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1957-03-19 第26回国会 参議院 商工委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月十九日(火曜日)    午前十時四十三分開会   —————————————   委員異動 三月十八日委員藤田進辞任につき、 その補欠として三木治朗君を議長にお いて指名した。 本日委員三木治朗辞任につき、その 補欠として藤田進君を議長において指 名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     松澤 兼人君    理事            西川彌平治君            阿具根 登君            近藤 信一君    委員            青柳 秀夫君            大谷 贇雄君            小幡 治和君            小西 英雄君            白井  勇君            高橋  衛君            阿部 竹松君            島   清君            藤田  進君            加藤 正人君            豊田 雅孝君            大竹平八郎君   国務大臣    通商産業大臣  水田三喜男君   政府委員    農林政務次官  八木 一郎君    通商産業政務次    官       長谷川四郎君    通商産業大臣官    房長      松尾 金藏君    通商産業省通商    局長      松尾泰一郎君    通商産業省石炭    局長      讃岐 喜八君    通商産業省鉱山    保安局長    小岩井康朔君   事務局側    常任委員会専門    員       小田橋貞寿君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○派遣委員報告特別鉱害復旧臨時措置法の一部を改  正する法律案内閣提出、衆議院送  付) ○臨時石炭鉱害復旧法の一部を改正す  る法律案内閣提出衆議院送付) ○輸出検査法案内閣提出)   —————————————
  2. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) これより委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。去る十八日藤田進君が辞任され、三木治朗君が委員に選任されましたが、本日三木治朗君が辞任されまして、藤田進君が委員に復帰されました。   —————————————
  3. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 議事に入る前に、先般の委員派遣に関する件と、ただいま委員長理事打合会の模様を報告いたします。  まず、委員派遣の件でありますが、先般この委員会で決定し、議長承認を得ました委員派遣につきましては、予定通り去る十五、十六日にわたり、茨城県に行って参りました。  派遣委員議長承認の六名に、特別参加の二名が加わりまして、合計八名となりました。すなわち、西川白井小幡高橋、島、阿部大竹諸君と私の八名であります。  視察いたしました所は、東海村の原子力研究所日立製作所日立工場及び多賀工場、それに日立電線株式会社であります。東海村では、四つ建設会社が入って、目下広い松林の中に建物建設中でありますが、ウォーター・ボイラー型実験原子炉はすでに外装を完成し、今後四月末には内部の据え付けを終って、七月には運転を開始する予定となっております。また、中性子実験に必要なヴァンデ・グラフ加速器の建て家も完成に近い状態でありました。この二つの建物のほか、研究室二棟が建設中であり、倉庫が一棟できておりました。このほか放射線照射施設を初めとして、CP5型の実験原子炉等建設を準備しており、やがてここがわが国原子力研究中心地になろうとしているのであります。  次に、日立製作所関係では、もっぱら家庭用電気器具を製造する多賀工場、主として発送電関係、その他産業用重電機を製造する日立工場を視察いたしました。  日立工場はさらに分れて、海岸工場山手工場国分工場水戸工場四つになっておりますが、私どもの視察いたしましたのは、海岸工場国分工場であります。いずれの工場も戦災を受けましたが、その後完全に復興し、しかも、国民生活の電化、産業動力の激増の潮流に乗って、すこぶる活発な生産を続けておりました。日立製作所創立者初代社長小平浪平氏の方針により、外国技術に頼らず、もっぱら自力で技術的向上を目指し、広告宣伝よりも、技術と品質に自信を持つことに点重を置いたことは、敬意を表するに値するものと存じます。ただ、これから国内需要を越えて海外への輸出を必要とするときに当りましてば、やはり広告宣伝も大いに必要と考えられ、工場関係者もこの点を考慮しているようであります。また、日立工場製品はいずれも大型機械であり、ことに発電機変電機がきわめて大型になってきておりますが、これは当初日立製作所が発足した当時予想もしなかったことでありまして、工場で組み立てた機械を、いかにして需要地へ輸送するかに頭を悩ましているのであります。  私ども東海村から日立へ向う途中、久慈川河口の久慈港建設の現場を見せられました。この港は地形としては海岸線が単調で波も荒く、決して適地とは申せませんが、付近に良港の乏しい日立工業地帯としては、何とかしてこの港の建設を促進してほしいと熱心な希望を述べられたのであります。  日立電線工場は、もと日立製作所の一工場で、日立鉱山の銅を消化する目的で作られたものでありますが、現在は独立しております。原料を鉱山に仰げること、製品のうち相当大きな部分日立製作所へ優先的にさばける等の点で、すこぶる有利な地位にあり、加うるに、製作所と同様電気関係需要の急速な伸びを反映して、これまたすこぶる活況を呈しておりました。  日立工場で、ただいま直面している厄介な問題は、電力不足による消費制限でありました。電力不足を解消するべく水火力発電機を作っておる工場が、電力不足のためにその製造が遅延するのは、まことに困ったことだと嘆いておりました。  今回は、委員多数が参加されましたので、関係方面でも熱心に御案内をいただき、何かとお世話になりました、委員一同深く感謝しているところであります。  以上で簡単でありますが、派遣経過を申し上げて、御報告にかえる次第であります。  この報告は御承認願えますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) ではさように計らいます。   —————————————
  5. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 次は、本日の委員長及び理事打合会経過でございますが、この打合会におきましては、今週は本日及び二十二日金曜日午後に委員会を開き、上程されております議案を順次審議していくことにいたしました。なお、自転車競技法特例法の一部改正案並びに今後付託される法案については、適当な機会にこれを順次説明を聴取することにいたします。来週の日程につきましては、事情の許す限り毎日委員会を開いて審議の促進をはかることといたし、その詳細につきましては、火曜日にあらためて委員長理事打合会を開いて決定することにいたしました。右御了承願います。  速記をとめて。    〔速記中止
  6. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 速記を始めて。  それでは、特別鉱害復旧臨時措置法の一部を改正する法律案臨時石炭鉱害復旧法の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。  御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  7. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 特別鉱害復旧臨時措置法に関連いたしまして、局長一つお尋ねいたしたいと思いますが、御承知の日華事変並びに太平洋戦争を通じまして、日本国内労働力というものが制約をされてきてほとんど若い人は応召で戦地に行くというようなことから、いわゆる東亜共栄圏の中において、日本が特に動員のできる地帯から、相当数鉱山労働者日本に連れて来たことがあるわけでありますが、そのときに起った問題でありますが、相当秋田方面中国から参られた労働者諸君あたりは、非常に被害が多かった。これは事実かどうか知りませんけれども、終戦直後において中国関係労働者というものが相当虐殺をされたというようなことが、始終、多少宣伝もありましょうけれども、埋没をした中を掘りまして、そうしてその骨を山に積んでおるというような写真も見受けたのでありますが、これは実際はどの程度までそういう被害があったのか、そういう点について一つ関連事項として、知り得る範囲でお答え願いたいと思います。
  8. 讃岐喜八

    政府委員讃岐喜八君) 実はただいまの御質問につきましては不勉強でございまして、今お答えできる材料を持ち合せておらないのでございます。そういう話を私は当時新聞等で拝見したように承知するのでありますが、これは調査をいたしまして後ほど御説明申し上げることにいたしたいと存じますが、よろしゅうございますか。
  9. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 これは御承知通り扱い方が悪いと、場合によると非常に逆宣伝になる憂いもありますので、しかし、相当数のかつての東亜共栄圏内と称する地域にあった人たち労働者諸君が犠牲になったということだけは、これは事実のようにわれわれも聞いておるのであります。その取扱い等につきましては、国際問題とも関係がありますから、十分一つ御留意の上、大体でよろしゅうございますから、わかりましたならば、関連官庁と御相談の上出していただきたいと思います。
  10. 讃岐喜八

    政府委員讃岐喜八君) 承知いたしました。
  11. 阿具根登

    ○阿具根登君 両法案一括審議でございますから、両法案関係のある点について先に御質問申し上げますが、まず、この特鉱が二十五年にできまして、それから五年の時限立法であったのが二年間延期され、さらに今度一年延期ということになっておりますが、特鉱の場合は戦争による乱掘を原因としての被害でございますが、現在の生産量から見てみますと、通産省が先年あるいは先々年計画しておった計画ですら、四千八百万トンから四千九百万トンであったと思いますが、それが五千三百万トン掘らなければならない、こういうことになってきますと、炭鉱合理化がいかに進んだとはいいながら、炭鉱はこれは地底のことであるし、坑外のように機械合理化もできない。そうすると勢い乱掘になってくる、こういうことになると思います。業者業者で、外国からの輸入をおそれましょうし、あるいは重油の輸入をおそれましょうし、政府政府で、国内炭でまかなうべく政策を立てられると思います。そうなって参りますと、五千三百万トン掘るためには、通常のことでは掘り得ない。五千三百万トン掘るだけの炭鉱設備はできておらないと私は思うのです。そういう点について大臣はどうお考えになっておるか、特別鉱害はこの一年で打ち切りになる。そうしてあとは臨時鉱害法で見ていく、こういうことを言っておられますので、そういう見通し、それからこれは資料が出ておったかもしれませんが、ちょっと手元に見当りませんので、二十五年から今日までの被害額、それに対する数字の問題は局長さんでけっこうです。それに対する復旧の度合いですね。それからまた一点お尋ねいたしますことは、この特別法の二十四条の三項に、採掘した石炭が低品位であるとき、あるいはその他特別の事情がある場合においては減免することを得ることになっておるが、こういうのがどれだけ適用されたか。そういう数字の点は、局長さんからお答え願うことにいたしまして、大要の問題は、大臣からお答え願いたいと思います。
  12. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私もことしの需給計画政府側炭鉱業者間のいろいろな検討によりましては、五千二百万トン理無ではない、これにはいろいろ前提的な政府協力措置を必要としますが、大体無理なくやれる。むしろ、さっきお話しになりましたように、政府側から外炭を入れるとか、いろいろ計画を出しておりますので、それだけ入れなくても、自分たち増産態勢で、五千三百トンくらいはやれるといういろいろな検討中に業界の話もございましたが、私どもはやはり五千三百万トンは無理だ、五千二百万トンなら無理のない生産がやれるというように考えまして、業界側の言うよりも百万トン減らして、そうして需給計画を立てた、こういうようないきさつになっております。
  13. 讃岐喜八

    政府委員讃岐喜八君) ただいまの御質問のうち、技術的な面及び数字の面につきまして私からお答え申し上げまして昭和三十二年度の出炭計画につきましては、大臣からただいま申上げました通りであります。私どもといたしましては、鉱山保安の面から申しまして、あるいは合理化の面から申しまして、従来の方針でもってできる限り生産規模の拡大をはかる、こういうことに考えておるわけでございます。従いまして合理化基調はくずさずに五千二百万トンなり、あるいはできれば五千三百万トンなり掘りたい、こういうふうに考えております。鉱山保安の面あるいは鉱害防除の面も、従来同様厳重な監督をして参りまして、これ以上の鉱害が出ることのないように努力いたしたい、かように考えておる次第であります。  次に、特別鉱害の今日までの復旧状況でございますが、これはお手元に差し上げました二ページの表があるのでありますが、特別鉱害年度別復旧実績計画表となっておりまして、表によりますと、縦に土木農地農公水道学校鉄道公共計、非公共となっておりまして、横に二十五年から三十年までの実績及び三十一年度の計画、それから三十二年度の計画というように出ております。三十年度までの実績で申しますと、これらの復旧対象を全部合計いたしまして、事業量といたしまして、八十三億余りになっております。これは三十一年度の計画で十六億四千五百万円、それで次に昭和三十二年に六億二千万円の計画をいたしまして、総計で百五億七千五百万円となっております。それで大体三十一年で百億程度復旧が完了するわけでございます。お手元に差し上げましたもう一つの表をごらん願いますと、これがただいま金額で申し上げました数字農地なり、土木工事なり、水道工事の量的に示したものでございます。それによりますと農地では三十一年度までの実績及び見込みとなっておりますのに、農地では二千三百八十二町歩でございます。それから農業用施設農公につきましては二十七万五千百メーター、土木では道路延長が十六万八千三百九十メートル、河川の延長が九万四千三百三十メートル、水道におきましては、これは上水道で、これは給水人口で出しておりますが、七十四万二千七百五十人の給水人口に対する復旧工事ができ上るということでございます。下水道につきましては、排水面積三百十万三千五百七十平方メートル、学校につきましては建坪で三万一千八百九十九坪、敷地で五万四千七百五十八坪、鉄道では国鉄が七万八千九百五十メートル、私鉄が三千五百二十メートル、港湾では二千二百十メートルと五万一千六十平方メートル、家屋につきましては一万五百五十一戸、簡易水道三十八件、墓地その他七十七件となっておりまして、これで先ほど申し上げました約百億の仕事ができあがるわけでございます。それで三十二年度におきましては先の表にもございます通り、三十一年度に計画しました工事が繰り延べられまして、農地につきましては三億五千八百万円、非公共家屋につきましては二億六千二百八十七万三千円が残るわけでございまして、これは三十二年度までこれだけ繰り越されますが、この法律有効期限であります五月十一日までは、この前大臣から提案理由説明で申し上げました通り農地につきましては三億五千八百万円残りますけれども建物家屋につきましては、一億円をそれ以後に残すということになるわけでございます。  以上で認定されました特別鉱害のうち、ほとんど大部分復旧が完了する次第でございますが、これだけの事業復旧いたしましても、なお農地におきまして三百五十町歩くらいの仕事は、差しあたり復旧のできないものとして残るわけでございます。この三百五十町歩のうちに、農地でありましたものが、宅地とか道路等に用途が転用されたものが四十三町歩くらいございます。それから被害者復旧を辞退したものが四十八町歩強でございます。これらはもう復旧の必要がなくなったものと考えてよろしいのじゃないかと思います。合計で九十二町歩余りになるわけでございます。従いまして残る数字農地で二百五十八町歩余りになるのでございますが、これらは炭鉱所有地になりましたものが五十三町歩、それから累層採掘のために、現在鉱害不安定状態にありまして、鉱害が安定しないで、さしあたりはできないというものが百七十一町歩ばかり、それから復旧費が百何十万もかかるということで、非常に長期間補償を要するものが大体三十三町歩ばかりある。これらのものが一応現在におきましては、さしあたり復旧のできないものとして残るわけでございます。  なお、先ほど法律の規定に基きまして、低品位炭等納付金の免除される場合があるかという御質問でございましたが、これは現在までないそうでございます。
  14. 阿具根登

    ○阿具根登君 大臣の御答弁では、現在の炭鉱施設で五千二百万トンは生産可能である、こういうことを言われておるのですが、その根拠はどこにあるのですか。いわゆる一昨年合理化法案ができます場合には、たしか三十三年度か三十四年度で五千万トンの計画を発表されておったと思います。特に当時は石炭が余って困ったので、各会社は非常にちゅうちょしていた。それが急にその計画通りにいっても、五千万トン出すのにまだ二年かかる。それが一挙に五千二百万トンを出せる設備があると、こういうことはどうしても私には考えられない。とするなら、それに上回って業者は五千三百万トン出す、その百万トンだけでもこれは労働強化をやるか、あるいは乱掘をやるか、そうしなければ出ない相談でございます。それ以上に、私が質問いたしますのは、五千二百万トン出るだけの設備は、私は今完備しておらないと思う。そうすれば勢いまた、戦時中のような乱掘になりはしないか、あるいは労働強化になりはしないか、こういう点を非常に心配しておるのですが、そういう点どういうふうにお考えでしょうか。
  15. 讃岐喜八

    政府委員讃岐喜八君) 非常に数字的な問題でございますので、私から申し上げたいと思います。ただいま御質問のように、合理化法によりましてできました合理化基本計画によりますと、昭和三十四年度におきまして四千九百五十万トンの出炭計画いたしております。御承知のように三十年度は四千三百万トンに始まりまして五年後に四千九百五十万トンになる、こういう想定をいたしておりましたわけでございますが、これはもう先生よく御存じの通り炭鉱には生産能力はあるのでございますが需要がこれについてこない、こういうことで合理化基本計画最終年次におきましても需要はこのくらいであろうということで、そういうことで計画を組んだわけでありまして、その後経済界の非常な好転に伴いまして、石炭業界におきましても非常に将来を危ぶんでおりましたが、最近においては増産に踏み切ってきたような状態でございまして、五千二百万トンなりあるいは五千三百万トンも掘れるというのは、最近の業界の意向でございます。これはもとより合理化計画に基いて、つまり合理化基本方針をくずすことなくしてやっていきたい、こういうことで能率を上げるという問題はあるかと思いますが、労働を強化したり、そういうことはないので、法律精神に基いてその精神のワクの中で増産をはかっていきたい、こういうことになっているはずでございます。
  16. 阿具根登

    ○阿具根登君 言葉ではそういうようになりますが、合理化法案のときには、能率の上らない炭鉱は買い上げたはずです。そうして六十何本かの縦坑を掘って、それが完備したところで四千九百五十万トンから五千万トンの石炭が出るということを発表されました。縦坑は何本できましたか、この一年間で何本縦坑はできましたか。
  17. 讃岐喜八

    政府委員讃岐喜八君) 縦坑計画実績は必ずしも期待通り参っておらないのでございますが、二十九年度からの計画工事で二本でございます、三十年度では……。それから三十一年度では八本完成する見込みになっております。
  18. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうするとわずか二本できて五千二百万トン炭が出るのだということは、これはただ言うだけのことであって、実際はこれはできないのである。それは炭鉱のことでありますから、出そうと思えば出るかもわかりません。しかしそういう考えではなくて、やはり科学的な調査の上に、これだけの縦坑を掘らなければ、これだけの需要に間に合わないということを、はっきりはじき出されてわれわれに示されたと思うのです。その業績はちっともできておらない、そうしてもって今五千二百万トンは出るのだと大臣もはっきりおっしゃった。出そうと思えば、戦時中にも出たのですから出ます。しかし、そうするためには私が言うように乱掘をやるとか、労働強化をやるとかいう以外にはできない。そういうことをしないために合理化法案があれだけの金を注ぎ込んで縦坑を掘って、そうして正常な姿でこれだけの石炭が出ますということをはっきり言っておられる。そうすると、そういう実績ができておらないのに五千二百万トン出るというのは、正常な姿ではないけれども需要のためにやむなく出すのだ、こういうことにしかならないと思うのですが、そうなりませんか。
  19. 讃岐喜八

    政府委員讃岐喜八君) これは私よりも阿具根先生の方がお詳しいようでございますが、この合理化法が実施されまして今日までわずかに二年未満でございます。そこで縦坑工事はおくれておりますが、当時から今日までの間の合理化にそんなに縦坑もでき上るわけではないので、これは日を追うてだんだんと合理化実績が上ってくるだろうと、こういうふうに考えておるわけでございます。なお、その合理化工事縦坑中心でございますが、縦坑以外の合理化仕事はたくさんございます。縦坑以外の一般合理化工事もございますし、坑内の機械化の問題もございますし、あるいはカッペなり、鉄柱なり、機関車の問題なり、いろいろ合理化には手段があるわけでございます。これはおおむね計画通りに進んで参っておると私考えております。そこで、私どもこの法律の制定当時におきまして議論をいたしましたことは、当時におきましては生産能力はあるんだけれども需要が伴わないために四千二百万トンとか四千三百万トンの生産しかできないのだ、こういうことでございまして、需要が伴えば五千万トン近い出炭ができるのだということは、当時から申し上げていたはずだと思いますが、それがまあ三十二年度におきまして五千二百万トンまで行こうということでございまして、これは縦坑等工事はおくれておりますが、その他の一般合理化工事の進捗に伴いまして可能になって参った、こういうわけでございます。
  20. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうしますと、政府計画しております通り計画が完成した暁には、何千万トン出るようになりますか。
  21. 讃岐喜八

    政府委員讃岐喜八君) これは問題は、非常にむずかしい問題になるかと思いますが、一応私どもは長期のエネルギー計画から申しまして、昭和三十五年度には五千五百万トン、四十年度には六千百万トン、四十五年度には六千三百万トン、五十年度には六千五百万トン、こういう数字を一応出しております。しかし、エネルギー需要の年々の増加傾向に対処いたしまして、この計画ももう少し早めなければならないんじゃないか、かように考えておる次第でございます。
  22. 阿具根登

    ○阿具根登君 それは政府エネルギー対策であって、今後これだけの石炭としての熱量が要るだろうという対策を、これは言っておられるのであって、私の聞いておるのは、今合理化法案で立案したあの計画でいって、あれが完成した暁には、何千万トン出すつもりですかと聞いておるわけなんです。だからこのエネルギー計画を聞いておるのでなくて、石炭生産政策を聞いておるのであります。
  23. 讃岐喜八

    政府委員讃岐喜八君) お言葉を返すようでございますけれども、三十五年度の計画なり、あるいは五十年度の見通しにつきましても、合理化基調をくずすことなくして生産規模を拡大していく場合、需要の増大に対処しまして、どれだけ生産できるかということを、緻密に積み上げた数字のつもりでございます。従いまして、この三十五年なり五十年の数字は、一応本年度から続いていく計画だとおとり願いたいのでございます。  なお、御質問の最もの重点は、昭和三十四年度におきまして、つまり合理化法有効期限の満了する当時においてどういうことになるのか。こういう御質問ではないかと思います。これにつきましては、実は経済五カ年計画等との関係もございまして目下研究中でございますが、基本計画できめました四千九百五十万トンというのは、もうすでに来年度をもってそれを下回るということになりますが、慎重に目下検討中でございます。いずれ近いうちに経済企画庁の経済五カ年計画をにらみ合せまして、石炭合理化計画も決定して参りたい。かように考えておる次第でございます。
  24. 阿具根登

    ○阿具根登君 それでは今度は質問を変えまして、特鉱の現在までの実績は約百億ですか、百五億七千五百万円と、こういう数字が出ておりますが、この内訳を教えていただきたい。納付金がどのくらいで、交付金がどのくらいか。
  25. 讃岐喜八

    政府委員讃岐喜八君) 三十二年度の計画も全部含めまして、事業量といたしましては百五億七千五百二十七万でございます。そのうち国庫の補助が五十五億六百八十八万四千円でございまして、それから地方公共団体補助が七億四千八百九十七万一千円、それから国鉄の負担が千二百二十四万四千円、それから納付金でもって成り立っております特別会計の負担が四十三億七百十七万一千円、これは納付金でございます。
  26. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすると納付金は四十三億あったと、そうしてまあ百五億七千五百万円の事業ができるのだと、こういうことになるわけですね。
  27. 讃岐喜八

    政府委員讃岐喜八君) さようでございます。
  28. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすると納付金は全然減免もなかったと、こういうことを先ほど仰せられたと思うのです。そうするなら、これは一貫して出炭に応じて四十三億という金が取られてきたと思うのですね。そういたしますと四十三億と五十五億、こういうことになっておりますが、政府の負担の率はどのくらいになっているのですか。
  29. 讃岐喜八

    政府委員讃岐喜八君) 政府の負担の率は、ものによって非常に違うわけでございます。農地とか水道とか……。
  30. 阿具根登

    ○阿具根登君 それじゃ大臣に先に質問します。局長それじゃそれを調べて下さい。大臣忙しいようですから大臣質問を先にします。大臣に御質問いたしたいと思いますのは、衆議院でもちょっと質問が出ておるようでございますが、石炭需要が少し増してくれば、御承知のように炭鉱周辺には洗炭というのが非常に多く出てくる。わずか十馬力か二十馬力のモーターを据えて、そうして水を流して洗うのですが、これに携わっておる人は十二、三歳の子供、あるいは女。ところが、その流れておる水は、溝を通りあるいは田に入っていく。そうして昼夜トラックで運搬するために、道路は非常な決壊をする。農民は非常な災難を受ける。それが一つ。それから、まあ最近も非常に石炭需要が多いから、そうであろうと思うのですが、盗掘が非常に多い。そうして石炭を取った跡を、私が見たところ等は、学童の通学道路がこれが五メーター以上も掘られておる。そうしてそれは放置してある。こういうことになっておるが、こういうのに対してどういう対策を立てようと思っておられるのか。この鉱害臨時鉱害法を適用するのかどうか。衆議院の方では適用しないということを言っておられるようですが、どうしてこの対策を立てていこうとされるのか、その点をお尋ねいたします。
  31. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 今の洗炭問題については、その県で条例を作って、それでいろいろ取締りを今までやっておりますが、それが非常に不十分なので、今のような問題が起るということでございますので、これをどうするかは今後研究したいと思っております。
  32. 阿具根登

    ○阿具根登君 今後研究する……今が一番大切なときなんです。盗炭の場合はどうです。盗掘した場合には、盗掘した人が鉱害に対する弁償の責任があるかどうか。
  33. 讃岐喜八

    政府委員讃岐喜八君) 非常に技術的な問題でございまして、法律上も大事な問題でございますので、私から申し上げます。盗炭の問題でございますが、全然鉱業権を持たないでいきなり山に行って掘るという場合と、鉱業権を持っておりまして、それが人の鉱区に掘り進むというふうな場合とあるようでございます。これらの点につきましては、衆議院でも相当問題が出たところでございます。いずれもそれは鉱業権に基かないで鉱物を掘採取得することになるわけでございまして、鉱業法の適用はないのでございます。そこで、これは債権債務の関係から申しまして、一般の不法行為に基く債権債務にならざるを得ないのです、解釈上そういうことでございます。従いまして、その鉱害復旧するという場合におきましては、これは鉱害復旧ではないので、不法行為に基く債務の履行を請求すると、こういうことになる。こういうふうに説明した次第でございます。今もそれが間違いないと存じておる次第でございます。
  34. 阿具根登

    ○阿具根登君 被害者は、だれから加害を受けようとも、これは被害者は一人なんですね。ところが加害者の方は盗掘であった場合に鉱害賠償としては払わないと、こういうことになってくれば、これは国が補償しない限り、被害者はまことにみじめなものになってくる。そういう場合に被害者に対して、君たちが裁判をせい、そういうことを言ったところで、被害者自身にはできるものではございません。その点についてはもう少しはっきりした政府の見解で、そういうことができないように、被害者を守る措置を講じてやらなければならないと思うのですが、衆議院の議事録を読んでみましたが、どうしても釈然としないので、再度お尋ねしておるわけでございますが、あまり衆議院で触れたやつには触れませんが、もう少し責任のあるところをお答え願いたいと思います。
  35. 讃岐喜八

    政府委員讃岐喜八君) 法律問題といたしましては、鉱業法の適用の外になるということになりますれば、その被害はまことに、ただいまお話しの通り被害者にとりましては、痛切な問題でございますが、これはどうにもしようのない問題でございまして、これ以上は鉱業法上の立法の問題になるのじゃないかと存じます。たとえばボタ山にしましても、ボタ山がくずれて周囲の人に被害を与える、こういう場合には鉱害として律しますが、通常の山ですと、山地がくずれて、あるいはなだれがありましても、これは付近の人々に被害を与えた場合におきましては、もちろんこれは鉱害ではないわけです。そういうものと同様に扱わざるを得ない状況でございます。  そこで、盗炭の場合におきまする罰則なり、あるいはその犯罪がいかなる犯罪を構成するかというような問題もございます。これは非常にめんどうな技術問題も多分にございますが、ただいまの御質問の御趣旨を考えてみまするに、新しく鉱業法として、そういう場合の救済の方法いかんという問題になるのでございまして、今後は立法の問題といたしまして、一つ十分研究さしていただきたいと思いますが、現在のところは、いかんともいたし方ない、かようにお答えをするほかないと思います。
  36. 阿具根登

    ○阿具根登君 率直に、現在のところはいかんともすることができないとお答えになったから、私もそうだと思って質問しておったのですが、そうなると、いよいよそういうのがもうこういう公式の場所でできないのだと、いわゆるそういうことをした加害者に対しては、刑事裁判なり何なりあるでしょう。被害者の救済というものは何もない、こういうことが明らかになったとなるならば、今でさえ泣いている被害者は、何に頼っていいのか。炭鉱地帯は御承知のように非常な暴力もございます。そうして被害を受けている人は善良なる市民です。こういう人たちに対する救済の措置は、現在の法律ではないのだということがはっきりしてきますなら、ますますその人たちは頼るべきところを失ってしまう。ないものをあると言われるよりも、ないと言われる方が正しいのであって、私もないからこそ、こういう質問をしたのでございますから、本問題については早急に一つ研究をしていただいて、救済の方法を考えていただきたい、かように思います。これは大臣に特にお願い申し上げておきます。
  37. 阿部竹松

    阿部竹松君 今まで石炭局長のお話を聞くと、五十五億を出したのですね、国庫から。そういうことでしょう。それであと一年間の法案ということになっておるけれども、私しろうとでわかりませんけれども臨時石炭鉱害復旧法とか何とか言っているけれども、一年間ではおそらく解決しない、こういう前提に立ってちょっとお聞きしますがね、とにかく大東亜戦争だか、太平洋戦争だかは抜きとして、いずれにせよ、政府石炭政策というものが全くむちゃくちゃだから、こういう問題が起る。近い例を引けば、人の名前を出しては大へん失礼ですけれども、水田さんの前の大臣は石橋さんで、その前が愛知さんでした。昭和二十八年に愛知さんはこういうことをおっしゃっている。本年度の石炭は四千八百万トンが必要だと、当時の通常国会で。ところが三月もたたないうちに、実は四千六百万トンしか要らない、それから四千三百万トンになって、いよいよ一年間が終ろうとしたときに、実は三千九百五十万トンしか要らないということを愛知さんがおっしゃったことがあります。その次に通産大臣になったのが、病になってお休みになっている方のことを私言いたくないんですが、石橋さんは大臣のときに四千九百万トンしか絶対に要らないんだ、政府が努力してあらゆる産業を振興しても、四千九百万トンしか必要ないと言って石橋さんはおやめになった。首相は何回も断言しましたよ。しかし、もう一年たてば今度は石炭がないんだというので、私の家までふろ屋さんが来て、一つ何とかしてくれないかと言ってくるという現状です。ところが、今の石炭局長の阿具根さんへの答弁をお聞きすると、四十年になったら何万トン、五十年になったら六千万トン、こういうことは信用できない。われわれが信用できないんですから、石炭経営者も労働者もあまりあなたのおっしゃるところを信用しておらない。ところが五千三百万トン掘ってくれ、いや五千百五十万トンしか出ないと言って、水田大臣も御折衝に苦労をなすっておるんですが、そこは石炭政策として石炭経営者に出せと言われて拍車をかければ、これは出ないということはないんだが、一年たったら、あなた方は実は要りませんでしたと言うたんでは、また首切り問題で労働組合と大げんかをしなければならない。こういうことで経営者はおっかなびっくりで石炭を掘る熱意かない。だから政府は常時政府の力によって三百万トンくらい買い置いて、そうして問題があったときに出すというような、石炭政策について通産大臣どういうふうにお考えになっておるか、一つその点をまずお聞きしたいんです。
  38. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 従来を振り返ってみますと、全くその通りだと思います。ちょうど今お話が出ましたから、愛知さんが四千七百万トンと言ったあとで、この石炭合理化法案審議されたときに、これは当時の与党政府の間でも非常にこの問題で議論がございました。こういう相談をやっておる間に、四千七百万トン要り用だという時がすぐ来ぬとだれが保証できるか、そうするとしたら、この合理化法案というものは、ほとんどそのときには実際に要らなくなりはせぬかという問題が、あの当時から論議されておったんですが、しかし、いずれにせよ石炭業界というものを将来長期にわたって安定させることだけはどうしても必要だ、だから将来そういう事態になったらなったように、それによってさっきのお話しのような乱掘とか、そういうことをしなくても、一定の合理化のベースに沿って適当に増産もできるし、減産もやっていけるような、やはり長期の安定対策としてのああいう法案が必要だ。従ってあの当時は石炭需要が少かったので、従って石油の消費規正というような問題も問題になっていましたが、しかし、将来そういうときになったら、すぐに消費規正をまたとって、大急ぎで石油を入れて石炭に置きかえるというような政策をとれば、しょっちゅうこの炭業界というものは不安にさらされるということになる。だから将来一定の合理化方針をきめたら、やはり大筋はそれに乗っていくということが安定をはかるゆえんだというので、所要量の見込みはともかくとしても、ああいう法案が一応必要だという結論になってあれができたんですが、今になってみますと、全く当時予想しない方向に来てしまいまして、私どもからしましたら、石炭をここで大急ぎで増産対策を立てるよりも、実際には重油に転換というような方針をここでとった方が、需給逼迫を緩和する上からは一番有効だという面もございますが、これをやると、また従来のこの問題を繰り返しますので、それよりもやはり重油規正というものはおいて、そうして当時計画したこの合理化のベースの上で増産をやらせる、そうしてすぐに石油に置きかえるというようなこの方針をここでやめて、着実にこれを伸ばしていくことがいいのだという方針を今とって、なるだけ業界を不安にさせないことを考えておりますが、見込み違いだけは、もうこれは何とも避けられない事態でして、わずか二、三年前と現在とでは、当時予想もしなかったような状態が出ておりますが、これはもう何とも申し訳ないと思っております。
  39. 阿部竹松

    阿部竹松君 そこで、私、その見込み違いを、愛知さんが、あるいは石橋さんが見通しが暗かったとかなんぞということを責めようというのではないのですよ。ただ、政府が二百万トンなり三百万トンなり、コントロールする石炭政府の力によって置いて、石炭が多く出たときは政府が買っておく、足りないところはそのコントロールする石炭政府が出すということになれば、とにかく足りないといってむちゃくちゃに乱掘して、どんどん地がらが下っていくというようなことはないと思うのです。今、御承知のように合理化法案によって、三十くらい売出したでしょう。それから、また七十くらい申請があるそうです。しかし、ふえている方は売出した数よりとにかく多いのです。これは石炭局長知っている通りです。しかし、計画的に採炭をやっているのでないのですから、鉱山保安法も何もない。めちゃくちゃに、トラック一台と人間三十人くらい集めて石炭乱掘をやって、とにかくあと充填というものはやらない。九州の山へ行ってごらんなさい。とにかくボタ山というのがたくさんある。北海道も若干あるけれども、北海道にボタ山はない。坑内から掘った石炭を選炭したあとの石を、また坑内へ持っていって充填するのです。そうすれば地がらの変動もない。九州も、山の関係と、深さ、浅さはあるけれども、九州の方は全部出したやつを坑内に持っていかないから、どうしてもそういう変動がある。それは無計画で、景気がいいといって石炭を掘る、悪いからといってストップする、これは政府が、自由主義経済ですから、社会党のわれわれの言うように、国管にしなさいということはあなた方に言いませんよ。しかしながら、三百万トンか四百万トンのコントロールする石炭政府が買って、不況時と好況時にうまく政府がやる、こういう方法をお考えにならないかどうかということなんですよ。
  40. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) それはこれから、今度若干不況というようなものが現われたときには、今度は考えなければならぬ政策だろうと考えていますが、ただいまのところでは、追われておって、余分に買ってこれをどうこうするという状態ではございませんので、今はやはり、来年度、再来年度の大体需要見通しによって、着実な増産計画をやっていくという方に主力を注ぎまして、これが需要状態が狂ってきたというときから、今度は石炭のほんとうのそういう長期安定対策というものを考えなければならぬと思いますので、そのときは、当然政府が、そういう、石炭を一定量買っておくというようなこともしなければならぬじゃないかと考えております。
  41. 阿部竹松

    阿部竹松君 そうなると、大臣のお話は、私、口は悪いかもしれないけれども、やみ屋にひとしいのですね。朝鮮事変のとき、とにかく石炭がどんどん売れたときに石炭をどんどん掘って、やれ掘れ、それ掘れでやったのだ、朝鮮事変がぱたりと終ったから炭鉱つぶれたのですよ。また、今度こういう事態になったのですね。あなた、また今度二、三年たったらやりますなんて、まただめになりますよ。こういうときに、神武以来の景気だとかね、大鼓たたいて宣伝しているときにやらないと、あなた、三年大臣やるか、四年大臣やるか、あなたは終生通産大臣をやっていただかなければならぬ。こういうときにやらんで、今度できるという……、この場の答弁としてはけっこうだけれども、そういうことについてもう少し信念を持って、通産大臣はこうやりますというくらいのお考えの開陳があってしかるべきだと思うのですがね。
  42. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) それはやはり今後の問題であって、ただいまのところは、もう正常貯炭量を、御承知のように非常に割っているときでございますので、そういう操作をしたりなんかして、そういう措置を考える今余裕のないときでございますから、現在は問題にならぬと思っております。
  43. 阿部竹松

    阿部竹松君 それでは違うことでお伺いしたいのですが、つまり、政府なり、加害者とあなた方は言っておりますが、石炭を掘った人、そういう人たちが何億か金を出して、とにかく道路なり家なり水田なり畑なり、これを旧状に復する、この金は大体相当な額なんですね。そこで筑豊の炭田などに金を投ずるよりも、長崎の島原と福岡の大牟田というところがありますね、あそこに有明湾というのがありますよ。あそこでも埋め立てた方が、あの筑豊のどまん中へ行って鉱害復旧だなんということよりも、山から持っていって、はるかに安く、同じ十万円出して一坪できるなら二坪できるのですよ。政府としてはどういうことを考えるのです。とにかくつぶれたところはどうしても守らなければならぬというのですか。それより、安くて日本の国土がふえることがあるということであれば、そういう手を打とうというお考えは毛頭ないのですか。
  44. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 有明湾の埋め立てとかいうようなものは、それとは別個に農林省や建設省で計画しているそうでございます。私はそういう考えを持ってもいいのじゃないかと思っております。
  45. 阿部竹松

    阿部竹松君 持ってもいいのでなく、農林省と建設省と大臣が違っても、あなた方少くとも自民党として、一本になって、日本の国をどうするかということをとにかくやられるんでしょう。私は、通産大臣を責めないけれども、あなたは政調会長もやられたことがあって、そういうことで一貫した政策が打ち出される。そうすれば筑豊のどまん中に、一坪百万円もかかるところがあるらしいのです。だからその金を持っていって、そんなところは放棄しても私はいいと思う。道路とか家はやむを得ないけれども、一坪百万円かける金があったら、有明海へ行ったら三十坪もできるわけです。そういうことで、やはり斬新な政策をやってもらわなければ、もとの、旧態依然として、これは守らなければならぬというよりも、そういうところへ金を注ぎ込んで、一坪ふやすよりも、三坪ふやすという方がいいと思うのですが、これは建設大臣に聞いて……。
  46. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そういうことじゃないのです。今の鉱害とは無関係に、日本の干拓とか埋め立て工事というものは、今の鉱害関係なしに、政府計画的に現在やっておりまして、今お話しの地点は、建設省、農林省が早くから計画してやっている地帯でございますが、私の申しましたのは、そうじゃなくて、そういう一般的な計画でやるのじゃなくて、今あなたのおっしゃるように、鉱害関係しても、特別金のかかる地域に金を注ぐのなら、それだけの金をそういうところに投じてやるのがいいのじゃないかと私自身が考えると言ったのでございまして、私は賛成です。
  47. 阿部竹松

    阿部竹松君 ただ、それは計画というけれども、それは机上プランであって、全然実施も何もされていないのですね。ですから、それは管轄は違うかもしれませんよ。しかし、財布というものは大蔵省というところで、日本政府一つなんですからね。それは、出先は違ったとしても、財布が一つなんですから、要は予算がないわけです。そうして、またつぶれた土地を持っている人に、それは有明海でやりますと言ったら、一坪つぶれたらお前のところはがまんせい。そのかわり、こちらで三坪やりますというような方法で、通産大臣個人の意見でなく、政府としてあなたがどうなされますかということなんです。
  48. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 全国各地に、そういう干拓計画を立てて促進すれば、非常にいい場所が現在ございますので、これを予算的に促進するためには、従来の予算のつけ方じゃなくて、別の構想を持つ必要があるだろうということから、今度こういう問題は特別会計を作って、そうしてそこで借入金ができるという形で、全国計画地点の促進もやろうじゃないかという話に、今度は政府がきめましたので、この特別会計の設定ということによって、こういう工事は今後相当進むだろうと考えております。
  49. 島清

    ○島清君 ただいまの阿具根委員阿部委員質問に関連して、質問をしたいと思いますが、今通産大臣が、貯炭の余った場合には、政府が買い上げて、そうして不足した場合に操作をする、そういうことを考えてもいいんじゃないかというような御発言でございましたが、非常に私は自民党の選出の大臣としては、特にまた水田通産大臣としては、政調会長をお務めになられた大臣といたしましては、非常に私は重要な御発言を、意義ある御発言を拝聴したと、実は喜んでおります。と申し上げまするのは、自民党の内閣により計画性がなくなった、その計画性がないゆえに、業者と国民が非常に迷惑をしてきたのです。その迷惑を避けて、そして国家の産業機構を順調に発展させ、国民の生活を安定せしめていくのには、どうしても自由放任ではなくして、国家の意思の作用というものが相当強く働かなければならないということは、年来の私たちの主張でございました。そこで、過去の石炭の行政を見ましても、今両君から御指摘になりました通り、国民と業者が非常に迷惑をしてきた。そこで今日は、石炭が足りないで大いに掘らなければならないということだけれども、将来もし困った場合には、やはり国家の施策としてそういうことを考える必要が起ってくるということは、御承知通りアメリカにおきましては、農産物が余りますれば、国家が買い上げて、そしてそれに何かひもをつけて売り出しているのです。そういうようなことを当然やらなければならないと思うのです。そこで、石炭と関連をいたしまして私がここでお聞きしたいことは、輸出景気から設備景気になりまして、それから今でも設備の投資がなされておるわけなんですが、しかしながら、アメリカあたりでは、すでにもう景気は頂点に来ておるというので、ゼネラル・モーターズあたりは、計画をしておりました設備拡大を中止をしておるということです。アメリカあたりならば御承知通り、やはり住宅の建設状況も非常に憂慮されておる。自動車の売れ行きにおいてもその通りだと言われまして、相当この夏を頂点にして下り坂になるんじゃないかと学者は観測をしておるようです。そこでその影響が日本にこれは及んでくるわけですが、そうなりますると業界においても、これはやはり設備投資に対して相当ここらで足踏みという問題が起ってくるわけですが、そういったような客観情勢の中においても、政府は今のような情熱を持って、そして石炭合理化をはかると同時に、設備を拡大していって、それから増産をはかっていかなければならない、こういうような方針を強力に推し進めていかれる考えであるのかどうかお聞きしたいのが一点。そして私が今通産大臣に非常におほめの言葉を差し上げましたように、そうなりまして、かりに石炭がそういうふうに進めていった結果、石炭余りました場合に、ほんとうにこの余った石炭政府が買い上げて、そして業者にも、国民にも迷惑を及ぼさないというような、国家的にそういったような統制といいましょうか、計画といいましょうか、そういう施策をほんとうに断行されるだけの決意と、そしてそういうことは閣議なり、あるいは自民党の政調会あたりにも出たことのある話しで、そして大臣はそういう御答弁をなされたかどうか、この二点について明確にしていただきたい、こう思うのです。
  50. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 石炭の不況という時代が来たときには、今言ったような方策もとらなければならぬだろうとこれは考えています。以前からそういう話は出ておりますが、渇水のときには電力会社は緊急の配炭まで要請しておる。しかし豊水のときには、一たん契約したものまでキャンセルするというようなことを従来やっておりましたが、まずこういう点から改めさせて、豊水であるときでも、一定数量は全部石炭を買わせて、これを貯炭させておくというような措置をやるべきじゃないかというような話は今までもしばしば出ておって、実際にはあまりやられていなかったことでございますので、今度そういう不況というような傾向が見えたというときには、政府自身が買うことも考えますし、その前にまず大口の需要家に一定の量をみな貯炭させるという行政的指導をするということも、有効な手段だろうと考えておりますので、この次にそういう傾向が見られたときには、私どもは万全の策をとりたいと考えております。  それから経済の動向についてですが、これはアメリカの方向がただいまのようなことでありましても、私どもは一時的な現象と見ておりまして、来年度の上半期あたりからは、また米国経済は活況を呈するだろうという見方があらゆる方面で行われておりますので、一時的なことから、あるいは日本の投資事業についても、ことしの下半期に来て若干鈍化するという傾向は見られるかもしれないと思っておりますが、世界経済の大体の方向に従いまして、現在の基調がくずれることはない。ここしばらく毎年予定通りの、やはり経済拡大というものが行われていくだろう、特に日本におきましては、まだここらが頭打ちだという徴候はございませんで、今後当分、今予想しておる何%という拡大率が、かりに若干減ることがあっても、日本の経済の方向というものは、今後ずっと一定の調子で伸びていくということを私どもは予想しておりますので、従って石炭におきましてもこの画一的な、着実な増産対策というようなものは、今後積極的に推進していく、こういう考えでございます。
  51. 阿具根登

    ○阿具根登君 大臣は非常にお忙しいようでありますから、簡単に大臣に今のことに関連してですが、法律案が出るときに、あるいは政府政策を聞くときには、これはそういう答弁です、いつも。蒸し返すようですけれども合理化法案のときも逆に答弁をされておった。今答弁される場合に、この前も質問いたしましたが、急に不況になるということはないのだということを言っておられるけれども、今まで石炭ほど起伏のあったものはないことは、今も同僚議員の御指摘の通りでございますが、渇水準備金が準備されておるくらいであるならば、余ったときにはそれを貯炭するくらいのことは、政府考えてやるべきじゃないか。そうして労使とも安心してこの石炭と取つ組んでいかれるようにしなければ、今それやこれやでやっておる人たちも、労使ともに、また余る時期が来るぞ、石炭にはいつもピークがある、こういう不安な念で私はやっておると思いますが、そういう考えがあるかないか。  それから、急いで質問いたしますが、この特鉱が一年延びますと、来年の四月一日でこれはなくなりますが、そうしますと、トン当り三十円あるいは十五円の納付金もこれでなくなるわけですね。局長の話を聞いておりましても、大体銀行の方で年間十二億ぐらいでとんとんでやっておる、こういうことを言われますが、机上で数字を合せればそうなりますけれども、たとえば山口、佐賀、長崎、福岡等に行ってごらんになるならば、特に局長は福岡におられましたから御承知のように、これはみじめな鉱害です。そうなれば今の臨鉱では私は追いつかないと思う。鉱害の何%かをやっているだけだ、数字で書けばそうなる。特鉱の場合も百億の金を出しておられますけれども、それは百億の金があったから百億分の鉱害復旧しただけであって、完全であるとは私は思っておらない。で、そうなるならばこの四月一日以降に臨鉱法でこれをみるということになっても、納付金というものはもう入ってこないと思う。そうした場合にそれでいいのかどうか。やはり臨鉱の方にも、今のままでは完全にいかないから、特鉱なら特鉱がなくなったこの際に、そういう制度をまだ設けられる考えがあるかどうか、これが二点。  それからもう一つは、復旧計画の際には鉱業権者の同意が要るわけなんですね。そうすると被害者は何にも知らない間に自分の下を掘られて、そうしてさんざんな目にあわされて、これは加害者がそれを決定する権限があるんだ、こうなってくれば、生産をしておる人が被害を受けた上に、自分たち被害に対する発言権、決定権というものが非常に少い。だからこれはそういうことでなくして、中立的なりっぱな方々を機関に置いて、そういう機関で決定をするというようなことを考えておられないかどうか。鉱業権者の同意を得なければできないということでなくして、中立のりっぱな方々がきめる権限を持っている機関を作る意思はないかどうか。この三点について大臣に御質問申し上げます。
  52. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 最初の問題、これは貯炭義務を負わせるくらいの措置をとっていいと思います。  その次の、今後引き続きどういう対策考えるかという問題ですが、現在のところは、まだ考えておりません。これは今後考える必要があろうかと思います。その次の問題は、局長からお答え申し上げます。
  53. 讃岐喜八

    政府委員讃岐喜八君) 特鉱法律が有効期間が切れた後をどうするかという問題でありますが、私ども大体現在の鉱害の発生量は年に十二億程度というように考えております。それで本年度の予算措置で申しますと、臨鉱の復旧の量は十二、三億、こういうことになります。で、本年度としましては発生量と復旧量とは大体マッチしてしまうということです。これは予算の問題でございまして、予算をふやしさえすれば、どんどん仕事ができるわけでありまして、今日までは特鉱と臨鉱と合せて二十数億の仕事をやってきております。本年度も十二、三億の臨鉱の仕事と、特鉱仕事の残りを合せまして、十七、八億になります。大体今日までやってきたケースで三十二年度もやっていくということになると思います。三十三年度以降はうんと予算を計上いたしまして、臨鉱でやる仕事特鉱と臨鉱と合せたよりもオーバーするように、つまり今日までたまっております鉱害を毎年々々借金を返すようになくしていくように努力していきたい、かように考えておる次第でございます。  それから鉱害復旧事業団が復旧基本計画を立てる場合に、鉱業権者の同意を要する、こういう問題でございます。これはまた、復旧基本計画に基きまして実施計画を作るときに、被害者の同意をやはり要することになっております。結局双方の同意を要するというのが、今日までの法律の建前から申しましてやむを得ない。で、鉱業権者も被害者も、この復旧計画というものはみずからの同意なくしてはできないのだ、こういう仕組みになっておるのでございます。現在のところはいたし方がないわけでございます。将来の問題といたしまして、こういう場合に中立機関でやってしまったらどうか、こういう御意見でございますが、この点につきましては、法律相当問題があるのじゃないかというように考えられますので、今後十分研究さしていただきたいと思うのでございますが、目下のところは双方の同意を得て円満に仕事を進めていく考えで、鉱業権者の同意しない、あるいは被害者が同意しないという場合におきましては、できるだけ同意してもらうように、われわれ行政に携わる者が双方の間に立ちまして、十分復旧の実が上りますように万遺憾なきを期したい、かように考えておる次第でございます。
  54. 阿具根登

    ○阿具根登君 大臣がおられないようでありますから、少し具体的になりますが、ただいまの御説明で聞いておりますと、政府の方が納得させるようにやるのだということでございますが、政府の機構を見てみますと、この鉱害問題に対して中央で三十五名、地方で七十名、こういうことを御答弁になっておるようでございます。そういたしまして、しかもその中に専門家の方はごくわずかである。そうして行き詰れば大学の先生にお尋ねに行っておられる、こういうことが実態であろうかと思います。そうしますとこれは大企業で石炭をやっておるところには、それに数倍する機構を持っておるのです。そうすると政府考えておるようにはいかない。たとえば鉱害の測量等をやる場合でも、政府考えてやっておられる以上の機械を経営者側は持っております。そうしてより以上の技術を持っておる、だからそれをくつがえすことはできない。だから被害者に対してのみ納得をさせるような態度に出ていくのじゃないか、こういうように思うのですが、そういう点についての不備はないのですか。
  55. 讃岐喜八

    政府委員讃岐喜八君) われわれの職員の構成なり、定員の問題でございますが、非常に足らざるを憂えておるわけでございますが、また、御指摘のように業界におきましては相当専門家が多数におられまして、その勢力に負けるのじゃないか、こういうお考えのようでございますが、われわれ役人は常に厳正中立の立場で、双方の納得のいくような処置をとって参りたい。こういうことで今日まで、こればかりは一貫した精神で貫いているつもりでございます。しかし、足らない点は今後十分努力いたしまして、われわれの職員なり、専門家の数をふやすことに努力いたしたいと思います。衆議院でも問題になったことでございますが、鉱害の認否という問題は、実際その技術上の問題と、感情の問題といろいろございまして、技術的な問題につきましては今後研究を要するものが相当あるようでございます。私技術の詳しいことにつきましては必ずしも十分存じているわけじゃないのでございますが、世界的な技術の水準からみまして、鉱害については今後相当研究を要する問題がある。そこで研究を要する問題につきましては、通産省の部内におきましては工業技術院の協力を得まして、またそれで足らない場合は、九州大学等の専門家の御協力を得まして何とかやっていこう。こういうことでございまして、御指摘のような非常に不備な点はあるかと思いますが、これはおいおいに改善いたしまして、しかし精神は厳正中立でやって参りたい。かように考えておる次第でございます。
  56. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 速記をとめて。    〔速記中止
  57. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 速記をつけて。  それでは暫時休憩いたします。    午後零時十二分休憩    —————・—————    午後二時十分開会
  58. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 午前に引き続き、委員会を再開いたします。引き続き、特別鉱害復旧臨時措置法の一部を改正する法律案臨時石炭鉱害復旧法の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。
  59. 阿具根登

    ○阿具根登君 午前に引き続いて御質問申し上げますが、衆議院の答弁を見てみますと、局長の御答弁では、年々十二億くらいの復旧費を見積っておられる。そうして被害復旧が一応つじつまのあった金額になっておる、こういう御説明があっておるようでありますか、非常にこれは甘いのではないかと私らは考えるわけです。そこで、今後生産するに従って、非常に深部を掘っていくようになってくる。そうすれば、被害の面積が非常に広くなってくる。深部を掘る以上、やはり表面に表れてくる被害というものは、非常に今までよりも範囲が広くなってくる。こういう点を考える場合に、十二億がそのまま続くというような考えは甘いのではないか、こういうのが第一、それから、その被害を見る場合に、現在の範囲をどのように見ておるか、角度でございますね。そういう点について、局長の御答弁をお願いいたします。
  60. 讃岐喜八

    政府委員讃岐喜八君) 採掘場所が深部に移行しますということと、それから今後の出炭がだんだんと増加して参るということから、将来発生する鉱害の量が、従って増加するであろうということにつきましては、私どもも全くの同意見でございます。おそらくそうなるであろうと存ずるのであります。衆議院で私が御説明申し上げましたのは、大体今日までの出炭ベースから見まして、毎年十二億程度鉱害が発生しておるということを申し上げました。たまたま本年度、昭和三十二年度の復旧計画が十二、三億になりました。三十二年度においては、とんとんでございますと申し上げたのでございますが、将来このベースで行くのだということは、一つも申し上げてないので、むしろ将来特別鉱害復旧事業が終りますから、だんだんとふやしていけるはずだということを信じておりまして、ですから将来におきましては、発生する鉱害の量もふえましょうが、復旧の方がさらに増加いたしまして、おいおいにそのたまっておる鉱害の処理ができる見込みでございます。こういうようにお答えしたつもりであるわけでございます。  それから角度の問題は、一応鉱害であるかないか、認否の場合に、大体破断角で六十度とか五十度とかいうことを申し上げておりますが、それはその角度で見まして、地表に現れたものが、どこの炭鉱の採掘に基く結果であるかということを判断するのでございまして、これにつきましては、その場合々々によりまして、具体的にきめているはずでございますから、原則としまして、五十度ないし六十度の角度でもって見ておる。こういうことでございます。
  61. 阿具根登

    ○阿具根登君 五十度ないし六十度の角度で見ておられるということでございますが、坑内を採掘しておる場合に、それ以外のそういう現象があることがあるかどうか。
  62. 讃岐喜八

    政府委員讃岐喜八君) それ以外にある場合があるわけでございます。そういう場合には、非常にむずかしい問題が起る。たとえば地下の水を汲み出したために、地表に非常に大きな範囲に陥没が起るというような場合があるようでありますが、これらの問題につきましては、非常にむずかしい問題が起りますので、主として九州地方におきまして九州大学の先生方の御協力を得ましてその判断に当っておる、こういうことでございます。
  63. 阿具根登

    ○阿具根登君 ちょっと技術的な問題になりますが、ただいまのは非常に何か合わないと思うのですね。炭鉱を掘った周辺は水がなくなるのが、これは常識なんです。だから水を吸い上げて陥没したというようなところは、おそらくその付近に炭鉱を掘っていることは考えられん、こういうようになるわけなんですね。炭鉱を掘っていけば、周辺の水は少くなるのが常識なんです。鉱内を掘っているんですからね。だからまあその付近でどこか水を吸い上げたから陥没したということは、ほとんどあり得んのじゃなかろうか、そういうのはほとんど坑外ではないか、こういうふうに見えないだろうかと思うのですが、それは違うのですか。
  64. 讃岐喜八

    政府委員讃岐喜八君) 非常にむずかしい問題でございまして、私だけの御答弁では御満足いかんのじゃないかと思いますが、そういうような場合におきましても、常識上そういうことが想定されるという場合におきましても、地下の水の流れと申しますか、こういうものには非常に特別な事情があるようでございまして、突然に水が出てきたり、あるいは突然に水がなくなったり、そういうことがその山だけの採掘に基くものか、あるいはその周辺の多くの山の採掘に基くものか、これは非常にむずかしい問題が起る。そのボーダー・ラインにつきましては、非常にこれはむずかしい問題でございますから、工業技術院なりあるいは大学の先生方の御判断を持っておるというのが実情だ、こういうところでございます。
  65. 阿具根登

    ○阿具根登君 質問の要旨を変えまして、賠償費として標準炭価にトン当り六十三円を見込んでおるということを発表されておる。標準炭価は四千二十七円である。これは合理化法案ができるときに、政府石炭の高騰を防ぐために、標準炭価をきめるのだということが決定されておったと思います。そうしますなら、権威ある通産省が標準炭価を決定したのであるから、その標準炭価で石炭は売買されなければならない。かように思いますが、現在その標準炭価で売買されておるかどうか。また、実際に炭価がそうでなくなった場合には、標準炭価そのものを変えなければならないが、そういう場合にも六十三円というのに固執されるのか、率でいかれるのか、この点御質問申し上げます。
  66. 讃岐喜八

    政府委員讃岐喜八君) この標準炭価の中に見ております鉱害賠償額でございますが、トン当り六十三円というのは、ただいまのお話しの通りでございます。そこで、これは現在までの実績に基きまして、トン当りに算出して、この標準炭価の平均生産費の計算に算入したわけでございまして、これはその年の数字としては固定したものだ、こういうふうにお考え願いましてけっこうだろうと思います。それから四千二十七円の標準炭価をきめながら、実際の市場の価格はそれより高いじゃないかという御意見のようでございますが、私ども手元にある調査によりますと、たとえば、国鉄とか鉄鋼、電力、ガス等の大口の値段につきましては、これは実際に、その数字の具体的なものははっきりとつかめない事情にございますが、たとえば、国鉄におきましては、上期五十円、下期には百円、鉄鋼では、上期に二百円、下期に三百円、電力は上期に百円から百五十円、下期には二百五十円から四百円、こういうことになっております。これらの大口の取引は、昔の非常な不況時代に非常に安く売っておりました。それが一年間に五十円とか百円とかという程度の値上げしか今日まで実現いたしておりません。これらの大口需要家の買っておりまする石炭の値段というのは、大体標準炭価以下だというふうにわれわれは了解いたしております。実際に、その衝にある需要家の話を聞いてみても、標準炭価まではとても買えません、こういうことを言っておるようでございますから、それは確かだと存じます。問題になりますのは、むしろこういう大口の需要家でなしに、むしろ小口の需要家に高い値段があるのじゃないか、こういう御質問の趣旨じゃないかと存じますが、炭価の問題につきましては、先般大臣の所に、業界の代表、中小工業の代表に来てもらいまして、標準炭価もあることでございますので、非常な高い値段で売るということは自粛してもらいたいということを、大臣から業界に要望してございます。それから、それに基きまして、また私の所に、石炭商社だとか同業会の代表の方もお越し願いまして、大臣から業界に対してこういう要望があったということを伝え、そういう非常識な値段で売ることがないように業界を指導していただきたいということを、業界に十分警告いたしておりますが、また実際に、二月の下旬でございましたか、石炭局の職員を消費地であります名古屋及び大阪地区に派遣いたしまして、中小企業あるいは中小の石炭商社の扱っている価格の状況につきまして実際に調べて参りましたが、おおむね、その標準炭価の一割、一割以内のところで、一割近く上回っておりますが、一割以内のところで取引されているという実情を報告を受けておりますから、おそらく、世間で言われるほど高い値段で取引されているという事実はないのじゃないか、もちろん人間のことでございますから、例外はあり得ると思いますが、例外はきわめて少いのじゃないか、そういう意味におきまして、かつての朝鮮動乱ブームの時代のころに比べまして、石炭業界相当自粛している、かように私ども考えておるような次第でございます。例外はあり得るかと思いますが、きわめて少い例外じゃないかと存じます。
  67. 阿具根登

    ○阿具根登君 私は、局長相当調査されておるから、まあ権威ある数字だと思ってお聞きいたしますが、今言われた答弁が例外の答弁じゃないかと私は思うのです。私も名古屋地区に参りまして、そうして需要家の方に聞いてみましたが、朝鮮動乱ブームのようにカロリー一円という値段ではない。ところが、九十五銭から九十七、八銭になっておる。そうしますと、政府考えておる四千二十七円というものよりもはるかに上になっておる。またこの石炭は、これは基礎産業であるし、動力源でございますので、国鉄とか、あるいは電気、ガス等が主でございますが、これを家庭に使っておる小需要家、個人の需要家の方々の問題を見てみますと、われわれが家庭にたくやつは大体一万二千円、局長もおたきになったらわかると思いますが、東京でお買いになれば五十キロ俵が六百円、一万二千円、こういうことが市民の生活を直接脅かしておるのに、政府の方では、四千二十七円が大体守られておるのだ、上っても一割だ、こういうとはどうも特別な所をごらんになったのではないか。私がたずねたのは、たしか中部火力発電所だったかと思います。その他の中小企業を見て回りまして、お聞きしたのでは、全部九十五銭から九十七銭、こういうことを言っておるのでございますが、局長も、人を使って、機構を使ってお調べになっておるようでございますが、その点についてどういうふうにお考えになっておりますか。私どもは、実際自分で行って見て来たわけです。
  68. 讃岐喜八

    政府委員讃岐喜八君) 炭価の問題は、まず標準炭価では六千二百カロリーの粉炭、しかも山元のレール渡しと申しますか、そういう値段でございます。そこで、実際に市場で買われる炭は、粉炭ばかりじゃございませんし、六千二百カロリーの炭ばかりじゃございません。これは、公式的な格差と申しますか、メリットによってその石炭の値段がきまるわけでございますが、六千二百カロリーにして粉炭の場合を考えてみますと、大体標準炭価がカロリーで六十五銭ぐらいだと思います。そこで、それから九州炭あるいは北海道炭を東京なり大阪なり何なり持って参りますのに、相当運賃がかかります。その運賃をプラスしまして、さらに商社の扱いの手数料がプラスされます。そういうプラスをしました場合に、何ぼであれば大体山元で粉炭でオン・レール渡しの標準炭価になるかと申しますと、大体名古屋地区ではカロリー当り九十四、五銭になるじゃないか。それで、それに一割ふえますと、一円ないし一円五銭というのが相場になって参ります。これ以上オーバーしたものは標準炭価を一割オーバーしたものだ、こういうふうにわれわれは考えておるわけであります。実際に輸送にかかる費用なり、また販売業者の取ります手数料は、これはやむを得ないものだと考えるわけでございます。なお、ふろ用炭等につきましては、ただいま御指摘がございましたが、常磐の例で考えてみますと、最近におきましては、非常に石炭需給が逼迫しまして、こういう関係から、需要家に迷惑をかけないために、普通ならば鉄道で運ばれるものを、自動車で運ぶ、あるいはまた、北海道炭でも、普通ならば、東京へ来まして需要家の倉庫まで直接つけられるものを、一たん陸揚げしまして、その船に積んでおりました荷物を何分の一かに分けまして、それからトラックで輸送する、こういうような事情が最近においては出ておるのでございます。また、常磐の山元で貨車が得られないために、福島の小名浜までトラックで持って行きまして、そこから鉄道で東京まで持って来た、こういうような例がございます。たとえば常磐からトラックで東京まで持って参りますと、鉄道ならば五百円程度で済むものが、トラックですと千五百円ぐらいかかる。あるいは東京の港で揚げなくていいものを揚げて、それからトラックで運ぶためにトン当り五百円以上かかると、こういうような事情が出ておりますので、ただいま申し上げましたのは、これは通常の状態において、通常の輸送機関で消費者の手に渡る場合を申し上げたのでございますが、そういうような需給の逼迫のために、特別に需要家の便宜をはかるためにかかった経費は、これも現在までの、最近の状況としてはやむを得ないのではないか、かように考えておる次第でございます。
  69. 阿部竹松

    阿部竹松君 保安局長がお見えになったようですから、一つ二つお伺いしたいのですが、保安局長は九州ですね、通産局におられたかどうかわかりませんけれども、御承知通り、九州の筑豊へ、長崎とか佐賀へ行っても、山によって違いますけれども、とにかく石炭一トン掘るためには、石一トン掘っているわけです、坑内から。従って石炭十トン掘るためには石十トン出てくるというようなことで、そこらじゅうピラミッドのような山が九州全土の炭鉱地帯にあるのです。そのズレを九州ではボタと言っておるのですが、その坑内から掘った石をふたたび坑内に持って行って、そうして充填をすれば、坑内は絶対に危険ではないし、あるいは田地田畑をつぶして、そしてボタ山などはできない。あるいはまた坑内を充填することによって、今申し上げたように危険でないと同時に、こういう鉱害などというものは起きないのです。片一方は膨大なボタ山ができ上って土地をつぶしている、片一方は沈下しておる、それによって坑内が危険であるというような、ばかげたことをやっておるのですが、これは保安局長どうお考えになるのですか。
  70. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) ただいまのお話は非常にむずかしい問題でございまして、現在の技術、現在の石炭価格、これらを考えますと、大体中から石炭と一緒にボタを出しまして、それを分けて石炭を取りまして、その分けたあとを捨てる以外には現在のところはないのであります。これは日本ばかりではなしに、諸外国いずれも、このボタを坑内に充填している所は、まず私どもあまり聞いていないのでございます。しかし、日本でも特に端島のごときは炭がよくて、しかも採掘する炭が全部石炭でありまして、ボタがないという所には……しかもまた海底炭鉱である、こういう事情の所は、やむを得ず坑外から一部ボタを搬入しまして充填に当てておる所がございますけれども、まあ一般論としましては、私は現在のところは無理ではなかろうかというふうに考えております。
  71. 阿部竹松

    阿部竹松君 保安局長、それは御冗談でしょう。二十年前から北海道においては坑内のズレを選炭して、とにかく石炭を取ったあとを坑内に運んで、そうして充填しておるのです。二十年たった今日、今の技術でだめだということは、あなたがきのうやきょう初めて保安局長になったのであればいざ知らず、そういうことはこれは全然ないのです。従って北海道の場合は、これはもちろん地形も違いますし、坑内の深度も違いますよ。しかし、坑内から出たズレを坑内に埋めることによって、浅い炭坑といえども陥没が起きない。おそらく一度ごらんになったらわかるのです。二十年前からやっておる。確かに経済力から言えば充填をしないで、石は野放しにして、石炭は汽車に積むという方がいいかもしれませんけれども、とにかくこういう膨大な鉱害の費用を政府なり、あなた方が加害者と称せられる石炭業者が使うことになれば、これはとても問題にならんですね。その点はいかがですか。
  72. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) これは私の説明が少し足りなかったと思いますが、このボタの問題は非常にむずかしい問題でありまして、採掘する炭層がほとんどボタがないような炭層の場合には、比較的そのボタの問題が少いのでありますが、場合によりましては坑道の岩石をくずしまして一部充填するというような所もございます。しかし特に悪い山ですと、ただいまのお話しのように石炭一トン出すよりもボタが一トン以上出る山が相当たくさんございます。これらは、一トン以上出す山ですと、坑内に充填するとおっゃっても、残りが出てくるわけでありまして、いずれ坑外に搬出するボタというものは当然出てくるのです。これを坑内に全部埋めろというお話でございますが、埋めることは非常にけっこうでありますけれども、最近御承知のように鉄柱カッペというものが非常に広範囲に普及されております。この鉄柱カッペを使いますと充填はほとんどやりません。鉄柱カッペの所は全部無充填でやっておるのであります。そうしてこれが進むごとに跡をばらしまして、跡ばらしというものを完全にやっております。当然従来やられておる跡ばらしという方法で操業をいたしておりまして、この方がずっと安全にいくわけであります。これは御説明しますと非常に長くなりますので、一応鉄柱カッペ使用の山は充填なしでやって差しつかえないという一応の理屈の理論が立っておりますので、そういう方法をとっておるわけであります。
  73. 阿部竹松

    阿部竹松君 ですからそういうようなことで切羽を進行させることによって能率は上るけれども、あなたが御承知通り一日に二人半くらい犠牲者が出るのですよ。充填しないから、そうして坑外でボタを積んで、ボタ山の処置はおそらく監督不十分だから、ボタ山がくずれて家を倒したり、あるいは家の中へおった人が犠牲になるということなんですね。ですからそういうことについて保安局長は、鉱害というのは沈下することも鉱害だけれども、このボ夕山の処置についてやはりどうするということもお考えでしょうし、あるいは鉱害で、これは三井とか三菱住友とかいって掘った人がわかる所はよろしいけれども、昔十年、十五年前に掘って、今、採掘した人がどなたかわからないという場合には、これはどういうことにするのですか。
  74. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) ただいまの御質問は、鉱業権者がわからないボ夕山をどう監督しているかというふうな御質問と思いますが、私どもは一応言い逃れのようでありますけれども、鉱業権のない山は対象にできないことになっておりますので、鉱業権者がはっきりわかるものについて監督をいたしております。しかし、鉱業権者の不明瞭なものにつきましての監督、いわゆる特にボタ山の点につきましては、もちろん相当な数がございまして、これがくずれて川に流れ込んだり、それから鉱害を起しておるという実情は承知いたしております。しかし、これらの点につきましては、現在のところは特に一番問題の多いのは福岡県でありますけれども、福岡県につきましては、県の方とよく連絡をつけまして、現在少し方向としては無理かとも存ぜられますけれども、臨時鉱害いわゆる臨鉱の方で多少でき得るものは、めんどうを見ていっておるというような実情でございます。
  75. 阿部竹松

    阿部竹松君 それから合理化法案によって買い上げた山ですね。それが直ちに沈下するということがないにしても、あるいは来年、あるいはその次の年というように沈下した場合、それはどこの責任……、一体そういう点どういうことになるのですか。
  76. 讃岐喜八

    政府委員讃岐喜八君) 合理化法によりまして買い上げた山が、将来鉱害を起す、こういう場合の処置でございますが、整備事業団といたしましては、安定鉱害を片づけた上で、不安定鉱害及び未発生鉱害は、それはその部分だけは整備事業団が買い上げます。従いまして将来不安定鉱害が安定し、未発生鉱害が発生していった場合におきましては、整備事業団がその当該賠償の責任を持つ、こういうことになります。
  77. 阿部竹松

    阿部竹松君 そういうふうになりますと、当然政府がやるということになるのですが、今まで過去昭和二十五年からですか、二十六年から実施したのですが、今まで鉱害復旧でやった面積よりも将来ふえるであろう面積の方が多い。かえって毎年十町歩なり二十町歩なり復旧しておる面積よりも増加する方が多いという話があるのですが、これは当局のお調べはどうですか。
  78. 讃岐喜八

    政府委員讃岐喜八君) 先ほどもこれは申し上げました通り、今日までの出炭ベースで、今日まで発生しました鉱害の実際の量から判断しまして、年々十二億ぐらいの鉱害が発生する、こういうことでございます。将来その採掘場所が深部に移行し、また、出炭の量が増加するに従いまして、相当ふえて参るであろうということは私ども考えておるわけでございます。これはどのくらいになるだろうということは今ちょっと計算はできないのじゃないかと思いますが、将来相当ふえて参るであろうということは考えております。
  79. 阿部竹松

    阿部竹松君 午前中の石炭局長の御説明合理化法案によってでき上ったのが縦坑二本だとおっしゃったですね。しかし、一昨年の出発当初の、昭和三十四年度までにでき上るというのは、確かに六十八本というふうに御計画なされて出発したというように記憶しておるわけですが、しかし、二年たった今日六十八本に対して二本しかできないということになれば、これは六十八本でなくして、この昭和三十四年まで八本できるかどうかわからないということになりますと、当然もう問題にならないということになるのですが、この点はどうですか。
  80. 讃岐喜八

    政府委員讃岐喜八君) 午前中にお答えいたしましたのは、三十年度に二本完成いたしまして、三十四年度に八本完成する見込みでございますと御説明したはずでございます。それでこのベースは当初の計画通り参っておりますかと申しますと、これは御指摘のようにベースは計画通りであるとは申しかねるのでございますが、しかし、すでに本年度末までに十本の縦坑が完成するはずでございます。それで先ほどもお話がございましたのですが、今日までのところ業界におきましては、行先の不安等から増産にいかなかったということもございますが、将来はピッチを上げて縦坑の方も工事を進むべきじゃないか、かように期待しておる次第でございます。
  81. 阿部竹松

    阿部竹松君 そうすると大体あれですか、六十八本いう数字で出発して当初の計画は遂行できる、こういうことですか。
  82. 讃岐喜八

    政府委員讃岐喜八君) その点につきましては、これは先ほども申し上げました通り基本計画の問題につきましては、再検討いたしたいと存じます。六十何本全部でき上るだろうということは、今ちょっとここでは自信を持ってお答えすることはできない事情もございます。
  83. 阿部竹松

    阿部竹松君 そうなると、昭和三十四年になってから御質問する以外にないのだが、話は変りますが、こういうような石炭事情によって、大手関係は別として、中小、特に中小炭鉱の小の部に入るかもしれませんけれども、浅い坑内で保安炭中も一切そういう設備もしないで、石炭をどんどん掘っておる。従って相当危険であるし、まるでむちゃくちゃな乱掘であるというようなお話から、従ってその犠牲者も相当出ているやに聞くのですが、この点はどうなのですかね。厳重なる監督をやっておるわけですか。
  84. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) ただいまのお話し、お説の通りでありまして、私どもも非常に心配しておりますのは、特に来年度の出炭計画が、かなり本年度と比べまして増強されております。いまだかつてないような非常に大きな数字に増強されますので、ぼつぼつその態勢が進められておると思います。従いまして、私どもが最も現在保安の面で注意いたしておりますのは、中小炭鉱対策であります。すでに九州などにおきましては一月、二月明らかにその数字が出ております。特に二月の数字では、たしか二十五日までの数字だと思いますが、二十数人なくなっておるのでありますが、そのうちで大手は六名か七名であります。あとのものは全部中小の死亡でありまして、大体中小が大手の倍くらいの状態でありましたものが、三倍、四倍というふうに増強されております。どうもこの傾向で参りますと、中小の死亡が非常にふえる。むしろ大手の方は減りつつありますけれども、中小でその減った分を食ってさらにふえておるというような実情でございますので、私過般も九州へ参りまして、直ちにその実情を知りまして、特に佐賀、長崎の派遣班の一名の増員をやりました。特に中小の対策として中央からもいろいろな指令をやっております。目下来年度の監督方針につきましてもそれぞれの大きい方針を流し、現地でこまかい具体策を今作成中でございます。非常に苦心して中小の対策の手を打っておるつもりでございます。おかげさまで昨年は何十年来の好記録を出しまして、この成績をそのまま持続したいという意気込みで、目下進んでおりまするので、その点を御安心を願っていいと思います。
  85. 阿部竹松

    阿部竹松君 昨年のちょうどスト規制法のときだと思うのですけれども、御安心願うというお言葉を今保安局長から承わったわけですが、今年は非常に順調だったというお言葉でしたよ。それがまた逆になって御安心してくれと言ったって、毎月犠牲者が出るわけですから、御安心はできないわけですよ。ただ、私が行ってあれしたとか、保安官を一名増したとか、こういうことでなしに、そういう犠牲者を出したとにかく責任者はどういうふうに処罰するとかなんとかいうことはないのですか。
  86. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) 決して現在悪くなっておるのではありませんで、私は今後石炭の増強に伴って悪くなるであろうという大きい予想をつけておるわけであります。そうして最近の一月、二月を見ますと、現在はもちろん昨年よりもいいのでありますけれども、中小と大手のバランスが非常に大きく破れておるという点を申し上げたのでありまして、一月、二月の成績も順調に進んでおるわけであります。これからだんだん悪くなるのではないかということを予想いたしまして、目下手を打ちつつあるという御説明をいたしたのであります。
  87. 阿部竹松

    阿部竹松君 一つそういう点は特に保安局長は事故を絶対起さないという御方針で、九州なり北海道なりに厳重なる指令を出して、監督をやっていただきたいということをお願いいたしておきます。  それからそういうふうな犠牲者は別として、そういうようなところでとにかく二千トン、三千トン掘るのが二、三年たつと、どこかに鉱主が行ってしまったとか、責任者がわからなくなったというのが積り積ってこういう鉱害問題になるのではないか。これは大手関係から見れば少いかもしれませんが、起きてくるわけですが、積り積って何年かの間に鉱害問題になるのではないか。従ってそういうのは今から手を打つとかなんとかということはできないのですか。
  88. 讃岐喜八

    政府委員讃岐喜八君) 鉱業権者が不明になりましたり、あるいは無資力になりましたりで、鉱害賠償ができなくなる。それで非常に復旧に困るということでありますが、これは一般鉱害につきましては、ただいま法律に規定がございまして、鉱業権者が不明または無資力の場合は、国または地方公共団体が鉱業権者の負担すべきものを負担しまして復旧する、こういうことになっております。ただ、問題の点は、ボタ山のくずれる場合ではないかと存じますが、これにつきましては衆議院でも相当議論になりまして、将来ボタ山をどうするのかと、こういうことを言われております。そこで政務次官からもお答えした次第でございますが、これは鉱業権者がいなくなりまして、そのボタ山の管理をどうするかという問題は、非常に関係省が広くなって参るわけであります。河川の面から建設省が関係いたしますし、農地の面では農林省が関係する。それから現在の河川法の規定から申しますと、府県の知事が条例をもってこれを監督する、こういうことになっております。が、しかし現実の問題としましては、だれも何も手をつけられない。ただ、府県知事が条例でその行為を禁止するというだけの点しかないわけでございます。これではいかぬじゃないかということでございます。これはわれわれもなるほどさように存じますので、何とか法的規制を加えるという方向で研究をさせていただきたい。かように存じておる次第でございますから、鉱業法等との関係も非常に難解の問題出て参るわけであります。鉱業法とボタ山の関係がいつどこで切れるのか、あるいは初めからそのボタ山というものは鉱業法のらち内なのからち外なのか、非常にむずかしい問題がございますので、こういう法律上の問題もよく研究し、なおその対策につきましては、関係各省と十分連絡をいたしまして、何とかいい方法を考えたい、かように考えておる次第でございます。
  89. 阿部竹松

    阿部竹松君 私は法的制裁云々という前に、とにかく国の税金を持ち出して、その穴埋めをやったり、またその穴をあけられた市町村は、もちろん鉱産税を若干もらえるからいいといえばそれまでですが、とにかく市町村においても金を出して復旧作業をやるわけですよ。ですからそういう起きるということは、大体地質を調べたり、何メーター地底を掘っておるということを見れば、もう沈下することはおのずと掘らずともわかるわけですよ。ですからそういうところを掘らせないようにしたら、一番いいだろうということを言いたいわけなんですが、これはどうですか。
  90. 讃岐喜八

    政府委員讃岐喜八君) この問題も非常にむずかしい問題でございまして、鉱業権という法律上の権利に基いて鉱物を掘採させるという権利法としての鉱業法の体系があるわけでございます。そうして鉱業権を得たものは特別の場合を除きまして、必ずその掘る義務がある、着手の義務と申しております。そういうものがございます。着手の義務あるものを掘るなということは、これは法の体系から非常にむずかしい問題が起って参ります。この場合におきましても、特別の場合におきましては、鉱業権の停止等の処分のあれもございますが、原則としましては、鉱業権を与えたら、それは掘れと、掘る義務があるのだと、こういうことになっておるわけでございます。その途中でチェックして、お前は資格がないから掘ることは相ならぬということは、なかなか法律上はむずかしい問題でございまして、この点につきましても、昨年でしたか衆議院で相当議論がございましたが、将来の問題として十分研究さしていただきたいと、かように申し上げているような次第でございます。
  91. 阿部竹松

    阿部竹松君 最後に一つ、これは質問でなくして要請になるかわかりませんけれども、とにかく昭和七年の上海事変だとか、それから日支事変から大東亜戦争、それから終戦後の復興、朝鮮事変、こういう幾多の事変、戦争を通じて、石炭の一滴は血の一滴だということで、石炭経営者の尻をたたいて、石炭経営者はまた、炭鉱従業員の尻をたたいて、とにかく徹底的に石炭を掘ってしまって、そうしてこういう問題が起きて今日に至ったわけですよ。私古いことは追及しようとは思いませんけれども、しかし、このあとの復旧には、少くとも炭鉱労働者とか炭鉱経営者とか、当該市町村のみの負担にあまり多くかけないで、政府がもっとどんと金を出して復旧するような方法がないかどうかということを、一つ次官もお出でになっておるから、お伺いしておきたいと思うのですがね。
  92. 長谷川四郎

    政府委員長谷川四郎君) どうも御期待に沿うような御答弁が申し上げられないかもしれませんが、なるべく地方においては負担を軽くするように、今政令においてやる考え方を持って進んでおります。他の問題につきましては、これは即答できない問題なので、十分その点は研究をさせていただきたい、こういうふうに申し上げる。まことに御不満だと思うが、それより申し上げられません。
  93. 阿部竹松

    阿部竹松君 衆議院の商工委員会四つの付帯決議がついて本会議にかかったですね。政府はこの四つの付帯決議、実行できますか。
  94. 長谷川四郎

    政府委員長谷川四郎君) 即時それを実行するという意味では、すぐ実行するというお返事を申し上げたのではないのでございますが、非常にそれらは政府として、また政治を行うわれわれとして、当然これらは考えなければならない大きな問題であるからというので、各省との連絡をとりまして、もうすでに連絡会議をそろそろ始めているわけでございますが、まだ結論は出ておりませんので、局長からも申し上げましたように、地方に権限というものが、たとえば河川の問題等がゆだねられているという問題、また建設省の問題があり、通産省の権限の問題があり、いろいろの複雑なものがあるので、これを各省が一つのものに関して一点にそれをしぼって、そうして各省から一つの案を作り上げていこうではないか、こういうことでせっかくただいま検討中でございます。
  95. 阿具根登

    ○阿具根登君 臨鉱についてお尋ねいたしますが、これは問題になっておるのは、測量と家屋復旧だと思いますが、測量におきましては一千万円支出された。また、家屋復旧に至っては従来なかったものが七千万円予算を見ておりますが、この点につきましては、私ども非常に感謝いたしておりますが七千万円で一千戸の家屋復旧すると、こういうことになっておるようでございます。そういたしますと、一戸当り七万円、この場合に、家屋そのものを復旧するのでなくて、土地の復旧の場合に家屋が損傷したものを復旧する、こういうような言い現わし方がしてあると思うのですが、この点御説明願いたいと思います。
  96. 讃岐喜八

    政府委員讃岐喜八君) ただいまお話しの復旧の予算ですね、これはお手元に差し上げた資料に出ておりますが、国が七千万円を出しまして、それから地方公共団体が千六百四十二万出しまして、それから鉱業権者の納付金で一億五千二百四十七万五千円合計二億三千四百万円で約千戸、予算担保としては大体二十万円と考えておりますが、これで割りますと二十三万ということになるわけでございます。しかし、これは千戸と限ったことではございませんで、できれば千戸以上やりたいのです。大体予算としてさよう盛りましたという点、御了承願いたいと思います。それから家屋復旧の場合に、地盤等の復旧費だけを補助の対象にいたしまして、その他の部分については鉱業権者の負担ということにいたしておりますが、これは今日まで特別鉱害関係家屋復旧して参りました実績から申しまして、家屋復旧には必ず地盤の復旧をやらなければできない。それでその費用が、大体家屋復旧全体の経費の七〇%以上を占めるということに着目し、こういう制度を新しく設けるということになった次第でございます。家屋復旧費のうちの大部分は地盤等復旧費でまかなえる、かように考えておる次第でございます。百パーセントそれじゃ補助の対象にしたらいいじゃないかという御意見もあるかと存じますが、これは御承知のように、今日までこの臨鉱法で家屋を取り上げていくことができなかった事情等そこにあるわけでございまして、いろいろむずかしい内部事情もあるのでございまして、ともかくこの復旧の大部分が地盤等復旧費でまかなえるであろうということを重点に置きましてこういうことでやって参りたいというふうに考えておるわけであります。それで七〇%の半分を国と地方公共団体持ちますので、全体の復旧費の三五%程度が補助されると、こういうことになります。上水道の場合は二五%でございますが、それから下水道の場合は三分の一という現在補助率になっております。そういうものと比べましてそう著しい差はない、大体均衡のとれた補助率ではないか、かように考えておる次第でございます。
  97. 阿具根登

    ○阿具根登君 次官がお見えになっておりますので、次官に一つお尋ねしたいと思うのですが、特鉱法が来年の四月一日で廃止になる、今度は延長にならないようでございます。あとは臨鉱法でみるということをはっきり言っておられるから、おそらく三度延長になることはないと思います。そういたしますと、今まで業者から取り立てておった年々六十億から七十億くらいの金ですね、こういうのは取り立てないようになるわけなんですが、炭鉱の実態から考えてみて、こういうものをプール式に取り立てる、そうして鉱害を完全に復旧していく、こういうお考えがあるかどうか。大臣にはちょっとお聞きしましたけれども、そのあと質問が続かずに大臣が退席されましたので、局長とお話し合って一つ御答弁願いたいと思うのです。
  98. 長谷川四郎

    政府委員長谷川四郎君) 御指摘のプールでやることは、半面非常にいい面があるということも明らかなことでございますが、現在ではプールでいくというようには考えておらないわけでございます。
  99. 阿具根登

    ○阿具根登君 現在はこういう法案が出ておるし、おそらくそうお答えになると思うのですけれども、しかし、今まで加害鉱は三十円その他十五円以下と、こういうようなやつが取り立てられておったわけなんです。そうして特別鉱害にこれをふり向けられておったわけなんです。今度は特別鉱害がなくなりましても、まだ数百町歩の跡始末もあるわけなんです。これが全部臨鉱法でやっていくと、こういうことになる。局長にお尋ねすればおそらくそれは予算を増加して、そうして特鉱分も加えたような復旧をやるのだと言われるに違いないと思うのです。しかし、そういう面だけでなくて国家の資源を開発していく、これは連帯責任というか、公共の責任というそういう建前から考えるならば、そういう今まで積立てて復旧に持っていったそういうやつを、今ここで切り捨てるべきじゃなくて、これは金額は別問題としてそういう性格の金を積立てるということによって、鉱害復旧をやるとか、あるいは予防を未然にやるとかそういうことにしなければ、鉱害が先に立って復旧がこれが追いつかずに、そしてその何割かをぼちぼち追いついていくような結果になってくる。そうすれば何の責任もない被害者がいつも苦しんでおる。いわゆる不安定だからこれは何年間修繕はできません、そういう問題がいつも起っておるわけなんです。ですからそういう不安をなくすためにも、これは炭鉱業者の全部の責任として、その割当額等はそれはいろいろ研究すべき点もあると思うのですが、そういう考え方はどうお思いになるかこういうことなんです。
  100. 讃岐喜八

    政府委員讃岐喜八君) 非常に技術的な問題を含みますので、私から申し上げたいと思いますが、御承知のように特別鉱害はこれまでトン当り幾らというプール資金で復旧して参りまして、非常に効果が上った、これは私どもの自画自賛かもしれませんが、効果が上ったと存じております。こういう方式が非常に鉱害復旧をする場合に効果が上るということは認識いたしておりますが、これは戦時中の特別な国の事情に基きまして、鉱業権者の意思にかかわらず、強行出炭をやった結果こういうことになりましたので、プール資金でお互いに助け合うということが実際面に即しておる、そういう事情があったと考えられるわけです。ところが、臨鉱法の関係におきましては、おのおの施業案によりまして保安を監督しながら、その山の事情に即して掘ってきたわけであります。それでそのために地表に現れる鉱害も、山によりましていろいろ違います。それをプール資金というような特別の形でやっていくことにつきましては、相当無理が生ずるのじゃないか、実態から申して。そういう問題があるので、これはよほど慎重に考えなければならぬ問題だというふうに考えておるわけです。また、一方には特鉱方式というものが復旧に非常に大きな力があって、非常に効果を上げたということも考え合わせまして、将来慎重に考えさしていただきたいと、かように考えておるような次第でございます。
  101. 阿具根登

    ○阿具根登君 日本で一番石炭を掘ったときは、これは大東亜戦争中の五千六百万トン、昭和十六年であったと思います。そうすると今の五千三百万トンとわずか三百万トンの開きしかない。その五千六百万トンが一番うんとですが、これが現在考えられておる、五千三百万トン出したときが大東亜戦争のこの特鉱に当るわけです。そうしますと午前中から御質問申し上げておりますように、まだ日本炭鉱は五千三百万トン出すだけの完全なる設備ができておらない。しかし需要は五千三百万トンを上回るということになれば、ちょうど戦時中のような鉱害が出てくる、いわゆる鉱害が非常に多くなってくる、こういうことは考えられるはずだと思うのです。だからそういう需要に追われておる、設備が完全にできなくても、それだけの石炭は出さなければいけない情勢になっておる。そうするならばどっかに無理が来るはずである。だからこれはこの際この特鉱精神をもって、そうしてプール式のことを考えておく方がいいのではないか、こういうことを言っておるわけです。そうしないと、これは臨時鉱害復旧でやっても、おそらくまたそういう問題ができてくるだろう、かように考えるわけです。この前は戦争があったから、戦争だ戦争だということで、特別な立法もできましたけれども、そうじゃない場合は、これは臨鉱にしわ寄せが寄ってくるのです。そうすれば炭鉱によっては非常は苦しい炭鉱と、非常に楽な炭鉱ができてくるわけです。働く労働者によっても同じ炭を掘っておるのに片一方では薄い賃金、片一方では比較的いい賃金、こういう状態ができてくると思うのです。そうすれば苦しい炭鉱は勢い鉱害賠償というものも非常にこれは放ったらかしになる。だから罪もない何にも知らない人が、自分の足元を掘られて自分の家が傾いていくというような場合にも、そういうような炭鉱業者のプール式の責任制度を確立しておくのがいいのではないか、こういうことを言っておるわけなんです。
  102. 讃岐喜八

    政府委員讃岐喜八君) お言葉を返すようでございますが、ただいまわれわれの考えております合理化実施計画の中での出炭の目標でございますが、これはあくまでも合理化基調をくずすことなくして、五千二百万トンなり、あるいは五千三百万トンの出炭を期待するように持って参りたい。従いまして保安上の監督の問題も、従来と同様以上の厳重な監督をもちまして出炭をやっていこう、こういうことでございます。従いまして五千三百万トンかりに出ましたといたしましても、戦時中のような、あのような強行出炭と申しますか、乱掘と申しますか、無理ないことはやらないで済むはずでございます。その範囲においてわれわれもこの出炭計画考え、あるいは業界考えに賛成したいというふうに考えておりますので、戦時中のような、何といいますか、弊害は出てこない、かように考えておるような次第でございまして、そうでありますから、合理の線に沿って各山が準備した合理化設備をもちまして——これはやむを得ず出てくるのでございますが、出てくる鉱害につきましては、各山ごとに実態に即して考えていかなければならない、こういう結論が出て参るのでございまして、そこで先ほども申し上げました通り、プールでお互いにならして考えていこうというような考え方は、なかなかこの際とりにくい問題ではないかと、かように考えておる次第でございます。
  103. 阿具根登

    ○阿具根登君 これは意見の相違みたいになって、押し問答になりますから、これでもう私はやめたいと思うのですが、もう時間もございませんので、最後に一言申し上げておきたいと思いますのは、測量にいたしましても、一千万円の予算が出ておるようでございますが、当初私が質問の中に申し上げましたように、一千万の経費を投じて、中央で三十五名、地方で七十名の人がフルに動いて、この測量をやったにいたしましても、しょせん大会社に追いつくものではありません。それでまあ予算も次には十分ふやしていただいて、そうして被害者が安心して測量をしていただく、あるいは決定をしていただくということのできるように、一つ万全の御努力をお願いしたいと思います。  以上で私の質問を終ります。
  104. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) ちょっと委員長から一つ伺っておきたいと思うのですけれども、この国会当初に松尾房長が、鉱害関係法律は今日程に上っております二つの法律案と、根本である鉱業法の改正が必要である、こういうことを述べられたのです。それで基本法であります鉱業法の中の鉱害賠償の問題についても、やはり何か検討中であると思いますし、また、改正法律案が出てくるであろうということを予期しているわけなのです。この方の作業の進捗状況はどんなことになっておりますか。
  105. 讃岐喜八

    政府委員讃岐喜八君) 官房長から申し上げましたのは、おそらく衆議院の決議に基きましてこの二法案をわれわれは準備して国会にお諮りする、こういうことでございますが、衆議院で決議されました事項の中に、鉱害賠償資金の確保に万全の措置をするようにという一項目がございます。これは鉱害賠償を確保するための引当金なり、あるいは未払金制度と関連いたしまして、供託金の制度があるわけでございます。これは鉱業法の中に規定されておりまして、供託金の制度も同時に考えるべきだというのが、衆議院の決議にあったと思いますが、その供託金制度の改正につきましては、目下準備中でございまして、準備が整い次第国会に提出いたしますということで、御説明している次第でございます。鉱業法の改正につきましては、供託金制度のほかに、なおすでに、御承知のことと思いますが、ガス問題等もございまして、目下慎重に研究を進めておる次第でございます。さような案件が解決いたしますれば、一日も早く国会に提出して御審議を得たい、かように考えておる次第でございます。
  106. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) なおもう一つ、官房長説明されたときには、まだ衆議院の決議というのはなかったと思うのです。それはいずれにいたしましても、そうしますと供託金の引き上げあるいは和解仲介制度というものの強化ということは、現在考えられている。それは遠からず鉱業法の改正という形で国会に提案されるというふうに了解してよろしいのですか。
  107. 讃岐喜八

    政府委員讃岐喜八君) 供託金制度につきましては、ただいま委員長のお話しのように、私ども進めております。和解の仲介制度につきましては、これは別問題でございまして、和解の仲介制度にかわる制度を考えてはどうかというのも、これは衆議院の商工委員会の決議にあるのでございます。これにつきましては、私どもは今日までの和解の仲介制度の運用の実績から見まして、足らざるところを補いまして、つまり拡充強化することによってこの問題を解決いたしたい、かように考えまして、予算もわずかでございますが、本年度から新たに計上いたしまして、和解仲介制度の活用に遺憾のないように措置しておる次第でございます。
  108. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) ほかに御質疑ございませんか。    〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  109. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  110. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 速記を始めて。  ほかに発言もなければ、質疑は尽きたものと認め、直ちに討論採決に入ることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  111. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 御異議ないと認めます。それではこれより特別鉱害復旧臨時措置法の一部を改正する法律案臨時石炭鉱害復旧法の一部を改正する法律案の両案を一括して討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。なお、付帯決議の御意見は討論中にお述べを願います。
  112. 阿具根登

    ○阿具根登君 私は社会党を代表いたしまして、両案に対して賛成の討論を行うものでございますが、まず特別鉱害復旧臨時措置法の一部を改正する法律案につきましては、昭和三十三年四月一日までに復旧工事が未完了のものについては、引き続きこれが復旧に万全の措置を講ぜられることを特に強く要望いたしまして賛成するものでございます。  なお、臨時石炭鉱害復旧法の一部を改正する法律案に関しましては、付帯決議を付して賛成をするものでございます。  まず付帯決議を読み上げてみたいと思います。    臨時石炭鉱害復旧法の一部を改    正する法律案に対する附帯決議    案   政府は、本改正法の施行にあた  り、次の諸点について特段の考慮を  払い、必要な措置を講ずべきであ  る。  一、鉱害の認否、復旧に関する紛争   の円滑なる処理を図るとともに、   鉱害測量の公平な実施とこれに必   要な予算を確保すること。  二、家屋復旧を促進するための矛   算の増額を図ること。  三、汚濁水の放流、ぼた山の崩壊、   濫掘、盗掘等について万全の予防   措置を講ずるは勿論、これらに   よって起る鉱害被害者保護につ   いては、遺憾なき措置を講ずるこ   と。   なお、この際政府は、鉱害発生要  因の除去に一層の努力をするととも  に、石炭政策基本的態度を明確に  し、もって石炭鉱業の発展と安定を  図るべきである。  以上の付帯決議を付して賛成の討論といたす次第でございますが、何とぞ御賛成下さいますようにお願い申し上げます。
  113. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 他に御発言もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  114. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 御異議ないものと認めます。  それではこれより採決に入ります。  まず、特別鉱害復旧臨時措置法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  115. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、臨時石炭鉱害復旧法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  116. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、討論中に述べられました阿具根君提出の臨時石炭鉱害復旧法の一部を改正する法律案に対する付帯決議案を議題といたします。本付帯決議案を本委員会の決議とすることに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  117. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 全会一致と認めます。よって、阿具根君提出の付帯決議案は全会一致をもって、本委員会の決議とすることに決定いたしました。  なお、ただいまの決議につきまして、この際通産当局の所信を伺いたいと存じます。
  118. 長谷川四郎

    政府委員長谷川四郎君) ただいまの鉱害関係の二法案につきまして、御討論並びに臨鉱法の付帯決議の御趣旨につきましては、通産省といたしましても、その線に沿いまして法律を運用して参りたいと存じますし、また、石炭政策の確立につきましても、今後各関係機関と十分に研究いたしまして、御期待に沿いたいと存じます。
  119. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) なおただいま決定いたしました両案につきまして、本院規則第百四条による本会議における口頭報告の内容、第七十二条により議長に提出する報告書の作成その他自後の手続につきましては、慣例によりこれを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  120. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 御異議ないと認めます。  それから報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますから、両案を可とせられた方は、順次御署名を願います。    多数意見者署名     阿具根 登  近藤 信一     阿部 竹松  小幡 治和     大竹平八郎  藤田  進     白井  勇  大谷 贇雄     加藤 正人  高橋  衛     豊田 雅孝  小西 英雄     西川彌平治  青柳 秀夫   —————————————
  121. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 速記をとめて。    〔速記中止
  122. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 速記を始めて。  それでは次に、輸出検査法案を議題といたします。なお御質疑のおありの方は御発言を願います。
  123. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 輸出検査法についてちょっと伺いますが、この間ちょうだいしました資料なんですけれども、通商局昭和三十二年二月二十七日というこの通貨地域別、主要商品別輸出実績、同じく輸入実績という表についてですが、これを見ますと、一番上の方はドル、スターリングというふうに書いてあって、昭和三十一年度は二十四億余ドルというふうになっております。その次に今度は品目別の食料及び飲料というのからずっと書いてあります。合計が同じく二十四億幾ドル、こうなっておるのですが、この表は非常にわかりにくい。通商局の方では、これをよくごらんになって配付になったかどうかという点を私はお伺いしたいのですが、これを見ますと、食料及び飲料というところが、数字でいうと、一億八千七百何万ドル、それから織物及び繊維というところが八億二千二百何万ドルというふうになっておりますが、その間に、食料の方だと、水産品だとか、びん詰、カン詰というようなことが書いてあるのですが、これはその内訳の数字なんですか、それともおもなものを拾ってお書きになったのか、ちょっと資料見ていただきたいのです。さらに払いま一言簡単につけ加えて申し上げますけれども、これは私の見るところでは、項目が内訳とぴったり金額が合っておりませんので、この内訳の方はおもなものをお書きになったのだと思うのです。そうだと、この統計数字というものがそういう行き方だと、ほとんど意味がなくなってくる。一例を申し上げますと、この中くらいのところに、化学製品というのがありまして、これが、輸出の方の三十一年度のところで見ると九千百万ドル余なのです。それの中のこまかい数字の方は、化学肥料が二千九百万ドル、ほかのものは書いてない。ですから、化学製品は代表して九千百万ドルになっているけれども、その内訳というのは、化学肥料の二千九百万ドル、それから輸入の方で見ますと、こっちの、昭和三十一年度のところで、下の方に、「金属鉱物及び金属」というのがあって、それが三億九千七百万ドル、その内訳は、ただ一つだけ鉄鉱石があがって、それが六千八百万ドル、これしか書いてない。それが並列的に一本の欄に書いてありますと、これは何が何だかちっともわからない。総計の二十四億ドルというのはよくわかりますよ。だが、あとの内訳の、輸出でも輸入でも、おもなものを書かれたんならこの(註)の所に、おもなものを書いたというような付記か何かありませんと、非常にこれは迷惑するのです。その点をちょっと伺っておきたいのです。
  124. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) ただいまの統計数字についてのお尋ねでございますが、これは輸出品並びに輸入品につきまして、重要品目だけを実は書いたものでございます。特に、「食料及び飲料」、たとえば、三十一年度におきまして一億八千七百万ドル、これだけではあまりにばくとしておりまするので、その中の大きい品目として、水産品とカン詰、びん詰、こう書き分けたのであります。従いまして、一字右側に寄せまして、大分類のうちの重要な品目だという意味で、並べ方も一字下に落しておったのでありますが、普通こういうふうな書き方をいたしておりまするので、まあおわかり願えるかと思って出したのでございますが、たとえば、「木材及び木製品」ということになりますと、内訳を作りますと、非常にたくさんの品目が小さい金額のもので分れまするので、こういうものは、木材及び木製品として一億一千六百万ドルというふうなことに表現をしておりますし、従いまして、大分類を原則にして書いたのでございますが、大分類だけではあまりにも広範であるというものは若干大きな品目を特掲をした、こういう趣旨でございます。
  125. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 今お答えがございましたけれども、それでは、輸入の方の「金属鉱物及び金属」というのをごらん願いたい。三億九千七百幾万ドルというもののおもなるものが鉄鉱石と書いて六千八百万ドルだけ書いてあるのですね。ですから、この問題は、あなたが逆に、この資料をどこかからいただいた、そのときどういう感じを抱かれるかという点でお考え願った方がいいと思います。われわれ、こういう資料をいただいても、一通りの常識で判断しますけれども数字というものは、きっちり、款項目なら、款なら款の数字がこれだけ、目ならこれだけというふうにきっちりいっておりませんと、あやふやになってしまって、それで、私は大事な資料でございますから伺ったんです。いま一度お答え願いたい。
  126. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) この資料は、実は先般貿易概況を説明をしろというお話がございまして、その説明を口頭でいたしますると、あまりにもばくとするおそれもありましたので、若干この数字につきまして御説明いたした方がはっきりお考えいただきやすかろうと思いまして、比較的大きな分類の数字をお出ししたわけでございますが、別途通商局で出しておりまする毎月の調査月報、これは非常に詳細に金額品目もこまかく出しております。これをあわせてお配りしたというふうに記憶をいたしておるのでございます。こまかい数字はそちらの方でごらんを願ったらいいかと思います。
  127. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 この表のことはもうこれ以上申し上げません。ただ、せっかくいただくなら、なるべくわかりのいいものを作っていただいた方が、数字のことでございますからいいじゃないかと思います。  その次に、できるだけ簡単に御質問申し上げますけれども、クレームのできました表が、品目別のがあるのですけれども、仕向地別のはどんなふうになっておるのか、これは口頭で大要でいいですから、お答えを願いたい。
  128. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) クレームの数字でございますが、実は、ただいまのところは、品目別にしか整理をいたしておらないのであります。地域別の数字につきましては、後刻作りましてお配りを申し上げたいと思います。
  129. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 むつかしいことを伺うのじゃなくて、大体日本輸出品がアメリカなり南方なり、ヨーロッパなり行って、どっちの方でクレームがたくさんついているかというような常識的な意味でいいですから、お答え願いたい。件数というと、こちらのだと七百三十四件件数が出ている。品目別では、金額で百六十三万ドルですか、約六億円、これだけクレーム問題が起っていますから、どの方面でこういう問題が起っているか、輸出先の問題を伺いたい。
  130. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) ただいまも申し上げましたように、相手国別には別途調整をいたしましてお配り申し上げたいと思いますが、概観をして申しますと、アメリカ初め、ヨーロッパ諸国、いわゆる先進国向けが比較的多くこの表に現われております。
  131. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 今お答えのありましたのは、先進国というと、やはりアメリカとか、ヨーロッパとかいう文化の程度の高い所向けのが多いという意味でございますか。
  132. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) さようでございます。
  133. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 私は、その点はこれから東南アジアの方面等に非常に貿易の重点が置かれているというようなことも伺っているものですから、新しいところへ出て行く品物は、特に検査等も十分にやって、問題が起らぬようにする方がいいじゃないか。今まで取引先のある所は、行ってもまあ相当信用がありますから、これは間違いだったという理解があると思いますけれども、初めて輸出するような国には、もし間違いがありますと、初めから先入観念が悪くなるというふうな意味で、仕向け地別の点をお伺いしたのですけれども、今のお答えでわかりました。  それではいま一つ続けて伺いたいのですけれども、そういうもののクレームが起るようなことは、どういう機関を通じて政府の方へわかってくるのでございますか。その経路ですね、たとえば取引の商社間からすぐに来るのか、あるいは外務省の出先機関のようなところを通じてくるのか、どういうところからわかってくるか、それを伺いたい。
  134. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) お手元にお配りしておりまするのは、地元の商社が相手方からクレームを受けまして、一部それを金額の支払い等のために、いわゆるクレーム代金の支払いということで為替の許可の申請をしてきたものを集計した表でございます。それからその他在外公館が受けまして、それの処理を依頼してくるのもありますし、あるいはその他業者同士の間において適当に解決をされていくものもあろうかと思いますが、そこの表はそのクレームが一応業者間で話し合いがついて金を一部返そうというようなことで為替許可の申請となって現われた件数がそこに上っておるわけであります。従いまして率直に申しまして、クレームの全部とは言い得ないかと思うのであります。
  135. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 いま一点だけお伺いいたします。輸出輸入の状況を見ますと、二十四億ドルなり、さらに非常に輸出輸入もふえてきておりますが、今の為替関係は、日本の銀行を通じてやっておるのか、外国の銀行を通じて為替が組まれているか、その何か区別のお調べはございませんでしょうか。
  136. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) 実は日本の為替銀行及び外国の銀行での取扱い額、それぞれ通産省の方で調べたことはありません。大蔵省、あるいは日本銀行あたりで調べておるかとは思いますが、実は率直に申しまして私の方はそういう調べをあまりしたことはございません。もし御入用でしたら大蔵省なり、日銀の方に打ち合せて提出いたしたいと思います。
  137. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 今の点は、戦前は横浜正金銀行なり、その他の為替銀行が非常に活躍されましてこういう問題を扱っておられたと思うのですが、最近の状況を参考にちょうだいしたいと思いますから、後日適当のところからお調べを願って、配付していただきたいと思います。
  138. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) この際、八木農林政務次官より発言を求められておりますので、これを許します。
  139. 八木一郎

    政府委員(八木一郎君) 輸出検査法案に関しまして、参議院の農林水産委員会から当商工委員会に申し入れのございました事項に対する農林省の見解について、一言いたしたいと思うのであります。  まず、検査機構の整備、充実の問題でありますが、国の検査機関と同時に、民間の指定機関の整備充実をはかって、改正新法の円滑な実施をはかるように十分遺漏のない措置をして参りたい、こう考えます。  それから次に、大部分の商品が強制検査に移行する結果、検査量の引き上げという受検手続の繁雑化を来たしまして、生産者にしわ寄せされるのではないかとの懸念に対しまして、輸出検査の実効確保をはかる範囲内において、でき得る限り生産者に迷惑を加重しないように、十分配慮して参りたいと思っており、新法の趣旨に沿って善処したいと考えておる次第でございます。
  140. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 他に御発言もなければ、質疑は尽きたものと認め、直ちに討論、採決に入ることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  141. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 御異議なきものと認めます。  それではこれより輸出検査法案に対する討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。なお、白井勇君、阿具根登君、豊田雅孝君及び大竹平八郎君の連名をもちまして各派共同の提案の形で委員長のもとに修正案が提出されております。本修正意見あるいは付帯決議の御意見につきましては、討論の中でお述べを願いたいと存じます。
  142. 白井勇

    白井勇君 従来輸出品取締法によりまして、自家検査により表示されておりましたものを、北京の見本市の事件から、急に今回の輸出検査法となったわけでありますが、その間大事な輸出貿易に対する従来の政府のやり方がまことに遺憾であったと私は思うのでありますが、しかしながらこの法案が一応制定されましたことは、今後の日本の大事な輸出貿易上非常な喜びと思うのであります。ただ、その内容をいろいろ検討をいたしてみますというと、この委員会の論議を通じてみましても、最小限度におきましてもいろいろ修正を要する点がありますので、その点は共同提案の修正通り私は修正をいたしまして、本案に賛成をいたしたいと、こう考える次第でございます。  これが今後九カ月間の準備期間を置きまして、実施をされるわけでありますが、この際私は本案の適正な運用上、特に付帯決議をつけて賛成をいたしたいと、こう考える次第であります。  要はこれからの運用の面が非常に残されておるわけでありまして、ことにまず第一の問題は、機関の問題であります。これが民間の機関が今後漸次指定をされるわけでありますが、その経過に伴いましても、従来その指定貨物の取引業者関係の団体から発足をいたしたものでありまして、それらとの関連がやはり相当深いわけであります。しかも、輸出貿易というような品目でありますので、世界の貿易市場におけるいろいろな不沈の場合、そういう場合にも公正な、的確な検査を実施し得る機関が、果してできるものであるかというような懸念が非常に強いわけであります。さらにまた、問題となりますることは、実際、検査をやりまする者は、機関そのものの上層部じゃないわけでありまして、実際検査をやりまする者は、検査員そのものが権限を持ちまして、合格か不合格かをその場におきまして決定をするというような、非常に重要な使命を持っておるわけでありまするが、その者の身分等におきましても、果して安心してその業務を公正にやっていけるかどうかというような懸念も非常にあるのであります。  さらにまた、特に遺憾と思いますることは、これだけ重要な法案を出したにかかわりませず、三十二年度におきまする政府の予算的措置が非常に貧弱であるという点であります。こういうものは、なかなか収支を償ってやるということは非常に困難なものでありまして、ことに、新しい輸出貿易品、あるいはまた特に農林水産品等におきましては、手数のみかかりまして、一面指導を兼ねました検査をやっていくというような面もありまするし、手数がかかり、経費がかかりまして仕事をやっていかなければならぬ、こういうような非常にまあ金のかかる仕事であります。そういうものなのにかかわりませず、何らの予算的措置がありません。さらにまた、こういうものはもちろん国で相当の援助をやってやらなければならない。人件費の補助でありまするか、あるいはその他検査器具等いろいろの経費等があると思います。そういうものに対する措置が一つもない。また、特に技術を要しまする検査員の技術向上の措置も考えられていないと、こういうようなことでありまして、非常にまあ政府といたしましてのこの予算裏づけにつきましての今回足りない点を、今後特に御注意をお願い申し上げたいとこう思うのであります。  そういう意味合いにおきましても、私はここに付帯決議をつけたいとこう思うのでありまするが、一応それを読んでみまするというと、  以上であります。  なおつけ加えて申し上げておきまするが、修正案につきましては、皆様方の御意向をくみまして、まとまりましたものを別途ガリ版刷りにいたしましてお手元に差し上げてありますので、それをそのまま速記録に載せることについての御了承を願いたいと思います。
  143. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) ただいま修正案の朗読を省略して提案されましたものを、そのまま速記録に載せることの御希望の御意見がありました。これをそうすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  144. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) それではさよういたします。
  145. 近藤信一

    ○近藤信一君 私は日本社会党を代表しまして、ただいま提案になっておりまする輸出検査法案について、白井委員外三名提出の修正案並びに修正部分を除く原案に賛成の意見を申し上げます。  従来わが国の輸出貿易は、自家表示を建前としてやられておりました関係上、精密なる検査が欠けていたように思われます。これは質疑の過程から、過去一カ年のクレームが約六〇%近いものがあったということでありますが、このような状態では、海外におけるわが国の産業発展は、とうてい望み得ないものと思われます。輸出貿易の振興をはかるには、責任ある優秀なる物品を輸出して信用を得るということが第一条件でなければなりません。従って今後の輸出貿易に対しましては、政府の責任ある検査のもとに、優秀なる物品を輸出しようとするのが、本法律案であると思うのであります。しかし、従来自家表示を建前として輸出貿易に貢献して参りました中小企業や農水産業、これらが今後政府機関または政府の指定した民間検査機関、こういう機関によって検査制度が採用されることになりますと、それがために中小企業や農水産業、これらが非常に圧迫を受けるのではないかということが懸念されるのでございます。しかし、輸出貿易の促進ということは、これは政府もこれを建前としておりますので、これらの中小企業や農水産業、これらが圧迫を受けないように、さらにこれらの企業の受検手続がなるべく簡素化して、手数料の点もできるだけ軽減して、そうして輸出貿易の振興に留意されること、これを私は政府に希望いたしまして、本法律案に賛成するものであります。
  146. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 緑風会を代表いたしまして賛成討論をいたすものであります。  最近中国日本見本市における不良品販売事件その他の輸出情勢等を勘案いたしまして、今回初めて検査制度らしい検査制度が確立せられましたことにつきまして、衷心より賛意を表するものでございます。  しかしながら、検査の適正を期することはもちろんでありまするけれども、検査後における輸出取締りにつきましても、その適正を期する必要がきわめて重要であると思うので、この点につきましては政府当局に質問をいたしますると、十分に輸出取締りをでき得る建前になっておるということでありまするけれども、今後輸出取締りにつきましては、十分にその実をあげられるよう、この点につきまして特に希望を申し上げまして、賛成をするものであります。
  147. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 無所属クラブを代表いたしまして、私も本案に賛成するものであります。  しかし、検査のやり方が非常に複雑なところもあり、ことに私どもの憂えることは「材料又は設計若しくは製造中の品質が政府機関又は指定検査機関の行う検査に合格したものでなければ、指定貨物の検査を受けることができない」こういう非常に重要な個条があるのでありますが、これにつきましては、下手をやりますというと、貿易というものはおのずから商機をつかまなければならないのでありまして、商機を逸するということも懸念せられることが多いのであります。どうぞそういう意味において非常に検査の厳格なのはけっこうでありまするけれども、そのために貿易の商機を逸しないように格段の政府当局としては御留意を願いたいと思うのであります。  以上を申し上げまして本案に賛成するものであります。
  148. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) ほかに御発言もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  149. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 御異議ないと認めます。それではこれより輸出検査法案の採決に入ります。  まず、白井君外三名提出の修正案全部を問題に供します。本修正案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  150. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 全会一致と認めます。よって、白井君外三名提出の修正案は、可決されました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案全部を問題に供します。修正部分を除いた原案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  151. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 全会一致と認めます。よって本案は全会一致をもって、修正すべきものと議決せられました。  次に、討論中に述べられました白井君提出の付帯決議案を議題といたします。本付帯決議案を本委員会の決議とすることに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  152. 松澤兼人

    委員君(松澤兼人君) 全会一致と認めます。よって、白井君提出の付帯決議案は、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  なお、ただいまの決議につきましてこの際通産当局の所信を伺いたいと存じます。
  153. 長谷川四郎

    政府委員長谷川四郎君) ただいま輸出検査法案の御討論に際しまして、委員各位の述べられた御意見並びに付帯決議の御趣旨は十分に尊重いたし、輸出品の検査が迅速、的確に、また検査料金の負担は、なるべく低廉に実施されるよう十分注意して法を運用し、もってわが国輸出品の海外における成果が大いに上り、輸出貿易が伸張するように努力をする所存でございます。
  154. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) なお、本院規則第百四条による本会議における口頭報告の内容、第七十二条により議長に提出する報告書の作成、その他自後の手続につきましては、慣例によりこれを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  155. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  それから報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますから、本案の修正議決に賛成せられた方は、順次御署名を願います。    多数意見者署名     阿具根 登  近藤 信一     阿部 竹松  大竹平八郎     青柳 秀夫  白井  勇     大谷 贇雄  加藤 正人     高橋  衛  豊田 雅孝     小西 英雄  西川彌平治
  156. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止
  157. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 速記を始めて下さい。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五分散会    —————・—————