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国務大臣(
藤山愛一郎君) 今日わが国といたしまして、
経済外交の重要でありますことは申すまでもないことであります。従いまして、
外務省といたしましても
経済外交を推進していくということに
全力をあげて参るということもまたこれ当然なことだと思うのであります。で、ただいま御
指摘のありましたように、
世界におきます一般の
希望としてはむろん
貿易の
自由化ということが広く主張されておるのでありまして、その点について各
方面とも、また各国々ともそれぞれ
基本的にはそういう
考え方で
通商の自由を叫んでおります。がしかし、同時にそれぞれの国におきましてやはり
自国の
業者を保護し、あるいは
自国の
外貨バランスを合せますために、それぞれの処置をとっておりますることもまたこれ事実なのであります。ことにドルの不足というような
事情から起りますそれらの
自由化を阻害するような
措置も行われてくるというようなことがあるわけでありまして、一方では
自由化を叫びながら、一方ではそういう
意味において
自由化を必ずしも進めていく
方向にないような施策がとられているのであります。また
ヨーロッパ共同市場におきますように、今日のような
生産関係の進展から見ますと、大きな
市場を
一つの
ブロックとして固めていかなければ、
国内市場の狭隘のためにそれぞれの
産業が必ずしも十分な
発展をしない。従って国境を越えてある
程度の共同的な
措置をとっていこうという傾向もまた起っておるのでありまして、
ヨーロッパ共同市場の問題等につきましてはこれが非常にかたい
ブロック化になり、また
自由化を阻害するということでありますならば
相当世界でも問題があろうかと思います。そういう点について、各
方面の
経済に
関係をしております者が論議をしておることもまた皆さん御
承知の
通りであります。こういう情勢にありまして、
日本としては
経済を立てて参りまする上において輸出
貿易を主として活発に推進して参らなければならぬことは当然でありますので、それらの、根本的には自由主義であるけれ
ども、当面の問題として、各国に起っております諸般の
自由化をふさぐような問題についてそれぞれ解決をしながら、またそれに適応した方策をとりながら善処して参らなければならぬということが
貿易を推進していきます上において非常に重要な問題と思います。従って
外務省といたしましては、そういう面について
経済外交の
一つの面としてそれらの問題を十分取り上げて、そうしてわが国
貿易の進展に資していくと、また
通産省と十分な
連絡をとってわが国諸工業の
発展のために遺憾なきを期していきたいと思っております。
なお
経済外交の他の部面は、御
承知のようにわが国が今日発達してきましたわれわれの
産業の技術、
経験等を後進国に貸しまして、そうして後進国の
経済の
発展をはかり、あわせて政治的独立を達成しましたその裏打ちとしての、独立完成への道の
経済建設に協力していくということが、これまた
一つの大きな
経済外交の面だと思うのであります。この点につきましては、私
どもその
意味するところを十分に
基本的に
考えまして、そのこと
自体が戦前に言われておるような
経済侵略という
意味ではないのだと、
日本はほんとうに後進国に対して心から手を貸して
経済建設をやっていくのだ、それが後進国が独立することの一番早道だ、またそれを通じて
世界の平和が確保できるのだ、という根本理念のもとに私
どもは善処いたして参らなければならぬと思うのであります。そういう
意味におきまして技術的協力、あるいは
経験を後進国の方に活用する、われわれの
経験を活用する
方法手段等にできるだけ示していくということが、一面
経済外交の大きな目的の
一つだと思うのであります。そういう
意味におきまして建設計画に対する協力ということは、これまた
経済外交の
一つの大きな線でなければならぬと思うのであります。そういうような二つの線を押し出しまして私としては
経済外交を進めて参りたいと思うのであります。
が、しかしながら、
経済外交を推進いたして参ります場合に、
経済外交というものだけが独立してあるわけではないのであります。政治的諸問題の解決とあわせて、やはり
経済の問題が関連して参る場合も多いのでありますから、他面では政治的な問題の解決をはかりつつ、
経済外交を並行して進めていくという立場をとらなければならぬと思うのでありまして、そういうことによって進めて参りたいと思っております。
で、これを進めて参ります場合に私
どもが一番感じますことは、国内各省との
連絡が緊密でなければならぬと思うのでありまして、それぞれの
貿易に対します分野の
経済外交を推進して参ります場合にも、あるいは技術協力の面をやって参ります場合にも、
外務省は外からこれを受けます
一つの窓口でありまして、その実態はそれぞれ国内各省の行政とつながる、また行政の関連なしに
考えて参るわけにはいかぬのであります。従って各省それぞれの行政と十分緊密な
連絡をして参らなければならぬと思うのであります。でありますから、私といたしましては、
外務省が今後一面では国外に向いておりますが、他面では国内に向きまして、そうして各省との
連絡協調をし、またその
希望を達成するようにもはかりつつ、また国外に対します問題の場合に、各省それぞれの立場に関して主張が異なります場合には、進んで
外務省が各省の立場に協力しつつその円滑な協調に資していくような立場で働いて参らなければならぬと思うのであります。いろいろ外国に輸出をいたします場合に、輸出国から買うものがたくさんあるわけでありますが、それらの配分等に関しても、やはり
外務省の見るところもまた各省において十分に参考にしていただく、あるいはそれらのことを基底にして問題を
考えていただく、ということが
経済外交の推進に非常に必要だと思うのであります。
他面、国外につきましては、これらのことを伸展いたしますためには、
外務省の機能の充実をして参らなければならぬと
考えます。現在私の見るところでは、終戦後今日までの経過から言いまして、
外務省の機構の点におきましても、あるいは人的な立場におきましても、必ずしも今日以後活発に行われます
経済外交を推進するのに十分な人手と、あるいは十分な性格とを持っておるとも思いませんので、それらの問題は予算と合せて充実をしていかなければならぬと思います。申すまでもなく、今日以後、
外務省がやっております
外交、これは全般にわたってそうでありますが、特に
経済外交の問題につきましては、
民間の
意見もまたこれ十分に徴して参らなければいけず、また
民間の有能な人の知識、
経験等も取り入れて、そうして参らなければならぬと思います。それらにつきましては、
法制上あるいは予算上、いろいろな困難もあると思うのでありますが、今日
経済外交の非常に
重要性を感じております際に、できるだけそれらの点の了解を得ながら
外務省の充実をはかって参りたい、こう
考えておるわけであります。要するに、
外務省は国内各省と非常に緊密な
連絡をとりながら、
日本経済の
発展のために仕事をしていくことなんでありますから、そういう趣旨を十分に徹底していきながら仕事をしていきたい、こう思うのであります。
ただいま対米
貿易のことについて
お話があったわけであります。御
承知のように、いろいろな
日本からの輸出商品に対しまして、
アメリカ国内で制限
措置等を要求する声が起っております。これは
外務省といたしましても、できるだけこれらの問題に対処して参らなければならぬ。御
承知のように、
アメリカは、やはり最も民主主義の発達した国でありまして、国内世論の動向というものが政治家を左右し、あるいは上下両院に反映するということが多いのでありますから、
基本的にはやはりわが国の生存に必要であります立場を十分に
アメリカ国民に了解してもらいますこと、そのことが間接と申しますか、あるいは
基本的に非常に必要なことだと思うのでありまして、それらの点については、われわれとして今後もっともっと力を入れてやって参らなければならぬことだと思うのであります。そういうことのためには、各省の
関係を動員していただくことはもちろん、
民間輸出
業者等とも話し合い、またその共同動作もお願いして、そうしてあらかじめこういう問題につきまして、一面では政治的に
日本が輸出
貿易をして参らなければ生きていけない、生きていけない結果は
日本の生存の問題にも
関係するということを申すと同時に、他面、やはり
アメリカ業者の理解と同情を得ていくことを
考えなければならぬと思うのであります。そういう点に手を打ちながら、今後の問題を進めて参るわけであります。同時に私
どもといたしましては、やはりこれは
通産省とも
お話し合いの上で、
日本人
業者の方にもやはり輸出国それぞれの
事情等について適時
お話をしながら共同に適当な処置を
考えつつ仕事をしていただくことが適当であろうかと想うのでありまして、必ずしも安売りでありましては
日本の利益にならんのみならず、また安売りをすることのために国外からの排斥という問題も起ってくるわけであります。それは、そのときどきの、やはりそれぞれの国の
事情にもよるところが多いのでありますから、それらの
事情等につきまして、十分財界
方面で見ております点を国内の各省並びに
業者の方とも
連絡して、そういう問題が起ります以前に適当な処置をしながら輸出
貿易の伸張をはかっていただくような
方法をとっていただかなければならぬと
考えます。そういう
意味におきまして、できるだけの善処をして参りたいと思います。その他国際的な交渉、話し合い等の
機会がありますれば、それらの問題につきましては
日本の
経済でできる限りのことをして参りますことは、これはもう当然のことでありまして、そういう
意味において、
日本の
経済外交そのものをできるだけ大きく進展して参りたいと、こう思いますのが私の
考え方であります。