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1957-03-26 第26回国会 参議院 社会労働委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月二十六日(火曜日)    午前十一時四十三分開会   —————————————   委員異動 本日委員谷口弥三郎君及び片岡文重君 辞任につき、その補欠として斎藤昇君 及び松澤靖介君を議長において指名し た。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     千葉  信君    理事            高野 一夫君            榊原  亨君            山本 經勝君            早川 愼一君    委員            勝俣  稔君            草葉 隆圓君            紅露 みつ君            斎藤  昇君            田中 茂穂君            寺本 広作君            横山 フク君            吉江 勝保君            木下 友敬君            坂本  昭君            藤田藤太郎君            松澤 靖介君            山下 義信君            田村 文吉君            竹中 恒夫君   衆議院議員            野澤 清人君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    厚 生 大 臣 神田  博君   政府委員    法制局長官   林  修三君    厚生大臣官房総    務課長     牛丸 義留君    厚生省保険局長 高田 正巳君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○健康保険法等の一部を改正する法律  案(山下義信君外四名発議)(第二  十五回国会継続) ○健康保険法等の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○船員保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○厚生年金保険法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 千葉信

    委員長千葉信君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  委員異動を報告いたします。  三月二十六日付をもって、谷口弥三郎君及び片岡文重君が辞任しまして、その補欠として、斎藤昇君及び松澤靖介君が選任されました。
  3. 千葉信

    委員長千葉信君) 健康保険法等の一部を改正する法律案(第二十五回国会参第一号)、健康保険法等の一部を改正する法律案(第二十五回国会閣法第四号)、船員保険法の一部を改正する法律案(第二十五回国会閣法第五号)、厚生年金保険法の一部を改正する法律案(第二十五回国会閣法第六号)  以上四案を議題といたします。  前回に引き続き、質疑を行います。
  4. 山下義信

    山下義信君 私はまず、岸総理大臣に対しまして、健康保険関係のありますると思われる諸問題につきまして、若干の総括質問を申し上げたいと思うのです。  まず、保険財政に最も関係の深いことは、わが国景気状態がどうあるべきかということは言うまでもございません。そこで伺いたいと思いますることは、総理は今日の好景気はどこまで持続するものであるかというお見込みをどういうふうに持っておられるか、こういう点でございます。私どもはこの好景気はいろいろな内容要素があるといたしましても、あるいはそんなに長く持続はできないのではないかと思われる点もあるのであります。政府の一部におきましては、すなわち経済企画庁においては、両三年の後にはあるいは大不況が襲来するのではないかという心配もありまして、それらの対策の検討が進められておるということでありますが、まず、わが国のこの好景気はおよそいつごろまで持続するというお見込みを持っておられますか。その点を伺いたいと思います。
  5. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 景気の問題につきましては、これはいろんな要素がございまして、従って、これに対してはいろんな見方がありますことは御承知の通りであります。なかなか簡単にこれを結論づけるということは、私相当むずかしいと思います。  今日までの日本のこの好景気を見まするというと、国内事情もありますが、国際的の事情も非常に大きく働いていることは言うを待ちません。従いまして、われわれは常に国際的なこのいろんな情勢を一面においては判断しながら、同時に、国内の問題を見て参っておるわけであります。いろんな見方もありますが、私どもの結論的の気持から申しますというと、今度の予算案を編成する基礎ともなった過去一両年の間の非常な景気の上昇、都合のいい条件というものは、私どもは手放しでこれが将来も続くものとは決して考えておりません。ただ、しかしながら、われわれの今後の経済施策その他のものを誤まらないならば、われわれは今日の景気というものは、決して一部の人が考えているように、本年の下半期に至れば非常に景気が下降するであろうというふうな、非常に悲観的な見方もありますけれども、私どもは決してそう思っておらない。少くとも本年下半期にわれわれは今日の景気が非常な下降をするというような考え方は持っておりません。しかし、それでは何年一体続くかというふうな見方になりますというと、これはなかなか簡単に私ども結論づけることはむずかしいと思いますが、しかし、今日のわれわれの提出しておりまする予算案、これの施行に伴っての各産業経済基盤の拡大というものをわれわれが行なっていくならば、決して景気が急に下降するというようなことは実は私ども見通しの中に、考えておらないのであります。十分いろいろな景気に関する御意見等につきまして、また、警戒すべき点等につきましては、政府としてできるだけ注意をしてこれに対処していく、こういう考えでおりまして、景気見通しにつきましては、今申しますように、何年の後にはどうなる、何年間これが続くというふうなことを私は論断することは避けますけれども、少くとも非常に一部の悲観的な観測のごとく、今年の下半期もしくは来年の上半期ぐらいに非常な変動があるとは決して考えておらないのであります。
  6. 山下義信

    山下義信君 大体において、現在の経済基盤には大きな変動は近くはない、言いかえますというと、好景気は相当持続するという見込みのもとに政治が行われていく、そういう基盤の上に立って政治をやるという総理のお考え、今日のこのいわゆる好景気基盤の上に立って、総理はいかなる政治をやっていこうといろお考えがあるか。われわれはこの間にあらゆる庶政百般基盤を作らなくちゃならぬと考えるのでありますが、ことに政治を軌道に乗せ、社会秩序確立をいたし、俗に昔から申しまする衣食足って礼節を知るでありまして、この国民生活が安定と申しまするか、好転しておるこの間に、わが国の国政の上に行なっていくという、いわゆるあなたの——岸政治の大目的といいますか、大目標というものはどこに置いておいでになりますかということをあわせてこの際承わっておきたいと思います。
  7. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 一面におきましては、この際、経済基盤を拡大して、あらゆる面において経済活動を盛んにしていくということを考えていかなきゃならぬ、同時に、この景気、また、今後われわれが行なっていくところの諸施策というものが国民の間における、非常な一面におきましては景気といわれ、好景気といわれておりながら好景気の恩恵にあずかっておらない階層や、あるいは国民のうちのそういう者に対しましてできるだけこれが普及し、均等にいくというふうな考えを持たなきゃならぬ、これは社会保障制度拡充であるとか、あるいは産業政策の面におきましても、大企業のみならず、中小企業に対する各種施策というふうな、経済力の弱い、また、生活的に見ましても恵まれない方面に対してわれわれの施策、すなわち、社会保障制度拡充並びに中小企業等に対する対策というものを当然考えていく、一面においては経済基盤を拡大し、一面においてはそれが国民のあらゆる層に均霑できるような政策をとっていくというのが私の政治の根本の考え方でございます。
  8. 山下義信

    山下義信君 東南アジアに対するいわゆる経済外交は、総理生命線とも思われるほど重大政策として今後おやりになる模様のように伺うのでありますが、東南アジア対策というものはそれほど日本経済支柱として非常に大きな期待が持てるものであるかどうかという点について総理の御所見を伺いたいと思います。
  9. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、外務大臣として経済外交推進を特に強調をいたして参っております。もちろんこの経済外交具体的内容につきましては、必ずしも一ではございませんで、あらゆる内容を持っており、また、対象とする国によってわれわれの行なっていかなければならない具体的の政策はおのずから異なってくると思います。私は東南アジア諸国に対しましては、一番われわれが関心の深いことは、言うまでもなく、われわれがアジアの一員であり、これら東南アジア諸国は、比較的最近に政治的独立を獲得した国々が多いのであります。しかも、その政治的な独立を裏づけるべき経済的基盤がいずれの国もまだ十分でき上っておらない、こういう国々が多いのでありまして、これに対して日本が、これらの国々国民が念願しておる政治的独立を完成するに必要な経済的繁栄なり、経済的発展ということに対してわれわれが協力して、そうしてこれらの国々経済的基盤確立し、経済の繁栄の基礎を作るということが最も必要である、こういう考えのもとに、私は東南アジアに対する経済協力を特に強調して申しておるわけであります。  しかして日本のこの経済発展もしくは経済力伸展の上から申しまして、東南アジア諸国が、ごく近い、ここ数年という目先において非常に日本経済に役立つような、あるいはたとえば貿易の非常な伸展を見るとか、あるいはこれらの国々におけるところの資源の開発その他によって、われわれの工業資源を得るというようなことにつきましては、相当なある程度の年限を要すると思いますけれども、しかし長い目で見るというと、これらの国々経済的な基礎確立し、これらの国々における資源が開発され、これらの国々におけるところの国民の購売力が増してくるならば、ひいて日本経済発展する上にきわめて重要な意義を持っておるものと思うのでありまして、そういう意味におきまして、東南アジア諸国につきましては、諸国のそれぞれの具体的の必要、要望等にこたえて、できるだけ日本経済的な協力をして、そうしてこれらの国々発展に資したい、かように考えておるわけであります。
  10. 山下義信

    山下義信君 私がこの席を借りまして、この問題について総理所信を伺いましたゆえんのものは、あわせて東南アジア経済外交を、岸内閣の、岸政治中心として、重大政策として御推進相なる上について、私は将来この東南アジア政策を、いわゆる岸経済外交のその線に従ってこれを食いものにしようとするような政商岸政権が支持されてはならぬということをこの際強く要望いたしたいのでこの問題に言及いたしたのでございます。総理はこの点について、十分注意深くお進めなさるお考えがありますかどうか。私は国民と同時に、その東南アジア経済外交に付随する幾多の好ましからざる現象が生じないことを十分注視いたしたいと思うと同時に、この際強く総理要望いたしておきたいと思うのでございます。御所信を承わっておきたいと思います。
  11. 岸信介

    国務大臣岸信介君) ただいまも私が申し上げましたごとく、東南アジア諸国におけるわれわれの経済外交推進につきましては、これらの国々の民族の要望である独立完成、また、これらの国々が長い植民地から独立してこれを完成しようとする熱意に燃えておる。それに協力して、同時に、われわれはひいてわが国経済発展に資しようという考えでございますから、今山下君の言われるような、これを利用して一部の政商であるとか、一部の人々が特に利益をあげるために搾取するような傾向があるというようなことが万一にもあっては、これは相ならぬことでありまして、十分に今のお説に対しては私同感でありまして、注意するつもりでございます。
  12. 山下義信

    山下義信君 岸総理とわが国民大衆とのつながりにつきましては、あまり親しみがないということをかれこれ世論は申しておじます。できるだけ岸総理は、いわゆる生まれ変った民主的政治家として、民衆親しみの深い総理として、今後施政の促進を願いたいと思うのでありますが、つきましては、健康保険関係の深い諸問題に入っていきたいと思うのでありますが、総理がいかに民主的政治家であるかということを示すテスト・ケースとしては、今回われわれが論議いたしておりまするこの健康保険の問題はまことにふさわしい問題であると私は思うのであります。これは、総理自民党幹事長時代にいろいろ御心配に相なった問題でございますから、よく精通しておいでになる。この健康保険の諸問題、まあ拡大して申しますれば、社会保障制度に精通しておられる総理を迎えたことは、神武以来。実は具体的に専門的な問題をここで質疑いたしましてもりっぱに御答弁のできる総理、そこで私はこういう問題こそ民主的政治家としての総理一つ特色を出していただき、そうしてあくまで政府原案を固執するというような頑迷固陋な行き方でなくして、こういう問題こそ虚心たんかいにわれわれともお話し合いに相なって、そうして民衆気持をくんで、改むべき点は改めていくというような取扱い方こそ、健康保険というがごとき、大衆生活に直接の関係ある諸問題については、総理として御考慮相なるべきではないかと考えるのでございますが、基本的なお考えはどういう御所見でございましょうか。
  13. 岸信介

    国務大臣岸信介君) この健康保険の問題は、今御指摘になりましたように、国会におきましてもすでに長いいきさつを持っておるものでありまして、私も自民党幹事長をいたしておりますときから、この問題に関連をいたしてきたのでありまして、もちろんこの問題は、一面国民の、被保険者医療に重大な関係がある問題でありまして、この健康保険制度完備ということは、きわめて私ども考えておる社会保障制度の面から申しまして重要な意義を持っており、また、医療担当者の面におきましても、この改正の内容自体は非常な影響のある問題でございます。従いまして、これが国会における御審議に当りましては、いろいろな方面の御意見を十分に聞き尽して、そうしてこの健康保険制度完備に向って成案を得ていかなければならぬことは言うを待たないのでありまして、従いまして、これはもちろん政府原案を出しておるのでありますから、政府がこれを出します際につきましては、いろいろな事情を十分に調査し、政府としては一応の成案を得て、これを責任をもって提案をしておることは言うを待たないのであります。しかし、われわれはこういう大事な問題につきましては、十分に一つ御論議をいただいて、そうしてなかなかこれは一挙にして完全無欠、完璧、こういうものにできれば、これはこれにこしたことはございませんけれども、なかなかこういう制度はそういかない点もございましょうけれども、しかし、とにかく、いろいろな実情に即して、今申した理想に向っての、とにかく現状から見ればこの程度が最もいいという結論を申していただきまして、これを実現するという考えでおりまして、決して、一たび提案したからいかなる理由があろうともあるいはいかにこの実情から見てこの案よりもさらに適当な考え方があるにかかわらず、それを押えつけて一応出したからわれわれの面子で何でも通すというような、そういうような考えは絶対に持っておらないのであります。
  14. 山下義信

    山下義信君 大へん含みのある御答弁をいただきまして、私ども大いに考慮いたさなければならないと考えるのでありますが、ただいま総理のおっしゃいましたように、本案は数国会以前から継続審議となっておりまして、実に因縁つき法案でございますが、こういうこの数国会にわたりまして本案が、しかも国会のつどことに内容が朝令暮改せられまして、今日ここに至っておりますということにつきましては、私は非常にお互いに反省しなくちゃならぬ点が多々あると思う。まあ、これはついでのことでございますが、こういうような、何と申しますか、醜態とでもいうべきこの状態に相なったということは、一つには、私は無能な厚生大臣が続いたからだと思う。指導力のない、指示力のない……。これは前鳩山総理にもよく御注意申し上げたのでありますが、しかし、今度は有能らしいような厚生大臣が就任されましたので期待しているのでありますが、これは考えなくちゃならぬのであります。ともかく、私はこれは方針がぐらぐらと変ってきたということは、いろいろ内面には、与党の内部においていろいろな御事情があったといたしましても、基本的には権威ある根本的なプランがないということが一つの大きな欠点なんです。有害無益な審議会、いろいろまた当局の怠慢、いろいろ私どもは一般的に申しますれば、社会保障制度あり方といたしましても、権威ある基本的なプランというものがないということが一大欠点たんです。深く反省しなくちゃならぬと思うのです。一面におきましてはこねておくといいますか、集団の力で押して参りますというと、不必要な国費を乱暴に要求する、そうして迎合政治が行われておる。選挙目当てのためには、大切な国費がゆえなくして濫費せられるというがごとき今日の政治状態というものは反省しなくちゃならぬ。私は愚劣政治のお手本はこの健康保険のこの法案あり方、まことに愚劣千万、言葉をかえて申しますと、知恵がないから、政府当局知恵がないから、まことに遺憾千万であると私は思う。時間とエネルギーを空費させていく、そうして一つところに停滞してこね回して、こね回すたびに中身がよくなるならよろしゅうございますけれども、年をけみして、国会の回数を番ね、こね回すたびに悪くなる、こういうようなものは実に私は知恵のない愚劣政治の好見本であると思いますが、せっかく知恵のある総理が出現していただきましたので、こういう愚劣政治をすみやかに回復して知恵のあるところ、むだのないところをやっていくということにつきまして、これは総理はよほど御所信があると思いますので、この際、かかる愚劣政治の改革についての総理の御決意を承わっておきたいと思います。
  15. 岸信介

    国務大臣岸信介君) いろいろこの健康保険の問題は数国会継続審議をされておりまして、今、山下氏の御指摘のごとく、いろいろと内容につきましてもいろいろな御意見を取り入れるために変更もされておりますが、言うまでもなく、私どもは一面において社会保障制度、それの最も大事なものとして、この国民の健康につきましては、われわれは数年の後に一つ国民保険制度確立していきたい、こういう考えでおりますので、その場合における一大支柱になるべきこの健康保険制度完備していくということは最も必要であると思います。いろいろ今までの経過等に対しての御批判もありましたが、政府としては、一貫して今申したその見地に立って健康保険制度確立と、これを中心として一つの大きな支柱として将来国民保険発展していきたい、こういう一つ理想を持っておりますので、十分に一つ政府としては責任を持ち、また、しっかりした所信の上に立ってこの制度確立に当りたい、かように考えております。
  16. 山下義信

    山下義信君 私は今日のわが国社会保障制度推進についていろいろな今日までの諸準備の状態を見ますると、先ほど申し上げましたように、しっかりとした権威のあるプランがないということなんです。各種審議会が答申いたしておりましても、それはそのつどの御都合主義で枝葉末節の筋のはっきりいたさないような、当座のいろいろな答申が出ておりますけれども、基本的に権威のあるプランがないということは一番当面の欠点とするところであると思う。そういうプランがない結果はどういうふうになって参りますかというと、たとえば結核対策におきましてもいろいろな矛盾な点がある。たとえば売春対策等につきましても、総合的なこの対策というものが確立されていない、私はこの社会保障制度岸内閣政策をもしほんとうに心から推進していくというお考えがあるならば、まず権威あるプランを立てることに一つ努力を御傾注に相ならなければならぬと思う。ただ単に、これを一部の末端の部局にのみまかしておくという程度ではいかぬのではないかと思う。数年前、本員はアメリカの社会保障制度関係を瞥見いたしましたときに、今日は変っておりますが、当時の大統領のもとにホワイト・ハウスの中で、社会保障の参謀本部的な大統領直轄企画局を持っておりまして、そしてそれが中核になっておってプランが立てられておったのであります。私ども先年来、自民党のこの方面に対しての非常に熱意のある諸君とともに、党派は違いまするけれども、ぜひともわが国社会保障制度の基本的のプランを作るについては、総理大臣に直轄して総理大臣みずからが高道な識見のもとに大綱を指示するようないき方をやるべきではないかということを話し合って、皆そうだと、そうして与野党一つ協力しようじゃないか、それは学者もいい、いろいろな人を集めるのもいい、しかし、今日は社会保障制度推進しようとする、いわゆる英知ある総理のもとにその方向を、大綱を指示すれば、あと小田原評議や議論ではなくして、そんな論理の遊戯などを、あるいはうんちくある学識をふり回す、てらうというような段階ではなくして、あとは具体的ないわゆる各種保障制度の数理的な計算をしていきさえすればいい状態でありまして、まず根本的には、いわゆる古い言葉で申しますと、挙国一致でありますが、与野党が十分に超党派的にこの種の問題については意見を統一して、権威あるプランを立てるべきではないか、今のような小田原評議をやっておりましたのでは、そういうりっぱな案が立とうはずがございません。なるほどイギリスでこんな大勢集めて小田原評議をさせない、そうしてビヴァリッジ一人にほとんど全権を委任するがごとくにして筋のある案を確立したはずである。今日のわが国の最も弊の大きなものは、いわゆるこういうすべての立案につきまして、あまりに小田原評議過ぎる。そして各種利害関係者がそこへ出てゆくのでありますから、統一した意見の一致した案のできるはずはない。これが今日の最も通弊とするところであります。真に岸総理が、岸内閣におきまして将来社会保障制度を、この政策重要政策として、中心政策として推進しておいでになろうという御決意があるならば、まず総理直轄一つ何らかの機関をここでお考えに相なりまして、そうしてわが国の諸政治の上に隠顕いたしております関係の諸制度一つ総合されまして、そしてりっぱな計画を打ち立ててゆくことが肝要ではないかと考えるのでございます。私どもの私見を総理に押しつけるのではありません。私ども社会党におきましても、ほんとうにそうあるべきではないかと実は考えているのです。総理におかれましても、真にわが国社会保障政策推進する上におきまして、基本的なそういう点に対しまする御留意がいただけましょうかどうか。その点を伺いたいと思います。
  17. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 社会保障制度確立の問題について、与野党ともにこれをいわゆる超党派的にこの問題を取り扱って、ほんとうに完全なものを作るべきではないかというお考えに対しましては、私は満腔の賛意を表するのです。実は私自身幹事長時代からいわゆる大きく言えば、国会の二大政党論者たる私といたしましては、国会の運営を二大政党によって円滑ならしめるための話し合いの場を大きくするということをかねて申しておったのでありますが、そのうちにおいて、この社会保障制度拡充確立ということは、与野党ともその方向においては考えも一致している問題であります。何とかしてこの問題は、少くとも第一の問題として、取り上げて両党の間に話し合いをして、そして完備をはかりたいということをかねて念願いたしておったのであります。今、山下君のお話しは全く、私はその点同感でございます。ただその意味において、さらに総理に直轄しておる一つ権威あるそういうような考えのもとに一つ審議会、あるいは機関を作ってこれを推進したらどらかというお話しでございますが、その点につきましては、さらに私としては検討いたして参りたいと思いますが、方向として今お話しの点につきましては、私は全然賛成でございます。
  18. 山下義信

    山下義信君 他の同僚諸君に質問を譲りたいと思いますので、私は次の一点にとどめたいと思うのでありますが、ちょうど厚生大臣おいでになりますので、あわせてお聞きを願っておきたいと思う。  今日の社会保障施策につきましての重大な私ども欠点といたしますことは、たとえば社会保障関係の経費につきましても、その内容である施策につきましても、合理性、科学性がないということなんです。今日まで従来のあり来たりのものを踏襲し、その上に積み重ねていって、今日のいわゆる諸経費となったり、’諸施策となっておるのでありまして、その内容やその計画につきまして、合理性なり科学性がないということです。同時に、この費用を使ったその結果につきましての、いわゆる費用を使う上においての能率的な考え方というものがないのでございます。これは非常に改めていただかなくちゃならない、改革していただかなくちゃならない。千三百億の社会保障諸費を予算に計上する、これは多々ますます金の大きいのがよろしいけれども、ただ金を多額に計上したからといってよしとしないのでありまして、ひとしく千三百億の金でありましても、その使い方につきましては、こういうことを総理に申したのでは釈迦に説法でありますから言いませんが、それは使い方によりまして違います。いわゆる千三百億の社会保障費が年に三回、いわゆる経済資本と同じように三回回転いたしまするというと、三千九百億の効率が上げ得られる、ことに不生産的な消費費目でございますから、この使い方につきましてはよほど考えなくちゃならぬ。そういう点につきましての科学性、合理性というもの、並びに能率的な施策、使い方、金で言えば使い方というものが欠除しておる、これはもう改めなくちゃいけません。たとえばすべての経済施策につきましては、御承知のごとく、すべてそれが  一つの数字となり、統計となり、指数となって現われてくる、この社会保障関係施策につきましては、一体千三百億の社会保障費を使って、どれだけ国民生活保障が何%上るのであるか、低額所得の階層はおよそこれによって何%の影響を受けるのであるかというようなバロメーターを見ることができない。こういう政治というものはおそらく原始的な政治である、これは一つ考えられまして、根本的に社会保障施策、また、その費用に関する能率的な効果的な使い方、もし百億の金を使ってこういう低額所得階層に対する施策を行おうとする、あるいは生活困難な階層にこれだけの金を使ってこういう仕事をしょう、その効果が上ったか上らなかったか、上らなかったとすれば、百億の費用はむだであったということ、そういうむだな使い方をした当局の当面のものは責任を負わなくちゃならぬ、私はそう思う。そういうようなやはり功罪ともに追及していく、探求していく、そして同じ社会保障の費用というものが数倍の能率を上げ、効果を上げていくというような政治にならなくては私はいかんのではないかという考え方がするのでございます。岸総理におかせられましては、この社会保障関係の諸施策、諸政治、諸行政につきまして、基本的に厚生大臣と御相談をし、また、神田厚生大臣は非常にせっかく熱心な模様でございますから、若干御期待をしておりますので、厚生大臣ともよく一つ御相談下さいまして、根本的には国の社会保障の諸行政、あるいは各省にわたっておるものもございましょうから、一つこれを改革する新生面、新しい息吹きを吹き込んでいくというような方向に御指示なり一つお進めが願えるかどうかということを伺っておきたいと思います。
  19. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 国家の予算を施行するに当りまして、それが合理的に、かつ能率的にむだのないようにこれを施行していかなければならぬということは言うを待たないのであります。それは単に社会保障関係の費用だけではなく、全面の問題でございますが、今御指摘になりましたように、千三百億にも及ぶ社会保障関係の諸経費というものの実際のこれが使用、また、きわめて複雑な関係もございますから、今御指摘のように、特に科学的な合理的な基礎において能率的にやらなければならぬことは言うを待ちません。十分御趣旨のような趣旨に従いまして、当該担当の厚生大臣とも十分に話をして御趣旨に沿うようにいたしたいと思います。
  20. 坂本昭

    ○坂本昭君 総理にお伺いいたしたい。岸総理が鳩山、石橋総理あとを受けまして、一大勇猛心をもって新しい日本の開拓に努力をせられんとしていることにつきまして、私は心から敬意を表するものでございます。しかし、九千万国民は全部かつての、過去の岸さんのことを思い出さざるを得ないのであります。ただ総理は民主主義に徹底されるということを宣言せられまして、私たちもまたそれを信じております。最近土曜、日曜でお休みになられたときには、自動車に乗られないで、電車や列車で庶民とともに通っておられるというようなことは非常に私はよろしいことだと思います。願わくば、中小企業の零細な人々の働くところの職場へも行っていただきたい。また、今日論ぜられているところの健康保険の対象となっている、特にそのために病気になって療養いたしておられるところの貧しい重症の人たちのまくら元へもぜひ行っていただきたい。これがほんとうに民主主義に徹するところのゆえんだと私は信ずるものでございます。幸いにして総理は、このたび正式の自民党総裁にも相なられました。そしてその席上におきまして、民生を安定して、福祉国家を実現することにあるということを宣言の中でも言っておられるのであります。そしてまた、その日の談話の中に、今後の国会には、与野党が大きく対立するような議案がないので円満に事が運ぶであろうというようなことも言っておられるのであります。確かにこの健康保険の問題は、与党、野党きびしく対立しております。私などあくまで徹底してこれは撤回させなくちゃいかぬという非常に固い決意をもっております。そういう点ではまことにきびしく対立しておりますけれども、実は今度の健康保険の改正問題などは、自民党の方の中にも不満をもっておられる方がたくさんおられる。そしてまた、山下委員がるる述べられました通りに、また、総理も御賛意を表せられました通りに、まさにこれは共通の広場であります。この共通の広場において与党と野党とが今日のように対立しなければならないということは、日本国民の不幸でございます。それにつきまして、私はこのたび、参議院の方にこの改正法案が回るにつきまして多くの不満があるのでございます。  第一は、あの衆議院の社会労働委員会において、国会の正常運営ということを声明しておきながら、どうしてああいう運営を衆議院においてはなされたか。それに対して、総理としてはどういうふうなお考えをもっておられるか、まずこのことを一つ承わりたいのでございます。
  21. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 衆議院における本案の取扱いにつきまして、委員会の最後の場面におきまして大へん遺憾な事態があったのでございます。私は数回この委員会にも出まして、私の所信も申し述べ、審議も十分尽すようにいたして参ったのでありますが、これは国会運営上やや遺憾の点がございましたが、その後において、両党において話し合いをいたしまして、この行き過ぎや、あるいは手違いというものについての原因その他を十分話し合いまして、これに対する救済の一応方法をとられたのでございます。しかし、いずれにしましても、せっかくそういうふうに順当に論議が尽され、十分与野党意見は、内容についての意見は異にしましたけれども審議そのものはきわめて二大政党として私は平静に、しかも正常な運営をされたと思うのであります。従って、最後の討論採決の場合においての最後の場ははなはだ遺憾でありましたが、今後そういうことのないようにしていかなければならぬと考えております。
  22. 坂本昭

    ○坂本昭君 参議院の最後の討論の場がはなはだ遺憾であったという総理のお言葉をお聞きしまして、私たちも参議院におけるところの審議が再び遺憾なことのないように、われわれとしましても強い決意を持ってこの法案を愼重審議をして参りたい、そのことを総理に対しましてもお誓い申し上げたいと思います。  つきましては、次にこの衆議院におけるところの最後の採決のときに、付帯決議が付せられているのであります。これはこういうことまで一々総理にお伺いするということは、はなはだ当を得ないかもしれませんが、実はこの付帯決議の中に、衆議院におけるところの審議の最も重要な点が実は隠されているのであります。でありまするので、私は一応このことについて注意を喚起し、そうしてまた、この点が重大な要素であるということを強調しておきたいのであります。  で付帯決議には、四つほど内容がございまして、第一には、医療担当者の地位を不当に害することのないように、特に事務的な簡素化ということを配慮しなくちゃならない。それから欠には、国庫負担の道を考慮すべきである、三番目に、医療担当者の待遇改善をすみやかに要望する。最後に、医療担当者の作っているところの医師会、歯科医師会、薬剤師協会、これらの三つの団体につきまして、健全なる発達に資すべき制度を樹立すべきことを要望する、こういう四つの実は付帯決議がついているのであります。ところが、先般参議院の当委員会におきましては、衆議院の野澤委員と大橋委員おいでになりまして、この提案理由の説明、特に付帯決議につきまして御説明の済んだあとに、この点についていろいろと質問が展開されました。  特に三番目のこの待遇改善についていろいろ質問されたあげく、私たちの承知したところでは、確かに付帯決議はつけられたけれども、ここで要望されたり、考慮されているところの内容については、実は徹底した審議は尽されていない。それからまた待遇……、例をあげますならば、待遇改善について政府は十分な用意がまだできていない、調査もまだできていない。従いまして、われわれの感じました点は、付帯決議というものは、これはまことに意味のない、権威のない、信用のないものである、そういう感じを非常に強くしているのでございます。さらに、これは第三項につきまして、そういう詳細な審議を通じて結論が出たのでありますが、ほかの点につきましても、結局付帯決議全体が信頼するに足らない、そういう一つ考えに到達したのであります。でこのような付帯決議を付してまでも衆議院の委員会を通さねばならなかったということを、もう一度総理にこの点をお伺いいたしまして、かかるいき方が果して正常であるかどうか、一つその点の御意見を承わりとうございます。
  23. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 衆議院の委員会における御審議の際、この付帯決議についているような事項につきましては、私が出席しておりますときにも、そういう問題に関する意見の御質問がいろいろとかわされたのでございまして、一応私も内容について承知いたしております。言うまでもなく、この健康保険法を完備いたす上におきましては、この付帯決議にもあるように、医療担当者というものが、何と言ってもこの制度におけるその運用においては、非常に重要な使命を持っておられるわけでありますから、この医療担当者が、この健康保険制度の運営に当って、これに協力し、これに対して一つの自分たちの使命を十分に発揮するという気持になられるか、あるいは自分たちはとうていこれに協力できないというふうな気持になられるかによって、私は健康保険制度の実際の運営から言うと、非常な違いが出るものだと思います。従って、そういう意味において、医療担当者の待遇の問題や、あるいはこの事務の扱いの上における簡素化の問題等も十分に議論がせられたのでございます。しかし、その具体的な方法なりあるいは内容的な問題につきましては、さらにこれは十分に科学的に調査し、また、これに対する処置を講じなければならない問題も含んでおると思うのであります。従いまして、今御指摘になりましたように、たとえば待遇改善というけれども、それに対する十分な一つの具体的な内容なり、具体的な方法というものは、まだ明確に政府としても決定しておらないじゃないかというふうな、今の御意見でございましたけれども、それはそういう点は確かに私まだあると思います。しかし、国会の意思の表現であるこの付帯決議の趣旨というものは、十分に政府においてもこれを尊重して、この趣旨を実現するように努力すべきものであることは、これは言うを待たないのでありまして、まだ十分に具体的の内容、案等をまだ完備しておらない問題につきましても、政府としては、できるだけ急いでこの趣旨を実現するように、今後努力していきたい、かように考えております。
  24. 坂本昭

    ○坂本昭君 ただいま総理は、具体的なプランはまだ十分できていないということを言われたのでございますが、これは衆議院のこの委員会におきましても、総理に対する質問として、具体的なプランをかなり追求されました場合に、総理自民党の政調会で十分検討した結果、その第一年度を打ち出したというふうに説明せられまして、その内容については詳述を避けておられるのであります。むしろ衆議院の審議を通じて感ずることは、そういう決意総理が持っておられるということは、確かに十分うかがわれますけれども、その決意内容を示すところのプランは、国民健康保険に入っていない者は二千八百万人もおる。それを四年間でやる。そのためには四で割って、その数を三十二年度の計画の中で国保に入れていくのだ、そういうふうなきわめて単純、素朴なプランでありまして、こういう国民皆保ということの中に国民を入れていくための、数字的な問題のみならず、質的な問題が当然考えられなければならないのであります。ところが、この重大なる付帯決議につきまして、もっぱらこれは医療担当者に対する配慮のみが、この付帯決議にはつけられておりますが、もっと大事な、たとえば量の面では五人未満の事業所の人たちの健康保険に入れる問題が残っております。あるいはさらに、結核対策が残っております。こういう一番大事な点が付帯決議につけられていないということ、このことは、これはこの付帯決議は社会党の参加することなしに作られた付帯決議でありまして、当然これは与党の責任と思うのであります。そういう点で、一番大事なその五人未満の事業所や、結核対策というようなものを抜きにして、まあいわばもっぱら医療担当者のごきげんをとるというような付帯決議を付せられたということは、まことに私は不穏当である、そういう点を含めまして、私はまだまだ政調会で検討せられたということの内容がきわめて不十分であるということを私は指摘せざるを得々いのであります。総理は、そのことを反駁するような十分な資料をお持ちになっておるのでございましょうか。
  25. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 国民保険制度を行う上におきまして、先ほど申し上げましたように、まずその重大支柱である健康保険制度完備ということを目途として、今回の改正案を出しているわけでございます。もちろんこれにつきましては、われわれもこの案についての資料なり、その基礎的な調査というものはもちろんいたしてこの案を作っておるわけでございます。今私が衆議院で申しました、いわゆる国民保険の五年間でこれを完成するという上における問題の調査につきましては、今後なお調査し、合理的な基礎資料を整えなければならぬという問題もございますし、また、私が先ほどここでお答え申し上げました点は、主として第三のいわゆる医療担当者の待遇改善の問題について、その内容や具体的の方法については、まだ自分としては、政府としてはその成案を得ておらないということを、主として第三の点について申し上げたわけです。いずれにしましても、われわれとしては、今回提案しておりますこの健康保険法の改正につきますところの資料なり、あるいは基礎的の必要なものは、これはもちろん整えて提案をいたしておるわけでございます。
  26. 坂本昭

    ○坂本昭君 それでは、その詳しい資料につきましては、また、本院におきましての審議を通じて、果してそれがほんとうか、うそかということを一つ審議をして参りたいと思います。  ところで、このたび政府から出されました健康保険法の改正案でございますが、総理国民保険を実施するために地固めとしてこの改正案を提出したというふうに言っておられます。昨日も本院で公聴会がございましたが、これは患者さんを代表した方が、地固めどころではない、地すべりだ、われわれの療養の基礎がくずれていく、そういうことを言って非常に訴えられたのでございます。たとえば、一部負担が今まででも私は不合理だと思うのに、さらにふえるし、また、継続給付の資格をとるために、今まで六カ月であったのが一年に延びる、あるいは扶養家族の範囲が狭められてくる、こういうふうな患者いさんの立場、また、医師の面では、監査や検査が強化されてくる、こういう点は、私は決して地固めになる意義をこの法律改正が持っているとは思えないのであります。特に、その点私御指摘いたしたいのは、昨年の十月に厚生白書が出されております。この当時は小林大臣が担当者でおられましたけれども、おそらくこの自書を貫くところの精神は、今日の厚生大臣はもちろんのこと、当時の鳩山内閣を継がれておられるところの岸総理としては、これを是認せられると思うのでありますが、この中に繰り返して述べられてあることは、あたかもキャッチ・フレーズのように述べられてあることは、「理解と納得と、そしてそこから生まれてくる力強い協力支援が望ましい」ということを、もう一回初めから言います。「もともと、政治といい行政といい、すべては国民の理解と納得と、そこに生まれる支持と協力があって初めて順調に発展成長するものであるが、厚生行政の進展には、わけてもそのことが強く指摘される。」、これは厚生大臣がそう序文に述べ、さらにこの文章の中に繰り返し出ていることは、国民の理解と協力と納得ということが非常にたびたび繰り返されているんであります。しかるに、今回の改正につきましては、患者さんも理解してない、医師会のお医者さんも歯科医師会も、そういう方たちも理解と納得をしてない、こういうことで果して今度の改正法が地固めになり得るか、そういう点を私ははっきりと総理にお答えをしていただきたい。
  27. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、本案につきましては、すでに先ほど来お話がありました通り国会におきましても長い間継続審議になっておりますし、この間あらゆる面の御意見も聞いておるし、あるいはさらに、長い間の参衆両院における論議を通じまして、ほかの法案に比しますというと、よほどいろんな関係方面の人がこの問題に対して論議を尽して参っておりまして、もちろんこれで十分というほど理解と徹底がしておるかということにつきましては、もちろん不十分な点もあろうかと思いますが、しかし、他の法案よりはそういうふうな非常な審議過程を経て参っておるのでありまして、もちろんいろんな御意見があることは私よく承知しておりますが、相当にこの問題については、関係方面の私は理解を得ることに相当従来も努力をいたして参っておりますし、また、今言ったような経過から見まして、相当に徹底をいたしておるように考えております。
  28. 坂本昭

    ○坂本昭君 ただいま総理は、国民の理解と納得がかなりできているということを言われましたが、もしほんとう総理が民主主義に徹底される方であるならば、はっきりとその事実をつかんだ上でなさっていただきたい。私が今こう申し上げていることは、野党の立場じゃございません、社会党の一人として政府に反対して申し上げているのではなくて、今日の実情は、私たちが見ますならば、医師会も歯科医師会も、また患者さんの立場もそれらの人々が理解と納得と協力してない、このことを私は強く総理に御忠告申し上げたい。  それからもう一つ、社会党の立場としては言いたいことが一つございます。それは、私は今度のこの改正法案の中で、一部負担などで非常に苦しい目に会われるのは、政府管掌でありません健康保険に入っておられる方々でありまして、この人たちはつまり組織労働者と大体申し上げていいと思うのであります。このことについて、私は若干の懸念を持っている。それは、組織労働者の票は従来自民党には入らなかったでしょう、実際は入っているかしれませんが。大体皆さん方はこの組織労働者は敵とお考えになっておられるのじゃないか。そういう方たちの今あるところのこの社会保障のレベルというものを、こういうものを下げたってかまいやせん、われわれの別に味方じゃない、引き下げてやる、そしてそのかわりに味方であるかどうかわかりませんが、一応味方とお考えになっておられる農村の農民や漁民や中小企業者の人たち、この人たちが今入っていないから一つ入れてやろうじゃないか、そういうお考えの方が私はなしとしないと思うのであります。そしてこのことは、こういうふうに全国民国民保険を望んでいる。そしてその望んでいる目標は低いものじゃありません。今日われわれはまだ不十分だと思うのであります。厚生当局は、今日ある健康保険内容がきわめてよいと、るる説明されますが、私はそんなによいものだとは思っておりません。ここではその討論はいたしませんが、とにかくさほどよくない、よくないけれども、今、労働者やあるいは学校の先生やあるいは警察官やあるいはお役人が持っておるところの制度を何もない漁民や農民はうらやましがっている、このところまでいきたい、病気になったらただで見てもらいたい、年をとってから老後の生活安定をしたいということを皆望んでいる。それは非常に落すのではありませんが、とにかくレベルを落そう、落そうということは私はこれははなはだ感心しないことでございます。特にまるで敵のように思われて、そういう組織労働者の方はいいのだというようなことをお考えになったとすれば、これこそ皆様方が一番否定しておられるところの階級闘争を激発させるゆえんのものであって、私は今日そういう考えの方がお一人もないことを信じております。しかしその点一つ総理のお考えを承わりたい。
  29. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私どもこの改正をするに当りまして、決して今お話になりましたように、組織労働者がわれわれ保守党を支持しているとか、支持しないから、これに対するあれはどうなってもかまわぬというような考え方はみじんも私の考えの中にはございませんし、私は、この案を提案するについてそういうことは少しも考えたことはございません。従いまして、ただ考えなければならぬことは、決して単に健康保険の赤字を埋めるために一部負担をするとか何とかいうような考えではなくして、やはり一面においては、国家がこういう制度完備していく上において、国家において負担をすると同時に、これを健全ならしめるためには、患者において一部負担をしてもらうというような考えのもとに、それによって健康保険制度というものをとにかく健全なものにしよう、言うまでもなく、国が出す場合におきましても、これは国民から広く税金で取ってきておる金であるから、国が出すというのは結局国民全体が負担しておるわけでありますから、私どもはやはりこの制度自体を健全な永続する制度としていかなければならない、また、医療内容もあるいは私も決して今日の状態でこれでもういいのだというほどいいとは思いません。将来、さらにさらに、この内容も科学の発達、技術の発達につれて向上化さしていかなければならぬと思います。しかし、いずれにしても、健康保険制度というものの基礎確立しておらなければ、一切ができないわけでありますから、そういう意味においてわれわれは今度の改正案を出したわけであります。しかし、これに対していろいろな見知からわれわれの考えに対する御批判はあろうと思いますし、また、その御意見は十分に尽していただきたいと考えておるわけであります。決して党派の立場から、選挙の場合の支持等を多少でも頭に置いたというようなことは全然ないということを十分に一つ御理解いただきたいと思います。
  30. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 大へん総理は時間をお急ぎのようで、私はこうした重大な問題につきましては、国政最高責任者の総理と十二分な意見の交換なり討議を経て決定いたしたいと思うのでありますが、いろいろと御都合がございますので、はなはだ残念でございますが……、従いまして、きわめて重大な四点につきまして、しかも時間を省略する意味で、先般の衆議院における議事録による当局の御答弁等を一応そのままこの席上での御答弁といたしまして、それを前提として質問いたしますから、そのおつもりで御答弁願いたいと思います。  最初に、私お聞き申し上げたいのは、今回のこの議案の上程の手続に欠くるところあるということは、衆議院で非常にその審議の中において論議が戦わされた、参議院におきましても先般厚生大臣の御出席のもとに、ある程度の論議が行われたのでございますが、私はこうした法律上程上の欠くるところあるというような重大な問題につきましては、総理みずからの御所見を承わって、それによってわれわれは対処いたしたい、こういう気持を持っておるわけであります。そのときの議事録によりまするというと、二十四国会の前には諮問したが、その後諮問しなかった。その諮問しなかった理由は大綱に著しい変化がない、大綱に変化がないので、諮問の必要を認めず報告の程度にとどめる、主として報告したのであって、あわせて懇談したのである、こういうような御答弁であったように記憶しております。懇談と諮問との法的な相違というものはこれは明らかに違っておるわけでありまして、こうした点においてもし諮問しなければならぬ事項があったといたしますならば、先般の懇談の手続では誤まっておると思うのでございますが、さようにお考えでしょうか、あるいは一応懇談でもいいのだということでしょうか、その点を最初にお伺いしたい。
  31. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私どもは、立法の大綱について諮問すべきものであって、それは諮問してある、懇談をもって諮問にかえたという考えではないのでありまして、手続は経ておる、こういう解釈に立っております。
  32. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 そこでこれは見解の相違になるわけですが、大綱に変化がないというお説なんです。ところが、私詳細に新旧の案を比較いたしますというと、大綱に重大なる変化があることを発見しております。それはどういうことかと申しますと、まず第一に立ち入り権の問題であります。これは憲法に関連する問題であり、憲法の精神を乗り越えたうたい方であったので、これはいけないということで、非常に非難がございました。これが衆議院で修正されております。こういうような法案そのものの性格は、憲法の定むるところの解釈によってその条項が削除されておる。たとえて申しますならば、前項の規定による質問または検査をなすについて必要あるときは当該職員は事務所に立ち入ることができるというような重大な表現が削除されております。こういうことでは、法案の性格、重みが全然変っておると私は思う。もう一つ重大な変革は一部負担の問題なんです。これは局長はあのときの御答弁で、実は一部負担については三案持っておる、ABC三案とも両審議会に諮問したのだから、そのうちの一案をとったのだから変革はない、こういう御答弁をしておるのですが、これは明らかにうそで、ABC案をとっておらない。D案といいますか、新して案をとっておる。この一部負担というものは財政影響がきわめて大きいわけです。最初の案でございますと、二十三億五千万円というような膨大な財政影響があり、被保険者にはそれだけの負担がかかる。今度の案によりますと、その半額にすぎないような十二億程度になっておる。ですからこの二点から考えまして、大綱というものについては、法の性格、比重の上から著しい変化があったということと、財政的な面及びそれがはね返っていく被保険者に重大な経済負担の上においての変革があったのでありまして、決して局長の言われるように、三案を示してあったので、そのうちの一つをとったのだから、この際諮問しないでいいのだということは認められないと思う。従いまして、こういう大きな変化があったにかかわりませず、懇談でいいのか、この点を総理にお伺いしたいと思います。
  33. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 詳しい正確な法律論につきましては、法制局長官からお答えした方がいいかと思いますが、私ども考えを申しますと、立ち入り権の問題、それから一部負担の問題につきましても、もちろんある種の変更はあったのでありますけれども、実質的に見て、今御指摘になったように、本質的の重大な変更があったものとは私ども実は考えておらないのであります。ここに見解の相違があるわけでございますが、憲法論やあるいは法律の解釈等につきまして、もし正確な点につきましては、なお法制局長官からお答えした方が適当と思います。
  34. 林修三

    政府委員(林修三君) その立ち入り権の問題についてお答えいたしまするか、確かに昨年御提案いたしました法条は、立ち入り権のことを抜き出して書いてあったわけでございます。これにつきまして、衆議院でいろいろ御議論がございまして、今回御提案をいたしましたような法律案の体裁に変っております。従いまして、今度もその昨年の衆議院の御決議を尊重いたしまして、大体同じような書き方を踏襲いたしておるわけでございます。この問題は、いわゆる立ち入り検査権は、憲法二十五条の規定でございましたか、これは行政機関の職員が、その行政上の必要によって、事業所あるいは住所、営業所等に立ち入ることは、これは私は憲法違反はないと思っております。これは学者の定説でもございまして、憲法違反の問題はないわけでございます。従いまして、あとは立法整備の問題になりまして、結局そういうことをはっきり書くか、あるいは多少そこにいろいろなことを考えまして、規定の体裁上、そこの書き方を緩和するかという問題でございまして、実質的には耕しいこの法案の四十三条の十等におきましても、質問をし、あるいは物件の検査をするということにつきましては、当然その医療機関あるいは関係者につきまして、その事業所あるいは住所等に行ってやるということは含まれておるわけでありまして、その点におきまして、前の法案と実質的には変りはないと思います。
  35. 千葉信

    委員長千葉信君) 時間の関係もありますので、休憩したいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  36. 木下友敬

    ○木下友敬君 議事進行……、私ども、せっかく総理がお見えになりましたので、いろいろお聞きしたいこともありますし、ことに、総理は十分に審議をしてほしいということも言っておられますので、ぜひお尋ねしたいと思うのですが、大へんお急ぎのようでございますので、落ちついて御質問する時間もないようでございますから、あらためて総理に出ていただくということを前提といたしまして、ここらで休憩に入ることに私は賛成いたします。
  37. 千葉信

    委員長千葉信君) 首相の当委員会御出席については、理事会で御協議申し上げることにして、暫時休憩いたします。    午後一時三分休憩    —————・—————    午後二時三十七分開会
  38. 千葉信

    委員長千葉信君) 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前に続いて質疑を願います。
  39. 坂本昭

    ○坂本昭君 この前、衆議院の大橋議員にお尋ねしてしり切れトンボになっておりますから、きょうは野澤議員がお加わりになっておられますので、先般の続きをお尋ね申し上げたいと思います。その前に、この前、山下委員からこの点数引き上げのことについていろいろと質問のあった際に、保険局長から、専門委員四十名で四つの部門に分けて目下調査中である、早ければ二、三カ月すると大体わかるという返事がありました。そのことについて資料の提出を求めましたけれども、全然何とも返事がありません。これははなはだ不満でございます。おそらくそういう何らの資料をお持ち合せになっておらないのではないか、一応その調査を大臣は命じておられますけれども、調査の内容というものは何らでき上っていないのじゃないか、そういうふうに私考えます。これは野澤議員の衆議院におけるところの審議内容であり、また、決議の価値を裏づけするものでございますので、この点については野澤議員並びに保険局長から御説明をいただきたいと思います。まずその点から。
  40. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 前回お答えをいたしました中央医療協議会の専門委員会等の状況は、これはかねて同協議会に御諮問申しております、いわゆる新医療費体系に基ずく点数表の改正に関連をしたものでございます。そのことにつきまして、山下先生から御質問の中に、どの程度進捗しているかという御言及がございましたので、それに関連をしてお答えを申し上げたわけでございます。  それで今回のこの衆議院の付帯決議に関連をいたしましての問題につきましては、これは前々いろいろお話が出ておりまするように、いろいろ関連するところが深うございまして、あるいはその点数表の問題にも関連をもって参るというふうな性格を持っておりまするので、関係して山下先生の御質問になり、また、私どももお答えした、こういう関係でございます。それで付帯決議の第三項につきまして、大臣から調査を命ぜられ、また、検討を命ぜられておることは、前回明確にお答えした通りでありますが、それに関連をいたしましての資料——特別にそれに関連をいたしましての資料は、まだお目にかけるだけのものはできておりません。と申しますることは、これらの関連の資料というものは、おそらく私の想像では、いろいろ今までの、たとえば一例をあげますれば、中央医療協議会に提出をいたしておりまする膨大な資料、それらの一端につきましては、当社会労働委員会におきましても、前々国会でございますか、あるいは前の国会におきまして、御提出をいたしたことがあるのでございますが、さようないろいろな資料というものが、その関連の資料といたしまして、基礎資料の一つになって参ると私はかように存ずるのであります。今般の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、一つ検討の緒にはついておりまするけれども、別にお目にかけるような資料を作成いたすという段階にはまだ立ち至っておりません。
  41. 野澤清人

    衆議院議員(野澤清人君) 先ほど坂本委員の御質問の要点は、おそらく付帯決議の第三項についての事柄だと思うのでありますが、大橋委員からお答えがどういうふうに出ておったかわかりませんが、今の中央医療協議会等について、四つの部門で審議しておる新医療費体系とは、この付帯決議の内容は全然別個のものでありまして、実は前回山下委員からも御発言がありました通り、厚生省自体がいろいろな審議会、または委員会等にいろいろおかけになっておっても、その結論が要約されてこないということと、もう一つは、従来、付帯決議をつけても、なかなかその趣旨が尊重されない、こういう傾向があるから、自民党としても十分これは監督を強化しようじゃないか、こういう意思と同時に、医療担当者の待遇改善をはかる根本的な考え方は、先ほど先生の御指摘になりましたような、新医療費体系の考え方ではとうてい満足しないのではないか、つまり医薬分業法が成立する際に、たまたま新体系として新医療費体系が取り上げられ、それが現在四つの部門で事務的に、あるいは審議の過程等が、四つの委員会等で審議されておりますけれども、これはあくまでもワク内操作であります。そういうワク内操作という考え方で、待遇改善はもちろんできないのだという考え方で、衆議院としては新たな構想のもとに、新たなる単価引き上げの方式を採用してもらいたい。また、それに点数等の増減も加味してもらいたい、そういう考えでこの付帯決議をつけたのでありまして、新医療費体系とは全然別個のものである、こういうふうに御了解願いたいと思います。
  42. 坂本昭

    ○坂本昭君 野澤委員の説明は了承できるのですけれども、ここで付帯決議をつけるということの権威といいますか、重要性といいますか、これが非常に大事なことだと思います。ただそのアドバルーンを上げただけでは、これは意味をなさないと思います。特に先般来参議院のこの委員会で、いつまでも衆議院の方に御足労願っておるというのは、実はこの決議の意義について、一つはっきりきわめておきたいという点で、論議が繰り返されておる。先般の山下委員の質問に対する厚生大臣並びに当局の御説明などを聞いておりますと、ただの看板だけで内容がちっともない。それは確かに要望するというのは自由です。しかし、ただの看板だけで、この付帯決議でもって、それで本案をカバーするということは、これははなはだ穏当を欠く、そういう点で私たちの方は、一体付帯決議はどれだけの力があるのかということを、繰り返し繰り返しいつもお聞きしているのです。この前、大橋委員に私がお聞きいたしましたときには、たとえば第三項につきまして、この問題については一応資料を作っているというから、それじゃ出してくれ、今聞きますというと、出すようなものはない、それから今度単価のことについて、財政的に裏打ちがあるか、突き詰めてみると、何もないのです。それから今度は、診療報酬の支払い方式、こういうようなことについて十分検討されたか、審議は十分済んだか、済んでいないのです。大橋委員は率直に答えられましたけれども、衆議院では十分な審議が済んでいない、それからたとえば支払基金制度の問題あたりも、これは審議されていない、それからまた待遇改善ということになると、現在の医療担当者というのは、どういう待遇を受けているか、その認識がどうなっているか、あるいは、いかに待遇を受けるべきか、そういうことの審議をやったか、—————————————————という点が、これが私が一番疑問に思っていることです。だからこんな、——————————十分審議をしなくちゃならない、そういう固い決意を抱くに至ったのです。午前中も総理は、十分審議をしていただ身たいということで、どういう点が審議が十分でないかということを、宰はただしたいと思って、たびたび野澤委員あるいは大橋委員に実は来ていただいているわけで、ただいま私の了解した範囲内では、どうも裏打ちがなくて、内容が空虚で、この決議というものは、どうも権威がないという印象を受けていることなんです。それで私はこの決議が、非常に大事だと思う。皆さんが苦心惨たんして、この前、野澤委員の言われました苦心惨たんの結果作った、この苦心惨たんの結果この第一項目に、医療担当者の地位を不当に害することのないように、これは非常に大事な点であります。今度の法案の中では、やはりこういう問題が論ぜられ、そうして医療担当者の側で非常に不満を持っているということは、地位を不当に害する法案である、今でも地位が不当に害せられている、さらにこの法案によって、その不当性が増強される、そういうことを非常に考えておられるがゆえに、反対が非常に強いのです。それで私は、一体医療担当者の地位ということについて、衆議院においては、いかにあるべきか、また、現在はどうだ、そういうことを論ぜられたことがあるのですか、それと、もう一つお聞きしたいことは、地位が現在不当に害されているところの事実、そういったものが指摘されたか、ここに一応決議に書かれる以上は、そういうような事実も指摘され、また、論議されて、そうしてそれに対する皆さんの検討もあったと思う。まず第一項目について、その点一つ野澤委員の御説明を願いたいと思う。
  43. 野澤清人

    衆議院議員(野澤清人君) 非常に坂本さんの御質問は大事なところであると思いますので、私も遠慮なくこれは申し上げます。先ほど御指摘になりました大橋委員がこちらに参りまして、いろいろ審議の過程で論議が尽されなかった、こういうことを万一発言しておったとすれば、それは間違いだと思います。審議の過程において論議は十分尽されております。また、前国会からの関係もありますので、これは速記録をよくお読み願いますというと、そうした問題等についても十分おわかりになると存じますが、これは一言付言いたしておきたいと存じます。同時に先ほどの付帯決議に対して権威がない、あるという問題点でありますが、あなたの御心配になる点は、全く与党でいながらわれわれも心配しておりました。ただ付帯決議をつけただけで一ちょう上りという気持は毛頭持っておりません。従って、付帯決議を出す以上は、党の方でもこれについては、がっしり受けとめるだけの自信と熱意を持っていこう、こういうことで、すでに自民党内には保険医療対策特別委員会というものを組織することに決定いたしました。ただこれは調査委員会じゃありません、あくまでも対策委員会でありますから、この付帯決議等について政府が緩慢なやり方をするならば強力に推進する、また、いろいろとこの待遇改善、あるいは医療担当者の、お尋ねの通り立場を不当に害するというような問題が出てきた場合にも積極的に政府に働きかける、こういうふうな意味で、対策特別委員会を設置することにすでに決定いたしました。おそらく二、三日中にはこの委員会も発足すると思います。で、従来特別委員会等を作りましても調査が目的であって、調査資料をそちらこちらから集めておるうちに一年や二年たってしまいます。しかし、政府自体としては、御承知の通り、中央医療協議会においても四つの部門で検討を加え、すでに七人委員会もあり、五人委員会もあり、各種審議会等で調査しておるのでありますから、そういう資料をとり集めまして、そしてこの対策委員会で抜本的に強力に対策をし、監督もしていこう、こういう決意で臨んでおるわけでありますので、どうか誤解のないようにしていただきたいと存じます。  なお、この文章に書きました第一項の「医療担当者の地位を不当に害することのないよう」という言葉でありますが、これはその上の文字を見ていただきますと、「保険薬局の指定制度の実施に当っては、」と、こういうことで不当に害するということを是認したままこの文章を書いたわけじゃありません。この指定制度というものを実施するに当っては、医者の体面を傷つけたり、不当に圧迫をしたり、不安をかもしたりするようなことはできるだけ避けるべきだ、こういう趣旨も盛り込んだのでありますので、どうぞ御了承願いたいと存じます。
  44. 千葉信

    委員長千葉信君) ちょっと速記をとめて下さい。    〔速記中止]
  45. 千葉信

    委員長千葉信君) 速記をつけて。
  46. 榊原亨

    ○榊原亨君 ただいま坂本委員のお話、私聞き違えておるかもしれませんが、衆議院におきますところの審議並びに付帯決議につきましていろいろ御批判のようなお言葉があったのでありますが、私、それは聞きそこないかもしれません、聞きそこないであれば取り消しますが、これは審議が不十分であれば、わが本委員会において十分審議をすればいいのでありますし、また、他院の議決について批評がましいことを言われるということにつきましては、私少しく疑問を持っております。従いまして、ただいまの坂本委員の御発言中、不穏当な個所がございましたならば、委員長においてお調べを願って適当な御処置を願いたいと思います。
  47. 千葉信

    委員長千葉信君) 承知いたしました。もしそういう事案がございましたら、委員長において適当に処理いたします。
  48. 坂本昭

    ○坂本昭君 それでは野澤委員にもう少しお尋ね申し上げたいと思います。ただいま特別な調査会をお作りになられる、そうして鋭意この努力をされるということを申されましたが、実は今までの皆様のおとりになってこられたところの事実によりますと、今も五人委員会や七人委員会あるいは社会保険審議会、あるいは社会保障制度審議会といったものが十分できているということを言われましたけれども、現実にそういったものが皆様方によって利用せられ、そしてそれらの審議によって出された結果を十分に尊重してこられたかというと、私非常な疑問を持つのであります。でありますから、ただ調査会ができた、あるいは今までにも資料が十分にあるということだけで皆様のお考えをそのままに信用しがたい点があるのです。で、その点について、今ちょうど衆議院の審議を疑うようなということがありましたけれども、私はこれは皆さんも私たちも相ともに日本の国をよくするために努力しているのであって、別に地意はありません。皆さん方がほんとうに新しく岸内閣で打ち出されたところの国民保険というものを実際にりっぱに仕上げるためには、われわれもそれを別に拒む理由は一つもないのです。皆さん方がただ看板だけを上げておいてちっともなさらなかったら、われわれもともに責任を負わなければならない。そういう点あくまでも私は追及していきたい、そら思っているのです。どうかそういう点での野澤委員一つ衆議院の審議を通して出ざれたところの結論と、それから付帯決議の権威についての一つ所信を述べていただきたい。
  49. 野澤清人

    衆議院議員(野澤清人君) 坂本委員の方で、特に私念を押しておいたのですが、誤まって聞かれているような点があると思いますので、これは御訂正願いたいと思うのですが、今、党内に保険医療対策特別委員会を作るということを申し上げました。これはあくまでも調査会ではないのでありまして、対策推進するための特別委員会だということを敷衍しておきましたが、あなたの今の御発言では調査会ができた、こういうふうにお話になりましたが、もら調査はあきあきするほど厚生省はやっておるという、あなたと同じ私は見解です。それを尊重するしないということは、当該大臣の意思決定がそれによってなされるかなされないかが、尊重するかしないかの限界点だと思います。従って、これを参考に国会に持ち込まれた場合には、われわれはもちろんこれを尊重しております。しかし、そういう経過も先ほども申し上げましたように、山下委員が過般御指摘になったように、厚生省は調査ばかりしておってさっぱり進まぬじゃないかという御発言があったように私記憶しております。従って、与党の方としましてもそういうそしりを受けては何にもならないし、実際問題としては強力にこれを推進して、一日も早く国家のため、国民のために推進したい、こういう念願からこの特別委員会まで設けまして、今後の施策については十分督促もする、また、必要があれば協力力もしょう、また、法制化等に将来役立つことがあるならばこれもお助けもしよう、法律を生みっぱなしでなしに十分監督していきたいという熱意で出発しました。これを信用する、しないという問題につきましては、これはあなたの人格と、衆議院を代表して私は参った風上は、お互いにこれは国会議員として信用できるとか侮辱されたとかいうような問題でなしに、虚心たんかいに一つお互いに了解し得るものは了解して手を携えて参りたい、特に厚生問題については、超党派的な問題が多うございますから、どうか何分一つよろしく御了承をお願いいたします。
  50. 坂本昭

    ○坂本昭君 ただいまの野澤委員のお説ごもっともでございます。私もそういう点では全く超党派的に、相ともにこの国民社会保障医療保障の充実のためにやっていきたい、そのことをあわせて私もお誓い申し上げたいと思います。  ただ先ほど野澤委員は、十分審査はやり尽した。大橋委員がもしこの審査の十分でないということを触れておったとするならば、それは間違いであると、こう言っておられましたが、私は、そういう言葉じゃなしに、現実に上つたものが十分に審議を尽したか——はなはだ失礼でありますが、これが不穏当で取り消しをしろということならば、はなはだ残念でございますけれども、なお、あえて私はお尋ねしたいんであります。たとえば、例をあげますと、今の一項目の指定更新の手続を極力簡易にするよう配慮すべきかと、こういう結果が出ましたですね。これの裏打ちになるものは、今日あるところの健康保険のいろいろな諸事務手続は、非常に複雑であります。これは、私また本論に入ったときに十分審議したいと思っておりますけれども、ここではたまたま付帯決議には、指定更新の手続を極力簡易にするというふうに出ておりますけれども、皆さんの方の審議を通じて、事務の簡素化ということ、これは十分審議されたか、その一言だけお聞きしたいんです。
  51. 野澤清人

    衆議院議員(野澤清人君) 機関指定の問題について、かなり、これは与党としましても、野党といたしましても、再三問題点になりましたことでございます。従って、審議の過程において、これをどうするという採決はいかしておりませんけれども、もうるるかわるがわる申し述べられましたし、さらにまた、理事会といたしましても、あるいはまた、理事者といたしましても、与党の側の議員としては、直接当該の局長または課長等も呼びまして話し合いをしました。機関指定、個人登録という法律の原則的な問題については、あくまでも、原案に書いてある通りのことを行うのが至当だ。けれども医療担当者等が特別心配をされていますいわゆる個人開業医に関しては特別な措置を講じなけりゃいかぬじゃないか。けれども、それを法律に特例として設けるよりも、むしろ、行政措置でできることであるから、簡素化する必要がある。それで、この文案を作る際にも、課長も呼びまして、簡素化するんだというような申し合せでなしに、極力簡易にするよう配意すべきだというて、この簡易にすることについても了解をきちんとつけまして、これはどうきまるかわかりませんが、たとえて申し上げますというと、個人開業医が登録と機関指定と二つ持っておる、三年目に更新しなきゃならぬ、こういう際に、一体簡易にするのにはどうしたらよいか。たとえて言うと、往復はがきで開業医の所へ、もう時期がきましたということを出して返事をもらっただけでも、更新の手続を完了したと見られるかどうか、これはこちらからそういう質問をしまして、大体そのぐらいの程度にまで持っていきたいという誠意ある内容もお答え願っております。  また、第四項目にあります医師会、歯科医師会、薬剤師会等の会法が法制化された後に、府県単位に団体が強化されてきた場合には、行政事務の一部をこの会自体に委譲する、あるいは依頼するというような立場もありますので、こうした再指定というような問題についても、事務的にあるいは地域的にその会の方におまかせすることも一つ考え方じゃないか、こういうことも局長、課長に懇談し、その通りやりますという返事は受け取っておりませんが、具体的に申上げますとそういう点でございますので、どうか御了解を願いたいと存じます。十分審議は尽したつもりであります。
  52. 坂本昭

    ○坂本昭君 大へん御熱心な審議を通してそういうふうな結論を出していただいたということにつきましては、私たちも非常に敬意を表するものでございます。私が特にここで御申し上げたかったことは、指定だけの問題でなくて、衆議院の委員会ではいろいろな面での討論があったので、指定だけの問題じゃなしに、もっと事務の簡素化、そういう点までお触れになったかどうかということをお尋ねしたのです。
  53. 野澤清人

    衆議院議員(野澤清人君) 大へん気がつきませんで相済みませんが、その他の問題についても、これは大臣初め政府委員の方で、かなり再三再四突っ込まれております。従って、そのたびごとにお答えも誠意あるお答えだと私感じておりますので、かえってこの際に、局長あたりからそうした点についての決意のほどをお示し願った方がはっきりするのじゃないかと思います。どうぞお願いいたします。
  54. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 今のいろいろな手続の問題につきましては、野澤先生からお答えございましたように、衆議院におきまして相当論議をされました。私が非常に印象に残っておりまするのは、保険の問題も論議されましたけれども、あわせて生活保護法の医療扶助等について、現実にこういうふうな用紙に全部書き込まにゃならぬのだというふうな現物をもっていろいろ御論議もございました。それらに対しまして、厚生大臣から、思い切って自分としては手続の簡素化をしたいと思う、こう御答弁があったようなわけでございます。  なお、先ほどの付帯決議の第一項でございますか、これの私ども具体的な措置としましては、実は今考えておりますることを御紹介をしてみますれば、次のようなことを省令によって明確に規定いたしたいと思います。ということは、その一つは、指定の更新を受けたい旨を書面で申し出られればそれでよいということにいたしたいと思います。しかも、その申し出は、指定の期間満了前六カ月内であれば、その直前というのじゃ、これはお忘れになったりすることがありますので、六カ月内であればいつでも行うことができるようにしたい、こういうふうに考えております。それでもう事は終るわけでございますが、なお、たとえば、今までベッドを持っておられなかったのがベッドを御設備になったというふうな場合には、そういうようなものをちょっと付記しておいていただけばいい、結局書面一本出していただけばそれだけで済むというふうなことを省令の内容として規定をいたしたい、かように考えております。それは法令の上の措置でございます。なお、実際問題といたしましては、先ほどちょっと野澤先生がおっしゃっておられましたが、むしろ役所の方から、あなたの所はいついつ切れますけれども、いかがでございますか、もしあれであれば、別紙なり何なりに記名捺印をして御提出をお願いしたいというふうな現実の措置も要すればとりたい、それらのことにつきましては、なお省令の中に、それからこういう現実の行政上の措置というふうなものにつきましては、これはそれぞれ医療担当者の団体もございますので、それらの方々とさらにもう少しよく御相談をして内容を確定いたして参りたい、まあかように私どもはこの付帯決議第一項について考えておるようなわけでございます。
  55. 千葉信

    委員長千葉信君) ちょっと速記をとめて。    午後三時九分速記中止    —————・—————    午後三時二十六分速記開始
  56. 千葉信

    委員長千葉信君) 速記を始めて。
  57. 坂本昭

    ○坂本昭君 先ほど保険局長から極力簡易にするという点についての説明がありました。御説明としては非常によかったのですが、どらも一応これはまだ本論に入っていませんし、それだけ一応承わっておくということにいたしたいと思います。  そこで、ただいまいろいろとお話がありましたので、この付帯決議一々全部詳しく根掘り葉掘り御質問申し上げようというつもりはございません。たとえばこの第二項など、「国庫負担の途を考慮すべきである。」こういう付帯決議は非常に重要だと思うのです。しかしこれはわれわれ本院においても慎重審議をして、そしてまあわれわれとしても結論を出していく、このことについてはもら触れませんが、ただあとでもう御質問できない事項がありますので、野澤委員も御多忙だと思いますから、第四項の点がどうもこの付帯決議として私よくわからないのであります。「医師会、歯科医師会、薬剤師協会の三団体については、」——「本来の使命達成上、真に遺憾なる状態にあるものと言わざるを得ない。」これは付帯決議としてもずいぶん変った表現だと思うのです。「真に遺憾なる状態にあるものと言わざるを符ない。」というこの付帯決議でございます。これはどうもその「真に遺憾なる状態にあるものと言わざるを得ない。」ということですね、これは一体どういうことなんだか、どういう点が遺憾だか、ちょっとお聞きしたいのですが。
  58. 野澤清人

    衆議院議員(野澤清人君) 大へんなところ御指摘にあずかったわけですが、これは坂本さん前の国会の御審議の過程を御存じないと思うのです。実はこれに対する意思表示は参議院の方でされております。それでそういうことから勘案しまして、各種団体が地域的にばらばらになっては困る。それでもしこれが一つになれるなら、先ほども申し上げた通り行政の手続等の一部なんかもこれは委譲できるのだ。しかし加入したものもあれば、加入していないものもあるというような現状であり、あるいはまた地域々々によっては団体が二つにも三つにも分れるような場合も起きる。そういうことを懸念しまして、戦前のような医師会令とか、薬剤師会令というようなものがあってほとんど強制加入式にまとめられているなら、すべての点も円満にいくのではないか、こういうふうなことで、たまたま参議院でもそういう意思表示があり、前国会でもそうしたことが審議の過程において生まれて、今回の衆議院の審議の過程においても、各種団体についての法制化等の御意見も出ておりましたものですから、その上でここに入れてありますので、字句の使い方等について十分これは慎重に検討した結果やったわけでございますので、ぜひ御了解を願いたいと思います。
  59. 坂本昭

    ○坂本昭君 将来医師会、あるいは歯科医師会の行政的な力を与えるふうに書いた方がよろしい。ただそれだけならもう少し書きょうがあるのではないかと思いますのですがね。真に遺憾な状態というのは、これこそ強い批判だと思うのです。どうしてこういうふうな付帯決議をつけられたか、どうもその真意が私わからないものですから、何か皆さんの方で審議の過程で、こういうような特別な状態をおつかみになられたので、やはりこういうことがこの法案審議の過程で付帯決議としてつけられる重大な要素となったのではないか。今のようなお話ならば、そういうように最初から付帯決議に書いていただくと、むしろすっきりして私読みやすいと思うのです。もう一度この御説明を願いたいのですがね。この点これは非常に私大事な点だと思います。
  60. 野澤清人

    衆議院議員(野澤清人君) 今も申し上げました通り、字句にこだわってなぜ変えたかと言われますというと、これは衆議院に帰って相談しなければならぬと思います。そういうふうな意味合いでなしに、すでにもう少くともこの医療団体を理解する社会労働委員会の方々等においては、どの団体が悪いとか、どの団体がいいということよりも、現在ばらばらの状態にあるものを何とかほとんど強制加入式に取りまとめたい、こういう考え方が相当強いと思うのです。特に保険医等につきましては、全部の者が保険医であるのならばともかくも、保険医でない人もありますし、加入者である会員である者と、非会員である者とにはいろいろ解説等をしましても、これが通じない場合がある。また会の運営自体につきましても、ほかの団体はいざ知らず、薬剤士会などは私関係しておりますのでよくわかっておりますが、もう当然きめられた会費ぐらいは納めるべきものが、任意加入というような建前から、全然納めないでおる者もあるし、しかもその上に薬律違反等を起された場合においては、実際に医薬行政とい引ものはちんばになってしまう。これはひいては国家の不利益、国民の迷惑ということになりますので、でき得るならば医療担当者の団体というものは、一応一貫した一つの団体に仕上げるべきじゃないか、こういう意味であります。ただ、どこが遺憾だということを申し上げたのではないのでありますから、言葉にとらわれずに一つ御賢察を願いたいと思います。
  61. 坂本昭

    ○坂本昭君 確かに今度政府が打ち出しておる国民保険という立場からいいますと、全部の医師が保険医にならざるを得ない。そしてまた今度の法案の機関指定あるいは保険医の指定登録制の問題、こういう点は多分に新しい医療組織へ移ろらとする、そういう内容を持っておるのであります。ですから当然四番目のこの決議事項というものは、私は深い意味をもって読まざるを縛ないのです。で、今のようなお説で、どうもそれほどの意味はないと、これは簡単な文字だと言われると、どうもそういうふうに理解しにくいのですが、たとえばこの中に、「我が国医療の健全なる発達に資すべき制度を樹立すべきことを要望する。」と一番最後に書いてありますが、その目標について、どういうところを目標にするかというような審議はなされたのでございますか、現実に。
  62. 野澤清人

    衆議院議員(野澤清人君) どうも坂本さんの御解釈が独善だと思うのですか、私は簡単な意味にとってくれというお願いをしていないのでありまして、字句にかかわらず、相当の意味は持っておるのだから御理解願いたい、こう申し上げたのです。あなたの今のお言葉だと、簡単な意味にとれというか、理解しにくい、こういうお説ですが、これは一つもし御了解願えるならば、そういう扱いでなしに、書いてありますことの字句一つ一つについてとりわれることなしに、全体の気持を解釈してもらえないかということをお願いしましたのです。  それから「我が国医療の健全なる発達に資すべき制度を樹立すべきことを要望する。」という意味は、全体をひっくるめまして、国民保険ということももう前提になっておるのだから、現在のように保険医自体が保険医の登録をする者としない者と、しかもそれらか全部会員だという建前でいくならばよろしいが、会員もあれば非会員もある、こういう状態では今後の保険医療等の発展のためにも決して利益でないから、そらした団体等の規制についても十分制度化して、国家国民に裨益するようないき方をとってもらいたい、こういうことを要望したわけであります。どらか一つ御了承願いたいと思います。
  63. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 今委員長の御発言の中にきよう質問する事項は、修正された部分についての質問、これに関連して付帯決議の質問をする、こういう御説明でございます。修正された部分といいますると、実は社会保険支払基金を削除なさったのは、まあ修正、それから国庫負担の期日を修正なすった、題名を修正なすったことであって、この修正された個所だけの質問ならこれはできないわけです。むしろ最後に——それをのけた残りのものは政府原案と同じものだ、そこで御質問申し上げるのに実はとまどいするわけですが、そういう意味合いを含めまして私質問させていただきたいと思います。
  64. 千葉信

    委員長千葉信君) 竹中さんに申し上げます。修正部分に関連するということを申し上げましたのは、直接の関連というふうに狭義の意味じゃございません。その修正を行う希望を持っていた個所でありながら、それができないために付帯決議として、その問題の緩和策、もしくは融和策、もしくは救済策という格好でとられている点もありますから、そういう点を含んでの関連部分として御質問されて一向差しつかえないと私は考えております。
  65. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 では野澤さんにお伺いしますが、私は決して批判いたしません。質問いたします。この修正なさる動機において、保険財政の根本的な建て直し、あるいはまた制度の合理化、基礎的な地固めということによって、これは修正されたということになりまするが、そういたしますると、根本的な建て直しは結核対策が修正案に入っておるということが一番正しいと思うんですけれども、そうじゃないでしょうか、批判でなしに御所見をお伺いするわけです。
  66. 野澤清人

    衆議院議員(野澤清人君) この改正案の審議の過程においては、当然結核対策等は強く打ち出されました。かなり論争は繰り返されております。ただし衆議院そのものの最後の意思決定として、政府原案中心にやって参りましたものですから、特にその面に触れて御報告する必要がないと考えて私しておりますけれども審議は十分尽されております。また保険財政の赤字等の問題と関連して、七人委員会、五人委員会等の問題点等の話が出ましたが、中央社会保険医療協議会等のお話も出ております。従ってこれらについては関係委員間においては十分重要なポイントだということの認識の上にこの改正案を打ち出したわけであります。
  67. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 結核問題は根本対策であるということは審議の経過の途中で論争したと、が、しかしこの際の根本対策としては、予算その他の面があるので、結核対策はのけた、こういう意味なんでしょうか、そう了解していいんでしょうか。
  68. 野澤清人

    衆議院議員(野澤清人君) 評価するしないは御自由だと思いますけれども、ただ審議の過程においてなかったかという御質問でありますと、この報告の中になかったというので——なかったんではなく、あったけれども、この法案関係がないから付言しなかった、こういうことであります。どうぞ御了承願います。
  69. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 その次にお尋ねしたいんですが、これは坂本さんの御質問と重複するきらいがあるんですけれども、条文で言えとおっしゃれば四十三条の三になるわけですが、機関指定の問題と、登録の問題なんですが、不当に害するおそれがあることをやはり予測して、御心配になっておられるので、こういうような表現があったようにわれわれ考えられるわけです、この文章を読みますと。そうすると、そういう予測があるということは、法の運営にややもすればあやまちを起す危険があり、あるいはまた逆にいいますと、不備であるとも言えるわけですが、その点はどうなんでしょうか。
  70. 野澤清人

    衆議院議員(野澤清人君) 保険医の登録の際の議論でなしに、機関指定更新の際の御議論としてこういうお話が出ております。せっかく三年目になって更新しようとした場合に、役人があいつはつらがまずいから気に入らないからあれは指定しない、感情上おもしろくないからあいつは指定しないのだ、こいいう議論が相当出ました。これらについては、最悪の場合の仮説の議論だというわれわれとしては意見も申し上げましたけれども、非常にこの点については強調された。個人的な感情や役人のいわゆる官僚独善の立場から、外貌やあるいはその態度等について再指定がされなかったら大へんだ、こういう心配が全国にみなぎっておるというお話がありましたものですから、これらの意向等も入れまして、そうした医師の体面を不当に害するような事態が起きては大へんだという御心配がかなり野党の方に多かったものですから、それでこうしたものを丁寧に織り込んだわけであります。御了解を願います。
  71. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 討論はいたしませんが、次に私申したいのは、そういうおそれがあるから関係団体との連絡を密にするということは、具体的にはどうなんでしょうか。先ほどおっしゃったように普通は機械的にやるのだが、工合の悪い人、ある人に限って関係団体とやはりあらかじめ御相談なさっていくのだと、こういうような御意向のこれは具体的なことなんですか。
  72. 野澤清人

    衆議院議員(野澤清人君) それほど的確に話は進んでおりませんが、先ほど申し上げましたように、第四項の要望事項が達成されて完全に会員が一つり団体に入る、こういうことになってきますというと、その関係団体と話し合いの上で移譲もできれば、あるいはまた再更新というような場合にも事務的に一部分の移譲もできるのではないか、けれども現在のところは予算もなし、またそういう手続等もすぐさまはできないものですから、なるべく関係団体と連絡を緊密にしようじゃないか、特にこの問題につきましては、一括指定という強い御意見が相当出ておりまして、ただし厚生当局としては何々県、何々府というものを一括した場合には事務が煩瑣になって疎漏になるおそれがある、また事務処理も容易でないというようなことから、都道府県を一括するということは非常に困難である、ただし地域的に一括することは差しつかえないのだ、こういうような御答弁もありましたものですから、なるべく医師会、歯科医師会、薬剤師会等と争いが起きないように、間違いの起きないように協調して話し合いをして簡易な方法をとっていっていただきたい、こういうことで付帯に入れたわけであります。
  73. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 次にお尋ねしたいのは、実は個人開業の場合のことなんですが、この機関指定を医療担当者がそれほど反対し心配しておりますのは、決して御親切な更新手続の問題ではない、手続というよりは任期期間三年ということが問題になると思う。そこで私はお聞きしたいのですが、個人開業に二重指定の形をもってやらなければ絶対に工合が悪いのだということの理由、これは私は裏返して申しますと、先ほど先生がおっしゃったように、ある官吏があのやろうはつらがまずいからもう指定しないのだというようなことです。まずいということになりますというと、再指定のときには往々にして官僚の感情が入るわけです。これでは個人開業医としては自分の職場を三年ごとに取りかえていくわけです。身分の保障は保険医として保障されておりまするが、職場は三年に区切られるということが、お説のように感情であのやろうはつらがまずいからということでけずられては困るという心配があるので、やかましくいうのだと思います。ですから、手続でなくして三年という期間にあると思う。しかしそれでも絶対にやらなければいけないのだ、手続を簡単にしてもいいのだ、とにかく期間を持つということが意義があるのだということでありますならば、どうしても個人開業医はそうしなければならぬという理由が衆議院で明らかになったからこうなったと思うのですが、その理由を承わりたい。
  74. 野澤清人

    衆議院議員(野澤清人君) この点につきましても十分話し合いがありまして、今のような御心配の点もありましたが、理解の程度の差だと思います。法文を逐次ごらん願いますと、この改正案を貫いておるものは、今後の医療行為そのものを機関でもってやっていこうという考え方が主でございます。そうしてそれに保険医の登録は終身登録でありますから、その保険医の登録と医療機関としての指定というものは、法人であろうと個人であろうと機関そのものが診療行為をする、そうして請求もする。こういう場合にもちろん個人医が診療はいたしますが、機関そのものが責任を負う、責任の所在になる、こういうふうに法文そのものの解釈がつくものでありますから、従って個人の場合に特別にこれからワクをはずすというようなことをしますというと、たとえば竹中先生保険医でいながら竹中歯科医院というものを開業しておった、あなたが、個人だからもう機関指定は要らないという理屈からいけば、参議院に当選されたあと代診をおいた場合、これは当然機関の指定を受けなければならない、こういうふうな事態が起きる。そういうことから機関指定というものはあくまでも今後の日本保険医療には必要なんだ、こういう結論に達したわけであります。ただしここに書いてあります通り、個人開業医という言葉は今まで法律上にはおそらくなかった言葉だろうと思いますが、いわゆるという言葉を入れて御心配の向きに対してはできるだけ手続を簡素にする、こういうふうな意味合いで付帯決議に持ち込んだわけであります。どうぞよろしくお願いいたします。
  75. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 その点については相当意見がございますが、これはまた後の機会にさせていただきます。  その次は七十条の問題なんですが、国庫負担の問題なんですが、修正の案によりますというと、やはり定額でもなし定率でもなし、一応三十億という線にこれは結果的になってくると思うのですが、国庫負担のあり方というものは、衆議院においては審議過程の上からいって大体はどういうような方向にあるのがいいのだということであったのですか。
  76. 野澤清人

    衆議院議員(野澤清人君) ちょっと竹中先生のお言葉を返すようですが、七十条の問題について修正個所という御指摘ですが、修正はしておりません。
  77. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 だからそれで先ほど質問したのですよ。修正なさったのだが、修正なさったところだけ触れるならば、基金法の削除と題名を変えられただけなんです。従ってこの政府案がそのまま一種の修正案という形にならないと質問できないことになるので、そういう表現をしたわけです。
  78. 野澤清人

    衆議院議員(野澤清人君) 国庫負担に対する考えはどういう考えか、こういうわけでございます。これは付帯決議の第二に入っておると思いますが、「健康保険に対する国庫負担制度の根本理念を明確にし、これに伴い」こうなって、これは第二義的な問題なんですが、最後の「国庫負担の途を考慮すべきである。」こういう表現の仕方をとりました。これはたまたま衆議院における審議の過程において、健康保険社会保障制度なりやいなやという質疑が戦わされました。それで社会党の滝井委員とあくまでもこれは相互契約の保険で、政府から金を流していない以上は社会保障制度とは言い得ないのだ、こういう議論を強く何回も繰り返しております。それから政府の方の見解としては、大臣みずからが広義の社会保障制度であるという解釈でその際にお答えになっておりました。それから自民党の党内におきましても、国民健康保険に対する解釈がまちまちであります。まちまちでありますが、健康保険に対して国庫負担するという態度を打ち出したことは今までにありません。けれども外郭団体である医療担当者の団体等では二割の国庫負担ということも強く打ち出しております。従ってこの問題については、少くとも根本理念を書いたのは書き過ぎるかもしれませんが、とにかく国民健康保険に対する理念というものが党自体も政府自体もばく然としておる、こういう状態では何ぼ叫んでも、補助金は出し得ても国庫負担金は出し得ないということでは困るのじゃないか、そこですみやかにこの根本理念というものを確立しまして、政府も与党の方も、まあ社会保障制度なら制度ということをはっきり言い切ったらいいんじゃないか、もし必要があれば、言い切る以上は国庫負担が定額であろうが不定額であろうが、国一庫負担をするという名目は立つのじゃないか。けれども議論の過程においては、これは衆議院全体を包んだ空気というものは、一体社会保障制度として政府責任を負うものかどうかということの結論が出ておらない。従ってこういう表現の仕方をしたのでありますので、これらについては諸先生方もむしろ今後の審議の過程において、はっきりさした方が賢明な策ではないかと思われるわけであります。
  79. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 最後にあと一点お聞きしますが、この関係団体の何が法制化しておらぬということなんですがね、法制化の問題なんですが、先日大臣からお伺いしたのですが、大臣のお考えでは、厚生行政の一部をも担当するほどの権威と言いますか、内容の充実したものに持っていくのがいいだろうというような御答弁をいただいたわけですが、そこで衆議院としての法制化はやはり弁護士会法のごとき特別法人、しかも権威あると同時にきわめて民主的な団体としての法制化をお考えになっておられるのか、その点をお伺いしたいと思います。
  80. 野澤清人

    衆議院議員(野澤清人君) 一番関係の深い竹中先生でありますから、一番よくおわかりかと存じますが、あなたの御説の通りであります。民主的でしかも弁護士会法に準則するようなしっかりした団体に仕上げたい。同時に大臣の言われるように、医師会あるいは歯科医師会、薬剤師会等と政府とが対立するということでなしに共甘同苦だ、こういうことで十分協力するなら協力する、主張し得るものは主張をして、けんかにならない、こういうように将来やっていくためには、やはり会自体の性格というものもはっきりする必要があるんじゃないか、こういう気持を表わしたわけでございます。御賢察をお願いしたいと思います。
  81. 千葉信

    委員長千葉信君) 修正部分についての質疑は大体これくらいにして、原案に対する質疑に入ります。  ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  82. 千葉信

    委員長千葉信君) 速記を始めて。
  83. 坂本昭

    ○坂本昭君 野澤委員にお尋ねしたいのですけれども、このたびの衆議院の修正におきましても、社会保険診療報酬支払基金法の一部改正につきましては、審査の適正を期せんとする政府の意図は了とするけれども、審査の問題の重要であればあるほど現実の問題も十分勘案し、なお慎重な態度をとるべきだと考えて、これを全面的に削除しましたという御説明がございました。実は速記録を見ますと、この支払基金の方はあまり審議されていないように私は思ったのですけれども、審査の問題などはこれはだいぶ出たと思います。やはりこの点は皆さんとしても相当慎重に考えなければいけないということになったと思うのですが、ただここで一つお伺いしたいのは、現実の問題も十分勘案してというような表現をしておられますけれども、この場合どういう点が問題になって削除されたか、ちょっと御説明いただきたいと思うのです。
  84. 野澤清人

    衆議院議員(野澤清人君) これもまたあとで坂本さんにしかられては困るのですが、率直に申し上げます。これもいろいろ審査の問題についての論点がありまして、特は幹事長が選任するような審査委員制度について、医療担当者自体が一抹の不安を感じておる。同時にまた、審査事項を遂行する上において専門外の人が審査されるというと、間違った審査の結果が生まれるのではないか、こういうふうな御意向も相当ありました。結局、人的資源が適切に得られるか得られないかというのが問題点であります。そういうことから、かなりこの審査委員を選任する際には内々与党の方でも二カ年なり三カ年なり、保険医療に従事した経験のある医師、歯科医師、薬剤師を専任の委員にしたらどうかというお説もあったけれども、全体を包む空気というものは、どうもこれは不安が強過ぎるということでありました。同時にまた、この幹事長制度等もかなり外部の陳情も激しかったものですから、それで表現の仕方が「現実の問題も十分勘案し」ということは、厚生省自体が、いつか山下先生が御指摘になったように、法案そのものの改正案を出すについて、全国的に啓蒙運動をしていない、理解を徹底していない、こういう事態でこれを強行突破することはまずいのじゃないか、こういう結論から一部修正するという御意見もありましたが、むしろこの際は全面削除をしまして、従来通りにしておこう、しかし、これは制度としては当然こうしたものも必要なんだという必要性は認めているが、あなたの先ほど御主張のように理解が徹底しておらない、こういうことから現在の、現実の問題も十分勘案して取りやめたわけであります。御了承願います。
  85. 坂本昭

    ○坂本昭君 これはまたどなたかに怒られるかもしれませんけれども、現実の問題の勘案の仕方が少し変に思うのですがね。むしろあとに出てくるいろいろな監査の問題や、指定の問題、そっちの方の現実はどうして勘案されなかったかと思うのですが、その辺はいかがですか。
  86. 野澤清人

    衆議院議員(野澤清人君) 良識と認識と理解の程度の問題でありまして、どこに比重が重いかということを言いますというと、主観と客観性の衝突になりますから、私は全体を通じて最も比重の強いところを衆議院は修正した、かように善意に御理解を願いますと、大へんけっこうだと思います。
  87. 榊原亨

    ○榊原亨君 私はこの際、ただいままでいろいろ衆議院の修正案に対しましても御質問がありましたが、一応私は厚生大臣に、この法案についての総括的なお考えを聞きたいと思います。いろいろ大臣もお答えになりましたが、結局この法律国民保険をやる前提としていろいろしなければならぬ地ならしとか、あるいは地すべりかもわかりませんが、その地ならしの一部をなすものであるというふろに私は大臣のお答えから承わったのでありますが、そらでございますか、その点について一つ
  88. 神田博

    国務大臣(神田博君) その通りであります。
  89. 榊原亨

    ○榊原亨君 そういたしますると、大臣はたとえば、医療担当者に対しましては点数表とか、あるいは単価の問題その他を解決し、被保険者に対しましては、またいろいろの施策をするというふうないわゆる地ならしをするというお考えでございましょうが、その時期はあまり遠くないというお答えをいただいているようでございますが、その点について、その時期は二年も三年も先かどうか、あるいはごく近いうちかというようなことの大体のお見通しと、さてそれらの施策は全部成案が出なければ一括してやらないのだというお考えであるか、解決ができて施策の方針がきまったものから漸次早急に実現するというお考えであるか、その二点についてお答えを願いたいと思います。
  90. 神田博

    国務大臣(神田博君) この法案通りましたら、直ちに具体的の作業に移りまして、今の私ども考えを申し上げますれば、夏過ぎる時分には一つ成案を得たい、こういう考えでございます。
  91. 榊原亨

    ○榊原亨君 大体大臣のお考えもわかったようでございまするが、そういたしますと、その地ならしと称するものの中に非常に重要な諸点があると思うのであります。第一点に、私のお尋ねいたしたいのは、これも今までの質疑応答で大体わかっておるのでございまするが、結論的に御所見を承わりたいと存じまするが、この健康保険と申しますものは、御承知の通り、初めの発達は短期の保険からできてきておる。従いまして、これらは短期の病気、短期の疾患に対して重点的に行われたものでございまするが、その後、結核の治療が進歩、発達して参りますると、その中に結核が入ってくる、もとから結核という治療はあったのでございますが、ことに、この結核に対する治療の進歩とともに長期の治療を要するようになってきました。あるいは精神病につきましても、これは卑近な例でございまするが、精神病になったら、これは仕方がないのだから、気違いになったら病院に一生涯入院するというような時期が過ぎて、かなり重い精神病でもなおるような時代がくる。従って、それに対してまじめな治療が行われなければならないということになって参りますし、高血圧にしても棺おけに半分足を突っ込むというような考えがありましたのに、今度は老人病に対する治療が発達してきた。従って、これらの精神病、結核、あるいは老人病というような長期の治療を要します疾患に対しましても、まじめな治療が行われてきた以上は、今まで短期の疾患を扱いました健康保険のワク内ではできぬことだと思うのでありますが、質疑応答を重ねて参りますると、大臣はこれらの点についても、はっきりこれは別に考えるべきだという考えがあったようでありますが、これらの長期疾患について、果して厚生大臣はまじめに短期疾患のワクの外でやろうというお考えであるかどうかということを、結論的に承わりたいと存じます。
  92. 神田博

    国務大臣(神田博君) 健康保険が労務管理の一つ施策として出発いたしましたことは御承知の通りでございまして、ちょうど先般健康保険法の実施満三十年記念を施行したというような歴史を持っておるわけでございまして、そこで、この健康保険中心として保険医の指定を行い、そして今榊原委員のお述べになられたような治療をして参ったのでありまするが、医薬の非常な進歩、さらに政府が今回、国民保険一つ踏み切る、こういうことになりますと、そこでおのずから診療機関に対する考え方、今までの措置というものをもう一ぺんここに新しく考え直さなければならないのじゃなかろうか、こういうことが自然にこれは出てくる、常識的なことだと思います。ことに、保険医の点数、単価等の問題につきましては、すでに二十六年の改正の際に問題を起しておる、その後しばしばこの改正を要望されている事情もございますので、ここで思い切って、一つ国民保険に入りますことを前提とした大改正をしたい。医師の待遇改善をしたい、こういう考えでございます。
  93. 榊原亨

    ○榊原亨君 ことに私は問題だと思うのは、各委員がおっしゃいましたように、結核でございまするが、なるほど結核の死亡率は半減いたしておりますが、患者は少しも減っておらん。従いまして、今まで厚生省のおとりになりましたように、結核病をなおすのだというような考えでは、この問題は解決はしないと思うのであります。どういたしましても、前提段階といたしましては、結核の感染源をなくするのだという考えに踏み切らざる限り、結核であれば何でもかんでもなおす、全部それでやるのだという考えでは解決できない。結核を根本的になおす方法もございますならば別でございまするが、現在の方法においては、遺憾ながら死亡率は減ずることができますが、結核そのものをなおすというのにはまだなかなか技術が要るのであります。この段階におきましては、ちょうどらい病のようにまず感染源を持っておる。たとえば空洞を持っていて現にばい菌を吐き出しておる患者をまず優先的に国家が治療の対象とする。もしその治療ができない場合には、これを長期のアフター・ケアに入れるとかして、その感染源をなくするという方針がなければ、この健康保険の問題にからんでの結核の対策というものは解決しない。大臣はそれだけのお考えがあるか、その所信を承わりたい。
  94. 神田博

    国務大臣(神田博君) 今の榊原委員の御所見私もまことに同感でございます。実は三十二年度におきましても、結核の抜本的対策を重大方途として十分折衝いたしたのでございますが、ということは、三十二年度におきましては、取りあえず、一つ結核の早期診断、早期治療に重点を置いた結核対策と、現に罹病して長期治療を要する者り対策は、今年は一つ十分調査をして、これを並行的に考えていこうじゃないか。そこではっきり申し上げますと、今お述べになった結核対策については、この問題と十分関連を持っておりますので、そういう考え方で進んでいきたい、善処したい、検討したい、こういう考えでございます。
  95. 榊原亨

    ○榊原亨君 先ほど野澤委員のお答えにも、果して健康保険保険か保障かという問題に触れられておったと思いますが、今度のこの法律におきましては、この事業を執行する上に必要な金を国庫は負担するが、それは予算の範囲内でこれを行うと規定されておるのでありますが、いわゆる地ならしとしまして、厚生大臣はこの国庫の負担というものを定率にするというお考えが将来ありますかどうか。この問題について承わりたいと思います。
  96. 神田博

    国務大臣(神田博君) そういう考え方をもって進んで参りたいと思っております。実は三十二年度の予算折衝におきましても、そういう考え方で折衝いたしておったのでございますが、御審議願っておる健康保険法の継続審議関係もございますので、今年度はこれと同じようにしていこう。通ったあとで全面的な、先ほど申し上げたような大きな変革も考えなければならないので、その際、一括して考えよう、こういう打ち合せになっております。
  97. 榊原亨

    ○榊原亨君 医療体系についてでありますが、昨日の公聴会におきまして、健保連合会の理事といわれる方が、この社会保障制度医療を完全にやるためには、どうしても医療国営でなければならない。それが理想の姿であるが、今はやむを得ないからそれに向って前進する段階を踏んでおるのだというお話を私は承わって驚いたのでありますが、厚生省は多年、どうしても社会保障制度医療をやるには、私的医療機関と公的医療機関とがちょうどなわのようにからみ合ってやらなければ、完全な運営ができないと主張しておられる。重要な地位にある健保連合会の理事から、医療国営でなければできぬという御所見をいただいて、私非常に驚いたのでありますが、厚生大臣はこの点について、公的医療機関と私的医療機関には機会の均等を与えて、両者の長所を生かすというお考えであるか、健保連合会の理事の方がおっしゃったように、医療国営の線にだんだん持っていくというお考えであるか、この点は根本的な問題でありますから、はっきり御所見を承わりたいと存じます。
  98. 神田博

    国務大臣(神田博君) 厚生省の考え方、これは即政府考え方とお考えになっていただいてけっこうでございますが、政府といたしましては、公営と私企業と、現に開業いたしておられます診療機関が、ともどもにその特長を生かして、そしてわが国医療保障制度が成果をあげることを期待する、そういう趣旨でずっと今後も善処して参りたいと、こういう方針でございます。
  99. 榊原亨

    ○榊原亨君 いわゆる二重指定という問題に触れてこなければならぬと思いますが、これは実際私ども本案を理解します上におきましては、二重指定でなしに、医者に対しては、医療担当者に対しては登録であり、機関に対しては指定という、登録と指定の制度であると思いますがこれらの指定に当りまして、医療国営の前提をなすおそれがあるところの地域の指定を考えましたり、定員制を考えましたり、あるいは医療機関の特別の企画というものを頭に入れて、いわゆる二重指定と称するものをやろうという考えはないのであるかどうか、これは非常な問題になっておるところでございますので、特に厚生大臣の明確なる答弁をお願いいたしたい。
  100. 神田博

    国務大臣(神田博君) ただいま榊原委員のお述べになられたようなことは考えておりませんで、今の診療機関をそのまま、今の医師をそのまま登録あるいは指定する、こういう考え方でございます。
  101. 榊原亨

    ○榊原亨君 国民保険をいたしまするというと、どうしても今の国民健康保険というものが基盤にならなければならぬのじゃないかと私ども考えておるのでありますが、今の国民健康保険に対する政府対策は、財政の豊かな、経営のよい組合を補助金をもって、ますます助長しようという方向に動いていると私は承知しておる。しかしながら、弱小の、基盤の薄い国民健康保険組合に対しましては、結果においてこれは自然消滅だということになるという結果になると思うのでありますが、これらの国民健康保険に対する補助金の方法についての再検討はするという御意思があるかどうかということが一つ。  もう一つは、現在厚生省に集まっておりますところの国民健康保険に対する統計と申しまするものは、これは全然うそなのである、と申しますのは、各市町村におきましては、どうしても補助金がほしいから、運営が悪くても、報告は運営がいいように報告をされているものが非常に多いのであります。従いまして、私ども地方に参りまして聞いてみましても、厚生省の出先機関と一緒に私お供をしたときには、その組合は非常にうまくいっていますと申しますのでありますが、一たび酒を飲んで、その厚生省の出先機関が行ってしまうと、実はあれはうそなんですけれども、補助金がもらえないからああいうふうに報告するのですと言う。そういうものの集積された統計によって、国民健康保険の現状はかくあるものというふうな誤解をされまして、国民保険を踏み切った場合に、そこに非常に矛盾ができてくる。ことに健康保険は、健康なる人を対象としているのでありまするが、国民健康保険は御承知のように、中には半分棺おけに足を突っ込んだような人も入っておる国民健康保険でありまするから、これらに対する対策は十分慎重を要するであろうと私は考えておる。厚生大臣は、これらの補助金の問題並びにその補助金をめぐる統計を再検討ざれる意思があるかどうかということをはっきり承わりたい。
  102. 神田博

    国務大臣(神田博君) 国民健康保険の運営に当りまして、地方財政が困難をしておるということは十分承知いたしております。そこで政府におきましては、この皆保険を実施する段階として、できるだけ助成の方法を講じて参りたい、こういう考え方をもちまして、三十二年度も事務費の増額をする、あるいはまた、先般国会にお願いいたしまして三十年度の赤字も補正予算でお願いしたようなことでございます。  ただいま御指摘になりましたこの国民保険の統計は非常に間違っておるという御注意のようでありますから、これは私一つ十分調べることにいたしまして、さようなことがないように、そういう作りごとでなしに、まじめなこれまでにやった国の補助というものが、所要のものが得られるという、国民保険が実施できる、運営できる、こういうようなふうに指導して参りたい、かように考えております。
  103. 榊原亨

    ○榊原亨君 ちょっと速記を……。
  104. 千葉信

    委員長千葉信君) 速記を止めて。    〔速記中止〕
  105. 千葉信

    委員長千葉信君) 速記を始めて。  四時四十五分まで休憩いたします。    午後四時十七分休憩    —————・—————    午後五時七分開会
  106. 千葉信

    委員長千葉信君) 会議を再開いたします。  休憩前に引き続き、質疑を行います。
  107. 榊原亨

    ○榊原亨君 次にお伺いいたしたいのは、一部負担の問題であります。この一部負担は、たとえば受診率を制限するためとか、あるいは受益者負担とか、いろいろの問題が起ってくると思うのでありますが、現実の問題いたしましては、被保険者の啓蒙ということが大事であると思うのであります。ことに医療担当者に対しましては、支払いの履行ということが非常に重大問題でありまするが、一般の方々としては、医療担当者が自分のところに患者をよけいこさすためとか、あるいはその他のために故意に支払いをさせない、謝礼を受けないというようなことをいわれておるのでございまするが、実際はそれとは違うのであります。ことに一部負担につきましては、現在においてもなおたくさんな未収があります。ことに生活保護法の一部負担ということについても非常な問題があるのでありまするが、これらは被保険者の啓蒙ということが、医療担当者の方々の努力とともに必要であると思うのでありまするが、これらにつきましては、ことに私は問題になるのは、被保険考証の問題であると思います。  御承知の通り、戦前におきましては被保険者の台帳というものを作っておった。ところが、現に役所の方には、今被保険者台帳というものがない。従って、被保険者台帳がありませんから、ほとんど、だれが被保険者になったということを把握することがむずかしい。ことに被保険者証には、一般にこのような証書には写真を貼付するということが普通一般の例でありますが、この場合には、被保険者証というものには全然写真もない。従って、医療担当者のところへ被保険考証を持ってきましても、果してこれが本人であるかどうかということを確認することができぬという状態であります。従って、一部負担というものにつきまして、この収入を確実ならしめる上から申しましても、もう少し被保険考証というものの尊重ということを啓蒙する必要がある。急患の場合がありますからして、急の病気の場合には被保険者証を持ってこなくていい、これは当然のことでございますが、そうでなくても、被保険者証はただ医者のところに預けて、次から次へと記号番号だけを言えば、それで診療が受けられるというのが現状でございまして、もう少し被保険者の啓蒙に当っては、被保険者証を尊重しようということを啓蒙していただかなければならぬと思うのでありますが、この点について保険局長のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  108. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 御質問の御趣旨のように、私ども考えております。ただ、現行の制度におきましては被保険者証が一枚でございまして、本人がかかっておって今度家族が別の医療機関にかかるというような場合に、それをまた取り下げて別の医療機関に持っていくというふうなことにも相なりまするので、今先生御指摘のようなことも現実の問題として起る可能性があるわけでございます。しかし、これは私どもといたしまして、今後被保険者証というようなものの形式なり、あるいはやり方なりというようなものについても、十分研究を重ねて参りたいと存じております。  いずれにいたしましても、今の一部負担を支払うべきであるというこの啓蒙につきましては、これはもう当然やらなければならぬことでございまして、御存じのように、政府管掌の事業所には社会保険委員というものが置いてございまして、いろいろそういうふうなことについて御協力を願い、啓蒙の手足となっていただくというような制度もございまして、相当な数の方々もあるわけでございまするから、これらの方々にも十分御活動を願って、その啓蒙に万遺憾なきを期したい、かように私ども考えております。
  109. 榊原亨

    ○榊原亨君 今までもさようなお言葉をたびたび聞いた。被保険者の啓蒙ということについて、たびたびお話を承わったのでありまするが、現実の面において、末端に参りましては、医師の指導ということについては相当注意と重点が置かれておるのでありますが、被保険者の方の啓蒙については、ほとんど今までも成果を見ることができない。かような法律を通すときになりますと、いつも被保険者の啓蒙をやるというようなお話でありますが、そういうことをいつも繰り返しておられたのでは、厚生省はいつも例の欺瞞的言葉をもってだますのじゃないかというような考えがどうしても医療担当者の面にわいてくるのでありまして、このたびは、先ほどもお話しのように、厚生大臣一つこの際は、地ならしを根本的にやるというお考えでありますが、この点についても特に重点を置いていただきたいと思うのであります。この点について大臣のお考えはいかがです。
  110. 神田博

    国務大臣(神田博君) 今、榊原委員のお述べになられましたことは、私全く同感でございまして、被保険者の指導ということにつきましては、この法案の問題とさらに一つ結びつけまして、今後十分徹底するような指導をいたしまして、そういった御迷惑のかからないような方向に持っていきたい。これは保険者とも十分連携の上でいたしたい、医療機関にもなお一そうお願いをいたしたいと、こういう考えでございます。
  111. 榊原亨

    ○榊原亨君 次に、私お尋ねしたいのは差額徴収のことであります。御承知の通り、ただいまにおきましては入院料の差額徴収のことだけをやっておるのでありますが、いろいろ先変万化でありますところの治療をいたします場合に、それがどうしても企画のうちだけで、これをワク内の治療だけで満足させるということはどうしてもできぬ。そこで、これは英国におきましても、フランスにおきましても、ほとんど世界各国において差額徴収ということを認めておる。ただ、その差額を一定の規制を経ました差額を徴収するか、あるいは自由奔放の差額にするかというところに問題があるのでありますが、私イギリスの医師のお方に聞いた。一体あなた方は自由なる診療をしようということをモットーとしておられるか、一体イギリスの医師の人はどういう点においてこの社会保険に寄与しようとしておるのか、社会保障制度協力しようとしているのかと聞いたところが、即座に、徴収いたしますその差額の標準について、医師会が自主的に高価にわたらざるように決定するということが、医師が社会保険に対する寄与の一端である。それであるということをはっきり言ったのでありまするが、きのうもいろいろ問題になった、三万損であるとか五万損であるとかいうような議論がいろいろあったのでありまするが、医療担当者はどうしても、医療費の収入によって生活しているものでございますので、適正な医療費を割り引いて、そうしてその規制によって社会保険ができると、社会保障制度ができるということには私は反対であります。どうしても医療担当者がその社会保障制度に寄与するというには、今私が申し上げたような点について、高価にわたらざるよう規制する、自主的にきめるべきものでございまして、この点につきまして、医師会の強化ということも、薬剤師協会の強化ということも必要であるかと思いますが、どうしても保険財政がらまくいかないので、医療担当者だけにその責任を負わし、規制をしいるというような在来のやり方について、厚生大臣はどう思っていらっしゃるか、また差額徴収について今の制度を改革しようというおつもりはないか、あるかということについて承わりたいと思います。
  112. 神田博

    国務大臣(神田博君) 今の榊原委員のお尋ねは、全く根本に触れる問題でございまして、私が先ほどお答えも申し上げたのでございますが、健康保険制度のできましたことが、工場等の労務管理というような面から発足いたして参ったことは、御承知の通りでございまして、そこで最低の医療一つ相当の効果をあげようというような考えの意図で、歴史的にずっと今日に参ったと私承知いたしております。しかるに、もう世の中も一変と申しましょうか、事態も非常に変ってしまった。あらゆる面に変って参っておりまして、しかもみな保険に入ろう。またわれわれがすべてスピーディな時代になって参っておりますので、十分な医療なり治療をするということが要求される際でございまするので、今お述べになられたようなことを、これは今度検討を加えます際に十分考えて、そして合理的な結論を得たい、こういうことに相なろうかと考えております。
  113. 榊原亨

    ○榊原亨君 先ほど厚生大臣は、社会保障制度医療を行う上においては、官公立の診療所と私的医療機関とが共存するような形であって、その機会は平等でなければならないということについて、御賛成を願ったと思うのでありますが、現実の面におきまして、官立の、ことに古い大学の医療におきましては、特別扱いが現在されている。厚生省がいろいろやかましく計いましても、それらの官公立の大学の医療というものは、実に一般の私的医療機関と違った治療が行われている。またその他の、そういうところでない大学、あるいは赤十字病院、あるいは共済会病院というようなものを監査いたしましても、その監査されたのが一般の私的医療機関の処分と違った処分が行われておるというのが、現実の問題であると思うのでありまするが、これらの点の公平ということは、今後地ならしの上において絶対に必要なことだと思いますが、これらの点につきまして、厚生大臣並びに保険局長の御意見はいかがでしょうか。
  114. 神田博

    国務大臣(神田博君) ただいまお尋ねになられましたことは、今までの扱い方として、これは納得できないと私も考えております。法の前ではもら平等に扱らべきものである、こういうふうに考えております。そこで今度の健康保険法の一部改正の中にはその趣旨が盛られておりまして、その法案が通過いたしますれば、榊原委員が今お述べになったような結果に相なることでございますので、あるいは御了承願いたいと思います。
  115. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 現行の制度のもとにおきましては、保険医というものと保険者の指定するものという、医療機関と二本建になっております。しかも、御指摘の官立病院、公立病院等は、すベて保険者の指定するものということに相なっておるわけであります。この保険者の指定するものとの関係は、個々の契約で行われるという——個々の医療機関との個々の契約で行われる、こういう構成をとっておるわけであります。それで改正法におきましては、さような建前をとりませんで、四十三条の一号に今御指摘のようなものは全部入ってしまうわけでございまして、一般の医療機関と同じような立場でと申しますか、法律関係で処理されるということに相なることになります。
  116. 榊原亨

    ○榊原亨君 この診療報酬の適正化ということにつきましては、いろいろ今まで御議論、御質問、御答弁があったのでございまするが、点数を改正いたしますにいたしましても、単価を改正いたすにいたしましても、その究極するところはどこかと申しまするならば、わが国医療担当者生活水準をどこに置くかということに帰一するのであります。現在の医療担当者生活水準をどこに置くかということが決定すれば、あとの計算は、もう立ちどころにできるというところの調査研究が行き届いておる。そこで私はお尋ねいたしたいのでありますが、厚生大臣とされましては、今までの医療担当者生活水準を大体どこに置こうとされるのか。今までの、現在のこの単価の計算におきましては、大体この医師の生活水準を非常に低いところに持ってきておるわけでありまして、これはやはりこの医師が成り立ちますための教育とか、長い間の研さんとかというようなものを加味しまして、最低賃金ではありませんが、そこのところをどこに置くかということを、まず社会的評価においてきめるということが、先決問題であると思う。これを厚生大臣がおきめになれば、あとは属僚がちゃんと計算いたしまして、たちまち計算が出てくるのでありますが、厚生大臣は、この医師の生活水準というものを、一体どこに置こうと考えていらっしゃるかということについて、お答えをお願いしたいと考えております。
  117. 神田博

    国務大臣(神田博君) ただいまのお尋ねは、これはごもっとものお尋ねでございまして、私どもも医師の待遇改善をしょう。待遇改善の一体目標はどこに置くかということにつきましては、これから検討しようということでございまして、今すぐどこだとお尋ねされますと、ここまでだということは、今お答えしかねる事情であることを御了承願いたいと思います。
  118. 榊原亨

    ○榊原亨君 このことは非常にむずかしい問題でございまするが、これを先におきめにならなければ、何ぼ計算をされたって、だめだと思うのであります。今まで医療費の問題で応答質疑を重ねてやっておりますが、この重点をここに置かなければならぬ。同じ大学を出ましても、ここにも局長がおられますし、いろいろあるのですが、そういう文科系統の方々のものと、この医師の教育というものは、年限から違いますし、いろいろの点が違うのであります。その責任においても違うのであります。従って、この生活水準というものをまずおきめを願うということを、特に大臣は御留意を願いたい。これをおきめ願えますれば、あとはおのずからきまるということを、特に私はこの際申し上げておきたいと思います。  それに関連いたしまして、もう一つ医療費の問題について、私は申し上げておきたいのは、この社会保険の診療報酬の地域差ということであります。この地域差につきましても、東京都は十二円五十銭だ、そのまわりは十一円五十銭と申しましても、そのまわりを一つ格上げをいたしましても、またそのまわりはあまり違わないじゃないか。またそれを格上げいたしましても、またそのまわりは違わないじゃないかということで、結局地域差ということは無意味なんです。それからその地域差につきましても、へんぴなところにおります医者は、その子女を教育いたします上にも非常に高価な費用が要るのでありまして、都会におる者と、いろいろな面において違うのでありますが、まず単価の改正をされますならば、この地域差ということを、最初に特にお取り上げを願いたいと思うのであります。厚生大臣はこの地域差をなくそうというお考えがあるかどうか、地域差をそのままにして、単価の改訂をされるお考えであるか、その点を承わりたい。
  119. 神田博

    国務大臣(神田博君) ただいま榊原委員のお述べになられましたことは、非常にこれは重大なことでありまして、私は端的に申し上げますと、これは廃止したいという考えを持っております。そういう考え方で作業を進めよう、こういうふうに考えております。しかし、この点はよく一つ、世論と申しますか、いろいろこの案の最後の決定につきましては、私いつも御答弁申し上げておりますように、官僚独善だとか、政府独走というようなことにならないように、いろいろ御相談し、いろいろ御納得を得ていきたいと、こういうように考えております。
  120. 榊原亨

    ○榊原亨君 医療融資の面につきましては、現在中小商工業者に対します融資のワクの中にあるのでございますが、これらの点、並びに税金の点につきましても、例の二八%控除ということでありますが、これらの点につきましては、あるいろ固定資産税というものを免除いたしまして、官公立の施設と同じ立場に置きますとか、いろいろ創意工夫というものが、その地ならしの上においては要ると思うのでありますが、これらの融資あるいは税の問題につきまして、大臣はこれを御検討になり、適正なる措置を講ずる御意思がありますかどうか、承わりたい。
  121. 神田博

    国務大臣(神田博君) 第一の診療施設機関に対する融資の問題でございますが、これはいろいろ、すべての施設が近代化されている今日でございます。これはやはり診療機関においても、近代化する必要が相当あると考えております。そこで、そういうような面につきましては、できるだけ一つ融資の順位を上げて、設備が近代的と申しましょうか、医療保障を上げていく上に支障のないようにいたしたいと、こう考えるのでございます。  それから第二の、税法上の問題をどういうふうにするかという問題でございますが、これも先ほど私お答え申しておりますように、一点単価等との関連がございますので、これと十分にらみ合せて参りたい。さらに今申し上げますような、設備の充実というようなことになりますれば、これらの減価償却、原価にどういうふうに取り入れるかという問題もございますので、これはやはりそういう面も十分に加えて、十分検討いたしまして、医師の待遇改善というものは実効が上がる、それがしかも世間が納得するというような点に持っていきたいと、こう考えております。
  122. 榊原亨

    ○榊原亨君 たびたび質疑応答の中に出てきます事務の簡素化についてであります。これは先ほども野澤代議士がいろいろお答えになったのでありまするが、今度の法律に伴う事務の簡素化だけではなしに、社会保険の運営上の事務の簡素化ということは、これはもうぜひ必要な地ならしの一つと私は考えております。一例を申し上げますというと、私も病院をしているのでございますが、私の病院で、百五十人ぐらいの給食をいたしますためには、朝から晩まで労働強化いたしまして、事務員が七人くらいいなければ、それだけの事務をとることができない。一々カロリー計算を一食ごとに出すというような計算をしておりまして、毎日判を押すだけの書類で毛膨大なものであるのであります。これは大体厚生省の官僚諸君のお考えが違う。御承知の通り、いろいろその役所の事務を取り扱います上においては、ドイツの方法とアメリカの方法とがある。ドイツの方法は一々、欠間違いがあってはいかぬというので、汽車の切符を一々検札するような制度をとっておるのでありますが、これによったら非常な人件費が要ります。アメリカの方は、御承知の通り、多少間違いが中にあるかもしらぬけれども、その間違いを発見するために事務を繁雑にして、事務員を多く雇って、大きな費用を出すということはきわめて損なことである。従って、これはある程度の簡素化ということをぜひ実行しなければならぬという方針でアメリカはやっておると、私は思うのでありますが、今まで日本の厚生省がおやりになった方法というものは、相手を必ず悪人とまず判断されまして、その悪人をどうしてもなくさなければならぬというようなことで事務をおとりになりますから、制度をおとりになりますから、勢いこれは非常な繁雑なものとなってくる。ことに、その繁雑な事務を扱っておりますものの大多数は医療担当者であるのでありまして、これは診療をするひまがないくらいであります。  御承知の通り、この健康保険の診療報酬を書きますのには、大体月の五日までにやらなければならぬというのでありますから、その五日の間は診察を休み奥さん、女中まで手伝いして、徹夜でやりまして、ようやく五日の日に間に合うというのが現状なんです。従って、この点につきまして、書類事務の簡素化をやっていただかなければなりませんし、医療担当者が自分の医療に直接関係しないものを書きますときには、相当の料金を取るように取り計らい願いたいと思います。土地台帳を見るだけでも、現に政府は二十円取っておりますが、医者はいかなる繁雑な書類を書きましても、処方箋以外は全然文書料はもらえないというのが現状なんであります。従いまして、医療担当者がこれらの事務の一端を担当させますれば相当なる料金を取らなければならないということになりますと、でき得べくんば、これらの事務はことごとくその保険者の事務においてやられるようなふうなことを考え、またその簡「素化ということをぜひやっていただかなければならないのでありますが、これらについて、単に口先だけでなしに、ほんとう厚生大臣はこれを解決される御意思があるかどうかということを承わっておきたい。
  123. 神田博

    国務大臣(神田博君) 今の健康保険関係、それからさらに要保護者の病気との関係において、今お述べになられたような非常な複雑きわまる書類が作成され、それからそれをまたまとめて月々仕事をしながらということは、どえらい労力を使ってむだなことをしているということを、私は前から実は承知しております。これは非常にむだなことであると考えておったのでありますが、まあ厚生省に参ることになったのでありまして、この問題と関連なしにこれは簡素化いたしたいという、私、気持でおったのでございます。こちらへ参りましてその声のなお高いことを聞きまして、これはもう一日も早く一つ簡素化しなければならぬ、こう考えておりまして、簡素化をする作業をするように命じておりますので、この方は長くかからないと思っております。徹底した簡素化をはかりたい、こういう私、信条でございます。
  124. 榊原亨

    ○榊原亨君 社会保険保険医に対しますところの指導、監督、あるいは審査、監査というようなこと、また今度問題になっております指定というようなことにつきましても、これはおのおの薬剤師協会は薬剤師協会、歯科医師会は歯科医師会・医師会は医師会というものの協力に待ってやるというお話でございましたが、これは当然医師会の法的強化ということを考えなければできない問題でございまするが、これらの点につきまして、もしも医師会が、官僚的に強化するということではないということはこの前の御答弁ではっきりしておりまするが、医師会が民主的に強化された場合には、これらにつきましての相当部分の行為を医師会におまかせになる、あるいは薬剤師協会におまかせになる、歯科医師会におまかせになるという御意思がありますかどうか、それをはっきり御答弁を願いたい。
  125. 神田博

    国務大臣(神田博君) その考えでございます。
  126. 榊原亨

    ○榊原亨君 以上お聞きいたしますというと、大体今度の法案をめぐりまして、それに関連いたしますところの国民保険というものに対する地ならしとしての、大臣の御所見なり御決心なりというものを、私大体了解できるのでありまするが、これらについては先立つものはやはり金でありまするが、これらについての予算的の措置について厚生大臣は相当の御決意をもって臨んでいただかなければならぬと私は思うのでありまするが、それらについての大臣の御決心を最後に承わりたいと存じます。
  127. 神田博

    国務大臣(神田博君) ただいまのこと、全くこれはお説の通りでございまして、これは私がこの場で「その覚悟でやっております」と言うだけでは、御満足をなさらぬだろうと思います。私はこれを一つやり遂げたいと、かように決心いたしまして、この春以来、石橋内閣、また今日この岸内閣の閣議におきまして、しばしば閣議にこの問題を提供いたしまして、この健康保険法の改正に関連して、こういう方向一つ医師の待遇改善その他諸般のことを進めていきたい、それについては政府においても一つ自分の考えていることに全面的に協力していただきたい、この問題解決のために所要の国家財政を投入するという決心をもってやらなければこれはできないのだ、こういうことを私閣議に御披露いたしまして、閣僚諸公の同意といいましょうか、支持を受けております。ことにこの点につきましては、内閣総理大臣及び大蔵大臣が、衆議院の社労の委員会に参りまして、私がしばしば社労の委員会でそのことに言及してお答えした点について、裏づけと申しましょうか、厚生大臣から重々聞いているからその成案を得て政府としては善処するのだ、こういうことを答えられております。はっきり申し上げますれば、そういう重大な決心をもってこの問題に当って解決しよう、長年の懸案をここで一掃したいというのが私の決心であり、厚生省の今考えている方針であり、政府といたしましても、また与党におきましても、その点私は了承を得ている、こういうふうに考えております。
  128. 松澤靖介

    松澤靖介君 榊原委員の質問の追加質問のようなことからまず始めまして、質問に移りたいと思いますが、第一番には、先ほど医者の生活を向上させるために、この医療の医者に対する報酬なり単価なりを考えなければならぬというお話がありましたが、それらにつきまして、大臣は省内の人たちに命じまして、できるだけ早く事務的に終了したいというようなお話ですが、大臣は、省内の人たちだけでなくて経済学者などもその中に入れまして、そうしてほんとうに非難のない、万遺憾ないような措置を、あるいは対策を講ずる考えがあるかどうか、御答弁をお願いいたします。
  129. 神田博

    国務大臣(神田博君) 松澤さんのお聞きになられたような方針でこれを改正したい、事務当局には十分役立つような資料を作成しろ、この資料を、今お述べになられたこと等も加えて、善処いたしたいという考えでございます。
  130. 松澤靖介

    松澤靖介君 なお、きのうの公述人のお述べになったそのことに対して、局長はどうお考えになっておるか、すなわち一部負担の問題ですが、初診料の問題について医療担当者は、みな医者は患者吸収に利用して、そしてその一部負担をとらずにおるところも相当あるのじゃないかというような、すなわち医者に対しての色めがねをもって、あるいは不正をなすものなりという前提のもとにお考えになっておるような公述のようにも承わったのであります。先ほど榊原委員は、厚生省は医者に対して不正をなすものなりという見方をなしているというようなお話もありましたが、厚生省のひもつきであるような、いわゆる七人委員会とか、あるいは社会保障制度審議会委員とかいうその立場にある人が、さような医療担当者に対しまして色めがねをもって見るというような、その人たちが公正妥当の意見を吐くというような前提のもとにおいて、大臣なりあるいは厚生省の人なりが考えておられるかどうか、私はそれをお聞きしたいのでありますが、もちろんわれわれはもしも初診料の一部負担をまげた上においてどうなるのでしょうか、あるいはここにお集まりになっておるところの医者でない人たちはおわかりにならないかもしれませぬ。すなわちこれは不当不法なるものとして処罰される、監査におきまして取り消しの一つの材料になり得るのであります。それすらも現実のことも知らずに、さような、いわゆる医者を中傷するような言葉をもって公述をなすというような公述人を、厚生省が、いつでしたか山下先生が、今の厚生省のひもつきのいわゆる審議会委員というものは、あれは早晩解消すべきでないか、あるいはまた委員の選考に対しましても改めるべきではないかというお話がありましたが、私はあの言葉を聞いてもっともと思ったのですが、これに対する局長の考え方、できれば大臣の所見も承わりたいと思います。
  131. 神田博

    国務大臣(神田博君) 今の厚生省に置かれております七人委員会のことをお尋ねと思いましたが、もろ七人委員会は解消になると思いますが、これは前の大臣の置かれた顧問制度でありまして、私はまだお願いしておりませんからどうか一つその意味で……。
  132. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) きのうどなたが今松澤先生が仰せになりましたようなことをおっしゃったか、私個人的には記憶をしておりません。どなたがおっしゃったかということは記憶しておりませんが、そういう御公述があったことは記憶をいたしております。しかし私どもといたしましては、保険行政を運営していく上におきまして、医療担当者の方を、皆さんが悪い方だというふうに考えておってこれが運営できるものではございません。従いまして私どもはさような考え方は毛頭いたしておりません。そのことは特に申し上げておきたいと存じます。
  133. 松澤靖介

    松澤靖介君 その七人委員の中の一人が、きのう公述人としてここにお述べになったんです。名前を言うとかえって変になると思いますので、私は申し上げない方がいいんじゃないかと思いますが、いずれにいたしましてもああいうことを申し上げるということははなはだ私らとしても、ほんとうの公正妥当の意見というものが出てこないのじゃないか。せっかく新任されました神田厚生大臣は非常な良識をお持ちになって、いろいろの面について今後なされようとしている。その場合において、もしも厚生省のひもつきであり、最も最高の意見を結集されるところの審議会にああいう人たちが集まっているということは、私は国家将来のためにはなはだおもしろくないのじゃないか、かく考えるがゆえにこの際もう少し厚生省といたしましては、それらの点に再考を促したいということを申し上げたい。この点につきましても、くどいようですが御所見を承わりたいと思います。
  134. 神田博

    国務大臣(神田博君) 先ほどもお答え申し上げましたように、七人委員会は前の大臣の顧問といいましょうか、前大臣の顧問でやったのでございまして、私の代にはもう何もそういう関係ございませんので、さよう御了承願いたいと思います。
  135. 松澤靖介

    松澤靖介君 過去になったということ私も承知しておりますから七人委員になった人といって過去の言葉をもちろん使っております。それらの人はあるいは現在は社会保障制度審議会委員とか、あるいは社会保険審議会委員とかになっていると私は思っております。まあそれはそれといたしまして、いずれにいたしましても私は、すべての社会保険とか、あるいは医療行政を考える場合において、医療担当者が、あるいは保険者が、あるいは被保険者側が、相互信頼のもとにおいてなすべきものと私は考えております。この点につきまして、先ほど榊原委員、与党である榊原委員ですら医者を厚生省は不正をなすようなことに見ておるということをおっしゃったので、私はその言葉をとってみましても私一人のただ質問に申し上げるようなものじゃありません。その榊原先生の言うお言葉を拝借いたしましてもそういうわけであります。私はこの点におきましても、相互信頼の意味において、いい意味に、善意に解してやるべきじゃないか、かように考えておるのでありまして、なおこの点についても御所見を承わりたい。
  136. 神田博

    国務大臣(神田博君) よくわかりました。問題は、この従来の厚生省の担当者の中で、お医者さまの方々に対して、信用といいましょうか、とんでもない見方をしておった者があるのじゃないかというこれはまあ御心配と思いますが、私は過去のことはこれは私も存じませんので、ここでどうこう申し上げかねますが、今日ただいまの厚生省といたしまして、さような考え方をもっている方は私はいないということは、私が就任以来そういうふうに一部で見られているという疑いを聞いているから、役人として公正な見地に立って、相手の人格というものを尊重していかなければならない、こういうことをよく明示しておりますので、今日は、その気分が私は過去にあったといたしましても今日はないのじゃないか。  それから、この健康保険法の改正に当りましてもそういう考え方に立っておりますので、検査をする、あるいは監督するというようなことは別に人員も増加しておりませんし、そういうようなことをしようという何ら積極的な手を打ってないことをごらんになっても御了解願えると思います。さらにまた、先ほど榊原委員にお答えいたしたような次第で、公法人としてのお医者さん方の団体の民主的にできるということを私どもお待ちしているような感じでございまして、できましたならば、官庁の仕事を一つ委任したい、そして自主的に同業者の方々で専門的に一つ運営をよくやっていただきたい。役人が門外から警察のするような仕事を、あるいはそういうような考え方をもって大事な、大きな役割を担当していただく方々に、多少でもそういうことがあるといたしますると、これは国民保険一つらまく運営していこうという厚生省の方針がその辺からくずれる、うまくいかないというようなことがあってはならない、こういうような私考えをもちまして、今省内はほとんどそのような気持になっておる。このように私考えております。もし不都合な者がございましたら、御注意をいただきまして、十分訓戒いたしまして、そういうことのないようにして、一つよく運営させたいと、こういう考えでございます。
  137. 松澤靖介

    松澤靖介君 神田厚生大臣のお話をお聞きしまして、非常に私たちといたしましても意を強ういたした次第でありますが、しかしながら、ただいま厚生省と申しましても、本省だけではなくて、各都道府県におりますそれらの人たちが、親の心子知らずといいますか、そういうような意味合いにおいて、あるいは今までの習慣といいますか、惰性といいますか、そういうような意味合いにおいて、医者は不正なものなりというような考えを持っておる者もあるかもしれませぬ。この点につきまして、今後大臣におきましても、御指導といいますか、お願いしたいと思います。  なお、私はお聞きしたいのは、社会保険というものは、社会保障の中核をなすものであるということは、今さら申し上げるまでもないことと思います。この意味において、今回提案になりました健康保険法の一部改正法案も、いわゆる社会保険の合理的な運用をなすという意味合いにおいて提出なさったということをお聞きしておるのでありますが、その合理的運営というものはどういうものであるか、果して今まで通り健康保険法案であったならば、合理的運営というものはできないのかどうか、今度提案されたこの健康保険法案によってのみ合理的運営が可能なものであるかどうか、この点についてお聞きしたいと思います。
  138. 神田博

    国務大臣(神田博君) これは先般提案理由の説明にも申し上げましたように、健康保険の合理化を一つはかりたい、また健康保険財政の健全化をはかりたい。そこでもう一つは、この改正の機会に、今までいろいろ懸案になっていたようなものもあわせて一つ改正して参りたい、こういうような意図のもとで御審議をお願いしたわけでございます。そこで、これは私も今まで申し上げております通りでございますが、先ほど総理もお答えになっておられたようでございまするが、この改正法案は、二十二国会からずっとこうまあ流れが続いてきておるわけでありまして、しかも二十二国会で流れ、二十四国会も流れ、二十五国会に、さらに鳩山内閣で提案なすって、二十六国会を迎えまして、石橋内閣のときでございまして、そのまま御審議を願うか、あるいはここで一ぺん一つ取り下げて、そうして新しく政府から提案して御審議を願うかということが閣議で御相談があったわけであります。いろいろまあ御相談した結果、鳩山内閣の延長が石橋内閣であり、政策を受け継いでおるんだから、ここで一ぺん取り下げまして、そうしてまた練り直して出すことが一番けっこうなことなんでありましょうが、練り直して出すということになりますと、三十一年度で計上しております政府の三十億円の健康保険財政に対する助成金が間に合わないのじゃないか、むしろこの際、鳩山内閣の政策を引き継いでいる石橋内閣であるから、そのまま御審議願って、国会の良識に一つおまかせしようじゃないか、政府としては、この案を一つこのまま御審議を願って、国会で御検討を願おう、こういうようなことで継続審議をお願したのであります。その後、岸内閣に変ったことは御承知の通りでございます。岸内閣も石橋内閣の延長として誕生したわけでございまして、その方針に変りはないのでございます。そういう意味におきまして、衆議院においても御審議をお願いし、そうして修正の結果こちらへ参ったわけでございまして、政府といたしましては、ただいまのところ、これを御審議を願いたい。しかし総理もおっしゃっておられたように、政府が万能ではないわけでございますから、参議院の権威と良識によって、この法案のなおりっぱなものが生まれるということであれば、政府としても、それはありがたいことだという意味を、総理も説かれておるようなわけでありまして、政府は、先ほど総理から、また私がこの委員会におきまして、今までお答え申し上げておる通り事情であるということを御了承願いたいと思います。
  139. 千葉信

    委員長千葉信君) この際関連質問を許します。
  140. 高野一夫

    ○高野一夫君 先ほどの松澤先生の御質問に関連があると考えますので、法律の条文の解釈になりますから、政府委員の高田保険局長に御説明願いたいのでありますが、それは、保険医あるいは保険医療機関が不正をなした場合に、医療機関としての、あるいは保険薬局としての指定を取り消されることがある。また一方、保険医あるいは保険薬剤師の登録を取り消されることがある。そこで、取り消される場合を両方比べて見まするというと、ほとんど同じ場合があげてあるのであります。たとえば資格の指定を取り消される場合といたしましては、療養の給付、担当責務を怠ったときと書いてある。それから、監査を拒否したとき、それから、社会保険、国保による療養の給付に関していろいろ違反行為があったとき、この三つの点は機関の指定を取り消す場合と、登録を取り消す場合と共通した事項になっておる。そこで機関の指定を取り消す場合に、もう一つ追加しておるのは、診療報酬の不正請求の場合は、これは機関の指定を取り消す、こういうことにたしかなっております。そこで、このうちの一例をあげて、療養の給付、担当責務を怠った医療機関が指定を取り消される場合と、療養の担当責務を怠った保険医の登録を取り消される場合と、これをたとえば個人開業の診療所について当てはめて考えた場合に、これはどういうふうにこれを解釈したらいいか、この点の解釈を一つ局長から伺っておきたい。
  141. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 四十三条の十二と、四十三条の十三の関係であろうかと存じますが、機関の場合にも、療養の担当規定というものがある。それから個人の場合におきましても、診療担当規定と申しますか、その担当規定があるわけでございます。現行の制度におきましては、保険医という個人をつかまえて指定をいたしておりまするので、担当規定は、保険医が担当する場合のことをいろいろ書いてあるわけでございます。ところが、機関の指定と個人の登録ということに改正法ではなりまするので、私どもといたしましては、そこにおのずから現行の担当規定の中に書いてありますることで、この医療機関としての担当規定と、それから個々の診療に伴うものと申しまするか、個人としての担当規定というものと二つに分れていくものと考えます。従いまして機関としての担当規定と、個人としての担当規定につきましては、おのずからそこに二つに相なって参るべきもの、従って改正法ではそれぞれ担当規定の根拠規定も、いわゆる命令に譲った法律の条文も、別個になっておるわけでございます。さような関係でございまするが、ものによりましては、あるいはその両方が、機関の場合にも個人の場合にも、それぞれ担当規定の中に同じ事柄があるいは規定される場合が出てくるかもしれない、これは事柄によると存じます。さように考えるわけでございますが、今の御質問に対しましては、機関の療養の担当規定に機関が違反をいたしたという場合には、四十三条の十二の適用が行われ、個人の診療担当規定と申しますか、そういうものに個人の方が違反をいたしました場合には四十三条の十二というものがこれが適用され得るということの法律関係に相なって参るかと存じます。
  142. 高野一夫

    ○高野一夫君 そうしますと、その機関の担当責務と、保険医個人の担当責務におのずから区別があると——私はよく診療のことは知りませんからわかりませんが……といたしまして、それはそれといたしまして、たとえばその次にある、もう一つ監査を拒否する場合がある。その場合に機関の指定を取り消し、一方また監査を拒否した保険医は登録を取り消すということもあり得る。その場合に、私がただ一人の保険医として、たとえば私の診療所をやっている、ほかに医師はだれもおらない、こういうような場合に、私は即実際においては機関保険医、こういうふうになって参るわけであります。で、監査を拒否する場合は、これは私がいわゆる拒否するのであって、ほかに何人も拒否しない。それだから、そういうような場合に、拒否し得る立場にある者は私自身である。医者としての私自身である。その場合にはですね、その私の保険医としての登録を取り消すことになるケースが多いのか、それとも私の診療所としての機関の指定を取り消すことになるケースの方が多いのか、これはどういうふうに考えたらいいか、局長の一つ解釈をお願いします。
  143. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 四十三条の十二と、それから四十三条の十三の法文をごらんいただきますと、この監査をまあ拒否した場合と申しましても、四十三条の十二の方では二つに書き分けてございます。四号と五号とに書き分けてございます。それで四号のようなことは、これは機関として、たとえば報告書を提出するとかなんとかというような場合には、機関として行う場合だけでございまして、五号の方が、機関の開設者または従業者が、いわゆるこの自然人として行動する場合が五号の方にあげてございます。それと、この四十三条の十三の個人の登録とか、登録の第二号が大体今先生が仰せになるような格好でよく似たような規定に相なっている、こういう関係になっております。
  144. 高野一夫

    ○高野一夫君 ちょっと待って下さい。そうしますとですね、この私の診療所なる医療機関は別に特殊法人でも何でもない。いわゆるそういう法律上の法人の人格は持っていない。ただ名称だけを高野診療所という名称を使っている機関にすぎない。そうしてですね、その監査を拒否するのもどうするのも、それは形の上では機関であるかもしらぬけれども、実際やっているのは、私自身が拒否するということになると思う。その場合に、機関に重きを置くのか、私個人に、保険医として登録された私個人に重きを置くのか。これは私は実際問題としていろいろな場合が起ると思うので、非常な疑義の起る問題ではないかと感じたのですが、従ってこれは私は先例にしておいていただいた方がいいと思うので伺っておきたい。
  145. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 実はその点に言及をいたそうと思いまして、その前提をやっておったわけでございますが、従いまして機関の方は四十三条の五号、個人の方で申しますれば、四十三条の十三の二号というものが、今先生が仰せになりましたような関係になるわけであります。それでこの際に、この運用の面でどちらが行われる場合が多いであろうかという御質問でございますが、私どもの、私の考え方といたしましては、この個人の登録までもさような際に取り消しますると、その方が他の医療機関に、保険医療機関において御勤務なさる際でも、それが工合の悪いことになるわけなんです。そういうふうな、まあ御本人の利益というふうなものも考え合わせ、またこの今回の改正案の趣旨は医療機関の指定ということが主でございまして、個人の登録というものは、それの補完的な意味を持っておるような建前に整理がしてございまするので、さような際には、むしろ四十二条の十二の機関の指定の取り消しということにとどめておく場合が普通ではあるまいか、かように考えるわけでございます。
  146. 高野一夫

    ○高野一夫君 関連質問であまり長く時間を取っちゃ申しわけないですから、簡単に結末をつけたいと思いますが、これが医師会の人たちが、いわゆる個人開業医の二重指定——これは二重指定じゃないのだけれども、登録と指定は別なんですけれども、この点についていろいろ不安の念を持たれる一つの原因にもなるのじゃないかと私は思うので、まさに今保険局長のおっしゃるように、実際問題としては、登録を取り消すというよりも、機関の指定ということの方の処分が優先するのだと、こうおっしゃるけれども法律の条文はそうなっていないわけです。これはそのときのいわゆる行政措置といいますか、あるいは裁判所へいけば司法措置としてそういうことが行われるだけであって、この条文を読んだ上だけでは、こういうような場合には特に登録の取り消しの方はやめて、機関の指定取り消しの方をやるのだ、こういうふうなことには、ここでははっきりせぬわけですね。そこでその点をもう少し私は政府側としては明確にされる方が、やはりこのためだ一人の人が診療所の看板を掲げて、法人組織でない診療所を開設されている、そういう方々の不安を除くことになるのじゃないか。この点をもう少し明確にされる必要があるのじゃないか。  さらにもう一つ私がここに疑問を持つのは、機関の指定を取り消し得る場合の例として、診療報酬の不正請求というものがある。診療報酬の不正請求をしたときは、機関の指定を取り消すけれども、診療報酬の不正請求をするのは、先ほどの場合をあげれど、私自身なんです。そのいわゆる登録してある保険医自身がやるのだ。ところが保険医の登録取り消しのその理由になるところには、診療報酬の不正請求というのは入っていないように私はまあ思う。そこでこれも私はおかしいので、不正請求の文書を書くのは人間であって、保険医であって、機関ではないわけです。そこでその場合に、私、一人の保険医が一この診療所はただ看板にすぎないがやっておって、その私が不正請求をやった、その私のを取り消すということについては何も処罰する場合が起らないのであって、単に私の看板の、診療所の取り消しと、こういうことの方に移っていくという点についても、ちょっと私は少しまだ納得いたしかねる点があるのと、従ってその点について最後にもう一ぺん御説明願っておきたいのでありますが、きょうは関連質問ですから、これでやめますが、場合によっては、明日、また時間によっては、社会党の各委員の方々の御質問の間を縫ってお尋ねするかもしれませぬが、この点は解釈を明確に政府の方からしておいていただいた方がいいのじゃないか、こう思われるのであります。
  147. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 診療報酬のこの請求の問題で今御質問になりましたが、これはむしろ両方にありましたならばおかしいことになるのであります。保険保険の診療の関係づけは、何々診療所というものが保険との関係を申請をして機関を指定を受けるということで結ばれるわけでございます。従ってたとえば御引例の高野先生がお一人であっても、その際は高野診療所の代表者として、開設者として診療報酬の請求をなさる、高野医師がなさるわけではない。従ってむしろかようなことは両方にあったならばおかしいのじゃないか、この保険との関連づけを機関の関係においてつかまえておりまする以上は、機関の方にそれはいくべきである。保険医の登録の方につきましては、ただ登録というのは何と申しますか、平たい言葉で申せば保険の診療をするという記章をつけているという程度のものでございますから、従ってその保険医が請求するのではなくして、高野診療所が請求なさるわけでございます。かような法律関係に整備をしてございまするので、これは四十三条の十二の方にだけあることが正しいと思うのでございます。
  148. 坂本昭

    ○坂本昭君 重大なる関連……。大臣にはずいぶんたくさんお聞きしたいここがあるのですけれども、今のことに関連しまして重大なことを一つお聞きしたい。それは先ほど松澤委員健康保険実施の合理化は法律を改正しなくても今のままでもよいではないか、改正する必要はないではないかという質問に対して大臣がお答えになった言葉で、私これはあげ足をとる意味ではございません。議事進行上、またこの審議を進めていく上に非常に必要だと思いまして、もう一ぺん繰り返して聞きただしておきたい。大臣はこうお答えになりました。練り直すのがよかったか、三十一年度三十億を使えるようにせねばならないから、とりあえずそのままで提出した、十分審議をしてほしい、もっとよく練ってほしい、そういう先ほどのお言葉だけ承わりますと、さしあたってはこの三十億ということか当面する重大な問題でしょう。その点を一つはっきりとしていただきたい。
  149. 千葉信

    委員長千葉信君) 竹中君、関連一緒にやりますか。
  150. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 機関取り消しのことなんですが、私は……。
  151. 神田博

    国務大臣(神田博君) 私の言葉が足りなかったところがありまして恐縮でございます。こう申し上げたつもりだったのですが、継続審議をそのままお願いするか、あるいは内閣が変ったのであるからもう一ぺん下げて審査をするかという話になった際に、内閣が延長内閣だから、鳩山内閣の延長としてできた石橋内閣だ、そこで内閣が新しくなったという意味からいえば一応下げてやるべき筋合いもあったろうと思うが、延長内閣であって、それからまた期間的に一月のそうした打ち合せだとかいう関係もあって、そこでこのまま一つ審議を願おうじゃないか、もしそこでいろいろ御審議の経過で政府の案よりもいいのがあるというような、これはもちろん両院の権威でおやりになるのですから、そういうのがあればそれはすなおに受けていいのじゃないか、これは当然のことなんですが、そういった何といいますか、気持継続審議をお願いいたしたい、こういう意味のつもりで申し上げたのでございます。決して三十億だけほしいから継続審議のままでお願いしたというものじゃないのですから、御了承願いたいと思います。
  152. 千葉信

    委員長千葉信君) 坂本君、関連ですか。
  153. 坂本昭

    ○坂本昭君 今の問題です。関連です。言葉が足りなかったといってお断わりになわましたが、しかし練り直す練り方が足りなかったという点は、これは言葉が足りなかったとは思えませんし、大臣が率直にそう思っておられるということを私は確信します。それから三十億というものもこれは非常に貴重だ、ほしいというそのお気持、これは取り消すことのできない事実でございますので、さよう私は了承しまして、今後一つ審議を進めたい、そういうことだけ申し上げておきます。
  154. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 関連質問ですから、条文の解釈について一点だけお聞きしたいと思います。  これは高田局長にお尋ねするわけでありますが、機関指定の取り消しの場合に、四十三条の十二の第一号において、「医療機関二於テ診療二従事スル保険医又ハ当該保険薬局二於テ調剤二従事スル保険薬剤師が第四十三条ノ六第一項」の規定に違反したときは機関が取り消しされるわけですね。そのときの免責規定がそのあと残っているわけですが、さらに「当該違反ヲ防止スル為当該保険医療機関又ハ保険薬局二於テ相当ノ注意及監督が尽サレタルトキヲ除ク」こうなっておりますが、この免責の規定が具体的に保険医なり、保険薬剤師に相当の注意及び監督というか、ただ保険医を雇った場合に監督規定を守れというような注意をしておけばいいのか、あるいは常時絶えずどういうふうな注意をせよということを要求しておられるのか、そうした点についての具体的な御説明を一応いただいておきたいと思うのです。
  155. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) かような「相当ノ注意及監督」というふうなことは、民法の七百十五条に使用者責任というものがございますが、そこにも同じような趣旨のことが書いてあるわけでございます。おのずからこの法律用語といたしましては、ある程度熟した言葉のように私も思うのでございます。従って具体的にそれではどういう制度であるかということは、これは社会通念上きめるよりほかに仕方がないわけでございますけれども、要はまず世間一般の開設者といいますか、監督者としてその責めを果しておるかどうかということを個々のケース、ケースによって判断をいたして参るということに相なろうかと思います。従いましてもう少し突っ込んで申しまするならば、何と申しますか、その違反行為というものが、たとえばそこに勤務をいたしておる被用人の責任に帰すべきものか、その人だけの責任に帰すべきものか、あるいは機関の全体がそういう方針でやっておるのかどうかというふうな、何と申しますか、機関の責任であるか、個人の責任であるかということを、社会通念上の立場から判断をいたすべきものだ、かように考えておるわけでございます。
  156. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 具体的に民法上の熟した言葉であるということでずらすのですね。実際問題として医療機関の方が保険医を、そうした運営において相当の注意と監督ということは、機関そのものが専門家である場合もありますし、医師である場合もありますし、医師でない場合もあるわけです。相当の注意、監督といいましても、おのずから限界が異なってくるわけなんです。従って保険医としての義務として定められた四十三条の六によって、命令に服すべしということをいっておけばいいのか。あるいは、いや、そうではないのであって、医療内容についてまで果して懇切丁寧に示すのか、そういうようなところまで責任を負わなければならないのか、こういったことは非常に困難だろうと思うのです。そういう具体例について一応一つお聞きしたい。
  157. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 個々の診療行為のやり方、内容等についてまで監督者といいますか、それが責任を負っていただく必要はございません。これは明確に個人の医師としての、何と申しますか、診療の独立性というふうなものが医療法の解釈上も認められておるわけなんです。個々の診療行為というものは、それぞれの医師が自分の、何と申しますか、良心に従って行なっていただくということでございます。ただそういう際に、何と申しますか、開設者の方で十分に承知をしながら暗黙のうちにそういう何と申しますか、個人の担当規定に違反するようなことを奨励しておったとかどうとかということになりますと、これは問題でございますけれども、今先生が御質問のように、個々の診療行為の内容にわたってまでこれを指揮監督するという必要はございません。
  158. 千葉信

    委員長千葉信君) 松澤君に申し上げます。御質問の途中から関連する質疑に入りましたが、御質問のある点はよくわかっておりまするが、時間の関係等もございますので、次回に続行をお願いしたいと存じます。  本問題に対する本日の質疑はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  159. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認ます。  本日はこれをもって散会いたします。    午後六時二十二分散会