○
政府委員(伊能芳雄君) ただいま議題になりました労働福祉事業団体
法案について、その
提案理由を御
説明申し上げます。
御
承知のごとく、
政府におきましては、労働者災害補償保険事業及び失業保険事業の一環といたしまして、昭和二十四年以来労災病院、傷痍者訓練所その他の労働者災害補償保険施設を、また、昭和二十八年以来総合
職業補導所、簡易宿泊所その他の失業保険施設の設置及び運営を行なって参ったのでありますが、これらの保険施設は、逐年増加の一途をたどり、現在その数は、未完成のものも含めて、労災病院二十四カ所、傷痍者訓練所二カ所、総合
職業補導所二十三カ所、簡易宿泊所十二カ所の多きを数えるに至っておるのであります。
しかして、これらの保険施設の運営の実情を見まするに、まず、労働者災害補償保険
関係の施設につきましては、その施設のうち、労災病院等の
経営は、委託契約により、一財団法人に委託してこれを行わせているのでありますが、労災病院の数が少かった間はともかく、すでに二十四にも達せんとする労災病院の
経営を一民間団体に行わせることは、その事務能力、財政能力等の点から申しましても、責任態勢に欠けるところがあり、適当とは言いがたいのみならず、さらに今後この種の施設の拡張
発展に伴い、その適切かつ能率的運営を期するためには、その方法等について根本的に検討を加える必要があると存ずる次第であります。
他方、失業保険
関係の施設につきましては、総合
職業補導所等の施設の
経営は、委託契約により、当該施設の存する都道府県等に委託してこれを行わせているのでありますが、これは、あくまで一時的かつ便宜的
理由によるものでありまして、総合
職業補導所のごとく、国家的見地から統一的運営を必要とする施設を永続的に都道府県に委託
経営せしめることは、その性格にかんがみ、必ずしも適切な方法であるとは認めがたいものがあるのであります。
右のごとき事情を考慮いたしますとき、これらの保険施設の設置及び運営を適切かつ能率的に行うためには、
政府みずからがこれらの施設の設置及び運営に当る方式が
考えられるのでありますが、国が直営することは、行政機構の拡大等のおそれもあり、また、その能率性等から見て、必ずしも最善の策とは
考えられないのでありまして、むしろ、この際、これらの保険施設の設置及び運営のごとき業務は、国の代行機関たる性格を有する労働福祉事業団を設立し、これに行わせることがより適切であると思料されるのであります。以上がこの
法律案を提出いたしました
理由であります。
次に
法案の
内容について、概略御
説明申し上げます。
この
法案は、労働者災害補償保険及び失業保険の保険施設の設置及び運営を適切かつ能率的に行わせるため、労働福祉事業団を設立することを定めるとともに、その組織、業務、財務、会計、監督等に関し、所要の
規定を設けたものであります。
すなわち、第一に、労働福祉事業団は、法人といたしますとともに、その当初の
資本金は、事業団の成立に際しまして、
政府が出資する額と地方公共団体が自治庁長官の承認を受けて出資する額の合計額といたしております。しかして
政府は、事業団の成立に際しましては、労災病院、傷痍者訓練所、総合
職業補導所、簡易宿泊所等の用に供している国有の不動産、これに附属する物品等を事業団に現物出資することといたしております。
第二に、事業団の役員として、
理事長一人、
理事四人以内及び監事二人以内を置くこととし、その任期は、それぞれ四年といたしております。
第三に、事業団の行う業務といたしましては、労災病院、傷痍者訓練所等の労働者災害補償保険施設及び総合
職業補導所、簡易宿泊所等の失業保険施設の設置及び運営を行うことを主たる業務とし、あわせて前述の業務を行うに支障のない
範囲内で、委託を受けて、これらの保険施設を利用して労働者の福祉の増進をはかるため必要な業務をも行うことができることといたしております。
第四に、事業団の財務及び会計でありますが、事業団の予算、事業計画、資金計画、財務諸表、借入金等につきましては、その業務が国の代行業務たる性格にかんがみ、労働大臣の認可または承認を受けることを要するものといたしております。
第五に、事業団は、労働大臣の監督に服するものとし、労働大臣は、事業団に対して、監督上必要な命令等をすることができることとし、また、事業団の業務の監督等に当らせるため、特に労働省に労働福祉事業団監理官一人を置くことといたしております。
なお、設立初年度の特例といたしまして、労働福祉事業団が昭和三十二年度に行う業務は、これら保険施設の運営のみを行い、設置は行わないことにいたしております。
以上がこの
法案の
提案の
理由及び要旨でありますが、何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決下さるようお願いいたします。