○陳述者(間瀬鋼平君) 私は現在小売商の
団体の世話をしております。従いまして申し上げる点は小売商の立場から申し上げる点が多いと存じます。
先ほど来いろいろ皆さんからお説がございまして、私劈頭に申し上げておきたいのはいずれもけっこうな御
意見でございますが、このたびの三つの
法案に対しまする制定の根本理由というものをお忘れになった御
意見ばかりであると、かように考えるのでございます。何がゆえにこういう
法律が必要であるかということをまず
前提に置いてお考えを願いますれば、あのような御
意見は出ぬものであると、かように思うのでございます。私やむを得ずこの三つの
法案の制定を希望いたしました。私自身としてはかような
内容の
法律ではまだまだ手ぬるいものであるとかように思うのでございます。
先生方も御承知のように
中小企業対策は、これはいわゆる国家の問題になりまして、前議会におきましても内閣直属の審議会ができまして、その方面からもそれぞれの
意見が出ております。それに基きまして
企業庁等におきましていろいろ
法案の制定について御
努力を願いました。その過程におきましていろいろの何と申しますか雑音が入りまして、
企業庁等の
法案の
内容がそのつどだんだん骨抜きになって、今の
団体法というものは骨抜き、換骨奪胎の
法案でございます。さようなものでございますが、ないよりはましだという意味で、われわれは熱心に今臨時議会で通過することに
努力をしておる次第でございます。という理由につきまして以下
意見を申し述べたいと存じます。
先ほど来の御
意見を総合いたしますると、大体この
団体法の反対の理由のおもなものは強制
加入、
団体交渉、
価格の協定、これがおもなる皆さんの御
心配のようでございます。しこうして、ある御
意見ではこの
法案が
一つの臨時措置的な
法案だというような御
意見がございましたが、われわれは決してさように思わないのでございます。この
法案は
中小企業に対しまする基本法である。また基本法典の性質を帯ぶるところの
内容の
法律を作ってほしいということがわれわれの要望でございます。
もうすでに御承知でございましょうが、これまた先生方がお作りになったことでございますが、労働者に対しましてはいわゆる労働三法がある。農民に対しましては農地特別措置法初めあらゆる基本
法律がございます。しかるに現在無力の点におきましては農民、労働者各位よりはるかに無力であり、しかもしいたげられております。
中小企業者に対しましては、何らの基本法典すらありません。従いましてこのしいたげれらた国民に対しまして、やはり同じ国民の一人として同等な扱いをしようという政治家各位の親心があるならば、一日も早くこの
法律を制定していただくということを私はお願い申し上げたいのでございます。
やれ衆議院の
委員会、あるいは本
会議等で議員諸君が
質疑応答がございましたが、その記録を見ますると、独禁法に違反する、あるいは憲法に違反するというような御議論が盛んでございますが、必要の前には、あるいは解釈のいかんによりましては憲法に違反する問題もございましょう。あるいは独禁法に違反する問題もございましょうが、先生方に特にお聞きを願いたいことは、現在
日本にはジェット機があり、戦車があり、軍艦がある。これはわれわれの解釈からいえばいわゆる軍隊であると思うのでございますが、皆様の御解釈ではあれは軍隊ではないんだというような御解釈のようでございます。われわれ古い頭からいきますと所有権は絶対的なものでございます。しかるに皆様方は先祖伝来の土地を取り上げて、ほとんどただ同様に取り上げて、しいたげられておる小作農にそれをお与えになって農民の安定をはかっておる。これらは必要があれば、あるいは解釈の問題にいたしましても、あるいはまた
法律、いささか現行法に抵触するような点がありましても、それはいわゆる憲法の公共の福祉に害があるという建前から先生方がさような御解釈をなさり、さような処置をなさったと思うのでございます。
従いまして、今回の
団体法があるいはそういうようなきらいが若干あるかもしれないが、現在の
中小企業というものの立場がややもすればこれ以上放置をすれば公共の福祉を害するというような建前であると思うのでございます。
質疑応答の中にはもっぱら経済立法として
質疑応答がございましたが、もちろん経済立法の性質もございますが、私は多分に社会立法の性質があるのだ、経済的よりも社会立法的な色彩が濃厚な
法律である、またそういう
内容の
法律でなければ現在の
中小企業は救われないものである、ということをまず先生方に十分御理解、御納得をいただきたい、かように思うのでございます。
従いまして、私の申し上げることはいささか独禁法あるいは憲法に、そういうような問題につきまして御議論を進めるというような皆さんにはお聞き苦しいであろうと存じますが、そもそも
日本の現在の憲法というものとあるいは独禁法の制定された時期、これを皆さん方、先生方にお考えを願いたいと思います。あの憲法、あの独禁法というものはアメリカさんの支配のもとにこういうものを作れというのであのカーキ色の思うままのものができておるのだ。全く
日本の
政府、議員の皆様方がお考えになっていない、皆様方
日本の純粋な独自の立場で政治ができる
政府であればああいうような
内容のものはできなかったと思うのでございます。あの
内容はもちろん時代とともに、国情あるいは人情というもの、社会というもの、これは変遷いたします。基本法典でありまするからそうしばしば変えるべきではございませんが、あの時期にできたものは、いわゆる占領政策の落し子でございます。ああいう占領政策の落し子には時代の変化とともに改正を要する点はいくらでもあると思うのでございます。従って、先ほど冒頭にも申し上げたように、憲法は改正はできぬから戦車あるいは大砲も軍艦もジェット機も何もかもこれは軍隊でないという解釈を先生方はおとりになっている。また既存の
法律で最後の解釈を下すものは最高裁でございますから、最高裁の判例におきましても既存の
法律を現在の人情というものをよく加味いたしまして、現在の社会事情、人情というものに合致するような解釈のもとに幾多の判例が出ておることも先生方はよく御承知でございます。現在の社会、国情、人情というものに適さないものはしかるべく良識をもって御解釈を願っていささかも間違いのないものである。そうしてこそ初めて法が生きるのであるということを強く先生方に申し上げたいと思うのでございます。
最後に特に申し上げておきたいことは強制
加入はいわゆる官僚統制に移行するというような御
心配がございました。もちろんわれわれ
中小企業におきましても、いわゆる自主的にすべてを運ぶ。これを念願といたしまして、また平素それに
努力をいたしておりますが、いかんせんこの
中小企業は先ほど
中小企業の代表の皆さんからも申し述べたように、まことにちりぢりばらばらであります。これはいかんともしがたいのであります。商店街などになりますると、口では
お互いに朝のおはようはいうが、あいつが早くつぶれておれのところ一軒になればいいというような
状態でございます。これが実際でございます。そういうような
状態を自主的に団結させろ、自主的に集めろといってみたところが、それはいわゆる理想でございまして、全く
中小企業界、ことに小売
商業の内面、実際というものを御存じないいわゆる理想論にすぎぬのでございます。現在の
中小企業、ことに小売
商業界の事情というものはさような理想を待って、あるいは五十年、百年待っておったらみな餓死するという
状態でございます。現実に即した考えでできないものを自主的にやれということはすこぶる御無理でございます。ことに労働
組合方面からその声が特に多いようでございます。労働
組合は何らの統制がなくてもずいぶん強固に団結ができるじゃないかという。その立場、皆さんの労働
組合としての立場からごらんになるから、
自分たちもりっぱに団結をできるのに
中小企業ができぬのは変だというお考えのもとにあるいは御議論が出ると思いますが、先ほど来申し上げたように、
中小企業ことに小売の立場におきましてはなかなか
業種も違いますし、戸をあければ
お互いに表面はともかく腹の中は敵愾心に燃えているというようなものであります。労働者の各位が同じ工場の中で、同じ賃金ベースをもらって働いておるというようなものと全然違うのでございますので、その点よく御理解をたまわりたいと思うのでございます。これはやむを得ざる強制
加入である。しかも先ほど申し上げたようにだんだん骨抜きになりまして、いろいろの
条件がついて参ってきておるわけでございます。これでもなおいけないというような御
心配は全然ないと思うのでございます。
次は
団体協約でございますが、先ほど百貨店の代表からこの
法案に対する反対
意見がございました。百貨店業界が一番おそれるものはこの
団体協約でございます。御案内のように彼らは口を聞きますると
取引の自由というようなことをいいます。それを表看板にいたしておりますが、その
取引の自由ということはもし彼らがいうがごときものならば私はこういうふうに言いたい。彼らは買いたたきの自由、返品の自由、違反の自由、そういうことを彼らが自由というならばそれは当てはまりまするが、
商業の自由、
取引の自由に当てはめるに至りましては実にこっけい千万でございます。彼らは自分に勝手に値をつけまして、これなら持ってこい。さもなくばお前のところは
取引停止だということになります。また親工場でもそうであります。この品物はどれだけ作れ、できぬならお前のところはもう下請はオミットする、こういう自由を彼らが持っております。われわれはさような自由はまっぴらごめんこうむりたいのであります。いわゆる
団体協約によりましてそういう自由をオミットいたしまして、全く親会社あるいは百貨店、こういうものと正々堂々と
取引の自由を行うために
団体交渉をしたいというのが、この
法案の制定を要望する理由でございます。
それから第三に
価格がつり上るだろうという御
心配がすこぶる濃厚でございます。私はこれまた全くの
消費者の杞憂である無用な
心配であると申し上げたいのでございます。いなむしろ、これができることによってある種の物品は安くなるということを
消費者の皆様に申し上げたいと思うのでございます。先生方もすでに御承知のように、だいぶオートメーション化されましていろいろの製品が多量に生産されていってしまう。大資本があるが上にひととこに集まるという傾向でございます。従いまして、いわゆる独占的の大
企業はだんだんふえて参ります。従って大
企業者は現在かってに自分の腹ぐあいのいいように、自分自身もうかるように、大
企業者は自分でかってに値段を決めます。これは問屋にも小売商にも
消費者にも何の相談もありません。たとえば電気製品においてしかり、自動車においてしかり、売薬においてしかり、化粧品においてしかり、また繊維製品においてしかりでございます。彼らは大
企業ばかりでございますが、彼らはみな大
企業自体のもうかる値段をかってにつける。そうしてこの値段で売れと、こう来るのです。しかたがないから
小売業者はその値段で売るというのが現実の
状態でございます。中にはそれではあまり高すぎる、
消費者がお気の毒だというので、メーカーで指定する
価格より安く売ります。そうするとお前はけしからぬからおれのところの会社の系列からはずしてしまう、おれの商品はお前のところに卸してやらぬということになる。これが現在の実情であります。ゆえに
価格協定あるいは
団体交渉というものを、この
法律によりまして、われわれ
中小企業者が持つことは、かえって
消費者を守る、救済に至るということを御認識をいただきたいと思うのであります。
また
環境衛生法が実施された。その結果環境衛生業者が一部値上げの相談をするというようなことが新聞によく出ました。あの場合と一般の物品の値上げが同じような足取りをたどるというふうに御
心配になることは、これまたまことに杞憂にすぎぬのでございます。一般の小売の商品というものがいかに種類が多いものであるかということをお考え下されば一ぺんにわかります。たとえば一本の万年筆にいたしましても数百種類がございます。種類の少いものでもそうでございます。いや繊維製品に至りましてはくつ下一足でも数百種の種類がある。そういうように数え上げていきますと、実際小売
価格を協定するというようなことは、これはいわゆる湯川秀樹博士のように非常に数学的の天才であるところの人間が出てきてやれば別でございますが、一般の数学の頭で小売物価を協定して引き上げるというようなことはこれは痴人の夢でございます。もしわれわれ
中小企業者でそういうようなことを期待しているようなものがあれば、それは大ばか者といわなければならぬと思うのでございます。と同時に
消費者の皆様の一種の御
心配にすぎないということを強く申し上げたいと思うのでございます。それにかてて加えて、
消費者は小売屋で買おうとどこで買おうと、また自分自身で
経営するところの生協でお買いになろうと全く自由なのであります。かりに万一小売屋が協定して小売
価格を上げるというようなことができるといたしますれば、共済、いわゆる生活協同
組合がある、購買会がある。その方で御選択してお買いになればその
心配はいささかもないのでございます。同時にまた一般
中小企業、ことに
小売業者がさように
消費者の各位が独自の立場においてどこでもかってに買えるのだから、その場合に
消費者に何と申しますか、反感を持たれるような
価格協定をしてつり上げるというばか者は一人もございません。もしそんなことをやればみずからおのれ自身の首を絞めるということと同じ結果になるのでございます。ゆえにその御
心配も全然ないのでございます。
いまさら私ども現在の
団体法初め関連諸
法案を
強化してくれということを申し上げても、これは無理なことでございますからさような無理なことは申しません。衆議院におきましては朝野両党よく協議いたしまして可決されている
法案でございます。ぜひ参議院におきましてもその事情をよく御理解下さいまして、今臨時議会で通過をするように先生方に特にお願い申し上げたいのでございます。
最後に一言火災共済について触れたいと存じます。
ただいま保険協会の代表の方からいろいろ修正
意見が出ました。あるいはまた露骨にいえば全然否決された方がいいというような御
意見のようでございますが、それは全くいわゆる保険屋さんの立場でお述べになったことでございます。一般の保険屋さんとこの火災共済というものとはいささか性質が違うのでございます。ことに共済なんというような名前はけしからぬから、保険という文字を使っておけというような御
意見がございました。その保険という文字が現在生命あるいは火災、それに対しまして果して実際適当な文字であるかどうかすら私疑っておる一員でございます。われわれ協同
組合、あるいは将来できるところの
組合におきましても、これは協同
組合を作る本旨が
お互いに弱小資本の同士が集まりまして、資本の上におきましても、すべて
事業面におきましても
お互いに相互扶助をするという精神のもとに
組合ができるのでございます。従ってその
組合の
事業に共済という文字が妥当でない、保険という文字を混乱に陥れるからそんな文字はやめてしまえというのは、自分だけのかってな御議論であって、これは社会通念に反するといわれたが、それ自体が社会通念に反するのであります。
また金額の
制限をせよというような御議論がございました。あるいはまた募集する人間を
制限しろ。監督を
強化しろというようないろいろ盛りだくさんの御
意見がございましたが、金額にいたしましてももちろん法におきましては最高額を決めるのでございます。
組合の責任者になるほどの人間はおのれの経済力をよく存じております。危険になるほどこの金額を最初から募集するとは思いません。ゆえに積立金あるいは資本金が少い間は、その
組合において十分に責を果し得る
程度の金額におのずから
制限して運営することはこれは常識でございます。それを最初から新潟の例はこうだ、あそこの例がこうだ、ゆえにこうしろということは、これは暴論といわざるを得ないのであります。また保険の勧誘はこれに対して法規があるようでございますが、これは保険屋であるがゆえにそういう法規が必要でございます。
組合は
お互い組合員がおのおのの協力によって
一つの
組合を盛り立てていくものでございます。ゆえに職員でなければいけない、役員でなければいけないといった議論がどこにあるか。
組合員一人々々がその
組合の
経営者であるのであります。その
経営者が保険の募集をしてはいかぬというたわけた御議論がどこから出てくるかとこう思うのでございます。
まだいろいろ申し上げたいこともございますが、とうに時間も経過しておるようでございますから以上で終りますが、私の念願は、ないよりましであるから、この現在の継続審議
法案を今臨時議会でぜひとも制定をしていただくということを最後にお願い申し上げて終ります。まことに失礼いたしました。