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島清君 申し上げるまでもございませんが、先年近江絹糸は、人権争議という今世紀においては愚まわし名に値するような争議が行われたのでございます。この問題については、あるいは私
たちの側から申し上げまするというと、今ごろ人権争議のごとき忌まわしい争議という言葉を使いまするというと、あるいは御議論があるかもしれません。しかしながら当時は
日本の世論の支持を受け、国際的な世論の支持を受けて、そして労働争議が
労働者の勝利によって終ったのであります。それはその当時は労働争議でありまするから、夏川社長を含みまする夏川一派の退陣ということによってめでたく終止符を打ったわけでありまするけれ
ども、しかしながら数カ月
経過をいたしまして、過般公取の審決とかという決定に基きまして、労働争議の直後に
経営者陣がかわりましたことは、独禁法の
精神を侵犯するものであるという審決のもとに、そこで若干の金融
関係の代表者の方が
経営者陣から退陣をされたのであります。新しくまたこの審決によりまして、心ならずも新しい
経営者の方々が、私
たちの目から見ますと近江絹糸ばかりではなくして、紡績
事業とは無
関係の方々が
経営者陣の方に参加になりまして、そうしていわゆる金融
関係の方々と、そういう方々との内部のヘゲモニーの奪還闘争といいましょうか、とにかく内部の紛争に発展をして参ったのであります。その結果といたしまして、内輪争いをいたしまして、
企業が健全にいくはずはないのでございまするので、そこでただいまの
現状を残念ながら誘致をいたしておるのであります。私はすでに
政府におかれましても、五日、閣議におかれまして、この問題を取り上げられて、そして何とか善処しなければならないということで、新聞の報ずるところによりますというと、
河野さんの了解を得て、石田労働
大臣があっせんに乗り出される、こういうようなことを承わっておるわけであります。このことは私は
河野さんから一本とってやろうというようなさもしい根性で賢明をしているわけではございません。むしろ非常に時期を失した感はございまするけれ
ども、
政府といたしましては、見上げた処置であった、こういうふうに思うわけであります。ただいまの
現状からいたしまするというと、まあ八千八百有余名の従業員が、男女合せておるわけでありまするが、しかし丹波何がしという、ただいまの代表取締役が中労委の方に出しておりまする近江絹糸再建計画書、これによりますというと、もちろんこれは中労委の方では
経営者の内部紛争のために
労働者が迷惑をするということは、これはわれわれとしては審理するわけにいかんというて受け付けてはございませんけれ
ども、しかしながらこれによりますというと、一千四百有余名の人が指名解雇を受けまして、さらに一時離職をする数が、六千二百有余名というふうになっております。指名解雇者並びに一時職場を離れなければならないという者を合せますというと、七千六百九十有余名ということになっております。そういたしまするというと、在籍八千八百八十有余名の
労働者に対しまするこの比率は、わずかに一千何百余名が残ると、こういうことになるのでありまして、そこで申し上げるまでもなくして、近江絹糸はすでにすべての機関が活動を停止しておるというような状態であります。このことについては閣議においても取り上げられておることでございまするので、私は詳しいことは申し上げません。すでにこの詳しいことは承知の上で取り上げられたと思いまするので省略をいたしまするが、いずれにいたしましても、こういったような
中小企業の
団体法案が
審議をされておりまするさなかにおいて、この工場の周辺には、いわゆるこの工場に働いておりまする従業員を相手にいたしまして商売を営んでおられまするところの、この
団体法の中に当然に包含をされまする階層の方々が多いのであります。私が聞くところによりまするというと、冨士官工場の従業員を相手にして商売をされた方々が今百万程度の売掛金が取れなくてお困りのように聞いておるのであります。そこで近江絹糸という
一つの
企業体、各地に散在をしておりまする工場の周辺の、この
団体法の中に当然に包含をされまする階層の商売人の方々の売掛金は二千万前後だろうと、こういう
工合に言われておるのであります。
一つの
企業が、しかも
経営者の内部の紛争によって、いたずらにその
経営権を握りさえすればよろしいと、この醜い争いの結果は、八千名に近い従業員の諸君に生活の、生存権を奮奪し、さらにはそれに
関連をいたしまする
中小企業の方々にも非常に迷惑を及ぼしておるという実態でございます。これに対しまして私は率直に申し上げまして、この事態を何とかしなければならないというて
政府が取り上げられ、さらに石田労働
大臣が
河野さんの了解を得てあっせんに乗り出された。そして石田労働
大臣は
経営者内部の争いであるからそれによって
労働者に、首切りや迷惑を及ぼすということは断じてさせないと、こういったような
意味のことを発表されまして、新聞は報じておるのであります。私はそれがその
通りであるといたしまするならば、まことに近来にない岸内閣の大ヒットだと、こういう
工合に思いまして、この
考え方を全面的に支持し、さらにこの方法によって強力に
一つあっせんの役をとっていただきたい。それはただいま申し上げたような理由によって
考えているわけであります。
私のお聞きをいたしたいと思っておりまする点は、幸い新聞の報ずるところによりますというと、仄聞するところによりますというと、
河野さんの了解を得て石田さんがあっせんに乗り出された、こういうことでございまするので願わくは、
一つ閣議がどういったような
考え方でこの問題をお取り上げになり、さらにまた石田さんが新聞の伝えるような
方向においてこの問題の収拾に乗り出された、さらにまた閣議といたしましては、難渋するであろうこの近江絹糸の石田労相のあっせんに対してさらに今後もこれを御支援なさいまするお
考えのもとに石田さんのあっせんを了承されたかどうかと、こういう一点についてまずお聞きしたいと、こう思います。