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政府委員(井本臺吉君) 俗にガス、水道というようなことを申しますが、電気並びにガスにつきましては、御承知の
通り、公共
事業令の第八十五条、それからガス
事業法の第五十三条に供給に障害を与えるようなことに対する罰則
規定がある、
本法の五十一条は、ガス
事業法の五十三条とごく似たような条文でございまして、それの差異を申し上げますというと、ガス
事業法の五十三条の四項が削ってございます。これはお読みいただけばわかることでありますが、念のため申し上げますと、第三項には「ガス
事業に従事する者が正当な事由がないのにガス工作物の維持又は運行の
業務を取り扱わず、ガスの供給に障害を生ぜしめたときも、前項と同様とする。」ということが書いてございます。これは第一項、第二項が結局積極的に何らかの行為をした者に対する処罰
規定でありまして、第三項は不作為に対する処罰
規定でございます。なお、第四項には「第一項及び第二項の未遂罪は、罰する。」と、こういう
規定がございます。これは第一項、第二項のような供給を妨害したというような者に対する未遂罪の罰則というので、現実に供給妨害がなくても罰せられることがあり得る
規定で、この水道法の第五十一条に比較いたしますると、ずっといろいろな点から取締りをしておるわけでございます。
この
規定は、ただいま申し上げましたように、第一項と第二項に供給妨害を処分する
規定を設けたのでございますが、確かに刑法の
規定の百四十七条に比較いたしますと非常に重くなっておりますが、刑法の百四十七条の水道の損壊、壅塞というような、まあこれは非常に高度の
規定でありまして、刑法の二百六十一条などの
一般毀棄罪などの
規定に比較しまして、水道を全然とめてしまうというような非常に高度のものの処罰
規定でございます。
なお、この刑法の水道はごく狭い観念でございますので、刑法の
程度ではいろいろな複雑になりました現在の状況から言いまして、われわれの取締り上からもいま少しく広くしてもらいたいということで、水道
施設というようなことの条文を設けまして、第三条の七項に水道
施設の定義ができております。従って、刑法の水道よりもこれは確かに水道
施設の方が範囲が広くなっておりますが、刑法の水道と申しますると、結局浄水を供給する水路の部分というようなことになっておりまして、これには貯水池あるいは水道
——浄水に導く
施設などは、場合によっては含まないというような
趣旨の判例もございまして、非常に狭い観念でございまするが、今度の水道法の水道
施設というものは、取水
施設とか、貯水
施設、あるいは導水
施設などの原水の段階に入るものも取締りの
対象になるわけでございます。
〔
理事山木
經勝君退席、
委員長着席〕
かような
規定を設けましたことにつきまして、刑法の非常に高度のものを省いて
規定するわけにもいきませんので、どちらかに比較いたしまして、重い場合にはその重い方の
規定に従うという
趣旨の第三項の
規定がございますけれども、これは刑法等の刑罰
規定におきましては、かような例文的な
規定は往々用いられるやり方でありまして、このごく狭い範囲の刑罰の
規定のようなものを五十一条から特に除くということではないので、場合によっては、刑法にも触れ、この三条にも触れるような場合には、刑法の百四十七条の一年以上十年以下の刑罰でございますから、そういう高い
程度の損壊、壅塞したというようなごく狭い範囲の水道につきまして行われたというような場合には、刑法の
規定を適用するというようなことになると
考えるわけでございます。
なお、罰則が少し重いのではないかということでございますけれども、結局これはガス
事業法の五十三条と同じ
程度の刑罰法規でございまして、刑法の二百六十条、二百六十一条の、建造物を損壊もしくは器物損壊の
規定と比較いたしまして、大体この
程度であれば適当ではないかと私どもは
考えている次第でございます。
なお、この冒頭に申し上げましたように、この
規定は特にガス
事業法の五十三条の三項、四項というような
規定が省いてございますので、消極的な不作為の行為につきましては処分する
規定にはなっておりません。従って、違法なストライキというようなものでも、積極的に作為をしたものでない単なるウォーク・アウトと申しますか、
仕事をやめてしまったというような
程度では、これは五十一条の一項、二項には触れないという
考え方でございます。
それに未遂の点が省いてございますので、現実に水の供給の妨害をやらなければこれは犯罪にならない。未遂の
程度では犯罪にならないのでございますので、さような点から、ストライキの問題はこの
建前からは
対象になっておらないというように御了承になってけっこうだと
考える次第でございます。
それから五十二条以下の罰則
規定は、行政関係の罰則
規定でございますから、それは厚生省の方に御
説明願うことにいたしまして、五十六条は法人の関係の両罰
規定でございまして、これはこの末条に
規定がございます
通り、「法人の
代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の
業務に関して第五十二条から前条までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。」という
規定でございまするが、結局これは違反行為があった者が、この五十二条以下の罰則に触れると同時に、かような者が法人の
代表者もしくはその代理人、使用人その他の従業者である場合には、その法人等を罰するという両罰の
趣旨でありまして、罰則を犯さなかった者をも処罰処分するという
趣旨の
規定ではな、わけでございます。さような両罰
規定でございますので、これも何か行為をなさない者に対する処罰
規定のように御了解いただかないように私は
考えておるわけでございます。
簡単でございまするが、私どものこの罰則に対する
考え方は以上の
通りでございます。