運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1957-03-14 第26回国会 参議院 商工委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月十四日(木曜日)    午前十時四十五分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     松澤 兼人君    理事            西川彌平治君            近藤 信一君    委員            青柳 秀夫君            大谷 贇雄君            古池 信三君            白井  勇君            高橋  衛君            小幡 治和君            阿部 竹松君            島   清君            相馬 助治君            豊田 雅孝君            大竹平八郎君   国務大臣    通商産業大臣  水田三喜男君   政府委員    農林政務次官  八木 一郎君    通商産業政務次    官       長谷川四郎君    通商産業大臣官    房長      松尾 金藏君    通商産業省通商    局長      松尾泰一郎君   事務局側    常任委員会専門    員       小田橋貞寿君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○輸出検査法案内閣提出) ○輸出保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出)   —————————————
  2. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) これより会議を開きます。  議事に入る前に、一昨日当委員会で決定いたしました委員派遣の件は、昨日議長の承認を得ましたので、予定通り十五、十六の両日に実施することになりますから、御了承願いたいと思います。   —————————————
  3. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 本日は、公報記載通り法案審議を行います。
  4. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 議事進行について。先々回の委員会でお願いしておきまして、同時にほとんど御賛成を得たと思うのでありますが、外務大臣出席を得まして、外務大臣が盛んにこのごろ唱えておりまする、いわゆる経済外交の問題を中心にいたしまして、われわれ委員といたしましては緊急に質疑及び外務大臣所信お尋ねしたい。こういう意味出席を要求いたしていたのであります。特に私どもが急いだ点は、新聞紙上で御承知の明十五日に財界、ことに顔ぶれを見まするというと、大体貿易商中心のようであります。これを外務大臣が呼んでおるわけなんであります。できれば私どもといたしましては、その前に御出席を願いまして質問をいたしたいと思ったのでありますが、予算総会等関係もありますので、それから、また非公式に聞くところによりますると、十五日の会合は外務大臣自身所信を披瀝するというよりも、むしろ財界人業者意見を参考にしたい、こういうような非公式的な話もありましたので、一応その点は私どもはまあ了とするのでありますが、しかし商工委員会に出ていただいて、通産大臣も同席をせられたところで質疑応答をやることが、いわゆる岸経済外交に対しましても、非常に意義があるのじゃないか、私どもはむしろそう考えるのでありますので、なるべく、その意味において、早い機会に御出席を願いたいと思い、また、その交渉状況等について、委員長お尋ねをするわけであります。
  5. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 委員長事務当局をして出席を要求しておりましたことは、この前も申し上げた通りでありまして、その後、外務省の国会担当関係の者からの話によりますと、参議院における予算審議進行の状態を考えて、大体、本日予算委員会総括質問が夕方終る、で、四時から先ならば、からだがあくようになるかもしれないという話を聞いております。大竹委員の発言は、この委員会でも、全体のお考えとして尊重しなければならないと思っておりますので、なお、極力、まあ本日の問題になりますかどうですか、これは別といたしまして、御要望趣旨をできるだけ早い機会外務大臣としてこの委員会出席してもらい、いわゆる経済外交の問題についての構想を聞きたい。かように考えて、なお、出席方を促進する考えでおります。   —————————————
  6. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) それでは議事に入ります。  まず、輸出検査法案を議題といたしますが、本法案に関しましては、農林水産委員長から文書をもって申し入れがありました。お手元に配付してございますが、念のため専門員をして朗読いたさせます。   〔小田橋専門員朗読〕    「輸出検査法案」に関する件   この件について、本法律案成立実施の運びとなる場合においては、別添のとおり措置せられるよう御配意願いたく当委員会の決定によって申し入れ致します。    「輸出検査法案」に関する件   この法律案に関して、次のように措置する必要がある。  第一、本法施行に当っては、先ず以て検査機構整備充実を図り、輸出貨物生産並びに検査支障を来たさないように措置すること。    (説明)    輸出品の声価の維持及び向上を図り輸出貿易の健全な発達に資することは必要なことであって、之がため輸出検査制度を刷新整備すること亦必要である。    現行輸出品取締法においては、自家検査原則とし例外として強制検査を行うことになつていて、現在輸出品中、検査を必要とするものは約一八〇品目、その中自家検査を行っているもの約七〇%、強制検査を行っているもの約三〇%であり、農林水産物資については、検査指定品目三八品目、その中強制検査品目は八品目である。    然るに本法律案によるときは、強制検査原則とし、自家検査例外としようとするのであっ て、制度の仕組が根本的に改められることになっている。    かくして現行制度を改正して、強制検査原則とし、且つ事前検査等をも行うことにしようと するのであるが、これ等の検査前提として必要な国及び民間検査機関整備に関しては、来年度予算において、新たに国の機関については旅費が若干増額され、民間指定機関については、設備整備のための補助金一、〇〇〇万円が計上されているに過ぎないのであって、殆んど見るべきものがない。    かような事情において、強制検査が強行せられることになれば、一方においては、検査手数 料の引き上げ或いは受検手続繁雑化等その無理は大凡生産者に皺寄されて原価高を来し、生産意欲の減退を招くことになり、又一方においては、検査の渋滞を来して輸出の円滑を阻害することになりはしないかが憂えられる。    就中、農林水産関係物資は、大凡物資の性質並びにこれが生産事情等から、かような打撃を 蒙る危険が特に多いものと思われる。ここにおいて、政府は、以上の事情を確認して、かような事態が起らないように、あらかじめ検査機構充実受検手続簡素化及び検査手数料の軽減について退城のない措置を講ずる必要がある。  第二、本法施行に当っては、各輸出貨物毎に、夫々その主管大臣の主体性を、充分に尊重することとすること。    (説明)    第一に述べたような事情の下において、法の施行の適正を期するためには以上の措置が必要である。
  7. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) この件に関しましては、通産大臣は午後委員会出席するということになっておりますので、公式の通産当局としての所見は、そのときに開陳されると思います。  なお、この件に関しまして、農林政務次官も見えておりますし、通産政務次官も見えておりますので、質疑があれば質疑をして下さい。
  8. 白井勇

    白井勇君 農林省を代表しまして政務次官が見えておりますので、私今度の輸出検査法というのは、相当農林省関係もありますから、二、三政務次官に伺ってみたいと思うのでありますが、農林省関係のものでカン詰冷凍水産物というようなものにつきましては、三十年に民間登録機関というものを設定をされまして、それ以後同じ仕事をなお農林省でやっておられる、つまりカン詰冷凍水産物につきましては、国も検査をやりまするし、それから国の登録を受けました検査機関も同じことをやっております。こういうことは私たちちょっと考えまするというと、まことにこれはおかしな話であって、もし厳正な検査というものが国の機関でなければ行われないというものでありまするならば、これはむしろ三十年度にそういう強制検査的なものを登録機関としまして設けたということが間違っておる。また、国にかわりまする強力な検査機関としまして登録機関が適当なものであるということで指定されたものでありまするならば、むしろ国で従来やっておりましたものも、その機関に一元化すべき筋合いのものであったと私は思うのであります。この問通産省から、いろいろ従来の輸出品につきましてのクレイム状況等も聞きましたが、その場合におきましても、最もそのクレイムの多いものの一つに、カン詰があがっているという話を聞いたのでありますが、これはやはりそういう仕事に二つの機関があるということも、これはやはり大きい原因をなしておるのではないかと私は思うのでありまするが、これはすみやかに私は一元化すべきものであるというふうに考えるのでありまするが、これにつきまして農林当局農林省としましてのお考えはどういうことになっておりまするか。
  9. 八木一郎

    政府委員八木一郎君) カン詰冷凍水産物につきまして、検査機関の並立しておるという問題についてでありますが、検査統一性をはかる意味からも、御指摘のように一本化が望ましいのでございますが、従来民間登録検査機関に対する法的な監督規定もなく、不十分でございまして、この点は検討をされておるのでありますが、なお受検者の間にも、民間登録検査機関の一本検査に対して一部の不満もあり、一本化を強行するわけにはゆかなかったのでございますが、今後法律改正によりまして、指定検査機関充実改善が行われ、不満の点が解決されれば、関係者の意向を十分聞いて善処して参りたいと、こういうふうな所存でございます。
  10. 白井勇

    白井勇君 今のようなお話は、三十年度民間機関を特定するかしないかというときに、御判断をすべきことであったと私は思うのでありまして、もし国の事情としまして、やはりこれは政府が権力を持ってやった方がいいのだということになりまするならば、これは民間機関として特定する必要もない。そうじゃなしに、相当そういうものも過去において実績を持っており、今後もそういう面におきましては、十分検査機関としましてやってゆけるという見通しで、これは登録させたものだと私は思うのでありますが、そうでありまするならば、それではやはり方向というものをきめるべき筋合いのものであったと、私は思うのでありますが、今度は今までのように取締り的の取締り法じゃない、いわゆる検査法という制度改正がここに行われるわけであります。そこはもうはっきりここでどちらなりきめましてゆかなければならぬ筋合いだと思っておるのでありますが、農林省としましては、どちらに今一元化するというお考えで進めておられるのか、その点もうちょっとはっきりおっしゃって下さい。
  11. 八木一郎

    政府委員八木一郎君) 御指摘通り、一本化が望ましい方向を出してありまする以上、どちらだということになりますと、私どもといたしましては、従来やって参りました民間登録検査機関等登録機関制度強化充実によりましていくことが、好ましいことである、こういう考えで善処したいと思っております。
  12. 白井勇

    白井勇君 次に、もう一点伺ってみたいのでありますが、今度の輸出検査法におきましては、第十条で政府なり政府指定機関強制検査をしなくても、輸出品の品質の維持なり向上のために支障がないというようなふうに認められまする特定のものに限りましては、例外的に自家検査を認めていくというような一つ特例が開かれているわけでありまするが、農林物資につきましては御承知通りに非常に何といいまするか、原始産業的のものであり、生産指導をかねましたような一つ検査というようなものが、全面的にこれが行われませんというと、なかなか輸出貿易を進展さしていきまする上に、いろいろ支障が出てくるものじゃなかろうかと思うのでありまして、少くとも農林物資というようなものにつきましては、検査の面におきましては、いろいろこれは支障がありましょうけれども、やはり何とかこの特例を開かないで、強制検査という建前をとっていくのが筋じゃないかと思うのでありますが、その辺につきましては、農林当局にもそういうふうなお考えを持っていらっしゃいますか。
  13. 八木一郎

    政府委員八木一郎君) 御指摘の点は、できるだけ広く強制検査ができる方向に持って参りたい、こういう所存でございます。
  14. 白井勇

    白井勇君 それからもう一点農林省に伺いたいと思いますが、この検査業務は申し上げるまでもなしに、何と申しますか、できるだけ販売業務とか何とかいうような差し迫った、さしあたりの目先のものに左右されないような組織にしまして、そうしてその検査業務というものが公正に行われるような検査機関なり、あるいは監督機関というものを確立しておかなければならぬと、こう思うのでありますが、農林省機構をずっと振り返って見ますというと、今私申し上げたような意味合いからだと思うのでありまするが、一時官房にありました担当のものが、現在におきましては、経済局の中に入り、一経済課の中にそういうような面が入ってしまっておる、こういうことになりますと、これはやはり先ほど私が懸念しましたように、目先の取引のみに追われちゃって、将来をおもんぱかって、いわゆるこの法案趣旨にありまするような線に沿いましての業務の運行ということが、非常にむずかしくなるのではなかろうかと、こう思うのでありますが、むしろやはり機構としましても、もとのような格好にしまして、もう少し検査の体制なり、あるいは監督機関というものを強化していくような方が適当じゃなかろうかと思うのでありますが、その点のお見通しはいかがでありましょうか。
  15. 八木一郎

    政府委員八木一郎君) 農林水産物検査機構の上から、行政機構の上からも検査機構強化の必要があるのじゃないだろうかという御意見を付してのお尋ねでございますが、農林省といたしましては、法律趣旨とこの精神に沿いまして、輸出検査事務は、ただいま経済局経済課担当しておりますが、この経済課は、農林水産物輸出入の連絡調整にもっぱら当っておるのでありまして、その意味からすれば、輸出に関する事務の重要な一環でありまする輸出検査事務は、当然この課で扱われるのが適当である、こういう考えに立ちまして、各原局の十分な援助協力を求めながら、円滑に実施いたすことに努めておるのであります。御意見の点は承わりまして、さらに検討はいたしまするが、ただいまのところ、検査課という名前ではございませんが、重要な仕事経済課において担当さして参りたい、こういう所存でございます。
  16. 白井勇

    白井勇君 農林当局に対しまする質問は、私としましてはこの程度にとどめたいと思います。  通産省を代表されまして政務次官が見えておりまするから、ちょっと二、三伺ってみたいと思います。事務当局のお話しによりますと、この二十八条によりまして、いろいろ業務停止命令を出したり、あるいは指定を取り消したりなんかできることになっておりますが、そうされますというと、大体まあ一つ指定貨物につきまして一つ検査機関というのが建前でありましょうが、そうなりますというと、その機関業務の一部または全部が停止されるというような事態ができてくる、そういう場合に一体だれが検査をやるのかという話を承わっておったわけでありまするが、それは法文で政府機関なり、あるいは政府指定機関が、指定貨物ごとにだれがどういう検査をやるかという配分をきめて参ります、そのきめる省令等におきまして、そういう場合におきましては、一切政府がやるということにするから支障がないのだという説明でありますが、それはその通り解して差しつかえないのかどうかということが一点。
  17. 長谷川四郎

    政府委員長谷川四郎君) 民間機関にもしそういう事態が起るときには、当然国の機関で行うということでございます。
  18. 相馬助治

    相馬助治君 農林次官にこの際お尋ねしますが、お手元にあろうと思いますが、農林水産委員長から当委員会あてに参っておる、先ほど専門員が読み上げました内容については、農林当局としては妥当と、かようにお考えでございますか。
  19. 八木一郎

    政府委員八木一郎君) その趣旨に沿いまして、妥当と考えて善処して参る、こういう考えでございます。
  20. 相馬助治

    相馬助治君 それではお尋ねいたしますが、この当委員会申し入れられた内容について、政府当局が妥当であるというふうにお考えであるということが前提になりますというと、この申し入れ書の中に盛られているのは、かなり明確に行政措置がなされなければ、農林水産物についてはまま子扱いにされて、輸出そのものにも影響を及ほすがゆえに、慎重なる考慮を払われたいと、かようなことを申しておるわけです。これはいささか皮肉な見方をすれば、政府提案のこの法律案に対して、農林当局としてはいささか危惧の念を抱いておる。それが明確な行政措置を必要とする見解となって現われていると、かようにも見られると思うのです。従いましてこの政府提案本法が出るまでには、閣議でも打ち合せられ、次官会議でも討論され、事務当局同士においても十分検討されたと、かように考えて私はおるのですけれども、その辺の事情がどうなっているかを次の一点に限って明瞭にしていただきたいと思うのです。それは何かと申しますと、この強制検査原則とする本法に対して、農林省は非常に疑問を感じており、危惧しておるやに見えます。こういうふうな制度が根本的に改められる限りにおいては政府自身が経費の面についても十分見なくちゃならない。そういう諸準備がはなはだ不備のままに本法施行されるということは、とりわけ水産農林関係物資については、危惧するところが多い、かような打撃をこうむる危険が特に多いものと思われる。こういうもう明確な表現をとっておりますが、これは本法が本院に提案される以前に政府部内において、具体的に言えば農林当局通産当局においてどのような交渉がなされ、どのような作業がなされ、どのような了解がなされて本法提案されたのか。その辺について、一つ経緯をお聞かせ願いたいと思います。
  21. 八木一郎

    政府委員八木一郎君) ごもっともなお尋ねでございます。この法律案提案をいたすに至ります過程においては、一方に農林水産物は御承知のように手数料その他で零細性がありますので、生産者にあまり迷惑がかからないようにしなければならないということから、従って国の負担とのにらみ合いが起きて参りますし、本年度の実情とにらみ合して御注意をいただいております、申し入れをいただいております趣旨に沿い、かつ財政上の負担考え生産者の迷惑にもならないようにという限りにおいて、最善の案といたしてここに提案に至ったわけでありまして、関係の大蔵、通産両省農林省ともよく協議を整えて、一致した意見で持ち出して参った。こういう経緯になりますから、御了承いただきたいと思います。
  22. 相馬助治

    相馬助治君 私はもちろん了承しておるし、了承したいと思っているのです。農林水産委員長からこういうふうな形で正式に申し入れられますと、当委員会としても非常に責任が重大なために、その辺の念を押しておるのです。私が申しておりますことは、立法過程においてどのような経過があろうとも、本院においてこの法律が成立いたしますと、立法者の意思を離れ、その経過事情を離れて、当面通産省は示された法律において、その精神において行政措置をどんどんとっていくと思うのです。その場合に、通産当局をあれこれ非難することは全く当らないと思うのです。それでそういうことを考えてみるというと、農林水産物資が現在問題になっている輸出検査法案のワクの中においては、その行政措置がかなりデリケートなものがあるというふうな前提に立つならば、むしろ立法府の責任としては、それらのことを法改正を行うべきであり、かりに諸般事情上、法改正が許されない場合は、付帯条件を付して本法を成立させなければならないとかように考えておるわけです。従って政府当局としては、今農林当局が言明の通りの話し合いができておって、そうしてそれらの面については、御心配ないとこういうことで了解しろというのでしたら、私はそれをそのまま率直に聞くのです。しかし、私が第一段にお尋ねしたように、農林当局自身もまた、農林水産委員長松澤委員長申し入れたような趣旨を持っておって、多くの危惧を持っておるとするならば、一体本院はどう取り扱うべきか。すなわち通産当局に対し農林当局からこういう申し入れがあるから、農林水産物資ままっ子扱いにしないようにということを要望し、通産当局ままっ子扱いはいたしませんと言明すれば、それで足りるのか、それともそういう質疑のやりとりだけでなくて、法改正について根本的に問題があるというふうにお考えになるのか。これらの点を私は明瞭にしたいと思って全く善意に発して以上の質問をしているわけでございます。これらについて、この際一つ農林当局並びに通産当局から御見解を承われば、私はそれで私の質問は終るわけです。
  23. 長谷川四郎

    政府委員長谷川四郎君) この法案そのもの通産省だけの機関でなくて、農林省通産省と両方の共通した措置をとることになっているのであります。農林委員会の方の委員長からの要望に対しましては、要するに予算というものが少な過ぎやしないかということが、はっきり現われておるわけなんでございます。私もその点はごもっともだと考えます。しかしながら、一応今年出発するのであって、三十三年度には御迷惑のかからない程度、御心配のかからない程度には必ず持っていきたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。でございますから、本年度補助金のたとえば一千万円というものが計上されているが、非常に少な過ぎるということなんでありますが、その点は十分考慮いたしまして、来年三十三年度には、相当これにある通り、見るべきものがあるように善処していきたいとこういうふうに考えております。
  24. 八木一郎

    政府委員八木一郎君) ただいま通産省当局のお述べになりましたように、三十三年度に期待するところも相当あるのでありますが、諸般事情から現状におきましても、生産者に零細な農林水産関係業者に迷惑をかけない限りにおいて最善の道が尽せる、こういうことで誠意をもってこの施行に当りたい、こういう考えであります。
  25. 近藤信一

    近藤信一君 先ほど同僚相馬委員からの質問に対しまして、農林政務次官は、農林水産委員長からの要望書というものを、これを妥当と考えておると答弁をされましたのでございますが、ただいまいただきました資料によりますると、過去一カ年間のクレイムが約六〇%近いものがある。その中で、一番多い数字を占めておりますのが農水産物、こういうことになっております。特に、品質不良の点では、相当な件数があがっておりまして、こういう点からいきますると、この従来の輸出品自家表示による輸出であった、そういう結果から、このようなクレイムが過去一カ年間にたくさん出ておる。こういう点から考えると、今度輸出検査法が制定されることは、これらのクレイムをなくする上からいっても、適当な措置だと私ども考えるわけでありますが、この点、農林政務次官はどのようにお考えでございましょうか。
  26. 八木一郎

    政府委員八木一郎君) 全くお説の通りでございまして、この法の精神を生かして、最善行政をやっていきたい、こういう考えであります。
  27. 近藤信一

    近藤信一君 そうすると、先ほどの農林水産委員長からの申し入れ趣旨、これと若干食い違いがあるように考えるわけなんですが、その点いかがでしょうか。
  28. 八木一郎

    政府委員八木一郎君) 実績に徴して、確かに遺徳のございます点は、率直に認めるのであります。その限りにおいては、農林委員長の方からのお申し出について、妥当のものと考えるというふうに申し上げたので、あるいは若干食い違いがあるじゃないかという御指摘でございますが、一方、予算事情生産者負担事情等を勘案して、技術的な検査の実態を調べますると、今申し上げたような、また御指摘のような考えに立って、立法された趣旨に沿うことが、最も適切なわれわれのとる措置である、こう考えておるわけでございまして、御了承願います。
  29. 近藤信一

    近藤信一君 この申し入れの中にございまするように、強制検査が行われると、検査手数料の引き上げ、または手続上の繁雑化、これらが大よそ生産者にしわ寄せされて原価高を来たすおそれがある、こういうふうに述べられておるのですが、検査法によって厳重な検査がされて、そうして輸出がされる場合には、クレイムの数量というものはうんと減ってくるのではなかろうかというふうに考えるのですが、そうすれば、このクレイムがなくなるということは、日本の輸出品に対しての責任を持つことにもなるし、良質な製品というものが輸出されることにもなるし、クレイムがなければ、それだけ生産者としても利益の方に回ってくる、このように考えられるわけなんで、そうすると、検査手数料がどのようになっておるか知りませんが、その検査手数料等によって、コスト高になるというようなことは考えられないと思うのですが、この点いかがですか。
  30. 八木一郎

    政府委員八木一郎君) ごもっともなお尋ねでございまして、商品価値を落してしまい、クレイムも生じてしまっては、元も子もないわけでありますから、わずかな手数料の引き上げや受検手続の繁雑なことは忍んで、商品性の向上を期して参りたいと、こういう、何と申しますか、自覚と認識によってこの検査制度充実強化は期して参らなければならぬと思う。しかし、まあ直ちにそのしわ寄せが生産者の方に来るように認識されることも考えなければなりませんので、鶏が先か卵が先かといったような感じが、やはり多数の生産者農林水産物関係生産者の中にも起きて参りまするので、現状としてこの程度で、一つ御了解を賜わりたいと考えております。
  31. 相馬助治

    相馬助治君 ちょっと速記をとめて下さい。
  32. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 速記をとめて。    午前十一時二十六分速記中止    —————・—————    午前十一時二十六分速記中止    午前十一時五十二分速記開始
  33. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 速記始めて下さい。  ただいま問題となっております輸出検査法の件につきましては、なお検討を要することもあり、農林水産委員長からの申し入れにつきましても、さらに協議をいたしまして決定することにし、午後の会議は一時半に再開することとして暫時休憩いたします。    午前十一時五十四分休憩    —————・—————     午後二時二十五分開会
  34. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 午前に引き続き、会議を開きます。
  35. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 輸出保険法の一部改正法律案提案せられておりまするにつきまして、これに関連して大臣にお尋ねをしたいと思うのであります。輸出保険制度は、御承知のように普通の輸出保険、それからまた輸出手形保険というのが別にあるわけですが、そのほかに海外に広告してその実収が上ってこない場合には、そのリスクをカバーする海外広告保険というようなものまであります。それから今問題になっております、海外投資をやって、そうしてそれの収益が上らぬという場合には、海外投資保険制度というのがあるわけなんでありますが、今回はさらに海外投資の元本だけでなく、配当金まで送金ができぬというような場合には、これについて保険をやろうということになっておるわけでありまして、実にかゆいところに手の届くように、この保険制度輸出関係については行われているわけなんですが、その恩典に浴するのは、御承知のように輸出商社であります。ところが、この輸出商社には、かつての例を引き合いに出しますと、岩田商事なんていうのは不渡手形を……、自分が海外へ輸出するその商品を国内の中小企業者から納入させる、そうして手形を振り出す、その手形がたちまち不渡りになるというようなことになってくると、これについては何らの保険制度もないわけなんです。要するに中小企業者お互いの間では、やっぱり不渡手形を出しておりますが、十万や十五万の不渡りならば、中小企業者はお互いに何とかできるのですが、岩田商事のような輸出商社に対して、物を納入し、それの手形となると、二百万、三百万の手形になるわけですが、それが前日までに有料手形で割引せられたというのが、一夜にして不渡りになるということになりますと、二百万、三百万の手形一枚の不渡りで、この中小企業者は、日ごろどんなにまじめに経営し、どんなは遺漏のないいき方をしておっても、たちまちそこで倒産せんならぬというようなことになってくるわけなんです。そういう点で、中小企業者に大商社から振り出しておる手形のごときものが不渡りになったという場合には、日ごろから中小企業者も保険料を出す、国の方もこれについてある程度負担をするという一つの保険制度があれば、いよいよこの不渡手形が出てきたというときに、しかもそれが大口で、何とも中小企業者としては処置ないという場合に、その八割の保険金がもらえるということになると、中小企業者は自分の罪でなくて倒産せんならぬときのその危険というものを脱し得ることになるわけです。この問題を私ここで大臣に申し上げるのは、その岩田商事というものが海外に輸出した場合については、その危険についてあらゆる危険をカバーできるように、微から細に入ってこの保険制度が、だんだんに改善せられてきているわけですね。今申し上げるように、商品を輸出した場合のその危険についてはもちろんのこと、また輸出手形についての危険が出てきたときにはそれの保険、海外に広告した場合には、それに相応の利益がないときには、それの尻始末をするような保険もできておる。海外へ投資をやって、たとえば呉羽紡績がメキシコで仕事をやるというときには、海外投資の危険に対して保険制度がある、今度はまたその元本だけでなくて、それの配当金が何かの工合いで国内に送金にならないというときには、その配当金に対する危険まで、日ごろから保険料さえ払っておれば、いざとなったときに七五%の保険金がもらえる、そこでいけるということになっております。それから次の段階になって、この国内の中小企業者輸出商の関係になりますというと、輸出商がどんなことをやっても、中小企業というものはその責任を転嫁されて、そうしてそこで倒産のうき目を見る。これはちょうど農業関係につきまして、御承知の風水害があるというと、風水害に対して共済保険制度がある、この共済保険で風水害の危険に対してのカバーができるというようなことになっておるのですが、中小企業者からしてみるというと、大商社に納入しても、それらの手形が一夜で不渡りになったりするのは、まことに風水害にあったようなものです。そういう場合についての保険制度というものが全然ないのですね。そういう点で、農家についてはそういう天然の危険に対しては共済保険がある。海外へ輸出する場合については、こまかいどんな危険でも大体カバーできるような保険制度がある。ところが、そういう相手方になっておる国内の中小企業者は、全然自分の罪なくして滅びる場合の危険も、全然カバーする道がないというのはいかにも……。大に対してはかゆいところに手の届くように国の施策というものができておるし、また、そういうふうにしようというふうになってきておるのでありますが、小のもの、これに対しては全然手が届いておらぬ。あんまりアンバランスではないか。これに対して通産大臣、いかにお考えでありましょうか。ことに、政調会長として大いに自民党内で御研究になり、重きをなしてこられ、また、将来も必ずそういうふうになられると思うのでありまして、今すぐということではなくてもいいのかもしれませんが、将来必ずバランスのとれるように、大と小との間について、保険制度などについてもお考えにならなければいかんのではないか。そういう点から、一つ大臣の率直なる御意見を伺っておきたいと思います。
  36. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 今おっしゃられたふうな問題は、ひとり輸出関係している問題だけではございませんで、ちょうど数年前二、三年前に続出した事件がございますが、親会社が突然手を上げて更生会社になるということによって、前日まで品物を納入しておった中小企業が全部代金が取れない。しかも、会社全体の財産は一番の主要取引銀行に全財産を押えられて、ほかのものは取る余地がないというふうなことで、そのために中小企業者自身が出している手形を払えなくなる。それが連鎖作用を起して、一般の不渡手形の大きい問題を起したことがございますが、そういうふうな点から考えて、ひとりこの輸出に関連する問題だけではなくて、そういう場合に、人のために自分が手形の不渡りを出さなければならなくなる。それによって倒産するというふうな中小企業を救う方法はないかということから、この中小企業者の債務者に先取り特権を認めるいろいろな立法考えられないかというようなことで、いろいろこの問題は二、三年前から問題になってはおりますが、まだそういう方向で解決するということにも、現在きまっておりません。で、これを保険制度で助ける方法はないかと申しますと、火災保険とか、農業共済保険とかいうようなものはいつ災害があるかもわからない、実際に災害があるかもしれないという可能性が非常に多いのですから、平素掛金を取つて、一朝事が起った場合に、損失を負担するという保険が成り立つと思うのですが、ただいまのようなケースから見ますというと、ふだん自分の取引している取引先の信用というものはあらかじめわかっている。よくよくの場合に起ることでございまして、危ないと思うなら、もうふだん手形の取引なんかはやらないはずですし、そうしますというと、この危険性というのは中小企業全般にあるのではなくて、どうも危ないとやはり思われているところと取引した人に、たまたまくるという問題ですから、そういう事故発生の可能性というものが割合に少いという問題を中心として、一般からふだん掛金を取っていくという保険制度が成り立つかどうかという問題になると、技術的に非常にむずかしい問題があるのではないかと思っておりますので、まあ私どもの感じとしましては、保険制度によって、そういうものの中小企業の事故を救うということをやったらいいか、そうじゃなくてやはり民法的に法律の問題で、そういう人の倒産や何かの飛ばっちりを受けていった場合に、これを救済する制度を、保険制度以外のことで考える方が実際的ではないかというふうに考えて、そういう方向の研究をわれわれはしたいと思って、いろいろ党でも、政調会でも今やっているはずでありますが、今考えておることは、そういう方向で助ける制度の方がやはり実際的ではないかというふうに私自身は考えております。
  37. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 保険制度以外で考えられると、これはけっこうなんでおりますが、たとえばお話しの先取り特権の問題なども、これはある程度効果があろうとは思いますが、なかなか先取り特権といっても、他の大企業相互間においても、あるいは銀行の相互間においても、いろいろな関係から先取り特権がものをいわぬという場合も出てくるでありましょうし、さらにまた、一面、危ない取引先であるかどうかがわかりそうなものだというわけなんでありますが、今お話しのありましたのは、日平産業などのお話しかと思いますけれども、日平産業なども何じゃかんじゃ言っておっても、いよいよという前日まで手形の割引はきいておったようですね。ことに岩田商事などになると、全然前の晩までは何のこともないというようなことで手形の振り出しを受けておったのが、たちまちにして不渡手形になる。そういう点で日ごろから見当をつけるということは、非常に困難なんです。それで、今は御承知のように、いわゆる神武以来の景気なんというものですから、この不渡手形になるならんということも、それほどの問題ではないけれども、これがちょっとデフレ傾向になるとか、あるいは輸出も頭打ちになるとかいうようなことで情勢が変って参りますと、いつ何どきまた、そういう事件が出てくるかもしれない。そういう場合に保険制度以外にこれは方法があるといいのですが、なかなか困難ではないだろうか。そういう場合に、御承知の信用保険制度につきましては、銀行が貸し出して、そしてうまくいかなかった場合には信用保険制度によってカバーする道ができておるのでありますが、銀行対中小企業の関係でなく、中小企業対大企業の関係の場合に問題が起きました場合に、信用保険制度に準ずるというか、あるいは信用保険制度一つの改正によって特殊の保険制というものが創設できると、これは非常に中小企業者も安んじて事ができるということになりますので、この際特に御考慮を願っておきたいと思いますのは、中小企業相互間の手形は、先ほど申しますように金額も少いことでもりますし、これは一々保険制度にかけるということは大へんだろうと思いますが、現在株式市場に上場せられておるような会社であって、しかもそれが何人も予想もできないようなふうに不渡手形が出てくる、それがために中小企業者が倒産のうき目を見なければならんというような場合に、日ごろからごくわずかの保険料を納めておるということでカバーのできる制度が立てられると、非常に助かるということを、業界自身が言っております。ことに繊維関係で、中小企業者がその繊維製品を商社に納める、その場合にその相手の商社から大口の不渡手形が出てくる、しかもこれが海外に輸出せられると、今度の輸出保険制度の改正等を何回も今までやってきたのでありますが、この輸出保険でほとんど輸出商社は何とか救われる。ところが、それを納入しておる方の中小企業者は、万一のことが大きく出てきても、そこに救われる道がない。これに対する保険制度を、信用保険制度の一部改正などで、今後お考えを願うと非常に幸いだと思うのであります。でこれについてはかねてこの商工委員会の前身でありました通参委員会当時、相当この問題は研究もしたのでありますが、その際に証券取引所、手形交換所からも来てもらったり、あるいは市中銀行代表者にも来てもらったりして、相当研究したんでありますが、当時市中銀行の代表者などは、むしろこの制度が始まることによって金融の円滑化にもなりやしないだろうか、要するに手形の割引が安んじてできるという点から、金融円滑化にもなりやしないか、それから手形交換所の意見も、上場株式会社程度の手形振出しについての保険制度ならば、これはまた考え得るんではなかろうか、というようなことでありましたので、自来機会あるごとに、中小企業庁などにも意見は提示しておりまするけれども、なかなかいろいろ次から次へとほかの問題が出てくるものでありますから、この問題が非常に取り残されてきておるのであります。そこで、一つ今後大臣の方からも事務当局にこの制度の研究を一つ下命をしていただくようにお願いをしたいと思うのであります。
  38. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 二、三年前からさっき申しましたように、そういう問題が起ったときに、党の機関あたりでは相当研究したんですが、むつかしいんで結局途中でうやむやになってしまったというような形になっておりますが、確かに研究問題としては、これは重要な問題だと思いますので、今後中小企業庁で十分これを研究することにいたします。
  39. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 これは検査法と保険法に両またかかったようなことなんでありますが、たとえば日本の検査が完全に通っていきましても、その当該出先の国がこれを検査の結果阻止する場合があるんですが、これはまたあり得ると思うんでありますが、そういうことにつきまして、何かその補償と申しますか、そういうことはどうなっておるんですか。これはあえて大臣でなくても、局長からでもけっこうです。
  40. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) ちょっと今の御質問趣旨が少しはっきりしなかったのでありますが……。
  41. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 これは検査法と保険法に関連をすることですが、日本の検査を済んで、そして仕向地に出す。ところが仕向地の検査が、必ずしもこれは国際的な統一の機関があるわけでないから、仕向地でこれを拒否した場合がある。そういう場合について、これを通産省としてはどういう工合に扱われるか。ただ業者が泣き寝入りで終るものか、あるいはこれについて何か保険ならば、たとえば特殊などういうこれをケースとしてどの保険の機関にこれをかけてしかるべきか。これは相当私はあり得ることだと思うんですが、また、従来から相当こういうケースがあっておるはずですが、このことについて伺いたい。
  42. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) お尋ねの点は、輸出検査機関検査を受けて出したものが向うに着きましてから、いろいろのクレイムの、いわゆる対象になったその場合における措置についてかと思いますが、いわゆる普遍の売買契約によりますと、いろいろの品質その他につきまして、規格にしましても、その他いろいろな条件を付して参るわけであります。しかしながら、今度の新しい検査法案によってやります輸出検査は、いわば日本の輸出品として海外に出しても恥かしくないという意味においての最低限の品質検査建前にしておるわけでありまするので、いわゆる従来クレイムの大部分が品質の不良ということによって起っておることは、先般も御説明申し上げた通りであります。従いまして今度の検査制度の改善強化によりまして、品質の不良ということは防止ができることによりまして、クレイムの発生する件数も激減することを、われわれも期待いたしておるわけでありますが、先ほど申しましたように売買上の条件である、いわゆる品質というものと検査機関のやるいわゆる最低基準である品質というものとが必ずしも一致しない場合も多々あろうかと思うのであります。従いましてそういう場合におきましては、検査機関輸出検査に合格していったから、クレイムが全然起らないんだということも言えないかと思うのであります。そういう場合は、個々のメーカーなり輸出業者が、契約条件によりまするその基準に合うように注意を願うなり、あるいは不幸にしてクレイムが起りますれば、それぞれクレイム解決の方法も国際慣行でできておりまするので、そういうふうな制度なり、機関を通じて解決を願うほかに方法はないんじゃないか。ただ、御指摘のようなクレイムの発生に備えて、クレイム保険とでもいうような制度を設けてはいかがかという意見もかなりありまして、われわれも研究をいたしたのでありますが、かなり技術的にいろいろむずかしい面があるわけであります。たとえば包括保険と申しますか、強制保険にして貿易業者に全部入っていただくということになりますと、保険料も非常に安くていけるわけでありますが、実際問題としてそういうことはできないということになりますと、保険制度として成立させるためには、割合に高い保険料を取らなければいかぬ、また技術的に、かりに検査制度が確立されましても、航行途中に変質をするようなものも出て参りますし、なかなかきちっとした保険制度に乗り得ないという、技術的な問題もいろいろあろうかと思います。そこで今さしあたりのところとしては、なかなかそういうクレイムの発生につきまして保険制度でカバーするということは、かなり困難ではないかと思っておるのでございますが、われわれ平素何かそういうふうな道もないかということで研究しておりますので、今後も一つ研究を続けていきたい、こういうふうに考えております。
  43. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 今お話の通り、この点がまことに私はむずかしいと思うんです。クレイムなりやいなやという見解です、非常にむずかしく、そしてまた、アメリカとかイギリスとか非常に大きな国ですと、相互のあれも多いですから、その点は少いと思いますが、小さい国あたりに対する輸出の問題なんかは、決して向うは故意にやるわけじゃありませんが、特にこういう点が非常に多いと思うのです。それで今局長の言われたクレイム保険というふうなこと、私は個人なりにそういう点を考えておるのですが、幸いそういう話が出たのでありますから、ぜひこれは一つ大臣もおられるのでありますから、ぜひ一つこれは一応研究課題としてクレイム保険、せっかく七つもまことに至れり尽せりの保険ができておるのですから、この点もぜひ一つ考え願いたいと思います。
  44. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 承知しました。
  45. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 それからさらに、いま一つ伺いたいことは、政府が盛んに輸出の振興ということを唱えられており、業者もそれに乗って大いに活動しておるのでありますが、しかし、アメリカとか、それからイギリスとか、そういうことろに対しましては、向うの事情もわかっておりますし、非常に出かける人たちも、安心をして商売もやれるというようなことでありますが、しかしわれわれの考えからするならば、そういう大きなもう開拓をせられたところよりも、むしろ中近東とか、あるいは東南アジアの諸国とか、そういうものにできるだけ一つ輸出の振興をしていかなければならない。ところが、最近の国際情勢の上から申しまするというと、こういう国ほど非常に問題が多くなるわけで、要するに率直に申しまするならば、危険も非常に多い。従って出かける人たちも、割合に逡巡をしておるふうな連中が多いわけであります。私はこういうところこそ、この輸出関係に対する保険を百パーセント利用させるということが、私どもは法のねらいじゃないかと、こう考えるのでありますが、ところが、たとえば中近東の問題なんかが相当危険視されるというふうな状況になりまするというと、ぱかっと保険をとめるというふうなことが、往々にして今日まであった。それからそういう危険の地域こそ、むしろ保険の支払いというものをこれは一〇〇%すべきである。しかし一〇〇%かりにできなければ、九〇%でも、九五%でも、でき得る限りその保険を完遂をするということが、政府考えておるところの輸出貿易の振興に私どもはなるのじゃないか、こう考えておるのであります。ところが、現在におきましては、そういう危険な地域でも、七五%に押えられておるというふうなことは、何か政府の方はせっかく輸出を、やれと、そうしてまあ開拓の道を見つけて、大いに行って業者が活動をしても、そういうような危険をおかしてやって、一〇〇%保険が取れないというようなことになりまするというと、どうしても政府の意思通りにいかないのでありますが、この点について大臣がおいでになるのでございますから、一つ意見を伺いたい。
  46. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 今の、保険制度の独立採算制をはずしても、この運営をやった方がいいかどうかという問題だと思いますが、一つ局長に答弁してもらいます。
  47. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) 保険法の建前に関しますので、私からお話しいたします。お説ごもっともであるのでありますが、結局先生の言われる通りにやるということになりますと、今の輸出保険特別会計のいわゆる独立採算制をはずして、ある程度大胆に運用したらいいのじゃないかというふうな結論になるのではないかと思うのでありますが、御存じのように、現在輸出保険法の第一条の四に、一言で申しますと、独立採算制で運用すべきことがきめられておるわけであります。そこで今の法の建前からいいますと、やはり保険料収入をもって保険金の支払に充てるほか方法がないわけであります。その独立採算制をはずして、すなわち赤字を出してでもよくはないかということでありますが、そうなりますと、もうこれは保険という観念よりも、補償というふうな観念に飛躍してゆくわけであります。そこでわれわれといたしましては、今の法の建前から言うと、独立採算制を保持しながら、しかしながらこれも利用者が保険制度趣旨を十分理解され、加入者がふえて参りますと、保険料の引き下げもできるわけでございまするので、われわれは独立採算制を維持しつつ、できるだけ多くの方に利用を願って、保険料の引き下げ、負担の軽減をはかってゆくという方向で運用して参りたい、言いかえてみますれば、独立採算制はやはりあくまで貫かざるを得ないのではないかというふうに、これは保険制度建前上どうもやむを得ないのじゃないかというふうに考えておる次第でございます。
  48. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 お話はごもっともなんで、この保険の独立採算制という建前をあくまでも固執せられると、むろんそういう議論になりますが、とにかく日本の輸出先というものも、今までもそうでありますし、これからもそうでありますが、どうしても紛擾の起りやすいところが、今後の日本のいわゆる新天地となるわけであります。そういう点で独立採算のそろばんだけをはじいていったのでは、決して私は輸出振興に、あなた方が音頭をとられるような方向に、中小貿易業者というものは進んでゆかない。ことに、中近東とか東南アとかいうのは、中小貿易業者が進出する度合いというものが非常に多いのです。そういう点で、ただ安全のところだけゆくというような、形式的な独立採算の建前だけでゆかれるというと、あまり何か政治性も妙味も、それから保険の妙味も何かないような気がするのですが、この点いかがでございますか。
  49. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) お言葉を返すようでございますが、今御指摘のように、一般の水準から見ますると、若干危険なような地域も国によってあるわけでございまするが、現在の保険制度の運用といたしましては、危険の地域に対しましては割増しの保険料を実は取る建前になっておるのでございますが、実際はほとんど取らずに、どの地域にも一律な保険料を実は適用しておるのが実情なのであります。その意味におきましては、そういう危険地域に対してもかなり配意をしておる。アメリカに対すると同様、今おっしゃいました中近東地域に対しても、同じ保険料になっておるということは、言いかえてみますと、こういう地域にかなり配意をしておるというふうに御了解願っていいのではないかというふうに思うわけであります。先般スエズの紛争が起りましたときに、若干保険の受付を停止をいたしましたが、これまた保険制度建前から言いまして、ああいう事故が起りますと、逆選択が非常に起ってくるわけであります。善意をもちまして保険をかけておられる方ならばいいわけであります。えてしてああいう事故が発生しますと、とたん保険契約がふえる。従いましてそれを冷やす意味において約一カ月ばかりとめたのでございますが、それはできるだけ早く再開をしたことは、先生も御存じの通りであります。われわれといたしましてもできるだけこの保険制度を、今お示しにありましたような意味で運用はしておるつもりでございます。
  50. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 速記をとめて。    午後三時速記中止    —————・—————    午後三時十三分速記開始
  51. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) では速記を始めて。
  52. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 今スエズの問題の停止の問題が出ましたが、スエズ以外に昨年中においてどういうところがありましたか、地域としては。
  53. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) 先ほど申しましたスエズ紛争のときに、エジプトを初めとする中近東数ヵ国にやりましたほかは、昨年では南米のペルーにおきまして政府が関税引き上げの声明をしたというような事情がありまして、それに関連していろいろトラブルが起ることが予想されたので、ごくわずかな間ではございましたが、保険の受付を停止したことが一件ございます。
  54. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 中共に対してはどういうようなことをやっておられますか。
  55. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) 中共に対しましても、他の地域と同様に保険制度を運用しております。
  56. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 昨年中に問題はなかったですか。
  57. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) 事故はなかったようであります。
  58. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 海外広告保険というのは、これはなかなかむずかしい保険だと思うのですが、現に海外広告保険で保険金を給付した実例がありますか。
  59. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) 海外広告保険につきましては、二十七年度にこの制度を始めまして以来、昨年十二月末までに保険金の支払いをいたしました件数は、三十二件になっておる。で、昨年四月から十二月までの期間におきましては、支払い件数が十件になっております。保険金といたしましては、その二十七年度制度創設以来、二千七百十四万円の保険金の支払いであります。昨年の四月から十二月までの支払いは六百七十一万二千円になっております。
  60. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 その保険事故は、どういう事例のものが多いのですか。
  61. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) 事例はいろいろございますが、たとえば味の素が沖縄へ広告を、宣伝をしたというのがかなり大きなケースになっておりますが、これは広告保険をつけます場合には、かくかくの規模をもって広告をやる、その結果この程度輸出が見込まれるという輸出の見込みを立てるわけであります。その輸出見込みが達成できなかったという場合に保険金を支払うということになっております。実際非常にむずかしい公式によりまして——今申しますように輸出見込みが非常に甘いということになりますと、もう保険金の支払いがいかなる場合でも発生するというようなことになりますので、輸出見込み等につきましても、非常に慎重を期してやっておるのでございます。もしなんでございましたら、その具体的な保険のつけ方を御説明申し上げてもいいのですが……。
  62. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 そこまでは説明をしてもらわんでもいいのですが、沖縄などへは全然輸出がなかったのですか。
  63. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) もちろん、若干の味の素の輸出は沖縄にあったのですが、それをかくかくの広告宣伝をやることによって、現在行っている輸出をこの程度まで増加しようという計画を作ってそして保険につける、こういう仕組になっております。ほかの地域に対する商品につきましても、いずれもそういうふうにやっております。
  64. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 そうすると、あまりこの輸出見込みのないようなところに過大な輸出見込みをして、そして広告宣伝をやる、そしてそれに伴う実益がないという場合に、保険事故ありとして保険金が交付されるのですか、そういう場合でも。
  65. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) これまでは、たとえば化粧品とか、機械、雑貨等が主としてこの広告保険にかかっておるのでございますが、もちろんその全然出てないような地域にやる場合もありますし、また、もっと広告宣伝をすれば、現在の輸出が伸びるであろうかと思われるような地域に対してやる場合もあるし、まあいろいろあるわけでありますが、問題は輸出見通しを非常に甘くするということになりますと、この特別会計の負担する保険金支払いが非常にふえるわけです。そうして率直に申しますと、非常に運用がしにくいわけであります。そこで、過去の経験率から見まして、ときどき輸出の見込み等につきましては、基準を変えて運用をしていくというのが実情なんです。遺憾ながら今日まではこの保険はどっちかと申しますと、赤字に実はなっておるわけです。こういうようなわけです。
  66. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 そうすると、その計画が甘いか甘くないか、あるいは甘いと見た場合に、査定する基準なんていうのは、どんなふうにやっておるのですか。
  67. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) この現在のところ、商品によって若干違うのでございますが、いわゆるこの標準回収率を百分の二から百分の五と一応きめておるわけです。その回収率と申しますのは、輸出増加額をもちまして、広告費を割った率を回収率といっておるわけです。従いまして百万円の輸出の増加を見込む場合には、広告費としては二万円まで保険につけられるというふうな仕組みでございます。それは今申しました回収率の最低でありまする百分の二に該当する商品であります。それと今申しましたように、回収率百分の五に該当する商品につきましては五万円、広告費を使っており、百万円の輸出増を見込む。従って広告費としては五万円までは政府はみる、こういう仕組みのものであります。今申しましたように、標準回収率を百分の五と百分の二の間に、商品によって程度をきめてやっておる。こういうわけであります。
  68. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 お話しを聞いておりますと、保険でやるよりも、補助金を交付した方がよさそうに思われるのですが、そういうふうに思いませんか。
  69. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) 実は昭和二十七年に海外広告保険法を設立されましたときには、各種の輸出振興策をとらなければならぬというふうな、輸出が非常に不振な時代でございましたので、この保険を最初できたときの気持は、率直に申しますと、保険制度というよりは補助金的な色彩もかなり濃厚であったわけであります。ところが、運用して参りますと、先ほども申しましたように、赤字が毎年累増しておるような格好になっておりまして、現在の保険制度全体から見ますと、若干の黒字でございますが結局、ほかの保険の黒字でもってこの海外保険の赤字を埋めておるというような実態になっておるわけです。そこで、どうもこの保険制度自身について再検討をしなければならぬというふうにわれわれも考えまして、先ほども申しました標準回収率につきまして、漸次改善を加えて参ったわけであります。今先生が御指摘になりましたように、こういうものは保険制度としては非常にむずかしいのじゃないかというふうな意見も、若干あるのでございますが、まあ今の標準回収率等を操作することによって、いま少し赤字の出ないように、もう一年ぐらい運用をしてみて、その結果を見て、これを保険制度からやめるか、あるいは存続していくかを研究してみたい。率直に申しますと、そういうふうに考えておるのであります。運用がかなりむずかしい保険になっておるわけです。
  70. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 保険制度の理論の純粋性というか、そういう立場から、この漸次改正せられて保険制度をだんだんふやしていかれることもいいですけれども、やはり過去を振り返って、保険制度としてはどうかなと思われるものは、今後これを廃止するとか、よほど保険制度全体の公正なる進展をはかられるようにせられたいと思うのですが、今の答弁によりますと、大体そういう考えを持っておられる状態でありますので、今後の研究を保険制度自身の公正健全なる発達を期せられる意味での研究も必要とする、そういうふうにやってもらいたいと希望して、私の質問を終ります。
  71. 近藤信一

    近藤信一君 一、二点についてちょっと質問いたしますが、本法改正の第一の趣旨と申しますると、このたび海外投資利益保険を新設する、そういう意味で従来の海外投資保険の名称を海外投資元本保険と、これはまぎらわしい点があるから、それを区別するために改正したんだと、こういうふうに第一の理由が相なっております。ただその区別するためということで、この名称を変えられたのか、そのほかに何か理由があるのか、その点伺っておきます。
  72. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) この要綱でも御説明を申しましたように、今回海外投資利益保険を創設せんとしておるわけです。従いまして一般の通俗の観念から申しますと、投資保険ということの中には、いわゆる投資元本に対する保険、その投資から生れて参りまする利益保険と二種類考えられるわけであります。従いまして今度新らしい利益保険を作りましたので、この従来の投資保険を投資元本保険と名前を変えただけでございまして、何ら別段の意味はないわけであります。もちろん、この保険の性質によりまして、元本保険、それから利益保険とは、填補危険の範囲等が若干変ってはおりますが、少くとも従来の海外投資保険、すなわち今度の海外投資元本保険につきましては、先般も御説明申し上げましたように、非常に内容を改善をし、填補率を引き上げ、保険料率も引き下げようとしておるわけでありまして、少くとも現行の海外投資保険制度から比べますと、最近の投資意欲の向上に資する意味におきましては、よい方向というか、どうしてもやらなければならない方向の改正というふうに考えておるわけであります。
  73. 近藤信一

    近藤信一君 そういたしますると、海外投資利益保険と、海外投資元本保険と、まあわかりやすいために、こういうふうに名称を変えられた、これにしか過ぎないということですね。そういうように理解していいのですね。
  74. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) その通りでございます。
  75. 近藤信一

    近藤信一君 従来は、海外へいろいろと投資しておられる被投資者が、戦争、革命、内乱、こういうような非常事態が起ってから、これの投資者が株式を処分するか、または被投資者か法人の清算が結了したときにおいて初めて保険金を支払うという制度になっておりますが、このたびはそこへさらに、暴動または騒乱というふうな非常事態が起った場合にというふうなことで改正の点があるわけでありますが、そういたしますると、もしそういうことを非常事態を予想して、若干のトラブルが起きた、これは大きくなるであろう、こういうことを予想して、そのときに解散した場合において、やはりこれは適用されるのですか。
  76. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) 戦争、革命、または内乱のほかに暴動、騒乱を加えるわけでありますが、ただそういうことを予想して解散をするということだけでは、これは保険の事故にならないのでありまして、要綱の二ページ目のまん中へんに書いてございまするように、損害を受けて解散するということでありますので、こういう戦争、革命または内乱あるいは暴動、騒乱、あるいは外国の政府、地方公共団体もしくはこれらに準ずる者によって、この権利または利益が侵害されたことによって損害を受けて解散したということでありますので、そういう事態を予想して、あらかじめ解散してしまったということの場合には、これは保険の事故にはならぬわけでございます。
  77. 近藤信一

    近藤信一君 それからこんどは設備や鉱業権、漁業権のような、事業遂行上重要な権利を侵害された場合をも加えることとした、こういうふうにございますが、たとえば、現在太平洋水域には日本の漁業権というものは相当あると思うのです。そういう関係で、今クリスマス島、前のビキニ島こういうところで水爆の実験があって漁業権が侵害された、こういうふうな場合はどういう結果になりますか。
  78. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) 今クリスマス島における水爆実験の場合をとって考えてみますと、現実に日本の漁業者、あるいは漁船がそこへ出て漁をやっておられる場合があろうかと思いますが、現実に外国の法人になっておられるとか、言いかえてみますと、日本人が外国法人に出資しているとか、あるいは全額自分が株を持っている合弁事業の場合でも同じですが、そういう場合はないのではないかと想像しているわけです。しかしながら、かりにそういう外国法人でありまする漁業者に日本人が出資をしている、あるいは合弁事業で向うで漁業をやっているというような場合に、現在は実際まだ保険に入っておられる方はございませんが、かりにそういう方があって保険に入っておられたといたしますれば、そういう水爆実験による被害によって解散したというような場合は、当然保険の対象になろうかと思います。しかし、これはただ理論的な問題でございまして、現実には今該当するようなものは、今のところはないのではないかというふうに考えております。
  79. 近藤信一

    近藤信一君 今外国で漁業権に投資しているという事例はないのですか。
  80. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) 現在漁業で海外投資保険に入っておりまするのは一件ございます。これは英領ニューヘブリデス島でございますが、南洋貿易が現物出資によりまして漁業を営んでおります。この一件だけであります。まだ保険に入っておられない漁業は、かなりあろうかと思います。
  81. 近藤信一

    近藤信一君 鉱業権の方はどうですか。
  82. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) 鉱業権の方は現在三井金属鉱業がタイ国においてタングステン及びすずの鉱業に従事しております。これも現物出資による投資でございます。
  83. 近藤信一

    近藤信一君 そうすると鉱業権におきましても漁業権におきましても、海外での投資というものは一件ずつしかないということですね。
  84. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) ちょっと今鉱業権の方の説明が不十分でございましたが、今申しました三井金属鉱業がタイ国に現物出資で鉱業を営んでおるほか、四件ばかりすず鉱業に、これは現金出資によりまして海外投資をいたしております。
  85. 近藤信一

    近藤信一君 現在日本の産業振興のためには、相当今後海外に対しての投資というものがふえてくるのじゃないかと考えられる。そういう点からいきましても、やはり今後この海外投資に対する輸出保険というものは、海外投資元本保険というのは、非常に重要なことになってくるのではないかと考えられます。やはり、日本の産業の振興のためには、先ほど豊田委員が言われておりましたように、保険制度でなくして、産業振興のための補助制度というようなことを考えるべきじゃないかと私も思うのであります。そういう点を考えましたときに、通産当局の方ではどういうお考えがおありでございますか。
  86. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) 海外投資の促進のために、こういう保険制度よりも政府から直接の助成金等の支出の方が望ましいがどうかというお尋ねかと思うのでありますが、今のところ、いろいろの海外投資の形態もございますが、やはり企業の健全性から考えましても、御審議を願っておりますような保険制度によって、損失の四分の三を政府で補てんをするという行き方と、それから資金そのものにつきましては、別途大蔵委員会の方で御審議願っておるかと思いますが、輸出入銀行法を改正いたしまして、投資金融を活発化するという金融的な措置ということ、保険措置強化ということで、まず海外投資を促進すべきではないか。直接助成金ないし補助金の支出は、今の財政状況から見まして、好ましくないのじゃないかというふうに考えておるわけであります。御存じのように、世界各国が今通商政策の非常な重点を、海外投資政策に置いておるわけであります。直接の商品の輸出という形態から漸次こういうふうに投資の促進によって、輸出市場または輸入市場を確保するというような方向に進んでおるわけであります。非常に重要なことでありますが、今のところは、そういう金融措置及び保険制度の拡充強化によって海外投資を育成していくのが、望ましいではないかというふうに考えております。
  87. 白井勇

    白井勇君 私ちょっと戻りますけれども輸出検査法に関しまして二点ばかり通産省を代表されます政務次官に伺っておきたいと思います。この法案の将来の見通しといいますか、運営に関連しましてでありますが、過日来事務当局に伺ったところによりますると、指定検査機関としましては、現在あります二十六にさらに五つくらいの検査機関指定をされて、実施をしていくというお考え方のようであります。申し上げるまでもなしに、この検査というものは、非常に厳正に公正に行わなければなりませんから、日本のような国柄から見ますれば、これはやはり政府自体がそういう仕事をやっていくというのが、これは一番無難な建前でなかろうかというような感じを持つわけでありますが、過去の経過なり現状から見ますと、すでに政府検査機関にかわるような機関があるといたしますれば、民間に一応指定機関を作ってやるということも、一つの方法かと思うのであります。ところが、今通産省の構想しておりまするような指定されると思われまする団体の実態を見ますると、それらは大体その指定貨物の、まあ何といいますか、関係者の団体のまた団体であるというような実態であるわけであります。ですから、悪く申しますと、業者方面のさしあたりの利益というようなものが非常に強く反映していく、こういうような弊害が伴いやすいものじゃなかろうかと思うのであります。どうしましても、輸出をやっていくということになりますれば、遠き将来の国の輸出貿易という利害関係考えまする前に、業者個人のさしあたりの目前の利害関係に走りやすいというような面があるわけでありまして、そういうものが指定されまして、果してこの法案趣旨のような実施ができるものであろうか、さらにまた、考えてみますると、現在予定されておりまする二十六にさらに五を加えまして三十一になるわけでありますが、それらはそれぞれ特定の指定貨物のみを検査して参りまする機関に予想されておるわけであります。ところが、指定貨物そのものというものは、世界市場を相手として参りまする、非常に何と申しまするか、商売の波のある、浮き沈みの激しいものなわけであります。そういうものを相手にしてやって参りまする機関、しかもその仕事というものは、申し上げるまでもなしに、厳正にやっていかなければならぬ。ところが、一体特定の貨物のみの検査機関でおりますれば、そのものが輸出がとだえるということになりますれば、検査業務に携わっておりまする者、それ自体の身分も保障されないというような、非常に不安定な格好になってくる、この法律を読んでみましても、検査員は登録はされまするけれども、それを国におきましてある程度めんどうをみてやるとか、あるいは片棒をかついでやるというような何らの方法はない。そういったような機関そのものの、どっちかと申しますと、厳正中立というようなことは、必ずしも守っていけないじゃないかというような危惧の念も抱かしめ、しかも、検査をやりまする者は身分の保障というようなものがほとんどないような状態のもとに、こういう大事な仕事をやらしていって、果して一体通産省というものは円滑にやれる見通しがあるのかないのかということを、私は非常に危惧の念をもって見るわけであります。これに対しまして、通産省としましては、この法案趣旨に沿いまして、どういうような方法をもって、目的に沿うように検査をやっていかれるというお見通しがあるのか、その点ちょっと伺っておきたいと思います。
  88. 長谷川四郎

    政府委員長谷川四郎君) 民間検査機関でなく、政府機関の方へ移行すべきでないかというような第一点の御説がございましたが、民間機関が現在あるけれども、急速に全部政府機関というわけにも参らない。それを十分に運用できるように、政府みずからがこれを指導し、そして併用して進んでいきたい、こういうような考え方を持っているわけであります。  さらにまた、もう一つは、中立性と申しますか、たとえば人事の問題にしても、監督というようなこと、認可という、こういう点についても不十分ではないかというような御説でございますが、その点は十分に留意をいたしまして、絶対これならばいけるのではないかというように、私たちの方は自信を持って提案をしているわけでございます。  さらにもう一つ、身分の保障につきましては、輸出検査員の選任とか解任届出制、そういうような点、また従って不当な処分だとか、たとえば解任の裏面に不正の事実が介在して、かつその解任に当って、指定基準に合致しなかったというときに、十分これを取り締る道が開かれていると思うのでございます。なお御説等もございますので、この点については、十分その意に合致するような方法をもって、行政指導をしていきたい、こう考えておるわけであります。
  89. 白井勇

    白井勇君 もう一点、今私の申し上げたことが多少誤解されたように思いますので、念のために申し上げておきますが、私は、この法案通りまして、新しく機関を作るわけじゃありませんので、建前としますれば、国というような一つの権力を持ちましたものがやるのが望ましいことであるというふうに、私個人的には考えますが、しかし、それぞれの貨物につきまして、相当強力な機関というものは、従来そこまで発展してきておるわけであります。この段階におきまして、それらのものをさらに国の方に統一すべきものであるというようなことを私は考えておるようなわけじゃないのでありまして、ただ、そういう民間の強力な団体というものを育成をしていかなければならないと私は思うのでありまして、ただ、それには、今通産省が構想しておられますのは、それぞれの指定貨物別に団体でも作っていくという考え方だと思います。ところがそういうものは、一つがだめになりますれば、それきりだめになってしまう。ですから、将来のことを考えますれば、やはりある程度そういうものをまとめまして、一つ指定貨物輸出が不振でありましても、他の伸びるもので埋め合せてやっていくなんという、一つの弾力性のあるような方向に漸次強化していかなきゃならぬのじゃなかろうかというようなふうに、私は思っておりましたので、先ほどの点を伺ったのであります。  それからもう一点私伺っておきたいと思いますのは、農林委員会の方からもああいう申し入れがありましたように、農林省関係のみならず、通産省の場合におきましても、これだけの法案を出されまして、その予算の裏づけというものは、ほとんどないということです。一千万円ばかりの補助費を取りまして、指定機関の器具の購入に充てるというようなことで、あるいはまた、多少旅費を取っておるようでありまするが、しかしながら、私たちは過日来現地を見せていただき、また御提出願った資料等についてみましても、まず検査器具なんかのことを考えてみまするというと、工業品検査所ですか、あそこに参りましてお話を聞かしていただきましても、検査というものは、これは御承知通り機械器具をもって測定をするわけでありまして、そういう機械器具がなければできないものなのにかかわらず、必要な検査器具の三一%しか配当が行ってないのです。三一%しか配当が行ってないということは、結局三割しか検査ができないということに私はなるものだと思うのでありますが、ではどうしてやっているかといいますれば、それは検査を受ける方の機械を借りましてやっていると、こういうような話し合いで、そういうことでは権威のある検査のできょうはずはないのであります。  それからまた、監督をやっておられまするあなたの方の検査員という職員があるわけでありますが、そういう人たちのたとえば旅費の点を考えてみましても、月せいぜい約千七、八百円見当、二千円を割るような旅費であります。ところで、たとえてみますれば、工業品検査所という関係の場合におきまして、監督をしなければならない場所が要するに幾つあるかといいますと、約九千五百あるのですね。九千五百に、職員の数といえば二百四十人です。ということは一人で四十カ所も見て歩かなければならない。そうしてわずか二千円足らずの旅費しかない。こういうような格好にもなっているわけでありまして、通産省自体の検査職員の実態、それからその民間でやっておりまする検査を督励して参りまするお役人の状態でも、そういう格好になっております。さらにまた、今後指定されます指定検査機関におきましても、これは先ほど申しましたように、一つの国の仕事を、そういう強力な機関が引き受けてゆくわけですね。ですからそういうものは、これは大体手数料である程度まかなわれるということは考えられますけれども、やはり国でやるような仕事をかわってやるような一つの強力な機関でありますからして、そういう面におきまして、この人件費の補助をやってやりますとか、いろいろなやはり政府としましての予算的な裏づけを考えてやらなければ、この仕事というものは、ただ法律を通しただけでは、うまくいきっこないのじゃないか、こう私は思うのですが、まあ今後法案通りましても、九カ月もあるわけでありますからして、三十二年度予算措置というものは、わずか三、四カ月のものでしょうが、これらの予算の裏づけの措置につきまして、通産省はどういうお考えを持っているか。
  90. 長谷川四郎

    政府委員長谷川四郎君) 検査機関に対しましては、連合会も発足することになっておりますし、なおなるべく総合機関を作りまして、その方向に指導してゆきたいというふうに考えております。私みずからが最後の御指摘には、そう考えております。これだけのわずか四カ月であっても、一千万円という予算でもって、これだけの希望を果すことができるかどうかということ、また現にいろいろな点等を見まして、特に日本の輸出、工業というものが、今日これだ大けきくなっているというゆえんのものも、いかに中小企業が主体となっている点が多いかという点、こういう面から考えましても、予算というものがこれで満足すべきものでは私はないと思います。本年発足に当りまして、わずか四カ月間だからというので、これで満足するものではなくて、三十三年度予算には、ただいまの御指摘の点等につきましては、十分私はこれを検討し、さらに大蔵省と折衝を続けて、そのただいまの白井さんのお言葉の通り方向に進んでゆきたい。そうでなかったならばこれを作ったその精神に相反するのではないか、こういうふうに私は考えます。私にもっと言わせていただくならば、検査機関、国のこれだけの検査機関というようなものを、輸出に対しての検査機関というようなものに対しては、国が十分に、たとえば半分くらい国が見るのは、当然じゃないかと私は思っております。そういう意味におきまして、そういう点には十分留意し折衝する考えでございます。
  91. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 速記をとめて。    午後四時二分速記中止    —————・—————    午後四時二十三分速記開始
  92. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 速記を始めて下さい。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十四分散会