向いていかなければできないというような、非常に不利な立場にありまするから、こういう情報機関ができまして、活発なる情報活動が期待できるということは、今日まで日本がこういう面で著しく欧米からおくれている。こういう点にかんがみましても、きわめて緊急なことと思うのであります。  はなはだ簡単でありまするけれども、時間がありませんから…。
  11. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) ありがとうございました。最後に、国会図書館館長中根秀雄君から御意見をお述べ願います。
  12. 中根秀雄

    国立国会図書館館長中根秀雄君) 中根でございます。科学情報センターにつきまして、先ほど来だんだん詳しくいろいろの御意見がございまして、私からそれに付加するようなことは何もございません。ただ、国立国会図書館といたしましてこの法案に出ております科学情報センターとの関連に中心を置きましてちょっと申し上げたいと存じます。  国立国会図書館科学技術庁との何かなわ張り争いみたいな気がするので、まことに心苦しいのでありますが、そういう趣旨ではございませんので御了承いただきたいと思います。で、科学技術情報センターのできますことにつきまして、われわれといたしましては、まことに日本科学技術の推進をする上におきまして、まことにけっこうなことだと存じております。ただ、この科学情報センター法案を見ますと、第二十二条に情報センターの業務が書いてあります。それの第一項に「内外科学技術情報を収集すること。」それから「内外科学技術情報分類し、整理し、及び保管すること。」それから云々とございますが、この科学技術情報の収集ということにつきましては、この法案を通じまして私ども部外者でありますので、よくわかりませんが、おそらく科学技術情報を収集するということは、他の一面におきまして科学技術に関する文献資料の収集ということを離れて存在しないと思うのであります。そういう意味におきまして、国立国会図書館資料を収集する、ことに科学技術資料を収集するというような点、あるいはわれわれが科学技術その他の資料を収集いたしました際に、これを常にいかなる場合でも即座に出せるように整理をしておくという点は、まさしく第二号に該当するような事項かと思うのでありますが、そういう意味におきまして国立国会図書館資料の収集、あるいは、その資料の利用、これは国立国会図書館法の規定の命ずるところでございまして、われわれは日々それをやっておるわけでございます。そういう点につきまして多少の疑義と申しますか、国立国会図書館の目的を紛淆されはしないかという懸念を、実は持っておったわけであります。  先ほどお話しもございましたように、国立国会図書館といたしましては、科学技術振興日本の国運の展開のために最も重要であるという見地から、もちろん国立国会図書館は広くあらゆる資料を収集いたしておりますが、特に昭和二十七年以来科学技術資料の収集に相当の力を傾けているのでございます。多少数字を申し上げますと、これはもちろん国立国会図書館だけの範囲ではございません。広く学界から、また産業界から、また国会から、いろいろの御激励と御援助のもとに、そのような方策がとられたのでありますが、昭和二十七年度におきまして、先ほど来お話しのございましたPBリポート一括購入ということがまず第一着手として立てられまして、それが昭和二十七年でございます。六千九百万の、このときには昭和二十七年の補正予算で計上されておりまして、翌昭和二十八年度には八千万円、それから多少下りましたが、昭和三十三年度までを含めまして、実に二億一千九百万円余の国費が、この科学技術指導文献の収集その他に使用されておるのであります。この金額は、その金額自体が非常に大きいのでありますが、かりに比較する数を持って参りますと、二億一千九百万円、これが七、八、九と六ヵ年計上されているわけでありまして、一年度大体平均いたしまして三千万円以上の経費が計上されております。ところが、国立国会図書館が一般資料を購入する経費はどのくらいあるかと申しますと、一年に約一千六百万でございます。この数は昭和二十七年度以来ほとんど変更がございません。そういたしますと、この一千六百万円をもちまして、われわれはいわゆる内外文献資料を購入しているわけでございます。従って、外国文献等に回す経費は、まことにお恥しい次第でございまして、年間三百万ないし四百万、その他は国内の資料につきましても、もちろん必要なものは納本のほかに重複して購入いたしております。御承知のように納本がございますが、これは無償ではございませんで、代償金を支払っておりまして、そういうような金に固定されまして、一千六百万のうち一千一、二百万というものは大体そういう経費に計上されております。外国文献及び資料、それを購入する経費はわずかに三百万ないし四百万であります。ところが、ただいま申し上げましたように、科学技術関係資料文献の購入は六ヵ年度にわたりまして、平均いたしまして、毎年度三千万円以上の経費か計上されております。このほとんど大部分は、国内もさることでありますが、主としては海外の科学技術に重要な文献資料購入その他に当てられておるわけでありまして、どれだけ、国立国会図書館におきまして科学技術振興に、振興と申しますか、科学技術資料文献の収集、あるいはそれの利用に力を用いているかということが御了解いただけると思うのであります。  そういうわけでありまして、国会図書館といたしましては、科学技術関係資料文献の収集に相当力を入れておる。これは先ほど加藤先生からもお話がございましたように、科学技術図書館を運営している実はわれわれの、科学技術の分野につきましての貢献は、予算の計上と多く関係いたしまして、なお貧弱でありますが、しかし相対的に申しますと、資料の購入においてもそのような格段の経費を使っている。しかし、さっきもお話がありましたが、あるいはそれのインデックスを完全にとる、あるいはそれのアブストラクトを完全にとる、ないしは今日の世界科学技術が各国においてだんだん進んでおる難解学術書等については翻訳もするというような、完全な意味においての科学技術図書館の運営は、今日遺憾ながらわれわれとしていたしかねておりますけれども、われわれといたしましては、昭和二十七年以来国立国会図書館がとりました科学技術資料に関する図書館の運営は、実は先ほどお話しのありましたような意味での、野心的な意味での図書館の運営を実は意図し来たっておるわけであります。この点につきましては、国会におきましてもいろいろな機会に御了解がございまして、たとえば去る一月二十一日衆議院の議院運営委員会におきまして「科学技術関係文献は、国立国会図書館に集中統一的に収集し、各省庁ならびに関係研究機関等はこれを利用すること」というような決議までもいただいておるのであります。しかし、われわれといたしましてもまことに微力でありますことを残念に考えておるような次第でございます。しかし、世界の先進諸国の科学技術図書館の状況を見ましても、なかなか理想通りにはいかないのでございまして、科学技術図書館を運営する上におきまして重要なことは、やはり膨大な経費をもって資料を集中的に購入する、これがまず科学技術図書館運営の第一着手でございます。そういう意味におきまして、ささやかながらわれわれは第一着手をしたことになるのでございます。そうしてこの膨大な資料を買うということはどういうことかと申しますと、非常に少額の経費をもちまして資料文献を購入する場合におきましては、御承知のように、これは科学技術研究所、あるいは技術研究所、あるいは科学技術を実際に応用している産業の分野、そういうようなところでは、それぞれ自分の分野に属します科学技術文献につきましては、ある程度資料は収集されております。そこへ持ってきて国家がささやかな金でそういうものを集めて、その代表的な選択をして収集をする。そうすると、Aのところにもある。Bのところにもある。それからまた国家の中心の機関にもある。それでは何らの意味がない。相当大きな経費をもちまして資料文献を購入することによって初めて、その資料収集の意義を上げることができるわけでございます。それでもなおなかなか科学技術図書館の運営は完全にいかないのでありまして、それらの個々の、特別の専門図書館と申しますか、名づければ研究所でありますとか、あるいは技術の現場等に存在しておりますそういう文献と、中央の文献との間に協力をする。協力をして、さらに中央において相当大規模にこの資料を収集する。従って各国の例を見ましても、各専門図書館はますます何と申しますか、専門化していく。スペシァリゼーションの傾向に向っておる。そのスペシァリゼーションの傾向に向っておる図書館と、今度は中央の図書館にお互いにコーポレーションをする。スペシァリゼーションとコーポレーション、こういう関係世界の先進諸国の科学技術図書館の運営が行われておるのであります。われわれはそういう方向に向って努力いたしておりますが、なお不十分でございます。  それもさることでありまするが、そのようにして資料を収集、国立国会図書館は収集をしてきた。そこでもし科学技術センターその他新しくできる機関におきまして、そういう意味におきましての膨大なる資料を購入する、これはもし資料購入が可能であれば、非常にけっこうだと思います。しかし国といたしまして、そのように重複をすることは、必ずしも日本財政の現状においては許されるべきでないのではないかというふうに考えるのでございます。このときにおきまして、先ほど申し上げました情報センター法案の、二十二条の「内外科学技術情報を収集すること。」、そうしてそれが資料文献の収集に関連があるというときに、われわれといたしましてはこの法案の成立に関心なきを得なかったのであります。そこで、この法案が起草せられます過程におきましては、科学技術庁とわれわれとは緊密に連絡をいたしました。そしてそういうような資料の重複をするというようなことを極力避ける。もちろん、図書館にも一つの限界がございます。情報センターにもおのずからその使命がございます。従ってかりに、たとえば国立国会図書館資料をもってしては、情報センターの使命を達することのできないようなもの、そういうものにつきましてこの科学技術情報を収集するというためには、資料文献を購入することはわれわれは何ら異存はないのであります。しかし、国立国会図書館が現に先ほど来申し上げたような膨大なる経費、国費をもちまして収集した資料と重複し、あるいは国立国会図書館がかくのごとくに学界、産業界、あるいは国会からの御激励と御援助を得ましてやっておりました、またやってゆくべき科学技術資料関係資料収集に頓挫をきたすというようなことがあっては相ならぬというように考えまして、ただいま申し上げましたように、科学技術庁とはいろいろと御懇談をしたわけであります。ここにおきまして、その結果といたしまして条文的に申しますと、第二十四条の規定におきまして、規定の上の若干の文言の修正を行なったわけでございまするが、要はそういう修正があるとかないとかというような問題ではないのでありまして、要するにそのときの話合いの結論と申しますものは、今後、今回できまするような情報センターにおきましては、資料収集は原則的に国立国会図書館を初め、その他の機関がすでに集積している資料、あるいは将来集種をする資料については、あえて重複して資料の収集をやらない。できるだけそれを利用していくということが話されまして、その趣旨におきまして、二十四条の規定の修正、修正と申しますか、文言を多少モディファイしているのであります。その趣旨が、この法案が法律として成立するときにおきまして御確認されます上におきましては、先ほど来申し上げましたように、科学技術図書館というものは、一つ図書館をもってしては、どのようにそれが整備されましても不可能なんでありまして、こういう種類の類縁の科学技術に関する図書館への機能が各方面にたくさんできる、それが連携をしていくというときに、初めて一国の科学技術に貢献をし得る科学技術文献の収集並びに利用の機能、つまり図書館的機能が果されるのでありまして、われわれはそういう意味におきましてこの情報センターの成立につきましては、何ら異存はございません。  ただ、くれぐれも申したいことは、われわれが国立国会図書館といたしまして、収集しております文献資料の御利用が願いたいということ。またわれわれがそのような野心的意図をもって運営しております科学技術図書館の将来に向って、これが何らかあやまって、紛淆を来たすようなことのないように、一応この規定の上におきましては、そのような心組みをもちまして表現されておりますが、この点をくれぐれも、われわれといたしましては念願いたしている次第でございます。  その他の点につきましては、われわれ詳しく実は存じませんが、はなはだなわ張り争いがましく見えますけれども、そういう趣旨でございませんので、日本科学技術の水準が刻一刻と引き上げられまするように、われわれとして努力している。このわれわれの努力が頓挫を来たさないということが承認せられ、確保されるということが、最も望ましく思っておる次第であります。
  13. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) ありがとうございました。それではこれより参考人の御意見を中心とした質疑を行います。
  14. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 大体参考人方々お話は、情報センター必要性を強調せられた方が多いように思うのでありますが、これが必要だということにつきましては、私ども十分その必要性を認めておるものであります。しかし必要なだけに、この法案で果してうまくいくかどうかということには、相当疑問を持っておる者の一人であります。これを具体的に言いますと、この情報センターは公益性を尊重しなければいかぬ、要するに公益を十分に考えて運営していかなければいかぬという趣旨から、特殊法人にしておるということになっておるのであります。ところが、この法案内容を見ますると、二十八条には貸借対照表を作れとか、あるいは損益計算書を作れとか、それから三十条には特に利益の積立をやれ、それから利益の配分をしなければいかぬ、要するに配当をしなければいかぬ、利益ある場合には…、そういうような規定があるのであります。そこで、非常に矛盾があるのではないか、公共性から見て、特殊法人にしておるというが、その運営は会社的にやっていかなければいかぬ、こういうふうに見えるのであります。どっちかに徹すれば、それぞれの長所が出てくると思うのでありますが、一面においては会社的に運営をし、二面においては公益的な運営をしていかなければならぬ。そこに非常に無理が出てきやしないかという点に疑問を持っておるのであります。現にこれは衆議院から回ってきたのでありますが、衆議院の付帯決議にも、「政府は、日本科学技術情報センターの監督に当っては、科学技術振興に貢献せしめるため、営利を排し、その公共性に徹するよう、特に留意すべきである。」こういう付帯決議がついておるのでありますが、公共性に徹するというような、徹底するということになると、利益の配分をするなんという規定のあること自身が、大きな矛盾があるのじゃないか、ここに二律背反的な現われがきておる、こういうふうに思うのでありまして、私どもはこの法案を重要性のあるものだと思うだけに、かような大きな矛盾を含んだものを出していって、果していいのかどうか。そういう点と、それからこれは池田さんが特に言われたのでありますが、すべて事業は人にある、私も同感であります。ところがその人を選ぶ場合に、かように一面においては営利性を追求するがごとく、また一面に、公益性を追求するがごとく、そういう二律背反的な機関に、ほんとうに良心的にいい人が進んで就任するかどうかという点も、疑問を持つのであります。そういう点から、学界の方からごらんになった御意見、それから経団連からごらんになった御意見、あるいはまた数原さんなど、実際の業界から見られた御意見、そういう点を伺っておきたいと思うのであります。特にその点だけ一つ意見を伺いたい。
  15. 加藤信八郎

    参考人加藤信八郎君) 今の御質問に対して私の信念を申し上げます。私は先ほど申し上げましたように、この情報センターというのは、とにかく国家の力で世界的な情報を全部集めて、それを全国的に迅速に知らせるというのが目的でありまして、それが特に出版物をしたり、何かして、利益を得ると申しますか、そういうことは全然ない方がいいのではないかと思います。ほんとうに公共的なために国家が作るというのが、根本的には一番重要だと思います。それがみずから仕事をして、それでもうけるといいますか、簡単にいえばもうけるというようなことは到底できない相談である、また私はそういうことであってはいけないということを申し上げておきます。
  16. 池田亀三郎

    参考人池田亀三郎君) 私は豊田さんの言われたようなことを含みで申し上げました。特にこれは投資ということを、一部民間の投資になっておりますけれども、実際には配当なんかできないと思います。配当なんか…投資するわれわれも、配当いただこうと思って投資はあまりなさらないのじゃないか、こう思っております。ただ、今言ったような非常な矛盾がございますので、先ほど申し上げましたように、私は当然国家としてやるべきだったと思いますが、こうしたいろいろの財政その他のことはわかりません。大蔵省の関係等もわかりません。結局やむを得ず成立するためには、こういうような格好になったのじゃないかと、こう思っております。
  17. 数原三郎

    参考人数原三郎君) 同様でございます。
  18. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 池田さんも、配当は期待をせられぬという御意見でありますが、それならそれなりに、法案の建前を、民間の方からは番付金とか、そういうような行き方で、初めから公益に徹するような行き方にしても、やはり金は集まるのは集まるし、出そうという気持には変りはないようなことなんでありますが、さように考えてよろしいのでありますか。将来のことがありますので、この点質問しておきたいと思います。
  19. 池田亀三郎

    参考人池田亀三郎君) 私はこれが非常に問題なんですね、投資になりますと税金がかかりませんが、ちょっとこれは寄付になりますとどうなりますか、これはよくわかりませんが、私はやはり百万円寄付して、寄付だとか交際費だとかといいますと、やはり税金がかかります。あるいはその面から言うと、一応は私は投資でいいのかもしれません。その扱い等は私にもよくわかりませんが。
  20. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 その点政府側に聞きたいのですが、財団法人に対する特別行為というふうになれば、税金関係はなくて済むのじゃないですか。
  21. 三輪大作

    政府委員(三輪大作君) 民間から出資金をいただくことになりますが、寄付金については税金の免除の手続を今とりつつございますので、税金はつかない。出資金の方は、現在の段階ではそう取り扱われるのはちょっと困難かと思います。将来はそうしたい構想を考えておりますけれども、ちょっと間に合いかねるのじゃないかと思います。
  22. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 その点は財団法人にはっきりしてしまって、公益法人的にやれば、かえって税金関係はかからなくて、業界から民間から金を集めることには、より便宜だということになるのじゃないですか。
  23. 三輪大作

    政府委員(三輪大作君) 豊田先生のおっしゃるように、財団法人にした方が、形がすっきりしていいだろうというふうに、私ども一応当初考えたのであります。ところが、財団法人にいたしますと、会員関係情報がかたよる、どうしても会員中心ということになりますから、公共性ということにどうしても欠けてくるおそれがあるという点で、ちょっとこれは工合悪いじゃないかということから、むしろ一面においては公共性という性格を持っておる、また運営におきましては、情報センターが、民間科学技術振興のために、積極的にサービスするという機動的な運営ができるという面から言うならば、むしろ特殊法人という形にいたしまして、一方においては国家がこれを十分監督いたしまして、利益を追求するような運営をやらせないという監督のもとに、しかも公共性に富んだ、あらゆる広い面で金日本科学技術振興させる情報活動ということをさせるには、いささかあいまいであるように見えますけれども、特殊法人という形が最も望ましいということで結局特殊法人という形になったのであります。その利益は追求しないというのは、かかった実費はもらいますけれどもその中に利益を織り込んだような、たとえば速報の価格を決定いたす場合でも、利益というものは決して織り込ませないというところに利潤は追わない、しかし三分の三は売り上げでやっていかなければならぬという建前もございますので、結局売り上げをふやすということは、民間の産業界がなるほどこれは役に立つ、有益であるというものであればこそ買うわけであります。利用するわけでありますから、さらに情報センターが一生懸命努力いたしまして、民間に喜ばれるような情報を作るということを考えますれば、むしろ特殊法人の形にいたしまして、一方では民間に喜ばれる、ほんとうにためになる情報を流すということに専心できるという形の方が、こういう国家的機関であり、しかもサービスをモットーとする機関ということになりますれば、財団法人よりはむしろ特殊法人の方がよろしい、こういうことでかようにいたしたのであります。
  24. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 国会図書館にちょっとお尋ねしますが、先ほどこの六年間に二億数千万円の費用を投じて科学技術振興文献等を御収集になったということでございますが、これの利用率、産業界はどんなふうに利用しておられるか、あるいはまた学界はどんなふうに利用しておいでになるかというような点についておわかりであったら、お聞かせ願いたいと思います。
  25. 中根秀雄

    国立国会図書館館長中根秀雄君) 利用の面につきまして申し上げることを省略いたしたのでありますが、たとえばこれはまあ広くPBリポートだけではございません。原子力関係資料等についてもさようでございますが、もちろん専門的な資料でございまして、一般の程度と申しますか、低い程度の学生等の利用には、必ずしも適しておりません。従って必ずしもいわゆる閲覧者というような数だけで、これは判断することはできないと思いますが、その閲覧者をかりに申し上げますと、昭和三十一年度におきましては、このPBリポート並びに原子力関係を中心にしました文献資料につきましては、四千人余りの者がこれを利用しております。閲覧をいたしております。ところで、御承知のように、たとえばPBリポートなどはマイクロ・フイルムと申しましてこのフィルムにごく小さく複写されたものでありまして、従ってそれを閲読いたしますときには閲読機にかけましてこれを拡大して読むというので、一般の図書を閲覧するような工合にいきませんので、そこで多くの閲覧者は自分の欲する資料につきまして一応閲覧をいたしまして、さらにこれを複写拡大いたしまして写真に大きくとりましてゆっくり研究資料として使うのであります。従って閲覧と同時に科学技術文献資料につきましては複写が非常に出るわけでありまして、たとえばこの資料を購入いたしました当初におきましては、なお微々たるものでございまして、たとえば昭和二十八年度におきましては、件数にいたしましてこれはもっとも九月から三月までの間でありますが、三千件余であります。ページ数にいたしまして十一万二千ページ余であります。ところが、昭和三十一年四月から今年の三月に至る分でございますが、つまり昭和三十一年度分これの総計を見ますと、件数にいたしまして一万四千二百六件の複写が要求されております。それに対しまして複写いたしましたページ数に換算いたしますと、実に六十二万五千三百四ページというものが、この複写によってそれらの利用者に手渡されているわけでございます。こういう数字だけでは、まことに精彩がございませんが、先ほど来だんだんお話しのございましたように近年著しくその利用度合いが高まっているように考えております。
  26. 加藤信八郎

    参考人加藤信八郎君) 私は先ほどの国会図書館PBリポートを輸入した最大の責任者であるとみずから考えておりますが、輸入することは一括購入したのでありますが、これをどういうふうに利用するかという面におきましては、予算をもちろん伴うことでありますが、今まで私が見ておりましたところでは、国会図書館というものが非常に微力であるとはっきり申し上げられるのであります。そこで、これをもっと的確に利用する、早く利用するためには、どうしても民間企業を使わなければならないということを感じまして、いろいろの民間の業者に私、説得いたしまして、この国会図書館にあるPBリポートを各会社が利用するように、そういうつもりでPBリポート出版社というものが民間にできたわけであります。それで各会社はみなそのPBリポート出版社というものを通じて、国立国会図書館にあるPBリポートを現在利用しているのであります。図書館でももちろん頼まれれば複写その他いたすのでありますが、実際に利用する方から申しますと、図書館も官庁であるということもありましょうが非常に仕事がおそくて間に合わないという点があるのであります。そこで、それを利用するのにはやはり民間の企業を使わなければならない。民間の企業でありますれば、非常に早く迅速に、しかも便利に利用者文献が複写その他によって供給されているのであります。そういう意味において、私はこういう団体がみずからそういう商売をすることはだめだという感じを持っているのであります。
  27. 阿具根登

    ○阿具根登君 加藤参考人にお尋ねいたしますが、加藤参考人お話を承わっておりますと、科学国立図書館を作るべきである、こういうことを言われておったと思うのです。今のお話しでは、国立図書館では情報が非常におそい、こういうことも言われておりますので、今の国立国会図書館でなくて別個の科学国立図書館を作れ、こういう意思であるかどうか、それを一つ
  28. 加藤信八郎

    参考人加藤信八郎君) 私はこの数年現在の国会図書館の運営、その他を見ておりますと、私ははっきり申し上げましてだめである。従って別個に今の国会図書館の数倍くらいの大きさのものを国家的機関において作るということが望ましい。
  29. 阿具根登

    ○阿具根登君 中根国会図書館館長にお尋ねいたしますが、先ほどの御説明では二億数千万円の金を使って、年間三千万円の金が科学技術に使われている。その他は年間一千六百万しか使われておらない。しかもこれは国内のやつが主要であって、海外に対しては三百万円くらいの金しか使っておらない。そういたしますと、国立図書館の三分の二以上は、科学技術情報にこれは専心されておった。それがただいまお聞きのように、学者の方からは、それだけの膨大な金を使っても何にもならないじゃないか、こういうおしかりを受けておるのですが、国立国会図書館がそれだけの金を使ってPBリポートの膨大な質料を寄せられたけれども、それがちっとも民間方々にも学者の方々にも、ほんとうに利用されておらなかったという原因は何にあるのですか。
  30. 中根秀雄

    国立国会図書館館長中根秀雄君) 文献資料の購入の点におきましては、科学技術関係資料以外の資料につきましては、先ほど申し上げましたように、年間一千六百万円程度でございます。そのうち、海外の資料等に振り向けられますものは、大体四百万前後というのは先ほど申し上げた通りでございます。ただ国立国会図書館の、このようにして科学技術資料文献を集め、その利用面におきまして、われわれといたしましては、われわれの予算におきまして、許します範囲の努力をいたしております。これは手前みそでありますが、私どもの見るところでは、ことに最近におきまして、科学技術関係文献資料の利用につきましては、相当盛んになっているように思いますし、また、学界、産業界に対しましても、何がしかの寄与貢献をしておるように考えております。ただ先ほども申し上げました通り、この文献資料の購入につきましては、相当額を固定いたしておりますけれども、これを先ほど申し上げました科学技術図書館としての運営に要するいろいろのプロセスがございます。たとえばインデックスの問題、翻訳の問題、それらの要員に至りましては、先ほど来申し上げまする通り、残念ながら、いまだ国立国会図書館は、その所望の理想に達しておらないので、そういう意味におきまして、いまだ完全なる奉仕ができ得ておらないように私も考えております。
  31. 阿具根登

    ○阿具根登君 もう一言お尋ねいたしますが、そういたしますと、科学情報センターができたということになれば、科学の貢献その他は、おそらくその方で大部分やるんだ、こう思うのであります。そういたしますと、国会図書館としての費用が減らされるかもわかりませんけれども国会図書館としては、今までやりたくてもやれなかった、一千六百万円くらいしか年間使われなかったその方に重点を置いていけば、双方とも、もっと科学陣営の方々が望まれるような機構になってくる。また、その他の方々国立国会図書館をお使いになる場合にも、もっとまあ満足できるように使われるような結果になりはしないか。こういうような考えは成り立ちませんか。今のままで国会図書館の中に情報センター的なものを設けるということになってくれば機構だけ膨大になって、今の弊害をもっと大きくするのではないか、こういうようなおそれがあると、かように思うのです。問題は国立図書館皆さんの御意見では、これは弔う十分やっておるのだ、まあ利用してもらわないのだというようなことになるかもしれませんけれども利用者の側では、今の国会図書館が三千万円年間使っておっても、これではちっとも世界の科学に追いつけない、うしろからついていくだけだ。だから新しくこういうやつを作れという大きな声になっておるものだと私は思って、御意見をお聞きしておるのですが、そういう点はいかがお考えになっておりますか。
  32. 中根秀雄

    国立国会図書館館長中根秀雄君) ただいまの御意見は、つまり結論的にそういうふうに考えられるという御結論であるかどうかは多少はっきりいたしませんが、私どもといたしましては、一応図書館といたしまして、これは何も日本だけではございません。世界各国の図書館の状況と照らしまして、特に非能率であるように思っておりません。ただ、先ほど来申し上げております通り、先進諸国におきまする科学技術図書館におきましては、資料の購入費だけでなしに、その資料をプロセスしていきます要員等につきましても、経費か相当額計上されておりますので、それらに対比いたしますと、われわれとしては、まことに不如意な人件費をもちましてそれらの運営をやっておる遺憾な状態にある。しかし、その条件のもとにおきましては、その能率性におきまして、特に低いというふうには考えておりません。
  33. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 池田さんに一つお伺いしたいんですが、先ほどお話しの中に、現在でも相当技術提携に関して、外国との提携をやっておるというお話しでありますが、これはかなり各民間としては広範囲にわたっておるのではないかと思うのでありますが、かりにこれを設立するときに当って民間の出資または寄付というものが、非常な大きな要素になるわけなんであります。そういう意味において、概略でよろしいんですが、大体あなたのお見通しとしては、現在そういう方面に払っておりまする金額、これはドルでもけっこうですし、それから円でもけっこうですが、大体どれぐらいでしょうか。
  34. 池田亀三郎

    参考人池田亀三郎君) 大体国の研究機関が使っているのは百六十億くらい、それから海外に払っている技術導入料は、ごく最近は知りませんけれども、どなたかわかっている方があるかもしれませんが、ほぼそのくらいじゃないかと思います。今後ますますふえるんじゃないかと思います。私ども今後石油化学の十社だけでも、海外に払う金は相当大きな金になると思います。一つは先ほど申しました技術導入料でありますし、向うでノーハウができていないものは買えませんので、こちらでいろいろ研究をいたしまして、ノーハウを作るわけであります。そうして工業化するわけでありますが、向うでできておれば、特許料とノーハウ料になると考えております。
  35. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 非常におそくなりまして、参考人の方にお気の毒でありますが、二、三お聞きしたいと思います。    〔委員長退席、理事具根登君着席〕  本年の一月二十日ごろまでは、この情報センターは、科学技術庁でやるものか、あるいはまた国会図書館でやるものか、これは政府として明確にきまっておらなかったと思うわけであります。さいぜん、中根館長お話しの中にもございましたけれども、当時は科学技科庁の方の予算要求額は一億一千万円と私は記憶しております。それから国会図書館の方の予算要求額は、大体明確に記憶しておりませんけれども、一億内外だったと思います。そういうようなところで、二つの要求か、一方はこちらへ出て参って、一方は議連の方へ出てきたわけです。そこでどちらに置くのが、正しいかということで、今回科学技術庁の提案になったものか、それとも、予算科学技術庁の方ヘついてしまったから、その方が正しいということでやったものか、そのあたり、中根館長お話しですと、なわ張り争いでないということを特に強調しておられるようですけれどもその点を一つ中根館長と、それから当局からお伺いしたいと思います。
  36. 阿具根登

    理事(阿具根登君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  37. 阿具根登

    理事(阿具根登君) 速記を始めて。
  38. 中根秀雄

    ○国会国会図書館館長中根秀雄君) ただいまの御指摘でございますが、ただいまのお話しの通り科学技術庁の方でも、広い意味での科学技術図書館と申しますか、要するに資料を収集して、その利用をせしめるという趣旨の経費を出しておったようであります。どのくらい出しておったか私は詳しくは存じません。国立国会図書館といたしましても、そういうような情勢に乗ってということではなしに、先ほど来申し上げましたように、昭和二十七年度に、国立国会図書館は、PBリポートの購入から、科学技術図書館の運営という方向に一つの方向を切り開いてというその使命に基きまして、ただいまお話しのございましたような、相当額の科学資料図書館を運営するための経費を、これは例年出しておるのです。今年も同様に相当額の経費を出したのであります。その際、それではただいま御質問にございましたように、予算額もだからそうなったとか、あるいは予算をどうするかということにつきまして、われわれが謀議にあずからしめられたという点につきましては、実はそういう点につきまして何にもお話し合いはなかったわけなんでありまして、ただ一応科学技術庁の方において、科学情報センターができる、国会図書館の経費については、おおむね前年の通り科学技術関係につきまして同様の程度ということで三十二年度予算は計上されたようなわけでありまして、その間の何といいますか、どっちを選ぶとか何とかということにつきましては、われわれはあずかり知っておらないことなんでございます。
  39. 三輪大作

    政府委員(三輪大作君) 今の情報センター科学技術庁に作るか、国会図書館に作るかという点につきまして…。
  40. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 話し中ですけれども、あなた方のお話参考人の人がお帰りなってから一つお伺いいたします。では、池田さんは衆議院の特別委員会にも一出席されて公述なさっておるので、それを読みましたのですが、これをざっくばらんにお伺いするのですが、まあ皆さん方は、本年度は四千万円とか、またその次の年幾ら幾らということになってございますね、御承知通り。そうしますと衆議院の特別委員会では、くらげの生殖の文献はいかにというところまで出たのですけれども、しかし実際問題として皆さん方が四千万円の金を投資するということになれば、その天然ガスからアルコールを取るとか、あるいは非常に範囲が狭いものをやってほしいということになって、さいぜん加藤先生がお話し申し上げられた広い科学などというものがずっと狭くなってこなければならぬと、そういうことにならぬですか。これはどうですか。あなたたちは広い形に利用しなければならぬ、あす、あさってに利用しなければならぬというようなことに集中してくるようなお考えはないのですか。どうですか、その点。
  41. 池田亀三郎

    参考人池田亀三郎君) それは私申し上げました。私はその通りだと思います。今の齋藤憲三先生から科学技術庁に人文科学は入るべきだという主張がございました。それはけっこうだと思います、理想は。しかし私どもさっき申しましたように、行政審議会でも答申したのは、産業技術科学ということで私ども答申いたしました。それでできたのじゃないかと思います。そのときもやはりその問題が実はありましたのですが、なお、私は今申しました産業技術の中にも、非常にこれはまた範囲が広うございますから、あれもこれもといって、大体内容も十分ふえるようになっておるのですが、これをどれもこれも同じように力を入れまして、今言ったように、四千万円で、さらに民間から五千万円ですか、そのぐらいの金ではなかなか容易じゃないだろうと思います。私どももそういった専門ではございませんけれども、仕事をやっていく上からいいましても、当初はやはり重点的に効果の多いものからやっていくということの方がよろしいかと思います。せっかく情報を入れましても、一向つまらぬ仕事をただ広く当っておるということだけでは結局利益なんか上げるどころじゃない、結果は非常にどうなるか、その点は非常に憂慮をいたします。今でもあのとき申し上げた通りに考えております。
  42. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 もう一つ加藤先生は学問的立場で御研究なさっておるのですから、こういう質問どうかと思いますが、たとえば本年度法案通りますと、六十人ぐらいで出発するわけです。それでここにも政府内容説明をされておりますけれども、これは幾ら幾ら収穫が上るのだということになっておりまして、六十名ぐらいて先生のおっしゃった理想の半分でも三分の一でもできるかどうかという、この見通しをお伺いするのはどうかと思いますけれども一、この点いかがですか。
  43. 加藤信八郎

    参考人加藤信八郎君) この日本科学技術情報センターの、これに書いてありますところの規模は、私が理想として考えているものよりも、はるかに小さくて話しにならぬ。それで私が先ほど申し上げましたように、一番肝心なことは、今まですでに出ておる文献資料整理するということが一番肝心なんです。それすらもとうていこんなものじゃできない。だからそのほかの出版をするとか、あるいはマイクロカードを取ってやるとかいうような、そういうことは民間の事業者にまかせて、これがやるべきことは、全部の資料をとにかく集めて、それを分類整理して能率的に必要に応じた答えがすぐ出る、そういう態勢を整えるということが根本であると思うわけです。
  44. 相馬助治

    ○相馬助治君 加藤先生に一点と、池田参考人に一点とお聞きしたいと思います。まず、加藤先生にお聞きしたいことは、この法案の今までの審議の過程で問題になっておりますことは、公益性の問題をどういうふうに調和するかという問題、一方では相当事業収入というものを見ておると、こういうふうな点から、この情報センターの設置法案ができてこれが出発しても、ほんとうの一体仕事がやれるんであろうかということを、われわれは多く疑念を持っておるわけです。そこで参考人にお尋ねしたいことは、国家財政なんかから顧慮されてはきますが、そういうことはしばらく離れて、理想案としたならば、一体何が一番いいのかということを、率直に御披瀝願いたいと思うのです。具体的にどういうことを私がお尋ねしたいかということは、国会図書館を強めて、その傘下というか、その中の仕事として、この情報センターのようなものをやらせた方がいいという案も一つあろうと思います。現在の国会図書館はだめだといっても、これはしかしその設置法に明らかでありまするように、こういう情報センター国会図書館と別個にできることは、一極の不信任案を国会図書館がつきつけられておるようなことなんです。設置法で明らかなんです、これは。従いまして現在の国会図書館法のまずい点は直して、そうして国会図書館の中に、ないしは傘下に入れてこれを出発させた方がいいというふうにお考えか。それとも今政府提案の技術情報センターのこの案で、もっと政府出資なら政府出資を増して、大蔵省に財政支出を犠牲的に払わせてこの、案をやっていった方がいいか、それとも第三案としては、公益性とか何とか言わずに、日本のお役所仕事のだめなことは定評があるんだから、むしろ民間出資を多く出して、そうして大そううまい題目の公益性とか何とか言わずに、もっと商売気を出してスピーディにやれる方法でやらせて、政府がこれに補助すると、そうしてあまり監督だのへったくれだのと言わない、古手の官僚なんかおろしてこないという方法でいった方がいいか。とにかくいろいろ言いづらいこととは思うけれども加藤先生が、僕に立案させるなら、おれはこうしてやるという理想案を聞かしていただきたい、これが一点。  それから池田さんにお尋ねしたいことは、私は質問で、一体民間から出資させると言っておるか、その民間の言うことはあまり聞かないということをはっきり言っておる、公益性は十分守るということを言っておるが、一体これで産業界や業界は金を出すのか、その今までの経緯と見通しについて一つ資料を出せと、こういって私は資料を求めて、正式の資料をいただいた。池田さんのもとにいっておるかどうかしりませんが、そこを簡単に読みますと、政府はこう申しております。「産業界、財界に対しては、本センターの計画樹立の当初より緊密な連繋と意見の交換を行いつつ今日に至っているのであり、特にこの準備に最も肝要な事項である出資金及び寄附金については、各界の代表者と十分に意志の疎通を図っているのであって、」断定しております。「これらの接触を通じて、所期の計画を完成することは可能であるという見透しを得ている。」こう非常に自信に満ちた資料を私どもに出しておりますが、これについての率直な池田さんの一つ御見解を承わりたい。
  45. 加藤信八郎

    参考人加藤信八郎君) ただいま根本的な御質問がありましたが、私の信念を申し上げます。ただいまの国会図書館がとても科学技術情報は扱い得ないと、さっき断定いたしたのでありますが、これは要するに人と運営が悪いということであります。少くとも現在の国会図書館には科学技術のわかっている人がほとんどいないと、これが最大の欠点であります。でありますから、少くとも科学技術情報を扱うならば、人を全部入力かえろということ、それができなければ別に作れと、こういうことですね。それからそれならば、どこでも、私はいいのでありますが、とにかく今の国会図書館とは別に科学技術情報を扱うところを作れと、センターでもいい、名前はどうでもいいのでおりますが、そういうものはまあ別に作った方がいいという感じであります。それからこれをそれじゃあ、すっかり民間にやらせるかということでありますが、これが私の経験ではですね、民間の事業者団体が協力してこういうものを作るということは、これは日本の国情ではできない、共通の利害を追求するという、非常にうまいのでありますが、これは実際問題として、各社が競争するのでありますから、それを共通にやるということはできないと私は思います。従ってこれはどうしても政府機関に、現在の状況では国会図書館とは別に、その数倍の規模のものを別に作るという構想を理想として、一ぺんにはできませんから、その構想の一部分ずつを作っていくということが一番望ましいと思います。
  46. 池田亀三郎

    参考人池田亀三郎君) 今のお話しの、さっきも申し上げたのですけれども、これは私が投資しましてもですね、それに対する配当もそれは期待しないだろうと、これは想像して申しました。私はそう思っております。そこで、これが公共性を発揮したからといいまして、この投資あるいは寄付した人が、かれこれ意見はないだろうと思うのです。それから公共性公共性といいましてですね、あんまりこの幅広くやりますと、結局結果は何かこう上らないんじゃないかと、こう思うんです。
  47. 相馬助治

    ○相馬助治君 そこでですね、私の言うているのは、そういうふうな問題をお持ちであるが、政府が言うているように、産業界、財界から今のところでは援助していただける、はっきり言えば出資金ももらわれるし、寄付ももらわれるし、事業遂行上の協力ももらわれる見通しがついていると、こう申しているが、あなたたちとの了解はさようにいっていると、こちらでは考えてよろしいのかどうかということをお尋ねしているのです。
  48. 池田亀三郎

    参考人池田亀三郎君) これは先ほど固く約束したと申し上げました。この種の寄付その他投資集めに、これだけ努力なさった例は私、知りません。ずいぶん原子力等、ほとんど全く知らない、四十万円の投資、十万円の寄付といったようなことがだんだんきめられておりますけれども、ここは商工会議所、経団連、名古屋、大阪等に全部一々御了解を得たということは、私はほかにあまり例を見ないように私個人は思っております。
  49. 古池信三

    ○古池信三君 加藤先生にごく簡単に一つお尋ねしたいんですが、大体先ほどからのお話しでお考えの点は私も了解したつもりですけれども、端的に申し上げますとですね、現在の国会図書館のやり方は、まあ役所主義であって、能率が上らないと、これはだめであると、本来ならば民間でやらせるのが一番能率がいいのだけれども、今の日本の情勢としては、民間だけの団体でやるということはちょっと望めないと思うから、やはりもっと規模の大きい国の機関としてやることがよかろと、こういう御意見なんですね。
  50. 加藤信八郎

    参考人加藤信八郎君) そうです。
  51. 古池信三

    ○古池信三君 それからもう一つ、この図書館に付随したといいますか、あるいは一体といいますか、いろいろ利用者の便宜をはかるために、マイクロフィルムだとか、そういうようなものを作って出す、そういうような仕事が今の図書館のやり方は非常におそいが、民間にやらせれば大へん早い、こういうお話しでしたが、これは現在の状況ではどのくらい違うでしょうか、能率の差というものは。
  52. 加藤信八郎

    参考人加藤信八郎君) 現在図書館にありますこのPBリポート、あるいは原子力資料、膨大なものがありますが、これを実際に各会社が利用しているのは、大部分が、私の推測ではですね、大部分PBリポート出版社という民間企業ですね、それを通して図書館資料を利用している。図書館自身がやっていたならば、これは一月もかかっちゃう。で、金を払うのにも現金を持っていって払わなくちゃいかぬ。そういう不便がある。ところがこの民間団体、民間企業に頼めば、すぐに金は払わなくても会社からちゃんと人が出向いてやられる。しかも大体頼んでから一週間もあればできちゃう。そういうことで、そういう民間企業を通して利用しているというのが、私は実情だと思うのです。
  53. 古池信三

    ○古池信三君 そうしますと、国立国会図書館を直接利用すれば一月かかるところを、民間を通じてやれば一週間でやれる、大体そういうまあお話しでございますね。
  54. 加藤信八郎

    参考人加藤信八郎君) そうです。
  55. 古池信三

    ○古池信三君 そこでこの会計法等の建前から、今の現金を納めるとか納めぬとかいう問題は、それはやはり国がやるときには民間のようなふうには簡単にはいかないだろうと思う。しかし、やり方次第では、これはずっと早くやることもできぬことはあるまいと思うのですが、新しい国家機関あるいは特殊な法人をもって組織された機関がやるという場合には、今の純民間でやられると同じようなスピードでできるとお考えになるか、どうですか。
  56. 加藤信八郎

    参考人加藤信八郎君) それはやり方によっては、私はできると思います。これは要するに人と運営の問題であって、やはり科学技術情報というものを正確に把握した人がやはりやっていなければ、結局だめだということであります。  それからついでに、これはちょっと御参考になるかと思いますので、今ちょっと国際問題になっている問題が、この文献についてありますので、一言きょうは私から率直に皆さんに聞いていただきたい。これはアメリカの先ほど申し上げましたケミカル・アブストラクツという化学の最も最高峰といわれる抄録雑誌であります。これをアメリカのケミカル・ソサエテーが発行しているのでありますが、これについて実は最近国際問題が生じているのであります。でおととしの状況を申し上げますと、このケミカル・アブストラクツをどのくらい世界で取っているかという数字がわかりました。アメリカ合衆国が三千部で、それに対して日本では千部—三分の一であります、取っている。そうしてイギリス、フランスその他ソ連、そういうところは大体二、三百部。で、日本では外国文献をこのくらい、アメリカの三分の一も、各自ばらばらに取っている。ここに問題があるのです、一つは。これをもっと協力して公共団体で取って、それが簡単に利用できれば、そんなに一ぱい取らなくてもいい。これはまあ一例でありますが、大体外国の図書あるいは雑誌というものを買う数というものは、日本世界的に非常に多い。それにむだな金を使っているのであります。各大学、各会社みなそれぞれ個別に同じようなものを買っている。でありますから、この金を集計いたしますれば、非常に利益になる、こういうことが一つの例であります。  それから問題は、昨年あった例でありますが、アメリカ化学会から、ケミカル・アブストラクスを作るには、非常に膨大な資金が要って、実は経済的にやり切れない。従ってその経費をこれの利用によって利益の上る会社に持ってもらいたいということになりまして、世界的の今まで取っていたところへそういう要請があったわけです。その結果、昨年度になりますと大幅な値上げになりまして、会社関係は一年分が三百五十ドル、といいますと約十五万円、それだけの会費を払ってもらいたいといってきたのだそうです。それに対して個人会員、個人でアメリカケミカル・アブストラクツを取っている人は二十ドル、これはまたべらぼうに安い二十ドル、それから学校が多少高くて八十ドル、それで民間会社その他は三百五十ドルを負担しろという丁寧な要請があったのであります。ところが、問題は昨年になりまして、日本がおととし取っていた千のうち八百を会社が取りていたのでありますが、そのときは五十ドルか六十ドル、それが三百五十ドルに値上げになる、これでは大へんだということで会社は全部やめてしまった。七、八百あった会社は全部取らない、三百五十ドル負担しないということですが、ただやめたならいいのだけれども、そのかわりにその七百ぐらいの会社が、全部そこの社員を一人ずつ個人会員に入れてしまったのであります。そうすると二十ドルで取れる、こういうことになりまして、今アメリカ大使館を通じまして日本へ抗議が来ている。全部がほとんど二十ドルの個人会員になってしまった。これでは経済やり切れない、こういうアン・フェアな状態では、日本にはケミカル・アブストラクツはもうやらぬ、こういうことになってはこれは重要問題です。これを私は昨年から心配いたしまして、扱う本屋その他一流会社には事情をよく説明しまして、とにかくケミカル・アブストラクツというものは非常に有用なものであるから、しかもその経費がかかるのだから会社が負担しろ、三百五十ドルみんなそのまま払ってくれということを、ずいぶん勧誘したのでありますが、結局のところは全部やめてしまって、それが全部二十ドルの個人会員になって取っておる、こういう状況であります。個人会員は誓約書を出すのであります。このケミカル・アブストラクツは自分個人の使用である、他人には一切見せないのだ、こういう誓約書に署名をして出すのでありますが、それを日本ではみんな出している。会社の人もみんなそれを出している。ところが、実際は会社でみんな使っている。十五万円払うべきところを七、八千円でみんな個人会員になって取っている。こういうきわめて不信のことで、アメリカではこれを世界発表するという、それは大へんだ、国際問題です。だからまあ今日本化学会でこれを何とか処置をするから、それまで発表を控えてもらいたい、こう私は言っているのです。現在なるべくその会社会員には三百五十ドル払った上、堂々と取ってもらいたいということを勧誘しているのでありますが、なかなかそう思うようにいきますか、どうですか。来年度は日本の個人会員約千人にはケミカル・アブストラクツが来なくなる。現在でも来ておりません。今年の分は来ておりません。これが適当に解決しなければ出さぬと、こう言っているのです。こういう日本会社のいわば不信問題でありますが、このくらい日本では外国のものを取っている、これが根本なんです。そんなに取らなくても、私の申し上げましたようなこういう科学技術図書館というようなところにちゃんとあって、それがすべて整理されておれば、個々の問題についてそこへ問い合せれば、すぐわかるという状態になることが非常に望ましい。今外国に払っている本を買う金を集めれば、これは大へんなものであろうと思います。そういう意味において、国家的の機関において科学技術センターというものをそういう構想で作っていただきたい。
  57. 松澤兼人

    松澤兼人君 そのことについて加藤さんに御質問申し上げようと思っていたのですが、かりにケミカル・アブストラクツというようなものにそういう問題があるとしますと、これを日本科学技術情報センターで一括して、ケミカル・アブストラクツに載っている論文なり、あるいは情報なりを翻訳して、各会社に頒布するというようなことになれば、さらにやはり問題が起ってくるんじゃないかと思うのですが、そういう国際間の版権なり、あるいは著作権なりというような問題は、将来こういうセンターができたときに起らないのでしょうか。
  58. 加藤信八郎

    参考人加藤信八郎君) お答え申し上げます。このケミカル・アブストラクツというものは、アメリカ化学会が編集、出版しているものでありまして、これをそのまま翻訳あるいはリプリント、そういうことは一切できないことになっております。当然そういう問題が非常に入ってくると思います。
  59. 松澤兼人

    松澤兼人君 先ほど来いろいろお話を用いておりまして、こういう情報センター必要性というものは認めるわけでありますけれども日本の国情として、あるいは日本の国民性として、半官半民的な情報センターというものが、果して将来産業界のためにも、あるいは学界のためにも貢献するように発展できるかどうかということを心配する向きが相当にあると思いますが、果してこの情報センターというものの職員がどういう人かわかりませんけれども政府の考えておるような職員の構成をもってして、果して学界なり、あるいは産業界なりが要求するような活動ができるかどうかという問題につきまして、加藤さん及び池田さんにお伺いしたいと思いますが、この点いかがでございましょうか。
  60. 加藤信八郎

    参考人加藤信八郎君) 先ほどから申し上げておりますように、こんな程度の規模では、私の理想とするような科学技術情報センターはできないということは申し上げてあるのですが、しかしそれは一ぺんにはできないのでありますから、部分的に始めるといたしましても、根本理想というものは、国家的の機関において世界的な科学技術資料をそこで集めて整理分類しておくということが望ましい。それだけでもこの規模では数年かかってもできないと私は思います。
  61. 池田亀三郎

    参考人池田亀三郎君) 私もこれは最初から申し上げました理想には、ほど遠いものだと思います。しかし、これは何をやっても、先ほど申しました私どもの仕事をやるにも同じことなんですが、理想は大きく持たなければいけませんけれども、初めから理想的な実現はこれまたむずかしいと思います。ただ、それであるからこの情報センター要らないかということになりますと、絶対にそうは考えません。それでさっきからもだんだん申し上げておりますけれども、なるべく同じ金であっても、効果的な方面に企画、運営をする、こういうことに考えていただいたらよろしいかと、こう思います。
  62. 阿具根登

    理事(阿具根登君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕    〔理事具根登君退席、委員長着席〕
  63. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 速記を始めて。  参考人方々には大へんお忙しいところ、しかも開会がおくれまして、まことに恐縮でございました。しかも、長時間にわたりまして有益な御意見を拝聴いたしまして、日本科学技術情報センター審議に裨益するところまことに大きかったと思いまして、厚くお礼を申し上げます。  以上、参考人を中心といたしました質疑は一応これで打ち切ります。   —————————————
  64. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 次に、新たに本委員会に付託になりました機械工業振興臨時措置法の一部を改正する法律案と、電子工業振興臨時措置法案について提案理由の説明を聴取いたします。
  65. 長谷川四郎

    政府委員長谷川四郎君) 機械工業振興臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  昨年六月第二十四回国会におきまして、機械工業振興臨時措置法が成立施行されて以来、政府はこの法律の趣旨に基き、機械工業のうち最も劣弱な部門とされております基礎機械及び共通部品部門を中心として、設備の近代化、能率の増進、生産技術の向上等の合理化施策を推進して参ったのであります。  御承知のように、現行の機械工業振興臨時措置法の規定によりまして、これらの合理化施策の推進につきましては、通商産業大臣がその運用に当って参ったのでありますが、このほど運輸省の所掌に属する造船関連工業の一部及び鉄道車両部品工業等の業種につきましても、本法制定の趣旨に合致するものにつきましては、運輸大臣も本法を運用することによりその振興をはかることが適当であるとの結論に到達いたしましたので、現行法中「通商産業大臣」と定めてあります規定のうち、必要なものについて、これを「主務大臣」と改めることといたした次第であります。  なお、本法の運用に当りましては、関係行政機関の間で充分協議の上、その一体的運用をはかる所存であります。  以上が機械工業振興臨時措置法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。  次に、電子工業振興臨時措置法案につきまして、その提案理由法律案の概要を御説明申し上げます。  電子工業は、最近において急速な発展を見つつある近代産業の一つであり、国の基幹産業として関連各産業部門への応用面は、まことに無限の広がりを有していると申すべく、その将来性について最も期待を持たれている重要な産業であります。  わが国の電子工業は過去五十年の歴史を有しておるとは申せ、それは主として電気通信の分野においてその応用研究がなされていたにすぎず、戦時中及び戦後を通じ、欧米諸外国がその産業各部門への広範なる応用についてきわめて長足の進歩を遂げたのに対し、はなはだ立ちおくれており、今後政府及び民間の総力を結集して、できる限りすみやかにその振興をはからねばならぬことを痛感する次第であります。  わが国電子工業がこの大きな国家的要請にこたえるためには、一方において広く海外先進諸国の優れた技術に学ぶことも必要でありますが、基本的にはわが国技術水準の着実な向上と経営基礎の確立をはかるとともに、その部品、材料及び機器全体について一貫した均衡のとれた形で電子工業全体が総合的に発展してゆくことが切に望まれる次第であります。  このような見地からわが国電子工業の現状を見ますに、解状さるべき幾多の問題に当面していると言わねばなりません。すなわち、わが国の電子工業は戦後十年を経てようやく一応の生産体制の整備が行われたにすぎない段階でありまして、それも主として外国技術との提携に依存してきたといえるのであります。  しかも、世界各国における電子技術進歩はまことに目ざましく、このまま推移すれば、現在の企業の技術的並びに資金的能力から見て、わが国電子技術のおくれは、ますます大きくなるものといわねばなりません。のみならず、電子機器の基礎となる部品工業の分野におきましては、多数の企業が乱立して、それぞれ多種類のものを小量ずつ生産しているという現状であります。  かかる現状とこれに対処すべき国家的要請とにかんがみ、政府といたしましては昨年十月通商産業省内の機械工業審議会に電子工業振興特別部会を設置し、関係官庁の職員、学職経験者、業界代表等を委員に委嘱し、その振興対策につき慎重審議して参りましたが、最近に至り一応の結論が得られましたので、この結論に基き、かつ、さらに各方面からの検討を重ねた結果、このたびようやく法案としてこれを上程することといたしたのでございます。  本法案は、電子工業における製造技術の向上、新規製品の工業化及び生産の合理化を促進することにより、総合的に電子工業の振興をはかるとともに、これにより一般産業の近代化を促進し、国民経済の健全な発展に寄与しようとするものでありまして、その骨子は次の通りであります。  本案の対象となる電子機器等は、試験研究促進の必要なもの、新たに工業生産に移す必要があるもの及び生産数量を増大する必要があるもの、合理化の必要なものの三つに分けて、それぞれ政令で定めることになっておりますが、それぞれ当面最も急を要するものについて重点的にとり上げていきたいと考えております。  振興基本計画は、ただいま申し述べました電子機器等ごとに目標年度を定めて策定することといたしまして、試験研究内容とその完成の目標年度、工業生産の開始の目標年度または目標年度における生産数量、性能または品質、生産費その他生産の合理化の目標となるべき事項をそれぞれ定めることとし、さらにこれらの実現をはかるために設備の近代化、専門生産体制の確立、規格統一の促進等の諸措置を定めることとなっております。この計画は、電子工業に関する学識経験者等をもって構成する電子工業審議会に諮り、計画が適正妥当に策定されることを期待するとともに、これを公表して電子工業合理化達成のための政府の決意と責任とを表明することを規定しております。  右の計画達成のためにとるべき主要な措置として、本案にはまた設置近代化のための所要資金の確保、合理化カルテル実施のための指示、品質管理確保のための検査設備の基準の公表等の措置が定められております。  設備資金の確保につきましては、特に合理化機種に関しては機械工業振興臨時措置法による特定機械と同様の方法による日本開発銀行による融資のあっせん等を行いたいと考えております。その他の機種につきましても同銀行の通常の融資条件による資金あっせんを考えております。  次に、生産分野の専門化、規格の統一、部品原材料の購入等を目的とする合理化カルテルの指示につきましては、現行独禁法に規定する合理化カルテルの趣旨をさらに一歩前進させて、生産品種及び使用する部品の規格の統一、生産品種別の製造数量の制限、部品または原材料の共同購入などの共同行為について積極的に合理化のためのカルテルを締結させることにした次第であります。  最後に、品質管理の確保のための検査設備の基準の公表につきましては、単に振興基本計画に定める設備の近代化の計画のみにとどまらず、一企業の具備すべき検査設備とその維持に関する具体的な基準を定めて公表し、各企業における電子機器の品質管理の励行を期待しようとするものであります。  なお、本法は、独禁法の適用除外の関係等から、七年の臨時立法といたしておりますが、その間所期の目的達成のため、政府といたしましても最大の努力を傾注いたす所存であります。  以上本案の概略をご説明申し上げた次第であります。  何とぞ御審議の上御可決あらんことをお願い申し上げます。
  66. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) ただいま提案理由の説明のありました二法案につきましては、後日質疑をいたすことにいたします。  ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  67. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) それじゃ速記をつけて下さい。  午後の会議は二時から再開することにいたしまして、暫次休憩いたします。    午後一時八分休憩    〔休憩後開会に至らなかった〕