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政府委員(高田
浩運君) 従来、国立の
精神薄弱児施設を設けるということについての考え方の
一つの根本は、いわゆる
精神薄弱児の分類収容と申しますか、そういった考え方に出発いたしておるのでございまして、御
承知のように、
精神薄弱児は非常にたくさんございますが、そのうちの九〇%ぐらいはIQ五〇以上のいわばどちらかと申しますと軽い方、それ以下の者を厚生省の方で担当しているわけであります。このうちにも御
承知のように、比較的軽い者と非常に重い者、あるいはまた、
精神薄弱児で同時にほかの障害も持っている者というようなものがございまして、これらを一緒に従来の形の
精神薄弱児で取り扱っていくということは、その実効を上げる上からいいましても非常に難点がございますし、そういう
関係からいたしまして、
精神薄弱児のうちの
程度の重い者、それから白痴の者、あるいは盲でありますとか、あるいはろうあでありますとか、そういったものと精薄と一緒に持ってるいわゆる二重の不幸をみずからしょってる者、これらもやはり
一般の精薄児と一緒に収容して
処置をするというのには不適当な面がございますので、これらをやはり重症の、白痴でありますとか、あるいは盲ろう
あとダブルになっております精薄児は、特別の収容をしなければならないというような考え方が非常に年来あったわけでございます。しかもこれらの者につきましては、その数からいいまして、一面において、また、管理運営という点からいいましても、府県なりあるいはそれ以下、個人等にまかせるということでなしに、やはり国で本腰を入れてやらなければうまくいかないぞというような点もありまして、これらについて
一つ国立でやってもらいたいということが、御
承知の
通りの従来の
関係者の非常に熱望するところであったわけでございます。従いまして、今度三十二年度の予算でできることになりました国立の施設につきましても、今申し上げましたような考え方に基きまして、
程度の重い者、ないし二重の障害を持っておる者、そういったものを収容するという考え方に達しておらないのでございます。しかし、これはそういう重度の者、あるいは特別の障害を持っておる者だけを集めてお世話をするということは、日本でいえばいわば初めての経験でございまして、これはよほど気をつけて参らなければならぬというふうに私
ども考えておるのでございます。もちろん従来
精神薄弱児を取り扱って参りました経験からいたしまして、生活指導の面においても、学習指導、あるいは治療の面においても、骨の折れることでございますけれ
ども、特に国立としてそういう特殊な者だけを、重い者だけを扱うということになりますと、その辺のところがさらにこれはむずかしい点であろうと思いますので、それらの点を遺憾なくお世話ができるように
準備に、あるいは土地の選定等に万全を期して参るつもりでございます。それと同時に、
精神薄弱児の問題については、まだまだ未解決の点が多うございますし、それから施設の管理運営等についても、十分いろいろな技術面において研究しなければならない面もありますので、国立たるからには、やはりほかの
精神薄弱児の施設に関しまして、相当指導的な立場に立ち得るように、技術面なりその他の面において研究もし、工夫もし、努力もして、それらの資格も十分備えて参らなければならないと思っておるのでございます。そういうように、特殊の
精神薄弱児の世話とそれから全体の
精神薄弱児の
対策についての研究、技術、そういった面での指導的な立場をとり得るようにというようなふうに気をつけて参りたいと思っておるのでございます。
それから年令の点につきましては、まことにごもっともな御
質問でございまして、いわゆる
児童福祉法の建前からいたしましては、今度の
措置はいわば例外中の例外でございますが、今申し上げましたような特殊の
精神薄弱児、特に重い
精神薄弱児を取り扱います
関係上、これが訓練でありますとか、あるいはしつけでありますとか、そういった面について普通の今まで収容されて参りました
精神薄弱児の施設等におきますよりもより長期の期間を、ある
程度完成するにいたしましても、より長期の期間を必要とするということは、当然考えなくちゃならないことでございまして、そういう観点からいたしますと、十八才あるいは二十才ということではきわめて中途半端なものに終ってしまって、かえって不幸に帰するというようなことも考えられますので、特に例外といたしまして、社会生活に一応順応できるまでというふうにいわば年令延長をしたわけでございます。もちろん
一般の
精神薄弱児の収容施設におきましても、特殊な場合に二十才まて延ばし得るというふうになっておりまして、原則としては十八才でございまして、従って、これを、その年令をオーバーいたしますというと、そこから出なくちやならない、さてそれから行く先というものはきわめて少いということで、その辺が
一つの問題点になっていることは、私たちも十分
承知をいたしておりますけれ
ども、やはりこれは
児童福祉法によりまして、十八才とかあるいは二十才とか、そういうふうな区切りをつけておりますことは、やはりそれ自体として意味のある、相当な
人間の生理的その他の
関係に
根拠を置いた考え方であろうと思いますので、一応従来の線を守っていく、従来の線で参りたいと考えておりますけれ
ども、しかし、これらの点は国立の施設におきまする経験なり研究なり、そういった点を十分しんしゃくをいたしまして考えまして、将来における
一つの研究問題として
一つ研究さしていただきたいと思います。