運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1957-03-14 第26回国会 参議院 社会労働委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月十四日(木曜日)    午後一時三十六分開会   —————————————   委員異動 三月十三日委員大矢正辞任につき、 その補欠として坂本昭君を議長におい て指名した。 本日委員坂本昭辞任につき、その補 欠として平林剛君を議長において指名 した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     千葉  信君    理事            高野 一夫君            谷口弥三郎君            山本 經勝君            早川 愼一君    委員            勝俣  稔君            草葉 隆圓君            紅露 みつ君            近藤 鶴代君            榊原  亨君            西岡 ハル君            横山 フク君            片岡 文重君            木下 友敬君            平林  剛君            藤田藤太郎君            山下 義信君            田村 文吉君            竹中 恒夫君   国務大臣    厚 生 大 臣 神田  博君   政府委員    厚生大臣官房総    務課長     牛丸 義留君    厚生大臣官房会    計課長     堀岡 吉次君    厚生省公衆衛生    局長      山口 正義君    厚生省公衆衛正   局環境衛生部長  楠本 正康君    厚生省公衆衛生 小澤  龍君    厚生省薬務局長 森本  潔君    厚生省社会局長 安田  巖君    厚生省児童局長 高田 浩運君    厚生省保険局長 高田 正巳君   —————————————  本日の会議に付した案件 ○社会保障制度に関する調査の件  (昭和三十二年度厚生省関係予算に  関する件)   —————————————
  2. 千葉信

    委員長千葉信君) これより社会労働委員会開会いたします。  委員異動を報告いたします。三月十三日付をもって、大矢正君が辞任し、その補欠として、坂本昭君が選任されました。三月十四日付をもって、坂本昭君が辞任し、その補欠として、平林剛君が選任されました。
  3. 千葉信

    委員長千葉信君) 社会保障制度に関する調査の環として、昭和三十二年度厚生省関係予算に関する件を議題といたします。御質疑を願います。
  4. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 前回に引き続きまして、予算に関連して、厚生大臣に少しくお尋ねしたいのでありまするが、最初生活保護法のことについてお尋ね申し上げたいと思うのです。ただこれは、厚生大臣が御就任前のことにわたりまするので、はなはだ御迷惑と存じまするが、実は三十年分十月の日に、昭和三十二年度重要施策説明資料として、厚生省から施策並びにこれに関連する予定された要求予算額が明示されてございます。その資料を拝見いたしまするというと、第に、医療保障制度拡充強化として、疾病保険拡充強化が述べられておって、いわゆる国民保険の問題、あるいは健康保険の問題が明記されてあり、続いて、同じ医療保障拡充強化として、結核対策推進が記載されてございます。そしてこれには保健所の充実、あるいは予防対策としての健康診断予防接種、あるいは医療費公費負担、その他、病床の整備等々があるわけであります。三番目は、精神衛生対策推進、四番目は、医療機関整備無医村対策公的医療機関整備等がございます。医薬品の輸出振興等、全く医療保障関係についてはきわめて至れり尽せりと申しますか、要求予算額の適否は別といたしまして、一応施策項目は、われわれの共鳴し得ることが大体載っておるのであります。  それから第二に、母子及び老齢者福祉対策として、国民年金制度の準備、あるいは母子福祉対策拡充強化ということが載っております。  そして三番目には、低所得階層対策として、低所得階層のイが世帯更生資金、あるいは医療費貸付補助、口として、公益質屋の問題、簡易住宅、引揚者の住宅、内職のあっせん施設の設置等々がございまするし、同じく身体障害者厚生援護対策等が述べられてあり、あるいは四番目には、国民性活健全化施策として、生活環境改善向上家族計画の普及、あるいは児童の健全なる育成、特別保育対策国立公園云々となっておるのでありますが、私が今から御質問申し上げましょうと思いまする生活保護につきましては、こうした多数の項目がきわめて詳細に羅列されておるにかかわりませず、生活保護重要施策一つとして取り上げておられないところに私ははなはだ遺憾に思う点がある。しいてこの中で探して見まするというと、二番目の母子及び老齢者福祉という項目の中の母子福祉施策拡充強化の中にイとして、母子福祉資金拡充、ロとして、生活保護制度による児童加算制度ということがうたってあるだけでございまして、一体厚生当局は、生活保護階層に対する施策というものを重大なる施策として考えておられないのかどうかというような感じを持つわけです。こういうパンフレットを配付願いますときには、相当そうした方面配慮をいただけませんというと、非常に困るわけです。せっかく大臣は、庶民的な大臣だということで非常に好評を博しておられるようでございますが、こうした点について、一応就任前のことでございまするが、事務当局からも承わりますが、どういうわけで生活保護というものを取り上げなかったかということを聞きたい。
  5. 神田博

    国務大臣神田博君) お答えいたします。  生活保護の問題は生活保護法の方に規定されてございまして、これは義務費というので当然政府がこの法律の完全実施をする義務がございますので、そこで当時の予算要求の際に特にうたわなかったのではないかと私は思います。  そこでなぜ母子加算等を加えたかと申しますれば、母子加算生活保護以上にそれだけプラス・アルファとして出そう、こういう趣旨で母子加算の方を取り上げたと、こういうように私承知いたしております。
  6. 千葉信

    委員長千葉信君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  7. 千葉信

    委員長千葉信君) 速記を始めて下さい。  暫時休憩いたします。    午後一時四十四分休憩    ——————————    午後二時十分開会
  8. 千葉信

    委員長千葉信君) 休憩前に引き続いて会議を開き、質疑を続行いたします。
  9. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 ただいま大臣は、生活保護法義務施策であって、別にそういう意味合いに立っておらぬという御答弁でございましたが、私は政府義務的なそういう施策なり、義務的支出金というようなものを伴うものは、これは国策上重要なものだろうと思うのです。従って、問題点がないというのでありまするならば、大臣の仰せも一応ごもっともと思うのですが、後ほど御質問申し上げる四、五の質問点があるのですが、そういう問題があるとすれば、私はあらかじめ、そういう問題点をあわせて研究して、これは資料として取り上げるべきだろうと思うのです。これは一応その程度で、引続きこの資料についての質問に入りたいと思いますが、もう一つ私はなはだ遺憾に思うのは、売春防止法によるいわゆる婦人保護費の問題なんですが、この保護費が三番目のいわゆる「低所得階層対策」のうちの二番の「身体障害者等更生援護対策」の中に入っておるわけですが、こういうことも軽卒な取扱いは私はしておられぬと思う、かりそめにも。言うまでもなく、売春婦身体障害者であるわけのものではないわけですが、婦人保護費として取り上げられるのは、当然他の項目で取り上げなければ非常におかしな問題ですし、また、売春防止に対する施策を取り上げる意味からいいましても、軽く(二)のロだとかハというところに持っていかれたのでは困ると思う。そうした点について私はなはだ遺憾に思うのです。
  10. 神田博

    国務大臣神田博君) これは竹中委員の御質問のように、私も全く御同感でございます。売春関係の経費は、今年から保護更生を十分いたしまして、来年度は一つ、今度はもう完全業者の取締りをやるという段階でございますので、三十二年度の施策といたしましては、政府といたしましては、これは非常な重要な施策と考えなければならない事項でございまして、今竹中委員のお述べになられましたように、項を新たに作って取り上げることにはこれは全く同感でございますが、これは私はなはだ恐縮でございますが、前のことを申し上げるようになりまして、まあここにこう書いておりますように、身体障害者という意味で書いたのではございませんので、「身体障害者等更生援護対策」と、こういう、何といいましょうか、費目に身体障害者とまとめられたようでございまして、これはおっしゃることまことにごもっともでございまして、どうも恐縮いたしておる次第でございますが、別に他意があってこういうことにしたのではないのでございまして、当時項目が多いものでございますからここにまとめたという、何といいましょうか、純真なまじめな気持で取り扱ったことに相違ないのでございますが、しかし、結果から見て、今竹中委員のお述べになられましたようなこと、それから私がただいま申し上げました売春保護更生の問題は、政府といたしましても、三十二年度ではこれは重大な仕事でございまして、そういう意味から申し上げましても、項を新たにして大きく取扱いをしなかったのは、まことにこれは遺憾でございます。おっしゃることまことに同感でございますから、自後気をつけることにいたしたいと思います。
  11. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 売春保護の問題につきましては、婦人保護の問題につきましては、また、後ほど一つ問題点として御質問申し上げますが、ただ、今申し上げましたのは、そういう資料を出される場合に、生活保護などがどこにもないというようなことやら、あるいは売春保護身体障害者等の中に入るということでは、私非常に遺憾に思います。売春婦の方がごらんになっても非常に憤慨するのじゃないかと思う。そういう意味で御質問申し上げた。  そこで、続いて生活保護について御質問申し上げてみたいと思う。これは、最初対象人員の問題ですが、前々、当委員会山下先生大蔵省当局の間に論議が戦わされまして、大よそ私も了解はついたわけでございます。また、決して異議があるような意味合いのことで重ねて申し上げるわけではございませんが、そのときの御答弁では、およそ百五十万人が対象人員として、最近の減少傾向を織りこんで一応百五十万人と踏んだ。それの反証として大臣の言われるのは、健保ないしは失業保険等減少あるいは増加傾向から見て一応そうなった、しかも二月を切りとして減少は横ばいのような考え方安全率を保って百五十万と見た、こういうことでございます。そこで、実は当時ややこしかったのは、基準改訂並びに母子加算によって、いわゆる生活保護法すれすれの上の人が入ってくることによっての人員増加について相当議論がございました。これもまた訂正なさって、結局それは別であって、二十万人を重ねて百七十万人、対象人員はそうなってくるということであったようでございますが、それはそれでいいといたしまして、私の申し上げるのは、人口増加生活保護法適用人員増加関係なんですが、まあ極端に申し上げまして、赤ん坊が百万人ふえたからというので百万人がもちろん適用ございませんし、生活保護適用の家庭にふえる赤ん坊の数ですね、そういうような点から申しまして、その実績を考えられて当然この百五十万人が出たと思うのですが、予算説明によりますると、三十一年度末の実績見込み人員の一%増ということになっておるのですが、その点について少し御説明を賜わりたいと思います。
  12. 神田博

    国務大臣神田博君) この問題、今竹中委員のお述べになられましたように、前にもお答え申し上げました。今それを敷衍していただいたわけでございますが、もちろんこの生活基準引き上げ、それから母子加算プラス、これはこれだけベースアップになったわけでございます。それからさらに人口増加、この三つの要素が、生活保護者の数が普通ならば増加しているということに、これは算術的にそういうことになるわけでございます。ところが、ただいまもお述べになられましたように、三十年の九月以降ですね、三十年の九月が一番ピークでございまして、百七十八万でございましたか、要保護者の数があった。それがだんだん、毎月一%くらいの割合で減って参りまして、三十一年の十月には六十一万世帯ですか、百五十四万人、まあこういったような数まで減って参ったのでございます。そこで、ずっとそのままの減少傾向をとっておるのでございます。その減少傾向と、今お述べになられましたような生活基準引き上げをやったのと、それから母子加算プラスになるものと、それから人口増加と、この三つを勘案いたしまして、それでまあ大体実績で参りますると、一二%くらいのところへいくわけなんでございますが、それをまあ一〇%くらいの安全率で見たと、こういう計算をいたしたわけなんでございます。これは幾らにするかということについて、いろいろ計算の仕方をとってみたんでございますが、これは別にそのために予算の増減をどうしようかというような考慮をもう全然いたしませんで、今申し上げました要保護者の漸減する傾向と、それからプラスされる基準改訂とか、母子加算だとか、それから人口増加というようなものを計算いたしまして、そして合せた数字が大体この辺でどうかといって計上した。その結果、予算に現われたような数字になったわけでございまして、私どもといたしましては、すなおに——これは大蔵省も、別に多い少いという問題よりも、この内容実績をどう見るかということの議論でございましたが、大した議論もなく実は一致いたしました。その当時は、まあ大体この程度で少し余るんじゃないだろうかというような気持だったんでございます。というのは、ことし三十一年度も相当実は余るんでございまして、六億九千万くらい残が出るようでございます。まあ実はこの残を何とか親心で要保護者一つ還元できるものはしたいというようなことで、社会局長がずっと打ち合せなんかしておるようなわけでございまして、ことしも今のままでいきますれば、これは甘いことを申し上げておしかりを受けても恐縮でございますが、そんなふうになりはしないかということをひそかに期待もしているわけでございますが、まあもし意に反しまして増加するようなことがございましても、義務費でございまするから、その点は一つ滞りなく早手回しに予備費を回すなり何なりいたしまして、要保護者生活の実体に支障あるようなことをしたくないと、こういう気持でございます。……。  それからもう一つ、まあこれは当然のことでございますが、よく生活保護法監査といいましょうか、指導が厳重だという声も耳にいたしております。同時にまた、生活保護乱給だという声も耳にしているようなわけでございまして、まあこれらも一つ乱給にならないように、同時にまた、監査が行き過ぎて要保護者を一人でも少くするようなことがあってはならないという私ども気持を、先般も民生部長会議等におきましても、その間のことをよく末端の方に浸透させるような注意も喚起いたしておりまして、生活保護法が円満に、一つ充実した生活保護法として実施されるようにという努力をずっと続けておる次第でございます。
  13. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 今の対象人員昭和三十一年度も減ってきた、六億なんぼの金がその方の予算で余るということで、非常にまあけっこうなことなんですが、それを親心で何とかしたいという御意思のようですが、前々委員会でいろいろと生活保護法階層方々の子供の新入学に対してのランドセルの購入だとか、あるいは被服の問題等が出ておりましたが、そういう方に回すことが法的に可能なんでしょうか、あるいは特別措置が要るのでしょうか、その点ちょっとお伺いしたい。
  14. 安田巖

    政府委員安田巖君) この前の当委員会で、新しく入学をいたします学童に対するランドセル給与の問題がありましたのでありますが、その後調べてみましたけれども、やはり一時扶助という形でほとんどの学童ランドセル……失礼しました。学童服は渡っておりました。ランドセルの問題につきましては、この間申し上げましたようなことで、大蔵省との話し合いも済んでおりませんので、今のところ、それを回すというところに参っておらぬわけでございます。
  15. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 いや、私のお聞きしましたのは、六億なんぼの金をそういう方に回し得るかということを質問しておるのです。
  16. 安田巖

    政府委員安田巖君) これはまあ年度が別になりますし、今のところちょっとむずかしいのじゃないかと思っております。
  17. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 続いて、基準改訂について少しお伺い申し上げたいのですが、大体基準改訂によって十一億五千万円ばかりの予算を組んでおられるようですが、六・五%の根拠なんですが、承われば、公務員の六・二形の、ベースアップに加算していろいろと配慮をしたのが〇・三%であって、相当議論があったが、結論的には六・五%になった、こういうように私聞いておるわけなんですが、公務員方々を初め、一般の勤労者給与というものは、これは生活給と申しまするか、生活を保障された額であるわけでございまするが、生活保護法は、もとより最低の生活保護をしたということであろうと思いまするが、実質的には生存に近いよらな額でないかとも考えられるわけです、そういたしますると、生活給に対しての六・二%かけたものと生存給に対する六・五%かけたものとの出てくる絶対額と申しまするか、例をあげますると、東京における標準世帯で六百七円ばかり増額されるわけですが、もとより増額はけっこうなんですが、今申しましたように、ただ〇・三%くらいの配慮では私非常に少いと思うのですが、そういう点につきまして一応お聞き申し上げたい。これで妥当だと思っておられるのかどうかという点をお伺いしたい。
  18. 神田博

    国務大臣神田博君) 竹中委員のおっしゃられる気持、全く私も同感なんで、よくわかるのでございますが、私も今度初めてベースアップを実は直接担当して大蔵大臣折衝したわけでございますが、今までのベースアップは、やっぱりそのままの率で上げるという考え方だったそうであります。だから、本来なれば、六・二でもう顧みないという従来の方程式だったそうであります。それを今度はその例を破ってもらいまして、今竹中委員の言われたような理由を私だいぶ申し入れしまして、今までのことはどうもわれわれ納得できない、零細な方々の上げる率というものは、満足されておる者との差を少し見てもらわなきゃ困るんだという折衝をいたしまして、今までの大蔵省考え方を修正してもらった。しかし、〇・三%しかしらぬじゃないかと言われると、これは力の足りなかったことをおそれるわけでございますが、しかし、主義として今までの考え方を直してもらって、そうして六・二のやつを六・五までに上げてもらった。上げてもらったといいますか、上げさせたということになろうかと思うのですが、できるだけこの基準を上げたいという気持は強く持っておりますが、なかなか何もかにも一ぺんに参っておりますものですから、しかも、予算折衝の時間的余裕もなかった。内閣の改造直後でございまして、いろいろまたそれを裏づける基礎数字等も、なかなか相手を納得させる十分資料等もなったものですから、今度のところに落ちついたわけでございますが、今の竹中委員のお述べになられました気持は私どもと同じ考えでございますので、将来におきましては、なお一層一つ十分検討いたしまして、資料等収集いたしまして努力を続けていく、こういう気持でおりますことを申し上げておきます。なお、詳細のことでございましたら、政府委員から答えさせますから……。
  19. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 政府委員の方の御答弁もいただけると思うのですが、その前に、今の給与改訂につきましては、私仄聞いたしておるわけでございますが、予算折衝最終段階で非常に厚生大臣が骨を折られたということはよく聞いておるわけなんです。そこで、ことさらによけい私は〇・五%が引っかかったような感じがするわけなのです。大臣の非常な御努力は感謝もし、将来今御答弁のようにぜひこの問題につきましては、機械的に何でも算術計算をするようなことのないように、厚生行政はきわめて細心の注意を払って、慎重な配慮でやっていただきたいということをお願い申し上げまして、この基準改訂についての事務当局の御答弁がございましたら承わりたいと思います。
  20. 安田巖

    政府委員安田巖君) 別にございません。
  21. 山下義信

    山下義信君 今の質問に関連して。基準額改訂という話が出ましたから私も伺いたいと思うのですが、六・五%のアップはどこの基準からそれだけ増額されるのでしょうか。
  22. 安田巖

    政府委員安田巖君) この基準改訂は過去十三回ばかりやっておりますが、それて物価が著しく上りましたときに物価にスライドして上げますとか、あるいは米価が上りましたときにそれを基準の中に見るとかいうようなやり方で、基準内容そのものをよくするということが比較的少かったのでございますけれども、今回は政府の財政的な方面からいろいろ勘案されまして、一応六・五%というところで予算がきまったわけでございますが、それで内容的に言いますというと、結局若干の物価の値上りもありましょうけれども、主として内容改善に充てる、主食でありますとか、あるいはことに雑費等について手薄な点に充てたいということでこういう数字が組まれましたわけでございます。そこで、実は六・五%と申しますのは、生活扶助は現在の東京における標準五人世帯が八千二百三十三円でございますが、それが八千八百五十円に上るわけでございます。この生活扶助だけについて見ますと、これが一番一般的な、この基準改訂の意義の深いところでございますけれども、これは計算をしてごらんになるとわかりますように、七・四%実は上っておるわけでございます。六・五%というのは、それは住宅扶助としての基準の千百円を加えまして、それから教育扶助、これは小学校の三年生の百八十九円というものを入れました九千五百二十二円が現在のこの基準でございますが、それが改訂が一万百三十九円になりますので六・五%、しかし、今申し上げました住宅扶助とか教育費、ことに住宅扶助のごときは基準の千百円まで出せるということでございますけれども、実際はもっと額が少うございますから、六・五%というのは実質的に見ますともっと上回る数字になる。こういうことになろうかと思っております。
  23. 山下義信

    山下義信君 その点わかりました。  もう一つ私が伺いたいと思うのは、東京都の今の場合をおっしゃったのですが、それは何年のいつに改訂された基準なんでしょうか、二十九年の一月ですか。
  24. 安田巖

    政府委員安田巖君) その通りだと思っております。
  25. 山下義信

    山下義信君 私が不審に思いましたのは、大蔵省予算説明書の方では正誤がありましたか、私の見違いか知りませんが、二十八年の——二十八年に二回しておられるのですが、二十八年の基準改訂から六・五%を引き上げたのだということが大蔵省の方の説明にはあるのですね。
  26. 堀岡吉次

    政府委員堀岡吉次君) 大蔵省の出しました未定稿の三十二年度予算説明には、ただいま山下先生から御指摘の二十八年の七月一日の発令でございます。これはその後、ただいま社会局長が申し上げました二十九年一月には米価改訂をいたしましたので、その米価改訂にスライドいたしまして、二十八年七月一日から実施しました分を改訂したのが二十九年一月から実施している基準でございます。そこで中身につきましては、二十八年の七月一日ということが実際上の比較対象になる、そういう意味大蔵省がここに書いたのだと思います。大蔵省の書いた意味は私存じませんけれども、多分そういう意味で書いたと思います。二十九年の一月のやつは単純なる米価改訂のスライドだけでございます。中身としては改訂いたしておりません。そういう意味で書いたと思いますが、これは私の推定だけでございます。
  27. 山下義信

    山下義信君 そうしますと、米価を除いた以外の部分は、二十八年の七月一日からは六・五%の引き上げになるという意味大蔵省が書いたということでしょうか、大蔵省はそう言われるのですか。
  28. 堀岡吉次

    政府委員堀岡吉次君) その辺は大蔵省から私も聞いておりませんのでよくわかりませんけれども、多分、二十八年七月一日からという印刷物になっておりますから、おそらく二十九年一月には単なる米価改訂による飲食費の、飲食費のうちでも主食でございますね、それだけについての改訂をいたしておりますから、それ以外の改訂はいたしておりません。そういう意味で私は書いたのじゃないかと思います。確かめておりませんので、推測だけでございます。
  29. 山下義信

    山下義信君 この点は私どもの方から大蔵省に伺ってもいいですが、あなたの方でも一つ調べてみて下すって、統一ある説明一つ次回にしていただきましょうかね。そうしませんと、二十九年の一月の改訂から六・五%上げるのか、大蔵省予算説明書には二十八年の七月一日の基準から上げるのだと書いたところに食い違いがありますから…。  こまかい中のことは、私は今関連質問ですから伺いませんが、米価の話が出ましたからついでに伺うのですが、今度の六・五%引き上げ中身については、主食費にはどういう金額に変更されるのでしょうか。言いかえますと、二十九年一月一日の基準のときの主食費と、それから今度改訂された基準の主食費とは金額でおっしゃっていただきまして前は何円、今度の基準では何円になっているということをお示し願いたい。
  30. 安田巖

    政府委員安田巖君) これは米価の値上げはもちろんこの中に入っておりませんから、そちらの主食費としては同じことでありますが、ただ私どもが考えておりますのは、これは大蔵省となお折衝いたしておきますけれども、今までの主食費が少し少くて、そして副食の方でカロリーを取っているのがあると思います。これは副食でカロリーを取ると申しますというと、いかにも基準の高い生活をしているようでございますが、イモ類等が入った計算になっておりますので、その分を主食の方へ回しまして主食を少しふやしていくという格好で、この内訳の問題についてもう少し折衝してみたいと私考えております。
  31. 山下義信

    山下義信君 内訳の問題は、今後なお折衝されるということでありますから、それでよろしいと思いますが、今局長の言われたように、昨年の十月一日から主食の配給方法が変ったのですね、主食の配給方法が、従来の年令別の配給方法が均一配給量に変って、しかも基準配給の日数も変って、その他関係して希望配給の日数等も変ってくる、ほかの副食費その他はいろいろふくらましてみたり減らしてみたりはできても、主食の基準配給その他合せての配給量、配給価格、配給日数というものはこれはもう厳として動かすことができないのですから、従って、従来の扶助基準の中で主食費を決定されるときには、綿密にその世帯構成の年令別によってあなたの方では厳格に励行しておいでになるのですから、その主食の配給方法が変化しましたら、やはりそれに順応して扶助額の中身をおきめになるときに主食費というものはやはり変ってこなければならない。私が試みに五人世帯標準の年令構成ですね、男子六十三才、女子三十三才、男の子八才、女の子五才、男の子一才、この構成の標準世帯で主食の基準配給量をそれぞれ割り当ててみて、それから従来の基準配給日数をかけてみて、それから生産県と消費県との配給日数をそれにかけてみて、そういうものと昨年の十月に改正された配給方法とを比べてみますと、昨年の十月の改正では一人平均三百六十五グラム、これを五人世帯にかけて基準配給日数等をずっと割りますと、これは相当な影響がありますね。従来の年令別の配給方法と、それから平均した配給量と、その差額のキログラムに、こまかくは申しませんが、キログラムにこの値段をかけてみまするというと、十日間で私の計算では百九十八円九十銭の差が生じてくる。約二百円の差が生じてるのくですね、十日間で。それで生活保護世帯扶助額は非常に切り詰めておいでになるのであって、ほとんどゆとりのない扶助額の中身になっておりますので、こういう主食の配給数量や金額の変更がありますと、当然それだけの計算はお変えにならなければならないことになると思う。そういう点につきまして、今後御検討になることになっておりますか、どうでありましょうか。
  32. 安田巖

    政府委員安田巖君) 主食の値段が違いました場合にはもちろんそれを見込まなければならないと思っております。ただ、その米の配給の額でございますが、結局米食率を何日と見るかということになると思います。これは十分研究いたしてみたいと思うのでありますが、ただいま資料を持ち合せておりませんけれども、従来の米食率はたしか十八日くらいだったと思っておりますけれども、また、よく検討いたしまして申し上げたいと思います。
  33. 山下義信

    山下義信君 私はこういうきちんとした配給関係が変ってきますと、三十日食べているのじゃないのです。今の配給だって十八日とか、希望配給を入れましても十八日とか二十日間というのですから、その一カ月の中の配給のある日数だけはイモを食ったり麦を食ったりほかのものを食ったりするんではないのでしょうね。代用食をするんではないんでしょうね。あとの足りない十日間は、それは何かほかのものを差し繰って食べるということもありましょうが、主食を食べる日数は、米食率はやはり配給日数だけは食べさせることになっているのでしょう。従って、その配給日数の配給量や配給価格等に変化がありますと、当然主食費は変更するのですか、しないのですか。
  34. 安田巖

    政府委員安田巖君) 配給日数が変りました場合にも、結局生活保護基準における米食率を何日にするかという問題は残るわけでございまして、これは一般の国民の米食率その他等も勘案いたしまして実はきめるわけでございますが、たしか、私は今の数字は間違っておりましたら申しわけございませんけれども、基本配給が十日の中で、二日が準内地米だと思っておりますが、それから希望配給が五日、それから外米があとございますので、こういったようなものはほかから幾らでも手に入るような状況でございますので、そういったものをどうするかという問題もあります。で私どもの希望といたしましては、いろいろ副食物の方に金をあまりかけることができなくて、米食偏重になりがちでございますので、できるだけ米食率をよくしたいという気持はございますけれども、これらの点につきましては、基準そのものの関係もございますので、今後そういう問題が起りましたときによく研究いたして参りたいと、主張いたして参りたいと思っております。
  35. 山下義信

    山下義信君 これは今後御検討になるということでございますので、これ以上重ねて伺いませんが、非常に重大な影響があるのです。ですから、あなたの方では十分御検討を願うというのでありましょうが、この基準配給やあるいはまた希望配給、いずれにしても配給してやるというその日数に変化があって、そしてその配給量にも変化があって、配給価格にも変化があったらば、生活保護世帯に関してはその主食費は、配給以外の日において他の代用食を食べるという考え方は応これは了とするとしても、その配給によって主食を求めなければならぬその日数に関する限りは、当然影響を受けてお考えになるのか、そうでなくして、一たん六・五%の増額をしたその範囲内で考えられるのか、これは基本的原則としては私は重大だと思うのです。それで、今回やかましくなりました米価の値上げは今の段階ではこれは見送られておりますが、しかし、そういうことも他日大きくこれが決定を見たようなときには当然これはスライドするでしょう。しかし、今現在、昨年の十月にすでに米の配給方法が変ってきておる。そうすると、二十九年の月には、もとより年も一年半も前でありますから関係はありませんけれども、これから本年度の、三十二年度予算によって改訂なされようとするこの基準内容は、言うまでもなく、昨年十月の配給方法の変更は影響を受けてこなければいけない。それが保護世帯においては影響を受けないのか、受けるのかということは原則としてのこれは大きな問題だと思うのです。それが影響を受けて考慮するのだということになれば、いわゆる扶助額の基準額は自然ふくらんでこなければならぬことになって参ります。これはもう義務費ですから幾らでも大蔵省とお話し合いになりますれば、特に国会の決定を見なくても、厚生省の方で大蔵省との御相談でできることでありますから、それなくして御決定になりました六・五%だけの引き上げでもって米価の影響をみな織り込んであるのだということになりますと、これは大へん中身が違ってきますね。趣旨が違ってきますね。それでその原則はどういうふうになっておるかということをここでおきめを願っておいて、そしてあとの金額やその他については今後御検討になって、大蔵省と御交渉になる問題じゃないかと思うのです。原則はどうなんでしょう。
  36. 安田巖

    政府委員安田巖君) 重ねて申し上げますけれども、この米の値段が変りました場合には、私の考えといたしましては、当然これはスライドして飲食物費が上っていくべきだと考えております。それから米食率の問題ということになると思いますが、これはやはり生活保護世帯の食生活内容をもっと一般的に見ますというと、保護基準の問題になるわけでございます。これはやはり日本人一般の食生活の慣行等、これはたとえば全国のそういった食事の内容等についての調べがございまして、どのくらいの米食率になっておるかというような調べもあるわけでございます。そういうものと照らし合せて考えていくべきではないか。そこでたとえば極端なことを申しますというと、配給制度がなくなって自由販売になった、米は幾らでも買えるではないかというと、三十日米を買えるだけの金をやるべきか、あるいはそのときも国民一般にこの程度の米食率であるから、あるいはその程度にとどめるというような問題がある。そういうふうに実は考えまして、米食率を見ていくという根本方針でございます。
  37. 山下義信

    山下義信君 これは大へん重要な私は問題だと思うのですね。それで今局長の言われた前段の米食率をどの程度に見るかということは、これはごもっともです。これは考えてもいい。それは配給が全日数ないのでありまするから、いろいろ工夫しなければならぬのでありますから、これは全国の国民全体の問題でもやっているのですから、ですからこれは米食率をどの程度に見るかということにこれを考えて勘案するのだと、考えて勘案するのだと二度言いましたが、大事なことだから二度言ってもそれはいいのであります。米食率を見るのに、全国勤労者の消費生活の分析から出てきた米食率をお使いになるということなら、これも筋が通るのです。ただ私が重ねて伺っておかなければならぬ、念を押しておかなければならぬということは、生活保護世帯だけ別に米食率を考えるということはこれは許されない、何としても許されない。生活保護世帯だから米の食い方は、一般の勤労者よりは主食の食い方はずっと減らしておけ、あとはイモでも何でも、ヨモギでも食べておれという考え方は私は妥当でないと思う。その他の主として主食以外のものの、いわゆる文化的消費財とか、そういうようなものは若干圧縮されるということはあり得るかわからぬけれども、主食の食べ方は、食べる率は一般の勤労者の主食率よりはずっと低い米食率で保護世帯はいいんだという考え方がもしあるとすれば、これは私はゆゆしき問題だと思うのですね。生活費全体のエンゲル係数がどうあるかということはこれは考え方でしょう、いろいろな考え方がありましょう。一般勤労者の五〇%でいいか、今ほとんど四〇%でしょう、生活保護世帯のこの生活費というものは、生計費というものは。その程度でいいかどうかということは大きな根本問題がありますが、しかし、その中でも米食率が一般の国民の、しかも比較的低い層の米食率よりも生活保護世帯はもっと低くていいんだという考え方は私はこれは非常に大きな問題だと思う。そういうことは考えておられぬと思いますが、なお、念を押しておきたいと思いますが、根本的な考え方はどういう方針を持っておいでになるでしょう。
  38. 安田巖

    政府委員安田巖君) この米食率の問題は、国民全体の問題といたしましてもいろいろ重要な問題でもあり、種々意見もあることでございます。できれば私どもはそういった国民一般のこころに近いものを出していきたいということを考えております。まあ今のところ、まだ配給制度というものがありますから、大体そういうものが一応の基準になっておるわけでございま
  39. 山下義信

    山下義信君 それでは現在の基準額中身の主食費はどういう米食率をとっておいでになるのでしょうか。また、一般の国民の米食率とどの程度の差があるのでしょうか。
  40. 安田巖

    政府委員安田巖君) 実は私ここにその資料を持っておりませんものでございますから、できますならば、次回に御答弁さしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  41. 山下義信

    山下義信君 それでは次回に、私は生活保護性帯のこの主食費の問題、それと米食率をどうするかということの問題、一般国民の米食率がどうなっているか、もし参考にとるならば、どの方の階層の生計費の米食率と比較して保護世帯の米食率はこうきめたのだという、その根拠というものを一つ明確にお示しを願いたい。  なお、ただいま生活保護基準の中の主食費につきまして、事務当局質疑応答をいたしたのでありますが、根本的の方針としては、厚生大臣はどうお考えになりますか、お示し願いたい。
  42. 神田博

    国務大臣神田博君) 私もこれははなはだどうも恐縮でございますが、一般の米食率と、要保護世帯の米食率がどうなっているかというお尋ねでございますが、実は私は同じことだと考えて今までおったのでございまして、違っているようなことはないのじゃないかと思っておったのですが、大差がないようにというような安田君の答弁だったものですから、差があるのかと言って不思議に思って聞いておったわけでありまして、これは一つ政府委員からも、資料がないから、帰って一つ調べてからということでございますので、私もよく一つ検討しましてお答えいたしたいと思います。  私のしかし考え方を率直に申し上げますれば、これは主食……米食率は差があっては困る。差がないのが建前じゃないかと、こう私は考えております。
  43. 山下義信

    山下義信君 次回にですね、御調査下すって、詳細な御説明を願うにつきまして、大臣にも御考慮をいただくために付言しておきたいと思うのでありますが、根本的な考え方としては、国民一般の米食率と同じような分量を生活保護世帯に食べさせるということが、これは言うまでもなく、人道上から言いましても当然ではないか。けれども、実際にはそれはできませんでしょう。実際にはできないということは私も了としたのです。それは一般の国民の生計費の中には、やみで買う米があります。ですから米食率はそういうものを加えて出しているのでありますから、生活保護世帯にもすべてやみで米を買えというような補助額をきめることはできますまい。できればけっこうでありますが、私が今問題にしていることは、基準配給、希望配給として、政府の手で三十日の中を何日間かは配給してやろうという、その配給だけは食べられるようにすべきじゃないか。ほかの者は、配給以外の日もやみで米を買って食っているのですから、米食費はそうなっている。一般生計費はそうなっている。生活保護世帯に三十日間まるまるやみでも米を買って食べるということは、私どもは望ましいけれども、そこを言っているのじゃないのでありまして、少くとも一カ月のうちで半カ月以内の配給の米は買えるだけの主食費が入っていなければ……あとの十数日は何を食っているかということになるのでありまして、あとの食べるだけの費用が主食費の中からどうして出るかということもお示しを願わなければならぬ。しかし、あとの日のことを私はまだ言うのではないのであります。だんだんしぼっていくというと、基準配給の十日間、希望配給の八日間といったような、その配給米だけは受けられる主食費が補助額の中に計上されてなければならぬはずだ、こう私は思うのです。それを三十日に延ばしておかゆにしようがない、その主食費の中から、三日の主食費を週間のイモ代にしようがない、非常に非惨な状態であるけれども、それは別として、その配給日数並びに配給量、配給価格が変化してきたから、その限られた日数だけの主食費の変更は当然来たさなきゃならぬはずだろうということを伺っておるのでありまして、この点を一つ次回に御説明下さるときに、大臣は御考慮下さい。基本的には原則としてどうするかということを、まず厚生省の方でおきめ願って、そして大蔵省に強力に御交渉を願わなきゃならぬ運びでありますから、その点を今伺った次第であります。次回に一つ詳細に御説明を願いたいと思います。
  44. 神田博

    国務大臣神田博君) わかりました。いや、了承いたしました。
  45. 千葉信

    委員長千葉信君) それから私からもはっきりさせておきたいのは、先ほど山下委員の方から要求のございました六・五%という基準額基準引き上げ、これの根拠になった問題について、大蔵省資料と、厚生省資料とが食い違っている点について、山下委員の方からも大蔵省へお問い合せになるそうですが、厚生省としても、大蔵省側と話し合って、統一ある見解をとられることを準備していただきたい。
  46. 安田巖

    政府委員安田巖君) かしこまりました。
  47. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私も一つ、二つ聞いておきたいのですけれども、まず第一点として聞きたいのは、医師が非常に不足している。特にお医者さんが、特に北海道から東北、北陸、山陰方面にいくと、国立療養所なんかですと、五〇%にも達していない、こういうところが統計のあれに出てくるわけです。こういうところについて厚生省はどういう対策をお立てになるか、ちょっと聞いておきたい。
  48. 神田博

    国務大臣神田博君) 私の承知いたしておりますのは、まあ何といいますか、この日本の全体としての医師の量からいいますと、大ていもう飽和状態になっている。年々学校の卒業生が三千人くらい出ておるそうでありまして、千人くらい余るのではないかと、こういうような一応の計算になっておるように承知いたしております。  そこで、今藤田さんのお尋ねになりましたのは、これは私が申し上げたのは全体としてでございまして、地方々々によりますと、今藤田委員がお述べになられたような実情があるのでございまして、厚生省といたしましては、特にこの無医村等につきましての対策は立てておりますが、今御指摘のありました東北地方とか、あるいは北海道等におきまする、そういった比較的医師の希薄な方面をどうするかというようなことにつきましては、政府委員から一つ答弁させたいと思います。
  49. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) 御指摘の通りでございまして、日本全体としては、人口に対する医師の数は、欧米諸国に負けない程度におるのでございますけれども、地域的偏在がはなはだしいと思います。御指摘の療養所におきましても、東北、北海道は大体医師の勤務者が少いのでございます。それはなぜかと申しますると、いわゆる大学を出たお医者さんは、地方の勤務をあまり好まないということが第一点ではないかと思うのであります。しかしながら、それでは日本国民全体の医療の完璧を期するわけにはいきませんので、何とかしてお医者さんに勤務上の魅力を持たしまして、その方面に出ていただきたいというふうに考えております。  そこで特に結核療養所の方面におきましては、お医者さんの希望する医学上の研究ができる道をできるだけ広めていきたい、そのために若干研究費を拡充いたしまして、特にその研究ができるように助成しております。  それからさらにまた、若いお医者さんについては、内地留学制度というものを作りまして、ある期間進んだ病院に行って高度の医療技術を学んでくる、あるいは母校に帰って何らかのその方面の研究をする機会を与える等の措置をとっておるのでございますが、しかしながら、なお十分要員が確保できないことは残念なことに思っております。
  50. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 たとえば一つの例を取り上げてみますと、富山県の北陸荘ですか、ここでは医師の定員が十三名だと、それが八人お医者さんがおられる、その八人のうち四名は結核療養所だから結核の疾患のお医者さんがその千分の四名、そういう状態である、そういうことになると、私は重大な問題だと思うのです。まあこれは私の聞いたことですから、厚生省はどういうふうにお調べになっているか知りませんが、十三名のところ八名医者がおって、その四名が結核の疾患者である、そういうことのような状態に放置されていいのかどうかという、私は重大な問題だと思っておるのです。  それからもう一つ、今大学を出て、医師の試験でまあお医者さんになられるわけなんだが、中国、東北、北海道、北陸、山陰の地方にお医者さんが行かれない、新しい医者になった人がそこで落ちつかれない根本的な原因は何だと、そういう点を厚生省はお考えになったことがあるのかどうか、この二点をまずお聞きしたい。
  51. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) 一つはただいま御指摘の地方におきましては、医師の養成機関が少いという点も一つの理由ではないかと思います。第二には、その方面に大きな施設がありまして、若いお医者さん方が、自分の技術的向上その他について満足できるような勤務ができにくいと、そういう施設が少いということによって魅力が少いということが第二の理由ではないかと思うのでございます。そこで私どもといたしましては、先ほど申し上げたこと以外に、各その地方における大学にお願いをいたしまして、大学の系統の教室のお医者さんをできるだけ、やむを得ない場合は交代制でもいいから御勤務願いまして、できるだけ要員の確保をいたしたいと考えておるような次第であります。
  52. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私はその一つはあなたがおっしゃるように、研究する機会、あわせて技術を向上する機会がその地方では少いということも一つの原因でありましょう。しかし、もっと深く追及していけば、私はやはりこの人方の給与の問題、生活の問題というものが非常に影響しているのじゃないか、私はむしろこの問題が相当大きく取り上げられなきゃならないのじゃないか。給与法なんかの今までの状態を見ましても、長い間研さんを積んで国家試験に通ってお医者さんになられた方の待遇というような問題については、どういう工合に厚生省はお考えになっているか、ここらあたりを私は考えますときに、どうもその問題が大きな問題じゃないかと思うのですが、どうですか。
  53. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) 御指摘の点もまことにごもっともと存じます。ただいま国立療養所等について考えてみますというと、国家公務員一つの制度に規制されておりまするので、非常な僻地であれば僻地手当ができますけれども、一般の地域でありますれば、勤務地がいなかであるがゆえに特に給与を増すということは、困難な事情がただいまございますので、そのために、若干僻陬の地に医者が得られない原因をなしているのではないかと思っております。
  54. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで大体そうすると、今の給与の問題や、機会を与える問題については、厚生省はこれから努力しようとおっしゃるわけですね。いずれ努力された結果については御報告をしていただいて、御説明をしていただきたいと思うのです。ただ、今の富山県の北陸荘のような状態を、これはこれからいろいろ研究するというのを待っておるわけにこれはいかないと思うので、こういう問題は緊急な問題だ、こういうところを厚生大臣、担当者から明確に、至急に、こういうところはこの一つだけしか私は知りませんけれども、こういう例があることはゆゆしき問題ですから、そういう点を明確にどういう工合にしたいということをお聞かせ願っておきたいと思うんです。
  55. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君)ただいま御指摘の北陸荘は、仰せのごとくに、私どもも医者が非常に足りないことを実は存じておるのでございまして、この北陸荘は新潟医科大学にお願いいたしまして、新潟医科大学の卒業生に御勤務を願っておる関係もございますので、先般来新潟医科大学にお願いいたしまして、できるだけすみやかに、職員を充足するように実はお願い中でございます。
  56. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 では引き続き、生活保護法について少しく大臣にお尋ねしたいんですが、この生活保護法の中に今度は母子加算が加えられる。でこの点について、実は大臣最初の構想は、終戦以来十年にわたって、戦災によって夫を失い、あるいは戦死なさったような気の毒な母子が、生活保護法をお断わりして、一生懸命今日までやってきた、まことにその敢闘の精神は賞すべきであるという意味で、生活保護法すれすれのそういう母子に対する何らかのごほうびをやりたいんだというような気持母子加算であったように聞いておるわけであります。ところが、実際において実施されたものはそうでなくして、母子加算をすることによってそういう方々が、生活保護法をいさぎよしとしなかった方々が、生活保護法の範疇に、逆に押し込められたというと語弊がありますが、はまり込むような結果になってきて、独立自存の精神なり、あるいは子供の教育の上からいうても支障を来たすようなことになってくるような結果になっておるわけなんですが、一体こういうことになったについては、最初児童加算ということで、生活保護法に対する子供に対しては児童加算として、就学前には月額百五十五円なにがしの加算をする、学童には三百三十円の加算をし、進学をするときには、小学校の子供にはランドセルを買ってやるんだとか、あるいは中学にはカバンを買ってやるというようなことで、二十二億七千万円ばかりの予算最初は考えられておったことが入れかわりまして、児童加算がやめになって、最初の意図に反して母子加算生活保護法に加えられたように私聞いておるわけなんですが、そういう経過をたどってこうなったものであるかどうかということと、いま一つ、そのすれすれ以上で、歯を食いしばってがんばっておられる、そういう母子に対して、どういうような今後お考えをお持ちになっておるかという点についてお聞きしたい。
  57. 神田博

    国務大臣神田博君) お答えいたします。最初厚生省から要求されましたのは、今お述べになりましたように、児童加算というようなことでございまして、生活保護法の中の児童だけ特に抜いてやろうというように聞いておりました。その後、実はいろいろ折衝段階を経まして、私も予算折衝の途中で、母子家庭の特殊事情ということを考えまして、今お述べになりましたような趣旨を主張いたしまして、敢闘賞というような意味も加えて、月収一万円以下の母子一つ生活保護以外の手当を出したいと実は考えで折衝いたしたのでございますが、折衝の最後の段階におきまして、調査上非常に困るというような事務的な意見が両省の事務当局から実際問題としての話が出まして、最後のぎりぎりのところで今年は一つやむを得ない、生活保護の中で一つその基準引き上げというところで考えていこう、来年度等におきましても、なおもう一ぺん一つ考えて、母子年金というような新しい制度を創設したいという政府の大方針でございますので、その先駆をなすような気持一つ今年度からとり上げていく、来年度等においてなおその線を強くしようじゃないかというようなことで話がついたわけでございます。お述べになりましたように、いろいろ折衝の過程にそういう事実がございまして、しかし、結果は今申し上げたような通りでございます。
  58. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 生活保護法は御承知の通り、九百何十万人という多数の対象といいますか、人員があるわけです。相当この中に母子家庭があるわけなんですから、教育の面から考えましても、これは大きな私は問題だと思いますので、なるほど事務的な煩瑣、あるいは事務的になかなか困難であるというようなことであられると思いまするが、どうせ母子年金なりいろいろなことをお考えになっておられるわけなんですから、基礎調査というものは、これは私相当の費用を今年も上程されておりまするが、これは当然なすべきだろう、その基礎調査を完全になさることによって多数のいわゆるボーダー・ラインの中の母子の保護ということは、生活保護というような意味合いの子供に悪影響を及ぼすようなことでなくして、何か温情を持った厚生行政をやっていただきたいということを私切にお願い申し上げるわけであります。
  59. 神田博

    国務大臣神田博君) 竹中委員の今のお考え方、私全く同意見でございまして、ことしは今申し上げたような結果になっておりますが、三十三年度の予算編成等におきましては、十分一つそれらの点を生かしていきたい。これはまた、もう竹中委員の御意見——非常にたくさんの方から強く要望されておりますので、その節はまた一つよろしくお願いいたしたいと思います。
  60. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 次に、医療扶助について少しくお聞き申し上げたいのですが、医療扶助予算を拝見いたしまして奇異に感じることがあります。それは私よくなれませんので、あるいはこういう行き方がいいのかどうか存じませんが、昨年の二月の十五日に、国民医療費の推計結果というものが厚生省で発表されておるのですが、国民の総医療費が二千五百四十億円、その内訳として公費負担保険者負担と患者負担と、こう分けておられますが、公費負担の中で、生活保護法の医療の費用が二十九年度二百十二億、三十年度は二百三十三億になっているわけなんですが、そうした場合に、本年度の医療扶助予算要求額が百八十六億、五十億からの差があるわけなんですが、これはいつも、今年度も補正予算要求なさるようですが、そういうような一つの習慣的な行き様をこれはすべきか、あるいは当然昭和三十年度においてすら、二百三十億からの生活保護の医療が出ておるわけなんですが、そういうような技術的な必要によってそういうことをなさるのかどうかということを最初にお聞きしたい。これは局長でけっこうです。
  61. 安田巖

    政府委員安田巖君) これはおそらくお手元にあります予算書の方が八割の国庫負担の額が出ておりまして、それから総医療費の中の内訳として出ております医療扶助は十割まるまるで大体数字は合うものだと思います。
  62. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 そうすると、地方、府県の二割が加算されておるからこういうことになっている、こういうことでございますね。
  63. 安田巖

    政府委員安田巖君) さようでございます。
  64. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 続いてお尋ね申し上げたいのですが、この医療扶助を受ける場合なんですが、まあ生活保護に限りませんが、国民が病気した場合に医者を選ぶということは、人命に関係がありますので、あくまでも自由選択主義でなければならぬと思うのですが、従って、診療を求めることについて当然自由に好むところによってその環境なりあるいは病院、医者の評判なりあるいは便宜——家庭との遠近距離、その他いろいろなことを考えてやるべきだろうと思う。生活保護においては一定の基準と申しまするか、指示をなさって、県境についても他府県の病院、診療所に行くことは好まないということで、強くその指示をなさっておるように聞いておるのですが、その点はどうですか。
  65. 安田巖

    政府委員安田巖君) 医療でございますから、お話のようになるべく自由に医者を選ぶということが理想であると思いますけれども生活保護法の精神は、もうこれは国民の最低生活の保障ということでございますので、一つ基準があるわけでございます。そこで、たとえば青森県やあるいは長野県の人が東京の療養所に入りたいというような場合に、そういう者は許さないで、地元にそれをまかなうに足る医療機関があれば地元の、近所のものに入ってくれという指導を、従来から生活保護の精神から指導いたしておるわけであります。そこで、今のお話もそれと関連があったと思うのでありますけれども、地理的に離れておりますと、たとえばことに、他府県のような場合には、そこに入ります場合にすでにもう移送費が要ります。また同時に、そこに通うということになりますと、毎日これは交通費も要ることでございます。あるいは家族が見舞に来ると申しましてもこれも費用がかかります。なおまた、そういった医療機関監査とかあるいは被保護者についてケース・ワーカーがたびたび指導いたしますような関係から考えましても、やはり生活保護考え方からいうと、普通の病院で事が足りる場合にはそこに入っていただきたい、これはもう当初からそういう指導をいたしたわけであります。しかし、県境等でございまして、そういうことをすることが著しく非常識になる場合もございますから、ことに県境をこえて入院いたす、あるいは見てもらうというようなことがだれが見ても当然だというような場合には、あらかじめそういう医療機関を指定してよろしいというような指導はいたしております。
  66. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 ところが、今局長は極端な青森、長野県の人が東京へ入院したいというような例外的なお話でありましたが、私はまた逆に極端な例かわかりませんが、東京におる人が空気のいい、環境のいい千葉県の病院に入りたい、あるいは神奈川県の病院に入りたいというようなことも、これは当然考えられるわけでございます。あるいはその東京千葉県の境の人はむしろ移送費その他の点においても千葉県の病院に入る方がいいというときもあるわけです。ただ地方庁のお役人の関係からして、これが指導なりあるいは医療の実態を監督し、把握するという点では御不便があると思いますけれども、患者その者の都合からいき、環境の点からいってそういうことも例外的にはあると思うのですが、そういうような場合においての指導の方針はどうなんでしょうか。
  67. 安田巖

    政府委員安田巖君) 先ほど申しましたような原則は、生活保護がしかれましてからずっととっておる方針でございますが、例外として認められますのは、地理的の条件がむしろ他県に入った方が近いというような場合にその医療機関をあらかじめ指定しておくというようなことは、例外の措置として認めております。
  68. 片岡文重

    ○片岡文重君 関連質問……。今の生活保護法による医療扶助を受けている者は自分でもって医療機関を選択し得ないという場合に起る不都合については、今竹中委員からも指摘されましたし、局長も十分お考えになっておられると思うのですが、現に東京都を中心として、この近郊の各県で実際にはもうこの問題は昨年あたりから起っておる問題であって、そのために生活費あるいは家庭の事情等で川一つ越えた他県に入院しておってこれが呼び戻されておる例もあり、かつ東京都の場合を考えると、終戦直後の病院等医療機関の払底しておった時期であったせいもあるでしょうが、千葉県、埼玉県、神奈川県という県に対しては、東京都から健康保険の患者を多数収容してくれるようにむしろ懇請されておるはずです。その結果、東京都の近くの県ではそのために病院が資金を借りてベッドをふやしておる。ところが、昨年から社会局長さんからの通牒であったと思うのですが、通牒が出て、そういう委託してある患者は全部引き揚げるようにということで、最初は頼んでいってベッドをふやさしておいて、今度は東京都の方で都合があるからということで引き揚げてしまって、今千葉、埼玉、神奈川等の東京都に近い病院では経営の重大危機に瀕しておるという事例が多数あることを私ども聞いております。こういう実例が現に起っており、しかも今後はこの方針を改める形勢も見られないということで非常に困っておるようですけれども、この点についてはどういうふうに考えておられるのか、また、今後はこれをどういうふうに指導していかれるのか、関連してお聞きしたいと思います。
  69. 安田巖

    政府委員安田巖君) 先ほど申し上げましたような原則で、私ども別に通牒ということよりか、昨年でございましたか、課長会議をいたしましたときに指示したのでございますけれども、これは従来行われておりますことを、医療扶助関係のいろいろ打合会においてまた再び繰り返したというような関係でございます。それで何度も申し上げるようで恐縮でございますけれども、やはり保護法の実施機関というのは府県知事であり、また市長でございますけれども、その保護法の実施機関がそういうような措置をいたします場合は、やはり地元の医療機関でやる。もしそこの医療機関でできないという事情でありますならば、もちろんこれは人命に関することでございますから他を選ばしむることがあるかもしれませんが、原則としてその府県の医療機関に入院させるというこの方針は今のところ変えるつもりはございません。ただ先ほどから申しましたように、地理的条件というものがむしろその被保護者医療機関関係等におきましてかえって県内に入れることが非常識である場合もございましょうから、そういった場合には、あらかじめ知事がそれに対して指定をしておけば、そういうことをしてもよろしいというような取扱いをいたしておるわけでございます。
  70. 片岡文重

    ○片岡文重君 私は医療機関の選択、言いかえれば、患者の療養、医療については地理的条件ばかりでなくて、やはり生活環境、医療環境といいましょうか、空気や周囲のいろいろな環境等に大きく左右されるし、それから何よりも患者が医師に対する信頼にあると思うのです。従って、そういう場合には地理的条件等にのみ制限されないで、患者が一日も早く全快することに重点をおいて、多少事務的に複雑になろうとも、煩瑣になろうとも、要は患者を一日も早くなおらして社会復帰をせしめることの方が生活保護費も要らないのだし、患者にとっても仕合せになることだから、そう窮屈に事務的な点にのみ考えを置かないで、患者を一日も早く社会復帰せしめるところに重点を置いて考えていただきたいと思うのですが、そういう考えを持っていただくわけには参りませんか。
  71. 安田巖

    政府委員安田巖君) 今の片岡委員のお話もきわめてごもっともなことだと思うのですけれども、ただ先ほども青森であるとか長野であるとかいうことを申し上げたのですが、実際にそういう例があったわけでございますけれども、たとえば清瀬なら清瀬の病院に入りたいというのを全部移送費その他を出して認めるかどうかという問題がある。この場合に普通の常識からいって清瀬あたりの一流のお医者さんであればおそらく青森、長野よりいいお医者さんがおるだろう。これを選ぶことも確かにごもっともですが、しかし同時に、青森や長野で自費でみてもらっておる人はおそらく金がなくてそういうことはできないと思います。そういう人たちは結局いなかの医療機関に入っておって、そうして国民の負担でまかなわれる医療扶助を受ける人は、自分で勝手に医療機関を選ばれるということになりますので、また、生活保護法の根本理念からいっても、そこに若干問題があるのじゃないかということも一つお考えになっていただきたいと思います。
  72. 片岡文重

    ○片岡文重君 関連質問になっておりますから、あまり長い間お尋ねするのもどうかと思いますのでこれでやめますが、今局長さん言われるように、いろいろ長野の患者が東京に入りたい、あるいは東京の患者が京都に入りたい、長崎に入りたいということになるとこれはおのずから常識で判断できると思う。ただしかし、東京都の区内に居住しておる患者が江戸川一つはさんだ国府台あるいは松戸の病院に入りたい。が、その川一つがじゃまになってとにかく東京都内の小岩あたりから本郷に行ったり、中野に行ったりすることがある。こういうことは私はそう窮屈に考えられぬでも、都内のごみごみした所、特に生活扶助を受けておる患者さんというのは大体裏長屋の方に住んでおられる人が多いのですから、そういう人たちが空気のいい所に出ていきたい、しかもそれは大して遠くない、川一つ、道一つ越せばいいのだというところではそう窮屈にお考えにならぬでも措置はとれるのじゃないか。そう青森から東京へあるいは長崎から東京へというようなことではおっしゃられるように生活保護法の規定からいってもそういうことは許されない。これは私たちも了解するにやぶさかでないのですが、そういう川一つ、道一つという場合にはあまり窮屈にされないでやっていただきたいと思う。つこういう問題についてはやはり政治的にこの病人を、特に国の費用で療養する人たちですから一日も早く社会復帰させることの方が国にとっても利益なんですよ。一つそういう点については、大臣もよく御指導いただきたいと思うのですが、いかがですか。
  73. 神田博

    国務大臣神田博君) 今片岡委員のお述べになっておられます当該府県の医療機関で治療を受けるといっても、実際上、川一つあるいは町が軒を並べておるというような事例がございます。特に東京都周辺等におきましてはそういうような実態になっておりますので、私他の機会にもお答え申し上げたことがございますが、お述べになりましたような事情の際は私も同感でございまして、生きた政治と申しましょうか、融通性をもった運用をしていきたいと、こう考えております。ただ、まあ、事務当局の今心配されることは、従来非常な極端な弊害があったので、これを一時軌道に乗せたというようなことで強行したことが、末端の担当員がもう規則定規に当てはめた結果、御指摘のようなことが現われたと思っております。一応今までのそういったものがレールに乗ったわけでありまするから、今度は一つ運用の面から実際情勢にかなった、全く片岡委員のお述べになったように、病院に入れることが目的じゃないのでありまして、一日も早く社会復帰していただこう、そうして健康な活動体になっていただこうということがこれは念願であり、その方がこれはもう国家的にすべて経済的であり、人道上からいっても、どこから考えてみても、条理にかなつたことでございますから、その辺のことは、一つ御指摘の通りの事態等につきましては、やはりよく個々のケースで運用の妙と申しましょうか、そういうことを期していきたい、こう考えておりますので、御了承願いたいと思います。
  74. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 ただいまの病院、診療所の自由選択ということは、これは実は世界保険医大会で医療憲章と申しまするか、基本的な人権として自己の生命を託することに対しては、いかなる理由があっても、その選択権は本人に与えなければならないということが一つの憲章に、世界的な保険医大会できまっているわけです。いろいろな行政のなさり方についても弊害があられることもよくわかりますが、そういう精神を十二分におくみ取りいただきまして、運営の妙をそれこそ発揮していただきたい、かように思うのです。  そこで、その次に私お尋ね申し上げたいのは、これは先般この委員会でも問題になったように思うのですが、医療扶助を受ける場合に、非常に事務的な煩瑣がある。人手不足で、親子のような場合において、母親が病気になったとき、小さな子供がいろいろな手続をしなければならない、あるいは緊急の間に合わないというようなことも考えられるわけです。おそらく事務手続はもうすでに大臣も、衆議院でも問題になりましたので、御承知と思いまするが、最初事務所に参りまして、それから医者のところに行って、医者に診察をしてもらって、これこれ程度の費用で、これこれの期間かかるのだということで事務所に帰りまして、そうして今度は受療券をもらって、医者のところに行って治療を受ける、そうして治療がその次にまたがる場合は、再びその手続をするわけですが、特にこの機会に申し上げておきたいことは、歯の治療をする場合に、最初に患者がやはり事務所に参りまして、そうして今度は医者のところに行く、一般医のところに。そうして医者の証明書によって今度は事業所に帰りまして、そうして事業所がこれを承認をして、歯科医師のところに行く。そうして歯科医がまたその患者をみて、費用なり、いろいろな点を、治療の予定期間などを記入いたしまして、帰らして、事務所に行って承認を求めて、そうして歯科医のところにくる。こういうようなことでまことに煩瑣なことになるわけですが、それを煩瑣をあえて忍んででも金がなければ医療扶助を受ける人もあるのでしょうが、苦しい中からそういうことは時間的にも間に合わないので、自費でやる場合もあるわけです。ここで問題になりますのは、医師諸君は歯科的な専門知識がない。あるいは法律的にも医師、歯科医師ははっきりと分れておりますにもかかわらず、歯科的な治療をする場合に、医師の診断によらなければならぬということは、医療法からいっても問題になるわけですが、そうした点において、あまりに窮屈な生活保護法の精神を守るといいまするか、あるいは乱診乱療を防ぐという意味なのかどうか知りませんが、そういうことは歯科医師を侮辱したものであり、無視したものであると、こう思うのですが、そういう点について改めるというような御意思があるかどうかということをお聞きしたい。
  75. 神田博

    国務大臣神田博君) お尋ね二つのような意味にお聞きしたのでありますが、一つは前段の非常に要保護者の医療保護の場合の手続がもっと簡素化するようなわけにいかないかというお尋ねでございます。  実は先ごろ衆議院の方の健康保険法の一部改正法律案の審議の際に、そのものが非常にややこしい実は資料を見る機会がございまして、私どもも正直驚いた次第でございます。まあ、厚生省関係といたしましては、国費でございますから大事をおとりになられて、まあ最善の様式行為を整えようということでございましょうが、私が見ましても困った家庭、人手がない、大体そういうことがうまくいくようなら要保護者にならぬわけでございまして、それが今お述べになられたような複雑な問題だものでございますものですから、何とかこれは思い切った簡素化をしたい、いたしましょう、という実はお約束も衆議院等ではいたしたようなわけでございまして、これはどうも関東全般の問題だとは思いますけれども、私どもが特に庶民層、あるいは生活の一番苦しい方々を相手にしており、また、家族的にも一番不幸な方々を相手にしておるわけでありまするが、一つ厚生省が率先しまして、そういった種類の形式化をこの際一掃していきたい、こういう私決心を実はいたしておる次第でございます。事務当局にも簡素化の方法を一つ考えてくれぬかということをお願いしてある。それからまた、関係方面にもこの程度でいいじゃないかというようなことを一つ御意見を聞かしてくれませんかということも実はお願いしているようなわけでありまして、お説まことにごもっともでございますから、十分一つ検討を加えまして、いろいろ厚生省もこの三十二年度から政府の大方針によって福祉国家へ踏み切ろう、社会保障をうんと一つやる役所にしよう、こういうふうな非常に忙しくなる官庁でございますから、この際、それのみにかかわらず、国民ともっとなじみやすく、わかりやすいような簡素化ができるような一つ役所にしたい、こら思いまして、思い切った一つ措置をとりたいと思っております。そのうち特に今お述べになられたようなことは対象として考えていきたい、早く一つ是正いたしたい、かように考えております。  それからあとの問題でございまするが、歯科医の方で待って、一般医の方で待って、また、歯科医の方へ来るのだというようなことは、これは今社会局長に聞いてみてもちょっとわからぬから調べてみるというようなことを言っておりますが、ここでお聞きしただけでは私ちょっと念の入り過ぎた不思議なような気持があるのでございます。申し上げるまでもなく、医師会、歯科医師会と薬剤師を加えた三者というものは、私どもといたしましては、もう公平に平等にそれぞれの分野で職責をお持ちになって、そうして社会に貢献しているお仕事なのでございまするから、連絡が密にしてないことはまことに当然でございますけれども、そういった専門の担当されておる仕事を他の分野にまでとやかくしていくということは、いたずらに事務を繁雑化させ、かえって患者の手当がおそくなり、また、患者が初期で済むものを、来るのをいやがるというようなことになりまして、まことにこれはそういうことがあるのは、どういう事情でそういうことになっておるか私も詳しく知りませんが、私の気持、今申し上げたように、納得いかぬのでございます。よく調べまして、そういうことがもし事実といたしますならば至急一つ簡素化いたしたい、かように考えております。
  76. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 今の歯科の例は東京都で現にございます。その患者に歯の治療をしなければ健康上どうかというような診断を医者にさせるわけですね、これはとんでもないことです。あるいは公文書で東京都にこういうことをお聞きになったら、そういうことはないと言われるかもわかりませんが、事実は私どもたくさん持っております。とにかくそういうことのないようにしていただきたいと思います。  それからその次の問題ですが、これも実はここでごく軽く質疑がかわされたと記憶いたしておりますが、差額支給の問題なんです。日雇い労務者が年末の手当金を六日もらったからといってこれを差し引きした差額を支給するのだとか、あるいはまた、内職の収入があった場合、特に子供が学校を出て就職したというような場合に、もう無条件にこれを、まあ勤労所得的なものには基礎控除が少しあるようですが、一応これを控除してやるというようなことになって参る。これは特に新聞に出ておったのですが、福祉事務所の人がその生活保護者の家庭に行って貯金通帳を見つけて、貯金したことをしかったというようなことが新聞に出たことがございます。そういうようなことになりますると、非常に自立更生の意欲をそこなうものであり、また、事実自立更生ができないわけですね。なかなかこれはむずかしい問題でして、生活保護法適用される中にも正しい人もあれば、横着な人もあるわけですから、なかなか限界はむずかしいのですが、少くとも法の建前からいきましては、自立更生のできるように更生資金の制度も考えておられる。これはまあ主としてボーダー・ラインに対する更生資金でございまして、生活保護でないかもわかりませんが、しかし、あくまでも生活保護法適用者の人も必ず立ち上り得るというのには、自己の貯蓄ということが当然必要だと思う。この貯蓄を横着な気持生活保護をもらわなければ損だというようなことでなしに、まじめにやっておる人に対しては、福祉事務所ではその貯金を預ってやるとか、何らかの方法がいろいろあると思うのですが、今のような状態でいきますと、全く生活保護は一子相伝の形で、現に親子が受けておるというようなことになってくるわけで、立ち上る機会が、生活保護法があるために国民がまあ堕落するといいますか、発展性がないということになってくる。こうした点も法の盲点だろうと思う。そういう点について、何かまあ今直ちに御答弁をいただかなくてもけっこうなんですが、将来の問題として、課題として取り上げる意思があるかないかという点を私はお聞きしておきたい。
  77. 神田博

    国務大臣神田博君) 今竹中委員のお述べになりましたこと、いろいろ私も耳にいたしておりまして、ことに、要保護者の子弟が高等学校に入るとおしかりを取けたというようなことも先般耳にいたしました。生活保護制度というものが今まで打ち立ててきた理論だけで、要保護者なり、また、一般の社会の識者を納得させていくということについて、実は厚生省の省議その他の関係等におきまして、非常に私も、何か一つ理論的にも、それからまた実際、今竹中委員の述べられたように、立ち上る土台を作る元なんでございますから、何か一つ説明のつく方法がないかというようなことを研究課題といたしまして検討を進めてもらっているわけでございますが、どうもちょっと私どもの考えておりますことと、法の自点と今言われておりましたが、私はこれは少し曲り角にきているのじゃないかというような言葉を使ったのですか、これは十分つ考えてみなければならない段階にきているのじゃないかという気がいたしております。それからさっきからいろいろ御意見、あるいはお尋ねがあったんでありますが、基準引き上げということがもう少し出て参ると、そういうことまでいくのじゃないかと思うのでございますが、なかなか影響するところが大きいようでございます。それからまた、もう一つ乱給といいましょうか、もう権利のように考えて、そうして立ち上れる者が他の方の十分な所得を得ながら、また、一方においては貯蓄をしているというような例等もあるようでございます。しかし、まあこういうことは私はもう実態がわかればやめていけるここでございまして、今問題とされておりますのは、細々と立ち上ろうということで、ささやかなものをためている。それを今のようなことをされたのでは、立ち上れる意欲が欠けるわけでございまするから、何かその点の理屈の立て方と申しましょうか、線の引き方と申しましょうか、もう少し一つ法の運用でいかぬものか、これはざっくばらんに申し上げれば、大岡裁判式に末端の担当員が取捨できぬものか、法の精神を生かせないものかというようなことを私も非常に苦慮いたしている最中でございまして、なお一そう一つ検討さしていただいて、時間をおかりいたしまして、もうお気持は私は全く同感なんでございまして、制度と一体どこでそれを調和させるかという問題であろうと思いますので、検討さしていただく時間をかしていただきたいと思います。まあいろいろ事例等もございますようでございまして、悪いことを例にとるから、そういったまじめに立ち上る者を保護できないということは、これはもう残念なことでございますが、いろいろ例もあるようでございます。政府委員から少し補足さしていただきたいと思いますが、政府委員のお答えを少しお聞き願いたいと思います。
  78. 安田巖

    政府委員安田巖君) 私のも今、大臣が申し述べられましたようなことでございまして、別に意見はございませんけれども、ただ、無差別平等という生活保護法の原則がございますのと、そういった問題との関係をどういうふうに取り扱うかという点に、非常に難点があるわけでございまして、できるだけ勤労意欲を失わないように、あるいはまた、自立更生ができますような方法を常に考えているのでありまするが、なかなか名案がございません。大臣のお話にもございますし、さらにまた、研究して参りたいと考えております。
  79. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 以上そういう五、六点、私は生活保護法について質問申し上げたわけなんですが、相当当然国として行われるべき義務施策としての生活保護でも、これらの問題がある。どうか重要施策一つとして、将来も取り上げていただきませんというと、最初申し上げましたように、非常に、はなはだ遺憾でございます。  そこで、もう一、二点お聞きしたいのですが、それは厚生省所管だけに限った問題ではないのですが、国庫補助ないし国庫負担と、地方財政との関係なんです。で、まあ厚生省の所管では保健所の関係、あるいは結核予防関係、あるいは一般の社会保険との関係、その他福祉関係等で国庫の補助ないし負担が二分の一とか、三分の一とか、あるいは十分の八とか、一々率も上げられて地方財政の困るところを考えられて、漸次そういうふうに上昇した率でもって、補助なり、負担をなさっているようですが、果してそういうことを考えて今やっておられるわけなんですか。地方財政の逼迫状態からいうと、こういうような諸施策が、国がせっかくそこまでの手だてをしているのにかかわらず、今のところでは、どうも、金を出しっぱなしではもちろんないでしょう。監査なんかもなさるわけなんですが、ただし、そういうことが、生きた金として地方に行って使われているかというような点について、非常に私は疑点をもつわけなんです。今後いろんな国庫の補助をなさる場合におきましても、そういう点をよくお考えいただきたいと思うのですが、そういうものについての著しい弊害が現在あるようなんですが、あるいはもちろんあるとは仰せにくいと思いますけれども、せっかくこちらで——結核予防法も、地方財政がないからもう要らぬというようなことも、事実耳につくのですが、そういうような調整が私は必要だと思う。
  80. 神田博

    国務大臣神田博君) 今竹中委員のお述べになられましたような事態のないように、厚生省といたしましては努力して参っておるわけでございますが、実際問題としては、今御指摘になったような事例があるようでございます。まことに残念に思っておりますが、その一つの例といたしましても、たとえば母子貸付金等におきましても、政府の補助率が低いために、地方財政の関係上、地方では計上しない県がある。そこで、そういう県では母子家庭がその資金の全然恩恵にあずからない。従って、割当てておきますと、それが年度末に余ってしまう、従って、せっかく予算を議会で協賛をしていただいて、完全実施をして社会効果をあげなければならぬものが、全然ある県においては行き渡っておらない。あるいはまた、補助率が非常に低いために、たとえば保健所の運営等につきましても、十分の効果をあげ得ないというような事例が相当あるようでございます。今年度も年度末でございますので、一体どうなっておるか、実績を早く知りたい、府県会も開いておる際でございますから、知事会議等にいろいろ御連絡するはもちろん、私どもが、あまり何と申しますか、厚生予算の消化が十分でないような県は、ほんとうに必要でないのか、あるいは必要であるが財政が困っておるということなら、自治庁とも相談したければならぬし、一つ個々の県のケースによって大臣みずから折衝してもよろしい、一つそのケースを出してくれぬかというようなことも、調査を命じておるような次第でございますので、今年度は、そう申し上げても終ってしまうことでございますから、国庫剰余金として残る以外はないわけでございますが、これはまことに申しわけないことでございまして、三十二年度の予算の消化につきましては、これは通っておりませんが、通していただいたあとの予算消化につきましては、今御指摘になられましたことのないように、一つ各県個々にでも一つ当りまして、十分連絡を密にいたしまして、消化をしてもらいたいと、こう考えております。母子貸付金あるいは世帯更生資金あるいは医療資金を、そのために特に今年は大蔵省が、補助率の改訂は絶対しないという大蔵大臣の、これは強い決意でございましたが、どうも母子貸付資金がうまくいかないという事例を私知っておったものですから、その点を強く大蔵当局に要求いたしまして、世帯更生資金と医療資金の三つだけは、三分の二国庫負担にしよう、地方は三分の一、これならば完全消化できるだろうというようなことで、この三つだけは補助率の改訂を成功したのでありますが、他の方はまた、来年度、三十三年度に持ち越されたような関係でございまして、ここで全く残念でございますが、よく一つ今後検討いたしまして、そういうことのないようにいたしまして、厚生行政の実際の効果が十分浸透して、あがっていくように努力して参りたいと、こう考えております。
  81. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 最後に、いま一つお聞きしたいのですが、これは初めに出た婦人保護の問題ですが、大臣の釈明によりまして、婦人保護費身体障害者の費目中にあったということは、非常に遺憾でございました。それは了解いたしましたが、これは婦人保護費の三億円という金が計上されておるわけですが、売春防止法によって職を失う、職を失うには違いないのですが、職を失い、生きる道が実際閉ざされておる場合、こういう気の毒な人は、もとより技術もなければ、あるいはまた、学問的な素養もないわけです。非常にむずかしい取り扱いが出てくると思う。今年の予算を見ますと、相談所を三十八カ所お作りになり、あるいは休講施設を三十九カ所お作りになるということなんですが、ただこれを防止するのに、相談にのる、あるいはその保護施設に入れておくということだけでは、この法の強力な更生の対策として欠くるところがあると思う。もとよりこういう方々は、まあ主として放縦な気ままな生活をしてこられた過去の経歴からいって、あるいはぜいたくになるあるいは勤労意欲がないというのが多いと思う。これも私この間視察に参りまして、石川県の話ですが、石川県のそれを取り扱っておられる係官にお聞きしたのですが、結婚さしましてもうまくいかない、多くの場合はまた離婚し、あるいは結婚解消するようなことが多いのだということで、ほとほと婦人保護には手をやいている、いい策がないのだということを述懐しておられたことを聞いたわけです。そこで、どうか厚生当局としても、婦人保護に対して、ただ相談所を設け、施設を作るということだけでなしに、積極的に、これに授産と申しますか、職業指導を、そういう人にふさわしい、特殊事情にある人なんですから、こういう人にふさわしいような仕事を考えられまして、更生の策をお立ていただきたいということなんですが、この婦人保護に対しましての一つ考え方を承わりたい。
  82. 神田博

    国務大臣神田博君) 今好ましくない仕事にというか、職業から転業させ、保護し、更生させようという問題は、もうおっしゃる通り、これぐらいむずかしい仕事は、私はないのじゃないかと思います。しかし、とにかくこれはもう承知の上で、こういう社会悪をなくそうという強い決意で立法したことでもございまするし、そうして、しかも今年中には、どうしてもこれは転業してもらわなければならないことは、これはもう、それらの方々が一番よく、私は承知し切ったことだと思うのです。問題は、これは相談所を作り、保護施設を置きまして、要は人を得て、そうして補導なり、教育なり、保護して参らなければならぬわけでございますが、一般社会の方々の御理解も、一つできるだけ受けるような方途を講じまして、何か一つ職業補導をしたい、それから、気持の持ち方を一つかえていただくことが、一番これはまあ大事なことじゃないか、ちょうど時期からいえば、幸いと申しましょうか、こういった神武景気だといわれて、特に婦人に対する就職と申しましょうか、実際若い方々が多いわけでございまするから、若さの方々でございまするから、今求めたいという人は私は相当あるのじゃないかと思うのです。実際問題として、婦人労働者というのは足りないというのが、これは地方片々によりますけれども、ほんとうにまじめに考えますれば、今婦人労働者が、どこでも足らぬという声が強いのでございますから、社会的にも理解をしてもらうような方法を講じ、それから相談所等において、しっかりした人を得まして、就職のあっせんをしていただくとか、あるいはまた、何か一つ、女としての身のつけ方ですね、職業補導をいたしまして、年内には一つ相当の方々に、他に就職をしてもらうようなことを、一つ実行するようにいたしたい。また、家庭に帰れる余地がございますれば、家庭に帰っていただくことが一番いいのでございますが、しかし、なかなか帰りにくい事情があるのだろうと思うのです。出るには出るだけの、やはり経済上の事情とか、あるいはまた、経済上の事情がある程度緩和されておっても、そういった職業に従事した関係上、帰りにくいというようなことがあるのじゃないか、そういう意味からすると、大体これは、どうしても他に就職させなければならぬので、これはもう一番むずかしい仕事じゃないかと思って実は頭を悩ましております。今までのこの保護更生と今度の保護更生は非常に私は違うと思う。今まではどちらかというと、そういうことよりも早く一つ更生した方がいいんじゃないかというような積極性というものは割合に私は弱かったと思うのですが、今度は何といってもこれはもう期限的に終止符を打たれているわけでございまするから、そういうことを一つ強みとして社会の理解も得て、御協力も得て、何か一つ適当な方法を打ち出したい、こう考えておりまするが、二十万からあると言われる方方、予算面も御指摘の通り貧弱でございますが、これはしかし予算をたくさん取ったから成功するという仕事でもないように思います。と言って、予算がなければなお困るわけでございまするが、今となりましては、この限られた予算の範囲でいろいろと検討いたしまして成果を上げるように一つ努力して参りたいと、こういう考えでございます。
  83. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 先刻来いろいろと御質問申し上げたわけで、非常に御懇篤な答弁をいただきまして私感謝にたえません。母子加算の問題、医療扶助の問題、差額支給の問題、ないし婦人保護の問題、すべて御懇切な答弁をいただきまして、決してこれは私はおざなりな答弁とは受け取っておりません。どらかこの御答弁内容のヒューマニズムの現われが如実に実を結ぶように私ぜひお願い申し上げまして、私の質問を終りたいと思います。
  84. 片岡文重

    ○片岡文重君 私もこの際、売春防止の問題について一つお伺いしたいと思うのですが、今大臣も言われる通りに、この防止法は来月の一日から更生保護規定が実施されます。この売春防止の問題はまさに筋といいますか、理屈から言えばこんなに明瞭なものはないし、きわめて簡単ですけれども、実際扱う面になるとなかなかこれは容易な問題じゃありません。どうしてこの実効を上げていくかとなったら、これは大臣がまあこの問題にかかり切って骨身を削るような努力をしなければ、これはとてもそれでもできるかどうかわからぬくらいだと私は思うておる。確かに御答弁だけでは非常にもう私たちもとやかく重ねて御質疑をする必要もないくらいだと思うのです。しかし、この三十二年度に盛られた予算を見、それから今までの厚生省が指導されてこられた都道府県の実績を見ると、これで果してその法律を実施しようとする誠意があるのかないのか疑われると私は思うのです。第一この婦人相談員の定員は四百六十八ですか、これでまだこの四百六十八名の中に人選がきまったのは一体何人あるだろうか。おそらく六、七割あったらせいぜいじゃないですか。で、大蔵省自体が大体相談所は今年の秋ごろまでにできればよろしいというくらいな気持でいるということを伺っております。そういう気持で今度の予算を組まれているようですが、この婦人相談員は一体全国でこの定員を満たしておるのかどうか、この点まず伺いたいと思うのです。それは事務的な問題になると思いますが、その事務的な問題の前に、大臣はこの予算でもって果してやっていくことができるのかどうか。関係の各省が要求された予算の総額が私の調べておるところでは十一億二千万近くになっておるはずです。これが削られているのは、実際において大蔵省の査定で生きてきたのは、全部ひっくるめても四億五千万ちょっとだったと記憶します。従って、要求した予算の二割五分程度しかこれは生きておりません。これでしかも今までの実体を見るというと、肝心かなめの婦人相談員の定員すらも満たしておらない、これで果してやっていけるかどうかということです。
  85. 神田博

    国務大臣神田博君) 片岡委員の御心配、まことに私も深刻に実は考えておることでございまして、厚生省に参りまして、これは一体どうするかというようなことでしばしば頭を悩めておる、会議を続けておるのでございまするが、予算の方はいろいろ今お言葉ございましたが、私どもは六億要求いたしまして三億ちょうだいいたしたわけで、予算をとった率からいうと、これは普通でございまするが、この三億円をどういうふうに効率的に消化するかということでございます。今竹中委員にもお答えいたしたのでございますが、それとまあ相談所の中心になっていただく方々の適材な方をどうやって得るかということなんでございますが、幸い人の関係はすでに三分の二くらい当てができているそうでございます。私どもの考えといたしましては、この転落婦人方々に、先ほどもお答え申し上げたように、まあ第一は今家に帰っていただくことが一番いいんでございますので、これはまあそういう面で指導したいと思いますが、これはなかなかむずかしいことで、出た事情、その後のこらいった職業に従事した関係上国に帰ることができるかどうかという心配があるわけでございますが、そうだとすれば、どうしても自力更生可能な者に対しまして、これは相談員が相談に乗ってそうして職業補導、あるいは世帯更生資金の貸付をやるとか、母子福祉資金の貸付をやるとか、そうして職業あっせんをするわけでございますが、それはなかなか、よくああいった層に落ちる人は知能的にも非常に低い者だ、一般の人と違うところがあるというようなことを言われておる方々でございまするから、おそらくそういう方もあるだろうと思うのです。他の職業にはもう向かないのだというようなこと、あるいは自暴自棄といいましょうか、そういったようなひがんだような気持の方も多いと思いますので、どうしてもこれは他の職業にもっけない、国へも帰れないということになりますれば、生活保護法とかその他で一つこれは救っていかなければならないわけでございまして、いろいろこれは個々のケースでございまするから、当ってみなければできないことでございまするが、先ほどもお答え申し上げた通り、景気がいいので女手ならほしいという層が国民の中に相当あるのではないかと思うのでございます。これは健全の家庭として、あるいは健全の経営、企業として健全の労務者がほしい、婦人労務者がほしい、そういったような面が相当今年は出ているようでございます。ですから、そういうことを一番たよりにしておるわけでございますが、何といたしましてもこれはよほどしっかりやりませんと、今年一ぱいのうちに無理じゃないかというようなことで、これに従事している売春婦気持が、一番あとから自分は転業するのだという考えを私は持たれると大へんなことになるわけでございまして、早い方がいいところに行けるのだ、早く沈む船に乗っていたのでは一番不仕合せになるのだというようなところから一つ説き起して、身の処置をつけていただくような手を講じなきゃならないじゃないか、予算通りましたらさっそく一つ、今の相談所はまあ予算が通る通らないにかかわらず、これはまあ活動していただいておるわけでありますが、新しい方面も充実いたしましてこの実行を期していきたいと、まあこういう考えでございます。しかし、それならこの四百六十人名の配置によって、三億円の金で、この十五万人に上る売春婦を皆それぞれ適当に処置できるかと言われますと、これはやらなきゃならない仕事でございまするが、何といってもこれは対象が今申し上げたような実情でございまするから、これはまあ非常にむずかしいことだと考えております。がしかし、厚生省といたしましては最善を尽したい、そうしてまあ最大の効果を上げたい、こういうふうに考えまして、御期待に沿いたいとこういう決心でございます。これはなかなかくどいようでございまするが、何といっても社会の多くの方々のあたたかい御了解を得ないと、これはなかなかむずかしいことだと考えておりますので、特に一つ議会の皆様方には豊富な御知識をお借りいたしたいと思っております。
  86. 片岡文重

    ○片岡文重君 時間もないようですから、御答弁一つ簡単明瞭にお願いしたいと思うのです。それで、大臣の言われることはその通りなんですがね。問題はですよ、そういう済度しがたい者ばかりが多いのではないのですよ。更生をしたいと願っており、これが絶好の機会だと一日千秋で救い出される日を待っている者もたくさんおると私は思うのです。そういう人たちも頭の中に入れておいていただいて、この対策を考えていただきたいのですが、婦人相談員の数を私がなぜ聞いておるかというと、この人たちがまず窓口にならなきゃならないでしょう。それから婦人少年室もこれは窓口になるわけです。かりに私は神武景気などということは、これはなるほど神武景気に潤っておるところもあるでしょう——あるでしょうけれども、今大衆の間には神武景気などということは雲の上の言葉としてしか通用しておりません。かりにその事業主のところに神武景気なるものが潤っておったとしても、まさか赤線地帯へ婦人労働者を求めていく者は私はなかろうと思うのです。結局その雇う方も雇われる方も一つの窓口がなければならぬ、その窓口は一体どこかということなのです。このかけ込んでこられたときに、それを迎え入れて相談相手になってやる相談員も満足におらない、ここが私ども問題になると思うのですね。さらにもうついでですからお尋ねするのですが、一体相談所を持っておる府県が全国で幾つあるのですか、今。
  87. 安田巖

    政府委員安田巖君) 三十一年度に八カ所でございます。それから明年度予算で三十八カ所でございますから、明年度は一応全国各府県に一カ所ずつの婦人相談所を置く予定になっております。
  88. 片岡文重

    ○片岡文重君 とにかく今都道府県全部で四十六ですか、ある。そのうちにです、とにかく八ですか、しかない。これから設けられる相談所が三十八カ所、これでまあ完成するおつもりなんでしょうけれども、その三十八カ所というものに対する予算は半分もないはずですよ、今年の予算では。これで一体窓口に来て足りるのか。それからさらに、私どもが現にこの間北九州へ行ってちょっと見て参りました。それからそのほかで例を聞いても、この助けてくれと言ってかけ込んできた婦人を、どこで一体身の上を聞くかということなんですね、婦人少年室へ行ってみると、室長さんが一人おったりおらなかったり、その部屋は全部大部屋です、まさに。たくさん人がおるところです、そういう普通の事務室の中で、室長さんもしくはその婦人少年室の職員がほかの関係の事務員と机を並べておる。そこでその身の上話を聞かなければならないということはとうていできないということ、仕方がないからその婦人少年室の方たちが自分のポケット・マネーをさいてお茶を飲みに通れて行くなり、自分の家に連れて行くなり、あるところでは、労働基準監督署の署長室で署長さんを一時外に出てもらって、その室を借りてその身の上を聞くということです。こんな状態だったら、かけ込んでくる方だってかけ込んでこないし、受ける方も困るじゃないですか。こんなことでは救出なんということはとてもできません。一体婦人少年室はかけ込んで来た婦人の相談を聞くような個室といいますか、面接室、こういうものを持っているところが一体何カ所くらいあるのですか。
  89. 安田巖

    政府委員安田巖君) 先ほどから申し上げましたように、現在では東京、大阪というような大きな八大府県にあるわけでございますが、来年度は残りの府県三十八カ所に全部設置いたす予算を組んでおるわけでございます。その中にはもちろんそういった面接室というようなものは計画の中に入れておる次第でございます。
  90. 山下義信

    山下義信君 先ほどから竹中委員並びに片岡委員等から売春問題の質問が出ておるんですがね、実際においては売春防止法ができますときは、法務委員会でこれは一つ罰則を強化するような面が重点だったと見えて、取締り関係は法務委員会が主になっておやりになって、衆議院はどうであったか知りませんが、参議院の方では社労では連合審査をする機会もあまりありませんでしたが、当委員会で深く論議をしたことはない。まあ売春防止法ができ上ったわけで、いよいよ主として更生方面のことをすることは厚生省の所管という、こういう重点の実効をおさめるについては、厚生省所管ということになったわけです。  そこで、当委員会としても本格的にこの問題を取り上げて十分当局と協議をして、まあわれわれもあまり名案とてもありませんが、一ぺん一つ相当時間をかけて相当専門的な立場の同僚諸君もおられるわけですから、当委員会一つ取り上げて、本格的に御審議を願いたいと思うのです。そのことを一つ提案をしておきますからお諮りを願いたいと思います。  それからもうおしまいでしょうが、私はこの売春対策についての政府の根本的御方針はどういうことにおきめなさったのかということも、この機会に承わっておきたいと思うのですが、今片岡委員も指摘されましたように、従来とても労働省なり、厚生省なりあるいは検察庁なりいろいろそれは取締りとか摘発とかあるいは労働基準法違反とか、いろいろ各所管の面から見て関係はありましょう。関係はありましょうが、また、その対策の樹立については、売春問題の審議会等内閣に置かれて関係者が集まって協議をされる段階もありましょう。しかし、関係の法律がきまってそうして行政的に効果をおさめるように一つこれから実行に移そうという段階になったらですね、いろいろひっかかりの各所管の管庁もありましょうけれども、本格的に厚生省がこれを中心になってまとめてやるんだという形にしなければ、ばらばらのままでは私はいかぬのじゃないかと思うのです。それは罰則に触れるようなことは、検挙とかあるいは刑事政策ということは検察庁でもいいでしょう。けれども、いよい売春対策の更生関係を中心にして、関係者が厚生省のまあ隷下と言っちゃ語弊がありましょうが、その計画のもとに総合的に動いていくというような施策をやられる省の中心の主体性というものが明確にたってこなければ、私は効果が上らぬのだろうと思うのです。そういう点について、厚生省はただ単に自分の受け持ちの更生関係だけの仕事をやるんだという立場でなしに、これはたとえ困難でありましても、厚生省がこの問題の中核的な立場に立ってやるんだということを政府の方で御方針をおきめになっておられるのでありましょうか、あるいはまた、厚生大臣としても、そこまで踏み込んでの御決意があるのでありましょうか、という点を一つ御所見を承わっておきたいと思います。
  91. 千葉信

    委員長千葉信君) ただいま山下委員の方から提起されました売春禁止法に関する婦女子の保護更生に関する件については、当委員会の所管でもございますので、この点御異議なかろうと存じますが、御異議なければ、適当な機会に取り上げることに理事会等で御相談願いたいと思います。
  92. 高野一夫

    ○高野一夫君 今の山下委員の御提案は、まことに適切だと思います。当然われわれの委員会で吟味すべきだと思いますが、しかし、いつごろの委員会でどういう形で取り上げるかということは、委員会の運営に関することでありますから、その辺のことは、委員長理事打合会に御一任を願いたいと思います。問題を取り上げることについては異存ございません。
  93. 千葉信

    委員長千葉信君) ただいまの高野君の御発言も、私の申し上げた内容と同一でございますので、さよう取り計らいたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  94. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。
  95. 神田博

    国務大臣神田博君) ただいま山下委員のお尋ねでございますが、一体売春法実施の面というものは、複雑多岐にわたっておるので、政府として一体どういうふうな意図のもとでやっておるのか、厚生省が全部引き受けてやっておるのかというような意味のお尋ねだと承わりました。これは、政府部内に売春法が施行されるに当りまして、必要とする施策一つ対象として検討したいということで、連絡協議会が審議室に置かれておるようでございまして、そこでいろいろ検討をされまして、そしてこの保護更生については厚生省が担当しよう、取締りについては法務省ということになるわけでございましょうが、そういったことで、三十二年度では一つ婦女子の保護更生厚生省が担当しようということで、必要の経費あるいは人員等が予算化されたわけでございます。だから、政府といたしましては、一応売春法実施の対策というものは、各省合同の対策協議会ができておりまして、そこの協議いたしました経過に基いてそれぞれ、各省で担当していこう、こういう仕組みになっております。
  96. 山下義信

    山下義信君 委員会でお取り上げ下さるということになりましたから、また、その機会にお尋ねいたしますが、それではこの対策の中心がないのですね。中心の省といいますか、役所というものがないことになる。連絡協議会は、あくまでも協議会で、それは行政機関ではないのですからね。従って、責任はだれが負うのか、どこで主たる責任を負うのか。これはまあ常識から言っても、一省だけでいけないことは、いろいろ関係の観点が違う面もありますから、連係を持たなきゃなりませんけれども、しかしながら、責任をもってやるという行政庁がなけらねば、少くとも中心になってやるというのがありませんと、どこが中心だかわかりませんような現状と私は印象を受けるですね。それぞれの分野で力をこめられるのはいいと思いますが、法務省でもいいでしょう。労働省も努力しておやりになるのもいいでしょう。協力してもらわなきゃなりませんから、異なった面において相当関係がありますけれども、しかしながら、飛び抜けて厚生省が力を入れてやるんだ、責任を負うて一つ困難な問題と取り組むんだという形のものがなけらねば、これだけの大きな施策をするのに、中心の官庁がどこであるかということがはっきりわからぬというようなことでは、連絡協議会のところで連絡するという程度では、私はそういう考え方ではいかないのではないかと思うのでありまして、次回お取り上げ下さるとき、十分一つ政府部内でも御協議下さって、また、厚生大臣も、ただいま承りますと、相当な御決意のようでありますから、ぜひともこの対策の主体性を厚生省が持つという明確な線だけは一つお打ち出しを願いたい、私はかように考えます。いかがでございましょうか。
  97. 神田博

    国務大臣神田博君) 山下委員の御要望といいますか、お考え方、私どもとあまり変っておらぬつもりと思いますが、なかなかこれは非常にむずかしい問題であることは、先ほど来私が竹中委員、片岡委員にお答え申し上げた通りでございまして、なお、この委員会で適当な機会にお取り上げになるということでございますので、それまでに何かと一つ準備いたしまして、政府部内の意見も十分連絡をとりまして、その際にお答え申し上げたいと思います。
  98. 千葉信

    委員長千葉信君) 本問題に対する本日の質疑は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  99. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。  本日は、これをもって散会いたします。    午後四時三十七分散会