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1957-04-27 第26回国会 参議院 社会労働委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月二十七日(土曜日)    午前十時四十四分開会   —————————————   委員異動 四月二十五日委員谷口弥三郎辞任に つき、その補欠として前田佳都男君を 議長において指名した。 四月二十六日委員勝俣稔辞任につ き、その補欠として西田隆男君を議長 において指名した。 本日委員前田佳都男君、西田隆男君及 び山下義信辞任につき、その補欠と して井村徳二君、勝俣稔君及び柴谷要 君を議長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     千葉  信君    理事            榊原  亨君            山本 經勝君            早川 愼一君    委員            勝俣  稔君            寺本 広作君            西岡 ハル君            横山 フク君            大河原一次君            片岡 文重君            柴谷  要君            藤田藤太郎君            藤原 道子君   政府委員    警察庁長官   石井 榮三君    警察庁警備部長 山口 喜雄君    法務省刑事局長 井本 臺吉君    労働政務次官  伊能 芳雄君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働情勢に関する調査の件  (佐賀教職員組合春期闘争関係の  紛争に関する件)  (山口生田鉱業所労働問題の紛  争に関する件)   —————————————
  2. 千葉信

    委員長千葉信君) それではこれより社会労働委員会を開会いたします。委員異動を報告します。四月二十五日付をもって、谷口弥三郎君が辞任し、その補欠として、前田佳都男君が選任されました。四月二十六日付をもって、勝俣稔君が辞任し、その補欠として、西田隆男君が選任されました。次いで、四月二十七日付をもって、西田隆男君、前田佳都男君及び山下義信君が辞任され、その補欠として、勝俣稔君、井村徳二君及び柴谷要君が選任されました。
  3. 千葉信

    委員長千葉信君) 労働情勢に関する調査を議題といたします。御質疑願います。
  4. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 特に私は、警察関係、また、自治庁関係、文部省の関係、いろいろと関係が深いのでありますけれども、佐賀教組の十一名検束休暇の問題をめぐって重大な問題が起きているわけです。きょうは労働省から次官が見えておりますから、この問題について少し聞いてみたいと思うのです。この発端をなすものは、何といっても佐賀県の教員職員その他佐賀県に勤めておられる人々の佐賀県の行政上からきた問題が根本発端をなしている。地財法適用に当って、教員だけをみましても四百八名ですか、三十一年の三月に教員が四百人名、警察が十七名、県の職員が二百二十五名、その他臨時雇多数という工合にして整理がされているわけです。そこで、地方財政再建整備法を受け入れるに当って、かようなものが施行されて、この首切り実施のときには、佐賀県では重要な問題を起したのであります。それだけ大量の首切りをすることが妥当であるかどうかということで問題を起した。そこで、一応この問題はおさまったといいますか、結末をつけたわけであります。ところが、またあらためて昨年の暮れから今年にかけて二百五十九名という教職員に対する首切りの問題が出てきた。問題は、こういう形で働いておる者が職場身分が保障されない、簡単に首を切られる。特に公共団体である県自治体が、そういうことをやっているということについて、労働省はどうお考えになっておりますか。ここからまず最初聞きたいと思います。
  5. 伊能芳雄

    政府委員伊能芳雄君) 労働省といたしましては、労働行政立場から好ましくないとは存じますけれども、使用者の方の立場もありますので、使用者としてそういう場合にやむを得ない。でそういうことをやる場合には、それぞれの手続を経てやられることについて、好ましくはないけれども、やむを得ない、こう言わざるを得ない立場にあるわけでございます。
  6. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そのような立場において首を切られることはやむを得ない、今日でも労働大臣厚生大臣のことは担当委員会でありますけれども、たくさんな失業者があり、潜在失業者がたくさんあり、ボーダー・ライン層の人が白書を見ても一千万人に及ぶという状態、特に地方財政再建整備法適用県として適用するということは、その県財政を確立するというところに根本の問題がある。単にこれは自治庁だけの問題ではないと私は思う。労働問題については、相通じて労働省の深い理解と指示と指導というものがそれにつながっていなければ、私は行政妙味というものが発揮できない、それに今、次官の、単にそういう事実が出たことはやむを得ないというような答弁では、われわれは納得しない。だから、その地財法適用から、千人からの首が切られ、また、今年首が切られる、こういう状態についても、これも労働省としては、そういう労働関係についてはやむを得ない一点張りで労働行政をおやりになるのですか、そこのところを聞きたい。
  7. 伊能芳雄

    政府委員伊能芳雄君) 通常労使関係におきましては、もちろんそういう前に必ず労働行政関係の方でかねて知る場合には、その場合において適切なる指導をし、あるいは首切りを防止するというような話し合いもしてみることもありましたが、何分にも地方公共団体の場合でありますので、そういうことは知事みずからが、労働法によって労働所管行政をやりながらやることでありますので、そういうことも十分知事立場において勘案した上で以後の手段に出たものであると、こう考えまして、通常使用者に対するように強い態度で、労働関係から知事の場合には、あるいは市町村の場合には臨むわけにはいかない、そういう立場にあると、こう考えております。
  8. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 その流れてきた結果はこうだとおっしゃるのだが、自治体にこれだけの大量の首が切られて、これは失業の群の中に入るわけです。そういう事態が順次次から次に流れていうことについて、労働省労働者保護立場からどうお考えになるかということを聞いているのです。知事の下には労政課があり、その他の行政区分があって担当しているから、そこできよったのだからしようがないということじゃなしに、全体の日本の失業潜在失業貧困という状態の中で、今ここで失業群にほうり出すということは、社会的にも人間的にもそれでいいのかどうか、そこに厚生労働行政妙味がある。地方に間違いがあれば直していくという指導も必要でありましょう。こういうところに労働行政妙味がある。そういう工合に、首切りが順次流れているという状態について、労働省はそれはそれでもういいのだ、こういうことでいいのですか。
  9. 伊能芳雄

    政府委員伊能芳雄君) これでいいんだということは申し上げているわけじゃないので、先ほど来申し上げているように、好ましくはない、こう思っておりますが、かといって、地方団体に対して財政上の立場から、かりに民間事業にいたしましても、どうしても会社が立っていけない、これでは共倒れになるというような会社の場合においては、その会社が立っていくためには人員整理もやむを得ないということもあり得ることで、地方財政の場合においても幾ら税金を取ればいいのだといっても、地方財政もこれはまた確立させなければならないという要請もあることでございますので、多少のこういうことが出ることはやむを得ない、ころ思うのでありますが、私はこの内容をよく承知していませんが、概していえば、首切りがそんなに、この定員を減らしたというので、現実首切りがこれだけあったかどうかということについては、私も先ほど示された数字というものがほんとうの実数であるのか、あるいは定員の上で切ったのか、ここの点きわめておりませんので、県でこういう整理をする場合にはかなり定員を切っている、あとは職場転換でやっておると、こういう考慮を相当払っていると私は考えておりますので、現実にあれだけの者が全部失業戦線に出されたということは言えないと私も思います。そういう場合には、また、特別の行政整理として、退職金等についても相当優遇する措置を講ずる、そういうことも講じた後、かつこういうふうな実際の首切りがあったとしても、これは実情の上からいってはやむ得ないと、こういうふうに考えておる次第で、先ほど来申し上げておりますように、望むことでもない、好ましいことでもない。しかしながら、そういう行政整理というものが絶対にいけないものであるということは言えるわけにも参らない、こう考えております。
  10. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今次官は、たとえば三十一年三月の四百八人、二百二十五人、十七人、その他、臨時雇多数ということで首が切られた。今度また、二百五十九人の出血が生まれている。これについて、次官は、定員関係で、実際の出血はもっと少かったのではないかとか、こういう出血はよくわからないということを言われましたが、私はこの問題は、自治庁との関係が非常に深い、深いのですけれども、しかし、現実にこれだけの失業者がある。  そこで私らが一番問題にしたいのは、地財法適用という問題は、県の財政建直しで、久年の間にその負債をたな上げにして再建をするというときには、単に建設投資その他の問題ばかりでなしに、労働者身分保護、それから生活の問題、一切の問題が、この地財法適用に関連して生まれてくる、それは労働省は、そういうものには一切無関心でおっていいということではない。内閣を構成しておるのですから、内閣の中のおのおのの行政分野担当があるのであるから、だから私は三十一年の三月にこれだけの首を切られた。また、昨年の暮れから今年に二百五十九名の首切りが出る。私は二度とそういうものが起らないように、労働省としては、自治庁関係とか、内閣全体としてこのようなものは排除するというところに政治妙味がある。当然そうやるべきだ、私はそう思う。そこのところあたりのことが、どうも次官答弁を聞いていると、何かよそでやっておるような感じを受けるのですが、そこのところあたりはどうですか。そこはこういう地財法適用に当って労働問題その他については全然タッチをしない、関係がないというお考えなんですか。そこらあたりはどうですか。
  11. 伊能芳雄

    政府委員伊能芳雄君) 地財再建促進法、これができるときには、これは部内の調整はずいぶん自治庁が骨を折ってやっておることでありますが、あの法案の審議の過程においても、そういう問題も当然委員会で審議されておるわけであります  そこで、個々の適用の問題になりましては、労働省も一々どこの県でどれだけの出血をやるかというようなことを握ってはおりませんのです。出先機関ではもちろん当然承知しております。出先機関労働省労働行政に関する、こういう面は知事自身出先であります。よく承知しておられるわけであります。これらの県の詳細の報告は、そのつどみな労働省へきておるというわけには参りません。ただ大体の傾向として、失業者がどういうふうに出てくるかというような傾向は、もちろんにらんでおりますし、ことに大量に首切りが行われるような場合には、それに対する対策は、それぞれそのつど労働省としても、非常な関心を持っておるわけであります。佐賀県のこの問題につきましては、私も大量なものとして特別に扱ったかどうかはよく承知しておりません。
  12. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 これは特別に扱ったか扱わぬかわからぬという問題に論及、しかも、こういう現実の問題が出ておることについて、地財法適用の県とかというものが、全国四十数府県全部が適用じゃない、そのうちの特に困難な財政のところに、地財法適用というものが、県と政府との間に行われておるわけです。そういうことを適用されるということになると、この労働問題が次から次へと出てくるということ、首切りの問題が出てくるということを、地財法適用の際に、自治庁考慮しなければなりませんけれども、労働省もその際には十分に考慮を払われて、その次に、再建の道を進めていかれるという配慮があってしかるべきだ、私はそこを聞いておる。そういうところは出先でやっておるのだからというような御答弁じゃ、今の国全体の失業状態の中からは、私は労働省というものは、それじゃ何を総合的に労働者保護失業者をなくする、そういう問題について行政をやっておられるのかわからなくなる。ただ統計で出たから、全体の数がわかったから、こういう問題についてはこう考えようという程度じゃ、生きた政治じゃないと思う。失業者が出ないように努力するところに、貧困者が出ないように努力するところに、政治妙味が私はあると思う。そういう点が今の労働次官のお考えじゃ、どうも私は納得がいかない。そこのところをもう一度お聞かせ願いたい。努力をされたか……。
  13. 伊能芳雄

    政府委員伊能芳雄君) この問題は、失業者を出すというだけの問題として考えれば、地方事業体失業者を出すというのと同じに考えなければならない問題でありまして、その地方でこれくらいの失業者が出る、しかし、一方には求人がこういうふうにあるというので、一方に求人をされておるのでありまして、その県限りで相当程度の吸収もされておることは事実でありますし、それをこういう事業所目切りがあったからということが、県だからこそこういうふうに問題になりますが、一々労働省でこれを、その一つ一つ取り上げてやるというわけにはなかなか参らないと思うのです。県ごとにそういう問題をやる、それで県の問題では解決できない段階において、国が当然、労働省としてどうするかということを考えて、全体の問題としては……。でありますから、全国失業者がどういう状況になっておるから、その失業対策についてはどうするか、また、雇用の拡大についてはどう努カ政府はしなければならないか、労働省はしなければならないかということは、当然考えておるわけであります。そういうわけで、県の場合は少くとも県で、ある程度まで自主的に、相当県自身労働法をもってやる、そういう問題を。だから、労働省出先とも言えるし、あるいは県自体行政ともいえるでありましょうがやっている。そうして一方には安定感を持ち、一方には労働行政を握っており、労政官を持っておる。そうして県知事として相当独立性をもった行政をやっておるわけです。それは当然国の大きな立場から言えば、労働行政労働省方針がそこに流れて参っているわけであります。出先で解決さるべきものは、当然出先で解決さるべきもので、解決できない大量的な馘首というものは、当然労働省がこれを総括的に方針をやっていく、こういう行き方でいかなければならないわけでありまして、これは一事業体出血の問題として、一応は労働省としては考えざるを得ないと、こう思うのであります。
  14. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 どうもまだ私は、失礼な言い方だけれども、いずれ労働大臣に、この点についではもう少し私は聞かないと、どうも納得がいかぬ、普通の会社と同じようにみていく、普通の会社では……官庁だから取り上げる、普通の会社じゃ取り上げないという物の言い方をされている、普通の事業体であっても、どこであっても、首切られるということは、首を切られる本人にしたら重大な問題であります。国会で取り上げて、当然そういう問題の、大量に首を切られるというような問題については、国会で取り上げ、社会でも取り上げられて当然なことだと思う。そういうことがないようにするのが、私は行政妙味だと思う。それに今のような物の言い方をされる。特にあなた方の出先である知事以下労政課長その他のたくさんな出先がある。そういうところにこういう現実の問題が起きている。特にここで私が言いたいのは、地財法適用をやられたために、大きな出血が出て、健全な地方財政地方行政を確立するための規律があって、そこから出ておるのに、次から次へとこういう問題が起きるということについて、私はどうも労働省の今のような答弁では、なかなか僕は納得いかないと思う。しかし、私は、きょうは警察関係その他もおいでになっておりますので、順次質疑を行いたいと思う。だから私は、労働省としてもこういう状態に、順次県で働いている者が首を切られていくということについて、今の次官のような答弁労働行政をやられるということには、納得いかないことばかりじゃないかと思う。もっと生きた、失業をどう考え労働一者をどう保護していくかというところに積極的な行政妙味があってしかるべきだと、私はそう思います。この点は、どうか一つよく心して問題を考えていただきたいと、私は思うのであります。
  15. 柴谷要

    柴谷要君 ちょっと関連して、質問を一つ二つしてみたいと思うのですが、今聞いておりますと、どうも政務次官答弁では、労働省は何もやっていないという結論になろうかと思うのであります。というのは、いろいろ同僚藤田委員質問に対して明確にお答えが出ておらない、それのみか、地方の一県において起きた現象ではあるけれども、重大な首切り問題というものに対して、しっかりした把握をしておらない、それでは私は、労働行政が完全に行われているとは思わない。そこで私が考えてみるところ、政務次官は、まだ次官に就任されて日も浅いので、十分労働事情をお握りになっておらないと思う。その点で深くは追及する意思はございませんけれども、もう少し各県等において発生した労働問題等については、こまかい数字をもってやはり説明をしてもらう方がわかりいいと思う。地財法適用を受けた県が、いわゆるいとも簡単に人員整理によって経費を浮かして、県の財政を建て直そうという考え方は、愚の骨頂だと思う。そういうような考え方に、ややもするというと各県がなりたがるのであります。こういうときに労働省が、しっかりした指導なり、監督というものを行われていくならば、私は岸内閣が唱えておりますところの完全雇用という線が、もっとはっきりした線が労働省において打ち出されてこなければならぬと思う。ところが、どうも的確な数字もつかんでおらぬというところにまありっぱな労働行政が行われておらないと思うのです。この点は特に大臣がいらっしゃいませんが、政務次官に要望しておきたいと思う。こういうことが各県冷々に発生しておるということは、全くその不安を助長さしていることであって、十分に労働省として対策を立ててもらいたい。労働省は、最近はどうも少しそういう的確なものをつかむことなくして、労働次官通達のようなものを出してみたり、いろいろ問題を最近起していると思う。こういう点は、本領であるところの労働省としての性格を十分出して、労働行政を全うしてもらいたい。これがわれわれの希望でもあり、政務次官にまあ日も浅いことですから、全般的に通暁しているとは考えておりませんけれども、もう少し親切な、しかも適切な労働省としての方針を打ち出していただくことによって、われわれはやはり国会を通じて国民に問題が明らかにされていくと思う。そういう点で、あなたは前は群馬県知事をおやりになって労働行政もかなりうまい行政をやったということを私は聞いておる。そのあなたですから、今後大いに期待したいと思うのですが、どうかその意味で、国会においては十分な資料をもって、確信をもって労働省方針を述べられるように希望いたしておきたいと思います。
  16. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 政務次官に、もう一、二点尋ねて、警察関係の方にお尋ねする前にしたいと思うのですが、この問題の起きたのは、今のような経過、私が今御質問申し上げたような経過からきて年次有給休暇をとった。年次有給休暇をとってこれが問題になった。年次有給休暇というのは基準法に定められているものであって、私は六労働日から出発して、勤続年数に応じて二十労働日有給休暇が与えられるように基準法になっている。一昨年のILOでは十二労働日、要するに二週間の休暇を与えようということが国際労働ILOできめられている。今日、世界の水準がここまできている労働者有給休暇の問題をとらえて、そういう状態の中で教員有給休暇をとった。有給休暇をとったことについて警察関係の問題がここへ出てくるのだが、有給休暇について教員がとったことが違反である、不当であるというものの考え方、こういうことが出てきていると思うのだが、次官はどうお考えになっておりますか。
  17. 伊能芳雄

    政府委員伊能芳雄君) 有給休暇をそのつど必要によって要求されることは、これは当然与えられた労働者権利であるということについては異論はありませんが、今の具体的な案は、ある一日に非常にたくさんの人が有給休暇を要求した、これは多分使用者側承認ですか、明らかに要るものだと思いますが、それは業務上とてもできないものであるから、おそらく教育委員会では、これに対して承認を与えなかった、こういうふうにこの事案では承知しております。
  18. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 基準法の三十九条に、有給休暇請求が、労働者から請求があった場合には、分割または一度に与えなければならぬという原則がうたわれている。そこでただし書きはついておりますけれども、しかし、原則としては有給休暇請求されたときには与えなければならぬという、これは基準法で明確になっているのですね。これはもう法律通りですからお認めになるわけですね。
  19. 伊能芳雄

    政府委員伊能芳雄君) 原則的にはもちろん法律がはっきりしていることですから、有給休暇を与えなければならない、これは当然なことだと思います。
  20. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、警察関係の方にお尋ねしたいのだが、教育委員会とあわせて行政処分と、それから刑事処分というものが今度の形で行われて、二十四日以後検束がされた。これは警察関係としては本部と地方と連絡してやられたのか、また、どういう法律の建前でこのような検束行為をとられたのか、そういう点をお聞きしたい。
  21. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 今回の佐賀教職員組合の二月十四日から十六日にわたるいわゆる休暇闘争に関しまして、今月二十四日に関係者の方々の出頭を求めまして、警察取調べを開始いたしましたのは、地方公務員法第三十七条違反行為であり、同六十一条の罰則適用に当るものであるという見解のもとに関係者取調べをいたしたのでございます。
  22. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 結局この組合の、それから個人権利ですか、今の有給休暇個人権利ということになりますと、有給休暇をとったということを、その教育委員会が正常な業務云々というような格好に理屈をつけて停職処分という問題が出てきた。そこで正常な教員業務というものは年次における計画というもの、むろんその中には有給休暇という問題も含まれて一年間の授業の計画というものが行われるものだと私は思う。そういう状態の中で休暇をとったものが、その教育委員会がたとえば許可があったとか、なかったとか言いますけれども、言い分が大分違っている。その個人としては校長その他の許可をもらって、ほとんどそれに許可をもらっておるということを言っている。ところが、そうでないことも出てきておるわけです。そこで、私はそういう事態の問題を、警察が入って刑事処分に持っていくということになりますれば、労働者権利と言いますか、そういうものが警察権がこのような形で入られるということは、労働者自身が非常に不安に思う。私は警察権の乱用と言いますか、行き過ぎと言いますか、そういう感じを与えると思うんだが、その点どうですか。
  23. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) いわゆる労働運動に対しまして、警察は、それが合法的に行われる限りにおいては何らこれに介入、関与すべきものではないというふうに考えております。警察は、従来そういう態度で参りましたし、今後もまた、そういう態度を堅持したいと思う。ただそれが合法のワクを逸脱して、不法な行為ということになりますならば、これは警察の職責上、無視するわけに参らない、こういうことになろうかと思うのでございます。今回の佐賀県の事例のごときは、御承知の通り、二月十四日ないし十六日に三日間にわたりまして三割、三割、四割の休暇請求されたのでございます。有給休暇請求する権利があることは、これは当然でございます、先ほど来の御議論にもありましたように。ただそれには例外がございまして、「事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。」ということになっておるのでございまして、今回の佐賀県の場合は、今申します通り、三割、三割、四割、つまり三日間を通じて全職員一〇〇%になるわけでございますが、少くとも三日間のうち一日は全員が休暇をとると、こういうことになるわけでございますので、それでは学校教育の正常な運営を妨げるという見地から、教育委員会なり、校長さんの方においては、これを承認しがたいという措置をとられたのでございます。にもかかわらず、あえて休暇をとられて大会を持たれたと、こういう実情になっておるように存ずるのでございます。
  24. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 業務の正常な運営を妨げるという根拠を、具体的にどういうふうにつかまれておるのですか。そこのところをお尋ねしたい。たとえば文部省は、授業を放棄したのはなかったとそういうように発表しておるのですが、それと正常な今の業務の運営が阻害されたという問題になってくると、私は大きな食い違いがくる。それじゃ正常な業務を妨げたという、違法行為だという判定をされたのだが、どういう形であったから正常な業務が阻害されたのか、どういう判断をされておるか、そこを一つお聞かせ願いたい。
  25. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 私ども現地から報告に接しておるところによりますと、臨時休校を余儀なくされた学校もかなりあったということを聞いております。また、先生の手が足りないために生徒児童の自習にまかすという形をとられた学校もあった、こういうふうに聞いております。
  26. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私の調べた範囲では、そういうことを聞いてないのです。届出を出して休暇をとった、だから文部省の発表しているように授業を放棄したのはゼロであったというふうに聞いておるのだが、そういうところと大きな食い違いがある。もう一点は、今許可があったかなかったかという問題に入っていくわけなんだが、そこにも大きな食い違いがある。私はそういうお互いがすっきりしない状態の中で、今のような検束をしている。行政罰自身も不当であるという考え方に私は立っております。休暇をもらって、正常な形で休暇をもらったものが、行政罰で停職をくらった、これはなかなか納得できない。それにおっかぶせて刑事措置が講じられるということになるとなお納得ができない。これは私は、政治的な意図によって労働運動を弾圧する、こういうところにピントを合わしてやられた行為じゃないかとまで私は思っている。その点どうですか。
  27. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) いろいろ事実の認定につきまして、私どもの現地からの報告と、お聞きになっていることと食い違っておるようでありますが、現地の佐賀県の警察といたしましては、この問題を取り扱うにつきましては、従来に例のない、異例のことでございますので、きわめて慎重な態度をとったのでございまして、二月十四日ないし十六日のこの問題を、二カ月余も経過した昨今に初めてこれを対象として取り上げるというのも、それだけ慎重に検討するために時間をかけたという証明であろうかと思うのでございます。何か政治的な圧力があってそうなっておるのではないかというお尋ねでございますが、現在の警察の制度は御承知の通り警察政治から、中立を保つ制度になっておりまして、政治に左右され警察が処置をとったということはあり得ないのでございます。今回の佐賀県の警察がいろいろこの問題を取り上げましたのも、決して外部からの政治的圧力によってこういうふうになったものでは絶対にないということを申し上げます。
  28. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 その後段の政治的圧力によってやったのじゃない、そういうことであっては警察は困る、こういうことについては私はそうあってほしいと思う。あってほしいと思うんだが、今度の問題をずっとつぶさにながめてみると、そうなかなか今長官の言われたようなことに理解がしにくいところに私は問題があるから、私は御質問をしているわけです。たとえば長官の発言の中にも、あの問題については、あれは地方警察が勝手にやったのだと、こういう発言をされている。順次事態が進んでくると、あれは本部と言いますか、中央の指示によってやられたんだ。こういう形が発言の中に出ていると私は聞いている。だから、そういう点については、今長官が言われたように、全体的に中央、地方と総合して検討してやった、こういうことですか。
  29. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 中央の指示によってこの事件の検挙をしたというように、私は申し上げた記憶はないのでございますが、もしそういうふうにお聞き取りになったとしますならば、この機会にあらためてはっきり申し上げておきますが、中央の指示で佐賀県の警察がこの問題を取り上げたものではございません。  御承知の通り、現在の警察制度の建前からいたしまして、個々の日常生起します犯罪事件についての捜査の権限は、都道府県警察本部長が執行最高責任者としてやっておるのでございます。私が直接これを指揮するという権限はないのでございます。  ただこの問題は、先ほども申しました通り地方公務員法三十七条でこの種の問題を取り上げるというケースは、いまだかつてなかったという点からいたしまして、現地の佐賀警察におきましてはきわめて慎重な態度をとっている。いろいろ事実の調査ももとよりのこと、法律解釈等につきましても、十分検討を加えた、その検討の過程においては、現地の佐賀警察だけの独断であってはならないので、そういう意味におきまして、中央の私どもに法律解釈について相談をしてくる。その相談を受けて私どももさらに警察内部のみで判断をするのは適当でないので、法務省あるいは最高検等の見解も十分にただす、尽す、こういうふうにいたしておるのでございまして、それをこの法律解釈はこうであるということを押えるという意味におきまして、それを指示とお考えになるならば別でございますが、そういう意味合いの地方、中央の連絡はございましたが、事件そのものをかくすべしと、中央の命令で佐賀県のこの問題を検挙すべしというふうな指揮は私はいたしておらないのでございます。
  30. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は委員長にお願いいたしたいのですが、今の警察庁長官の話を聞いてみても、地方が問題を提起して報告を受けて云々という話がある。労働次官の話を聞いてみても実態をよくつかまえていない。こういうことでですね、具体的には佐賀県で問題は進行している。十一名の検束が行われて、聞き及ぶところによると、また、次に検束者が出ておるということも聞いておる。私はこういう重大な問題は、佐賀の現地の関係者国会に呼んで、この問題を明らかにすべきだ。私はそう思う。だから、その一点は一つ委員長の方で十分に配慮をしていただきたい。これが第一のお願いです。  続いて質問をしますが、今のような格好で、たとえばその教育委員会そのものが停職処分行政処分をした。警察がこの問題に立ち入って、刑事問題に立ち入っていったということになっているのだが、聞き及ぶところによりますと、任意出頭というのは形だけで、任意出頭即逮捕という形でこの問題が処理されている。私はそういう事件の内容なのかどうか、警察庁長官はどうお考えになっておるか、このようなこの種の休暇から出てきてあとに何も問題が起きてない。県会を通じてこの問題は解決をしている。たとえば二百五十九名のうち全部は一応首切るが、あと人が足らないので百二十名新たに雇う、こういう話が自治庁との間にできて、そしてまだ人が足りないという状態まできている。こういう複雑な様相を持っておりながら二百五十九名を首切る、そういう問題であるからこそ佐賀県の県会では、この問題が順次審議され、知事、県会、自治庁という関係で問題が着々と言いますか、一応おさまったのに、今日このようにして任意出頭即逮捕という形で、刑事的に取り扱わなければならぬというその真意、そういう点について長官はどう考えておりますか。
  31. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) およそ捜査のあり方と申しますか、私常に日ごろ第一線の諸君に要望いたしておりますことは、あくまで基本的人権を尊重しつつ、真実の発見に努めるという捜査のあり方でなければいかぬのだ、そのためにはいわゆる任意出頭を求めまして、事情を聞くことによって、捜査の目的が達成されるのが望ましい、あえて強制捜査、身柄を拘束して取調べをするということは必ずしも望ましくない、こういうふうに私は考えるのでございます。任意出頭によりまして、任意捜査によりまして目的が達成されるならば、それが望ましいのであります。なるべくそういう方式をとることに努めておるのでございます。それについて、捜査の目的が達せられないときは、遺憾ながら強制捜査の手段によらざるを得ない、こういうことになるのでございます。従いまして、今回の佐賀県の問題の場合におきましても、現地の警察といたしましては、当初はいずれも任意出頭を求めたのでございます。任意出頭に応ぜられた方もございます。そうでない方もございます。その後も任意出頭で終始取調べを進めておる方もございます。具体的数字を申し上げるならば、二十四日の日に十名の方に出頭を求めたのでございます。その日一日で捜査の目的が達成されますならばそれでお帰り願っておしまいということにもなりましょう、遺憾ながらそうでなかったために、引き続き捜査をしなければならない、その場合にやむを得ず十名の方に対して逮捕令状を執行いたしたわけでありますが、逮捕令状を執行するにはそれ相当の理由がなければならぬのでありまして、御承知の通り、証拠を隠滅するとか、あるいは逃亡のおそれがある、こういう理由がなければならぬわけでございます。今回の場合は、証拠隠滅のおそれありとして逮捕令状を執行したと、こういうふうに私は現地から報告を受けておるのであります。
  32. 千葉信

    委員長千葉信君) 藤田委員にお答えいたします。ただいま御要望のありました、事態を正確に把握するために、現地から関係者を召喚するという御希望については、理事会で慎重に協議して決定することにいたします。
  33. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今、長官の概念についてはわれわれもうなずけるのですが、任意出頭したあとに危害が及ぶか及ばぬかという問題が起きるときは、拘束の必要もあるでしょう。しかし、この問題は教育委員会当局を通じて県会で処理されて、自治庁との間で処理されて、具体的な事態はもう進んでいる。そういう平気な事態にあるのに、今長官は、任意出頭の状態にあるものもあると言われましたが、任意出頭即逮捕状という格好の令状が執行されて全部拘束されておる、こういう格好で取調べが行われておる、そういうふうに聞き及んでいる。私はそこを聞いた最初の概念は、私はその通りだと思いますけれども、具体的に行われている事実というものはそういう格好でない、ここのところはどうですか。この種の事件について、概念の問題ではなく、この種の事件について妥当であるかどうかというお考えを聞きたい。
  34. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 先ほど申し上げたことを繰り返すことになるのでございますが、任意出頭によりまして捜査の目的が達成されるならばこれが望ましいのでありまして、身柄を拘束して調べるということは努めて避けるべきであると思うのでございますが、任意捜査によって捜査目的が達成できない場合にはやむを得ず強制捜査、すなわち、身柄を拘束して捜査をするという手段に訴えなければならぬと思うのでございまして、それはそのときどきの状況によって判断すべきものでございますので、先ほど申し上げました事柄を繰り返すことになるわけであります。
  35. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、たくさんの問題を残しているこの問題は、先ほどからるる申し上げておるように、まあ、具体的には現地の関係者を呼んでという問題にまでいかなければ、これはもう明確にならない問題だ、私はそう思います。今の長官にしても、次官にしても、概念上の問題についてのお答えだけじゃ、なかなかわれわれは納得いかないのです。で、非常に残念ながら、時間がないので打ち切らざるを得ないのですけれども、私は、今の拘束されているこの種の事件の状態において、根本的に行政処分納得いかないし、刑事処分も、刑事処分にまだいっておりませんが、刑事的な取扱い、この問題の取扱いについても私は納得いかない。だから長官としては、十分にこの問題を、労働運動とも関係したこのような問題は十分にお考えになって、国民や労働者に不安を与えないような処置を早急にとっていただきたい、これだけを私は希望いたしておきます。で、あらためてまた、この問題は、具体的な事実として自治庁やそれから文部省その他関係者に来ていただいて、具体的にこの問題の調査に入りたいと私はそう考えまして、一応私の質問を打ち切ります。
  36. 柴谷要

    柴谷要君 私は、これはまあ文部大臣がいらっしゃいませんので、少し質問がお答えにくい点があるかと思いますけれども、労働省並びに警察庁長官に三点お伺いしたいと思うのでございます。今回の休暇佐賀県の教職員の方々がとったそのことが、何か違法な行為であって、正常な運営を阻害したから、こういうようなかどで今お取調べをやっているように思うのですが、大体基準法に示されておりまするけれども、有給休暇はこれは労働者が当然とれる権利がございます。この有給休暇は大体許可制をとっているのか、届出制をとっているのか、この点について、一つ労働省の見解をお尋ねしたいと思います。
  37. 伊能芳雄

    政府委員伊能芳雄君) 与えなければならない、与えるという言葉を使っているところから考えまして、使用者承認を与えるというふうに今まで解し、また、事実上さように取り扱っているように考えます。
  38. 柴谷要

    柴谷要君 政務次官のただいまの御答弁だと、許可するということになるわけですね、承認ということになりますが、届出でない、許可をする、そうでなければ休暇労働者に与えないと、こういう見解になります。そういう見解をおとりになっているとすると、これは間違いだと思う。たとえば、これはおのおの企業は違いますけれども、団体交渉によって与えるということなんですから、有給休暇というものは労働者権利なんです。だから、労働者がこれを要求したときには与えていく、与えるということはこれは筋道なんです。ですからこれが許可制か、届出制か、この二つの議論はずっと続いてきた。ここに問題の分れる点がある。ですから、あなたの方ではあくまで許可制だと言われるが、労働者の方は届出制と言われる。ですから、佐賀教組の問題にしても、休暇を届け出たんだ、だから私は休んだんだと言えば、労働者権利を行使しただけで、何ら違法な行為じゃない。しかも教育の方針としては、授業計画というものを教職員は一カ年立てる。たまたま職員休暇を申請してきた。これは事情を認めてお休みなさい、こういうことになった。そうすれば、受け持ちの授業というものは、その日は大体復習か何かで終ってしまう。これはもう労働省も十分御存じだと思う。そうしますと、年間授業は、必ずいずれの日にかに取り戻している。授業計画の中で取り戻している。ですから、そう大げさに取り上げて、これが違法だ、検束をする、ぶち込むというような手は、どう考えたってあり得ないと思う。そこでお尋ねしたいことは、佐賀教組の問題が、どれだけ悪影響を及ぼしたかどうか。国民生活に重大な影響を与えたか、こういう点を考えてみまする場合には、なかったと思うのでございます。しかもこの問題が落着をしたときに、教育委員会は、円満に解決するために処分者は出さないということを申しておる。ところが、時日を経るに従って、これが急にどうも様相が変ってきている。そこに私は問題があるかと思うのですが、これは教育委員会態度と並行して、警察がどうしても手を出さなければならぬという事情になってきたのか、この点を一つ大へん回りくどい質問かもしれませんけれども、長官の心境を一つお聞かせ願いたいと思います。
  39. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 教育委員会がお取りになりました行政処分と、警察のいわゆる刑事処分とは、これは全然別個でございます。行政処分があれば、必ず刑事処分をしなければならぬというものではございませんし、行政処分がなくとも、刑事処分の対象として考えなければならない場合もありましょう。これはおのずから観点が違う、立場が違うのでございます。現実に今回の佐賀県の場合を見ましても、行政処分を受けた者は、私の聞いておるところでは、たしか十一名であったと思います。ところが、佐賀警察取調べをいたしております者は、現在十二名でございます。うち、十名が通常逮捕、逮捕令状によっております。あとの二名の方は任意捜査によっておるわけであります。そういうふうに違っておるわけであります。行政処分教育委員会でやられたから、それに即応し、それに並行して刑事処分をしなければならない、こういうものではないのでございます。
  40. 柴谷要

    柴谷要君 それではまあ時間もございませんので、もう一問だけお尋ねしておきたいのですが、不祥事態の発生ということについては、これは私どもとしても極度に防いでいかなければならないと思う。しかし、事が発生をしたからこれは徹底的にやらなければならぬ、こういう気持はお互いに持っておっても、法の運営ということは、やはり情をもってしていかなければならぬと思う。私は多少現場の監督の地位にしばらくおりまして、まあ部下にも不祥な人間が出たことがある。これがたまたま警察の御厄介になったことがあって、まあいろいろ折衝したことがあるわけです。その際、大へん温情ある措置をとっていただいたことがあるわけです。というのは、行政処分をやられるならば、自分の方は目をつぶろう、こういう何と言いますか、法の上で妙味を発揮された、こういうことがある。今日の問題として、これはまだ進捗中で、調査中ではありますけれども、長官はそういう気持のお持ち合せがあるかどうか、こういう点について、一つお考えを教えていただきたいと思う。
  41. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 先ほども申し上げました通り、現地のこうした事件については、私が直接指揮する権限がございませんので、こうしなさいということを佐賀県の方に申すわけには参りませんが、今お話しに出ましたように、ある一つの事柄について、それが行政処分の対象にもなり、同時に、刑事処分の対象にもなる場合、相当重い行政処分があったから刑事処分の方はこれを行わないというような事例は、事案のいかんによりましてはあります。従いまして、常にその点は、捜査に当る者といたしましても、そういったいろいろな状況を勘案いたしまして、相当重い行政処分があった上に、さらに刑事処分の対象にするのは適当でないという判断をした場合には、これはあえて刑事処分として取り上げないということも、場合によってはあり得ると思います。今回の場合は、そういう点も、もとより現地の警察としましては、一応考えてみたことであろうと思うのでありますが、結果として、現実刑事処分として取り上げて今日に至っておるわけであります。今さらそれを取り消すわけには参りません。また、私から、こうしろ、ああしろという指図もできないのでございます。要は、今後この捜査をできるだけすみやかに進めまして、警察当局として所期の目的を達するならば、今回の解決を一刻も早くはかり、さらに、迷惑をかけることのないように、その点については最善の注意を払い、また、最善の努力を払うものであると思いますので、その点は現地の警察も十分注意をいたしておると思います。
  42. 柴谷要

    柴谷要君 問題が非常に重大な問題でありますので、たくさん内容を残しております。非常に上ずった質問しかできなかったので、問題をあとに移しまして、本日はこれで質問を打ち切りたいと思います。
  43. 山本經勝

    ○山本經勝君 まず、伊能労働政務次官にお伺いしたいんですが、今お話があった佐賀の問題とケースが若干違っております。しかし、やはり争議にからまる問題なんです。その問題というのは、山口県の厚挟町にあります三興鉱業生田鉱業所という炭鉱の問題なんです。実は御承知のように、この春闘に、炭労傘下の一組合として闘争を遂行した。たまたまこの闘争の過程で払った問題を、警察——これは厚挾警察署ですが、威力業務妨害ということで、この組合長の木田虎夫、それから副組合長の小原量、それから山口炭労の事務局長をやっております島田兼雄、この五名を不法に逮捕し、不法に勾留を長期にわたって継続したという問題なんです。この鉱業所は、経営者が村井朝一という人で、直接現場の責任者は、不二語という所長です。  問題の起ったのは、今年の三月二十一日から、山口炭労の指令に基いて、無期限ストに突入した。これは言うまでもなく、賃金要求が入れられないためなんですが、ところが、この二十一日にストに入った際に、ストライキの効果を確保するためには、坑内に出炭があってはならない、あるいは会社のトラックで石炭の精み出しが行われる、こういうようなことは、当然争議の効果を確保するために、ピケその他の方法によってこれを阻止するわけでありますが、特にここで政務次官にはっきりとお伺いしておきたいのは、この生田鉱業所と生田炭鉱労働組合との間には労働協約がある。その労働協約には、争議中に、会社が雇っておる従業員のストライキが行われるのでありますから、それを切りくずすために、組夫等に就業をきせるようなことはしてはならない、また、しない、こういう協定がある。ところが、ここでは二十一日、ストに突入いたしますというと、会社側が組夫数十名を使って——この組夫というのは実は非組合員でありまして、そして請負師の下で働いている。で一定のこの事業所内における区域を定めて、あるいは業種を定めて、請負にまかせてある仕事があるわけなんですが、そこで働いている労働者で、申し上げるようにこれは組合員ではない。ところが、労働協約は、この組合員ならざる組夫なるものを、争議のときには争議切りくずしのために使うようなことはいたしません、してはならない、こういうような協定がある。ところが、二十一日の朝、たまたま石炭の積み出し作業や、あるいは選炭機の運転や、あるいは坑内に、箱に積んだ荷箱というのがございますが、こういうのの搬出を試みたわけでる。そこで、組合側はこれを阻止する対抗手段として、まず第一番に、二十一日の午前六時ごろ、坑口付近に集まって、全組合員約二百五十名が、決起大会を開いた、要求貫徹の決起大会を開いた。そしてまあ坑口からも……ただいま申し上げますように、坑内の道に箱を立てて、その箱に石炭が積んである。そいつの搬出をさせないようにする、これは今申し上げたような組夫等が入ってやるのですから、これを説得し、阻止する、こういうことであった。  それからいま一点は、会社の方が五トン積みの大型トラックに石炭を積んで出そうとしたところが、それらについては、そのトラックの運転手等に、現場におった組合員が、いろいろな意味で、おれたちは正しい要求を掲げて貫徹のために戦っているのだ、従って、皆さんもまたともに働く従業員ではないかということで、説得これ努めて、これまた阻止をしたということ。  それからこのトラック積み出しによる阻止が、二カ所ばかりで行われた。梶橋というところがあるようですが、その橋の近くでも、同様な問題が起っている。そういうようにして積み出しを阻止した、こういうことが連絡があっている。  それからいま一つは、会社の事務所前の路上に、組合員が多数押しかけて、なぜ組合員の切実なこの要求を受け入れてくれないのかという叫びをあげている。特にこれは中小炭鉱でございますが、昭和二十九年、三十年の春等には、非常に苦難な状態でございましたが、今は石炭ブームとも言われるほど非常な好景気である、しかも石炭は何ぼ掘っても足りないというような状況でございますから、賃金値上げによる要求を——切りくずされた要求を旧に復するという切実な訴えを、この事務所の前の道路上に集まって多数が要求し、そこにすわり込んだ、こういうようなことが行われた。  それからもう一つは、この二号炭坑というのですか、この炭坑は一号、二号というふうにこうして分れている。二号炭坑の石炭を掘り出したのを選別するところの選別所のスイッチを切ったとか何とかいうような問題が起ったようであります。これはだれが、どうして、どうしたのか、いつ、したのかというようなことははっきりしておらない。  そういう状態の中で、以上申し上げましたような主要な点、四つの問題がある。こういう状態であったのでありますが、二十一日にストライキに突入してから、約十日間で問題は解決がついている。しかし、二十一日の初日にこういう事態が発生しただけであって、事後には問題は残っておらない。  ところが、たまたま今月の、四月の十九日になって、にわかに警察の方が調べを始めた。そうしてさらにあとでお伺いを——警察庁長官並びに法務省の刑事局長等に、法解釈、あるいは運用面での問題は御質問申し上げますが、経過を申し上げますと以上のようなことである。  ところが、もともとこの問題は、最初申し上げたように、労働協約によって、非組合員ではあるけれども、争議中には組夫は就業させないという条項があるにもかかわらず、それらを使ってこういう作業を強行しようとしたところに、以上申し上げましたような四点のトラブルが若干起っている。で、こういうような状態があって、そこに直ちに警察から、いわゆる検束、あるいは検察庁の勾留、それが昨日の夕方まで続いている。こういうことなんですが、こうして争議の経過を見て参りますと、不当な争議とは考えられないのですが、ことに労働協約の建前から言って、当然会社側に責任があるにもかかわらず、労働者側に責任があるかのごとき取扱いを受けたということは、きわめてこれは不当な、いわゆる争議に対する干渉ではないかと考えるのですが、労働省当局としての次官のお考え方はどうでありますか。はっきりとお答えを願っておきたいと思う。
  44. 伊能芳雄

    政府委員伊能芳雄君) 私どもも、この案件について聞いている限りでは、一定数以上の請負業者を争議中は就業させてはならないという単独協定があったということを聞いているのであります。そういう点から言いまして、この場合の請負業者の使用は、協定違反になったかと思われるような節があるのでありますが、かりに協定違反となったといたしましても、そこに違反があったゆえをもって暴力的な行為、不法なピケが行われたとすれば、そのピケを合法化するわけには参らない、かように考えております。
  45. 山本經勝

    ○山本經勝君 それでは具体的に伺っておきたいと思うのですが、午前六時に——これは検察庁の方のお調べとも食い違わないように、特に注意をお願いしておきたいのですが、検察庁の方で言われた問題点を私は今申し上げている。まず、組合員が午前六時に坑口付近で決起大会をやった。このことはいわゆる違法なものでしょうか、妥当なものでしょうか、どうお考えになりますか。
  46. 伊能芳雄

    政府委員伊能芳雄君) いわゆるピケというものが、平和的説得の範囲である限りは合法的である、かように考えますが、もし暴力、あるいは威圧というようなものが加わる場合には、非合法になるおそれが多分にある、こう考えます。
  47. 山本經勝

    ○山本經勝君 いや、私はそういうふうに、ピケのことを伺っているのじゃない。午前六時に決起大会を坑口付近でやったことはどうなんでしょうか。
  48. 伊能芳雄

    政府委員伊能芳雄君) 他に別に協定違反ではない限り、坑口付近で大会をやること自体について何ら違法性はない、こう考えております。
  49. 山本經勝

    ○山本經勝君 大体これは違法性があろうはずがない。大体ないのです、私ら考えて。これは違法性があろうはずはないという点ははっきりしておいてもらわないと困る。  それから次の問題ですが、問題となって取り上げられているから、私は一応次官の見解を聞いておくのですが、会社が石炭の積み出しをした、トラックによって、——言葉をかえて言いますと、石炭の積み出しをしようとする、これをピケでとめたと言うのです。これを検察庁ではたき火をたいたと言っているのですが、これは寒い朝であったからたき火はたいたかもしれません。その規模はどういうものであったは別としまして、たき火の周囲に人がたかっておったということは、組合関係からも連絡があった、ところが、火をたいてとめたのじゃない、火を大きく燃やしてそうしてトラックをとめたのではない。その周囲に集まっている組合員が、先ほども申し上げましたように、せっかくストライキをやっている目的は、要求を貫徹するために正常な業務を停止させようとしている。それを計画的にやっているのですよ。ところが、問題は、積み出そうとしておった。トラックが石炭を積み出したのでは争議の効果はなくなります。それでトラックの運転手に対して、組合員が、同じ働く立場でなぜそういう——何と言いますか、そういう裏切り的行為をするのか、われわれの悲痛な叫びを聞いてくれ、われわれの要求の貫徹は、同時に皆さんの利益にもなるのではありませんか、こういうことを説得した。ところが、私は現場を見ておりませんが、そういう説得がピケの一つとして行われたことも事実である、たき火もあったことも事実である、こういう状態の中でたき火であれば、場所によればよけても通れると思うのですが、こういう状態のピケは不当なピケという御判断になるのかどうか。
  50. 伊能芳雄

    政府委員伊能芳雄君) 非常に事実の認定になってむずかしいことだと思うのですが、先ほど申し上げたように、平和的説得である限りにおいては、その行為が違法性があるとは考えられません。ただ火をたいたということが実情によって判断しなければならないもので、よければ幾らでも通れるのに、火をたいておったのが威力によって、暴力によって業務を妨害したということにとられる場合もあるでありましょうし、幾らでもよけられるのだから、何も火をたいておったからといって業務妨害にはならないという解釈も出てくることでありましょうし、これは事実認定でやっていただくよりほかには、ここでそういう問題を私からこの事実についてどうだと言われても、実際なかなかお答えしにくいことだと、かように考えます。
  51. 山本經勝

    ○山本經勝君 それで、次官にお伺いしておきたいのは、私もこのたき火をたいておる現場を見たわけではない。連絡があった事実を検察庁で言われておる事情を両方合わして言っておる。そこで、トラックの運転手に対して石炭を積み出さないでくれという、先ほどから申しました要請、あるいは説得というのは、これはピケとして当然かと思いますが、この点どうなんですか。
  52. 伊能芳雄

    政府委員伊能芳雄君) 今の山本委員がおっしゃる限りにおいては合法的なピケであると、かように考えます。
  53. 山本經勝

    ○山本經勝君 それで、このトラックの積み出しが二回あって、先ほど申し上げた梶橘という橋があるようですが、そこら辺で積み出そうとするところを同様な方法によって阻止した、このことも今申し上げておるのと同じようなこれは不都合な行動とは考えられない。そこで、ここで検察庁の方で言っておられる点で、あまりこまかいことになって大へん気の毒ですけれども、一つ御理解をもってお答えを願っておきたい。  自転車がたまたま倒れておった、ところが、そこへあたかも自転車を倒したごとく、そこに私服の警官がおったようですが、それらが問題にしたということが言われておる。これは両方の意見がありますので、私はどちらか一方とは申しません。しかしながら、トラックをとめるということは、トラックの運転手が同意をしなければ私はとめないと思うのです。自転車が倒れておれば運転手がおりてそれを取りのけて通ることもできると思う。そこで、倒れておる自転車を取りのけようとしたところで、組合員が寄ってたかってこれをとり払ったということになれば、これは問題だろうと思うのです。そうしますと、この第三番目の問題、梶橋付近でのいわゆるトラックの積み出しを阻止したということも、私は今の初めの問題と変りはないと思いますが、この点どうなんでしょうか。
  54. 伊能芳雄

    政府委員伊能芳雄君) どうも非常に事実の認定の問題になってきますので困ることなんですが、要するに、先ほど来申し上げていますように、平知的に説得して、それに聴従して運転手がやった、そうなら、組合の人たちの気持もあるからというのでとめたというのなら、これは当然合法的なピケの範囲であると、かように考えるのであります。それを逸脱して相当威圧を加えたりあるいは暴力が伴ったり、あるいはトラックの前に多数がスクラムを組んで通さないというような行為に出たとすれば、これは非合法になるおそれがあると、かように考えます。
  55. 山本經勝

    ○山本經勝君 あまりこまかなことを御質問申し上げるのも大へん気の毒ですが、もう一つは、選炭場と考えられる、選別というのか、石炭をより分けるという意味だから選炭機と考えられますが、そのスイッチを妨害したとかいわれておりますが、これは争いの後、そういうようなことをした者はいない。ところが、事実、集まって何とかということで争われているようであります。そういうことが起った。そうすると、一方では事務所の前の道路上で多数の組合員がすわり込んだ、こういうことも言われている。そのすわり込みというのは、特にこの会社の事務所の中等にすわり込むことがあるが、あるいは官庁等の廊下にすわり込んだという事例もたくさんある。一般民間企業の中で、労使の関係ですから常に出入りをする事務所である。その事務所の中ではなくて、それは路上、路上で多数の組合員がすわり込んだということが、これは威力業務妨害ということになるのか、これも非常に問題がある。少くとも労働省保護の建前で労働省が諸般の労働行政を所管されておるのですから、こういうようなピケも、これまたやむを得ない最小限度のピケの姿ではないかと思いますが、次官としてはどう考えますか。
  56. 伊能芳雄

    政府委員伊能芳雄君) 個々の実情によることでありますが、先ほど申し上げましたように、ピケの限界は、平和的説得ということを標準にして考えなければならないことでありまして、この平和的説得の範囲をこえますると、違法性を持ってくる場合があり得る、こう申し上げるよりほかには、なかなか申し上げにくいような次第であります。
  57. 山本經勝

    ○山本經勝君 今、以上申し上げたような経過からいって、大体次官のお話ははっきりしてきたと思うのです。  そこで、なお事実の認定が前提になりますけれども、今言われた範囲においては、そのピケなり、争議行為というものは、正当であるということに一応なると思う。ところが、それが一カ月だったあとに、四月二十二日に、先ほど冒頭に申し上げました五名の人々が、三名の人々のほかに書記長の本多さんというのと、それから文化部長、こういうのが加わって、合計五名の組合執行部が検挙された、これを一つ警察庁並びに刑事局長に逐次お伺いして参りたいのでありますが、この場合に、以上申し上げたような、お聞きの通り状態なんです。次官答弁もお聞きになって、そこで警察庁長官としては、こういう事態に対するお考え方をまずはっきりしていただきたい。  最近ややもすれば、労働争議に対するところの介入が顕著に現われている。今期国会の中でも、東京都内でたとえば栗林写真機の争議、あるいは東京亜鉛の争議、まことに顕著な実例だと思う。あるいは神戸の中本商店における争議等の場合もそうでありまして、争議行為が始まると、警察は監視の目を光らして、何かありはしないかという態度である。こういのが顕著に出ている。この事件なんかもその一つの適例だと思う。争議の内容をよく知っているかどうかは知らない、ところが非常に経過した……事実実害が起っておらない状態の中で、一カ月もたったあとに、にわかにこれを検挙する、こういうようなやり方は一体どういう根本別な信念にのっとられ、あるいは業務妨害という問題に対する見方、あるいは実際上の実務の御指導はどういうふうにやっているのか、ここいら辺を一つ警察庁長官から御説明を願いたいと思います。
  58. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 労働運動に灯しまして、警察態度は、いやしくも合法的に行われる労働争議行為に対しましては、何ら干渉もしなければ介入もしないというのが警察の建前でございます。ただ、労働運動に関連いたしまして、いわゆる不法行為が発生いたしますならば、これは警察の組織上これを看過するわけには参らない、これが警察労働運動に対する考え方でございます。今問題になっております生田炭鉱の事案につきましては、さっそく現地から報告を求めまして、今日ただいま承知をいたしておりますところは、先ほどもお話のありました通り、三月の二十二日のできごとでございまして、それを一カ月経過しました本月二十二日に関係者五名を取調べをしておる、うち三名を逮捕し、あとの二名の方は任意捜査によっておる、こういうことに相なっておるのでございますが、一月もたって今ごろなぜ警察が取り上げたのだというふうな御質問でございましたが、これは警察といたしましては、事柄を慎重に取り扱わなければならぬということで、三月二十二日、事犯のありました当初よりずっとこれを十分慎重に内偵捜査を進めまして、特に被疑者の身の回り等の多くの参考人に当って調べなければならぬというような関係もございまして、相当に時間を要したものと報告を受けておるのであります。なお、先ほど来労働政務次官といろいろ御意見の交換のございましたいわゆるピケの合法性の問題でございます。平和的説得の範囲でございますならば、これは合法なものとして許されるというのが従来の例であると承知をいたしております。しかし、その範囲をこえてあるいは暴力の行使あるいは実力の行使によった場合にはこれは違法である、こういうふうに従来考えて参っておるのであります。今回の場合も、先ほどいろいろ事例をおあげになりました点につきましても、たとえば非組合員である会社の自動車運転手が石炭を運搬するに当って、通してもらいたいというのに対して、通すわけにはいかない。その前でたき火をしておった、これはなるほど寒いときですから、たき火をされるのもあるいは理由があったかと思いますが、運転手の方はどうしても通してもらいたい、通してもらいたいというのに、たき火をしておる、そのわきに資材置場があったのでございますが、その資材置場の木材等を取りよけて通ろうとしましたところ、今度はその前の方にたき火の個所を移して、移動して、そこでまたたき火をやって、結局通れない、こういうふうにされた、この辺は行き過ぎになるのじゃないかというふうに現地の方では考えたようでございます。これは一つの例ですが、そういうふうに、いわゆる平和的な説得の範囲でやるならばこれは合法でございますが、それを逸脱して、暴力の行使なりあるいは実力の行使ということになるならば、これは合法だということは言えないのではないか。従って、威力業務妨害罪の容疑があるということになるのではないかと思うのでございます。今回のこの生田炭鉱の事犯は、現地の警察としましては威力業務妨害罪の容疑ありということで、先ほど申しましたように、本月二十二日に関係者五名の検挙ということになったと聞いておるのでございます。
  59. 山本經勝

    ○山本經勝君 この威力業務妨害というのは、争議行為のときにいつもとび出す問題ですが、これは長官にお伺いしておきたいのは、たとえばこの中でも一つの具体的事例としてあげられて、坑口付近で決起大会をやった。二百五十人という多数が集まって大会をやるから、いろいろ意見も出、はなばなしい論争もありましょうし、また、怒号罵声等も場合によれば出るかと思う、これは常識だと思う。そういうような大会あるいはすわり込み、また、要所々々に張られるピケ、こういうものが威力業務妨害罪ということになりますかね。
  60. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 会社の前で多数が集まって大会を開いて、大会の気勢大いにあがって声が大きくなるというようなことをもって、直ちに威力業務妨害罪とは考えません。さらにそれに加うるに、何らかのものがなければ、それだけでは直ちに威力業務妨害罪が成立するかどうか疑問だと思います。
  61. 山本經勝

    ○山本經勝君 そこで、井本刑事局長の方にお伺いしておきたいんですが、実は三月の二十二日の夕方六時、今、警察庁長官からも言われた拘束者の検事勾留が始まった。それが二十六日の午後の四時四十五分になる——四月です。四月の二十二日午後の六時から四月二十六日の午後の四時四十五分にわたる長い勾留がなされた。このことについては、せんだって検察庁の次席検事にお目にかかりましていろいろ話を伺ったのですが、その際にまだ連絡がきておらないというお話でございました。そしてもし検事勾留をこういうふうに執行する場合には、一応連絡があるんだというお話でありましたが、法務省の方には何らかの連絡なりあるいは報告等が参っておりますか、どうですか。
  62. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) 私どもの方は、原則として事件は現地の検察庁にまかせてやらしております。特殊の事犯についてはそのつど報告が参るのでございますが、この事件につきましても、原則の上にならいまして、現地にその処分をまかせておったわけでございます。ただし、昨日、本日御質問があるという御連絡を受けまして、電報で現地に照会しておりますので、ある程度の事情はただいま私どももわかっております。
  63. 山本經勝

    ○山本經勝君 このときに実は勾留を現地がする場合に、勾留状というのがあるのが当然の手続だと思うのですが、全然勾留状を発しておらない、こういうことを承わっておるんですが、そういう事実はございませんか。
  64. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) 御承知の通り、現在の刑事訴訟法では、令状がなしに関係者の身柄を拘束するというようなことはございません。
  65. 山本經勝

    ○山本經勝君 その点はただいまのお答えではきわめて不十分なんであって、今刑事局長の方に、現地からの報告を求められているということであれば、どのような取扱いが、どういう期間にわたってなされたか、これはわかっておらなければならぬ点だと私は思う。大体二十二日午後六時から二十六日の午後の四時四十五分という時間、これはこの間に勾留状は執行されていないということになったら一体どうなるんですか。
  66. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) 御承知の通り、刑事訴訟法によりまして、警察の持時間が四十八時間——検察庁の持時間が二十四時間、合計七十二時間ございます。ただし、あとの問題につきましても、その七十二時間のうちに裁判所に勾留の請求をいたしますると、判事が釈放するまでは身柄の拘束が続きますので、七十二時間以後にわたるということも刑事訴訟法ではあり得るわけでございます。本件につきましても、判事の勾留尋問があって、その結果、勾留状が出なくて釈放されたので多少時間が延びておりまするが、刑事訴訟法ではさような例外的な時間の延長というか、これは認めておりますので、別に非合法な拘束をしておるという考えではございません。
  67. 山本經勝

    ○山本經勝君 刑事局長のお話、私一ぺんおさらいをさしてもらう。そうしますと、二十二日の午後六時、それから二十五日の午後六時で、言われました七十二時間に該当していると、それから二十六日の午後四時四十五分まで約二十三時間——いや二十二時間半ですか、こういう時間が要するに全く勾留状はあっておらない。また、当然拘束される時間ではない。ところが、今のお話のように、裁判所に対して、判事に対して勾留状の要求を検察庁がしているというその手続がされておらなかったということが明らかなんです。ざらに私は——時間がありませんから、かいつまんで申しますが、検事の方で要求した勾留は、正当な理由なしとして裁判所はこれを却下している、このことを御確認になりますか。
  68. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) 私どもの報告では、二十六日に裁判官が主任検事に対して勾留状が出ないという勾留請求却下の決定をしたというような報告になっております。
  69. 山本經勝

    ○山本經勝君 二十六日でしょう。二十六日——昨日なんですよ。昨日の午後そういう判事の方が勾留する正当な理由なしということで、却下して初めて釈放されたということになる、こういうことじゃありませんか。
  70. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) ただいまの電文の訳が来たので読んでいるわけでございますが、どうもさように報告書も書いてあるように思います。
  71. 山本經勝

    ○山本經勝君 書いてあるように思いますと言ったって、書いてあるものであるなればあいまいなものじゃないと思うんです。これがしかし問題なんですよ。そもそもこの警察当局はいわゆるピケの正当性をこえない範囲において行われる争議行為であるなればこれに干渉しない。ところが、この場合には威力業務妨害の疑いありということで検挙し、そうして勾留を執行してきた、そのことは私は検察庁もそのルールの中に入って、このスケジュールの中に入って行動されていると思う。裁判所の判事の方ではいわゆる勾留する正当な理由なしとして却下して、その間の時間が二十何時間はあっているんです。そのことも経過の中で事実であって、これは否定はできないと思う。ここに私は最近の労働行政、特に労働争議に関する調整について警察官の事実の認識の誤まった取り調べが行われたり、あるいは逮捕が行われたり、そうして送検が行われ、そこで一たび警察がそうして送検をしてくるというと、検察庁はそれをむしろ理由づけるような、労働関係の争議問題に関する取扱いが最近顕著に行われておる。こういうことが私は今後の労働運動を阻害するというだけじゃなしに、正常な労働慣行を樹立する労働行政に大きな阻害を与えつつあるんじゃないかということを憂える。そこで今申したような経過でもって、この場合には釈放されましたから、結果的に一応いいとしても、そこで、検事は準抗告の手続をとっておるという昨日電話連絡があった。きのうその手続がなされて、本日公判が開かれることになっている。そこで公判があって、いわゆる検察庁のとった手続は正当でなかったといわないまでも、それに該当せずということでもし裁判が確定するということになってくれば、それなりで皆さんの方は済むわけなんです。そのときに被害を受けるのは労働者なんです。法律の正当な解釈なり運用が公正に行われないというと——私は先ほどの佐賀の問題もまたこれを切り離して考えることのできない重要な要素を持っていると思う。そこで私は、この点少くとも責任のある刑事局長という立場にあられる井本さんの御説明、あるいは解釈なり、実際今後たくさん起るであろう争議に対してどういうお心がまえを持っていただけるのか、きわめて不安に感じるので、この際、御回答を願っておきたい。
  72. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) 違法のストライキであるかどうかというような点につきましては、先ほど来、労働省政務次官並びに警察庁の長官が詳細に説明されたようでございまするが、私どもも同じような見解を持っておりまして、ピケも平和的な説得の程度であればこれは問題にならないと考えるのであります。ただし、この説得の手段が平和的でなくて、暴力であるとか威力の程度に及びまするとこれが犯罪になることもあり得るということになります。本件につきましては、私どもに入っている報告では、道路の中央に長さ二メートル、直径二十センチ内外の松丸太を多数積み上げて油を注いでたき火をしたというのでございまするから、その道を自動車が通れなくなったということは、このままでは当然であると私は考えます。何か私どもに対する報告では、運転手がだいぶ松丸太をどかしてくれというようなことを頼んでおるようでございますが、さような要求は受け入れられなくて、ついに車を通すことができなかった事情が書いてございます。  私考えまするのに、ストライキの際に、労働者の方々がさような自動車の運転手に対しまして、自分たちのストライキをやる立場をいろいろ訴えまして、自分たちの方に協力してくれというようなことを平和的に説得するという程度でございますれば、これは犯罪にならないのであるから、かようなものを事件として取り上げるということはないはずだと考えるのでございます。しかしながら、どうもこの事件は私どもの方ではやや法規を逸脱しておるというように考えるのでございます。それから先ほどちょっと申し落しましたが、この勾留の時期の問題でございまするが、七十二時間の範囲のうちに検事が勾留請求をいたしますると、あと判事が尋問して勾留請求却下の決定をするまでは身柄の拘束が続くわけでございます。また、この決定に対しましても、直ちに抗告があって執行停止の処分を求めますれば、次の却下決定があるまでは身柄の拘束ができるのでありまして、この件につきましては、何かさような準備も多少やったようでございまするけれども、結局判事の勾留請求却下の決定に基きまして釈放したというようでございまするから、別に違法な拘束を続けたというようには考えられません。  これは事件の実情でございまするが、原則論を申し上げますれば、あくまでも捜査は任意の捜査が原則でありまして、特別の事情のないものはなるべく身柄の拘束というようなことは避けてやるのが相当であるというように考えます。ただし、事案の性質によりまして、刑事訴訟法所定のような事情がございますれば、これを判事の令状によりまして身柄を拘束するということも合法手段でございます。しかしながら、ただいま申し上げましたように、あくまでも捜査は原則として身柄の拘束をしないで、任意の捜査でやるというようにすべきものであるというように考えます。
  73. 山本經勝

    ○山本經勝君 むろんこの仰せのように、任意で捜査をされ、そうして審理を進められるということが原則であると、私どもも一応しろうとなりに理解をしておる。ただし、この場合は特別の場合と言われるのですが、もともと問題が三月の二十一日から二日にかけて起った問題、ところが、事はすでに解決後であって、特別の場合に該当する理由が、局長の解釈から言いますと、どういう解釈の上に立たれているのですか。
  74. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) 事件が起きてから取調べを始める間に相当の時間がたっておるのではないかというお尋ねと存じますが、おそらく私の想像では、かような事件でございますから、十分内偵をいたしまして、かりに拘束するにいたしましても、ごく短かい範囲で片づけるという目標のもとに、警察もしくは検察官におきましてあとう限り諸般の材料を整えまして、その準備に相当日がかかってこのような期間が発生したというように考えます。従いまして、私どもの観点から見ますると、別に、一月たって検挙したからこれは何か非常に遅滞した検挙でおかしいじゃないかというようなお感じをお持ちかもしれませんけれども、別にさようには考えておりません。
  75. 山本經勝

    ○山本經勝君 私申し上げているのはそうではないのです。遅滞して不都合であるということを責めようというのじゃないのです。遅滞しても検挙せん方がいいと思う。しかし、今のお話は、いわゆる任意で捜査をし、審理を進めるのが原則である、特別の場合と言われるのは、私はしろうとですからよくわかりませんが、たとえば証拠の隠滅のおそれがあるとか、あるいはそれよりももっと大きなものは、行為が継続している状態、こういうときにはやはりいわゆる勾留という拘束をした、たとえば、あるいは捜査、審理等が必要かもわからない、ところが、この場合逃げも隠れもせぬというだけじゃなく、事実は、問題は解決後一カ月という日時が経過している、これは單におくれたということを責めているのじゃなくて、この事柄自体はすでに終息しているし、そこには問題はない。また、組合の幹部が指令に基いて拘束している行動は、検察庁はあたかも共同謀議という言葉を使っておるそうですが、そういうものではない、組合は単に炭労の中央闘争委員会の正規の機関の指令で行動しておるのです。さらに山口山口炭労本部において、所管の中小炭鉱を一まとめにして闘争を計画している、その中の一環としてやっておるのですから、全国的に炭労傘下の全支部が一定の企画の上に立って行動をやっておる、ですから、そういうものが、一部分の人が証拠の隠滅をできるようなものではない、また、あるいは行動が現に続いておるのではない、そうするとその場合、二十二日から検事勾留という、いわゆる特別の手段を講じてやらなければならなかった理由は、私どもとしては考えられない、そこにおそらく裁判所の判事としても、拘束、勾留請求権に対する却下という措置をとったのではなかろうかと私は思う。私は明日現場に行って詳細に実情を聞き、あるいは取り扱われた検事並びに判事等の意向も明らかにし、そして警察とも話をしてみたいとも考えておるのですが、そう考えていきますというと、どう考えても、矛盾というよりも、何か警察が一応検挙して、そうして調べた、そうして送検をした、それが今度は、当然、一応調べた上に何らかの措置を義務づけられたかのごとく、こういう無理な、いわゆる勾留を長期にわたって継続しておるのではなかろうかという疑いが生ずる。こういう点を、私はどうして特別の場合として——今の局長の御解明のような状態ではなかったと思うので、そのことを伺っておる。おくれたということを責めておるのではない。御解明をお願いしたい。
  76. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) 炭労の上部からきておる指令が、私は違法な指令を出しておるとは考えておりません。私どもが取り上げておりまするのは、違法な行為についての解明でございまして、さような違法行為につきましては、共犯があれば、その共犯は検挙しなければなりませんし、実行行為者はだれであるかということを確定しなければなりません。さようなことで、三名の容疑者が問題に上ったと考えるのでございます。初歩的なことを申し上げてはなはだ恐縮でございますけれども、逮捕、勾留は、氏名、住所が明らかでないとか、逃走のおそれがあるとか、あるいは証拠隠滅のおそれがあるということだけが、身柄拘束の理由になるわけでございまして、そのほかのものは、この理由にはなりません。たとえばお尋ねの、違法状況が継続しておるから勾留ができるのではないかということでございますけれども、さようなことは、刑事訴訟法上は身柄拘束の理由にはなっておりません。本件につきましては、ただいま申し上げたような、多数の事件で、しかも関係者がだれであるか、何者が共謀し、何者が実行行為をしたかということにつきましては、相当緻密に調べませんと、事案の真相がはっきりしないので、その間の取調べの間、関係者の、被疑者の身柄を拘束いたしまして、交通遮断して取調べをしたというように考えるのでございます。これは、法律的に申しますれば、証拠隠滅のおそれがあるから身柄の拘束をしたということになると考えるのでございます。そして、検察官、警察官等の努力によりまして、おそらく持ち時間の七十二時間余りで調べが大体済みまして、それ以上、証憑隠滅のおそれもないという御見解に裁判所が立たれましたので、こういう請求却下の決定があったというように考えるのでございます。
  77. 山本經勝

    ○山本經勝君 もう一、二点お伺いしておきたいのですが、そうしますと、今の局長の御答弁ですと、いわゆる証憑隠滅のおそれあり、ところが、この検挙され、勾留をされた者は、この生田炭鉱労働組合組合長木田虎夫、副組合長の小原量、それから山口炭労の事務局長をやっております島田兼雄、この三人になっておる。ところが、私先ほど申し上げたいわゆる指令系統から申しますと、中央炭労委員長地方本部の委員長、各傘下の組合長、こういう系統になっておる。行為をした者が問題になる、その指令系統の正しさは認める、こういうことなんです。そうしますと、ここで検挙された三人という者は、この指令系統の中間機関にあって直接行動をしておる人じゃない。そうすると、そのこと自体がおかしい問題になってくるのです。証憑隠滅のおそれありということで、これは特別の場合に属するものとして勾留をなさった。その勾留をされた人は、今申し上げたように、指令系統の一環をなしておる、いわゆる責任者として闘争を指導する役割を持っておる、このことは事実なんです。指令系統の中間に属して、そして行動は組合員その他の部署を受け持つ多数の者がそれぞれやっておる、こういうことになってくるのです。これははっきり御認識を願っておかないと困る。証憑隠滅と言われることが、特別の場合の理由であり、行為が問題になる。ところが、これらは、いわゆる指令系統の機関の中におるのですが、その場合に、お説がその事実と合致するかどうか、御見解を伺っておきたい。
  78. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) 私は、先ほど申し上げましたように、炭労の幹部の方々が、違法なストライキをやれというような指令を出すはずはないということを原則的に考えるわけでございます。本件は、私どもといたしましては、違法行為であるというように考えますので、その違法行為関係した者を検挙しなければならぬということで、かように調べ始めたのでありまして、指令系統があるから、指令系統の者は全部関係の被疑者ではないかということも考えておりませんし、また、幹部の者が勝手にやったとも考えておりません。この事案の責任者がだれであるかということを確定するのに、最も適切な者を三名検挙して取調べをしたということを申し上げたわけでございます。
  79. 山本經勝

    ○山本經勝君 そこで、ますますおかしくなってくるのですが、実は私伺っておるのは、先ほど局長がおっしゃった行為の問題であるということ、たとえば指令そのものが直接紙に書いた文書がどうこうするのじゃない、これはもう仰せの通りなんです。そうすると、この行為者は、組合員は組合長並びに局長その他の幹部の指示に従って行動する、不当な行為を指令するはずはない、その通りなんです。ところが、不当であるかどうかということが、具体的にはいろいろその行為そのものによって考えられるでしょう。しかしながら、正しくいって共同謀議という言葉を使われておる。そうすると、だれがやったかわからないけれども、いわゆる組織の代表だから、あるいはそれぞれの部署を受け持った機関であるから、その多数の者のたった行為は責任があるという御解釈なんですか。
  80. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) もう少しわかりやすく申し上げますと、道のまん中に丸太をたくさん積んで油をかけてうんと燃やした、そこでトラックが通れなかったという事案がここにあって、一体油を燃やしたり、丸太を積んだり、さようにトラックを妨害するようなことをだれがやったのか、そうしてそれをだれが命令したのか、その直接の責任者を確定するという意味におきまして、関係者を検挙、取り調べをしたということを申し上げたわけでございます。
  81. 山本經勝

    ○山本經勝君 今の、道に丸太を積んで油をかけて燃やした、そうしてこういうようなことはだれもやっておらないのですね。それは警察の方のお調べや、あるいは検察庁の方のお調べにはそういうことがいわれておるかもしれない、それが争いになるのですよ、ここでは。これはまあ今後裁判所の争いでしょうが……。ところが、そのことは、そういうふうな警察の報告、あるいは出先の方からの連絡等によって局長はそのようにおっしゃっておる。とろが、私たちもたき火のあったことは事実であるが、その事実については争いがあるから、私どもそのために現地調査にも参って詳細な事実を明らかにしていきたい、そのことは一応それでいい。ただこういう行為がだれがやったかわからないけれども、その組合員の多数の中のだれかがやったとかりに仮定すれば、あるいは組合長、事務局長等現地指導、いわゆる指令系統の中にある一環としての任務を帯びた役員が強制したという御解釈、それが共同謀議という名で言われておるところに船は理解がいかない。それは共同謀議という言葉自体が、非常に一時使われて、最近は過去の言葉になったようですが、大ぜいが集まって相談をして何かの行為をやるということでしょう。そうなりますと、組合は常に共同謀議をしておることになる、多数が集まって大会から委員会、あるいは執行委員会、あるいはそれぞれの分科会の委員会、こういったものをやるのです。それは多数寄って協議をしてその中から最善の道を見出す、こういうことが民主的に行われておる。民主的に行われる多数の協議が共同謀議という何か陰謀でもたくらむかのごとき印象を受ける表現できめつけておられる、こういう点が私どもわかりかねるのです、率直に申し上げて。今のように、たとえば言われた具体的な事例として、丸太を積んでそれに油をかけてそうして火を燃やした、それはだれがやったかわかりませんが、組合が協議をしてやったのである、組合が。そんなばかげたことを労働組合で今日する組合員もおらなければ、さす組合の幹部もおりません。それは炭労傘下の支部で、失礼だけれども、そういうばかげた争議の手段を選ぶようなものはおらないと思う。これは私ども長い間一緒にやってきた皆さんであるのでよく知っている。それはそれでいい、一応疑義があったとしても、それが共同謀議という名で、この事件の幹部、最初五名ですね。島田事務局長、木田虎夫組合長、副組合長の小原、書記長の本田、もう一人文化部長がここに加わっている。二人は任意出頭ということであったようですが、三名は身柄を拘束して調べられる、そういうものが共同謀議という名でこのわけのわからぬ……。これは最近気のきいた警察ならこういうことはやらぬです。もっとも私福岡ですが、福岡は一番炭鉱労働組合も多いし、その他の労働組合も多いんですが、福岡なんかではこの種の問題が今まで刑事的に大きな問題になってきたことを一ぺんも聞かない。それでもっと大規模な、もっと大きな争議が幾多あっておりますけれども、そういうものを聞かない。なんでこんなことをするのか、先日警察庁長官のところへ私ども細迫国会対策委員長とともに行った際にも、まことにつまらぬことをするものだという話も出た。もし言われる通りの状況であるなればわれわれもそう思うということを長官もおっしゃった。それほど簡単なつまらぬ問題を特別の場合という認定のもとに立って、証憑隠滅のおそれあり、そのために行為を問題として勾留し、捜査審理を続けてきたというお考え方自身が、言われるような共同謀議にあるのだということで五七の人名をあげられた。ということは、私は今お話しになったような通り一ぺんの形式的な御解釈では合点がいかない。そこで、もう一度はっきり伺っておきたいのですが、現地の実情も見た上で、さらに議会を得て詳細に伺いたい。そこで、山口炭労の事務局長の島田兼雄君がこの現地指導に行っておったことは言うまでもない。争議の現場にはいない、それからまた、いろいろ問題があったでしょうが、決起大会には本田組合長並びに書記長等はおったのですが、そのほかの個々の場合にはいないのです。これをどうして身柄を拘束しなければならなかったか、この点だけは一つ明白に伺っておきたい。
  82. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) この犯罪行為としてとり上げておる問題につきまして、一応御理解を願っておきませんと、先に議論が進まないわけでございますが、私どもは道の中央に丸太をたくさん積み上げて油を注いでたき火をして自動車を通さなかった、それが争議手段としては少し行き過ぎで違法であるということを申し上げておるわけでございます。しからば、さようにたき火をして通さなかった行為につきまして、だれとだれとが相談をしてさような行為に出たのであるかという点を問題にしてみますると、たき火をしたり、通さなかった直接の行為者はまずまず第一に問題になるわけでございまするが、さような通せんぼうをした行為につきましてこれを指図をした者、相談にあずかってさようにせよというようなことで判断をしてやらせた者も、やはり刑事事件としては共犯でございます。従って、現場におられなかった方でも、さような違法事態につきまして相談にあずかってやっておれば、刑法上は共犯として扱うということもあり得るわけでございます。従って、先ほどお尋ねの被疑者の一人が現地にいなかったから、犯人として取り上げるのはおかしいではないかという御意見でございまするが、かような違法行為をなす者について、相談にあずかっていろいろ指図をしておれば、やはりこれを共犯として扱うというのが本筋であるというように考えます。
  83. 山本經勝

    ○山本經勝君 もう一点だけ伺っておきたいのですが、かりに人を殺したらいかぬ、これはもうはっきりしておるのですね。ところが、あなたの方も現地は今見られておるわけじゃない、そんなばかな、具体的内容を知っておられるわけじゃない。私もまた、報告と電話連絡等を総合して申し上げておる。そこでこれは殺人、人を殺してはならないということははっきりしている、違法行為があってはならないと、こういうことははっきりしている。ところが、問題は丸太を積んで、それに油をかける、これほど具体的な内容のあることはないわけなんだ。そうすると、それがどこからきたかというと、警察の調べがまず基礎になっていると思う。直接警察官が現場でその実情を目撃してその上に立って言われているのじゃないか、あるいはまた、いわゆる捜査によって、いろいろな人の証言を総合してそういうことが言われるか何かの理由があろうと思う。そうしますと、そういう仮設の話じゃ実は不十分なんです。この事件そのものは将来裁判所で争われるでしょう。現に現地でもやっているようです。ですから、そのことを私は今申し上げても仕方がない、争いのある点として残しますが、しかし、少くとも勾留をするということは、先ほど言われたような特別の場合である。その特別の場合とは、証憑隠滅のおそれがある場合、これをあげられている。しかも、その行為が対象になる、こう言われるんですが、その中の該当者としては、これは妥当性を持っておらないような感じがするのですが、もう一度その点をはっきり御説明を願いたい。
  84. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) 証憑隠滅のおそれがあると言いますと、何か、罪証を隠滅した実績がなければおそれがないのではないかというお感じをお持ちになると思いまするが、刑事訴訟法はそこまでを要求しておるのではございませんで、共犯関係などの本人の意思などは、簡単に当事者の打ち合せが済みますれば、案外ほんとうは指図をしたり共犯の尤なる方でも被疑者から落ちてしまうということがあるわけでございまして、この事案につきましては、さような点も考慮して、われわれの方でおも立った違反行為の被疑者であるというのを選定いたしまして、ごく狭い範囲でこの程度の方を調べれば結論は出るということでやったわけでございます。さようなわけで、証憑隠滅をするおそれがあるということが、何か直接罪証を隠滅する実績があったとかあるいはそれに近いようなことがなければ証憑隠滅のおそれありとは言えないんだというような解釈は、一応刑事関係をやっておりまする法律家は、皆さように考えておらないわけでございます。
  85. 千葉信

    委員長千葉信君) 本問題に対する本日の調査は、この程度にとどめたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  86. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。  本日は、これをもって散会いたします。    午後零時五十三分散会